(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】炎症性腸疾患に対する併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20230508BHJP
A61K 31/616 20060101ALI20230508BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230508BHJP
A61K 38/13 20060101ALI20230508BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230508BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230508BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230508BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K31/616
A61K45/00
A61K38/13
A61K39/395 U
A61K31/519
A61P1/04
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560160
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 AU2021050288
(87)【国際公開番号】W WO2021195703
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519367599
【氏名又は名称】セルバトゥス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィンリーソン、ウェイン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA44
4C084DA11
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZA68
4C084ZB082
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB17
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086DA17
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA68
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087MA02
4C087NA14
4C087ZA68
4C087ZC75
(57)【要約】
免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びにラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法。
【請求項2】
前記炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炎症性腸疾患はクローン病である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性腸疾患の症状は、不十分な便の硬さ、便潜血の存在、腹痛、下痢、又は炎症性サイトカインの発現上昇から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫抑制剤はカルシニューリン阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記カルシニューリン阻害剤はシクロスポリンAである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫抑制剤はTNF阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記TNF阻害剤はアダリムマブである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫抑制剤はJAK阻害剤である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記JAK阻害剤はトファシチニブである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記アミノサリチラートは5-アミノサリチル酸である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ラクトバチルス種は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
シクロスポリンA、並びに
ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
アダリムマブ、並びに
ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
トファシチニブ、並びに
ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
5-アミノサリチル酸、並びに
ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫抑制剤又は前記アミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する前記培養上清又は前記無細胞培養濾液は、投与のための同じ組成物中に配合されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫抑制剤又は前記アミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する前記培養上清又は前記無細胞培養濾液は、投与のための異なる組成物中に配合されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
。
【請求項19】
前記免疫抑制剤又は前記アミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する前記培養上清又は前記無細胞培養濾液の投与は、順次又は同時である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を炎症性腸疾患を患う対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患を患う対象において1又は複数の炎症性サイトカインの発現を減少させるための方法。
【請求項21】
前記1又は複数の炎症性サイトカインは、IL-6、KC-GRO、TNFα、及びIL-1βから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
シクロスポリンA、並びに
ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を前記対象に投与することを含む、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための薬剤の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、炎症性腸疾患の治療又は予防の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患は、先進工業国において蔓延しつつある消化管の複雑な特発性症状であり、アメリカ合衆国だけでも100万人以上が罹患していると推定される。炎症性腸疾患には2つの主な亜型、すなわちクローン病と潰瘍性大腸炎が存在している。クローン病は下部消化管のいずれの部位でも発生し得るが、主に回腸及び大腸に影響を及ぼす。潰瘍性大腸炎は結腸にほぼ限定され、患者は、大腸炎関連がん、通常は結腸直腸がんにかかりやすくなる可能性がある。
【0003】
クローン病及び潰瘍性大腸炎の病因はまだ十分に解明されていないが、消化管の共生細菌に対する免疫応答の変化及び調節不全により特徴付けられる、腸管粘膜の炎症症状であると考えられている。症状的に、これらの疾患は、腹痛、下痢(しばしば血便)、並びに関節炎及びブドウ膜炎などの多様なその他の臨床的徴候を伴う。
【0004】
長年、ステロイド(特に、プレドニゾンなどのコルチコステロイド)が炎症性腸疾患の主な治療選択肢であった。しかし、ステロイドの長期間の使用は重大な望ましくない副作用を伴い、疾患がステロイド治療に対して抵抗性となり得る。クローン病と潰瘍性大腸炎の両方の治療のための現在の非ステロイド系の治療選択肢としては、アミノサリチラート(例えば、5-アミノサリチル酸、スルファサラジン、及びメサラミンなど)、抗生物質(例えば、シプロフロキサシン及びメトロニダゾールなど)、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、タクロリムス、アザチオプリン、及びメトトレキサートなど)、腫瘍壊死因子(TNF)アンタゴニスト(例えば、インフリキシマブ及びアダリムマブなど)、及びヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、トファシチニブなど)が挙げられる。しかしながら、これらの治療に対する患者の応答は、疾患の重症度により変化し、また、活動性の炎症と鎮静のサイクルとともに変化する。
【0005】
炎症性腸疾患の治療のための、改善された新しい治療選択肢の開発の継続的必要性が存在している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一の態様は、
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法を提供する。
【0007】
炎症性腸疾患は、急性の症状であってもよく、慢性の症状であってもよい。通常、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病である。例示的実施形態では、炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎である。潰瘍性大腸炎は、慢性の潰瘍性大腸炎であってもよい。
【0008】
炎症性腸疾患の症状は、臨床的症状、例えば、不十分な便の硬さ、便潜血の存在、腹痛、又は下痢であってもよく、あるいは、炎症性サイトカインの発現上昇を含む生理的症状であってもよい。
【0009】
ある実施形態では、免疫抑制剤はカルシニューリン阻害剤である。ある例示的実施形態では、カルシニューリン阻害剤はシクロスポリンAである。
【0010】
ある実施形態では、免疫抑制剤はTNF阻害剤である。ある例示的実施形態では、TNF阻害剤はアダリムマブである。
【0011】
ある実施形態では、免疫抑制剤はJAK阻害剤である。ある例示的実施形態では、JAK阻害剤はトファシチニブである。
【0012】
ある例示的実施形態では、アミノサリチラートは5-アミノサリチル酸である。
【0013】
前記1又は複数のラクトバチルス種は、前記ラクトバチルス種のうちの少なくとも3種の組み合わせを含んでいてもよく、任意に、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエを含んでいてもよい。したがって、ある実施形態では、前記方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を対象に投与することを含む。
【0014】
ある実施形態では、前記方法は、シクロスポリンA、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を対象に投与することを含む。
【0015】
ある実施形態では、前記方法は、TNF阻害剤、任意にアダリムマブ、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を対象に投与することを含む。
【0016】
ある実施形態では、前記方法は、JAK阻害剤、任意にトファシチニブ、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を対象に投与することを含む。
