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特表2023-520080COVID-19に対する保護のための弱毒化されたポックスウイルスベクターをベースとするワクチン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】COVID-19に対する保護のための弱毒化されたポックスウイルスベクターをベースとするワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20230508BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 15/863 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 15/50 20060101ALI20230508BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230508BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230508BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K35/76
C12N15/10 200Z
C12N15/863 Z ZNA
C12N15/50
C12N7/01
A61K48/00
A61P31/14
A61P37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560153
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 AU2021050274
(87)【国際公開番号】W WO2021195694
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/003,012
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/066,927
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】515260184
【氏名又は名称】セメンティス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】プラウ・ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ハウリー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】クーパー・タマラ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイボール・ジョン・ディー
(72)【発明者】
【氏名】ディーナー・ケリリン・アール
(72)【発明者】
【氏名】リュー・リャン
(72)【発明者】
【氏名】エルディ・プリーティ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB331
4C084ZB332
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
(57)【要約】
本発明は、コロナウイルス感染のリスクを防ぐかまたは減少させ、ならびに疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物に関する。特に、本発明は、世界保健機関によってCOVID-19と命名されたSARS-CoV-2疾患のリスクを防ぐかまたは減少させる、動物における免疫反応を高めるためのワクチンおよび/または免疫原性組成物に関する。当該組成物は、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけ、ワクシニアウイルスを含み、当該弱毒化されたポックスウイルスゲノムは、スパイクタンパク質ポリペプチドおよび/もしくは膜タンパク質ポリペプチドおよび/もしくはヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドおよび/もしくはエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはこれらのいずれかの免疫原性部分もしくは機能性部分をコードするコロナウイルスSARS-CoV-2核酸配列を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2コロナウイルス疾患のリスクを防ぐかまたは減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、前記組成物は、遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスを含み、ワクシニアウイルスゲノムは、スパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分からなる群から選択される少なくとも1つのヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、弱毒化されたワクシニアウイルスは、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含む、前記組成物。
【請求項2】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分および膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分および膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つのヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする核酸配列が、COP-C23L、COP-B29R、COP-C3L、COP-N1L、COP-A35R、COP-A39R、COP-A41L、COP-A44R、COP-A46R、COP-B7R、COP-B8R、COP-B13R、COP-B16RおよびCOP-B19Rからなる群から選択される1つまたは複数の免疫調節性遺伝子の欠失されたORFに挿入されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする核酸配列が、弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムの遺伝子間領域(IGR)に挿入され、前記IGRがワクシニアウイルスゲノムの2つの隣接するORFの間に位置するかまたはそれらに隣接している、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムのIGRが、F9L-F10L、F12L-F13L、F17R-E1L、E1L-E2L、E8R-E9L、E9L-E10R、I1L-I2L、I2L-I3L、I5L-I6L、I6L-I7L、I7L-I8R、I8R-G1L、G1L-G3L、G3L-G2R、G2R-G4L、G4L-G5R、G5R-G5.5R、G5.5R-G6R、G6R-G7L、G7L-G8R、G8R-G9R、G9R-L1R、L1R-L2R、L2R-L3L、L3L-L4R、L4R-L5R、L5R-J1R、J3R-J4R、J4R-J5L、J5L-J6R、J6R-H1L、H1L-H2R、H2R-H3L、H3L-H4L、H4L-H5R、H5R-H6R、H6R-H7R、H7R-D1R、D1R-D2L、D2L-D3R、D3R-D4R、D4R-D5R、D5R-D6R、D6R-D7R、D9R-D10R、D10R-D11L、D11L-D12L、D12L-D13L、D13L-A1L、A1L-A2L、A2L-A2.5L、A2.5L-A3L、A3L-A4L、A4L-A5R、A5R-A6L、A6L-A7L、A7L-A8R、A8R-A9L、A9L-A10L、A10L-A11R、A11R-A12L、A12L-A13L、A13L-A14L、A14L-A14.5L、A14.5L-A15L、A15L-A16L、A16L-A17L、A17L-A18R、A18R-A19L、A19L-A21L、A21L-A20R、A20R-A22R、A22R-A23R、A23R-A24R、A28L-A29LおよびA29L-A30L、001L-002L、002L-003L、005R-006R、006L-007R、007R-008L、008L-009L、017L-018L、018L-019L、019L-02OL、020L-021L、023L-024L、024L-025L、025L-026L、028R-029L、03OL-031L、031L-032L、032L-033L、035L-036L、036L-037L、037L-038L、039L-040L、043L-044L、044L-045L、046L-047R、049L-050L、050L-051L、051L-052R、052R-053R、053R-054R、054R-055R、055R-056L、061L-062L、064L-065L、065L-066L、066L-067L、077L-078R、078R-079R、080R-081R、081R-082L、082L-083R、085R-086R、086R-087R、088R-089L、089L-090R、092R-093L、094L-095R、096R-097R、097R-098R、101R-102R、103R-104R、105L-106R、107R-108L、108L-109L、109L-110L、110L-111L、113L-114L、114L-115L、115L-116R、117L-118L、118L-119R、122R-123L、123L-124L、124L-125L、125L-126L、133R-134R、134R-135R、136L-137L、137L-138L、141L-142R、143L-144R、144R-145R、145R-146R、146R-147R、147R-148R、148R-149L、152R-153L、153L-154R、154R-155R、156R-157L、157L-158R、159R-160L、160L-161R、162R-163R、163R-164R、164R-165R、165R-166R、166R-167R、167R-168R、170R-171R、173R-174R、175R-176R、176R-177R、178R-179R、179R-180R、180R-181R、183R-184R、184R-185L、185L-186R、186R-187R、187R-188R、188R-189R、189R-190Rおよび192R-193Rからなる群から選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
弱毒化されたワクシニアウイルスが、ワクシニアウイルスA41L遺伝子、ワクシニアウイルスD13L遺伝子、ワクシニアウイルスB7R-B8R遺伝子、ワクシニアウイルスA39R遺伝子およびワクシニアウイルスC3L遺伝子からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠失を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列が、1つまたは複数の遺伝子の少なくとも1つの欠失部位に挿入されている、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスA41L遺伝子欠失部位に挿入されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスD13L遺伝子欠失部位に挿入されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2エンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスB7R-B8R遺伝子欠失部位に挿入されている、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7および配列番号8からなる群から選択される核酸配列を有する1つまたは複数の発現カセットによってコードされる、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
コロナウイルス疾患のリスクを減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、前記組成物は、遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスを含み、ワクシニアウイルスゲノムは、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含み、弱毒化されたワクシニアウイルスは、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含み、第2の遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスと混合されており、第2のワクシニアウイルスゲノムは、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドおよびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分(1つまたは複数)をコードする核酸配列を含み、第2の弱毒化されたワクシニアウイルスは、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含む、前記組成物。
【請求項19】
遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスベクターであって、ワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチド、膜タンパク質ポリペプチドおよびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチド、および/またはエンベロープタンパク質ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、前記弱毒化されたワクシニアウイルスベクターは、ウイルス様粒子へとアセンブルされる前記のポリペプチドを発現する、前記の弱毒化されたワクシニアウイルスベクター。
【請求項20】
SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかまたは減少させる方法であって、請求項1に記載の組成物を、SARS-CoV-2に対する免疫反応を誘発するために有効な量で、ヒトを含む動物に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウイルス感染のリスクを防ぐかまたは減少させ、ならびに疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物に関する。特に、本発明は、世界保健機関によってCOVID-19と命名されたSARS-CoV-2疾患のリスクを防ぐかまたは減少させる、動物における免疫反応を高めるためのワクチンおよび/または免疫原性組成物に関する。当該組成物は、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけ、ワクシニアウイルスを含み、この場合、弱毒化されたポックスウイルスゲノムは、スパイクタンパク質ポリペプチドおよび/もしくは膜タンパク質ポリペプチドおよび/もしくはヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドおよび/もしくはエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはこれらのいずれかの免疫原性部分もしくは機能性部分をコードするコロナウイルスSARS-CoV-2核酸配列を含む。
【背景技術】
【0002】
本明細書における参考文献の図書目録詳細については、本明細書の終わりに列挙する。
【0003】
任意の先行する刊行物(またはそれらから得られる情報)、または既知のいかなる事項に対する本明細書における参照も、先行の刊行物(またはそれらから得られる情報)または既知の事項が、本明細書が関係する努力傾注分野における共通の一般的知識の一環を成すことの承認または是認または任意の形態の提案ではなく、ならびにそのように受け取られるべきではない。
【0004】
本明細書において言及される全ての刊行物は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0005】
当該ポックスウイルスファミリーは、2つのサブファミリーであるコルドポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae)およびエントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae)を含む。コルドポックスウイルス亜科は、男性に感染する種を含むオルトポックスウイルス科(Orthopoxviridae)(例えば、痘瘡ウイルス、すなわち天然痘の原因因子、牛痘ウイルス(1796年にJennerによって報告されたオリジナルの天然痘ワクチンを形成する)、ワクシニアウイルス(第二世代天然痘ワクチンとして使用される)、およびサル痘ウイルス)、および鳥に感染する種を含むアビポックスウイルス科(Avipoxviridae)ウイルス、例えば、鶏痘ウイルスおよびカナリア痘ウイルスなど、を含む8つの属を含む。天然痘ワクチンでの抗原としてのそれらの使用に加えて、「バックボーン」ベクターとしての組換えワクシニアベースのウイルスおよびアビポックスウイルスの使用に大きな関心が寄せられている。細胞質内ベクターとして、オルトポックスウイルス科は、とりわけ、宿主免疫システムによる認識のために宿主細胞質における外来抗原の産生を誘導することができる。外来抗原を発現するそのようなベクターは、例えば、AIDS、結核、マラリア、および他のワクチン接種戦略によって治療することが困難であると判明しているがんなどの疾患のためのワクチンの開発において集中して研究されている。
【0006】
コルドポックスウイルス亜科は、パラポックスウイルスの130kbからアビポックスウイルスの300kb超までのサイズに及ぶ直鎖状二本鎖DNAゲノムを有し、宿主におけるそれらのライフサイクルは全て宿主細胞の細胞質において費やされる。ポックスウイルスは、とりわけ初期mRNA合成に関わるプロセスに関して、それらの宿主細胞および宿主細胞分子にほとんど関係なく作動する。しかしながら、宿主分子は、中期および後期ウイルス転写の開始または終了のために使用されるようである。ポックスウイルスは、細胞状態をウイルス複製が可能であるようにするために宿主シグナル伝達経路を明確に標的にして操作する構造的に多様な「宿主域因子」を産生する。ほとんどのポックスウイルスは、哺乳動物細胞に結合して感染することができるが、後続の感染が許容的である(感染性ビリオンを産生することができる)かまたは非許容的(感染性ビリオンを実質的に産生できない)であるかは、関与する特定のポックスウイルスおよび特定の細胞タイプに依存する。宿主域遺伝子のレビューについては、その全体が本明細書に組み入れられるWerdenら 2008(非特許文献1)を参照されたい。
【0007】
天然痘ワクチンとしておよびその後のウイルスベクターとしてのそれらの使用に関連するワクシニアの株は、1960年代前半から今日まで公開されている。天然痘ワクチンとして用いられる株を含むワクシニアのある特定の株は、ヒト細胞において増殖することができ、したがって、それらは、ウイルス性脳炎の発症などの健康リスクを提示する。より安全なワクチンを開発する観点から、アンカラ由来のワクシニア株(「CVA」と呼ばれる)が、非ヒト細胞において500回以上継代された。このプロセスの間に、ワクシニアゲノムは、オリジナルのCVAゲノムと比較して少なくとも6つの主要な欠失の発生を伴って、大きく変化した。改変された当該ウイルスは、哺乳動物細胞において、複製欠損によりほとんど病原性ではなかったが、防御免疫応答を生じさせることは依然として可能である。この弱毒化されたワクシニアウイルスは、MVA(改変ワクシニアアンカラ)と呼ばれ、異なる継代数を有するウイルスは、遺伝的および表現型的に異なることが分かっているため、継代数によっても分類される。しかしながら、継代数515までに、MVA515は、遺伝的に安定であると特定された。1990年代前半に、MVA株、例えば、MVA572など、およびその派生物MVA F6は、非許容細胞(ウイルスが増殖しない細胞)において高レベルでワクシニアタンパク質および非相同(組換え)タンパク質を発現することができることが観察され、それは、関心対象の非相同分子、例えば、ワクチンまたは治療法送達のための抗原をコードするものなど、のためのベクターとしてのMVAの開発を可能にした。MVAは、ポックスウイルス(poxviral)ワクチンベクターシステムの中でも最も研究されているが、他のポックスウイルスは、NYVAC、ALVAC、および鶏痘などと同様に機能するように開発された。
【0008】
Sementis Ltd,によって開発された別のワクシニアウイルスは、いわゆるSCV(Sementis Copenhagen Vaccinia)ワクシニアウイルスベクターである。SCVは、ワクシニアのコペンハーゲン株を使用して作製されており、必須のウイルスアセンブリタンパク質をコードするD13Lを欠失させ、それにより、SCVに感染性子孫を複製し産生することをできなくするように操作された。ゲノム増幅は、SCV感染細胞において保存され、その結果、ワクチン抗原の後期発現および当該挿入された抗原に対する強い免疫反応の発生を可能にする。SCVは、それが、複製能力があるワクシニアの免疫原性を有し、試験された哺乳動物細胞を複製することができないという点において、MVAと比べていくつかの利点を有する。SCVプラットフォームは、MVAプラットフォームとは異なる2つの重要な点、すなわち、(i)それは、標的とされたD13L遺伝子の欠失により複製欠損性であるように特異的に操作されており、その結果、シングルショット有効性による効力を維持しつつ、より安全であること、ならびに(ii)標準的でスケーラブルな商業的細胞系において製造されるようにも設計されていること、を有する。
【0009】
コロナウイルスは、約27~32キロベースのプラス鎖一本鎖RNAからなるRNAウイルスである。名前が示すように、球状の外部のスパイクタンパク質は、電子顕微鏡の下で観察すると、特徴的な王冠形状を示す。当該ウイルスは、ヒトを含む広範な宿主に感染することが知られている。感染した宿主は、無症状から重度の症状にまで及ぶ異なる臨床経過を示す。コロナウイルスは、コロナウイルス科ファミリーに属し、それは、4つの属:アルファ、ベータ、デルタ、およびガンマコロナウイルス、に分けられる。CoVは、一般的に、コウモリ、ラクダおよびヒトを含む多くの種の動物において見出される。時々、動物CoVは、ゲノム複製または組換えメカニズムの間のエラーによって、遺伝的突然変異を獲得することができ、さらに、それらのトロピズムをヒトへと拡大することができる。最初のヒトCoVは、1960年半ばに発見された。合計で7つのヒトCoVタイプが、ヒトの呼吸器疾患を引き起こす原因であると特定されており、それは、2つのアルファCoVおよび5つのベータCoVを含む。典型的には、これらのCoVは、発熱、咳および息切れを含む、無症状感染から重度の急性呼吸器疾患にまで及ぶ様々な臨床症状を引き起こし得る。胃腸炎および重症度の異なる神経系疾患などの他の症状も、報告されている。
【0010】
コロナウイルスは、4つの主要な構造タンパク質:スパイク(S)タンパク質、膜(M)タンパク質、エンベロープ(E)タンパク質、およびヌクレオカプシド(N)タンパク質、の標準のセットを含有する。ビリオンは、ゲノムRNAおよびリン酸化ヌクレオカプシド(N)タンパク質で構成されるヌクレオカプシドを有する。ヌクレオカプシドは、リン脂質二重層の中に埋め込まれ、スパイク(S)タンパク質で覆われている。膜(M)タンパク質およびエンベロープ(E)タンパク質は、ウイルスエンベロープにおけるSタンパク質の間に位置する。
【0011】
スパイクタンパク質は、ウイルス表面から突出する膜貫通型の三量体糖タンパク質で構成され、それは、コロナウイルスの多様性および宿主のトロピズムを決定する。スパイクは、2つの機能的サブユニット:受容体結合ドメイン(RBD)を含有し、宿主細胞受容体への結合を担うS1サブユニットと、ウイルスと細胞膜との融合のためのS2サブユニットとを含む。
【0012】
コロナウイルス粒子は、構造タンパク質が挿入された脂質二重層によって囲まれた、ヌクレオカプシドリンタンパク質とウイルスゲノムRNAとの相互作用によって形成されるらせん状のヌクレオカプシド構造体からなる。トリプルスパンニング(triple-spanning)膜糖タンパク質Mは、小胞体-ゴルジ中間コンパートメント(ERGIC)のルーメン中へと出芽するコロナウイルスのアセンブリを駆動する。膜タンパク質は、ビリオン中に組み込まれるウイルス成分を選別する最も豊富なウイルスタンパク質である。膜オリゴマー化は、ERGIC膜での膜タンパク質の格子の形成を可能にする。スパイクタンパク質およびエンベロープタンパク質は、膜タンパク質との側方相互作用によって当該格子に統合され、その一方で、ヌクレオカプシドおよびウイルスRNAは、サイトゾルに晒される膜C末端ドメインと相互作用する。エンベロープタンパク質は、イオンチャネルを形成してウイルス形態形成および出芽において重要な役割を果たすビロポリン(viroporin)であるが、しかしながら、このプロセスは、これまで完全には理解されていない。SARS-CoVに関する研究は、コロナウイルスゲノムからのエンベロープ遺伝子の枯渇がウイルス増殖および粒子形成を強力に減少させることを実証した。ヌクレオカプシドタンパク質は、自己会合し、ビリオン内への組み込みのためにRNAゲノムをカプシドで包む。
【0013】
ヒトコロナウイルスは、呼吸器感染症を引き起こす主要な病原体の1つである。2つの非常に病原性の高いウイルスSARS-CoVおよびMERS-CoVは、ヒトにおいて重度の呼吸器の症候群を引き起こし、ならびに4つの他のヒトコロナウイルス(HCoV-OC43、HCoV-229E、HCoV-NL63、HCoVHKU1)は、軽症の上気道疾患を誘発する。SARS-CoVは、2002~2003年に8422人の患者を伴う主要なアウトブレークを引き起こし、世界的に29カ国に広まった。SARS-CoVの伝播の鎖が台湾において阻止されたため、蔓延は2003年7月に封じ込められ、2004年5月以来、ヒトの症例は報告されていない。MERS-CoVは、2012年に中東諸国に出現し、諸国内において持続的な風土病を引き起こし、散発的に、中東地域の外の諸国へと広まった。2019年の終わり頃、未知の呼吸器感染症の最初の報告が、武漢(中国)からもたらされた。感染源は、新型コロナウイルスとしてすぐに識別され、SARS-CoV-2と呼ばれ、このウイルスによって引き起こされる疾患は、COVID-19と命名された。世界保健機関は、2020年3月11日にパンデミックを宣言した。SARS-CoV-2は、0.16%から1.60%にまで及ぶ感染死亡率を有し、2021年2月半ばまでに、SARS-CoV-2は、1億820万人に感染し、全世界で230万人の死亡を引き起こした。SARS-CoV-2は、世界の大部分にロックダウン実施の採用を強い、それは結果として、驚くべき経済の低迷および人的被害をもたらした。
【0014】
SARS-CoV-2は、ヒトおよび他の哺乳動物に広く分布するオルトコロナウイルス亜科(Orthocoronavirinae)サブファミリーに含まれる、エンベロープ化され、非セグメント化されたプラス鎖RNAウイルスである。サルベコウイルス亜属(sarbecovirus genus)の一部として、その直径は、約65nm~125nmであり、一本鎖RNAを含み、外部表面上の先太の糖タンパク質スパイクが、王冠様またはコロナ状の外観を当該ウイルスに与えている。SARS-CoV-2は、肺不全および潜在的に致命的な気道感染症を引き起こす、以前に特定されたSARS-CoVおよびMERS-CoVの後の新型のβ-コロナウイルスである。WHOは、SARS-CoV-2の再生産数(reproductive number)(二次感染者への一次感染者1人あたりの伝播の能力を表す)が、1.4から2.5の間に及ぶと推定している。しかしながら、世界的研究によるメタ分析では、再生産数はさらに2.87に近づくと推定される。SARS-CoV-2の再生産数は、それぞれSARS-CoVおよびMERS(0.95および0.91)などの以前の感染性コロナウイルスよりかなり高い。再生産数がより高いことに対する考えられる理由は、このウイルス株に固有の生物学的特徴であり得る。例えば、人は、多くの方法、例えば、感染者との密接な物理的接触、呼吸器飛沫、媒介物、および空気感染による環境伝播など、によって感染し得る。その上、SARS-CoV-2感染患者は、感染の2週間まで徴候的特徴を示さない場合があり、それは、新たな感染のリスクを指数関数的に増加し得る。感染者が、通常、無症状相の間、コミュニティにおいて他の人々と区別ができないためである。9人の患者の試料からの系統発生分析は、SARS-CoV-2が、2003年のSARSアウトブレークの原因となったウイルスを含む既知のヒト感染性コロナウイルスよりも、2つのコウモリ由来のコロナウイルス株に似ていることを示した。異なる患者からの配列は、99.9%を超える配列同一性で、ほぼ同一であり、それは、SARS-CoV-2が非常に短い期間内に1つの源から生じたことを示唆している。現在利用可能なデータは、SARS-CoV-2が、保有宿主であるコウモリからヒト集団に感染したこと、ならびに、SARS-CoV-2は、ヒト感染のための好ましい遺伝的変化を積み重ねることによってコウモリコロナウイルスから進化した可能性があることを示唆している。構造タンパク質であるスパイクタンパク質および膜タンパク質は、大幅な突然変異変化を有することが分かっており、その一方で、エンベロープタンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質は保存されていた。現在未知の動物種が、コウモリとヒトとの間の中間宿主として機能するか否かは、不明確なままである。
【0015】
