(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】エチレンと極性コモノマーとの共重合のための立体障害ホスフィン-アミド担持ニッケル(II)又はパラジウム(II)触媒
(51)【国際特許分類】
C08F 4/26 20060101AFI20230509BHJP
C08F 4/70 20060101ALI20230509BHJP
C08F 210/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C08F4/26
C08F4/70
C08F210/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022555191
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 US2021025152
(87)【国際公開番号】W WO2021202714
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ネット、アレックス、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】スピニー、ヘザー、エー.
(72)【発明者】
【氏名】セネカル、トッド、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン、デイヴィッド、アール.
(72)【発明者】
【氏名】フローゼ、ロバート ディー.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ガルザ ゴンザレス、アレハンドロ、ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
4J015DA04
4J015DA05
4J015DA23
4J015DA37
4J100AA02P
4J100AL03Q
4J100CA01
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA24
4J100FA10
4J100FA19
4J128AA01
4J128AB00
4J128AC48
4J128AF02
4J128AF03
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB00B
4J128BB01B
4J128BC12B
4J128BC25B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB25
4J128EC01
4J128EC02
4J128GA01
4J128GA06
4J128GA19
4J128GB01
(57)【要約】
触媒系を使用してオレフィンモノマーを重合するプロセス及び式(I)による構造を有するプロ触媒を含む触媒系。
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)によるプロ触媒であって、
【化1】
式中、
Mが、ニッケル(II)又はパラジウム(II)であり、
Xは、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-H、-CH
2Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Si(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-OSi(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-Ge(R
C)
3-Q(OR
C)
Q、-P(R
C)
2-W(OR
C)
W、-P(O)(R
C)
2-W(OR
C)
W、-N(R
C)
2、-N(Si(R
C)
3)
2、-NR
CSi(R
C)
3、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、-OCF
3、-S(O)R
C、-S(O)
2R
C、-OS(O)
2R
C、-N=C(R
C)
2、-N=CH(R
C)、-N=CH
2、-N=P(R
C)
3、-OC(O)R
C、-C(O)OR
C、-C(O)R
C、-C(O)H、-N(R
C)C(O)R
C、-N(R
C)C(O)H、-NHC(O)R
C、-NHC(O)H、-C(O)N(R
C)
2、-C(O)NHR
C、-C(O)NH
2、又はハロゲンから選択される配位子であり、各R
Cは、独立して、1つ以上のR
Sで任意選択的に置換された(C
1~C
30)ヒドロカルビル、又は、1つ以上のR
Sで任意選択的に置換された(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、下付き文字Qは、0、1、2、又は3であり、下付き文字Wは、0、1、又は2であり、
Yは、ルイス塩基であり、
任意選択的に、Y及びXが共有結合しており、
R
1は、非置換(C
6~C
40)アリール、置換(C
6~C
40)アリール、炭素原子上にそのラジカルを有する非置換(C
1~C
40)ヘテロアリール、炭素原子上にそのラジカルを有する置換(C
1~C
40)ヘテロアリール、又は、少なくとも1つの第三級炭素原子を有し、(C
4~C
20)アルキルの第三級炭素原子上にそのラジカルを有する置換(C
4~C
20)アルキルから選択され、
R
2及びR
3は、独立して、式(II)を有するラジカルから選択され、
【化2】
式中、
各R
11、R
12、R
13、R
14、及びR
15は、独立して、(C
1~C
30)ヒドロカルビル、(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビル、-OR
N、-NR
N
2、-SR
N、ハロゲン、又は-Hであり、R
Nは、(C
1~C
30)ヒドロカルビルであり、
ただし、R
11及びR
15のうち少なくとも1つは-Hではなく、
式(I)中の各R
Sは、独立して、(C
1~C
20)ヒドロカルビル又はハロゲンである、プロ触媒。
【請求項2】
Yが、中性ルイス塩基性非プロトン性(C
2~C
40)ヘテロ炭化水素である、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項3】
R
2及びR
3が同一である、請求項1又は請求項2に記載のプロ触媒。
【請求項4】
R
11及びR
15が、独立して、-O[(C
1~C
10)アルキル]である、請求項3に記載のプロ触媒。
【請求項5】
R
11及びR
15がメトキシである、請求項3に記載のプロ触媒。
【請求項6】
R
11及びR
15がエトキシである、請求項3に記載のプロ触媒。
【請求項7】
R
11及びR
15が、独立して、-N[(C
1~C
10)アルキル]
2である、請求項3に記載のプロ触媒。
【請求項8】
R
1が、式(III)を有するラジカルであり、
【化3】
式中、R
31~35は、独立して、-H、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
R)
3、-Ge(R
R)
3、-P(R
R)
2、-P(O)(R
R)
2、-N(R
R)
2、-OR
R、-SR
R、-NO
2、-CN、-CF
3、又はハロゲンから選択され、各R
Rは、(C
1~C
30)ヒドロカルビル、(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビル、又は-Hである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロ触媒。
【請求項9】
R
32、R
33、及びR
34が、独立して、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si[(C
1~C
10)アルキル]
3、-N[(C
1~C
10)アルキル]
2、-O[(C
1~C
10)アルキル]から選択される、請求項8に記載のプロ触媒
。
【請求項10】
R
32、R
33、及びR
34が、独立して、メトキシ又はエトキシから選択される、請求項8に記載のプロ触媒。
【請求項11】
R
32及びR
34が-CF
3である、請求項8に記載のプロ触媒。
【請求項12】
R
1が2-フリルである、請求項1に記載のプロ触媒。
【請求項13】
Xが、-CH
2Si(CH
3)
3である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロ触媒。-(CH
2)Si(CH
3)
2(C
6H
5)、-(CH
2)Si(CH
3)(C
6H
5)
2、-(CH
2)Si(C
6H
5)
3、及び-(CH
2)Si(CH
3)
2(CH
2C
6H
5)の本請求項への追加を考慮。
【請求項14】
重合プロセスであって、請求項1~13のいずれか一項に記載の金属-配位子錯体プロ触媒を含む触媒系の存在下で、エチレン及び任意選択的に1つ以上の(C
3~C
10)α-オレフィンモノマー又は任意選択的に1つ以上の環状オレフィンモノマーを重合することを含む、重合プロセス。
【請求項15】
重合プロセスであって、請求項1~13のいずれか一項に記載の金属-配位子錯体プロ触媒を含む触媒系の存在下で、エチレン、極性コモノマー、及び任意選択的に1つ以上の(C
3~C
10)α-オレフィンモノマー又は任意選択的に1つ以上の環状オレフィンモノマーを重合することを含む、重合プロセス。
【請求項16】
前記極性コモノマーが、アクリレート(CH
2=CHC(O)(OR))、グリシジルアクリレート、CH
2=CH(CH
2)
nC(O)(OR)、CH
2=CHC(O)R、CH
2=CH(CH
2)
nC(O)R、CH
2=CH-OC(O)R、CH
2=CH(CH
2)
n-OC(O)R、CH
2=CH(OR)、CH
2=CH(CH
2)
n(OR)、CH
2=CHSi(R)
3-T(OR)
T、CH
2=CH(CH
2)
nSi(R)
3-T(OR)
T,CH
2=CH-OSi(R)
3-T(OR)
T、CH
2=CH(CH
2)
n-OSi(R)
3-T(OR)
T又はCH
2=CHClから選択され、式中、Rは、-H、置換若しくは非置換(C
1-C
30)ヒドロカルビル、又は、置換若しくは非置換(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビルから選択され、nは、1~10の整数であり、Tは、0、1、2、又は3である、請求項15に記載の重合プロセス。
【請求項17】
前記アクリレートコモノマーが、tert-ブチルアクリレートである、請求項15に記載の重合プロセス。
【請求項18】
前記アクリレートコモノマーが、n-ブチルアクリレートである、請求項15に記載の重合プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月31日に出願された米国特許仮出願第63/002,760号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、エチレン及び極性コモノマー重合触媒系及びプロセスに関し、より具体的には、立体障害ホスフィン-アミド担持ニッケル(II)触媒を含むエチレン及びアクリレート重合触媒系と、その触媒系を組み込むオレフィン重合プロセスとに関する。
【背景技術】
【0003】
商業的に、エチレン/アクリレートコポリマーは、高圧及び/又は高温ラジカルプロセスを通して形成され、低密度ポリエチレン(LDPE)と同様の高度に分岐した微細構造を有する。配位触媒作用は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と同様の構造を有する、高度に直鎖状のエチレン/アクリレートコポリマーへのルートを提供する。配位触媒作用によって形成される直鎖状エチレン/アクリレートコポリマーは、ラジカルプロセスによって形成されたコポリマーよりも、高い結晶化度と高い熱抵抗を示す。
【0004】
エチレン重合に適した一般的な有機金属配位触媒は、コモノマーとしてアクリレートを含む系と互換性がない。例えば、LLDPE(エチレン/α-オレフィンコポリマー)の工業生産で使用されるIV族金属触媒(Ti、Zr、Hf)は、アクリレートなどの極性オレフィンモノマーと互換性がない。アクリレートの酸素原子は、ルイス酸性第IV族金属と強く配位するため、エチレン/アクリレート重合中に、金属の活性部位がアクリレートによって遮断され、更なるオレフィン重合が妨げられる。
【0005】
第IV族金属触媒とアクリレートとの不適合性により、第10族金属を含有する電子が豊富な金属触媒(Pd、Ni)が、エチレンとアクリレートモノマーとの共重合反応において探索されている。しかしながら、報告されている多くのNi及びPd含有金属触媒の問題点は、(a)重合速度が遅く、及び/又は(b)目的の極性モノマーの組み込みが少ないことである。
【発明の概要】
【0006】
エチレン共重合活性の高速度及びアクリレートコモノマーの高い取り込みの両方を促進するNi及びPd触媒の配位子骨格を作成する必要性が継続的に存在する。ニッケル又はパラジウムの配位子骨格を用いて、エチレン及び極性モノマーを配位触媒作用を介して共重合し、高度に直鎖状のLLDPE様コポリマーを形成し得る。高度に直鎖状のコポリマーは、80℃未満の温度とは対照的に、より高い温度、具体的には80℃~150℃における改善された耐クリープ性及び寸法安定性を呈し得る。
【0007】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【0008】
【0009】
式(I)中、Mは、ニッケル(II)又はPd(II)であり、Xは、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-H、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-C(O)RC、-C(O)H、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-NHC(O)H、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、又はハロゲンから選択される配位子である。式(I)中の各RCは、独立して、(a)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヒドロカルビル、又は、(b)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。様々な配位子X中の下付き文字Qは、0、1、2、又は3である。様々な配位子X中の下付き文字Wは、0、1、又は2である。Yは、ルイス塩基である。任意選択的に、式(I)中のY及びXは、共有結合している。
【0010】
式(I)中、R1は、非置換(C6~C40)アリール、置換(C6~C40)アリール、炭素原子上にラジカルを有する非置換(C1~C40)ヘテロアリール、炭素原子上にラジカルを有する置換(C1~C40)ヘテロアリール、又は、少なくとも1つの第三級炭素原子を有し、その第三級炭素原子上にラジカルを有する置換(C4~C20)アルキルから選択される。
【0011】
式(I)中、R2及びR3は、独立して、式(II)を有するラジカルから選択される。
【0012】
【0013】
式(II)中、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、-ORN、-NRN
2、-SRN、ハロゲン、又は-Hであり、このとき、各RNは、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、ただし、R11及びR15のうち少なくとも1つは-Hではない。
【0014】
式(I)中、式(I)中の各RSは、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル又はハロゲンである。
【0015】
本開示の実施形態は、重合プロセスを含む。重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン及び1つ以上の極性モノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示の式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、触媒系の特定の実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で実施され得、本開示に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0017】
一般的な略語を以下に列挙する。
Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:イソ-プロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、THF:テトラヒドロフラン、Et2O:ジエチルエーテル、CH2Cl2:ジクロロメタン、EtOAc:酢酸エチル、C6D6:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6:CDCl3:重水素化クロロホルム、Na2SO4:硫酸ナトリウム、MgSO4:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、K2CO3:炭酸カリウム、N2:窒素ガス、PhMe:トルエン、PPR:並列圧力反応器、MAO:メチルアルモキサン、MMAO:修飾メチルアルモキサン、GC:ガスクロマトグラフィ、LC:液体クロマトグラフィ、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル濃度、min又はmins:分、h又はhrs:時間、d:日、Rf;保持因子、TLC;薄層クロマトグラフィ、rpm:毎分回転数。
【0018】
「独立して選択される」という用語とそれに続く複数の選択肢は、R1、R2、R3、及びRCなど、その用語の前に現れる個々の基が、同一であるか、又は異なってもよく、その用語の前に現れる任意の他の基の同一性についても依存関係がないことを示すために本明細書において使用される。
【0019】
「プロ触媒」という用語は、活性化後、例えば、Ni又はPd金属中心に配位したルイス塩基の除去時に触媒活性を有する化合物を指す。
【0020】
特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態が、x及びyを含むx個の炭素原子~y個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C50)アルキルは、その非置換形態において1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造では、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得、RSは、一般的に、本明細書で定義される任意の置換基を表す。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSの同一性に応じて、y個を超える炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である、厳密に1つの基RSで置換された(C1~C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基RSによって置換された場合、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、それぞれ、全ての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の合計数を追加することによって決定する。
【0021】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基に結合した少なくとも1つのヘテロ原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。接頭辞「過/ペル(per)」は、「完全に(thoroughly)」の通常の意味を有する。例えば、「過置換」又は「過置換された」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が、置換基(例えばRS)によって置換されることを意味する。したがって、「ペルフルオロ化アルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子によって置換されているアルキル基である。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個、しかし、全てよりは少ない水素原子が、置換基によって置換されることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合した水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0022】
「(C1~C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ジラジカルを意味し、その各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式及び多環式、縮合及び非縮合の多環式、並びに二環式を含む)又は非環式であり、1つ以上のRSによって置換されているか、又は置換されていない。
【0023】
本開示では、(C1~C50)ヒドロカルビルとして、次の基、すなわち、(C1~C50)アルキル、(C3~C50)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、又は(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレン(例えば、ベンジル(-CH2-C6H5))の非置換又は置換形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「(C1~C50)アルキル」及び「(C1~C18)アルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている、それぞれ、1~50個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐炭化水素ラジカル、及び1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐炭化水素ラジカルを意味する。ラジカルは、アルキルの任意の1つの炭素原子上にあってもよい。非置換(C1~C50)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[Cn]アルキルである。「[Cn]アルキル」という用語は、最大n個の炭素原子を含有する置換基を含むラジカルを意味し、このときnは1~45の整数である。例えば、[C45]アルキルは、例えば、(C1~C5)アルキルである1つのRSで置換された(C27~C40)アルキル、又は、例えば、各々(C1~C10)アルキルである2つのRS基で置換された(C15~C25)アルキルである。(C1~C5)アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルエチルが挙げられる。1,1-ジメチルエチルは、第三級炭素上にラジカルを有する4炭素アルキルである。「第三級炭素原子」という用語は、3つの他の炭素原子に共有結合している炭素原子を指す。
【0025】
「(C6~C50)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子を有し、そのうちの少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子である、非置換であるか、又は(1つ以上のRSによって)置換された単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは、芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つ又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合及び芳香族又は非芳香族であり得る。非置換(C6~C50)アリールの例として、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルが挙げられる。置換(C6~C40)アリールの例として、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、3,5-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0026】
「(C3~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSで置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0027】
(C1~C50)ヒドロカルビレンの例としては、(C6~C50)アリーレン、(C3~C50)シクロアルキレン、及び(C1~C50)アルキレン(例えば、(C1~C20)アルキレン)などの基の非置換又は置換型が挙げられるが、これらに限定されない。ジラジカルは、同じ炭素原子上(例えば、-CH2-)若しくは隣接する炭素原子上(すなわち、1,2-ジラジカル)にあってもよく、又は1個、2個、若しくは3個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。いくつかのジラジカルとしては、1,2-、1,3-、1,4-、又はα,ω-ジラジカルが挙げられ、他のものとしては1,2-ジラジカルが挙げられる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0028】
