(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】抗うつ薬により誘発される女性性機能障害の治療におけるカンナビジオールの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20230509BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20230509BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230509BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230509BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230509BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230509BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230509BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230509BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/4985 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/53 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/5575 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/417 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P15/00
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/107
A61P25/24
A61P25/22
A61P25/00
A61P3/10
A61K45/00
A61K45/06
A61K31/519
A61K31/4985
A61K31/53
A61K31/5575
A61K31/472
A61K31/506
A61K31/417
A61K31/496
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022555799
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 US2021022199
(87)【国際公開番号】W WO2021188388
(87)【国際公開日】2021-09-23
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522178773
【氏名又は名称】ヴェラ・バイオサイエンス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】フリッド・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】パドマ-ネイサン・ハリン
(72)【発明者】
【氏名】セジル・ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】デメナ・ニアル・シー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA17
4C076AA22
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC17
4C084AA19
4C084AA23
4C084MA02
4C084ZA011
4C084ZA121
4C084ZA122
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC202
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC30
4C086BC38
4C086BC42
4C086BC50
4C086CB05
4C086CB06
4C086CB09
4C086DA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZC20
4C086ZC42
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB15
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA48
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA14
4C206ZA81
4C206ZC75
(57)【要約】
本発明は、例えば、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、および他の抗うつ薬を含む、抗うつ薬により誘発される女性性機能障害を治療するのに局所的に使用される、大麻および/またはカンナビス由来のカンナビジオール(CBD)を含有する組成物および方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性の対象に以前に投与された1つ以上の抗うつ薬により誘発される女性性機能障害を治療するための薬剤の製造におけるカンナビジオール(CBD)の使用であって、
前記薬剤は、前記女性の対象の生殖器(興奮)領域の粘膜表面に適用される、CBDを含む局所組成物(「CBD含有組成物」)であり、
前記組成物は、性行為中に前記対象の性機能障害が緩和されるような、量で、かつ前記性行為の前の期間にわたり、適用される、使用。
【請求項2】
前記局所組成物は、ローション、軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、ゲル、バルム薬、チンキ、エマルション、またはセラムとして配合され、これらのいずれか1つが、前記女性の生殖器に適用される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記生殖器領域は、膣口、外陰部、小陰唇、陰核および膣円蓋のうちの1つ以上を含む、吸収粘膜を有する生殖器を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
性機能障害を引き起こす前記抗うつ薬は、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、および四環系抗うつ薬から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
a)前記SSRIは、セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、およびデスベンラファキシンから選択され、b)前記SNRIは、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、ミルナシプラン、およびレボミルナシプランから選択され、c)前記三環系抗うつ薬は、クロミプラミン、トリミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミン、ロフェプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、およびプロトリプチリンから選択され、かつ/または、前記四環系抗うつ薬は、マプロチリンおよびミルタザピンから選択される、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記女性の対象は、ヒトであり、大うつ病性障害(MDD)、持続性抑うつ障害もしくは気分変調症、メランコリー型うつ病、不安障害(例えば、全般性不安障害(GAD)および社会不安障害(SAD))、注意欠陥多動障害(ADHD)、強迫性障害(OCD)、神経性過食症(過食症)、パニック障害、月経前不快気分障害、閉経関連血管運動症状、線維筋痛症、神経障害性疼痛、外傷後ストレス障害(PTSD)、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、および化学療法誘発性神経障害からなる群から選択される、1つ以上の障害または病気と診断されている、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記女性性機能障害は、以下の特徴:興奮を達成することの難しさおよび/または不十分な潤滑、充血を達成および維持することの難しさ、ならびに潤滑を達成および維持することの難しさ、のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記女性性機能障害は、以下の特徴:オルガスムを達成することの難しさ、低いオルガスム強度、または無オルガスム症、のうちの1つ以上を特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記女性性機能障害は、性欲または性的関心の欠乏を特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
前記女性の対象は、閉経前である、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
前記女性の対象は、閉経後である、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
前記対象は、以下の治療:(1)前記抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(2)服薬休日、(3)投薬の用量を減らす、(4)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(5)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(6)ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)を追加する、(7)局所テストステロン、(8)アマンタジン、(9)ヨヒンビン、(10)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(11)メチルフェニデートなどの刺激薬、(12)行動療法、(13)栄養補助食品、例えばサフラン、ならびに(14)鍼療法、のうちの1つ以上で以前に治療されているが、それに満足に反応しなかった、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
前記女性の対象は、以下の治療:(1)前記抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(2)服薬休日、(3)投薬の用量を減らす、(4)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(5)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(6)ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)を追加する、(7)局所テストステロン、(8)アマンタジン、(9)ヨヒンビン、(10)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(11)メチルフェニデートなどの刺激薬、(12)行動療法、(13)栄養補助食品、例えばサフラン、ならびに(14)鍼療法、のうちの1つ以上でさらに治療される、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
前記性機能障害の改善は、以下のパラメータ:
i.膣および陰核平滑筋弛緩、ならびに、
ii.膣および陰核血流の増加、
のうちの一方または両方によって示される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
