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特表2023-520169少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/00 20060101AFI20230509BHJP
   B60T 8/172 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
G01P15/00 A
B60T8/172 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556123
(86)(22)【出願日】2021-03-17
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2021052211
(87)【国際公開番号】W WO2021186355
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】102020000005671
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516351289
【氏名又は名称】フェヴレ・トランスポール・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】FAIVELEY TRANSPORT ITALIA S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】フレア, マッテオ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA17
3D246DA01
3D246GB01
3D246GB02
3D246GC14
3D246HA86A
3D246HA86C
3D246HA94A
3D246HA94C
(57)【要約】
加速度センサ手段(100)によって、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法が記載されており、次のステップを含む較正段階を実行する工程を備える、方法。
-第1の方向余弦k1、第2の方向余弦k2および第3の方向余弦k3の値を決定するために、次のシステムを解くステップ
【数1】
-較正段階に続いて、第1の方向余弦kと第1の加速度a(ti1)との乗算、第2の方向余弦k2と第2の加速度a(ti1)との乗算、および第3の方向余弦k3と第3の加速度a(ti1)との乗算の総和によって、推定縦加速度値alon(ti1)を決定するステップ
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸xに沿った第1の加速度a、第2の軸yに沿った第2の加速度a、および第3の軸zに沿った第3の加速度aを測定するように構成された加速度センサ手段(100)によって、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法であって、前記第1の軸x、前記第2の軸yおよび前記第3の軸zが互いに直交し、
少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、
次のステップを含む較正段階を実行する工程と、
・鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である第1の較正時点tc1において、第1の加速度a(tc1)の第1の値と、第2の加速度a(tc1)の第1の値と、第3の加速度a(tc1)の第1の値とを測定し、ここで、前記独立縦基準速度vrefが前記加速度センサ手段(100)から独立しているステップ、
前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefが利用可能である第2の較正時点tc2において、この第2の較正時点が前記第1の較正時点tc1と異なり、第1の加速度a(tc2)の第2の値と、第2の加速度a(tc2)の第2の値と、第3の加速度a(tc2)の第2の値とを測定するステップ、
前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefが利用可能である第3の較正時点tc3において、この第3の較正時点が前記第1の較正時点tc1および第2の較正時点tc2と異なり、第1の加速度a(tc3)の第3の値と、第2の加速度a(tc3)の第3の値と、第3の加速度a(tc3)の第3の値とを測定するステップ、
前記第1の較正時点tc1において測定された前記独立縦基準速度vref(tc1)の第1の値から、前記第1の較正時点tc1における第1の独立縦基準加速aref(tc1)の値を計算するステップ、
前記第2の較正時点tc2において測定された有効な独立縦基準速度vref(tc2)の第2の値から、前記第2の較正時点tc2における第2の独立縦基準加速aref(tc2)の値を計算するステップ、
前記第3の較正時点tc3において測定された独立縦基準速度vref(tc3)の第3の値から、前記第3の較正時点tc3における第3の独立縦基準加速aref(tc3)の値を計算するステップ、
第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kの値を決定するために、次の系を解くステップ、
【数1】
較正段階に続いて、前記鉄道車両の前記独立縦基準速度が利用可能でない少なくとも第1の測定時点ti1について、前記少なくとも1つの鉄道車両の推定縦加速度値alon(ti1)を決定し、前記推定縦加速度値alon(ti1)は、前記第1の測定時点ti1に対するものであり、次の総和によって推定される工程とを備える方法。
前記較正段階において決定された前記第1の方向余弦kと、前記第1の測定時点ti1において取得された第1の加速度a(ti1)の第4の値との乗算、
前記較正段階において決定された前記第2の方向余弦kと、前記第1の測定時点ti1において取得された第2の加速度a(ti1)の第4の値との乗算、
前記較正段階において決定された前記第3の方向余弦kと、前記第1の測定時点ti1において取得された第3の加速度a(ti1)の第4の値との乗算