【0017】
ある実施形態では、前記方法は、5-アミノサリチル酸、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を対象に投与することを含む。
【0018】
免疫抑制剤又はアミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する培養上清又は無細胞培養濾液は、投与のための同じ組成物中に配合されていてもよい。あるいは、免疫抑制剤又はアミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種は、異なる投与用組成物中に配合されていてもよい。そのような別個の投与は、順次であってもよく、同時であってもよい。
【0019】
免疫抑制剤又はアミノサリチラート、及び前記1又は複数のラクトバチルス種、これに由来する培養上清又は無細胞培養濾液は、例えば、経口、舌下、局所、又は非経口で、同じ経路により投与されてもよく、異なる経路により投与されてもよい。
【0020】
本開示の第2の態様は、
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を炎症性腸疾患を患う対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患を患う対象において1又は複数の炎症性サイトカインの発現を減少させるための方法を提供する。
【0021】
ある実施形態では、前記炎症性サイトカインは、IL-6、KC-GRO、TNFα、及びIL-1βから選択される。
【0022】
特定の実施形態では、前記化合物は、カルシニューリン阻害剤(任意に、シクロスポリンA)、TNF阻害剤(任意に、アダリムマブ)、JAK阻害剤(任意に、トファシチニブ)、及び5-アミノサリチル酸から選択される。
【0023】
前記1又は複数のラクトバチルス種は、前記ラクトバチルス種のうちの少なくとも3種の組み合わせを含んでいてもよく、任意に、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエを含んでいてもよい。したがって、ある実施形態では、前記方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を対象に投与すること含む。
【0024】
特定の実施形態では、前記方法は、シクロスポリンA、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液の有効量を対象に投与することを含む。
【0025】
本開示の第3の態様は、
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための薬剤の製造における使用を提供する。
【0026】
特定の実施形態では、前記化合物は、カルシニューリン阻害剤(任意に、シクロスポリンA)、TNF阻害剤(任意に、アダリムマブ)、JAK阻害剤(任意に、トファシチニブ)、及び5-アミノサリチル酸から選択される。
【0027】
特定の態様では、前記1又は複数のラクトバチルス種は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせを含む。したがって、ある実施形態では、前記医薬は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を含む。
【0028】
ある実施形態では、前記医薬は、シクロスポリンA、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を含む。
【0029】
ある実施形態では、前記医薬は、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を含む。
【0030】
ある実施形態では、前記医薬は、JAK阻害剤(任意にトファシチニブ)、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を含む。
【0031】
ある実施形態では、前記医薬は、5-アミノサリチル酸、並びにラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、及びラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又は該組み合わせに由来する培養上清又は無細胞培養濾液を含む。
【0032】
上記態様及び実施形態にしたがって、並びに本明細書に記載及び例示されるように、通常、免疫抑制剤又はアミノサリチラートと1又は複数のラクトバチルス種との組み合わせは、相乗的な組み合わせである。
【0033】
本開示の例示的実施形態は、以下の図面を参照して、非限定的な一例としてのみ本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実施例1に記載される処置後の3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける、糞便血のスコア(A)、便の硬さのスコア(B)、及び疾患活動インデックスのスコア(C)を示す図である。左から右に、それぞれ実施例1に記載されるグループ1~5。* p<0.05、グループ2と比較したダネット検定。** p<0.01、グループ2と比較したダネット検定。*** p<0.001、グループ2と比較したダネット検定。
【
図2】実施例1に記載される処置後の3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける、大腸粘膜サイトカインの発現分析(A:IL-6、B:KC-GRO、C:TNFα、D:IL-1β)を示す図である。左から右に、それぞれ実施例1に記載されるグループ1~5。A~Cについて、** p<0.01、グループ2と比較したダネット検定。*** p<0.001、グループ2と比較したダネット検定。Dについて、** p<0.005、グループ2と比較したダネット検定。
【
図3】実施例1に記載される処置後の3%DSS誘発大腸炎モデルマウスの大腸における、潰瘍形成及び炎症についての総合、近位、中位、遠位の複合スコアを示す図である。左から右に、実施例1に記載されるグループ1~5。* p<0.05、グループ2と比較したダネット検定。*** p<0.001、グループ2と比較したダネット検定。
【
図4】実施例1に記載される処置後の3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける大腸の長さ(mm)を示す図である。左から右に、実施例1に記載されるグループ1~5。* p<0.05、グループ2と比較したダネット検定。*** p<0.001、グループ2と比較したダネット検定。
【発明を実施するための形態】
【0035】
[
図5]実施例2に記載される処置後の1日目~11日目の、3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける、糞便血のスコア(A)、便の硬さのスコア(B)、及び疾患活動インデックスのスコア(C)を示す図である。丸:未処置マウス、四角形:3%DSS+溶媒(対照)、三角形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株、逆三角形:3%DSS+5-ASA、菱形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株+5-ASA。
[
図6]実施例3に記載される処置後の1日目~11日目の、3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける、糞便血のスコア(A)、便の硬さのスコア(B)、及び疾患活動インデックスのスコア(C)を示す図である。番号1~5(破線で示される)は、それぞれ実施例3の処置グループ1~5。(1)丸:未処置マウス、(2)四角形:3%DSS+溶媒(対照)、(3)三角形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株、(4)丸:3%DSS+トファシチニブ、(5)四角形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株+トファシチニブ。
[
図7]実施例4に記載される処置後の1日目~11日目の、3%DSS誘発大腸炎モデルマウスにおける、糞便血のスコア(A)、便の硬さのスコア(B)、及び疾患活動インデックスのスコア(C)を示す図である。番号1~5(破線で示される)は、それぞれ実施例4の処置グループ1~5。(1)丸:未処置マウス、(2)四角形:3%DSS+溶媒(対照)、(3)三角形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株、(4)三角形:3%DSS+アダリムマブ、(5)逆三角形:3%DSS+ラクトバチルス SVT株+アダリムマブ。
【0036】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるいずれの方法及び材料の類似物及び等価物も本開示の実施又は試験において用いることができるが、典型的な方法及び材料が記載される。
【0037】
本明細書において冠詞「a」及び「an」は、1つ、又は1つより多い(例えば、少なくとも1つ)の冠詞の文法上の目的語を指すために用いられる。例として、「ある要素(an element)」は、1つの要素、又は1つより多い要素を意味する。
【0038】
本明細書の文脈において、「約」との用語は、同様の機能又は結果を達成する観点から、当業者が記載された値に等価であると考える数の範囲を指すことが理解される。
【0039】
本明細書及び続く特許請求の範囲を通して、文脈が別段必要としない限り、「含む(comprise)」との用語、及びその変形、例えば「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」は、提示される整数若しくはステップ、又は一群の整数若しくはステップを含むが、その他の整数若しくはステップ、又は一群の整数若しくはステップを排除しないことを意味することが理解されるであろう。
【0040】
本明細書で用いられる「有効量」との用語は、その意味内で非毒性であるが、所望の治療効果を提供するために十分な組成物の量を含む。必要とされる正確な量は、処置される種、対象の年齢及び全身状態、処置される症状の重症度、投与される特定の薬剤、及び投与方式などの要因によって、対象間で異なることになる。いかなる場合についても、適切な「有効量」は、日常的な実験のみを用いて当業者により決定されてもよい。
【0041】
本明細書で用いられる「対象」との用語は、哺乳類を指し、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ウシ、乳牛、ウマ、ヒツジ、ブタ)、実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、パフォーマンス用動物(例えば、競走馬)、及び捕獲された野生動物を含む。例示的実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0042】
本明細書で用いられる「処置する」及び「処置」などの用語は、疾患の重症度を低下させることを含む、炎症性腸疾患又はそのような疾患の少なくとも1つの症状を治療するか、あるいはその進行を妨害する、遅らせる、又は止める、全ての適用を指す。したがって、処置は、疾患の完全な除去まで、又は疾患からの回復まで対象が処置されることを必ずしも意味していない。
【0043】
本明細書で用いられる「任意に」との用語は、それに続いて記載される特徴が存在していてもしていなくてもよいことを意味するか、又はそれに続いて記載される事象又は状況が発生しても発生しなくてもよいことを意味する。明細書は、特徴が存在している実施形態及び特徴が存在していない実施形態、並びに事象又は状況が発生している実施形態及び事象又は状況が発生していない実施形態を含み、且つ包含すると理解されるであろう。
【0044】
