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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ペプチド合成およびそのシステム
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/04 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
C07K1/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022556278
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 SE2021050229
(87)【国際公開番号】W WO2021188032
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】2050293-6
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522368031
【氏名又は名称】ペプティシステムズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シラード,ランナー
(72)【発明者】
【氏名】イスラエルソン,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】テデバーク,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ホルムバーグ,ラース
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA20
4H045AA40
4H045BA10
4H045BA11
4H045BA12
4H045EA60
4H045FA33
4H045GA21
(57)【要約】
固相ペプチド合成に関連するプロセスおよびシステムが記載されている。このプロセスには、樹脂を充填したカラムへのアミノ酸の循環付加を含むフロースループロセスが含まれ、各サイクルは、活性化されたアミノ酸混合物を提供するためのアミノ酸と1種以上の試薬との組み合わせを含み、カラムを通過させる前に、アミノ酸(複数可)に加熱を行い、アミノ酸を、樹脂で充填されたカラムに少なくとも1回再循環させる。こうしたプロセスのためのシステムも記載されている。
【選択図】図2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相ペプチド合成(SPPS)のためのフロースループロセスであって、前記プロセスは、樹脂を充填したカラムへの少なくとも1つのアミノ酸の循環付加を含み、各サイクルは、前記カラムに通過させるアミノ酸混合物を提供するために、アミノ酸(複数可)と1種以上の試薬との組み合わせを含み、方法は、
前記アミノ酸混合物を前記カラムに通過させる前に加熱し、
前記アミノ酸混合物を、樹脂を充填した前記カラムを通過させ、かつ
前記アミノ酸混合物を、樹脂が充填された前記カラムに、少なくとも1回再循環させることを含み、
それにより、各サイクルにおいて、前記混合物からの少なくとも1つのアミノ酸を、前記樹脂に固定化された少なくとも1つのアミノ酸に連結させることによって、ペプチドが合成される、プロセス。
【請求項2】
前記アミノ酸(複数可)が、個別に画定された混合チャンバ内で前記試薬(複数可)と組み合わされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記アミノ酸(複数可)が、前記システムのチューブ内で前記試薬(複数可)と組み合わされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
樹脂を充填した前記カラム中で前記アミノ酸(複数可)が前記試薬(複数可)と組み合わされる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
アミノ酸の当量数が、3以下、例えば2以下である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記加熱されたアミノ酸混合物が、前記固定化された成長ペプチドの少なくとも99%との接触が可能になる流速および容量で前記カラムを通過する、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記混合チャンバが前記サイクル間で空にされて清浄され、前記清浄の進行が、UV/可視/IR光検出器、または蛍光検出器、または導電率検出器、またはその両方によって監視される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
前記試薬が、少なくとも1種の活性化剤を含み、前記アミノ酸が、前記チューブまたは前記カラム内でインライン活性化される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記試薬が少なくとも1つの活性化剤を含み、前記カラム樹脂が脱ブロックされる、かつ/または洗浄される間、前記アミノ酸が前記混合チャンバ内で予備活性化される、請求項3または8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記混合チャンバの流出が、ガス気泡検出を使用して監視される、請求項2、7、または9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記カラムが断熱されている、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カラム中の樹脂を含まない容量が、前記カラム容量の約1%を超える、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記プロセスが直線的に拡張可能である、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記カラム内の前記ペプチド合成の進行が、少なくとも1つの検出器を使用して連続的に監視される、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記検出器が、UV/Vis光検出器、蛍光検出器、NIR検出器、質量分析検出器または導電率検出器である、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記検出器が、UV/Vis光検出器であり、少なくとも4つの異なる波長で、光を同時に検出できる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記プロセスが、ソフトウェア制御リアルタイム条件付きモニタリングを使用し、プロセス分析技術(PAT)を使用して、重要品質属性(CQA)に影響を与える重要プロセスパラメータ(CPP)が測定できるようになる、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、前記アミノ酸(複数可)を1種以上の試薬と組み合わせる前に、またはその間に、前記カラム内に充填された前記樹脂の湿潤および任意により平衡化が行われる、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記プロセスが、自動化された取り扱いを含むカップリング中の潜在的な圧力上昇およびその後の圧力低下などの重要パラメータのソフトウェア制御リアルタイム条件付きモニタリングを使用する、先行請求項のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
フロースルー固相ペプチド合成(SPPS)のためのシステム(100)であって、前記システムが、樹脂が充填された少なくとも1つのカラム(101)、少なくとも1つのポンプ(102)、アミノ酸および試薬のリザーバ(104)、少なくとも1つの温度調節デバイス(103)、少なくとも1つの温度センサ(105)、少なくとも1つの検出器(106)、少なくとも1つのプロセッサ(300)、および少なくとも1つのガス(気泡検出器)(107)を備え、チューブ(108)は、前記リザーバ(104)を前記カラム(101)に接続し、バルブ(109a~e)が、前記システム(100)内の流れを方向付けるために配置され、前記プロセッサ(300)は、少なくとも前記ポンプ(102)、前記バルブ(109a~e)、前記検出器(106)、および前記温度調節デバイス(103)と通信接続されている、システム。
【請求項21】
少なくとも2つのカラム(101)またはそれ以上のカラム、例えば10カラムを備える、請求項19に記載のシステム(100)。
【請求項22】
前記検出器(106)が、UV/Vis光検出器、蛍光検出器、NIR検出器、質量分析検出器、および導電率検出器から選択される、請求項19または20に記載のシステム(100)。
【請求項23】
前記カラム(101)が断熱されている、請求項19~21のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項24】
個別に画定された混合チャンバ(200)をさらに備える、請求項19~22のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項25】
前記カラム(101)内の樹脂を含まない容量が約1%を超える、請求項19~23のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項26】
前記システム(100)が、少なくとも1つの前記リザーバ(104)内に保護ガスを含む、請求項19~24のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項27】
請求項20に記載のシステム(100)であって、前記システム(100)が、バルブ(109a~f)、流れ切換バルブ(120a~c)、温度調節デバイスバイパス(125)、カラムバイパス(126)、廃棄物出口(110)、個別に画定された混合チャンバ(200)をさらに備え、前記第1のバルブ(109a)が前記リザーバ(104)の下流に流体連通し、前記第1のバルブ(109a)の下流に配置された前記第1の流れ切換バルブ(120a)と流体連通して配置されており;
前記第1の流れ切換バルブ(120a)は、前記ポンプ(102)と流体連通しており;
前記第2の流れ切換バルブ(120b)は、前記第1の流れ切換バルブ(120a)の下流に流体連通して配置され、前記第2の流れ切換バルブ(120b)は、前記温度調節デバイス(103)および前記温度調節デバイスバイパス(125)と流体連通しており;
前記温度調節デバイス(105)は、前記第2の流れ切換バルブ(120b)の下流に流体連通して配置されており;前記第3の流れ切換バルブ(120c)は、温度調節デバイス(103)の下流に流体連通して配置されており;前記第2のバルブ(109b)は、前記第3の流れ切換バルブ(120c)の下流に流体連通して配置されており、前記第2のバルブは、前記カラムバイパス(126)および前記カラム(101)の上流に流体連通して配置されており;
前記カラム(101)は、前記第3のバルブ(109c)の上流に流体連通して配置されており、前記第3のバルブ(109c)は、前記カラムバイパス(126)の下流に流体連通しており;
前記第3のバルブ(109c)は、前記検出器(106)の上流に流体連通して配置されており;
前記検出器(106)は、前記第4のバルブ(109d)の下流に配置され、前記第4のバルブ(109d)は、前記廃棄物出口(110)および前記個別に画定された混合チャンバ(200)と流体連通して配置され、前記第5のバルブ(109e)の下流に流体連通して配置され;前記第5のバルブ(109e)は、前記個別に画定された混合チャンバ(200)と流体連通して配置されており;
前記ガス気泡検出器(107)は、前記個別に画定された混合チャンバ(200)の上流に流体連通して配置され、かつ前記第5のバルブ(109e)の下流に配置されており;
前記第5のバルブ(109e)は、前記第1のバルブ(109a)の下流に流体連通して配置されており;
前記チューブ(108)は、前記バルブ(109a~e)、前記流れ切換バルブ(120a~c)、前記リザーバ(104)、前記カラム(101)、前記温度調節デバイス(103)、前記ポンプ(102)、前記温度センサ(105)、前記検出器(106)、前記ガス気泡検出器(107)、前記廃棄物出口(110)、および前記個別に画定された混合チャンバ(200)を互いに接続し、