【請求項2】
第1の軸xに沿った第1の加速度a、第2の軸yに沿った第2の加速度a、および第3の軸zに沿った第3の加速度aを測定するように構成された加速度センサ手段(100)によって、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法であって、前記第1の軸x、前記第2の軸yおよび前記第3の軸zが互いに直交し、
少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、
次のステップを含む較正段階を実行する工程と、
前記鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である少なくとも1つの第1の較正時点tc1について、前記独立縦基準速度vrefは、前記加速度センサ手段(100)から独立しており、線形フィルタによって、前記少なくとも1つの推定縦加速度値alon(tc1)を推定し、前記推定縦加速度値alon(tc1)は、前記第1の較正時点tc1に対するものであり、前記線形フィルタにより、次の総和によって推定されるステップ、
所定の値を有する第1の方向余弦kと、前記第1の較正時点tc1において取得された前記第1の加速度a(tc1)の第1の値との乗算、
所定の値を有する第2の方向余弦kと、前記第1の較正時点tc1において取得された前記第2の加速度a(tc1)の第1の値との乗算、
所定の値を有する第3の方向余弦kと、前記第1の較正時点tc1において取得された前記第3の加速度a(tc1)の第1の値との乗算、
前記第1の較正時点tc1に対する前記推定縦加速度値alon(tc1)と、第1の較正時点tc1に対し、前記第1の較正時点tc1で測定された前記独立基準縦速度値vref(tc1)の第1の値から決定された基準縦加速度値aref(tc1)との差によって、推定誤差(Eror)を決定するステップ、
適応フィルタ(104)によって、前記推定誤差を最小化するために、前記線形フィルタに課される前記第1の方向余弦k、前記第2の方向余弦kおよび前記第3の方向余弦kのそれぞれの更新値を決定するステップ、
較正段階に続いて、前記鉄道車両の前記独立縦基準速度が利用可能でない少なくとも第1の測定時点ti1について、前記線形フィルタによって、前記少なくとも1つの鉄道車両の推定縦加速度値alon(ti1)を決定し、前記推定縦加速度値alon(ti1)は、前記第1の測定瞬間tに対するものであり、次の総和によって推定される工程とを備える、方法。
前記較正段階において決定された前記第1の方向余弦kの更新値と、前記第1の測定時点ti1において取得された第1の加速度a(ti1)の第2の値との乗算、
前記較正段階において決定された前記第2の方向余弦kの更新値と、前記第1の測定時点ti1において取得された第2の加速度a(ti1)の第2の値との乗算、
前記較正段階において決定された前記第3の方向余弦kの更新値と、前記第1の測定時点ti1において取得された前記第3の加速度a(ti1)の第2の値との乗算
【請求項3】
前記適応フィルタは、最小平均二乗法、LMSに基づく適応アルゴリズムを介して、前記第1の方向余弦k、前記第2の方向余弦k、および前記第3の方向余弦kの前記それぞれの更新値を決定するように構成される、請求項2に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項4】
前記較正段階は、複数の較正時点について繰り返される、先行請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項5】
前記較正段階は、前記少なくとも1つの鉄道車両の各第1回目の点火時に実行される、先行請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項6】
前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefは、前記鉄道車両の車軸の角速度から決定される縦速度であり、
前記独立縦基準速度vrefは、前記軸が滑っていない場合、利用可能である、先行請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項7】
前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefは、測位手段によって提供される前記鉄道車両の縦速度であり、
前記独立縦基準速度vrefは、前記測位手段が衛星と通信するときに利用可能である、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項8】
前記推定縦加速度alonは、前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefが利用可能である複数の測定時点(ti1、ti2、...、tin)について決定され、前記複数の測定時点(ti1,ti2、...、tin)は、取得期間ΔTiに従って選択される、先行請求項のいずれかに記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項9】
前記推定縦加速度alonは、前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefがもはや利用可能でない利用不可能時点に直接先行する時点と一致する利用可能時点tavと、前記第1の測定時点ti1とから連続的に決定される、請求項1~7のいずれか1項に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法。
【請求項10】
少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法であって、次のステップを備える、方法。
請求項8に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法を実行するステップ、
前記鉄道車両の前記独立縦基準速度vrefがもはや利用可能でない利用不可能時点に直接的に先行する時点と一致する利用可能時点tavにおいて、前記少なくとも1つの鉄道車両の前記独立縦基準速度Vref(tav)を測定するステップ
