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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】電流過負荷保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/08 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
H02H3/08 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022553110
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-05
(86)【国際出願番号】 CN2021079002
(87)【国際公開番号】W WO2021185088
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】202010180114.4
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518143495
【氏名又は名称】天揚精密科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】郭 一▲トォン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲シィアォ▼ 清▲パァン▼
(72)【発明者】
【氏名】王 振中
【テーマコード(参考)】
5G004
【Fターム(参考)】
5G004AA01
5G004BA04
5G004DA05
5G004DC01
(57)【要約】
【課題】本発明は、電流過負荷保護装置を提供する。【解決手段】前述の装置は、電流測定装置と制御モジュールを含み、電流測定装置は、電流経路上の電流値を測定するために使用される。制御モジュールは、電流測定装置と電気的に接続され、電流閾値データを保存し、電流閾値データは、それぞれ遮断閾値に対応する複数の時間区間を含み、複数の時間区間に対応する時間が早ければ早いほど、対応する遮断閾値は大きくなる。制御モジュールは、所定時間内に電流信号を受信して収集し、電流経路の電流値を計算し、前記電流値が前記遮断閾値以上かどうかを判断し、以上であれば、過負荷保護工程を実行して、電流過負荷保護を実行する。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流経路上の電流値を測定し、対応する電流信号を出力する電流測定工程を実行する電流測定装置と、
前記電流測定装置と電気的に接続された制御モジュールであって、複数の時間区間を有する電流閾値データを保存し、複数の前記時間区間はそれぞれ遮断閾値に対応し、複数の前記時間区間が対応する時間が早ければ早いほど、対応する遮断閾値はより大きくなり、そして電流検出工程、過負荷測定工程及び過負荷保護工程を実行するための制御モジュールと、を含み、
前記電流検出工程は、所定時間内における前記電流信号を収集して、電流値を取得するためであり、
前記過負荷測定工程は、計測された時間パラメータに基づき、前記電流閾値データから対応する前記時間区間を見つけ、前記時間区間の前記遮断閾値を取得し、前記電流値を前記時間パラメータに対応する前記時間区間に対応する前記遮断閾値と比較判断するためであり、
前記過負荷保護工程は、前記電流値が前記時間パラメータに対応する前記時間区間に対応する前記遮断閾値以上と判断された場合に、負荷に対して電流過負荷保護動作を実行するためである、
ことを特徴とする電流過負荷保護装置。
【請求項2】
前記電流過負荷保護動作は、前記電流経路を接続状態から切断状態に切り替えることを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項3】
前記電流測定装置は、ホール効果電流センサであることを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項4】
前記過負荷測定工程において、前記電流値が、前記時間パラメータの前記時間区間に対応する前記遮断閾値未満と判断されたとき、前記時間パラメータの累積を継続し、前記電流測定工程、前記電流検出工程及び前記過負荷測定工程を改めて順次実行することを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項5】
前記過負荷測定工程に入るとき、まず、前記電流値が所定の閾値以上かどうかを判断し、以上である場合、前記過負荷測定工程の実行を継続し、以上でない場合、前記時間パラメータをリセットして、前記電流測定工程、前記電流検出工程及び前記過負荷測定工程を改めて順次実行することを特徴とする、請求項4に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項6】
前記所定の閾値は、前記電流閾値データにおいて対応する最後の1つの前記時間区間に対応する前記遮断閾値と同一であることを特徴とする、請求項5に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項7】
前記電流経路の前記電流値が前記所定の閾値に達した後に、前記時間パラメータの累計を開始する計時ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項8】
前記電流閾値データにおける一つ目の前記時間区間に対応する前記遮断閾値は無限大であることを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項9】