本明細書の文脈において、「微生物生物学的製剤(microbial biotherapeutic)」との用語は、最も広い解釈を与えられるべきであり、有効量で対象に投与された場合に対象における健康上の利益を促進する、微生物細胞の集団又は調製物、あるいは微生物細胞の集団又は調製物の構成要素を指すと理解される。
【0045】
本明細書の文脈において、「プレバイオティク」との用語は、最も広い解釈を与えられるべきであり、消化器官中の共生有益細菌の増殖及び/又は活性を刺激する、任意の非消化性物質を指すと理解される。
【0046】
本明細書の文脈において、「食物」、「食品類」、「飲料」、又は「飲料類」との用語は、これらに限定されないが、健康食品及び健康飲料、機能性食品及び機能性飲料、並びに特定の健康用途のための食品及び飲料を含む。本発明のそのような食品及び飲料がヒト以外の対象に使用される場合、これらの用語は家畜飼料を含むよう用いられ得る。
【0047】
本明細書では、
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を投与を必要とする対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患、又は炎症性腸疾患の少なくとも1つの症状を治療するための方法が提供される。
【0048】
また、本明細書では、
(i)免疫抑制剤及びアミノサリチラート(aminosalicylate)から選択される化合物、並びに
(ii)ラクトバチルス・ブチネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lactobacillus zeae)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・パラファラギニス(Lactobacillus parafarraginis)、及びラクトバチルス・ディオリヴォランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される1又は複数のラクトバチルス(Lactobacillus)種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液
の有効量を炎症性腸疾患を患う対象に投与することを含む、
炎症性腸疾患を患う対象において1又は複数の炎症性サイトカインの発現を減少させる方法が提供される。
【0049】
本開示の方法が関連する炎症性腸疾患は、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、虚血性大腸炎、腸炎、抗生物質起因性出血性大腸炎(AAHC)、顕微鏡的大腸炎、及び回腸のう炎から選択されてもよい。特定の実施形態では、炎症性腸疾患は、潰瘍性大腸炎及びクローン病から選択される。潰瘍性大腸炎は、急性潰瘍性大腸炎であってもよく、慢性潰瘍性大腸炎であってもよい。
【0050】
炎症性腸疾患に関連する少なくとも1つの症状は、例えば、下痢、不十分な便の硬さ、便潜血の存在、腹痛、小腸、大腸、又は結腸の上皮層の潰瘍形成、又は炎症性腸疾患を患っていない個人において観察される発現のレベルに対する1又は複数の炎症性サイトカインの発現上昇を含む、臨床的症状又は生理学的症状であってもよい。当業者は、本開示の範囲がこれらの例示的な症状を参照することにより限定されるべきではなく、本開示に包含されることになる炎症性腸疾患の他の症状が存在することを容易に認識するであろう。
【0051】
本開示の実施形態に従ってその発現が低下し得る炎症性サイトカインとしては、これらに限定されないが、IL-6及びIL-1などのインターロイキン、KC-GRO(ケラチノサイト走化性因子/ヒト成長調節性癌遺伝子)、並びにTNFαが挙げられる。
【0052】
炎症性大腸炎を患っている対象における1又は複数の炎症性サイトカインの発現を低下させる方法である本願開示の実施形態において、観察される低下は、前記処置を行っていない対象において観察される炎症性サイトカインの発現レベルに対するものである。そのような低下は、炎症性サイトカインの発現レベルの正常化を含んでいてもよい。
【0053】
本開示の方法は、炎症性大腸炎に関連する炎症を抑制してもよい。「抑制する(inhibit)」との用語及びその変形、例えば、「抑制(inhibition)」、「抑制する(inhibits)」、「低下させる(reduces)」、及び「低下する(reducing)」などは、炎症性大腸炎に関連する炎症の重症度の改善(すなわち、低下)を意味するために、本明細書において互換的に使用される。
【0054】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリヴォランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液と組み合わせた、免疫抑制剤又はアミノサリチラートの投与を利用する。本明細書に例示されるように、通常、免疫抑制剤又はアミノサリチラートと前記1又は複数のラクトバチルス種との組み合わせは、相乗的な組み合わせである。
【0055】
特定の実施形態では、免疫抑制剤は、カルシニューリン阻害剤、チオプリン、TNF阻害剤、又はJAK阻害剤であってもよい。例示的なカルシニューリン阻害剤としては、これらに限定されないが、シクロスポリンA、タクロリムス、及びこれらの類似体が挙げられる。例示的なチオプリンとしては、これらに限定されないが、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びこれらの類似体が挙げられる。例示的なTNF阻害剤としては、これらに限定されないが、アダリムマブ、インフリキシマブ、ナタリズマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ、及びこれらの後発生物製剤などのモノクローナル抗体が挙げられるが、エタネルセプトは含まれない。特定の実施形態では、アミノサリチラートは、5-アミノサリチル酸(メサラジン)若しくはスルファサラジン、又はこれらの類似体である。JAK阻害剤は、選択的阻害剤であってもよく、非選択的阻害剤であってもよく、例えば、JAK1阻害剤、JAK2阻害剤、JAK1/JAK2阻害剤、JAK3阻害剤、又はTYK2阻害剤であってもよい。例示的なJAK阻害としては、これらに限定されないが、トファシチニブ、バリシチニブ、ウパダシチニブ、ルキソリチニブ、オクラシチニブ、ペフィシチニブ、フィルゴチニブ、フェドラチニブ、デュークラバシチニブ、及びアブロシチニブが挙げられる。
【0056】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤又はアミノサリチラートは、炎症性大腸炎の治療において、単独の治療楽として使用された場合に、少なくとも部分的効果を有することが知られているものである。
【0057】
例示的な実施形態では、前記化合物は、カルシニューリン阻害剤(任意にシクロスポリンA)、TNF阻害剤(任意にアダリムマブ)、JAK阻害(任意にトファシチニブ)、及び5-アミノサリチル酸から選択される。
【0058】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリヴォランスから選択される1又は複数のラクトバチルス種、及び/又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液の投与を利用する。分類学的な不一致及び不確実性の観点から、ラクトバチルス・ゼアエは、他ではラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)と呼ばれることもある。しかしながら、本開示の目的のため、ラクトバチルス・ゼアエの命名が保持される。
【0059】
以下の説明において、ラクトバチルス種、又はラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清若しくは無細胞培養濾液の投与の文脈において、あるいはこれらを含む組成物の文脈において、「ラクトバチルス」との用語は、本明細書で定義された特定のラクトバチルス種自体のみではなく、本明細書で定義された特定のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液もより広く指す。特定の実施形態においてラクトバチルス種自体が投与される場合、細胞は生殖的に生存可能である。
【0060】
本明細書で用いられる「培養物」との用語は、液体培養物及びプレート培養物の両方を指す。本明細書で用いられる「培養する」は、様々な種類の培地上又は培地中での生物の繁殖を指す。「純粋な」培養物は、他の種又は型の非存在下で増殖する生物の集団である。種又は株の「実質的に純粋な培養物」は、所望の種又は株以外の他の微生物を実質的に含んでいない培養物を指す。言い換えれば、実質的に純粋な培養物は、微生物混入物及び望ましくない化学混入物を含み得る混入物を実質的に含んでいない。投与される培養物は、例えば、定常期又は対数期まで、任意に、初期対数期、中期対数期、又は後期対数期まで培養された細胞を含んでいてもよい。同様に、投与される培養上清又は無細胞培養濾液は、例えば、定常期又は対数期まで、任意に、初期対数期、中期対数期、又は後期対数期まで培養された細胞から調製されてもよい。
【0061】
無細胞培養濾液は、当業者に周知の任意の方法を用いて調製されてもよい。例示のみの目的で、本明細書に開示される1又は複数のラクトバチルス種を、傾斜寒天培地から適切な栄養培地に播種して後期対数期まで増殖させてもよい。液体培養物をフィルターに通すことにより細菌細胞を回収してもよく、上清(「培養濾液」)を、例えば0.2μmフィルターを通して、フィルター滅菌して残存する細胞を除去してもよい。次に、培養濾液を、凍結乾燥又はフリーズドライして、必要に応じて、脱イオン水中に、濃縮形態で再構築してもよい。次に、培養濾液を、フィルター濾過して、使用のための適切な濃度に希釈することができる。他の例では、無細胞濾液は、フリーズドライ又は凍結乾燥を伴わずに、滅菌水中に希釈(例えば、10分の1)され得る。当業者は、無細胞培養濾液又は培養上清とみなされるためには、培養物から全ての生存細胞を除去する必要はなく、むしろ、濾液又は上清は、実質的に又は大部分が、培養された細胞を含まないことで十分であることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、無細胞培養濾液及び培養上清との用語は、本明細書において互換的に使用されてもよい。任意に、培養上清は、1又は複数の濾過ステップがないことにより、無細胞培養濾液と異なっていてもよい。つまり、培養上清は、例えば、定常期又は対数期まで、任意に、初期対数期、中期対数期、又は後期対数期まで培養された培養物を遠心分離することにより調製されてもよい。
【0062】
本開示の方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラピ、ラクトバチルス・パラファラギニス、及びラクトバチルス・ディオリヴォランスのうちの任意の2種、3種、4種、5種、又は6種全てのラクトバチルス種、又は前記ラクトバチルス種のうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全てが培養された培地に由来する培養上清若しくは無細胞培養濾液の投与を含んでいてもよい。そのような実施形態では、細菌は別々に培養されてもよく、一緒に培養されてもよい。したがって、投与は、本明細書に記載されるラクトバチルス種のうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全ての組み合わせを含む組成物の投与を含む。同様に、前記ラクトバチルス種のうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全てが培養された培地に由来する培養上清又は無細胞培養濾液が投与される場合、培養上清又は無細胞培養濾液は、複数のラクトバチルス種の個々の培養物に由来しており、前記培養上清又は無細胞培養濾液が投与前に組み合わされてもよく、あるいは、本明細書に記載されるラクトバチルス種のうちの2種、3種、4種、5種、又は6種全ての混合培養物に由来してもよい。
【0063】