次のステップに従った鉄道車両の縦速度vRVを決定するステップ、
複数の測定時点(ti1、ti2、...、tin)において推定された縦加速度の総和を計算するステップ、
複数の測定時点(ti1、ti2、...、tin)において決定された縦加速度の合計に取得期間Δtを乗算するステップ、
前記複数の測定時点(ti1、ti2、...、tin)において決定された前記推定縦加速度の前記総和に前記取得期間Δtを乗算した結果に、前記利用可能時点tavにおける前記少なくとも1つの鉄道車両の前記独立縦基準速度Vref(tav)の値を加算するステップ
【請求項11】
前記鉄道車両の前記縦速度vRV(tin)を決定するステップは、次の式により行われる、請求項10に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法。
【数2】
ここで、
ref(tav)は、前記利用可能時点tavにおける前記少なくとも1つの鉄道車両の前記独立縦基準速度Vref(tav)である。
次の項:
【数3】
は、前記複数の測定時点ti1、ti2、...、tinおいて決定された前記縦加速度の前記総和であり、nは、前記利用可能時点tavと、前記縦速度vRV(tin)が決定中である前記測定時点(tin)との間に経過した取得期間の数である。
ΔTは、取得期間である。
【請求項12】
少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法であって、次のステップを備える、方法。
請求項9に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法を実行するステップ、
前記少なくとも1つの鉄道車両の前記独立縦基準速度Vref(tav)の値を、前記利用可能時点tavにおいて測定するステップ、
次のステップに従って前記鉄道車両の前記縦速度vRV(ti1)を決定するステップ
前記利用可能時点tavから前記第1の測定時点ti1まで連続的に決定される前記推定縦加速度alonの積分を計算するステップ、
前記推定縦加速度の前記積分の結果に、前記利用可能時点tavにおける前記少なくとも1つの鉄道車両の前記独立縦基準速度Vref(tav)の値を加算するステップ
【請求項13】
前記鉄道車両の前記縦速度vRV(ti1)を決定する前記ステップは、次の式により行われる、請求項12に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法。
【数4】
ここで、
ref(tav)は、前記利用可能時点tavにおける前記独立縦基準速度Vref(tav)である。
次の項:
【数5】
は、前記利用可能時点tavから前記縦速度vRV(ti1)が判定中の前記第1の測定瞬間ti1まで連続的に決定される前記推定縦加速度alonの前記積分である。
【請求項14】
前記第1の測定時点ti1は、前記独立縦基準速度Vrefが利用不可能になった後に、再度、利用可能になる利用可能時点tret_avへの復帰と一致する、請求項10~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、鉄道車両分野に属し、特に、本発明は、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
滑り(スリップ、スライド、摺動とも呼ばれる)とは、車軸の回転速度と車両の走行速度との間に差がある状態であると理解される。この差は、滑り速度として規定される。
【0003】
滑り速度は、次の式を用いて計算し得る。
【数1】
【0004】
ここで、VRVは、鉄道車両の縦走行速度であり、ωaxleは、車軸の角速度であり、Rは、車輪の半径である。
【0005】
最新の鉄道車両は、一般に、車輪の滑りを制御するためのサブシステムを含む電子システムを搭載しており、このサブシステムは、車両が牽引段階にあるとき、または車両が制動段階にあるときに介入するように構成されている。この種のサブシステムは、滑り止めまたは滑り止めシステムとして知られ、またWSP(ホイールスライドプロテクション)システムとしても知られている。
【0006】
従来技術に係る滑り防止機能における車輪の密着性を制御するためのシステムは、図1に模式的に示されており、図1は、n個の制御された車軸A1、A2、...、Anを備える車両を示す。車軸A1、A2、...、Anは、関連するシャフトS1、S2、...、Snと、それと回転可能に一体化された関連する一対の車輪W1、W2、...、Wnとを備える。
【0007】
図面では、一般的に、各車軸の1つの車輪のみが示されている。
【0008】
図1のWSPシステムは、典型的には、マイクロプロセッサ構造に基づく電子制御ユニットECUを備え、このECUは、各車軸A1、A2、...、Anの角速度に関するタコメータ信号を、これらの車軸にそれぞれ関連するセンサSS1、SS2、...、SSnから受信する。また、電子制御ユニットECUは、関連する車軸A1、A2、...、Anにそれぞれ関連付けられたトルク制御装置TC1、TC2、...、TCnに接続されている。
【0009】
電子制御ユニットECUは、密着性が低下した状況において牽引または制動段階でトルクが付加されて、1つ以上の車軸の車輪が初期滑りの状態になる場合、所定のアルゴリズムに係る各車軸に付加されるトルクを調節するように構成される。トルクは、車軸が完全に動かなくなるのを防止するように、場合によっては、各軸を制御された摺動状態とするように、粘着性を回復する目的で、如何なる場合でも密着性が低下した状態の全期間にわたって調節される。
【0010】
車両の瞬間速度VRV(t)を知ることは、滑りを正確に制御するための基本であることは明らかである。
【0011】
鉄道車両の速度を正確に追跡する既知の方法の1つは、空転車軸、すなわち牽引または制動トルクを受けていない車軸を維持することを必要とする。これは、その速度の測定が鉄道車両の実際の速度Vrealの最良の再現であることを保証するために必要とされる。この解決策は、車輪と軌道との間の密着性が特に低い場合に特に有効である。この場合、牽引または制動時に、車輪の全てが滑り状態になる可能性があり、したがって、車両の実速度に関する正しい情報を提供することができなくなる。牽引または制動トルクを受けていない空転車輪は、車両の速度を正確に追跡し続けることができる。