前記性機能障害の改善は、以下の客観的に自己申告された結果:
i.「性行為中の潤滑/湿潤の増加」、
ii.「より頻繁にオルガスムに達する」、
iii.「オルガスムに達するのが非常に容易になる」、
iv.「より満足する」、
iii.「より高いレベルの性欲」、および、
iv.「性行為中の痛みの軽減」、
のうちの1つ以上によって示される、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
適用されるCBDの総量は、5mg~1,000mgのCBD、好ましくは10~100mgのCBD、さらに好ましくは20~40mgのCBDである、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記組成物は、性行為の1~60分前、好ましくは5~40分、さらに好ましくは15~20分前に適用される、請求項1に記載の使用。
【請求項18】
前記CBD含有組成物は、性行為の5~30分前に適用される、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
前記CBDは、大麻由来であり、かつ/または、0.3重量%未満のTHCを含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記CBD含有組成物は、使い捨て容器に入れて提供される、請求項1に記載の使用。
【請求項21】
前記CBD含有組成物は、防腐剤をさらに含み、マルチユース容器に入れて提供される、請求項1に記載の使用。
【請求項22】
前記組成物中のCBDの濃度は、1mg/mL~40mg/mL、好ましくは5mg/mL~20mg/mL、さらに好ましくは10mg/mLである、請求項1に記載の使用。
【請求項23】
前記対象は、(1)性的関心/興奮障害(SIAD)および(2)女性のオルガスム障害から選択される障害に悩まされている、請求項1に記載の使用。
【請求項24】
前記対象は、前記CBD含有組成物で3~6か月間治療された際、FSFIにより測定した場合に興奮および/またはオルガスムの改善を報告し、
性的関心/興奮ドメインにおける改善が、1~2ポイントであり、前記FSFIのオルガスムドメインでは1~2ポイントである、請求項23に記載の使用。
【請求項25】
前記CBD含有組成物の適用後のオフセット時間が、0.5~5時間、好ましくは1~3時間、さらに好ましくは1~2時間である、請求項1に記載の使用。
【請求項26】
ホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、ウデナフィル)が、前記CBD含有組成物に加えられる、請求項1に記載の使用。
【請求項27】
別の直接的な平滑筋弛緩薬(プロスタグランジンE1、パパベリン、ミノキシジル)が、前記CBD含有組成物に加えられる、請求項1に記載の使用。
【請求項28】
a)αブロッカー(例えばフェントラミン)、b)フリバンセリン、および/またはc)ブレメラノチドが、性欲を増強させるために前記CBD含有組成物に加えられる、請求項1に記載の使用。
【請求項29】
前記対象は、前記CBD含有組成物の適用前、前記適用と同時、または前記適用後に、経口で、または前記CBD含有組成物と同様に局所的に、投与されるPDE-5阻害剤でさらに治療される、請求項1に記載の使用。
【請求項30】
前記対象は、性機能障害を誘発した抗うつ薬で以前に治療されており、抗うつ薬療法の中止にもかかわらず持続性の性機能障害を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項31】
前記組成物中の活性成分が、CBDから本質的になる、請求項1から30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記組成物中の活性成分が、CBDからなる、請求項1から31のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔優先権〕
本出願は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、2020年3月16日に出願された米国仮特許出願第62,990,026号の優先権を主張するものである。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、および他の抗うつ薬による治療に続発する女性性機能障害を治療する際に局所的に使用される、大麻および/またはカンナビス由来カンナビジオール(CBD)を含有する組成物および方法に関する。
【0003】
〔背景〕
米国における大うつ病性障害(MDD)の12か月有病率は、6.7%と推定されており、症例の30.4%が重篤なものと分類される。男性と比較すると、12か月の期間中または生涯の間にMDDを発症する女性のオッズ比は、それぞれ1.4および1.7である(Clayton, A. H., et al. (2014). “Antidepressants and sexual dysfunction: mechanisms and clinical implications.” Postgraduate Medicine 126(2): 91-99)。当然のことながら、米国での抗うつ薬の使用も広まっている。最近の研究では、米国内の女性の15.9%(14.8~17.0)が、2013年に、抗うつ薬の投薬のための処方箋を少なくとも1回記入してもらったことを報告しており、抗うつ薬のほとんどの使用は長期であった(Moore, T. J. and D. R. Mattison (2017). “Adult Utilization of Psychiatric Drugs and Differences by Sex, Age, and Race.” JAMA Internal Medicine 177(2): 274-275)。
【0004】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)およびセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)は、うつ病の症状を緩和するのに有効であり、概して、他の種類の抗うつ薬よりも忍容性が良好である。しかしながら、SSRIおよびSNRIの使用は、性機能障害(SD)と関連している。抗うつ薬により誘発されるSDは、SSRIまたはSNRIで治療された患者の最大70%までで報告されており、これらの副作用は、概して、持続性であり、治療を継続しても和らぐことはなく、場合によっては、治療の中止後も持続する。抗うつ薬を服用する女性で最も一般的に報告されている性的悪影響は、性欲(72%)および性的興奮(83%)の問題である。選択的セロトニン再取り込み阻害剤を服用する女性の約42%が、オルガスムを報告している(Lorenz, T., et al. (2016). “Antidepressant-Induced Female Sexual Dysfunction.” Mayo Clinic Proceedings 91(9): 1280-1286)。これらのデータは、やはりSDのレベルの上昇と関連する、未治療のうつ病と比較して見なければならず、女性では、性欲低下が未治療のうつ病に関連する顕著な性機能障害である(Hartmann, U. (2007). “Depression and sexual dysfunction.” Journal of Men’s Health and Gender 4(1): 18-25)が、性反応の他の側面における機能障害が、抗うつ薬により誘発されるSDではより一般的であることが示唆された(Jing, E. and K. Straw-Wilson (2016). “Sexual dysfunction in selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) and potential solutions: A narrative literature review.” Mental Health Clinician 6(4): 191-196; Francois, D., et al. (2017). “Antidepressant-Induced Sexual Side Effects: Incidence, Assessment, Clinical Implications, and Management.” Psychiatric Annals 47(3): 154-160)。
【0005】
抗うつ薬により誘発されるSDは、うつ病症状を悪化させ得、うつ病の治療のノンアドヒアランスまたは中止の理由としてしばしば挙げられ、ある推定によれば女性の約15%がこのカテゴリーに該当する(Jing, E. and K. Straw-Wilson (2016). “Sexual dysfunction in selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) and potential solutions: A narrative literature review.” Mental Health Clinician 6(4): 191-196)。さらに、性的副作用の発現は、療法の開始から1~3週間以内に起こり、これは、臨床的な抗うつ活性の開始に先行し得る。
【0006】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)は、大うつ病性障害(MDD)の第一選択治療の一環として推奨される。SSRIおよびセロトニン/ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)は、米国およびカナダでは最も頻繁に使用される抗うつ薬であり、他の場所でも大いに広まっている。2013年には、最も多く処方される10個の精神科薬のうち5つがSSRIまたはSNRIの種類に属しており(Moore, T. J. and D. R. Mattison (2017), supra)、これらの原薬(セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、およびデュロキセチン)はすべて、SDを引き起こす、さまざまな、しかし著しい可能性を有する。性機能障害を引き起こすことが知られている、SSRIおよびSNRI薬剤の、包括的でないリストを表1に示す。
【0007】
【0008】
三環系抗うつ薬および関連する四環系抗うつ薬は、臨床的うつ病の治療の第一選択の薬物療法として大部分が取って代わられたが、依然として使用されており、米国以外のいくつかの国では、より一般的である(Tamblyn, R., et al. (2019) Multinational comparison of new antidepressant use in older adults: a cohort study, BMJ open 9, e027663)。この種類の抗うつ薬も、性機能障害を引き起こすことが周知である。性機能障害を引き起こすことが知られる三環系抗うつ薬および四環系抗うつ薬の、包括的でないリストを表2に示す。ミルタザピンなど、SDを引き起こす「可能性が低い」かまたは「見込みがない」と分類される薬剤であっても、プラセボと比べるとSDの副作用を依然として生じるが、同じ種類の他の抗うつ薬と比較すると、患者の割合は少ないことに注目されたい。(Lee, K.-U., et al. (2010) Antidepressant-Induced Sexual Dysfunction among Newer Antidepressants in a Naturalistic Setting, Psychiatry Investigation 7, 55-59)。
【0009】
【0010】
よって、相当数の患者が、抗うつ薬療法の使用中にSDの発症を軽減または防止する努力から恩恵を受けるであろう。
【0011】