「(C1~C50)アルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている1~50個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にはない)を意味する。非置換(C1~C50)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、及び-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む、非置換(C1~C20)アルキレンであり、式中、「C*」は、水素原子が除去されて、二級又は三級アルキルラジカルを形成している炭素原子を示す。置換(C1~C50)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、及び-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換1,20-エイコシレン)である。置換(C1~C50)の例としてはまた、1,2-シクロペンタンジイルビス(メチレン)、1,2-シクロヘキサンジイルビス(メチレン)、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジイルビス(メチレン)、及びビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジイルビス(メチレン)も挙げられる。
【0029】
「(C3~C50)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている3~50個の炭素原子の環状ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0030】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含有する基の例として、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-Si(RC)2-、-P(RP)-、-P(RP)2、-P(O)(RP)2、-N(RN)-、-N(RN)2、-N=C(RC)2、-N=C(NRN
2)(RC)、-Ge(RC)2-、又は-Si(RC)3が挙げられ、式中、各RC及び各RPは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hであり、各RNは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭化水素の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ジラジカルを意味する。(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル又は(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在してもよい。ヘテロヒドロカルビレンの2つのラジカルは、単一の炭素原子上又は単一のヘテロ原子上に存在してもよい。更に、ジラジカルの2つのラジカルのうちの1つが炭素原子上に存在してよく、他方のラジカルが異なる炭素原子上に存在してもよく;2つのラジカルのうちの1つが炭素原子上に存在し、他方はヘテロ原子上に存在してもよく;又は、2つのラジカルのうちの1つがヘテロ原子上に、他方は異なるヘテロ原子上に存在してもよい。各(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換であるか、又は(1つ以上のRSによって)置換され得、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり得る。
【0031】
(C1~C50)ヘテロヒドロカルビルは非置換であるか、又は置換されていてもよい。(C1~C50)ヘテロヒドロカルビルの非限定例として、(C1~C50)ヘテロアルキル、(C1~C50)ヒドロカルビル-O-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C50)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(Cl~C50)ヒドロカルビル-N(RN)-、(Cl~C50)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C50)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C50)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、又は(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。追加の例として、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、及び-C(O)N(RC)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「(C4~C50)ヘテロアリール」という用語は、合計2~50個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の、非置換又は(1つ以上のRSによって)置換された単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。ヘテロアリールのラジカルは、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在してもよい。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、1つのヘテロ芳香環を含み、二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族ラジカルの他の1つ又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合及び芳香族又は非芳香族であってもよい。他のヘテロアリール基(例えば、(C4~C12)ヘテロアリールなどの(Cx~Cy)ヘテロアリール全般)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換であるか、又は1個又は2個以上のRSで置換されているものとして、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、3、又は4であり得、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例として、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2又は3であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例として、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、ピラジン-2-イル、1,3,5-トリアジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0033】
「(C1~C50)ヘテロアルキル」という用語は、1~50個の炭素原子及び1個又は2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルを意味する。「(C1~C50)ヘテロアルキレン」という用語は、1~50個の炭素原子及び1個又は2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルを意味する。ヘテロアルキル又はヘテロアルキレンのヘテロ原子として、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、P(O)(RP)2、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、及びS(O)2を挙げることができるが、これらに限定されず、このとき、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている。
【0034】
非置換(C2~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0035】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態(フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-))を意味する。
【0036】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、及び炭素-ケイ素二重又は三重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基RS中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合若しくは炭素-炭素三重結合、又は(ヘテロ原子含有基における)1つ以上の炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、若しくは炭素-ケイ素二重又は三重結合を含有することを意味し、もしある場合、置換基RS中、又は、もしある場合、(ヘテロ)芳香環中に存在し得るいかなる二重結合も含まない。
【0037】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【0038】
【0039】
式(I)中、Mは、ニッケル(II)又はPd(II)であり、Xは、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-H、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-C(O)RC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-NHC(O)H、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、又はハロゲンから選択される配位子である。様々な配位子X中の下付き文字Qは、0、1、2、又は3である。様々な配位子X中の下付き文字Wは、0、1、又は2である。Yは、ルイス塩基である。任意選択的に、式(I)中のY及びXは、共有結合している。
【0040】
式(I)中、R1は、非置換(C6~C40)アリール、置換(C6~C40)アリール、炭素原子上にラジカルを有する非置換(C1~C40)ヘテロアリール、炭素原子上にラジカルを有する置換(C1~C40)ヘテロアリール、又は、少なくとも1つの第三級炭素原子を有し、その第三級炭素原子上にラジカルを有する置換(C4~C20)アルキルから選択される。「第三級炭素原子」という用語は、3つの他の炭素原子に共有結合している炭素原子を指す。
【0041】
式(I)中、R2及びR3は、独立して、式(II)を有するラジカルから選択される。
【0042】
【0043】
式(II)中、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、-ORN、-NRN
2、-SRN、ハロゲン、又は-Hであり、ただし、少なくとも1つ又はR11及びR15は、-Hではない。各RNは、(C1~C30)ヒドロカルビルである。
【0044】
式(I)中、式(I)中の各RCは、独立して、(a)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヒドロカルビル、又は、(b)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。式(I)中の各RSは、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル又はハロゲンである。
【0045】
1つ以上の実施形態では、式(I)中、R2及びR3は同一である。
【0046】
様々な実施形態では、式(I)中、R11及びR15は、独立して、-O[(C1~C10)アルキル]である。いくつかの実施形態では、R11及びR15は、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシ、好ましくはメトキシ又はエトキシである。別の実施形態では、R11及びR15は、独立して、-N[(C1-C10)アルキル]2である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、R1は、式(III)を有するラジカルである。
【0048】
【0049】
式(III)中、R31~35の各々は、は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RR)3、-Ge(RR)3、-P(RR)2、-P(O)(RR)2、-N(RR)2、-ORR、-SRR、-NO2、-CN、-CF3、又はハロゲンから選択され、このとき、各RRは、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、ハロゲン、又は-Hである。いくつかの実施形態では、R32、R33、及びR34は、独立して、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si[(C1~C10)アルキル]3、-N[(C1~C10)アルキル]2、-O[(C1~C10)アルキル]から選択される。1つ以上の実施形態では、R32、R33、及びR34は、独立して、メトキシ又はエトキシから選択される。いくつかの実施形態では、R1は2-フリルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(III)中、R32及びR34は、-CF3である。
【0051】
式(I)による金属-配位子錯体において、各Yは、配位結合又はイオン結合を介してMと結合する。1つ以上の実施形態では、Yは、ルイス塩基である。ルイス塩基は、電子対を受容体部分に供与することができる化合物又はイオン種であり得る。この説明の目的のために、受容体部分は、式(I)の金属-配位子錯体の金属であるMである。いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、ヘテロ炭化水素又は炭化水素であり得る。中性ヘテロ炭化水素ルイス塩基の例としては、アミン、トリアルキルアミン、エーテル、シクロエーテル、又は硫化物が挙げられるが、これらに限定されない。中性炭化水素ルイス塩基の例としては、アルケン、アルキン、又はアレーンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
1つ以上の実施形態では、Yは、中性ルイス塩基性非プロトン性(C2~C40)ヘテロ炭化水素である。非プロトン性(C2~C40)ヘテロ炭化水素は、これまで定義された(C2~C40)ヘテロ炭化水素であり、(C2~C40)ヘテロ炭化水素の全ての水素原子は、30超のpKaを有し、このときpKaは、酸解離定数(Ka)の基-10の負の対数である。いくつかの実施形態では、Yは、有機ルイス塩基である。有機ルイス塩基の例としては、ピリジン、又は置換ピリジン、スルホキシド、トリアルキル若しくはトリアリールホスフィン、トリアルキル若しくはトリアリールホスフィンオキシド、オレフィン若しくは環状オレフィン、置換若しくは非置換の複素環、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族ケトン、脂肪族アミン、アルキル若しくはシクロアルキルエーテル、又はこれらの混合物が挙げられ、各電子供与体は、2~20個の炭素原子を有する。様々な実施形態では、有機ルイス塩基は、2~20個の炭素原子を有するアルキルエーテル及びシクロアルキルエーテル、3~20個の炭素原子を有するジアルキル、ジアリール、及びアルキルアリールケトン、並びに2~20個の炭素原子を有するアルキルエステルから選択される。有機ルイス塩基の具体的な例としては、メチルホルメート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルエーテル、ジオキサン、ジ-n-プロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルホルメート、ジメチルホルムアミド、メチルアセテート、エチルアニセート、エチレンカーボネート、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、エチルプロピオネート、ルチジン、ピコリン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン、シクロペンテン、エチレン、プロピレン、tert-ブチルエチレン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、1-メチルイミダゾール、又は1-メチルピラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
1つ以上の実施形態では、ルイス塩基は、中性配位子であり得る単座配位子であってよい。いくつかの実施形態では、中性配位子はヘテロ原子を含有し得る。特定の実施形態では、中性配位子は、RTNRKRL、RKORL、RKSRL、又はRTPRKRLなどの中性基であり、このとき、各RTは、独立して、[(C1~C10)ヒドロカルビル]3Si(C1~C10)ヒドロカルビレン、(C1~C40)ヒドロカルビル、[(C1~C10)ヒドロカルビル]3Si、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルであり、各RK及びRLは、独立して、水素、(C1~C40)ヒドロカルビル、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)炭化水素である。いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、シクロペンタジエン、1,3-ブタジエン、又はシクロオクテンである。
【0055】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、酸素である。いくつかの実施形態では、Yは、テトラヒドロフラン、ピレン、ジオキサン、ジエチルエーテル、又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である。
【0056】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、窒素である。いくつかの実施形態では、Yは、ピリジン、ピコリン、ルチジン、トリメチルアミン、又はトリエチルアミンである。
【0057】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、リンである。いくつかの実施形態では、Yは、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、又はトリフェニルホスフィンオキシドである。
【0058】
いくつかの実施形態では、X及びYは、共有連結されている。X基と一緒に共有連結されている有機ルイス塩基Yの具体的な例としては、4-シクロオクテン-1-イル、2-ジメチルアミノベンジル、及び2-ジメチルアミノメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態では、X及びYは連結されており、以下からなる群から選択され、
【0060】
【化6】
式中、R
Cは、-H又は(C
1~C
30)ヒドロカルビル、(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビル、(C
1~C
20)アルキル、又は(C
1~C
12)アルキルである。
【0061】
式(I)による金属-配位子錯体において、Xは、共有結合又はイオン結合を介してMと結合する。いくつかの実施形態では、Xは、-1の正味形式酸化状態を有するモノアニオン性配位子であり得る。各モノアニオン性配位子は、独立して、水素化物、(C1~C40)ヒドロカルビルカルバニオン、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルカルバニオン、ハライド、ニトレート、炭酸水素、リン酸二水素、硫酸水素、HC(O)O-、HC(O)N(H)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)O-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N((C1~C20)ヒドロカルビル)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)-、RKRLB-、RKRLN-、RKO-、RKS-、RKRLP-、又はRMRKRLSi-であってよく、このとき、各RK、RL、及びRMは、独立して、水素、(C1~C40)ヒドロカルビル、若しくは(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルであり、又は、RK及びRLは一緒になって、(C2~C40)ヒドロカルビレン若しくは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、RMは上で定義されたとおりである。
【0062】
いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、(C1~C20)ヒドロカルビル、(C1~C20ヘテロヒドロカルビル、(C1~C20)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、RK及びRLの各々は、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、各単座配位子Xは、塩素原子、(C1~C10)ヒドロカルビル(例えば、(C1~C6)アルキル若しくはベンジル)、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、RK及びRLの各々は、独立して、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルである。
【0063】
更なる実施形態では、Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、ジメチルフェニルシリルメチル、メチルジフェニルシリルメチル、トリフェニルシリルメチル、ベンジルジメチルシリルメチル、トリメチルシリルメチルジメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから選択される。
【0064】
1つ以上の実施形態では、Xは、-(CH2)SiRX
3であり、このとき、各RXは、独立して、(C1~C30)アルキル又は(C1~C30)ヘテロアルキルであり、少なくとも1つのRXは、(C1~C30)アルキルである。いくつかの実施形態では、RXのうちの1つが(C1~C30)ヘテロアルキルである場合、ヘテロ原子はケイ素又は酸素原子である。いくつかの実施形態では、RXは、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、1,1-ジメチルエチル(又は、tert-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、又はノニルである。
【0065】
1つ以上の実施形態では、Xは、-(CH2)Si(CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(C6H5)、-(CH2)Si(CH3)(C6H5)2、-(CH2)Si(C6H5)3、-(CH2)Si(CH3)2(CH2C6H5)、-(CH2)Si(CH3)2(CH2CH3)、-(CH2)Si(CH3)(CH2CH3)2、-(CH2)Si(CH2CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(n-ブチル)、-(CH2)Si(CH3)2(n-ヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)(n-oct)RX、-(CH2)Si(CH3)2RX、-(CH2)Si(n-oct)RX
2、-(CH2)Si(CH3)2(2-エチルヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)2(ドデシル)、又は-CH2Si(CH3)2CH2Si(CH3)3(本明細書では、-CH2Si(CH3)2(CH2TMSと称する)である。任意選択的に、いくつかの実施形態では、式(I)による金属-配位子錯体中、正確に2つのRXが共有結合しているか、正確に3つのRXが共有結合している。
【0066】