例示的な実施形態では、本開示の方法は、ラクトバチルス・ブチネリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエの組み合わせ、又はこれらの培養上清又は無細胞培養濾液の投与を含む。
【0064】
ラクトバチルス・ブチネリは、WO2013/063658に以前記載された、受託番号V11/022946として入手可能なラクトバチルス・ブチネリLb23であってもよい。ラクトバチルス・ブチネリは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31293としてブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・ブチネリSVT 06B1(別の名称SVT-23により言及されることもある)であってもよい。
【0065】
ラクトバチルス・パラカゼイは、WO2014/172758に以前記載された(「T9」株として言及される)、受託番号V12/022849として入手可能なラクトバチルス・パラカゼイLp9であってもよい。ラクトバチルス・パラカゼイは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31290としてブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・パラカゼイSVT 04P1(別の名称SVT-09により言及されることもある)であってもよい。
【0066】
ラクトバチルス・ゼアエは、WO2013/063658に以前記載された、受託番号V11/022948として入手可能なラクトバチルス・ゼアエLz26であってもよい。ラクトバチルス・ゼアエは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31295としてブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・ゼアエSVT 08Z1(別の名称SVT-26により言及されることもある)であってもよい。
【0067】
ラクトバチルス・ラピは、WO2013/063658に以前記載された、受託番号V11/022947として入手可能なラクトバチルス・ラピLr24であってもよい。ラクトバチルス・ラピは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31294としてブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・ラピSVT 07R1(別の名称SVT-24により言及されることもある)であってもよい。
【0068】
ラクトバチルス・パラファラギニスは、WO2013/063658に以前記載された、受託番号V11/022945として入手可能なラクトバチルス・パラファラギニスLp18であってもよい。ラクトバチルス・パラファラギニスは、ベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31292として2019年2月27日にブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・パラファラギニスSVT 05P2(別の名称SVT-18により言及されることもある)であってもよい。
【0069】
ラクトバチルス・ディオリヴォランスは、WO2014/172758に以前記載された(「N3」株として言及される)、受託番号V12/022847として入手可能なラクトバチルス・ディオリヴォランスLd3であってもよい。ラクトバチルス・ディオリヴォランスは、2019年2月27日にベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31287としてブタペスト条約に従って寄託されたラクトバチルス・ディオリヴォランスSVT 01D1(別の名称SVT-03により言及されることもある)であってもよい。
【0070】
ラクトバチルス細菌自体が投与される場合、本開示の方法にしたがって投与される個々のラクトバチルス種の濃度は、適用される個々の種の同一性及び数、治療される炎症性大腸炎の正確な性質及び重症度、組成物が投与される形態、又はそれが投与される手段を含む様々な要因に依存することになる。いずれの所与の場合についても、適切な濃度は、日常的な実験のみを用いて当業者により決定されてもよい。例示のみの目的で、ラクトバチルス種の濃度、又は混合物の場合は存在している各々の種の濃度は、約1×102cfu/ml~約1×1012cfu/mlであってもよく、約1×103cfu/ml、約2.5×103cfu/ml、約5×103cfu/ml、1×104cfu/ml、約2.5×104cfu/ml、約5×104cfu/ml、1×105cfu/ml、約2.5×105cfu/ml、約5×105cfu/ml、1×106cfu/ml、約2.5×106cfu/ml、約5×106cfu/ml、1×107cfu/ml、約2.5×107cfu/ml、約5×107cfu/ml、1×108cfu/ml、約2.5×108cfu/ml、約5×108cfu/ml、1×109cfu/ml、約2.5×109cfu/ml、又は約5×109cfu/ml、約1×1010cfu/ml、約1.5×1010cfu/ml、約2.5×1010cfu/ml、約5×1010cfu/ml、約1×1011cfu/ml、約1.5×1011cfu/ml、若しくは約1×1012cfu/mlであってもよい。
【0071】
本開示では、本明細書に記載されるラクトバチルス種のバリアントの使用も意図されている。本明細書で用いられる場合、「バリアント」との用語は、本明細書で開示及び例示される種の天然のバリアント及び変異体及び特別に開発されたバリアント及び変異体を指す。バリアントは、炎症症状の治療又は予防に関して同様の有利な特性を有しているのであれば、本明細書に例示される具体的な種と同じ識別可能な生物学的特徴を有していてもよく、有していなくてもよい。本明細書に例示されるバリアントを調製するための適切な方法の実例となる例としては、これらに限定されないが、挿入性エレメント若しくはトランスポゾンにより、又は相同組換えにより媒介される技術などの遺伝子組み込み技術、遺伝子を改変する、挿入する、欠失させる、活性化させる、又はサイレンシングするための他の組換えDNA技術、種内プロトプラスト融合、紫外線若しくはX線の放射による、又は化学変異原、例えばニトロソグアニジン、メチルメタンスルホン酸、及びナイトロジェンマスタードなどによる処理による突然変異誘発、及びバクテリオファージ媒介性形質導入が挙げられる。適切で適用可能な方法は、当業者に周知であり、例えば、J. H. Miller, Experiments in Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1972); J. H. Miller, A Short Course in Bacterial Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1992); 及びとりわけJ. Sambrook, D. Russell, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (2001)に記載されている。
【0072】
本明細書で用いられる「バリアント」との用語はまた、本明細書に記載されるラクトバチルス種の系統学的に近縁の種である細菌株、並びにrRNA遺伝子、伸長因子遺伝子、開始因子遺伝子、RNAポリメラーゼサブユニット遺伝子、DNAジャイレース遺伝子、熱ショックタンパク質遺伝子、及びrecA遺伝子などの系統学的に情報価値のあるマーカーの1又は複数で本明細書に記載される種と実質的な配列同一性を有する菌株も包含する。例えば、本明細書において意図されている「バリアント」菌株の16S rRNA遺伝子は、本明細書に開示される菌株と約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は約99%の配列同一性を有していてもよい。
【0073】
本明細書に記載されるラクトバチルス種、及びその組み合わせ、又は培地に由来する培養上清若しくは無細胞培養濾液は、通常、組成物の形態で本開示に従って投与される。種の組み合わせ、又は複数の種の培養に由来する培養上清若しくは無細胞培養濾液の態様において、当業者は投与される種、培養上清、又は培養濾液のそれぞれは、同じ組成物中に含まれている必要がないことを理解するであろう。投与が独立している場合、投与は順次であってもよく、同時であってもよい。
【0074】
同様に、免疫抑制剤又はアミノサリチラートは、1又は複数のラクトバチルス種、又は培養上清若しくは無細胞培養濾液と同じ組成物で投与されてもよく、又は異なる組成物で投与されてもよい。免疫抑制剤又はアミノサリチラートが異なる組成物中に存在する場合、これらの組成物は、順次投与されてもよく、同時に投与されてもよい。
【0075】
本開示に従って使用するための組成物は、関連する構成成分を予め混合し、結果として生じる混合物を対象への投与に適した投与形態に配合することにより調製されてもよい。したがって、組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、賦形剤(excipient)、及び/又は補助剤(adjuvant)を含んでいてもよい。担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤は、組成物の他の構成成分と適合する点において「許容可能」でなければならず、組成物を投与される対象に対して有害であってはならない。投与のための適切な組成物、及び局所投与、経口投与、又は舌下投与のために配合される組成物中での使用に適した担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤を調製するための方法は、当業者に周知である。例示的な実施形態において、組成物は、(例えば、遠心分離及び/又は濾過により)細胞培養物から過剰な培地を除去した後に濃縮された微生物生物学的薬剤株の1又は複数を含んでいてもよい。そのため、組成物は、残存する食品グレードの培地中に微生物生物学的薬剤株の1又は複数を含んでいてもよい。あるいは、組成物は、無菌等張食塩水又は3%スクロースを含む担体を用いて配合されてもよい。
【0076】
組成物は、任意の適当な又は適切な経路により投与されてもよく、これらに限定されないが、経口、舌下、頬側、直腸内、局所、鼻腔内、眼球内、経粘膜、腸管内、経腸、筋肉内、皮下、髄内、髄腔内、脳室内、脳内、膀胱内、静脈内、又は腹腔内を含む様々な経路により投与されてもよい。適切な経路は、例えば、治療される炎症性腸疾患の性質及び重症度に依存することがある。免疫抑制剤又はアミノサリチラートが、1又は複数のラクトバチルス種、又は培養上清若しくは無細胞培養濾液とは異なる組成物で投与される場合、組成物の投与経路は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0077】
一例として、1又は複数のラクトバチルス種、又は前記1又は複数のラクトバチルス種が培養された培地に由来する培養上清若しくは無細胞培養濾液は、経口投与されてもよく、アミノサリチラートを含む組成物は、経口投与されてもよく、免疫抑制剤を含む組成物は、経口投与されてもよく、注射により投与されてもよい。例えば、トファシチニブを含む組成物が経口投与されてもよく、アダリムマブを含む組成物が皮下注射により投与されてもよい。
【0078】
したがって、本開示の方法は、同じ組成物又は異なる組成物で記載される組み合わせの構成成分の、同じ経路又は異なる経路による投与を意図している。本開示の方法の例示的実施形態は、1又は複数のラクトバチルス株、及びCsA又はトファシチニブなどの免疫抑制剤の経口投与を含み、前記ラクトバチルス株及びCsA又はトファシチニブは、同じ組成物中又は異なる組成物中である。本開示の方法の例示的実施形態は、1又は複数のラクトバチルス株及びASAの経口投与を含み、ラクトバチルス株及びASAは、同じ組成物中又は異なる組成物中である。本開示の方法の例示的実施形態は、1又は複数のラクトバチルス株の経口投与、及びアダリムマブなどの免疫抑制剤の注射による投与、任意に、皮下注射による投与を含む。
【0079】
