(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(54)【発明の名称】量子ビットアレイ
(51)【国際特許分類】
H10B 99/00 20230101AFI20230508BHJP
H10B 61/00 20230101ALI20230508BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20230508BHJP
【FI】
H10B99/00 451
H10B61/00
H10B12/00 801
H10B12/00 671A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501331
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-15
(86)【国際出願番号】 US2021023534
(87)【国際公開番号】W WO2021194995
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522373194
【氏名又は名称】シュー, フー・チャング
【氏名又は名称原語表記】HSU, Fu-Chang
【住所又は居所原語表記】1228, Cordelia Ave., San Jose, California, 95129, US
(71)【出願人】
【識別番号】522373208
【氏名又は名称】シュー, ケビン
【氏名又は名称原語表記】HSU, Kevin
【住所又は居所原語表記】1228, Cordelia Ave., San Jose, California, 95129, US
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】シュー, フー・チャング
(72)【発明者】
【氏名】シュー, ケビン
【テーマコード(参考)】
4M119
5F083
【Fターム(参考)】
4M119BB13
4M119CC05
4M119CC10
4M119DD26
4M119DD32
4M119DD42
4M119EE22
4M119EE28
4M119EE31
4M119FF05
4M119GG01
5F083FZ10
5F083HA02
5F083HA06
5F083JA32
5F083KA01
5F083KA05
5F083LA12
5F083LA16
5F083MA06
5F083MA16
(57)【要約】
量子ビットアレイが開示される。実施形態では、量子ビットアレイは、量子ビットアレイのキュービットの動作を制御する、キュービットに結合された制御ゲート及びキュービットと隣接キュービットの間に結合された少なくとも1つのパスゲートと、ビットラインと、ビットラインを制御ゲートに接続する第1のトランジスタチャネルとを含む。アレイは、第1のトランジスタチャネルに結合された少なくとも1本のワードラインをさらに備える。少なくとも1本のワードラインは、第1のトランジスタチャネルを通る電荷フローを選択的に制御する。アレイは、第1のトランジスタチャネルに電荷を選択的に保存するように結合されたキャパシタをさらに備える。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ビットアレイであって、
前記量子ビットアレイのキュービットの動作を制御する、該キュービットに結合された制御ゲート及び前記キュービットと隣接キュービットの間に結合された少なくとも1つのパスゲートと、
ビットラインと、
前記ビットラインを前記制御ゲートに接続する第1のトランジスタチャネルと、
前記第1のトランジスタチャネルに結合された少なくとも1本のワードラインであって、前記第1のトランジスタチャネルを通る電荷のフローを選択的に制御する少なくとも1本のワードラインと、
前記第1のトランジスタチャネルにおける電荷を選択的に保存するように結合されたキャパシタと、
を備えるアレイ。
【請求項2】
前記第1のトランジスタチャネルは垂直トランジスタチャネルを形成し、前記少なくとも1本のワードラインは少なくとも1本の水平ワードラインを形成する、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記キャパシタは、垂直MOSキャパシタを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
前記第1のトランジスタチャネルは、前記制御ゲートに直接接続される、請求項1に記載のアレイ。
【請求項5】
前記第1のトランジスタチャネルを前記制御ゲートに接続するコンタクトをさらに備える請求項1に記載のアレイ。
【請求項6】
前記第1のトランジスタチャネルは、ゲート誘電層を備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項7】
前記第1のトランジスタチャネルは、ジャンクションレストランジスタを形成する、請求項1に記載のアレイ。
【請求項8】
前記第1のトランジスタチャネルは、ソースジャンクション及びドレインジャンクションを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
前記第1のトランジスタチャネルは、絶縁コアを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項10】
前記少なくとも1本のワードラインは、X方向ワードライン及びY方向ワードラインを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項11】
第2のビットラインを第1のパスゲートに接続する第2のトランジスタチャネルと、
第3のビットラインを第2のパスゲートに接続する第3のトランジスタチャネルと、
をさらに備える請求項1に記載のアレイ。
【請求項12】
前記第2のトランジスタチャネルにおける電荷を保存するように構成された第2のキャパシタと、
前記第3のトランジスタチャネルにおける電荷を保存するように構成された第3のキャパシタと、
をさらに備える請求項11に記載のアレイ。
【請求項13】
前記少なくとも1本のワードラインは、前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルに結合された1本のX方向ワードライン、並びに前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルに結合された1本のY方向ワードラインを備える、請求項12に記載のアレイ。