前記プロセッサ300は、前記バルブ(109a~e)、前記流れ切換バルブ(120a~c)、前記温度調節デバイス(103)、前記ポンプ(102)、前記温度センサ(105)、前記検出器(106)、および前記ガス気泡検出器(107)と通信連通している、システム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステム(100)を使用して、フロースルー固相ペプチド合成を実施するための方法(400)であって、前記方法(400)が、以下のステップ:
-(401)混合ステップ:前記システム(100)は、アミノ酸、試薬(複数可)、溶媒、および可能な添加剤を含む合成液が、前記リザーバ(104)から前記システム(100)に流れるように、前記第1のバルブ(109a)を配置するように配置され、前記システム(100)は、少なくとも前記第1の流れ切換バルブ(120a)、前記第2の流れ切換バルブ(120b)、前記第3の流れ切換バルブ(120c)、前記第2のバルブ(109b)、前記第3のバルブ(109c)、前記第4のバルブ(109d)、および前記第5のバルブ(109e)を制御することによって、前記温度調節デバイスバイパス(125)および前記カラムバイパス(126)を介して、前記個別に画定された混合チャンバ(200)に前記合成液を流すように配置されている;
-(402)活性化ステップ:ステップ(401)において、前記個別に画定された混合チャンバ(200)が、前記個別に画定された混合チャンバ(200)に入った前記アミノ酸を活性化するように配置され、前記検出器(106)が、前記活性化ステップ(402)を監視するように配置されている;
-(403)カップリングステップ:前記システム(100)は、少なくとも前記第2のバルブ(109b)および前記第3のバルブ(109c)を制御することにより、前記加熱されたアミノ酸を前記カラム(101)上を通すように配置され、前記システム(100)は、前記バルブ(109a~e)および前記流れ切換バルブ(120a~c)を配置することによって、前記カラム(101)で少なくとも1回前記アミノ酸を再循環させるように配置されている;
-(404)キャッピングステップ:前記システム(100)が、少なくとも前記第1のバルブ(109a)、前記第2のバルブ(109b)、前記第3のバルブ(109c)、前記第1の流れ切換バルブ(120a)、および前記第2の流れ切換バルブ(120b)を制御することによって、前記カラム(101)にキャッピング溶液を提供するように配置されている;
-(405)脱ブロッキングステップ:前記システム(100)は、少なくとも前記第1のバルブ(109a)、前記第2のバルブ(109b)、前記第3のバルブ(109c)、前記第1の流れ切換バルブ(120a)、および前記第2の流れ切換バルブ(120b)を配置することによって、脱ブロッキング溶液を前記リザーバ(104)から前記カラム(101)へ提供するように配置されている;を含み、
前記ステップ(401)から(405)は、少なくとも1回繰り返され、ステップ(404)の前または後、ステップ(405)の後に、少なくとも洗浄ステップが実施され、前記プロセッサ(300)が、前記バルブ(109a~e)、前記ポンプ(102)、前記検出器(106)、前記ガス気泡検出器(107)、前記流れ切換バルブ(120a~c)、および前記温度調節デバイス(103)と通信連通し、制御するように配置されている、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状態のペプチド合成のためのプロセスおよびシステムに関する。
【0002】
緒言
ペプチドは、アミド結合によって連結されたアミノ酸残基の短鎖であり、通常は、2~50のアミノ酸を含む。アミノ酸は、すべての生物の基本的な構成ブロックであり、ペプチドおよびタンパク質の両方の前駆体である。50モノマーよりも長いアミノ酸残基の鎖は、通常、タンパク質と呼ばれる。ペプチドは、そのアミノ酸配列および他の構造的特徴に応じて多くの生物学的機能を有するため、非常に興味深いものであり、広く使用されている。ペプチドの世界市場は、急速に成長している。これは主に、多くの種類の疾患を治療するための医薬品として、また化粧品中の生理活性成分として、ペプチドの用途が増加しているためである。さらに、ペプチドの応用は、薬物送達、抗生物質、医療機器中の活性成分、および殺虫剤、植物発育の調節剤などの農業での使用など、新しい分野に拡大している。したがって、ペプチドに対する市場の需要は増加しており、それらを合成的に大量に産生する必要性が生じている。このため、ペプチド合成をより効率的で、安価で、環境に優しいものにするために、この分野での新しい開発が必要である。
【0003】
ペプチドの合成は、通常、成長ペプチド鎖にアミノ酸残基を1つずつ付加する繰り返しのステップを含む。単一のアミノ酸を付加する代わりに、ペプチドを成長ペプチド鎖に1つずつ付加することもできる。ペプチドは、液相ペプチド合成(LPPS)によって、固相アプローチ(固相ペプチド合成、SPPS)を使用することによって、または収束もしくはハイブリッド技術としても知られている両方の方法を組み合わせることによって、溶液中で合成できる。SPPSでは、成長ペプチド鎖は、通常、固相支持体のC末端に固定化される。場合によっては、N末端またはアミノ酸側鎖を樹脂に固定化できる。N末端へのカップリング反応により、新規アミノ酸残基が付加される。アミノ酸側鎖およびそのN末端アミノ基は通常、意図しない反応を防ぐために保護基によって化学的にブロックされる。各ステップにおいて、成長ペプチドのN末端が選択的に脱保護され、これにより、次のアミノ酸の付加が可能になる。最後に、ペプチドと支持体との間の化学結合を切断することによる化学的切断によって、ペプチドが固体支持体から放出される。ペプチドのさらなる取り扱いには、典型的には、単離およびその後の精製が含まれる。切断プロセス中に、保護基は、通常、アミノ酸側鎖からも除去される。しかし、これは、典型的には、収束またはハイブリッドアプローチにおいて、側鎖保護ペプチドが必要な場合ではない。
【0004】
SPPSは、例えばバッチ反応器またはフロースルー反応器内で行うことができる。バッチ反応器は、より長いペプチドの合成に最も広く使用されている技術のうちの1つになっている。しかし、フロースルー技術と比較して、バッチ反応器での合成には、各カップリングのリードタイムが長くなる、スケーラビリティの最適化に時間を要する、プロセス分析技術(PAT)の制限による溶媒および試薬が高頻度で過剰使用されるなどの欠点を伴う。また、バッチ反応器は、各ステップの進行状況をリアルタイムで監視する機能を備えていない。バッチ反応器とは対照的に、システム内での連続的な液体の流れにより、インラインで接続できる様々な種類の検出器およびセンサを使用することによって、プロセスを常に監視できる。フロースルー反応器は、一般に、反応速度が速い、溶媒および試薬の消費量が少ないという利点を有し、かつ反応をリアルタイムで監視できる。
【0005】
米国特許第9,169,287 B2号は、SPPSを迅速かつ高収率で実施するためのプロセスを開示している。このプロセスは、アミノ酸の温度が少なくとも約1℃上昇するようにアミノ酸のストリームを加熱すること、および加熱されたアミノ酸を、固体支持体上に固定化された複数のペプチドに曝露することを含み、加熱ステップは、加熱したアミノ酸をペプチドに曝露する前の約30秒以内に実施する。
【0006】
Tedebark U.ら(30th European Peptide Symposium,Helsinki,Finlandia Hall,2008)は、自動化されたSPPSのプロセスおよびシステムについて開示している。このシステムには、4つのポンプ、予備活性化チャンバ(活性化前温度制御機能など)、カラム、UV検出器、および導電率検出器が含まれる。
【0007】
米国特許第7,902,488(B2)号では、マイクロ波支援SPPS法によるペプチドの加速合成のための機器およびプロセスについて開示している。この機器は、マイクロ波キャビティ、マイクロ波キャビティと連通するマイクロ波源、マイクロ波放射透過材料で形成されたキャビティ内のカラム、カラム内の固相ペプチド支持樹脂、カラム内で固体支持樹脂を維持するためのそれぞれのフィルタ、開始組成物をカラムに添加するための第1の通路、カラムから組成物を除去するための第2の通路、および組成物をカラムから第3の通路に循環させて、またカラムに戻すための第3の通路を備える。
【0008】
米国特許第4,668,476号は、単一カップリングのみを使用して、長さが50アミノ酸以下の高純度のポリペプチドを自動的に構築するための装置を開示している。この装置は、アミノ酸のそれぞれを活性化するための共通の容器を有する、保護されたアミノ酸を一度に1種類受け取るための活性化システムを備える。
【0009】
米国特許第6,028,172号は、固相合成反応器システムおよびこの反応器を操作する方法について開示している。反応器システムは、ハウジング内の軸を中心にして回転可能なバスケットと、ハウジングに流体を送達させ、ハウジングから流体を収集する受容部とを備える。バスケットは、ペプチド合成のための樹脂ケーキが形成される穴の開いた側壁を有する。反応器および受容部により、溶液が循環するループまたは回路が形成される。
【0010】
先行技術では、プロセス効率、性能、環境への影響、および持続可能なペプチド産生に関する要件を満たすという点で、改善されたSPPSプロセスおよびシステムが依然として必要とされている。例えば、合成中のアミノ酸当量の量の減少の使用、洗浄ステップ中の溶媒使用量の減少が可能になる改善されたSPPSプロセスおよびシステムが必要とされる。この分野での別の必要性は、ラボスケールからパイロットおよびプロセススケール、また最終的には商業製造までのSPPSプロセスのスケーラビリティに関連する。
【発明の概要】
【0011】
SPPSプロセスおよび関連システムについて一般的に記載する。
【0012】
本発明の一態様では、樹脂を充填したカラムへの少なくとも1つのアミノ酸の循環的付加を含む、固相ペプチド合成(SPPS)のためのフロースループロセスが存在し、本プロセスでは、各サイクルが、カラムを通過するアミノ酸混合物を提供するためのアミノ酸(複数可)を1種以上の試薬と組み合わせることを含み、この方法は、カラムを通過させる前にアミノ酸混合物に加熱を行うことを含み、アミノ酸混合物は、樹脂を充填したカラムを通過させ、また、樹脂を充填したカラムに少なくとも1回再循環させ、それにより、各サイクルにおいて、混合物からの少なくとも1つのアミノ酸を、樹脂に固定化された少なくとも1つのアミノ酸に連結させることによって、ペプチドが合成される。
【0013】
本発明の別の態様では、フロースルー固相ペプチド合成(SPPS)のためのシステムが存在し、このシステムは、樹脂が充填された少なくとも1つのカラム、少なくとも1つのポンプ、アミノ酸および試薬用のリザーバ、少なくとも1つの温度調節デバイス、少なくとも1つの温度センサ、少なくとも1つの検出器、および少なくとも1つのガス(気泡)検出器を備え、チューブにより、リザーバがカラムに接続され、バルブは、システム内の流れを方向付けるために配置される。プロセッサは、少なくともポンプ、バルブ、検出器、および温度調節デバイスと通信接続している。
【0014】
本発明の一例では、バルブ、流れ切換バルブ、温度調節デバイスバイパス、カラムバイパス、廃棄物出口、および個別に画定された混合チャンバを備える、本発明によるシステムが存在する。第1のバルブは、リザーバの下流に流体連通して配置され、第1のバルブの下流に配置された第1の流れ切換バルブと流体連通している。第1の流れ切換バルブは、ポンプと流体連通している。第2の流れ切換バルブは、第1の流れ切換バルブの下流に流体連通して配置されて、第2の流れ切換バルブは、温度調節デバイスおよび温度調節デバイスのバイパスと流体連通している。温度調節デバイスは、第2の流れ切換バルブの下流に流体連通して配置されている。第3の流れ切換バルブは、温度調節デバイスの下流に流体連通して配置されている。第2のバルブは、第3の流れ切換バルブの下流に流体連通して配置され、第2のバルブは、カラムバイパスおよびカラムの上流に流体連通して配置されている。カラムは、第3のバルブの上流に流体連通して配置されており、第3のバルブは、カラムバイパスの下流に流体連通している。第3のバルブは、検出器の上流に流体連通して配置されている。検出器は、第4のバルブの下流に配置され、第4のバルブは、廃棄物出口および個別に画定された混合チャンバと流体連通し、第5のバルブの下流に流体連通して配置されている。第5のバルブは、個別に画定された混合チャンバと流体連通するように配置される。ガス気泡検出器は、個別に画定された混合チャンバの上流に流体連通して配置され、第5のバルブの下流にある。第5のバルブは、第1のバルブの下流に流体連通して配置されている。チューブは、バルブ、流れ切換バルブ、リザーバ、カラム、温度調節デバイス、ポンプ、温度センサ、検出器、ガス気泡検出器、廃棄物出口、および個別に画定された混合チャンバを相互に接続する。プロセッサは、バルブ、流れ切換バルブ、温度調節デバイス、ポンプ、温度センサ、検出器、およびガス気泡検出器と通信連通している。