いくつかの実施形態では、Xは、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Qであり、このとき、下付き文字Qは、0、1、2又は3であり、各RCは、独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、Xは、-CH2Si(CH3)3である。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I)のプロ触媒の化学基のうちのいずれか又は全ては、R11又はR15のいずれかを除いて、非置換であり得る。R11及びR15のうち少なくとも一方は、置換されている。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基X及びR1~R4、R11~15、又はR31~35のうちのゼロ、いずれか、又は全ては、1つ又は2つ以上のRSで置換され得る。2つ又は3つ以上のRSが式(I)のプロ触媒の同じ化学基に結合している場合、化学基の個々のRSは、同じ炭素原子若しくはヘテロ原子に、又は異なる炭素原子若しくはヘテロ原子に結合し得る。いくつかの実施形態では、化学基X及びR1~R4、R11~15、又はR31~35のうちのゼロ、いずれか、又は全ては、RSで過置換され得る。RSで過置換されている化学基では、個々のRSは全て同一であっても、独立して選択されてもよい。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態は、重合プロセスを含む。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレンを1つ以上のオレフィンモノマーと重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示に記載される式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、1つ以上の極性モノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンモノマーを重合して、エチレン/極性モノマーコポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示の式(I)によるプロ触媒を含む。1つ以上の実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、1つ以上のアルキルアクリレートモノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンモノマーを重合して、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示の式(I)によるプロ触媒を含む。
【0070】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン及び任意選択的に1つ以上の(C3~C10)α-オレフィンモノマー又は環状オレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示に記載されるように、式(I)による構造を有する金属-配位子錯体プロ触媒を含む。
【0071】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、極性コモノマー、及び任意選択的に1つ以上の(C3~C10)α-オレフィンモノマー又は環状オレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示に記載されるように、式(I)による構造を有する金属-配位子錯体プロ触媒を含む。
【0072】
オレフィンモノマーとして、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、シクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルアセテート、CH2=C(H)C(O)(ORX)、CH2=CHC(O)RX、CH2=CH(ORX)、CH2=CH(CH2)(ORX)、CH2=CHSi(RX)3-Y(ORX)Y、CH2=CH-OSi(RX)3-Y(ORX)Y、又はCH2=CHClを挙げることができるが、これらに限定されず、このとき、RXは、-H、置換若しくは非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルから選択され、下付き文字Yは、0、1、2、又は3である。
【0073】
重合プロセルの様々な実施形態では、極性コモノマーとして、アルキルアクリレートCH2=CHC(O)(OR)、グリシジルアクリレート、CH2=CH(CH2)nC(O)(OR)、CH2=CHC(O)R、CH2=CH(CH2)nC(O)R、CH2=CH-OC(O)R、CH2=CH(CH2)n-OC(O)R、CH2=CH(OR)、CH2=CH(CH2)n(OR)、CH2=CHSi(R)3-T(OR)T、CH2=CH(CH2)nSi(R)3-T(OR)T,CH2=CH-OSi(R)3-T(OR)T、CH2=CH(CH2)n-OSi(R)3-T(OR)T又はCH2=CHClが挙げられる。各Rは、-H、置換(C1~C30)ヒドロカルビル、非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルから選択される。下付き文字Tは、0、1、2、又は3である。下付き文字nは、1~10である。極性モノマーがアルキルアクリレート、置換(C1~C30)ヒドロカルビルアクリレート、非置換(C1~C30)ヒドロカルビルアクリレート、置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレート、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレート、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレートである実施形態では、極性エチレン系コポリマーは、脱エステル化され、アクリル酸エチレン系コポリマーを形成し得る。
【0074】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、アルキルアクリレートモノマーは、例としてであって限定されないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、又はそれらの組み合わせであり得る。様々な実施形態では、アルキルアクリレートは、1~8個の炭素を有するアルキル基を有する。これは、C1~C8-アルキルアクリレートと呼ばれる。特定の実施形態では、アルキルアクリレートは、t-ブチルアクリレート又はn-ブチルアクリレートである。
【0075】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、任意選択のα-オレフィンモノマーは、例としてであって限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、又はそれらの組み合わせであり得る。重合プロセスの1つ以上の実施形態では、プロセスは、5位及び6位において(C1~C20)ヒドロカルビル基で置換されたシクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、及びノルボルネン誘導体などの、環状オレフィンを更に含み得る。
【0076】
例示的は実施形態では、触媒系は、以下に列挙したプロ触媒1~5の構造を有する式(I)によるプロ触媒を含み得る。
【0077】
【化7】
式中、TMSはトリメチルシリルであり、Meはメチルであり、Etはエチルである。
【0078】
エチレン/アクリレートコポリマー
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、極性エチレン系コポリマーが、極性エチレン系コポリマーの重量に基づいて少なくとも50重量パーセント(重量%)のエチレンを含有する、エチレン系コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、極性エチレン系コポリマーは、エチレン単位及び極性コモノマー単位の合計に基づいて、70重量%~99.9重量%のエチレン単位及び0.1重量%~30重量%の極性コモノマー単位の反応生成物である。
【0079】
1つ以上の実施形態では、本開示の重合プロセスは、エチレンモノマー、アルキルアクリレートモノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを含み得る。α-オレフィンを含む重合プロセスのいくつかの実施形態では、α-オレフィンは、エチレン系コポリマーの重量に基づいて、0.01重量%~49.9重量%の量で、生成されたポリマーに組み込まれ得る。
【0080】
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、2,000g/モル~1,000,000g/モルの分子量を有するエチレン系コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、生成されたポリマーは、25,000g/モル~900,000g/モル、30,000g/モル~800,000g/モル、又は10,000g/モル~300,000g/モルの分子量を有する。
【0081】
PPRスクリーニング実験の一般的手順
ポリオレフィン触媒作用スクリーニングを、ハイスループット並列重合反応器(PPR)システムで実施した。PPRシステムは、不活性雰囲気のグローブボックス内の48個の単一セル(6×8マトリックス)反応器のアレイで構成されていた。各セルには、およそ5mLの内部作業液体体積を有するガラスインサート(反応器管)が装備されていた。各セルは、独立した圧力制御を有し、500Hzで連続的に撹拌した。触媒、配位子、及び金属前駆体溶液、並びに任意選択の活性剤溶液(使用する場合)を、別途記述のない限り、トルエン中で調製した。特に指示がない限り、配位子を、金属前駆体の溶液を配位子の溶液で予備混合することによる、配位子:金属(L:M)比1:1で金属化した。多くの場合、金属化反応から生じるプロ触媒錯体を単離し、精製した後にPPR反応器に導入した。全ての液体(すなわち、溶媒、t-ブチルアクリレート、及び触媒溶液、並びに任意選択の活性剤溶液(使用する場合))を、ロボットシリンジを介して添加した。ガス試薬(すなわち、エチレン)を、ガス注入口を介して添加した。各実行の前に、反応器を50℃に加熱し、エチレンでパージし、排気した。Tert-ブチルアクリレートを、使用前に活性アルミナの短いカラムを通して濾過して、いずれの重合阻害剤(例えば、4-メトキシフェノール)も除去した。
【0082】
全ての所望のセルにt-ブチルアクリレートを注入し、続いてトルエンの一部分を注入した。反応器を実行温度まで加熱し、次いで、エチレンで適切な圧力まで加圧する。次いで、単離されたプロ触媒錯体又はその場で金属化された配位子及び任意選択の活性剤溶液(使用する場合)をセルに添加した。最終添加後に合計反応体積が5mLに達するように、各触媒添加を少量のトルエンでチェイスした。触媒を添加すると、PPRソフトウェアは、各セルの圧力を監視し始めた。設定点マイナス1psiでバルブを開き、圧力が2psi高く達したときにバルブを閉じて、エチレンガスを補充して添加することによって、所望の圧力(およそ2~6psig以内)を維持した。全ての圧力低下は、実行期間中、又は取り込み若しくは変換要求値に達するまでのいずれか早い方の、エチレンの「取り込み」又は「変換」として累積的に記録した。次いで、反応器圧よりも40psi高い圧量で、30秒間窒素中1%酸素を添加することによって、各反応をクエンチした(実行開始からクエンチ開始時点までの経過時間が「クエンチ時間」である)。「クエンチ時間」が短いほど、触媒はより活性である。任意の所与のセルにおける過剰なポリマーの形成を防止するために、80psigの既定の取り込みレベルに達した際に反応をクエンチした。全ての反応器をクエンチした後、約60℃に冷却した。次いで、排気し、反応器管を取り外して遠心蒸発器に入れた。次いで、ポリマー試料を遠心蒸発器で12時間60℃で乾燥し、秤量してポリマー収率を決定し、IR(t-ブチルアクリレート組み込み)、GPC(分子量、多分散性(PDI))、及びDSC(融点)分析にかけた。
【0083】
バッチ反応器実験の一般的な手順
注:アクリレートは感作性があるため、例えば、蓋付きダンプポットと十分に換気されたドラフトを使用し、tert-ブチルアクリレートとの接触を最小限にすべきである。反応器の内容物をダンプポットに移し、ドラフト内のダンプポットを空にするときは、注意を払う必要がある。
【0084】
2LのParrバッチ反応器で重合反応を行った。反応器を電気加熱マントルで加熱し、冷却水を含有する内部蛇行冷却コイルで冷却した。Evoqua水精製システムを通過させることによって、水を前処理した。反応器及び加熱/冷却系の両方を、Camile TGプロセスコンピューターによって制御及び監視した。反応器の底部に、反応器の内容物を蓋付きダンプポットに移すダンプバルブを取り付けた。ダンプポットには、触媒失活溶液(典型的には、5mLのIrgafos/Irganox/トルエン混合液)を事前に充填した。ポット及びタンクの両方をN2でパージして、蓋付きダンプポットを15ガロンのブローダウンタンクと通気させた。重合に影響を及ぼし得るあらゆる不純物を除去するため、重合又は触媒補給のために使用した全ての化学薬品を精製カラムに通した。トルエンを、2つのカラム(A2アルミナを含有する第1のカラムとQ5反応物を含有する第2のカラム)に通した。tert-ブチルアクリレートを、活性化アルミナを通して濾過した。エチレンを、2つのカラム(A204アルミナ及び4Åモレキュラーシーブを含有する第1のカラムとQ5反応物を含有する第2のカラム)に通した。移送に使用したN2を、A204アルミナ、4Åモレキュラーシーブ、及びQ5反応物を含有する単一のカラムに通した。
【0085】
反応器は、トルエン及びtert-ブチルアクリレートを含有するショットタンクから最初に装填した。ショットタンクは、差圧変換器を使用することによって負荷設定点まで充填した。溶媒/アクリレートの添加後、ショットタンクをトルエンで2回すすぎ、すすぎ液を反応器に移した。次いで、反応器を所望の重合温度設定点まで加熱した。温度設定点に達すると、所望の圧力設定値に到達させるために、エチレンを反応器に添加した。反応器へのエチレンの添加量は、微動流量計によって監視した。
【0086】
触媒を不活性雰囲気グローブボックス内で取り扱い、トルエン中の溶液として反応器に導入した。触媒溶液を注射器に吸引し、触媒ショットタンクに圧力移送した。これに続いて、各5mLのトルエンで3回すすいだ。反応器の圧力設定点が達成された後にのみ、触媒を添加した。
【0087】
触媒添加直後に、実行タイマーを開始した。次いで、圧力設定点を維持するため、エチレンを反応器に供給した(Camile制御による)。エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を、75分間又は40gのエチレン取り込みが発生するまでのいずれか短い時間、実行した。次いで、撹拌機を停止し、底部ダンプバルブを開き、反応器内容物を蓋付きダンプポットに移して空にした。蓋付きダンプポットのバルブを閉じ、密閉したダンプポットを反応器から切り離して、ドラフトに移した。ドラフト内において、蓋をダンプポットから外し、内容物をトレイに注いだ。トレイを最低36時間ドラフト内に放置して、溶媒及びtert-ブチルアクリレートを蒸発させた。次いで、残ったポリマーを含有するトレイを真空オーブンに移し、真空下で140℃に加熱して、あらゆる残りの揮発性物質を除去した。トレイを周囲温度まで冷却した後、ポリマーを収量/効率について秤量し、所望される場合ポリマー試験に供した。
【0088】
GPC手順
Polymer Char赤外線検出器(IR5)及びAgilent PL-gel Mixed Aカラムが装備されたDow Robot Assisted Delivery(RAD)システムを使用して、高温GPC分析を実施した。内部フローマーカーとして使用するために、デカン(10μL)を各試料に添加した。まず、試料を、300ppmのブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)で安定化させた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中に10mg/mLの濃度に希釈し、160℃で120分間撹拌することによって溶解した。注入前に、試料を、BHTで安定化させたTCBで3mg/mLの濃度まで更に希釈した。試料(250μL)を、1つのPL-gel 20μm(50mmx7.5mm)ガードカラム、続いて2つのPL-gel 20μm(300mmx7.5mm)Mixed-Aカラムを通して溶出し、1.0mL/分の流速で、BHTで安定化させたTCBで160℃に維持した。合計実行時間は24分間であった。分子量(MW)を較正するために、Agilent EasiCalポリスチレン標準物(PS-1及びPS-2)を、BHTで安定化させた1.5mLのTCBで希釈し、160℃で15分間撹拌することによって溶解した。これらの標準物を分析して、3次MW較正曲線を作成した。5つのDowlex 2045参照試料の平均を使用して約0.4と計算される1日のQ因子を使用して、分子量単位を、ポリスチレン(PS)単位からポリエチレン(PE)単位に変換する。
【0089】
FT-IR手順
GPC分析のために調製した10mg/mLの試料も利用して、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によるtert-ブチルアクリレート(tBA)の組み込みを定量化した。Dowのロボット調製ステーションは、試料を160℃で60分間加熱及び撹拌し、次いで、シリコンウェーハ上に促進されたステンレスウェルに130μLの部分を堆積させた。窒素パージ下、160℃でTCBを蒸発させた。解像度4cm-1の128スキャンを利用する4000~400cm-1のDTGS KBr検出器が装備されたNexus 6700 FT-IRを使用して、IRスペクトルを収集した。tBA(C=O:1762~1704cm-1)のエチレン(CH2:736~709cm-1)に対する比率を計算し、線形較正曲線に適合させて総tBAを決定した。
【0090】
DSC手順
溶融温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び溶解熱を、加熱-冷却-加熱温度プロファイルを使用して、示差走査熱量測定法(DSC Q2000、TA Instruments,Inc.)によって測定した。3~6mgのポリマーのオープンパンDSC試料を以下の温度プロファイルに供し、TA Universal分析ソフトウェア又はTA Instruments TRIOSソフトウェアを使用してトレースを個別に分析した。
175.00℃で平衡化
3分間等温
ランプ30.00℃/分で0.00℃まで
ランプ10.00℃/分で175.00℃まで
【実施例】
【0091】
実施例1~6は、配位子中間体及び配位子の合成手順である。実施例7~12は、単離されたプロ触媒の合成手順である。実施例13及び14では、プロ触媒1~5の重合反応の結果を一覧にして考察する。本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【0092】
概論
特に明記しない限り、全ての反応を、窒素パージしたグローブボックス内で行った。全ての溶媒及び試薬は、商業的供給先から入手し、特に明記しない限り、受領したままで使用した。無水トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、及びジエチルエーテルを、活性アルミナ及び場合によってはQ-5反応物に通すことによって精製した。溶媒精製用のアルミナは、300℃で8時間、窒素流をアルミナに通すことによって活性化した。Q-5反応物は、窒素流下200℃で4時間、続いて窒素中5%水素流により200℃で3時間、最後に窒素ガスでフラッシュして加熱することにより活性化した。窒素充填グローブボックス中で行われる実験に使用される溶媒を、活性化4Åモレキュラーシーブ上での貯蔵により更に乾燥させた。感湿反応用ガラス器具は、使用前に一晩オーブン中で乾燥させた。HRMS分析は、Agilent 6230TOF質量分析計と連結したZorbax Eclipse Plus C18 1.8μm 2.1×50mmカラムを備えたAgilent 1290Infinity LCを使用して、エレクトロスプレーイオン化法で行った。NMRスペクトルは、Varian 400-MR及びVNMRS-500分光計で記録した。1H NMRデータは、次のように報告する:化学シフト(多重度(br=幅広線、s=1重線、d=2重線、t=3重線、q=4重線、p=5重線、sex=6重線、sept=7重線、及びm=多重線)、積分値、及び帰属)。標準物質として、重水素化溶媒中の残留プロトンを使用して、1H NMRデータの化学シフトをテトラメチルシラン(TMS、δスケール)からの低磁場をppmで報告する。13C NMRデータを、1Hデカップリングを用いて決定し、化学シフトをテトラメチルシランに対するppmで報告する。ホスフィンの13C NMRスペクトルは、C-Pカップリングに起因して複雑であった。31P NMRデータの化学シフトは、外部の未希釈H3PO4に対してppmで報告される。NMR分析のための重水素化溶媒は、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入し、窒素パージされたグローブボックス内で活性化4Åモレキュラーシーブ上に保存した。クロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、クロロビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスフィン、及びビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)を、文献手順に従って調製した。
【0093】
配位子の調製
実施例1-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【0094】
【化8】
グローブボックス内で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(300mg、1.17mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、8mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.64mL、1.3mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から取り出し、3mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(362mg、1.19mmol、1.02当量)のスラリーを添加した。更に撹拌しながら、反応混合物を室温までゆっくりと加温させた。全ての揮発性物質を真空下で除去し、得られた残渣に10mLのジクロロメタンを添加した。溶液をCeliteのプラグを通して濾過し、LiClを除去した。濾液は、透明で明黄色であった。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過によって灰白色粉末として回収した。
1H及び
31P NMRにより、単離された灰白色粉末が所望の生成物(402mg、0.72mmol、61%収率)であることを確認した。
【0095】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.51(s,1H)、8.35(s,2H)、8.01(s,1H)、7.26(t,J=8.3Hz,2H)、6.55(dd,J=8.3,2.7Hz,4H)、3.81(s,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.87(d,J=9.7Hz)、137.91、131.92(d,J=34.1Hz)、130.95、127.65、124.57、124.18、122.01、114.43、104.58、56.02ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-2.16ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-62.91ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C45H60N2O5Pの計算値:562.121;実測値:562.116。
【0096】
実施例2-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-トリメトキシベンズアミド
【0097】
【化9】
グローブボックス内で、3,4,5-トリメトキシベンズアミド(300mg、1.42mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、10mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.78mL、1.6mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から取り出し、4mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファン(442mg、1.45mmol、1.02当量)のスラリーを添加した。更に撹拌しながら、反応混合物を室温までゆっくりと加温させた。白色の沈殿物が形成され、濾過によって回収し、THF及びヘキサンで洗浄した。白色粉末を、所望の生成物(495mg、0.95mmol、67%収率)として確認した。
【0098】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.01(s,1H)、7.23(td,J=8.3,0.7Hz,2H)、7.14(s,2H)、6.53(dd,J=8.3,2.6Hz,4H)、4.01-3.86(m,9H)、3.78(s,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.91(d,J=9.5Hz)、152.93、140.71、131.41、130.56、115.57(d,J=26.9Hz)、105.00、104.66、67.96、60.89、56.25、56.11。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-4.88(d,J=108.0Hz)ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C26H30NO8Pの計算値:516.178;実測値:516.175。
【0099】
実施例3-N-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【0100】
【化10】
