(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ポリマー混合物、それを含有する多層物品、及び多層物品の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20230509BHJP
C08L 33/00 20060101ALI20230509BHJP
C08L 97/02 20060101ALI20230509BHJP
B32B 25/02 20060101ALI20230509BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L33/00
C08L97/02
B32B25/02
B32B27/30 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544126
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2020073735
(87)【国際公開番号】W WO2021146987
(87)【国際公開日】2021-07-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】チャン、リャン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェイ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK25A
4F100AK25B
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4J002AC00W
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(57)【要約】
高速乾燥時間、並びに良好な引張強度及び破断点伸び特性を有する新規ポリマー混合物、ポリマー混合物から作製されたベース層及び上層を含む多層物品、並びに多層物品を調製する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性バインダー組成物と、加硫又は架橋されたゴムと、繊維と、を含むポリマー混合物であって、前記水性バインダー組成物が、
(a)-5℃以下のガラス転移温度を有する第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、
(b)少なくとも15℃のガラス転移温度を有する第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、
を含み、
前記加硫又は架橋されたゴムが1mm~4mmのふるい粒径を有し、前記繊維が、1mm~5mmの長さ及び5マイクロメートル~10mmの平均直径を有し、ココナツ殻繊維、木繊維、又はそれらの混合物から選択される、ポリマー混合物。
【請求項2】
総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:7~1:2であり、前記繊維と前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:40~1:6である、請求項1に記載のポリマー混合物。
【請求項3】
総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:6~1:3.5であり、前記繊維と前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:35~1:7.5である、請求項2に記載のポリマー混合物。
【請求項4】
前記水性バインダー組成物が、前記アクリルエマルジョン(コ)ポリマーの総重量を基準にして、5重量%~95重量%の前記第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー、及び5重量%~95重量%の前記第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項5】
前記第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと前記第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーが各々、重合単位として、少なくとも1つのエチレン性不飽和非イオン性モノマーと、カルボニル、アセトアセテート、アルコキシシラン、カルボキシル、ウレイド、アミド、イミド、若しくはアミノ基、又はこれらの混合物から選択される少なくとも1つの官能基を有する少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーと、を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー混合物。
【請求項6】
(i)請求項1~5のいずれか一項に記載の乾燥させたポリマー混合物のベース層と、(ii)乾燥させたトップコーティング組成物の上層と、を含む多層物品であって、前記トップコーティング組成物が、水性バインダー組成物及び加硫又は架橋されたゴムを含み、前記水性バインダー組成物が、
(a)-5℃以下のガラス転移温度を有する第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、
(b)少なくとも15℃のガラス転移温度を有する第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、
を含み、
前記トップコーティング組成物中の前記加硫又は架橋されたゴムが、1mm~4mmのふるい粒径を有し、総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:0.5~1:4である、多層物品。
【請求項7】
前記多層物品が、少なくとも10mmの厚さを有し、前記ベース層の前記多層物品に対する体積比が、40%~95%であり、前記上層の前記多層物品に対する体積比が、5%~60%である、請求項6に記載の多層物品。
【請求項8】
請求項6に記載の多層物品を調製する方法であって、
(1)請求項1に記載のポリマー混合物を提供することと、
(2)前記ポリマー混合物を基材に塗布することと、
(3)前記ポリマー混合物を乾燥及び硬化させて、ベース層を形成することと、
(4)トップコーティング組成物を提供することであって、前記トップコーティング組成物が、水性バインダー組成物及び加硫又は架橋されたゴムを含み、前記水性バインダー組成物が、(a)-5℃以下のガラス転移温度を有する第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、(b)少なくとも15℃のガラス転移温度を有する第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーとを含み、前記トップコーティング組成物中の前記加硫又は架橋されたゴムが、1mm~4mmのふるい粒径を有し、総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと前記加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:0.5~1:4である、ことと、
(5)前記トップコーティング組成物を前記ベース層に塗布することと、
(6)前記ベース層が前記基材と前記上層との間に存在するように、前記トップコーティング組成物を乾燥及び硬化させて、上層を形成することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー混合物及び乾燥させたポリマー混合物を含む多層物品、並びに多層物品を調製する方法に関する。
【0002】
序論
ランニング用トラック表面などの合成スポーツトラック表面は、典型的には、バインダーシステムとゴムとの混合物から作製される。