補正データに基づき、前記電流閾値データに記憶された前記遮断閾値を補償及び補正して、補正された前記遮断閾値を取得する補正ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項10】
前記電流測定装置の温度または環境温度を測定し、前記補正データを生成する温度測定ユニットをさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項11】
前記所定時間の長さは(1/F)秒以上であり、Fは前記電流経路の交流電源の周波数であることを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【請求項12】
前記制御モジュールは、さらに、前記負荷に送信される動作制御信号を記憶する回路遮断回復工程を実行するためであって、前記電流値が前記遮断閾値以上になることにより前記電流経路が遮断された場合、記憶された前記動作制御信号を切断状態に対応させ、且つ前記電流経路と接続された回路遮断モジュールの動作状態を、記憶された前記動作制御信号に対応させることを特徴とする、請求項1に記載の電流過負荷保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流過負荷保護装置に関し、特に、電流過負荷閾値が時間とともに徐々に減少する電流過負荷保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電気回路では、電源の供給不安定、素子の異常、過剰な負荷、電源の誤接続等の原因により、電子機器にその負荷を超える電流が流れ、回路や電子機器(以下負荷という)の故障または損傷を招く可能性がある。したがって、過電流保護メカニズムまたは過負荷保護メカニズムは、回路設計において普遍的に存在する。
【0003】
外部からの突入電流に対する過電流保護のためにサーキットブレーカ(Circuit Breaker)を使用することが知られている。当該素子の電流過負荷閾値は固定されており、一旦、通過する電流が所定の過負荷閾値を超えると、サーキットブレーカが電源をオフにするか、スイッチをオフにして、高電流による負荷の損傷を防止する。ただし、負荷がモーターやタングステンフィラメント電球の場合、正常起動時に突然の高電流が発生するため、起動時の高電流によりサーキットブレーカが誤って遮断され、正常な使用に影響を与えることを防止するために、負荷の数倍の定格電流のサーキットブレーカを選択して過電流から保護することが一般的に知られているが、この方法では負荷よりも高い定格電流が負荷を通過し、電流はなおも負荷に損傷を与える可能性があるため、理想的な設計ではない。
【0004】
過電流及び過負荷保護メカニズムでは、温度検出器、特に負温度係数(NTC)温度検出器は、一般的に使用される検出素子であり、一般的には、負荷が過熱しているかどうかを検出するために、回路負荷に取り付けられ、一旦過熱すると、フィードバックにより回路スイッチを制御し、回路の負荷電流を自動的に減少するか切断する。従来技術では、過熱が特定の温度を超えると、警告を発し、電流量を調整し、または電源をオフにしたり、負荷の温度上昇勾配に基づき、負荷が正常に動作しているかどうかを判断し、負荷電流を調整する。
【0005】
しかし、負荷が電流で加熱されるまで時間がかかるため、温度による過電流の測定には相対的に時間がかかり、応答が遅くなると同時に、高電流はワイヤの温度を上昇させ続け、保護が起動して、回路が切断される前に、ワイヤを流れる電流はヒューズを切断するほど十分な大きさではないものの、電流はワイヤの表面の絶縁コーティングを劣化または燃焼させるのに十分であり、ユーザーの安全を危険にさらすことになる。
【0006】
同様に、過負荷電流が通過するときの熱エネルギーを使用して回路を加熱し、電流を使用して熱破壊し電源をオフするスイッチ、即ち物理的なヒューズも知られている。タングステンフィラメント電球、モーターみたいな負荷である場合、起動電流の切断により誤ってオフされる問題はないものの、電源オフは温度の物理的特性に依存するため、電源オフ時間の応答がより長く鈍くなり、従って同様に前述の問題がある。
【0007】
ワイヤコーティング材の劣化に対処するために、ヒューズと電子電流保護装置を同時に含むシステムを提案することが従来技術で知られている。システムは、二次元の電流-時間図を設計し、通常の電流閾値曲線、ヒューズの電流閾値曲線及びワイヤパッケージ溶融の電流閾値曲線等の閾値曲線を設定する。前記電流-時間図を上記曲線を用いて複数の領域に区分し、ワイヤコーティング材が劣化する前に、電子電流保護装置で回路を切断して、ワイヤの外部絶縁層を保護する。ただし、その計算時には、電流値と時間値をそれぞれ複数の閾値曲線と繰り返し比較する必要がある。その結果、比較の際に、計算資源に対する要求が極めて高くなり、より高い転送能力を備えたデータプロセッサを使用する必要が生じ、結果としてコストが大幅に増加し、製品のプロモーションに有利でない。
【0008】
一方で、プロセッサの演算能力要求を軽減するために、電子電流過負荷保護装置を搭載することも見られ、遮断閾値の比較プロセスをデータプロセッサ以外のハードウェアで前処理を実行することにより、プロセッサの演算能力に対する要求が軽減される。前記システムは、電流測定装置で電流値を測定し、電流値を第1の回路、第2の回路及びプロセッサにそれぞれ送信する。第1の回路は、負荷の起動状態における相対的に高い電流閾値に対応する。第2の回路は、負荷の正常動作状態における相対的に低い電流閾値に対応する。第1の回路及び第2の回路をそれぞれ電流値と比較し、対応する第1の信号及び第2の信号をそれぞれプロセッサに出力する。一方、プロセッサは、電流値に基づき、負荷が起動状態にあるか、正常動作状態にあるかを判断し、これに対応して、第1の信号または第2の信号のいずれかを選択して比較結果のいずれかを受信し、比較結果に基づき、回路を切断にして負荷を保護するかどうかを決定する。プロセッサは、動作状態の判断のみを担当し、演算と比較には関与しないため、プロセッサの演算能力要求を最小限にすることができる。ただし、この設計では、比較に使用される各回路は、1つの電流の遮断閾値に対応するに過ぎず、遮断閾値が多数の場合、その回路設計は極めて複雑になり、それに応じてコストも増加する。