グローブボックス内で、撹拌子を備えたガラス瓶に、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(1.0g、3.89mmol)及び冷却THF(26.5mL)を投入した。透明な溶液を、-35℃で30分間グローブボックス冷凍庫内に入れた。30分後、溶液を冷凍庫から取り出し、ヘキサン中の2.5M n-ブチルリチウム(1.72mL、4.30mmol)を撹拌しながら滴加した。得られた赤橙色溶液を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から除去し、THF(10mL)中のビス(2,6-ジエトキシフェニル)クロロホスフィン(1.57g、3.97mmol)の冷却した濁った溶液を添加した。1時間撹拌しながら、反応混合物を室温まで加温した。1時間後、得られた赤褐色溶液のアリコートを取り出し、
31P NMR分光法によって分析して、完了を確認した。
31P NMRスペクトルにより、反応が完了したことが示された。反応混合物を真空下で濃縮乾固し、無水ジクロロメタン(33mL)を添加した。反応混合物をCeliteのプラグを通して濾過し、真空下で濃縮して、暗桃色固体(2.62g)を得た。固体をヘキサンでトリチュレートし、ジクロロメタン(2mL)を添加した。スラリーを室温で5分間撹拌し、固体を濾過によって回収して、ヘキサンで洗浄し、1.79g(2.92mmol、75%)の所望の生成物を桃色固体として得た。
【0101】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.16(s,1H)、8.30(s,2H)、7.99(s,1H)、7.20(t,J=8.3Hz,2H)、6.50(dd,J=8.3,2.7Hz,4H)、3.98(p,J=7.6,6.8Hz,9H)、1.23(t,J=7.0Hz,13H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ165.87(d,J=17.2Hz)、161.05(d,J=9.5Hz)、138.31、131.85(q,J=33.4,32.6Hz)、130.47、127.78、124.48、121.73、115.74(d,J=26.4Hz)、105.32、64.47、14.48ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-0.30ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.19ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C29H31F6NO5Pの計算値:618.1838;実測値:618.1753。
【0102】
実施例4-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルボキサミド
【0103】
【化11】
グローブボックス内で、フラン-2-カルボキサミド(258mg、2.32mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、10mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、1.28mL、2.44mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に15分間戻した。反応混合物を冷凍庫から取り出し、5mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(831mg、2.44mmol、1.05当量)のスラリーをゆっくりと添加した。2時間撹拌しながら、反応混合物を室温まで加温させた。次いで、全ての揮発性物質を真空下で反応混合物から除去し、得られた残渣をジクロロメタンでトリチュレートし、Celiteのパッドを通して濾過した。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過によって白色粉末として回収した(766mg単離、1.83mmol、79%収率)。
【0104】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.25(s,1H)、7.63-7.45(m,1H)、7.21(t,J=8.3Hz,2H)、7.15(d,J=3.5Hz,1H)、6.68-6.42(m,5H)、3.78(d,J=0.9Hz,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.94(d,J=9.6Hz)、143.64、130.56、128.62(d,J=102.0Hz)、115.12(d,J=25.9Hz)、114.13、112.13、104.47、55.98ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-7.34ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C21H24NO6Pの計算値:416.1257;実測値:416.1226。
【0105】
実施例5-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズアミドの合成
【0106】
【0107】
グローブボックス内で、20mLのバイアルに、ベンズアミド(100mg、0.83mmol、1.0当量)、4-ピロリジノピリジン(196mg、1.32mmol、1.6当量)、クロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(281mg、0.83mmol、1.0当量)、8mLのTHF、及び撹拌子を投入した。無色の溶液を65℃に加熱し、18時間撹拌した。翌日、溶液を濾過して塩を除去し、全ての揮発物を真空下の濾液によって除去した。得られた残渣にトルエンを添加し、沈殿物を形成させた。白色固体を濾過により単離し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させ、NMR分光法によって清浄な生成物(182mg)であることを同定した。等量のヘキサンを濾液に添加し、-35℃で一晩冷凍庫に入れた。生成物を溶液から沈殿させ、濾過により回収し、乾燥させた(102mg)。2つの粉末を合わせて、284mgの生成物(0.67mmol、81%収率)を得た。
【0108】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.10(s,2H)、7.88(d,J=7.4Hz,4H)、7.64-7.38(m,5H)、7.21(t,J=8.3Hz,4H)、6.53(d,J=2.6Hz,4H)、3.76(s,19H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ161.98(d,J=9.5Hz)、131.09、130.52、128.31、127.38、115.71(d,J=27.1Hz)、104.66、56.13ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-5.29ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C21H24NO6Pの計算値:426.1473;実測値:426.148。
【0109】
実施例6-N-(ジフェニルホスファニル)ベンズアミド
【0110】
【化13】
グローブボックス内で、ベンズアミド(250mg、1.80mmol)及び撹拌子を100mL瓶に添加し、20mLのTHFに溶解/懸濁して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.99mL、1.96mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に15分間戻した。混合物を冷凍庫から取り出し、5mLのTHF中のクロロジフェニルホスフィン(0.523mL、1.89mmol、1.05当量)のスラリーを撹拌しながらゆっくりと添加した。溶液を、2時間撹拌しながら室温まで加温させた。次いで、全ての揮発性物質を真空下で溶液から除去し、得られた残渣をジクロロメタンでトリチュレートし、Celiteのパッドを通して濾過した。全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去し、トルエンを得られた残渣に添加した。生成物のほとんどは白色の固体として沈殿し、ヘキサンで更にトリチュレートした。生成物を濾過により白色粉末として回収した。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過により回収した。生成物を白色粉末として単離した。2バッチの白色粉末を合わせて、362mg(1.19mmol、66%収率)を得た。
【0111】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ7.85(dd,J=8.4,1.4Hz,2H)、7.59-7.37(m,13H)、6.52(d,J=5.8Hz,1H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ170.03、138.22(d,J=14.8Hz)、134.06、132.12、131.65(d,J=21.7Hz)、129.73、128.81(d,J=6.7Hz)、128.67、127.52ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ25.39ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C19H17NOPの計算値:306.1041;実測値:306.1034。
【0112】
Ni錯体の調製
実施例7-プロ触媒2の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズイミダート)((トリメチルシリル)メチル)(ピリジン)ニッケル(II)
【0113】
【化14】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(73mg、0.18mmol、1.05当量)、撹拌子、及び1mLのトルエンを投入した。次いで、4mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(100mg、0.18mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、非常に暗い褐色/橙色であった。溶液を45℃で30分間撹拌した後、反応混合物の色は顕著に明るくなり、赤色であった。
31P NMR分光法により、30分後に金属化反応が完了したことが示された。全ての揮発性物質を真空下で溶液から除去し、暗赤色の粘着性残渣が残った。生成物をヘキサンでトリチュレートし、激しく撹拌した。生成物を濾過により回収し、乾燥させた(105mg、0.14mmol、75%収率)。
【0114】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ8.94(dd,J=4.8,1.7Hz,2H)、8.91-8.84(m,2H)、7.71(s,1H)、7.22-7.07(m,4H)、6.84(tt,J=7.6,1.7Hz,1H)、6.54(t,J=6.7Hz,2H)、6.34(dd,J=8.3,3.7Hz,4H)、3.36(s,12H)、-0.16(s,9H)、-0.46(d,J=8.8Hz,2H)ppm。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d6)δ174.14(d,J=3.7Hz)、161.47(d,J=2.1Hz)、150.64、139.45(d,J=19.2Hz)、136.36、130.57、129.93、123.56、113.02(d,J=57.3Hz)、104.64(d,J=4.5Hz)、55.35、31.59、22.68、13.97、1.97、-16.46(d,J=28.6Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ54.98ppm。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d6)δ-62.47ppm。
【0115】
実施例8-プロ触媒5の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-トリメトキシベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0116】
【化15】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(114mg、0.29mmol、1.0当量)、撹拌子、及び5mLのトルエン、その後にピリジン(23μL、0.29mmol、1.0当量)を投入した。次いで、固体のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-(トリメトキシ)ベンズアミド(150mg、0.29mmol)を、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液は、非常に暗い褐色/黄色であった。反応混合物を55℃に加熱し、90分間撹拌した。
31P NMR分光法によって示されるように、金属化反応は90分後に完了した。溶液をCeliteプラグを通して濾過し、濾液を約3mLに濃縮し、その点で橙色沈殿物が形成し始めた。生成物をヘキサン(~30mL)でトリチュレートし、得られた溶液を冷凍庫に一晩置いた。混合物を冷凍庫から取り出し、生成物を濾過により回収し、冷ペンタンで洗浄し、乾燥させた(182mg、0.25mmol、85%収率)。
【0117】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ9.12-8.92(m,2H)、7.79(s,2H)、7.20-7.08(m,2H+C6D6シグナル)、6.91(s,1H)、6.59(s,1H)、6.38(dd,J=8.3,3.6Hz,4H)、3.83(s,3H)、3.41(s,12H)、3.33(s,6H)、-0.11(s,9H)、-0.49(d,J=8.5Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ177.70、161.51、152.72、150.96、140.78、136.02、132.56(d,J=18.6Hz)、130.16、123.35、114.12(d,J=56.1Hz)、108.52、104.68(d,J=4.4Hz)、60.07、55.48、55.39、2.12、-17.08(d,J=27.8Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ55.06ppm。
【0118】
実施例9-プロ触媒3の合成((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0119】
【化16】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(9.2mg、0.024mmol、1.0当量)、N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズアミド(10mg、0.024mmol、1.0当量)、撹拌子、及び2mLのC
6D
6を投入した。暗赤色反応物を60℃に1時間加熱し、冷却した。
1H NMR分光法の結果は、表題構造について予想されるものと一致していた。全ての揮発性物質を真空下で除去し、ヘキサンを粘着性残渣に添加し、暗黄色固体を得た。母液をピペットで除去し、生成物を乾燥させた(収率は決定しなかった)。
【0120】
1H NMR(500MHz、ベンゼン-d6)δ9.14-8.91(m,2H)、8.52(dd,J=7.9,1.9Hz,2H)、7.21-7.01(m,9H)、6.84(s,1H)、6.67-6.44(m,2H)、6.33(dd,J=8.3,3.6Hz,4H)、3.36(s,12H)、-0.15(s,9H)、-0.52(d,J=8.5Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ177.78(d,J=2.4Hz)、164.31、161.54(d,J=1.9Hz)、137.28(d,J=18.5Hz)、135.95、127.11、123.39(d,J=1.9Hz)、114.30(d,J=56.6Hz)、104.84(d,J=4.4Hz)、55.55、2.11、-16.85(d,J=28.2Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ54.79ppm。
【0121】
実施例10-プロ触媒1の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0122】
【化17】
グローブボックス内で、110mLの瓶にビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(503mg、1.28mmol、1.0当量)、撹拌子、及び10mLのトルエンを投入した。次いで、20mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(750mg、1.28mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、非常に暗い褐色/黄色であった。反応混合物を45℃で20分間撹拌した後、
31P NMR分光法によって、反応がほぼ完了したことが示された(ジアルキル錯体及び遊離配位子の一部が残存)。ピリジン(0.100mL、1.28mmol、1.0当量)を反応混合物に添加し、混合物を更に20分間45℃に加熱した。
31P NMR分光法により、反応が完了したことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、Celiteのプラグを通して濾過した。次いで、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去した。ペンタンを添加し、真空下で除去して、粗生成物を乾燥させた。得られた固体を最小量のトルエンに溶解し、生成物を過剰のペンタンでトリチュレートした。橙色固体を濾過により回収し、ペンタンで洗浄し、乾燥させた(926mg、1.10mmolの収率86%)。
【0123】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.16(s,1H)、8.30(s,2H)、7.99(s,1H)、7.20(t,J=8.2Hz,2H)、6.50(dd,J=8.3,2.7Hz,5H)、4.08-3.91(m,8H)、1.23(t,J=7.0Hz,12H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ166.01(d,J=17.4Hz)、161.18(d,J=9.5Hz)、138.44、131.99(q,J=33.3,32.4Hz)、130.60、127.91、124.62、121.87、115.87(d,J=26.6Hz)、105.45、64.61、14.61ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-0.30ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.19ppm。
【0124】
実施例11-プロ触媒4の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルビミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0125】
【化18】
グローブボックス内で、20mLのバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(141mg、0.36mmol、1.0当量)、ピリジン(0.029mL、0.36mmol)、撹拌子、及び4mLのトルエンを投入した。次いで、3mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルボキサミド(150mg、0.36mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、暗い赤色/褐色であった。溶液を50℃で60分間撹拌した後、
31P NMR分光法により、所望の錯体への完全な変換が示された。反応混合物を室温まで冷却し、Celiteのプラグを通して濾過した。次いで、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去し、バイアル壁に黄色固体を残した。ペンタンを添加し、溶液を30分間激しく撹拌した。黄色固体を濾過により単離し、真空下で乾燥させた。(164mg、0.26mmol、71%収率)。
【0126】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ9.05(dd,J=4.8,1.7Hz,2H)、7.13(s,1H)、6.86-6.79(m,1H)、6.59-6.52(m,3H)、6.35(dd,J=8.3,3.7Hz,6H)、6.16(dd,J=8.3,3.2Hz,1H)、5.99(dd,J=3.3,1.7Hz,1H)、3.39(s,15H)、-0.12(s,10H)、-0.49(d,J=8.7Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ170.17(d,J=4.1Hz)、161.52(d,J=2.0Hz)、152.40(d,J=24.6Hz)、150.92、142.36、135.96、130.18、123.40(d,J=1.9Hz)、114.05(d,J=57.6Hz)、112.69、110.75、104.79(d,J=4.4Hz)、55.52、2.07、-17.01(d,J=28.4Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ55.22ppm。
【0127】
実施例12:比較プロ触媒C1の調製
((Z)-N-(ジフェニルホスファニル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0128】
【化19】
グローブボックス内で、20mLのバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(134mg、0.34mmol、1.05当量)、撹拌子、及び2mLのトルエンを投入した。ピリジン(26μL、0.33mmol、1.0当量)を橙色溶液に添加し、続いて3mLのトルエン中のN-(ジフェニルホスファニル)ベンズアミド(100mg、0.33mmol)の溶液をゆっくりと添加した。得られた溶液は暗赤色で透明であった。溶液を室温で30分間撹拌した後、
31P NMR分光法によって、所望の錯体(上に示す)及び中性配位子及び2つの-CH
2SiMe
3置換基を担持する関連するニッケル錯体の両方の存在が示された。溶液を45℃で60分間撹拌した後、
31P NMRスペクトルは、所望の錯体への完全な変換を示した。反応混合物をCeliteのプラグを通して濾過し、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去した。得られた粗生成物を最小量のトルエンに溶解し、生成物をペンタンでトリチュレートした。生成物を橙色粉末として濾過により単離し、構造をNMR分光法によって確認した(106mg、0.21mmol、61%収率)。
【0129】
1H NMR(500MHz、ベンゼン-d6)δ9.07(td,J=3.3,1.6Hz,2H)、8.99-8.95(m,2H)、8.62-8.52(m,4H)、7.67-7.47(m,10H)、7.20(t,J=7.7Hz,1H)、6.95-6.83(m,2H)、0.21(s,9H)、-0.15(d,J=7.3Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ180.63、150.45、136.55、136.30、135.85、135.78、135.65、132.94、132.86、130.35、130.23、129.81(d,J=2.5Hz)、123.67、1.97、-10.50(d,J=28.8Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ75.96ppm。
【0130】
実施例13-エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合-並列圧力反応器試験
触媒活性(クエンチ時間及びポリマー収率の観点から)並びに結果として得られたポリマー特性を、プロ触媒1~5並びに比較プロ触媒C1(比較C1)について評価した。比較C1は、前述の配位子を含有する(J.Organomet.Chem.1983,249,C38.)。重合反応を、前述のように並列圧力反応器(PPR)で実行した。
【0131】
表1に示される結果は、並列重合反応器(PPR)における重合反応によって得られた。表1に列挙した各重合反応について、触媒の原液をトルエン中に調製し(1~2mM)、すぐにPPR反応器に移した。共重合実験は、0.25~0.75μmolの触媒負荷を用い、400psiのエチレン圧力で実行した。Tert-ブチルアクリレートを、活性化アルミナのカラムを通して濾過することによって精製し、続いてトルエン中で溶液を調製した。表1に示すように、反応器温度及びtert-ブチルアクリレート負荷を変動させた。表1の各記入は、少なくとも2回の反復実行の平均を表す。
【0132】
【0133】
【0134】
表1のエントリーは、特定の実行での温度は変化し得るが、主にアクリレート負荷量別に整理されている。本開示に記載の触媒の性能を比較C1と比較する。
【0135】