構造分析および機能分析は、SARS-CoV-2のRBDがヒトアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体と強く相互作用することを示した。ACE2発現は、肺、心臓、回腸、腎臓、および膀胱において最も高かった。肺では、ACE2は、肺上皮細胞において高く発現された。SARS-CoV-2がACE2受容体に結合した後、スパイクタンパク質は、プロテアーゼ切断を受ける。SARS-CoVおよびMERS-CoVのスパイクタンパク質を活性化する、連続する二段階のプロテアーゼ切断が、プライミングのためのS1/S2切断部位での切断と、S2サブユニット内の融合ペプチドに隣接する位置であるS’2部位での活性化のための切断とからなるモデルとして提案された。S1/S2切断部位での切断の後、S1およびS2サブユニットは、非共有結合したままであり、ならびに遠位のS1サブユニットは、融合前(prefusion)状態において膜にアンカー固定されたS2サブユニットの安定化に貢献する。それに続くS’2部位での切断は、おそらく、不可逆な立体構造変化による膜融合のためにスパイクを活性化する。コロナウイルスのスパイクは、様々な異なるプロテアーゼが当該スパイクを切断し活性化することができるため、ウイルスの中でも独特である。コロナウイルスの中でもSARS-CoV-2に特異的な特徴は、S1/S2部位におけるフューリン(furin)切断部位(「RPPA」配列)の存在である。SARS-CoV-2のS1/S2部位は、切断なしにアセンブリに組み込まれるSARS-CoVスパイクとは対照的に、生合成の間に、完全に切断に付された。S1/S2部位は、II型膜貫通型セリンプロテアーゼ(transmembrane protease serine 2)(TMPRSS2)およびカテプシンLなどの他のプロテアーゼによる切断も受けるが、フューリンの遍在的発現も、おそらく、ビルレンスの増加につながるより効率的なウイルス複製に貢献する。SARS-CoV-2において、ウイルススパイクタンパク質、特にRBDは、ウイルス進化に関する遺伝子座である。2020年10月から、RBD内のアミノ酸変化として認識されるウイルスの進化が、ヨーロッパ、ブラジル、イギリス、および南アフリカにおいて検出された。突然変異の積み重ねは、結果として、スパイクRBDにそれぞれ8つの突然変異、7つの突然変異、および10個の突然変異と、1abオープンリーディングフレーム(ORF)における3つのアミノ酸の欠失とを有するイギリス、南アフリカ、およびブラジルから出現したバリアントによって示されるように、2週間毎に約1回の突然変異の発生をもたらした。SARS-CoV-2のこれらのバリアント株の特徴は、増強された適応性を有するウイルス種への、繰り返された収斂進化を示している。この現象に対する可能な仮説は、これらの突然変異が、慢性COVID-19感染症(その間、免疫系はウイルスに大きな圧をかける)の症例から、免疫を逃れるために出現しており、ウイルスは、浸潤細胞に関するそのメカニズムを洗練させることによってそれに反応する。結果として、これは、UK突然変異株B.1.1.7によって実証されるように、ウイルス量の増加およびより高い伝播性をもたらす。ウイルス未経験(virus-naive)では、自然感染後免疫(natural immunity)選択圧が、バリアントの出現の主要なドライバーである。しかしながら、「ワクチン選択圧」の可能性も存在し、その場合、突然変異はワクチン関連理由に起因すると考えることができる。例えば、ワクチンが単一抗原のみに対する免疫反応を高めることを対象とする場合など、ワクチンが、制限された免疫反応を誘発する場合、ウイルスは、抗原的に進化することができる。集団全体にワクチン注射を投与することの遅れも、ウイルスの適応力に対して潜在的に影響を及ぼし得、ならびに、ウイルスが免疫反応を回避または当該反応に抵抗するのを助け得る突然変異を誘導し得る。エスケープ突然変異体の現象は、懸念されるバリアント(variants of concern:VOC)の出現に対して効率的に働くワクチンに対する必要性を強調する。記録された突然変異のほとんどは、スパイクタンパク質において生じており、他のウイルス抗原は、適切な予防免疫反応を確保するために、広範な免疫原性を誘導するために利用され得る。
【0016】
中和抗体は、宿主細胞内のウイルスに結合して中和し、予防接種のための免疫と相関する主要な指標として機能する抗体である。SARSおよびMERSスパイク糖タンパク質に対する中和抗体は、これらのコロナウイルスに対する保護において、中心的な役割を果たす。これまで、SARS-CoV-2感染の後に、保護のためにどの程度の中和抗体が必要か、または、中和抗体の持続性はどの程度かは知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Werdenら 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
T細胞免疫も、SARS-CoV-2に対する保護と相関する指標として利用され得る。T細胞活性化は、感染の急性相および記憶相の両方において報告されているが、しかしながら、疾患進行または保護におけるCD4およびCD8 T細胞の両方の正確な役割は、依然として完全には理解されていない。抗原特異的CD8 T細胞は、ウイルス感染細胞を直接に標的にするが、その一方で、Th1分極化CD4 T細胞は、組織におけるウイルス感染細胞と戦うためにCD8 T細胞および単球を活性化する可能性を有する。加えて、濾胞性ヘルパーT細胞は、胚中心反応および質の高い体液性免疫反応の形成のために必要である。これと一致して、複数の研究が、結合抗体力価とCD4 T細胞反応との間の相関関係について言及している。したがって、T細胞は、感染細胞の直接的排除と、他の白血球の活性化および体液性免疫反応の増強との両方によって、防御機能を有することができる。その上、ロバストなTh1バイアス反応の誘導は、ワクチン関連呼吸器疾患の増強またはTh2反応に関連する抗体依存性感染増強(ADE)の発生が起こりそうもないことと一致する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のワクチンは、より良好な長期保護を生じるための抗原の組み合わせに基づいており、ならびに疾患の抗体依存性感染増強の可能性から保護する。これは、スパイク抗原のみを含んで開発されたワクチンに対する主要な差異である。複数の抗原の存在は、エスケープ突然変異体の現象にも対処し得る。複数の抗原が、広範な免疫反応を誘発し得、それは、ウイルスが抗原的に進化して生体防御の有効性を破壊するのを、より困難にするからである。
【0020】
本発明のワクチンのための抗原配列は、SARS-CoV-2の、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質およびエンベロープタンパク質を含む。
【0021】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターから、SARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたは当該スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットを発現することによって達成され得る。コロナウイルスのスパイクタンパク質は、ウイルス感染の急性相の間に必要なウイルスを中和するために必須の主要な中和ドメインを含み、細胞媒介性免疫を刺激するために必要とされる。歴史的に、SARS-CoVまたはMERS-CoVなどのコロナウイルスのスパイクタンパク質は、免疫原性であり、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを阻害する中和抗体を含む体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応を誘発することが見出された。
【0022】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターからのSARS-CoV-2膜タンパク質ポリペプチドを発現することによって達成され得る。SARS-CoVにおいて、膜タンパク質は、ウイルス表面上において豊富であることが分かっており;その上、SARSを有する患者において免疫付与のために使用される場合、膜タンパク質は、中和抗体の高力価を誘導した。免疫原性分析および構造分析は、ロバストな細胞免疫反応を引き起こすことができるT細胞エピトープクラスターが膜タンパク質に存在することを実証した。膜タンパク質も、多くのウイルス種において高度に保存されるため、それは、SARS-CoV-2に対する免疫反応を誘導するための良好な抗原候補である。
【0023】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターからのSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドを発現することによって達成され得る。最近、SARS-CoV-2感染が、ヌクレオカプシド抗原をほぼ対象とする抗体の産生につながることが発見された。しかしながら、Nタンパク質抗体はウイルスの侵入を防ぐことができず、それ自体は「非中和」抗体であると見なされているため、N抗体は見落とされていた。したがって、抗N抗体は、体液性免疫を評価するために現在使用されている中和アッセイによって測定することができない。最近の研究により、細胞の中に入る抗N抗体は、抗体受容体TRIM21によって認識され、次いで、会合したNタンパク質を断片化することが示された。次いで、Nタンパク質エピトープが、T細胞による検出のために提示される。この免疫反応メカニズムには、最終的に免疫学的記憶を媒介するであろうT細胞が関与するため、ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体は、将来の感染に対する長期保護を刺激し得る。
【0024】
免疫原性は、ポックスウイルスベクター内のSARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくはその一部、膜タンパク質ポリペプチド、ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチド、および/またはエンベロープタンパク質ポリペプチドを同時に発現することによって達成され得る。マウス肝炎ウイルス、牛コロナウイルス、伝染性気管支炎ウイルス、伝染性胃腸炎ウイルス、およびSARS-CoVに関する研究は、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質、および場合によって、エンベロープ構造タンパク質が、トランスフェクトされた細胞によるウイルス様粒子(VLP)の効率的なアセンブリおよび放出のために必要であることを確立した。S、MおよびNおよび/またはEポリペプチドの存在は、コロナウイルス構造を模倣するが感染性であるための遺伝物質を欠く空のウイルスシェルである真正のVLPの形成につながり得る。VLPは、真正のビリオンと類似のサイズおよび形態学的特徴を共有するが、非感染性であり、複製することができない。VLPは、天然ウイルスのモルホロジーを模倣するだけでなく、許容性細胞に形質導入することもできる。ウイルス遺伝物質を欠いているため、VLPは、宿主細胞内において複製しないが、核酸、タンパク質、または薬物のキャリアとして使用することができる。さらに、VLPは、それらの表面抗原の反復曝露およびそれらの固有の構造が、天然ウイルスをエミュレートすることができ、体液性反応および細胞性反応を誘導するように免疫系と相互作用することができるため、ワクチン候補としての使用のために調査されている。これらのタンパク質の組み合わされた免疫原性は、よりロバストな抗原特異的免疫反応を引き起こし得る。本発明は、ポックスウイルス-ベクター化ワクチンにおける抗原としての、SARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくはそれらの一部、ならびに/あるいはSARS-CoV-2膜および/またはSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質もしくはそれらの一部、ならびに/あるいはSARS-CoV-2エンベロープタンパク質もしくはそれらの一部の使用を包含する。
【0025】
本発明は、体液性免疫および細胞媒介性免疫を含む広範な免疫反応を誘発するための、複数のSARS-CoV-2タンパク質の使用を包含する。自然感染において、免疫系は、SARS-CoV-2を含む全てのタンパク質を様々な程度まで認識する。ワクチンの製剤化において、M、N、およびEなどの突然変異頻度の少ない構造遺伝子を利用することにより、誘導される免疫反応の幅は、SARS-CoV-2のバリアントの出現から保護し、エスケープ変異の可能性を減少させるように拡大され得る。
【0026】
ある実施形態において、スパイクタンパク質またはその一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおけるワクチン抗原として使用される。
【0027】
ある実施形態において、膜タンパク質またはその一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおけるワクチン抗原として使用される。
【0028】
ある実施形態において、ヌクレオカプシドタンパク質またはその一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおけるワクチン抗原として使用される。
【0029】
ある実施形態において、膜およびヌクレオカプシドタンパク質または任意のそれらの一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおけるワクチン抗原として使用される。
【0030】
ある実施形態において、スパイクタンパク質またはその一部、膜タンパク質またはその一部、およびヌクレオカプシドタンパク質またはその一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおけるワクチン抗原として使用される。
【0031】
ある実施形態において、スパイクタンパク質またはその一部、膜およびヌクレオカプシドタンパク質または任意のそれらの一部、ならびにエンベロープタンパク質またはその一部が、単一のポックスウイルスベクター化ワクチンにおいて、ワクチン抗原として使用される。
【0032】
ある実施形態において、スパイクタンパク質またはその一部ならびに膜およびヌクレオカプシドタンパク質またはそれらの一部が、単一ワクチンの混合物として組み合わされる。
【0033】
概要
本発明者らは、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質(assembly or maturation protein)をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失によって弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスであって、そのゲノムが、SARS-CoV-2の、スパイクタンパク質ポリペプチド、および/または膜タンパク質ポリペプチド、および/またはヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチド、および/またはエンベロープタンパク質ポリペプチド、あるいは任意のそれらの免疫原性部分または機能性部分をコードする核酸配列を含むように操作された、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを利用することによって、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる組成物を得ることができることを見出した。
【0034】
したがって、第一態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに選択されたワクシニアウイルス遺伝子のオープンリーディングフレーム中へと置換されるかまたは遺伝子間領域に挿入された、SARS-CoV-2のスパイクおよび/または膜および/またはヌクレオカプシドおよび/またはエンベロープポリペプチドあるいは任意のそれらの免疫原性部分または機能性部分(1または複数)をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0035】
第二態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0036】
第三態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、および天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0037】
第四態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0038】
第五態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0039】
第六態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0040】
第七態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットをコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0041】
第八態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0042】
第九態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0043】
第十態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニット、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0044】
第十一態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニット、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0045】
第十二態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0046】
第十三態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0047】
第十四態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、上記のうちのいずれかの組成物を当該対象に投与することを含む上記方法を提供する。
【0048】
第十五態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、本発明の第四および第六態様の組成物を当該対象に投与することを含む上記方法を提供する。
【0049】
第十六態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、本発明の第五および第六態様の組成物を当該対象に投与することを含む上記方法を提供する。
【0050】
第十七態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス様粒子に似ることによってSARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物を提供する。
【0051】
第十八態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/またはCOVID-19疾患およびSARS-CoV-2に対して遺伝的類似性を有するコロナウイルスによって引き起こされる任意の他の感染の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、SARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および/またはSARS-CoV-2の膜ポリペプチドおよびヌクレオカプシドポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分もしくは機能性部分、および/またはSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0052】
第十九態様において、本発明は、コロナウイルス感染に対して対象において中和抗体反応および/または防御免疫反応を誘導するための医薬の調製における、本発明の第一態様から第十八態様までの組成物の使用を提供する。
【0053】
本発明は、以下も含む:
【0054】
SARS-CoV-2コロナウイルス疾患のリスクを防ぐかまたは減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスを含み、当該ワクシニアウイルスゲノムは、スパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、およびエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分からなる群から選択される少なくとも1つのヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、当該弱毒化されたワクシニアウイルスが、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含む、組成物、
【0055】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0056】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0057】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0058】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0059】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分および膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0060】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分および膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含む、上記の組成物、
【0061】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列が、COP-C23L、COP-B29R、COP-C3L、COP-N1L、COP-A35R、COP-A39R、COP-A41L、COP-A44R、COP-A46R、COP-B7R、COP-B8R、COP-B13R、COP-B16R、およびCOP-B19Rからなる群から選択される1つまたは複数の免疫調節遺伝子にの欠失されたORFに挿入されている、上記の組成物、
【0062】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列が、弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムの遺伝子間領域(IGR)に挿入され、当該IGRが、ワクシニアウイルスゲノムの2つの隣接するORFの間に位置するかまたはそれらに隣接する、上記の組成物、
【0063】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムのIGRが、F9L-F10L、F12L-F13L、F17R-E1L、E1L-E2L、E8R-E9L、E9L-E10R、I1L-I2L、I2L-I3L、I5L-I6L、I6L-I7L、I7L-I8R、I8R-G1L、G1L-G3L、G3L-G2R、G2R-G4L、G4L-G5R、G5R-G5.5R、G5.5R-G6R、G6R-G7L、G7L-G8R、G8R-G9R、G9R-L1R、L1R-L2R、L2R-L3L、L3L-L4R、L4R-L5R、L5R-J1R、J3R-J4R、J4R-J5L、J5L-J6R、J6R-H1L、H1L-H2R、H2R-H3L、H3L-H4L、H4L-H5R、H5R-H6R、H6R-H7R、H7R-D1R、D1R-D2L、D2L-D3R、D3R-D4R、D4R-D5R、D5R-D6R、D6R-D7R、D9R-D10R、D10R-D11L、D11L-D12L、D12L-D13L、D13L-A1L、A1L-A2L、A2L-A2.5L、A2.5L-A3L、A3L-A4L、A4L-A5R、A5R-A6L、A6L-A7L、A7L-A8R、A8R-A9L、A9L-A10L、A10L-A11R、A11R-A12L、A12L-A13L、A13L-A14L、A14L-A14.5L、A14.5L-A15L、A15L-A16L、A16L-A17L、A17L-A18R、A18R-A19L、A19L-A21L、A21L-A20R、A20R-A22R、A22R-A23R、A23R-A24R、A28L-A29LおよびA29L-A30L、ならびに、さらに001L-002L、002L-003L、005R-006R、006L-007R、007R-008L、008L-009L、017L-018L、018L-019L、019L-020L、020L-021L、023L-024L、024L-025L、025L-026L、028R-029L、030L-031L、031L-032L、032L-033L、035L-036L、036L-037L、037L-038L、039L-040L、043L-044L、044L-045L、046L-047R、049L-050L、050L-051L、051L-052R、052R-053R、053R-054R、054R-055R、055R-056L、061L-062L、064L-065L、065L-066L、066L-067L、077L-078R、078R-079R、080R-081R、081R-082L、082L-083R、085R-086R、086R-087R、088R-089L、089L-090R、092R-093L、094L-095R、096R-097R、097R-098R、101R-102R、103R-104R、105L-106R、107R-108L、108L-109L、109L-110L、110L-111L、113L-114L、114L-115L、115L-116R、117L-118L、118L-119R、122R-123L、123L-124L、124L-125L、125L-126L、133R-134R、134R-135R、136L-137L、137L-138L、141L-142R、143L-144R、144R-145R、145R-146R、146R-147R、147R-148R、148R-149L、152R-153L、153L-154R、154R-155R、156R-157L、157L-158R、159R-160L、160L-161R、162R-163R、163R-164R、164R-165R、165R-166R、166R-167R、167R-168R、170R-171R、173R-174R、175R-176R、176R-177R、178R-179R、179R-180R、180R-181R、183R-184R、184R-185L、185L-186R、186R-187R、187R-188R、188R-189R、189R-190R、192R-193Rからなる群から選択され、ここで、古い用語体系に従うと、ORF 006Lは、C10Lに対応し、019LはC6Lに対応し、020LはN1Lに、021LはN2Lに、023LはK2Lに、028RはK7Rに、029LはF1Lに、037LはF8Lに、045LはF15Lに、050LはE3Lに、052RはE5Rに、054RはE7Rに、055RはE8Rに、056LはE9Lに、062LはI1Lに、064LはI4Lに、065LはI5Lに、081RはL2Rに、082LはL3Lに、086RはJ2Rに、087はJ3Rに、088RはJ4Rに、089LはJ5Lに、092RはH2Rに、095RはH5Rに、107RはD10Rに、108LはD11Lに、122RはA11Rに、123LはA12Lに、125LはA14Lに、126LはA15Lに、135RはA24Rに、136LはA25Lに、137LはA26Lに、141LはA30Lに、148RはA37Rに、149LはA38Lに、152RはA40Rに、153LはA41Lに、154RはA42Rに、157LはA44Lに、159RはA46Rに、160LはA47Lに、165RはA56Rに、166RはA57Rに、167RはB1Rに、170RはB3Rに、176RはB8Rに、180RはB12Rに、184RはB16Rに、185LはB17Lに、および187RはB19Rに対応する、上記の組成物、
【0064】
当該弱毒化されたワクシニアウイルスが、ワクシニアウイルスA41L遺伝子、ワクシニアウイルスD13L遺伝子、ワクシニアウイルスB7R-B8R遺伝子、ワクシニアウイルスA39R遺伝子、およびワクシニアウイルスC3L遺伝子からなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子の欠失を含む、上記の組成物、
【0065】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列が、1つまたは複数の遺伝子の少なくとも1つの欠失部位に挿入されている、上記の組成物、
【0066】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスA41L遺伝子欠失部位に挿入されている、上記の組成物、
【0067】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスD13L遺伝子欠失部位に挿入されている、上記の組成物、
【0068】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2エンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分が、ワクシニアウイルスB7R-B8R遺伝子欠失部位に挿入されている、上記の組成物、
【0069】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列が、弱毒化されたワクシニアウイルスゲノムの遺伝子間領域(IGR)に挿入され、当該IGRが、ワクシニアウイルスゲノムの2つの隣接するORFの間に位置するかまたはそれらに隣接する、上記の組成物、