【0009】
したがって、安全性の高さ、応答の速さ、演算能力要求の低さを兼ね揃え、複数の電流遮断閾値をサポートできる過電流過負荷保護装置はまだ存在せず、本発明はこの問題を解決するために設計されたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術では、安全性の高さ、応答の速さ、演算能力要求の低さを兼ね揃え、複数の電流遮断閾値をサポートできる過電流過負荷保護システムを提供できていないという課題に対応して、本発明の実施形態は、電子式電流検出器を使用して、マイクロプロセッサ及び回路遮断モジュールと連携し、負荷に対して電流過負荷保護を実行する、過電流過負荷保護システムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するために、本発明は、電流測定装置及び制御モジュールを含む、電流過負荷保護装置を提供する。電流測定工程S1を実行することにより、電流経路上の電流値を連続的に測定し、対応する電流信号を出力する電流測定装置と、電流測定装置と電気的に接続される制御モジュールであって、複数の時間区間を有する電流閾値データを保存し、複数の時間区間はそれぞれ遮断閾値に対応し、複数の時間区間が対応する時間が早ければ早いほど、対応する遮断閾値はより大きくなり、そして電流検出工程S2、過負荷測定工程S3及び過負荷保護工程S4の実行するための制御モジュールと、を含み、、電流検出工程S2は、所定時間内おけるに電流信号を受信して収集し、電流値を取得するためであり、過負荷測定工程S3は、計測された時間パラメータに基づき、電流閾値データから対応する時間区間を見つけ、時間区間の遮断閾値を取得し、電流値と時間パラメータに対応する時間区間に対応する遮断閾値を比較して判断するためであり、負荷保護工程S4は、電流値が遮断閾値以上である場合、負荷に対して電流過負荷保護動作を行うためである。
【0012】
さらに、ここで、電流過負荷保護動作は、電流経路を接続状態から切断状態に切り替えることである。さらに、本発明の一実施形態における電流測定装置は、ホール効果電流センサ(Hall-effect current sensor)であっても良い。さらに、本発明の一実施形態では、過負荷測定工程S3において、電流値が遮断閾値未満であると判断された場合、時間パラメータの累積を継続し、電流測定工程S1、電流検出工程S2、及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。
【0013】
同一の実施形態において、過負荷測定工程S3に入ると、先に、電流値が所定の閾値以上かどうかを判断し、以上である場合、過負荷測定工程S3の実行を継続し、以上でない場合、時間パラメータをリセットし、電流測定工程S1、電流検出工程S2,及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。
【0014】
同一の実施形態において、所定の閾値は、電流閾値データに対応する最後の1つの時間区間に対応する遮断閾値と同一である。一方、計時ユニットは、電流経路の電流値が所定の閾値に達した後に、時間パラメータの累積を開始するために用いられる。さらに、電流閾値データの一つ目の時間区間に対応する前記遮断閾値は、選択的に無限大である。
【0015】
さらに、同一の実施形態において、電流過負荷保護装置は、補正ユニット及び温度測定ユニットをさらに含んでも良い。補正ユニットは、補正データに基づき、電流閾値データに記憶された遮断閾値を補償及び補正して、補正された遮断閾値を取得するために用いられる。温度測定ユニットは、電流測定装置の温度または環境温度を測定し、補正データを生成するために用いられる。前記所定時間の長さは(1/F)秒以上であり、Fは電流経路の交流電流の周波数である。
【0016】
さらに、同一の実施形態において、制御モジュールは、負荷に送信される動作制御信号を記憶するための回路遮断回復工程S5を実行するためであって、電流値が遮断閾値以上になることにより電流経路が遮断された場合、記憶された動作制御信号を切断状態に対応させ、且つ電流経路と接続された回路遮断モジュールの動作状態は、記憶された動作制御信号に対応させる。
【0017】
以上をまとめ、負荷の起動時の電流が相対的に高く、正常動作時の電流が相対的に低いという特性を考慮すると、終始、相対的に高い単一の遮断閾値を採用する従来技術と比較して、本発明の一実施形態における過電流過負荷保護装置は、時間とともに徐々に減少する多段階の電流遮断閾値が採用され、電気機器の起動後の電流の自然な変化に応じて対応する変更が行われるため、負荷をより正確に保護することができる。
【0018】
また、複雑な遮断閾値曲線により電流遮断閾値及び時間の関係を定義する場合と比べて、本発明の一実施形態の別の重点は、前記遮断閾値曲線の連続判定点を、複数の秒単位の複数の時間区間に簡易化するとともに、各時間区間に対して対応する遮断閾値を与え、遮断閾値の取得及び比較を簡素化することにより、演算に必要なリソースを低減し、これにより、プロセッサのコストを低減するとともに、保護動作の正確性を維持することができる。また、従来技術におけるシステムは、複数の曲線である遮断閾値の分布線を同時に比較する必要があるのと比べて、本発明の一実施形態におけるシステムは、先に、単一の規定値を基本フィルタとして使用して、不要な比較を減少させると同時に、単一の遮断閾値分布線と比較する必要があるので、比較フローを簡易化することができ、演算能力要求を低減することができる。