前述のデータによって証明されるように、本開示のプロ触媒は、プロ触媒比較C1よりも高い活性を有する。更に、プロ触媒1~5によって生成されたポリマーは、比較C1によって生成されたポリマーと比較して、tert-ブチルアクリレートの組み込みが増加し、高い分子量を有する。更に、プロ触媒1~5は、比較C1によって生成されたポリマーよりも狭いPDIを有するポリマーを生成する。
【0136】
理論に拘束されることを意図するものではないが、立体障害ホスフィンは、触媒性能のための駆動因子であり得ると考えられる。立体障害ホスフィンは、プロ触媒1~5の共通構成要素であり、比較C1にはない。例えば、エントリー1において、比較C1は、非常に低い活性(36kg/mol・h)及び広いPDI(5.85)を示した。その場合、比較C1の活性は、アクリレート組み込みを分析するのに十分なポリマーを得るには低すぎる。
【0137】
例えば、2,6-ジメトキシフェニルなどのより立体障害性の高いホスフィンアリール置換基を含むことにより、触媒の活性は、比較C1と比較して、1桁(エントリ2~7)増加する。したがって、全てのNi(II)ホスフィンアミド錯体が活性エチレン/アクリレート共重合触媒ではなく、配位子に対して我々が行った構造的修飾が、本発明を構成する。
【0138】
実施例14-エチレン/n-ブチルアクリレート共重合-並列圧力反応器試験
表2に示される結果は、並列重合反応器(PPR)における重合反応によって得られた。表2に列挙した各重合反応について、触媒の原液をトルエン中に調製し(1~2mM)、すぐにPPR反応器に移した。共重合実験は、0.25~0.75μmolの触媒負荷を用い、400psiのエチレン圧力で実行した。n-ブチルアクリレートを、活性化アルミナのカラムを通して濾過することによって精製し、続いてトルエン中で溶液を調製した。表2に示すように、反応器温度及びn-ブチルアクリレート負荷を変動させた。表2の各記入は、少なくとも2回の反復実行の平均を表す。
【0139】
【0140】
表2のエントリーは、特定の実行での温度は変化し得るが、主にアクリレート負荷量別に整理されている。
【0141】
tert-ブチルアクリレート共重合(表1)に対する反応性の相対傾向は、n-ブチルアクリレートについて観察される(表2)。触媒活性及び得られたコポリマーの分子量は、アクリレート負荷量に反比例するが、組み込みはアクリレート負荷量に直接関連する。
【0142】
同一のアクリレート負荷量において、より高いコポリマーへのアクリレート組み込みが、tert-ブチルアクリレートに対してn-ブチルアクリレートについて観察されることに留意されたい。例えば、プロ触媒1は、250μmolのn-ブチルアクリレートと共に、0.9mol%のアクリレート組み込みを有するポリマーを生成する(エントリー3、表2)が、同じ条件下であるが、250μmolのtert-ブチルアクリレートを用いると、0.4mol%の組み込みが観察される。このクラスの触媒は、立体障害及び非立体障害性の極性コモノマーの両方を効果的に組み込む。
【0143】
実施例15-2Lバッチ反応器によって得られた結果
これらの実験では、触媒を、単離された金属錯体のトルエン溶液として反応器に導入した。共重合実験を、400psiのエチレン圧力で実行した。表2に示すように、反応器温度及びtert-ブチルアクリレート負荷を変動させた。反応器へのトルエンの初期投入量は、640g(740mL)であった。エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を、75分間又は40gのエチレン取り込みが発生するまでのいずれか短い時間、実行した。
【0144】
【0145】
表2に示される結果によってわかるように、本開示のプロ触媒、具体的にはプロ触媒1及び2は、2Lバッチ反応器中でエチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を触媒し、数グラムスケールでエチレン/tert-ブチルアクリレートコポリマーをもたらすことができる。より高い触媒活性は、PPR反応器と比較してバッチ反応器において観察され、より高いレベルのアクリレート組み込みを伴った。実行ごとに最大50gのポリマーが生成された。特に、プロ触媒1の性能は良好であり(エントリー2参照)、高い活性(1,500kg/mol・h)で顕著なアクリレート組み込み(1.7mol%)を伴う高MWポリマー(90,400)を生成した。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月31日に出願された米国特許仮出願第63/002,760号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、エチレン及び極性コモノマー重合触媒系及びプロセスに関し、より具体的には、立体障害ホスフィン-アミド担持ニッケル(II)触媒を含むエチレン及びアクリレート重合触媒系と、その触媒系を組み込むオレフィン重合プロセスとに関する。
【背景技術】
【0003】
商業的に、エチレン/アクリレートコポリマーは、高圧及び/又は高温ラジカルプロセスを通して形成され、低密度ポリエチレン(LDPE)と同様の高度に分岐した微細構造を有する。配位触媒作用は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と同様の構造を有する、高度に直鎖状のエチレン/アクリレートコポリマーへのルートを提供する。配位触媒作用によって形成される直鎖状エチレン/アクリレートコポリマーは、ラジカルプロセスによって形成されたコポリマーよりも、高い結晶化度と高い熱抵抗を示す。
【0004】
エチレン重合に適した一般的な有機金属配位触媒は、コモノマーとしてアクリレートを含む系と互換性がない。例えば、LLDPE(エチレン/α-オレフィンコポリマー)の工業生産で使用されるIV族金属触媒(Ti、Zr、Hf)は、アクリレートなどの極性オレフィンモノマーと互換性がない。アクリレートの酸素原子は、ルイス酸性第IV族金属と強く配位するため、エチレン/アクリレート重合中に、金属の活性部位がアクリレートによって遮断され、更なるオレフィン重合が妨げられる。
【0005】
第IV族金属触媒とアクリレートとの不適合性により、第10族金属を含有する電子が豊富な金属触媒(Pd、Ni)が、エチレンとアクリレートモノマーとの共重合反応において探索されている。しかしながら、報告されている多くのNi及びPd含有金属触媒の問題点は、(a)重合速度が遅く、及び/又は(b)目的の極性モノマーの組み込みが少ないことである。
【発明の概要】
【0006】
エチレン共重合活性の高速度及びアクリレートコモノマーの高い取り込みの両方を促進するNi及びPd触媒の配位子骨格を作成する必要性が継続的に存在する。ニッケル又はパラジウムの配位子骨格を用いて、エチレン及び極性モノマーを配位触媒作用を介して共重合し、高度に直鎖状のLLDPE様コポリマーを形成し得る。高度に直鎖状のコポリマーは、80℃未満の温度とは対照的に、より高い温度、具体的には80℃~150℃における改善された耐クリープ性及び寸法安定性を呈し得る。
【0007】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、以下の式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【0008】
【0009】
式(I)中、Mは、ニッケル(II)又はPd(II)であり、Xは、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-H、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-C(O)RC、-C(O)H、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-NHC(O)H、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、又はハロゲンから選択される配位子である。式(I)中の各RCは、独立して、(a)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヒドロカルビル、又は、(b)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。様々な配位子X中の下付き文字Qは、0、1、2、又は3である。様々な配位子X中の下付き文字Wは、0、1、又は2である。Yは、ルイス塩基である。任意選択的に、式(I)中のY及びXは、共有結合している。
【0010】
式(I)中、R1は、非置換(C6~C40)アリール、置換(C6~C40)アリール、炭素原子上にラジカルを有する非置換(C1~C40)ヘテロアリール、炭素原子上にラジカルを有する置換(C1~C40)ヘテロアリール、又は、少なくとも1つの第三級炭素原子を有し、その第三級炭素原子上にラジカルを有する置換(C4~C20)アルキルから選択される。
【0011】
式(I)中、R2及びR3は、独立して、式(II)を有するラジカルから選択される。
【0012】
【0013】
式(II)中、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、-ORN、-NRN
2、-SRN、ハロゲン、又は-Hであり、このとき、各RNは、(C1~C30)ヒドロカルビルであり、ただし、R11及びR15のうち少なくとも1つは-Hではない。
【0014】
式(I)中、式(I)中の各RSは、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル又はハロゲンである。
【0015】
本開示の実施形態は、重合プロセスを含む。重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン及び1つ以上の極性モノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示の式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、触媒系の特定の実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で実施され得、本開示に記載される具体的な実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全であり、主題の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0017】
一般的な略語を以下に列挙する。
Me:メチル、Et:エチル、Ph:フェニル、Bn:ベンジル、i-Pr:イソ-プロピル、t-Bu:tert-ブチル、t-Oct:tert-オクチル(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)、THF:テトラヒドロフラン、Et2O:ジエチルエーテル、CH2Cl2:ジクロロメタン、EtOAc:酢酸エチル、C6D6:重水素化ベンゼン又はベンゼン-d6:CDCl3:重水素化クロロホルム、Na2SO4:硫酸ナトリウム、MgSO4:硫酸マグネシウム、HCl:塩化水素、n-BuLi:ブチルリチウム、t-BuLi:tert-ブチルリチウム、K2CO3:炭酸カリウム、N2:窒素ガス、PhMe:トルエン、PPR:並列圧力反応器、MAO:メチルアルモキサン、MMAO:修飾メチルアルモキサン、GC:ガスクロマトグラフィ、LC:液体クロマトグラフィ、NMR:核磁気共鳴、MS:質量分析、mmol:ミリモル、mL:ミリリットル、M:モル濃度、min又はmins:分、h又はhrs:時間、d:日、Rf;保持因子、TLC;薄層クロマトグラフィ、rpm:毎分回転数。
【0018】
「独立して選択される」という用語とそれに続く複数の選択肢は、R1、R2、R3、及びRCなど、その用語の前に現れる個々の基が、同一であるか、又は異なってもよく、その用語の前に現れる任意の他の基の同一性についても依存関係がないことを示すために本明細書において使用される。
【0019】
「プロ触媒」という用語は、活性化後、例えば、Ni又はPd金属中心に配位したルイス塩基の除去時に触媒活性を有する化合物を指す。
【0020】
特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(Cx~Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態が、x及びyを含むx個の炭素原子~y個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C1~C50)アルキルは、その非置換形態において1~50個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造では、ある特定の化学基は、RSなどの1つ以上の置換基によって置換され得、RSは、一般的に、本明細書で定義される任意の置換基を表す。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基のRS置換版は、任意の基RSの同一性に応じて、y個を超える炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である、厳密に1つの基RSで置換された(C1~C50)アルキル」は、7~56個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基RSによって置換された場合、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、それぞれ、全ての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の合計数を追加することによって決定する。
【0021】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基に結合した少なくとも1つのヘテロ原子(-H)が、置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。接頭辞「過/ペル(per)」は、「完全に(thoroughly)」の通常の意味を有する。例えば、「過置換」又は「過置換された」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が、置換基(例えばRS)によって置換されることを意味する。したがって、「ペルフルオロ化アルキル」は、全ての水素原子がフッ素原子によって置換されているアルキル基である。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個、しかし、全てよりは少ない水素原子が、置換基によって置換されることを意味する。「-H」という用語は、別の原子に共有結合した水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0022】
「(C1~C50)ヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C50)ヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有する炭化水素ジラジカルを意味し、その各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(3個以上の炭素を有し、単環式及び多環式、縮合及び非縮合の多環式、並びに二環式を含む)又は非環式であり、1つ以上のRSによって置換されているか、又は置換されていない。
【0023】
本開示では、(C1~C50)ヒドロカルビルとして、次の基、すなわち、(C1~C50)アルキル、(C3~C50)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、又は(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレン(例えば、ベンジル(-CH2-C6H5))の非置換又は置換形態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
「(C1~C50)アルキル」及び「(C1~C18)アルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている、それぞれ、1~50個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐炭化水素ラジカル、及び1~18個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐炭化水素ラジカルを意味する。ラジカルは、アルキルの任意の1つの炭素原子上にあってもよい。非置換(C1~C50)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、2,2-ジメチルプロピル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[Cn]アルキルである。「[Cn]アルキル」という用語は、最大n個の炭素原子を含有する置換基を含むラジカルを意味し、このときnは1~45の整数である。例えば、[C45]アルキルは、例えば、(C1~C5)アルキルである1つのRSで置換された(C27~C40)アルキル、又は、例えば、各々(C1~C10)アルキルである2つのRS基で置換された(C15~C25)アルキルである。(C1~C5)アルキルの例としては、メチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、2,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチルエチルが挙げられる。1,1-ジメチルエチルは、第三級炭素上にラジカルを有する4炭素アルキルである。「第三級炭素原子」という用語は、3つの他の炭素原子に共有結合している炭素原子を指す。
【0025】
「(C6~C50)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子を有し、そのうちの少なくとも6~14個の炭素原子が芳香環炭素原子である、非置換であるか、又は(1つ以上のRSによって)置換された単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味する。単環式芳香族炭化水素ラジカルは、1つの芳香環を含み、二環式芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式芳香族炭化水素ラジカルが存在するとき、そのラジカルの環のうちの少なくとも1つは、芳香族である。芳香族ラジカルの他の1つ又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合及び芳香族又は非芳香族であり得る。非置換(C6~C50)アリールの例として、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル及びフェナントレニルが挙げられる。置換(C6~C40)アリールの例として、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、3,5-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルが挙げられる。
【0026】
「(C3~C50)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSで置換されている、3~50個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば、(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されているかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3~C20)シクロアルキル、非置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C3~C40)シクロアルキルの例は、置換(C3~C20)シクロアルキル、置換(C3~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0027】
(C1~C50)ヒドロカルビレンの例としては、(C6~C50)アリーレン、(C3~C50)シクロアルキレン、及び(C1~C50)アルキレン(例えば、(C1~C20)アルキレン)などの基の非置換又は置換型が挙げられるが、これらに限定されない。ジラジカルは、同じ炭素原子上(例えば、-CH2-)若しくは隣接する炭素原子上(すなわち、1,2-ジラジカル)にあってもよく、又は1個、2個、若しくは3個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。いくつかのジラジカルとしては、1,2-、1,3-、1,4-、又はα,ω-ジラジカルが挙げられ、他のものとしては1,2-ジラジカルが挙げられる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CH2CH2-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0028】
「(C1~C50)アルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている1~50個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にはない)を意味する。非置換(C1~C50)アルキレンの例は、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、及び-(CH2)4C*(H)(CH3)を含む、非置換(C1~C20)アルキレンであり、式中、「C*」は、水素原子が除去されて、二級又は三級アルキルラジカルを形成している炭素原子を示す。置換(C1~C50)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、及び-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(すなわち、6,6-ジメチル置換1,20-エイコシレン)である。置換(C1~C50)の例としてはまた、1,2-シクロペンタンジイルビス(メチレン)、1,2-シクロヘキサンジイルビス(メチレン)、7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジイルビス(メチレン)、及びビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3-ジイルビス(メチレン)も挙げられる。
【0029】
「(C3~C50)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている3~50個の炭素原子の環状ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0030】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含有する基の例として、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-Si(RC)2-、-P(RP)-、-P(RP)2、-P(O)(RP)2、-N(RN)-、-N(RN)2、-N=C(RC)2、-N=C(NRN
2)(RC)、-Ge(RC)2-、又は-Si(RC)3が挙げられ、式中、各RC及び各RPは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hであり、各RNは、非置換(C1~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭化水素の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~50個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ジラジカルを意味する。(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル又は(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンのヘテロ炭化水素は、1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在してもよい。ヘテロヒドロカルビレンの2つのラジカルは、単一の炭素原子上又は単一のヘテロ原子上に存在してもよい。更に、ジラジカルの2つのラジカルのうちの1つが炭素原子上に存在してよく、他方のラジカルが異なる炭素原子上に存在してもよく;2つのラジカルのうちの1つが炭素原子上に存在し、他方はヘテロ原子上に存在してもよく;又は、2つのラジカルのうちの1つがヘテロ原子上に、他方は異なるヘテロ原子上に存在してもよい。各(C1~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C1~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換であるか、又は(1つ以上のRSによって)置換され得、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含む)又は非環式であり得る。
【0031】
