(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】密封装置を備えるスイベル
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3204 20160101AFI20230509BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/18 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022535627
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2020085538
(87)【国際公開番号】W WO2021116289
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506364042
【氏名又は名称】シングル・ブイ・ムーリングス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ランドリアナリボニー、リバ・クリスティアン
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AB03
3J006AB05
3J006AE15
3J006AE38
3J006AE41
3J006CA01
3J043AA15
3J043BA02
3J043BA06
3J043CA02
3J043CA05
3J043CA20
3J043CB13
3J043DA20
(57)【要約】
スイベルであって、スイベルは、スイベル部材間の境界面における環状空間を通して互いと連通するそれぞれの内部流体経路を有する内部及び外部の相互に回転可能なスイベル部材を備え、内部及び/又は外部スイベル部材中に設けられた周辺溝と、その中に受け入れられ、周辺溝の内側でのスイベル部材のうちの第1のスイベル部材に対する静的密封と、スイベル部材のうちの第2のスイベル部材に対する動的密封とのために配置された密封要素とを備える密封装置を境界面における環状空間の側部上に設けられ、密封要素に当接するスイベル部材のうちの第1のスイベル部材中の周辺溝の内側の表面は、周辺溝の1つ以上の内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面であり、密封要素と摩擦接触するための3次元テクスチャ要素を有する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイベルであって、前記スイベルは、
内部スイベル部材(2)及び前記内部スイベル部材(2)の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材(1)と、ここにおいて、前記両スイベル部材は、前記両スイベル部材間の境界面における環状空間(5)を通して互いと連通するそれぞれの流体経路(3,4)を有する、
前記境界面における前記環状空間の側部上の密封装置(20)と
を備え、前記密封装置は、
-前記内部スイベル部材(2)及び/又は前記外部スイベル部材(1)中に設けられた周辺溝(7,7’)と、
-前記周辺溝(7)内に受け入れられ、前記周辺溝の内側で前記スイベル部材(1,2)のうちの第1のスイベル部材に対して静的に密封し、前記スイベル部材(2,1)のうちの第2のスイベル部材に対して動的に密封するように配置された密封要素(25)と
を備え、前記密封要素(25)に当接する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内側の表面は、前記周辺溝の2つの内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面(11,12)であり、前記テクスチャ加工表面(11,12)は、前記密封要素と摩擦接触するための3次元テクスチャ要素を有し、前記周辺溝の半径方向平面に対して垂直に見られる前記テクスチャ加工表面の断面形状は、実質的にL字形である、スイベル。
【請求項2】
前記テクスチャ要素は、隆起部を備え、その各々は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を有する、請求項1に記載のスイベル。
【請求項3】
前記L字形のテクスチャ加工表面の第1の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の内側面(12)に沿って延在し、前記L字形のテクスチャ加工表面の第2の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の底面(11)の第1の部分に沿って延在し、そのため、前記底面(11)の第2の部分は、テクスチャ加工されておらず、前記密封要素(25)は、前記底面(11)の前記第1の部分及び第2の部分の両方に当接する、請求項1又は2に記載のスイベル。
【請求項4】
前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の前記内側面(12)と前記底面(11)の少なくとも一部とにわたって延在する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内面である、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項5】
前記密封装置は、前記密封要素(25)と前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内面との間に位置付けられたシム(30,30’,30’’,30’’’)を備え、前記シムは、前記テクスチャ加工表面を形成する、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項6】
前記シム(30’)は、前記周辺溝の円周方向に沿って延在する波状及び/又はジグザグ形状を有するか、又は前記シム(30’’)は、前記周辺溝の円周方向に対して垂直に、好ましくは前記シムの下端に向かって延在する突出指部を備える、請求項5に記載のスイベル。
【請求項7】
前記シムは、シート材料の長手方向ストリップから形成され、それにおいて、前記長手方向ストリップの前記長手方向に対して垂直の一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝が、前記3次元テクスチャ要素を形成する、請求項5又は6に記載のスイベル。
【請求項8】
前記シムの前記波状、ジグザグ、及び/又は突出指部は、前記長手方向ストリップの側部中に延在する前記シム中のいくつかの一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝によって形成され、そのため、前記一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝は、前記長手方向ストリップの前記側部上で区切られない、請求項7に記載のスイベル。
【請求項9】
前記シムは、前記長手方向に見られるとL字形であり、前記L字形は、前記長手方向ストリップの側部を通って延在する前記いくつかの前記一連の平行な長手方向開口部のうちのいくつかと交差する折り線を有する、請求項8に記載のスイベル。