【0015】
本発明の一例では、本発明によるシステムを使用してフロースルー固相ペプチド合成を行うための方法があり、この方法は、以下のステップを含む:
【0016】
-混合ステップ:システムは、アミノ酸、試薬、溶媒(複数可)、および可能な添加物を含む合成液が、リザーバからシステムに流れるように、第1のバルブを配置するように配置される。このシステムは、少なくとも第1の流れ切換バルブ、第2の流れ切換バルブ、第3の流れ切換バルブ、第2のバルブ、第3のバルブ、第4のバルブ、第5のバルブを制御することによって、温度調節デバイスバイパスおよびカラムバイパスを介して、個別に画定された混合チャンバに合成液を流すように配置されている。
【0017】
-活性化ステップ:個別に画定された混合チャンバは、混合ステップにおいて個別に画定された混合チャンバに入ったアミノ酸を活性化するように配置される。検出器は、活性化ステップを監視するように配置される。
【0018】
-カップリングステップ:システムは、少なくとも第2のバルブおよび第3のバルブを制御することにより、加熱されたアミノ酸をカラム上を通すように配置される。このシステムは、バルブおよび流れ切換バルブを配置することによって、カラムにアミノ酸を少なくとも1回再循環させるように配置される。
【0019】
-キャッピングステップ:システムは、少なくとも第1のバルブ、第2のバルブ、第3のバルブ、第1の流れ切換バルブ、および第2の流れ切換バルブを制御することによって、カラムにキャッピング溶液を提供するように配置される。
【0020】
-脱ブロッキングステップ:システムは、少なくとも第1のバルブ、第2のバルブ、第3のバルブ、第1の流れ切換バルブ、および第2の流れ切換バルブを配置することによって、リザーバからカラムに脱ブロッキング溶液を提供するように配置される。
【0021】
混合、活性化、カップリング、キャッピング、および脱ブロッキングのステップは、少なくとも1回繰り返される。キャッピングステップの前または後に、少なくとも洗浄ステップが実施される。プロセッサは、バルブ、ポンプ、検出器、ガス気泡検出器、流れ切換バルブ、および温度調節デバイスと通信連通し、それらを制御するように配置される。
【0022】
以下に、本発明は、非限定的な例および従属する特許請求の範囲によって、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明によるシステムの一例の概略図である。
図2】本発明によるシステムの一例の概略図である。
図3a】本発明によるシステムの一例の概略図である。
図3b】本発明によるシステムの一例の概略図である。
図4】本発明の一例のフローチャートを示す図である。
図5】本発明の一例のペプチドのRP-HPLC分析クロマトグラムを示す図である。
図6】本発明の一例のペプチドのRP-HPLC分析クロマトグラムを示す図である。
図7】本発明の一例のペプチドのRP-HPLC分析クロマトグラムを示す図である。
図8】本発明の一例のペプチドのRP-HPLC分析クロマトグラムを示す図である。
図9】本発明の一例のペプチドのRP-HPLC分析クロマトグラムを示す図である。
【0024】
定義
本特許出願では、以下の用語が、説明および特許請求の範囲全体にわたって使用され、定義されている。
【0025】
-「アミノ酸」は、本分野では従来の意味で使用され、少なくとも1つのアミノ基(例えば、-NH、-RNH)および1つのカルボキシル基(例えば、-COOH、-COR’、式中、R’=OR、NRH、または-NR)またはカルボキシル誘導体(例えば、-COOR)を含む有機化合物を指す。
【0026】
-「ペプチド」は、本分野における従来の意味で使用され、アミド結合を介して連結されている2つ以上のアミノ酸(同じまたは異なる)を指す。
【0027】
-本明細書で使用される「アミノ酸混合物」は、アミノ酸(複数可)および本明細書で使用される試薬(複数可)などの液体であり、「アミノ酸」は、修飾されていても修飾されていなくてもよく、任意により予備活性されていてもよく、アミノ酸混合物は、ペプチドも含み得る。
【0028】
-「成長ペプチド」との接触には、樹脂上に固定化されたペプチド鎖との接触またはアミノ酸との接触、およびアミノ酸を樹脂に付加する第1のステップが含まれる。
【0029】
-「SPPS」は、固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)の略語であり、本分野における従来の意味で使用される。
【0030】
-「試薬」は、カップリング試薬、脱ブロッキング試薬、添加剤、塩基、および合成のために使用される他の試薬の意味で使用される。
【0031】
-「直線的に拡張可能」とは、より小さいスケールまたはより大きいスケールでの合成条件を別のスケールサイズに移行して、同様の合成結果を得ることができる合成プロセスの意味を有する。
【0032】
-「PAT」は、プロセス分析技術(Process Analytical Technology)の略語であり、本分野では、従来の意味で使用される。
【0033】
-「CPP」は、重要プロセスパラメータ(Critical Process Parameter)の略語であり、本分野における従来の意味で使用される。
【0034】
-「CQA」は、重要品質属性(Critical Quality Attribute)の略語であり、本分野における従来の意味で使用される。
【0035】
-「条件付きしきい値」は、前のステップ(複数可)を終了させ、次のステップを開始できるようにするために、制御ソフトウェアに設定された少なくとも1つのパラメータの事前に定義した値の意味で使用される。
【0036】
-「フロースルー」ペプチド合成は、バッチプロセスとは対照的に、試薬を含む合成液をカラムに通過させるペプチド合成プロセスを指す。
【0037】
-「再循環」ペプチド合成とは、合成液が、カラムを少なくとも2回通過するように、合成液がシステム内で少なくとも1回再循環する一種のフロースループロセスであるプロセスを指す。
【0038】
-「ハンドル」は、本分野における従来の意味で使用され、任意の誘導体の固相合成を容易にするために、任意の誘導体の付着に使用される樹脂上の任意の官能基を指し、非限定的な例としては、固体支持体/樹脂、例えばアミンへのリンカーの付着、次の、例えばアミノ酸から固体支持体/樹脂リンカーハンドルへの付着が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0039】
SPPSプロセスおよび関連システムについて一般的に記載する。SPPSは、固体支持体(樹脂)に固定化されたアミノ酸またはペプチドにアミノ酸残基を付加することによってペプチドを生成する既知のプロセスである。
【0040】
本発明の第1の態様では、樹脂を充填したカラムへの少なくとも1つのアミノ酸の循環付加を含む固相ペプチド合成(SPPS)のフロースループロセスが存在し、各サイクルは、カラムを通過するアミノ酸混合物を提供するためにアミノ酸(複数可)と1種以上の試薬との組み合わせを含む。この方法は、樹脂を充填したカラムを通過させる前にアミノ酸混合物に加熱を行い、樹脂を充填したカラムにアミノ酸混合物を通過させることを含み、それにより、各サイクルにおいて、混合物からの少なくとも1つのアミノ酸を、樹脂に固定化された少なくとも1つのアミノ酸に連結させることによって、ペプチドが合成される。第1の態様の一例では、アミノ酸混合物は、樹脂を充填したカラムに少なくとも1回再循環させる。第1の態様の一例では、アミノ酸(複数可)は、個別に画定された混合チャンバ内の試薬(複数可)と組み合わされる。第1の態様の一例では、アミノ酸(複数可)は、システムのチューブ内で試薬(複数可)と組み合わされる。第1の態様の一例では、アミノ酸(複数可)は、樹脂を充填したカラム内で試薬(複数可)と組み合わされる。
【0041】
本発明の第1の態様では、SPPSプロセスは、アミノ酸残基が固体支持体(樹脂)または固定化アミノ酸もしくは固定化ペプチドに付加されるサイクルを含む。当業者によって理解されるように、固定化されたアミノ酸またはペプチドに付加されるアミノ酸(複数可)は、単一のアミノ酸、または好適なサイズのペプチドの末端であり得る。したがって、本発明は、合成において単一のアミノ酸を付加することに限定されない。
【0042】
本発明によるプロセスにおいて、アミノ酸およびペプチドは、カラム中の床として充填された樹脂粒子から構成される支持体などの多孔性固体支持体上に固定化される。したがって、本発明は、充填床を使用するプロセスに関する。マイクロポーラス樹脂、メソポーラス樹脂、およびマクロポーラス樹脂など、任意の好適な種類の樹脂を使用して、ペプチドを固定化することができる。具体的には、そのような樹脂は、架橋ポリマーなどの合成ポリマーから調製することができ、例えば、スチレン-DVB、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリレート、およびポリアクリルアミンなどのポリスチレン;またはそれらの任意の組み合わせ;またはアガロースからなる群から選択され得る天然ポリマー;セルロースおよび炭水化物からなる群から選択される任意のポリマーであり得る。有利には、本発明によるプロセスは、ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンから構成される多孔性粒子が充填された床を使用する。そのような粒子は、商業的供給源から容易に入手でき、当業者は、標準的方法を使用して適切に充填された床を提供することができる。
【0043】
当業者が理解するように、本明細書で使用される「アミノ酸」には、単一のアミノ酸、および1つ以上の他の実体に結合されているアミノ酸が含まれる。したがって、別段の指定がない限り、本明細書で使用される「アミノ酸」は、例えば、ペプチドまたは小タンパク質の一部であり得る。
【0044】
各サイクルは、少なくとも次のステップを含む:
-組み合わせステップ:アミノ酸またはペプチドを1種以上の試薬と組み合わせる。試薬の例は、当業者において公知である。例は、「Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis-A practical approach」Chan W.C.,and White P.D.(eds.),Oxford University Press,2000など、様々な文献にも見ることができる。この組み合わせは、別の混合チャンバまたはシステムのチューブ内のいずれか、またはカラム内で直接生じ得る。アミノ酸は、カラムを通過する前に、1種以上の試薬と共にシステム内で加熱される。
【0045】
-活性化ステップ。アミノ酸またはペプチドは、例えば以下の非限定的な方法で、SPPSシステム内で活性化することができる:
a)予備活性化。すなわちアミノ酸が個別に画定された混合チャンバ内で活性化されることによる、または
b)インライン活性化。すなわち、システムのチューブ内でアミノ酸が活性化されることによる。インライン活性化は、カラムに到達する前にまたはカラム内で生じ得る。
【0046】
アミノ酸は、活性化されているものを購入することもでき、その場合、活性化されたアミノ酸をシステムに添加し、任意により、混合チャンバまたはインラインで1種またはいくつかの試薬と組み合わせる。任意により、例えばカップリングを容易にするために、既に活性化されたアミノ酸に常時添加剤(複数可)を加えることができる。
【0047】
-カップリングステップ。混合チャンバまたはインラインのいずれかで生じ得る活性化ステップ後、活性化されたアミノ酸またはペプチドはカラムを通過し、すでに固定化されたアミノ酸または固定化されたペプチドを担持している可能性のある固体支持体にさらされる。活性化されたアミノ酸またはペプチドは、カラムを通過するか、またはカラムを少なくとも1回再循環することができる。また、数回再循環することも可能であり、再循環数は、液体の流量および再循環時間によって決定される。当業者によって好適であると考えられる縮合、クリック様コンジュゲーション、ネイティブケミカルライゲーション、酵素を使用するカップリング反応など、他の種類のカップリング反応も実行され得る。
【0048】
カラムのいずれかの端から交換可能に液体を通過させることは、カップリングステップ(例えばカラム内での均一な温度を維持することが容易になり得る)、およびカラム樹脂を再充填するステップなどにおいて有益であり得る。