前述のように、抗うつ薬により誘発されるSDは、性機能の「力学的(mechanical)」側面に主に影響を及ぼし、女性では、興奮/潤滑の減少、およびオルガスムの遅延、オルガスムに達する難しさ、または無オルガスム症を生じる。SSRIおよびSNRIが性機能障害を引き起こす機序は、不明であり、議論の主題である。神経伝達物質、例えばセロトニン(5-ヒドロキシトリプトファン)、ドーパミン、およびノルエピネフリンが、性機能の生理、ならびに気分の抑制に関与し、抗うつ薬は、これらの神経伝達物質のレベルおよび機能を増大または減少させ得る。ドーパミンは、伝えられるところによれば、性行動を含む意欲的な行動に関連するが、ノルエピネフリンは、性的興奮および血管充血(vasocongestion)を刺激する。しかしながら、セロトニン系の活性化は、血管充血の停止をもたらし、したがって、生殖器官における興奮メカニズムを減少させ;セロトニンの作用はまた、一酸化窒素機能および性的快感を減少させ得る。グルタメート、テストステロン、およびエストロゲンなど、他の神経伝達物質およびホルモンも関与し得る。抗うつ薬により誘発されるSDは、用量依存性であり、SSRIまたはSNRI原薬を代謝させることを担う酵素の個々のレベルに影響され得る。最も一般的な抗うつ薬であるSSRIおよびSNRIは、セロトニンを高めることによって性機能障害を引き起こす同様のCNSメカニズムを有すると仮定されるが、興奮およびオルガスムに関与するいくつかのシグナル伝達系の相互作用は複雑であり、抗うつ薬により誘発される性機能障害に対する感受性の明確なバイオマーカーは存在しない(Osis, L. and J. R. Bishop (2010). “Pharmacogenetics of SSRIs and Sexual Dysfunction.” Pharmaceuticals 3(12): 3614-3628; Stevenson, J. M. and Bishop J. R. (2014). “Genetic determinants of selective serotonin reuptake inhibitor related sexual dysfunction.” Pharmacogenomics 15(14): 1791-1806)。特に、SSRIとSNRIの区別は必ずしも明確ではなく、それは、デュロキセチン、ベンラファキシン、およびデスベンラファキシンなどのSNRIとして分類されるいくつかの抗うつ薬が、ノルエピネフリン再取り込みよりもセロトニン再取り込みの阻害に対して選択性を有しており、低用量でSSRIとして作用するためである(Shelton, R. C. (2009). Serotonin norepinephrine reuptake inhibitors: similarities and differences. Primary Psychiatry 16(4): 25)。三環系および四環系抗うつ薬が性機能に影響を及ぼすメカニズムも不明であるが、三環系および四環系抗うつ薬の大部分が、セロトニンおよびノルエピネフリン再取り込みの阻害によって、SNRIと同様に抗うつおよび不安緩解効果(antidepressant and anxiolytic affects)を発揮すると考えられている。
【0012】
SSRIおよびSNRIに関連する性機能障害の現在の管理は、それらに対処するための効果的な薬理療法の欠如および不十分な反応を反映している。現在の管理には以下が含まれる:(1)他の可能な原因を排除する、(2)様子を見る、(3)抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(4)服薬休日、(5)投薬の用量を減らす、(6)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(7)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(8)ホスホジエステラーゼ阻害剤(シルデナフィルもしくはタダラフィル)を追加する、(9)局所テストステロンを試す、(10)アマンタジンを試す、(11)ヨヒンビンを試す、(12)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(13)メチルフェニデートなどの刺激薬を試す、(14)行動療法、(15)サフランなどの栄養補助食品を試す、ならびに(16)鍼療法。要するに、SSRIまたはSNRI関連のSDを患う女性患者には、有効な選択肢がほとんどなく、多くがSDの結果として治療を中断し、このことは、悲惨な結果をもたらし得る。
【0013】
Δ9-(デルタ9)-テトラヒドロカンナビノール(THC)は、麻植物から同定された最初のカンナビノイドであり、1960年代にMechoulamおよび同僚によって特徴付けられた。これは、強い鎮静催眠薬である。その後、非精神活性カンナビノイドであるカンナビジオール(CBD)を含む、100超のカンナビノイドが同定されている。CBDは、疼痛、炎症、そして最近では小児発作性疾患において、多くの潜在的な薬理学的利点を有すると考えられている。これまでのところ、抗うつ薬により誘発される性機能障害の管理におけるカンナビノイド、具体的にはカンナビジオール(CBD)の可能性を調査する科学的研究は存在していない。内因性カンナビノイド系(ECS)は、中枢神経系ならびに選択された末梢神経および器官に見られる主要な神経調節性制御系である。これは、カンナビノイド(CB1およびCB2)受容体、それらの内因性リガンド(内因性カンナビノイド:アナンダミド(AEA)および2-アラキドノイルグリセロール)、内因性カンナビノイドの合成および分解に関与するタンパク質、ならびにカンナビノイドの影響を受ける細胞内シグナル伝達経路から構成される。CB1およびCB2受容体は、カンナビノイドの主要な作用部位として機能する、Gタンパク質共役型受容体である。カンナビノイド受容体は分布が異なる。CB1受容体は、中枢神経系および一部の末梢組織の全体にわたって見られる。CNSにおけるカンナビノイド受容体は、視床下部、海馬、小脳扁桃、大脳皮質、基底核の一部、小脳に見られる。CB1およびCB2受容体は、活性化されると神経伝達物質の放出を阻害する、シナプス前受容体である。CB1受容体は、GABA作動性、ドーパミン作動性、アドレナリン作動性、グルタミン酸作動性、コリン作動性、一部のセロトニン作動性ニューロンの軸索終末に、特に、とりわけ性行動を制御する辺縁系の原始的な部分に位置する。末梢では、CB2カンナビノイド受容体は、性ホルモンの産生を担う器官に見られる。それらは、卵巣、子宮、膀胱、陰茎体(penile corpora)、精巣にも見られている。現在まで、膣および陰核におけるCB受容体の識別および分布に関する報告は発表されていない。
【0014】
女性ホルモン、したがって女性の性機能における視床下部下垂体軸の役割は、長い間確立されてきた。男性および女性の性欲または性的関心の神経ホルモン的側面は、アンドロゲンによって駆動される。内因性カンナビノイド系は動物の性反応を抑制すると思われる。内因性カンナビノイドである、アナンダミド(AEA)および2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)のレベルは、性的刺激に反応して低下し、絶頂後に急上昇する。THCは、動物およびヒトの研究では女性の性反応を調節するホルモンの活性化を鈍らせると思われる。外因性のTHCは、無傷のホルモン軸の存在下で、低用量で雌ラットの前弯姿勢(性的受容姿勢)を引き起こし、ヒトでの研究は、一般的に、低用量から中等量のTHCが女性の性機能、さらに具体的には性欲および満足度に対して好ましい効果を有することを裏付けている。これは、完全に中枢神経系の作用であり、末梢性の反応ではないと考えられている。内因性カンナビノイドのためのCB1およびCB2受容体は末梢に存在するが、性機能に対するTHCの作用は、辺縁系(視床下部腹側被蓋野および側座核)のドーパミン作動性およびセロトニン作動性経路に対する作用において中心的なものであると考えられている。薬理学的用量のTHCは、これらのセロトニン作動性およびドーパミン作動性経路を増強すると思われる(Lynn, B., et al. (2020) Effects of Cannabinoids on Female Sexual Function, Sexual Medicine Reviews 8, 18-27)。
【0015】
欲求とは対照的に、性的興奮は末梢生殖器プロセスである。女性および男性の性的興奮は、それぞれ陰核充血および腟の潤滑または陰茎勃起によって証明されるように、陰核および腟の平滑筋の緊張によって、また、陰茎海綿体および尿道海綿体の平滑筋の緊張によって調節される。卵巣および子宮内膜組織におけるCB2受容体の同定にもかかわらず、動物またはヒト組織における膣または陰核のCB受容体の存在を確認する研究は公表されておらず、したがって、カンナビジオールのようなカンナビノイドがこの平滑筋に対する末梢薬理学的作用を通じて興奮をもたらす役割を裏付ける、先行する科学的証拠はない。これまでのところ、膣または陰核の平滑筋機能に対する個々のカンナビノイドの直接的な薬理学的影響の調査、例えば、予め収縮した平滑筋組織における用量または濃度に関連した弛緩反応(等尺性張力の低下)を調べる、単離組織用臓器槽で通常行われる、平滑筋およびその関連内皮に対する薬理学的影響を明らかにするためのラットおよびヒトの膣組織における標準的な研究、に関する報告は発表されていない(Munarriz, R., et al. (2003) A review of the physiology and pharmacology of peripheral (vaginal and clitoral) female genital arousal in the animal model, Journal of Urology 170, S40-44)。さらに、カンナビノイドの全身投与は、三環系および四環系抗うつ薬を含む、一部の薬剤と有害な薬物相互作用を起こす可能性が高いとみなされる。
【0016】
CBDの既知の薬理作用を考慮すると、CBDの投与が、抗うつ薬により誘発される性機能障害に対抗する上で効果を有するはずであることは、直感的に理解しにくい。例えば、SSRI抗うつ薬にトラゾドンを加えると、SSRIにより誘発されるSDを緩和し得るという、臨床的証拠がある(Stryjer, R., et al. (2009) Trazodone for the Treatment of Sexual Dysfunction Induced by Serotonin Reuptake Inhibitors: A Preliminary Open-Label Study, Clinical neuropharmacology 32, 82-84)。トラゾドンは、5-HT2A受容体の拮抗作用を介してその効果を発揮すると考えられる。トラゾドンはまた、α1-アドレナリン受容体および5-HT1A受容体の拮抗薬である。同様に、ヨヒンビンは、抗うつ薬により誘発されるSDを治療するために処方され、5HT2A受容体の拮抗薬である。対照的に、CBDは、5-HT2A受容体の弱い作動薬であり、したがって、経口または局所のいずれであっても、投与経路にかかわらず、同様の薬理学的作用を生じるとは予想されない。さらに、齧歯動物の研究では、CBDは、テストステロンのレベルを、その生合成を阻害し、その代謝を加速させることによって減少させるように、末梢に作用した(Jakubovic, A., et al. (1979). “Effects of cannabinoids on testosterone and protein synthesis in rat testis leydig cells in vitro.” Molecular and Cellular Endocrinology 15(1): 41-50)。局所テストステロンを除いて、抗うつ薬により誘発されるSDの治療に対する薬理学的アプローチはすべて、薬物の経口投与、すなわち全身療法を含む。しかしながら、カンナビノイドの全身投与は、三環系および四環系抗うつ薬を含む、一部の薬剤と有害な薬物相互作用を起こす可能性が高いとみなされている。CBDの局所(抹消)投与が、抗うつ薬により誘発される性機能障害を治療するかまたは和らげるのに効果的であると考える演繹的な理由はない。
【0017】
したがって、抗うつ薬により誘発される女性のSDを治療する新しい方法を提供する必要性が残っている。
【0018】
〔発明の概要〕