【請求項10】
前記シムは、金属材料及び/若しくは金属合金を備えるか、又はそれらから作られ、ASTM E8/E8Mに準拠する少なくとも100MPの引張強度と、ISO6508.1-2015に準拠する少なくとも60ロックウェルBの硬さとを有する、請求項5~9のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項11】
前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の円周全体に沿って延在する均一にテクスチャ加工された途切れのない表面である、請求項1~10のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項12】
前記密封要素は、リップシールを備え、それは、一般的なC、U、又はV字形の向きに配置された2つの可撓性脚部を有し、両方の脚部は、前記内部スイベル部材及び外部スイベル部材のそれぞれの表面間に延在する、請求項1~11のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項13】
前記密封要素は、前記テクスチャ加工表面に当接するバックアップリング要素(21)を更に備える、請求項1~12のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項14】
スイベルの周辺溝中に密封要素を取り付ける方法であって、前記方法は、
前記周辺溝の2つの隣接する内面の少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのテクスチャ加工表面(11,12)を前記周辺溝中に設けることと、前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を各々有するテクスチャ要素を有する、
前記密封要素の1つの表面の少なくとも一部が2つの隣接する前記テクスチャ加工表面のうちの一方に当接し、前記密封要素の1つの隣接する表面が前記隣接するテクスチャ加工表面のうちの他方に当接するように、前記周辺溝(7)内に密封要素(25)を挿入することと
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイベルに関し、スイベルは、内部スイベル部材及び内部スイベル部材の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材を備え、スイベル部材は、スイベル部材間の境界面における環状空間を通して互いと連通するそれぞれの流体経路を有し、スイベルは、境界面における環状空間の側部上に密封装置を設けられ、密封装置は、内部スイベル部材及び/又は外部スイベル部材中に設けられた周辺溝と、周辺溝内に受け入れられ、周辺溝の内側でのスイベル部材のうちの第1のスイベル部材に対する静的密封と、スイベル部材のうちの第2のスイベル部材に対する動的密封とのために配置された密封要素とを備える。
【0002】
本発明は更に、スイベルの周辺溝中に密封要素を取り付ける方法のためのシムに関する。
【背景技術】
【0003】
密封装置を有するスイベルが、米国特許第8,814,220号から知られている。スイベル密封装置は、スイベルスタックの重要な部分であり、シールは、流体をそれらのそれぞれの流体経路に制限し、最も過酷な条件下で流体経路の完全性を保証する。
【0004】
そのようなスイベルを備える海洋生産ユニットのウェザーベーニング(weathervaning)中、シールは、通常、シール溝中で静止したままであり、その一方で、スイベルの回転部分は、シール走行面上を移動する。
【0005】
しかしながら、動作条件下では、シール走行面及び/又はシール溝表面における摩擦係数が変化し得、シールの一部をスイベル回転部分と共に移動させ、その一方で、シールの別の部分はシール溝の内側で静止したままであり、最終的にシール又はバックアップリングの半径方向破裂をもたらす。シール故障の一般的な原因は、走行面側部における摩擦の増加を引き起こすシール圧縮/伸長、及び/又はシール溝側部における摩擦の局所的減少を引き起こす「オイルポケット」などのシールとシール溝との間の液体の蓄積に見られる。
【0006】
本発明は、そのようなシール故障に対する耐性が改善された密封装置を備えるスイベルを提供しようとするものである。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に、第1の態様によると、本発明は、スイベルを提供し、スイベルは、内部スイベル部材及び内部スイベル部材の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材を備え、スイベル部材は、スイベル部材間の境界面における環状空間を通して互いと連通するそれぞれの流体経路を有し、スイベルは、境界面における環状空間の側部上に密封装置を設けられ、密封装置は、-内部スイベル部材及び/又は外部スイベル部材中に設けられた周辺溝と、-周辺溝内に受け入れられ、周辺溝の内側でスイベル部材のうちの第1のスイベル部材に対して静的に密封し、スイベル部材のうちの第2のスイベル部材に対して動的に密封するように配置された密封要素とを備え、密封要素に当接するスイベル部材のうちの第1のスイベル部材中の周辺溝の内側の表面は、周辺溝の2つの内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面であり、テクスチャ加工表面は、密封要素と摩擦接触するための3次元テクスチャ要素を有し、周辺溝の半径方向平面に対して垂直に見られるテクスチャ加工表面の断面形状は、実質的にL字形である。
【0008】
テクスチャ加工表面によって提供される摩擦接触の増加により、テクスチャ加工表面に対する密封要素の位置を実質的に一定に保つことができ、このようにしてシール故障のリスクが低減される。
【0009】
更に、テクスチャ要素が密封要素の表面中に押し込まれることにより、この表面上に局所的な差圧が生じ、密封要素の表面とテクスチャ加工表面との間に、密封要素と溝との間から漏れた任意の液体が流れる経路をもたらす。これは、初期の液溜まり(initial pooling of liquids)を実質的に防止し得、即ち、「オイルポケット」の形成を防止し得、それは、そうでなければ密封要素の静的密封側上の摩擦の局所的低減を引き起こす。
【0010】
L字形のテクスチャ加工表面は、密封要素の静的密封側部に当接する周辺溝の隣接する内面に対応する。両方の表面の実質的な半径方向の長さに沿ってテクスチャを設けることによって、テクスチャ加工表面と密封要素との間のスティクション(stiction)が改善される。
【0011】
L字形のテクスチャ加工表面は、ピストン密封装置又は面密封装置などの密封装置中で使用され得、それにおいて、密封要素の静的密封側部が、周辺溝の2つの隣接する内面に当接する。L字形の断面の第1の端部から第2の端部まで延在するテクスチャ要素は、密封要素の静的密封側部と周辺溝との間に漏れた可能性がある少なくともいくらかの液体が、例えば、環状空間に対して密封要素の下流側上の内部スイベル部材と外部スイベル部材との間に設けられた狭い通路を介して排出されることを可能にする。一般に、そのような狭い通路中の液体又は流体の圧力は、スイベルシール故障を検出するために監視される。
