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特表2023-520174サーモスタット混合弁用の膨張物質部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】サーモスタット混合弁用の膨張物質部材
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/68 20060101AFI20230509BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 35/214 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 35/82 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 23/45 20220101ALI20230509BHJP
   B01F 25/30 20220101ALI20230509BHJP
   E03C 1/044 20060101ALI20230509BHJP
   C01B 32/20 20170101ALI20230509BHJP
   C01B 21/064 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
F16K31/68 D
B01F35/213
B01F35/214
B01F35/82
B01F23/45
B01F25/30
E03C1/044
C01B32/20
C01B21/064 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556139
(86)(22)【出願日】2021-02-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021054176
(87)【国際公開番号】W WO2021185529
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】102020107422.0
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513228719
【氏名又は名称】グローエ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Grohe AG
【住所又は居所原語表記】58675 Hemer, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オーレ ベネディクト コストアツ
(72)【発明者】
【氏名】ビェアン リーデル
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ロイナート
【テーマコード(参考)】
2D060
3H057
4G035
4G037
4G146
【Fターム(参考)】
2D060BA01
2D060BA03
2D060BA05
2D060BB01
2D060BC01
2D060BE16
3H057BB02
3H057BB07
3H057BB09
3H057BB25
3H057CC12
3H057DD03
3H057EE01
3H057FC05
3H057HH03
3H057HH14
4G035AB37
4G035AC43
4G035AE01
4G035AE13
4G035AE17
4G037BA01
4G037BB06
4G037EA01
4G146AA02
4G146AC02A
4G146AC26A
(57)【要約】
サーモスタット混合弁(2)用の膨張物質部材(1)であって、以下の群、すなわち:-人造黒鉛、-少なくとも350W/(m×K)の熱伝導率を有する高熱伝導黒鉛、-窒化ホウ素のうちの少なくとも1つの添加剤(4)を含む膨張物質(3)を有している。さらに、このような膨張物質部材(1)を備えたサーモスタット混合弁(2)と、このようなサーモスタット混合弁(2)を備えた衛生水栓(8)とを提案する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーモスタット弁またはサーモスタット混合弁(2)用の膨張物質部材(1)であって、以下の群、すなわち:
-人造黒鉛、
-少なくとも350W/(m×K)の熱伝導率を有する高熱伝導黒鉛、
-窒化ホウ素
のうちの少なくとも1つの添加剤(4)を含む膨張物質(3)を有している、膨張物質部材(1)。
【請求項2】
前記膨張物質(3)における前記少なくとも1つの添加剤(4)の質量分率は、50%~80%である、請求項1記載の膨張物質部材(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの添加剤(4)は、0.4μm~550μmの平均粒径D50を有している、請求項1または2記載の膨張物質部材(1)。
【請求項4】