組成物は、本開示に従って任意の適切な形態、通常は、固体形態又は液体形態で、投与されてもよい。例えば、組成物は、当業者に周知の方法又は技術を用いて、錠剤、トローチ剤(troch)、カプセル剤、カプレット剤、エリキシル剤、懸濁液、シロップ剤、オブラート(wafer)、顆粒剤、粉末剤、ゲル剤、ペースト剤、溶液、クリーム剤、スプレー剤、懸濁液、可溶性分包(sachet)、トローチ剤(lozenge)、発泡錠剤、チュアブル錠剤、及び多層錠剤などに配合されてもよい。経口投与のために、ラクトバチルス又は組成物は、様々な飲料、食品、栄養補助食品、栄養補給剤、食品添加物、医薬品、市販製剤、及び動物用飼料補給剤中に適当に取り込まれてもよい。局所適用について、適切な溶媒(vehicle)としては、これらに限定されないが、ローション剤、リニメント剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、フォーム剤、スプレー剤、及び粉末剤が挙げられる。また、組成物は、経皮パッチ、硬膏(plaster)、及び包帯又はハイドロコロイド被覆材などの創傷被覆材中に、通常は液体又は半液体の形態で、含浸されてもよい。
【0080】
当業者に理解されるように、薬剤的に許容される担体又は希釈剤の選択は、投与の経路、並びに症状の性質及び重症度、及び治療される対象に依存することになる。特定の担体又は輸送系、及び投与経路は、当業者により容易に決定され得る。当業者は、従来のアプローチを用いて本開示の方法において有用である適当な剤型を容易に決定することができるであろう。
【0081】
例えば、本開示の組成物は、許容可能な希釈剤(生理食塩水又は滅菌水など)を含有する液体の形態で、投与用に配合されてもよく、所望の質感、稠度、及び粘度を外観を付与するための、許容可能な希釈剤又は担体を含有するローション剤、クリーム剤、又はゲル剤の形態であってもよい。許容可能な希釈剤及び担体は当業者に周知であり、これらに制限されないが、エトキシ化界面活性剤及び非エトキシ化界面活性剤、脂肪アルコール、脂肪酸、炭化水素油(パーム油、ヤシ油、及び鉱物油)、カカオバターワックス、シリコーンオイル、pHバランサー、セルロース誘導体、非イオン性有機塩基又は非イオン性無機塩基などの乳化剤、保存剤、ろうエステル、ステロイドアルコール、トリグリセリドエステル、レシチン及びセファリンなどのリン脂質、多価アルコールエステル、脂肪アルコールエステル、親水性ラノリン誘導体、及び親水性ミツロウ誘導体が挙げられる。
【0082】
ラクトバチルスは、当該技術分野で周知の薬剤的に許容可能な担体を用いて、経口投与に適した投与量に容易に配合され得る。これらの担体は、糖類、デンプン、セルロース及びその誘導体、麦芽、ゼラチン、タルク、硫酸カルシウム、植物油、合成油、ポリオール、アルギン酸、リン酸緩衝溶液、乳化剤、等張食塩水、及び発熱性物質除去水から選択されてもよい。
【0083】
本開示に従った経口使用のための適切な担体、希釈剤、賦形剤、及び補助剤のいくつかの例としては、液体パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、及びレシチンが挙げられる。さらに、これらの経口製剤は、適切な香味料及び着色剤を含んでいてもよい。カプセル剤の形態で使用される場合、カプセルは、崩壊を遅延させるモノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンなどの化合物で被覆されてもよい。補助剤としては、通常、軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤、及び緩衝剤が挙げられる。注射可能な溶液又は注射可能な懸濁液としての投与について、非毒性非経口の許容可能な希釈剤又は担体としては、リンゲル液、等張食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、及び1,2プロピレングリコールが挙げられる。
【0084】
経口投与のための固体は、ヒト及び動物の薬務において許容可能なバインダー、甘味剤、崩壊剤、希釈剤、香料、被覆剤、保存剤、潤滑剤、及び/又は時間遅延剤を含んでいてもよい。適切なバインダーとしては、アカシアゴム、ゼラチン、コーンスターチ、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、又はポリエチレングリコールが挙げられる。適切な甘味剤としては、ショ糖、乳糖、ブドウ糖、アスパルテーム、又はサッカリンが挙げられる。適切な崩壊剤としては、コーンスターチ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、キサンタンガム、ベントナイト、アルギン酸、又は寒天が挙げられる。適切な希釈剤としては、乳糖、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、又は第二リン酸カルシウムが挙げられる。適切な香味剤としては、ペパーミント油、ウインターグリーン油、チェリー香料、オレンジ香料、又はラズベリー香料が挙げられる。適切な被覆剤としては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらのエステルのポリマー又はコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラック、又はグルテンが挙げられる。適切な保存剤としては、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α-トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、又は重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。適切な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又はタルクが挙げられる。適切な時間遅延剤としては、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリンが挙げられる。
【0085】
経口投与のための液体形態は、上記の薬剤に加えて、液体担体を含んでいてもよい。適切な液体担体としては、水、オリーブ油などの油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、ベニバナ油、ラッカセイ油、ヤシ油、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリド、又はこれらの混合物が挙げられる。経口投与のための懸濁液は、分散剤及び/又は懸濁剤をさらに含んでいてもよい。適切な懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、又はアセチルアルコールが挙げられる。適切な分散剤としては、レシチン、ステアリン酸、ポリオキシエチレンソルビトールモノ(又はジ)-オレエート、-ステアレート、又は-ラウレート、及びポリオキシエチレンソルビタンモノ(又はジ)-オレエート、-ステアレート、又は-ラウレートなどの脂肪酸のポリオキシエチレンエステルが挙げられる。経口投与のための乳化液は、1又は複数の乳化剤をさらに含んでいてもよい。適切な乳化剤としては、上記に例示される分散剤、又はグアーガム、アカシアゴム、トラガカントゴムなどの天然ゴムが挙げられる。
【0086】
適切な非経口投与可能な組成物の調製方法は当業者に周知となり、例えば、本明細書に参照により取り込まれるRemington's Pharmaceutical Science, 15th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa.により詳細に記載される。
【0087】
局所投与用に配合される組成物について、薬剤的に許容可能な希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水;生理食塩水;ピーナッツ油、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ピーナッツ油など、ベニバナ油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油、又はヤシ油などの野菜をベースとした油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、及びメチルフェニルポリシロキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;液体パラフィン、軟パラフィン、又はスクアランなどの鉱物油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;低級アルカノール、例えば、エタノール又はイソプロパノール;低級アラアルカノール(aralkanol);低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、又はグリセリン;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、又はオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラギーナン;トラガカントゴム又はアカシアゴム、及びワセリンである。
【0088】
他の実施形態では、組成物は、ポビドン又はプロピレングリコールなどの懸濁剤及び/又は保湿剤、及び水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(TAE)、又はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)など、組成物の粘度を調整するための中和剤をさらに含んでいてもよい。
【0089】
本開示の組成物は、例えば、1週間に1回又はそれ以上の回数で、任意に、例えば、1週間に1回、1日おきに1回、1日に1回、1日に2回、又は1日に3回、治療又は予防される症状、症状の重症度、及び所望の結果に応じて、投与されてもよい。対象による投与の継続期間も、治療又は予防される症状、症状の重症度、及び所望の結果に応じて変化することになる。対象により投与される組成物の量は、投与される微生物の同一性、治療又は予防される症状の性質及び重症度、対象の年齢及び全体的な健康、及び所望の結果を含む要因に応じて変化することになる。適切な投与計画は、当業者により容易に決定され得る。
【0090】
例示的な実施形態では、約105~1012cfu/mlの最終濃度で約1ml~約25mlのラクトバチルス種の液体製剤が、1日に1回、1日に2回、又はより頻回に、対象に投与されてもよい。液体製剤の容量は、例えば、約1ml、約2ml、約3ml、約4ml、約5ml、約6ml、約7ml、約8ml、約9ml、約10ml、約11ml、約12ml、約13ml、約14ml、約15ml、約16ml、約17ml、約18ml、約19ml、約20ml、約21ml、約22ml、約23ml、約24ml、又は約25mlである。
【0091】
免疫抑制剤又はアミノサリチラートと1又は複数のラクトバチルス種又は培養上清若しくは無細胞培養濾液との組み合わせは、1又は複数の他の治療剤、例えば、これらに限定されないが、抗生物質、抗菌剤、防腐剤、麻酔剤、抗炎症剤、免疫抑制薬、並びにステロイド及びNSAIDなど、炎症症状の治療に適用される他の治療薬などと併用して投与されてもよい。本明細書に記載される組成物及び本開示の対象に関し、そのような追加の薬剤の投与は、同じ時間であってもよく、異なる時間であってもよく、すなわち、同時であってもよく、順次であってもよく、同じ経路で投与されてもよく、異なる経路で投与されてもよい。
【0092】