【0019】
また、本発明の上記およびその他の目的、特徴および利点をより明白にし、理解しやすくするために、好ましい実施形態を以下に示し、添付の図面と併せて以下に詳細に説明する。しかし、本発明の分野の当業者であれば、本発明を詳細に説明及び実施するために挙げる特定の実施形態は、専ら本発明を説明するために用いられるものであり、本発明の権利範囲を制限するものでないことを理解できるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれており、図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は、本発明の実施形態を示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明の電流過負荷保護装置の一実施形態の機能ブロック図を示す。
図2A】本発明の電流過負荷保護装置の一実施形態の電流閾値データを示す概略図である。
図2B】本発明の電流過負荷保護装置の一実施形態における、電流閾値データに対応する電流遮断閾値-累積時間の概略図を示す。
図3】本発明の過電流保護装置の実施形態の変形例における、電流閾値データに対応する電流遮断閾値-累積時間の概略図を示す。
図4A】本発明の電流過負荷保護装置の制御モジュールの動作方法の実施形態の工程のフロー図を示す。
図4B】本発明の電流過負荷保護装置の制御モジュールの動作方法の一実施形態における回路遮断回復工程のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、各図面と合わせて、本発明の電流過負荷保護装置の構成要素、工程、及び達成される効果を説明する。ただし、図面中の電流過負荷保護装置の構成要素、寸法、および外観は、本発明の技術的特徴を説明するためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0022】
図1図2A及び図2Bを参照すると、図1は、本発明の一実施形態による電流過負荷保護装置1の機能ブロック図を示し、図2Aは、本発明の電流過負荷保護装置の一実施形態の電流閾値データの概略図を示す。図2Bは、本発明の電流過負荷保護装置の一実施形態における電流閾値データに対応する電流遮断閾値-累積時間の概略図を示す。
【0023】
まず、本発明の電流過負荷保護装置1は、負荷2と電気的に接続するか、または負荷2と一体化して電流過負荷保護を行い、電子装置の許容電力を超える電気エネルギーが電子装置を通過して、電子装置に損傷を与えることを防止することができる。前記負荷2は、延長コード、ソケット、または電気製品及びそれに接続された電子機器であってもよい。本発明の一実施形態において、電流過負荷保護装置1は、負荷2と交流電源3との間の電流経路に接続される。
【0024】
一実施形態では、本発明の電流過負荷保護装置1は、電流測定装置10、制御モジュール20、および回路遮断器モジュール30を含む。電流測定装置10は、電流経路上の電流値を検出するために使用される。制御モジュール20は、電流値に基づき、電流経路が過負荷かどうかを判断するために使用され、回路遮断モジュール30を介して電流経路の接続、切断状態を制御することができる。
【0025】
本実施形態において、電流測定装置10はホール効果電流センサであり、それは回路上の交流電流を測定し、制御モジュール20の後続の応用に供するために、電流サイズに対応する直流電圧信号を出力することができる。しかし、電流測定装置10は、電流検出抵抗(Shunt resistor current sensor)であっても良く、本発明はこれに限定されない。
【0026】
制御モジュール20は、例えば、マイクロコントロールユニット(Micro control unit,以下MCUという)であり、それは、計時ユニット21、温度測定ユニット22、記憶ユニット23及び補正ユニット24を含む。計時ユニット21は、累積時間の計測に用いられる。温度測定ユニット22は、温度の測定に用いられる。記憶ユニット23は、データの記憶に用いられる。補正ユニット24は、温度に起因して発生した遮断閾値誤差を補正するために用いられる。前記各ユニットは、それぞれ、ハードウェア、ファームウェア、またはソフトウェアの形式で存在して良い。
【0027】
回路遮断モジュール30は、接続、切断の切り替えを提供できる既知の回路素子を指す。電気的に制御される回路スイッチ(Circuit Switch)またはリレー(relay)であって良い。さらに、図1を参照すると、本実施形態において、回路遮断モジュール30はリレーである。
【0028】
本実施形態において、記憶ユニット23は、繰り返し上書き可能なフラッシュメモリ(FLASH)であり、電流閾値データ、及び実行に供することのできる各種データを記憶する。ただし、実行に供することのできる各種データは、プログラムコードやファームウェアのエンコード方法に加えて、ハードウェア(例えば、回路等)の形式で存在しても良い。
【0029】
以下、電流過負荷保護装置1の動作方法を説明する。本実施形態において、電流過負荷保護装置1は、交流電源3と負荷2間の電流経路と電気的に接続される。
【0030】
