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▶ ランダ ラブズ (2012) リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】フレークの生産方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/068 20220101AFI20230508BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230508BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20230508BHJP
   B22F 1/142 20220101ALI20230508BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20230508BHJP
   B22F 1/105 20220101ALI20230508BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20230508BHJP
   C09C 1/40 20060101ALI20230508BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
B22F1/068
B22F1/00 N
B22F1/05
B22F1/142
B22F9/04 Z
B22F1/105
B22F1/17
C09C1/40
C09D17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560067
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-04
(86)【国際出願番号】 IB2021052743
(87)【国際公開番号】W WO2021198976
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2004904.5
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512048354
【氏名又は名称】ランダ ラブズ (2012) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ベンジョン ランダ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ フェファーマン
(72)【発明者】
【氏名】タマル アシェル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディム ヤケル
(72)【発明者】
【氏名】ヨーセフ シャチャク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィチェスラフ ラビノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ エリシャ レヴィン
【テーマコード(参考)】
4J037
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4J037AA05
4J037CB04
4J037CB07
4J037CB23
4J037DD02
4J037DD05
4J037DD09
4J037DD10
4J037EE03
4J037FF02
4K017AA02
4K017AA06
4K017BA01
4K017BA02
4K017BA03
4K017BA05
4K017BA06
4K017BA10
4K017CA03
4K017CA07
4K017CA08
4K017EA13
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA10
4K018BA17
4K018BA20
4K018BB01
4K018BB04
4K018BB05
4K018BC01
4K018BC22
4K018BC28
4K018BD04
(57)【要約】
第1の材料のフレークを生産する方法が開示され、方法は、a)第1の材料の2つの供給シリンダと、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドを含む脆弱化ロッドアセンブリと、を支持するステップであって、各脆弱化ロッドが2つのシリンダの間に挟まれ、各脆弱化ロッドの直径は、2つの供給シリンダの初期直径よりも小さく、第2のより硬い材料で作られている、支持するステップと、b)2つの供給シリンダの表面を各脆弱化ロッドに接触させるステップと、c)互いに転がり線接触させながら、供給シリンダおよび脆弱化ロッドを回転させるステップと、を含み、供給シリンダおよび各脆弱化ロッドは、供給シリンダの表面を脆弱化によって変更するのに十分に大きい接触圧力で互いに押し付けられ、結果としてシリンダの表面からフレークを分離させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含む、または金属からなる第1の材料で作られた複数の金属フレークを含む組成物であって、前記フレークは、端縁表面寸法よりも大きい平面状表面寸法を有し、ここで、前記フレークの大部分が、該フレークのアニーリング中に保存可能な外観および結晶学的構造のうちの少なくとも1つを有し、前記アニーリングの前後でほぼ同様である前記保存可能な外観および/または結晶学的構造は、a)分光光度計または光沢計によって検出可能な外観であって、光学濃度、光沢度およびヘイズ値から選択される検出可能な外観、b)細長い条痕、細長いセルブロック、および渦巻きパターンからなる群から選択される、顕微鏡分析によって検出可能な結晶学的構造、およびc)回折ピークの位置、特定の位置における回折ピークの相対強度、および2つの特定の位置における任意の2つの回折ピーク間の比からなる群から選択される、X線回折によって検出可能な結晶学的構造のうちの1つである、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、前記フレークのアニーリングは、該フレークの温度を少なくとも150℃のアニーリング温度まで毎分1℃~毎分50℃の加熱速度で上昇させることによって実施され、該アニーリング温度は任意に最大で500℃であり、該フレークは所定の雰囲気下において該アニーリング温度で1時間維持され、該アニーリング温度は、任意で、同じまたは異なる所定の雰囲気下において一定の冷却速度で制御可能に下げられ、それによってアニーリングされたフレークが形成される、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、前記金属フレークは、第1の材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でコーティングされている、組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物において、保存可能な外観および/または結晶学的構造を有する前記金属フレークは、アルミニウムを含むか、またはアルミニウムからなる、組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の組成物において、前記フレークの前記保存可能な結晶学的構造は、約38.56°(<111>)に第1の回折ピーク、約44.81°(<200>)に第2の回折ピークを含み、および、前記第1の回折ピークの相対強度と前記第2の回折ピークの相対強度との比XRDRatioが、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.75以下、または1.70以下であり、また随意的に、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、または0.80以上である、組成物。
【請求項6】
第1の材料でできた複数のフレークを含む組成物であって、該フレークは端縁表面寸法より大きい平面状表面寸法を有し、ここで、前記フレークの大部分はそれらの平面状表面の少なくとも1つに少なくとも3つの細長いマークを有し、該少なくとも3つの細長いマークのうちの任意な2つの隣接するマークは、互いから30°以下だけずれているそれぞれの長手方向の配向を有し、各フレークについて正規化された好ましい細長いマークの配向からの該マークにおける前記長手方向の配向のずれは25°以下であり、ここで、前記フレークは、随意的に、第1の材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でコーティングされている、組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の組成物において、各細長いマークは、平均深さおよび平均幅によって特徴付けられ、2つの隣接する各細長いマークは、対のそれぞれの端縁間の平均距離によって特徴付けられ、該細長いマークを含む前記フレークは、さらに、以下の構造的特徴、すなわち、
a)前記細長いマークの少なくとも一部は、25nm以下の平均深さを有する、
b)前記細長いマークの少なくとも一部は、該マークを含む前記フレークの平均厚さの20%以下の平均深さを有する、
c)前記細長いマークの少なくとも一部は、20nm以下の平均幅を有する、
d)前記細長いマークの少なくとも一部は、該マークを含む前記フレークの平均厚さの5%以下の平均幅を有する、並びに
e)隣接する細長いマークの対の少なくとも一部は、2μm以下の平均距離を有する、
という構造的特徴の1つ以上によって特徴付けられる、組成物。
【請求項8】
請求項6または7に記載の組成物において、前記細長いマークを有する前記フレークは、金属、プラスチック、セラミック、もしくはガラス材料を含むか、またはそれらからなる、組成物。
【請求項9】
請求項8に記載の組成物において、前記細長いマークを有する前記フレークは、金属を含むかまたは金属からなり、該フレークのアニーリング中に保存可能な外観および結晶学的構造のうちの少なくとも1つを有し、該保存可能な外観および/または結晶学的構造は、請求項1~5のいずれか一項に記載のとおりである、組成物。
【請求項10】
金属を含むか、または金属からなる第1の材料で作られた複数の金属フレークを含む組成物であって、前記フレークは、端縁表面寸法よりも大きい平面状表面寸法を有し、ここで、該フレークの大部分は、該フレークの平面状表面に少なくとも2つのセルブロックを含み、前記少なくとも2つのセルブロックは細長く、ここで、前記フレークは、随意的に、前記第1の材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でコーティングされている、組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の組成物において、前記少なくとも2つの細長いセルブロックのうちの任意な2つの隣接する細長いセルブロックは、互いから30°以下だけずれているそれぞれの長手方向のセルバンドの配向を有し、各フレークについて正規化された好ましいセルバンドの配向からの前記長手方向のセルバンドの配向のずれは25°以下である、組成物。
【請求項12】
請求項10または11に記載の組成物において、前記細長いセルブロックを有する前記金属フレークは、該フレークのアニーリング中に保存可能な外観および結晶学的構造のうちの少なくとも1つを有し、該保存可能な外観および/または結晶学的構造は、請求項1~5のいずれか一項に記載のとおりであり、および/またはそれらの平面状表面の少なくとも1つに請求項6~9のいずれか一項に記載の細長いマークを有する、組成物。
【請求項13】
金属を含むか、または金属からなる第1の材料で作られた複数の金属フレークを含む組成物であって、前記フレークは、端縁表面寸法よりも大きい平面状表面寸法を有し、ここで、(数で)少なくとも2%の前記金属フレークが、該金属フレークの平面状表面に少なくとも1つの渦巻きパターンを含み、各渦巻きパターンのコア部分を取り囲む「リング」の幅が最大で1μm幅であり、またここで、前記フレークは、随意的に、第1の材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でコーティングされている、組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の組成物において、前記渦巻きパターンを有する前記フレークは、アルミニウムを含むかまたはアルミニウムからなり、該フレークのアニーリング中に保存可能な外観および結晶学的構造のうちの少なくとも1つを有し、該保存可能な外観および/または結晶学的構造は、請求項1~5のいずれか一項に記載のとおりである、組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物において、前記フレークのアニーリング中に保存可能な外観および結晶学的構造、前記細長いマーク、前記細長いセルブロック、および前記渦巻きパターンの少なくとも1つを含む少なくとも該フレークは、さらに、以下の構造的特徴、すなわち、
i)前記フレークは、200μm以下、150μm以下、または75μm以下の平面状表面の平均最長長さ、または平均粒子サイズD50を有する、
ii)前記フレークは、50nm以上、250nm以上、または1,000nm以上の平面状表面の平均最長長さ、または平均粒子サイズD50を有する、
iii)前記フレークは、20μm以下、5μm以下、2μm以下、または1μm以下の平均厚さを有する、
iv)前記フレークは、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の平均厚さを有する、
v)前記フレークは、該フレークの平面状表面の平均最長長さ、または平均粒子サイズD50とフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比が、5,000:1以下、1,000:1以下、800:1以下、600:1以下、または400:1以下である、および、
vi)前記フレークは、該フレークの平面状表面の平均最長長さ、または平均粒子サイズD50とフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比が、3:1以上、5:1以上、10:1以上、または20:1以上である、
という構造的特徴の1つ以上を満たす、組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物において、前記フレークのアニーリング中に保存可能な前記外観および前記結晶学的構造、前記細長いマーク、前記細長いセルブロック、および前記渦巻きパターンの少なくとも1つを含む少なくとも該フレークは、請求項17~34のいずれか一項に記載の方法によって生産される、組成物。
【請求項17】
フレークを生産する方法であって、
a.2つの供給シリンダと、少なくとも1つの脆弱化ロッドを、各脆弱化ロッドがフレークを生産するための第1の材料で作られた2つの供給シリンダの間に挟まれる様態で含む脆弱化ロッドアセンブリと、を支持する支持ステップであって、各脆弱化ロッドの直径は、該2つの供給シリンダの初期直径よりも小さく、第1の材料よりも硬い第2の材料で作られている、支持ステップと、
b.前記2つの供給シリンダの表面を各脆弱化ロッドに接触させるステップと、
c.互いに転がり線接触させながら、前記供給シリンダおよび前記脆弱化ロッドを回転させるステップと、を含み、
前記脆弱化ロッドアセンブリの少なくとも1つの脆弱化ロッドは、テクスチャー加工されており、
前記供給シリンダおよび各脆弱化ロッドは、該供給シリンダの表面を脆弱化によって変更するのに十分に大きい接触圧力で互いに押し付けられ、結果として該供給シリンダの該表面から前記第1の材料のフレークを分離させる、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、流体が、回転している各脆弱化ロッドおよび供給シリンダに適用され、該流体は生産されたフレークを取り除く液体または気体である、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、さらに、前記生産されたフレークおよび前記流体を収集するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、さらに、収集された流体から前記生産されたフレークの少なくとも一部を分離するステップを含む、方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載の方法において、前記流体は液体であり、該方法は、さらに、該液体の少なくとも一部を各接触線の少なくとも一部に再循環させるステップを含む、方法。
【請求項22】
請求項18~21のいずれか一項に記載の方法において、前記流体は液体であり、該液体は1つ以上の添加剤を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法において、前記1つ以上の添加剤の少なくとも1つは、前記生産されたフレークの外面を変更し、それによって、該フレークの外面の化学組成が該フレークのコア部分の化学組成とは異なる、方法。
【請求項24】
請求項22または23に記載の方法において、前記1つ以上の添加剤の少なくとも1つは、前記生産されたフレークの生産速度および該生産されたフレークの寸法の少なくとも1つを変更する、方法。
【請求項25】
請求項17~24のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、0.2μmを超える、1μmを超える、2μmを超える、または3μmを超える平均表面粗さ(Ra)を有する、方法。
【請求項26】
請求項17~25のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、前記第1の材料および前記第2の材料とは異なる第3の材料の層または粒子でコーティングされている、方法。
【請求項27】
請求項17~26のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドまたはそのセグメントのテクスチャーは、ランダムである、方法。
【請求項28】
請求項17~27のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドのテクスチャーは、連続的または断続的な突起の反復パターンに従う、方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、少なくとも3μm、少なくとも50μm、または少なくとも100μmであり、また随意的に、最大300μm、最大250μm、または最大200μmの高さDを有する少なくとも1つの連続的な突起または一連の整列した突出部を含み、該突起または突出部は、随意的に頂端に比較的平坦な頂部表面を有し、該頂部表面は、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、または少なくとも200μmであり、また随意的に、最大500μm、最大400μm、または最大300μmの幅Tを有し、該突起または突出部は、随意的に該ロッドの該表面と該頂端との間にテーパー面を有する、方法。
【請求項30】
請求項28または29に記載の方法において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、該脆弱化ロッドの回転軸に対して角度αを形成する少なくとも1つの連続的な突起または一連の整列した突出部を含み、該角度は90°以下であり、また任意で0°~60°の間、2°~50°の間、または5°~45°の間である、方法。
【請求項31】
請求項28~30のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、少なくとも2つの連続的な突起または一連の整列した突出部を含み、ここで、該少なくとも2つの一連の隣接する突起または隣接する突出部の側方端縁間の距離Gは、25μm~300μmの間、または25μm~250μmの間、または25μm~200μmの間である、方法。
【請求項32】
請求項17~31のいずれか一項に記載の方法において、前記脆弱化ロッドアセンブリは2つの脆弱化ロッドを含み、該脆弱化ロッドの少なくとも1つは前記第2の材料で作られ、同一ロッド、またはその他の脆弱化ロッドはテクスチャー加工され、該2つの脆弱化ロッドは同一であるか、または異なっている、方法。
【請求項33】
請求項17~32のいずれか一項に記載の方法において、前記2つの供給シリンダの少なくとも1つは、1つ以上のロッドアセンブリの少なくとも2つの脆弱化ロッドと転がり接触し、該脆弱化ロッドの少なくとも1つはテクスチャー加工されていない、方法。
【請求項34】
請求項17~33のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1つの脆弱化ロッドは、該脆弱化ロッドの回転軸に平行な方向に振動するように構成される、方法。
【請求項35】
アルミニウムを含むかまたはからなる、請求項17~34のいずれか一項に記載の方法によって生産されたアルミニウムフレークであって、前記アルミニウムフレークが、請求項1~16のいずれか一項に記載の少なくとも1つの特徴によって任意にさらに特徴付けられる、アルミニウムフレーク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2020年4月2日に出願された英国特許出願第2004904.5号に基づいており、その優先権を主張するものである。先行する出願全体は、本明細書に完全に記載されているかのように、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。英国特許公開第2593768号に開示されているが本出願には含まれていない事項は放棄されず、出願人はそこに開示された事項を本出願に取り込む権利を留保する。
【0002】
本開示は、金属、セラミック、プラスチックまたはガラスフレークなどのフレークの生産に関する。