適用され得る追加の抗炎症剤の非限定的な例としては、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ハロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフロラゾン二酢酸エステル、フルオシノイド、ハルシノイド、アムシノニド、デスオキシメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾンフロ酸エステル、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、フルランドレノリド、トリアムシノロンアセトニド、モメタゾンフロ酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、デソニド、フルオシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、プレドニカルベート、トリアムシノロンアセトニド、デソニド、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンアセポン酸エステル、ヒドロコルチゾンブテプラート、メチルプレドニゾロンアセポン酸エステル、モメタゾンフロ酸エステル、及び
プレドニカルベートなどのステロイド化合物及び非ステロイド化合物が挙げられる。適切な非ステロイド抗炎症化合物の非限定的な例としては、インドメタシン、ケトプロフェン、フェルビナク、ジクロフェナク、イブプロフェン、ピロキシカム、ベンジダミン、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、サルサラート、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、ナブメトン、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、フィロコキシブ、及びリコフェロン、半合成グリコサミノグリコサンエーテル(semi-synthetic glycosaminoglycosan ether)、フラバノール、フラバノイド、イソフラボン、及び誘導体が挙げられる。抗炎症剤は、例えば、シクロスポリンA、6-チオグアニン、スルファサラジン、メサラミン(5-アミノサリチル酸)、エタネルセプト、プレドニゾロン、又はバルサラジドなどのサイトカインシグナル伝達の抑制因子であってもよい。
【0093】
抗感染剤は、対象における感染を治療する任意の薬剤であってもよい。特定の実施形態では、抗感染剤は、アポトーシス小体を介して、細胞間を、全体として又は部分的に伝達(transfer)されることが可能な感染性生物を殺傷するか増殖を阻害することが可能である。適切な抗感染剤としては、これらに限定されないが、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗原虫剤、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
例示的な抗ウイルス剤としては、これらに限定されないが、アバカビル硫酸塩、アシクロビル(特に、アシクロビルナトリウム)、アデホビル、アマンタジン(特に、アマンタジン塩酸塩)、アンプレナビル、アンプリゲン(ampligen)、アタザナビル、シドホビル、ダルナビル、デラビルジン(特に、デラビルジンメシル酸塩)、ジダノシン、ドコサノール、ドルテグラビル、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エルビテグラビル、エンフビルチド、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン(特に、ホミビルセンナトリウム)、ホスカルネット(特に、ホスカルネットナトリウム)、ガンシクロビル、イバシタビン、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル(特に、インジナビル硫酸塩)、イノシンプラノベクス、ラミブジン、ロピナビル、マラビロク、メチサゾン、モロキシジン、ネルフィナビル(特に、ネルフィナビルメシル酸塩)、ネビラピン、ニタゾキサニド、オセルタミビル(特に、オセルタミビルリン酸塩)、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、ラルテグラビル、リバビリン、リマンタジン(特に、リマンタジン塩酸塩)、リトナビル、サキナビル(特に、サキナビルメシル酸塩)、ソホスブビル、スタブジン、テラプレビル、テノホビル、チプラナビル、トリフルリジン、トロマンタジン、ウミフェノビル(umifenovir)、バラシクロビル(特に、バラシクロビル塩酸塩)、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、並びにこれらの薬剤的に許容可能な塩及び組み合わせが挙げられる。
【0095】
例示的な抗菌剤としては、これらに限定されないが、キノロン(例えば、アミフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、フルメキン、ロメフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、オキソリニン酸、ペフロキサシン、ロソクサシン、テマフロキサシン、トスフロキサシン、スパルフロキサシン、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン、モキシフロキサシン、ゲミフロキサシン、及びガレノキサシン)、テトラサイクリン、グリシルサイクリン、及びオキサゾリジノン(例えば、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、チゲサイクリン;リネゾリド、エペレゾリド)、グリコペプチド、アミノグリコシド(例えば、アミカシン、アルベカシン、ブチロシン、ジベカシン、フォーチミシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ミノマイシン、ネチルマイシン、リボスタマイシン、シソマイシン、スペクチノマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシン)、β-ラクタム(例えば、イミペネム、メロペネム、ビアペネム、セファクロル、セファドロキシル、ファマンドール、セファトリジン、セファトリジン、セファゼドン、セファゾリン、セフィキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフォニシド、セフォペラゾン、セフォラニド、セフォタキシム、セフォチアム、セフピミゾール、セフピラミド、セフポドキシム、セフスロジン、セフタジジム、セフテラム、セフテゾール、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフゾナム、セファセトリル、セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチン、セファピリン、セフラジン、セフメタゾール、フォキシチン、セフォテタン、アズトレオナム、カルモナム、フロモキセフ、モキサラクタム、アムジノシリン、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシリン、ベンジルペニシリン、カルフェシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、メチシリン、メズロシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ピペラシリン、スルベニシリン、テモシリン、チカルシリン、セフジトレン、SC004、KY-020、セフジニル、セフチブテン、FK-312、S-1090、CP-0467、BK-218、FK-037、DQ-2556、FK-518、セフォゾプラン、ME1228、KP-736、CP-6232、Ro 09-1227、OPC-20000、LY206763)、リファマイシン、マクロライド(例えば、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシン、オレアンドマイシン、ロキタマイシン、ロサラマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン)、ケトライド(例えば、テリスロマイシン、セスロマイシン)、クーママイシン、リンコサミド(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン)、クロラムフェニコール、クロファジミン、シクロセリン、ダプソン、エタンブトール塩酸塩、イソニアジド、ピラジナミド、リファブチン、リファンピン、リファペンチン、及びストレプトマイシン硫酸塩が挙げられる。
【0096】
例示的な抗原虫剤としては、これらに限定されないが、アトバコン、メトロニダゾール塩酸塩を含むメトロニダゾール、ペンタミジンイセチオン酸塩を含むペンタミジン、クロロキン塩酸塩及びクロロキンリン酸塩を含むクロロキン、ドキシサイクリン、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、メフロキン塩酸塩を含むメフロキン、プリマキンリン酸塩を含むプリマキン、ピリメタミン、スルファドキシンと併用されるピリメタミン、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、クリンダマイシン、キニーネ、キニジン、スルファジアジン、アーテメータ、ルメファントリン、アルテスナート、ニタゾキサニド、スラミン、メラルソプロール、エフロルニチン、ニフルチモックス、スチボグルコン酸ナトリウムを含むスチボグルコナート、リポソームアムホテリシンBを含むアンホテリシンB、ミルテホシン、パロモマイシン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、フルコナゾール、並びにこれらの薬剤的に許容可能な塩及び組み合わせが挙げられる。
【0097】
例示的な免疫抑制薬としては、これらに限定されないが、例えば、ブデソニド、プレドニゾン、及びプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;例えば、シロリムス及びエベロリムスなどのmTOR阻害剤;及び、例えば、セルトリズマブ、ウステキヌマブ、及びベドリズマブなどのモノクローナル抗体、並びにこれらの後発生物製剤が挙げられる。
【0098】
例示的な実施形態では、本明細書に記載される1又は複数のラクトバチルス種は微生物生物学的製剤組成物の形態で提供及び投与される。そのような組成物は、1又は複数の追加の微生物、例えば、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ビフィドバクテリウム・ブレベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィドゥム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)、及びサッカロマイセス・ブラウディ(Saccharomyces boulardii)などをさらに含んでいてもよい。
【0099】
微生物生物学的製剤組成物は、1又は複数のプレバイオティク成分を含んでいてもよい。適切なプロバイオティクスとしては、例えば、ポリデキストロース、イヌリン、フルクトオリゴ糖(FOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ガラクトオリゴ糖(GOS)、マンナンオリゴ糖、タンパク質をベースとしたモエギイガイ抽出物、並びに様々なプレバイオティク含有食品、例えば、生のタマネギ、生のネギ、生のチコリーの根、及び生のアーティチョークが挙げられる。ある実施形態では、プレバイオティックはフルクトオリゴ糖である。
【0100】
本明細書に記載されるラクトバチルス種を含む組成物は、上述の投与形態のいずれかを含む、適切な形態で投与されてもよい。微生物生物学的医薬製剤組成物は、任意の種類の飲料若しくは食品(例えば、水、フルーツジュース、又はヨーグルト)中への使用者による混合に適した、又は飲料若しくは他の食品が存在しない場合は粉末としての消費に適した粉末形態で使用者に提供されてもよい。したがって、微生物生物学的製剤組成物は、様々な食品及び/又は飲料、栄養補給食品、サプリメント、食品添加物、及び市販製剤中に適当に取り込まれ得る。食品又は食品添加物は、粉末などの固体形態であってもよく、又は液体形態であってもよい。飲料又は食品の種類の具体的な例としては、これらに限定されないが、水をベースとした飲料、牛乳をベースとした飲料、ヨーグルトをベースとした飲料、その他の乳製品をベースとした飲料、豆乳又はオーツミルクなどの代用乳をベースとした飲料、又はジュースをベースとした飲料、水、ソフトドリンク、炭酸飲料、及び栄養飲料(飲料の濃縮ストック及びそのような飲料を調製するための乾燥粉末を含む);クラッカー、パン、マフィン、ロールケーキ、ベーグル、ビスケット、シリアル、ミューズリーバー及び健康食品バーなどのバーなどの焼き菓子、ドレッシング、ソース、カスタード、ヨーグルト、プリン、包装済みの冷凍食品、スープ、及び菓子類が挙げられる。