【0049】
-キャッピングステップ。カップリングステップ完了後、例えば成長ペプチドのN末端アミノ基のあらゆる未反応画分をキャッピングして、これらを望ましくない反応からブロックすることができる。キャッピングのプロセスは、所定の濃度のキャッピング溶液を所定の流速でカラムに通過させることを含み得る。洗浄前のカップリングステップ直後に、カラムにキャッピング液を通過させてもよく、またはカップリングステップ後、洗浄ステップを実施し、洗浄後にキャッピングステップを実施してもよい。
【0050】
-廃棄物の除去。溶媒をカラムに通過させて、カップリングステップ後にあらゆる過剰なアミノ酸、試薬および可溶性副生成物を洗い流すか、またはキャッピングステップ後に副生成物などの過剰なキャッピング試薬を洗い流す。洗浄は、置換技術を用いて、実施し得る。カラムの洗浄は、インラインおよびリアルタイムで監視され、条件付きしきい値に達するまで継続させる。そのようなしきい値は、当業者によって決定され得る。モニターは、UV/VISモニター/検出器または任意の他の好適な種類の検出器であり得る。
【0051】
-固体支持体および/または成長ペプチドのN末端からのブロッキング基の除去。本プロセスは、プロセスの開始時に固体支持体上のリンカーからブロッキング基/保護基を直接除去するための脱ブロッキング反応、および固定化アミノ酸または固定化成長ペプチドのN末端または他の官能基からブロッキング/保護基を除去することを追加的に含み得る。含まれるブロッキング基は、例えばFmoc基または当業者に公知である任意の他のブロッキング基/保護基であり得る。ブロッキング基を除去するために、所定の濃度の画定された試薬溶液を所定の流速でカラムに通過させてもよい。このプロセスには、試薬溶液を加熱することが含まれてもよい。このプロセスは、検出器、例えば、UV/VIS検出器によって、インラインで、リアルタイムで監視できる誘導体を放出することができる。このプロセスは、フィードバック機構によって監視し、制御することができ、試薬の総量は、検出器からのフィードバックによって、条件付きしきい値(複数可)に達したときに決定される。
【0052】
-アミノ酸側鎖からのブロッキング基の除去および、固定化ペプチドとのさらなる反応。合成プロセス中に、固定化された成長ペプチドの反応性側基が一時的にブロックされ得る。そのような場合、プロセスは、これらの側基のいずれかが選択的に脱ブロックされるステップをさらに含むことができる。選択的に脱ブロックされた基は、カップリングステップで説明したのと同様に、または当業者によって特定された他の条件、試薬および反応を使用することによって、さらなる化学合成のために使用することができる。このような脱ブロッキングおよびさらなる化学反応のために、異なる試薬および溶媒をカラムに通過させる。選択的化学反応はまた、脱ブロックを事前に必要とすることなく実施され得る。
【0053】
プロセスの最後に、所望のペプチド配列/誘導体が合成されたときに、粗ペプチドが樹脂から切断され、あらゆる保護基が除去され得る。ペプチドは、当業者に公知である精製技術、例えば逆相HPLCを使用して精製させ得る。
【0054】
本文脈において、加熱することは、1℃、または3℃、もしくは5℃の加熱、またはアミノ酸混合物が例えば43℃、または50℃、または60℃、または70℃の温度に加熱されるような加熱することを意味し得る。当業者は、反応、アミノ酸の種類(複数可)、試薬の種類(複数可)などに応じて加熱レベルを決定することができる。
【0055】
第1の態様の一例では、アミノ酸および試薬は、システム内またはカラム内での液体の再循環によって組み合わされる。効果的な混合は、アミノ酸の予備活性化、カップリング反応など、すべての化学反応にとって有益である。効果的な混合は、混合チャンバを通るガスバブリング、少なくとも2つの液体ストリームのインライン混合など、いくつかの非限定的技術によって達成され得る。混合ループには、カラムが含まれる場合と含まれない場合がある。
【0056】
第1の態様の一例では、アミノ酸の当量数は、3以下、例えば、2以下である。
【0057】
第1の態様の例において、加熱されたアミノ酸混合物は、固定化された成長ペプチドの少なくとも99%との接触が可能になる流速および容量でカラムを通過する。
【0058】
SPPSプロセスでは、アミノ酸を含む混合物がカラムを再循環する。再循環とは、カラムを1回通過したアミノ酸混合物が、SPPSシステムのチューブを通って輸送され、少なくとも1回以上カラムに再度入ることを意味する。再循環液には、異なる試薬および添加剤を添加してもよい。再循環は、少なくとも1回繰り返すことができる。再循環では、単一継代の場合に必要とされるよりも少ない、過剰のアミノ酸の使用が容易になる。アミノ酸の当量数は、4以下、または3以下、または2以下であり、アミノ酸は、固定化ペプチドの少なくとも約99%、または少なくとも約95%に添加される。当業者は、反応、期待される結果、アミノ酸の種類(複数可)、試薬の種類(複数可)などに応じて、再循環液中のアミノ酸の濃度を決定することができる。従来のSPPSプロセスよりも少ない過剰アミノ酸当量を使用するため、コスト効率が高くなるのみでなく、試薬(複数可)および溶媒(複数可)の両方が節約され、廃棄物が減少するため、より環境にやさしくなる。
【0059】
第1の態様の一例では、サイクル間で混合チャンバを空にして清浄し、UV/可視/IR光検出器または導電率検出器またはその両方によって清浄の進行を監視する。
【0060】
混合チャンバは空になり、溶媒による希釈を使用してサイクル間で清浄する。清浄の進行は、UV/Vis検出器、導電率検出器、またはその両方を使用して監視する。また、他の検出器が含まれていてもよい。混合チャンバを空にして清浄することは、カラム内の樹脂を清浄している間に、2つのプロセスを独立して同時に実行するか、または清浄溶媒を最初にこれらのユニットのうちの1つに通過させ、次に他のユニットに通過させる(すなわち、最初に混合チャンバを通過させ、次にカラムを通過させるか、その逆である)ことによって実施され得る。
【0061】
混合チャンバを洗浄することは、洗浄溶媒、例えばDMFを最初に混合チャンバに、その後カラムに連続して通過させることによって、カラムを洗浄することと組み合わせることができる。
【0062】
第1の態様の例では、試薬は、少なくとも1つの活性化剤を含み、アミノ酸は、チューブまたはカラム内でインライン活性化される。
【0063】
アミノ酸は、チューブ内、カラム内、または両方の組み合わせ内で、インライン活性化させ得る。
【0064】
第1の態様の別の例では、試薬は、少なくとも1つの活性化剤を含み、カラム樹脂が次の構成ブロックのために調製されている間、アミノ酸は、混合チャンバ内で予備活性化される。混合チャンバの流出は、ガス気泡検出を使用して監視することができる。
【0065】
上記のとおり、合成に使用されるアミノ酸は、SPPSシステム内で2つの異なる方法で活性化させ得る。
【0066】
-予備活性化。アミノ酸は、樹脂に添加される前に、個別に画定された混合チャンバ内で活性化される。アミノ酸が混合チャンバ内で予備活性化されている場合、混合チャンバが空であることは、ガス気泡検出によって監視できる。または、
【0067】
-インライン活性化。アミノ酸は、システムのチューブ内および/または場合によってはカラム内で活性化される。いずれの場合も、別個の混合チャンバは存在しない。そのような場合、アミノ酸は、活性化の間、少なくとも一部の時間、カラム樹脂と接触し得る。
予備活性化を使用する場合、カラム樹脂は、次の構成ブロックのために調製され得る(例えば、脱ブロックさせる、または予備活性化中に洗浄する)。
【0068】
予備活性化を用いる場合、予備活性化は、次について変更可能である。
-アミノ酸および試薬の添加順序;
-カップリング剤、任意により塩基および任意の添加剤の種類;
-次の成分が混合チャンバに添加されるまでの時間間隔;
-溶媒、アミノ酸および試薬の量;
-アミノ酸および試薬の濃度;
-混合チャンバに添加されたアミノ酸および試薬の温度;
-予備活性化中の温度;
-予備活性化の時間間隔;および
-予備活性化混合物をカラムに添加する時間間隔など。
【0069】
第1の態様の一例では、カラムは断熱されている。
【0070】
カラムは、プロセス中に断熱されていてもよく、かつ/または熱伝導率が比較的低い材料(例えば、プラスチック、ステンレス鋼、ガラスなど)製であってもよい。断熱材は、カラムからの熱損失を減少させ、カップリングステップ中にアミノ酸混合物は、高温の維持が可能になり、例えば、反応速度を速めることが可能になる。カラムは、外側または内側、またはその両方から断熱させ得る。典型的な場合、カラムは、ステンレス鋼を含み、プラスチックまたは他の絶縁材(複数可)を使用して、外側から絶縁されている。
【0071】
システム内の熱損失をさらに減少させるために、チューブを絶縁させ得る。また、システムの他の構成要素、例えば、バルブは、熱損失を減少させる材料、例えばプラスチックまたは熱伝導率の低い他の材料から絶縁させ得る、かつ/または製造され得る。
【0072】
第1の態様の一例では、樹脂を含まないカラムの容量は、カラム容量の約1%を超える。
【0073】
カラム内の樹脂を含まない容量は、プロセスを開始する前のカラム容量の少なくとも1%である。完全に充填されていないカラムには、プロセス中に樹脂が膨潤する空間が残存している。樹脂の膨潤は、例えば、ペプチドの長さおよび配列、樹脂質量または樹脂容量あたりの反応部位の数(すなわち、樹脂添加量)、合成ペプチドのアミノ酸組成、使用する溶媒の組み合わせなどに依存する。このプロセスは、カラム容量を自動的に変更するカラムを使用して実施し得る。すなわち、樹脂容量は、プロセス中の任意の時点でカラム容量と同じか、ほぼ同じである。合成を開始する前にカラムを充填するときの目的は、樹脂の容量がプロセス中またはプロセスの最後の時点で、カラムの容量と同じであるか、またはほぼ等しくあるようにすることである。
【0074】
樹脂の物理的特性は、カップリング効率および成長ペプチド鎖の任意の二次構造形成などにとって重要である。
【0075】
第1の態様の例では、プロセスは、直線的に拡張可能である。
【0076】
SPPSプロセスは、直線的に拡張可能であり得る。すなわち、カラム内の液体流量(cm/h)は、カラムのサイズ/比率に関係なく同じであり得、したがって、すべてのスケールで同じ直線流量(例えば、μmol、mmol、molなど)が使用され得る。これは、本発明によるSPPSプロセスが、より大きいスケール(例えば、mmol、mol)におけるのと同じ相対的過剰のアミノ酸をより小さいスケール(例えば、μmol)で使用して、スケールアップ(またはスケールダウン)させ得ること、またはその逆であること(すなわち、より大きいスケールからより小さいスケールへの条件の移行)を意味する。これは、様々なステップにおいて、同じ線形液体流量を使用するためである。したがって、スケールアップまたはスケールダウンする前に、プロセスを小さいスケールに最適化することができ、時間、試薬、溶媒の両方を節約し、無駄を減らすことができる。このプロセスは、パラメータが最適化されたスケールと同様に、スケーリングされた型でも、類似のまたは同一の結果(例えば、収率および純度)がもたらされ得る。プロセスが直線的に拡張可能であることが当業者によって理解されるように、すべてではないがプロセスパラメータ(例えば、圧力、温度など)、およびすべてではないが合成成分(添加剤、溶媒など)は、異なる合成スケール間において線形関係を有する必要がある。
【0077】
第1の態様の例では、カラム内のペプチド合成の進行は、少なくとも1つの検出器を使用して連続的に監視される。第1の態様のさらなる例では、検出器は、UV/可視光検出器、近赤外(NIR)光検出器、質量分析(MS)検出器または導電率検出器である。第1の態様のさらなる例では、検出器は、UV/可視光検出器であり、少なくとも4つの異なる波長で、光を同時に検出できる。
【0078】
少なくとも1つの検出器、例えばUV/可視光検出器、またはNIR光検出器、またはMS検出器、または導電率検出器、またはいくつかの検出器の組み合わせを使用して、プロセスを連続的に監視することができる。連続的なリアルタイム監視により、異なるステップ(脱ブロッキング、活性化、カップリング、洗浄など)の進行状況に関する情報が提供される。このような情報は、例えば、進行中の本発明のステップが終了し、次のステップが開始し得る、すなわち条件付きしきい値に到達するときであり得る。監視することによる情報は、連続的監視からの出力に応じて、合成プロトコルを変更するためにも使用され得る。プロセスは、インライン、オンライン、またはその両方など、様々な方法で監視され得る。プロセスは、連続的な監視を可能にする方法で監視され得る。