【0012】
現代の鉄道車両構造、特に地下鉄の構造は、非常に限られた構成になる傾向があり、例えば2両編成となる。この場合、「空転」車軸の使用は、列車の牽引力および制動力が著しい損なわれることになる。
【0013】
図2(a)は、2台の独立した車両で構成される例示的な構成を示し、図2(b)は、ヤコブス台車によって拘束された2台の車両で構成される例示的な構成を示す。空転車軸の使用は、第1のケースでは12.5%、第2のケースでは16.7%も、牽引力および制動能力が不利に低下させることが明らかである。
【0014】
従来技術において、車両の前進速度を測定する加速度センサに基づくシステムも存在する。
【0015】
MEMS(「マイクロエレクトロメカニカルシステム」)の普及および低価格化に伴って、ますます多くの電子デバイスは、それらの主な用途に係わらず、加速度センサ、典型的には3軸加速度センサを基板に組み込んでいる。
【0016】
車両の縦加速度を推定する加速度センサの使用は、原理的に容易に適用可能である。
【0017】
縦加速度は、車両の進行方向の加速度を意味すると理解される。この縦加速度(longitudinal acceleration)を時間積分することによって、縦速度(longitudinal speed)、すなわち車両の走行速度が得られる。この方法は、密着性が低下した場合に車軸が受け得る上述の滑り問題の影響を明らかに受けないことは明らかである。
【0018】
図3を参照して、鉄道車両1は、軌道3を走行し、加速度センサ2を備えている。
【0019】
地球/重力基準系では、軸zは、重力加速度の方向と規定され、軸xおよび軸yは、zに垂直な平面上の横断方向として規定され得る。
【0020】
しかしながら、車両と一体の基準系では、軸y’が車両の縦方向として規定され、軸x’は、車両の横方向として規定され、軸z’は、車両の平面(「床」)に垂直な方向として規定され得る。
【0021】
さらに、x”、y”およびz”は、三軸加速度センサの感応軸として規定され得る。
【0022】
ここで、センサが車両と一体的に設置され、軸が車両の軸と完全に一致させるという理想的な場合を考えると、次のようになる。
【数2】
【0023】
また、車両1が完全に直線で勾配のない軌道3の区間を走行している特定の場合も考慮すると、次のようになる。
【数3】
【0024】
このような理想的な条件において、車両の縦加速度は、次の加速度計の測定値から直接的に推定され得る。
【数4】
ここで、atrainは、車両の縦加速度であり、aは、センサの軸y”で加速度センサによって測定される加速度である。
【0025】
次いで、車両の走行速度は、加速度値の時間積分として計算され得る。
【数5】
【0026】
または、別個取得システムの場合は、次の通りである。
【数6】
ここで、ΔTは、電子取得システムのサンプリング期間であり、nは、時間tにおいて取得されるサンプルの数である。
【0027】
しかしながら、上記の仮定によって大幅に簡略化されたこの方法論は、実際の場合において適用できない。
【0028】
それは精密に実装されていても、車両に搭載される電子回路基板に集積された加速度センサは、車両の軸x’、y’およびz’と完全に位置合わせされた感応軸x”、y”およびz”を有さない。
【0029】
さらに、車両1が完全に直線で勾配がない追跡3の区間を走行しているという仮説は、鉄道車両が湾曲している区間および/または非ゼロ勾配を有する区間を走行することがあるので、実際にも適用可能ではない。
【0030】
前述の仮定が無効であることは、3つの基準系(重力、車両および加速度計)が3軸上で相対的な角度を有する幾何学的シナリオへの道を開く。
【0031】
車両基準系と重力基準系との間の回転角は、軸x、y、zに対してそれぞれα、β、φとして規定され得る。
【0032】
加速度計基準系と車両基準系との間の回転角は、軸x、y、zに対してそれぞれα’、β’、φ’として規定され得る。
【0033】
角度α、β、φは、加速度計を取得する電子ユニットには知られていないが、それらは、車両に対する加速度計の取り付けのみに依存するので、経時的に一定である。
【0034】
角度α’、β’、φ’は、加速度計を取得する電子ユニットに知られていないだけでなく、軌道の局所区間の曲率および勾配に依存するので、経時的に一定ではない。
【0035】
角度α、β、φおよび角度α’、β’、φ’は未知で、互いに無関係であるので、車両に搭載された三軸加速度計の測定値から車両の縦加速度を決定する問題は、解析的および/または幾何学的に解くことができない場合がある。
【0036】
例えば、WO2017042138は、加速度センサが搭載された車両に対する加速度センサの向きを決定する分析的/幾何学的方法を提案している。この方法は、次が利用可能であることが前提である。
-「自由状態」、すなわち鉄道車両が停止または一定速度である状態で、加速度センサが重力のみを受ける状態
-加速度計の外部にある信頼性の高い鉄道車両の速度情報源の利用可能性(不連続でも可)
【0037】
加速度計の外部にある鉄道車両の信頼性の高い速度測定値が、例え不連続であっても利用可能であることは、車軸の角速度(図1のセンサーSSによって測定される)が未だ大多数で密着性が劣化していない全てのケースにおいて信頼できることを考慮すると、妥当である。加速度センサと、それから鉄道車両の速度を推定する方法との役割は、車軸が全て滑り状態であり、それらの角速度が鉄道車両または列車の速度を表すものではない、密着性が低下した状況で使用されるものであろう。
【0038】
しかしながら、WO2017042138で提案される方法は、基本的に2つの仮定に基づく。
1)「自由状態」では、車両は完全に水平な軌道(勾配がゼロ)に乗っている。
2)加速度計の外部速度を使用する段階では、鉄道車両または列車は、完全に軌道の直線区間にある。したがって、横加速度成分(軸x)は、無視され、その代わりに曲線区間に存在する。
【0039】