【0070】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、および配列番号8からなる群から選択される核酸配列を有する1つまたは複数の発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0071】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号1に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0072】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号2に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0073】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号1に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0074】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号2に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0075】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号5に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0076】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号3に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0077】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0078】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号1に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号8に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0079】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号2に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号8に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0080】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号3に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0081】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号3に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号4に示される核酸配列を有する発現カセットおよび配列番号8に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0082】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号6に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0083】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2ポリペプチドが、配列番号7に示される核酸配列を有する発現カセットによってコードされる、上記の組成物、
【0084】
薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む上記の組成物、
【0085】
コロナウイルス疾患のリスクを減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスを含み、当該ワクシニアウイルスゲノムは、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2のスパイクタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分をコードする核酸配列を含み、ならびに、当該弱毒化されたワクシニアウイルスが、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含み、第2の遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスと混合されており、当該第2のワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の膜タンパク質ポリペプチドおよびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分(1または複数)をコードする核酸配列を含み、当該第2の弱毒化されたワクシニアウイルスが、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする少なくとも1つの遺伝子の欠失を含む、上記の組成物、
【0086】
遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスベクターであって、当該ワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の、スパイクタンパク質ポリペプチド、膜タンパク質ポリペプチド、およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチド、および/または、エンベロープタンパク質ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、当該弱毒化されたワクシニアウイルスベクターが、ウイルス様粒子へとアセンブルされる前述のポリペプチドを発現する、遺伝的に操作された弱毒化されたワクシニアウイルスベクター。
【0087】
弱毒化されたワクシニアウイルスを含む組成物を、SARS-CoV-2に対する免疫反応を誘導するのに有効な量において、ヒトを含む動物に投与することを含む、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかまたは減少させる方法であって、当該ワクシニアウイルスゲノムが、ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の、スパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分および膜タンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分およびヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、および任意選択的にエンベロープタンパク質ポリペプチドまたはその免疫原性部分、をコードする核酸配列を含む、方法、
【0088】
SARS-CoV-2抗原に対する上記免疫反応が、SARS-CoV-2に対する遺伝的類似性を有するコロナウイルスに対して交差反応性である抗体を提供する上記の方法。
【0089】
コロナウイルス感染に対して対象における防御免疫反応の誘導に使用するための医薬の製造における上記のいずれかのような組成物の使用。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1-1】SARS-CoV-2 S、M、NおよびEに関して、ポックスウイルス発現カセットを合成するか(A、B、FおよびG)またはPCRによって構築した(C、DおよびE)。 A.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む発現カセット。 B.天然初期/後期プロモーター(pr7.5)の転写制御下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む発現カセット。 C.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のスパイクタンパク質のSARS-CoV-2 S1を含む発現カセット。 D.鶏痘初期/後期プロモーター(prE/L)の転写制御下のSARS-CoV-2膜タンパク質を含む発現カセット。 E.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む発現カセット。 F.鶏痘初期/後期プロモーター(prE/L)の転写制御下のSARS-CoV-2膜タンパク質および合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む発現カセット。 G.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2エンベロープタンパク質を含む発現カセット。
図1-2】SARS-CoV-2 S、M、NおよびEに関して、ポックスウイルス発現カセットを合成するか(A、B、FおよびG)またはPCRによって構築した(C、DおよびE)。 A.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む発現カセット。 B.天然初期/後期プロモーター(pr7.5)の転写制御下のSARS-CoV-2スパイクタンパク質を含む発現カセット。 C.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のスパイクタンパク質のSARS-CoV-2 S1を含む発現カセット。 D.鶏痘初期/後期プロモーター(prE/L)の転写制御下のSARS-CoV-2膜タンパク質を含む発現カセット。 E.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む発現カセット。 F.鶏痘初期/後期プロモーター(prE/L)の転写制御下のSARS-CoV-2膜タンパク質および合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質を含む発現カセット。 G.合成初期/後期プロモーター(prPs)の転写制御下のSARS-CoV-2エンベロープタンパク質を含む発現カセット。
図2】ワクシニアウイルスコペンハーゲン株(VACV-COP)ゲノムに関してF1およびF2組換えアームによって示される相同組換え部位。 A.SCV-SMX06において欠失されたVACV-COP領域に隣接し、その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るF1-A39RおよびF2-A39R相同組換えアームを伴うVACV-COPのA39R領域。 B.SCV-SMX06において欠失されたVACV-COP領域に隣接し、その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るF1-A41LおよびF2-A42L相同組換えアームを伴うVACV-COPのA41L領域。 C.SCV-SMX06において欠失されたVACV-COP領域に隣接し、その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るF1-B7B8RおよびF2-B7B8R相同組換えアームを伴うVACV-COPのB7/B8R領域。 D.SCV-SMX06において欠失されたVACV-COP領域に隣接し、その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るF1-C3LおよびF2-C3L相同組換えアームを伴うVACV-COPのC3L領域。 E.SCV-SMX06において欠失されたVACV-COP領域に隣接し、その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るF1-D13LおよびF2-D13L相同組換えアームを伴うVACV-COPのD13L領域。 F.その間にSARS-CoV-2抗原が挿入され得るVACV-COP領域に隣接するF1-J2/J3RおよびF2-J2/J3R相同組換えアームを伴うVACV-COPのJ2R-J3R遺伝子間領域。
図3A】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3B】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3C】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3D-1】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3D-2】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3E】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3F】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3G】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図3H】SARS-CoV-2導入遺伝子に対する相同組換え(HR)カセットの詳細なマップおよび要素。 A.prPs SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 B.pr7.5 SARS-CoV-2スパイク発現カセットを含むA41L置換のためのHRカセット。 C.スパイク発現カセットのprPs SARS-CoV-2S1サブユニットを含むA41L置換のためのHRカセット。 D.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 E.prE/L SARS-CoV-2膜およびprPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含む遺伝子間部位J2/J3Rへの挿入のためのHRカセット。 F.prE/L SARS-CoV-2膜発現カセットを含むC3L置換のためのHRカセット。 G.prPs SARS-CoV-2ヌクレオカプシド発現カセットを含むD13L置換のためのHRカセット。 H.prPs SARS-CoV-2エンベロープ発現カセットを含むB7/B8R置換のためのHRカセット。
図4】ワクチン構築プロセスの概略図。
図5-1】SCV-COVID19ワクチン内のSARS-CoV-2抗原挿入領域。 A.A41L ORF中に置換された合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイク導入遺伝子。 B.A41L ORF中に置換された天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイク導入遺伝子。 C.A41L ORF中に置換されたスパイク導入遺伝子のSARS-CoV-2S1サブユニット。 D.D13L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシド導入遺伝子。 E.J2RおよびJ3R ORFの間の遺伝子間領域に挿入されたSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシド導入遺伝子。 F.B7/B8R ORFと置き換えられたSARS-CoV-2エンベロープ導入遺伝子。 G.C3L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2膜導入遺伝子。 H.D13L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2ヌクレオカプシド導入遺伝子。
図5-2】SCV-COVID19ワクチン内のSARS-CoV-2抗原挿入領域。 A.A41L ORF中に置換された合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイク導入遺伝子。 B.A41L ORF中に置換された天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイク導入遺伝子。 C.A41L ORF中に置換されたスパイク導入遺伝子のSARS-CoV-2S1サブユニット。 D.D13L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシド導入遺伝子。 E.J2RおよびJ3R ORFの間の遺伝子間領域に挿入されたSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシド導入遺伝子。 F.B7/B8R ORFと置き換えられたSARS-CoV-2エンベロープ導入遺伝子。 G.C3L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2膜導入遺伝子。 H.D13L ORFと置き換えられたSARS-CoV-2ヌクレオカプシド導入遺伝子。
図6】SCV-COVID19Dによる単一のワクチン接種は、非近交系および近交系マウスにおいて中和SARS-CoV-2抗体およびTh1バイアス抗体プロファイルを生じさせる。 A.SCV-COVID19Dシングルショットワクチン接種後の21日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株のウイルス特異的中和抗体のレベル。 B.SCV-COVID19Dシングルショットワクチン接種後の21日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株のS1特異的抗体のレベル。 C.SCV-COVID19Dシングルショットワクチン接種後の21日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株のIgG2c(Th1)およびIgG1(Th2)抗体のレベル。
図7】SCV-COVID19Dによる単一ワクチン接種が、スパイク特異的CD8 T細胞反応を生じさせる。 A.SCV-COVID19Dシングルショットワクチン接種後の細胞内サイトカイン染色(ICS)によるスパイク特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 B.SCV-COVID19Dシングルショットワクチン接種後のELISpotによるスパイク特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。
図8】SCV-COVID19Cは、SCV-COVID19Dよりも良好なスパイク特異的抗体を誘発する。 A.SCV-COVID19ワクチンに感染した細胞におけるスパイク抗原発現のウエスタンブロットによる検出。 B.SCV-COVID19C、SCV-COVID19D、およびSCV-COVID19Fシングルショットワクチン接種後の21日目のS1特異的抗体のレベル。
図9】SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種は、近交系および非近交系マウスにおいて抗体反応を誘導する。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の14日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株のS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の14日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株のS1特異的抗体の力価。 C.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の14日目における非近交系ARC(s)および近交系C57BL/6株の中和抗体のレベル。
図10】トリプルサイトカイン産生CD8 T細胞の同定のためのゲーティング戦略。
図11-1】SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種が、ロバストなスパイク特異的T細胞反応を誘導する。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、スパイク特異的IFNγCD8 T細胞の検出を示す代表的フローサイトメトリープロット。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、スパイクプール1(S1)特異的(左側)、スパイクプール2(S2)特異的(中央)、およびエピトープ特異的(右側)である、シングル、ダブルおよびトリプルサイトカイン産生IFNγCD8 T細胞の総数のグラフ要約。 C.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、グランザイムB産生CD8 T細胞の代表的フローサイトメトリープロットおよびグラフ要約。 D.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、S1およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD4 T細胞の総数。
図11-2】SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種が、ロバストなスパイク特異的T細胞反応を誘導する。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、スパイク特異的IFNγCD8 T細胞の検出を示す代表的フローサイトメトリープロット。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、スパイクプール1(S1)特異的(左側)、スパイクプール2(S2)特異的(中央)、およびエピトープ特異的(右側)である、シングル、ダブルおよびトリプルサイトカイン産生IFNγCD8 T細胞の総数のグラフ要約。 C.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、グランザイムB産生CD8 T細胞の代表的フローサイトメトリープロットおよびグラフ要約。 D.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後の、S1およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD4 T細胞の総数。
図12】既存の免疫は、SCV-COVID19Cワクチンの単回投与後のスパイク特異的抗体反応の量および質に影響を及ぼさない。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後28日目、44日目、および80日目の、既存の免疫を有するかまたは有しないマウスに関するS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後28日目、44日目、および80日目の、既存の免疫を有するか有しないマウスの中和抗体に関するレベル。
図13】既存の免疫は、プライム-ブーストワクチン接種後のスパイク特異的抗体反応の量および質に影響を及ぼさない。 A.SCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種での28日目(ブースト前)ならびにブースター接種後14日目および50日目における、既存の免疫を有するか有しないマウスに関するS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種での28日目(ブースト前)ならびにブースター接種後14日目および50日目における、既存の免疫を有するか有しないマウスに関するS1特異的抗体のレベル。
図14】SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種が、加齢マウスにおいて抗原特異的抗体反応を誘導する。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後14日目および21日目における、若齢マウスおよび加齢マウスのS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後14日目および21日目における、若齢マウスおよび加齢マウスの中和抗体のレベル。
図15】相同的プライム-ブーストは、抗体反応の著しいブースティングを生じさせ、それは、ワクチン接種後、最高で3か月間維持される。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後21日目およびSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後21日目(ブースト後)における、若齢マウスおよび加齢マウスのS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後21日目およびSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後21日目(ブースト後)における、若齢マウスおよび加齢マウスの中和抗体のレベル。 C.SCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3週間目、9週間目、および12週間目(ブースト後)における、若齢マウスおよび加齢マウスの中和抗体のレベル。
図16】細胞表面マーカーを使用したT細胞メモリー細胞タイプのフローサイトメトリー同定のためのゲーティング戦略。
図17-1】SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは、長期T細胞反応を誘導する。 A.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、短命エフェクター(TSLE)、エフェクターメモリー(TEM)、およびセントラルメモリー(TCM)CD8 T細胞の総数。 B.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、スパイク特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 C.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ELISpotによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγスポット形成単位のレベル。 D.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγCD8 T細胞の割合。 E.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月およびSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD8 T細胞の総数。
図17-2】SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは、長期T細胞反応を誘導する。 A.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、短命エフェクター(TSLE)、エフェクターメモリー(TEM)、およびセントラルメモリー(TCM)CD8 T細胞の総数。 B.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、スパイク特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 C.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ELISpotによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγスポット形成単位のレベル。 D.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγCD8 T細胞の割合。 E.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月およびSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD8 T細胞の総数。
図17-3】SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは、長期T細胞反応を誘導する。 A.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、短命エフェクター(TSLE)、エフェクターメモリー(TEM)、およびセントラルメモリー(TCM)CD8 T細胞の総数。 B.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、スパイク特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 C.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ELISpotによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγスポット形成単位のレベル。 D.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月ならびにSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的IFNγCD8 T細胞の割合。 E.若齢マウスおよび加齢マウスにおける、SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後3か月およびSCV-COVID19C相同的プライム-ブーストワクチン接種後3か月(ブースト後)の、ICSによって検出されるS1-、RBD-およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD8 T細胞の総数。
図18】SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは、潜在的に、スパイクRBDにおけるCD8 T細胞エピトープに基づいてSARS-CoVと交差反応し得る。 A.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後7日目における、ELISpotによるエピトープ特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 B.SCV-COVID19Cシングルショットワクチン接種後7日目における、ICSによるエピトープ特異的IFNγCD8 T細胞を示す代表的フローサイトメトリーパネル。