【0012】
シールは、一般に、ゴム、PTFE、PEEK、及びHDPE化合物などの合成エラストマー又は(熱)プラスチック低摩擦材料を備えるか、又はそれから作られるが、スイベル部材は、典型的には、少なくとも溝において、ISO4287:1997に準拠する0.2~0.8μm Raの範囲の表面粗さを有する、滑らかで精密に機械加工された金属表面を有する。テクスチャ加工表面が、例えば溝中にテクスチャを機械加工することによって形成された溝の表面であるとき、それは、密封要素と周辺溝の内面との間に追加の摩擦を提供し、それは、密封要素と内面とが互いに対して静止しているとき、改善されたスティクションとも呼ばれ得る。3次元テクスチャ要素を有するテクスチャ表面は、溝、隆起部の窪み及び/又は突起として形成され得、それらは、機械加工、エッチング、アブレーション、パンチング、及び/又は粗いペイント若しくはメッシュ、サンドペーパー若しくはテキスタイルなどの他の表面テクスチャリング層の適用などの1つ以上の技法によって形成することができる。テクスチャ加工表面によって提供される増加した静止摩擦係数は、それを超えると密封装置の一部が周辺溝内で回転し始める閾値摩擦及び/又は剪断力に達するために、摩擦係数及び/又は剪断力のより大きな変化を必要とする。このことから、密封要素の静的密封側部のスティクションと密封要素の動的密封側部の摩擦係数との間の差が増加し、内部スイベル部材が外部スイベル部材に対して回転するときに密封要素の改善された円周方向の安定性を提供する。
【0013】
実施形態では、3次元テクスチャ要素は、隆起部を備え、その各々は、周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を有する。半径方向平面は、溝の半径方向と溝の中心軸との両方に対して平行な平面である。このようにして、密封要素の軸方向及び/又は半径方向スティクションを著しく増加させることなく、密封要素の回転位置における円周方向の安定性の増加が達成され得る。密封要素の軸方向及び半径方向移動は、密封要素の最適な機能を保証し、従って、そのような移動が実質的に妨げられないことが非常に好ましい。
【0014】
密封要素は、好ましくは、各々がL字形のテクスチャ加工表面の異なる脚部に当接する2つの外面を備える。
【0015】
好ましくは、L字形のテクスチャ加工表面の第1の脚部は、周辺溝の内側面に沿って延在し、L字形のテクスチャ加工表面の第2の脚部は、密封要素に面する周辺溝の別の表面の第1の部分に沿って延在し、そのため、別の表面の第2の部分は、テクスチャ加工されていない。本明細書では、密封要素は、別の表面の第1及び第2の部分の両方に当接する。テクスチャ加工されていない部分は、密封要素と周辺溝の内面との間を液体が通過することを実質的に防止するために、周辺溝の円周に沿って当接する密封要素表面区分と完全に接触している滑らかな表面である。環状空間に最も近い隣接する内面のうちの1つに沿ったテクスチャ加工表面の半径方向の長さは、密封要素と周辺溝の内面との間を液体が通過するのを実質的に防止することと、周辺溝の内側で密封要素の円周方向の安定性を提供するのに必要とされる最小限のスティクションとの間で所定の最適条件が達成されるように選ばれ得る。
【0016】
実施形態では、外部スイベル部材は、回転軸を中心として内部スイベル部材の周りを回転するように配置され、L字形のシムは、第1の脚部及び第2の脚部を備え、第1の垂直脚部は、回転軸に対して実質的に平行に延在し、第2の水平脚部は、回転軸に対して実質的に垂直な半径方向に延在する。このようにして、シムは、密封要素の2つの側部に当接する。好ましくは、第2の脚部は、半径方向における第1の脚部の長さよりも短い、例えば少なくとも2倍短い、回転軸の方向に沿った長さを有する。このようにして、溝内での密封要素の回転移動は実質的に阻止されるが、溝内での密封要素のいくらかの軸方向移動は可能なままである。
【0017】
実施形態では、テクスチャ加工表面は、実質的に350°以上にわたって、好ましくは実質的に360°にわたって、即ち円形に密封要素を取り囲むように、溝中に配置される。密封要素は、このことから、溝の円周全体の周りで溝中で回転することを実質的に防止される。
【0018】
実施形態では、テクスチャ加工表面は、周辺溝の内側面と底面の少なくとも一部とにわたって延在するスイベル部材のうちの第1のスイベル部材中の周辺溝の内面である。テクスチャ加工表面は、このことから、溝の一体部分として形成され得、密封要素は、溝のテクスチャ加工表面に直接接触するように溝中に配置され得る。
【0019】
実施形態では、密封装置は、密封要素とスイベル部材のうちの第1のスイベル部材中の周辺溝の内面との間に位置付けられたシムを備え、シムは、テクスチャ加工表面を形成する。そのようなシムは、別個に設けることができ、スイベルの既存の密封装置において本発明の実装を可能にするという追加の利点を有する。シムを溝中に挿入することができ、その後、密封要素がシムに当接するような形で密封要素を溝中に取り付けることができる。L字形のシムが使用される場合、L字形は、密封要素によって閉塞された周辺溝のコーナー中にシムを維持するのに役立つ。これは、シムが移動して、周辺溝の2つの側部上に存在するシール突出ギャップを通って内部スイベル部材と外部スイベル部材との間に詰まる場合に生じ得るスイベルの詰まりのリスクを低減する。好ましくは、シムは、金属から作られるか、又はそれを備え、例えば、テクスチャ要素を形成する複数の貫通開口部及び/又は切り欠き区分を設けられた金属板又は合金板から形成される。
【0020】
典型的には、シムは、実質的に溝の内面全体にわたっており、好ましくは、少なくとも100個のそのような貫通開口部及び/又は切り欠き区分が、シムの円周の周りに設けられる。
【0021】
実施形態では、シムは、周辺溝の円周方向に沿って延在する波状及び/又はジグザグ形状を有するか、又はシムは、周辺溝の円周方向に対して垂直に、好ましくはシムの下端に向かって延在する突出指部を備える。そのような繰り返しの形状パターンは、容易に製造される。シムは、例えば、最初にシート金属又はシート合金などのシート材料のストリップを機械加工し、ストリップ中にテクスチャ加工表面パターンを設けることによって製造され得る。製造は、例えば、ストリップを切断する及び/又はストリップ中にテクスチャ要素を設けるために、パンチング、エングレービング、レーザ切断、ウォータジェット切断又はミーリング方法の1つ以上のステップを備え得る。材料のストリップは、ストリップが配置される溝の長さに円周方向に好ましくは実質的に一致する所定の長さに切断又は機械加工される。結果として生じるシムは、シート材料の長手方向ストリップであり、テクスチャ要素を形成しているストリップの長手方向に対して垂直なそれらの長手方向を有する一連の平行な細長い開口部及び/又は溝を設けられる。シム中のいくつかの一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝が、長手方向ストリップの周辺側中に延在し得、そのため、一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝は、ストリップの周辺側上で区切られない。