【請求項14】
前記少なくとも1本のワードラインは、前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルに結合された2本のX方向ワードライン、並びに前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルに結合された2本のY方向ワードラインを備える、請求項12に記載のアレイ。
【請求項15】
前記少なくとも1本のワードラインは、前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルにそれぞれ一対一で結合された第1、第2及び第3のX方向ワードライン、並びに前記第1、第2及び第3のトランジスタチャネルに結合された1本のY方向ワードラインを備える、請求項12に記載のアレイ。
【請求項16】
量子アレイを動作させる方法であって、
少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された1本以上のY方向ワードラインに1つ以上の第1の電圧をそれぞれ印加するステップと、
前記少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された1本以上のX方向ワードラインに1つ以上の第2の電圧をそれぞれ印加するステップと、
前記少なくとも1つの垂直トランジスタに結合されたキャパシタに第3の電圧を印加するステップと、
前記少なくとも1つの垂直トランジスタに1つ以上のビットライン電圧を印加して前記量子アレイのキュービットの動作を制御するステップと、
を備える方法。
【請求項17】
1つ以上の第1の電圧を印加する動作は、選択された第1の電圧を前記少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された1本のX方向ワードラインに印加することを含み、1つ以上の第2の電圧を印加する動作は、選択された第2の電圧を複数のトランジスタチャネルに結合された1本のY方向ワードラインに印加することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上の第1の電圧を印加する動作は、2つの選択された第1の電圧を前記少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された2本のX方向ワードラインに印加することを含み、1つ以上の第2の電圧を印加する動作は、2つの選択された第2の電圧を複数のトランジスタチャネルに結合された2本のY方向ワードラインに印加することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
1つ以上の第1の電圧を印加する動作は、少なくとも1つの選択された電圧を前記少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された少なくとも1本のX方向ワードラインにそれぞれ印加することを含み、1つ以上の第2の電圧を印加する動作は、1つの選択された第2の電圧を複数のトランジスタチャネルに結合された1本のY方向ワードラインに印加することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記1本以上のY方向ワードラインから前記1つ以上の第1の電圧を除去するステップと、
前記1本以上のX方向ワードラインから前記1つ以上の第2の電圧を除去するステップであって、前記キャパシタが分離されて前記少なくとも1つの垂直トランジスタの少なくとも1つのチャネルに電荷をそれぞれ維持する、除去するステップと、
をさらに備える請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月22日出願の米国仮特許出願第62/992989号、発明の名称「QUANTUM BIT ARRAY」の米国特許法第119条による利益を主張し、その全体が参照によりここに取り込まれる。
【0002】
本発明の例示的実施形態は、概略として半導体及び集積回路の分野に関し、より具体的には、量子ビットアレイの設計及び動作に関する。
【背景技術】
【0003】
量子コンピューティングでは、キュービット(qubit)すなわち量子ビットが、量子情報の基本単位となる。キュービットは、2状態(すなわち、2レベル)量子機械系である。その例は、2レベルがスピンアップ及びスピンダウンとして捉えることができる電子のスピン、又は2状態が垂直偏波及び水平偏波として捉えることができる単一光子の偏波を含む。量子機械は、キュービットが同時に両状態のコヒーレント重畳となることを可能とし、その特性は量子コンピューティングに基本的なこととなる。
【0004】
量子ビットアレイは、大量のキュービットからなる。キュービットは非常に小さいため、それらはアレイにおいて相互に非常に近接して離間され得る。これは、非常に大きくかつ高性能な量子ビットアレイを構成可能とする可能性を有している。しかし、量子ビットアレイにおいてキュービットを利用するのに用いられる制御構造体には限界が存在する。
【発明の概要】
【0005】
種々の例示的実施形態では、量子ビット(「キュービット」)アレイが提供される。そのアレイは、アレイにおけるキュービットを利用して非常に狭い間隔のかつ非常に大きく高性能な量子ビットアレイを構成可能とするのに使用可能な制御構造体を含む。
【0006】
実施形態では、量子ビットアレイのキュービットの動作を制御する、キュービットに結合された制御ゲート及びキュービットと隣接キュービットの間に結合された少なくとも1つのパスゲートと、ビットラインと、ビットラインを制御ゲートに接続する第1のトランジスタチャネルと、を含む量子ビットアレイが提供される。アレイは、第1のトランジスタチャネルに結合された少なくとも1本のワードラインをさらに備える。少なくとも1本のワードラインは、第1のトランジスタチャネルを通る電荷フローを選択的に制御する。アレイは、第1のトランジスタチャネルに電荷を選択的に保存するように結合されたキャパシタをさらに備える。
【0007】