図19】SCV-COVID19Aによるシングルワクチン接種は、スパイク-および膜特異的CD8 T細胞反応を生じさせる A.SCV-COVID19Aシングルショットワクチン接種後21日目における、S1-、RBD-およびS2特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 B.SCV-COVID19Aシングルショットワクチン接種後21日目における、膜特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。 C.SCV-COVID19Aシングルショットワクチン接種後21日目における、ヌクレオカプシド特異的IFNγCD8 T細胞のレベル。
図20-1】均等割合のSCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gでの単回ワクチン接種は、スパイクおよび膜タンパク質に対するスパイク特異的抗体反応およびCD8T細胞反応を誘導する。 A.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後21日目におけるS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後21日目におけるS1特異的抗体の力価。 C.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後の、細胞内サイトカイン染色(ICS)によるスパイク特異的IFNγ産生T細胞反応のレベル。 D.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後の、ELISpotによるスパイク-および膜特異的IFNγ産生T細胞反応のレベル。
図20-2】均等割合のSCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gでの単回ワクチン接種は、スパイクおよび膜タンパク質に対するスパイク特異的抗体反応およびCD8T細胞反応を誘導する。 A.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後21日目におけるS1特異的抗体のレベル。 B.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後21日目におけるS1特異的抗体の力価。 C.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後の、細胞内サイトカイン染色(ICS)によるスパイク特異的IFNγ産生T細胞反応のレベル。 D.SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gを含む混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後の、ELISpotによるスパイク-および膜特異的IFNγ産生T細胞反応のレベル。
図21-1】SCV-COVID19Cによるシングルワクチン接種は、エピトープ特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を生じさせる。 A.ワクチン接種後7日目におけるペプチドYNYLYRLF(配列番号9)でパルスした標的細胞に対するCTL反応。 B.ワクチン接種後7日目におけるペプチドVNFNFNGL(配列番号11)でパルスした標的細胞に対するCTL反応。 C.非パルス標的細胞に対するCTL反応。
図21-2】SCV-COVID19Cによるシングルワクチン接種は、エピトープ特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を生じさせる。 A.ワクチン接種後7日目におけるペプチドYNYLYRLF(配列番号9)でパルスした標的細胞に対するCTL反応。 B.ワクチン接種後7日目におけるペプチドVNFNFNGL(配列番号11)でパルスした標的細胞に対するCTL反応。 C.非パルス標的細胞に対するCTL反応。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明は、特定の手順または剤、剤の特定の製剤および様々な医学的方法論に限定されるものではなく、そのため、それらは変更され得る。本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定することを意図するものではない。特に明記されない限り、本明細書において使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0092】
本明細書において説明されるものと類似もしくは同等の任意の材料および方法は、本発明を実施または試験するために使用することができる。実施者は、特に、以下に向けられる:Sambrookら, (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, N.Y.:Ausubelら(1999) Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47) John Wiley & Sons, New York;Murphyら (1995) Virus Taxonomy Springer Verlag:79-87, Mahy Brian WJ and Kangro O Hillar (Eds):Virology Methods Manual 1996, Academic Press;およびDavison AJ and Eliott RM (Eds):Molecular Virology, A Practical Approach 1993, IRL Press at Oxford University Press; Perkusら, Virology (1990) 179(1):276~86、または当技術分野の定義および用語ならびに当業者に既知の他の方法。
【0093】
本明細書において説明されるものと類似または同等の任意の方法および材料は、本発明の実践または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料について説明する。本発明の目的のために、次の用語を以下のように定義する。
【0094】
本明細書を通して、文脈上特に必要がない限り、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、または「含むこと(comprising)」は、言明されたステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の包含を意味するがいかなる他のステップもしくは要素またはステップもしくは要素の群の排除を意味するものではないと理解されるであろう。したがって、用語「含むこと(comprising)」などの使用は、列挙される要素は、必要であるかまたは必須であるが、他の要素は任意であり、存在し得るかまたはし得ないことを示している。弱毒化されたオルトポックスベクターとの関連において、対象のベクターは、弱毒化のために、以下の欠失を含むことによって改変される
【0095】
成熟遺伝子またはアセンブリ遺伝子、しかしながら、ベクター、抗原または他のタンパク質などに対するさらなる改変が包含される。
【0096】
「からなる(consisting of)」によって、当該成句「からなる」の後に続くものを含み、それらに限定されることが意図される。したがって、当該成句「からなる」は、列挙される要素が、必要であるかまたは必須であり、ならびに他の要素は存在し得ないことを示している。「実質的に、~からなる(consisting essentially of)」によって、当該成句の後に列挙される任意の要素を含むことが意図されるが、列挙される要素に対して本開示において指定される活性または作用を妨害しないかまたは貢献しない他の要素に限定される。したがって、当該成句「実質的に、~からなる」は、列挙される要素は、必要であるかまたは必須であるが、他の要素は任意であり、それらが当該列挙される要素の作用の活性に影響するかまたはしないかに応じて、存在し得るかまたはし得ないことを示している。
【0097】
本明細書において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上明記されない限り、複数の態様を包含する。したがって、例えば、「細胞(a cell)」に対する言及は、単一の細胞ならびに2つ以上の細胞を含み;「有機体(an organism)」に対する言及は、単一の有機体ならびに2つ以上の有機体を含む;など。いくつかの実施形態において、「an」は、「1または1超」を意味する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「および/または(and/or)」は、列挙された関連項目の1つまたは複数のあらゆる可能な組み合わせを意味し、ならびに包含すると共に、選択的に(または(or))解釈される際の組み合わせの欠如を意味しそれを包含する。
【0099】
「弱毒化」または「弱毒化された」は、本明細書において使用される場合、ウイルスベクターのビルレンスの減少を意味する。ビルレンスは、特定の宿主において疾患を引き起こすウイルスの能力として定義される。感染性ウイルスを作り出すことができないポックスウイルスベクターは、初めに細胞に感染し得るが、実質的に、それ自体を完全に複製すること、または宿主内で増殖すること、またはある状態を引き起こすことはできない。これは、当該ベクターはそのタンパク質または核酸を宿主細胞の細胞質に送達するが対象を害さないため、望ましい。
【0100】
「制御要素」または「制御配列」によって、特定のポックスウイルス、ベクター、プラスミドまたは細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現にとって必要な核酸配列(例えば、DNA)が意味される。真核細胞にとって好適である制御配列としては、転写制御配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサーなど、翻訳制御配列、例えば、翻訳エンハンサーおよび内部リボソーム結合部位(IRES)など、mRNA安定性を調節する核酸配列、ならびに細胞内の細胞内コンパートメントまたは細胞外環境へと転写されたポリヌクレオチドによってコードされた産生物を標的にする標的化配列が挙げられる。
【0101】
配列が提供される場合、対応する配列も包含される。「に対応する(corresponds to)」、「対応する(corresponding)」、または「に対応する(corresponding to)」によって、参照核酸配列に対してかなりの配列同一性(例えば、参照核酸配列の全てまたは一部に対して、少なくとも約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83m84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、96、98、99%、さらには最高で100%までの配列同一性)を示す核酸配列または参照アミノ酸配列に対してかなりの配列類似性または配列同一性(例えば、参照アミノ酸配列の全てまたは一部に対して、少なくとも50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83m84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、96、98、99%、さらには最高で100%までの配列類似性または配列同一性)を示すアミノ酸配列が意図される。
【0102】
ある状態の治療もしくは予防との関連における、もしくは標的抗原もしくは有機体に対する免疫反応を調整するための、「有効量」によって、ある症状を被ることを予防するため、そのような症状を食い止めるため、および/もしくは既存の症状を治療するため、その状態を予防するため、または標的抗原もしくは有機体に対する免疫反応を調整するために有効な、一回用量においてまたは一連の用量の一部として、剤(例えば、本明細書において説明される弱毒化されたオルトポックスベクター)またはそれを含む組成物の、そのような治療または予防を必要とする個体への、ある量の投与が意図される。有効量は、治療される個体の健康状態および身体的状態、治療される個体の分類群、組成物の製剤、医学的状況の評価、および他の関連要因に応じて変わるであろう。当該量は、日常的作業のトライアルによって決定することができる比較的広い範囲に収まるであろうことが予想される。
【0103】
本明細書において使用される場合、用語「コードする(encode)」、「コードすること(encoding)」などは、核酸が別の核酸またはポリペプチドを提供する能力を意味する。例えば、核酸配列は、転写および/または翻訳されることによってポリペプチドを作り出し得る場合、または転写および/または翻訳されることによってポリペプチドを作り出し得るような形態へとプロセシングされ得る場合、当該核酸配列は、当該ポリペプチドを「コードする」と言われる。そのような核酸配列は、コード配列、あるいはコード配列と非コード配列との両方を含み得る。したがって、用語「コードする(encode)」、「コードすること(encoding)」などは、DNA分子の転写から生じるRNA産物、RNA分子の翻訳から生じるタンパク質、RNA産物を形成するDNA分子の転写およびRNA産物のその後の翻訳からから生じるタンパク質、またはRNA産物を提供するためのDNA分子の転写、プロセシングされたRNA産物(例えば、mRNA)を提供するためのRNA産物のプロセシング、およびプロセシングされたRNA産物のその後の翻訳から生じるタンパク質を包含する。
【0104】
用語「内因性」は、宿主有機体において通常見出される遺伝子または核酸配列またはセグメントを意味する。
【0105】
用語「発現可能(expressible)」、「発現された(expressed)」、およびその変形は、細胞が、ヌクレオチド配列をRNAへと転写し、任意選択的に、生物学的または生化学的機能を提供するペプチドまたはポリペプチドを合成するためにmRNAを翻訳する能力を意味する。
【0106】
本明細書において使用される場合、用語「遺伝子」は、任意選択的にこのプロセスを支援するための要素の追加を伴って、mRNAを作り出すために使用することができる核酸分子を包含する。遺伝子は、機能的タンパク質を作り出すために使用することができる場合もありまたはできない場合もある。遺伝子は、コード領域および非コード領域(例えば、イントロン、調節要素、プロモーター、エンハンサー、終止配列、ならびに5’および3’非翻訳領域)の両方を含むことができる。
【0107】
用語「非相同核酸配列」、「非相同ヌクレオチド配列」、「非相同ポリヌクレオチド」、「外来ポリヌクレオチド」、「外因性ポリヌクレオチド」などは、実験的操作によって有機体のゲノム内に導入され、導入された遺伝子が、改変前のウイルスゲノム配列と比べて、いくつかの改変(例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの、点突然変異、欠失、置換または付加、エンドヌクレアーゼ切断部位の存在、loxP部位の存在など)を含む限りその有機体において見出される遺伝子配列を含み得る、任意の核酸(例えば、IRESを含むヌクレオチド配列I)を意味するために相互互換的に使用される。
【0108】
用語「非相同ポリペプチド」、「外来ポリペプチド」、および「外因性ポリペプチド」は、上記において定義されるような、「非相同核酸配列」、「非相同ヌクレオチド配列」、「非相同ポリヌクレオチド」、「外来ポリヌクレオチド」、および「外因性ポリヌクレオチド」によってコードされる任意のペプチドまたはポリペプチドを意味するために相互互換的に使用される。
【0109】
ある実施形態において、当該非相同DNA配列は、少なくとも1つのコード配列を含む。当該コード配列は、転写制御要素に作動的に連結される。
【0110】
ある実施形態において、当該非相同DNA配列は、1つまたは複数の転写制御要素に連結された2つ以上のコード配列も含むことができる。好ましくは、当該コード配列は、1つまたは複数のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、外来抗原、または抗原性エピトープ、とりわけ、治療的関心対象の遺伝子のそれらをコードする。治療的関心対象の遺伝子は、疾患を引き起こす病原体または感染性微生物の遺伝子から得られ得るか、またはそれに対して相同であり得る。治療的関心対象の遺伝子は、特異的免疫反応に影響を及ぼすため、好ましくは、それを誘導するために、有機体の免疫系に対して提示され、それによって、感染に対して当該有機体をワクチン接種するかまたは予防的に保護する。
【0111】
ある実施形態において、非相同DNA配列は、SARS-CoV-2から得られ、スパイクタンパク質、および/または膜タンパク質、および/またはヌクレオカプシドタンパク質、および/またはエンベロープタンパク質、または任意のそれらの一部をコードする。
【0112】
用語「防御免疫反応」は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させるか、またはコロナウイルス疾患の重症のリスクを減少させる免疫反応を意味する。
【0113】
SARS-CoV-2抗原に対する免疫反応は、SARS-CoV-2に対する遺伝的類似性を有するコロナウイルスに対して交差反応性である抗体を提供し得る。
【0114】
用語「中和抗体反応」は、ウイルス感染性を中和することができる抗体が誘発される免疫反応を意味する。ワクチン接種によって中和抗体を生じさせることは、ウイルス感染に対する保護にとって必要かつ十分であり得る。中和抗体の存在は、ワクチン接種後のウイルス感染からの保護と相関する最良の指標である。同様に、それらは、免疫のマーカーである。
【0115】
本明細書において意図されるような免疫反応を誘導することは、免疫反応を引き起こすかまたは刺激すること、および/または以前に存在した免疫反応を強化することを含むことは理解されるであろう。
【0116】
SARS-CoV-2感染のリスクおよび/またはコロナウイルス疾患の重症度を防ぐかまたは減少させる、動物における免疫反応は、SARS-CoV-2伝播の防止または減少によって媒介され得る。
【0117】
本発明のポックスウイルスベクターは、好ましくは、哺乳動物細胞において増殖する。本発明において使用することができる哺乳動物細胞の詳細は、PCT/AU2014/050330号において提供され、その開示は、相互参照によって本明細書に組み入れられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、哺乳動物細胞は、ヒト細胞、霊長類細胞、ハムスター細胞、またはウサギ細胞である。
【0119】
細胞は、単細胞であり得、または液体培養、単層などとして組織培養において培養することができる。宿主細胞も、組織から直接的もしくは間接的に得られ得、あるいは動物を含む有機体内に存在し得る。細胞は、ユビキチン化されたT細胞抗原を発現するように改変されている細胞系を含む株化細胞であり得る。
【0120】
いくつかの実施形態において、相同組換えおよび/またはウイルス増殖は、D13Lタンパク質および牛痘宿主域タンパク質(CP77)を発現するGMP-CHO-S細胞系から得られるSCV細胞基質であるBC19A-12細胞系において行われる。SCVワクチンプラットフォームは、ウイルスアセンブリを防ぐためにウイルスゲノムにD13L遺伝子の標的化欠失を組み込み、それによって、SCVを通常の許容細胞系において感染性子孫を生じることができないようにするが;しかしながら、SCVゲノムの増殖は維持される。CHO細胞は、D13およびCP77を構成的に発現するように操作され、それにより、ウイルス増殖を可能にした。BC19A-12細胞系を使用するウイルス増殖の方法の完全な説明のため、その全体が本明細書に組み入れられるEldiら 2017を参照されたい。
【0121】
いくつかの実施形態において、相同組換えおよび/またはウイルス増殖は、ワクシニアウイルスD13タンパク質を構成的に発現し、ならびに無タンパク質培地または無血清培地において培養することができるモノクローナル懸濁CHO細胞であるSD07-1細胞系において行われる。
【0122】
用語「作動可能に接続された」または「作動可能に連結された」は、本明細書に使用される場合、説明される構成要素が、それらがそれらの意図される方式において機能することを可能にする関係にある並置を意味する。例えば、コード配列に「作動可能に連結された」転写制御配列は、当該転写制御配列に適合する条件下での、コード配列の発現を可能にするようなコード配列に対する当該転写制御配列の位置決めおよび/または方向付けを意味する。別の例において、オルトポックスウイルスコード配列に作動可能に接続されたIRESは、オルトポックスウイルスコード配列のキャップ非依存性翻訳を可能にするようなオルトポックスウイルスコード配列に対するIRESの位置決めおよび/または方向付けを意味する。
【0123】
本明細書において使用される場合、用語「オープンリーディングフレーム」および「ORF」は、コード配列の翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間におけるコードされたアミノ酸配列を意味するために本明細書において相互互換的に使用される。用語「開始コドン」(例えば、ATG)および「終止コドン」(例えば、TGA、TAA、TAG)は、タンパク質合成(mRNA翻訳)のそれぞれ開始および鎖終止を指定する、コード配列における3つの隣接するヌクレオチドの単位(「コドン」)を意味する。
【0124】
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、または「核酸配列」は、本明細書に使用される場合、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、またはDNAを指定する。当該用語は、典型的には、少なくとも10塩基長のヌクレオチドの重合形態であるリボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドのどちらか、またはヌクレオチドのどちらかのタイプの改変形態を意味する。当該用語は、RNAまたはDNAの一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。
【0125】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」、および「タンパク質性分子(proteinaceous molecule)」は、アミノ酸残基の重合体を含むかまたはそれからなる分子ならびにそれらのバリアントおよび合成アナログを意味するために本明細書において相互互換的に使用される。したがって、これらの用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が、天然に存在しない合成アミノ酸、例えば、対応する天然に存在するアミノ酸の化学的アナログなど、であるアミノ酸重合体、ならびに天然に存在するアミノ酸重合体に当てはまる。
【0126】
本明細書において使用される場合、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」などに適用される用語「組換え(体)」は、本明細書において説明される宿主細胞または無細胞系において転写および/または翻訳することができる人工核酸構造体(すなわち、非複製性cDNAまたはRNA;または自己複製性相補的cDNAまたはRNAであるレプリコン)を意味すると理解される。組換え核酸分子またはポリヌクレオチドは、ベクターに挿入され得る。プラスミド発現ベクターなどの非ウイルスベクターまたはウイルスベクターが使用され得る。ベクターの種類および本発明による核酸コンストラクトの挿入の技術は、当業者に既知である。本発明による核酸分子またはポリヌクレオチドは、本発明よって説明される配置において天然には生じない。換言すれば、非相同ヌクレオチド配列は、天然においては、親ウイルスゲノムの要素(例えば、プロモーター、ORF、ポリアデニル化シグナル、リボザイム)と組み合わされない。
【0127】
本明細書において使用される場合、用語「組換えウイルス」は、少なくとも1つの非相同核酸配列を含む「親ウイルス」に対する言及であると理解されるであろう。
【0128】
用語「配列同一性」は、本明細書に使用される場合、配列が比較ウィンドウにおいてヌクレオチド-ヌクレオチドベースで、またはアミノ酸-アミノ酸ベースで同一であることの程度を意味する。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較ウィンドウにおいて最適にアラインメントされた2つの配列を比較し、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、およびMet)が両方の配列において現れる位置の数を決定することによってマッチした位置の数を得て、当該マッチした位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数(すなわち、ウィンドウのサイズ)で割り、結果に100を掛けることで配列同一性のパーセンテージを得ることによって算出される。本発明の目的において、「配列同一性」は、DNASISコンピュータプログラム(Windows版バージョン2.5;Hiachi Software engineering Co.,Ltd.、サンフランシスコ、カルフォルニア州、米国から入手可能)によって、当該ソフトウェアに付属するレファレンスマニュアルにおいて使用される標準デフォルト値を使用して算出された「マッチパーセンテージ(match percentage)」を意味すると理解されるであろう。
【0129】
用語「シグナル配列」または「シグナルペプチド」は、サイトゾルからある特定のオルガネラ、例えば、核、ミトコンドリアマトリックス、および小胞体など、へのタンパク質の共翻訳輸送または翻訳後輸送を指示する、短い(およそ3~約60のアミノ酸長)ペプチドを意味する。ER標的シグナルペプチドを有するタンパク質の場合、シグナルペプチドは、典型的には、タンパク質がERへ輸送された後に、シグナルペプチドによって前駆体形態から切断され、結果のタンパク質は、分泌経路に沿ってそれらの細胞内(例えば、ゴルジ装置、細胞膜、または細胞壁)または細胞外位置へと移動する。「ER標的化シグナルペプチド」は、本明細書に使用される場合、通常、ER膜を通って当該ERのルーメン内へとタンパク質の一部または全てが挿入された後に酵素的に除去されるアミノ末端疎水性配列を含む。したがって、ある配列のシグナル前駆体形態は、タンパク質の前駆体形態の一部として存在し得るが、一般的に、当該タンパク質の成熟形態には存在しないであろう。
【0130】
「類似性」は、下記の表Aに定義されるような、同一であるかまたは構成的に保存された置換であるアミノ酸のパーセンテージの数を意味する。類似性は、GAP(Deverauxら 1984, Nucleic Acids Research 12: 387~395)などの配列比較プログラムを使用して決定され得る。この方法において、本明細書において列記されたものと類似のまたは実質的に異なる長さの配列は、アラインメント内にギャップを挿入することによって比較され得、そのようなギャップは、例えば、GAPによって使用した比較アルゴリズムによって決定される。
【0131】
【表A】
【0132】
比較ウィンドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、アルゴリズムをコンピュータ化した手段(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0(Genetics Computer Group、575 Science Drive Madison、ウィスコンシン州、米国)のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または観察によって行うことができ、種々の方法によって生成された最良のアラインメント(すなわち、比較ウィンドウにおいて最も高いパーセンテージ相同性をもたらす)が選択される。例えば、Altschulら, 1997, Nucl.Acids Res.25:3389によって開示されるプログラムのBLASTファミリーも参照され得る。配列分析の詳細な説明は、Ausubelら, 「Current Protocols in Molecular Biology」, John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のユニット19.3に見出すことができる。
【0133】
本明細書において相互互換的に使用される用語「対象」、「患者」、「宿主」、または「個体」は、療法または予防が望ましくある任意の対象、詳細には脊椎動物対象、さらにより詳細には哺乳動物対象を意味する。本発明の範囲内の好適な脊椎動物には、これらに限定されるわけではないが、霊長類(例えば、ヒト、サルおよび類人猿)を含む、脊索動物亜門の任意のメンバーが含まれ、ならびにマカク属からのそのようサルの種(例えば、カニクイザル類(cynomologus monkeys)、例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)など、および/またはアカゲザル類(rhesus monkeys)(アカゲザル(Macaca mulatta)、およびヒヒ(チャクマヒヒ(Papio ursinus))、ならびにマーモセット類(marmosets)(マーモセット属(Callithrix)からの種)、リスザル類(squirrel monkeys)(リスザル属(Saimiri)からの種)、フェレット類(ferrets)(イタチ属(Mustela)からの種)、およびタマリン類(tamarins)(サグイヌス属(Saguinus)からの種)、ならびにチンパンジーなどの類人猿の種(コモンチンパンジー(Pan troglodytes))、齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ類(lagomorphs)(例えば、ウサギ、ノウサギ)、ウシ類(bovines)(例えば、ウシ)、ヒツジ類(ovines)(例えば、ヒツジ)、ヤギ類(caprines)(例えば、ヤギ)、ブタ類(porcines)(例えば、ブタ)、ウマ類(equines)(例えば、ウマ)、イヌ類(canines)(例えば、イヌ)、ネコ類(felines)(例えば、ネコ)、鳥類(avians)(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、およびカナリア、セキセイインコなどのコンパニオンバード)、海獣(例えば、イルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、および魚が含まれる。好ましい対象は、ある状態の治療または予防を必要とするヒトである。しかしながら、前述の用語が症状の存在することを必然的に含むものではないことは理解されるであろう。