図4Aを参照すると、図4Aは、本発明の電流過負荷保護装置1の制御モジュール20の動作方法の一実施形態の工程フロー図を示す。応用にあたっては、電流経路に電力を供給した後、先に、電流測定工程S1を実行して、電流測定装置10により電流経路の電流を測定して、対応する電流信号をリアルタイムで連続的に出力する。さらに、電流経路が通電すると、電流測定装置10が制御モジュール20に送信する電流信号は、ゼロでない電流値に対応し、同時に、制御モジュール20は、電流検出工程S2の実行を開始する。
【0031】
電流検出工程S2において、制御モジュール20は、電流測定装置10から所定時間内に電流信号を受信して収集し、電流経路の電流値を算出する。本実施形態において、電流経路上の電流は交流電流形式であり、電流値をより正確に取得するために、所定時間内に電流経路の値を収集する必要があるが、本実施形態において、所定時間は、交流電力の少なくとも1つの波長に相当し、即ち、前記所定時間の長さは、各交流電流の周波数周期よりも長く、即ち、所定時間の長さは(1/F)秒以上であり、Fは電流経路の交流電流の周波数である。
【0032】
本実施形態において、電流経路を流れるのは、交流電流の形式で存在し、且つ電圧は110V、周波数は60Hzの商用電源である。しかし、その電圧及び周波数はこれに限定されない。前記所定時間は、精度の要求に応じて、電流経路上の交流電流の周波数周期の四分の一以上であっても良い。すなわち、電流経路の交流電流の周波数が60Hzであると仮定すると、所定時間は4.17ミリ秒(ms)以上である。電流の精度は、所定時間を増加させることで向上させることができ、例えば、Fが電流経路の交流電流の周波数である場合において、所定時間の長さが1/(2*F)秒、1/F、及び2/Fであるとき、それはそれぞれ好ましい、より好ましい、さらに好ましい精度を有する。本実施形態において、電流経路を流れるのは、交流電流の形式で存在し、且つ電圧は110V、周波数は60Hzの商用電源であるが、その電圧及び周波数はこれに限定されない。
【0033】
本実施形態において、前記電流検出工程S2は、二乗平均平方根アルゴリズムを用いて、測定により得られた交流電流の正確な電流値を推定する。いわゆる二乗平均平方根アルゴリズムとは、電流に対応するパラメータの全ての値の二乗を合計し、平均値を取得し、平均値の平方根を計算して二乗平均平方根値を取得することを指し、より正確な電流値を取得することができる。しかし、本発明は二乗平均平方根アルゴリズムに限定されず、ピーク電圧を電流値に換算するか、相対的に短い時間での数値の平均値を取ること等によっても、電流値を計算することができるが、電力因子が相対的に低い場合のピーク電圧から換算した電流値は、電流のピーク値は高いが実際の電力は低くなる可能性があり、回路に許容される電力範囲内で、回路が誤って切断されてしまう誤判につながるため、二乗平均平方根アルゴリズムの効果の方が好ましい。
【0034】
図4Aに示されるように、制御モジュール20は、電流検出工程S2で電流値を取得した後、過負荷測定工程S3を実行する。過負荷測定工程S3は、起動判定サブ工程S31と、計時サブ工程S32と、閾値取得サブ工程S33と、過負荷判定サブ工程S34とを含む。
【0035】
起動判断サブ工程S31は、過負荷測定工程S3に入った場合、判断前記電流値が所定の閾値ZS以上であるかを判断するために用いられ、そうである場合、前記過負荷測定工程S3中の後続するサブ工程の実行を継続し、そうでない場合、時間パラメータをリセットし、電流測定工程S1、電流検出工程S2及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。前掲のいわゆるリセットの方法の1つは、時間パラメータをゼロに設定することである。
【0036】
本実施形態において、所定の閾値ZSは、電流閾値データに対応する最後の1つの前記時間区間に対応する前記遮断閾値と同じであり、16.5アンペアであるが、同じであることには限定されない。
【0037】
すなわち、起動判断工程S3が開始するとき、制御モジュール20は、電流測定装置10が送信した電流信号を受信した後、まず、電流値が所定の閾値の単一の定値以上かを判断し、そうでない場合、電流値が相対的に低いため、電流過負荷保護を起動させる必要がないと判断し、従って、時間パラメータをリセットした後、新しいサイクルを実行し、電流測定工程S1、電流検出工程S2及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。そうである場合、後続する電流過負荷保護にかかるサブ工程を続行する。
【0038】
過負荷測定工程S3では、起動判断サブ工程S31の後に、計時サブ工程S32が実行され、計時ユニット21を使用して計測し、元の時間パラメータ上に新たな時間パラメータとして数値を累積する。計時は、起動判断工程S31で電流値が所定の閾値ZS以上であると判定された時点から開始され、それを時間パラメータとして累積する。
【0039】
その後、閾値取得サブ工程S33を実行し、このサブ工程において、制御モジュール20は、計時ユニット21によって継続的に更新される時間パラメータに基づき、前掲の電流閾値データから対応する時間区間を見つけ、対応する時間区間の遮断閾値を取得する。
【0040】
例を挙げると、前記電流閾値データには、複数の時間区間が記録されている。各時間区間は、それぞれ電流上限の遮断閾値に対応する。図2A図2Bを参照すると、それは、それぞれ電流閾値データの概略図及び電流遮断閾値-累積時間の概略図を開示している。図より分かるように、電流閾値データは、各時間区間の名称P1、各時間区間の開始時間値P2及び終了時間値P3、並びに各時間区間に対応する遮断閾値P4を含む。図2Aは、理解を容易にするために、表で示しているが、実際の応用にあたっては、電流閾値データの形式は、図中に示されるものに限定されない。
【0041】