【背景技術】
【0003】
薄板状(lamellar)形状を有する粒子は、それらのアスペクト比、すなわち横方向の寸法に対する代表的な平面の寸法の比によって特徴付けられ、アスペクト比が大きいほどフレークは薄くなる。「フレーク(flake)」という用語は、本明細書では、アスペクト比が3:1以上であるが通常は著しく大きい、例えば10:1~100:1を有する薄い平面状粒子を指すために使用される。フレークは様々な分野で抜擢されており、例えば金属フレークは、塗装、印刷、コーティング、電気化学電極、反射板、燃料電池の水素貯蔵デバイス、爆発物、太陽電池、化粧品などの多様な産業で使用され得る。現在生産されている金属フレークの約40%をアルミニウムフレークが占め、銅フレークが約24%、亜鉛またはステンレス鋼フレークがそれぞれ約14%を占め、ニッケルフレークは約8%を占めている。金属フレークに対する需要が高いため、それらの生産が、唯一ではないが、本発明の主要な目的である。
【0004】
金属フレークは、従来、ハンマリング、ボールミル、または物理蒸着(PVD)によって生産される。ハンマー法では、金属板をハンマーで薄くし、フレーク状に加工する。ボールミルは、湿式または乾式で、および低スピードまたは高スピードで行うことができる。ボールミル法の例として、摩砕型(attritor)、振動型、水平型、および遊星型のボールミルが挙げられる。いずれのボールミル法でも、ボール状の粉砕媒体が、最初は球状またはアスペクト比の低い大きな金属粒子とランダムに衝突する。比較的大きな粒子に加えられる圧縮力およびせん断力により、それら粒子は次第に平らになり、フレークになる。物理蒸着では、金属を気化させた後、キャリアに蒸着させる。一旦、金属が凝縮してキャリア上にフィルムとなり、様々な技術を使用してキャリアからフィルムをフレーク状に剥がす(remove)ことができる。
【0005】
ハンマリングまたはボールミルで調製された金属フレークは、比較的厚くなる傾向がある。典型的には、それらはミクロン範囲(例えば、1マイクロメートル(μm)~100μmの間)の厚さを有し、より高級な最終製品はサブミクロン範囲(例えば、25ナノメートル(nm)~1μmの間)の厚さを有する。対照的に、PVDによって調製された金属フレークはより薄く、20nm~100nmの範囲の厚さであり得、30nm~50nmの範囲の厚さのフレークは、特に要求の厳しい産業において視覚効果のために一般的により好まれる。典型的には、PVDで調製されたフレークの平面状表面(planar surface)のトポグラフィは、ボールミルによって調製されたフレークの平面状表面のトポグラフィに比べてより規則的である。したがって、PVDで調製されたフレークは一般に、PVDで生産されていないフレークよりも光沢があり、それらフレークを使用した製品はより高い艶を示し得る。
【0006】
PVDで調製されたフレークは多くの産業用途に好まれているが、その生産方法はより高価であり、多くの製品のコストが極めて高額なものになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、とりわけ、フレークを生産するための費用対効果の高い方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、フレークを生産する方法を提供し、この方法は、
a.2つの供給シリンダと、および少なくとも1つの脆弱化ロッドを、各脆弱化ロッドがフレークを生産するための第1の材料で作られた2つの供給シリンダの間に挟まれる様態で含む脆弱化ロッドアセンブリと、を支持するステップであって、各脆弱化ロッドの直径は、2つの供給シリンダの初期直径よりも小さく、第1の材料よりも硬い第2の材料で作られている、支持するステップと、
b.2つの供給シリンダの表面を各脆弱化ロッドに接触させるステップと、
c.互いに転がり線接触させながら、供給シリンダおよび脆弱化ロッドを回転させるステップと、を含み、
脆弱化ロッドアセンブリの少なくとも1つの脆弱化ロッドは、テクスチャー加工されており、供給シリンダおよび各脆弱化ロッドは、供給シリンダの表面を脆弱化によって変更するのに十分に大きい接触圧力で互いに押し付けられ、結果として供給シリンダの表面から第1の材料のフレークを分離させる。
【0009】
いくつかの実施形態において、流体は、回転している各脆弱化ロッドおよび供給シリンダに適用され、該流体はとりわけ、供給シリンダの脆弱化によって生産されたフレークを取り去るように作用する。そのような実施形態において、該方法は、生産されたフレークと、随意的にそれらを運ぶ流体とを収集することをさらに含む。流体は、液体または気体であり得る。
【0010】
生産されたフレークが流体の一部と共に収集される限りにおいて、該方法は、流体からフレークの少なくとも一部を分離するステップをさらに含み得る。分離するステップは、流体を排出する(例えば、乾燥によって)か、もしくはフレーク(またはその一部)を分離するか、またはその両方を行うことができる。フレークの少なくとも一部を流体から分離するステップは、第1の材料の個々の特性およびそれに対する相対的な親和性(例えば、磁性材料で作られたフレークの分離を補助する磁石)に基づくか、またはより普遍的な特性(密度、サイズなど)に依存して、デカンティング、遠心分離、または濾過によって続行することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、流体は液体であり、方法は、収集されるかまたは分離される液体の少なくとも一部を、各供給シリンダと脆弱化ロッドとの間の各接触線の少なくとも一部に再循環させるステップをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、流体は、1つ以上の添加剤を含む液体である。方法がそのような添加物を補充した液体を再循環させるステップをさらに含む限りにおいて、方法はいくつかの実施形態において、液体中の1つ以上の添加剤のレベルを監視するステップ、および/または1つ以上の添加剤の新たな量を液体に加えて、その任意の所望の量を維持するステップをさらに含み得る。液体への添加剤の添加は、例えば、生産されたフレークを添加剤またはその誘導体でコーティングすることなどによる、プロセス中に「失われた(lost)」添加剤の任意の量を補い得る。通常、添加剤は、フレークを生産するための材料に応じて、以下:固化防止、腐食防止、発泡防止、酸化防止、摩耗防止、または摩擦、潤滑(lubrication)、収縮(traction)、保存、および任意の所望のレオロジーを促進する効果の1つ以上を提供するように選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、本方法で使用されるような液体流体中に存在し得る1つ以上の添加剤の少なくとも1つは、生産されたフレークの外面を、該フレークの外面の化学組成がフレークのコア部分の化学組成とは異なるものとなるように改変することができる。そのような改変は、その意図された用途に関わらず、添加剤の持続的な効果を提供し、例として、酸化に対する長期の保護を提供し得る。付加的にまたは代替的に、そのような改変は、フレークの特定の意図された用途に適合するように仕立てられ得る。例として、フレークが特定の化学環境(液体または固体)内に分散されると仮定すると、フレークの外面は周囲との望ましい相互作用が可能となるように改変できる。非限定的な例として、フレークをアクリル樹脂に組み込む場合、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を添加剤として使用することができる。フレークとその環境との将来的な相互作用を可能にする添加剤は、機能化添加剤と呼ばれる。
【0014】
代替的にまたは付加的に、1つ以上の添加剤の少なくとも1つは、生産されたフレークの生産速度を修正し、方法の他のすべてのパラメーターは同様である。
【0015】
代替的にまたは付加的に、1つ以上の添加剤の少なくとも1つは、生産されたフレークの寸法、例えば、長さ、幅、厚さ、そのような測定値間(例えば、D50で近似されるような平均平面サイズおよび平均厚さ間)のアスペクト比、形状、体積などを変更し、方法の他のすべてのパラメーターは同様である。
【0016】
方法は、N個の供給シリンダおよび、任意の2つの隣接する供給シリンダの間に挟まれた(N-1)個の脆弱化ロッドアセンブリによって、または前のアセンブリに対向する(opposed to)供給シリンダの同じ側にそれぞれ隣接するN個の脆弱化ロッドアセンブリによって、または各供給シリンダが任意の2つの隣接したロッドアセンブリの間に挟まれた、(N+1)個の脆弱化ロッドアセンブリによって実施することができる。さらに、各脆弱化ロッドアセンブリは、1つまたは2つの脆弱化ロッドを含み得る。したがって、多くの場合、本方法は、少なくとも1つの供給シリンダが(該シリンダの反対側に位置する同じまたは異なるロッドアセンブリの)少なくとも2つの脆弱化ロッドと接触している状態で実施することができる。これらの少なくとも2つの脆弱化ロッドは同じでも異なっていてもよく、脆弱化ロッドの一方は第2の材料で作られ、同じロッド、または他方はテクスチャー加工されている。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの供給シリンダが、1つ以上のロッドアセンブリの少なくとも2つの脆弱化ロッドと転がり接触している場合、脆弱化ロッドの少なくとも1つはテクスチャー加工されていない。
【0017】
いくつかの実施形態において、テクスチャー加工されているロッドアセンブリの少なくとも1つの脆弱化ロッドは、0.2μmを超える、1μmを超える、2μmを超える、または3μmを超える平均表面粗さ(Ra)である外面を有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、第1の材料および第2の材料とは異なる第3の材料の層または粒子でコーティングされている。
【0019】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドまたはそのセグメントのテクスチャーは、ランダムである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドまたはそのセグメントのテクスチャーは、連続的または断続的な突起の反復パターンに従う。
【0020】
少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドまたはそのセグメントのテクスチャーが反復パターンに従う場合、それは、少なくとも3μm、少なくとも50μm、または少なくとも100μmであり、また任意で、最大300μm、最大250μm、または最大200μmの高さDを有する少なくとも1つの連続的な突起または一連の整列した突出部を含むことができる。いくつかの実施形態において、該突起または突出部は、随意的に頂端に比較的平坦な頂部表面を有し、該頂部表面は、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、または少なくとも200μmであり、また随意的に、最大500μm、最大400μm、または最大300μmの幅Tを有し、該突起または突出部は、随意的に該ロッドの該表面と該頂端との間にテーパー面を有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、テクスチャー加工された脆弱化ロッドの少なくとも1つの連続的な突起または一連の整列した突出部は、該脆弱化ロッドの回転軸に対して角度αを形成し、該角度は90°以下であり、また任意で0°~60°の間、2°~50°の間、または5°~45°の間である。
【0022】
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドは、少なくとも2つの連続的な突起または一連の整列した突出部を含み、少なくとも2つの一連の隣接する突起または隣接する突出部の側縁間の距離Gは、25μm~300μmの間、または25μm~250μmの間、または25μm~200μmの間である。
【0023】
供給シリンダおよび脆弱化ロッドは、それらの少なくとも1つを、供給シリンダおよびロッドを互いに摩擦接触させて駆動できるそれぞれのモーターに接続することによって回転させることができる。いくつかの実施形態において、各供給シリンダは、それぞれのモーターと関連し得る。モーターは、供給シリンダの外径が作動中に縮径する(reduce)につれ、そのモーターに関連する供給シリンダの軸間の相対運動に順応するように支持され得る。
【0024】
供給シリンダおよび脆弱化ロッドの回転スピードは、互いに接触する表面の速度が一致するようになり得る。あるいは、脆弱化ロッドと供給シリンダとの接触面の間の相対速度を許容するか、または誘導することさえできる。例えば、±10%の相対速度は、駆動モーターに接続されていないロッドまたはシリンダにブレーキ力を印加することによって、または複数のモーターを備える配置でモーターを様々なスピードで操作することによって引き起こすことができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、片側のみで脆弱化ロッドアセンブリと接触する供給シリンダと接触する支持シリンダをさらに設けることができ、該支持シリンダは供給シリンダの反対側に押し付けられる。そのような場合、支持シリンダは、フレークを生産するための第1の材料よりも硬い第4の材料で作ることができる。
【0026】
供給シリンダは、A)支持シャフトおよび供給スリーブで構成され、該支持シャフトは、支持に適した構造体に摺動可能に取り付けられた一対の軸受けに軸支されているか、または、B)その端面に中央凹部を有するシリンダで構成され、該凹部は、それぞれが支持に適した構造体の側面に摺動可能に取り付けられた、一対の心押し台の間に該シリンダを維持するのに役立つ。支持シリンダは、存在する場合、同様に構成することができ、スリーブまたはシリンダの材料は支持に適している。
【0027】
本開示のさらなる態様では、第1の材料で作られた複数のフレークを含む組成物を提供し、この組成物は、該フレークは端縁表面寸法より大きい平面状表面寸法を有し、ここで、該フレークの(数で)少なくとも2%は、フレークの平面状表面上に少なくとも3つの細長いマークを含み、前記少なくとも3つの細長いマークの任意の2つの隣接するマークは、互いに30°以下だけずれているそれぞれの長手方向の配向(向き)を有し、各フレークについて正規化された好ましい細長いマークの配向から前記マークの長手方向の配向のずれが25°以下であり、ここで、該フレークは、第1の材料とは、および周囲の酸素環境との接触時にフレークの表面に自然に形成され得るその自然酸化物とは性質または程度が異なる第2の材料でコーティングされている。
【0028】
いくつかの実施形態において、細長いマークを含むフレークの各細長いマークは、平均深さおよび平均幅によって特徴付けられ、2つの隣接する各細長いマークは、対のそれぞれの端縁間の平均距離によって特徴付けられ、これらのフレークは、以下の構造的特徴、すなわち、
a)細長いマークの少なくとも一部は、25nm以下の平均深さを有する;
b)細長いマークの少なくとも一部は、マークを含むフレークの平均厚さの20%以下の平均深さを有する、
c)細長いマークの少なくとも一部は、20nm以下の平均幅を有する、
d)細長いマークの少なくとも一部は、マークを含むフレークの平均厚さの5%以下の平均幅を有する、
e)隣接する細長いマークの対の少なくとも一部は、2μm以下の平均距離を有する、
という構造的特徴の1つ以上によってさらに特徴付けられる。
【0029】
平面状表面上に細長いマークを含むフレークは、通常、金属、プラスチック、セラミック、もしくはガラス材料を含むか、またはそれらからなる。いくつかの実施形態において、これらのフレークは、アルミニウム、真鍮、青銅、銅、金、グラファイト、リチウム、ニッケル、銀、ステンレス鋼、鋼、スズ、および亜鉛を含む群から選択される金属または合金で作られている。そのようなフレークは、金属フレークと呼ばれることがある。特定の実施形態において、細長いマークを有するフレークを含む組成物の金属フレークは、アルミニウム(Al)で作られている。
【0030】
本開示のさらなる態様では、金属を含む、または金属からなる複数の金属フレークを含む組成物であって、該金属フレークは、端縁表面寸法より大きい平面状表面寸法を有し、ここで、該金属フレークの(数で)少なくとも2%は、該金属フレークの平面状表面に少なくとも2つのセルブロックを含み、前記少なくとも2つのセルブロックは細長い、組成物が提供される。
【0031】
各細長いセルブロックは、それぞれ長手方向のセルバンド配向(cell band orientation)を有し、いくつかの実施形態において、任意の2つの隣接する細長いセルブロックは、互いに30°以下だけずれているセルバンド配向を有する。同じフレークのすべてのセルブロックの長手方向のセルバンド配向を平均することで、フレークの好ましいセルバンド配向を定義でき、これは正規化された配向と呼ばれる。場合によっては、フレークの任意のセルバンドの長手方向の配向と正規化された配向との間のずれは、25°以下である。細長いセルブロックを提示する金属フレークは、平面状表面上に細長いマークをさらに示し得る。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの細長いセルブロックを含む金属フレーク、および随意的にそれらの平面状表面上の少なくとも3つの細長いマークをさらにコーティングすることができ、コーティングの組成物は、フレークのコア部分の金属材料、および自然に形成されるフレークの自然酸化物とは異なる。
【0032】
いくつかの実施形態において、細長いセルブロックを含む金属フレークは、アルミニウム、真鍮、青銅、銅、金、グラファイト、リチウム、ニッケル、銀、ステンレス鋼、鋼、スズ、および亜鉛から選択される金属または合金で作られている。特定の実施形態において、細長いセルブロックを有するフレークを含む組成物の金属フレークは、アルミニウムで作られている。
【0033】
本開示のさらなる態様では、金属を含む、または金属からなる複数の金属フレークを含む組成物を提供し、この組成物は、該金属フレークは、端縁表面寸法より大きい平面状表面寸法を有し、ここで、該金属フレークの(数で)少なくとも2%は、該金属フレークの平面状表面に少なくとも1つの渦巻き(swirling)パターンを備える。
【0034】
いくつかの実施形態において、渦巻きパターンを備える金属フレークは、フレークのコア部分の金属材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でコーティングされる。特定の実施形態において、渦巻きパターンを有するフレークを含む組成物の金属フレークは、アルミニウムで作られている。
【0035】
理論に束縛されることを望むものではないが、金属フレークの平面状表面における細長いセルブロックまたは渦巻きパターンの存在は、材料の比較的結晶質の構造から比較的転位した構造への移行に一致するものと考えられる。このような移行は、生産されるフレークの厚さが、フレークの生産に至った供給シリンダの脆弱化によって生成された粒子サイズよりも小さい場合に発生する可能性があると考えられている。例として、同じ材料のフレークは、50nmを超える厚さでセルバンドを提示する場合があるが、より薄い厚さでは渦巻きパターンを提示する場合がある。フレーク化する金属材料およびフレーク化の状態ごとに、セルバンドの比較的非晶質な配向間または組織化された配向間における閾値の厚さは変化し得るが、一般的にはナノメートル範囲の下限にある(例えば、約50nm以下、40nm以下、または30nm以下)。そのような閾値に近い平均厚さを有するフレークの集団において、それぞれが異なるタイプの面内(intra-planar)パターンを示す部分集団が見出され得る。
【0036】
本開示のさらなる態様では、金属を含む、または金属からなる複数の金属フレークを含む組成物を提供し、この組成物は、該金属フレークの数にして少なくとも2%は結晶学的構造を有し、該結晶学的構造は、随意的にフレークのアニーリング中に保存可能であり、アニーリングの前後でほぼ類似している保存された結晶学的構造は、a)顕微鏡分析によって検出可能な結晶学的構造であって、細長い条痕(striations)、細長いセルブロック、および渦巻きパターンからなる群から選択される、結晶学的構造、およびb)X線回折(XRD)によって検出可能な結晶学的構造であって、回折ピークの位置、特定の位置での回折ピークの相対強度、および2つの特定の位置での任意の2つの回折ピーク間の比からなる群から選択される、結晶学的構造のうちの1つである。
【0037】
いくつかの実施形態において、保存可能な結晶学的構造、またはアニーリング後に評価された場合の保存された構造は、適切な顕微鏡分析によってフレークの平面状表面で検出できる細長いセルブロックを含む。いくつかの実施形態において、そのような保存可能なまたは保存された結晶学的構造を示す金属フレークは、アルミニウムを含むか、またはアルミニウムからなる。
【0038】
他の実施形態において、本方法に従って調製された金属フレークは、代替的または追加的に、XRD分析によって検出可能な特徴によって特徴付けることができる。ピークの相対強度は、10~157°のスペクトルスキャンで検出可能なすべての回折ピークのパーセンテージとして計算できる。アルミニウム製のフレークについて検出可能なピークは、とりわけ、面方位<111>に対応する第1の回折ピークについて約38.56°で、面方位<200>に対応する第2の回折ピークについて約44.81°で発見することができる。いくつかの実施形態において、第1の回折ピーク(すなわち<111>)の相対強度と第2の回折ピークの相対強度(すなわち<200>)との間の比(本明細書ではXRDRatioと呼ばれる)は、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、または0.80以上のアルミニウムフレークに対してである。いくつかの実施形態において、XRDRatioは、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.75以下、または1.70以下となり得る。いくつかの実施形態において、XRDRatioは、0.40~2.00の間、0.45~1.75の間、0.50~1.70の間、または0.80~1.70の間である。