【0134】
用語「導入遺伝子」は、宿主生物のゲノム中に人工的に導入されているかまたは導入されようとしており、宿主の子孫に伝えられる、遺伝物質を記載するために本明細書において使用される。いくつかの実施形態において、それは、それが導入される哺乳動物細胞もしくはオルトポックスベクターに所望の特性を付与するか、またはさもなければ、所望の治療結果もしくは診断結果をもたらす。
【0135】
本明細書において使用される場合、用語「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」などは、所望の薬理学的効果および/または生理学的効果を得ることを意味する。当該効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に予防する観点において予防的であり得、および/または疾患および/または当該疾患に起因する有害な効果に対する部分的または完全な治癒の観点において治療的であり得る。「治療」は、本明細書に使用される場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を網羅し、ならびに以下:(a)疾患に罹りやすくあり得るが疾患に罹っているとは診断されていない対象において疾患が生じることを防ぐこと;(b)疾患を抑制する、すなわち、その進行を阻止すること;および(c)疾患を軽減する、すなわち、疾患の改善を引き起こすこと、を含む。
【0136】
有機体、ポリペプチドまたは核酸配列に関する用語「野生型」、「自然(の)」、「天然(の)」などは、有機体のポリペプチドまたは核酸配列が、天然に存在するか、またはヒトによって変更されていない、変異されていない、または別の方法で操作されていない少なくとも1種の天然に存在する有機体において入手可能であることを意味する。
【0137】
用語「ウイルス感染」は、対象からの生物学的サンプルにおけるウイルス病原体による感染を意味する。
【0138】
用語「ウイルス様粒子」または「VLP」は、抗原的および形態学的に天然のウイルスに類似する構造体を意味する。
【0139】
バリアントは、選択的ハイブリダイゼーションが、中程度のまたは高いストリンジェンシーの条件下において達成され得るような、参照された分子と十分に類似した核酸分子、またはそれらの全てまたは一部に対するそれらの相補的な形態、あるいは、少なくとも約15のヌクレオチドを含む比較ウィンドウにおいて参照されたポックスウイルス宿主域因子を定義するヌクレオチド配列に対して約60%~90%または90%~98%の配列同一性を有する核酸分子を含む。好ましくは、ハイブリダイゼーション領域は、約12~約18の核酸塩基長またはそれ以上の長さである。好ましくは、特定のヌクレオチド配列と参照配列との間のパーセント同一性は、少なくとも約80%、または85%、より好ましくは約90%の類似性またはそれ以上、例えば、約95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上など、である。80%~100%の間のパーセント同一性も包含される。当該ヌクレオチド配列の長さは、提案されるその機能に依存する。ホモログも包含される。用語「ホモログ(homolog)」または「相同遺伝子」、または「ホモログ(homologs)」は、広くは、他の種に由来するものを含む機能的および構造的に関連する分子を意味する。ホモログおよびオーソログは、バリアントの例である。
【0140】
核酸配列同一性は、下記の方法において決定することができる。対象核酸配列は、プログラムBLASTMバージョン2.1(Altschulら (1997) Nucleic Acids Research 25:3389~3402に基づく)を使用して、核酸配列データベース、例えば、GenBankデータベース(ウェブサイトwww.ncbi.nln.nih.gov/blast/においてアクセス可能)を検索するために使用される。プログラムは、ungappedモードにおいて使用される。低複雑度の領域に起因する配列相同性を除去するために、デフォルトのフィルタリングが使用される。BLASTMのデフォルトのパラメータが使用される。
【0141】
アミノ酸配列同一性は、下記の方法において決定することができる。対象ポリペプチド配列は、BLASTPプログラムを使用して、ポリペプチド配列データベース、例えば、GenBankデータベース(ウェブサイトwww.ncbi.nln.nih.gov/blast/においてアクセス可能)を検索するために使用される。プログラムは、ungappedモードにおいて使用される。低複雑度の領域に起因する配列相同性を除去するために、デフォルトのフィルタリングが使用される。BLASTPのデフォルトのパラメータが用いられる。低複雑度の配列に対するフィルタリングは、SEGプログラムを使用し得る。
【0142】
好ましい配列は、参照配列またはその相補物に対してストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするであろう。用語「ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズする」およびその文法的同等な用語は、核酸分子が、温度および塩濃度における定義された条件下において標的核酸分子(例えば、サザンブロットまたはノーザンブロットなどのDNAまたはRNAブロット上に固定された標的核酸分子)に対してハイブリダイズする能力を意味する。約100を超える塩基長の核酸分子に関して典型的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、天然デュプレックスの融解温度(Tm)より25℃以下から30℃(例えば、10℃)だけ低い(概して、Sambrookら, (上記); Ausubelら, (1999)を参照されたい)。約100を超える塩基の核酸分子のTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C-log(Na))によって算出することができる。100を超える塩基の長さを有する核酸分子に関して、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、Tm未満より5℃~10℃低い。
【0143】
文脈との関連における用語「欠失」は、標的遺伝子のコード領域の全てまたは一部の除去を意味する。当該用語は、標的遺伝子の遺伝子発現を除去するかまたはコードされたタンパク質のレベルもしくは活性を除去するかもしくは大幅に下方制御する任意の形態の突然変異または形質転換も包含する。
【0144】
「遺伝子」についての言及は、遺伝子のエキソンまたはオープンリーディングフレームに対応するDNAを含む。本明細書においての「遺伝子」に対する言及は、転写および/もしくは翻訳調節配列および/もしくはコード領域および/もしくは非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’および3’非翻訳配列)からなる古典的ゲノム遺伝子;または当該遺伝子のコード領域(すなわち、エキソン)ならびに5’および3’非翻訳配列に対応するmRNAもしくはcDNAも包含すると見なされる。
【0145】
「調節要素」または「調節配列」によって、特定の宿主細胞における作動可能に連結されたコード配列の発現にとって必要な核酸配列(例えば、DNA)が意図される。例えば、原核細胞にとって好適な調節配列は、プロモーター、および、任意選択的にシス作用配列、例えば、オペレーター配列およびリボソーム結合部位など、を含む。真核細胞にとって好適な制御配列は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、mRNA安定性を調節するリーダー配列またはトレイリング配列(trailing sequence)、および転写されたポリヌクレオチドによってコードされた産物を細胞内の細胞内コンパートメントまたは細胞外環境へと標的化する標的化配列を含む。
【0146】
本願の改変された哺乳動物細胞をもたらすために好適なキメラコンストラクトは、調節配列に作動可能に連結される、オルトポックス宿主域をコードする調節配列を含む。調節配列は、好適には、転写および/または翻訳制御配列を含み、それらは、細胞での発現に対して適合性である。典型的には、転写および翻訳調節制御配列としては、これらに限定されるわけではないが、プロモーター配列、5’非コード領域、シス調節領域、例えば、転写制御タンパク質もしくは翻訳調節タンパク質のための機能的結合部位、上流オープンリーディングフレーム、リボソーム結合配列、転写開始部位、翻訳開始部位、ならびに/または、リーダー配列、終止コドン、翻訳停止部位、および3’非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列が挙げられる。当技術分野において既知の構成的または誘導性プロモーターが想到される。当該プロモーターは、天然に存在するプロモーターかまたは、要素または2つ以上のプロモーターを組み合わせるハイブリッドプロモーターであり得る。
【0147】
想到されるプロモーター配列は、哺乳動物細胞に対して天然であり得るか、または当該領域が当該選択された有機体において機能的であるような代替源から得られ得る。プロモーターの選択は、意図される宿主細胞に応じて異なるであろう。例えば、哺乳動物細胞における発現のために使用することができるプロモーターとしては、中でも、カドミウムなどの重金属に反応して誘導され得るメタロチオネインプロモーター、βアクチンプロモーター、ならびにウイルスプロモーター、例えば、SV40ラージT抗原プロモーター、ヒト-サイトメガロウイルス(CMV)前初期(IE)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびHPVプロモーター、特にHPV上流調節領域(URR)が挙げられる。これら全てのプロモーターは、当技術分野において十分に説明され、容易に入手可能である。
【0148】
ポックスウイルスプロモータータイプであって、それらが活性なウイルス複製サイクル内の期間によって区別されるいくつかのポックスウイルスプロモータータイプが存在する。初期プロモーターは、感染の後期においても活性であり得るが、それに対して、後期プロモーターの活性は、後期相に限定される。中期プロモーターと呼ばれるプロモーターの第3のクラスは、初期相から後期相への移行期において活性であり、ウイルスDNA複製に依存する。ポックスウイルス複製サイクルの初期相および後期相の両方において活性なプロモーターは、通常、ポックスウイルスベクターにおける新生抗原の発現を指示するために用いられる。コンパクトな合成プロモーター(prPs)は、強力な初期および後期遺伝子発現を指示するために広く使用されている。pr7.5プロモーターは、ワクシニアウイルスベクターによる組換え遺伝子発現のために使用される天然の初期-後期プロモーターの別の例である。
【0149】
本明細書において使用される場合、用語「初期/後期プロモーター」は、ウイルスDNA複製が生じる前および後の、ウイルス感染細胞において活性なプロモーターを意味する。特に好ましいのは、合成ワクシニア初期/後期プロモーター(Ps)、天然ワクシニア初期/後期プロモーター(p7.5)、および鶏痘初期/後期プロモーター(pE/L)を含むポックスウイルス初期/後期プロモーターである。本明細書において使用されるプロモーターは、特に明記されない限り、ワクシニアウイルスプロモーターである。
【0150】
エンハンサー要素は、哺乳動物コンストラクトの発現レベルを増加させるためにも本明細書において使用され得る。例としては、例えば、Dijkemaら (1985) EMBO J. 4:761に記載されるSV40初期遺伝子エンハンサー、例えば、Gormanら, (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777に記載されるラウス肉腫ウイルスの長い末端反復(LTR:long terminal repeat)から得られるエンハンサー/プロモーター、および例えば、Boshartら (1985) Cell 41:521に記載されるヒトCMVから得られるエレメント、例えば、CMVイントロンA配列に含まれるエレメントなど、が挙げられる。
【0151】
当該キメラコンストラクトは、3’非翻訳配列も含み得る。3’非翻訳配列は、ポリアデニル化シグナルと、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現をもたらすことができる任意の他の調節シグナルとを含むDNAセグメントを含む遺伝子の一部を意味する。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸部分(polyadenylic acid tract)の付加をもたらすことによって特徴づけられる。ポリアデニル化シグナルは、一般的に、標準形態5’AATAAA-3’に対する相同性の存在によって認識されるが、バリエーションは一般的ではない。3’非翻訳調節DNA配列は、好ましくは、約50~1,000ntを含み、ならびにポリアデニル化シグナルに加えて、転写および翻訳終止配列と、mRNAプロセシングまたは遺伝子発現をもたらすことができる任意の他の調節シグナルとを含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、当該キメラコンストラクトは、さらに、当該コンストラクトを含む細胞の選択を可能にする選択可能マーカー遺伝子を含む。選択遺伝子は、当分野において周知であり、および関心対象の細胞における発現に対して適合性であろう。
【0153】
一実施形態において、ポックスウイルス構造的遺伝子またはアセンブリ遺伝子の発現は、プロモーターの制御下にある。非限定的な一実施形態において、当該プロモーターは、細胞構成的プロモーター、例えば、ヒトEF1アルファ(ヒト伸長因子1アルファ遺伝子プロモーター)、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子プロモーター)、またはPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター)(宿主細胞に対する著しい毒性効果の非存在下でのウイルス増殖を維持するのに十分なレベルのCP77の発現を導く)など、である。プロモーターは、誘導性、例えば、細胞誘導性プロモーター、MTH(メタロチオネイン遺伝子由来の)など、でもあり得、ウイルスプロモーターも、哺乳動物細胞、例えば、CMV、RSV、SV-40、およびMoU3など、において用いられる。
【0154】
本発明は、コロナウイルス感染症19(COVID-19)と呼ばれる疾患に対する原因因子である、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された新規のコロナウイルスに対する予防的ワクチンのための組成物を提供する。COVID-19は、世界保健機関(WHO)によってパンデミックが宣言され、世界中の大勢の人々に衝撃を与えた。SARS-CoV-2は、プラス鎖一本鎖RNAウイルスである。SARS-CoV-2ゲノムは、約29,700ヌクレオチド長であり、ならびにSARS-CoVに対して79.5%の配列類似性を有し;それは、15または16の非構造タンパク質をコードする5’末端の長いORF1abポリプロテインを有し、その一方で、3’末端ゲノムは、4つの主要な構造タンパク質(スパイク、ヌクレオカプシド、膜、およびエンベロープ)をコードする。SARS-CoV-2は、ウイルス侵入および最終的病因のために宿主細胞上に発現されるアンギオテンシン受容体変換酵素2(ACE2)に結合する。SARS-CoV-2ウイルスは、主に、発熱、乾性咳、呼吸困難、頭痛、めまい、全身衰弱、嘔吐、および下痢を含む症状によって呼吸器系に影響を及ぼす。現在の医療管理は、主に、利用可能な標的療法はなく対症的である。
【0155】
突然変異によって変化するという、SARS-CoV-2を含めたRNAウイルスの固有の傾向が、時間経過と共に新しいバリアントについて世界的に報告されている。ほとんどの出現した突然変異は、流行に対して著しい影響を有さないだろうが、その一方で、当該ウイルスに選択有利性を与える突然変異は、概して、当該集団においてバリアントの罹患率増加に反映されるように維持される。記録された多くのSARS-CoV-2バリアントの中でも、選ばれた少数は、それらの伝播性の増加、より重症の病気を罹患させる能力、および/または感染またはワクチン接種後に生じる免疫反応を回避する能力の増加により、公衆衛生上、懸念される。2021年に、懸念されるバリアント(VOC)を反映する3つの特定のウイルス系統:B.1.1.7、B.1.351、およびB.1.1.28.1が出現した。D614Gと呼ばれた当該突然変異は、3つの懸念されるバリアントによって共有される。それは、この突然変異を有さない他の支配的ウイルスおよび他のSARS CoV2株と比較して、増加した伝播性をウイルスに与える。
【0156】
本明細書において使用される場合、懸念されるバリアントは、B.1.1.17、B.1.351、およびB.1.1.28.1、具体的にはP.1系統、を意味する。B.1.1.7バリアントは、最初、2020年9月にイギリスの南部において同定された。このバリアントは、501位においてスパイクタンパク質のRBDに突然変異を有し、その位置では、アミノ酸アスパラギン(N)がチロシン(Y)に置換されており、したがって、当該突然変異は、N501Yと呼ばれる。B.1.1.7バリアントは、他のバリアントと比べてより効率的で急速な伝播および死亡のリスクの増加に関連している。B1.1.351バリアントは、最初、2020年10月に南アフリカにおいて同定された。このバリアントは、K417N、E484K、およびN501Yを含むスパイクタンパク質における複数の突然変異を有する。突然変異E484Kは、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体による中和に影響を及ぼすことが分かっている。B.1.1.28バリアント、具体的には当該系統のP.1枝(branch)は、最初、2021年1月に、日本に到着したブラジルからの旅行者において同定された。P.1系統は、K417T、E484K、およびN501Yを含むスパイクタンパク質RBDにおける3つの突然変異を含む。当該突然変異は、SARS-CoV-2の伝播性および抗原プロファイルを増加させる。
【0157】
本明細書において使用される場合、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質のS1サブユニットは、受容体結合ドメイン領域内に、免疫優性T細胞エピトープYNYLYRLF(配列番号9)、VVLSFELL(配列番号10)、およびVNFNFNGL(配列番号11)を含む。VVLSFELL(配列番号10)およびVNFNFNGL(配列番号11)エピトープは、以前に、SARS-CoVのマウス研究において同定された。SARS-CoVとSARS-CoV-2との間において保存されるこれらのエピトープは、SARS-CoV-2において免疫反応を起こすように向けられたワクチンが、SARS-CoVに対する交差反応であり得ることを示し得ることは当業者によって理解されるであろう。
【0158】
ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2株/分離株の遺伝子配列は、Sharing All Influenza Data(GISAID)のGlobal Initiativeによって利用可能となり、例えば、Wuhan/IVDC-HB-01/2019(GISAIDアクセッションID:EPI_ISL_402119~121)を含むSARS-CoV-2の様々な株/分離株からのゲノム配列データを含む。SARS-CoV-2のゲノム配列は、COVID19に対するワクチンなどの潜在的介入オプションを設計および評価する上で重要である。
【0159】
本発明は、非相同コロナウイルス抗原を発現するための弱毒化されたポックスウイルスを含む組成物を提供し、それは、コロナウイルス感染に対する免疫反応および/または中和抗体反応を誘導するためのワクチンとして使用することができる。用語「弱毒化」、「弱毒化された」などは、本明細書に使用される場合、ウイルスベクターのビルレンスの低下を意味する。ビルレンスは、典型的には、ウイルスが特定の宿主において疾患を生じさせる能力として定義される。例えば、感染性ウイルスを生じることができないポックスウイルスは、最初、細胞に感染し得るが、実質的に、それ自体を完全に複製することができず、または宿主または宿主細胞内において増殖することができず、または疾患または状態を引き起こすことができない。このことは、ポックスウイルスベクターは、宿主または宿主細胞に核酸を送達することができるが、典型的には、宿主または宿主細胞を害することができないため、望ましい。
【0160】
ポックスウイルスファミリーは、2つの亜科のコルドポックスウイルス亜科およびエントモポックスウイルス亜科を含む。コルドポックスウイルス亜科は、人に感染する種を含むオルトポックスウイルス科を含む8つの属を含み、その一方で、エントモポックスウイルス亜科は、昆虫に感染する。オルトポックスウイルス科は、例えば、天然痘の原因因子である痘瘡ウイルス、1796年にJennerによって報告されたオリジナルの天然痘ワクチンを形成した牛痘ウイルス、および第二世代天然痘ワクチンとして使用されてきたワクシニアウイルスを含む。アビポックスウイルス科ウイルスは、鶏痘およびカナリア痘ウイルスなどの鳥に感染する種を含む。天然痘ワクチンにおける抗原としてのそれらの使用に加えて、関心対象の非相同遺伝子を送達および/または発現するためのベクターとしての組換えワクシニアベースのウイルスおよびアビポックスウイルスの使用に、大きな関心が寄せられている。細胞質内ベクターとして、オルトポックスウイルス科は、外来抗原を、宿主細胞質と細胞表面での提示のために抗原をペプチドへと処理する抗原プロセシング経路とに送達することができる。外来抗原を発現するそのようなベクターは、広範な状態および疾患のための遺伝子治療およびワクチン開発における使用にとって好適である。
【0161】
ポックスウイルスは、大きくて直鎖状のdsDNAゲノム、増殖の細胞質部位、および複雑なビリオンモルホロジーによって特徴づけられるウイルスの大きなファミリーを構成する。ワクシニアウイルスは、ウイルスのこのグループの代表的ウイルスであり、ウイルス形態形成に関して最も研究されたウイルスの1つである。様々なワクシニアウイルスが、「側体」が隣接する、壁で囲まれた両凹のコアを特徴とする複雑な内部構造を有する「レンガ形状」または「卵形」の膜結合粒子のように見える。ビリオンアセンブリ経路は、未熟なビリオン(IV)へと成長し、成熟ビリオン(MV)へと発達する膜含有半月体の組み立てを伴う。70超の特異的遺伝子産物が、ワクシニアウイルスビリオン内に含まれており、ワクシニアウイルスアセンブリに対する50超の特異的遺伝子における突然変異の効果が、現在、報告されている。
【0162】
好適な弱毒化ポックスウイルスは、当業者に既知であろう。例証的な例としては、弱毒化された改変ワクシニアアンカラ(MVA)、NYVAC、アビポックス、カナリア痘、および鶏痘が挙げられる。
【0163】
本明細書において開示される実施形態において、弱毒化ポックスウイルスは、弱毒化されたワクシニアウイルスである。ワクシニアウイルス株の例証的な例としては、MVA、NYVAC、コペンハーゲン(COP:Copenhagen)、ウエスタンリザーブ(WR:Western Reserve)、NYCBH、ワイス(Wyeth)株、ACAM2000、LC16m8、およびコンノート研究所(CL:Connaught Laboratories)が挙げられる。
【0164】
本明細書において使用される場合、用語「セメンシスコペンハーゲンベクター(Sementis Copenhagen Vector)」または「SCV」は、改変CHO細胞での製造を可能にするワクシニアウイルスをベースとした増殖欠損性(multiplication-defective)なワクチンベクター技術プラットフォームを意味する。
【0165】
他のオルトポックスウイルス株が、弱毒化ポックスウイルスを産生するように改変され得ることは当業者によって理解されるであろう。例証的な例において、弱毒化ポックスウイルスは、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードするポックスウイルスゲノム由来の遺伝子を改変すること(例えば、欠失させる、置換する、そうでなければその機能を妨げること)によって作製することができる。したがって、本明細書で開示される一実施形態において、弱毒化ポックスウイルスは、改変オルトポックスウイルスであり、この場合、改変は、内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする遺伝子の欠失を含む。
【0166】
ある実施形態において、弱毒化ポックスウイルスは、改変ワクシニアウイルスであり、前記改変は、内因性のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードするワクシニアウイルスゲノムの遺伝子の欠失(または別の方法でのその機能の途絶)を含み、前記改変は、宿主細胞(例えば、ヒト細胞)において増殖する(または増殖し得る)ワクシニアベクターを、宿主細胞において実質的に非複製性である弱毒化されたワクシニアベクターへと形質転換させる。
【0167】
ある実施形態において、必須の内因性アセンブリまたは成熟遺伝子は、COP-A2.5L、COP-A3L、COP-A4L、COP-A7L、COP-A8R、COP-A9L、COP-A10L、COP-A11R、COP-A12L、COP-A13L、COP-A14L、COP-A14.5L、COP-A15L、COP-A16L、COP-A17L、COP-A21L、COP-A22R、COP-A26L、COP-A27L、COP-A28L、COP-A30L、COP-A32L、COP-D2L、COP-D3R、COP-D6R、COP-D8L、COP-D13L、COP-D14L、COP-E8R、COP-E10R、COP-E11L、COP-F10L、COP-F17R、COP-G1L、COP-G3L、COP-G4L、COP-G5R、COP-G7L、COP-H1L、COP-H2R、COP-H3L、COP-H4L、COP-H5R、COP-H6R、COP-I1L、COP-I2L、COP-I6L、COP-I7L、COP-I8R、COP-J1R、COP-J4R、COP-J6R、COP-L1R、COP-L3L、COP-L4R、およびCOP-L5Rを含む群から選択される。
【0168】
他のオルトポックスウイルス株が、ポックスウイルスの免疫原生を変更するように改変され得ることは当業者によって理解されるであろう。例証的な例において、免疫原性の亢進を伴うポックスウイルスは、免疫調節タンパク質をコードするポックスウイルスゲノムからある遺伝子を欠失させることによって作製することができる。したがって、本明細書において開示される実施形態において、弱毒化ポックスウイルスは、改変オルトポックスウイルスであり、ここで前記改変は、免疫調節タンパク質(1または複数)をコードする1つまたは複数の遺伝子の欠失を含む。
【0169】
ある実施形態において、免疫調節遺伝子(1または複数)は、COP-C23L、COP-B29R、COP-C3L、COP-N1L、COP-A35R、COP-A39R、COP-A41L、COP-A44R、COP-A46R、COP-B7R、COP-B8R、COP-B13R、COP-B16R、およびCOP-B19Rを含む群から選択されるものを含む。
【0170】
他のオルトポックスウイルス株は、コード配列を途絶または変更することなく、特に遺伝子間領域の、ワクシニアゲノムに安定して挿入できる非相同DNA配列を組み込むように改変され得、それにより、当該ウイルスの典型的な特性および遺伝子発現を維持することは当業者によって理解されるであろう。
【0171】
ある実施形態において、弱毒化ポックスウイルスは、改変ワクシニアウイルスであり、ここで前記改変は、ウイルスゲノムの遺伝子間領域に挿入された外因性DNA配列、例えば、コロナウイルス株に由来するDNA配列を含み、その遺伝子間領域はそれはそれで、ワクシニアゲノムの2つの隣接するオープンリーディングフレーム(ORF)の間に位置するかまたはそれらに隣接しており、オープンリーディングフレームは、保存遺伝子に対応する。
【0172】
ある実施形態において、非相同DNA配列を挿入することができる2つの隣接するORFの間の遺伝子間領域(1または複数)は、001L-002L、002L-003L、005R-006R、006L-007R、007R-008L、008L-009L、017L-018L、018L-019L、019L-020L、020L-021L、023L-024L、024L-025L、025L-026L、028R-029L、030L-031L、031L-032L、032L-033L、035L-036L、036L-037L、037L-038L、039L-040L、043L-044L、044L-045L、046L-047R、049L-050L、050L-051L、051L-052R、052R-053R、053R-054R、054R-055R、055R-056L、061L-062L、064L-065L、065L-066L、066L-067L、077L-078R、078R-079R、080R-081R、081R-082L、082L-083R、085R-086R、086R-087R、088R-089L、089L-090R、092R-093L、094L-095R、096R-097R、097R-098R、101R-102R、103R-104R、105L-106R、107R-108L、108L-109L、109L-110L、110L-111L、113L-114L、114L-115L、115L-116R、117L-118L、118L-119R、122R-123L、123L-124L、124L-125L、125L-126L、133R-134R、134R-135R、136L-137L、137L-138L、141L-142R、143L-144R、144R-145R、145R-146R、146R-147R、147R-148R、148R-149L、152R-153L、153L-154R、154R-155R、156R-157L、157L-158R、159R-160L、160L-161R、162R-163R、163R-164R、164R-165R、165R-166R、166R-167R、167R-168R、170R-171R、173R-174R、175R-176R、176R-177R、178R-179R、179R-180R、180R-181R、183R-184R、184R-185L、185L-186R、186R-187R、187R-188R、188R-189R、189R-190R、192R-193Rを含む群から選択されるものを含む(PCT/EP03/05045号も参照されたい)。