本発明は、カンナビジオール(CBD)含有組成物が、女性の生殖器領域の粘膜表面に局所的に投与された際に、抗うつ薬により誘発される女性性機能障害を緩和させることができるという観察に、少なくとも部分的に基づいている。本発明は、局所的に投与されるCBDとは反対に、CBDの全身投与、またはCBDと同様の製剤におけるTHCの局所投与が、その状態の緩和に有効ではないという発見に、少なくとも部分的にさらに基づいている。
【0019】
本開示は、抗うつ薬での治療に続発する女性性機能障害(抗うつ薬により誘発される性機能障害)を治療するための末梢作用性CBD含有組成物およびその使用方法を提供する。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、SSRI、SNRI、三環系または四環系抗うつ薬により誘発される。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、充血を達成および維持することの難しさ、ならびに、潤滑を達成および維持することの難しさを含むがこれらに限定されない、興奮および/または潤滑に関連するものである。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、オルガスムを達成することの難しさ、低いオルガスム強度、または無オルガスム症を含むがこれらに限定されない、オルガスムに関連するものである。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、関心または欲求の欠乏に関連するものである。一般的に、本発明の組成物は、例えば、客観的パラメータ(膣および陰核平滑筋弛緩および/もしくは膣および陰核血流の増加)または「性行為中の潤滑/湿潤の増加」;抗うつ薬療法開始後に無オルガスムである場合は「オルガスムに達する」、「より頻繁にオルガスムに達する」;「オルガスムに達するのが非常に容易になる」;「より満足する」;「より高いレベルの性欲」;および「性行為中の痛みの軽減」のような自己申告結果の向上によって示されるように、性行為中に対象の性機能が強化され、かつ/またはSDが緩和されるような、量で、かつ性行為の前の期間にわたり、ローションまたは同様の製剤として、適用される。他の実施形態では、本発明の組成物は、性行為中に対象の性機能が強化され、かつ/または障害が緩和されるような、量で、かつ性行為の前の期間にわたり、ローションとして適用され、抗うつ薬により誘発される性機能障害により失われた、対象のいくらかの割合の性機能は、抗うつ薬療法を開始する前に経験したレベルまで回復するか、または、対象が抗うつ薬療法を開始する前に性的に活発でなかった場合には、強化され、前記改善は、女性性機能指数アンケート(FSFI)またはアリゾナ性的経験スケール(Arizona Sexual Experiences Scale)(ASEX)アンケート、または等価物に由来するアンケートを使用して決定される。
【0020】
いくつかの実施形態では、対象は、閉経前の女性であり、他の実施形態では、対象は、閉経後の女性である。
【0021】
〔発明の詳細な説明〕
本開示は、MDDもしくは他の抑うつスペクトラム障害(持続性抑うつ障害もしくは気分変調症、メランコリー型うつ病など)、不安障害、例えば全般性不安障害(GAD)および社会不安障害(SAD)、注意欠陥多動障害(ADHD)、強迫性障害(OCD)、神経性過食症(過食症)、パニック障害、月経前不快気分障害、閉経関連血管運動症状(menopause-associated vasomotor symptoms)、線維筋痛症、神経障害性疼痛、外傷後ストレス障害(PTSD)、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、化学療法誘発性神経障害(chemotherapy-induced neuropathy)の治療に抗うつ薬が使用されるかどうかにかかわらず、抗うつ薬での治療に続発する女性性機能障害(抗うつ薬により誘発される性機能障害)を治療するための、または、別の適応症の治療のための、末梢作用性カンナビジオール(CBD)含有組成物およびその使用方法を提供する。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、充血を達成および維持することの難しさ、ならびに、潤滑を達成および維持することの難しさを含むがこれらに限定されない、興奮および/または潤滑に関連するものである。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、オルガスムを達成することの難しさ、低いオルガスム強度、または無オルガスム症を含むがこれらに限定されない、オルガスムに関連するものである。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、性欲または性的関心に関連するものである。いくつかの実施形態では、対象は、閉経前の女性であり、他の実施形態では、対象は、閉経後の女性である。
【0022】
女性性機能障害は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニンノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、三環系抗うつ薬、および四環系抗うつ薬による治療に続発し得る。したがって、いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、SSRIまたはSNRIによる治療に続発する。いくつかの実施形態では、女性性機能障害は、三環系または四環系抗うつ薬による治療に続発する。いくつかの特定の実施形態では、女性性機能障害は、セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、およびデスベンラファキシンによる治療に続発する。他の特定の実施形態では、女性性機能障害は、セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、パロキセチン、およびフルボキサミンによる治療に続発する。他の特定の実施形態では、女性性機能障害は、セルトラリン、シタロプラム、およびフルオキセチンによる治療に続発する。他の特定の実施形態では、女性性機能障害は、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、ミルナシプラン、およびレボミルナシプランによる治療に続発する。他の特定の実施形態では、女性性機能障害は、クロミプラミン、トリミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミン、ロフェプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、およびプロトリプチリンによる治療に続発する。さらに他の実施形態では、女性性機能障害は、マプロチリンおよびミルタザピンによる治療に続発する。概して、SSRI、SNRI、三環系、または四環系の部類の任意の抗うつ薬により誘発される性機能障害は、本発明の方法により治療/改善されやすい。
【0023】
一般的に、本発明の方法によると、組成物が、性行為の直前に女性の生殖器に適用され、それによって、例えば、客観的パラメータ(例えば、膣および陰核平滑筋弛緩および/もしくは膣および陰核血流の増加)または主観的パラメータ、例えば、「性行為中の潤滑/湿潤の増加」;「より頻繁にオルガスムに達する」;「オルガスムに達するのが非常に容易になる」;「より満足する」;「より高いレベルの性欲」;および「性行為中の痛みの軽減」などの自己申告結果の向上、のいずれかによって示されるように、性行為中に対象障害のSDが改善される。
【0024】
好適な実施形態では、組成物が、性行為の直前に女性の生殖器に適用され、抗うつ薬により誘発される性機能障害のいくらかの割合(例えば、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%)は、抗うつ薬療法を開始する前に経験したレベルまで回復するか、または、対象が抗うつ薬療法を開始する前に性的に活発でなかった場合には、強化される。前記改善は、女性性機能指数アンケート(FSFI)またはアリゾナ性的経験スケール(ASEX)アンケート、または等価物に由来するアンケートを使用して決定される。いくつかの実施形態では、性的関心/興奮ドメインの改善は、1~2ポイントであり、FSFIのオルガスムドメインでは1~2ポイントである。
【0025】
いくつかの実施形態では、性機能障害の改善は、以下のパラメータ:
i.膣および陰核平滑筋弛緩;ならびに、
ii.膣および陰核血流の増加、
のうちの一方または両方によって示される。
【0026】
他の実施形態では、性機能障害の改善は、以下の主観的に自己申告された結果:
iii.「性行為中の潤滑/湿潤の増加」;
iv.「より頻繁にオルガスムに達する」;
v.「オルガスムに達するのが非常に容易になる」;
vi.「より満足する」;
vii.「より高いレベルの性欲」;および、
viii.「性行為中の痛みの軽減」、
のうちの1つ以上によって示される。
【0027】
さらに別の実施形態では、例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、またはウデナフィルなどのホスホジエステラーゼ5型阻害剤をCBD含有組成物に加えることができる。
【0028】
さらに他の実施形態では、対象は、PDE-5阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)による治療を同時に受けている。このようなPDE-5阻害剤は、CBD含有組成物の適用前、適用と同時、もしくは適用後に、経口で、もしくは別個の局所剤形として局所的に投与され得るか、または、このようなPDE-5阻害剤およびCBDは、同じ剤形中に配合され得る。
【0029】
別の実施形態では、例えばプロスタグランジンE1、パパベリン、ミノキシジルなどの、別の直接的な平滑筋弛緩薬が、CBD含有組成物に加えられ得る。
【0030】
別の実施形態では、αブロッカー(例えばフェントラミン)が、CBD含有組成物に加えられ得る。
【0031】
別の実施形態では、フリバンセリンが、性欲を増強させるためにCBD含有組成物に加えられ得る。
【0032】
別の実施形態では、ブレメラノチドが、性欲を増強させるためにCBD含有組成物に加えられ得る。
【0033】
さらなる実施形態では、対象は、以下の治療:(1)抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(2)服薬休日、(3)投薬の用量を減らす、(4)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(5)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(6)ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)を追加する、(9)局所テストステロン、(7)アマンタジン、(8)ヨヒンビン、(9)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(10)メチルフェニデートなどの刺激薬、(11)行動療法、(12)栄養補助食品、例えばサフラン、ならびに(13)鍼療法のうちの1つ以上で以前に治療されているが、それに十分に反応しなかった。さらなる実施形態では、本発明の方法によるCBD含有組成物の投与は、前述した療法(1~13)のうちの1つ以上で補足される。
【0034】