【0039】
いくつかの実施形態において、金属フレークはさらに、フレークのアニーリング中に保持できる外観を示す。その外観は、光学特性の評価に適した任意の機器で検出できる。検出可能な外観は、さらに保存可能であり得、フレークの光学密度、光沢度またはヘイズ値であり得る。
【0040】
上述の態様のいずれかによる組成物のフレークであって、該フレークの少なくとも2%が、細長いマーク、細長いセルブロック、および渦巻きパターンのうちの少なくとも1つをそれらの平面状表面上に含み、該フレークのアニーリング後にさらに随意的に保存され得る外観および/または結晶学的構造を随意的に有する、フレークは、場合によっては、さらに以下の構造的特徴、すなわち、
i)フレークは、200μm以下、150μm以下、または75μm以下の平面状表面の平均最長長さを有する、
ii)フレークは、50nm以上、250nm以上、または1,000nm以上の平面状表面の平均最長長さを有する、
iii)フレークは、50nm~200μmの間、250nm~150μmの間、または1,000nm~75μmの間の平面状表面の平均最長長さを有する、
iv)フレークは、20μm以下、5μm以下、2μm以下、または1μm以下の平均厚さを有する、
v)フレークは、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の平均厚さを有する、
vi)フレークは、10nm~20μmの間、20nm~5μmの間、30nm~2μmの間、または30nm~1μmの間の平均厚さを有する、
vii)フレークの平面状表面の平均最長長さとフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比は、5,000:1以下、1,000:1以下、800:1以下、600:1以下、または400:1以下である、
viii)フレークの平面状表面の平均最長長さとフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比は、3:1以上、5:1以上、10:1以上、または20:1以上である、および
ix)フレークの平面状表面の平均最長長さとフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比は、3:1~5,000:1の間、5:1~1,000:1の間、10:1~800:1の間、20:1~600:1の間、または20:1~400:1の間である、
構造的特徴のうち1つ以上を満たすことができる。
【0041】
いくつかの実施形態において、フレークの平面状表面を特徴付ける寸法は、生産されたフレークの集団の50%の流体力学的直径によって見積もられる。このような場合、フレークの平面状表面の平均最長長さは、D50値で近似できる。いくつかの実施形態において、フレークを特徴付ける端縁表面の寸法は、その厚さであり得るもので、その平均は、フレーク断面の顕微鏡分析によって見積もることができる。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書で報告されているように、細長いマーク、細長いセルブロック、および渦巻きパターンのうちの少なくとも1つを平面状表面上に含むフレークであって、該フレークのアニーリング後にさらに随意的に保存され得る外観および/または結晶学的構造を随意的に有する、フレークは、さらに、以下の構造的特徴、すなわち、
i)フレークは、200μm以下、150μm以下、または75μm以下のD50を有する、
ii)フレークは、50nm以上、250nm以上、または1,000nm以上のD50を有する、
iii)フレークは、50nm~200μmの間、250nm~150μmの間、または1,000nm~75μmの間のD50を有する、
iv)フレークは、20μm以下、5μm以下、2μm以下、または1μm以下の平均厚さを有する、
v)フレークは、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の平均厚さを有する、
vi)フレークは、10nm~20μmの間、20nm~5μmの間、30nm~2μmの間、または30nm~1μmの間の平均厚さを有する、
vii)フレークは、D50とフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比が、5,000:1以下、1,000:1以下、800:1以下、600:1以下、または400:1以下である、
viii)フレークは、D50とフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比が、3:1以上、5:1以上、10:1以上、または20:1以上である、および
ix)フレークは、D50とフレークの平均厚さとの間の平均アスペクト比が、3:1~5,000:1の間、5:1~1,000:1の間、10:1~800:1の間、20:1~600:1の間、または20:1~400:1の間である、
構造的特徴の1つ以上を満たすことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、前述のD50値は粒子の体積によって確立され、そのような場合、D50はD50に対応する。
【0043】
いくつかの実施形態において、フレークの保存可能なまたは保存された結晶学的構造は、フレークの寸法を確立するために使用される方法に関わらず、20nm~1,000nmの間、25nm~800nmの間、30nm~500nmの間、30nm~250nmの間、30nm~200nmの間、30nm~150nmの間、または30nm~100nmの間の範囲の厚さを有するフレークで検出される。
【0044】
本方法によって生産されるフレークの特徴は簡潔にするために個別に示されているが、フレークが各特徴を示すことができる材料製である場合、それらの組み合わせは明示的に包含される。
【0045】
本開示のさらなる態様では、細長いマーク、細長いセルブロック、および渦巻きパターンのうちの少なくとも1つをその平面状表面上に含むフレークの少なくとも2%を含む組成物であって、該フレークは、さらに随意的に該フレークのアニーリング後に保存され得る外観および/または結晶学的構造を有し、該フレークは、本教示による方法によって生産され、それに応じて特徴付けられる、組成物が提供される。これらのフレークが、該フレークのコア部分の第1の材料およびその自然酸化物とは異なる第2の材料でさらにコーティングされる場合、そのようなコーティングは、生産されたフレークを第1の材料で作られた供給シリンダから取り除く液体中に含まれる適切な添加剤を選択することによって達成することができる。
【0046】
本開示のさらなる態様では、上記で簡単に説明し、本明細書でさらに詳述するように、本教示に係る方法によって生産され、それに応じて特徴付けられるアルミニウムフレークが提供される。本明細書に開示される特徴のフレークが少なくとも(数で)2%存在することは、そのような特徴がほとんど存在しない従来のフレークを、本方法によって調製されたフレークと区別するのに重要かつ十分であるとみなされるが、いくつかの実施形態において、フレークの集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも30%(数で)が考慮されている特徴(例えば、条痕のパターン、細長いセルバンド、渦巻きパターン、寸法、保存可能な外観、結晶学的構造およびその安定性など)を示す。いくつかの実施形態において、考慮されているフレークの大部分は、それらの平面状表面の少なくとも1つまたはそれらの平面層に、考慮された特有の特徴を示し得る。
【0047】
現在開示されている主題の付加的な目的の特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載されており、その一部は、説明から当業者に容易に明らかとなるか、または書面による説明および特許請求の範囲、ならびに添付の図面に記載されているように、現在開示されている主題を実践することによって認識されるであろう。現在開示されている主題の実施形態の様々な特徴およびサブコンビネーションは、他の特徴およびサブコンビネーションを参照することなく採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付の図面を参照して、いくつかの実施形態を例としてさらに説明するが、ここで、同様の参照符号または文字は、対応するまたは同様の構成要素および/または段階を示す。図面とともに説明されることで、当業者に対して、現在開示されている主題のいくつかの実施形態がどのように実施され得るかが明確になる。図面は、例示的な議論を目的としており、現在開示されている主題の根本的な理解に必要である以上に詳細に実施形態の構造上の詳細を示す試みを目的としていない。表現を明確にし、また便宜を図るため、図に示されているオブジェクトの一部は、必ずしも一定の縮尺で示されているわけではない。
図1】本発明の方法のいくつかの実施形態を実施することを可能にするフレーク生産装置の概略図である。
図2】単一のロッドを有する脆弱化ロッドアセンブリを用いて本方法のいくつかの実施形態を実施することを可能にする、図1に示される装置の簡略化された代替図である。
図3図2の単一のロッドを有する脆弱化ロッドアセンブリが2つのロッドを有するそれに置き換えられた別の実施形態を示す図である。
図4】3つ以上の供給シリンダと、それらの間に挟まれた2つ以上の脆弱化ロッドアセンブリとを用いて方法が実施され、各アセンブリが単一のロッドを有する別の実施形態を示す図である。
図5図4の単一のロッドを有する脆弱化ロッドアセンブリが、2つのロッドを有するそれに置き換えられた別の実施形態を示す図である。
図6】フレーク生産方法の開始時における供給シリンダの平面図を概略的に示す図である。
図7】フレーク生産方法の開始からその後の時点における供給シリンダの平面図を概略的に示す図である。
図8図8A、8Bおよび8Cは、供給シリンダの3つの考えうる構造を示す。
図9A】本発明の一実施形態において脆弱化ロッドの表面にどのようにパターニングを施すことができるかを示す図である。
図9B図9Aの例示的な螺旋溝の別の断面を示す図である。
図10】本開示の主題のいくつかの実施形態に係るフレークを生産する方法のフローチャートを示す。
図11A】本開示の主題のいくつかの実施形態による、細長いセルブロックを含むフレークの表面の内部構造の画像である。
図11B】便宜上、図11Aと同じものの部分的な図解を表す。
図12A】本開示の主題のいくつかの実施形態による、細長いマークを含むフレークの表面の外部構造の画像である。
図12B】便宜上、図12Aと同じものの部分的な図解を表す。
図13A】本開示の主題のいくつかの実施形態による、渦巻きパターンを含むフレークの表面の内部構造の画像である。
図13B】便宜上、図13Aと同じものの部分的な図解を表す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
[概要]
図1は、フレークを生産するために本開示で使用される方法を説明する装置100の一部分の概略図である。装置100は、フレークを生産するための材料で作られた2つの供給シリンダ22と、それらの間に挟まれた単一の脆弱化ロッド34を含む脆弱化ロッドアセンブリと、を備える。供給シリンダのフレーク化される材料は「第1の材料」とも称することができるとともに、脆弱化ロッドを形成する材料は「第2の材料」とも称することができる。矢印30および33によって概略的に示される支持構造体は、供給シリンダ22をそれらの軸が互いに平行になるように保持し、また、脆弱化ロッド34をその軸が2つの供給シリンダ22の軸と同じ平面内にあるように保持し、その平面は図では点線36によって表されている。このように支持されている一方、供給シリンダ22は、図面に矢印30で示すように互いに向かって付勢され、それらの間で脆弱化ロッド34を圧縮し、それらは矢印20で示される方向に同時に回転し、その結果、図面では参照符号15で示され、本明細書ではニップ(nip)とも称される、各供給シリンダ22と脆弱化ロッド34との間の接触領域で転がり接触が行われる。この図ではシリンダおよびロッドは上下に垂直に配置されているが、配向は重要ではなく、あるいは、以下に示すように、水平に並べて配置することもできる。
【0050】
脆弱化ロッド34の直径が小さいため、小さな接触領域15を超えて供給シリンダ22に大きな力が印加され、結果として生じる圧力は、供給シリンダ22の表面で第1の材料の結晶構造を攪乱して弱めるのに十分である。供給シリンダ22が回転するにつれて、この圧力の印加および除去が繰り返され、それらの表面が脆弱化し、そしてフレーク状になる。
【0051】
脆弱化ロッド34の表面が同時にフレーク化するのを避けるために、脆弱化ロッドは第1の材料よりも硬い第2の材料で作られるべきである。例えば、供給シリンダ22が金属(例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレス鋼、亜鉛など)で作られている場合、脆弱化ロッド34は、セラミック材料(例えば、タングステンカーバイド)または、より硬い同じもしくは異なる金属(例:ステンレス鋼)で作られていてよい。
【0052】
図2は、本開示のフレークの生産方法を実施することができる装置100Aのさらに簡略化された概略図である。供給シリンダ22およびアセンブリの脆弱化ロッド34の回転軸が見出される平面は、図1の垂直の代わりに、この図面では水平の点線36によって表される。該方法は、その実装用の装置を便利に構築できる平面の任意な他の適切な配向で実施することができる。分かりやすくするために、シリンダおよびロッドを回転させるための支持構造および手段(モーターなど)は省略されており、付勢(urging)機構(油圧または空気圧ピストンなど)は矢印30により象徴的に表されている。
【0053】
生産されたフレークを収集するために、流体、好ましくは液体が供給シリンダ22およびロッド34のいずれかに適用され、それらの回転により流体がニップ15に導かれる。生産されたフレークを収集する手段として機能する以外に、液体は、潤滑および冷却などの他の目的にも機能し得る。後で詳述する実施形態において、流体は、本方法を向上させることができる添加剤を含み得る。
【0054】
矢印40は、ニップの少なくとも一部にそのような流体を適用するためのデバイスを表す。流体(およびその中のフレーク)は、収集器50に収集することができる。フレークまたはその一部は、随意的に、適切な分離器60内で流体から分離することができ、そこから、必要に応じて、適用されるリサイクル経路70を介して、ニップの少なくとも一部に再利用することができる。ステップの順序(およびそれらの実装を可能にするデバイス)は重要ではなく、例えば、流体自体を収集する前または収集せずに、最初にフィルタを通過させて所望のフレークを分離することができ、ろ過後に直接再利用され得る。その後、供給シリンダの表面から流体によって運ばれるフレークのほんの一部であり得る流体(例えば、液体)から分離された粒子状物質を収集することができる。
【0055】
図2の装置100Aに示されるように供給シリンダの軸を含む平面内にその軸を有して位置する単一のロッド34を備える脆弱化ロッドアセンブリの代わりに、図3の装置100Bに示されるように、供給シリンダ22の軸の平面36の上方および下方にそれぞれ配置された2つのロッド34aおよび34bを備え得る。明確にするために、圧縮機構30、流体アプリケーター40、収集器50、および任意の分離器60および再利用経路70を表す記号は、この概略図から省略されている。
【0056】
商業生産により適しているが、上記と同じ原理で動作する方法は、図4および図5に概略的に示されているように、より大きな装置で実装でき、ここで、図2および図3に概略的に示される供給シリンダおよび供給ロッドアセンブリのセットは、「反復(繰り返)され(repeated)」る「基本単位(elementary units)」として機能することができる。明確にするために、支持構造、駆動モーター、および付勢機構は示されていない。
【0057】
図4および図5は、それぞれの回転軸が同じ平面内にあり、脆弱化ロッドアセンブリ(1つまたは2つのロッドを含む)が互いに面する任意な2つの供給シリンダの間に配置されている複数の供給シリンダ22を示す。後で詳述するように、脆弱化ロッド34、34’、34’’、34a、34b、34’a、34’b、34’’a、および34’’bは、同じである必要はない。いくつかの実施形態において、供給シリンダ22は、少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッド34によって接触される。これらの図に示されるように、装置100Cまたは100Dの供給シリンダの列の末端シリンダ22aおよび22dは、(ロッドアセンブリとは反対側で)支持面にさらに接触することができ、これは図面では任意の支持シリンダ32aおよび32aによって表される。
【0058】
装置100Cおよび100Dは、4つの供給シリンダ22aから22d、および3つ~6つの脆弱化ロッド34を共に含む3つの脆弱化ロッドアセンブリを備えて示されているが、本発明の方法は、任意の適切な数Nの供給シリンダを用いて実施することができる。脆弱化ロッドアセンブリが2つの隣接する供給シリンダの間にのみ配置されている場合、該方法は(N-1)のアセンブリを用いて実施できる。しかしながら、ロッドアセンブリは代替的に、1つ以上の末端の供給シリンダの両側に追加的に見られるため、上記は必須ではない。このような場合、該方法は脆弱化ロッドのN個のアセンブリを用いるか、またはそれぞれ1つまたは2つのロッドである(N+1)個のアセンブリを用いて実施できる。
【0059】
前述のすべての実施形態において、支持構造は、各脆弱化ロッド34が供給シリンダ22の軸の平面36に垂直な平面内において移動しないことを保証しなければならない。
【0060】
図1および図2において、供給シリンダ22は、図面の矢印30に平行な反対方向に同時に印加される力によって、その間で脆弱化ロッド34を圧縮しながら互いに向かって付勢されるが、必ずしもそうであるとは限らない。単一の方向(例えば、図1では上向きまたは下向き、または図2では左または右)に力を印加することができ、任意で、供給シリンダおよびそれらの間に挟まれた脆弱化ロッドアセンブリを支持面に押し付ける。このような場合、支持面が図4および図5の32aおよび32bで示される支持シリンダであると仮定すると、あるいは、供給シリンダまたは脆弱化ロッドの少なくとも一方を回転させる代わりに、駆動モーターを使用して支持シリンダを回転させることができる。
【0061】
装置100の残りの部分(装置100A~100Dでさらに例示されるように)は、本方法の実施を可能にするために以下の機能を実施する必要がある。
I.装置は、上述のように、供給シリンダ22を、それらの軸が互いに向かって動くことを可能にしながら回転できる様態で支持するための支持構造体を含むべきである。
II.支持構造体は、平面36に垂直な平面内で脆弱化ロッドおよびそのアセンブリが移動するのを防ぎながら、脆弱化ロッド34およびそのアセンブリを支持すべきである。
III.装置は、供給シリンダ22を互いに向かって付勢するための機構を含むべきである。
IV.装置は、供給シリンダ、脆弱化ロッドおよび/または支持シリンダ(存在する場合)の少なくとも1つを回転させるための1つ以上の駆動モーターを含むべきである。
【0062】
なお、本装置はフレークの商業的生産を目的としているため、供給シリンダの表面の脆弱化により運転中に発生するフレークを収集するためのシステムが必要である。そのような収集は、生産されたフレークの少なくとも一部を流体から分離する前および/またはその後に行うことができる。
【0063】
図6は、動作開始時の図4または図5の供給シリンダ22a~22dの列の平面図を示し、図7は、供給シリンダの材料がかなり消費された後の同様の図である。供給シリンダは、中央シャフトの直径のような最小直径に達すると、消尽されたと見なされる。これらの図から、支持シリンダ32aおよび32bは、フレークの生産中に直径が縮小されていないことが分かる。
【0064】
図6および図7では、端部供給シリンダ22aおよび22dと隣接する支持シリンダ32aおよび32bとの間に脆弱化ロッドがないことが分かる。この場合、中間供給シリンダ22bおよび22cは、それぞれが1つだけではなく2つの脆弱化ロッド(またはそれぞれ2つのロッドを有する2つのロッドアセンブリ)と接触しているため、端部供給シリンダ22aおよび22dよりも早く消耗する。容易に理解されるように、シリンダの列内の供給シリンダの相対位置を変更して、それらの1つが消尽される前に確実にそれらが同様に消費されるようにすることが可能である。あるいは、端部供給シリンダと支持シリンダとの間に脆弱化ロッドを設けることも可能であるが、支持シリンダ32a、32bの表面が同時にフレーク化されないことを保証するために材料を選択する際には注意をしなければならない。例えば、供給シリンダがアルミニウム製である場合、脆弱化ロッドは炭化タングステン製であり、支持シリンダはステンレス鋼製であってよい。
【0065】
これらの図面は、供給シリンダの列が両端部における支持シリンダの間に維持され得ることを示しているが、そのようなアセンブリに限定される、と解釈される必要がないことを強調しておく。供給シリンダの列は、その端部の1つだけで支持されているか、または支持シリンダがない場合がある。供給シリンダまたは脆弱化アセンブリの軸方向端部に圧力を印加することができ、供給シリンダの列は、供給シリンダ22または脆弱化ロッド34(または一対のロッドのアセンブリ)によって、その端部のそれぞれで「終端処理(terminated)」され得る。このような場合、支持シリンダが列の端部にない場合、末端(terminal)要素(例えば、供給シリンダ22または脆弱化ロッド34)の軸は、末端要素が、それに押し付けられる列の他の要素(例えば、供給シリンダ)に対する支持体としてさらに機能できるように維持されるべきであり、該末端要素は、列の要素の表面以外の表面に接触しない。例えば、末端要素が脆弱化ロッドアセンブリである場合、該アセンブリは、一方の側でのみ供給シリンダに接触し、正反対側には何も接触しないように維持される必要がある。