【0101】
本明細書におけるいずれの先行出版物(又はそれから派生する情報)に対する言及又は知られているいずれの事項に対する言及も、先行出版物又は既知の事項が本明細書が関連する試みの範囲における一般的知識の一部を形成することの同意若しくは承認、又はいずれの形態の提案としても見なされず、見なされるべきではない。
【0102】
本開示は以下の具体例を参照して説明されるが、具体例は本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0103】
以下の実施例は本発明の例示であり、本明細書の記載全体の開示の一般的な性質をいかなる方法によっても限定するものと解釈されるべきではない。
【0104】
実施例1.DSS誘発大腸炎モデル:シクロスポリンA及び微生物生物学的製剤
シクロスポリンA(CsA)は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療において臨床的に利用される免疫抑制剤である。本願の試験では、発明者らは、マウスにおける急性大腸炎のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発モデルを用いて、CsAの有効性を(i)微生物生物学的製剤菌株であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)の組み合わせ;並びに(ii)CsAと微生物生物学的製剤であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)とを含む併用療法と比較した。
【0105】
DSSは、MP BioMedicals社から入手し、室温で保存した。この試験で使用したモデルは、急性大腸炎の特に効果的なモデルであり、用いられるDSSの濃度(3%)及び投与の間の投与中止期間を設けずにDSSを8日間、毎日投与することに基づく。この計画に従って3%DSSを投与されたマウスは、大腸における潰瘍形成、浮腫、炎症、及び陰窩の喪失という明確な病理組織学的な兆候を示す(データは示さず)。
【0106】
50匹のメスのC57BL/6NTacマウスを、以下の5つの処置グループに分けた。
・グループ1:未処理(陰性対照)群。n=10。
・グループ2:3%DSS+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。・グループ3:3%DSS+1.5×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
・グループ4:3%DSS+40mg/kg用量のCsA+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。
・グループ5:3%DSS+40mg/kg用量のCsA+1.5×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
【0107】
グループ2~5のマウスは、無菌飲用水を介して、1日目~8日目に毎日、3%DSSを自由に摂取したが、グループ1の動物は、飲用水として無菌水のみの投与が継続された。DSSに加えて、グループ2の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が、1日目~7日目に毎日、1mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ3の動物は、ラクトバチルス株(1.5×1010cfu/ml)が、1日目~7日目に毎日、1mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ4の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が1mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、CsA(40mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、4mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ5の動物は、ラクトバチルス株(1.5×1010cfu/ml)が1mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、CsA(40mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、4mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。
【0108】
DSS誘発大腸炎の症状/特徴(便の硬さ及び便潜血の発生)は、1日目~8日目に生存中評価項目を測定することにより評価した。評価は、投与の1~2時間後に実施した。
【0109】
各マウスについて1日目から糞便を回収し、硬さを調べた。糞便の硬さは以下のように段階分けした。正常=0、柔らかいが形はある=1、非常に柔らかい=2、下痢=4。糞便中の便潜血を、ヘモカルトテープ試験キット(Beckman Coulter社、製造者の説明書にしたがって)を用いて検出した。便潜血についてのスコア付けは以下のようであった。陰性ヘモカルト=0、陽性ヘモカルト(ストリップ上にわずかな着色)=1、陽性ヘモカルト(ストリップ上に濃い着色)=2、目に見える量の血液=3、肉眼的な直腸出血=4。また、体重減少の割合を1日目から測定し、0(なし)、1(1%~5%)、2(5%超~10%)、3(10%超~20%)、及び4(20%超)に段階分けした。
【0110】
糞便の硬さのスコア、便潜血発生のスコア、及び体重減少のスコアをプールして、疾患状態全体の加重生存中スコア(weighted in-life score)である疾患活動性指数(DAI)を得た。
【0111】
各動物の結腸粘膜におけるサイトカインの発現の決定及び結腸の組織学的な試験に先立って、試験の完了時にマウスを安楽死させた。
【0112】
図1のAに示されるように、便潜血の発生は、処置グループ3~5のマウスにおいて、グループ2に対して有意に減少した(p<0.001)。便潜血の発生は、グループ5(CsA+ラクトバチルス株の組み合わせ)において、グループ3(ラクトバチルス株の組み合わせのみ)及びグループ4(CsAのみ)に対して著しく減少した。
図1のBに示されるように、グループ3及び4における便の硬さは、グループ2に対して改善はされたがグループ2と有意には異なっておらず、一方、グループ5における便の硬さは有意に改善された(p<0.001)。
図1のCに示されるように、処置グループ3~5において、DAIもグループ2に対して有意に改善された(p<0.05)。
【0113】
結腸粘膜サイトカインの分析により、グループ5(CsA+ラクトバチルス株の組み合わせ)におけるIL-6(p<0.001)、KC-GRO(ケラチノサイト走化性因子/ヒト成長調節性癌遺伝子)(p<0.001)、TNFα(p<0.001)、及びIL-1β(p<0.005)の発現のグループ2に対する有意な減少、並びにグループ5におけるこれらのサイトカインの発現のグループ3(ラクトバチルス株の組み合わせのみ)及びグループ4(CsAのみ)に対する大きな減少が明らかになった(
図2)。
【0114】
全体的な潰瘍の範囲、いずれかの炎症性変化に影響されたセクションの割合、正常な構造の閉塞、びらん/潰瘍形成、及び/又は陰窩膿腫を伴う重度の炎症性変化に影響されたセクションの割合、及び各結腸部分についての3つの個別のスコアの合計から計算された合計複合スコアについて、結腸試料を分析した。スコア化は、結腸試料の近位部、中間部、及び遠位部のそれぞれについて計算され、全体的な合計複合スコアにより、グループ4及び5におけるグループ2に対する統計的に有意な潰瘍形成及び炎症の減少(p<0.001)が実証された。統計的に有意なスコアの低下は、グループ3(p<0.05)及びグループ4とグループ5(p<0.001)の近位部;並びにグループ4とグループ5(p<0.001)の中間部及び遠位部について観察された(
図3)。特に、グループ5(CsA+ラクトバチルス株の組み合わせ)は、10匹中6匹のマウスにおいてDSS誘発変化のほぼ完全な解消を顕著にもたらしたので、DSS誘発性の顕微鏡的変化に対して最も重大な影響を有していた。グループ4及びグループ5における結腸の長さのグループ2に対する統計的に有意な増加もみられ(
図4)、炎症及び潰瘍形成についての合計複合スコアと関連しており、長さにおいてグループ5は最も大きな統計的有意性(p<0.001)を示した。
【0115】
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の治療において臨床的に利用される多くの治療薬(シクロスポリンA、スルファサラジン、及びプレドニゾロンを含む)が、同じ試験研究所(Charles River Laboratories(CRL))によって、本願の試験出用いられたような同様のDSS誘発腸炎モデルにおいてこれまで試験されてきた。これらの薬物はいずれも、本願試験のグループ5の処置で観察された程度の生存中疾患スコアを統計的に改善しなかった。40mg/kg及び80mg/kgのCsAは、重症度の低い2%DSSモデルにおけるDAIスコアのいくらかの減少を示したが、3%DSSモデルにおける本願のグループ5ほどの効果はなかった(データは示さず)。本願試験において得られた結果は、既存の治療と比較された場合、潰瘍性大腸炎の将来の治療における重要な進歩をもたらす。
【0116】
実施例2.DSS誘発大腸炎モデル:5-アミノサリチル酸及び微生物生物学的製剤
5-アミノサリチル酸(ASA)は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療において臨床的に利用される免疫抑制剤である。本願の試験では、発明者らは、(実施例1に記載されるように)マウスにおける急性大腸炎のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発モデルを用いて、ASAの有効性を(i)微生物生物学的製剤菌株であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)の組み合わせ;並びに(ii)ASAと微生物生物学的製剤であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)とを含む併用療法と比較した。
【0117】
50匹のメスのC57BL/6NTacマウスを、以下の5つの処置グループに分けた。
・グループ1:未処理(陰性対照)群。n=10。
・グループ2:3%DSS+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。・グループ3:3%DSS+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
・グループ4:3%DSS+75mg/kg用量のASA+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。
・グループ5:3%DSS+75mg/kg用量のASA+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
【0118】