さらに、図2Bを参照すると、図では、電流閾値データを視覚的な方法で表現している。図中の横軸は時間パラメータを表し、単位は秒である。計時ユニット21は、動作開始後に計時を開始し、時間が時間パラメータとしてゼロから累積される。縦軸は、対応する電流的遮断閾値を表し、単位はアンペア(A)である。図より分かるように、遮断閾値分布線ZL1が図示されている。遮断閾値分布線ZL1の形状から、第1の時間区間Z1、第2の時間区間Z2及び第3の時間区間Z3が、発生時刻の早い順に連続して配置されていることが分かる。
【0042】
本実施形態において、各時間区間に対応する遮断閾値は、時間の増加とともに徐々に減少し、最後の時間区間の遮断閾値は、所定の閾値ZSと同一である。しかし、応用にあたって、その両者は同一のものに限定されない。
【0043】
本実施形態において、第1の時間区間Z1は、電流閾値データの最初の時間区間であり、それが対応する時間パラメータは0秒目から開始し、2秒目前に終了する。負荷2の正常動作電流ZCの15Aに対して、第1の時間区間Z1には、負荷2が起動したときの高電流に対応するために第1の遮断閾値が正常動作電流ZCの3倍、即ち45アンペアに設定され、そしていわゆる「N秒目前」はN秒自体は含まない。
【0044】
また、第1の遮断閾値は、負荷2の正常動作電流ZCより大きくなければならず、且つ任意に前記正常動作電流ZCの2倍、3倍、5倍、10倍以下である。別の実施形態において、第1の遮断閾値は、無限大であっても良く、すなわち、第1の時間区間Z1の間、電流値と第1の遮断閾値の比較は省略されても良く、過負荷保護工程S4は、第1の時間区間Z1において実行されない。すなわち、電流経路上の電流値に関係なく、遮断閾値が無限大である場合、電流経路は、第1の時間区間Z1の間、過負荷と判断され切断されることはない。
【0045】
第2の時間区間Z2に対応する累積時間は、2秒目から開始し、4秒目前に終了する。負荷2の起動後は、電流経路を流れる電流が素早く低下するため、第2の遮断閾値は、正常電流の1.3倍より略大きく、即ち、19.5Aに設定される。第2の遮断閾値は、負荷2の正常動作電流ZCより大きいでなければならず、且つその1.8倍以上、1.5倍以上、1.3倍、または、一つ前の時間区間の遮断閾値よりも小さいその他任意の数値であって良い。
【0046】
本実施形態において、第3の時間区間Z3に対応する累積時間は、4秒目から開始し、且つそれが対応する第3の遮断閾値は、所定の閾値と同一であるが、応用にあたっては、その両者は同一であることに限定されない。本実施形態において、第3の遮断閾値は、正常動作電流ZCより略大きく、正常動作電流ZCの1.1倍、即ち約16.5アンペアである。第3の遮断閾値は、正常動作電流ZCの1.6倍以上、1.2倍以上、1.15倍以上且つ一つ前の時間区間に対応する遮断閾値未満であって良い。本実施形態において、第3の時間区間Z3の設定は、電流値が遮断閾値以上であるかどうかを判断することのみを目的としているため、第3の時間区間Z3には時間の長さ制限はなく、電流値が遮断閾値以上の場合、負荷に電流過負荷保護動作を実行して、電流経路をオフにする。電流値が遮断閾値未満の場合、過度な時間は必要とせずに比較を終了する。
【0047】
図より分かるように、本実施形態における電流閾値データは、3つの時間区間のみを含むが、必要に応じて、各時間区間の間には1以上の新たな時間区間を挿入することができる。ただし、時間区間を追加しても、時間パラメータに対応する時間が早ければ早いほど、対応する遮断閾値を大きくする必要があるという規則は維持する必要がある。各遮断閾値分布線ZL1が含む時間区間数は、例えば、3以上であり、且つそれぞれ20、10、7及び5以下である場合、その効果はそれぞれ好ましい、より好ましい、さらに好ましい、である。
【0048】
時間区間が占める時間を延長することにより、電流閾値データはより単純になり、必要な比較リソースが少なくなるが、過負荷保護の精度は相対的に低下することに注意しなければならない。前記各時間区間は、例えば、0.01秒、0.1秒、0.5秒以上、且つ0.5秒、1秒、2秒、3秒、5秒または10秒以下など、0秒以外を必要に応じて設定することができる。各時間区間にそれぞれ対応する累積時間の長さが、0.5~10秒、1~5及び2~3秒の間である場合、その保護精度は好ましい、より好ましい、さらに好ましい、である。
【0049】
本実施形態において、最後の時間区間に入る前の各時間区間が占める合計時間が20秒以下、10秒以下及び5秒以下である場合、その応答性能は、それぞれ好ましい、より好ましい、さらに好ましい、である。
【0050】
一方、単一の計時ユニット21を使用して、時間を累積することにより時間区間を区分することの他、計時ユニット21を独立して使用し、各時間区間中の時間を計測しても良い。さらに、各計時ユニット21の順序及び累積時間を予め設定する。例えば、最初の計時ユニット21が計時する秒が0以外且つ特定値(例えば、2秒)に達する前は、第1の遮断閾値を比較基準とし、当最初の計時ユニット21の計時する秒が特定値に達した(例えば、2秒)とき、別の計時ユニット21を起動して計測し、プロセッサが特定値に達するまで、第2の遮断閾値を比較基準とし、次の所定の計時ユニット21を起動し、且つ次の時間区間の遮断閾値を基準とする等、予め設定することができる。以後は同様である。
【0051】
前掲のように、制御モジュール20は、時間パラメータに基づき、電流閾値データから対応する時間区間を見つけた後、前記時間区間に対応する遮断閾値を取得することができる。次いで、過負荷判断サブ工程S34を実行して、制御モジュール20に、電流検出工程S2で取得した電流値及び閾値取得サブ工程S33で取得した遮断閾値に基づき、比較判断を行わせ、電流値が遮断閾値未満の場合、前記時間パラメータの累積を継続し、電流測定工程S1、電流検出工程S2,及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。電流値が遮断閾値以上の場合、過負荷保護工程S4を実行する。