(C1~C50)ヘテロヒドロカルビルは非置換であるか、又は置換されていてもよい。(C1~C50)ヘテロヒドロカルビルの非限定例として、(C1~C50)ヘテロアルキル、(C1~C50)ヒドロカルビル-O-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C50)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C50)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(Cl~C50)ヒドロカルビル-N(RN)-、(Cl~C50)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C50)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C50)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、又は(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。追加の例として、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-NH(RC)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)RC、-C(O)ORC、-N(RC)C(O)RC、及び-C(O)N(RC)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「(C4~C50)ヘテロアリール」という用語は、合計2~50個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の、非置換又は(1つ以上のRSによって)置換された単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味する。ヘテロアリールのラジカルは、炭素原子上又はヘテロ原子上に存在してもよい。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、1つのヘテロ芳香環を含み、二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、2つの環を有し、三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、3つの環を有する。二環式又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルが存在する場合、ラジカルにおける環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。ヘテロ芳香族ラジカルの他の1つ又は複数の環は独立して、縮合又は非縮合及び芳香族又は非芳香族であってもよい。他のヘテロアリール基(例えば、(C4~C12)ヘテロアリールなどの(Cx~Cy)ヘテロアリール全般)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換であるか、又は1個又は2個以上のRSで置換されているものとして、同様の様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、3、又は4であり得、各ヘテロ原子は、独立して、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例として、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2又は3であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例として、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、ピラジン-2-イル、1,3,5-トリアジン-2-イルが挙げられる。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0033】
「(C1~C50)ヘテロアルキル」という用語は、1~50個の炭素原子及び1個又は2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルを意味する。「(C1~C50)ヘテロアルキレン」という用語は、1~50個の炭素原子及び1個又は2個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルを意味する。ヘテロアルキル又はヘテロアルキレンのヘテロ原子として、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、P(O)(RP)2、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、及びS(O)2を挙げることができるが、これらに限定されず、このとき、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRSによって置換されている。
【0034】
非置換(C2~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0035】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、ハロゲン原子のアニオン形態(フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、又はヨウ化物(I-))を意味する。
【0036】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、及び炭素-ケイ素二重又は三重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基RS中に存在しても、しなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合若しくは炭素-炭素三重結合、又は(ヘテロ原子含有基における)1つ以上の炭素-窒素、炭素-リン、窒素-窒素、窒素-リン、若しくは炭素-ケイ素二重又は三重結合を含有することを意味し、もしある場合、置換基RS中、又は、もしある場合、(ヘテロ)芳香環中に存在し得るいかなる二重結合も含まない。
【0037】
本開示の実施形態は、触媒系を含む。触媒系は、式(I)による構造を有するプロ触媒を含む。
【0038】
【0039】
式(I)中、Mは、ニッケル(II)又はPd(II)であり、Xは、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-H、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Q、-Ge(RC)3-Q(ORC)Q、-P(RC)2-W(ORC)W、-P(O)(RC)2-W(ORC)W、-N(RC)2、-N(Si(RC)3)2、-NRCSi(RC)3、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、-OCF3、-S(O)RC、-S(O)2RC、-OS(O)2RC、-N=C(RC)2、-N=CH(RC)、-N=CH2、-N=P(RC)3、-OC(O)RC、-C(O)ORC、-C(O)RC、-N(RC)C(O)RC、-N(RC)C(O)H、-NHC(O)RC、-NHC(O)H、-C(O)N(RC)2、-C(O)NHRC、-C(O)NH2、又はハロゲンから選択される配位子である。様々な配位子X中の下付き文字Qは、0、1、2、又は3である。様々な配位子X中の下付き文字Wは、0、1、又は2である。Yは、ルイス塩基である。任意選択的に、式(I)中のY及びXは、共有結合している。
【0040】
式(I)中、R1は、非置換(C6~C40)アリール、置換(C6~C40)アリール、炭素原子上にラジカルを有する非置換(C1~C40)ヘテロアリール、炭素原子上にラジカルを有する置換(C1~C40)ヘテロアリール、又は、少なくとも1つの第三級炭素原子を有し、その第三級炭素原子上にラジカルを有する置換(C4~C20)アルキルから選択される。「第三級炭素原子」という用語は、3つの他の炭素原子に共有結合している炭素原子を指す。
【0041】
式(I)中、R2及びR3は、独立して、式(II)を有するラジカルから選択される。
【0042】
【0043】
式(II)中、R11、R12、R13、R14、及びR15は、独立して、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、-ORN、-NRN
2、-SRN、ハロゲン、又は-Hであり、ただし、少なくとも1つ又はR11及びR15は、-Hではない。各RNは、(C1~C30)ヒドロカルビルである。
【0044】
式(I)中、式(I)中の各RCは、独立して、(a)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヒドロカルビル、又は、(b)1つ以上のRSで任意選択的に置換された(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。式(I)中の各RSは、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビル又はハロゲンである。
【0045】
1つ以上の実施形態では、式(I)中、R2及びR3は同一である。
【0046】
様々な実施形態では、式(I)中、R11及びR15は、独立して、-O[(C1~C10)アルキル]である。いくつかの実施形態では、R11及びR15は、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシ、好ましくはメトキシ又はエトキシである。別の実施形態では、R11及びR15は、独立して、-N[(C1-C10)アルキル]2である。
【0047】
1つ以上の実施形態では、R1は、式(III)を有するラジカルである。
【0048】
【0049】
式(III)中、R31~35の各々は、は、独立して、-H、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RR)3、-Ge(RR)3、-P(RR)2、-P(O)(RR)2、-N(RR)2、-ORR、-SRR、-NO2、-CN、-CF3、又はハロゲンから選択され、このとき、各RRは、(C1~C30)ヒドロカルビル、(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、ハロゲン、又は-Hである。いくつかの実施形態では、R32、R33、及びR34は、独立して、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si[(C1~C10)アルキル]3、-N[(C1~C10)アルキル]2、-O[(C1~C10)アルキル]から選択される。1つ以上の実施形態では、R32、R33、及びR34は、独立して、メトキシ又はエトキシから選択される。いくつかの実施形態では、R1は2-フリルである。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(III)中、R32及びR34は、-CF3である。
【0051】
式(I)による金属-配位子錯体において、各Yは、配位結合又はイオン結合を介してMと結合する。1つ以上の実施形態では、Yは、ルイス塩基である。ルイス塩基は、電子対を受容体部分に供与することができる化合物又はイオン種であり得る。この説明の目的のために、受容体部分は、式(I)の金属-配位子錯体の金属であるMである。いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、ヘテロ炭化水素又は炭化水素であり得る。中性ヘテロ炭化水素ルイス塩基の例としては、アミン、トリアルキルアミン、エーテル、シクロエーテル、又は硫化物が挙げられるが、これらに限定されない。中性炭化水素ルイス塩基の例としては、アルケン、アルキン、又はアレーンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
1つ以上の実施形態では、Yは、中性ルイス塩基性非プロトン性(C2~C40)ヘテロ炭化水素である。非プロトン性(C2~C40)ヘテロ炭化水素は、これまで定義された(C2~C40)ヘテロ炭化水素であり、(C2~C40)ヘテロ炭化水素の全ての水素原子は、30超のpKaを有し、このときpKaは、酸解離定数(Ka)の基-10の負の対数である。いくつかの実施形態では、Yは、有機ルイス塩基である。有機ルイス塩基の例としては、ピリジン、又は置換ピリジン、スルホキシド、トリアルキル若しくはトリアリールホスフィン、トリアルキル若しくはトリアリールホスフィンオキシド、オレフィン若しくは環状オレフィン、置換若しくは非置換の複素環、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸のアルキルエステル、脂肪族ケトン、脂肪族アミン、アルキル若しくはシクロアルキルエーテル、又はこれらの混合物が挙げられ、各電子供与体は、2~20個の炭素原子を有する。様々な実施形態では、有機ルイス塩基は、2~20個の炭素原子を有するアルキルエーテル及びシクロアルキルエーテル、3~20個の炭素原子を有するジアルキル、ジアリール、及びアルキルアリールケトン、並びに2~20個の炭素原子を有するアルキルエステルから選択される。有機ルイス塩基の具体的な例としては、メチルホルメート、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルエーテル、ジオキサン、ジ-n-プロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルホルメート、ジメチルホルムアミド、メチルアセテート、エチルアニセート、エチレンカーボネート、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、エチルプロピオネート、ルチジン、ピコリン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、シクロオクタジエン、シクロペンテン、エチレン、プロピレン、tert-ブチルエチレン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、1-メチルイミダゾール、又は1-メチルピラゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
1つ以上の実施形態では、ルイス塩基は、中性配位子であり得る単座配位子であってよい。いくつかの実施形態では、中性配位子はヘテロ原子を含有し得る。特定の実施形態では、中性配位子は、RTNRKRL、RKORL、RKSRL、又はRTPRKRLなどの中性基であり、このとき、各RTは、独立して、[(C1~C10)ヒドロカルビル]3Si(C1~C10)ヒドロカルビレン、(C1~C40)ヒドロカルビル、[(C1~C10)ヒドロカルビル]3Si、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルであり、各RK及びRLは、独立して、水素、(C1~C40)ヒドロカルビル、又は(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)炭化水素である。いくつかの実施形態では、ルイス塩基は、シクロペンタジエン、1,3-ブタジエン、又はシクロオクテンである。
【0055】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、酸素である。いくつかの実施形態では、Yは、テトラヒドロフラン、ピレン、ジオキサン、ジエチルエーテル、又はメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)である。
【0056】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、窒素である。いくつかの実施形態では、Yは、ピリジン、ピコリン、ルチジン、トリメチルアミン、又はトリエチルアミンである。
【0057】
様々な実施形態では、ルイス塩基は、(C1~C20)ヘテロ炭化水素であり、ヘテロ炭化水素のヘテロ原子は、リンである。いくつかの実施形態では、Yは、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、又はトリフェニルホスフィンオキシドである。
【0058】
いくつかの実施形態では、X及びYは、共有連結されている。X基と一緒に共有連結されている有機ルイス塩基Yの具体的な例としては、4-シクロオクテン-1-イル、2-ジメチルアミノベンジル、及び2-ジメチルアミノメチルフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態では、X及びYは連結されており、以下からなる群から選択され、
【0060】
【化6】
式中、R
Cは、-H又は(C
1~C
30)ヒドロカルビル、(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビル、(C
1~C
20)アルキル、又は(C
1~C
12)アルキルである。
【0061】
式(I)による金属-配位子錯体において、Xは、共有結合又はイオン結合を介してMと結合する。いくつかの実施形態では、Xは、-1の正味形式酸化状態を有するモノアニオン性配位子であり得る。各モノアニオン性配位子は、独立して、水素化物、(C1~C40)ヒドロカルビルカルバニオン、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルカルバニオン、ハライド、ニトレート、炭酸水素、リン酸二水素、硫酸水素、HC(O)O-、HC(O)N(H)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)O-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N((C1~C20)ヒドロカルビル)-、(C1~C40)ヒドロカルビルC(O)N(H)-、RKRLB-、RKRLN-、RKO-、RKS-、RKRLP-、又はRMRKRLSi-であってよく、このとき、各RK、RL、及びRMは、独立して、水素、(C1~C40)ヒドロカルビル、若しくは(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルであり、又は、RK及びRLは一緒になって、(C2~C40)ヒドロカルビレン若しくは(C1~C20)ヘテロヒドロカルビレンを形成し、RMは上で定義されたとおりである。
【0062】
いくつかの実施形態では、Xは、ハロゲン、(C1~C20)ヒドロカルビル、(C1~C20ヘテロヒドロカルビル、(C1~C20)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、RK及びRLの各々は、独立して、(C1~C20)ヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、各単座配位子Xは、塩素原子、(C1~C10)ヒドロカルビル(例えば、(C1~C6)アルキル若しくはベンジル)、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルC(O)O-、又はRKRLN-であり、RK及びRLの各々は、独立して、非置換(C1~C10)ヒドロカルビルである。
【0063】
更なる実施形態では、Xは、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2,2,-ジメチルプロピル、トリメチルシリルメチル、ジメチルフェニルシリルメチル、メチルジフェニルシリルメチル、トリフェニルシリルメチル、ベンジルジメチルシリルメチル、トリメチルシリルメチルジメチルシリルメチル、フェニル、ベンジル、又はクロロから選択される。
【0064】
1つ以上の実施形態では、Xは、-(CH2)SiRX
3であり、このとき、各RXは、独立して、(C1~C30)アルキル又は(C1~C30)ヘテロアルキルであり、少なくとも1つのRXは、(C1~C30)アルキルである。いくつかの実施形態では、RXのうちの1つが(C1~C30)ヘテロアルキルである場合、ヘテロ原子はケイ素又は酸素原子である。いくつかの実施形態では、RXは、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、ブチル、1,1-ジメチルエチル(又は、tert-ブチル)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、tert-オクチル、又はノニルである。
【0065】
1つ以上の実施形態では、Xは、-(CH2)Si(CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(C6H5)、-(CH2)Si(CH3)(C6H5)2、-(CH2)Si(C6H5)3、-(CH2)Si(CH3)2(CH2C6H5)、-(CH2)Si(CH3)2(CH2CH3)、-(CH2)Si(CH3)(CH2CH3)2、-(CH2)Si(CH2CH3)3、-(CH2)Si(CH3)2(n-ブチル)、-(CH2)Si(CH3)2(n-ヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)(n-oct)RX、-(CH2)Si(CH3)2RX、-(CH2)Si(n-oct)RX
2、-(CH2)Si(CH3)2(2-エチルヘキシル)、-(CH2)Si(CH3)2(ドデシル)、又は-CH2Si(CH3)2CH2Si(CH3)3(本明細書では、-CH2Si(CH3)2(CH2TMSと称する)である。任意選択的に、いくつかの実施形態では、式(I)による金属-配位子錯体中、正確に2つのRXが共有結合しているか、正確に3つのRXが共有結合している。
【0066】
いくつかの実施形態では、Xは、-CH2Si(RC)3-Q(ORC)Q、-Si(RC)3-Q(ORC)Q、-OSi(RC)3-Q(ORC)Qであり、このとき、下付き文字Qは、0、1、2又は3であり、各RCは、独立して、置換若しくは非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルである。いくつかの実施形態では、Xは、-CH2Si(CH3)3である。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I)のプロ触媒の化学基のうちのいずれか又は全ては、R11又はR15のいずれかを除いて、非置換であり得る。R11及びR15のうち少なくとも一方は、置換されている。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基X及びR1~R4、R11~15、又はR31~35のうちのゼロ、いずれか、又は全ては、1つ又は2つ以上のRSで置換され得る。2つ又は3つ以上のRSが式(I)のプロ触媒の同じ化学基に結合している場合、化学基の個々のRSは、同じ炭素原子若しくはヘテロ原子に、又は異なる炭素原子若しくはヘテロ原子に結合し得る。いくつかの実施形態では、化学基X及びR1~R4、R11~15、又はR31~35のうちのゼロ、いずれか、又は全ては、RSで過置換され得る。RSで過置換されている化学基では、個々のRSは全て同一であっても、独立して選択されてもよい。
【0068】
本開示のいくつかの実施形態は、重合プロセスを含む。いくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレンを1つ以上のオレフィンモノマーと重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示に記載される式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、1つ以上の極性モノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンモノマーを重合して、エチレン/極性モノマーコポリマーを形成することを含む。触媒系は、本開示の式(I)によるプロ触媒を含む。1つ以上の実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、1つ以上のアルキルアクリレートモノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンモノマーを重合して、エチレン/アルキルアクリレートコポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示の式(I)によるプロ触媒を含む。
【0070】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン及び任意選択的に1つ以上の(C3~C10)α-オレフィンモノマー又は環状オレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示に記載されるように、式(I)による構造を有する金属-配位子錯体プロ触媒を含む。
【0071】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、重合プロセスは、オレフィン重合条件下、触媒系の存在下で、エチレン、極性コモノマー、及び任意選択的に1つ以上の(C3~C10)α-オレフィンモノマー又は環状オレフィンモノマーを重合して、エチレン系コポリマーを形成することを含み、触媒系は、本開示に記載されるように、式(I)による構造を有する金属-配位子錯体プロ触媒を含む。
【0072】
オレフィンモノマーとして、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、シクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン、アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、ビニルアセテート、CH2=C(H)C(O)(ORX)、CH2=CHC(O)RX、CH2=CH(ORX)、CH2=CH(CH2)(ORX)、CH2=CHSi(RX)3-Y(ORX)Y、CH2=CH-OSi(RX)3-Y(ORX)Y、又はCH2=CHClを挙げることができるが、これらに限定されず、このとき、RXは、-H、置換若しくは非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、又は置換若しくは非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルから選択され、下付き文字Yは、0、1、2、又は3である。