実施形態では、量子アレイを動作させる方法が提供される。その方法は、少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された1本以上のY方向ワードラインに1つ以上の第1の電圧をそれぞれ印加するステップと、少なくとも1つの垂直トランジスタに結合された1本以上のX方向ワードラインに1つ以上の第2の電圧をそれぞれ印加するステップと、を備える。方法はさらに、少なくとも1つの垂直トランジスタに結合されたキャパシタに第3の電圧を印加するステップと、少なくとも1つの垂直トランジスタに1つ以上のビットライン電圧を印加して量子アレイのキュービットの動作を制御するステップと、を備える。
【0008】
本発明の更なる特徴及び利点が、以下に記載する詳細な説明、図面及び特許請求の範囲から明らかとなる。
【0009】
本発明の例示的実施形態は、本発明の種々の実施形態の以下に与えられる詳細な説明及び添付図面から、より完全に理解されることになるが、それらは本発明を具体的実施形態に限定するものと捉えられるべきではなく、説明及び理解のみを目的とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、量子ビットアレイの下部構造体を示す。
【
図2A】
図2Aは、本発明の各態様によって構成されたキュービットアレイの基本単位の例示的実施形態を示す。
【
図2C】
図2Cは、キュービットアレイを動作させる方法の例示的実施形態を示す。
【
図4A】
図4Aは、キュービットアレイの基本単位の例示的実施形態を示す。
【
図4C】
図4Cは、キュービットアレイを動作させる方法の例示的実施形態を示す。
【
図5A】
図5Aは、キュービットアレイの基本単位の他の実施形態を示す。
【
図6】
図6は、キュービットアレイの基本単位の他の実施形態を示す。
【
図7A】
図7Aは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【
図7B】
図7Bは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【
図7C】
図7Cは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【
図7D】
図7Dは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【
図7E】
図7Eは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【
図9A】
図9Aは、3個のグループのデータラインを用いるキュービットアレイの例示的実施形態を示す。
【
図9B】
図9Bは、3個のグループのキュービットがエンタングル、シャトル又は制御されてともに他の動作を行うことを可能とするキュービットアレイの例示的実施形態を示す。
【
図10A】
図10Aは、4個のグループのデータラインを用いるキュービットアレイの例示的実施形態を示す。
【
図10B】
図10Bは、本発明によって構成されたキュービットアレイの他の実施形態を示す。
【
図10C】
図10Cは、本発明によって構成されたキュービットアレイの他の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
種々の例示的実施形態では、方法及び装置が、量子ビットアレイの設計、構成及び動作について規定される。実施形態は、これに限定されないが、原子、光子、電子、原子核、イオン、光格子、ジョセフソン接合、量子ドット、量子ドットペアなどのキュービットを用いる技術を含むあらゆる適切な量子技術に適用可能である。さらに、開示の量子ビットアレイ構造体の応用例は、量子ビットアレイに限定されず、磁気メモリなどの他の技術に適用可能である。
【0012】
当業者は、以下の詳細な説明は説明のみを目的とするものであり、いかなる態様でも限定を意図していないことを認識するはずである。本発明の他の実施形態は、この開示の利益を受けるような当業者にそれ自体を直ちに示唆することになる。ここで、添付図面に示される本発明の例示的実施形態の実施例に対して詳細に参照がなされる。同一又は類似の部分を指すのに同一の符号(又は番号)が、図面及び以下の詳細な説明全体を通じて用いられる。
【0013】
図1は、量子ビットアレイ(QBA)100の下部構造体を示す。QBA100は量子ビット101a~eを備え、それらは「キュービット」ともいわれる。実施形態では、キュービット101a~eは、燐などのドナー材料の1又は複数の原子をシリコン基板102にインプラントすることによって形成される。各キュービットは、制御ゲート104a~bなどの制御ゲート104を有する。酸化物などの誘電層103、すなわち、バリア層は、キュービット上及びシリコン基板102と制御ゲート104の間に位置する。各制御ゲート104は、対応するキュービットを制御して読出し、書込み又は他の論理演算を実行するように結合される。
【0014】
キュービットのデータは、その「量子状態」によって表される。キュービットは、多数の態様で読み出され又は書き込まれ得る。通常のアプローチは、制御ゲート104を通じて無線周波数(RF)又は磁界を印加して被選択キュービットの量子状態を検知し又は切り替えるものである。さらに、関連するキュービットの電子を引き寄せ又は反発させてそのキュービットの量子状態を初期化するように、被選択制御ゲートには電圧が供給され得る。
【0015】
QBA100はまた、パスゲート105a~bなどのX方向パスゲート105及びパスゲート106a~bなどのY方向パスゲート106を備える。パスゲート105aなどのX方向パスゲートがオンされると、隣接X方向キュービット101a~bを「エンタングル」してそれらキュービット間の「論理演算」又は「計算」を実行することになる。同様に、パスゲート106bなどのY方向パスゲートがオンされると、隣接Y方向キュービット101d~eをエンタングルしてそれらキュービット間の論理演算又は計算を実行することになる。
【0016】
なお、量子コンピューティングにおいて、隣接キュービット間の距離は重要な検討事項となる。その距離が遠すぎると、キュービットはエンタングルしない。通常、キュービット間の最大距離は、約20ナノメートル(nm)である。制御ゲート104、X方向パスゲート105及びY方向パスゲート106は個々に制御される必要があるため、全てのゲートはデコーダ回路に接続され得る。結果として、そのように密に離間されたキュービットを有するキュービットアレイに非常に多数のデコーダ回路を集積するのは非常に困難となる。種々の例示的実施形態において、キュービットアレイの制御ゲート及びパスゲートを設計、選択及び制御する方法及び装置がここに開示される。