【0173】
古い用語体系によれば、ORF 006Lは、C10Lに対応し、019LはC6Lに対応し、020LはN1Lに、021LはN2Lに、023LはK2Lに、028RはK7Rに、029LはF1Lに、037LはF8Lに、045LはF15Lに、050LはE3Lに、052RはE5Rに、054RはE7Rに、055RはE8Rに、056LはE9Lに、062LはI1Lに、064LはI4Lに、065LはI5Lに、081RはL2Rに、082LはL3Lに、086RはJ2Rに、087はJ3Rに、088RはJ4Rに、089LはJ5Lに、092RはH2Rに、095RはH5Rに、107RはD10Rに、108LはD11Lに、122RはA11Rに、123LはA12Lに、125LはA14Lに、126LはA15Lに、135RはA24Rに、136LはA25Lに、137LはA26Lに、141LはA30Lに、148RはA37Rに、149LはA38Lに、152RはA40Rに、153LはA41Lに、154RはA42Rに、157LはA44Lに、159RはA46Rに、160LはA47Lに、165RはA56Rに、166RはA57Rに、167RはB1Rに、170RはB3Rに、176RはB8Rに、18ORはB12Rに、184RはB16Rに、185LはB17Lに、および187RはB19Rに対応する。
【0174】
ある実施形態において、非相同DNA配列を挿入することができる2つの隣接するORFの間の遺伝子間領域(1または複数)は、F9L-F10L、F12L-F13L、F17R-E1L、E1L-E2L、E8R-E9L、E9L-E10R、I1L-I2L、I2L-I3L、I5L-I6L、I6L-I7L、I7L-I8R、I8R-G1L、G1L-G3L、G3L-G2R、G2R-G4L、G4L-G5R、G5R-G5.5R、G5.5R-G6R、G6R-G7L、G7L-G8R、G8R-G9R、G9R-L1R、L1R-L2R、L2R-L3L、L3L-L4R、L4R-L5R、L5R-J1R、J3R-J4R、J4R-J5L、J5L-J6R、J6R-H1L、H1L-H2R、H2R-H3L、H3L-H4L、H4L-H5R、H5R-H6R、H6R-H7R、H7R-D1R、D1R-D2L、D2L-D3R、D3R-D4R、D4R-D5R、D5R-D6R、D6R-D7R、D9R-D10R、D10R-D11L、D11L-D12L、D12L-D13L、D13L-A1L、A1L-A2L、A2L-A2.5L、A2.5L-A3L、A3L-A4L、A4L-A5R、A5R-A6L、A6L-A7L、A7L-A8R、A8R-A9L、A9L-A10L、A10L-A11R、A11R-A12L、A12L-A13L、A13L-A14L、A14L-A14.5L、A14.5L-A15L、A15L-A16L、A16L-A17L、A17L-A18R、A18R-A19L、A19L-A21L、A21L-A20R、A20R-A22R、A22R-A23R、A23R-A24R、A28L-A29L、A29L-A30Lを含む群から選択されるものを含む(PCT/IB2007/004575号も参照されたい)。
【0175】
ある実施形態において、改変は、A41L遺伝子の欠失を含む。
【0176】
ある実施形態において、改変は、A41L遺伝子および/またはD13L遺伝子の欠失を含む。
【0177】
ある実施形態において、改変は、A41L遺伝子および/またはD13L遺伝子および/またはB7R-B8R遺伝子の欠失を含む。
【0178】
ある実施形態において、改変は、A41L遺伝子および/またはD13L遺伝子および/またはB7R-B8R遺伝子、および/またはC3L遺伝子、および/またはA39R遺伝子の欠失を含む。
【0179】
A41L遺伝子および/またはD13L遺伝子および/またはB7R-B8R遺伝子、および/またはC3L遺伝子、および/またはA39R遺伝子の欠失は、ポックスウイルスに、有利な特性、例えば、弱毒化および免疫原性の増加など、を付与することは当業者によって理解されるであろう。
【0180】
ある実施形態において、改変は、J2R遺伝子とJ3R遺伝子との間に位置する、遺伝子間領域への非相同DNA配列の挿入を含む。
【0181】
当該遺伝子間領域への非相同DNA配列の挿入は、当該ウイルスのコード配列を途絶または変更しないことは当業者によって理解されるであろう。
【0182】
ある実施形態において、組換えSCVベクターは、VLPへとアセンブルされる1つまたは複数の構造タンパク質および非構造タンパク質を発現する。
【0183】
ある実施形態において、SARS-CoV-2抗原は、発現された場合、ウイルス様粒子(VLP)へとアセンブルされる。
【0184】
ある実施形態において、当該ベクターは、VLPを形成し、SARS-CoV-2抗原またはその免疫原性断片に対する免疫反応を生じさせる、タンパク質を発現する。
【0185】
例示的実施形態において、免疫反応は、長期持続性であり、反復ブースターを必要としないように持続性であるが、1つまたは複数の実施形態において、本明細書において提供される組成物の1回または複数回の投与が、初期プライムされた免疫反応をブーストするために提供される。
【0186】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0187】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0188】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0189】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0190】
本明細書において使用される場合、スパイクタンパク質の使用は、融合前(prefusion)コンフォメーションのスパイクタンパク質を安定化し、構造の再配置(rearrangement)を防ぎ、および優れた免疫反応を誘発するために抗原的に好ましい表面を暴露させることを目的として操作されたバリアントを含む。これらの改変は、これらに限定されるわけではないが、安定化突然変異の導入および分子クランプの使用を含む。
【0191】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0192】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットをコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0193】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0194】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0195】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニット、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0196】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニット、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0197】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における防御免疫反応を誘導するための方法であって、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2の膜ポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記方法を提供する。
【0198】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2感染のリスクを防ぐかもしくは減少させ、および/または、COVID-19疾患の重症度を減少させる、動物における防御免疫反応を誘導する方法であって、組成物が、弱毒化されたポックスウイルス、とりわけワクシニアウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、改変されており、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のヌクレオカプシドポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む、上記方法を提供する。
【0199】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、弱毒化ポックスウイルスを含む組成物であって、当該ポックスウイルスゲノムが改変されており、ならびに合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む前記組成物と、弱毒化ポックスウイルスを含む組成物であって、当該ポックスウイルスゲノムが改変されており、ならびにSARS-CoV-2の膜ポリペプチドおよびヌクレオカプシドポリペプチドまたはそれらの免疫原性もしくは機能性部分(1または複数)をコードする核酸配列を含む前記組成物とを等量で含む混合組成物を対象に投与することを含む、上記方法を提供する。
【0200】
ある実施形態において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、弱毒化ポックスウイルスを含む組成物であって、当該ポックスウイルスゲノムが改変されており、ならびに天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分をコードする核酸配列を含む前記組成物と、弱毒化ポックスウイルスを含む組成物であって、当該ポックスウイルスゲノムが改変されており、ならびにSARS-CoV-2の膜ポリペプチドおよびヌクレオカプシドポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分もしくは機能性部分(1または複数)をコードする核酸配列を含む前記組成物とを等量で含む混合組成物を対象に投与することを含む、上記方法を提供する。
【0201】
第一態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス感染に対して対象において防御免疫反応を誘導する方法であって、上記のうちのいずれかの組成物を当該対象に投与することを含む、上記方法を提供する。
【0202】
第二態様において、本発明は、SARS-CoV-2ウイルス様粒子に似せることによってSARS-CoV-2感染のリスクを減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物を提供する。
【0203】
第三態様において、本発明は、SARS-CoV-2感染およびSARS-CoV-2に対して遺伝的類似性を有するコロナウイルスによって引き起こされる任意の他の感染のリスクを減少させる、動物における免疫反応を高めるための組成物であって、弱毒化ポックスウイルスを含み、当該ポックスウイルスゲノムは、SARS-CoV-2のスパイクポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分ならびに/あるいはSARS-CoV-2の膜ポリペプチドおよびヌクレオカプシドポリペプチドまたはそれらの免疫原性部分もしくは機能性部分ならびに/あるいはSARS-CoV-2のエンベロープポリペプチドまたはその免疫原性部分もしくは機能性部分、をコードする核酸配列を含む、上記組成物を提供する。
【0204】
第四態様において、本発明は、コロナウイルス感染に対して対象において中和抗体反応および/または防御免疫反応を誘導するための医薬の製造における、本明細書において想到される実施形態の組成物の使用を提供する。
【0205】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターからSARS-CoV-2スパイクポリペプチドまたは当該スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットを発現させることによって達成され得る。歴史的に、SARS-CoVまたはMERS-CoVなどのコロナウイルスのスパイクタンパク質は、免疫原性であり、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを阻害する中和抗体を含む体液性免疫反応および細胞媒介性免疫反応を誘発することが分かっている。免疫原性は、スパイク特異的T細胞反応を誘導することによっても達成され得る。ポックスウイルスベクターによって誘導される抗体のTh1バイアス産生によって補われた、SARS-CoV-2ウイルスに対するSCV-COVIDワクチンによって誘導されるスパイク特異的細胞性および体液性反応は、SARS-CoV-2感染に対する予防的保護を提供し得る。
【0206】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターからSARS-CoV-2膜タンパク質ポリペプチドを発現させることによって実現され得る。SARS-CoVにおいて、膜タンパク質は、ウイルス表面上において豊富であることが分かっており;その上、SARSを有する患者において免疫付与のために使用される場合、膜タンパク質は、中和抗体の高力価を誘導した。免疫原性分析および構造分析は、ロバストな細胞免疫反応を引き起こすことができるT細胞エピトープクラスターが膜タンパク質に存在することを実証した。膜タンパク質も、多くのウイルス種において高度に保存されるため、それは、SARS-CoV-2に対する免疫反応を誘導するための良好な抗原候補である。ポックスウイルスベクターによって誘導される抗体のTh1バイアス産生によって補われた、SARS-CoV-2ウイルスに対するSCV-COVIDワクチンによって誘導される膜特異的細胞性および体液性反応は、SARS-CoV-2感染に対する予防的保護を提供し得る。
【0207】
免疫原性は、ポックスウイルスベクターからSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチドを発現させることによって達成され得る。最近、SARS-CoV-2感染が、ヌクレオカプシド抗原をほぼ対象とする抗体の生成につながることが発見された。しかしながら、Nタンパク質抗体はウイルスの侵入を防ぐことができず、それ自体は「非中和」抗体であると見なされているため、N抗体は見落とされていた。したがって、抗N抗体は、体液性免疫を評価するために現在使用されている中和アッセイによって測定することができない。最近の研究により、細胞内に入る抗N抗体は、抗体受容体TRIM21によって認識され、次いで、会合したNタンパク質を断片化することが示された。次いで、Nタンパク質エピトープは、T細胞による検出のために提示される。この免疫反応メカニズムには、最終的に免疫学的記憶を媒介するであろうT細胞が関与するため、ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体は、将来の感染に対する長期保護を刺激し得る。ポックスウイルスベクターによって誘導される抗体のTh1バイアス産生によって補われた、SARS-CoV-2ウイルスに対するSCV-COVIDワクチンによって誘導されるヌクレオカプシド特異的細胞性および体液性反応は、SARS-CoV-2感染に対する予防的保護を提供し得る。
【0208】
免疫原性は、ポックスウイルスベクター内の、SARS-CoV-2のスパイクタンパク質もしくはその一部、膜タンパク質ポリペプチド、ヌクレオカプシドタンパク質ポリペプチド、および/またはエンベロープタンパク質ポリペプチドを同時に発現させることによって達成され得る。構造タンパク質の組み合わされた免疫原性は、よりロバストな抗原特異的免疫反応を引き起こし得る。その上、S、M、ならびにNおよび/またはEポリペプチドの存在は、コロナウイルス構造を模倣するが感染性であるための遺伝物質を欠く空のウイルスシェルである真正のウイルス様粒子(VLP)の形成につながり得る。ポックスウイルスベクターによって誘導される抗体のTh1バイアス産生によって補われた、SARS-CoV-2ウイルスに対するSCV-COVIDワクチンによって誘導される抗原特異的およびVLP特異的細胞性および体液性反応は、COVID-19に対する予防的保護を提供し得る。ポックスウイルスベクターによって誘導される抗体のTh1バイアス産生によって補われた、SARS-CoV-2ウイルスに対するSCV-COVIDワクチンによって誘導されるVLP特異的細胞性および体液性反応は、COVID-19に対する予防的保護を提供し得る。
【0209】
本発明の好ましい形態において、弱毒化ポックスウイルスは、ワクシニアウイルス、NYVAC、およびSCVからなる群から選択される。弱毒化ポックスウイルスは、改変オルトポックスウイルスであり、当該改変が内因性の必須のアセンブリまたは成熟タンパク質をコードする遺伝子の欠失を含むことは、好ましい。当該改変が、D13L遺伝子の欠失を含み、好ましくは、さらに、K1L遺伝子の欠失を含むことは、さらに好ましい。
【0210】
本明細書において可能な様々な実施形態について、以下の非限定的な例によりさらに説明する。
【実施例
【0211】
例1
ワクチンの構築
SCV-COVID19ワクチンを構築するために、抗原コード配列内の初期転写終止シグナルをサイレント突然変異を使用して除去し、抗原性導入遺伝子のための発現カセットを、新たに合成するか、または合成したカセットからRCRによって構築した。各カセットは、上流のポックスウイルスプロモーターの必要制御要素およびコザック配列ならびに遺伝子発現を可能にする下流のポックスウイルス初期転写終止シグナルが隣接する導入遺伝子からなる。隣接するエンドヌクレアーゼ認識部位も、分子操作を可能にするために含まれ得る。発現カセットの具体的な例は、合成初期/後期プロモーターを有するSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図1A)、天然の初期/後期プロモーターを有するSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図1B)、合成初期/後期プロモーターを有するSARS-CoV-2スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニット(図1C)、鶏痘初期/後期プロモーターを有する膜ポリペプチド(図1D)、合成初期/後期プロモーターを有するヌクレオカプシドポリペプチド(図1E)、鶏痘初期/後期プロモーターを有する膜ポリペプチドおよび合成初期/後期プロモーターを有するヌクレオカプシドポリペプチド(図1F)、合成初期/後期プロモーターを有するエンベロープポリペプチド(図1G)に関して示される。
【0212】
次いで、導入遺伝子発現カセットを、標準的な分子生物学的方法を使用して、細菌において増殖できる適切な相同組換え(HR)プラスミドに挿入した。当該HRプラスミドは、導入遺伝子がその間に位置するポックスウイルスゲノム部位に対して相同である隣接する組換えアーム(F1およびF2)からなるHRカセットを含む。ワクシニア-COPゲノムに対する相同組換え部位は、図2に示される。導入遺伝子発現カセットは、新規の組換えウイルスのポジティブ選択(例えば、緑色または青色蛍光タンパク質(GFPまたはBFP)などの蛍光レポータータンパク質と組み合わせたCP77、ゼオシン(Zeocin)耐性または他の薬物選択)を可能にする遺伝子を含む追加のポックスウイルス発現カセットに隣接して、当該組換えアームの間に挿入される。選択遺伝子には、親ウイルスが排除された後の選択遺伝子欠失を可能にする150bpの同じ非コードDNA配列が隣接する。ウイルス構築のためのHRプラスミドを調製するために、制限エンドヌクレアーゼ消化(例えば、Not I)を使用して、HRカセットを放出させる。以下に対してHRカセットの具体的な例を示す:
・ワクシニアA41L ORFに隣接する配列に対して相同であったF1およびF2組換えアームが隣接する合成初期/後期プロモーター発現カセットの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図3A;配列番号1)、
・ワクシニアA41L ORFに隣接する配列に対して相同であったF1およびF2組換えアームが隣接する天然の初期/後期プロモーター発現カセットの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図3B;配列番号2)、
・ワクシニアA41L ORFに隣接する配列に対して相同であったF1およびF2組換えアームが隣接するSARS-CoV-2スパイクポリペプチド発現カセットのS1サブユニット(図3C;配列番号3)、
・ワクシニアD13L ORF(図3D、配列番号4)またはJ2RとJ3Rとの間の挿入を可能にするワクシニアJ2RおよびJ3R ORF(図2E、配列番号5)に隣接する配列に対して相同であった左側および右側組換えアームが隣接するSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシドタンパク質発現カセット、
・ワクシニアC3L ORFに隣接する配列に対して相同であった左側および右側組換えアームが隣接するSARS-CoV-2膜タンパク質発現カセット(図3F;配列番号6)、
・ワクシニアD13L ORFに隣接する配列に対して相同であった左側および右側組換えアームが隣接するSARS-CoV-2ヌクレオカプシドタンパク質発現カセット(図3G;配列番号7)、
・ワクシニアB7/B8R ORFに隣接する配列に対して相同であった左側および右側組換えアームが隣接するSARS-CoV-2エンベロープタンパク質発現カセット(図3H;配列番号8)。
【0213】
簡潔に説明すると、組換えSCV-COVID19ワクチン(図4)を構築するために、BC19A-12細胞またはSD07-1細胞(CP77宿主域選択が必要)のどちらかにおいて相同組換えを実施する。D13L、A39R、B7/B8R、およびC3L ORFの欠失を有するコペンハーゲン株から得られる複製能力がないワクシニアウイルスであるSCV-SMX06によって、1時間かけて、0.01pfu/細胞の感染多重度(moi)において細胞を感染させた。次いで、感染した細胞を、EFFECTENE(登録商標)(Qiagen)などのトランスフェクション試薬を使用して、Not I消化された相同組換えプラスミドによってトランスフェクトした。当該感染した/トランスフェクトした細胞を、蛍光細胞が見られるまで、2~3日間インキュベートする。当該組換えウイルスを、反復されるポジティブ薬物選択および蛍光ベースの単一細胞選別を使用して、親ウイルスから精製した。親ウイルス除去を達成した後(PCRによって確認した)、任意の追加の発現カセットを、相同組換えと精製の反復において挿入した。親ウイルスの非存在下において、BC19A-12細胞の感染の間における150bpのリピート配列の間での分子内組換えによる選択遺伝子の欠失を可能にするために、選択圧を除去した。選択マーカーを有さないウイルスを富化させ、ならびに蛍光ベースの単一細胞選別および/または限界希釈によって精製した。ウイルス集団が選択マーカーを含まなくなった後、候補のクローンをBC19A-12細胞において増幅することにより、ウイルスシードストックを作製し、それらを、導入遺伝子の位置および完全性についてはPCRおよびDNA配列決定によって、ならびに導入遺伝子の発現についてはウエスタンブロットまたは他の免疫染色手法によって確認した。
【0214】
構築戦略のまとめ
SCVは、必須のウイルスアセンブリタンパク質をコードする遺伝子であるD13Lを削除することによって当該SCVウイルスを実質的に感染性ウイルス子孫を生じることができなくするように遺伝的に操作されたワクシニアウイルスのコペンハーゲン株に由来する。
【0215】
SCV-SMX06は、詳細には免疫調節遺伝子A39R、B7/B8R、およびC3Lの、追加の遺伝子欠失を有するSCVの変型である。遺伝子を、図2に示されるような相同組換えを使用して順次欠失させ、当該図において、F1組換えアームとF2組換えアームとの間のD13L、A39R、B7/B8R、およびC3L領域が欠失している。SCV-SMX06は、SCV-COVIDワクチンのバリエーションを構築するために使用したベースSCVウイルスである。必要な場合、欠失部位への導入遺伝子の挿入は、同じF1組換えアームおよびF2組換えアームを使用することによって促進した(図3)。
【0216】
さらに、SARS-CoV-2スパイクまたはその免疫原性部分が導入遺伝子として挿入されたバリエーションでは、A41L ORFは、当該導入遺伝子が挿入されるときに欠失させられる。SARS-CoV-2スパイクまたはその免疫原性部分を欠くバリエーションでは、A41L遺伝子は、改変されないままである。
【0217】
単一ベクター化ワクチンを提供するために、SCV-COVID19ウイルスが構築される。当該単一のベクター化ワクチンは、混合ワクチンとして組み合わせてもよい。
【0218】
組換えウイルスSCV-COVID19Aは、SCV-SMX06のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号1において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって、および、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとを含む発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって、構築される。
【0219】
組換えウイルスSCV-COVID19Bは、SCV-SMX06のA41L ORFを、天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号2において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとを含む発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0220】
組換えウイルスSCV-COVID19Cは、SCV-SMX06のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号1において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって構築される。
【0221】
組換えウイルスSCV-COVID19Dは、SCV-SMX06のA41L ORFを、天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号2において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって構築される。
【0222】
組換えウイルスSCV-COVID19Eは、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号5において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のJ2R遺伝子とJ3R遺伝子との間に挿入することによって構築される。
【0223】
組換えウイルスSCV-COVID19Fは、SCV-SMX06のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットをコードする発現カセット(例えば、配列番号3において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって構築される。
【0224】
組換えウイルスSCV-COVID19Gは、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0225】
組換えウイルスSCV-COVID19Hは、SCV-SMX06ワクシニアウイルス株のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号1において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換し、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2エンベロープポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号8において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のB7/B8R ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0226】
組換えウイルスSCV-COVID19Iは、SCV-SMX06ワクシニアウイルス株のA41L ORFを、天然初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号2において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2エンベロープポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号8において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のB7/B8R ORF欠失部位に挿入することによって、構築される。
【0227】
組換えウイルスSCV-COVID19Jは、SCV-SMX06ワクシニアウイルス株のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットをコードする発現カセット(例えば、配列番号3において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0228】
組換えウイルスSCV-COVID19Kは、SCV-SMX06ワクシニアウイルス株のA41L ORFを、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチドのS1受容体結合ドメインサブユニットをコードする発現カセット(例えば、配列番号3において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)で置換することによって、および鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドと合成初期/後期プロモーターの転写制御下のヌクレオカプシドポリヌクレオチドとをコードする発現カセット(例えば、配列番号4において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって、および合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2エンベロープポリヌクレオチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号8において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のB7/B8R ORF欠失部位に挿入することによって、構築される。