【0022】
テクスチャ加工表面のパターン化されたストリップの長さが、ストリップの長手方向で見たときにL字形の断面を有するように折り曲げられる、後続の製造ステップが実行され得る。L字形は、好ましくは、ストリップの側部を通って延在するいくつかの平行な長手方向開口部のうちの少なくともいくつかと交差する折り線を有し、それは、L字形の脚部が、脚部中で面内圧縮が生じることなく、その面内曲率に適合するスイベル部材の回転軸に対して垂直な周辺溝の表面に当接するように、溝中に配置されることを可能にする。
【0023】
スイベル中への設置のために、最初にシムが周辺溝中に配置され、それに続いて密封要素が配置される。
【0024】
好ましくは、シムは、ASTM E8/E8M-16aに準拠する少なくとも100MPの引張強度と、ISO6508.1-2015に準拠する少なくとも60ロックウェルBの硬さとを有する金属材料及び/若しくは金属合金を備えるか、又はそれらから作られる。ステンレス鋼、銅合金、アルミニウム合金、及びオーステナイト系ニッケルクロムベースの合金を備える群からの材料が使用され得る。シムのための好ましい材料は、ISO規格15510:2010に列挙されるようなステンレス鋼、特にAISI316Lステンレス鋼であり、それは、腐食に耐性があり、十分な強度を有することが知られている。
【0025】
テクスチャ加工表面は、セグメントで設けられ得るが、好ましい実施形態によると、テクスチャ加工表面は、周辺溝の円周全体に沿って延在する均一にテクスチャ加工された途切れのない表面であり、摩擦力を周辺溝の円周に沿って実質的に均質にさせる。
【0026】
シムがテクスチャ加工表面を提供するために使用される場合、テクスチャ加工表面が周辺溝の円周全体に沿って延在する均一にテクスチャ加工された途切れのない表面であることは、シムがリング形状であることを意味する。そのようなリング形状のシムは、周辺溝の円周に実質的に等しい長さを有する材料のストリップとして設けられ、そのため、ストリップは、挿入されるとリングを形成し、シムが単一要素として挿入されることを可能にする。これは、製造及び保守/修理中に配置及び交換するのがより容易且つ迅速であるという利点を有する。挿入後、シムの当接端部は、例えば溶接によって恒久的なリング要素を形成するために接合され得る。
【0027】
実施形態によると、密封要素は、リップシールを備え、それは、一般的なC、U、又はV字形の向きに配置された2つの可撓性脚部を有し、両方の脚部は、内部スイベル部材及び外部スイベル部材のそれぞれの表面間に延在する。
【0028】
脚部は、スイベル部材のうちの第2のスイベル部材がシールの表面に沿って摺動するシールの走行側部において、シールを圧力変化及びスイベル部材の表面の滑らかさの変化に適合可能にする。これは、C、U又はV字形のシールが、スイベル部材が互いに対して回転することを可能にしつつ、内部スイベル部材と外部スイベル部材との間のギャップの確実な密封を提供することを可能にする。
【0029】
実施形態では、密封要素は、テクスチャ加工表面に当接する、即ち、シムによって提供されるテクスチャ加工表面又は内部溝のテクスチャ加工表面に当接するバックアップリング要素を更に備える。バックアップリングは、密封要素の動的部分が環状通路に対してその下流の狭い通路へと変形するのを防止するために、密封要素の動的密封側部よりも硬い材料から製造される。そのようなはバックアップリングは、密封装置を高圧スイベルでの使用に適したものにする。バックアップリングは、好ましくは、2つの可撓性脚部が接続される密封要素の一部分の周りの密封要素の動的密封側部の周りに配置される。
【0030】
第2の態様によると、本発明は、密封装置のためのシムを提供し、シムは、密封装置が配置されることになる周辺溝の1つ以上の内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面を形成するように適合され、シムは、テクスチャ要素を形成するストリップの長手方向に対して垂直な一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝を設けられた、シート材料の長手方向ストリップである。
【0031】
実施形態では、シム中のいくつかの一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝が、長手方向ストリップの側部中に延在し、そのため、一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝は、長手方向ストリップの側部上で区切られない。
【0032】
実施形態では、シムは、長手方向に見られるとL字形であり、L字形は、長手方向ストリップの側部を通って延在するいくつかの一連の平行な長手方向開口部のうちの少なくともいくつかと交差する折り線を有する。
【0033】
第3の態様によると、本発明は、第2の態様によるシムと、シム内に同心円状に配置され、シムに当接する密封要素とのアセンブリを提供する。
【0034】
第4の態様によると、本発明は、スイベルの周辺溝中に密封要素を取り付ける方法を提供し、方法は、周辺溝の2つの隣接する内面の少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのテクスチャ加工表面を周辺溝中に設けることと、テクスチャ加工表面は、周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を各々有するテクスチャ要素を有する、1つの表面の少なくとも一部が2つの隣接するテクスチャ加工表面のうちの一方に当接し、密封要素の1つの隣接する表面が隣接するテクスチャ加工表面のうちの他方に当接するように、周辺溝内に密封要素を挿入することとを備える。スイベルは、好ましくは、内部スイベル部材及び内部スイベル部材の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材を備え、スイベル部材は、スイベル部材間の境界面における環状空間を通して互いと連通するそれぞれの流体経路を有する。密封要素が溝中に配置された後、本発明の第1の態様によるスイベルが得られ得る。
【0035】
本発明によるスイベルの実施形態を、添付の図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】内部スイベル部材と外部スイベル部材との間に環状空間を有し、環状空間の漏れを防止するための密封装置を備えるスイベルの一部を示す。
【
図2A】
図1の断面IIの拡大図におけるピストン密封装置を示す。
【
図2B】
図1の断面IIの拡大図における面密封装置を示す。
【
図3A】溝の一部として形成されたテクスチャ加工表面がシールに当接する、本発明の実施形態による密封装置の半径方向断面図を示す。
【
図3B】前記テクスチャ加工表面の概略等角図を示す。
【
図4A】テクスチャ加工表面を形成するシムが溝中に挿入される、本発明の実施形態による密封装置の半径方向断面図を示す。
【
図4B】バックアップリング要素に当接するそのようなシムを備える、本発明の実施形態による密封装置の半径方向断面図を示す。
【