【0003】
従来の2成分ポリウレタンバインダーから作製されたスポーツトラック表面は、それらの満足のいく可撓性、耐摩耗性、滑り防止特性、及び容易なメンテナンスのために、市場において支配的である。これらの従来の2成分ポリウレタンバインダーは、通常、トルエンジイソシアネート(TDI)又はメチレンジフェニルジイソシアネート、有機溶媒、及び/又は重金属含有触媒を含み、これらは有毒である又は環境に優しくない可能性がある。
【0004】
従来の2成分ポリウレタンバインダーと比較して、アクリルラテックスバインダーは、環境上の懸念がはるかに少ない。アクリルラテックスバインダーは、複数の薄層のアクリルバインダーを含み得、各層の厚さは、典型的には1ミリメートル(mm)未満である。しかしながら、アクリルラテックスバインダーは、通常、厚く塗布される場合、室温、例えば、21℃~25℃の温度で乾燥するのに時間がかかりすぎる。したがって、アクリルラテックスバインダーは、ランニング用トラック又はジョギングトラックなどの用途では稀にしか使用されず、その表面は典型的には13mm以上の厚さを有する。
【0005】
したがって、従来のアクリルラテックス系組成物よりも室温でより速く乾燥する、また十分な引張強度、破断点伸び、及びプルオフ強度を有する合成スポーツトラック表面を調製するのに好適である、新規のポリマー混合物を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、異なるガラス転移温度を有する少なくとも2つのアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、加硫又は架橋されたゴムと、ココナツ殻繊維、木繊維、又はそれらの混合物から選択される繊維と、を含む新規なポリマー混合物を提供する。本発明のポリマー混合物は、溶媒を実質的に含まず、室温で、従来のアクリルラテックスバインダー及びゴムのみを含む組成物よりも速く乾燥する。本発明のポリマー混合物は、望ましい引張強度、破断点伸び、及び乾燥速度特性を示す。
【0007】
本発明はさらに、ポリマー混合物から作製されたベース層及び上層を含む多層物品を提供する。本発明の多層物品は、望ましい引張強度、破断点伸び、及びプルオフ強度特性を示す。
【0008】
第1の態様では、本発明は、水性バインダー組成物と、加硫又は架橋されたゴムと、繊維と、を含むポリマー混合物であって、
水性バインダー組成物が、
(a)-5℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、
(b)少なくとも15℃のTgを有する第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、を含み、
加硫又は架橋されたゴムが、1mm~4mmのふるい粒子サイズを有し、総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:7~1:2であり、
繊維が、1mm~5mmの長さ及び5マイクロメートル~10mmの平均直径を有し、ココナツ殻繊維、木繊維、又はそれらの混合物から選択され、繊維と加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:40~1:6である、ポリマー混合物である。
【0009】
第2の態様では、本発明は、多層物品であって、
(1)第1の態様の乾燥させたポリマー混合物のベース層と、
(2)水性バインダー組成物及び加硫又は架橋されたゴムを含む乾燥させた水性トップコーティング組成物の上層と、を含む、多層物品である。
【0010】
第3の態様では、本発明は、第2の態様の多層物品を調製する方法である。この方法は、
(1)第1の態様のポリマー混合物を提供することと、
(2)ポリマー混合物を基材に塗布することと、
(3)ポリマー混合物を乾燥及び硬化させて、ベース層を形成することと、
(4)第2の態様の水性コーティング組成物を提供することと、
(5)水性トップコーティング組成物をベース層に塗布することと、
(6)ベース層が基材と上層との間に存在するように、水性トップコーティング組成物を乾燥及び硬化させて上層を形成することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のポリマー混合物は、水性バインダー組成物と、加硫又は架橋されたゴムと、繊維とを含む。
【0013】
本発明において有用な水性バインダー組成物は、(a)-5℃以下のTgを有する第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、(b)少なくとも15℃のTgを有する第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーと、を含む。本発明におけるTgの値は、フォックス方程式(T.G.Fox、Bull.Am.Phys.Soc.1,123(1956)により計算される。本明細書における「水性」という用語は、混合物の重量を基準にして、50重量%(wt%)以下の水混和性溶媒を含む、水又は水混合物を意味する。本明細書における「アクリル」という用語は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、及びこれらの変性形態、例えば(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルを指す。「(メタ)アクリル」という用語は、アクリル、メタアクリル、及びこれらの混合物のいずれかを指す。
【0014】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、1つ以上の共重合したエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含んでもよい。本明細書における「非イオン性モノマー」とは、pH=1~14の間にイオン電荷を持たない重合性モノマーを指す。好適なエチレン性不飽和非イオン性モノマーの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ジメタクリル酸1,3-ブタンジオール、及びメタクリル酸ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステルモノマー;アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;スチレン及び置換スチレン;又はこれらの混合物が挙げられる。エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、又はこれらのスチレンとの組み合わせを含む。好ましい実施形態では、エチレン性不飽和非イオン性モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルモノマーのみを含む。
【0015】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、1つ以上の官能基を有する1つ以上の共重合したエチレン性不飽和モノマーをさらに含んでもよい。官能基は、カルボニル、アセトアセテート、アルコキシシラン、カルボキシル、ウレイド、アミド、イミド、アミノ基、又はこれらの混合物から選択されてもよい。好ましくは、ジアセトンアクリルアミドなどのカルボニル基を有するエチレン性不飽和モノマーが使用される。好適な官能基含有エチレン性不飽和モノマーの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸又はジカルボン酸;アミド、好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、及びヒドロキシプロピルメタクリレートなどの上記カルボン酸のアミド、好ましくはN-アルキルアミド又はヒドロキシアルキルエステル;又はこれらの混合単位から構成され得る。