【0229】
組換えウイルスSCV-COVID19Lは、鶏痘初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2膜ポリペプチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号6において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のC3L ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0230】
組換えウイルスSCV-COVID19Mは、合成初期/後期プロモーターの転写制御下のSARS-CoV-2ヌクレオカプシドポリペプチドをコードする発現カセット(例えば、配列番号7において定義されるヌクレオチド配列を有する発現カセット)を、SCV-SMX06のD13L ORF欠失部位に挿入することによって構築される。
【0231】
SCV-COVID19ウイルスワクチン内のSARS-CoV-2抗原挿入領域は、図5に示される。詳細には、A41L ORFにおける合成初期/後期プロモーター下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図5A)、A41L ORFにおける天然初期/後期プロモーター下のSARS-CoV-2スパイクポリペプチド(図5B)、A41L ORFにおけるスパイクポリペプチドのSARS-CoV-2 S1サブユニット(図5C)、D13L ORFにおけるSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシドポリペプチド(図5D)、J2RとJ3Rとの間の遺伝子間部位におけるSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシドポリペプチド(図5E)、B7/B8R ORFにおけるSARS-CoV-2エンベロープポリペプチド(図5F)、C3L ORFにおけるSARS-CoV-2膜ポリペプチド(図5G)、およびD13L ORFにおけるSARS-CoV-2ヌクレオカプシドポリペプチド(図5H)。
【0232】
表1に、SCV-SMX06ゲノム内のSCV-COVID19挿入および欠失部位をまとめる。スパイクまたはS1導入遺伝子を含むSCV-COVID19種の場合、A41L遺伝子は欠失されている。J2↓J3Rは、隣接するJ2R遺伝子およびJ3R遺伝子に対する改変なしに抗原が挿入される遺伝子間挿入部位を示す。未改変部位は、「+」によって示され、その一方で、「-」は、遺伝子のORFが欠失されていることを示す。
【0233】
【表1】
【0234】
さらに、2つの単一ベクター化ワクチンを等しい割合で混合することによって混合ワクチン、具体的にはSCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gの混合ワクチンが調製され、単一の注射器によって送達される。
【0235】
さらに、2つの単一ベクター化ワクチンを等しい割合で混合することによって混合ワクチン、具体的にはSCV-COVID19DおよびSCV-COVID19Gの混合ワクチンが調製され、単一の注射器によって送達される。
【0236】
さらに、2つの単一ベクター化ワクチンを等しい割合で混合することによって混合ワクチン、具体的にはSCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Eの混合ワクチンが調製され、単一の注射器によって送達される。
【0237】
さらに、2つの単一ベクター化ワクチンを等しい割合で混合することによって混合ワクチン、具体的にはSCV-COVID19DおよびSCV-COVID19Eの混合ワクチンが調製され、単一の注射器によって送達される。
【0238】
例2
SCV-COVID19Dによる単一のワクチン接種は非近交系および近交系マウスにおいて中和SARS-CoV-2抗体およびTh1バイアス抗体プロファイルを生じる
実験戦略
6~9週齢の雄のC57BL/6マウスまたはARCスイスマウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、SCV-COVID19D(10、10PFU)またはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種前および接種後21日目に血液試料を得た。S1特異的IgGレベルおよびSARS-CoV-2ウイルス特異的中和抗体レベルを、エンドポイントELISAおよび中和アッセイによって決定した。
【0239】
遺伝的ヘテロ接合性を説明するために、マウスの2つのコホートを使用した。第1のコホートは、表現型または特性の変動性を最小にするために近交系マウス株C57BL/6を使用し、結果として、再現性が向上し、その一方で、第2の群は、遺伝的多様性を、したがって集団にわたる反応のさらなる一般化可能性を表すために非近交系スイスマウス株を用いた。
【0240】
ウイルス中和試験
血清を56℃で30分かけて熱不活性化し、処理を行う日まで-80℃で貯蔵した。処理の日の単層コンフルエンスを確保するために、Vero細胞を含む96ウェルプレートも培養した。中和アッセイの当日、血清の2倍段階希釈を、最小必須培地(MEM)培養培地において調製し、Veroプレートを、MEMおよび抗生物質およびトリプシンで構成される感染培地で洗浄した。SARS-CoV-2 50μlあたり100TCID50を、予め調製した血清希釈の各希釈に加え、時々揺動させながら、室温で1時間インキュベートした。次いで、ウイルス:血清混合物をVero細胞に加え、37℃および5%COにおいてインキュベートし、次いで、光学顕微鏡によりモニターし、処置後4日目に細胞変性効果をスコア化した。ウイルス中和力価を、依然としてウイルス複製を阻害する血清の最も高い希釈の逆数値として表した。
【0241】
マウス血清に対する酵素結合免疫吸着測定法
MaxiSorpプレート(Nunc)を、4℃において一晩かけて吸着させるために、PBS中におけるS1(120 ng/ウェル)によってコーティングした。プレートをPBS/Tween(0.05%v/v)において洗浄し、ウェルを、室温で1時間かけて、PBS/Tween中における3%スキムミルクを使用してブロックした。段階希釈したマウス血清試料を加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを、全てのウェルに室温において加え1時間おき、洗浄後、TMB液体基質(Sigma)を加え、反応を3MのHClを使用して停止させた。各ウェルの光学密度(OD)値を450nmにおいて測定した。エンドポイント力価を以下のように算出した:log10試料希釈に対するlog10ODをプロットし、この曲線の直線部分を回帰分析することで、エンドポイント力価の算出を可能にした。OD読み取り値がネガティブ血清試料の平均吸光度値+標準偏差の3倍に達したときのエンドポイント力価を算出した。IgGサブクラスELISAの結果を、OD値を使用して表した。
【0242】
結果
ウイルス特異的中和抗体が、SCV-COVID19Dでワクチン接種した全てのマウスにおいて検出された(図6A)。10PFU用量のワクチン接種において、非近交系スイスマウスおよび近交系C57Bl/6マウスによって生成された中和抗体の力価は、SCV-SMX06よりも高く、中和抗体のレベルは、同じ用量での非近交系マウスと近交系マウスとの間において同等であった。スイスマウスに対する10PFU用量のワクチン接種では、中和抗体力価の増加が見られた。非近交系スイス株およびC57BL/6マウスの両方において、スパイクタンパク質のS1サブユニットに対して、総IgG力価も検出した(図6B)。ELISAによるIgGサブクラスのプロファイリングは、IgG1と比較して、より高いS1特異的IgG2cのレベルを示し、それは、ワクチン接種後にTh1反応が支配的であることを示している(図6C)。
【0243】
例3
SCV-COVID19Dによる単一のワクチン接種はスパイク特異的CD8 T細胞反応を生じさせる
T細胞は、呼吸器系の多くのウイルス感染の初期の抑制および排除を引き起こすために重要である。遺伝子導入マウスモデルにおける最近の研究は、SARS-CoV-2感染後のウイルス排除および疾患の解消において、T細胞が利用されていることの証拠を提供した。本明細書において、本発明者らは、SCV-COVID19Dによる免疫付与が、疾患重症度の抑制において潜在的に有益であろう初期T細胞反応を誘発するか否かを明確にする。
【0244】
実験戦略
6~9週齢の雄のC57BL/6マウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、10PFUの用量でのSCV-COVID19DまたはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種の3か月後に、スパイク特異的T細胞反応(スパイクタンパク質の全長に及ぶペプチドを使用する)を、ELISpotおよび細胞内サイトカイン染色(ICS)によって検出した。
【0245】
ELISpotアッセイ
細胞を、完全培地での再懸濁の前に、70μM細胞ストレーナーおよびACK溶解を経させることによって、マウス脾細胞の単一細胞懸濁液の希釈物を調製した。ELISpotによるインターフェロン-ガンマ(IFNγ)産生の分析のために、PVDF ELISpotプレート(MabTech)を、抗マウスIFNγコーティング抗体を用いて一晩インキュベートし、次いで、細胞培養培地によってブロックした。細胞希釈物を、全スパイクタンパク質に及ぶペプチドのプールと(ペプチドあたり2μg/ml)、ELISpotプレートにおいて、5%COの37℃に加湿されたインキュベーターにおいて、18~20時間インキュベートした。刺激の後、IFNγスポット形成単位(SFU)を、抗マウスIFGNγビチオン検出抗体で膜を染色することによって検出し、その後、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼで処理し、BCIP/NBT基質キット(MabTech)によって顕色させた。サイトカイン分泌T細胞を表すスポットを、ELISpotリーダーを使用して定量化した。
【0246】
細胞内サイトカイン染色分析
ELISpotの結果を補足および検証するために、IFNγの細胞内サイトカイン産生を実施した。タンパク質輸送阻害剤であるブレフェルジンAと共に、全スパイクタンパク質に及ぶペプチドのプールを用いて(ペプチドあたり2μg/ml)、細胞を37℃で6時間刺激した。表面マーカーCD3およびCD8に対して細胞を染色し、次いで、4%パラホルムアルデヒドで固定した。BD cytofix/perm緩衝液を使用して、細胞を透過処理し、IFNγに対する細胞内染色を実施した。FACS Aria 2(BD)において試料収集を実施し、FlowJo V10(TreeStar)においてデータを分析した。二重ネガティブ生リンパ球、サイズ、CD3、CD8細胞、およびIFNγサイトカインポジティブに対するゲーティングによって、サイトカイン分泌T細胞を同定した。
【0247】
結果
ベクターコントロールと比較した、T細胞反応を生じるスパイク特異的IFNγにおける著しい増加を、ICS(図7A)およびELISpot(図7B)の両方によって、SCV-COVID19Dワクチン接種したマウスにおいて検出した。ベクターコントロール群は、低い(<100SFU)または最小の検出可能な反応を有した(図15B)。
【0248】
結論
本明細書における例2および3は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質をコードするSCV-COVID19ワクチンによる動物モデルの免疫付与が、S1特異的抗体、中和抗体の産生、およびスパイク特異的IFNγ分泌CD8T細胞の増加によって示されるような細胞性および体液性反応を誘導することを示している。これらは、SCV-COVID19ワクチンは、COVID-19に関する感染性病原因子であるSARS-CoV-2に対する予防的保護を提供し得る。
【0249】
例4
SCV-COVID19Cは、SCV-COVID19DおよびSCV-COVID19Fよりも良好なスパイク特異的抗体を生じさせる
SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Dワクチンは、抗原の発現のために使用されるポックスウイルスプロモーターのタイプが異なっている。SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Fワクチンは、挿入された導入遺伝子の長さが異なっており、SCV-COVID19Cは、スパイクタンパク質の全長を含むが、その一方で、SCV-COVID19Fは、スパイクタンパク質のS1サブユニットのみを含む。本明細書において、本発明者らは、ウエスタンブロットによって3つのワクチンの抗原発現の効率を比較し、ELISAを使用して、スパイクS1特異的抗体反応を誘導するそれらの能力を評価した。
【0250】
実験戦略
SCV-COVID19C、SCV-COVID19D、およびSCV-COVID19Fを細胞系に感染させ、スパイクタンパク質またはS1サブユニットの発現を、ウエスタンブロットによって調べた。6~9週齢の雄のC57BL/6マウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、マウス1匹あたり10PFUの用量において、SCV-COVID19C、SCV-COVID19D、SCV-COVID19FまたはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種し、スパイクS1特異的抗体反応を、ELISAによって評価した。
【0251】
ウエスタンブロット
SCV-COVID19C、SCV-COVID19D、およびSCV-COVID19F濃縮物を、ローディングバッファーにおいて溶解させ、各試料に対して総タンパク質の8μgの同等物を、10%SDS-ポリアクリルアミドゲルにおいて分離し、ニトロセルロースフィルター膜上に転写した。当該膜をブロックし、1:1000に希釈したSARS-CoV-2スパイクRBD(Sino Biological 40592-T62)に対するウサギmAbとインキュベートした。結合した抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG、それに続く膜(Sigma)に対してClarity ECLおよびTMBを使用する増強化学発光を使用して検出した。
【0252】
S1-特異抗体エンドポイント力価に関する酵素結合免疫吸着測定法
MaxiSorpプレート(Nunc)を、4℃において一晩かけて吸着させるために、PBS中におけるS1(120 ng/ウェル)によってコーティングした。プレートをPBS/Tween(0.05%v/v)において洗浄し、ウェルを、室温で1時間かけて、PBS/Tween中における3%スキムミルクを使用してブロックした。段階希釈したマウス血清試料を加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを、全てのウェルに室温において加え1時間おいた。洗浄後、TMB液体基質(Sigma)を加え、反応を3MのHClを使用して停止させた。各ウェルの光学密度(OD)値を450nmにおいて測定した。エンドポイント力価を以下のように算出した:log10試料希釈に対するlog10ODをプロットし、この曲線の直線部分を回帰分析することで、エンドポイント力価の算出を可能にした。OD読み取り値がネガティブ血清試料の平均吸光度値+標準偏差の3倍に達したときのエンドポイント力価を算出した。
【0253】
結果
図8Aは、ウエスタンブロットによって、細胞溶解物におけるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の発現を示している。SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Dの両方に対する溶解物は、全長スパイクタンパク質の発現を反映する、180kDaにおけるバンドを示しており、その一方で、SCV-COVID19Fに対する溶解物は、スパイクタンパク質のS1サブユニットの発現を反映する、80kDaにおけるバンドを示した。しかしながら、SCV-COVID19Cは、SCV-COVID19Dと比較してより強いシグナルを示し、これは、合成初期/後期プロモーター下でのスパイクタンパク質のより効率的な発現を示唆している。免疫付与後21日目における、ELISAによるS1特異的抗体反応の比較は、SCV-COVID19Cによって誘導された、SCV-COVID19DまたはSCV-COVID19Fより高い抗体力価を裏付けた(図8B)。
【0254】
結論
例4は、合成初期/後期プロモーターの制御下のスパイクタンパク質を有するSCV-COVID19Cワクチンは、SCV-COVID19Dワクチンと比較してより高いレベルのスパイクタンパク質を発現することを実証している。抗体力価は、SCV-COVID19DまたはSCV-COVID19Fと比較して、SCV-COVID19Cに対するより大きい免疫原性を実証している。下記の例は、SCV-COVID19Cワクチンの有効性をさらに調査している。
【0255】
例5
SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種は近交系および非近交系マウスにおいて抗体反応を誘導する
実験戦略
6~9週齢の雌の近交系C57BL/6マウスおよびARC(s)マウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、マウス1匹あたり10PFUの用量でのSCV-COVID19CまたはベクターのみのコントロールSMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種前および接種後14日目に血液試料を得た。(S1)タンパク質特異的IgGレベルおよびSARS-CoV-2ウイルス特異的中和抗体レベルを、エンドポイントELISAおよび疑似中和アッセイ(peudo-neutralization assay) (cPass(商標);Genscript)によって決定した。
【0256】
遺伝的ヘテロ接合性におけるバリエーションを説明するために、マウスの2つのコホートを使用した。第1のコホートは、表現型または特性の変動性を最小にするために近交系マウス株C57BL/6を使用し、結果として、再現性が向上し、その一方で、第2のコホートは、遺伝的多様性を、したがって集団にわたる反応のさらなる一般化可能性を表すために非近交系スイスマウス株を用いた。
【0257】
S1-特異抗体エンドポイント力価に関する酵素結合免疫吸着測定法
MaxiSorpプレート(Nunc)を、4℃において一晩かけて吸着させるために、PBS中におけるS1(120 ng/ウェル)によってコーティングした。プレートをPBS/Tween(0.05%v/v)において洗浄し、ウェルを、室温で1時間かけて、PBS/Tween中における3%スキムミルクを使用してブロックした。段階希釈したマウス血清試料を加え、室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを、全てのウェルに室温において加え1時間おいた。洗浄後、TMB液体基質(Sigma)を加え、反応を3MのHClを使用して停止させた。各ウェルの光学密度(OD)値を450nmにおいて測定した。エンドポイント力価を以下のように算出した:log10試料希釈に対するlog10ODをプロットし、この曲線の直線部分を回帰分析することで、エンドポイント力価の算出を可能にした。OD読み取り値がネガティブ血清試料の平均吸光度値+標準偏差の3倍に達したときのエンドポイント力価を算出した。
【0258】
cPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出
cPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出キット(GenScript、米国)は、血清および血漿におけるSARS-CoV-2に対する総中和抗体の定量的直接検出を意図するブロッキングELISAである。SARS-CoV-2による感染は、血液中における抗体または結合抗体の産生を含む免疫反応を開始させる。精製された受容体結合ドメイン(RBD)、ウイルススパイク(S)タンパク質由来のタンパク質、および宿主細胞受容体ACE2を使用することにより、当該試験は、試験管またはELISAプレートのウェルでの直接タンパク質-タンパク質相互作用によって、ウイルス-宿主相互作用を模倣する。次いで、従来のウイルス中和試験と同じ方式において、非常に特異的な相互作用を中和することができる。簡潔に説明すると、試料およびコントロールを試料希釈緩衝液で希釈し、HRD標識RBDとプレインキュベートすることにより、HRP-RBDへの循環中和抗体の結合を可能にさせる。次いで、当該混合物を、ACE2タンパク質でプレコーティングされた捕捉プレートに加えた。未結合HRP-RBDならびに非中和抗体に結合したHRP-RBDは、当該プレート上において捕捉され、その一方で、循環中和抗体HRP-RBD複合体は、上清中に残り、洗浄の間に除去される。洗浄サイクルの後で、TMB基質溶液が加えられ、続いて停止液が加えられ、次いで、当該反応がクエンチされ、色は黄色に変わる。最終溶液の吸光度が、マイクロプレートリーダーにおいて450nmで読み取られ、パーセントシグナル阻害が、以下の式を使用して決定される:
パーセントシグナル阻害=(1-試料のOD値/ネガティブコントロールのOD値)×100%
【0259】
パーセントシグナル阻害は、SARS-CoV-2の総中和抗体の定性的検出を意味する。cPass(TM)キットは、ワクチンの有効性の評価および集団免疫の評価での使用に対して、食品医薬品局(FDA)によって認可されている。
【0260】
結果
図9Aは、ワクチン接種後の14日目における、ベクターのみのコントロールSMX06と比較した、SCV-COVID19Cでワクチン接種したマウスの2つのコホートにおいて観察されるS1特異的IgGのレベルを示している。近交系および非近交系マウスの両方において、S1特異的IgGが検出され(図9A)、この場合、非近交系マウスは、近交系マウスと比較して、より高い抗体のレベルを生じた(図9B)。これと一致して、近交系C57BL/6マウスと比較して、非近交系ARC(s)マウスにおいて、cPassアッセイによって、より高い中和抗体のレベルが検出され(図9C)、この場合、両方のコホートは、ベクターコントロールSMX06と比較して、より高い中和抗体を生じた。これらの結果は、SCV-COVID19Cが、非近交系マウス(遺伝的ヘテロ接合性の代表、したがってヒト集団への置き換え)および近交系マウスの両方において、中和能力を有するスパイク特異的抗体を誘導することができることを実証している。これらの結果およびC57BL/6に対する試薬可用性に基づいて、ワクチン媒介免疫反応のさらなる調査のための実験モデルとして、近郊マウスを選択した。
【0261】
例6
SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種はロバストなスパイク特異的T細胞反応を誘導する
T細胞は、呼吸器系の多くのウイルス感染の初期の抑制および排除を引き起こすために重要である。遺伝子導入マウスモデルにおける最近の研究は、SARS-CoV-2感染後のウイルス排除および疾患の解消において、T細胞が利用されていることの証拠を提供した。本明細書において、本発明者らは、SCV-COVID19Cによる免疫付与が、疾患重症度の抑制において潜在的に有益であろう初期T細胞反応を誘発するか否かを明確にする。
【0262】
実験戦略
雄(1群あたりn=3)および雌(1群あたりn=3)の6~9週齢のC57BL/6マウスを3つにグループ分けした:(1)ナイーブなマウス/ワクチンなし、(2)ベクターのみのコントロールSMX06によってワクチン接種したマウス、および(3)SCV-COVID19C(10PFU)の一回用量でワクチン接種したマウス。
【0263】
方法
ワクチン接種後の7日目に、脾臓を採取し、フローサイトメトリーによる単一細胞キャラクタリゼーションのために処理した。当該脾臓からの単一細胞調製物を、標準的な方法で単離した。簡潔に説明すると、小さい注射器のプランジャーを使用して、70μmの細胞ストレーナーを通すことにより脾臓を破壊した。結果として得られた単一細胞懸濁液をスピン処理し(300xg、5分)、赤血球を排除するために5分かけて1mLのアンモニウム-塩化物-カリウム(ACK)溶解用緩衝液に再懸濁させた。次いで、当該溶解用緩衝液を中和するために、10%ウシ胎仔血清(FBS)を補ったRPMI培養培地を加えた。脾細胞を、PBSで2回洗浄し、マルチパラメータフローサイトメトリーのために2×10細胞/mLにおいて再懸濁させた。
【0264】
例3において説明される細胞内サイトカイン染色を使用して、CD8およびCD4 T細胞反応を評価した。図10に示されるゲーティング戦略を使用してサイトカインIFN-γ、TNF-α、およびIL-2の産生を評価するために、細胞内サイトカイン染色を使用した。エフェクターCD8 T細胞によって産生される重要な細胞傷害性エフェクター分子であるグランザイムBの産生も、フローサイトメトリーによって測定した。
【0265】
ワクチン媒介性CD8 T細胞反応およびCD4 T細胞反応の特異性を測定するために、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1およびS2領域に及ぶ重複するペプチドで構成される2つのペプチドプールを使用した。スパイクプール1は、S1の全配列に及ぶ重複する11merを伴う15のAA長ペプチドで構成され、スパイクプール2は、S2の全配列に及ぶ重複する11merを伴う15のAA長ペプチドで構成される。加えて、ペプチドミックス(pepmix)は、S1のRBD領域内の免疫優性T細胞エピトープYNYLYRLF(配列番号9)、VVLSFELL(配列番号10)、およびVNFNFNGL(配列番号11)を含有する重複するペプチドプールを含む。これらのT細胞エピトープは、以前に、SARS-CoVにおけるCD8 T細胞活性化のマウス研究において同定された。タンパク質輸送阻害剤であるブレフェルジンAと共に1条件あたりの2μg/ml/ペプチドによって細胞を37℃で6時間刺激し、産生されたサイトカインをICSによって分析した。
【0266】
結果:スパイク特異的トリプルサイトカインポジティブCD8 T細胞反応
ワクチン接種後の7日目における細胞内サイトカイン染色は、SCV-COVID19Cの一回用量(図11A;下側パネル)は、スパイク特異的IFN-γCD8 T細胞の数における著しい増加をもたらすが、その一方で、ナイーブ(図11A;上側パネル)マウスおよびベクターのみ(図11A;中央パネル)コントロールマウスからのCD8 T細胞は、最小レベルのIFN-γを産生する。SCV-COVID19Cによるワクチン接種後に誘導されるスパイク特異的IFN-γ産生T細胞は、多機能性であり、追加のサイトカインを分泌し、その上、半分超は、TNF-α産生性であった。細胞の約15%は、トリプルサイトカインプロデューサー(triple-cytokine-producers)(IFN-γ、TNF-α、およびIL-2)として分類され、これらの細胞は、良質のT細胞反応の特質と見なされる(図11A;下側パネル)。
【0267】
図11Bは、実験マウスの全ての群におけるスパイクプール1(S1)特異的(左側パネル)、およびスパイクプール2(S2)特異的(中央パネル)、およびエピトープ特異的(YNYLYRLF(配列番号9)、VVLSFELL(配列番号10)、およびVNFNFNGL(配列番号11);右側パネル)である、シングル、ダブルおよびトリプルサイトカイン産生IFN-γ+CD8 T細胞の数のグラフ表示である。
【0268】
結果:スパイク特異的グランザイムB産生CD8 T細胞反応
ナイーブマウスと比較して、SCV-COVID19Cは、ワクチン接種後にグランザイムB産生CD8 T細胞を生じた(図11C)。
【0269】
結果:スパイク特異的IFN-γ産生CD4 T細胞反応
SCV-COVID19Cの単一ワクチン接種が、抗原特異的CD4 T細胞反応を誘導したかどうかを評価するために、脾細胞を、SARS-CoV-2のS1(プール1)およびS2(プール2)領域に及ぶペプチドプールによって再刺激した。SCV-COVID19Cによるワクチン接種は、S1およびS2特異的トリプルサイトカイン産生CD4 T細胞を誘導し、これは、図11Dに表される。
【0270】
結論
SCV-COVID19Cの単一ワクチン接種は、細胞傷害能を有するCD8 T細胞(グランザイムB産生)およびスパイク特異的多機能性CD8およびCD4 T細胞を生成する。
【0271】
例7
既存の免疫はSCV-COVID19Cワクチンの単回投与後のスパイク特異的抗体反応の量および質に影響を及ぼさない。
ウイルスベクターに対する既存の免疫の影響は、ウイルスベクター化ワクチンの開発に対する主要な問題である。オルトポックスウイルスベースのワクチンの使用には、成人のヒト集団の一部は、1970年台半ばまで実施され、最終的に天然痘の撲滅につながった種痘キャンペーンにより、当該ワクチンベクターに対する免疫を有するという潜在的欠点が存在する。したがって、結果としてワクチンの免疫原性および有効性の減少につながる、後続のSCV-COVID19ワクチン接種をオルトポックスウイルス特異的な既存の免疫が妨害することに対する大きな関心が存在する。本明細書において、本発明者らは、前臨床マウスモデルにおける、SCV-COVID19Cのシングルショットまたはそのワクチンの相同的プライム-ブーストのどちらかの、免疫原性に対する既存のワクシニアウイルス免疫の影響を調べた。
【0272】
実験戦略
雌および雄の6~9週齢C57BL/6マウスのミックス(1つの群あたりn=5匹のマウス)を、2つの処理群に分けた:
(1)ポックスウイルスに対する既存免疫の状態を誘導するために、10PFU/マウスの用量でのSCV-COVID19Cによるワクチン接種の40日前にワクシニアウイルスを投与したマウス、および(2)10PFU/マウスの用量でのSCV-COVID19Cによってワクチン接種した既存の免疫を有さないナイーブマウス。