【0073】
重合プロセルの様々な実施形態では、極性コモノマーとして、アルキルアクリレートCH2=CHC(O)(OR)、グリシジルアクリレート、CH2=CH(CH2)nC(O)(OR)、CH2=CHC(O)R、CH2=CH(CH2)nC(O)R、CH2=CH-OC(O)R、CH2=CH(CH2)n-OC(O)R、CH2=CH(OR)、CH2=CH(CH2)n(OR)、CH2=CHSi(R)3-T(OR)T、CH2=CH(CH2)nSi(R)3-T(OR)T,CH2=CH-OSi(R)3-T(OR)T、CH2=CH(CH2)n-OSi(R)3-T(OR)T又はCH2=CHClが挙げられる。各Rは、-H、置換(C1~C30)ヒドロカルビル、非置換(C1~C30)ヒドロカルビル、置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビル、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルから選択される。下付き文字Tは、0、1、2、又は3である。下付き文字nは、1~10である。極性モノマーがアルキルアクリレート、置換(C1~C30)ヒドロカルビルアクリレート、非置換(C1~C30)ヒドロカルビルアクリレート、置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレート、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレート、又は非置換(C1~C30)ヘテロヒドロカルビルアクリレートである実施形態では、極性エチレン系コポリマーは、脱エステル化され、アクリル酸エチレン系コポリマーを形成し得る。
【0074】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、アルキルアクリレートモノマーは、例としてであって限定されないが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、又はそれらの組み合わせであり得る。様々な実施形態では、アルキルアクリレートは、1~8個の炭素を有するアルキル基を有する。これは、C1~C8-アルキルアクリレートと呼ばれる。特定の実施形態では、アルキルアクリレートは、t-ブチルアクリレート又はn-ブチルアクリレートである。
【0075】
重合プロセスのいくつかの実施形態では、任意選択のα-オレフィンモノマーは、例としてであって限定されないが、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、又はそれらの組み合わせであり得る。重合プロセスの1つ以上の実施形態では、プロセスは、5位及び6位において(C1~C20)ヒドロカルビル基で置換されたシクロブテン、シクロペンテン、ノルボルネン、及びノルボルネン誘導体などの、環状オレフィンを更に含み得る。
【0076】
例示的は実施形態では、触媒系は、以下に列挙したプロ触媒1~5の構造を有する式(I)によるプロ触媒を含み得る。
【0077】
【化7】
式中、TMSはトリメチルシリルであり、Meはメチルであり、Etはエチルである。
【0078】
エチレン/アクリレートコポリマー
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、極性エチレン系コポリマーが、極性エチレン系コポリマーの重量に基づいて少なくとも50重量パーセント(重量%)のエチレンを含有する、エチレン系コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、極性エチレン系コポリマーは、エチレン単位及び極性コモノマー単位の合計に基づいて、70重量%~99.9重量%のエチレン単位及び0.1重量%~30重量%の極性コモノマー単位の反応生成物である。
【0079】
1つ以上の実施形態では、本開示の重合プロセスは、エチレンモノマー、アルキルアクリレートモノマー、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンを含み得る。α-オレフィンを含む重合プロセスのいくつかの実施形態では、α-オレフィンは、エチレン系コポリマーの重量に基づいて、0.01重量%~49.9重量%の量で、生成されたポリマーに組み込まれ得る。
【0080】
様々な実施形態では、本開示の重合プロセスは、2,000g/モル~1,000,000g/モルの分子量を有するエチレン系コポリマーを生成し得る。いくつかの実施形態では、生成されたポリマーは、25,000g/モル~900,000g/モル、30,000g/モル~800,000g/モル、又は10,000g/モル~300,000g/モルの分子量を有する。
【0081】
PPRスクリーニング実験の一般的手順
ポリオレフィン触媒作用スクリーニングを、ハイスループット並列重合反応器(PPR)システムで実施した。PPRシステムは、不活性雰囲気のグローブボックス内の48個の単一セル(6×8マトリックス)反応器のアレイで構成されていた。各セルには、およそ5mLの内部作業液体体積を有するガラスインサート(反応器管)が装備されていた。各セルは、独立した圧力制御を有し、500Hzで連続的に撹拌した。触媒、配位子、及び金属前駆体溶液、並びに任意選択の活性剤溶液(使用する場合)を、別途記述のない限り、トルエン中で調製した。特に指示がない限り、配位子を、金属前駆体の溶液を配位子の溶液で予備混合することによる、配位子:金属(L:M)比1:1で金属化した。多くの場合、金属化反応から生じるプロ触媒錯体を単離し、精製した後にPPR反応器に導入した。全ての液体(すなわち、溶媒、t-ブチルアクリレート、及び触媒溶液、並びに任意選択の活性剤溶液(使用する場合))を、ロボットシリンジを介して添加した。ガス試薬(すなわち、エチレン)を、ガス注入口を介して添加した。各実行の前に、反応器を50℃に加熱し、エチレンでパージし、排気した。Tert-ブチルアクリレートを、使用前に活性アルミナの短いカラムを通して濾過して、いずれの重合阻害剤(例えば、4-メトキシフェノール)も除去した。
【0082】
全ての所望のセルにt-ブチルアクリレートを注入し、続いてトルエンの一部分を注入した。反応器を実行温度まで加熱し、次いで、エチレンで適切な圧力まで加圧する。次いで、単離されたプロ触媒錯体又はその場で金属化された配位子及び任意選択の活性剤溶液(使用する場合)をセルに添加した。最終添加後に合計反応体積が5mLに達するように、各触媒添加を少量のトルエンでチェイスした。触媒を添加すると、PPRソフトウェアは、各セルの圧力を監視し始めた。設定点マイナス1psiでバルブを開き、圧力が2psi高く達したときにバルブを閉じて、エチレンガスを補充して添加することによって、所望の圧力(およそ2~6psig以内)を維持した。全ての圧力低下は、実行期間中、又は取り込み若しくは変換要求値に達するまでのいずれか早い方の、エチレンの「取り込み」又は「変換」として累積的に記録した。次いで、反応器圧よりも40psi高い圧量で、30秒間窒素中1%酸素を添加することによって、各反応をクエンチした(実行開始からクエンチ開始時点までの経過時間が「クエンチ時間」である)。「クエンチ時間」が短いほど、触媒はより活性である。任意の所与のセルにおける過剰なポリマーの形成を防止するために、80psigの既定の取り込みレベルに達した際に反応をクエンチした。全ての反応器をクエンチした後、約60℃に冷却した。次いで、排気し、反応器管を取り外して遠心蒸発器に入れた。次いで、ポリマー試料を遠心蒸発器で12時間60℃で乾燥し、秤量してポリマー収率を決定し、IR(t-ブチルアクリレート組み込み)、GPC(分子量、多分散性(PDI))、及びDSC(融点)分析にかけた。
【0083】
バッチ反応器実験の一般的な手順
注:アクリレートは感作性があるため、例えば、蓋付きダンプポットと十分に換気されたドラフトを使用し、tert-ブチルアクリレートとの接触を最小限にすべきである。反応器の内容物をダンプポットに移し、ドラフト内のダンプポットを空にするときは、注意を払う必要がある。
【0084】
2LのParrバッチ反応器で重合反応を行った。反応器を電気加熱マントルで加熱し、冷却水を含有する内部蛇行冷却コイルで冷却した。Evoqua水精製システムを通過させることによって、水を前処理した。反応器及び加熱/冷却系の両方を、Camile TGプロセスコンピューターによって制御及び監視した。反応器の底部に、反応器の内容物を蓋付きダンプポットに移すダンプバルブを取り付けた。ダンプポットには、触媒失活溶液(典型的には、5mLのIrgafos/Irganox/トルエン混合液)を事前に充填した。ポット及びタンクの両方をN2でパージして、蓋付きダンプポットを15ガロンのブローダウンタンクと通気させた。重合に影響を及ぼし得るあらゆる不純物を除去するため、重合又は触媒補給のために使用した全ての化学薬品を精製カラムに通した。トルエンを、2つのカラム(A2アルミナを含有する第1のカラムとQ5反応物を含有する第2のカラム)に通した。tert-ブチルアクリレートを、活性化アルミナを通して濾過した。エチレンを、2つのカラム(A204アルミナ及び4Åモレキュラーシーブを含有する第1のカラムとQ5反応物を含有する第2のカラム)に通した。移送に使用したN2を、A204アルミナ、4Åモレキュラーシーブ、及びQ5反応物を含有する単一のカラムに通した。
【0085】
反応器は、トルエン及びtert-ブチルアクリレートを含有するショットタンクから最初に装填した。ショットタンクは、差圧変換器を使用することによって負荷設定点まで充填した。溶媒/アクリレートの添加後、ショットタンクをトルエンで2回すすぎ、すすぎ液を反応器に移した。次いで、反応器を所望の重合温度設定点まで加熱した。温度設定点に達すると、所望の圧力設定値に到達させるために、エチレンを反応器に添加した。反応器へのエチレンの添加量は、微動流量計によって監視した。
【0086】
触媒を不活性雰囲気グローブボックス内で取り扱い、トルエン中の溶液として反応器に導入した。触媒溶液を注射器に吸引し、触媒ショットタンクに圧力移送した。これに続いて、各5mLのトルエンで3回すすいだ。反応器の圧力設定点が達成された後にのみ、触媒を添加した。
【0087】
触媒添加直後に、実行タイマーを開始した。次いで、圧力設定点を維持するため、エチレンを反応器に供給した(Camile制御による)。エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を、75分間又は40gのエチレン取り込みが発生するまでのいずれか短い時間、実行した。次いで、撹拌機を停止し、底部ダンプバルブを開き、反応器内容物を蓋付きダンプポットに移して空にした。蓋付きダンプポットのバルブを閉じ、密閉したダンプポットを反応器から切り離して、ドラフトに移した。ドラフト内において、蓋をダンプポットから外し、内容物をトレイに注いだ。トレイを最低36時間ドラフト内に放置して、溶媒及びtert-ブチルアクリレートを蒸発させた。次いで、残ったポリマーを含有するトレイを真空オーブンに移し、真空下で140℃に加熱して、あらゆる残りの揮発性物質を除去した。トレイを周囲温度まで冷却した後、ポリマーを収量/効率について秤量し、所望される場合ポリマー試験に供した。
【0088】
GPC手順
Polymer Char赤外線検出器(IR5)及びAgilent PL-gel Mixed Aカラムが装備されたDow Robot Assisted Delivery(RAD)システムを使用して、高温GPC分析を実施した。内部フローマーカーとして使用するために、デカン(10μL)を各試料に添加した。まず、試料を、300ppmのブチル化ヒドロキシルトルエン(BHT)で安定化させた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)中に10mg/mLの濃度に希釈し、160℃で120分間撹拌することによって溶解した。注入前に、試料を、BHTで安定化させたTCBで3mg/mLの濃度まで更に希釈した。試料(250μL)を、1つのPL-gel 20μm(50mmx7.5mm)ガードカラム、続いて2つのPL-gel 20μm(300mmx7.5mm)Mixed-Aカラムを通して溶出し、1.0mL/分の流速で、BHTで安定化させたTCBで160℃に維持した。合計実行時間は24分間であった。分子量(MW)を較正するために、Agilent EasiCalポリスチレン標準物(PS-1及びPS-2)を、BHTで安定化させた1.5mLのTCBで希釈し、160℃で15分間撹拌することによって溶解した。これらの標準物を分析して、3次MW較正曲線を作成した。5つのDowlex 2045参照試料の平均を使用して約0.4と計算される1日のQ因子を使用して、分子量単位を、ポリスチレン(PS)単位からポリエチレン(PE)単位に変換する。
【0089】
FT-IR手順
GPC分析のために調製した10mg/mLの試料も利用して、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)によるtert-ブチルアクリレート(tBA)の組み込みを定量化した。Dowのロボット調製ステーションは、試料を160℃で60分間加熱及び撹拌し、次いで、シリコンウェーハ上に促進されたステンレスウェルに130μLの部分を堆積させた。窒素パージ下、160℃でTCBを蒸発させた。解像度4cm-1の128スキャンを利用する4000~400cm-1のDTGS KBr検出器が装備されたNexus 6700 FT-IRを使用して、IRスペクトルを収集した。tBA(C=O:1762~1704cm-1)のエチレン(CH2:736~709cm-1)に対する比率を計算し、線形較正曲線に適合させて総tBAを決定した。
【0090】
DSC手順
溶融温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)、及び溶解熱を、加熱-冷却-加熱温度プロファイルを使用して、示差走査熱量測定法(DSC Q2000、TA Instruments,Inc.)によって測定した。3~6mgのポリマーのオープンパンDSC試料を以下の温度プロファイルに供し、TA Universal分析ソフトウェア又はTA Instruments TRIOSソフトウェアを使用してトレースを個別に分析した。
175.00℃で平衡化
3分間等温
ランプ30.00℃/分で0.00℃まで
ランプ10.00℃/分で175.00℃まで
【実施例】
【0091】
実施例1~6は、配位子中間体及び配位子の合成手順である。実施例7~12は、単離されたプロ触媒の合成手順である。実施例13及び14では、プロ触媒1~5の重合反応の結果を一覧にして考察する。本開示の1つ以上の特徴は、以下の実施例を考慮して例示される。
【0092】
概論
特に明記しない限り、全ての反応を、窒素パージしたグローブボックス内で行った。全ての溶媒及び試薬は、商業的供給先から入手し、特に明記しない限り、受領したままで使用した。無水トルエン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、及びジエチルエーテルを、活性アルミナ及び場合によってはQ-5反応物に通すことによって精製した。溶媒精製用のアルミナは、300℃で8時間、窒素流をアルミナに通すことによって活性化した。Q-5反応物は、窒素流下200℃で4時間、続いて窒素中5%水素流により200℃で3時間、最後に窒素ガスでフラッシュして加熱することにより活性化した。窒素充填グローブボックス中で行われる実験に使用される溶媒を、活性化4Åモレキュラーシーブ上での貯蔵により更に乾燥させた。感湿反応用ガラス器具は、使用前に一晩オーブン中で乾燥させた。HRMS分析は、Agilent 6230TOF質量分析計と連結したZorbax Eclipse Plus C18 1.8μm 2.1×50mmカラムを備えたAgilent 1290Infinity LCを使用して、エレクトロスプレーイオン化法で行った。NMRスペクトルは、Varian 400-MR及びVNMRS-500分光計で記録した。1H NMRデータは、次のように報告する:化学シフト(多重度(br=幅広線、s=1重線、d=2重線、t=3重線、q=4重線、p=5重線、sex=6重線、sept=7重線、及びm=多重線)、積分値、及び帰属)。標準物質として、重水素化溶媒中の残留プロトンを使用して、1H NMRデータの化学シフトをテトラメチルシラン(TMS、δスケール)からの低磁場をppmで報告する。13C NMRデータを、1Hデカップリングを用いて決定し、化学シフトをテトラメチルシランに対するppmで報告する。ホスフィンの13C NMRスペクトルは、C-Pカップリングに起因して複雑であった。31P NMRデータの化学シフトは、外部の未希釈H3PO4に対してppmで報告される。NMR分析のための重水素化溶媒は、Cambridge Isotope Laboratoriesから購入し、窒素パージされたグローブボックス内で活性化4Åモレキュラーシーブ上に保存した。クロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、クロロビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスフィン、及びビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)を、文献手順に従って調製した。
【0093】
配位子の調製
実施例1-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【0094】
【化8】
グローブボックス内で、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(300mg、1.17mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、8mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.64mL、1.3mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から取り出し、3mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(362mg、1.19mmol、1.02当量)のスラリーを添加した。更に撹拌しながら、反応混合物を室温までゆっくりと加温させた。全ての揮発性物質を真空下で除去し、得られた残渣に10mLのジクロロメタンを添加した。溶液をCeliteのプラグを通して濾過し、LiClを除去した。濾液は、透明で明黄色であった。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過によって灰白色粉末として回収した。
1H及び
31P NMRにより、単離された灰白色粉末が所望の生成物(402mg、0.72mmol、61%収率)であることを確認した。
【0095】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.51(s,1H)、8.35(s,2H)、8.01(s,1H)、7.26(t,J=8.3Hz,2H)、6.55(dd,J=8.3,2.7Hz,4H)、3.81(s,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.87(d,J=9.7Hz)、137.91、131.92(d,J=34.1Hz)、130.95、127.65、124.57、124.18、122.01、114.43、104.58、56.02ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-2.16ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-62.91ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C45H60N2O5Pの計算値:562.121;実測値:562.116。
【0096】
実施例2-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-トリメトキシベンズアミド
【0097】
【化9】
グローブボックス内で、3,4,5-トリメトキシベンズアミド(300mg、1.42mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、10mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.78mL、1.6mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から取り出し、4mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファン(442mg、1.45mmol、1.02当量)のスラリーを添加した。更に撹拌しながら、反応混合物を室温までゆっくりと加温させた。白色の沈殿物が形成され、濾過によって回収し、THF及びヘキサンで洗浄した。白色粉末を、所望の生成物(495mg、0.95mmol、67%収率)として確認した。
【0098】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.01(s,1H)、7.23(td,J=8.3,0.7Hz,2H)、7.14(s,2H)、6.53(dd,J=8.3,2.6Hz,4H)、4.01-3.86(m,9H)、3.78(s,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.91(d,J=9.5Hz)、152.93、140.71、131.41、130.56、115.57(d,J=26.9Hz)、105.00、104.66、67.96、60.89、56.25、56.11。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-4.88(d,J=108.0Hz)ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C26H30NO8Pの計算値:516.178;実測値:516.175。
【0099】
実施例3-N-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【0100】
【化10】
グローブボックス内で、撹拌子を備えたガラス瓶に、3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(1.0g、3.89mmol)及び冷却THF(26.5mL)を投入した。透明な溶液を、-35℃で30分間グローブボックス冷凍庫内に入れた。30分後、溶液を冷凍庫から取り出し、ヘキサン中の2.5M n-ブチルリチウム(1.72mL、4.30mmol)を撹拌しながら滴加した。得られた赤橙色溶液を冷凍庫に戻した。20分後、反応混合物を冷凍庫から除去し、THF(10mL)中のビス(2,6-ジエトキシフェニル)クロロホスフィン(1.57g、3.97mmol)の冷却した濁った溶液を添加した。1時間撹拌しながら、反応混合物を室温まで加温した。1時間後、得られた赤褐色溶液のアリコートを取り出し、
31P NMR分光法によって分析して、完了を確認した。
31P NMRスペクトルにより、反応が完了したことが示された。反応混合物を真空下で濃縮乾固し、無水ジクロロメタン(33mL)を添加した。反応混合物をCeliteのプラグを通して濾過し、真空下で濃縮して、暗桃色固体(2.62g)を得た。固体をヘキサンでトリチュレートし、ジクロロメタン(2mL)を添加した。スラリーを室温で5分間撹拌し、固体を濾過によって回収して、ヘキサンで洗浄し、1.79g(2.92mmol、75%)の所望の生成物を桃色固体として得た。
【0101】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.16(s,1H)、8.30(s,2H)、7.99(s,1H)、7.20(t,J=8.3Hz,2H)、6.50(dd,J=8.3,2.7Hz,4H)、3.98(p,J=7.6,6.8Hz,9H)、1.23(t,J=7.0Hz,13H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ165.87(d,J=17.2Hz)、161.05(d,J=9.5Hz)、138.31、131.85(q,J=33.4,32.6Hz)、130.47、127.78、124.48、121.73、115.74(d,J=26.4Hz)、105.32、64.47、14.48ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-0.30ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.19ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C29H31F6NO5Pの計算値:618.1838;実測値:618.1753。
【0102】
実施例4-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルボキサミド
【0103】
【化11】
グローブボックス内で、フラン-2-カルボキサミド(258mg、2.32mmol)及び撹拌子を20mLバイアルに添加し、10mLのTHFに溶解して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、1.28mL、2.44mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に15分間戻した。反応混合物を冷凍庫から取り出し、5mLのTHF中のクロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(831mg、2.44mmol、1.05当量)のスラリーをゆっくりと添加した。2時間撹拌しながら、反応混合物を室温まで加温させた。次いで、全ての揮発性物質を真空下で反応混合物から除去し、得られた残渣をジクロロメタンでトリチュレートし、Celiteのパッドを通して濾過した。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過によって白色粉末として回収した(766mg単離、1.83mmol、79%収率)。