【0066】
供給シリンダ、脆弱化ロッド、および支持シリンダ(存在する場合)は、図示されていない支持構造体に摺動可能に取り付けることができる。例えば、回転軸の端部をガイドフレームに摺動可能に取り付けることができ(例えば、キャリッジの軸受けを介して)、シリンダおよびロッドの少なくとも1つがモーターによって駆動されるため、シリンダおよびロッドを自由に回転させることができ、図2から図7に示すように、一方を他方に向かってX方向に自由に移動させる一方で、それらは付勢されて接触し、フレーク化の結果として供給シリンダの直径は時間の経過とともに減少する。油圧または空気圧ピストンを使用して、2つの支持シリンダ32aおよび32bの間の供給シリンダ22a~22dの列全体を圧縮することができる。アセンブリの最後のシリンダまたはロッドは、それに押し付けられる他のすべてのものに対する支持体として機能し、回転のみを許し、かつX方向の変位を許さないように、支持構造体に係止(anchored)できる。
【0067】
本開示の方法を実装することができる装置の概要を上記で提供したので、次に、装置の異なる構成要素を個別に検討する。そのような構成要素は、より硬い脆弱化ロッド34に押し付けられた供給シリンダ22の反復サイクルにより、供給シリンダの表面がフレーク剥離するのに十分なほど脆弱化する結果となる方法の様々な実施形態を理解するのに必要な範囲でのみ、詳述される。
【0068】
[供給シリンダ]
供給シリンダは、金属、セラミック、プラスチック、またはガラス材料など、フレーク化される任意な材料から作られ得る。本明細書で使用される場合、金属という用語は、純金属、合金、半金属、複合体、または1つ以上の金属元素を含む任意な他の組み合わせを指し得る。そのような金属から作られたフレークは、金属フレークまたは金属製のフレークと称することができる。
【0069】
いくつかの実施形態において、供給シリンダは、アルミニウム、真鍮、青銅、銅、金、グラファイト、リチウム、ニッケル、銀、ステンレス鋼、鋼、スズ、および亜鉛を含む群から選択される金属、または、アルミナ、方解石、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、石英、黒曜石、およびタルクを含む群から選択されるセラミック、を主に含む材料を含み得る。いくつかの特定の実施形態において、供給シリンダは、主にアルミニウム(例えば、Al 1050、Al 1100、Al 1199、アルミニウム1xxxシリーズの別の部材、(xは任意の有効数字)、Al 2024、Al 6061、Al 7075、Al A356、Al A4047またはAl RSP)を含む材料、または、主にステンレス鋼(例えば、ステンレス鋼 17-4 PH(登録商標)、ステンレス鋼 304、またはステンレス鋼 303)を含む材料、を含み得る。さらなる実施形態において、供給シリンダは、プラスチック材料(例えば、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK))などの熱可塑性ポリマー)、またはセラミック材料(例えば、石英)から作られ得る。本明細書において、主成分を含む材料への言及は、成分が材料の主要部分を構成することを意味し、合金、共重合体、または複合材料用の材料組成の50重量%未満であってもよいが、典型的には、材料組成のうちの少なくとも55重量%、少なくとも60重量%、少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも99重量%または100重量%など、少なくとも50重量%である。簡素化すると、特定の成分(例えば、原子、分子、もしくはポリマー)を含む(例えば、約95重量%まで)または、からなる(例えば、≧95重量%もしくは≧99重量%)材料は、あるいは、その成分で作られている、と呼ばれる。同様に、フレークの重量に関して評価されるような成分を含むまたは成分からなるフレークは、その成分から作られていると言うことができ、またはその成分の名前によって言及することができる。例として、アルミニウム製のフレークは、アルミニウムフレークとも呼ばれる。
【0070】
図8Aに示されるように、各供給シリンダは、フレーク化されるシリンダの本体から横方向に延在する軸を一体的に組み込むことができ、横方向への延在部は装置の構造によって支持される。あるいは、図8Bに示すように、供給シリンダは、支持シャフトおよび供給スリーブから構成されてもよい。図8Cに示す別の代替例では、供給シリンダは、その端面に中央凹部を有するシリンダで構成することができ、凹部は、それぞれが支持構造体の側面に摺動可能に取り付けられた一対の心押し台(tailstocks)の間にシリンダを維持するのに役立つ。
【0071】
[脆弱化ロッド]
供給シリンダの材料に応じて、各脆弱化ロッド34は、供給シリンダの第1の材料よりも硬い第2の材料から作られ得る。
【0072】
脆弱化アセンブリが2つの脆弱化ロッドを含む場合、それらは同一である必要はない。例えば、脆弱化ロッドの一方が第2の材料で作られている場合、他方の脆弱化ロッドが異なる材料で作られていてもよい。代替的または追加的に、アセンブリの各脆弱化ロッドの外面も異ならせ、脆弱化ロッドのそれぞれの同一もしくは異なる第2の材料、および/または同一もしくは異なるテクスチャーが、本明細書でさらに詳細に説明されるようなものにし得る。本方法は、一実施形態において、フレークの生産のために少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドを使用することを特徴とする。
【0073】
2つの異なる脆弱化ロッドが同一ロッドアセンブリ内で見られることがあり、例えば、一方のロッド34aは比較的研磨されており、他方のロッド34bは比較的テクスチャーが付けられている(例えば、より粗い外面を有する、またはパターン化されている)ことがあるが、脆弱化ロッド間の相違は、単一のロッドから構成されるロッドアセンブリで同様に実施できることに留意されたい。例示として、供給シリンダの列の平面図を示す図6の供給シリンダ22bを考慮すると、その左側のロッド34は、その右側のロッド34’とは異なり得る(例えば、異なる材料で作られ、および/または外面の異なるテクスチャーを有する、ロッドの少なくとも1つがテクスチャー加工されている)。
【0074】
同一供給シリンダの正反対側に異なる脆弱化ロッドが存在するという同様の原理は、2つのロッドのロッドアセンブリでも実現でき、この場合、異なるロッドを同じアセンブリの同じ側に存在させる必要はないが、供給シリンダによって分離された2つのロッドアセンブリに存在させることができる。したがって、選択された様態に関係なく、本方法のいくつかの実施形態において、同一供給シリンダが少なくとも2つの脆弱化ロッドと接触することができ、脆弱化ロッドの少なくとも一方はテクスチャー加工されている。異なるロッドは、ロッドが作られる材料、その直径、またはそれらの特性に影響を与える他の処理など、ロッドの他の任意な特徴の点でさらに異なり得る。
【0075】
脆弱化ロッドは、アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al)、炭化ホウ素(BC)、窒化ホウ素(BN)、立方晶窒化ホウ素(CBN)、炭化クロム(Cr)、ダイヤモンド、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、窒化ケイ素(Si)、ステンレス鋼、鋼、炭化タンタル(TaC)、炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、炭化タングステン(WC)、ジルコニア(ZrO)を含む群から選択される金属またはセラミックを主に含むことができる。脆弱化ロッドは、典型的には異なるもので、かつ、より硬い化合物によってさらにコーティングされてもよい。例えば、脆弱化ロッドは、チタンを含むフィルムコーティング(例えば、窒化アルミニウムチタン(AlTiN)およびアルミニウムチタンシリコンカーボン(AlTiSiC))を有するタングステンカーバイドで主に作ることができる。脆弱化ロッドが供給シリンダと同様の化学族の材料で作られている限り、ロッドを構成する材料(またはそのコーティング)は、供給シリンダを構成する材料よりも硬い必要がある。例えば、約30HVのビッカース硬度を有するアルミニウム合金 Al 1050で作られた供給シリンダは、約175HVのビッカース硬度を有するアルミニウム合金 Al 7075で作られた脆弱化ロッドによって、本教示に係る装置内でフレーク化することができる。
【0076】
いくつかの特定の実施形態において、固有のロッドとして、または一対のロッドとして脆弱化アセンブリに存在する脆弱化ロッド34は、炭化タングステン(例えば、結合剤として働くコバルトも含む)、ステンレス鋼、炭化ケイ素を主に含むか、またはチタンコーティングを施したタングステンカーバイド(TiAINなど)で作られ得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、脆弱化ロッド34は、その硬度が供給シリンダ22を構成する第1の材料の硬度よりも著しく大きい、例えば少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍硬い第2の材料から構成される。例えば、脆弱化ロッドは主に炭化タングステンを含み得、供給シリンダは主にアルミニウムまたはステンレス鋼を含み得る。約2600HVの硬度を有するタングステンカーバイド(WC)、約240HV(通常は140~350HVの範囲)の硬度を有するステンレス鋼(SST)、および40HVの硬度(20HV~180HVの典型的な範囲)を有する1つのアルミニウム合金で作られたシリンダを例にとると、この場合、脆弱化ロッドの硬度と供給シリンダの硬度との比率は、WC/SSTで約11、WC/Alで約65になる。
【0078】
最終的に、硬度比は、a)各シリンダおよびロッドの正確な組成、ならびにb)バルク材料がさらに処理されたかどうか(例えば、アニール、冷間加工、硬化、熱処理、または焼き戻し)、また、上記処理された場合はどの程度か(例:ステンレス鋼は、1/16、1/8、1/4、1/2、3/4、またはフルハードに焼き戻すことができる)に依存し、材料が支持シリンダに使用される場合(比較的硬く/延性が低いグレードが好ましい)、または供給シリンダに使用される場合(比較的硬さが低く/延性が高いグレードも適している)、異なるグレードがより好適である。さらに、シリンダの外面の硬さは、プロセスおよび装置の動作条件によって変更され得る。供給シリンダと脆弱化ロッドとの相対的な特性は、それらの硬度に関して上記で与えられているが、材料とそれらの物理的特性に関わる当業者は、そのような要件を強度、降伏点などの他の用語に容易に「置換」できる。脆弱化ロッドの降伏点は、装置の動作条件下でロッド表面の変形および/または摩耗を回避または最小化するのに十分であるべきであり、供給シリンダの材料の降伏点よりも大きくあるべきである。
【0079】
セラミック脆弱化ロッドを使用するもう1つの重要な利点は、ヤング率が金属よりもはるかに高いため、力が加えられても曲がりにくいことである。ロッドが曲がっている場合、ニップでの圧力分布は均一ではなく、セラミック脆弱化ロッドを使用することで、同程度のロッドのずれに対してより幅の広い機械を構築することが可能である。
【0080】
脆弱化ロッドの表面仕上げは、生産されるフレークの品質(寸法など)および生産速度の両方に大きな影響を与えることがわかってきた。脆弱化ロッドは鏡面仕上げ(例えば、50nm以下、または20nm以下の平均表面粗さ(Ra)を有する)まで研磨されてもよいが、別の実施形態において、それらはテクスチャー加工されてもよく、本開示の方法は、フレーク化される供給シリンダに対して押し付けられる少なくとも1つのテクスチャー加工された脆弱化ロッドの存在に依存する。そのようなテクスチャーは、ロッドの表面の粗さを増加させることによって達成することができ(例えば、100nm以上のRaを有する)、これは、ロッドの生産プロセスに通常含まれる平滑化ステップが行われない場合の結果として生じ得る。粗さは、表面トポグラフィに適したプロフィロメーターを使用して、通常の方法で測定できる。Raは、例えば、接触スタイラスプロフィロメーターまたは非接触光学プロフィロメーターを使用して測定することができる。いくつかの実施形態において、脆弱化ロッド(または任意の他の表面)の粗さは、共焦点レーザー顕微鏡(Olympus CorporationのLEXT OLS5000 3D)を50倍の倍率で使用して測定することになる。
【0081】
テクスチャーは、ロッド表面を化学的にエッチングもしくは物理的に引っ掻くことによって(例えば、所望のグリットのダイヤモンド研磨パッドを用いて)、またはロッドの表面を、通常、ロッドを構成する第2の材料とは異なる第3の材料でコーティングすることによって、意図的に形成することができる。コーティングは、材料の連続層または個別の粒子を用いて行うことができ、その粒子のサイズは、それによって形成されるコーティングの結果として知覚される粗さに寄与する。例えば、脆弱化ロッドは、ステンレス鋼ロッドの無電解ニッケルめっき中に組み込まれたダイヤモンド粉末でコーティングすることができる。このような方法によって広範囲の粗さレベルを達成することができ、出願人は、約20nm、100nm、200nm、250nm、400nm、500nm、700nm、800nm、1,600nm、2,000nmおよび5,000nmの粗さRaを有するロッドを調製することができ、また、フレークを生産することができた脆弱化ロッドの粗さと速度との間の正の相関関係を観察した。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、脆弱化ロッドの粗さを増加させると、供給シリンダの表面との接触効率が向上し、脆弱化が促進されると考えられる。理解されるように、脆弱化ロッドを同様に調製して、研磨されていない部品の標準粗さを超える値(例えば、1,000nm、1,200nm、1,400nm、1,800nm、2,500nm、3,000nm、3,500nm、4,000nm、4,500nmなど)、またはそれ以上の任意な値(例えば、10μm、25μm、50μm)を含む、任意な中間値の表面粗さを達成することができる。
【0082】
上記の例示的な方法は、テクスチャー加工された脆弱化ロッドの表面に比較的ランダムなギザギザ感をもたらすが、ロッドは、追加的または代替的に、より規則的な様態でパターン化され得る。例えば、パターンは、機械加工もしくはレーザー切断、またはロッドを形成する材料に適合する任意の他のパターニング方法によって、脆弱化ロッドの表面に形成され得る。パターンは、いくつかの実施形態において、一連の環状溝または連続螺旋溝であってもよい。そのような実施形態では、溝の幅、そのピッチ、およびその深さなどのパラメーターはすべてフレーク生産に影響を及ぼし、それらの値は、経験的に所望のフレークサイズおよびフレークの生産速度に基づいて決定できることがわかっている。上記のパターンは、脆弱化ロッド表面の外径における表面の溝の「負の(negative)」パターン、または脆弱化ロッドの内径から(例えば、溝の最も低い部分を含む表面から)突出する突起の「正の(positive)」パターンと見なすことができる。
【0083】
図9Aは、軸線942と、隆起または突起領域938を画定する単一の螺旋溝936とを有する脆弱化ロッド934を示す。螺旋角αは、溝の巻き部分と、軸線942に垂直な平面940との間の角度である。図9Aの下部は、溝936の異なるパラメーターを特定するために、溝936の断面を拡大して示している。溝の幅はGで示され、溝の巻回部分間の隆起領域の幅はTで示され、溝の深さはDで示される。溝のピッチPは、TおよびGの合計に等しい。図9Aでは、溝は、軸線942に垂直な平面内に置かれた側面を有するように示されているが、図9Bに示されているように、角度βで側面を傾斜させることも可能である。
【0084】
パターンを広範囲に脆弱化ロッドの表面に形成することができ、本願人は、ギャップ幅Gが50μm、60μm、150μm、160μm、200μm、230μm、および280μmから選択され、上面の幅Tが25μm、50μm、130μm、160μm、200μm、240μm、および360μmから選択され、溝深さDは、10μm、35μm、90μm、160μm、170μm、190μm、および400μmから選択され、および、角度αが環状溝に関しては0°、螺旋溝に関しては2°、30°および40°から選択されたロッドを調製することができた。環状溝および螺旋溝を有するパターンは、セラミック製(例えば、炭化タングステン)の脆弱化ロッドでテストされた比較的薄い溝用のレーザー切断法によって、および金属製(例えば、ステンレス鋼)の脆弱化ロッドでテストされた比較的大きな溝用の機械加工によって調製された。理解されるように、脆弱化ロッドは、中間値を含むが必ずしも中間値ではない値を含む任意の他の値を有するパラメーターで同様にパターン化することができる。
【0085】
例えば、溝Gの幅(または、隣接する突起もしくは隣接する突出部の側縁間の距離)は、25μm~300μmの間、または25μm~250μmの間、または25μm~200μmの間であり得、2つの溝の間の上面Tの幅は、少なくとも25μm、少なくとも50μm、少なくとも100μm、または少なくとも200μmとすることができ、また任意で最大500μm、最大400μm、または最大300μmとすることができ、溝の深さD(または、突起もしくは突出部の高さ)は、少なくとも3μm、少なくとも50μm、または少なくとも100μmとすることができ、また任意で最大300μm、最大250μm、または最大200μmとすることができ、回転方向に対して溝を傾けることができる角度αは、±90°までの任意の値であり、また任意で0°~60°の間、2°~50°の間、または5°~45°の間であり、該角度は右または左のいずれかに傾いている。
【0086】
図9Aは、図面の左側に傾いた単一の螺旋溝を示しているが、脆弱化ロッドの他のパターニングが可能である。例えば、2つの逆向きの螺旋溝は、両方がロッドの全長に沿って延在するように設計されている場合、ロッドの表面にダイヤモンドパターンをもたらすことができる。あるいは、脆弱化ロッドの1つのセグメントは一方向に傾いた溝を含むことができ、もう1つのセグメントは反対方向に傾いた溝を含むことができる。例えば、ロッドの半分は右巻きの螺旋溝を有し、ロッドの半分は左巻きの螺旋溝を有してもよい。
【0087】
パターンはまったくランダムで、ロッドの表面を粗くすることによって生成される場合もある。この場合、レーザー切断法の代わりに化学エッチングを使用してもよい。粗さは、ロッドの材料を本質的な要素とするか、またはロッドのコーティングに起因し得る。パターン化されたロッドに所望の粗さを提供するためにコーティングが使用される場合、該コーティングは、パターン化の前または後に適用され得る。例として、脆弱化ロッドをパターン化して螺旋溝を表示し、続いてダイヤモンド粒子でさらにコーティングすることができ、該粒子のサイズは、パターンのパラメーターに従って選択される。脆弱化ロッドがパターンおよび粗さの両方を表示する場合、粗さは通常、突起の上部、幅Tによって特徴付けられる溝の間の表面で測定される。
【0088】
いくつかの実施形態において、脆弱化ロッド34の直径は、供給シリンダ22の初期直径と比較して小さくてよい。脆弱化ロッドの直径は、供給シリンダの直径の5%以下、10%以下、15%以下、20%以下、または25%以下を構成する場合、比較的小さい。上記ロッドの直径が小さいと、所定の圧縮力に対してニップでより大きな圧力を印加することができる。脆弱化ロッドの直径は、供給シリンダの特定の列に適合させることもできる。例えば、支持シリンダが、シリンダのアセンブリの末端位置になく、脆弱化ロッドが最終的な転がり面として機能する場合、その直径は、相対スケールのより大きい方の端部に接していることが好ましく、それによりシリンダを接触させるために印加される力に対してその回転軸を静止状態に維持することを容易にする。
【0089】
本教示に係る方法の実装を可能にする装置の他のシリンダとして、脆弱化ロッドは、支持構造体に摺動可能に取り付けられた一対の軸受け内に軸支されることができる。ロッドが回転できるようにする他の任意の配置は、特に供給シリンダと接触しているときに好適であり得る。このような配置は、一般に、シリンダの回転軸に沿った方向へのシリンダの横方向の変位(displacement)を実質的に防止するように構成されており、支持構造体のフレーム内において、供給シリンダおよびロッドを押し付けて転がり接触させる力とほぼ平行な方向への回転のみを可能にする。供給シリンダおよび脆弱化ロッドを一緒に付勢するように力が印加される方向をX方向と呼ぶことができ、それらの回転軸の横断方向をY方向と呼ぶことができる。材料がフレーク化され、供給シリンダの直径が減少するため、シリンダの時計回りまたは反時計回りの回転が、回転軸のX方向への相対的な変位をもたらす。前述のように、Y方向にはある程度の公差(tolerance)があり、例えば、シリンダ上の基準点を想定すると、この点は、この方向に変位がない場合、予想される位置の±250μm以内にあってよい。説明のために図6を参照すると、供給シリンダ22、支持シリンダ32、および脆弱化ロッド34は、Y方向に平行な軸の周りを回転し、それらの直径が減少するにつれてX方向に左または右に移動し得るが、典型的には、それらは(例えば、250μmを超えて)著しく変位することはない(すなわち、図面で見た場合の上向きまたは下向き)。
【0090】