ある実施形態では、対象は、性機能障害を誘発した抗うつ薬で以前に治療されており、抗うつ薬療法の中止にもかかわらず持続性の性機能障害を有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「組成物」は用語「製剤」と交換可能に使用される。一般に、本発明の「製剤」は、CBDを含み、界面活性剤、凍結防止剤、増量剤、安定剤、乳化剤、酸化防止剤、水混和性溶媒、油、脂質、リン脂質、ワックス、水非混和性溶媒、水溶性かどうかを問わない抗菌剤、または増粘剤の1つ以上を含有することができ、女性の生殖器に適用されるのに適した軟膏、クリーム、懸濁液、ローション、ペースト、ゲル、バルム薬、チンキ、エマルション、またはセラムとして配合され得、その基本的な調製技術は当業者に既知である。クリーム、懸濁液、ローション、ゲル、ペーストなどは、リポソーム内にカプセル化されたCBDを含み得、リポソームは、ミクロン範囲以上で大型であるか、100nm未満の小型であるか、または中型サイズであってよく、単層、または多層、または単層と多層との混合であってよく、HSPCなど、全体的に中性の電荷の脂質(双性イオン性)で、HSPGなど、正味の電荷が負の脂質で、または正味の電荷が正の脂質で、形成され得、例えば、コレステロールで安定化されるか、または、例えばTween 80もしくはTween 20などの界面活性剤を組み込むことによりエッジ活性化され得、あるいは、エトソーム、グリセロソーム(glycerosomes)、およびPG-リポソームであってよく、その基本的な調製技術は当業者に既知である。さらに、クリーム、懸濁液、ローション、ゲル、ペーストなどは、高せん断撹拌、高圧均質化、音波処理、もしくは当技術分野で既知の他の技術を通じてエネルギーを加えることで形成された、エマルション、例えば、水中油型のナノエマルション、もしくは二重の水中油中水型エマルション、または自然に形成されたマイクロエマルション内にカプセル化されたCBDを含み得る。
【0036】
一般的に、本発明の方法は、CBDを含む局所組成物を使用し、組成物は、女性の対象の生殖器(興奮)領域に、例えば、膣口、小陰唇、陰核、および膣円蓋など、吸収粘膜を有する表面に局所的に適用される。いくつかの実施形態では、組成物は、CBDローションの形態で提供され、これは、性行為の直前に女性の生殖器に適用される。好適な実施形態では、組成物は、CBD負荷リポソーム(多層、単層、もしくはそれらの混合)を含有するローションの形態で提供され、これは、性行為の直前に女性の生殖器に適用される。好適な実施形態では、CBD含有組成物は、ラテックスおよびポリイソプレンコンドームと適合性がある。好適な実施形態では、CBD含有組成物(Vella(商標)と呼ばれる)はまた、HSPC、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、プロピレングリコール、ポリアクリレートクロスポリマー-6、および水または水性緩衝液を含むリポソームを含み、リポソームは、均質な懸濁液中に提供される。Vella(商標)「ローション」と呼ばれ得るが、このような組成物は、潤滑剤、クリーム、ゲル、または本明細書に記載されるような別の類似の製剤として提供されることもできる。
【0037】
本明細書中で使用する場合、用語「リン脂質(phospholipid)」または「リン脂質(phospholipids)」は、少なくとも1つの飽和または不飽和疎水性脂肪酸部分およびリン酸基を含む親水性部分を含む両親媒性化合物を指す。これらは、例えば、リン酸ジセチル、大豆ホスファチジルコリン(SPC)、卵ホスファチジルコリン(EPC)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、大豆レシチン、水素添加大豆レシチン、スフィンゴミエリン、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジリノレオイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、大豆ホスファチジルイノシトール(SPI)、水素添加ホスファチジルイノシトール(HPI)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジミリストイルホスファチジルセリン(DMPS)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、水素添加大豆ホスファチジルグリセロール(HSPG)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、およびそれらの混合物、およびそれらの塩、好ましくはナトリウムもしくはアンモニウム塩を含む。リン脂質は、組成物の総重量に対する重量対重量(w/w)ベースで、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、20%、20.5%、21%、21.5%、22%、22.5%、23%、23.5%、24%、24.5%、または25%のレベルで存在し得る。好ましい実施形態において、リン脂質は、SPC、EPC、HSPC、もしくはDSPCのうちの1つであるか、または2つ以上の組み合わせであり、さらに好ましくはHSPCである。ある実施形態において、リポソーム構成脂質は、コレステロールまたはその誘導体を含まない。いくつかの実施形態において、脂質は、上記のリン脂質、またはそのサブセットからなるか、または本質的になる。
【0038】
本明細書中で使用する場合、用語「凍結防止剤(cryoprotectant)」もしくは「凍結防止剤(cryoprotectants)」または「増量剤(bulking agent)」または「増量剤(bulking agents)」は、例えば、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、トレハロース、スクロース、種々の分子量のデキストラン、例えばデキストラン40、イヌリン、グリシン、L-アルギニン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBEβ-CD)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、ヒプロメロース)、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)K15、K16~18、K30もしくはK90、クエン酸、クエン酸ナトリウム、ポロキサマー188(Pluronic(登録商標)F-68)、ポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F-127)、脱アセチル化度がさまざまで粘度がさまざまなポリビニルアルコール、例えば4-88および5-88グレード、またはポリビニルカプロラクタム-ポリビニルアセテート-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Soluplus(登録商標))などの化合物を指す。
【0039】
本明細書中で使用する場合、用語「安定剤(stabilizer)」または「安定剤(stabilizers)」とは、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カリウムなどのアスコルビン酸塩、クエン酸、例えばクエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウムなどのクエン酸塩、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、EDTA塩、例えば、EDTA二ナトリウム、EDTA二カリウム、EDTA三ナトリウム、EDTA四ナトリウム、またはEDTAカルシウム二ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、HEDTA三ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸(EDDS)、EDDS三ナトリウム、DTPA五ナトリウム塩(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム)、メチルグリシン二酢酸、アラニン酸ジカルボキシメチル三ナトリウム、d-グルコノ-1,5-ラクトン、グルコン酸およびグルコン酸ナトリウムもしくはグルコン酸カリウムなどのその塩、またはグルコン酸カルシウム、イミノジコハク酸四ナトリウム塩(イミノジコハク酸四ナトリウム)、α-トコフェロール、α-トコフェロールアセテート、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)またはブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)を指す。
【0040】
本明細書中で使用される場合、用語「水混和性溶媒(water-miscible solvent)」、「水混和性溶媒(water-miscible solvents)」、「水溶性溶媒(water-soluble solvent)」、または「水溶性溶媒(water-soluble solvents)」とは、例えば、エチルアルコール(エタノール)、t-ブチルアルコール(t-ブタノール、tert-ブタノール、もしくはTBA)、種々の分子量のポリエチレングリコール(PEGもしくはマクロゴール)、例えばPEG300、PEG400、PEG600、PEG1500、グリセリン、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)、ジエチレングリコールエチルエーテル、または2-(2-エトキシエトキシ)エタノール)、トリアセチン(グリセリントリアセテート)、およびプロピレングリコール(PG)のような化合物を指し、この溶媒は、単独で、または2つ以上の溶媒の組み合わせとして使用され得、水混和性溶媒は、製剤の総重量に対して重量対重量(w/w)ベースで、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、10%、10.5%、11%、11.5%、12%、12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、または20%を構成する。一般に、本発明の組成物は、PGを20%以下、グリセリンを20%以下、また、両方が存在する場合はPGおよびグリセリンの両方を20%以下含有する。好ましくは、本発明の組成物は、6~20%、8~18%、6~16%、6~14%、8~16%、8~14%、または8~12%のPGを含有する。同様に、本発明の組成物は、6~20%、8~18%、6~16%、6~14%、8~16%、8~14%、または8~12%のグリセリンを含有する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「抗菌剤(antimicrobial agent)」、もしくは「抗菌剤(antimicrobial agents)」、または「抗菌薬(antimicrobial)」、もしくは「抗菌薬(antimicrobials)」、または「防腐剤(preservative)」、もしくは「防腐剤(preservatives)」は、抗菌剤および/または抗真菌剤であるかを問わず、また、水溶性および/または不溶性であるかを問わず、微生物の増殖を抑制するかまたは死滅させる物質、例えばメチルパラベン(methyl paraben)(メチルパラベン(methylparaben))、エチルパラベン(ethyl paraben)(エチルパラベン(ethylparaben))、プロピルパラベン(propyl paraben)(プロピルパラベン(propylparaben))、ブチルパラベン(butyl paraben)(ブチルパラベン(butylparaben))、およびヘプチルパラベン(heptyl paraben)(ヘプチルパラベン(heptylparaben))、安息香酸および安息香酸塩、例えば安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸およびデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸およびその塩、例えばソルビン酸ナトリウム、サリチル酸およびその塩、例えばサリチル酸ナトリウム、p-アニス酸、カプリルヒドロキサム酸、カプリル酸およびその塩、例えばカプリン酸ナトリウム、レブリン酸およびその塩、例えばレブリン酸ナトリウム、ウンデシレン酸(10-ウンデセン酸)(undecylenic (10-undecenoic) acid)およびその塩、例えばウンデシレン酸ナトリウム、オイゲノール、メントール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、エチルヘキシルグリセリン、カプリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、ウンデシレン酸グリセリル、フェネチルアルコール、およびフェニルプロパノールを指し、または、例えば、ローズマリー抽出物に見られるロスマリン酸およびカルノシン酸など、植物抽出物中に含有され得る。抗菌剤は、単独で使用されるか、または2つ以上の抗菌剤のブレンドとして使用されるかにかかわらず、薬剤ごとに異なる濃度で使用され、有機相または水相のいずれかで製剤中に導入され、そのすべてが当業者に既知である。