前記膨張物質(3)は、当該膨張物質部材(1)のケーシング(5)内に配置されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の膨張物質部材(1)。
【請求項5】
前記膨張物質(3)により、当該膨張物質部材(1)の作業ピストン(6)が駆動可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の膨張物質部材(1)。
【請求項6】
前記膨張物質(3)と前記作業ピストン(6)との間には、ダイヤフラム(7)が配置されている、請求項5記載の膨張物質部材(1)。
【請求項7】
衛生水栓(8)用のサーモスタット混合弁(2)であって、少なくとも、
-冷水と温水とを混合して混合水を形成するための混合室(10)を備えたケーシング部材(9)と、
-前記混合室(10)内の冷水と温水との混合比を調整する調整部材(11)と、
-該調整部材(11)を操作可能な、請求項1から6までのいずれか1項記載の膨張物質部材(1)と
を有している、サーモスタット混合弁(2)。
【請求項8】
少なくとも水栓ケーシング(12)と、請求項7記載のサーモスタット混合弁(2)とを有している、衛生水栓(8)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーモスタット弁および/またはサーモスタット混合弁用の膨張物質部材、衛生水栓用のサーモスタット混合弁および相応するサーモスタット混合弁を備えた衛生水栓に関する。膨張物質部材により、例えばサーモスタット混合弁により混合された液体の温度を(実質的に)一定に保つことができる。衛生水栓は特に、液体、特に水を、洗面台、流し、シャワーまたは浴槽に必要に応じて供給するために用いられる。
【0002】
周知の膨張物質部材は、膨張物質部材の周囲温度に応じて膨張する膨張物質を有している。膨張物質は、例えばワックスであってよい。変化する周囲温度に対する膨張物質部材の高い反応速度を保証するために、膨張物質に、例えば銅粉末または膨張黒鉛を添加することは既に周知である。しかし、膨張物質部材の別の反応特性もしくは温度応答が望まれている用途、膨張物質部材のより長い耐用年数が望まれている用途、または周知の膨張物質部材の反応速度が未だに十分に高くはない用途が存在する。サーモスタット弁は、流体導管を開閉し、サーモスタット混合弁は、混合流体が目標温度で供給されるように、2つの流体もしくは流体流を混合する。
【0003】
したがって本発明の課題は、従来技術に関して述べた問題を少なくとも部分的に解決し、特に、特に高い反応速度を有するサーモスタット混合弁用の膨張物質部材を提供することにある。さらに、膨張物質部材が特に高い反応速度を有する、衛生水栓用のサーモスタット混合弁が提供されることが望ましい。さらに、サーモスタット混合弁が特に高い反応速度を有する膨張物質部材を備えている衛生水栓が提供されることが望ましい。
【0004】
これらの課題は、独立特許請求項の特徴部に記載の膨張物質部材、サーモスタット混合弁および衛生水栓により解決される。本発明の別の有利な構成は、従属特許請求項に記載されている。指摘しておくと、従属特許請求項に個別に記載された特徴は、技術的に有意な任意の形式で互いに組み合わせられてよく、本発明の別の構成を規定する。さらに、特許請求項に記載した特徴を、明細書中でより詳細に明確に説明すると共に、本発明の別の好適な構成を示す。
【0005】
このためには、以下の群、すなわち:
-人造黒鉛、
-少なくとも350W/(m×K)の熱伝導率を有する高熱伝導黒鉛、
-窒化ホウ素
のうちの少なくとも1つの添加剤を含む膨張物質を有する、サーモスタット混合弁用の膨張物質部材が寄与する。
【0006】
膨張物質部材は、膨張物質部材の周囲温度の変化を、周囲温度の変化に比例した(調整)運動に変換可能な、特にアクチュエータおよび/または調整部材である。このために膨張物質部材は膨張物質を有しており、膨張物質は、特にワックス、固形パラフィン、アルコールまたはオイルまたは前記各材料の混合物であってよい。膨張物質は、膨張物質部材内に配置されており、これにより特に、膨張物質は、膨張物質部材の周囲から、少なくとも部分的に膨張物質部材の外壁によってのみ隔離されている。膨張物質部材の外壁は、特に少なくとも部分的に金属、例えば特殊鋼または銅もしくはこれらの合金から成っており、かつ/または20℃(摂氏)の温度において例えば少なくとも100W/(m×K)(ワット毎メートル毎ケルビン)の高い熱伝導率を有している。さらに外壁は、好適には0.2mm(ミリメートル)~2mmの壁厚さを有している。このような壁厚さは、機械的な安定性と熱的な特性(外壁の熱伝導率および熱質量)との間に良好な妥協案をもたらす、ということが判った。周囲温度が変化すると、膨張物質の体積が変化する。周囲温度が上昇すると、膨張物質は膨張するため、その体積は拡大することになり、周囲温度が低下すると、膨張物質は収縮するため、その体積は縮小することになる。膨張物質の体積の変化は、膨張物質部材の(調整)運動につながる。この(調整)運動を可能な限り遅延無しで行うために、膨張物質は、少なくとも1つの添加剤を有している。つまり、添加剤は膨張物質部材の反応速度を高める。添加剤は、膨張物質部材の製造時に膨張物質に特に添加される。このために添加剤は、特に粉末状および/または粒子状に形成されていてよい。このことは、膨張物質内での添加剤の(実質的に)一様な分散を可能にする。膨張物質は、膨張物質内の添加剤を「溶解状態に保つ」しかつ/または膨張物質内の添加剤の混合分離を防止する、別の、特に化学的な物質を含んでいてよい。