【0016】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、それぞれ第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの重量を基準にして、0.01重量%以上、0.05重量%以上、又はさらに0.1重量%以上で、同時に、20重量%以下、10重量%以下、又はさらに5重量%以下の共重合した官能基含有エチレン性不飽和モノマーを含んでもよい。
【0017】
好ましい実施形態では、第1及び第2のエマルジョンアクリル(コ)ポリマーは各々、それぞれ第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの重量を基準にして、70重量%~99.5重量%の上記共重合したエチレン性不飽和非イオン性モノマー、及び0.5重量%~10重量%の上記1つ以上の官能基を有する共重合したエチレン性不飽和モノマーを含む。
【0018】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、1つ以上の共重合した界面活性剤をさらに含んでもよい。界面活性剤は、好ましくはアリル基を有する。適切な市販の界面活性剤としては、例えば、Cognisから入手可能なアルキルアリルスルホコハク酸ナトリウムをベースとするTREM LF-40界面活性剤、Adekaから入手可能なADEKA Resoap SR-10反応性アニオン乳化剤、Dexterから入手可能なリン酸アンモニウムエステルノニルフェノールエトキシレートをベースとするDEXTROL OC-1525界面活性剤、Kao Chemicalsから入手可能なLATEMUL PD-104アニオン重合性界面活性剤、第一工業製薬から入手可能なHITENOL KH-10アニオン重合性界面活性剤、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0019】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、それぞれ第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの重量を基準にして、0.01重量%以上、0.3重量%以上、又はさらに0.5重量%以上、同時に、10重量%以下、5重量%以下、又はさらに2重量%以下の共重合した界面活性剤を含んでもよい。
【0020】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、連鎖移動剤をさらに含んでもよい。好適な連鎖移動剤の例としては、3-メルカプトプロピオン酸、ドデシルメルカプタン、3-メルカプトプロピオン酸メチル、ベンゼンチオール、アゼライン酸アルキルメルカプタン、又はこれらの混合物が挙げられる。存在する場合、連鎖移動剤の濃度は、それぞれ第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの重量を基準にして、0.01重量%~20重量%、0.1重量%~10重量%、0.2重量%~2重量%、又は0.3重量%~1重量%であってもよい。
【0021】
本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、当該技術分野で既知の乳化重合によって調製され得る。本発明において有用な第1又は第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、エマルジョンの形態であってもよい。本発明のエマルジョンは、エマルジョンの総重量を基準にして、30重量%~70重量%、35重量%~68重量%、又は40重量%~65重量%の固形分を含んでもよい。
【0022】
本発明において有用な第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、-5℃以下、-6℃以下、-8℃以下、又はさらに-10℃以下、同時に、-50℃以上、-45℃以上、又はさらに-40℃以上のTgを有してもよい。適切な市販の第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーのエマルジョンとしては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能な、ELASTENE(商標)2848NG及びPHOPLEX(商標)EC-2540アクリルエマルジョンの両方(ELASTENE及びPHOPLEXは、The Dow Chemical Companyの商標である)、又はこれらの混合単位から構成され得る。
【0023】
水性バインダー組成物中の第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの濃度は、水性バインダー組成物中のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー総重量を基準にして、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又はさらに20重量%以上、同時に、95重量%以下、90重量%以下、又はさらに80重量%以下であってもよい。
【0024】
第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーは、少なくとも15℃、18℃以上、又はさらに20℃以上、同時に、60℃以下、50℃以下、又はさらに40℃以下のTgを有してもよい。適切な市販の第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーのエマルジョンとしては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なPRIMAL(商標)AC261P及びPRIMAL TX-100アクリルエマルジョン(PRIMALはThe Dow Chemical Companyの商標である)、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
水性バインダー組成物中の第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの濃度は、水性バインダー組成物中のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー総重量を基準にして、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、又はさらに20重量%以上、同時に、95重量%以下、90重量%以下、又はさらに80重量%以下であってもよい。
【0026】
水性バインダー組成物中のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー全体は、水性バインダー組成物の総重量を基準にして、20重量%以上、30重量%以上、又はさらに40重量%以上、同時に、70重量%以下、65重量%以下、又はさらに60重量%以下の量であってもよい。
【0027】
本発明において有用な水性バインダー組成物は、架橋剤をさらに含んでもよい。本明細書における「架橋剤」は、2つ以上の反応性基を有し、ポリマー鎖に結合した反応性基と反応して、ポリマー鎖間に架橋を形成することができる化合物を指す。架橋剤上の反応性基は、ポリマー鎖に結合した反応性基と同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