【0017】
図2Aは、本発明の態様によって構成されたキュービットアレイ200の基本単位の例示的実施形態を示す。
図2Aに示すように、アレイ200は、
図1に示す下部構造体上に構築される。説明を簡潔かつ明瞭にするため、下部構造体の一部分のみを
図2Aに示す。
図2Aに示す基本単位は、複数回複製され、一層大きなキュービットアレイを形成するように合成され得る。アレイ200は、制御ゲート104、X方向パスゲート105及びY方向パスゲート106を備え、それらも
図1に示す下部構造体100に示すものとなる。アレイ200は、3個の垂直トランジスタ107a~cのシリコン又はポリシリコンチャネルも備える。垂直トランジスタ107のドレインは、対応するコンタクト109a~cを介して制御ゲート104並びにX方向パスゲート105及びY方向パスゲート106にそれぞれ接続される。他の実施形態では、垂直トランジスタ107のドレインは、コンタクト109a~cなしに制御ゲート104並びにX方向パスゲート105及びY方向パスゲート106に直接接続される。垂直トランジスタ107のソースは、対応するコンタクト110a~cを介してビットライン111a~cに接続される。ビットライン111は、金属又はポリシリコンなどの導電体からなる。
【0018】
垂直トランジスタ107は、3個の導電体112、113及び114に結合され、それらは金属又はポリシリコンなどの材料で構成される。第1の導電体112は、Y方向ワードライン(WLy)に接続され、トランジスタ107a~cを通る電流を選択的に制御する第1のゲートを形成する。第2の導電体113は、X方向ワードライン(WLx)に接続され、トランジスタ107a~cを通る電流を選択的に制御する第2のゲートを形成する。他の実施形態では、導電体へのWLx及びWLyワードラインの接続が入れ替えられる。ワードラインWLx及びWLyは、トランジスタ107a~cを通る電流を選択的に可能とすることによってキュービットアレイの一基本単位の選択及び動作を可能とする。トランジスタ107a~cは、制御ゲート104及びパスゲート105/106をビットライン111b、111c及び111aにそれぞれ接続する。実施形態では、外部プログラミング回路は、被選択単位の制御ゲート104及びパスゲート105/106を、ビットライン111a~cを介して制御して読出し、書込み又は他の論理演算を実行することができる。
【0019】
第3の導電体114は、第3のゲート、すなわち、「キャパシタ」ゲートを形成する。実施形態では、導電体114は、電圧源(VC)に接続されてトランジスタ107a~cのチャネルをオンする。したがって、第3の導電体114は、
図3A~Dに示す断面図を参照して説明するようなMOSキャパシタを形成する。例えば、MOSキャパシタの詳細な構造は、垂直トランジスタを用いることを除いてプレーナMOSキャパシタと同様である。ここで
図3Aを参照すると、導電体114は、キャパシタの第1の導電性プレートを形成する。さらに、ゲート誘電層118が示される。誘電層118の下部のチャネルは、キャパシタの第2の導電性プレートを形成する。動作中、チャネルにかかる電圧は、キャパシタによって保持可能である。
【0020】
再度
図2Aを参照すると、導電体114は、選択された長さのチャネルにわたってトランジスタ107a~cに結合してチャネル容量を増加させるように構成される。したがって、WLx113及びWLy112が量子アレイの一単位を選択すると、被選択単位のビットライン電圧がキャパシタゲート114のチャネルを通過し、制御ゲート104及びパスゲート105/106に流れる。WLx113及びWLy112がその単位を選択解除すると、制御ゲート104及びパスゲート105/106の電圧はキャパシタゲート114のチャネル容量によって保持又は維持されることになる。そして、次の基本単位が、電圧を当該次の単位の制御ゲート及びパスゲートに読み込むために選択可能となる。この処理を用いることによって、複数の基本単位が選択されるとともに所望の電圧がそこに読み込まれて所望の演算を実行することができる。さらに、キャパシタゲート114はまた、制御ゲート104及びパスゲート105/106の電圧が隣接アレイ単位からのノイズ又は結合によって外乱を受けることを防止する。
【0021】
図2Aに示すQBA200の基本単位の実施形態は、ランダムビット選択、行選択又は列選択動作に適する。ランダムビット選択について、基本単位は、両ワードラインWLx113及びWLy112によって選択される。行選択について、複数単位のY方向ワードラインWLy112が、ともにオンされ得る。そして、その単位の一行がX方向ワードラインWLx113によって選択され得る。同様に、列選択について、複数単位のX方向ワードラインWLx113が、ともにオンされ得る。そして、その単位の一列がY方向ワードラインWLy112によって選択され得る。
【0022】
図2Aに開示される基本単位200の構造体は、キュービットの制御ゲート104及びパスゲート105/106を制御するのに3個の垂直トランジスタ107a~cしか必要としない。したがって、この構造体を複製することによって、非常に高密度なキュービットアレイが実現可能となる。
【0023】
他の実施形態では、キュービットアレイが行選択又は列選択動作しか必要としない場合、
図2Aに示す基本単位構造体は必要に応じてWLx113又はWLy112のみを含むように構成可能である。また、
図2Aでは、WLy112及びWLx113への接続は、WLy112がX方向ワードラインとなるとともにWLx113がY方向ワードラインとなるように入れ替え可能である。
【0024】
図2Bは、
図2Aに示す基本単位200の等価回路を示す。
図2Bに示す回路は、制御ゲート104、X方向パスゲート105及びY方向パスゲート106へのビットライン111a~cの接続を示す。キュービット101は、制御ゲート104の下部に位置する。回路はまた、トランジスタチャネル107a~cと、WLy112、WLx113及びVC114導電体との交点において形成されたゲートを示す。
【0025】
図2Cは、キュービットアレイを動作させる方法210の例示的実施形態を示す。例えば、方法210は、
図2Aに示すアレイ200を動作させる用途に適する。
【0026】
ブロック212において、Y方向ワードライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能とするように電圧がWLy112に印加される。