【0042】
本明細書中で使用する場合、用語「増粘剤(thickener)」または「粘稠化薬(thickening agent)」は、ゲル化するかゲル化しないかにかかわらず、粘度を上昇させ、粘度の上昇を生じさせるためにpH調整または塩(イオン)の添加を必要としてもしなくてもよい物質を指す。「増粘剤」または「粘稠化薬」の例は、架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えば、Carbopol(登録商標)71G、940、971P、974P、980、981、5984EP、ETD2020、Ultrez 10、Pemulen(商標)TR-1およびTR-2 NFポリマー;アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー;ポリアクリレートクロスポリマー-6;アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミドクロスポリマー;平均分子量が約8,000~13,000、50,000~75,000、450,000~500,000または100万Da以上のヒアルロン酸;約3cP、4cP、5cP、15cP、50cP(40~60cP)、100cP(80~120cP)、200~300cP、500~1000cP、1000~2000cP、4000cPの2%水溶液の粘度グレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、ヒプロメロース、置換型2910、2208、または2906)、メチルセルロース、100cP、50~150cPの5%水溶液の、20℃で200~300cP、800~1500cP、約2000cP、約3400cP、または5000cPの2%水溶液の粘度グレードのヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、また、ゴム、例えば、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、アルギニン、ならびに寒天ガム、ペクチン、k-カラギーナン、i-カラギーナン、ならびにデンプン、例えばジャガイモデンプン、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、小麦デンプンまたはエンドウ豆デンプンである。増粘剤のいくつかは多官能性物質であり、特定の組成物において、増粘剤は、固化防止剤および/もしくは潤滑剤、ならびに/または保水剤として作用し得る。本明細書中で使用される場合、用語「潤滑剤」は、増粘剤を指すことができ、または増粘剤ではない物質、例えば、ラウリン酸およびその塩、例えばラウリン酸ナトリウム、もしくはミリスチン酸イソプロピルを指すことができる。
【0043】
本明細書中で使用される場合、カンナビジオール(CBD)という用語は、産業用大麻から、もしくは麻およびインド大麻の異なる変種および化学変種から製造されたCBD、または、酵母もしくはバイオテクノロジーを利用する他の手段を使用することによって、化学合成によって、これらの方法の組み合わせによって、もしくは任意の他の手段によって、製造されたCBDを指す。CBDは、テルペン、フラボノイドなどといった他の植物由来の材料との混合物として植物から単離され得、または、CBDは、精製された物質であってもよく、無定形であるか、もしくは1つ以上の異なる結晶状態(多形)で存在してもよい。好適な実施形態では、CBDは、大麻由来であり、0.3%未満のTHCを含有するか、または、CBDは、大麻由来であり、0.2%未満のTHCを含有する。組成物は、性行為の1~60分前、または性行為の10~60分もしくは5~30分前、または10~30分前、好ましくは5~40分前、さらに好ましくは15~20分前、または15~40分前に、適用され得る。いくつかの実施形態では、CBD含有組成物の適用後のオフセット時間が、0.5~5時間、好ましくは1~3時間、より好ましくは1~2時間である。
【0044】
概して、適用ごとのCBDの総量は、5mg~1,000mgのCBDであり、約5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、15mg、16mg、17mg、18mg、19mg、20mg、21mg、22mg、23mg、24mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mgのCBD、好ましくは10~100mgのCBD、さらに好ましくは20~40mgのCBD、最も好ましくは20mgであってよい。CBD含有組成物は、複数回適用され得、総用量は対象特異的であり得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物中のCBDの濃度は、1mg/mL~40mg/mL、5mg/mL、6mg/mL、7mg/mL、8mg/mL、9mg/mL、10mg/mL、11mg/mL、12mg/mL、13mg/mL、14mg/mL、15mg/mL、16mg/mL、17mg/mL、18mg/mL、19mg/mL、20mg/mL、21mg/mL、22mg/mL、23mg/mL、24mg/mL、25mg/mL、26mg/mL、27mg/mL、28mg/mL、29mg/mL、30mg/mL、31mg/mL、32mg/mL、33mg/mL、34mg/mL、35mg/mL、36mg/mL、37mg/mL、38mg/mL、39mg/mL、または40mg/mL、好ましくは5mg/mL~20mg/mL、好ましくは7.5mg/mL~12.5mg/mL、さらに好ましくは10mg/mLである。あるいは、製剤中のCBDの濃度は、1mg/g、2mg/g、3mg/g、4mg/g、5mg/g、6mg/g、7mg/g、8mg/g、9mg/g、10mg/g、11mg/g、12mg/g、13mg/g、14mg/g、15mg/g、16mg/g、17mg/g、18mg/g、19mg/g、20mg/g、21mg/g、22mg/g、23mg/g、24mg/g、25mg/g、26mg/g、27mg/g、28mg/g、29mg/g、30mg/g、31mg/g、32mg/g、33mg/g、34mg/g、35mg/g、36mg/g、37mg/g、38mg/g、39mg/g、または40mg/g、好ましくは5mg/g~20mg/g、好ましくは7.5mg/g~12.5mg/g、さらに好ましくは10mg/gであってよい。あるいは、CBDは、リン脂質に対する重量対重量(w/w)比率が1/20、1/19、1/18、1/17、1/16、1/15、1/14、1/13、1/12、1/11、1/10、1/9、1/8、1/7、1/6、または1/5で存在することができる。
【0046】
本明細書中で使用する場合、用語「適用」もしくは「適用する」、または「投与」もしくは「投与する」とは、ある量の組成物を女性対象の生殖器領域、例えば、外性器上または周囲に、例えば、腟口、外陰部、小陰唇、陰核、および膣円蓋のうちの1つ以上を含む吸収粘膜上に、置く、または広げる、またはすり込むことを意味する。
【0047】
用語「性行為」とは、パートナーとの性交もしくは他の刺激、またはパートナーの有無を問わない、かつ、バイブレーターの助けの有無を問わないマスターベーションを指す。
【0048】
本発明の製剤は、下記の実施例および特許請求の範囲に記載されているものを含む、いくつかの方法によって製造することができる。
【0049】
本開示は、本発明の組成物の製造および代替的な使用の方法を記載する、先に出願された米国仮特許出願第62/932,754号;同第62/932,762号;および同第62/972,288号を、参照により組み込む。先行出願と本開示との間に矛盾がある場合、後者が先行出願に優先する。
【0050】
以下の実施例は、限定することを意図したものではない。当業者は、本開示に照らして、多くの変更が特定の材料において行われ得、それらが、開示されており、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を依然として得ることを理解するであろう。
【実施例】
【0051】
実施例1.CBD負荷リポソームのローションの調製
水素添加大豆ホスファチジルコリン(10.8g)およびCBD(1.2g)を、磁気撹拌しながら80~90℃の水浴中で加熱することによって、プロピレングリコール(12mL)中に溶解した。この溶液を、65℃の水浴で予め温めた脱イオン水100mL中のアスコルビン酸(50mg)およびアスコルビン酸ナトリウム(500mg)の溶液に、約30秒かけて、オーバーヘッド撹拌しながら、添加し、白色の懸濁液を形成した。懸濁液を浴温65℃で約30分間撹拌し、次いで、撹拌を続けながら熱から離した。温かい懸濁液に、撹拌を続けながら、300mg(0.25w/w%)のポリアクリレートクロスポリマー-6を添加して、白色ローションを形成した。
【0052】
実施例2.包括的性機能アンケートを用いた、自宅での女性の調査
SSRI療法に続発する性機能障害を有する、24~33歳の女性ボランティア6人が、本発明を利用した自宅での性反応調査に参加した。彼らは、実施例1に記載されたローションと同一であるかまたは非常に類似した本発明の組成物を4回投与された。各用量は、パートナーまたは自己刺激の20分前に、手で小陰唇(内唇)、外陰部(膣の外側と小陰唇の内側)、および陰核に適用された。各参加者は、1日に1回以下の間隔で本発明を使用して4回の試みを行い、4回の試みすべてが4週間以内に完了した。4つのエピソードの完了後に、ボランティアは女性性機能指数(Rosen)の要素を含むように構成されたオンラインアンケートの記入を終え、欲求/関心、興奮、オルガスム、全体的な性的満足感、および本発明と性機能に対するその効果に関する任意の個人的見解について調べた。有害事象の報告も記録した。アンケートは付録Aに例示する。
【0053】
付録A:Manna(商標)女性性反応アンケート(C)2019
1.過去4週間にわたり、調査製品を使用した際、性欲または性的関心のレベル(程度)をどのように評価しましたか?
A.いつもより高い
B.いつもと同じ
C.いつもより少ない
2.過去4週間にわたり、調査製品を使用した際、性行為中にどのくらいの頻度で潤滑(「湿潤」)しましたか?
A.いつもより多い
B.いつもと同じ
C.いつもより少ない
3.過去4週間にわたり、調査製品を使用した際、性行為が完了するまでどのくらいの頻度で潤滑(「湿潤」)を維持しましたか?
A.いつもより多い
B.いつもと同じ
C.いつもより少ない
4.過去4週間にわたり、調査製品を使用して性的刺激を受けた際、どのくらいの頻度でオルガスム(絶頂)に達しましたか?
A.いつもより多い/ほとんどまたは常に
B.いつもと同じ
C.いつもより少ない
5.過去4週間にわたり、調査製品を使用して性的刺激を受けた際、オルガスムの達しやすさは:
A.より容易
B.いつもと同じ
C.より困難
6.過去4週間にわたり、調査製品を使用して性的刺激を受けた際、オルガスムの強さは:
A.より強い
B.いつもと同じ
C.強度が低い
7.過去4週間にわたり、調査製品を使用した際、性行為または性交中にオルガスム(絶頂)に達する力にどの程度満足しましたか?
A.いつもより満足度が高い
B.いつもと同じくらい満足
C.いつもより満足度が低い
8.過去4週間にわたり、性生活全体の満足度はどのくらいですか?
A.いつもより満足度が高い
B.いつもと同じくらい満足
C.いつもより満足度が低い
9.以前の性機能の何パーセントがVella(商標)によって回復しましたか?