図5A】本発明の実施形態によるシムの区分におけるテクスチャ加工表面の例を示す。
【
図5B】本発明の実施形態によるシムの区分におけるテクスチャ加工表面の例を示す。
【
図5C】本発明の実施形態によるシムの区分におけるテクスチャ加工表面の例を示す。
【
図5D】本発明の実施形態によるシムの区分におけるテクスチャ加工表面の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、ライザー又は同様のものに接続された入口パイプ3によって画定された流体経路から、前記ライザーの周りでウェザーベーニングしている船舶上の貯蔵設備に接続されたパイプ4によって画定された流体経路に、流体、例えば、LNG又は炭化水素の液体混合物などの液体を移送するための、内部スイベル部材2と外部スイベル部材1との間に環状空間5を有するスイベル10の一部を示す。スイベル10は、環状空間5の漏れを防止するための密封装置20を備え、その密封装置20は、内部スイベル部材2と外部スイベル部材1との間のギャップにおいて、環状空間5の両側上に、環状空間5に対して平行に位置付けられる。内部スイベル部材2及び外部スイベル部材1は、長手方向回転軸Vを中心として同軸上に配置された管状部材であり、環状空間5及び密封装置20の両方が、内部スイベル部材2の外壁及び外部スイベル部材1の内壁の全周に沿って延在する。環状空間5の上方及び下方の密封装置20は、スイベルの動作位置において密封機能を実行するような形で位置する。
【0038】
図2A及び2Bは、
図1の断面IIにおいて使用され得るようなピストン密封装置及び面密封装置をそれぞれ示し、どちらのタイプの密封装置も、一般に使用される。
【0039】
図2Aでは、環状空間5の上方及び下方の外部スイベル部材1の内壁及び内部スイベル部材2の外壁は、垂直壁である。密封装置20は、外部スイベル部材1の内壁中に、環状空間5の上方及び下方にいくらか距離を隔てて設けられる。密封装置20は、その内側に密封要素が位置する周辺溝7を備え、外部スイベル部材1の内壁に対して静止位置を有し、且つ外部スイベル部材1に対する内部スイベル部材2の回転中に動的密封を提供するための、内部スイベル部材2の外壁に当接する走行面を有する。密封要素を形成し得るか、又はその一部であり得るリップシールの凹状側は、環状空間5から延在する、内部スイベル部材2の外壁と外部スイベル部材1の内壁との間の空間に対して平行に位置付けられる。このことから、チャンバ5中の流体の圧力が内部スイベル部材2と外部スイベル部材1との間のギャップの下流側8における圧力よりも大きいとき、リップシールの脚部は、押し離されて内部スイベル部材と外部スイベル部材との間にシールを提供する。
【0040】
図2Bでは、内部スイベル部材2’の外壁及び外部スイベル部材1’の内壁は、スイベル部材が互いに対してそれらの回転可能性を維持しながら、環状空間から延びるより長いチャネルがそれぞれの壁の間に形成されるような、締まり嵌めを有する段付き壁である。周辺溝7’は、内部スイベル部材2’の外壁中に、チャネルに沿った所定のロケーションにおいて、環状空間5の上方及び下方にいくらか距離を隔てて設けられる。密封装置20は、周辺溝7’中に設けられ、内部スイベル部材2’の外壁に対して静止位置を有し、且つ外部スイベル部材1’に対する内部スイベル部材2’の回転中に動的密封を提供するための、外部スイベル部材1’の内壁に当接する走行面を有する。密封装置20の一部であるリップシールの開口部は、環状空間5から延在する、内部スイベル部材2’の外壁と外部スイベル部材1’の内壁との間の空間に対して垂直に位置付けられる。
【0041】
外部スイベル部材1の内壁及び内部スイベル部材2の外壁の代替の形状、並びにその中に位置する密封装置20を有する周辺溝の位置付けが可能である。
【0042】
密封要素は、
図2Aに図示するピストン密封装置20中に配置されるように、
図3A、4A及び4Bに関連してより詳細に説明する。これらの密封要素が、
図2Bに図示する面密封装置20’中で必要な変更を加えて使用され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0043】
図3Aは、本発明の実施形態による密封装置20の半径方向断面図を概略的に示し、それにおいて、周辺溝7が、外部スイベル部材1の内壁中に設けられ、溝の内面中に機械加工されたテクスチャ加工表面23が、密封要素25に当接する。
図3Aでは見えないが、テクスチャ加工表面23の3次元構造要素39a、39bは、
図3Bに概略的に示す。
【0044】
密封要素25は、U字形を有するリップシールであり、オフショアスイベルで使用されるものとして良く知られている。リップシールは、周辺溝7の内側に位置付けられ、前記溝の底面11に当接する第1の外部脚部面27を有し、内部スイベル部材2の外壁に当接する第2の外部脚部面26を有する。第1及び第2の脚部を接続するシールの側部は、周辺溝7の内側面12に当接し、その内側面は、溝の底面11に隣接する。密封要素25の脚部は、外向きに押圧し、内部スイベル部材と外部スイベル部材との間の密封効果を達成する。周辺溝7の底面11及び隣接する内側面12は、内側面12及び底面11の一部にわたって延在するテクスチャ加工表面23を備える。テクスチャ加工表面23は、周辺溝7の内側の密封要素25の増加したスティクションを提供し、このようにして、その中でのシールの円周方向の安定性を改善する。周辺溝の内側面12に隣接しない底面11の一部は、実質的に滑らかであり、密封要素に密封的に当接するための密封ゾーンを提供するテクスチャ加工されていない区分を有する。密封ゾーンは、リップシールの少なくとも先端28に当接する底面11の区分に沿って半径方向に延在する。密封ゾーンは、一般に、環状空間5を通って流れる液体がシールを通過するのを防止する。しかしながら、既知の密封システムでは、比較的少量の液体が、例えばシール又は前記内面の不完全性により、シールと周辺溝の内面のうちの1つ以上との間に閉じ込められることが知られている。テクスチャ加工表面23は、そのような閉じ込められた液体がテクスチャ要素を通過してギャップの下流側8に排出されることを可能にする。テクスチャ要素は、テクスチャ加工表面の下端23aからテクスチャ加工表面の上端23bまで延び得、上端は、内部スイベル部材2と外部スイベル部材1との間のギャップの下流側8に又はその近くにある。
【0045】
図3Bは、表面11、12が隆起部39a、39bの形態の3次元テクスチャ要素を設けられたテクスチャ加工表面である溝7の一部分の等角図を概略的に示す。隆起部39a、39bは、溝の半径方向平面中にそれらの長手方向に延在する。
図3Bに示す連続隆起部39a、39bの代わりに、溝の半径方向平面に沿ってよりも大きな密封要素との摩擦を回転方向に提供するように適合された他の種類の3次元テクスチャ要素を使用することができることが認識されるであろう。例えば、隆起部に加えて又はその代わりに、溝、窪み、及び/又は突起などのテクスチャ要素が使用され得る。そのようなテクスチャ要素は、密封要素25の当接面中に押し込まれ、密封要素と周辺溝の内面との間の接触面積を効果的に増加させ、溝の表面(複数可)と密封要素との間のグリップを改善する。
【0046】