【0052】
過負荷保護工程S4は、電流値が、時間パラメータに対応する時間区間に対応する遮断閾値以上であると判断された場合に、負荷2に対して電流過負荷保護動作を実行するために用いられる。過負荷保護工程S4は、制御モジュール20に、電流経路と接続された回路遮断モジュール30に過負荷信号を送信させ、回路遮断モジュール30に電流経路を接続状態から切断状態に切り替えさせることを含む。
【0053】
一実施形態において、負荷2はウォーターディスペンサーであると仮定する。電源に接続された後、ウォーターディスペンサーは起動信号を受信し、その中のヒーターはフルパワーで動作し、電流過負荷保護装置1の電流測定装置10は、電流測定工程S1を実行して、電流経路上の電流を測定し、対応する電流信号を出力する。制御モジュール20は、電流信号を受信すると、電流検出工程S2を実行して、より正確な電流値を得るために、所定時間内に電流信号を受信して収集し、測定された電流値CVは図2Bに模式的に示される通りである。
【0054】
次に、過負荷測定工程S3に入り、測定された電流値が17アンペアである場合を例とする。制御モジュール20は、起動判断サブ工程S31を実行するとき、制御モジュール20は、前記電流値が予め設定された16.5Aの所定の閾値以上であると判断し、それに応じて計測サブ工程S32を実行する。
【0055】
次いで、計測サブ工程S32では、前記時間パラメータを計測及び累積しながら、0秒より略大きい累積時間パラメータを取得することができる。前記時間パラメータは、電流値が予め設定された16.5Aの所定の閾値以上である時点から、制御モジュール20中の計時ユニット21によって算出が開始されて得られるものである。
【0056】
そして、制御モジュール20は、閾値取得サブ工程S33を実行して、0秒より略大きい前記時間パラメータに基づき、電流閾値データから、前記時間パラメータに対応する時間区間の遮断閾値を1つ取得する。本実施形態において、時間パラメータが0秒より略大きい場合、閾値取得サブ工程S33では、電流閾値データから第1の時間区間Z1をマッチングし、その45アンペアの第1の遮断閾値を取得する。
【0057】
その後、制御モジュール20は、過負荷判断サブ工程S34を実行して、電流値が前記45アンペア遮断閾値以上であるかどうかを判定する。電流検出工程S2で測定された電流値が45アンペア以上である場合、制御モジュール20は、測定された電流値が遮断閾値以上であると判断した後、過負荷保護工程S4を実行して、制御モジュール20に、電流経路と接続された回路遮断モジュール30に対して過負荷信号を送信させ、回路遮断モジュール30に、電流経路を接続状態から切断状態に切り替えさせる。
【0058】
前記時間パラメータが第1の時間区間Z1にあり、電流検出工程S2で測定された電流値が45アンペア未満である場合、過負荷保護工程S4を実行せず、代わりに前記時間パラメータの累積を継続し、電流測定工程S1、電流検出工程S2、及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。
【0059】
同一の実施形態において、前記サイクルが連続的に実行されることに伴い、時間パラメータはリセットされることなく累積され、仮に時間パラメータが3秒目まで増加したときの電流検出工程S2によって得られた電流が17アンペアであったとする。電流値は所定の閾値ZSよりも大きいので、判断サブ工程S31及び計測サブ工程S32を起動することによって、閾値取得サブ工程S33に入り、3秒目の時間パラメータに基づき、電流閾値データから時間区間に対応するのは第2の時間区間Z2であり、且つその遮断閾値は19.5アンペアであることが分かる。前掲のように、17アンペアの電流値は19.5アンペアの遮断閾値より大きくないので、過負荷保護工程S4は実行されない。その後、制御モジュール20は、前記時間パラメータの累積を継続し、前記電流測定工程S1、前記電流検出工程S2,及び過負荷測定工程S3を改めて順次実行する。
【0060】
しかし、時間パラメータが4秒目まで増加し、電流検出工程S2によって得られた電流が依然として17アンペアである場合、電流は所定の閾値ZSを超えて維持されるので、判断サブ工程S31及び計測サブ工程S32を起動して、閾値取得サブ工程S33に入り、4秒目の時間パラメータに基づき、電流閾値データから時間区間に対応するのは第3の時間区間Z3であることが分かり、且つ16.5アンペアの遮断閾値が取得される。17アンペアの電流値は16.5アンペアの遮断閾値より大きいので、過負荷保護工程S4が実行される。制御モジュール20は、電流経路と接続された回路遮断モジュール30に対して過負荷信号を送信し、回路遮断モジュール30に、電流経路を接続状態から切断状態に切り替えさせて、電流過負荷保護の効果を達成する。
【0061】
前の例で述べた実施形態のフローによれば、測定された電流が所定の閾値の所定値以上である場合に限り、遮断閾値のさらなる検索および比較が行われることが分かる。これにより、効率が向上し、運算能力の無駄を効果的に削減することができる。
【0062】
一方、本実施形態において、電流測定装置10には、ホール電流測定装置を採用する。ホール電流測定装置は、異なる温度において、同一の電流を測定すると、得られる結果も差が出る。電流の測定精度を向上させるために、本実施形態の記憶ユニットには、補正データが予め記憶されている。前記補正データは、同一機種の電流測定装置10の異なる温度における差を予め記録しておくことにより得られる。補正ユニット24は、前記補正データに基づき、電流閾値データに記憶された遮断閾値を補償及び補正して、補正された遮断閾値を取得することができる。