【0027】
ブロック214において、X方向ワードライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能とするように電圧がWLx113に印加される。
【0028】
ブロック216において、VCライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能とするように電圧がVC114に印加される。
【0029】
ブロック218において、ビットライン電圧が印加されて制御ゲート104及びパスゲート105/106を有効化/無効化する。例えば、WLy112、WLx113及びVC114のラインがトランジスタ107を通電可能とするように設定されると、ビットライン111a~cは制御ゲート104及びパスゲート105/106に接続される。したがって、ビットライン電圧が、それらのゲートに印加されてキュービット101の動作を制御することになる。
【0030】
ブロック220において、X方向及びY方向ワードライン電圧が印加されて垂直トランジスタをオフする。例えば、X方向ワードラインWLx113及びY方向ワードラインWLy112に適宜の電圧が供給されてトランジスタ107a~cをオフする。
【0031】
ブロック222において、VCライン電圧が、キャパシタに制御ゲート104の電圧及びパスゲート105/106の電圧を保存することを可能とするように設定される。したがって、制御ゲート104及びパスゲート105/106に印加された直前のビットライン電圧が維持されることになる。
【0032】
現在の単位について制御ゲート104及びパスゲート105/106の電圧を維持した後に、WLy112及びWLx113に適宜の電圧を印加することによって他の単位が選択可能となる。そして、ビットライン111a~cの電圧が、その次の単位の制御ゲート及びパスゲートに印加可能となる。
【0033】
したがって、方法210は、キュービットアレイを制御する動作を実行する。なお、方法210の動作は、実施形態の範囲内で組み合わされ、追加され、削除され、再配列され、あるいは変形され得る。
【0034】
図3Aは、
図2Aに示す断面指示線A-A′に沿う基本単位200の実施形態の断面図を示す。実施形態では、シリコン又はポリシリコントランジスタチャネル107aは、酸化物又は高誘電率材料などの材料を含むゲート誘電層118を含む。
図3Aに示す実施形態では、基本単位200は、ソース又はドレインジャンクションを有さない「ジャンクションレス」トランジスタを含む。したがって、トランジスタチャネル107aのソースは、パスゲート106に直接接続される。
【0035】
図3Bは、
図2Aに示す断面指示線A-A′に沿う基本単位200の他の実施形態の断面図を示す。
図3Bに示す実施形態では、トランジスタチャネル107aのソースは、コンタクト109aを介してパスゲート106に接続される。
【0036】
図3Cは、
図2Aに示す断面指示線A-A′に沿う基本単位200の他の実施形態の断面図を示す。
図3Cに示す実施形態では、トランジスタチャネル107aは、ソースジャンクション113a及びドレインジャンクション113bを含む。一実施形態では、ジャンクション113a及び113bは、トランジスタチャネル107aと同じタイプのドーピングのものである。この場合、トランジスタチャネル107aは、ジャンクションレストランジスタとして機能する。他の実施形態では、ジャンクション113a及び113bは、トランジスタチャネル107aとは反対のタイプのドーピングのものである。この場合、トランジスタチャネル107aは、従来的なジャンクショントランジスタとして機能する。
【0037】
図3Dは、
図2Aに示す断面指示線A-A′に沿う基本単位200の他の実施形態の断面図を示す。
図3Dに示す実施形態では、トランジスタチャネル107aは、チャネルシリコン107aの中心に絶縁コア114を含む。この構成では、トランジスタチャネル107aの直径は製造コストを低減するように緩和される一方で、チャネル107aの厚さはジャンクションレストランジスタに対する要件内に維持される。
【0038】
図2A~3Dに示す実施形態では、ワードラインWLx113及びWLy112は、キュービットアレイの一基本単位を選択する。被選択単位の制御ゲート104及びパスゲート105/106は、ともにビットラインに選択的に接続される。実施形態は、ビットラインへの制御ゲート及びパスゲートの接続の個々の制御を可能としない。
【0039】
図4Aは、キュービットアレイ400の基本単位の例示的実施形態を示す。この実施形態は、ビットライン111a~cと、制御ゲート104並びにパスゲート105及び106との間の接続の個々の制御に供する。個々の制御は、ワードライン112a、112b、113a及び113bを用いてビットライン111a~cを制御ゲート104及びパスゲート105/106に選択的に接続することによって達成される。
【0040】
図4Aに示す実施形態では、各基本単位は、2個のX方向ワードライン導電体(例えば、WLx1 113a及びWLx2 113b)及び2個のY方向ワードライン導電体(例えば、WLy1 112a及びWLy2 112b)を有する。垂直トランジスタチャネル107a~cは、図示するようにX方向ワードライン及びY方向ワードラインと交差する。例えば、チャネル107aは、WLy1 112a及びWLx1 113aと交差する。チャネル107bは、WLy1 112a及びWLx2 113bと交差する。チャネル107cは、WLy2 112b及びWLx2 113bと交差する。
【0041】
動作中、Wlx1 113a及びWLy1 112aが選択されると、パスゲート106がビットライン111aに接続される。WLx2 113b及びWLy1 112aが選択されると、制御ゲート104がビットライン111bに接続される。WLx2 113b及びWLy2 112bが選択されると、パスゲート105がビットライン111cに接続される。この処理を用いて、ビットラインと制御ゲート及びパスゲートとの間の個々の接続が、適宜の2本のワードラインを選択することによって実現可能となる。
【0042】