本発明において有用な架橋剤は、水分散性イソシアネート組成物を含む。本発明において有用な水分散性イソシアネート組成物は、イソシアネート化合物、及び少なくとも1つのアニオン性基、少なくとも1つのポリエチレンオキシドセグメント、又はアニオン性基とポリエチレンオキシドセグメントの両方を含む変性イソシアネート化合物を含んでもよい。いくつかの実施形態において、水分散性イソシアネート組成物は、イソシアネート化合物、アニオン性基を含む変性イソシアネート化合物、及びポリエチレンオキシドセグメントを含む変性化合物を含む。本明細書で使用される場合、アニオン性基は、負電荷を有する化学基である。負電荷は、-1、-2、又は-3であってもよい。アニオン性基を有する化合物は、1つ以上のカチオンと会合する。会合するカチオンは、金属カチオン又はカチオン性基、+1、+2、又は+3の正電荷を有する基を有する有機化合物であってもよい。アニオン性基を有する化合物が、固体形態であるか又は非極性環境にある場合、会合するカチオンは、アニオン性基に隣接して位置する。そのような化合物が水に溶解又は分散される場合、アニオン性基及び会合するカチオンは分離されてもよい。好ましいアニオン性基は、スルホネート、カルボキシレート、カルボン酸基、ホスホネート、又はこれらの混合物である。適切な市販の水分散性イソシアネート組成物としては、例えば、Bayer Material Science AGから入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするBAYHYDUR XP2655親水性脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0029】
好ましくは、水分散性イソシアネート組成物中のイソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート(NCO)基を有するポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物は、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート又はそれらの混合物であり得る。好適な脂肪族ポリイソシアネートの例は、1、6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチル-シクロヘキサン(IPDI)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、ジイソシアナトメチル-シクロヘキサン(ADI)、それらの異性体、それらのポリマー、又はそれらの混合物である。イソシアネート化合物は、好ましくは芳香族ポリイソシアネートである。好適な芳香族ポリイソシアネートの例は、トルイレン-2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)、トルイレン-2,6-ジイソシアネート(2,6-TDI)、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、それらの異性体、それらのポリマー、及びそれらの混合物である。好ましいポリイソシアネート化合物は、HDI三量体、ポリマーMDI、又はそれらの混合物を含む。本明細書における「ポリマーMDI」は、ジフェニルメタンジイソシアネートとそのオリゴマー又はポリマーとの混合物を指す。
【0030】
水分散性イソシアネート組成物中のイソシアネート化合物の濃度は、水分散性イソシアネート組成物の総固形分重量を基準にして、1重量%以上、20重量%以上、又はさらに50重量%以上、同時に、95重量%以下、90重量%以下、又はさらに80重量%以下であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、水分散性イソシアネート組成物中の変性イソシアネート化合物は、式(I)の構造を有する1つ以上の化合物を含み得る。
【化1】
式中、A1は、以下の構造を有する。
【化2】
L1はイソシアネート基とイソシアネート反応性基との反応によって形成される連結基であり、nは5~25であり、Zはアルキル基である。
nは、7以上、又はさらには10以上であり得、同時に、18以下、又はさらに14以下であり得る。Zは、直鎖状、分岐鎖状、環状又はそれらの組み合わせであってもよい。Zは、1~8個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキル基であり得る。好ましくは、Zはメチルである。
A1は、ジイソシアネート三量体(a1)の残基である。ジイソシアネート三量体(a1)は、脂肪族ジイソシアネートであってもよい。好ましくは、ジイソシアネート三量体(a1)は、HDI三量体、IPDI三量体、H
12MDI三量体、ADI三量体、又はそれらの混合物である。より好ましくは、ジイソシアネート三量体(a1)は、HDI三量体又はADI三量体である。
L1は、尿素基又はウレタン基であってもよい。好ましくは、L1はウレタン基である。例えば、イソシアネート基がヒドロキシル基又はアミン基と反応する場合、結果として生じる連結基L1はそれぞれ、式(III)-1の構造を有するウレタン基又は式(III)-2の構造を有する尿素基である。
【化3】
式中、R
1は有機基である。
【0032】
いくつかの実施形態では、水分散性イソシアネート組成物中の変性イソシアネート化合物は、式(IV)の構造を有する1つ以上の化合物を含んでもよい。
【化4】
式中、残基A2は、A1と同一であっても異なっていてもよく、A2は、上記の式(II)の構造を有する。L2は、イソシアネート基とイソシアネート反応性基との反応によって形成される連結基であり、Qは有機基であり、gはアニオン性基である。
【0033】
L2は、尿素基又はウレタン基であってもよい。好ましくは、L2は、式(III)-2の構造を有する尿素基である。より好ましくは、L2は、式(III)-2の構造を有する尿素基であり、式中、R1は、非置換アルキル基であり、好ましくは4~8個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはシクロヘキシルである。Qは、直鎖状、分岐鎖状、環状、又はそれらの組み合わせであるアルキル基であってもよい。好ましくは、Qは直鎖アルキル基である。より好ましくは、Qは-(CH2)nであり、nは1~8であり、好ましくはnは3である。Gは、スルホネート、カルボキシレート、カルボン酸基、又はホスホネートであってもよい。好ましくは、Gは、スルホネートである。
【0034】
好ましい実施形態では、本発明において有用な水分散性イソシアネート組成物は、式(I)及び式(IV)の変性イソシアネート化合物の混合物を含む。式(I)の修飾イソシアネート化合物と式(IV)の変性イソシアネート化合物との重量比は、0.01:1以上、0.25:1以上、0.43:1以上、又はさらには0.67:1以上、同時に、100:1以下、4:1以下、2.3:1以下、又はさらには1.5:1以下であってもよい。
【0035】
本発明において有用な水分散性イソシアネート組成物は、任意の既知の方法に従って調製され得る。水分散性イソシアネート組成物を調製する方法は、イソシアネート化合物をアニオン性化合物及び/又は非イオン性化合物と反応させることを含んでもよい。水分散性イソシアネート組成物を調製するための好適なイソシアネート化合物の例としては、水分散性イソシアネート組成物中の上記のイソシアネート化合物が挙げられる。アニオン性化合物は、上記のアニオン性基を含んでもよい。非イオン性化合物は、上記のポリエチレンオキシドセグメントを含んでもよい。好ましい実施形態では、水分散性イソシアネート組成物は、非イオン性及び/又はアニオン性化合物を第1のイソシアネート化合物と反応させ、次いで得られた変性イソシアネートを第2のイソシアネート化合物と混合することによって調製される。第1のイソシアネート化合物及び第2のイソシアネート化合物は、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