【0079】
UV/Vis検出器は、例えばFmoc基の脱ブロック、例えばFmoc基の脱ブロック後の洗浄サイクル、カップリング、ミキサー洗浄などの進行、例えば、液体流の前部または末端の位置決めなど、リアルタイム監視のために使用され得る。液体流としては、例えば、カップリング剤、添加剤、塩基、アミノ酸(例えば、混合チャンバへの輸送中)、活性化アミノ酸混合物(カラムへの添加中、または試薬(すなわち、システム内の液体の流れとして)の位置の検出が必要なあらゆる他の添加または輸送中)などである。一例では、UV/Vis光は、例えば4つの異なる波長で同時に検出することができる。曲線下面積および曲線の形状を用いて、以前の曲線下面積および形状を比較して、カップリング効率を予測できる。曲線形状は、次のカップリングステップでカップリング条件を決定するための基礎として役立ち得る。曲線形状の変化は、カップリング時間、反復カップリング数、試薬濃度、反応温度などのプロセス条件の必要な変更を示し得る。76別の例では、UV/可視光検出器を使用して、少なくとも1つの波長範囲を監視する、すなわち、異なる時点で光波長間隔内のUV/可視スペクトルを得ることができる。例えば、液体の組成に関する情報は、そのようなスペクトルから抽出され得る。
【0080】
NIR検出器は、NIRスペクトルから識別可能な特定の特性に基づいて、混合物中の様々な成分を検出するために使用できる。
【0081】
MS検出器を使用して、予想される成分または予想外の成分の存在、および/またはそれらの増加または減少を検出できる。これにより、プロセスにおける特定のステップまたは特定のサイクル、またはその両方を最適化するための情報が得られ得る。
【0082】
導電率検出器は、例えば塩分を検出するために使用でき、再循環時間および量を測定および/または検証するために使用され得る。これは、UV/Vis検出器などの他の検出器を使用することによって、行うこともできる。
【0083】
第1の態様の例では、プロセスは、ソフトウェア制御リアルタイム条件付きモニタリングを使用し、プロセス分析技術(PAT)を使用して、重要品質属性(CQA)に影響を与える重要プロセスパラメータ(CPP)が測定できるようになる。
【0084】
SPPSプロセスでは、プロセス分析技術(PAT)を使用して、重要品質属性(CQA)に影響を与える重要プロセスパラメータ(CPP)を測定できる。PATは、食品医薬品局(FDA)によって、CQAに影響を与えるCPPの測定を通じて、医薬品製造プロセスを設計、分析、および制御する機構として定義されている。PATが有効であることは、プロセスが現在の医薬品の製造および品質管理に関する基準(cGMP)に適合していることを意味する。
【0085】
PATを使用することにより、ユーザーは、時間、特定の波長での光の吸光度、温度、特定の中間体、副産物などの存在または不在など、プロセスを制御するパラメータを選択できる。定義されたパラメータは、21 CFR part 11 準拠に従って、制御ソフトウェアに文書化および記録することができる。
【0086】
第1の態様の一例では、本プロセスでは、自動化された取り扱いを含むカップリング中の潜在的な圧力上昇およびその後の圧力低下などの重要パラメータのソフトウェア制御リアルタイム条件付きモニタリングを使用する。このような制御の利点は、必要に応じて、長いカップリング時間、例えば数時間、プロセスを実行できることである。
【0087】
第1の態様の一例では、プロセスは、アミノ酸(複数可)を1種以上の試薬と組み合わせる前に、カラム内に充填された樹脂の湿潤およびその後の膨潤および任意により平衡化が行われる。
【0088】
このプロセスは、アミノ酸(複数可)を1つ以上の試薬と組み合わせる前に、乾燥樹脂を湿らせ、続いてカラム内部で膨潤させ、平衡化させるステップを含んでもよい。SPPSシステム内の樹脂の湿潤、膨潤、および平衡化は、カラムの下端から液体を通すことによって実施される。これにより、プロセス開始前に、あらゆるガス(空気など)が、カラムの頂部から排出され得る。このような湿潤および膨潤手順により、乾燥樹脂をカラムに添加することが可能になる。
【0089】
平衡または平衡化は、熱平衡(すなわち、所望の温度への到達)、ならびに洗浄および/または化学反応、またはその両方を含む化学平衡を指す場合がある。
【0090】
樹脂および溶媒を含むカラムは、合成開始前および合成中の特定のステップにおいて、平衡化され得る。平衡化には、熱平衡および/または溶媒による洗浄など、化学的および物理的平衡化が含まれ得る。平衡化プロセスでは、カラムをシステムに接続させ、カラムなどのシステムを直接通るか、閉鎖システム内でチューブおよびカラムを通って液体を再循環させるか、カラムを通り、混合チャンバを通って液体を再循環させることによって液体の流れが開始される。熱平衡化のために、液体がカラムに入る前に、所望の温度に設定された温度調節デバイス(例えばヒーター)が流路に含まれる。このような平衡化は、検出器が所定の時間セグメント内の所定の間隔で、パラメータ値(温度、UV/VIS吸光度、導電率、蛍光など)を検出した場合、すなわち、パラメータが安定値に達した場合に得られる。この方法は、パラメータ値の所望のエンドポイントが事前にわかっていない場合(例えば、条件のないしきい値)に、使用できる。あるいは、検出器がパラメータ値(例えば、温度、UV/可視光吸光度、導電率、蛍光など)を所定のレベル、例えば条件付きしきい値で検出する場合、平衡化が達成され得る。この後者の方法は、パラメータ値の所望のエンドポイントが事前にわかっている場合に使用できる。例えば、カラムを通して液体を再循環させることによる平衡化は、合成開始前に所望の温度までカラムを加温するために使用することができる。溶媒をカラムに流して廃棄することによる平衡化は、合成サイクル前および合成サイクル内でシステムおよびカラムを洗浄するために使用できる。平衡化の別の可能性は、特定の所定量の液体がシステムまたはカラムを通過することである。このような方法は、例えばキャッピング(カップリングステップ後の未反応アミノ基のブロック)のために使用でき、このような場合、システムを通過する液体は、過剰のキャッピング試薬を含み、反応を完了に向かわせることができる。
【0091】
例えば平衡化および/または反応をさらに改善するために、カラムを通過する液体の流れを平衡化プロセス中に1回または数回反転させることができる。すなわち、上端からまたは下端からカラムに流れを切り換える。
【0092】
第1の態様の一例では、プロセスは、少なくとも1つのアミノ酸、試薬、溶媒、もしくはガスの入口から、または少なくとも1つの入口へのパージ操作を含み得る。パージ操作は、合成前、合成中、または合成後に行うことができる。パージ操作は、ある容量の別の液体、例えば、溶媒の後またはその前に、あらかじめ定義されたある容量(複数可)の液体、例えば、アミノ酸溶液のシステムへまたはシステムからの送達を含むことができる。パージ操作は、システムへの、およびシステムからの、いくつかの異なる液体の一連の送達からなり得る。例えば、合成前のパージの間、ある定義された容量のアミノ酸および/または試薬溶液、その後に、ある容量の溶媒が、システムに圧送される。
【0093】
そのような手順は、システムに取り付けられた1つ、いくつか、またはすべてのアミノ酸および/または試薬の入口で実施され得る。しかし、パージ操作はまた、例えば溶媒入口のパージの場合、または例えば逆洗の場合に、システムへまたはシステムから送達される1つの液体のみで実施される手順から構成されもよい。パージ操作の別の例は、活性化ステップ前に、システム内の特定の位置までチューブを新鮮な試薬で満たすように、ある容量のアミノ酸およびその後の溶媒の送達を含んでもよい。パージのさらなる例は、合成後に新鮮な溶媒で満たすために、システムからアミノ酸および/または試薬の入口へのある定義された容量の溶媒の送達を含み得る。このような手順は、入口の逆洗中に実施されてもよい。
【0094】
同様のパージ操作は、システムに取り付けられたガス入口を使用して実施され得る。一例では、フラスコへのおよび/またはフラスコからのガス入口を窒素ガスでパージして、空気または試薬および/または溶媒の蒸気を置換する。
【0095】
すべてのパージ手順は、コンピュータプログラムによって制御される自動化された方法で実施され得る。しかし、パージは、手動または手順の一部が自動化されている半手動で実施され得る。
【0096】
本明細書に記載するすべてのパージ操作は例であり、その使用を限定するものではない。
【0097】
本明細書に記載のSPPSプロセスは、天然および非天然アミノ酸、修飾アミノ酸、機能化アミノ酸などのすべての種類のアミノ酸に適用可能であり、これらに限定されないが、ペプチド主鎖内の任意の変化が挙げられる。本明細書に記載の例は、例としてのみ考慮されるべきであり、本発明の全範囲を示すものではない。
【0098】
第1の態様について記載されたすべての実施例および変形は、第2の態様のすべての実施例および変形と組み合わせることができる。
【0099】
本発明の第2の態様では、フロースルー固相ペプチド合成(SPPS)のためのシステム100が存在し、このシステムは、樹脂が充填された少なくとも1つのカラム101、少なくとも1つのポンプ102、アミノ酸および試薬用のリザーバ104、少なくとも1つの温度調節デバイス103、少なくとも1つの温度センサ105、少なくとも1つの検出器106、および少なくとも1つのガス(気泡)検出器107を備え、チューブ108により、リザーバ104がカラム101に接続される。このようなSPPSシステムは、図1に概略的に示す。システム100は、システム100と通信連通するプロセス300をさらに備える。
【0100】
システム100は、バルブ109a~eおよび/またはシステム100内の流れを方向付けるために配置された流れ切換バルブ120a~cをさらに備えることができる。バルブ109a~eおよび/または流れ切換は、プロセッサ300と通信連通している。
【0101】
システム100は、ペプチド合成のための再循環ループを提供するように配置され得る。再循環ループでは、合成液、すなわちアミノ酸(複数可)、試薬(複数可)、溶媒(複数可)、および添加剤(複数可)を、カラム101に少なくとも1回再循環させる。このような場合、合成液は、カラム101を通過し、システム100のチューブ108の少なくとも一部を少なくとも2回通る。
【0102】
温度調節デバイス103は、システム100内の液体、液体混合物または合成液体混合物などを加熱する、または冷却する、またはその両方を行うように配置され得る。
【0103】
第2の態様の一例では、SPPSシステム(図2)が存在し、本システムは、樹脂が充填された少なくとも1つのカラム101、少なくとも1つのポンプ102、少なくとも1つの温度調節デバイス103、アミノ酸、試薬、溶媒(複数可)および添加剤用のリザーバ104、少なくとも1つの温度センサ105、少なくとも1つの検出器106、および少なくとも1つのガス気泡検出器107を備え、チューブ108により、リザーバ104がカラム101に接続され、バルブ109a~eが流れを方向付けるために配置される。SPPSシステム100は、廃棄物用リザーバ110、温度調節デバイスバイパス125、およびカラムバイパス126を追加的に備えてもよい。システム100は、システム100と通信連通しているプロセッサ300をさらに備える。システム100は、図2に示されるとおり、個別に画定された混合チャンバ200をさらに備えてもよい。プロセッサ300は、少なくともバルブ109a~e、ポンプ102、温度センサ105、検出器106、ガス気泡検出器107、および温度調節デバイス103と通信接続されている。
【0104】