したがって、複数のワードライン選択を行うことによって、制御ゲート及びパスゲートの任意の組合せをビットラインに接続することができる。例えば、制御ゲート104及びパスゲート106をそれらの関連するビットラインに接続するために、3本のワードラインが選択される。WLx1、WLx2及びWLy1が選択されると、制御ゲート104及びパスゲート106が、それらの関連するビットラインに接続される。WLx2、WLy1及びWLy2が選択されると、制御ゲート104及びパスゲート105が、それらの関連するビットラインに接続される。WLx1、WLx2、WLy1及びWLy2が選択されると、制御ゲート104及びパスゲート105/106が、それらの関連するビットラインに接続される。
【0043】
この実施形態では、トランジスタ107a、107b及び107cのソースは、図示するように、ビットライン111a、111b及び111cに直接接続され得ない位置に配置されてもよい。例えば、ノード107bはビットライン111aの下部にあり、垂直コンタクトによってビットライン111bに直接接続され得ないため、ビットライン電圧が111bから115bに、そして107bにかかり得るように、コンタクト107bの位置を「ねじり」又は適合させるのに金属層115bが使用される。したがって、金属又はポリシリコンなどの材料を含む相互接続層115a、115b及び115cが、トランジスタのソースをビットラインに接続するのに使用可能である。
【0044】
図4Bは、
図4Aに示す基本単位400の等価回路を示す。
図4Bに示す回路は、制御ゲート104、X方向パスゲート105及びY方向パスゲート106へのビットライン111a~cの接続を示す。キュービット101は、制御ゲート104の下部に位置する。回路はまた、トランジスタチャネル107a~cと、WLy1 112a、WLy2 112b、WLx1 113a及びWLx2 113b導電体との交点に形成されたゲートを示す。
【0045】
図4Cは、キュービットアレイを動作させる方法410の例示的実施形態を示す。例えば、方法410は、
図4Aに示すアレイ400を動作させる用途に適する。
【0046】
ブロック412において、ビットラインと制御及びパスゲートとの間の所望の個々の接続の決定がなされる。例えば、いずれのビットラインがそれらの対応する制御及びパスゲートに接続されるべきかについて決定がなされる。
【0047】
ブロック414において、2つのY方向ワードライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能として、ブロック412で決定された所望の接続を得るように、2つの電圧がWLy1 112a及びWLy2 112bにそれぞれ印加される。
【0048】
ブロック416において、2つのX方向ワードライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能として、ブロック412で決定された所望の接続を得るように、2つの電圧がWLx1 113a及びWLx2 113bにそれぞれ印加される。
【0049】
ブロック418において、VCライン電圧が印加される。例えば、トランジスタ107a~cを通電可能とするように、電圧がVC114に印加される。
【0050】
ブロック420において、ブロック412において決定された所望の接続によって制御ゲート104及びパスゲート105/106を有効化/無効化するようにビットライン電圧が印加される。例えば、WLy1、WLy2、WLx1及びWLx2の電圧の設定に基づいて、ビットライン111a~cの1本以上が、対応する制御ゲート104及びパスゲート105/106に接続される。したがって、所望のビットライン電圧が、それらの個々に選択されたゲートに印加されてキュービット101の動作を制御することになる。
【0051】
ブロック422において、ワードラインWLy1、WLy2、WLx1及びWLx2に電圧が供給されてトランジスタ107a~cをオフする。
【0052】
ブロック424において、制御ゲート104の電圧及びパスゲート105/106の電圧をキャパシタが保存可能となるようにVCライン電圧が設定される。したがって、制御ゲート104及びパスゲート105/106に印加されるビットライン電圧が維持されることになる。
【0053】
したがって、方法410は、キュービットアレイの制御ゲート及びパスゲートを個々に制御する動作を実行する。なお、方法410の動作は、実施形態の範囲内で組み合わされ、追加され、削除され、再配列され、あるいは変形され得る。
【0054】
図5Aは、キュービットアレイ500の基本単位の他の実施形態を示す。アレイ400の基本単位と同様に、この実施形態も制御ゲート及びパスゲートのうちの1つ又は複数のものをそれらの関連するビットラインに接続することができる。この実施形態は、1本だけでなく3個のY方向ワードライン導電体112a~cを有することを除いて
図2Aに示す実施形態と同様である。Y方向ワードライン導電体112a~cは、制御ゲート及びパスゲートのうちの1つ又は複数のものをそれらの関連するビットライン111a~cに接続する個々の制御を提供する。
【0055】
図5Bは、
図5Aに示すキュービットアレイ500の基本単位の等価回路を示す。
図5Bは、制御ゲート104及びパスゲート105/106の任意の組合せがそれらの関連するビットライン111a~cに選択的に接続可能となるように動作する3個のワードライン導電体WLy1 112a、WLy2 112b及びWLy3 112cを示す。
【0056】
図2A~5Bに示すキュービットアレイの実施形態では、制御ゲート及びパスゲートは、それらの関連するビットラインに垂直トランジスタを介して接続される。下記実施形態では、制御ゲート104のみが、垂直トランジスタチャネルを用いてそのビットラインに接続される。
【0057】
図6は、キュービットアレイ600の基本単位の他の実施形態を示す。この実施形態では、制御ゲート104のみが、その関連するビットライン111bに垂直トランジスタ107bを介して接続される。X方向パスゲート105及びY方向パスゲート106は、デコーダ回路に直接接続される。実施形態では、パスゲート106は、隣接する単位のパスゲートに直接接続される。パスゲート105は、隣接する単位のパスゲートにコンタクト109c及び金属ライン117を介して接続される。したがって、異なる単位のパスゲートが、ランダムに選択されたり異なる条件で設定されたりすることはない。その代わりに、パスゲートは、行選択又は列選択動作を実行するようにデコーダによって選択される。
【0058】
図7A~Eは、本発明によって構成されたキュービットアレイの追加の実施形態を示す。
【0059】