水性バインダー組成物中の架橋剤は、1つ以上のエポキシシランをさらに含む。驚くべきことに、エポキシシランと水分散性イソシアネート組成物との組み合わせは、得られる硬化ポリマー混合物の耐水性をさらに向上させ得る。エポキシシランとは、少なくとも1つのエポキシ基を有する官能性シランを意味する。好ましいエポキシシランは、式(V)の構造を有する。
【化5】
式中、R
2は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3は、200以下の分子量を有する二価有機基であり、R
4は、水素原子、又は1~20個の炭素原子を有するアルキル、アリール、若しくはアラルキル基であり、mは、1、2、又は3である。
【0037】
好適なエポキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。好適な市販のエポキシシランとしては、例えば、全てMomentive Performance Materialsから入手可能である、SILQUEST A-187、SILQUEST WetLink78、SILQUEST A-186、及びCOATOSIL2287エポキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。エポキシシランを使用する場合、水分散性イソシアネート組成物とエポキシシランとの重量比は、0.1:1以上、0.5:1以上、又はさらに1.5:1以上で、同時に、10:1以下、5:1以下、又はさらに2.5:1以下であってもよい。
【0038】
水性バインダー組成物中の全架橋剤の濃度は、アクリルエマルジョン(コ)ポリマーの総重量を基準にして、1重量%以上、2重量%以上、又はさらに3重量%以上、同時に、20重量%以下、15重量%以下、又はさらに8重量%以下であってもよい。
【0039】
本発明において有用な水性バインダー組成物は、1つ以上の消泡剤をさらに含んでもよい。「消泡剤」は、本明細書では、泡の形成を減少させ、妨げる化学添加剤を指す。消泡剤は、シリコーン系消泡剤、鉱油系消泡剤、エチレンオキシド/プロピレンオキシド系消泡剤、アルキルポリアクリレート、又はそれらの混合物であってもよい。好適な市販の消泡剤には、例えば、NOPCO NXZ金属石鹸タイプ消泡剤、両方ともTEGOから入手可能なTEGO Airex 902 W及びTEGO Foamex 1488ポリエーテルシロキサンコポリマーエマルジョン、BYKから入手可能なBYK-024シリコーン消泡剤、又はそれらの混合物が含まれる。存在する場合、消泡剤の濃度は、水性バインダー組成物の総重量を基準にして、0.01重量%~1重量%、0.05重量%~0.8重量%、又は0.1重量%~0.3重量%であってもよい。
【0040】
本発明において有用な水性バインダー組成物は、1つ以上の増粘剤をさらに含んでもよい。増粘剤には、ポリビニルアルコール(PVA)、粘土材料、酸誘導体、酸コポリマー、ウレタン会合型増粘剤(UAT)、ポリエーテル尿素ポリウレタン(PEUPU)、ポリエーテルポリウレタン(PEPU)、又はそれらの混合物が含まれ得る。好適な増粘剤の例としては、ナトリウム又はアンモニウム中和アクリル酸ポリマーなどのアルカリ膨潤性エマルジョン(ASE)、疎水変性アクリル酸コポリマーなどの疎水変性アルカリ膨潤性エマルジョン(HASE)、疎水性変性エトキシル化ウレタン(HEUR)などの会合性増粘剤、並びにメチルセルロースエーテル、ヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、疎水性変性ヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)、カルボキシメチルセルロース(SCMC)ナトリウム、カルボキシメチル2-ヒドロキシエチルセルロースナトリウム、2-ヒドロキシプロピルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、2-ヒドロキシブチルメチルセルロース、2-ヒドロキシエチルエチルセルロース、及び2-ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース増粘剤が挙げられる。好ましくは、増粘剤は、HEUR、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なACRYSOL(商標)RM-8W非イオン性レオロジー調整剤(ACRYSOLはThe Dow Chemical Companyの商標である)に基づく。存在する場合、増粘剤の濃度は、水性バインダー組成物の総重量を基準にして、0.01重量%~3重量%、0.05重量%~2重量%、又は0.1重量%~0.3重量%であってもよい。
【0041】
本発明において有用な水性プライマー組成物は、水をさらに含んでもよい。水の濃度は、水性バインダー組成物の総重量を基準にして、10重量%~90重量%、20重量%~80重量%、又は30重量%~70重量%であってもよい。
【0042】
上記の成分に加えて、本発明において有用な水性バインダー組成物は、以下の添加剤:無機増量剤、顔料、充填剤、融合助剤、共溶媒、緩衝剤、中和剤、分散剤、湿潤剤、防かび剤、殺生物剤、滑り止め剤、着色剤、流動剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、分散剤、接着促進剤、希釈剤、及び粉砕展色剤のうちのいずれか1つ又は組み合わせをさらに含んでもよい。存在する場合、これらの添加剤は、水性バインダー組成物の総重量を基準にして、0.001重量%~10重量%、又は0.01重量%~2重量%の量であってもよい。
【0043】
本発明のポリマー混合物は、加硫又は架橋されたゴムをさらに含む。本発明において有用な好適な加硫又は架橋されたゴムの例としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンコポリマー、水素化ニトリル、ニトリルゴム、ネオプレン、ポリクロロプレン、粉砕タイヤゴム(GTR)、廃ゴム、廃ゴム加硫物、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、加硫又は架橋された廃ゴムが使用される。そのような廃ゴムは、例えば、タイヤ、靴底、及び粉砕タイヤゴムなどの任意の既知の供給源に由来し得る。
【0044】
本発明において有用な加硫又は架橋されたゴムは、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、又はさらに2.5mm以上、同時に、4mm以下、3.5mm以下、又はさらに3mm以下のふるい粒径を有するゴム粒子を含んでもよい。
【0045】
本発明のポリマー混合物中の総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと加硫又は架橋されたゴムとの重量比は、1:2以下、1:3.5以下、又はさらに1:3.9以下、同時に、1:7以上、1:6以上、又はさらに1:4.3以上であってもよい。アクリルエマルジョン(コ)ポリマーラテックスが使用される場合、本明細書における重量比は、ラテックスの固形分と加硫又は架橋されたゴムとの重量比を指す。
【0046】
本発明のポリマー混合物は、ココナツ殻繊維、木繊維、又はそれらの混合物から選択される繊維をさらに含む。
【0047】
本発明に有用な繊維は、一般に、長さが1mm~5mm、平均直径が5マイクロメートル~10mmである。好ましくは、繊維は、平均直径が0.5mm~5mmである。
【0048】
本明細書における「平均直径」という用語は、以下の式によって与えられる計算された直径dを意味する。
【数1】
式中、Vは、繊維の体積である。Lは、繊維の長さであり、πは、円周率(pi)である。繊維の体積Vを計算するための、当該分野の当業者に既知である一般的な方法のうちの1つは、以下の通りである。
【数2】
式中、mは繊維の質量であり、ρは、繊維の密度である。
【0049】