第2の態様の一例では、SPPSシステムが存在し、本システムは、樹脂が充填された少なくとも1つのカラム101、少なくとも1つのポンプ102、少なくとも1つの温度調節デバイス103、アミノ酸、試薬、溶媒(複数可)および添加剤用のリザーバ104、少なくとも1つの温度センサ105、少なくとも1つの検出器106、および少なくとも1つのガス気泡検出器107、廃棄物用のリザーバ110を備え、チューブ108により、リザーバ104がカラム101に接続され、バルブ109a~eが流れを方向付けるために配置される。SPPSシステムは、流れ切換バルブ120a~c、少なくとも1つの圧力センサ121、少なくとも1つの背圧調整器122、少なくとも1つのインラインフィルタ123、少なくとも1つの入口フィルタ124、少なくとも1つの温度調節デバイスバイパス125、少なくとも1つのカラムバイパス126、第2の温度センサ105’、少なくとも1つの温度調節デバイスバイパス125を追加的に備えることができる。システム100は、プロセッサ300を備え、個別に画定された混合チャンバ200をさらに備え得る。図3およびbは、上述の例によるシステム100の異なる構成の図を示す。プロセッサ300は、少なくともバルブ109a~e、流れ切換バルブ120a~c、ポンプ102、温度センサ105、検出器106、ガス気泡検出器107、および温度調節デバイス103と通信接続されている。システム100は、フロースルーペプチド合成、またはアミノ酸を少なくとも1回カラム101に再循環させる再循環ペプチド合成を実施するように配置される。固定化されたハンドル、アミノ酸またはペプチドへのアミノ酸の結合は、システム100を使用中にカラム101内で生じるように配置される。カラム101には、樹脂が充填され、システム100を使用中に、この樹脂にペプチドが固定化される。典型的なフロースルー固相ペプチド合成、または再循環ペプチド合成は、リザーバ104の下流に配置された第1のバルブ109aを配置する(例えば開く)ことによって開始する。これは、複数のリザーバであってもよい。リザーバ104の下流に配置された第1のバルブ109aが開くことによって、システム100を使用中に、アミノ酸またはペプチド、任意により添加剤、任意により試薬、および任意により溶媒は、システム100に流れ込むことができる。フロースルーペプチド合成または再循環ペプチド合成の第1のステップ中では、アミノ酸またはペプチドは、1つ以上の試薬と組み合わされる。組み合わせまたは混合は、個別に画定された混合チャンバ200内もしくはシステム100のチューブ108内で生じるか(インライン混合)、またはシステム100を使用中にカラム101内で直接生じる。
【0105】
第2の態様のすべての例では、第1のステップは、洗浄ステップを先に行ってもよく、このステップでは、カラム101内に配置された樹脂は、例えば、第1の合成サイクルに対応する樹脂を提供するために、溶媒、または溶媒と可能な共溶媒との混合物により洗浄される。このような場合、システム100は、少なくとも第1のバルブ109aおよび第2のバルブ109bを開くことによって、リザーバ104からカラム101に溶媒が提供されるように配置される。
【0106】
第2の態様の一例では、システム100は、個別に画定された混合チャンバ200をさらに備える。個別に画定された混合チャンバ200は、リザーバ104またはいくつかのリザーバの下流に配置される。少なくとも1つのバルブ、例えば、第4のバルブ109dは、個別に画定された混合チャンバ200の前に配置され、第4のバルブ109dおよび/または第5のバルブ109eは、個別に画定された混合チャンバ200に入るまたは混合チャンバ200から出る流れを制御するように配置される。システム100のチューブ108内で混合が生じる場合、カラムバイパス126は、カラム101を流れる前に、合成液の成分が混合され得るように配置され得る。こうした場合、アミノ酸またはペプチド、任意により添加剤、任意により試薬、および任意により溶媒の流れは、図3bに示すとおり、リザーバ104の下流およびカラムバイパス126の上流に配置された第3の流れ切換バルブ120cによって、カラムバイパス126に方向付けることができる。したがって、第3の流れ切換バルブ120cは、流れをカラムバイパス126に方向付けるように配置され得る。別の例では、図3aに示されるとおり、第2のバルブ109bは、カラムバイパス126への流れを制御するように配置できる。
【0107】
第2の態様の一例では、温度調節デバイス103は、システム100内のアミノ酸またはペプチド、任意により添加剤、任意により試薬を加熱するために配置される。温度調節デバイス103は、リザーバ104の下流およびカラム101の上流に配置され、したがって、システム100を使用中、アミノ酸は、カラム101に到達する前に加熱される。システム100は、温度調節デバイス103に接続して配置された温度調節デバイスバイパス125を備えてもよい。温度調節デバイスバイパス125は、合成液が温度調節デバイス103を通過しないように、温度調節デバイス103から合成液を迂回させるように配置されてもよい。
【0108】
フロースルーペプチド合成または再循環合成の第2のステップでは、アミノ酸またはペプチドがシステム100内で活性化される。個別に画定された混合チャンバ200は、アミノ酸またはペプチドを活性化するように配置させ得、個別に画定された混合チャンバ200は、上記のように配置させる。チューブ108および/またはカラム101は、アミノ酸またはペプチドを活性化するように配置させ得る。チューブ108内での活性化は、インライン活性化と称することができる。活性化の間、リザーバ104またはいくつかのリザーバの下流に配置された第1のバルブ109aを開くことによって、添加剤をシステム100に任意により添加させ得る。
【0109】
フロースルーペプチド合成の第3のステップでは、活性化されたアミノ酸またはペプチドは、カラム101を通過するように配置される。カラム101内では、活性化されたアミノ酸またはペプチドは、システム100を使用中に、固定化されたハンドル、アミノ酸またはペプチドに結合される。活性化されたアミノ酸またはペプチドは、システム100を使用中に、カラム101を上から下に、または下から上に、またはその両方を交換可能に通過する。カラム101のいずれかの端に配置された第2のバルブ109bおよび第3のバルブ109cは、カラム101への流入およびカラム101からの流出を制御するように配置される。
【0110】
フロースルーペプチド合成または再循環合成の第4のステップでは、システム100を使用中に、成長ペプチドのN末端アミノ基(複数可)などの任意の未反応画分をキャップして、これらの未反応画分を望ましくない反応からブロックする。N末端基、および可能性のある他の基をキャッピングするために、キャッピング溶液を含むリザーバ104またはいくつかのリザーバの下流に配置された第1のバルブ109aを最初に開くことによって、キャッピング溶液がカラム101を通過するように配置される。第1のバルブ109aを開いた後、キャッピング溶液は、カラム101に到達するまで、チューブ108を通ってシステム100の下流へ通過することができ、ここでは、キャッピング溶液は、システム100を使用中にカラム101を少なくとも1回通過する。
【0111】
フロースルーペプチド合成または再循環合成の第5のステップでは、システム100は、リザーバ104またはいくつかのリザーバの下流に配置された第1のバルブ109aを最初に開くことによって、溶媒をカラム101に通させるように配置され、これにより、溶媒または溶媒の混合物をシステム100の下流に流し、カラム101を通させることができる。溶媒は、あらゆる過剰なアミノ酸、試薬、および可溶性副生成物を洗い流し、したがって、システム100を使用中に、前のステップ、例えば脱ブロッキング、カップリング、キャッピングなどのいずれかからの廃棄物を洗い流す。システム100は、例えば、廃棄物110用のリザーバの上流に配置された第4のバルブ109dを介して、廃棄物110用のリザーバを備え得る廃棄物出口のいずれかで、廃棄物を除去するように配置される。図3aおよび3bに示されるとおり、廃棄物出口は、カラム101の下流に配置され、いずれかの廃棄物出口への流れの方向付けは、第3の109cバルブまたは第4の109dバルブによって制御される。洗浄は、検出器106によって監視することができ、検出器106は、UV/VISモニター/検出器または任意の他の好適な種類の検出器であり得る。検出器106は、カラム101の下流に配置され、プロセッサ300と通信連通している。
【0112】
図1~3には、単一のリザーバ104が示されているが、単一のリザーバ104の代わりに、例えばそれぞれが異なる種類の溶媒、アミノ酸、異なる試薬などを含む複数のリザーバを使用できることを理解されたい。さらに、検出器106、ガス気泡検出器107、ポンプ102、温度デバイス103、インラインフィルタ123、124、背圧調整器122など、システム100の異なる構成要素は、SPPSシステム100内の異なる位置に配置され得ることをさらに理解されたい。図1~3は、SPPSシステム100内の構成要素の可能な構成のいくつかの例を単に示していることに留意されたい。
【0113】
それぞれのバルブ109a~eは、溶媒(複数可)、アミノ酸などを追加するため、または廃棄物などを除去するために、プロセッサ300によって自動化され、制御されるように配置される。それらは、監視からシステム100へのフィードバックに応じて調節され得る。このような調節は、例えば、SPPSシステム100と通信接続している、例えば、コンピュータ内のプロセッサ300によって提供される(図2、ならびに図3aおよび図b)。システム100内にプロセッサ300が存在することにより、プロセスがUV(または他の検出器、例えば蛍光)分析、またはガス気泡検出器107、または別の検出器、または検出器の組み合わせによって制御される自動プロセスが可能になる。換言すれば、プロセッサ300は、PATの使用を可能にするように配置される。
【0114】
樹脂は、カラム101内で充填床として配置され、したがってカラム101は、充填床カラムを表す。ペプチド、これには限定されないが、マイクロポーラス樹脂、メソポーラス樹脂、マクロポーラス樹脂、例えばポリスチレン系、ゲル型樹脂、ポリエチレングリコール(PEG)系、ポリアシレート、ポリアクリルアミン樹脂またはそれらの組み合わせなどを固定化するために、任意の種類の樹脂が使用され得る。フロースルーSPPSシステム100では、例えばいずれの撹拌も適用されないため、バッチプロセスと比較して、樹脂の機械的分解のリスクが減少する。
【0115】
温度調節デバイス103は、例えば、電気加熱デバイス、水浴、または油浴、または誘導ヒーター、またはマイクロ波キャビティなどであり得る。温度調節デバイス103は、カラム101に添加される前にアミノ酸混合物を加熱できるように、カラム101の上流に配置される。
【0116】
第2の態様の例では、システムは、少なくとも2カラムまたはそれ以上、例えば、10カラムを備える。
【0117】
SPPSシステム100は、2つ以上のカラム101、例えば並列に接続できる少なくとも2つのカラム101を備えることができる。2つ以上のカラム101を使用することで、他の配列の自動連続合成、異なるスケールでの合成、プロセス開発のためのパラメータの最適化などが容易になる。
【0118】
第2の態様の例では、システム100は、UV/可視/ダイオードアレイ検出器、蛍光検出器、NIR検出器、質量分析検出器および導電率検出器から選択される検出器106をさらに備える。いくつかの異なる検出器を連続して、または平行に接続してもよい。検出器106またはいくつかの検出器は、プロセッサ300と通信接続している。
【0119】
第2の態様の別の例では、カラム101は、断熱される。
【0120】
第2の態様の別の例では、システム100は、個別に画定された混合チャンバ200をさらに備える。
【0121】
SPPSシステム100は、少なくとも1つの個別に画定された混合チャンバ200を備え得る。個別に画定された混合チャンバ200は、例えば、アミノ酸を活性化し、化合物および/または溶液、または溶媒などを一時的に保管するように配置され得る。個別に画定された混合チャンバ200がアミノ酸を活性化するために使用される場合、樹脂は、活性化ステップ中に脱ブロックおよび/または洗浄され得る。ガス気泡検出器107は、混合チャンバ200が空になり、活性化アミノ酸がシステムのチューブ108に入ったときを監視するように配置され得る。すなわち、ガス気泡検出器107は、混合チャンバ200が空になるときに検出するように配置される。ガス気泡検出器107は、プロセッサ300と通信連通している。ガス気泡検出器107はまた、混合チャンバ200が空になるときを監視するために、すなわち条件付きしきい値を使用して、混合チャンバ200の洗浄手順中に使用されるように配置され得る。ガス気泡検出器107はまた、システム100内の任意の他の場所に配置されて、例えば試薬および溶媒リザーバ104が空であることを検出するために、ガス気泡を監視することができる。当業者によって理解されるように、混合チャンバ200および/またはリザーバ104が空であることを監視するために、他の種類のセンサおよび検出器、例えば、これらに限定されないが、静電容量、超音波、マイクロ波、および光学のセンサおよび検出器なども使用することができる。
【0122】
第2の態様の一例では、カラム101内の樹脂を含まない容量は、約1%を超える。
【0123】
少なくとも1%の樹脂を含まない容量を有するカラム101を有することにより、プロセス前またはプロセス中に樹脂の湿潤および膨潤が可能になる。