図7Aは、キュービットアレイの下層構造体の例示的実施形態を示す。下層構造体は、シリコン(Si)、シリコン-ゲルマニウム(SiGe)、サファイア、ダイアモンド又は上記材料の複数の層の組合せなどの任意の適切な材料から形成された基板層701を備える。
【0060】
下層構造体701の上部には、酸化物(SiO2)、窒化物又は高誘電率材料などの絶縁層702又は誘電層がある。バリアゲート703a~c及び704a~cが、金属、ポリシリコン、マイクロマグネット又は超電導材料などの導電体材料から形成される。バリアゲート704a~cは、酸化物、窒化物又は高誘電率材料などの材料を含む絶縁体705又は誘電層によってバリアゲート703a~cから分離されている。バリアゲート703a~c及び704a~cは、異なる方向に延在してグリッド領域700a及び700bなどのグリッド領域のアレイを形成する。
【0061】
キュービットは、各グリッド領域の下部に位置する。例えば、キュービット706aは基板701内でグリッド領域700aの下部に位置し、キュービット706bは基板701内でグリッド領域700bの下部に位置する。キュービットは、原子、イオン、光子、原子核又は電子などの任意の適切な技術を用いて基板層701の内部にインプラントされる。例示的実施形態では、キュービットは、単一の燐原子の電子及び原子核である。
【0062】
説明の目的のため、ここではバリアゲート703a~c及び704a~cをそれぞれ「Xライン」及び「Yライン」という。第1の選択電圧をXライン又はYラインに印加することによって、バリアゲートの下部の基板701の電位がポテンシャル障壁を生成して隣接キュービットが「エンタングル」又は「シャトル」するのを防止する。一方、第2の選択電圧又はRF磁界をXライン及びYラインに印加することによって、電位又は磁界が生成されて隣接キュービットがエンタングル又はシャトルすることを可能とする。この処理を用いることによって、キュービットを用いる量子論理計算が実行可能となる。
【0063】
図7Bは、
図7Aに示すキュービットアレイに付加される上層構造体の例示的実施形態を示す。この実施形態は、グリッド領域の上部に形成された制御ゲート707a~gなどの制御ゲートを含む。制御ゲート707は、金属、ポリシリコン、マイクロマグネット又は超電導体などの適切な導電体を備える。適宜の電圧又はRF磁界を制御ゲート707に印加することによって、ゲートの下部の電界がキュービットの電子をゲートに向けて引き付け、又はキュービットの電子をゲートから排斥してキュービットのスピン状態を初期化又は保存する。読出しのために、制御ゲート707は、キュービットのスピン状態を検知する共振器回路などの検知回路に接続可能である。
【0064】
図7Cは、
図7Bに示すアレイの上面図を示し、最上層の接続の例示的実施形態を含む。
図7Cには、Xライン703a~f、Yライン704a~f、及びキュービットの最上部に位置する制御ゲート707a~dなどの制御ゲート707が示される。制御ゲート707は、コンタクト711a~dなどのコンタクト711を介して導電体ライン708a~g及び709a~gに接続される。導電体ライン708a~g及び709a~gを「データライン」という。データラインは、金属、ポリシリコン、マイクロマグネット又は超電導体などの適切な導電体から形成される。実施形態では、コンタクト711a~dなどのコンタクト711は、制御ゲート707a~dへのデータライン708g及びデータライン709gの交互の接続によって示すような偶数及び奇数のデータラインを与えるように互い違いとされる。
【0065】
図7Dは、
図7Cに示すキュービットアレイ構造体の例示的な3次元(3D)表示を示す。3D表示は、データライン708g及び709gに沿って取得されたものである。なお、コンタクト711a~dは、データライン708g及び709gを制御ゲート707a~dに交互の態様で接続するように互い違いとされる。
【0066】
図7Eは、
図7Bに示すアレイの上面図を示し、最上層の接続の例示的実施形態を含む。
図7Eに示すように、データライン708a~g及び709a~gは、ジグザグパターンを形成するように構成される。ジグザグパターンは、708g及び709gなどの偶数及び奇数のデータラインが制御ゲート707a~dに交互の態様で接続することを可能とする。
【0067】
図8A~Dは、
図7Cに示すキュービットアレイの例示的動作を示す。
【0068】
図8Aは、どのようにして電圧が被選択Yラインに印加されて量子論理演算を可能とするのかを示す。実施形態では、グループ712a及び712bにおけるキュービットがエンタングルされ、シャトルされ又は他の量子論理演算を実行することを可能とするように、被選択Yライン704dには、選択された電圧又はRF磁界が供給される。一方で、他の選択されていないYライン及びXラインには他の電圧又はRF磁界が供給されてゲートの下部にポテンシャル障壁を形成してキュービットを分離する。開示されるアレイ構造体を用いることによって、グループ712a及び712bにおける各キュービットは、1本の個々のデータラインに接続される。例えば、グループ712aにおけるキュービットの各々は第1のグループのデータライン709b~fにおける1本のデータラインに接続され、グループ712bにおけるキュービットの各々は第2のグループのデータライン708c~gにおける1本のデータラインに接続される。各データラインには適正な電圧条件が供給され、又は各データラインは他の回路に接続され得る。これにより、グループ712a及び712bにおける全てのキュービットがともに量子論理演算を実行することが可能となる。これにより、量子コンピュータの性能が大幅に高まる。
【0069】
図8Bは、どのようにして電圧が被選択Xラインに印加されて量子論理演算を可能とするのかを示す。実施形態では、グループ713a及び713bにおけるキュービットがエンタングルされ、シャトルされ又は他の演算を実行することを可能とするように、被選択Xライン703dには、選択された電圧又はRF磁界が供給される。一方で、他の選択されていないYライン及びXラインには他の電圧又はRF磁界が供給されてゲートの下部にポテンシャル障壁を形成してキュービットを分離する。開示されるアレイ構造体を用いることによって、グループ713a及び713bにおける各キュービットは、1本の個々のデータラインに接続される。これにより、グループ713a及び713bにおける全てのキュービットがともに演算を実行することが可能となる。これにより、量子コンピュータの性能が大幅に高まる。