ココナツ殻繊維の一般名、科学名、及び植物科はそれぞれ、coir、cocos nucifera、及びarecaceae(ヤシ)である。成熟ココナツから抽出される褐色繊維と、未成熟ココナツから抽出される白色繊維との2種類のココナツ殻繊維がある。ココナツ殻繊維は、繊維抽出機を使用することにより、ココナツの外殻から抽出することができる。褐色繊維は、厚く、強靭であり、高い耐摩耗性を有する。白色繊維は、より滑らかで、より微細であるが、より弱い。
【0050】
ココナツ殻繊維は、3つの形態で、すなわち剛毛、マットレス、及び装飾繊維として市販されている。剛毛繊維は、ココナツの殻からの比較的長く粗い繊維からなり、マットレス繊維は、ココナツの殻からの比較的短く微細な繊維からなる。装飾繊維は、剛毛繊維とマットレス繊維との混合繊維であり、マットレス繊維と非常によく似ているが、この場合、剛毛繊維が分離されていないため、より清潔で強靭である。これらの異なる種類の繊維は、要件に応じて異なる用途を有する。工学では、褐色繊維が主に使用される。
【0051】
木繊維は、豊富さ及び適合性の観点から、軟材若しくは常緑樹、又は広葉落葉樹として一般的に知られている硬材から得ることができる。結果として得られる繊維が、硬材よりも長く、高いパーセンテージのリグニンとより低いパーセンテージのヘミセルロースを含有するため、繊維製造には軟材の方が概して好ましい。軟材は、本発明の繊維の主要な供給源であるが、追加の繊維補給は、竹、米、サトウキビ、新聞、箱、コンピュータプリントアウトなどからリサイクルされた繊維などのいくつかの二次的又は繊維再利用源から得ることができる。
【0052】
好適な木繊維の例としては、おがくず又は粉砕くずとして一般に知られている鋸引き又は粉砕軟材の木繊維副生成物が挙げられる。そのような木繊維は、規則的な再現性のある形状及びアスペクト比を有する。
【0053】
本発明で使用するための好ましい木繊維の例は、窓及びドアの製造において一般的なプロセスから得られる繊維である。木部材は、一般に、板目方向にあるサイズに鋸引き又は縦引きされて、適切な長さと幅の木質材料を形成する。このような鋸引き動作の副産物は、相当量のおがくずである。規則的な成形木片を有用な粉砕形状に成形する際に、木材は一般に、有用な形状を残すように、片から木材を選択的に除去する機械を通過する。そのような粉砕動作は、相当量のおがくず又は粉砕くずの副産物を生成する。最後に、成形された材料があるサイズに切断され、斜め継手、重複継手、ほぞ継手が予め成形された木部材から製造されるとき、かなりの切り落としくずが生成される。そのような大きな切り落とし片は、一般に、切断及び機械加工されて、比較的大きな物体を、おがくず又は粉砕くずの寸法に近似する木繊維に変換する。
【0054】
本発明のポリマー混合物中の繊維と加硫又は架橋されたゴムとの重量比は、1:6以下、1:7.5以下、又はさらに1:26以下、同時に、1:40以上、1:35以上、又はさらに1:30以上であってもよい。
【0055】
本発明のポリマー混合物は、最初に水性バインダー組成物を調製し、次いでそれを加硫又は架橋されたゴム及び繊維と混合することによって得られてもよい。水性バインダー組成物は、第1及び第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマーの2つの部で供給されてもよく、任意選択で、増粘剤及び消泡剤などの添加成分が、通常「A部」を形成し、水分散性イソシアネート組成物を含む架橋剤が、通常「B部」を形成する。使用される場合、エポキシシランは、A部及び/又はB部に存在し得る。本発明のポリマー混合物は、A部及びB部を混合して、水性バインダー組成物を形成し、次いで加硫又は架橋されたゴム及び繊維と混合することによって調製されてもよい。
【0056】
驚くべきことに、本発明のポリマー混合物は、室温で、繊維を含まないポリマー混合物よりもはるかに速く乾燥する。
【0057】
本開示のポリマー混合物は、概して、5℃~80℃、10℃~50℃、15℃~40℃、又は20℃~35℃の温度で硬化され得る。ポリマー混合物を硬化させる時間は、30分~24時間、1時間~20時間、又は2時間~10時間で選択されてもよい。また、ポリマー混合物を部分的に硬化させ、次いでその後硬化プロセスを完了させることもできる。
【0058】
本発明の多層物品は、本発明のポリマー混合物から作製されたベース層と、水性トップコーティング組成物から作製された上層とを含み得る。水性トップコーティングは、水性バインダー組成物及び加硫又は架橋されたゴムを含む。適切な水性バインダー組成物及び加硫又は架橋されたゴムの例は、ベース層にも適した上記ポリマー混合物に記載されている通りである。水性トップコーティング組成物は、好ましくは、上述の消泡剤、増粘剤、顔料、又はそれらの混合物を含む。水性トップコーティング組成物中の加硫又は架橋されたゴムは、好ましくはEPDMゴムである。
【0059】
本発明の多層物品のベース層において、総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと加硫又は架橋されたゴムとの重量比は、1:2以下、1:3.5以下、又はさらに1:3.9以下、同時に、1:7以上、1:6以上、又はさらに1:4.3以上であってもよく、繊維と加硫又は架橋されたゴムとの重量比は、1:6以下、1:7.5以下、又はさらには1:26以下、同時に、1:40以上、1:35以上、又は1:30以上であってもよい。ベース層中の加硫又は架橋されたゴムは、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、又はさらに2.5mm以上、同時に、4mm以下、3.5mm以下、又はさらに3mm以下のふるい粒径を有し得る。ベース層中の加硫又は架橋されたゴムは、好ましくは、加硫又は架橋された廃ゴムである。ベース層中の繊維は、1mm~5mmの長さ及び5マイクロメートル~10mmの平均直径を有してもよい。
【0060】
本発明の多層物品の上層において、総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーとEPDMゴム又は加硫若しくは架橋されたゴムとの重量比は、1:0.5以下、1:1以下、1:2以下、又はさらには1:2.5以下、同時に、1:4以上、1:3.5以上、又はさらに1:3以上であってもよい。上層中のEPDMゴム又は加硫又は架橋されたゴムは、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、又はさらには2.5mm以上、同時に、4mm以下、3.5mm以下、又はさらに3mm以下のふるい粒径を有してもよい。
【0061】
本発明の多層物品は、ベース層が上層とプライマー層との間に存在するように、プライマー層をさらに含んでもよい。プライマー層は、多層物品の基材への接着をさらに向上させ得る。プライマー層は、水性プライマー組成物から作製されてもよい。
【0062】
本発明において有用な水性プライマー組成物は、上記の第1のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー、上記の第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー、又はそれらの混合物を含んでもよい。水性プライマー組成物は、上記のエポキシシランをさらに含んで、湿潤条件下で、得られた多層物品の基材への接着をさらに改善し得る。水性プライマー組成物はまた、上記の水分散性イソシアネート組成物を含んでもよい。好ましい実施形態では、水性プライマー組成物は、第1及び第2のアクリルエマルジョン(コ)ポリマー、エポキシシラン、水分散性イソシアネート組成物、及び任意選択で消泡剤を含む。水性プライマー組成物中の上記の成分の濃度は、それらが水性バインダー組成物中にあるときに上記の範囲を有し得る。
【0063】