【0063】
例を挙げると、前記補正値は、温度補正値または電流閾値補正値を指すことができる。すなわち、補正ユニット24は、測定して得られた温度値に基づき、補正データから対応する温度補償値を取得し、温度補償値により、温度値を補償した後、補償後の温度値に基づき、電流閾値データから温度及び時間区間に対応する遮断閾値を得ることができる。あるいは、補正ユニット24は、測定により得られた温度値に基づき、電流閾値データから対応する遮断閾値補正値を取得すると同時に、遮断閾値補正値を用いて、所定の時間区間の遮断閾値を補償することにより、測定精度への温度の影響を低減することも可能であるが、本発明は前掲の例に限定されるものではなく、予め記録された温度補正データに基づき遮断閾値が補正される限りにおいて、本発明の範疇に属する。
【0064】
図3に図示されるのは、即ち、補償後の遮断閾値の概略図である。図より分かるように、電流閾値データ中の複数の補償された補正閾値値は、図中の異なる温度または温度区間に対応する複数の遮断閾値分布線ZL1A~ZL1Cで表される。さらに、図中の分布線の数は3であるが、応用にあたっては、各温度区間にそれぞれ対応する分布線を設定することができ、本発明はこれに限定されない。対応して、閾値取得サブ工程S33では、さらに、補正データに基づき、電流閾値データに記憶された遮断閾値を補償及び補正して、補正された前記遮断閾値を取得するために用いられる。
【0065】
このほか、本実施形態において、制御モジュール20は、前述の各工程を実行しながら、回路遮断回復工程S5を同時に且つ独立して実行することができる。図4Bを参照すると、図4Bは、本発明の電流過負荷保護装置1の制御モジュール20の動作方法の一実施形態における回路遮断回復工程の工程フロー図を示す。図より分かるように、回路遮断回復工程S5は状態記憶サブ工程S51、切断判断サブ工程S52、信号調整サブ工程S53及び切断制御サブ工程S54を順に含む。
【0066】
状態記憶サブ工程S51では、最後に負荷2に送信された動作制御信号を受信して記憶することができる。一実施形態において、負荷2がコントローラ(例えば、ワイヤレスリモートコントローラ)によって制御される電子製品である場合、制御モジュール20は、電子製品がコントローラから受信した最新の動作制御信号を記憶して保存する。本実施形態において、動作制御信号は、回路遮断モジュール30のスイッチコマンドに対応することができる。
【0067】
電流経路が異常状態により切断された場合、制御モジュール20は、切断判断サブ工程S52を実行する。切断判断サブ工程S52では、電流経路が遮断閾値以上であるために切断されているか否かを判定することができる。そうである場合、信号調整サブ工程S53を実行して、前記記憶された動作制御信号を維持または調整することにより、切断状態に対応させ、切断制御サブ工程S54を実行する。反対に、回路の切断が、遮断閾値以上であるために切断されたのではなく、停電等の理由で回路遮断モジュール30が切断され、電流経路が切断された場合、記憶された動作制御信号を変更せず、異常状態が終了して、電源の供給が復旧すると、切断制御サブ工程S54が直接実行される。切断制御サブ工程S54とは、制御モジュール20を使用して、回路遮断モジュール30の動作状態を、維持または調整することによって、記憶された動作制御信号に対応させることを指す。
【0068】
簡単に言えば、停電により回路が切断された場合、停電前に負荷2が受信した動作制御信号が起動信号に対応していれば、本実施形態における電流過負荷保護装置1は、復電後、回路遮断モジュール30の動作状態を起動時の接続状態に復帰させることができる。停電前に受信した動作制御信号がシャットダウン信号に対応する場合、回路遮断モジュール30の動作状態は切断状態に維持される。反対に、電流過負荷保護動作により回路が切断された場合、回路遮断モジュール30の動作状態は切断状態に維持される。これにより、負荷2の安全性がより確保される。
【0069】
前掲のように、数百の時間点から構成される切断閾値分布曲線を使用して複数の遮断閾値を取得すること、または時間変数の数式を使用して遮断閾値を算出する場合と比べ、本発明の実施形態では、秒単位の複数の時間区間からなる遮断閾値分布線ZL1を用いることにより、効果的に比較点を減らし、電流の電流閾値データを簡素化し、同等以上の効果をより簡便に得ることができる。
【0070】
さらに、本実施形態において、遮断閾値分布線ZL1中の各区間の累積時間値及びそれに対応する遮断閾値は、いずれも予め算出が完了し、数値方式で電流閾値データに記憶される。これにより、後続する応用にあたっては、「ルックアップテーブル」方式を選択的に用いて、簡単に遮断閾値を取得することができるため、遮断閾値の算出を省略できるだけでなく、データ処理の手間も省くことができる。
【0071】
また、切断閾値の複数の曲線分布線を同時に比較する必要がある従来技術におけるシステムと比べて、本発明の一実施形態におけるシステムは、先に、単一の規定値を基本フィルタとして使用して、不要な比較を減少させると同時に、単一の遮断閾値分布線と比較する必要があるので、比較フローを簡易化することができ、演算能力要求を低減することができる。
【0072】
最後に、前述の実施形態に開示された構成要素は専ら例示としての説明であり、本開示の範囲を限定することを意図したものではなく、その他の均等な要素の置換または変更も、本開示の権利範囲に含まれるべきであることが強調される。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
【国際調査報告】