A.100%
B.75%
C.50%
D.25%
E.まったく回復していない
【0054】
実施例3.包括的性機能アンケートを用いた、自宅での女性の調査 - 実施例2に記載した調査の集計回答
実施例2で言及した6人の参加者全員が記入したアンケートの回答を組み合わせて、欲求(質問1)、興奮(質問2および3)、ならびにオルガスム(質問4、5、6、および7)のドメインに分類した。カテゴリーごとの集計結果は以下のとおりであった:欲求の増大は、6人の参加者のうち1人、すなわち17%で報告された;興奮-潤滑の頻度および/または容易さの増大は、6人の参加者のうち5人、すなわち83%で報告された;オルガスム-頻度、容易さ、強度および/または満足度は、6人の参加者のうち6人、すなわち100%で報告された。しかしながら、1人は、オルガスムの強度のスコアのみが肯定的(positive)であり、ノンレスポンダーと分類された。全体的に見て(レスポンダーおよびノンレスポンダー)、83%がオルガスムの頻度の増大を報告し、67%がオルガスムの容易さの増大を報告し、50%がオルガスムの強度の増大を報告し、83%が満足度の増大を報告した。さらに、5/6が、SSRI以前の性機能がいくらか戻ったと報告し、5人のレスポンダーは、SSRI以前の性機能が25%~75%回復したことを示しており、中央値は75%であった。
【0055】
実施例4.うつ病のためのセルトラリンを服用している27歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対する効果
参加者は、実施例2で言及された6人のボランティアのうちの1人であり、調査はそこに記載されたように実施された。彼女は、セルトラリン(Zoloft(登録商標))療法の開始から2週間以内に性機能障害、特に無オルガスムを訴えた。
彼女は以下の肯定的な結果を報告した:
1.4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)することが多くなった;
2.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)を維持することが多くなった;
3.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、いつもよりも頻繁に/ほとんどの場合にオルガスム(絶頂)に達した;
4.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、オルガスムに達するのがいつもよりも非常に容易になった;
5.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為または性交中にオルガスム(絶頂)に達する力にいつもよりも満足した;
6.過去4週間にわたり、本製品の利用により、治療前の性機能の75%が戻ったと報告した;
7.有害事象は報告されなかった。
【0056】
以下が、彼女の自己申告の証言であった:
「わたしは最近、あるトラウマに対処しながら[SSRI]の投薬を受け始めた。医師と数人の友人の両方からは、リビドーにもオルガスムに達する力にも影響を及ぼすだろうと言われた。処方されたSSRIを服用してから2週間以内にオルガスムに達する力が突然なくなった。これは、それまではまったく問題がなかったものである。確実に、Vellaを使用するたびに、楽しんでかつ容易にオルガスムに達することができる。Vellaにより、自分のメンタルヘルスを大事にし、必要な投薬を維持することができ、性的健康および快感を犠牲にすることもない。同じような問題に取り組んでいる人に、使用すべき一番の製品としてVellaを勧める。Vellaは、オルガスムの容易さを改善するだけでなく、それらをより長く、やや強く感じるようにするものである。」
【0057】
実施例5.うつ病のためのセルトラリンを服用している28歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対する効果
参加者は、実施例2で言及された6人のボランティアのうちの1人であり、調査はそこに記載されたように実施された。彼女は、セルトラリン(Zoloft)療法の開始後に、性機能障害、特に欲求の減少およびオルガスム障害を訴えた。
彼女は以下の肯定的な結果を報告した:
1.過去4週間にわたり、調査製品を使用したところ、いつもよりも高いレベル(程度)の性欲または性的関心を報告した;
2.4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)することが多くなった;
3.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)を維持することが多くなった;
4.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、いつもよりも頻繁に/ほとんどの場合にオルガスム(絶頂)に達した;
5.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、オルガスムに達するのがいつもよりも非常に容易になった;
6.過去4週間にわたり、調査製品を使用して性的刺激を受けた際に、より強いオルガスムを経験した;
7.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為または性交中にオルガスム(絶頂)に達する力にいつもよりも満足した;
8.過去4週間にわたり、本製品の利用により、治療前の性機能の75%が戻ったと報告した;
9.有害事象は報告されなかった。
【0058】
以下が、彼女の自己申告の証言であった:
「Vellaは、抗うつ薬の服用を開始した際に失った性衝動を回復させた。以前は、抗うつ薬により、メンタルヘルスか性的健康のどちらかを選択しなければならないと感じていたが、Vellaは、両方を同時に有する機会を与えてくれる。もはやメンタルヘルスのために性生活を犠牲にする必要はなく、その逆も同様である。Vellaは、性衝動を増大させるだけでなく、はるかに容易にオルガスムに達するようにし、確かにその強度を増大させた。Vellaを使用している際のオルガスムは、実際、抗うつ薬を服用し始める前よりさらに良好である。Vellaは自分が経験してきたよりもはるかに性衝動を増大させ、メンタルヘルスを大事にしながら依然として正常な性生活を送ることができることが分かり本当に安心している。」
【0059】
実施例6.うつ病のためのセルトラリンを服用している25歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対する効果
参加者は、実施例2で言及された6人のボランティアのうちの1人であり、調査はそこに記載されたように実施された。彼女は、人生の早い段階でセルトラリン(Zoloft(登録商標))療法を開始した後で性機能障害を訴えた。
彼女は以下の肯定的な結果を報告した:
1.4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)することが多くなった;
2.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)を維持することが多くなった;
3.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、いつもよりも頻繁に/ほとんどの場合にオルガスム(絶頂)に達した;
4.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、オルガスムに達するのがいつもよりも非常に容易になった;
5.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為または性交中にオルガスム(絶頂)に達する力にいつもよりも満足した;
6.過去4週間にわたり、本製品の利用により、治療前の性機能の50%が戻ったと報告した;
7.有害事象は報告されなかった。
【0060】
以下が、彼女の自己申告の証言であった:
「Vellaは、SSRIのせいで肉体的興奮を得ることは一生困難であると思っていたわたしに、選択肢を与えてくれた。うつ病および不安の日々の妨げを容易に克服する助けとなる薬の投薬量を変える必要なく、自分自身またはパートナーと親密になることができ、精神的幸福を犠牲にすることはない。Vella(商標)を使用することで肉体的に興奮するのがはるかに容易になり、このことは、いつもよりはるかに速くオルガスムに達するのを助けることが分かった!これまでは、(使用によりユーザーがオルガスムの達しやすさを経験すると多くがうたっている、現在既に売りに出されているCBD潤滑剤を使用しても)オルガスムに達するのに長い時間がかかることがしばしばあった。しかし、軟組織中へのVellaの吸収により肉体的な興奮が促進され、これは、以前に使用したどれとも異なるものである。友人、特にSSRIの使用のせいで肉体的興奮に苦心している友人に、Vellaを確実に勧めるだろう。現在数年間SSRIを使用しているわたしにとって、Vellaは性的健康に劇的な変化をもたらした。SSRIを開始し、副作用に不満を感じているわたしの友人。」
【0061】
実施例7.うつ病のためのセルトラリンを服用している32歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対する効果
参加者は、実施例2で言及された6人のボランティアのうちの1人であり、調査はそこに記載されたように実施された。彼女は、特にセルトラリン(Zoloft)療法を開始した後で、性機能障害を訴えた。
彼女は以下の肯定的な結果を報告した:
1.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、いつもよりも頻繁に/ほとんどの場合にオルガスム(絶頂)に達した;
2.過去4週間にわたり、本発明を使用して性的刺激を受けた際に、オルガスムに達するのがいつもよりも非常に容易になった;
3.過去4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為または性交中にオルガスム(絶頂)に達する力にいつもよりも満足した;
4.過去4週間にわたり、本製品の利用により、治療前の性機能の50%が戻ったと報告した;
5.有害事象は報告されなかった。
【0062】
実施例8.うつ病のためのシタロプラムを服用している33歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対する効果
参加者は、実施例2で言及された6人のボランティアのうちの1人であり、調査はそこに記載されたように実施された。彼女は、シタロプラム(Celexa(登録商標))療法に続発する性機能障害を訴えた。彼女は療法開始前には性的に活発ではなかった。
彼女は以下の肯定的な結果を報告した:
1.4週間にわたり、本発明を使用したところ、性行為中に潤滑(「湿潤」)することが多くなった;