図4Aは、本発明の別の実施形態による密封装置20’の半径方向断面図を概略的に示し、それにおいて、溝の内面は、実質的に滑らかである。即ち、周辺溝7の内面は、スイベル中の既知の周辺溝の内面と同様の滑らかさ及び表面仕上げを有し得る。密封要素25と溝の内面との間に十分な摩擦を提供するために、テクスチャ加工表面23’を形成するシム30が設けられる。シム30はL字形であり、周辺溝の内側面12の高さに沿って延在する垂直脚部を有し、周辺溝7の底面11の区分に沿って延在する水平脚部を有する。垂直脚部は、自由端23’bと、水平脚部に合流する端部23’cとを有し、水平脚部は、自由端23’aを有する。シム30の形状は、密封要素25に当接するテクスチャ加工表面23’を提供し、その例は、
図4A~4Cに示す。
図4Aに図示する構成の利点は、シム30をスイベル中の既存の密封装置に追加することができることである。
【0047】
図4Bは、本発明の実施形態による密封装置20’’の半径方向断面図を概略的に示し、密封要素は、加えて、バックアップリング要素21を設けられる。バックアップリング要素21は、リップシールの第1及び第2の脚部を接続するリップシールの側部がバックアップリング21の内周面に当接し、バックアップリング21の外周面がシム30の内周面に当接するように、密封要素25の動的側部とシム30との間に位置付けられる。バックアップリング21は、密封要素25の動的側部よりも硬い材料から製造され、動的側部が内部スイベル部材2と外部スイベル部材1との間の下流ギャップ8へと変形するのを実質的に防止するように適合される。このことから、バックアップリング要素21の追加は、密封装置20’’が高圧スイベル中で使用されることを可能にする。そのようなバックアップリングはまた、
図4Aに示すように、周辺溝のテクスチャ加工内面と組み合わせて使用され得ることが理解されるであろう。
【0048】
図5A及び5Bは、テクスチャ加工表面を設けられたシム30’の区分の平坦図及び等角図をそれぞれ示す。
図5C及び5Dは、テクスチャ加工表面を設けられた代替のシム30’’及び30’’’の区分の平坦図を示す。シムの区分のみを示しているが、各シムは、シムが配置される溝の長さに実質的に対応する長さであり得ることが認識されるであろう。
【0049】
図5A及び5Bに示すシム区分30’は、周辺溝の円周方向Lに延在するジグザグ形状を有し、ジグザグ形状は、シムの下端23’a及び上端23’bの近くに内部コーナーC1、C2をそれぞれ有する。
図5Aでは、シム区分30’は、折り曲げられていないストリップとして示す。溝中に配置されるより前に、ストリップの下端23’aは、好ましくは、2つの端部が互いに対して実質的に垂直な角度になるように、折り線Fの周りでストリップの上端23’bに対して折り曲げられる。
【0050】
内部コーナーC1は、上端23’bで開口する細長い開口部31に面しており、内部コーナーC2は、下端23’aで開口する細長い開口部32に面している。シムは、このことから、3次元テクスチャ加工表面を提供し、開口部31、32、特にその縁部は、密封要素との摩擦接触するためのテクスチャ要素を形成する。シムが溝中に配置されるとき、開口部31の長手方向は、溝の半径方向平面中に配置されるであろう。
【0051】
図5Bに示すように、シム30’がL字形の断面を有するように折り曲げられたとき、開口部31は、液体がテクスチャ加工表面の下端23’aからテクスチャ加工表面の上端23’bまでシム30’中の開口部31の各々を通って流れることができるように、折り線Fの第1の側部からその第2の側部まで延在する。これは、ジグザグ形状に優れたフラッシング能力を提供し、ジグザグ形状を閉じ込められた液体の除去のための好ましい形状にする。シム区分30’は、
図4Bの周辺図において折り曲げられた状態で示す。垂直脚部の下端23’cは、折り線Fにおいて形成される。
【0052】
図5Cに示すシム区分30’’は、周辺溝の円周方向Lに延在する材料のストリップであり、ストリップの折り線Fに沿った折り曲げ位置の上方の位置から、テクスチャ加工表面の下端23’aを形成する下端に、周辺溝の円周方向に対して垂直に延在し、互いから実質的に等しい距離で離間された、実質的に等しい幅及び長さの一連の指部33を有する。実質的に等しい長さを有し、互いから等しい距離で離間された、周辺溝の円周方向Lに対して垂直に延在する一連の長手方向開口部35が、指部33の上方のストリップ中に設けられ、各開口部35は、テクスチャ加工表面の上端23’bを形成する上端の近くで閉じられる。テクスチャ加工表面の上端23’bと下端23’aとの間に不連続に形成される開口部は、閉じ込められた液体のためのより直接的でない、従ってより遅い流路を提供するが、円周方向Lへの改善された強度及び安定性をテクスチャ加工表面に提供する。
【0053】
図5Dに示すシム区分30’’’は、
図5Aに示すジグザグ形状と同様のジグザグ形状を有するが、各ジグザグの垂直区分36が、その水平区分37の高さhより大きい幅Wを有し、周辺溝の円周方向Lに対して垂直に延在する長手方向開口部38を設けられ、各開口部が、シム区分によって提供されるテクスチャ加工表面の下端23’a及び上端23’bを形成する上端及び下端の近くで閉じられる点が異なる。シム30’’’が折り線Fに沿って折り曲げられてL字形の断面を有するとき、液体は、シム中の開口部31、38の各々から、内部スイベル部材と外部スイベル部材との間のギャップの下流側に向かって流れることができる。
【0054】
シム区分30’、30’’、30’’’は、ばね付勢シールのためのばねを形成するために一般に使用される材料の一般に入手可能なストリップから、又は特別に機械加工されたシムストリップから形成され得る。これらのシムストリップは、パンチング、エングレービング、レーザ切断、ウォータジェット切断又はミーリングなどの技法を使用して機械加工され得る。シムストリップを得た後、前記ストリップは、折り線Fに沿って曲げられて、L字形の断面を有するシムを形成する。シムは、複数のシムが単一の周辺溝中で使用されて全周に沿ってテクスチャ加工表面区分を提供するように、周辺溝の円周と比較して比較的短い長さを有し得る。好ましくは、シムストリップは、連続的にパターン化された内面区分が全周に沿って存在するように、結果として生じるシムが周辺溝の円周全体を覆うのに十分な長さであるような長さである。後者の場合、シムの2つの端部は、円形のシムを形成するために、例えば溶接を使用して接合され得る。シムが周辺溝中に挿入されるとき、シムは、シムの垂直脚部が周辺溝7の隣接する内側面12の曲率に適合するように湾曲し、シムの水平脚部の隣接する端部の半径を自動的に決定し、水平脚部の反対側の自由端がより小さい半径を取ることを強制する。
図5A~5Cに示すシム区分では、折り線Fの下方の下端は、複数の等距離セグメントを備え、過度の圧縮力を受けることなく下端が面内曲げを受けることを可能にする。
【0055】
本発明を、図面に示すようないくつかの例証的な実施形態を参照して上記に説明してきた。いくつかの部分又は要素の修正及び代替実装が可能であり、添付された特許請求の範囲に定義される保護の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイベルであって、前記スイベルは、