【0007】
添加剤は、人造黒鉛、少なくとも350W/(m×K)の熱伝導率を有する高熱伝導黒鉛および/または窒化ホウ素である。高熱伝導黒鉛は、天然の黒鉛から製造され、特に製造プロセス中、常に黒鉛として存在している黒鉛であってよい。さらに高熱伝導性黒鉛は、特に膨張黒鉛もしくは膨張グラファイトでなくてもよい。人造黒鉛は、天然のもしくは鉱山労働者により採掘された黒鉛とは異なり、黒鉛の形態では存在していない、炭素を多く含む原料から(人工的に)製造され、これらの原料は、特に黒鉛化可能な基本構造を有しているもしくは特に次いで人造黒鉛に変化させることができる。原料は、例えば石油コークス、ピッチコークスまたは無煙炭であってよい。原料は、空気を遮断した状態で特に2500℃~3000℃の温度で黒鉛化される。人造黒鉛は、特に99.5%~99.9995%の高さの炭素の純度もしくは質量分率を有している。さらに人造黒鉛は、好適には1700W/(m×K)~1850W/(m×K)の熱伝導率を有している。
【0008】
高熱伝導黒鉛は、特に極めて微細に粉砕された、炭素含有量が少なくとも98%、d50の粒径が約45μmの天然のフレーク黒鉛である。
【0009】
窒化ホウ素は、ホウ素-窒素化合物である。窒化ホウ素は、好適には少なくとも350W/(m×K)の熱伝導率を有している。窒化ホウ素は、高熱伝導黒鉛および人造黒鉛に比べ、とりわけ非導電性である、という点において優れている。このことは、特に非導電性の外壁を使用した場合に感電に対して高められたユーザの安全をもたらす非導電性のアクチュエータを提供することを可能にする。
【0010】
人造黒鉛、高熱伝導黒鉛および窒化ホウ素は、共通の特性として極めて高い熱伝導率を有している。
【0011】
したがって、膨張物質の熱伝導率ひいては膨張物質部材の反応速度は、添加剤により改良される。さらに膨張物質は、同じ反応速度において、周知の膨張物質部材に比べてより少ない質量分率の添加剤を含んでいてよい。このことは、膨張物質部材のコストを削減することができる。さらに膨張物質部材は、(周囲温度が例えば1℃変化した場合の)膨張物質の同じ体積変化において、より小さく形成され得るか、または同じ大きさの膨張物質部材において、(周囲温度が例えば1℃変化した場合に)膨張物質は、より大きな体積変化を有していてよい。
【0012】
膨張物質における少なくとも1つの添加剤の質量分率は、30%~80%、特に55%~80%、特に60%~70%であってよい。
【0013】
少なくとも1つの添加剤は、窒化ホウ素の場合、0.4μm(マイクロメートル)~550μmの平均粒径D50を有していてよい。
【0014】
少なくとも1つの添加剤は、人造黒鉛の場合、0.4μm(マイクロメートル)~550μmの平均粒径D50を有していてよい。
【0015】
少なくとも1つの添加剤は、高熱伝導黒鉛の場合、0.4μm(マイクロメートル)~550μmの平均粒径D50を有していてよい。
【0016】
膨張物質は、膨張物質部材のケーシング内に配置されていてよい。ケーシングは、特に少なくとも部分的に金属から成っておりかつ/または20℃(摂氏)の温度において例えば少なくとも100W/(m×K)(ワット毎メートル毎ケルビン)の高い熱伝導率を有している。さらにケーシングは、好適には0.5mm(ミリメートル)~2mmの壁厚さを有している。ケーシングは、特にポット状に形成されていてよい。
【0017】
膨張物質により、膨張物質部材の作業ピストンが駆動可能であってよい。このことは特に、膨張物質の体積変化が作業ピストンの特に線形の移動につながることを意味していてよい。作業ピストンは、特にケーシングの閉鎖部材のガイド開口内に可動に配置されている。膨張物質の体積が膨張もしくは拡大すると、作業ピストンは特に少なくとも部分的にガイド開口から外へ移動させられる。膨張物質の体積が収縮もしくは縮小した場合、作業ピストンは、特に戻しばねにより少なくとも部分的にガイド開口内へ移動可能であってよい。作業ピストンは、特に円筒状かつ/またはピン状に形成されている。
【0018】
膨張物質と作業ピストンとの間には、ダイヤフラムが配置されていてよい。ダイヤフラムは、特にフレキシブルに形成されていてよくかつ/またはケーシングとケーシングの閉鎖部材との間に張設されていてよい。ダイヤフラムにより、特に膨張物質が閉鎖部材のガイド開口を介してケーシングから流出する、ということが防止可能である。同時にダイヤフラムは、膨張物質による作業ピストンの変位を可能にする。
【0019】