2.過去4週間にわたり、調査製品を使用して性的刺激を受けた際に、より強いオルガスムを経験した;
3.有害事象は報告されなかった。
【0063】
実施例9.無オルガスム症でセルトラリンを服用している27歳女性の、自宅での自己申告による、性機能に対するCBDチンキの効果
実施例4の27歳女性が、カンナビノイドまたはカンナビス曝露なしで2週間のウォッシュアウト期間を経た。彼女は次に、性行為前に投薬当たり約20mgのCBDの口腔用チンキを用いて4週間の調査を繰り返した。その後の、調査終了時のアンケートからの結果は、欲求または興奮のドメインに変化はなく、無オルガスムが継続していることを示した。
【0064】
実施例10.THC負荷リポソームのローションの調製
水素添加大豆ホスファチジルコリン(5.61g)および623.8mgのTHCに相当する、既知の純度のTHC抽出物を、磁気撹拌しながら80~90℃の水浴中で加熱することによって、プロピレングリコール(7.4mL)中に溶解した。この溶液を、65℃の水浴で予め温めた脱イオン水51.7mL中のアスコルビン酸(26mg)およびアスコルビン酸ナトリウム(260mg)の溶液に、オーバーヘッド撹拌しながら、添加し、白色の懸濁液を形成する。懸濁液を浴温65℃で約30分間撹拌し、62.3mg(0.1w/w%)のポリアクリレートクロスポリマー-6を添加する。結果として得られた混合物はその後、熱から離され、撹拌を続けながら、周囲温度へと冷却される。
【0065】
実施例11.抗うつ薬を服用している閉経前女性の、自宅での自己申告による、性機能に対するTHCリポソームローションの効果
実施例2に記載した対象が、2週間のウォッシュアウト期間を経て、その後、実施例10に記載されるように調製された、CBDバージョンと同じ方法論を用いるリポソームTHCの同一の4週間の試験を受ける。4週間の終わりに、両対象は、欲求、興奮、またはオルガスムに変化がないことを報告する。さらに、いずれの対象も、精神作用またはTHC中毒(「高い」)を報告していない。
【0066】
〔実施の態様〕
(1) 女性の対象に以前に投与された1つ以上の抗うつ薬により誘発される女性性機能障害を治療するための薬剤の製造におけるカンナビジオール(CBD)の使用であって、
前記薬剤は、前記女性の対象の生殖器(興奮)領域の粘膜表面に適用される、CBDを含む局所組成物(「CBD含有組成物」)であり、
前記組成物は、性行為中に前記対象の性機能障害が緩和されるような、量で、かつ前記性行為の前の期間にわたり、適用される、使用。
(2) 前記局所組成物は、ローション、軟膏、クリーム、懸濁液、ペースト、ゲル、バルム薬、チンキ、エマルション、またはセラムとして配合され、これらのいずれか1つが、前記女性の生殖器に適用される、実施態様1に記載の使用。
(3) 前記生殖器領域は、膣口、外陰部、小陰唇、陰核および膣円蓋のうちの1つ以上を含む、吸収粘膜を有する生殖器を含む、実施態様1に記載の使用。
(4) 性機能障害を引き起こす前記抗うつ薬は、SSRI、SNRI、三環系抗うつ薬、および四環系抗うつ薬から選択される、実施態様1に記載の使用。
(5) a)前記SSRIは、セルトラリン、シタロプラム、フルオキセチン、エスシタロプラム、パロキセチン、フルボキサミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、およびデスベンラファキシンから選択され、b)前記SNRIは、デュロキセチン、ベンラファキシン、デスベンラファキシン、ミルナシプラン、およびレボミルナシプランから選択され、c)前記三環系抗うつ薬は、クロミプラミン、トリミプラミン、アミトリプチリン、デシプラミン、イミプラミン、ロフェプラミン、ドキセピン、ノルトリプチリン、アモキサピン、およびプロトリプチリンから選択され、かつ/または、前記四環系抗うつ薬は、マプロチリンおよびミルタザピンから選択される、実施態様4に記載の使用。
【0067】
(6) 前記女性の対象は、ヒトであり、大うつ病性障害(MDD)、持続性抑うつ障害もしくは気分変調症、メランコリー型うつ病、不安障害(例えば、全般性不安障害(GAD)および社会不安障害(SAD))、注意欠陥多動障害(ADHD)、強迫性障害(OCD)、神経性過食症(過食症)、パニック障害、月経前不快気分障害、閉経関連血管運動症状、線維筋痛症、神経障害性疼痛、外傷後ストレス障害(PTSD)、糖尿病性末梢神経障害(DPN)、および化学療法誘発性神経障害からなる群から選択される、1つ以上の障害または病気と診断されている、実施態様1に記載の使用。
(7) 前記女性性機能障害は、以下の特徴:興奮を達成することの難しさおよび/または不十分な潤滑、充血を達成および維持することの難しさ、ならびに潤滑を達成および維持することの難しさ、のうちの1つ以上を特徴とする、実施態様1に記載の使用。
(8) 前記女性性機能障害は、以下の特徴:オルガスムを達成することの難しさ、低いオルガスム強度、または無オルガスム症、のうちの1つ以上を特徴とする、実施態様1に記載の使用。
(9) 前記女性性機能障害は、性欲または性的関心の欠乏を特徴とする、実施態様1に記載の使用。
(10) 前記女性の対象は、閉経前である、実施態様1に記載の使用。
【0068】
(11) 前記女性の対象は、閉経後である、実施態様1に記載の使用。
(12) 前記対象は、以下の治療:(1)前記抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(2)服薬休日、(3)投薬の用量を減らす、(4)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(5)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(6)ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)を追加する、(7)局所テストステロン、(8)アマンタジン、(9)ヨヒンビン、(10)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(11)メチルフェニデートなどの刺激薬、(12)行動療法、(13)栄養補助食品、例えばサフラン、ならびに(14)鍼療法、のうちの1つ以上で以前に治療されているが、それに満足に反応しなかった、実施態様1に記載の使用。
(13) 前記女性の対象は、以下の治療:(1)前記抗うつ薬の投薬を受ける時間を変更する、(2)服薬休日、(3)投薬の用量を減らす、(4)ミルタザピンに切り替えるか、もしくはミルタザピンを追加する、(5)ブプロピオンに切り替えるか、もしくはブプロピオンを追加する、(6)ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、バルデナフィル、アバナフィル、およびウデナフィル)を追加する、(7)局所テストステロン、(8)アマンタジン、(9)ヨヒンビン、(10)トラゾドンに切り替えるか、もしくはトラゾドンを追加する、(11)メチルフェニデートなどの刺激薬、(12)行動療法、(13)栄養補助食品、例えばサフラン、ならびに(14)鍼療法、のうちの1つ以上でさらに治療される、実施態様1に記載の使用。
(14) 前記性機能障害の改善は、以下のパラメータ:
i.膣および陰核平滑筋弛緩、ならびに、
ii.膣および陰核血流の増加、
のうちの一方または両方によって示される、実施態様1に記載の使用。
(15) 前記性機能障害の改善は、以下の客観的に自己申告された結果:
i.「性行為中の潤滑/湿潤の増加」、
ii.「より頻繁にオルガスムに達する」、
iii.「オルガスムに達するのが非常に容易になる」、
iv.「より満足する」、
iii.「より高いレベルの性欲」、および、
iv.「性行為中の痛みの軽減」、
のうちの1つ以上によって示される、実施態様1に記載の使用。
【0069】
(16) 適用されるCBDの総量は、5mg~1,000mgのCBD、好ましくは10~100mgのCBD、さらに好ましくは20~40mgのCBDである、実施態様1に記載の使用。
(17) 前記組成物は、性行為の1~60分前、好ましくは5~40分、さらに好ましくは15~20分前に適用される、実施態様1に記載の使用。
(18) 前記CBD含有組成物は、性行為の5~30分前に適用される、実施態様1に記載の使用。
(19) 前記CBDは、大麻由来であり、かつ/または、0.3重量%未満のTHCを含有する、実施態様1に記載の使用。
(20) 前記CBD含有組成物は、使い捨て容器に入れて提供される、実施態様1に記載の使用。
【0070】
(21) 前記CBD含有組成物は、防腐剤をさらに含み、マルチユース容器に入れて提供される、実施態様1に記載の使用。
(22) 前記組成物中のCBDの濃度は、1mg/mL~40mg/mL、好ましくは5mg/mL~20mg/mL、さらに好ましくは10mg/mLである、実施態様1に記載の使用。
(23) 前記対象は、(1)性的関心/興奮障害(SIAD)および(2)女性のオルガスム障害から選択される障害に悩まされている、実施態様1に記載の使用。
(24) 前記対象は、前記CBD含有組成物で3~6か月間治療された際、FSFIにより測定した場合に興奮および/またはオルガスムの改善を報告し、
性的関心/興奮ドメインにおける改善が、1~2ポイントであり、前記FSFIのオルガスムドメインでは1~2ポイントである、実施態様23に記載の使用。
(25) 前記CBD含有組成物の適用後のオフセット時間が、0.5~5時間、好ましくは1~3時間、さらに好ましくは1~2時間である、実施態様1に記載の使用。
【0071】
(26) ホスホジエステラーゼ5型(PDE-5)阻害剤(例えば、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、アバナフィル、ウデナフィル)が、前記CBD含有組成物に加えられる、実施態様1に記載の使用。
(27) 別の直接的な平滑筋弛緩薬(プロスタグランジンE1、パパベリン、ミノキシジル)が、前記CBD含有組成物に加えられる、実施態様1に記載の使用。
(28) a)αブロッカー(例えばフェントラミン)、b)フリバンセリン、および/またはc)ブレメラノチドが、性欲を増強させるために前記CBD含有組成物に加えられる、実施態様1に記載の使用。
(29) 前記対象は、前記CBD含有組成物の適用前、前記適用と同時、または前記適用後に、経口で、または前記CBD含有組成物と同様に局所的に、投与されるPDE-5阻害剤でさらに治療される、実施態様1に記載の使用。
(30) 前記対象は、性機能障害を誘発した抗うつ薬で以前に治療されており、抗うつ薬療法の中止にもかかわらず持続性の性機能障害を有する、実施態様1に記載の使用。
【0072】
(31) 前記組成物中の活性成分が、CBDから本質的になる、実施態様1から30のいずれかに記載の使用。
(32) 前記組成物中の活性成分が、CBDからなる、実施態様1から31のいずれかに記載の使用。
【国際調査報告】