【0124】
第2の態様の一例では、システム100は、少なくとも1つのリザーバ104内に保護ガスを含む。
【0125】
システム100は、1つまたはいくつかのガスマニホールド(図示せず)を備えてもよく、ガスは、個別に画定された混合チャンバ200など、1つ、いくつか、またはすべてのリザーバ104に分配されるように配置される。ガスの種類は、好ましくは窒素またはアルゴンなどの不活性ガスであるが、他のガスまたはガス混合物を使用してもよい。ガスは、リザーバ104の1つまたはいくつかにおいて、すなわちリザーバ104を加圧することによって、保護ガスとして機能し得る。ガスはまた、リザーバ104からSPPSシステム100の残部への構成ブロック、試薬溶媒などの移動を容易にすることができる。ガス圧は、例えば、0.01バール~1.0バール以上であり得る。ガス圧は、SPPSシステム100内の構成要素に依存し、当業者によって決定され得る。
【0126】
第2の態様の一例では、SPPSシステム100は、少なくとも1つの入口フィルタ124をさらに備える。入口フィルタ124は、粒子(複数可)がSPPSシステム100に入るのを防ぐように配置され得る。SPPSシステム100に入る粒子はいずれも、SPPSシステム100の一部、例えばバルブ109a~e、ポンプ(複数可)102、検出器(複数可)106などを妨害するか、または(部分的に)破壊する可能性がある。SPPSシステム100に入る粒子はまた、化学反応およびプロセスの監視を干渉し得る。入口フィルタ124は、例えば、リザーバ(複数可)104の下流および第1のバルブ109aの上流、またはポンプ102の上流など、各入口チューブの先端など、1つまたはいくつかの入口チューブの先端に配置されてもよい。入口フィルタ124は、例えば、多孔性ポリエチレン、ポリプロピレン、ガラス、または任意の他の好適な材料を含むことができる。入口フィルタ124の好適な細孔サイズは、プロセスおよびSPPSシステム100に依存し、当業者によって決定され得る。
【0127】
システムの第2の態様の一例では、SPPSシステム100は、少なくとも1つのインラインフィルタ123をさらに備える。インラインフィルタ123を配置して、例えばプロセス中に形成された沈殿物などの望ましくない成分をフィルタにより除去することができる。インラインフィルタ123は、例えば、ポンプ102の上流もしくは下流、またはSPPSシステム100内の任意の他の好適な位置に置くことができる。
【0128】
第2の態様の一例では、SPPSシステムは、少なくとも1つの流れ切換バルブ120a~cをさらに備える。システム100全体または選択された部分のいずれかにおいて、SPPSシステム100内の流れを逆にするために、流れ切換バルブ120a~cを配置することができる。流れは、例えば、合成を開始する前にカラム101に液体を充填する間、可能な温度勾配を補償するためにアミノ酸をカップリングする間、清浄目的などのために、逆にすることができる。第1の流れ切換バルブ120aは、ポンプ102に接続して配置され得る。第2の流れ切換バルブ120bは、温度調節デバイス103および温度調節デバイスバイパス125に接続して配置されてもよい。プロセッサ300は、少なくとも1つの流れ切換バルブ120a~cと通信接続している。
【0129】
第2の態様の一例では、少なくとも1つの流れ切換バルブ120a~cは、少なくとも2つの位置を含む。例えば、1つの位置は、流れがカラム101またはカラムバイパス126に時計回りに入るように配置され、第2の位置は、流れが逆向き、すなわち反時計回りになるように配置される。
【0130】
第3の流れ切換バルブ120cは、カラム101、またはSPPSシステム100内のいくつかのカラムの場合には複数のカラムに接続されるように配置され得る。
【0131】
流れ切換バルブ120a~cはさらに、バルブ109a~e、例えば、カラム101をSPPSシステム100の残りの部分に接続する第2のバルブ109bおよび第3のバルブ109c、またはSPPSシステム100内の任意の他の好適な位置に組み込まれてもよい。ポンプ102に接続された第1の流れ切換バルブ120aを置くことによって、第1の流れ切換バルブ120aは、システム100内の合成液の流れ方向を変えるように配置されてもよい。温度調節デバイス103に接続して配置された第2の流れ切換バルブ120bは、温度調節デバイスバイパス125と温度調節デバイス103との間の流れを切り替えるように配置されてもよい。
【0132】
第2の態様の一例では、SPPSシステム100は、少なくとも1つの背圧調整器122をさらに備える。背圧調整器122は、SPPSシステム100内の背圧を増加させるように配置され得る。これにより、SPPSシステム100内の気泡の圧縮、バルブ109a~e、ポンプ(複数可)102、検出器(複数可)106、カラム(複数可)101などの性能および/または機能が改善され得る。背圧の調整は、リザーバ(複数可)104および混合チャンバ(複数可)200内の不活性ガス圧力を可能にするという点で有益であり得る。背圧は、例えば、0.1バール、1バール、2バール、3バール、10バール、20バールなどに設定することができる。背圧値は、SPPSシステム100内の成分に依存する。
【0133】
第2の態様の一例では、SPPSシステム100は、少なくとも1つのカラムバイパス126をさらに備える。カラムバイパス126は、カラム101を通過することなく、例えば、アミノ酸の予備活性化中、SPPSシステム100の洗浄中などに、SPPSシステム100内の液体を再循環させるように配置され得る。
【0134】
第2の態様の一例では、SPPSシステム100は、温度調節デバイスバイパス125をさらに備え、こうした温度調節デバイスバイパス125は、例えば液体チャネルであってもよい。温度調節デバイスバイパス125は、上述のとおり、液体の流れが温度調節デバイス103を迂回できるように配置されてもよい。
【0135】
第2の態様の一例では、SPPSシステム100内の圧力は、液体流量を調整することによって、または背圧調整器122を調整することによって、またはその両方を組み合わせることによって調整される。
【0136】
SPPSシステム100内の少なくとも1つの圧力センサ121によって測定される、システム100を使用中のカラム101内部の圧力は、例えば、異なる流速、成長ペプチドによる樹脂の膨張、特定の溶媒の使用、チューブなどの機器要素のサイズなどにより、プロセス中に変動し得る。圧力センサ121は、ポンプ102の下流およびカラム101の上流に配置され得る。SPPSシステム100内部の圧力を連続的に監視するために、少なくとも1つの圧力センサ121が配置され得る。液体流量は、システム100を使用中、SPPSシステム100内部の圧力が、所定の制限内に維持されるように、圧力に基づいて調整されるように配置される。そのような所定の制限は、プロセスおよびSPPSシステム100の構成要素に依存し、当業者によって決定されるべきである。
【0137】
図3aに概略的に示される第2の態様の一例では、第1のバルブ109aは、リザーバ(複数可)104の下流に流体連通して配置され、第1のバルブ109aの下流に配置された第1の流れ切換バルブ120aと流体連通している。第1の流れ切換バルブ120aは、ポンプ102と流体連通しており、第2の流れ切換バルブ120bは、第1の流れ切換バルブ120aの下流に流体連通して配置されている。第2の流れ切換バルブ120bは、温度調節デバイス103および温度調節デバイスバイパス125と流体連通している。温度センサ105は、第2の流れ切換バルブ120bの下流に流体連通して配置されている。第3の流れ切換バルブ120cは、温度センサ105の下流に流体連通して配置されている。第2のバルブ109bは、第3の流れ切換バルブ120cの下流に流体連通し、かつカラムバイパス126およびカラム101の上流に流体連通して配置されている。カラム101は、第3のバルブ109cの上流に流体連通して配置されており、また、カラムバイパス126の下流に流体連通して配置されている。第3のバルブ109cは、検出器106の下流に流体連通して配置されており、また、第4のバルブ109dの下流に配置されている。第4のバルブ109dは、廃棄物出口110および個別に画定された混合チャンバ200と流体連通し、第5のバルブ109eの下流に流体連通して配置されている。第5のバルブ109eは、個別に画定された混合チャンバ200と流体連通して配置されている。ガス気泡検出器107は、個別に画定された混合チャンバ200の上流に流体連通し、第5のバルブ109eの下流に配置されている。第5のバルブ109eは、第1のバルブ109aの下流に流体連通して配置されている。チューブ108は、バルブ109a~eを流れ切換バルブ120a~c、リザーバ(複数可)104、カラム101、温度調節デバイス103、ポンプ102、温度センサ105、検出器106、ガス気泡検出器107、廃棄物出口110、および個別に画定された混合チャンバ200を接続する。
【0138】
プロセッサ300は、少なくともバルブ109a~e、流れ切換バルブ120a~c、温度調節デバイス103、ポンプ102、温度センサ105、検出器106、およびガス気泡検出器107と通信連通している。
【0139】
第2の態様の一例では、個別に画定された混合チャンバからの流出は、ガス気泡検出器107および第5のバルブ109eを介し、個別に画定された混合チャンバ200への流れは、第4のバルブ109dを介する。個別に画定された混合チャンバ200を第5のバルブ109eと接続するチューブ108、すなわち流出用のチューブは、個別に画定された混合チャンバ200の底部に配置される。
【0140】
システム100は、フロースルーまたは再循環ペプチド合成を行うように配置される。このような合成は、次の方法400、図4に記載する。
【0141】
-ステップ401:合成の第1のステップにおいて、プロセッサ300は、第1のバルブ109aが開かれるように第1のバルブ109aを制御する。第1のバルブ109aが開かれると、アミノ酸またはペプチド、任意により添加剤、試薬、および溶媒、すなわち合成液がリザーバ104からシステム100に流れる。ポンプ102は、システム100内部の流れを制御するように配置される。一例では、合成液は、リザーバからシステム100のチューブ108への途中で入口フィルタ124を通過する。合成液は、カラム101または温度調節デバイス103を通過することなく、システム100を通ってチューブ108内で流れることによって混合される。すなわち、ステップ401において、合成液は、温度調節デバイスバイパス125およびカラムバイパス126を通って流れる。これは、流れ切換バルブ120a、120b;120cおよび第2のバルブ109bおよび第3のバルブ109cを制御することにより、プロセッサ300によって制御される。
【0142】
一例では、合成液の混合は、システム100を使用中に、個別に画定された混合チャンバ200内で生じるように配置される。このような場合、合成液は、上記と同様に、カラム101または温度調節デバイス103を通ることなく、リザーバ104から、個別に制御される混合チャンバ200に流れる。合成液は、プロセッサ300と連通し、プロセッサ300によって制御される第5のバルブ109eを介して、個別に画定された混合チャンバ200に入る。
【0143】
一例では、合成液の混合は、カラム101内で生じるように配置される。こうした場合、合成液は、リザーバ104から温度調節デバイス103を介してカラム101に流れるか、または温度調節デバイス125を迂回して(任意により)、任意により、カラム101に添加する前に、少なくとも1回カラムバイパス126を介してカラムを迂回する。合成液の流れは、第2の流れ切換バルブ120bおよび第1のバルブ109aを介して温度調節デバイス103に入るが、これらは両方ともプロセッサ300と連通しており、プロセッサ300によって制御される。
【0144】
-ステップ402:合成の第2ステップでは、アミノ酸またはペプチドがシステム100内で活性化される。一例では、アミノ酸(複数可)またはペプチドは、個別に画定された混合チャンバ200内で活性化される。こうした場合、少なくとも第1のバルブ109aおよび第5のバルブ109eをプロセッサ300で制御することにより、システム100を使用中に、アミノ酸(複数可)および任意により活性化添加物がリザーバ104から個別に画定された混合チャンバ200に流れる。システム100の構成に応じて、追加のバルブ109a;109b;109c;109dおよび/または流れ切換バルブ120a;120b;120cも、同様に制御され得る。
【0145】