WO2017042138が基礎とする仮定は、非常に限定的であり、実際の用途において、この方法の動作を保証するものではない。
【0040】
制動時における車両の実速度V(t)を推定する最も一般的に使用されるアルゴリズムは、通常、次のような関数を使用する。
【数7】
【0041】
一方、牽引の場合、次の関数を使用する。
【数8】
【0042】
ここで、amaxは、車両の運転中に許容される極大加速度を表し、この加速度は、牽引状態では正の符号を有し、制動状態では負の符号を有する。式(5)および(6)における寄与分(V(Tj-1)+amax・T)は、特に牽引または制動中の低下した密着状態による車軸速度の過度の瞬間的かつ同時に起こる変動が、式(5)および(6)を使用して計算される速度V(t)の著しい損失につながる可能性がある場合、列車によって許容される物理的限界内のV(t)の変動を含むように使用される。
【0043】
式(5)および(6)のより正確な変形が知られているが、未だ車軸の個々の速度の瞬間的な測定に基づくものである。ここで、トルクを受けるすべての車軸が滑り段階にある場合、空転車軸の利用は、式(5)および(6)を極めて正確にすることが明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法、および少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法を提供することであり、これらの方法は、車両の全ての車軸が低下した密着性によって生じる滑り段階にある状態においても、車両の縦加速度および縦速度をそれぞれ測定することを可能にする。
【0045】
したがって、本発明のさらなる目的は、特に密着性が低い場合であっても、空転車軸の使用を、牽引および制動の目的のために完全に回復させることによって、縦前進速度を正確に評価するために、車軸が列車の速度を正確に追跡することを可能にしつつ、列車の牽引力および制動力を増加させることにある。
【0046】
縦速度を推定する方法および縦加速度を推定する方法は、牽引段階における滑り状況(負のVslippage)および制動段階における滑り状況(正のVslippage)の双方に適用され得る。
【0047】
本発明は、鉄道車両の縦速度の最も正確に知ることができ、例えば基板上に設置された制御システム、滑り止めシステムおよび走行基準の操縦を容易にし、改善する。
【0048】
上記および他の目的および利点は、本発明の一態様によれば、それぞれ請求項1および請求項2に規定された特徴を有する少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法、およびそれぞれ請求項10および請求項12に規定された特徴を有する少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において規定されており、その内容は、本明細書の不可欠な部分として理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
次に、本発明に係る少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法のいくつかの好ましい実施形態の機能的特徴および構造的特徴について説明する。添付の図面を参照する。
図1図1は、従来技術に従って製造されたWSPシステムを示す。
図2a図2aは、2台の独立した車両で構成される例示的な構成を示す。
図2b図2bは、ヤコブス台車によって拘束された2台の車両で構成される例示的な構成を示す。
図3図3は、軌道上を走行し、加速度センサを備える鉄道車両を示す。
図4図4は、本発明の一実施形態を実施するために使用され得る例示的なシステムを示す。
図5図5は、鉄道車両の速度の経時的な傾向、独立縦基準速度の利用可能性および方向余弦の複数の説明グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本発明の複数の実施形態を詳述する前に、本発明は、その適用において、以下の明細書中で述べられ、または図に示される構造の詳細およびコンポーネントの構成に限定されないということが明らかにされるべきである。本発明は、他の実施形態をとることができ、本発明を、種々に異なる方法で、実際に実施または構築し得る。また、表現および専門用語は、説明を目的とするものであって、限定として解釈されるべきではないことも理解されるべきである。「備える(include)」、「含む(comprise)」、またはそれらのバリエーションは、以下に記述される要素やそれらの均等物、並びに、それらの追加要素およびその均等物を包含するものと理解されるべきである。
【0051】
本発明は、少なくとも1つの鉄道車両の推定された縦加速度を計算する方法、および、加速度センサ手段、例えば三軸加速度センサ手段を使用して、鉄道車両の推定された縦速度を計算する方法を提案する。
【0052】
少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、以下で鉄道車両の独立縦基準速度Vrefと呼ばれる、加速度計から独立した列車の速度の計測値を利用可能であること、不連続的に利用可能であっても必要とする。少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、3つの直交軸を有するセンサからの測定値を乗算すると、車両の推定された縦加速度が得られるような3×3配向行列の方向余弦の取得に基づく。推定された車両の縦加速度を積分することによって、車両の推定された縦速度を得ることができる。
【0053】
使用される主な方程式は、次の通りである。
【数9】
ここで、
、kおよびkは、方向余弦の数値であり、k、kおよびkは、方程式の変数である。
(t)、a(t)、a(t)は、一般的な時点tにおいて、3つの直交軸上で加速度計センサ手段によって検出される加速度である。
ref(t)は、時点tにおける独立基準加速度であり、独立基準縦速度(すなわち、移動速度)vref、すなわち次の式の時点tにおける微分によって決定される。
【数10】
【0054】