しかしながら、いくつかの実施形態においては、いくらかの横方向の変位が許容されるだけでなく、望ましくかつ有効になり得る。このような場合、本質的ではないが、回転しながら回転軸をY方向に変位させることを許容される要素が脆弱化ロッドであるということが、サイズが小さいという点でより便利である。説明のために再び図6を参照し、脆弱化ロッド34上の基準点を取ると、この点は、ロッドの回転と供給シリンダのフレーキングが左から右のX方向の距離を縮めるにつれて、正弦曲線を描くことになり、この特定の表示では、Y方向に沿った横方向の変位によるロッドの振動により、この点が上下にシフトする。したがって、脆弱化ロッドは、支持構造体の反対側の間で振動していると見なすことができる。通常、振動のピーク振幅、つまり基準点が理想的に固定された位置からどれだけ離れているかは、500μmを超えることがあり、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、または2.5mm以上であり得る。
【0091】
振動の効果は、とりわけ、必要に応じて生産速度を高めることである。規則的にパターン化されたロッドが供給シリンダの表面に反復条痕(repeated striations)を形成し得る、またそのような形成がフレークの生産速度に悪影響を与える限りにおいて、そうしなければ供給シリンダに形成されことがあり得る反復条痕間の距離を越えるよう、脆弱化ロッドの振動の最適なピーク振幅(または適切な振幅の範囲)を選択する。脆弱化ロッドの振動の振幅は、脆弱化ロッドの表面のパターンニングの性質に依存し、供給シリンダのより平らな(例えば、パターンのない)表面を長期間にわたって維持するために選択される。代替的または追加的に、規則的なパターンの欠落した脆弱化ロッドであって、比較的滑らかであるか、またはランダムにテクスチャー化されている(例えば粗い)脆弱化ロッドに頼ることで、供給シリンダ上の反復条痕を回避するまたは(存在するにしても)減少させることができる。
【0092】
[支持シリンダ]
支持シリンダが本教示に係る方法を実施できる装置に含まれる限りにおいて、支持面は、供給シリンダおよび脆弱化ロッドに従って選択することができ、その特性は典型的には両方の中間である。例えば、支持シリンダは第4の材料で作ることができ、その第4の材料は一般に供給シリンダの第1の材料よりも硬いが、脆弱化ロッドの第2の材料、またはそれをコーティングする第3の材料よりも硬くない。先に説明したように、相対的な特性として硬さに関しては上述されているが、当業者は代わりに他の用語(例えば、ヤング率、降伏点など)で材料の適切な組み合わせを選択することができる。脆弱化ロッドと同様に、供給シリンダは、装置/方法の動作条件下での表面の変形および/または摩耗を回避または最小化するように選択および適合されるべきである。したがって、支持シリンダは、前述の条件を満たす場合、前に例示した材料のいずれかでも作ることができる。それらの直径は一般に脆弱化ロッドの直径よりも大きく、必須ではないが随意に供給シリンダの初期直径よりも大きい。支持シリンダは、供給シリンダについて図8A図8Cに示される様々な方法のいずれかで、装置の構造によって支持することができ、各パネルは、本方法を実現するように適合された相対運動を可能にする支持構造体によってシリンダがどのように支持されるかを例示している。それらの長さは、供給シリンダの長さと類似させることができるが、わずかにより長くすることもできる。
【0093】
[圧縮機構]
供給シリンダ22の間のロッドのそれぞれのアセンブリの脆弱化ロッド34を圧縮するために印加される力は、油圧ラムによるものである。代替の実施形態において、力は、空気圧または電気モーターによって印加されてもよい。代わりに、重りを使用して、適切な配置を介して印加される重力に基づいて圧縮を生み出すこともできる。必要に応じて、モーターと供給シリンダの列との間にレバーシステムまたは歯車機構を採用してもよい。油圧システムを採用する場合、圧力変動を減衰させるアキュムレータを含んでもよい。
【0094】
ニップでの圧力は、フレークの生産速度およびその品質に影響を与える。印加される圧力が低すぎると、フレークの生産率が低くなる。一方、過度の圧力が印加されると、非フレークの破片および/または望ましくないほど厚いフレークが供給シリンダから剥がされ得る。最適圧力は、とりわけ、供給シリンダの材料の降伏強度(降伏点とも呼ばれる)および/または引張強度に依存する。生産コストを最小限に抑えるために、所与の量のフレークを生産するために必要なエネルギー量を最小限に抑えるための最適圧力を経験的に決定することが可能である。
【0095】
圧縮は典型的には一方向に印加されるが(例えば、供給シリンダの列の一端から列の他端まで)、代替的には、同時に反対方向に印加されてもよい。そのような場合、支持シリンダは、圧縮に相反する力の「終点(terminus)」に対応する位置で供給シリンダの列に任意に挿入されてもよい。説明のために、4つの供給シリンダの列を仮定すると、該供給シリンダ、それらの脆弱化ロッド、および各端部からの反対の圧縮力はそれぞれ同様であり、支持シリンダは、2対の供給シリンダの間の列の中央に含まれてもよい。
【0096】
考えられる限りでは、図示の実施形態は、単一ライン(例えば、供給シリンダの軸が単一平面内に存在している)に沿って1つまたは2つの方向に印加される圧縮を提示しているが、供給シリンダは、コアシリンダ(例えば、供給シリンダバンクのうちの1つ、または支持シリンダである)に対して半径方向に配列されてもよい。そのような場合、圧縮は、配列のコア部分に向かって半径方向内方に印加される。
【0097】
[流体および添加剤]
前述のように、装置100Aの矢印40によって示されるように、動作中に流体を使用することができ、流体は少なくともニップ15で適用される。流体は、任意の適切な組成の液体または気体であり得る。液体である場合、流体は、好ましくは、フレークの除去を補助し得る供給シリンダの表面を濡らすように適合および選択されるべきである。液体の表面張力がフレーク化される固体の表面エネルギーよりも小さい場合、液体は固体を適切に濡らすことができる。好ましくは、流体(存在する場合)は、少なくとも調製されるフレークの材料と相溶性のあるように選択される。相容性とは、流体が、それが接触し得るフレークまたは装置の部品と化学的に反応せず、物理的に相互作用しないことを意味する。例えば、流体は好適には、金属フレークを腐食させたり、プラスチックフレークを膨張させたり変形させたりしてはならない。必須ではないが、好ましくは、流体はフレークから比較的容易に分離し得、その表面から実質的に完全に除去することができる(例えば、直接蒸発させるか、より揮発性の高い溶媒に置き換えてから蒸発させる)。しかしながら、いくつかの実施形態において、流体は、少なくとも部分的にフレークと共に残存することがあり(もしある場合、部分的分離の後)、その場合、流体は、任意な所望のポストフレーク化処理(例えば、フレークコーティング)および/またはフレークの最終用途に従って選択され得る。例えば、流体は、フレークが水性となれるように選択することができる(例えば、水、アルコール、グリコールエーテル)。流体が液体の混合物である場合、必ずしもそうではないが、互いに混和性であることが好ましい。さらに、適切な流体は、装置の動作条件に適合され、例えば、その動作温度およびニップ圧にて作動可能かつ流動可能でなければならない。例えば、室温(約23℃)で最大1,000ミリパスカル秒(mPa・s、センチポアズ-cPに相当)の粘度を有する液体は、通常、本目的のために十分に流動可能であるが、経験的に容易に決定されるように、付加的な粘度を許容することができる。実用的な観点から、流体が再利用される装置では、流体は好ましくは比較的低いまたは中程度の揮発性を有するようにし、システムに新しい流体を追加する必要性を低減させる。このような状況では、室温で5キロパスカル(kPa)を超えず、好ましくは1kPaまたは0.1kPa未満の蒸気圧を有する流体が有利である。
【0098】
流体は、例えば、供給シリンダの表面からフレークを穏やかに洗い流し、そのような剥がされたフレークを供給シリンダから遠ざけることによって、または液体流体のジェットもしくはエアナイフを使用して該フレークを供給シリンダから強制的に剥がし、そのような剥がされたフレークを供給シリンダから遠ざけることによって、フレーク剥離をアシストできる。
【0099】
流体は、フレークを個別の粒子として分離した状態に維持することにより、材料の再結合または融合をそれ自体で防ぐことができ、フレークの腐食(酸化など)を防止、遅延、または低減することができ、および/または、流体は、フレークの爆発および/または燃焼など、液体流体のない環境を含め、フレーク生産に関連し得るいかなる有害な影響をも打ち消すことができる。
【0100】
流体は液体であってよく、1つ以上の液体キャリア、ならびに任意に1つ以上の添加剤および/または固体粒子(例えば、フレーク)を含む。流体は、以下のキャリアのいずれか、水(例えば、供給シリンダの材質が水に適合する場合)、第一級、第二級、および第三級の一価および多価アルコールを含むアルコール、グリコールエーテル、炭化水素、オルガノシリコンオイル、ならびにそれらの混合物を含むか、主に含み得、上記のリストは網羅的ではない。例えば、液体流体は、イソパラフィン系炭化水素(例えば、Isopar(商標)の商品名でExxon Mobileによって商業的に提供される)を含み得る。
【0101】
あるいは、流体は、ガス(またはガス混合物)であってもよく、その場合、流体は、空気または窒素もしくはアルゴンなどの不活性ガスを含むか、または主に含み得る。供給シリンダが、フレークが空気および/または水中で可燃性である材料(例えば、主にアルミニウムまたはリチウムを含む材料)を含む場合、流体に空気および/または水を使用しないことが好ましい場合がある。添加剤はしばしば固体または液体として供給されるため、流体が気体またはそれらの混合物である場合、添加剤は、気化した形態(例えば、エアロゾル)か、またはそれぞれの蒸気圧以上で流体に含まれ得る。
【0102】
添加剤は、例えば、脂肪酸(例えば、ステアリン酸、オレイン酸または脂肪族ホスホン酸)などの固化防止剤であり得、脂肪酸は、金属フレークが凝集して塊になるのを防ぐ。脂肪酸添加剤は、非水性有機キャリアであっても、酸化をある程度低減することもでき、場合によってはニップで潤滑剤としても機能する。固化防止剤に加えて、またはその代わりに、流体は、単独でまたは組み合わせて、他の添加剤を含まない流体組成物と比較して何らかの利点を提供し得るかかる他の添加剤を含み得る。例えば、そのような他の添加剤は、脆弱化ロッド34と供給シリンダ22との間の潤滑性を提供し得る、および/または、ロッド34と供給シリンダ122との間の収縮性(例えば、摩擦を増加させる)を提供する収縮性流体(例えば、Santotrac(登録商標)32)を含み得る、および/または、プロセスによって露出される表面(例えば、シリンダー上およびフレーク上)を腐食から保護することができる腐食防止剤(例えば、Armeen 2MCD、Ethomeen(登録商標)、Lubrizol(登録商標)2064、Lubrizol(登録商標)2724、Lubrizol(登録商標)2727、Lubrizol(登録商標)HPA89E2、レシチン、牛脂アルキルアミン、オレイルアミン)を含み得る。付加的にまたは代替的に、そのような他の添加剤には、発泡防止剤、耐摩耗添加剤、分散剤(例えば、Berol26)、湿潤剤(例えば、Aerosol(登録商標)OT)、レオロジー調整剤、pH緩衝剤、防腐剤、および装置および/またはそれによって作製されるフレークに有益であり得る任意のそのような添加剤を含み得る。簡潔にするためにそれらの基本的な役割によって分類したが、当業者は、前記添加剤が複数の役割(例えば、同じ材料が潤滑性、耐摩耗性、耐腐食性および界面活性効果を提供する)を有し得ることを容易に理解する。
【0103】
このような添加剤は、その目的に適した任意の濃度で流体中に存在し得るが、典型的には個々に組成物の20重量%、10重量%または5重量%を超えない。使用される流体の組成は、例えば、20重量%、10重量%、または5重量%未満の濃度で、追加的または代替的に固体粒子を含み得る。固体粒子は、流体が再利用される場合は以前に生産されたフレーク、および/または固体潤滑剤(例:グラファイトや二硫化モリブデン(MoS))もしくは研磨粒子(例:炭化ケイ素、酸化アルミニウム、シリカ、石英)のような様々な粒子であり得る。フレークを調製するプロセス中に使用される流体が、存在する場合はフレーク化後のプロセス中に少なくとも部分的に残る限り、または最終製品中に添加剤が存在する場合、そのようなその後のプロセスおよび使用に有利に適合する必要がある。
【0104】
使用され得る流体は、例えば、装置100が配置されているチャンバの温度(例えば、周囲温度)よりも高いまたは低い温度まで任意に加熱または冷却することができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、フレークの化学組成を変更するために添加剤が流体に含まれる。「変更(modifying)」添加剤は、フレークの表面下に浸透できるドーピング剤、またはフレークの外面に吸着できる他の化学組成物であり得る。添加剤によってフレークに与えられる変更の正確なタイプに関わらず(単独で、または他のものと組み合わせて、または流体と組み合わせて)、およびフレークの外面に対する変更の局在化に関係なく、そのような変更添加剤の存在下で生産されたフレークは、フレークのコア部分にある第1の材料とは異なる材料、および添加剤の非存在下で自然に形成され得る第1の材料の誘導体(自然酸化物)とは異なる材料で「コーティングされている」と称することができる。説明のため、フレークが本発明の方法によって生産されている間に、それらの外面に隣接する領域でフレークの組成を変更するために添加剤が流体に含まれ、フレークがアルミニウムで作られた場合、変更されたフレークのコーティングは、アルミニウムとその自発的に形成される酸化物誘導体アルミナ以外のものである。しかし、変更された被膜が、天然アルミナ(Al)の化学式以外の化学式を有するアルミニウムの酸化物、またはそれとは異なる結晶準安定相を有するアルミニウムの酸化物を含むことを排除することはできない。フレークが生産されているときにフレークをコーティングする本方法のこの能力は、有利であり得る。従来の方法では、フレークの生産中にそのようなフレークの同時コーティングが必ずしも達成されない可能性があることを強調しておく。添加剤の中には、本方法によって回避される従来の方法で遭遇する操作条件の影響を受けやすい可能性があるものもある。従来の方法で調製されたフレークは、その生産モードとは相容れない所望の化合物で包むようにさらに加工することができるが、これを達成するには複数のステップが必要になり得る。そのような面倒な生産が原因となり得る生産時間およびコストの増加に加えて、そのような化合物を用いた従来のフレークのさらなる処理は、所望の結果を提供するフレークとの相互作用のタイプを必ずしも達成しない可能性がある。
【0106】
アルミニウムのフレークが、実施例の節で詳述されるように、イソパラフィン流体中においてレシチンの存在下で本方法によって生産された実験において、添加剤によるフレークのコーティングは、X線光電子分光法(XPS)分析によって、添加剤とフレークの表面との間の共有結合が確認された。
【0107】
本方法の使用によりドープフレークを調製する場合(すなわち、フレークを単に外側でコーティングするのではなく、少なくとも部分的にフレーク内に拡散または浸透するドーパント材料を意図的に添加する場合)、ステップは次のようになり得る。材料Bの原子/分子によってドープされた(富化された)材料Aのフレークを調製するために、供給シリンダ22は、ドープされることが意図された材料Aを含むか、またはそれからなり、流体は、ドーパントとして意図された材料Bを含む。流体中の材料Bの濃度は、所望のドーピングレベル、およびそれを実装する方法または装置の動作条件に依存する。この濃度は、例えば、材料Aの供給シリンダに対するドーパントBの濃度勾配を維持または制御するために、フレーキングプロセス中に変化し得る。いくつかの実施形態において、供給シリンダ22と転がり接触している脆弱化ロッド34および支持シリンダ32(存在する場合)のうちの少なくとも1つが、ドーパントBの原子または分子を確実に含むように、方法をさらに修正してもよい。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、供給シリンダ以外の流体と接触する装置の部分にドーピング材料が存在することは、流体と接触する他の部分へのドーパントの過度の散回(diversion)を防止することによって後者のドーピングに有利に働くと考えられる。特定の実施形態において、支持シリンダは、フレークへのドーパントとして機能する材料をさらに含むものであり、その外面は通常、ロッドの外面よりもはるかに大きく、したがって、ドーパントを含まない場合は、ドーパントを散回させる能力がある。本発明のドーピング方法のこの顕著な用途を説明するために、本発明者らは、タングステンカーバイド製の脆弱化ロッド、ステンレス鋼17-4PH(登録商標)製の支持シリンダ(すなわち、とりわけ約73%の鉄、17%クロムおよび4%ニッケルを含有)、およびステンレス鋼316Lのナノ粒子(平均直径100nm、鉄のほかにクロム16~18%、ニッケル10~12%、モリブデン2~3%を含む)で補完された、アルミニウムフレークのドーパントとして機能する炭化水素流体(Isopar(商標)L)を使用して、アルミニウムフレーク(例えば、Al 1100製の供給シリンダ)を調製した。ドープされたフレークを収集し、IPAで完全にリンスして流体残留物を除去し、鉄の存在を分析した。ドープされたフレーク中の鉄の平均含有量は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)によって分析され、原子濃度で6%~10%の範囲であることがわかった。同じ材料のドープされていないフレーク(つまり、液体にステンレス鋼のナノ粒子が存在しないことを除いて、同様の設定で調製されたもの)は、同じEDS法で測定した場合、平均で鉄の原子濃度が0.2%しか示されなかった。ドープされたフレークは、X線光電子分光法(XPS)の深さプロファイリングによって、内部コア内の鉄の存在についてさらに試験された。鉄は、約35nmまでの深さで原子濃度約3%まで発見され、本プロセスがそれによって作られたフレークをドーピングできることが確認された。興味深いことに、アルミニウムフレークの鉄ドーピングは、磁場にさらされたときにドープされたフレークが常磁性の適性を示すのに十分であった。本教示に係る方法を用いたドーピングは、金属供給シリンダへのドーピング剤として金属粒子を使用することによって上で説明されたが、フレークへのドーピング剤のそのような浸透は、所望のドーピング剤の塩を使用することによって、および/または追加の材料(例えば、プラスチック材料)で作られた供給シリンダを使用することによって同様に達成できると予想される。
【0108】
流体は継続的に補充されてもよいが、フィルタを通過した後に再利用して、所望のフレーク、または逆に望ましくない破片を分離することが好ましい。流体が1つ以上の添加剤をさらに含み、また流体が部分的に再利用される限りにおいて、そのような添加剤は、流体中の任意の所望のレベルを維持するために、再利用された、または新鮮な流体に添加され得る。
【0109】
フィルタは、流体が再利用される前に流体からすべての粒子を除去するように設計され得るが、いくつかの実施形態において、粒子の一部のみ、好ましくは大部分がフィルタ内に保持される。いくつか例を挙げると、親和力、デカント、または遠心分離などの他の手段を使用して粒子を分離することができる。流体中で再利用される粒子は、さらなる粒子の生成をアシストし得る、また再利用によってそれ自体のサイズが縮小化され得る。
【0110】
[フレーク生産方法]
例えば図1図7に示されるような装置における本開示の生産方法の実施形態は、ここで図10を参照して説明され、破線およびフレームは任意のステップに関連する。フレーク化される供給シリンダ22の材料に適した脆弱化ロッド34の材料、直径、および表面テクスチャーを選択することから始め、そのような選択は、予備ステップS101として、少なくとも1つのテクスチャー加工されたロッドの調製を任意で必要とする。ステップS102で準備された供給シリンダおよびステップS104で準備された脆弱化ロッドアセンブリが正しく積み重ねられた後、最終的にステップS103で準備された1つ以上の支持シリンダが存在する場合、ステップS105で増加する圧力が印加され、存在する場合は支持シリンダとともに、供給シリンダおよびロッドを転がり接触させて維持する。ステップS106で少なくとも1つのモーターを作動させて回転させることが示されているが、前述のロールの1つを駆動するモーターの初期トルク要件を低減するために、S105で圧力を上昇させる前にその作動を開始することができる。
【0111】
次いで、ステップS107で、供給シリンダと、それと転がり接触する脆弱化ロッドとの間のニップに流体を適用することができ、代わりに、該流体を回転惹起モーターの起動前に適用することができる。ステップS108で流体を収集でき、生産されたフレークをステップS109で流体から分離する、または最初に分離デバイスを通過させてから収集することができる。生産されたフレークおよびそれらの生産速度の分析に基づいて、印加される圧力並びにモーターおよびそれに関連するシリンダの回転スピードを変更して、所望の結果を達成することができる。例えば、供給シリンダの直径が小さくなるにつれて回転スピードを上げてもよいが、これは必要ではないことが判明した。生産されたフレークの分析は、稼働ごとに実施する必要はないが、プロセスを最適化しようとする場合、または目的のタイプのフレーク(例えば、寸法に関して)を取得できるようにパラメーターを設定する場合に限る。
【0112】