【0070】
図8Cは、どのようにして電圧が複数のYラインに印加されて量子論理演算を可能とするのかを示す。実施形態では、グループ(712a/712b、712c/712d、及び712e/712f)の各々におけるキュービットがエンタングルされ、シャトルされ又は他の演算を実行することを可能とするように、Yライン704b、704d及び704fなどの複数の被選択Yラインには、選択された電圧又はRF磁界が供給される。一方で、他の選択されていないYライン及びXラインには他の電圧が供給されてゲートの下部に障壁を形成してキュービットを分離する。
【0071】
図8Dは、どのようにして電圧が複数のXラインに印加されて量子論理演算を可能とするのかを示す。実施形態では、グループ(713a/713b、713c/713d、及び713e/713f)の各々におけるキュービットがエンタングルされ、シャトルされ又は他の演算を実行することを可能とするように、Xライン703b、703d及び703fなどの複数の被選択Xラインに適正な電圧又はRF磁界が供給される。一方で、他の選択されていないYライン及びXラインには他の電圧が供給されてゲートの下部に障壁を形成してキュービットを分離する。
【0072】
なお、
図7Cに示すキュービットアレイの実施形態は制御ゲートに交互の態様で接続された2個のグループのデータライン708a~g及び709a~gを示すが、他の実施形態では、データラインは3個、4個又はそれ以上のグループなどの任意数のグループに分離される。
【0073】
図9Aは、3個のグループのデータラインを用いるキュービットアレイの例示的実施形態を示す。例えば、アレイは、第1のグループのデータライン708a~g、第2のグループのデータライン709a~g及び第3のグループのデータライン710a~gを含む。3個のグループのデータラインは、制御ゲート707に交互の態様で接続される。例えば、データライン708g、709g及び710gは、制御ゲート707a、707b及び707cに交互の態様で接続される。
【0074】
図9Aに示すアレイは、
図9Bに関して説明したように、3個のグループのキュービットがともにエンタングルされ、シャトルされ、又は他の演算を実行するように制御されることを可能とする。
【0075】
図9Bは、3個のグループのキュービットがともにエンタングルされ、シャトルされ、又は他の演算を実行するように制御されることを可能とするキュービットアレイの例示的実施形態を示す。実施形態では、2本のYライン704c及び704dには適正な電圧又はRF磁界が供給されてグループ714a、714b及び714cにおけるキュービットをエンタングルさせる。グループ714a、714b及び714cにおける各キュービットは、1本の個々のデータラインに接続される。これにより、グループ714a、714b及び714cにおけるキュービットがともにエンタングルされ、シャトルされ、又は他の量子論理演算を実行するように構成されることを可能とするように、データラインに適正な条件が供給可能となり、又はデータラインが回路に接続可能となる。
【0076】
図10Aは、4個のグループのデータラインを用いるキュービットアレイの例示的実施形態を示す。例えば、アレイは、第1のグループのデータライン708a~g、第2のグループのデータライン709a~g、第3のグループのデータライン710a~g及び第4のグループのデータライン715a~gを含む。この実施形態では、4個のグループのデータラインは、
図10Aに示すような交互の態様で制御ゲート707に接続される。
【0077】
図10Aに示すアレイは、
図9Bに示すアレイと同様に、4個のグループのキュービットがともにエンタングル、シャトル及び他の量子論理演算を実行することを可能とする。
【0078】
本発明の実施例によると、制御ゲートに交互に接続されるデータラインのグループの数は限定されない。それは、データラインのピッチ及びキュービットのピッチに応じる。例えば、キュービットのピッチを100nmとすると、データラインのピッチが50nmの場合、
図7Cに示すような二重グループのデータラインが実装可能となる。データラインのピッチが30nmの場合、
図9Aに示すような三重グループのデータラインが実装可能となる。データラインのピッチが25nmの場合、
図10Aに示すような三重グループのデータラインが実装可能となる。データライン間のピッチが小さいほど、又はキュービットのピッチが大きいほど、より多くのグループのデータラインが実装可能となる。
【0079】
図10Bは、本発明によって構成されたキュービットアレイの他の実施形態を示す。この実施形態では、アレイは、異なる方向に延在する複数のグループのデータラインを含む。例えば、図示するように、第1のグループのデータライン1008a~dはY方向に延在し、第2のグループのデータライン1009a~cはX方向に延在する。この実施形態では、データライン1008a~dは第1層の導電体として形成され、データライン1009a~cは第2層の導電体として形成される。
【0080】
図10Cは、本発明によって構成されたキュービットアレイの他の実施形態を示す。この実施形態では、アレイは、異なる方向に延在する複数のグループのデータラインを含む。例えば、第1のグループのデータライン1008a~dは、Xライン703a~fと同じ方向に延在する。第2のグループのデータライン1009a~eは、Yライン704a~fと同じ方向に延在する。実施形態では、データライン1008a~cは第1層の導電体によって形成され、データライン1009a~eは第2層の導電体によって形成される。黒色点1016などの黒色点は、第1層の導電体ライン1008a~cを制御ゲートに接続するコンタクト又はビアを表す。白色点1017などの白色点は、第2層の導電体ライン1009a~eを制御ゲート707に接続するコンタクト又はビアを表す。開示されるキュービットアレイ構造体及び方法を用いることによって、高密度かつ高性能な量子コンピュータが実現可能となる。
【0081】
本発明の例示的実施形態を図示及び説明してきたが、当業者には、ここでの教示に基づいて例示的実施形態及びそれらのより広範な態様から逸脱することなく変更及び変形がなされ得ることが明らかとなる。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内において、本発明の例示的実施形態の真の主旨及び範囲内となるそのような全ての変更及び変形を包含するものである。
【国際調査報告】