グループ2~5のマウスは、無菌飲用水を介して、1日目~8日目に毎日、3%DSSを自由に摂取したが、グループ1の動物は、飲用水として無菌水のみの投与が継続された。DSSに加えて、グループ2の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が、1日目~7日目に毎日、1mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ3の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が、1日目~7日目に毎日、0.5mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ4の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が1mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、ASA(75mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、7.5mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ5の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が0.5mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、ASA(75mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、7.5mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。グループ5において、ASAはラクトバチルス株の1~2時間後に投与された。
【0119】
DSS誘発大腸炎の症状/特徴(便の硬さ及び便潜血の発生)は、1日目~11日目に、実施例1に記載されるような生存中評価項目を測定することにより評価した。糞便の硬さのスコア、便潜血発生のスコア、及び体重減少のスコアをプールして、疾患状態全体の加重生存中スコアである疾患活動性指数(DAI)を得た。
【0120】
図5に示されるように、ASAのみでの処置(グループ4)と比較された場合、ラクトバチルス株とASAの組み合わせ(グループ5)は、11日後に糞便の硬さ及び疾患活動性において顕著な改善がもたらされた。
【0121】
実施例3.DSS誘発大腸炎モデル:トファシチニブ及び微生物生物学的製剤
トファシチニブ(Xeljanz(登録商標)の商標で販売)は、潰瘍性大腸炎の治療のために処方される小分子JAK阻害剤である。本願の試験では、発明者らは、(実施例1に記載されるように)マウスにおける急性大腸炎のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発モデルを用いて、トファシチニブの有効性を(i)微生物生物学的製剤菌株であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)の組み合わせ;並びに(ii)トファシチニブと微生物生物学的製剤であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)とを含む併用療法と比較した。
【0122】
50匹のメスのC57BL/6NTacマウスを、以下の5つの処置グループに分けた。
・グループ1:未処理(陰性対照)群。n=10。
・グループ2:3%DSS+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。・グループ3:3%DSS+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
・グループ4:3%DSS+30mg/kg用量のトファシチニブ+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。
・グループ5:3%DSS+30mg/kg用量のトファシチニブ+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
【0123】
グループ2~5のマウスは、無菌飲用水を介して、1日目~8日目に毎日、3%DSSを自由に摂取したが、グループ1の動物は、飲用水として無菌水のみの投与が継続された。DSSに加えて、グループ2の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が、1日目~7日目に毎日、1mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ3の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が、1日目~7日目に毎日、0.5mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ4の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が1mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、トファシチニブ(30mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、3mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ5の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が0.5mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、トファシチニブ(30mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、3mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で強制経口投与された。グループ5において、トファシチニブはラクトバチルス株の1~2時間後に投与された。
【0124】
DSS誘発大腸炎の症状/特徴(便の硬さ及び便潜血の発生)は、1日目~11日目に、実施例1に記載されるような生存中評価項目を測定することにより評価した。糞便の硬さのスコア、便潜血発生のスコア、及び体重減少のスコアをプールして、疾患状態全体の加重生存中スコアである疾患活動性指数(DAI)を得た。
【0125】
図6に示されるように、トファシチニブのみでの処置(グループ4)と比較された場合、ラクトバチルス株とトファシチニブの組み合わせ(グループ5)は、11日後に糞便の硬さ及び疾患活動性において顕著な改善がもたらされた。
【0126】
実施例4.DSS誘発大腸炎モデル:アダリムマブ及び微生物生物学的製剤
アダリムマブ(Humira(登録商標)の商標で販売)は、潰瘍性大腸炎及びクローン病の治療のために処方されるモノクローナル抗体TNF阻害剤である。本願の試験では、発明者らは、(実施例1に記載されるように)マウスにおける急性大腸炎のデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発モデルを用いて、アダリムマブの有効性を(i)微生物生物学的製剤菌株であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)の組み合わせ;並びに(ii)アダリムマブと微生物生物学的製剤であるラクトバチルス・パラカゼイ(SVT 04P1)、ラクトバチルス・ブチネリ(SVT 06B1)、及びラクトバチルス・ゼアエ(SVT 08Z1)とを含む併用療法と比較した。
【0127】
50匹のメスのC57BL/6NTacマウスを、以下の5つの処置グループに分けた。
・グループ1:未処理(陰性対照)群。n=10。
・グループ2:3%DSS+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。・グループ3:3%DSS+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
・グループ4:3%DSS+3mg/kg用量のアダリムマブ+溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)。n=10。
・グループ5:3%DSS+3mg/kg用量のアダリムマブ+3.0×1010cfu/mlの濃度のSVT 04P1、SVT 06B1、及びSVT 08Z1の組み合わせ。n=10。
【0128】
グループ2~5のマウスは、無菌飲用水を介して、1日目~8日目に毎日、3%DSSを自由に摂取したが、グループ1の動物は、飲用水として無菌水のみの投与が継続された。DSSに加えて、グループ2の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が、1日目~7日目に毎日、1mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ3の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が、1日目~7日目に毎日、0.5mLの投与量で強制経口投与された。DSSに加えて、グループ4の動物は、溶媒(0.9%無菌食塩水+2.5%ショ糖)が1mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、ダリムマブ(3mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、0.3mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で皮下注射により投与された。DSSに加えて、グループ5の動物は、ラクトバチルス株(3.0×1010cfu/ml)が0.5mLの投与量で強制経口投与された1~2時間後に、アダリムマブ(3mg/kg)が、1日目~7日目に毎日、0.3mg/mLの投与濃度で、10mL/kgの投与量で皮下注射により投与された。グループ5において、アダリムマブはラクトバチルス株の1~2時間後に投与された。
【0129】
DSS誘発大腸炎の症状/特徴(便の硬さ及び便潜血の発生)は、1日目~11日目に、実施例1に記載されるような生存中評価項目を測定することにより評価した。糞便の硬さのスコア、便潜血発生のスコア、及び体重減少のスコアをプールして、疾患状態全体の加重生存中スコアである疾患活動性指数(DAI)を得た。
【0130】
図7に示されるように、アダリムマブのみでの処置(グループ4)と比較された場合、ラクトバチルス株とアダリムマブの組み合わせ(グループ5)は、11日後に糞便の硬さ及び疾患活動性において顕著な改善がもたらされた。
【0131】
寄託の詳細
本明細書において上述されるブタペスト条約に従って寄託された生物材料の詳細を示す。寄託された株は、国際出願番号PCT/AU2019/051092で以前に説明されている。要約すれば以下の通りである。
【0132】
ラクトバチルス・パラファラギニスSVT 05P2は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31292としてブタペスト条約に従って寄託された。
【0133】
ラクトバチルス・ブチネリSVT 06B1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31293としてブタペスト条約に従って寄託された
【0134】
ラクトバチルス・ゼアエSVT 08Z1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31295としてブタペスト条約に従って寄託された
【0135】
ラクトバチルス・ラピSVT 07R1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31294としてブタペスト条約に従って寄託された。
【0136】
ラクトバチルス・パラカゼイSVT 04P1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31290としてブタペスト条約に従って寄託された。
【0137】
ラクトバチルス・ディオリヴォランスSVT 01D1は、2019年2月27日に、Federal Public Planning Service Science Policy, 8, rue de la Science B-1000, Brussels, Belgiumのベルギー総合微生物収集所(BCCM)に受託番号LMG P-31287としてブタペスト条約に従って寄託された。
【国際調査報告】