【0273】
ワクチン接種後28日目、44日目、および80日目に得た血液試料を使用して、抗原特異的抗体反応の大きさおよび寿命をモニターした。スパイク(S1)タンパク質特異的IgGレベルおよびSARS-CoV-2ウイルス特異的中和抗体レベルを、エンドポイントELISAおよび疑似中和アッセイ(cPass(商標);Genscript)によって決定した。
【0274】
方法
例5において説明されるS1特異的抗体エンドポイント力価およびcPass(商標) SARS-CoV-2中和抗体検出のための酵素結合免疫吸着測定法。
【0275】
結果
SCV-COVID19Cのシングルショットは、ワクチン接種後28日目、44日目、および80日目における、既存の免疫を有するかまたは有しないマウスに対して、同等のレベルのS1特異的抗体を誘導した(図12A)。このデータに一致して、中和抗体のレベルも(GenscriptからのcPass(商標)キットを使用して測定した)、マウスの当該2つの群の間において同等であった(図12B)。
既存の免疫は、プライム-ブーストワクチン接種後の抗体反応に影響を及ぼさない。
【0276】
実験戦略
雌および雄の6~9週齢C57BL/6マウスのミックスを、2つの処理群に分けた:(1)ポックスウイルスに対する既存免疫の状態を誘導するために、相同的プライム-ブースト戦略(0日目および28日目)においてSCV-COVID19Cによるワクチン接種の40日前にワクシニアウイルスを投与したマウス、および(2)相同的プライム-ブースト戦略(0日目および28日目)においてSCV-COVID19Cによってワクチン接種した既存の免疫を有さないナイーブマウス。
【0277】
抗体反応の大きさおよび寿命をモニターするために、28日目(ブースト前)ならびに14日目および50日目(ブースター接種後)に、血液試料を入手した。スパイク(S1)タンパク質特異的IgGレベルおよびSARS-CoV-2ウイルス特異的中和抗体レベルを、エンドポイントELISAおよび疑似中和アッセイ(cPass(商標);Genscript)によって決定した。
【0278】
方法
例5において説明されるS1特異的抗体エンドポイント力価およびcPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出のための酵素結合免疫吸着測定法。
【0279】
結果
D28におけるブースター接種の投与後に、スパイク(S1)特異的抗体反応における著しい増加が観察された。既存の免疫は、S1特異的抗体レベル(図13A)および中和抗体レベル(図13B)に影響を及ぼさなかった。
【0280】
結論
既存の免疫は、単回投与または相同的プライム-ブースト戦略のどちらかにおけるSCV-COVID19Cによるワクチン接種後の抗原特異的抗体反応の質、量、または動態に影響を及ぼさない。
【0281】
例8
SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種は加齢マウスにおいて抗原特異的抗体反応を誘導する
年齢は、SARS-CoV-2感染後の不十分な健康アウトカムに対する最も重要なリスク要因の1つであり、したがって任意の新規のワクチン候補は高齢者におけるロバストな免疫反応を誘発することが望ましい。本明細書において、本発明者らは、加齢マウスにおいてSCV-COVID19Cワクチン接種の単回投与によって誘導される免疫反応について調べた。
【0282】
実験戦略
年齢に従って抗体反応のレベルを評価するために、6~9週齢の雌(n=10;若齢マウスと呼ばれる)および9~10月齢の雌(n=20;老齢マウスと呼ばれる)のC57BL/6マウスに、SCV-COVID19C(10PFU/マウス)の筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種後の14日目および21日目に血液試料を採取し、抗体分析のために血清を単離した。スパイク(S1)タンパク質特異的IgGレベルおよびSARS-CoV-2ウイルス特異的中和抗体レベルを、エンドポイントELISAおよび疑似中和アッセイ(cPass(商標);Genscript)によって決定した。
【0283】
方法
例5において説明されるS1特異的抗体エンドポイント力価およびcPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出のための酵素結合免疫吸着測定法。
【0284】
結果
ワクチン接種後の14日目および21日目において若齢マウスと老齢マウスとの間において、S1特異的抗体のレベルは同等であった(図14A)。同様に、ワクチン接種後の14日目および21日目において若齢マウスと老齢マウスとの間において、中和抗体力価における違いは検出されなかった(図14B)。
【0285】
結論
SCV-COVID19Cの単回投与は、若齢マウスにおいて見られるレベルに匹敵する抗原特異的免疫反応を老齢マウスにおいて誘導する。
【0286】
例9
相同的プライム-ブーストは抗体反応の著しいブースティングをもたらし、それはワクチン接種後最長で3か月維持される
プライム-ブースト戦略が若齢マウスおよび老齢マウスにおいて体液性反応を高めることができるか否かを調べるために、相同的プライム-ブーストアプローチを評価した。
【0287】
実験戦略
SCV-COVID19C(10PFU)ワクチンの最初の注射(プライム投与)を受けた後の28日目に、SCV-COVID19C(10PFU)のブーストを、若齢マウスおよび老齢マウスに筋肉内注射によって投与した。ブースト後の21日目に、S1特異的抗体レベルおよび中和抗体力価の評価のために血液試料を採取した。寿命研究のため、S1特異的抗体力価および中和抗体のパーセント阻害の評価のために、ブースト後の3週間目、9週間目、および12週間目に血液試料を採取した。
【0288】
方法
例5において説明されるS1特異的抗体エンドポイント力価およびcPass(商標)SARS-CoV-2中和抗体検出のための酵素結合免疫吸着測定法。
【0289】
結果
相同的プライム-ブーストワクチンレジメンにおけるSCV-COVID19Cのブースター用量の投与は、ブースト後21日目における、若齢マウスおよび老齢マウスの両方のスパイク(S1)特異的抗体反応および中和抗体反応を著しく増加させる(図15A、B)。ブースト後の21日目の若齢マウスと老齢マウスとの間において、中和抗体レベルにおける統計的違いは記録されなかった。ブースト後の3週間、9週間、および12週間での中和抗体レベルを分析したところ、若齢マウスおよび老齢マウスにおける時間を一致させた比較において有意な違いは記録されず、抗体レベルは維持されることが観察された(図15C)。
【0290】
結論
SCV-COVID19Cワクチンの第2の用量の投与によって、スパイク特異的抗体反応の量および質は著しく高められ、抗体反応は、ブースト後最長で3か月維持された(分析の時点において)。
【0291】
例10
SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは長期T細胞反応を誘導する
メモリーCD8 T細胞の存在は、効率的な病原体排除を促進することによって体液性反応を補うため、ウイルス感染への応答において、特に重要である。T細胞記憶は、中和抗体の防御能力または規模が損なわれた場合に、強力な二次防御として作用する。最も重要なことに、長期T細胞反応は、ワクチン接種によって与えられた免疫は持続性であり得ることを示し得る。
【0292】
実験戦略
処理群を2つのコホート:6~9週齢の若齢マウスと9~10月齢の老齢マウス、に分ける。各コホート内において、マウスを、SCV-COVID19C(10PFU)のシングルショット、プライム後28日目に投与されたセカンドショットによる相同的プライム-ブースト(10PFU、10PFU)、またはベクターのみのコントロールSMX06のいずれかによって免疫付与した。
【0293】
方法
マルチカラーフローサイトメトリーを使用して、短命エフェクター細胞(TSLE;CD44、KLRG1の高発現と、CD62Lの低発現とによって同定される)、エフェクターメモリー細胞(TEM;CD44の高発現と、KLRG1およびCD62Lの低発現とによって同定される)、およびセントラルメモリー細胞(TCM;CD44およびCD62Lの高発現と、KLRG1の低発現とによって同定される)としてのメモリーT細胞集団を特性評価した(図16)。
【0294】
ELISpotアッセイ(前に説明した)を使用して、IFN-γ産生T細胞を定量化し、その一方で、細胞内サイトカイン染色(前に説明した)を使用して、IFN-γ、TNF-α、およびIL-2などのサイトカインを産生することができる細胞を同定した。
【0295】
SCV-COVID19Cワクチン接種によって誘発されたIFN-γT細胞反応の性質を評価するために、本発明者らは、以下の領域の配列に及ぶ3つの異なるペプチドプールによってCD8 T細胞を再刺激した:RBDなしのS1、RBDおよびRBDの後の残りのS1領域、ならびにS2。
【0296】
結果:相同的プライム-ブーストはCD8エフェクターT細胞集団を拡大する
SCV-COVID19Cの単回投与またはプライム-ブーストのどちらかによってワクチン接種した若齢マウスおよび老齢マウスのエフェクターメモリーおよびセントラルメモリーCD8 T細胞の総数を、図17Aに示す。結果は、プライム-ブーストワクチン接種が、短命エフェクター細胞集団およびエフェクターメモリー細胞集団の両方において、エフェクターメモリー細胞の著しい増加を生じさせることを実証している。ブースター用量の投与後のセントラルメモリーT細胞の著しい増加は、若齢マウスにおいて記録されたが、しかしながら、この違いは、老齢マウスでは観察されなかった。
【0297】
結果:相同的プライム-ブーストはT細胞記憶を増加させる
若齢マウスおよび老齢マウスの両方において、SCV-COVID19Cワクチンのシングルショットは、ベクターのみのコントロールマウスと比較して、スパイク特異的IFN-γT細胞反応の著しい増加を誘導する。ブースター用量の投与は、結果として、スパイク特異的IFN-γ T細胞の著しい増加をもたらし、ならびにこれは、若齢マウスおよび老齢マウスの両方において観察された(図17B)。
【0298】
S1領域(RBDなし;プール1)、RBDおよび残りのS1領域(プール2)、ならびにS2領域(プール3)に及ぶペプチドプールによって細胞を再刺激することによって、S1特異的、RBD特異的、またはS2特異的のように、スパイク特異的T細胞反応のさらなるプロファイリングを行った。若齢マウスおよび加齢マウスの両方において、S1、RBD、S2領域に対するIFN-γT細胞反応が検出され、これは、幅広いT細胞反応を示している。ELISpotによるIFN-γスポット形成単位(図17C)、細胞内サイトカイン染色による、IFN-γ産生CD8 T細胞の割合(図17D)、およびトリプルサイトカイン陽性(IFN-γ、TNF-α、IL2)産生CD8T(図17E)の数によって証明されるように、IFN-γ産生T細胞反応は、主にRBD領域に向けられていた。期待されるように、単回投与のワクチン接種と比較して、プライム-ブーストレジメンにおいて、抗原特異的T細胞集団の著しいブーストが観察された。
【0299】
結論
SCV-COVID19Cによるワクチン接種は、シングルショットワクチン接種レジメン後の若齢マウスおよび老齢マウスの両方において、スパイクタンパク質の両方のサブユニットに対する多機能性CD8 T細胞反応を誘導する(S1およびS2;S1サブユニットのRBD領域を主に対象とする)。相同的プライム-ブーストワクチン接種戦略の後の若齢マウスおよび老齢マウスの両方において、抗原特異的IFN-γ産生T細胞反応およびエフェクターメモリー集団の著しい増加が観察された。
【0300】
例11
SCV-COVID19Cの相同的プライム-ブーストは、潜在的に、スパイクRBDにおけるCD8 T細胞エピトープに基づいてSARS-CoVと交差反応し得る
実験戦略
6~9週齢の雌のマウスおよび9~10月齢の老齢マウスに、10PFU/マウスの用量での筋肉内投与によって、SCV-COVID19Cまたはベクターのみのコントロールでワクチン接種し、ワクチン接種後の7日目に、ELISpotによって、エピトープ特異的T細胞反応を分析した。
【0301】
方法
SARS-CoVおよびSARS-CoV-2(VVLSFELL(配列番号10)およびVNFNFNGL(配列番号11))の間において100%保存されるRBD領域の2つのCD8 T細胞エピトープによる再刺激の後に、LISpotアッセイ(以前に説明した)および細胞内サイトカイン染色(以前に説明した)を使用して、IFN-γ産生T細胞を定量化した。
【0302】
結果
ELISpot(図18A)およびICS(図18B)の両方によってベクターコントロールと比較して、SCV-COVID19Cワクチン接種マウスにおいて、エピトープ特異的IFN-γ産生T細胞反応の著しい増加が検出された。
【0303】
結論
SCV-COVID19Cによるワクチン接種後の、CD8 T細胞エピトープVVLSFELL(配列番号10)およびVNFNFNGL(配列番号11)(SARS-CoVおよびSARS-CoV-2の間で保存される)に対するIFN-γ産生T細胞反応の発生は、当該ワクチンがSARS-CoVおよびSARS-CoV-2の両方に対する予防的保護を提供することができ得ることを示唆している。
【0304】
例12
SCV-COVID19Aによる単一のワクチン接種はスパイクおよび膜特異的CD8 T細胞反応を生じさせる
実験戦略
6~9週齢の雄のC57BL/6マウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、SCV-COVID19A(10PFU/マウス)またはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種後の21日目に、血液試料を採取し、スパイクタンパク質、膜タンパク質、ヌクレオカプシドタンパク質に対するT細胞反応を、ELISpotによって検出した。
【0305】
方法
ELISpotアッセイ(前に説明した)を使用して、IFN-γ産生T細胞を定量化した。SCV-COVID19Aワクチン接種によって誘発されたIFN-γT細胞反応の性質を評価するために、本発明者らは、以下の領域の配列に及ぶ3つの異なるペプチドプールによってCD8 T細胞を再刺激した:RBDなしのS1、RBDおよびRBDの後の残りのS1領域、ならびにS2。膜またはヌクレオカプシドを標的にするCD8 T細胞反応が生じたか否かを特定するために、膜タンパク質およびヌクレオカプシドタンパク質の配列に及ぶペプチドプールによって細胞を再刺激した。
【0306】
結果
S1領域、RBD領域、およびS2領域に及ぶベクターコントロールと比較して、SCV-COVID19Aワクチン接種したマウスにおいて、スパイク特異的IFNγ産生T細胞反応における著しい増加が検出された(図19A)。膜特異的IFNγ産生T細胞反応は、ベクターコントロールと比較して著しく高いことが示されたが(図19B)、その一方で、ヌクレオカプシド特異的T細胞反応は、SCV-COVID19Aでワクチン接種したマウスとベクターコントロールとの間において同等であった(図19C)。
【0307】
結論
SCV-COVID19ワクチン接種の単回投与は、スパイク特異的および膜特異的IFNγ分泌CD8 T細胞の増加によって示されるような、幅広いT細胞反応を誘導する。
【0308】
例13
SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gの均等割合による単回のワクチン接種は、スパイクおよび膜タンパク質に対するスパイク特異的抗体反応およびCD8T細胞反応を誘導する
実験戦略
6~9週齢の雄のC57BL/6マウスの群(1つの群あたりn=5匹のマウス)に、均等割合のSCV-COVID19C(10PFU/マウス)およびSCV-COVID19G(10PFU/マウス)を含有する混合ワクチン、またはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種後21日目に血液試料を収集し、抗体分析のために血清を単離した。スパイク(S1)特異的抗体反応を、ELISAによって決定し、ならびにスパイクおよび膜タンパク質に対するT細胞反応を、ELISpotおよびICSによって検出した。
【0309】
方法
S1特異的抗体レベルに関する酵素結合免疫吸着測定法を、前に説明したように実施した。タンパク質の全長に及ぶペプチドを使用してスパイクおよび膜特異的IFN-γ産生T細胞反応を同定するために、ELISpotアッセイ(前に説明した)を使用した。
【0310】
結果
免疫付与後21日目において、ELISAによってS1特異的抗体反応を評価した。SCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gで構成される混合ワクチンによるワクチン接種は、ベクターのみのSMX06コントロールと比較して著しく高いS1特異的抗体反応を生じた(図20A)。混合ワクチンによるシングルショットワクチン接種後に、ICSによって検出されるスパイク特異的IFNγ産生T細胞のレベルも、ベクターコントロールと比較した高かった(図20B)。混合ワクチンによるワクチン接種は、ベクターコントロールと比較して、スパイクタンパク質および膜タンパク質の全長に及ぶペプチドに対する抗原特異的スポット形成単位(SFU)の著しい増加を引き起こした(図20C)。
【0311】
結論
本明細書における例13は、それぞれ、SARS-CoV-2スパイクタンパク質およびSARS-CoV-2膜およびヌクレオカプシドタンパク質をコードするSCV-COVID19CおよびSCV-COVID19Gで構成される混合ワクチンによる動物モデルの免疫付与は、S1特異的抗体の産生によって示される細胞性および体液性反応を誘導し、スパイク特異的IFNγ分泌CD8T細胞を増加させる。これらは、混合SCV-COVID19ワクチンが、COVID-19の感染性病原因子であるSARS-CoV-2に対する予防的保護を提供し得ることを示唆している。
【0312】
例14
同じベクターから複数の優性抗原を発現することは、各優性抗原を単一のベクターから発現させることと比較した場合、最適な免疫反応の刺激において有害ではないかどうかを決定する
異なる弱毒化生ウイルスワクチンを組み合わせる場合、ワクチン間での競合は、最も頻繁に観察される問題である。それは、混合ワクチンの用量を増加させるか、または、優性ワクチン(1または複数)成分からの競合に打ち勝つように各ワクチン成分の投与量を調節することによって回避することができる。
【0313】
「免疫学的干渉(immunological interference)」による抗原競合は、三価のジフテリア-百日咳-破傷風ワクチンの成分間において、イヌジステンパーバクテリンと生イヌジステンパーウイルスとの間において、ならびに、ジステンパーウイルス、アデノウイルス2型、パルボウイルス、およびパラインフルエンザウイルスの生混合ワクチンのための希釈剤としてボルデテラ属が使用される場合に、報告されている。場合によって、多成分ワクチンによる接種は、当該成分が単独で投与される場合よりも少ない抗体を誘発する。他の場合において、1つの抗原に対する反応が支配的であり、その一方で、他の成分に対する反応は抑制される。他の場合において、相互の競合が生じる場合、全成分に対する反応は減少する。
【0314】
抗原競合の程度は、競合する抗原の接種の関連部位、抗原の投与の間の時間間隔、および抑制される抗原に対する優性抗原の用量を含む、ワクチン接種のいくつかのパラメータに依存することが示されている。
【0315】
たとえ、上記のことが、同じベクターからいくつかの疾患原因因子由来の免疫抗原を発現させることによって解決することができ、それにより、免疫系への各免疫抗原の等しい提示を確保することができ、ならびに、抗原送達のための単一ベクターを用いることで、ベクターのみのためのワクチン接種の最適経路だけを考慮すれば十分だとしても、優先的な抗原捕捉ならびにB細胞および樹状細胞などの抗原提示細胞によるMHC提示によって抗原干渉が生じ得るリスクは存在する。優性B細胞および/またはT細胞エピトールを伴う抗原は、準最適B細胞またはT細胞エピトープを有する抗原よりも強い免疫反応を生じるであろう。したがって、これは、複数の疾患原因因子に由来する複数の抗原を発現する単一ベクターによってワクチン接種された場合に、最も優性な抗原へとバイアスされた免疫反応を生じるであろう。
【0316】
複数の疾患原因ウイルス由来の複数の優性抗原の発現が、お互いの免疫反応に干渉するか否かを決定するために、研究を行った。同じベクターから2つの優性抗原を発現させることは、それらのそれぞれのウイルスに対する強力な免疫反応を刺激するお互いの能力に干渉し得、すなわち、ある優性抗原は、他の優性抗原に対してより優位性を有し得る。
【0317】
単一のベクターから各優性抗原を発現させる場合と比較して、同じベクターから複数の優性抗原を発現させることは、最適な免疫反応を刺激する点において有害ではないか否かを決定するために、マウスにおけるワクチン接種研究を実施した。
【0318】
実験戦略
野生型C57BL/6マウスならびにインターフェロン受容体欠損マウス(IFNAR)の雌のマウスまたはACE-2欠損マウスに、処置群あたり6匹のマウスの群において、組換えウイルスSCV-COVID19AもしくはSCV-COVID19B、またはSCV-COVID19C、SCV-COVID19D、もしくはSCV-COVID19Eの混合物、または空のベクターコントロールによって一回ワクチン接種した。全ての処置群に、腹腔内注射によって10PFU/マウスのワクチンを与え、ワクチン接種後2週間および4週間において採血した。ワクチン接種後6週間において、全てのマウスをチャレンジ感染させる。
【0319】
中和アッセイ
多くの場合、中和抗体のレベルが、保護と相関する指標として使用される。したがって、SARS-CoV-2に対してVero細胞における標準的マイクロ中和アッセイを使用して、全てのワクチン群において、チャレンジ感染の前に中和抗体のレベルを算出した。簡単に言えば、血清を熱不活性化し(56℃で30分)、96ウェルプレートにおいて、各マウスからの血清をデュプリケートにおいて段階希釈し、および、100CCID150単位のウイルスと37℃で1時間インキュベートする。この中和ステップの後に、新たに分裂したVero細胞を、当該血清/ウイルス混合物の上に重ね(ウェルあたり10細胞)、細胞変性効果が顕微鏡下において可視化されるまで、5日間インキュベートする。細胞変性効果に対して100%保護を与える血清希釈を、クリスタルバイオレット染色を使用して決定する。
【0320】
結果
SARS-CoV-2抗原を発現する両方のワクチン候補が、ワクチンの一回投与の後に、SARS-CoV-2ウイルスに対する中和抗体を誘導する。
【0321】
妊娠前に組換えSCV-COVID19ウイルスによって事前にワクチン接種したSARS-CoV-2ウイルスに感染した母からのマウス胎仔の保護
この研究の目的は、妊娠前にSARS-CoV-2抗原を発現する雌マウスにおける事前にのワクチン接種は、それらのまだ生まれていない胎仔のSARS-CoV-2ウイルス感染に対して保護することができることを示すことである。
【0322】
この研究は、SCV-COVID19A、SCV-COVID19B、またはベクターのみによって、雌のIFNAR-/-にワクチン接種し、その後に、雄のIFNARマウスと交配させることによって実施される。次いで、妊娠マウスにSARS-CoV-2を感染させる。
【0323】
実験戦略
6~8週齢のIFNAR-/-に、0週間目に、10PFU/マウスにおいて、単一のベクター化ワクチンであるSCV-COVID19A、SCV-COVID19B、またはベクターのみによって、筋肉内経路により一回ワクチン接種する。ワクチンに対するセロコンバージョンを確認するために、ワクチン接種後4週間目に、マウスの群を採血した。ワクチン接種後6週間目に、ワクチン接種したマウスにおいて妊娠を生じさせるために、タイミングを合わせた交配を開始する。首尾よく妊娠したことの証拠のために、雌のマウスを毎日チェックする(膣栓)。胚性6.5日目に、10CCID50単位において、皮下感染によって妊娠マウスをSARS-CoV-2に感染させる。感染後、ウイルス血症を確認するために、妊娠マウスを、1日目から5日目までの間、毎日採血する。胚性17.5日目に、妊娠マウスを選別し、感染性SARS-CoV-2に関して評価するために、データを収集する。
【0324】
結果
妊娠する前にSCV-COVID19AまたはSCV-COVID19Bによって事前にワクチン接種した雌の妊娠マウスは、チャレンジ感染後にウイルス血症が検出されないことによって示されるように、SARS-CoV-2によるチャレンジ感染の間に、SARS-CoV-2ウイルス複製を防ぐことができる。SCVベクターのみでワクチン接種したマウスは、SARS-CoV-2ウイルスによるウイルス複製を防ぐことができない。
【0325】
交配および妊娠前にSCV-COVID19AまたはSCV-COVID19Bワクチンのシングルショットによって事前にワクチン接種した雌マウスは、チャレンジ感染後に、SARS-CoV-2ウイルスの検出可能なレベルを示さない。ワクチン接種は、チャレンジ感染ウイルスが胎盤に感染するのを防ぎ、そうすることによって、脆弱な胎仔へのSARS-CoV-2ウイルスの前方伝染(onward transmission)を妨げる。
【0326】
しかしながら、これは、SCVベクターのみで事前にワクチン接種した雌のマウスのケースではなく、それらは、チャレンジ感染後、妊娠中に、胎盤のいくらかは感染し得、胎仔へのSARS-CoV-2ウイルス感染の伝染は生じ得る。
【0327】
結論
CV-COVID19AまたはSCV-COVID19Bの単一ベクター化ワクチンのシングルショットによって事前にワクチン接種された雌の妊娠マウスは、コントロールワクチンと比較して、SARS-CoV-2チャレンジ感染から保護され、これはウイルス血症結果によって示される。
【0328】
妊娠前の母親マウスのワクチン接種は、SARS-CoV-2ウイルスが胎盤子宮部に感染するのを防ぎ、胎児脳への前方伝染を妨げることによって、まだ生まれていない胎仔を保護し得る。
【0329】
胎仔へのSARS-CoV-2チャレンジ感染ウイルスの前方伝染は、妊娠前の母親マウスの事前ワクチン接種によって妨げられる。
【0330】
例15
SCV-COVID19Cによる単一のワクチン接種はエピトープ特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)活性を生じさせる
CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、クラスIのMHC関連ペプチドを認識し、ならびに抗原依存性刺激において、グランザイムおよびパーフォリンを分泌することによってウイルス感染細胞を殺す。ウイルス特異的CTL反応は、ウイルス血症を阻止する上で重要な役割を果たす。パーフォリンは細胞膜細孔を作り出して、グランザイムの細胞内送達を可能にし、アポトーシス死を誘導するカスパーゼの切断および活性化を生じさせる。この例において、本発明者らは、ウイルス特異的T細胞媒介細胞毒性を評価するために、放射性同位体51クロム放出を使用したエフェクターT細胞の活性化を実証する。
【0331】
実験戦略
C57BL/6マウスに、マウス1匹あたり10PFUの用量において、SCV-COVID19CまたはベクターコントロールSCV-SMX06による筋肉内投与によってワクチン接種した。ワクチン接種後の7日目に、脾臓を収穫し、標準51クロム(51Cr)放出により、ペプチド決定基-パルスされたEL4標的細胞に対する直接的エクスビボ細胞溶解性Tリンパ球活性について、エフェクター細胞をアッセイした。
【0332】
細胞溶解性Tリンパ球アッセイ
EL4(H-2)細胞を増殖させ、ペプチドパルスおよび51Crラベリングによってアッセイのために準備した。EL4細胞を洗浄し、SARS-CoV-2免疫優性T細胞エピトープYNYLYRLF(配列番号9)またはVNFNFNGL(配列番号11)を提示するペプチドによって2時間パルスした。これら2つのエピトープは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS1サブユニットのRBD領域に位置する。当該細胞を、優しくタップしながら20分間混合した。次いで、過剰なペプチドを除去するために、ペプチドパルスEL4細胞を2回洗浄し、45~60分かけて20~50μCiの51Crで標識した。過剰な51Crを除去するために、細胞を2回洗浄し、2×10ペプチドパルスした放射標識標的細胞/100μl体積で再懸濁させた。
【0333】
エフェクター細胞を、ワクチン接種した動物の収穫した脾臓から調製した。細胞を、完全培地での再懸濁の前に、70μM細胞ストレーナーおよびACK溶解を経させることによって、脾細胞の単一細胞懸濁液の希釈物を調製した。細胞を、2×10細胞/mlにおいて再懸濁させ、3倍の段階希釈においてウェルに分配した。
【0334】
エフェクター細胞を含むウェルに標的細胞を加え、6時間インキュベートした。最大放出コントロールのため、100μlのTriton Xを当該ウェルに加えて、細胞を溶解させ、培地中にクロムを完全に放出させた。インキュベーション後、当該プレートを1200rpmで5分間回転させ、放射活性の測定のために、30μlの上清をLumaプレートに移した。当該プレートを一晩乾燥させ、次の日に、Microbeta2プレートリーダーにおいて評価した。エフェクター細胞の各濃度に対するパーセント溶解を、以下の式を使用して決定した:
【0335】
パーセント特異的溶解=[試料51Cr放出(cpm)-自然放出(cpm)]/[最大放出(cpm)-自然放出(cpm)]x100%
【0336】
結果
結果は、ペプチドYNYLYRLF(配列番号9)およびVNFNFNGL(配列番号11)によってパルスした標的細胞の特異的溶解が存在する(図21A、B)ことを示しており、それは、当該ワクチンがエピトープ特異的細胞傷害性T細胞を生じさせることを示唆している。当該結果は、コントロールマウスおよびコントロール標的細胞(それぞれ、SMX06ワクチン接種したマウスおよびパルスされていない標的細胞)に対して溶解は検出されない、エピトープ特異的に見える。
【0337】
結論
SCV-COVID19Cの単一ワクチン接種は、SARS-CoV-2エピトープ特異的細胞溶解性Tリンパ球反応を生じさせる。
【0338】
参考文献
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図1-2】
図2
図3A
図3B
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【配列表】
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【国際調査報告】