また、本発明の1つの別の態様に従って提案する、衛生水栓用のサーモスタット混合弁は、少なくとも以下の、
-冷水と温水とを混合して混合水を形成するための混合室を備えたケーシング部材と、
-混合室内の冷水と温水との混合比を調整する調整部材と、
-調整部材を操作可能な本発明による膨張物質部材と
を有している。
【0020】
サーモスタット混合弁は、特に冷水温度を有する冷水と、温水温度を有する温水とを混合して所望の混合水温度を有する混合水を形成するために用いられる。このためにサーモスタット混合弁は、例えば弁ケーシングまたはカートリッジヘッド部材の形式で形成されたケーシング部材内またはケーシング部材に、混合室を有している。冷水は、少なくとも1つの冷水調整ギャップを介して混合室に供給可能でありかつ/または温水は、少なくとも1つの温水調整ギャップを介して混合室に供給可能である。冷水の冷水温度は、特に最高30℃(摂氏)、好適には最高25℃、好適には1℃~25℃、特に好適には5℃~20℃でありかつ/または温水の温水温度は、特に最高90℃、好適には25℃~90℃、特に好適には55℃~65℃である。さらにサーモスタット混合弁は、例えば調整スライダの形式で形成された調整部材を有している。調整部材は、混合室内の冷水と温水との混合比の調整に用いられる。このために調整部材は、特に可動に混合室内に配置されている。さらに、調整部材の移動により、特に少なくとも1つの冷水調整ギャップおよび/または少なくとも1つの温水調整ギャップの大きさを変更することができる。この場合、少なくとも1つの冷水調整ギャップの拡大は、特に少なくとも1つの温水調整ギャップの縮小につながり、反対に少なくとも1つの温水調整ギャップの拡大は、特に少なくとも1つの冷水調整ギャップの縮小につながる。さらにサーモスタット混合弁は、本発明による膨張物質部材を有している。膨張物質部材に基づき、調整部材は特に混合室内の混合水の混合水温度に応じて作動することができる。このために膨張物質部材の周りに、特に少なくとも部分的に混合水が流れることができるようになっている。さらなる詳細については、本発明による膨張物質部材の説明を参照されたい。
【0021】
また、本発明のさらに別の態様に従って記載する衛生水栓は、少なくとも水栓ケーシングと、本発明によるサーモスタット混合弁とを有している。
【0022】
衛生水栓は、特に洗面台、流し、シャワーまたは浴槽に必要に応じて混合水を供給するために用いられる。このために衛生水栓は、水栓ケーシングと、本発明によるサーモスタット混合弁とを有している。水栓ケーシングは、特に少なくとも部分的にプラスチックおよび/または例えば黄銅等の(鋳造)金属から成っている。水栓ケーシングは、支持体、例えば壁、作業台、流し、洗面台、浴槽またはシャワーに取付け可能であってよい。さらに衛生水栓は、混合水の目標混合水温度および/または混合水の取出し量を調整可能な操作部材を有していてよい。さらなる詳細については、本発明による膨張物質部材および本発明によるサーモスタット混合弁の説明を参照されたい。
【0023】
以下に、本発明ならびに技術環境を、図面に基づきより詳しく説明する。指摘しておくと、図面は本発明の特に好適な実施形態を示すものであるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。この場合、図面において同じ構成部材には同じ符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の温度における膨張物質部材を例示的に示す概略縦断面図である。
図2】第2の温度における膨張物質部材を例示的に示す概略縦断面図である。
図3】膨張物質部材を有するサーモスタット混合弁を備えた衛生水栓を例示的に示す概略図である。
【0025】
図1には、第1の温度における膨張物質部材1が縦断面図で示されている。膨張物質部材1は、ここではポット状に形成されたケーシング5を有している。ケーシング5内には膨張物質3が位置しており、膨張物質3は、ここではワックスであり、添加剤4を含んでいる。添加剤4は、粉末状もしくは粒子状であり、膨張物質3と混合されている。添加剤4は、人造黒鉛、少なくともXS/mの熱伝導率を有する高熱伝導黒鉛および/または窒化ホウ素であってよい。さらに膨張物質部材は、フレキシブルなダイヤフラム7により膨張物質3から隔離された作業ピストン6を有している。作業ピストン6は、閉鎖部材14のガイド開口13内でガイドされており、これにより作業ピストン6を、膨張物質3によりガイド開口13内で覆うことができる。
【0026】
図2には、第2の温度における膨張物質部材1が縦断面図で示されている。第2の温度は、第1の温度よりも高いため、膨張物質3は、図1に示した状態に比べて膨張しており、作業ピストン6をガイド開口13から所定の距離だけ押し退けている。温度が下がると、膨張物質3の体積が収縮するため、作業ピストン6を、例えば戻しばね(ここには図示せず)を介して戻すことができる。
【0027】