【0104】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.25(s,1H)、7.63-7.45(m,1H)、7.21(t,J=8.3Hz,2H)、7.15(d,J=3.5Hz,1H)、6.68-6.42(m,5H)、3.78(d,J=0.9Hz,12H)ppm。13C NMR(126MHz、クロロホルム-d)δ161.94(d,J=9.6Hz)、143.64、130.56、128.62(d,J=102.0Hz)、115.12(d,J=25.9Hz)、114.13、112.13、104.47、55.98ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-7.34ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C21H24NO6Pの計算値:416.1257;実測値:416.1226。
【0105】
実施例5-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズアミドの合成
【0106】
【0107】
グローブボックス内で、20mLのバイアルに、ベンズアミド(100mg、0.83mmol、1.0当量)、4-ピロリジノピリジン(196mg、1.32mmol、1.6当量)、クロロビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(281mg、0.83mmol、1.0当量)、8mLのTHF、及び撹拌子を投入した。無色の溶液を65℃に加熱し、18時間撹拌した。翌日、溶液を濾過して塩を除去し、全ての揮発物を真空下の濾液によって除去した。得られた残渣にトルエンを添加し、沈殿物を形成させた。白色固体を濾過により単離し、ヘキサンで洗浄し、乾燥させ、NMR分光法によって清浄な生成物(182mg)であることを同定した。等量のヘキサンを濾液に添加し、-35℃で一晩冷凍庫に入れた。生成物を溶液から沈殿させ、濾過により回収し、乾燥させた(102mg)。2つの粉末を合わせて、284mgの生成物(0.67mmol、81%収率)を得た。
【0108】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.10(s,2H)、7.88(d,J=7.4Hz,4H)、7.64-7.38(m,5H)、7.21(t,J=8.3Hz,4H)、6.53(d,J=2.6Hz,4H)、3.76(s,19H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ161.98(d,J=9.5Hz)、131.09、130.52、128.31、127.38、115.71(d,J=27.1Hz)、104.66、56.13ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-5.29ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C21H24NO6Pの計算値:426.1473;実測値:426.148。
【0109】
実施例6-N-(ジフェニルホスファニル)ベンズアミド
【0110】
【化13】
グローブボックス内で、ベンズアミド(250mg、1.80mmol)及び撹拌子を100mL瓶に添加し、20mLのTHFに溶解/懸濁して、-35℃に一晩冷却した。混合物を冷凍庫から取り出し、n-ブチルリチウム(2.0M、0.99mL、1.96mmol、1.1当量)をゆっくりと添加し、反応混合物を冷凍庫に15分間戻した。混合物を冷凍庫から取り出し、5mLのTHF中のクロロジフェニルホスフィン(0.523mL、1.89mmol、1.05当量)のスラリーを撹拌しながらゆっくりと添加した。溶液を、2時間撹拌しながら室温まで加温させた。次いで、全ての揮発性物質を真空下で溶液から除去し、得られた残渣をジクロロメタンでトリチュレートし、Celiteのパッドを通して濾過した。全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去し、トルエンを得られた残渣に添加した。生成物のほとんどは白色の固体として沈殿し、ヘキサンで更にトリチュレートした。生成物を濾過により白色粉末として回収した。濾液を約2mLに濃縮し、生成物をヘキサンでトリチュレートし、濾過により回収した。生成物を白色粉末として単離した。2バッチの白色粉末を合わせて、362mg(1.19mmol、66%収率)を得た。
【0111】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ7.85(dd,J=8.4,1.4Hz,2H)、7.59-7.37(m,13H)、6.52(d,J=5.8Hz,1H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ170.03、138.22(d,J=14.8Hz)、134.06、132.12、131.65(d,J=21.7Hz)、129.73、128.81(d,J=6.7Hz)、128.67、127.52ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ25.39ppm。HRMS(ESI+)(m/z):[M+H]C19H17NOPの計算値:306.1041;実測値:306.1034。
【0112】
Ni錯体の調製
実施例7-プロ触媒2の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズイミダート)((トリメチルシリル)メチル)(ピリジン)ニッケル(II)
【0113】
【化14】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(73mg、0.18mmol、1.05当量)、撹拌子、及び1mLのトルエンを投入した。次いで、4mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(100mg、0.18mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、非常に暗い褐色/橙色であった。溶液を45℃で30分間撹拌した後、反応混合物の色は顕著に明るくなり、赤色であった。
31P NMR分光法により、30分後に金属化反応が完了したことが示された。全ての揮発性物質を真空下で溶液から除去し、暗赤色の粘着性残渣が残った。生成物をヘキサンでトリチュレートし、激しく撹拌した。生成物を濾過により回収し、乾燥させた(105mg、0.14mmol、75%収率)。
【0114】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ8.94(dd,J=4.8,1.7Hz,2H)、8.91-8.84(m,2H)、7.71(s,1H)、7.22-7.07(m,4H)、6.84(tt,J=7.6,1.7Hz,1H)、6.54(t,J=6.7Hz,2H)、6.34(dd,J=8.3,3.7Hz,4H)、3.36(s,12H)、-0.16(s,9H)、-0.46(d,J=8.8Hz,2H)ppm。13C NMR(101MHz、ベンゼン-d6)δ174.14(d,J=3.7Hz)、161.47(d,J=2.1Hz)、150.64、139.45(d,J=19.2Hz)、136.36、130.57、129.93、123.56、113.02(d,J=57.3Hz)、104.64(d,J=4.5Hz)、55.35、31.59、22.68、13.97、1.97、-16.46(d,J=28.6Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ54.98ppm。19F NMR(376MHz、ベンゼン-d6)δ-62.47ppm。
【0115】
実施例8-プロ触媒5の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-トリメトキシベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0116】
【化15】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(114mg、0.29mmol、1.0当量)、撹拌子、及び5mLのトルエン、その後にピリジン(23μL、0.29mmol、1.0当量)を投入した。次いで、固体のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)-3,4,5-(トリメトキシ)ベンズアミド(150mg、0.29mmol)を、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液は、非常に暗い褐色/黄色であった。反応混合物を55℃に加熱し、90分間撹拌した。
31P NMR分光法によって示されるように、金属化反応は90分後に完了した。溶液をCeliteプラグを通して濾過し、濾液を約3mLに濃縮し、その点で橙色沈殿物が形成し始めた。生成物をヘキサン(~30mL)でトリチュレートし、得られた溶液を冷凍庫に一晩置いた。混合物を冷凍庫から取り出し、生成物を濾過により回収し、冷ペンタンで洗浄し、乾燥させた(182mg、0.25mmol、85%収率)。
【0117】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ9.12-8.92(m,2H)、7.79(s,2H)、7.20-7.08(m,2H+C6D6シグナル)、6.91(s,1H)、6.59(s,1H)、6.38(dd,J=8.3,3.6Hz,4H)、3.83(s,3H)、3.41(s,12H)、3.33(s,6H)、-0.11(s,9H)、-0.49(d,J=8.5Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ177.70、161.51、152.72、150.96、140.78、136.02、132.56(d,J=18.6Hz)、130.16、123.35、114.12(d,J=56.1Hz)、108.52、104.68(d,J=4.4Hz)、60.07、55.48、55.39、2.12、-17.08(d,J=27.8Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ55.06ppm。
【0118】
実施例9-プロ触媒3の合成((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0119】
【化16】
グローブボックス内で、20mLバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(9.2mg、0.024mmol、1.0当量)、N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)ベンズアミド(10mg、0.024mmol、1.0当量)、撹拌子、及び2mLのC
6D
6を投入した。暗赤色反応物を60℃に1時間加熱し、冷却した。
1H NMR分光法の結果は、表題構造について予想されるものと一致していた。全ての揮発性物質を真空下で除去し、ヘキサンを粘着性残渣に添加し、暗黄色固体を得た。母液をピペットで除去し、生成物を乾燥させた(収率は決定しなかった)。
【0120】
1H NMR(500MHz、ベンゼン-d6)δ9.14-8.91(m,2H)、8.52(dd,J=7.9,1.9Hz,2H)、7.21-7.01(m,9H)、6.84(s,1H)、6.67-6.44(m,2H)、6.33(dd,J=8.3,3.6Hz,4H)、3.36(s,12H)、-0.15(s,9H)、-0.52(d,J=8.5Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ177.78(d,J=2.4Hz)、164.31、161.54(d,J=1.9Hz)、137.28(d,J=18.5Hz)、135.95、127.11、123.39(d,J=1.9Hz)、114.30(d,J=56.6Hz)、104.84(d,J=4.4Hz)、55.55、2.11、-16.85(d,J=28.2Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ54.79ppm。
【0121】
実施例10-プロ触媒1の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0122】
【化17】
グローブボックス内で、110mLの瓶にビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(503mg、1.28mmol、1.0当量)、撹拌子、及び10mLのトルエンを投入した。次いで、20mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジエトキシフェニル)ホスファニル)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド(750mg、1.28mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、非常に暗い褐色/黄色であった。反応混合物を45℃で20分間撹拌した後、
31P NMR分光法によって、反応がほぼ完了したことが示された(ジアルキル錯体及び遊離配位子の一部が残存)。ピリジン(0.100mL、1.28mmol、1.0当量)を反応混合物に添加し、混合物を更に20分間45℃に加熱した。
31P NMR分光法により、反応が完了したことが示された。反応混合物を室温まで冷却し、Celiteのプラグを通して濾過した。次いで、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去した。ペンタンを添加し、真空下で除去して、粗生成物を乾燥させた。得られた固体を最小量のトルエンに溶解し、生成物を過剰のペンタンでトリチュレートした。橙色固体を濾過により回収し、ペンタンで洗浄し、乾燥させた(926mg、1.10mmolの収率86%)。
【0123】
1H NMR(400MHz、クロロホルム-d)δ9.16(s,1H)、8.30(s,2H)、7.99(s,1H)、7.20(t,J=8.2Hz,2H)、6.50(dd,J=8.3,2.7Hz,5H)、4.08-3.91(m,8H)、1.23(t,J=7.0Hz,12H)ppm。13C NMR(101MHz、クロロホルム-d)δ166.01(d,J=17.4Hz)、161.18(d,J=9.5Hz)、138.44、131.99(q,J=33.3,32.4Hz)、130.60、127.91、124.62、121.87、115.87(d,J=26.6Hz)、105.45、64.61、14.61ppm。31P NMR(162MHz、クロロホルム-d)δ-0.30ppm。19F NMR(376MHz、クロロホルム-d)δ-63.19ppm。
【0124】
実施例11-プロ触媒4の合成
((Z)-N-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルビミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0125】
【化18】
グローブボックス内で、20mLのバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(141mg、0.36mmol、1.0当量)、ピリジン(0.029mL、0.36mmol)、撹拌子、及び4mLのトルエンを投入した。次いで、3mLのトルエン中のN-(ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファニル)フラン-2-カルボキサミド(150mg、0.36mmol)のスラリーを、橙色溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液の色は、暗い赤色/褐色であった。溶液を50℃で60分間撹拌した後、
31P NMR分光法により、所望の錯体への完全な変換が示された。反応混合物を室温まで冷却し、Celiteのプラグを通して濾過した。次いで、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去し、バイアル壁に黄色固体を残した。ペンタンを添加し、溶液を30分間激しく撹拌した。黄色固体を濾過により単離し、真空下で乾燥させた。(164mg、0.26mmol、71%収率)。
【0126】
1H NMR(400MHz、ベンゼン-d6)δ9.05(dd,J=4.8,1.7Hz,2H)、7.13(s,1H)、6.86-6.79(m,1H)、6.59-6.52(m,3H)、6.35(dd,J=8.3,3.7Hz,6H)、6.16(dd,J=8.3,3.2Hz,1H)、5.99(dd,J=3.3,1.7Hz,1H)、3.39(s,15H)、-0.12(s,10H)、-0.49(d,J=8.7Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ170.17(d,J=4.1Hz)、161.52(d,J=2.0Hz)、152.40(d,J=24.6Hz)、150.92、142.36、135.96、130.18、123.40(d,J=1.9Hz)、114.05(d,J=57.6Hz)、112.69、110.75、104.79(d,J=4.4Hz)、55.52、2.07、-17.01(d,J=28.4Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ55.22ppm。
【0127】
実施例12:比較プロ触媒C1の調製
((Z)-N-(ジフェニルホスファニル)ベンズイミダート)(ピリジン)((トリメチルシリル)メチル)ニッケル(II)
【0128】
【化19】
グローブボックス内で、20mLのバイアルにビス((トリメチルシリル)メチル)ビス(ピリジン)ニッケル(II)(134mg、0.34mmol、1.05当量)、撹拌子、及び2mLのトルエンを投入した。ピリジン(26μL、0.33mmol、1.0当量)を橙色溶液に添加し、続いて3mLのトルエン中のN-(ジフェニルホスファニル)ベンズアミド(100mg、0.33mmol)の溶液をゆっくりと添加した。得られた溶液は暗赤色で透明であった。溶液を室温で30分間撹拌した後、
31P NMR分光法によって、所望の錯体(上に示す)及び中性配位子及び2つの-CH
2SiMe
3置換基を担持する関連するニッケル錯体の両方の存在が示された。溶液を45℃で60分間撹拌した後、
31P NMRスペクトルは、所望の錯体への完全な変換を示した。反応混合物をCeliteのプラグを通して濾過し、全ての揮発性物質を真空下で濾液から除去した。得られた粗生成物を最小量のトルエンに溶解し、生成物をペンタンでトリチュレートした。生成物を橙色粉末として濾過により単離し、構造をNMR分光法によって確認した(106mg、0.21mmol、61%収率)。
【0129】
1H NMR(500MHz、ベンゼン-d6)δ9.07(td,J=3.3,1.6Hz,2H)、8.99-8.95(m,2H)、8.62-8.52(m,4H)、7.67-7.47(m,10H)、7.20(t,J=7.7Hz,1H)、6.95-6.83(m,2H)、0.21(s,9H)、-0.15(d,J=7.3Hz,2H)ppm。13C NMR(126MHz、ベンゼン-d6)δ180.63、150.45、136.55、136.30、135.85、135.78、135.65、132.94、132.86、130.35、130.23、129.81(d,J=2.5Hz)、123.67、1.97、-10.50(d,J=28.8Hz)ppm。31P NMR(162MHz、ベンゼン-d6)δ75.96ppm。
【0130】
実施例13-エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合-並列圧力反応器試験
触媒活性(クエンチ時間及びポリマー収率の観点から)並びに結果として得られたポリマー特性を、プロ触媒1~5並びに比較プロ触媒C1(比較C1)について評価した。比較C1は、前述の配位子を含有する(J.Organomet.Chem.1983,249,C38.)。重合反応を、前述のように並列圧力反応器(PPR)で実行した。
【0131】
表1に示される結果は、並列重合反応器(PPR)における重合反応によって得られた。表1に列挙した各重合反応について、触媒の原液をトルエン中に調製し(1~2mM)、すぐにPPR反応器に移した。共重合実験は、0.25~0.75μmolの触媒負荷を用い、400psiのエチレン圧力で実行した。Tert-ブチルアクリレートを、活性化アルミナのカラムを通して濾過することによって精製し、続いてトルエン中で溶液を調製した。表1に示すように、反応器温度及びtert-ブチルアクリレート負荷を変動させた。表1の各記入は、少なくとも2回の反復実行の平均を表す。
【0132】
【0133】
【0134】
表1のエントリーは、特定の実行での温度は変化し得るが、主にアクリレート負荷量別に整理されている。本開示に記載の触媒の性能を比較C1と比較する。
【0135】
前述のデータによって証明されるように、本開示のプロ触媒は、プロ触媒比較C1よりも高い活性を有する。更に、プロ触媒1~5によって生成されたポリマーは、比較C1によって生成されたポリマーと比較して、tert-ブチルアクリレートの組み込みが増加し、高い分子量を有する。更に、プロ触媒1~5は、比較C1によって生成されたポリマーよりも狭いPDIを有するポリマーを生成する。
【0136】
理論に拘束されることを意図するものではないが、立体障害ホスフィンは、触媒性能のための駆動因子であり得ると考えられる。立体障害ホスフィンは、プロ触媒1~5の共通構成要素であり、比較C1にはない。例えば、エントリー1において、比較C1は、非常に低い活性(36kg/mol・h)及び広いPDI(5.85)を示した。その場合、比較C1の活性は、アクリレート組み込みを分析するのに十分なポリマーを得るには低すぎる。
【0137】
例えば、2,6-ジメトキシフェニルなどのより立体障害性の高いホスフィンアリール置換基を含むことにより、触媒の活性は、比較C1と比較して、1桁(エントリ2~7)増加する。したがって、全てのNi(II)ホスフィンアミド錯体が活性エチレン/アクリレート共重合触媒ではなく、配位子に対して我々が行った構造的修飾が、本発明を構成する。
【0138】
実施例14-エチレン/n-ブチルアクリレート共重合-並列圧力反応器試験
表2に示される結果は、並列重合反応器(PPR)における重合反応によって得られた。表2に列挙した各重合反応について、触媒の原液をトルエン中に調製し(1~2mM)、すぐにPPR反応器に移した。共重合実験は、0.25~0.75μmolの触媒負荷を用い、400psiのエチレン圧力で実行した。n-ブチルアクリレートを、活性化アルミナのカラムを通して濾過することによって精製し、続いてトルエン中で溶液を調製した。表2に示すように、反応器温度及びn-ブチルアクリレート負荷を変動させた。表2の各記入は、少なくとも2回の反復実行の平均を表す。
【0139】
【0140】
表2のエントリーは、特定の実行での温度は変化し得るが、主にアクリレート負荷量別に整理されている。
【0141】
tert-ブチルアクリレート共重合(表1)に対する反応性の相対傾向は、n-ブチルアクリレートについて観察される(表2)。触媒活性及び得られたコポリマーの分子量は、アクリレート負荷量に反比例するが、組み込みはアクリレート負荷量に直接関連する。
【0142】
同一のアクリレート負荷量において、より高いコポリマーへのアクリレート組み込みが、tert-ブチルアクリレートに対してn-ブチルアクリレートについて観察されることに留意されたい。例えば、プロ触媒1は、250μmolのn-ブチルアクリレートと共に、0.9mol%のアクリレート組み込みを有するポリマーを生成する(エントリー3、表2)が、同じ条件下であるが、250μmolのtert-ブチルアクリレートを用いると、0.4mol%の組み込みが観察される。このクラスの触媒は、立体障害及び非立体障害性の極性コモノマーの両方を効果的に組み込む。
【0143】
実施例15-2Lバッチ反応器によって得られた結果
これらの実験では、触媒を、単離された金属錯体のトルエン溶液として反応器に導入した。共重合実験を、400psiのエチレン圧力で実行した。表3に示すように、反応器温度及びtert-ブチルアクリレート負荷を変動させた。反応器へのトルエンの初期投入量は、640g(740mL)であった。エチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を、75分間又は40gのエチレン取り込みが発生するまでのいずれか短い時間、実行した。
【0144】
【0145】
表3に示される結果によってわかるように、本開示のプロ触媒、具体的にはプロ触媒1及び2は、2Lバッチ反応器中でエチレン/tert-ブチルアクリレート共重合反応を触媒し、数グラムスケールでエチレン/tert-ブチルアクリレートコポリマーをもたらすことができる。より高い触媒活性は、PPR反応器と比較してバッチ反応器において観察され、より高いレベルのアクリレート組み込みを伴った。実行ごとに最大50gのポリマーが生成された。特に、プロ触媒1の性能は良好であり(エントリー2参照)、高い活性(1,500kg/mol・h)で顕著なアクリレート組み込み(1.7mol%)を伴う高MWポリマー(90,400)を生成した。
【国際調査報告】