本発明の多層物品は、他の機能層をさらに含んでもよい。例えば、多層物品は保護層をさらに含んでもよく、上層は、保護層とベース層との間に存在する。保護層の存在は、多層物品の耐摩耗性及び老化耐性をさらに改善するのに有用であり得る。
【0064】
本発明の多層物品は、少なくとも10mm、12mm以上、又はさらには13mm以上の厚さを有してもよい。ベース層の多層物品に対する体積比は、40%~95%、50%~90%、又は70%~80%であってもよく、上層の多層物品に対する体積比は、5%~60%、10%~40%、又は20~30%であってもよい。
【0065】
本発明の多層物品を調製する方法は、
(1)総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:7~1:2であり、繊維と加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:40~1:6である、本発明のポリマー混合物を提供することと、(2)ポリマー混合物を基材に塗布することと、(3)ポリマー混合物を乾燥及び硬化させて、ベース層を形成することと、(4)総アクリルエマルジョン(コ)ポリマーと加硫又は架橋されたゴムとの重量比が、1:0.5~1:4である、本発明のトップコーティング組成物を提供することと、(5)トップコーティング組成物をベース層に塗布することと、(6)ベース層が基材と上層との間に存在するように、トップコーティング組成物を乾燥及び硬化させて、上層を形成することと、を含む。
【0066】
多層物品の調製において、本発明のポリマー混合物又はトップコーティング組成物はそれぞれ、任意の既知の方法、例えば、TPJ-2.5タイプの合成の陸上競技用トラック舗装機械などの従来の機器を使用する手動式のこて塗り又は機械塗布によって、基材又はベース層に塗布することができる。得られた表面は、こて塗りによってさらに平滑化されてもよい。好ましくは、トップコーティング組成物は、噴霧によってベース層に塗布される。基材は、例えば、コンクリート、ビチューメン、金属、又は木材を含む任意の基材であり得る。好ましくは、基材は、本発明のポリマー混合物を塗布する前に、上記の水性プライマー組成物によってプライミングされる。
【0067】
多層物品の調製において、本発明のポリマー組成物及びトップコーティング組成物の乾燥及び硬化は、水を蒸発させるのに十分な、所定の温度及び所定の時間で実施してもよい。乾燥及び硬化は、周囲温度、例えば、5℃~50℃、15℃~40℃、又は20℃~30℃の温度で行うことができる。ポリマー混合物及びトップコーティング組成物を乾燥及び硬化させる時間は、例えば、ポリマー混合物、又は基材若しくはベース層に塗布されるトップコーティング組成物の厚さ、並びに温度、相対湿度、及び風などの屋外条件を含む様々な要因に依存し得る。例えば、ポリマー混合物及びトップコーティング組成物を乾燥及び硬化させる時間は、1分~24時間、5分~12時間、20分~8時間、又は30分~6時間で選択されてもよい。
【0068】
本発明の多層物品を調製する方法は、本発明のポリマー混合物の速い乾燥速度により、かなり短時間で実施され得る。ポリマー混合物の基材への塗布、及びトップコーティング組成物のベース層への塗布の間の時間は様々であってもよく、例えば、その時間は、8時間以下、6時間以下、又はさらに5時間以下、同時に、2時間以上、2.5時間以上、又はさらに3時間以上であり得る。
【0069】
本発明の多層物品を調製する方法は、本発明のポリマー混合物を基材に塗布してベース層を形成することと、トップコーティング組成物をベース層に塗布して上層を形成することの前に、水性プライマー組成物を基材に塗布してプライマー層を形成することをさらに含んでもよい。
【0070】
多層物品を作製するプロセスにおいて溶媒をほとんど又は全く使用しなかったため、多層物品を調製する方法は、溶媒を実質的に含まない。この方法は、繊維を含有しないポリマー混合物よりも短い時間で行うことができる。
【0071】
本発明の多層物品は、様々な用途、例えば、防音材料、音響下敷、床下敷、及び艶消し、人口トラック及び遊び場の表面、マット及びパッド、ボールコアなどの工業及びスポーツ用品、並びに床タイル、カバー、成形製品などの消費者製品に、また道路の舗装及び保守用途に使用されてもよい。特に、多層物品は、透水性陸上競技用トラック表面としての使用に好適である。本明細書における「透水性陸上競技用トラック表面」とは、樹脂バインダーによって接着されたゴム粒子からなり、ゴム粒子間に空隙を有する合成トラック表面材料を指し、これは、表面水の流出を可能にするだけでなく、水が表面材料に浸透することを可能にする。
【0072】
本発明の望ましい実施形態は、多層構造を含む。
図1を参照すると、上層11、ベース層12、プライマー層13、及び任意選択で1つ以上の他の層を含む本発明の多層物品10の一実施形態の概略斜視図が示されている。各層は、2つの対向する主面を含む。上層11は、ベース層12の1つの主面に接触し、プライマー層13は、ベース層12の反対側の主面と接触し、それにより、ベース層12は、上層11とプライマー層13との間に存在する。任意選択的な保護層(図示せず)を、上層11の1つの主面に塗布することができ、それにより、上層11は、保護層とベース層12との間に存在する。概して、ベース層の厚さは、6mm以上、7mm以上、又はさらに8mm以上、同時に、16mm以下、15mm以下、又はさらに14mm以下であってもよい。概して、上層の厚さは、1mm以上、1.5mm以上、又はさらに2mm以上、同時に、5mm以下、4mm以下、又はさらに3mm以下であってもよい。存在する場合、プライマー層は、概して、50マイクロメートル~500マイクロメートル、75マイクロメートル~400マイクロメートル、又は100マイクロメートル~300マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。
【実施例】
【0073】
I.使用される原材料
本発明のいくつかの実施形態は、以下の実施例においてここに記載され、全ての部及びパーセンテージは、他に特定されない限り、重量による。以下の材料及び略語を実施例に使用する。
「AA」は、アクリル酸を表す。
「MAA」は、メタクリル酸を表す。
「BA」は、アクリル酸ブチルを表す。
「MMA」は、メタクリル酸メチルを表す。
「AN」は、アクリロニトリルを表す。
【表1】
*ラテックスは全てThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
T
gは、Bulletin of American Physical Society,1,123(1956)にFoxによって記載されているように、フォックス方程式により求められる。
「MFFT」は、最小のフィルム形成温度を指し、ASTM D2354-10に従って測定される。
【0074】
Henkelから入手可能なNOPCO NXZ消泡剤は、金属石鹸タイプの消泡剤である。
【0075】
The Dow Chemical Companyから入手可能なACRYSOL(商標)RM-8W増粘剤は、非イオン性ウレタン増粘剤である。
【0076】
The Dow Chemical Companyから入手可能なPOLYOX(商標)WSR301樹脂は、水溶性ポリエチレンオキシド(PEO)樹脂であり、潤滑剤として使用される(POLYOXは、The Dow Chemical Companyの商標である)。
【0077】
Bayer Material Science AGから入手可能なBAYHYDUR XP2655E水分散性ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に基づく親水性脂肪族ポリイソシアネートであり、架橋剤として使用される。
【0078】
Momentive Performance Materials Inc.から入手可能なCOATOSIL2287エポキシ官能性シランは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランであり、架橋剤として使用される。