内部スイベル部材(2)及び前記内部スイベル部材(2)の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材(1)と、ここにおいて、前記両スイベル部材は、前記両スイベル部材間の境界面における環状空間(5)を通して互いと連通するそれぞれの流体経路(3,4)を有する、
前記境界面における前記環状空間の側部上の密封装置(20)と
を備え、前記密封装置は、
-前記内部スイベル部材(2)及び/又は前記外部スイベル部材(1)中に設けられた周辺溝(7,7’)と、
-前記周辺溝(7)内に受け入れられ、前記周辺溝の内側で前記スイベル部材(1,2)のうちの第1のスイベル部材に対して静的に密封し、前記スイベル部材(2,1)のうちの第2のスイベル部材に対して動的に密封するように配置された密封要素(25)と
を備え、前記密封要素(25)に当接する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内側の表面は、前記周辺溝の2つの内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面(11,12)であり、前記テクスチャ加工表面(11,12)は、前記密封要素と摩擦接触するための3次元テクスチャ要素を有し、前記周辺溝の半径方向平面に対して垂直に見られる前記テクスチャ加工表面の断面形状は、実質的にL字形であ
り、
前記密封装置は、前記密封要素(25)と前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内周面の間に位置したシム(30,30’,30’’,30’’’)を備え、
前記シムは、前記L字形のテクスチャ加工表面を形成し、そして、
前記L字形のテクスチャ加工表面の第1の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の内側面(12)に沿って延在し、前記L字形のテクスチャ加工表面の第2の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の底面(11)の第1の部分に沿って延在し、そのため、前記底面(11)の第2の部分は、テクスチャ加工されておらず、前記密封要素(25)は、前記底面(11)の前記第1の部分及び第2の部分の両方に当接する、
スイベル。
【請求項2】
前記テクスチャ要素は、隆起部を備え、その各々は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を有する、請求項1に記載のスイベル。
【請求項3】
前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の前記内側面(12)と前記底面(11)の少なくとも一部とにわたって延在する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内面である、請求項
1又は2に記載のスイベル。
【請求項4】
前記シム(30’)は、前記周辺溝の円周方向に沿って延在する波状及び/又はジグザグ形状を有するか、又は前記シム(30’’)は、前記周辺溝の円周方向に対して垂直に、好ましくは前記シムの下端に向かって延在する突出指部を備える、請求項
1~3のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項5】
前記シムは、シート材料の長手方向ストリップから形成され、それにおいて、前記長手方向ストリップの前記長手方向に対して垂直の一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝が、前記3次元テクスチャ要素を形成する、請求項
1~4のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項6】
前記シムの前記波状、ジグザグ、及び/又は突出指部は、前記長手方向ストリップの側部中に延在する前記シム中のいくつかの一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝によって形成され、そのため、前記一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝は、前記長手方向ストリップの前記側部上で区切られない、請求項
5に記載のスイベル。
【請求項7】
前記シムは、前記長手方向に見られるとL字形であり、前記L字形は、前記長手方向ストリップの側部を通って延在する前記いくつかの前記一連の平行な長手方向開口部のうちのいくつかと交差する折り線を有する、請求項
6に記載のスイベル。
【請求項8】
前記シムは、金属材料及び/若しくは金属合金を備えるか、又はそれらから作られ、ASTM E8/E8Mに準拠する少なくとも100MPの引張強度と、ISO6508.1-2015に準拠する少なくとも60ロックウェルBの硬さとを有する、請求項
1~7のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項9】
前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の円周全体に沿って延在する均一にテクスチャ加工された途切れのない表面である、請求項1~
8のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項10】
前記密封要素は、リップシールを備え、それは、一般的なC、U、又はV字形の向きに配置された2つの可撓性脚部を有し、両方の脚部は、前記内部スイベル部材及び外部スイベル部材のそれぞれの表面間に延在する、請求項1~
9のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項11】
前記密封要素は、前記テクスチャ加工表面に当接するバックアップリング要素(21)を更に備える、請求項1~
10のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
【請求項12】
スイベルの周辺溝中に密封要素を取り付ける方法であって、前記方法は、
前記周辺溝の2つの隣接する内面の少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのテクスチャ加工表面(11,12)を前記周辺溝中に設けることと、前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を各々有するテクスチャ要素を有する、
前記密封要素の1つの表面の少なくとも一部が2つの隣接する前記テクスチャ加工表面のうちの一方に当接し、前記密封要素の1つの隣接する表面が前記隣接するテクスチャ加工表面のうちの他方に当接するように、前記周辺溝(7)内に密封要素(25)を挿入することと
、
前記密封要素(25)と前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内周面の間にシム(30,30’,30’’,30’’’)を位置することと、前記シムは、L字形のテクスチャ加工表面を形成し、そして、前記L字形のテクスチャ加工表面の第1の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の内側面(12)に沿って延在し、前記L字形のテクスチャ加工表面の第2の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の底面(11)の第1の部分に沿って延在し、そのため、前記底面(11)の第2の部分は、テクスチャ加工されておらず、前記密封要素(25)は、前記底面(11)の前記第1の部分及び第2の部分の両方に当接する、