フレークを収集した後、例えば、所望のサイズの粒子を保持するように適合化されたふるい媒体を通して流体を濾過することにより、分離された流体は、ステップS110でニップに再利用することができ、この再利用は、前もって分離することなく、収集された流体に対して実施することもできる。あるいは、粒子分離に関わる当業者には容易に理解されるように、フレークは、沈降、遠心分離またはフレークの材料に適した任意の非機械的方法によって流体から分離することができる。流体からのフレークの分離はオフラインおよびバッチで行うことができるが、フレーク化プロセス中にインラインでおよび/または連続的に実施することができる分離が有利であると考えられる。
【0113】
そのように生産されたフレークは、ステップS111において、更なる処理を受けてもよいが、一般的には必ずしも分離後に受けなくてもよい。このようなプロセスとしては、部分的または完全な分離、分解、アニーリング、流体(存在する場合)の交換および/または流体の追加、コーティング、および/または他の適切な処理が挙げられる。供給シリンダ22から剥がされるフレークの特性は、収集されるフレークの特性と必ずしも同一である必要はない。例えば、化学反応は、装置100で使用される流体の1つ以上の成分で、および/または装置100の動作環境にそれ以外で存在する1つ以上の成分で生じ得る。S111における生産されたフレークの追加処理は、随意的に、供給シリンダから剥離するフレークと最終的に収集されるフレークとの間の相違(divergence)をさらに拡大し得る。
【0114】
図示のように、本教示に係るフレークの生産方法は、図10に示すよりも少ない、多い、および/または異なる段階を含んでもよく、ステップの順序も異なっていてもよい。
【0115】
本明細書に記載の方法によるフレークの生産中、供給シリンダ22およびそれから生産されたフレークを何度も検査した。少なくとも99%のアルミニウムを含む純合金であるAl 1100で作られた例示的な供給シリンダ22の場合、シリンダの表面のフレークが厚くなり始め、ロッド34との接触が続くと、供給シリンダの外面から「剥がれた(peeled)」材料が引き伸ばされて薄くなり、薄くなった材料がフレーク状に壊れたことが明らかとなった。
【0116】
本明細書に記載の方法による、所与の供給シリンダ22からのフレークの生産速度、フレークの厚さ、および/またはフレークの特性は、とりわけ、a)特にそれらがそれぞれ作られる材料を含んだ、シリンダ22、ロッド34および支持シリンダ32(存在する場合)の設計、b)流体の存在および組成(驚くべきことにいくつかの添加剤の存在を含む)、c)脆弱化ロッド34のテクスチャー(例えば、粗さまたはパターン)、d)シリンダおよびロッドのいずれかのそれぞれのスピード、e)シリンダのスピードの差、f)ロッド34の硬度と供給シリンダ122の硬度との硬度比、g)アセンブリ内の脆弱化ロッドの数、およびh)圧力の量、に応じて変化することが見出された。
【0117】
したがって、この方法は、それを実装する装置に1つ以上のコントローラを組み込むことによって、フレークの所望の集団を生産するように適合化させることができ、それぞれが、
a)圧縮機構によって印加される力または圧力、
b)少なくとも1つの供給シリンダの回転スピード、
c)存在する場合、少なくとも1つの支持シリンダの回転スピード、
d)供給シリンダに適用される流体中における固体粒子および/または添加剤の流量、温度および濃度のうちの少なくとも1つ、並びに
e)コレクター内の流体のレベル、
のうちの少なくとも1つを常にまたは定期的に制御するように選択され、適合化される。
【0118】
[生産されたフレーク]
本明細書に開示されるように生産されるフレークのサイズは、例として、動的光散乱(DLS)技術を使用した日常的な実験によって決定でき、この場合、粒子は同等の散乱応答の球に近似され、サイズは流体力学的直径として表される。体積でまたは数で母集団の50%について観察された値は、それぞれD50およびD50と呼ばれる。これらの値は、一般にD50とも呼ばれ、平均粒子サイズと呼ばれることがしばしばである。粒子の寸法は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)、集束イオンビーム(FIB)、および/または共焦点レーザー走査型顕微鏡技術によって捕捉された顕微鏡法および画像分析によって推定することもできる。そのような方法は当業者に知られており、本明細書でさらに詳述する必要はない。
【0119】
現在開示された主題のいくつかの実施形態に従って生産されるフレークは、それらの代表的な平面寸法と横寸法との間の約2:1~約10,000:1の範囲における任意の適切なアスペクト比によって特性付けられ得る。フレークの代表的な平面寸法は、平らな球の形状を有するフレークの場合、その直径、または他の形状を有するフレークの場合、平面を横切る最長の長さとすることができる。その平面を横切るフレークの代表的な寸法は、その厚さである。本教示のいずれかに係る装置および/または方法を使用して調製されたフレークは、少なくとも約3:1、少なくとも5:1、少なくとも10:1、少なくとも50:1、少なくとも100:1、または少なくとも1,000:1の平均アスペクト比を有することができる。いくつかの実施形態において、フレークは、最大10,000:1、最大5,000:1、または最大2,000:1のアスペクト比を有する。フレークのアスペクト比は、前述のように、とりわけ、方法の操作条件および組成、相対硬度、相対直径、並びにそれぞれのシリンダおよびロッドによって感知/印加される圧力に依存し得る。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、比較的厚いフレークは比較的低いアスペクト比を示し得ると考えられている。例えば、厚さが数マイクロメートルのフレークのアスペクト比は10:1、またはその範囲の分厚い端部(chunky end)にある場合はそれ以下になる可能性がある。逆に、比較的高いアスペクト比(例えば、20:1以上)を有するフレークは通常比較的薄く、最も薄いフレーク(例えば、厚さが1μm以下)で最も高いアスペクト比が通常観察される。そのような範囲は、供給シリンダの取り外し時のフレークのアスペクト比、収集されるフレークのアスペクト比、および任意で流体と共にさらに再利用されるか、または収集後にさらに処理されるフレークのアスペクト比を包含する。
【0120】
特定のプロセスによって調製されたフレークのアスペクト比は、それらが収集されるステップに応じて変化し得、必ずというわけではないが、典型的には、フレークが流体で洗い流されて後で収集されるときよりも、フレークが供給シリンダからただ離れているだけのときの方がアスペクト比は高いことに留意されたい。これは、フレークが一旦剥離されると、フレークの厚さを変更することは困難であり得るが、剥離および/または収集されたフレークを分裂させる(breaking up)ことによって、フレークの直径または最長の長さを低減させ得るという事実に由来する。アスペクト比のそのような変化は、方法を実装する装置の動作条件から生じる結果であり、いくつかの実施形態において、プロセスの1つ以上のステップで所望のアスペクト比を得るために適合または選択することができる。追加的または代替的に、フレークの寸法およびそれらの対応するアスペクト比は、任意の適切なアスペクト比を得るために、その後のミリングおよび/またはそれらのサイズを縮小する他の処理によって制御可能に変更することができる。
【0121】
供給シリンダ22から剥離されるフレークは、場合によっては、ボールミル処理およびPVDによって生産されるフレークよりも高いアスペクト比、例えば最大1,000:1または2,000:1のアスペクト比を有し得る。
【0122】
本方法によって調製されたフレークは、数マイクロメートルのマイクロメートル範囲からサブミクロン範囲、さらには低ナノメートル範囲まで、多種多様な厚さによって特徴付けられ得る。いくつかの以前の実施形態において、フレークは、最大約10μm、最大約5μm、または最大約1μmの厚さによって特徴付けられ得る。サブミクロン範囲では、フレークは、最大800nm、最大600nm、最大400nm、または最大200nmの厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、フレークが低ナノメートル範囲にある場合、フレークは最大で100nm、最大で90nm、最大で80nm、最大で70nm、最大で60nm、最大で50nm、最大で40nmまたは最大で30nmの厚さを有し得る。そのような実施形態では、フレークは、少なくとも約10nm、少なくとも15nm、または少なくとも20nmの厚さを有し得る。フレークの厚さは端から端まで変化し得るもので、また本明細書におけるフレークの厚さへの言及は平均厚さを指し、典型的に報告される値はフレークの集団から得られる平均値に関連することに留意されたい。このような平均値は、FIB顕微鏡法によって捕捉されたマイクログラムの分析によって同定できる。
【0123】
本方法によって生産されるフレークは、追加的または代替的に、セルブロックの伸長(elongation)、セルブロックの配向、または粒界破壊(例えば、渦巻きパターン)などの結晶学的組織および表面テクスチャー(例えば、条痕)に関連する特徴の1つ以上によって特徴付けられ得る。予想外なことに、前述した結晶学的特徴のいくつかは、生産されたフレークのアニーリングの間中に保存され、顕微鏡によって検出された細長いセルブロックまたはXRDによって検出された回折ピークが保持され、アニーリングの前後で実質的に類似するように、例えば350℃で約1時間実施される。
【0124】
本開示の主題のいくつかの実施形態によるフレークの画像は、より薄い(例えば、200nm以下の)フレークについて、STEMまたは透過型電子顕微鏡法(TEM)を使用して生成出来る。STEMを使用して画像を生成するために使用されるパラメーターは、20,000または50,000の倍率、30μmの開口サイズ、1KVまたは30KVのEHT、明視野と暗視野との混合、および低ゲイン範囲を含んだ。
【0125】
より厚いフレークは、任意の適切なサンプル金属組織学的調製を用いて検査用に調製することができる。例えば、フレークはエポキシモールドに配置されてもよい。次いで、モールドを研削、研磨および/またはエッチングするか、またはそのような所望の処理を行ってもよい。その後、処理されたモールドは、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡(SEM)、または任意の他の適切な技術を使用して検査され得る。
【0126】
本明細書に開示されているように生産されたフレークの画像(例えば、STEM(倍率20,000倍)によって捕捉)を調べると、金属または合金でできたフレークの平面状表面内に、伸長されたまたは細長いセルブロック(セルバンドとも呼ばれる)が観察された。細長いセルブロックは、例えば、主にアルミニウムを含む、例えばAl 1100、Al 1199、またはAl 6061製の供給シリンダ22で生産されたフレークで、および、主にステンレス鋼、例えば17?4PH(登録商標)ステンレス鋼製の所与の供給シリンダ22から剥離されたフレークの表面上で観察された。セルブロックの長さがセルブロックの幅よりも極めて大きい(例えば、少なくとも2倍または少なくとも3倍)ため、セルブロックは細長いものであると特徴付けられた。このような細長いセルブロックは、セルバンドとも呼ばれ得る。例えば、Al 1100製の供給シリンダ22から生産された6個のフレークは、フレークに応じて少なくとも約3.7~最大約200まで(後者は、セルバンドがフレークの全長にまたがり、フレークの長さが約200μmまでの場合に発生する)の範囲の細長いセルバンドの長さ対幅の平均比を有していた。セルバンドの観察された長さは、約200μmまでの範囲であった。観察されたセルバンドの幅は、約0.3μm~約3μmの範囲であった。対照的に、そのような材料(例えば、主にアルミニウムまたはステンレス鋼を含む)のボールミルで粉砕されたフレークの輪郭は、それほど細長くはなく、これは、特定の従来の方法で調製されたフレークの平面状表面の輪郭が、粒界を取り囲む場合に、検出可能であれば、本開示の主題のいくつかの実施形態のフレークのセルブロックよりもはるかに類似したサイズの幅および長さを有し得ることを意味する。対照的に、同じ材料で作られたPVDフレークには、その平面状表面にそのような輪郭またはセルバンドが欠如している。したがって、バルク材料でのセルブロックまたはセルバンドの報告があった一方で、従来から生産されている市販のフレークはそのような現象を示さない。
【0127】
本発明者らはさらに、本発明の教示に従って調製されたフレークの平面状表面に存在するセルバンドが好ましい配向を有するようであることを観察した。
【0128】
本明細書で開示される主題の目的のために、所与のフレーク中の2つの隣接するセルバンドの長手方向の配向が実質的に平行であるか、または30°以下、25°以下、20°以下、15°以下、10°以下、または5°以下の角度で互いにずれている場合に、好ましい配向が存在する。同じフレークで3つ以上のセルバンドを検出できる場合、測定されたフレークセルバンドのすべての長手方向の配向について平均配向を計算することができ、この平均は、フレークの平均優先長手方向配向(average preferred longitudinal orientation)とも呼ばれる。いくつかの実施形態において、フレークの各セルバンドの長手方向の配向は、平均優先長手方向配向から、20°以下、15°以下、10°以下、または5°以下の角度だけずれる。統計的有意性を得るための平均値からこのような偏差(ずれ)に対して、所与のフレークについて分析され、かつ関連する倍率で使用される顕微鏡によって提供される視野内にあるセルバンドの数は、好ましくは3つのセルバンド以上、4つのセルバンド以上、5つのセルバンド以上、6つのセルバンド以上のものでなければならない。好ましくは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、または少なくとも30のセルバンドが、分析されるすべての画像にわたって合計で分析されるべきである。このような測定は、捕捉した画像に対して手動で行うことができ、訓練を受けたオペレーターが、任意のセットのx-y座標内で単一フレークの各セルバンドの長手方向軸が一般的に従う角度を決定し、それから、フレークのセルバンドの長手方向の平均角度および、それらのそれぞれがすべてのセルバンドの平均角度から(つまり、平均優先長手方向配向から)どれだけずれるかを計算する。各フレーク(または単一のフレークを包含する場合は各画像 の平均角度は、顕微鏡のレンズに対するサンプルの配向に依存し得るため、それ自体には意味がない。各セルバンドによって形成される角度から差し引くと、対応するフレークの平均優先配向の角度により、フレークの各セルバンドに正または負の値を割り当てることができ、符号は、優先配向に対するセルバンドの位置を示している。本明細書では単一フレークの偏差の正規化と称されるこの操作は、特定の画像の多数のフレークおよび/または多数の異なる画像の多数のフレークに対して繰り返される。同様に調製された(例えば、同じバッチの)フレークの十分な量のセルバンドに対するそのような正規化された偏差の蓄積により、測定した正規化された偏差のすべての絶対値の平均値を計算することができ、これらは、セルバンドを表示する複数のフレークの優先配向からの平均偏差(MeanDev)、および前記平均値からのすべての個々の正規化された偏差の標準偏差(STDDev)と称することができる。
【0129】
いくつかの実施形態において、そのような細長いセルブロックを含む複数のフレークの各セルバンドの長手方向の配向は、複数のフレークの各フレークについて個別に正規化された優先配向からの平均偏差(MeanDev)が20°以下、15°以下、10°以下、または5°以下であるようなものである。特定の実施形態において、平均偏差MeanDevからのすべての正規化された偏差の標準偏差STDDevは、平均偏差MeanDevの10°以下、7.5°以下、5°以下である。セルバンドの長手方向の配向およびそれらの相対的な方向に関連するそのような測定は、代替的に、同じ原理に沿って適切な画像解析プログラムによって自動的に実施することができる。
【0130】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、脆弱化ロッド34が隣接する供給シリンダ22(装置100のいずれかに示されているように)に対して所与の方向(例えば、時計回りまたは反時計回り)に回転すると、供給シリンダの材料は同じ方向に引き伸ばされ、結果として得られるフレークの平面状表面内のセルバンドの優先配向をもたらす。
【0131】
本教示に従って調製された金属フレークにおける優先配向を有するセルバンド(細長いセルブロック)の存在は、そのような金属フレークを区別し、かつ特徴的であるとみなされることに留意されたい。いくつかの実施形態において、この現象は、フレークの(数で)少なくとも2%で観察することができる。いくつかの実施形態において、フレークディスプレイの集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも30%(数で)が、そのようなセルバンドを示し得る。従来的に生産された金属フレークにはそのような特徴が欠如しており、また例えばPVDによって生産されたフレークの場合のように、その平面状表面にセルブロックもしくはセルバンドが無い、または例えばボールミル粉砕によって調製されたフレークの場合、セルブロック(存在する場合に)は、平面図から観察すると、通常はランダムに配向されている場合のように、いかなる優先配向も欠如する。
【0132】
ここで開示される主題のいくつかの実施形態による、フレークの内部構造を示すフレークの画像1100である図11Aを参照する。図11Aは、フレークの表面において優先配向を有するセルバンド1110の一例を示す画像である。画像は、倍率20,000倍、開口サイズ30μm、EHT 30KV、明視野と暗視野との混合、および低ゲイン範囲を含むSTEMを使用して撮影された。供給シリンダ22の材料は、図に示すフレークではAl 1199であったが、その他の金属または合金のフレークにおいて付加的にセルバンドが観察された。図11Bは、図11Aに示されるようなフレーク内部構造の部分的な図解であり、便宜上、いくつかのセルバンドおよびそれらの輪郭が概略的に描かれている。
【0133】
追加的または代替的に、本発明要旨のいくつかの実施形態によるフレークは、金属フレークで観察されたセルバンドが保持され、約350℃までの温度でさえフレークがアニーリングを受けたときに再結晶化が起こらなかったことを特徴とした。例えば、フレークは、Al 1100、Al 1199、またはAl 6061で作られた、主にアルミニウムを含む供給シリンダ22から生産された。フレークは、Marcol(登録商標)82(フレーク剥離中に使用された可能性がある)など、アニーリングに適合する高温まで加熱を維持できる流体に分散された。分散液(dispersions)を少なくとも1時間、100℃~350℃の間において50℃刻みでいくつかの所定の温度まで加熱し、かかる条件は、既存のセルブロックまたはセルバンド境界を破壊するのに理論的に十分である。STEM画像は前述のように捕捉され、装置から収集された、および/または本教示による方法によって調製された金属フレークで観察されたセルバンドは、それらが受けた加熱処理に関わらず、驚くべきことに保持されていることが発見された。これは対照的に、例えば、主にアルミニウムを含むバルク材料を冷間圧延(cold roll)した場合、そのセルブロックのパターンは230℃で再結晶すると報告されており、該ブロックの形状および境界は、このような温度で1時間加熱すると破壊される。
【0134】
特定の理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、冷間圧延されたバルク材料は十分な量の材料を含むため、アニーリングプロセス中にバルクからの材料が流動し、既存のセルバンドを破壊する、例えば、新しい粒子をセルバンドの境界に出現させ、その後融合してより大きな粒子を生成し、それによってセルバンドを破壊すると仮定している。対照的に、本発明要旨のいくつかの実施形態による各フレークは比較的少量の材料を含み、フレークはバルク材料と比較して比較的薄いため、アニーリングプロセス中に流動する可能性が低く、したがって最大で350℃では、アニーリング前に検出されたセルバンドが依然として観察され、再結晶は観察されなかった。
【0135】
加熱速度、アニーリング温度および持続時間、冷却速度(サンプルが周囲温度までの受動的な冷却ではなく、制御されたレジメンの下で冷却される場合)、焼き入れ(quenching)条件(存在する場合)、並びにそのような実験に適した雰囲気(例えば、圧力、真空条件、またはガスの存在に関して)を含むアニーリング条件は、冶金(metallurgy)の当業者は容易に理解することができる。本開示のフレークは、それらが作られるバルク材料に適合した条件下でアニーリングによって通常引き起こされる変化に対する耐性について試験することができるが、それらの微細な寸法は、金属薄膜に適するようなより温和な条件(例えば、より低い温度のアニーリングおよび/またはより短い持続時間)を使用することを許容することができる。いくつかの実施形態において、アニーリングは、150℃~1,000℃の間、200℃~750℃の間、または250℃~500℃の間のアニーリング温度で実施することができる。いくつかの実施形態において、加熱速度は、少なくとも毎分1℃、少なくとも毎分5℃、少なくとも毎分10℃、少なくとも毎分20℃、または少なくとも毎分40℃である。一部の金属は空気中および通常の雰囲気下でアニーリングできるが、他の金属は真空条件下または不活性ガス下でアニーリングすることでメリットが得られる場合がある。選択した金属フレークおよびアニーリング温度に応じて、アニーリングの持続時間は30分ほど短く、または3時間ほど長くなる可能性があるが、一般に、アニーリング中に保存可能なフレークの特性を確立する試験は、適切なアニーリング温度で1時間実施された。
【0136】