【0079】
黒色廃タイヤゴム粒子は、1mm~3mmのふるい粒径を有し、Shanghai Terra Engineering&Industry Co.,Ltd.から入手可能である。
【0080】
黒色廃タイヤゴム粒子は、2mm~4mmのふるい粒径を有し、Shanghai Terra Engineering&Industry Co.,Ltd.から入手可能である。
【0081】
EPDMゴム粒子は、1mm~3mmのふるい粒径を有し、Guangzhou Chuanao Sports Facilities Co.,Ltd.から入手可能である。
【0082】
ココナツ殻繊維は、1mm~2mmの長さ及び1mm~5mmの平均直径を有し、KNAAP(タイ)Co.,Ltd.から入手可能である。
【0083】
ココナツ殻繊維は、2mm~5mmの長さ及び1mm~5mmの平均直径を有し、KNAAP(タイ)Co.,Ltd.から入手可能である。
【0084】
木繊維は、1mm~2mmの長さ及び1mm~5mmの平均直径を有し、Hebei Lingshou Xingyuan Powder Factoryから入手可能である。
【0085】
木繊維は、2mm~5mmの長さ及び1mm~5mmの平均直径を有し、Hebei Lingshou Xingyuan Powder Factoryから入手可能である。
【0086】
II.試験方法
実施例では、以下の標準的な分析機器及び方法を使用する。
【0087】
1.引張強度及び破断点伸びの特性
層又は陸上競技用トラック試料の引張強度及び破断点伸びの特性は、GB/T14833-2011規格の項目5.4、3ページに従って評価する。値が高いほど、通常、より高い耐久性を示す。
【0088】
本発明のベース層には0.09メガパスカル(MPa)を超える引張強度が望まれ、本発明のスポーツトラックには0.18MPaを超える引張強度が望まれている。そうでない場合、それは引張強度の要件を満たしていない。
【0089】
本発明のベース層には10%を超える破断点伸びが望まれ、本発明の陸上競技用トラックには15%より大きい破断点伸びが望まれている。そうでない場合、それは破断点伸びの要件を満たしていない。
【0090】
2.乾燥残留率
ベース層の乾燥残留率特性は、4時間後に剥離紙からベース層を剥離した後、剥離紙上に残るベース層の残留物のパーセンテージによって定量化される。プロセスは、(1)剥離紙上にポリマー混合物を塗布して、ベース層を形成することと、(2)4時間後に剥離紙からベース層を剥がすことと、(3)剥離紙上のベース層の残留物のパーセンテージを測定することと、を含む。値が低いほど、通常、乾燥速度が速くなる。
【0091】
本発明のベース層には、85%未満の乾燥残留比が望ましい。
【0092】
3.破断点プルオフ強度
ベース層及び上層を含む多層物品の破断点プルオフ強度特性は、ベース層と上層が互いに分離するとき、又はいずれかの層が2つの部分に分離するときのプルオフ強度によって定量化される。プロセスは、(1)ベース層及び上層を含む乾燥させた多層物品を5センチメートル(cm)×5cm平方の片に切断することと、(2)エポキシ接着剤によってベース層側をコンクリートスラブ上に接着することと、(3)エポキシ接着剤によって鋼ブロックを上層に接着することと、(4)破断するまで50ニュートン/秒での接着強度試験システムHP1000によってプルオフ強度を試験することと、を含む。値が高いほど、通常、より高い耐久性を示す。
【0093】
本発明のスポーツトラックには、0.1MPaを超える破断点プルオフ強度が望まれている。
【0094】
III.実施例
1.ベース層試料及びスポーツトラック試料の調製
【0095】
実施例(Ex)1
バインダー-1は、まずA部及びB部を混合し、次いで、表1に記載の配合に基づいて、廃タイヤゴム粒子及び繊維と混合することによって調製した。次いで、得られた第1のポリマー混合物をプラスチックフィルム上にキャストし、室温(23℃±2℃)で1日間乾燥させて、約10mm~12mmの厚さのベース層を形成した。次いで、得られたベース層試料の特性を上記の試験方法に従って評価し、表1に報告した。
【0096】
バインダー-2は、まずA部及びB部を混合し、次いで、表5に記載の配合に基づいてEPDMゴム粒子と混合することによって調製した。得られた第2のポリマー混合物をベース層上に噴霧し、約3mmの厚さで上層を形成した。得られた試料を乾燥条件(23℃で1日+70℃で1日+23℃で1日)に曝露し、ベース層及び上層を含むスポーツトラック試料を、70℃で硬化させる前にプラスチックフィルムから剥離した。次いで、得られたスポーツトラック試料の特性を上記の試験方法に従って評価し、表1に報告した。
【0097】
実施例2~12
ベース層試料を、表1~4に記載される配合に基づいて、実施例1に記載されるものと同じ手順に従って調製した。上層試料及びスポーツトラック試料を、表5に記載の配合に基づいて、実施例1に記載されている手順と同じ手順に従って調製した。実施例2~12のベース層試料及び実施例2~5、7~8及び10~11のスポーツトラック試料を、上記の試験方法に従って評価し、表1~4に報告した。
【0098】
比較例(Comp Ex)A
バインダー-1は、まずA部及びB部を混合し、次いで、表1に記載の配合に基づいて廃タイヤゴム粒子と混合することによって調製した。次いで、得られた第1のポリマー混合物をプラスチックフィルム上にキャストし、室温(23℃±2℃)で1日間乾燥させて、約10mm~12mmの厚さのベース層を形成した。次いで、得られたベース層試料の特性を上記の試験方法に従って評価し、表1に報告した。
【0099】
バインダー-2は、まずA部及びB部を混合し、次いで、表5に記載の配合に基づいてEPDMゴム粒子と混合することによって調製した。得られた第2のポリマー混合物をベース層上に噴霧し、約3mmの厚さで上層を形成した。得られた試料を乾燥条件(23℃で1日+70℃で1日+23℃で1日)に曝露し、ベース層及び上層を含むスポーツトラック試料を、70℃で硬化させる前にプラスチックフィルムから剥離した。次いで、得られたスポーツトラック試料の特性を上記の試験方法に従って評価し、表1に報告した。
【0100】
比較例B~D
ベース層試料を、表2~4に記載の配合に基づいて、比較例Aに記載されている手順と同じ手順に従って調製した。上層試料及びスポーツトラック試料を、表5に記載の配合に基づいて、比較例Aに記載されている手順と同じ手順に従って調製した。ベース層試料及びスポーツトラック試料を、上記の試験方法に従って評価し、表2~4に報告した。
【0101】
【0102】
2.分析結果
上記の表1~4は、上記の試験方法に従って決定された、実施例1~12(本発明の実施例)及び比較例A~D(比較例)のベース層試料及び陸上競技用トラック試料の特性を要約する。
【0103】
表1~4は、同じ量及び配合のバインダー、並びに同じ量のベース層のC部に関して、本発明のポリマー混合物で作製されたベース層は、各群(群1:実施例1~2及び比較例A;群2:実施例3~6及び比較例B;群3:実施例7~9及び比較例C;群4:実施例10~12及び比較例D)において従来のポリマー混合物を使用して作製されたベース層よりも低い乾燥残留率比を示す一方で、本発明のポリマー混合物で作製されたベース層は、所望の許容可能な引張強度及び破断点伸び特性を維持し得ることを示す。
【0104】
表1~4はまた、同じ量及び配合のバインダー、同じ量のベース層のC部、同じ量及び配合の上層に関して、本発明の多層物品で作製された陸上競技用トラック試料は、各群(群1:実施例1~2及び比較例A;群2:実施例3~5及び比較例B;群3:実施例7~8及び比較例C;群4:実施例10~11及び比較例D)において所望の許容可能な引張強度、破断点伸び、破断点プルオフ強度特性を示すことを示す。
【国際調査報告】