図3には、例えばシャワーに使用可能な衛生水栓8が縦断面図で示されている。衛生水栓8は、図1および図2に示した膨張物質部材1を有するサーモスタット混合弁2と、弁15とを備えた水栓ケーシング12を有している。水栓ケーシング12には、冷水供給部16を介して冷水を供給可能でありかつ温水供給部17を介して温水を供給可能である。冷水および温水は、水栓ケーシング12内に形成された複数の液体通路を介してサーモスタット混合弁2に供給可能である。冷水と温水とは、サーモスタット混合弁2により混合可能であり、これにより、所定の混合水温度を有する混合水が形成される。サーモスタット混合弁2は、(実質的に)管状に形成されておりかつサーモスタット混合弁2の長手方向軸線18もしくは衛生水栓8の水栓ケーシング12に沿って延在するケーシング部材9を有している。サーモスタット混合弁2のカートリッジヘッド部材19内には、少なくとも1つの温水流入部20と、少なくとも1つの冷水流入部21とが形成されている。ここに示すサーモスタット混合弁2の実施形態は、カートリッジヘッド部材19の長手方向軸線18を中心とした周方向に分配されて配置された複数の温水流入部20と複数の冷水流入部21とを有している。温水は温水流入部20を介して、かつ冷水は冷水流入部21を介して、サーモスタット混合弁2の混合室10内に導入可能である。つまり混合室10は、水の流れ方向において温水流入部20および冷水流入部21の下流側に配置されている。混合室10内で温水と冷水とを混合し、所定の混合水温度を有する混合水を形成することができる。水の流れ方向において混合室10の下流側には混合水流出部22が配置されており、混合水温度を有する混合水は、混合水流出部22を通ってサーモスタット混合弁2から流出することができる。混合水流出部22から混合水を弁15に供給することができ、弁15の弁体23により、衛生水栓8からの混合水の供給量を制御することができる。
【0028】
混合水の混合水温度は、温水と冷水との混合比ならびに温水の温水温度と冷水の冷水温度との混合比により決定される。混合水温度を調整するために、サーモスタット混合弁2は操作部材24を有している。操作部材24は、操作把持部25を有しており、操作把持部25は、過負荷ユニット27の調整ナット26に相対回動不動に結合されている。つまり、操作把持部25は調整ナット26と共に、ここでは長手方向軸線18に相応する回転軸線28を中心として回転可能である。操作把持部25を回転させると、ばねスリーブ29が軸線方向30に、すなわち長手方向軸線18に対して平行に変位させられる。ばねスリーブ29の軸線方向30への移動は、膨張物質部材1に伝達され、膨張物質部材1もやはり、調整スライダの形式の調整部材11を軸線方向30に移動させる。軸線方向30における調整部材11の位置に応じて、調整部材11は温水調整ギャップ(ここでは識別不能)と冷水調整ギャップ(ここでは識別不能)とを交互に開閉する。調整部材11の位置に応じて、相応する量の温水と冷水とが温水調整ギャップと冷水調整ギャップとを通ってサーモスタット混合弁2に導入され、温水と冷水とが混合されて、相応する混合水温度を有する混合水が形成される。図1および図2に示した膨張物質部材1の膨張物質3により、調整部材11は、やはり図1および図2に示した膨張物質部材1の作業ピストン6を介して操作可能であり、これにより混合水は、(実質的に)一定の混合水温度に保たれる。例えば過度に多量の温水または過度に少量の冷水がサーモスタット混合弁2に流入すると、膨張物質部材1の膨張物質3が温められて膨張し、これにより膨張物質部材1は、調整部材11を軸線方向30で混合水流出部22に向かって変位させ、その結果、温水調整ギャップは縮小されかつ冷水調整ギャップは拡大される。つまり、より少ない温水と、より多くの冷水とが混合室10に流入することになる。これに対して、例えば過度に多量の冷水または過度に少量の温水がサーモスタット混合弁2に流入すると、膨張物質部材1の膨張物質3が収縮し、これにより膨張物質部材1は、調整部材11を混合水流出部22から離れる方向に移動させ、その結果、温水調整ギャップは拡大されかつ冷水調整ギャップは縮小される。つまり、より多くの温水と、より少ない冷水とが混合室10に流入することになる。
【0029】
本発明により、膨張物質部材の特に高い反応速度が達成可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 膨張物質部材
2 サーモスタット混合弁
3 膨張物質
4 添加剤
5 ケーシング
6 作業ピストン
7 ダイヤフラム
8 衛生水栓
9 ケーシング部材
10 混合室
11 調整部材
12 水栓ケーシング
13 ガイド開口
14 閉鎖部材
15 弁
16 冷水供給部
17 温水供給部
18 長手方向軸線
19 カートリッジヘッド部材
20 温水流入部
21 冷水流入部
22 混合水流出部
23 弁体
24 操作部材
25 操作把持部
26 調整ナット
27 過負荷ユニット
28 回転軸線
29 ばねスリーブ
30 軸線方向
図1
図2
図3
【国際調査報告】