追加的または代替的に、本教示に従って調製されたフレークは、実質的に滑らかであり得る。例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を使用してチェックできるように、比較的小さなフレークの線表面粗さ(line surface roughness)(Ra)は、10nmの二乗平均平方根(rms)以下、8nm rms以下、6nm rms以下、4nm rms以下、または2nm rms以下であり得る。比較的大きなフレークの場合、適切なレーザー共焦点顕微鏡を使用して確認できる面粗さ(area roughness)(Sa)は、50μm以下、40μm以下、30μm以下、または20μm以下であり得る。参考までに、このような値は、PVDフレークに匹敵する滑らかなフレークの表面を示し、ボールミルで粉砕されたフレークよりもやや滑らかである。例えば、Al 1199製の供給シリンダ22の場合、そこから得られるフレークの線表面粗さは約2nm二乗平均平方根(rms)であり得るのに対し、PVDフレークは、約1~2nm rmsの線表面粗さを有し、ボールミルで粉砕されたフレークは、約3~6nm rmsを有し得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、本教示によるフレークの一方の平面は、フレークの表面の比較的滑らかな背景上で検出可能なパターンを示し、フレークの反対側の面にはそのようなパターンが欠如していた。パターンの反復形状は、必ずしも規則的である必要はなく、互いに同一でもなく、フレーク面の一方の端縁から他方の端縁まで現れる必要もなく、したがって、本教示に係るフレークの一面に表示されるパターンは、いくつかの実施形態においては、フレーク平面状表面の少なくとも一部に存在する。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、第1の材料のフレークで観察されるパターンは、第2の材料のフレークで観察されるパターンとは異なるため、両方の材料のフレークは、同様の条件下で、特に同じ反応ロッドを使用して調製されたものであり、発明者らは、パターンが本明細書に開示されたプロセスから生じたものであり、人為的な実験的エラーまたは欠陥からではないと仮定している。例えば、フレークの表面の凹んだパターンは、脆弱化ロッドの表面の対応する突起によって本質的に生成されるわけではないと考えられている。このようなパターンは、フレーク面の表面の上か下かに関わらず特徴的であると見なされ、従来の方法で調製された同じ材料のフレークでは観察されなかった。
【0138】
そのようなパターンを構成する反復形状は、直線または曲線、または本明細書では「条痕」とも呼ばれる、そのような細長いマークであり得る。一実施形態において、フレークの片面にパターンを形成する条痕は、フレークの表面に対して窪んでいる(例えば、鋸歯、溝、または深溝(trenches)を形成する)。別の実施形態において、条痕はフレークの表面に対して突起である(例えば突出部を形成している)。予想されるように、フレークをさらに粉砕して寸法およびアスペクト比を修正すると、このような条痕が保持される。
【0139】
セルバンドは通常、金属または合金でできた金属フレークで検出されるが、条痕のパターンは、存在する場合において、追加の材料(セラミック、プラスチック、ガラスなど)のフレークでも観察できる。条痕は典型的には細く、その平均幅は、比較的高い硬度を有する供給材料から作られたフレークでは一般に比較的小さく、比較的低い硬度を有する供給材料から作られたフレークでは典型的には比較的大きい。いくつかの実施形態において、条痕は、条痕が現れるフレーク面の平面状表面との基準レベルで測定したときの、フレークの平均厚さの5%までの平均幅を有する。いくつかの実施形態において、条痕の平均幅は、フレークの厚さの少なくとも0.5%および最大で4%、またはフレークの厚さの0.5%~3%の間、またはフレークの厚さの0.5%~2%の間である。いくつかの実施形態において、条痕の平均幅は、最大20nm、最大15nm、最大10nm、または最大5nmである。
【0140】
窪んだ条痕の平均深さ(または突出条痕の平均高さ)は、典型的にはフレークの平均厚さの20%までである。いくつかの実施形態において、各条痕は、フレークの平均厚さの15%以下、10%以下、または5%以下の深さ/高さだけ、フレークの平面状表面に対して独立して窪む/突出し得る。いくつかの実施形態において、条痕の平均深さ(または高さ)は、最大25nm、最大20nm、最大15nm、または最大10nmである。
【0141】
金属フレークのセルバンドに関しては、いくつかの実施形態において、フレーク面の条痕は優先配向を有し、細長いマークはそれぞれ、フレーク上で測定されたすべての条痕の平均配向から30°を超えない、25°を超えない、20°を超えない、15°を超えない、10°を超えない、または5°を超えない角度でずれる長手方向の配向を有する。統計的有意性を得るために平均値からの偏差を得るには、所与のフレークについて分析され、また、関連する倍率で使用される顕微鏡によって提供される視野内にある条痕の数は、好ましくは十分に多くあるべきであり、細長いセルブロックについて以前に詳述された考慮事項および計算は、必要な変更を加えて線形マークに適用される。
【0142】
いくつかの実施形態において、本教示に従って調製されたフレークの面上に見られ得るパターンは、パターンの任意の2つの隣接する条痕の間の距離によってさらに特徴付けることができる。そのような平均距離(または隣接する条痕の間のピッチ)は、2μm以下、1μm以下、500nm以下、250nm以下、100nm以下のものであり得る。場合によっては、パターンの隣接する条痕の間のピッチは、50nm以下、40nm以下、または30nm以下のものであり得、ピッチは任意で少なくとも10nmのものである。
【0143】
説明したように、そのような条痕パターンは、フレークの片面のみに現れ得る。さらに、それらは、本教示に従って調製されたフレークの集団のすべてのフレークに現れる必要はない。それでも、フレークの少なくとも2%(数で)におけるそれらの存在は、本方法で調製されたフレークを従来のフレークと区別するのに重要かつ十分であるとみなされる。いくつかの実施形態において、フレークの集団の少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、または少なくとも30%(数で)が条痕のパターンを示し、そのようなパターンは集団の最大で50%(数で)で示される。
【0144】
本開示の主題のいくつかの実施形態による、フレークの表面の画像1200である図12Aを参照する。図12Aは、フレークの表面上に優先配向を有する条痕1210の一例を示す画像である。画像は、倍率20,000倍、開口サイズ30μm、EHT 1KV、明視野と暗視野との混合、および低ゲイン範囲を含むSEMを使用して撮影された。供給シリンダ22の材料は、図に示されるフレークの場合、PMMAからなるプラスチック材料であったが、金属(例えばアルミニウム)および合金(例えばステンレス鋼)にも細長いマークが観察された。図12Bは、図12Aに示されるフレークの部分的な図解であり、便宜上、いくつかの条痕が概略的に示されている。
【0145】
脆弱化ロッドが比較的滑らかで、最大約500nmの平均粗さである場合、またはパターン化されていない(テクスチャーのないロッドおよび、やや粗いロッドを含む)場合に、セルバンドおよび条痕が観察できる。本方法によって調製されたフレークのこれらの2つの特徴は、相互に排他的ではなく、両方とも金属フレークの同じ集団で観察され得る。第3のタイプのフレークの特徴は、以下に詳述するように、粒界が破壊されているように見えるが、これは、フレークがテクスチャー加工された脆弱化ロッドのカテゴリーに属する、比較的高い粗さを有する脆弱化ロッドまたはパターン化された脆弱化ロッドで生産された場合に優先的に観察された。
【0146】
ここで開示される主題のいくつかの実施形態による、フレークの内部構造を示すフレークの画像1300である図13Aを参照する。図13Aは、多かれ少なかれ破壊された境界を有する一連の「リング」として現れる粒界破壊1310の一例を示す画像であり、ループは互いの中に配置され、コア部分を非対称に囲む。そのような特徴は、簡潔にするために、渦巻きパターンと称してもよい。画像は、倍率20,000倍、開口サイズ30μm、EHT 30KV、明視野と暗視野との混合、および低ゲイン範囲を含むSTEMを使用して撮影された。供給シリンダ22の材料は図に示したフレークではAl 6061であったが、このような渦巻きパターンは他の金属または合金のフレークでも観察された。図13Bは、図13Aに示されるようなフレーク内部構造の部分的な図解であり、いくつかのセル境界の輪郭は、便宜上、渦巻きパターンの視覚化を助けるために概略的に描かれている。
【0147】
本教示の産業上の利用可能性は、とりわけ金属フレークによって表示できるような視覚効果によって簡潔にするために評価された。このような効果は、フレークを収集した流体中で肉眼により容易に検出でき、必要に応じて定量化できる。例えば、金属フレークを平坦表面上に塗布した後の光沢およびヘイズは、標準的な方法で測定できる。例えば、揮発性溶媒(例えば、IPA)中に10重量%のフレークを含む分散液を、顕微鏡ガラススライド上にドロップキャスティングすることによって付与することができ、溶媒が蒸発するにつれてフレークをスライドの表面に整列させることができる。次いで、粒子の乾燥層を第2のガラススライドで覆うことができ、下側(フレークが堆積した表面に対応する)を光沢および/またはヘイズの測定として機能させることができ、例えば、標準的な機器を使用して、表面の法線から20°の角度で測定する。必要に応じて、流体が意図した測定に影響を与える可能性がある場合、スライドに付与する前に、装置で使用される該流体の残留物をフレークから除去してもよい。例えば、本教示に従って調製されたアルミニウムフレークは、200~1,000光沢度(GU)の間、より典型的には400~1,000GUの間、または600~800GUの間を示した。比較として、市販のボールミルで粉砕されたフレークは、同じ条件下で100~600GUの範囲の光沢を与え得るが、通常は200GU以下である。本発明のフレークによって生じ得るヘイズに関して、そのように調製されたコーティングは、500~1,400ヘイズ単位(HU)、一般に1,000HU以下のヘイズ値を示した。必要に応じて、生産されたフレークの中から適切なサブ集団を選択(サイズ分類など)することで、改善された結果を得ることができる。
【0148】
要約すると、本教示に従って調製されたフレークは、当業者に知られている手順に従い適切な機器によって日常的に測定することができるように、以下の構造的特徴、すなわち、
i)フレークは、1つ以上の金属を含むか、またはそれらからなる場合、それらの平面状表面内に細長いセルブロック(本明細書ではセルバンドと呼ばれる)を示し、各セルバンドの長さは、同じセルバンドの幅の少なくとも2倍である、
ii)フレークのセルバンドは優先配向を有し、フレークの1つのセルバンドの長手方向の配向が、同じフレーク内の隣接するセルバンドの長手方向の配向から30°未満ずれている、
iii)フレークのセルバンドは優先配向を有し、すなわちフレークの各セルバンドの長手方向の配向が、同じフレーク内のすべてのセルバンドの長手方向の配向の平均から25°未満ずれている、
iv)フレークのセルバンドは優先配向を有し、すなわちフレークの各セルバンドの長手方向の配向が、複数の同様のフレークのすべてのセルバンドの長手方向の配向の平均から20°未満ずれている、
v)フレークは、優先配向を有する平面状表面条痕を示し、条痕の各長手方向の配向は、隣接する条痕の長手方向の配向から30°未満ずれている、
vi)フレークは、優先配向を有する平面状表面条痕を示し、フレークの各条痕の長手方向の配向は、同じフレークのすべての条痕の長手方向の配向の平均から25°未満ずれている、
vii)フレークは、優先配向を有する平面状表面条痕を示し、フレークの各条痕の長手方向の配向は、複数の同様のフレークのすべての条痕の長手方向の配向の平均から20°未満ずれている、
viii)条痕は、フレークの平面状表面と水平になるベースで測定して、20nm以下の幅を有する、
ix)条痕は、フレークの平面状表面と水平になるベースで測定して、フレークの平均厚さの最大5%の幅を有する、
x)条痕は、フレークの平面状表面に対して凹んでおり、各条痕は独立して最大25nmの深さを有する、
xi)条痕は、フレークの平面状表面に対して突起しており、各条痕は独立して最大25nmの高さを有する、
xii)条痕は、フレークの平面状表面に対して窪んでおり、各条痕は独立してフレークの平均厚さの最大20%までの深さを有する、
xiii)条痕は、フレークの平面状表面に対して突起しており、各条痕は独立してフレークの平均厚さの最大20%までの高さを有する、
xiv)条痕は、2μm以下のピッチで互いに分離されている、
xv)フレークは、1つ以上の金属を含むか、またはそれらからなる場合、それらの平面状表面内に渦巻きパターンを示し、各渦巻きパターンのコア部分を囲む「リング」の幅は最大で1μmである、
xvi)フレークは、アルミニウムを含むかまたはアルミニウムからなる場合、XRD分析により、少なくとも約38.56°(<111>)に第1の回折ピークおよび約44.81°(<200>)に第2の回折ピークを示し、ここで、第1の回折ピークの相対強度と第2の回折ピークの相対強度との間の比率XRDRatioは、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、または0.80以上である、
xvii)フレークは、アルミニウムを含むかまたはアルミニウムからなる場合、XRD分析により、少なくとも約38.56°(<111>)に第1の回折ピークおよび約44.81°(<200>)に第2の回折ピークを示し、ここで、第1の回折ピークの相対強度と第2の回折ピークの相対強度との間の比率XRDRatioは、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.75以下、または1.70以下である、
xviii)フレークは、アルミニウムを含むかまたはアルミニウムからなる場合、XRD分析により、少なくとも約38.56°(<111>)に第1の回折ピークおよび約44.81°(<200>)に第2の回折ピークを示し、ここで、第1の回折ピークの相対強度と第2の回折ピークの相対強度との間の比率XRDRatioは、0.40~2.00の間、0.45~1.75の間、0.50~1.70の間、または0.80~1.70の間である、
xix)フレークは、200μm以下、150μm以下、または75μm以下の平均最長長さ、すなわちD50を有する、
xx)フレークは、50nm以上、250nm以上、または1,000nm以上の平均最長長さ、すなわちD50を有する、
xxi)フレークは、50nm~200μm、250nm~150μm、または1,000nm~75μmの平均最長長さ、すなわちD50を有する、
xxii)フレークは、20μm以下、5μm以下、2μm以下、または1μm以下の平均厚さを有する、
xxiii)フレークは、10nm以上、20nm以上、または30nm以上の平均厚さを有する、
xxiv)フレークは、10nm~20μmの間、20nm~5μmの間、30nm~2μmの間、または30nm~1μmの間の平均厚さを有する、
xxv)フレークは、フレークのD50と平均厚さとの間の平均アスペクト比が、5,000:1以下、1,000:1以下、800:1以下、600:1以下、または400:1以下である、
xxvi)フレークは、フレークの平均最長長さ、すなわちD50と平均厚さとの間の平均アスペクト比が、3:1以上、5:1以上、10:1以上、または20:1以上である、
xxvii)フレークは、フレークの平均最長長さ、すなわちD50と平均厚さとの間の平均アスペクト比が、3:1~5,000:1の間、5:1~1,000:1の間、10:1~800:1の間、20:1~600:1の間、または20:1~400:1の間である、の構造的特徴の1つ以上によって特徴付けることができる。
【0149】
いくつかの実施形態において、本教示に従って調製されるフレークは、上記の27の構造的特徴を含む、本明細書に列挙される特徴の中の2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、または任意の他の適切な組み合わせによって特徴付けられ得る。例として、フレークが金属以外の材料から生産される場合、フレークは、特徴v)~xiv)およびxix)~xxvii)を含むグループから選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上の特徴を示し得る。フレークがアルミニウムから生産される場合を含め、金属材料から生産される場合、フレークは、特徴i)~xv)およびxix)~xxvii)を含むグループから選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上の特徴を示し得る。フレークがアルミニウムから生産される場合、フレークは、特徴i)~xxvii)を含む群から選択される2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上の特徴、例えば、a)フレークの平面におけるセルバンドの存在に関連する特徴(例えば、i)~iv)のいずれか1つ以上)と、フレークの表面上の条痕の存在に関連する特徴(例えば、v)~xiv)のいずれか1つ以上)との組み合わせ;b)フレークの平面におけるセルバンドの存在に関連する特徴(例えば、i)~iv)のいずれか1つ以上)と、フレークの表面上の条痕の存在に関連する特徴(例えば、v)~xiv)のいずれか1つ以上)と、フレークの寸法に関する特徴(例えば、xix)~xxvii)のいずれか1つ以上)との組み合わせ;c)特定のXRD結果に関連する特徴(例えば、xvi)~xvii)のいずれか1つ以上)と、フレークの平面における渦巻きパターンの存在に関連する特徴(例えば、xv))と、フレークの寸法(例えば、xix)~xxvii)のいずれか1つ以上)との組み合わせ;などを示し得る。XRDの結果が利用可能である場合、本方法によって生産された金属フレーク、特にアルミニウム製のフレークは、いくつかの実施形態において、アニーリングの前後に同様の結晶学的構造を保持する能力によってさらに特徴付けることができ、保存された結晶学的特徴は、回折のピークおよびそれらの相対比を含み、特に、第1の回折ピークの相対強度(<111>)と第2の回折ピークの相対強度(<200>)の間のXRDRatioが非常に類似している。
【実施例
【0150】
本発明者らは、上述の様々なパラメーターを変化させる効果を評価するためにいくつかの実験を行った。すべての実験で、本明細書に記載の範囲内でフレークを生産した。図1図5に示すような装置でテストしたいくつかの組み合わせを表1にまとめるが、各実験の詳細な条件は、英国特許公開第2593768号に記載されているため、ここでは繰り返していない。関心のある読者は、同時に出願された PCT出願番号PCT/IB2021/052742「Apparatus For Making Flakes」(Agent Ref. LIP 16/006 PCT)も参照し、様々な供給シリンダ、支持シリンダ、および脆弱化ロッドが、例示された支持構造体によって支持され、軸支される方法のより詳細な説明を参照し、ならびに、様々な材料およびサイズの供給シリンダを使用して、フレークの生産に影響を与える様々なパラメーターの適切な値に関する詳細情報の提供を受けてほしい。両方の出願は、本明細書に完全に記載されているかのように、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
表では、シリンダまたは脆弱化ロッドの直径はミリメートル(mm)で提供され、供給シリンダの場合は実験開始時の初期直径を参照する。それ以外の場合で、同様のアセンブリが、異なる直径のシリンダまたはその脆弱化ロッドの粗さのテクスチャー加工でテストされた場合(例えば、粗さ(nmで提供))、反応ロッド(μm単位で提供)のコーティングおよび/またはパターニング、そのような値はすべて、関連するセルにリストされている。略語表現のために、NCは脆弱化ロッドがコーティングされていないことを意味し、NPは脆弱化ロッドがパターン化されていないことを意味する。ロッドがパターン化されている場合、関連するセルにはパターンのパラメーターがリストされることになる。したがって、以下の表の単一の行(項目番号)が、複数の異なる実験を参照している場合がある。このような実験は、以下の流体(以下の表において頭字語が括弧内に示されている)、空気、再蒸留水(DDW)、ブタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、クロロホルム(CHCl)、ヘキサメチルジシロキサン(M2)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)、Isopar(商標) E、Isopar(商標) L、Isopar(商標) M、Marcol(登録商標) 82、およびそれらの組み合わせを用いて行われ、該液体流体には表2で詳細に報告されているように、任意に添加剤が補充される。
【0152】
【表1-1】
【表1-2】
【0153】
以下の表では、先に表1で報告した実験に含まれる添加剤を詳述しており、BTAはベンゾトリアゾールを指し、LCTはレシチンを指し、LUBは牛脂アルキルアミン、オレイルアミン、およびLubrizol(登録商標)として市販されている化合物から選択される耐腐食剤を指し、OAはオレイン酸を指し、ODTはオレイルジプロピレントリアミン(市販のTriameen OVなど)を指し、PEはリン酸エステルを指し、SAはステアリン酸を指し、TFはSantoLubes LLCの収縮性流体Santotrac(登録商標)32を指し、ZDDは耐摩耗添加剤ZDDPlus(商標)を指す。
【0154】
【表2-1】
【表2-2】
【0155】