時点tにおける独立縦基準速度の微分を計算することが可能であるために、この独立縦基準速度は、時点tを含む少なくとも1つの時間間隔について測定されなければならない。例えば、その間隔は、20ms、100ms等であり得る。
【0055】
この式の未知数は、k、k、kである。
【0056】
式(7)は、上述の独立縦基準速度vrefが利用可能である場合にのみ有効である。
【0057】
使用される技法にかかわらず、独立縦基準速度vrefが利用可能である段階において式(7)を解くことは、センサによって測定された加速度との線形結合が、鉄道車両または列車の推定された縦加速度をもたらすように、係数k、kおよびkが動的に更新され得ることを意味する。
【0058】
以下では、加速度センサ手段100によって、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法の第1の実施形態について説明する。加速度センサ手段100は、第1の軸xに沿った第1の加速度a、第2の軸yに沿った第2の加速度a、および第3の軸zに沿った第3の加速度aを測定するように構成される。第1の軸x、第2の軸yおよび第3の軸zは、互いに直交している。
【0059】
少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、次のステップを含む第1の較正段階を備える。
-鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である第1の較正時点tc1において、第1の加速度a(tc1)の第1の値と、第2の加速度a(tc1)の第1の値と、第3の加速度a(tc1)の第1の値とを測定し、ここで、独立縦基準速度vrefが加速度センサ手段(100)から独立しているステップ。
-鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である第2の較正時点tc2において、第2の較正時点が第1の較正時点tc1と異なり、第1の加速度a(tc2)の第2の値と、第2の加速度a(tc2)の第2の値と、第3の加速度a(tc2)の第2の値とを測定するステップ。
-鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である第3の較正時点tc3において、第3の較正時点が第1の較正時点tc1および第2の較正時点tc2と異なり、第1の加速度a(tc3)の第3の値と、第2の加速度a(tc3)の第3の値と、第3の加速度a(tc3)の第3の値とを測定するステップ。
-第1の較正時点tc1において測定される独立縦基準速度vref(tc1)の第1の値から、第1の較正時点tc1における第1の独立縦基準加速aref(tc1)の値を計算するステップ。
-第2の較正時点tc2において測定される独立縦基準速度vref(tc2)の第2の値から、第2の較正時点tc2における第2の独立縦基準加速aref(tc2)の値を計算するステップ。
-第3の較正時点tc3において測定される独立縦基準速度vref(tc3)の第3の値から、第3の較正時点tc3における第3の独立縦基準加速aref(tc3)の値を計算するステップ。
-第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kの値を決定するために、以下の系を解くステップ。
【数11】
【0060】
明らかに、較正時点は、鉄道車両の独立縦基準速度が利用可能である単一の連続較正間隔において全て取得され、または較正時点は、鉄道車両の独立縦基準速度が利用可能であるいくつかの較正間隔において取得され得る。第2の場合、様々な較正間隔は、鉄道車両の独立縦基準速度が利用可能でない間隔によって区画され得る。
【0061】
換言すれば、独立縦基準速度vrefが利用可能であれば、3つの異なる較正時点tc1、tc2、tc3におけるa、a、aおよびvrefの値を測定することが可能であり、3つの方程式の系を構成することができる。この3つの未知数の3つの方程式の系は、解析的方法および数値的方法の双方によって解くことができる。また、更なる時点(すなわち、3回以上)において測定値を取得することによって、時間経過とともに、解k、k、kの精度を再帰的に向上させ、更新することができる。
【0062】
この場合、独立縦基準速度vrefが加速度センサ手段100から独立していると言うことは、独立縦基準速度が加速度センサ手段によって得られる速度ではないことを意味すると理解される。
【0063】
この場合、独立縦基準速度vrefが利用可能であると言うことは、独立縦基準速度vrefがアクセス可能であり、鉄道車両が軌道に沿って移動している実際の縦速度を反映するので、本発明の対象である少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法において使用され得る場合を意味すると理解され得る。
【0064】
また、少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法は、較正段階に続く更なる測定段階を備える。
【0065】
この測定段階は、次のステップを備える。
-鉄道車両の独立縦基準速度が利用できない少なくとも第1の測定時点ti1について、少なくとも1つの鉄道車両の推定縦加速度値atlon(ti1)を決定するステップ。
【0066】
推定縦加速度値alon(ti1)は、測定時点ti1に対するものであり、次の総和によって推定される。
-較正段階において決定された第1の方向余弦kと、第1の測定時点ti1において取得された第1の加速度a(ti1)の第4の値との乗算。
-較正段階において決定された第2の方向余弦kと、第1の測定時点ti1において取得された第2の加速度a(ti1)の第4の値との乗算。
-較正段階において決定された第3の方向余弦kと、第1の測定時点ti1において取得された第3の加速度a(ti1)の第4の値との乗算。
【0067】
一代替実施形態において、図4を参照すると、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、再度、次のステップを含む較正段階を備える。
-鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である少なくとも第1の較正時点tc1について、線形フィルタによって、少なくとも1つの鉄道車両の推定縦加速値alon(tc1)を推定するステップ。この場合、独立縦基準速度vrefは、加速度センサ手段100からも独立している。
【0068】
推定縦加速度値alon(tc1)は、較正時点tc1に対するものであり、線形フィルタにより、次の総和によって推定される。
-所定の値を有する第1の方向余弦kと、第1の較正時点tc1において取得された第1の加速度a(tc1)の第1の値との乗算。
-所定の値を有する第2の方向余弦kと、第1の較正時点tc1において取得された第2の加速度a(tc1)の第1の値との乗算。
-所定の値を有する第3の方向余弦kと、第1の較正時点tc1において取得された第3の加速度a(tc1)の第1の値との乗算。
【0069】
この実施形態において、較正段階は、次のステップも含む。
-第1の較正時点tc1に対する推定縦加速度値alon(tc1)と、第1の較正時点tc1に対し、第1の較正時点tc1で測定された独立縦基準速度値vref(tc1)の第1の値から決定された独立縦基準加速度値aref(tc1)との差によって、推定誤差Erorを決定するステップ。
-適応フィルタ(104)によって、推定誤差を最小化するために、第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kのそれぞれの更新値を決定するステップ。
【0070】
較正段階が初めて開始される場合、第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kの値は、予め設定され得る。例えば、それらは、様々な較正時点において較正が実行されるにつれて、徐々に調整される所定の既定値であり得、または鉄道車両の以前の運転中に較正された第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kの値に等しい所定の値でもあり得る。
【0071】
換言すれば、方程式を解くことは、適応アルゴリズムの使用に基づき得る。誤差は、線形フィルタの出力を、独立縦基準速度vrefを導出することによって得られた基準縦加速度値と比較することによって得られ得る。この誤差は、誤差を再帰的に最小化するために、線形フィルタk、k、kの係数を動的に再計算するために適応フィルタによって使用される。
【0072】
この代替実施形態においても、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、較正段階に続く、更なる測定段階も備える。
【0073】
この測定段階は、次のステップを備える。
-線形フィルタによって、鉄道車両の独立縦基準速度が利用可能できない少なくとも第1の測定時点ti1について、少なくとも1つの鉄道車両の推定縦加速度値alon(ti1)を決定するステップ。
【0074】
推定縦加速度値alon(ti1)は、測定時点ti1に対するものであり、次の総和によって推定される。
-較正段階において決定された第1の方向余弦kの更新値と、第1の測定時点ti1において取得された第1の加速度a(ti1)の値との乗算。
-較正段階において決定された第2の方向余弦kの更新値と、第1の測定時点ti1において取得された第2の加速度a(ti1)の値との乗算。
-較正段階において決定された第3の方向余弦kの更新値と、第1の測定時点ti1において取得された第3の加速度a(ti1)の値との乗算。
【0075】
図5を参照すると、利用可能時点tavは、独立縦基準速度vrefが利用可能である最後の時点として規定され得る。利用可能時点tavに続く時点は、独立縦基準速度vrefがもはや利用可能でない時点となる。
【0076】
時点tavで検出される独立縦基準速度vref(tav)は、独立縦基準速度vrefの最後の利用可能な信頼できる値である。
【0077】
また、tret_av>tavである利用可能時点tret_avへの復帰は、独立縦基準速度vrefが再度利用可能になる最初の時点として規定され得る。
【0078】
測定時点ti1は、利用可能時点tret_avへの復帰と一致し得る。
【0079】
次の式は、独立縦基準速度vrefが利用可能な期間、すなわち期間(t<tav)および(t>tret_av)においてのみ適用可能である。
【数12】
【0080】
この式を解くことによって、係数k、k、kは、利用可能時点tavまで動的に更新される。tavとtret_avとの間の期間において、k、k、kの値は、利用可能時点tav、k(tav)、k(tav)、k(tav)において更新された最後の値で凍結される。次いで、t>tavで、式(7)を解くことによって、k、k、kの値が動的に更新され得る。
【0081】
例えば、第1の測定時点ti1は、独立縦基準速度vref(tret_av)が利用不可能となった後、再度、利用可能になる時点と一致し得る。
【0082】
適応フィルタは、最小二乗法、LMSに基づく適応アルゴリズムを介して、第1の方向余弦k、第2の方向余弦kおよび第3の方向余弦kのそれぞれの更新値を決定するように構成され得る。
【0083】
上述した全ての実施形態について、較正段階は、複数の較正時点、例えば第2の較正時点ti2、第3の較正時点ti3、..、第nの較正時点tinについて繰り返され得る。
【0084】
明らかに、較正ステップは、少なくとも1つの鉄道車両の各第1回目の点火時に実行され得る。
【0085】
以下、鉄道車両の独立縦基準速度vrefについて例示する。
【0086】
例えば、独立縦基準速度vrefは、鉄道車両の車軸の角速度から得られる縦速度であり得る。この場合、独立縦基準速度vrefは、車軸が滑っていないときに利用可能であり得る。
【0087】
更なる実施形態において、鉄道車両の独立縦基準速度vrefは、測位手段によって提供される鉄道車両の縦速度である。この場合、独立縦基準速度vrefは、測位手段が衛星と通信するときに利用可能であり得る。測位手段は、位置情報、したがって列車の移動速度を取得するために好適な信号を使用して通信するGPSシステム/装置であり得る。独立縦基準速度vrefは、例えば鉄道車両がトンネル内にあり、衛星と通信することができない場合、利用可能でない場合がある。
【0088】