を備える、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
本発明を、図面に示すようないくつかの例証的な実施形態を参照して上記に説明してきた。いくつかの部分又は要素の修正及び代替実装が可能であり、添付された特許請求の範囲に定義される保護の範囲に含まれる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] スイベルであって、前記スイベルは、
内部スイベル部材(2)及び前記内部スイベル部材(2)の周りに回転可能に配置された外部スイベル部材(1)と、ここにおいて、前記両スイベル部材は、前記両スイベル部材間の境界面における環状空間(5)を通して互いと連通するそれぞれの流体経路(3,4)を有する、
前記境界面における前記環状空間の側部上の密封装置(20)と
を備え、前記密封装置は、
-前記内部スイベル部材(2)及び/又は前記外部スイベル部材(1)中に設けられた周辺溝(7,7’)と、
-前記周辺溝(7)内に受け入れられ、前記周辺溝の内側で前記スイベル部材(1,2)のうちの第1のスイベル部材に対して静的に密封し、前記スイベル部材(2,1)のうちの第2のスイベル部材に対して動的に密封するように配置された密封要素(25)と
を備え、前記密封要素(25)に当接する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内側の表面は、前記周辺溝の2つの内面の少なくとも一部に沿って延在するテクスチャ加工表面(11,12)であり、前記テクスチャ加工表面(11,12)は、前記密封要素と摩擦接触するための3次元テクスチャ要素を有し、前記周辺溝の半径方向平面に対して垂直に見られる前記テクスチャ加工表面の断面形状は、実質的にL字形である、スイベル。
[2] 前記テクスチャ要素は、隆起部を備え、その各々は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を有する、[1]に記載のスイベル。
[3] 前記L字形のテクスチャ加工表面の第1の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の内側面(12)に沿って延在し、前記L字形のテクスチャ加工表面の第2の脚部は、前記周辺溝(7,7’)の底面(11)の第1の部分に沿って延在し、そのため、前記底面(11)の第2の部分は、テクスチャ加工されておらず、前記密封要素(25)は、前記底面(11)の前記第1の部分及び第2の部分の両方に当接する、[1]又は[2]に記載のスイベル。
[4] 前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の前記内側面(12)と前記底面(11)の少なくとも一部とにわたって延在する前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内面である、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[5] 前記密封装置は、前記密封要素(25)と前記スイベル部材のうちの前記第1のスイベル部材中の前記周辺溝の内面との間に位置付けられたシム(30,30’,30’’,30’’’)を備え、前記シムは、前記テクスチャ加工表面を形成する、[1]~[3]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[6] 前記シム(30’)は、前記周辺溝の円周方向に沿って延在する波状及び/又はジグザグ形状を有するか、又は前記シム(30’’)は、前記周辺溝の円周方向に対して垂直に、好ましくは前記シムの下端に向かって延在する突出指部を備える、[5]に記載のスイベル。
[7] 前記シムは、シート材料の長手方向ストリップから形成され、それにおいて、前記長手方向ストリップの前記長手方向に対して垂直の一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝が、前記3次元テクスチャ要素を形成する、[5]又は[6]に記載のスイベル。
[8] 前記シムの前記波状、ジグザグ、及び/又は突出指部は、前記長手方向ストリップの側部中に延在する前記シム中のいくつかの一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝によって形成され、そのため、前記一連の平行な長手方向開口部及び/又は溝は、前記長手方向ストリップの前記側部上で区切られない、[7]に記載のスイベル。
[9] 前記シムは、前記長手方向に見られるとL字形であり、前記L字形は、前記長手方向ストリップの側部を通って延在する前記いくつかの前記一連の平行な長手方向開口部のうちのいくつかと交差する折り線を有する、[8]に記載のスイベル。
[10] 前記シムは、金属材料及び/若しくは金属合金を備えるか、又はそれらから作られ、ASTM E8/E8Mに準拠する少なくとも100MPの引張強度と、ISO6508.1-2015に準拠する少なくとも60ロックウェルBの硬さとを有する、[5]~[9]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[11] 前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の円周全体に沿って延在する均一にテクスチャ加工された途切れのない表面である、[1]~[10]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[12] 前記密封要素は、リップシールを備え、それは、一般的なC、U、又はV字形の向きに配置された2つの可撓性脚部を有し、両方の脚部は、前記内部スイベル部材及び外部スイベル部材のそれぞれの表面間に延在する、[1]~[11]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[13] 前記密封要素は、前記テクスチャ加工表面に当接するバックアップリング要素(21)を更に備える、[1]~[12]のうちのいずれか一項に記載のスイベル。
[14] スイベルの周辺溝中に密封要素を取り付ける方法であって、前記方法は、
前記周辺溝の2つの隣接する内面の少なくとも一部に沿って延在する少なくとも1つのテクスチャ加工表面(11,12)を前記周辺溝中に設けることと、前記テクスチャ加工表面は、前記周辺溝の半径方向平面中に実質的に延在する長手方向を各々有するテクスチャ要素を有する、
前記密封要素の1つの表面の少なくとも一部が2つの隣接する前記テクスチャ加工表面のうちの一方に当接し、前記密封要素の1つの隣接する表面が前記隣接するテクスチャ加工表面のうちの他方に当接するように、前記周辺溝(7)内に密封要素(25)を挿入することと
を備える、方法。
【国際調査報告】