流体中の添加剤の存在下または非存在下での脆弱化ロッドのテクスチャー加工の効果を、4種類の脆弱化ロッドで試験し、脆弱化ロッドは各実験において1対の供給シリンダの間にあり、それぞれは支持シリンダによって順に支えられていた(つまり、これまでに使用した参照に従って、32、22、34、22、および32と称されるロールのアレイ)。すべてのシリンダおよびロッドの寸法は、接触線が約250mmになるように設計されている。すべての実験で、支持シリンダは直径300mmで、SST 17-4PH製であった。第1の脆弱化ロッド(以下、R341)は炭化タングステン製であり、平均粗さRaが約50nmで直径が10mmの比較的滑らかな外面を有していた。第2の脆弱化ロッド(以下、R342)はタングステンカーバイド製であり、約500nmの平均粗さRaを有する比較的穏やかなテクスチャーの外面を有し、これは、ロッドを回転させながら、該ロッドの軸に沿った方向に前後に移動させたダイヤモンドパッドでロッドの表面をこすることによって達成される。R342は直径10mmで試験した。第3の脆弱化ロッド(以下、R343)はタングステンカーバイド製であり、レーザー彫刻によって規則的にパターニングされ、ギャップ幅Gが150μm、頂端幅Tが350μm、深さDが15μm、および角度αが30°の螺旋溝を示した。R343は直径10mmで試験した。第4の脆弱化ロッド(以下、R344)はステンレス鋼製であり、機械加工によって規則的にパターン化され、160μmのギャップ幅G、240μm頂端幅T、および170μmの深さDを有する一連の環状溝(α=0°)を示した。R344は直径25mmで試験した。
【0156】
この一連の実験で試験された添加剤は、ビス(2-エチル-1-ヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(Aerosol(登録商標)OTの商品名で市販されているような陰イオン界面活性剤)、ココジメチルアミン(Armeen(登録商標)2MCDなどの陽イオンオレイルアミン)、ノニルフェノールエトキシレート(商品名Berol26で入手可能な非イオン性酸化防止剤など)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA、二官能性反応剤)、エトキシル化アミン(Ethomeen(登録商標)C12およびEthomeen(登録商標)O12など)、レシチン、ポリイソブチレンスクシンイミド(Oloa(登録商標)1200など)、およびステアリン酸を含む。
【0157】
それぞれ直径10mmまたは25mmの脆弱化ロッドに対して、供給シリンダを120rpmで回転するように設定しながら、ロッドおよびシリンダのアレイに1,000kg.fまたは2,300kg.fの力を印加した。各実験は1時間続き、その間、添加剤を有するまたは有さないIsopar(登録商標)Lを含む流体をニップに適用した。添加剤を、流体に対して1重量%の濃度で添加し、この量は、この期間中に生産されるフレークの量に対して過剰であるようにする。通常、稼働ごとに約4kgの流体を使用したが、正確な量は稼働ごとに監視した。実験の過程で収集した流体(およびその中のフレーク)を、最初に500μmのふるいでろ過し、粗い破片があれば除去し、次いで一晩沈降した。液体の上澄みを穏やかに除去し、沈殿したフレークが豊富な分画の既知の体積をサンプリングした。各サンプルをIsopar(商標)Lで3回、次いでイソプロピルアルコールで2回リンスし、各リンスの間にフレークを4,000rpmで5分間遠心分離した。最後のリンスサイクルに続いて、フレークを乾燥させ(例えば、100℃に設定したホットプレート上で約15分間)、それらの重量を測定し、実験1時間あたりに生産されたフレークの総重量を計算できるようにした。フレークをさらに分析し、それらの寸法(粒子の体積あたりのDLSによって決定される平均粒子サイズ(μm)、およびFIB顕微鏡によって測定される厚さ(nm)を含む)を次の表3に表記する。
【0158】
【表3】
【0159】
上の表からわかるように、ロッドのテクスチャー加工は、フレークが生産される速度およびフレークの寸法に影響を与え得る。前述の4つのロッドを使用してAl 1100からフレークを生産した稼働番号1、3、8、および18を例にとると、テクスチャー加工の増加は、添加剤の非存在下で生産速度を少なくとも約6倍、最大約22倍増加させられることが観察できる。レシチンの存在下では、稼働番号2、5、16、および19を見ると、比較的滑らかなロッドR341とパターン化されたロッドR344との違いは、同様に生産速度約16倍の増加に至る。Al 6061の場合、脆弱化ロッドのテクスチャー加工の増加(稼働番号6および20を参照)により、生産速度がわずかに低下したため、この効果はフレーク化される材料に依存する。平均フレークサイズへの影響は、生産速度への影響ほど劇的ではなく、現在の実験条件下では材料依存性を残したままであった。稼働番号1および3を比較すると、比較的滑らかなロッドR341をより粗いR342に置き換えてAl 1100をフレーク化した場合、平均サイズが約39μmから17μmに減少することが観察され、一方、稼働番号6および20を比較すると、比較的粗いロッドR342をパターン化されたロッドR344に置き換えてAl 6061をフレーク化した場合、平均サイズが約31μmから51μmに増加することが観察された。したがって、フレーク化する材料の供給シリンダに適した脆弱化ロッドおよび動作条件を適切に選択することによって、本方法は、所望の寸法を有するフレークの生産を促進することができ、前記生産は、比較的高い生産速度でフレークを提供するように追加的または代替的に最適化される。適切な条件は、経験的に決定できる。
【0160】
表3に提示された結果は、生産速度およびフレークの寸法の同じパラメーターに対する様々な添加剤の効果も示している。説明のために、Al 1100で達成された生産速度に対するレシチンの存在の効果を考慮すると、この例示的な添加剤は、添加剤なしで達成された生産量の少なくとも1.7倍(ロッドR342の場合)、最大3.5倍(ロッドR344の場合)に増加したことがわかる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、各タイプの脆弱化ロッドは、様々な材料に対して様々なタイプの脆弱化効果を発生させ得ると考えられている。脆弱化効果の中には、供給シリンダの外面での亀裂(cracks)の形成、亀裂の発生(表面下で異なって進行し得る)、いくつかの添加剤の存在下での亀裂の伝播を含むものがあり、それらのいくつかはフレーキングを助長する。パターン化されたロッドR343を使用してAl 1100からフレークを生産する際に様々な添加剤を使用した稼働番号8~17の結果を比較することでわかるように、このような添加剤の効果は、その化学的性質にも依存し得る。比較的効力の低い添加剤(稼働番号9および15を参照)では、生産速度が約2倍に増加したが、本研究で試験された最も強力な添加剤である稼働番号17のステアリン酸は、9倍の増加をもたらした。この同じ添加剤もまた、添加剤なしの場合の約41μmと比較して、約63μmという増加した平均サイズを有するフレークを生産した。試験した他の3つの添加剤(稼働番号11、13、および14を参照)も、フレークのサイズ(および生産速度)の大幅な増加を示した。
【0161】
ちなみに、DV50の測定によって評価される平均粒子サイズは、添加剤の存在によって影響を受けるただ一つの寸法ではない。表3に報告された結果から、適切な添加剤を選択することによってフレークの厚さも制御できることがわかる。場合によっては、添加剤がフレークの平均サイズおよびそれらの平均厚さを変更し、生産されたフレークが、この特定の添加剤を使用した場合、添加剤なしまたは別の添加剤を使用した場合と比較して同様のアスペクト比を保持することができる。稼働番号6および7の例を参照すると、これらは、添加剤によってフレークの寸法が変更されたにもかかわらず、比較的類似したアスペクト比を示している。あるいは、添加剤は、フレークの平均サイズおよび/またはそれらの平均厚さを、生産されるフレークのアスペクト比が著しく影響を受ける程度に、および/または反対方向に変更し得る。稼働番号14を参照すると、Ethomeen(登録商標)O12によってフレークの平均サイズが約41μmから67μmに増加し、同時にフレークの平均厚さが約45nmから150nmに劇的に増加した。したがって、アスペクト比は、添加剤がない場合の約1:911から約1:447にシフトした。稼働番号20および21を参照すると、Al 6061でこの添加剤を使用することにより、同様の効果が観察された。表で報告されているように、他の添加剤はフレークの厚さと平均サイズとの間のアスペクト比に影響を与えた。
【0162】
本方法によって生産されたフレークのいくつかの特徴を分析するために実験を行い、それらの結果を上記で報告した。細長いマーク、細長いセルブロック、渦巻きパターン、それらの寸法、間隔または相対配向、ならびにフレークの寸法などの特性を同定するために、さまざまな顕微鏡技術を使用してきた。その他のフレークの寸法は、DLSによって評価した。前述の技法はすべて、報告された特徴の開示時に言及されており、また任意の適切な機器を使用することにより同様の測定を独立して実施できる当業者に知られている。
【0163】
XRDによるアルミニウムフレークの結晶学的構造の分析を、圧縮フレークのペレットで実施した。約0.6gのフレークを、直径13mm、深さ25mmのステンレス鋼の金型に入れた。フレークを、約2.5~5mmの厚さを有する凝集ペレットが形成されるまで、最大5分間、最大170MPaの増加する圧力で圧縮した。ペレット1および2は、Al 6061から調製されたフレークで作り、ペレット3は、Al 1100から調製されたフレークで作った。次いで、ペレットをXRD(Malvern Panalytical社のX'Pert)によって、0.013°のステップサイズおよび13.77秒のスキャンステップ時間によって10~157°の範囲の1シータ~2シータのセットアップを使用して分析した。発散スリットを、10mmのビーム幅に対応する0.4354°に固定した。使用したアノード材料はCuで、発電機の設定は40mAおよび45kVであった。一般的に必ずしもではないが、減少する強度の回折ピークが、約38.56°、44.81°、65.17°、78.33°、82.53°、99.18°、112.05°、116.65°および137.46°で検出され、それぞれ、面方位<111>、<200>、<220>、<311>、<222>、<400>、<331>、<420>、および<422>に対応する。各ペレットで検出されたすべての回折ピークの強度を合計し、その後、各ピークの相対強度をすべてのピークの合計強度のパーセンテージとして計算した。4つの最も高い回折ピークについての計算値を、以下の表4に表記し、他のピークは5%未満の相対強度を有する。
【0164】
【表4】
【0165】
3番目の回折ピーク以降の相対強度は、試験した3つのサンプルで比較的類似していたため、最初の2つのピークから得られた結果を使用して、ペレットを構成するフレークをさらに特徴付けた。第2の回折ピーク(<200>)に対する第1の回折ピーク(<111>)の相対強度の比(XRDRatio)が、この目的に適していることが判明した。いくつかの実施形態において、アルミニウムフレークの上記比率は、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.60以上、0.70以上、または0.80以上である。上記比率は、2.00以下、1.90以下、1.80以下、1.75以下、または1.70以下であり得る。いくつかの実施形態において、約44.81°(<200>)の第2回折ピークに対する約38.56°(<111>)の第1回折ピークの相対強度の比は、アルミニウムフレークのペレットについてXRDで測定すると、0.40~2.00の間、0.45~1.75の間、0.50~1.70の間、または0.80~1.70の間である。
【0166】
本方法によって生産されたフレークは驚くべきことに、アニーリング中に、STEMによって視認可能な細長いセルバンドなどの、顕微鏡分析によって検出可能な結晶学的特性を保持する能力を示したため、この現象についてXRD研究を実施することによってさらに調査した。温度を毎分20℃ずつ段階的に約350℃まで上げ、この高い温度で1時間維持するこのようなプロセスの前後におけるアルミニウムフレークのXRDパターンを比較した。ペレット1および2のアニールされたバージョンに対応するサンプルは、上記のように試験され、アニーリングの前後で同様の強度(および位置)の回折ピークを示すことが判明し、したがって、特に本明細書に記載のXRDRatioによって表されるように、同じ結晶学的構造を実質的に保存する。ペレット1のアニールされたバージョンは、39.7%の相対強度を有する第1の回折ピーク(<111>)および21.1%の相対強度を有する第2の回折ピーク(<200>)を示し、アニーリング前の1.73と比較して、1.88のXRDRatioをもたらした。ペレット2のアニールされたバージョンは、32.6%の相対強度を有する第1の回折ピーク(<111>)および20.6%の相対強度を有する第2の回折ピーク(<200>)を示し、アニーリング前の1.64と比較して、1.58のXRDRatioをもたらした。
【0167】
同じ条件下で比較のために試験された市販のアルミニウムフレークは、逆に、回折のピークのいくつかの消失および、アニーリングの前後での相対強度の比の大幅な変更を示したため、上記は予想外のことであった。逸話的には、市販のフレークのアニーリングにより、外観が劇的に変化し、ある場合は銀色から暗い色に、別の場合には白色になったが、現在の方法で生産されたフレークは、同様の銀のような外観を保持した。これは、本開示のフレークが、化学的酸化防止剤に関わらず、そのような薬剤はアニーリングプロセス中に破壊されるだろうことから、酸化に対してより良好に保護されることを示唆している。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本プロセスは、コアアルミニウムの酸化を防止、低減、または遅延させるのに十分な程度まで、アルミナの保護シェルの形成を可能にし、このコーティングは、市販のフレーク上に形成された自然酸化物とは(例えば、化学組成または結晶構造によって)異なる可能性があると考えられる。これはアニーリングの極端な条件下で実証されたが、通常の保管条件下でも観察された。したがって、いくつかの実施形態において、フレークは、アニーリングの前後で保存することができ、かつ、非常に類似した外観を有する。
【0168】
本研究を要約すると、本方法によって生産されたフレークは、アニーリング中に経験するような高温下で比較的安定している。この安定性は、フレークの外観およびその結晶学的構造を包含しており、熱処理の前後で比較的類似したままである。本フレークおよびそれらを含む組成物を特徴付けることができ、また、いくつかの実施形態においては、フレークのアニーリング中にさらに保存することができる結晶学的構造は、a)細長い条痕、細長いセルブロック、および渦巻きパターンからなる群から選択される、顕微鏡分析によって検出可能な結晶学的構造、および、b)回折ピークの位置、特定の位置における回折ピークの相対強度、および2つの特定の位置における任意の2つの回折ピーク間の比からなる群から選択される、X線回折によって検出可能な結晶学的構造であり得る。いくつかの実施形態において、比較のために考慮される特徴(例えば、OD、光沢度、条痕、セルブロック、または渦巻きパターンの寸法もしくは配向、XRD結果など)は、2つの時点での測定値がその2つの最高値の10%以内である場合、アニーリングの前後でほぼ類似していると見なされる。ペレット1および2のXRD結果を説明すると、第1の回折ピークは、アニーリング前の相対強度がそれぞれ37.4%または33.7%であり、アニーリング後の相対強度が39.7%または32.6%であるため、39.7%±4.0%の範囲内にあるペレット1の第1のピークおよび、33.7%±3.4%の範囲内にあるペレット2の第1のピークは、アニーリングの前後でほぼ類似している。現在のXRD比較において、同様の計算に基づくと、ペレット1および2の第2の回折ピーク、ならびにそれらのXRDRatioもほぼ類似している。いくつかの実施形態において、2つの値が、その2つの値の最大値の8%以内、6%以内、4%以内、または2%以内である場合、ある特徴の測定値は、アニーリングの前後でほぼ類似し得る。
【0169】
例示のために、本開示は特定の実施形態および一般的に関連する方法に関して説明されてきたが、実施形態および方法の変更および置換は、本明細書における出願人の開示に基づいて当業者には明らかであろう。本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって限定されないと理解されるべきである。そのようなすべての代替、修正、および変形を包含し、開示の精神および範囲、ならびにそれらの意味および同等の範囲内にある変更によってのみ拘束されることを意図している。
【0170】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で説明される本開示の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で説明されている本開示の様々な特徴は、別個に、または任意の適切なサブコンビネーションで、または本開示の任意の他の説明された実施形態で適切に提供されてもよい。実施形態がそれらの要素なしでは機能しない場合を除き、様々な実施形態の文脈で説明される特定の特徴は、それらの実施形態の必須の特徴とみなされるべきではない。
【0171】
特に明記しない限り、選択肢のリストの最後の2つの要素の間で「および/または」という表現を使用すると、選択肢の1つまたは複数を選択することが適切であり、実行できることを示している。
【0172】
「例示的な(exemplary)」という言葉は、本明細書では、「例、実例、または図示として機能する」ことを意味するために使用される。「例示的」として説明される実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではなく、および/または他の実施形態からの特徴の組み込みを除外すると解釈されるべきではない。
【0173】
本開示では、別段の記載がない限り、特徴または本技術の実施形態の特徴の条件または関係特性を変更する「ほぼ(substantially)」、「おおよそ(approximately)」および「約(about)」などの形容詞は、条件または特性が、意図された用途の実施形態の動作に許容される許容範囲内、または実施される測定および/または使用される測定機器から予想される変動内に定義されることを意味すると理解されるべきである。「約」および「おおよそ」という用語が数値の前にある場合、+/-15%、もしくは+/-10%、または+/-5%のみを示し、場合によっては正確な値を示すことを意図している。さらに、別段の記載がない限り、本開示で使用される用語(例えば、数字)は、そのような形容詞がなくても、関連する用語の正確な意味から逸脱し得るが、本発明またはその関連部分が記載されているように、および当業者によって理解されるように動作および機能することを可能にする公差を有すると解釈されるべきである。
【0174】
本開示の明細書および特許請求の範囲において、動詞「備える、含む(comprise)」、「含む(include)」、および「有する(have)」、ならびにそれらの活用形のそれぞれは、目的部または動詞の目的語が、主部または動詞の主語の特徴、部材、ステップ、構成要素、要素または部分の完全なリストであるとは限らないことを示すために使用される。さらに、本教示の組成物も列挙された構成要素から本質的になる、またはそれらからなること、および本教示の方法もまた、列挙されるプロセスステップから本質的になる、またはそれらからなると考えられる。
【0175】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の参照を含み、文脈が明確に指示しない限り、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。AおよびBの少なくとも1つとは、AまたはBのいずれかを意味することを意図しており、いくつかの実施形態では、AおよびBを意味し得る。
【0176】
「上部の(upper)」、「下部の(lower)」、「右(right)」、「左(left)」、「底部(bottom)」、「~の下方(below)」、「低下した(lowered)」、「低い(low)」、「頂部(top)」、「~より上方に(above)」、「上昇した(elevated)」、「高い(high)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」、「後方(backward)」、「前方(forward)」、「上流(upstream)」および「下流(downstream)」などの位置用語または運動用語、ならびにそれらの文法的変形が、特定の構成要素の相対的な位置決め、配置、または変位を示すため、現在の図で第1および第2の構成要素を示すため、または両方を行うために、例示的な目的でのみ本明細書で使用され得る。このような用語は、たとえば、「頂部(top)」構成要素が「底部(bottom)」構成要素の下にあることを必ずしも示すわけではなく、なぜならそのような方向、構成要素、またはその両方が、反転、回転、空間内での移動、対角線方向または位置への配置、水平もしくは垂直に配置、または類似的に修正され得るためである。
【0177】
別段の記載がない限り、本技術の実施形態の特徴に関する範囲の外側境界が開示に記載されている場合、該実施形態では、特徴の考えうる値は、言及された外側境界、ならびに言及された外側境界の間の値を含み得ることが理解されるべきである。
【0178】
本開示の開示を理解または完全にするために必要な範囲で、特に出願人の出願を含む、本明細書で言及されるすべての刊行物、特許、および特許出願は、本明細書で完全に記載されているように、参照によりその全体が明示的に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11A-11B】
図12A-12B】
図13A-13B】
【国際調査報告】