本発明の更なる態様では、推定縦加速度alonは、鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である複数の測定時間ti1、ti2、...、tin、例えば第2の測定時点ti2、第3の測定時点ti3、...、n番目の測定時点tinについて決定され得る。複数の測定時間ti1,ti2、...、tinは、取得期間Δtに従って選択され得る。
【0089】
あるいは、推定縦加速度alonは、鉄道車両の独立縦基準速度vrefがもはや利用可能でない利用不可能時点に直接的に先行する時点に一致する利用可能時点tavと、測定瞬間、例えば第1の測定時点ti1または連続測定時点ti2、...、tinとから連続的に決定され得る。
【0090】
また、本発明は、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法に関する。
【0091】
推定縦加速度alonは、鉄道車両の独立縦基準速度vrefが利用可能である複数の測定時間ti1、ti2、...、tinについて決定され、測定時間は、取得期間Δtに従って選択される場合、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、利用可能時点tavにおける鉄道車両の少なくとも1つの車軸の独立縦基準速度vref(tav)の値を測定する工程を備える。
【0092】
また、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、次のステップに従って、鉄道車両の縦速度vRV(tin)を決定するステップも備える。
-複数の測定時間ti1、ti2、...、tinにおいて推定された縦加速度の総和を計算するステップ。
-複数の測定時間ti1、ti2、...、tinにおいて決定された縦加速度の総和に取得期間Δtを乗算するステップ。
-複数の測定時間ti1、ti2、...、tinにおいて決定された推定縦加速度の総和に取得時間Δtを乗算した結果に、利用可能時点tavにおける少なくとも1つの鉄道車両の独立縦基準速度Vref(tav)の値を加算するステップ。
【0093】
例えば、鉄道車両の縦速度vRVを決定するステップは、次の式を用いて実施され得る。
【数13】
ここで、
ref(tav)は、利用可能時点tavにおける少なくとも1つの鉄道車両の独立縦基準速度Vref(tav)である。
次の項:
【数14】
は、複数の測定時点ti1、ti2、...、tinおいて決定された縦加速度の総和であり、nは、利用可能時点tavと、縦速度vRV(tin)が決定中である測定時点(tin)との間に経過した取得期間の数である。
ΔTは、取得期間である。
【0094】
これ代わりに、推定縦加速度alonが、独立縦基準速度vrefが利用可能でない利用不可能時点に直接先立つ時点、例えば第1の測定時点ti1と一致する利用可能時点tavから連続的に決定される場合、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、利用可能時点tavにおいて少なくとも1つの鉄道車両の独立縦基準速度vref(tav)の値を測定するステップを備える。
【0095】
また、少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法は、次のステップに従って、鉄道車両の縦速度vRV(t)を決定するステップも備える。
-利用可能時点tavから第1の測定時点ti1まで連続的に決定される推定縦加速度alonの積分を計算するステップ。
-推定縦加速度の積分の結果に、利用可能時点tavにおける少なくとも1つの鉄道車両の独立縦基準速度Vref(tav)の値を加算するステップ。
【0096】
例えば、鉄道車両の縦速度vRV(ti1)を決定するステップは、次の式を用いて実施され得る。
【数15】
ここで、
ref(tav)は、利用可能時点tavにおける独立縦基準速度Vref(tav)である。
次の項:
【数16】
は、利用可能時点tavから縦速度vRV(ti1)が判定中の第1の測定時点ti1まで連続的に決定される推定縦加速度alonの積分である。
【0097】
また、上記は、後続の測定時点にも有効である。例えば、第n番目の測定時点tinを考慮して、鉄道車両の縦速度vRV(tin)を決定するステップは、次の式を用いて実施され得る。
【数17】
ここで、
ref(tav)は、利用可能時点tavにおける独立縦基準速度Vref(tav)である。
次の項:
【数18】
は、利用可能時点tavから、縦速度vRV(tin)が判定中の第n番目の測定時点tinまで連続的に決定される推定縦加速度alonの積分である。
【0098】
したがって、再び図5を参照すると、独立縦基準速度vrefが利用可能でないtavとtret_avとの間の期間中、鉄道車両の加速度は、加速度計の測定値から計算されることが要約され得る。
【0099】
独立縦基準速度vrefが利用可能でないtavとtret_avとの間の期間中、鉄道車両の速度は、加速度計からの測定値と、上に示された式に従って最後の信頼できる独立縦基準速度値vrefとを使用して計算される。
【0100】
有利なことに、本明細書で上述したことから、独立縦基準速度vrefが利用可能でない段階においても、鉄道車両の縦速度vRVが常時利用可能である。このため、特に低密着性の場合でも、牽引および制動目的の空転車軸の使用を完全に回復することも可能であり、よって、列車の牽引および制動能力を増大させる。
【0101】
本発明に係る少なくとも1つの鉄道車両の縦加速度を推定する方法、および少なくとも1つの鉄道車両の縦速度を推定する方法の様々な態様および実施形態について説明した。各実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせることができることを理解されたい。さらに、本発明は、記載された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定される範囲内で変更されてもよい。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
【国際調査報告】