一例では、アミノ酸またはペプチドは、チューブ108を通して合成液を流すことによって、チューブ108内で活性化される。液体は、プロセッサ300によって少なくとも第1のバルブ109aおよび第5のバルブ109eを制御することによって、使用中にシステム100を通って流れるように配置される。システム100に応じて、追加のバルブ109a;109b;109c;109dおよび/または流れ切換バルブ120a;120b;120cも同様に制御され得る。
【0146】
ステップ402の間、プロセッサ300と連通し、プロセッサ300によって制御される第1のバルブ109aを介して、リザーバ104から添加剤を合成液に添加してもよい。
【0147】
検出器106は、活性化ステップ402を監視するように配置され、検出器106は、プロセッサ300と通信連通している。
【0148】
一例では、ステップ402後にステップ402’が続き、ここで個別に画定された混合チャンバ200が空になる。検出器106および/またはガス気泡検出器107は、個別に画定された混合チャンバ200が空であることを監視するために配置され得る。ステップ402’において、個別に画定された混合チャンバ200からカラム101に液体を流すことによって、個別に画定された混合チャンバ200が空になる。システム100は、少なくとも第5のバルブ109e、第1のバルブ109a、および第2のバルブ109bを配置することによって流れを方向付けるために配置される。システム100はさらに、少なくとも第3のバルブ109cおよび第4のバルブ109dを配置することによって、流れをカラム101から廃棄物リザーバ110に方向付けるように配置される。ガス気泡検出器107および検出器106は、個別に画定された混合チャンバ200が空であるステップ402’を監視するために配置される。少なくとも1つのガス気泡検出器107または検出器106によって示される場合、システム100は、液体を第4のバルブ109dから個別に画定された混合チャンバ200または廃棄物容器110に戻すように配置される。
【0149】
-ステップ403:合成の第3のステップでは、活性化されたアミノ酸は、ペプチドを形成するため(すなわちカップリングステップ)にカラム101を通過するように配置される。システム100を使用中、活性化されたアミノ酸は、チューブ108内部にあり、プロセッサ300と通信し、プロセッサ300によって制御されるポンプ102の制御によって、チューブ108を通って流れるように配置される。一例では、活性化されたアミノ酸を含む合成液は、プロセッサ300を介する第2のバルブ109bを配置する(例えば開く)ことによって、頂部からカラムを通過するように配置される。一例では、プロセッサ300を介する第3のバルブ109cを配置することにより、活性化されたアミノ酸を含む合成液が、底部からカラムを通過するように配置される。
【0150】
本発明のすべての態様において、活性化されたアミノ酸を含む合成液は、図3bおよび図4に示すとおり、カラム101に入る前に温度調節デバイス103を通過するように配置される(ステップ403’)。温度調節デバイス103は、アミノ酸を加熱および/または冷却するために配置される。システム100は、第1のバルブ109a、第1の120a流れ切換バルブおよび第2の120b流れ切換バルブのうちの少なくとも1つを配置することによって、活性化されたアミノ酸を、温度調節デバイス103を通過させるように配置される。
【0151】
本発明のすべての態様において、活性化されたアミノ酸を含む合成液は、カラム101を少なくとも1回再循環する。したがって、プロセッサ300は、ポンプ102、バルブ109a~e、および流れ切換バルブ120a~cを制御して、合成液がシステム100を通って、チューブ108内、カラム101を少なくとも2回流れるように配置される。
【0152】
-ステップ404 キャッピングステップ(任意による)。合成の第4のステップでは、カップリングステップ403後、末端基の未反応部分、すなわちN末端基をキャッピングすることができる。ステップ404では、システム100は、カラム101にキャッピング溶液を提供するように配置される。プロセッサ300は、キャッピング溶液がチューブ108に入るように第1のバルブ109aを制御するように配置される。ポンプ102は、キャッピング溶液がカラム101を少なくとも1回通過するように、キャッピング溶液の流れを制御するように配置される。プロセッサ300は、ステップ404を実施できるように、少なくとも第1のバルブ109aおよび第2のバルブ109b、任意により第1のバルブ109a’(図2参照)、第1の120a流れ切換バルブおよび第2の120b流れ切換バルブを制御するように配置される。
【0153】
一例では、システム100は、上述のステップ402、402’、403、404、405のいずれかの後に洗浄ステップを実施するように配置される。洗浄ステップでは、少なくとも1つの溶媒がカラム101を通過する。プロセッサ300は、溶媒がシステム100の下流に流れ、カラム101を通過するように、第1のバルブ109aを制御するように配置される。プロセッサ300はさらに、溶媒がシステム100を通ってカラム101を流れることができるように、第1の109aバルブ、第2の109bバルブ、および第3の109cバルブ、ならびに流れ切換バルブ120a~cを制御するように配置される。カラム101を通過後、溶媒は、廃棄物を含み、システム100から除去されるように配置される。廃棄物を含む溶媒は、プロセッサ300と通信し、プロセッサ300によって制御される第3のバルブ109cを介してカラム101から出る。一例では、廃棄物出口が第3のバルブ109cに直接接続されており(図3aおよびbを参照されたい)、廃棄溶媒がそこでシステム100から出るように配置される。一例では、廃棄溶媒は、プロセッサ300と通信し、プロセッサ300によって制御される第4のバルブ109dを介して、廃棄物用リザーバ110を介してシステム100から出るように配置される。検出器106は、洗浄を監視するように配置され、プロセッサ300によって制御され、プロセッサ300と通信する。
【0154】
-ステップ405 脱ブロッキングステップ。合成の第1のステップまたは第5のステップ(第1のカップリング前の脱ブロックの必要性に応じて)において、保護基が除去されるように、保護された例えばFmoc、N末端基が脱ブロックされる。脱ブロッキングステップ405では、システム100は、ステップ404で説明したのと同じ方法で、カラム101に脱ブロッキング溶液を提供するように配置される。
【0155】
キャッピングステップ405後、システム100は、所望のペプチドが形成されるまで、ステップ401~404またはステップ401~405を繰り返すように配置される。
【0156】
-ステップ406 粗ペプチドの除去。反応の最後のステップにおいて、粗ペプチドは、カラム101内またはカラム101外のいずれかに配置された樹脂から切り離される。
【0157】
異なるステップの間、液体は、少なくとも1つのインラインフィルタ122を通過することができる。
【0158】
システム100内の液体の流れは、プロセッサ300と通信連通し、プロセッサ300によって制御されるポンプ102によって制御されるように配置される。
【0159】
システム100は、プロセッサ300と通信する検出器106を介して、ペプチド合成を制御するように配置される。
【0160】
方法400のすべてのステップにおいて、ポンプ102は、プロセッサ300を介して、システム100内の液体の流れを制御するように配置される。ポンプ102は、プロセッサ300と通信連通している。
【0161】
第2の態様の一例では、流れ切換バルブ120a、120b;120cのうちの1つまたはいくつかを使用して、システム100内の流れを逆にすることが可能である。
【0162】
第2の態様について記載されたすべての実施例および変形は、第1の態様のすべての実施例および変形と組み合わせることができる。
実施例
【0163】
実施例1
合成ペプチド。器具の合成性能を評価するために、アミノ酸配列FPRPGGGGNGDFEEIPEEYL-アミドを有するビバリルジンの類似体を使用した。ここで、各文字は、アミノ酸の一文字コードを示す。
【0164】
試薬の調製およびシステムへの取り付け。Fmoc-アミノ酸(0.5M)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、カップリング試薬(0.5M N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、DIC)、および添加剤(0.5Mエチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセテート、OxymaPure、または0.5Mヒドロキシベンゾトリアゾール、HOBt)から構成される溶液の入った容器を合成器に接続した。DMFをシステムに接続させた。20%ピペリジン(v/v)および10%無水酢酸(v/v)(両方ともDMF中で調製)を所定の入口に接続した。すべての入口をパージして、チューブからガス(例えば空気)を除去し、チューブを対応する溶液または溶媒で満たした。
【0165】
ヒーター(すなわち、温度調節デバイス)。ヒーターの温度を調整して、カラム内で43℃とした。予備活性化ステップは、ヒーターを迂回して周囲温度で実施した。ヒーターを通過する溶液を使用して、Fmoc-アミノ酸カップリングおよびFmoc基脱ブロックステップを実施した。
【0166】
カラム反応器の準備。Fmoc-Rinkアミド樹脂(2.777g、0.41mmol/g、1%ジビニルベンゼンで架橋されたポリスチレンを装填)をカラム反応器に装填し、カラム反応器を本器具に接続した。樹脂を湿らせた後、DMFを使用して液体を下から上にカラムに圧送することにより膨潤させた。樹脂の膨潤とは対照的に、液体をカラムに上から下に通すことによって合成ステップを実施した。しかし、液体/溶液/溶媒は、プロセスのいずれの部分の間でも、カラムを代替的に下から上に通過させ得る。
【0167】
個別に画定された混合チャンバでの予備活性化および活性化されたアミノ酸のカップリングを使用した合成。2当量の0.5M Fmoc-アミノ酸溶液(4.55ml)をアミノ酸容器からミキサーに、流速9.1ml/分で圧送し、その後2当量の0.5M OxymaPure溶液(9.1ml/分で4.55ml)、および6当量の0.5M DIC溶液(20ml/分で13.66ml)を圧送した。試薬は、室温で、流速30ml/分で5分間、カラムおよびヒーターの両方を迂回する再循環によって、混合チャンバ内で混合した。次に、活性化されたアミノ酸をミキサーからヒーターを通して100cm/hでカラムに圧送した。圧送は、UVおよびガス気泡検出器によって監視した。次いで、混合物を流速200cm/hで所定の時間再循環させ、その後すぐにキャッピングした。
【0168】
活性化されたアミノ酸のインライン活性化およびカップリングを使用した合成。上記と同じ量のFmoc-アミノ酸、添加剤、およびカップリング試薬を、カラムヒーターを通してカラム反応器に直接圧送した。混合物の再循環は、200cm/hで実施し、所定時間継続させた後、キャッピングした。
【0169】
キャッピング。アミノ酸カップリングステップ後、10%無水酢酸を含むDMF(v/v)(150cm/hで30当量)を使用して、キャッピングした。次いで、カラム反応器をDMFで200cm/hで洗浄した。洗浄の進行は、UV検出によって監視し、制御した。
【0170】
Fmoc基の除去。カラム反応器は、20%ピペリジンを含むDMF(v/v)で処理して、Fmoc保護基を除去した。UV吸光度ピークを監視し、ピーク面積、半値高さおよび幅を計算し、各サイクル中の各Fmoc除去ステップについてプロットした。Fmocピーク除去中の所定レベルのUV吸光度(溶出ピーク高の20%)で、洗浄のために溶離液をDMFに変更した。次いで、次の合成サイクル、すなわち次のアミノ酸のカップリングを開始する前に、カラムをDMFで洗浄した。
【0171】
ミキサーの洗浄。DMFを使用して、ミキサーを洗浄した。ミキサーの清浄度は、UV吸光度によって監視した。気泡検出を使用して、ミキサーが空になるのを監視した。ミキサーを洗浄後、Fmoc-アミノ酸の活性化およびカップリングステップ後の順序で合成を継続した。
【0172】
切断および脱保護。合成されたペプチドの切断および完全な脱保護は、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)および2.5%水を含む95%トリフルオロ酢酸(TFA)で実施した。200mgの樹脂を2mlの切断カクテルで2時間処理した。ペプチドを10容量の冷ジエチルエーテルで沈殿させ、樹脂を0.1容量のTFAで2回洗浄し、エーテルに加え、混合し、遠心分離させた。ペレットを同量のジエチルエーテルで2回洗浄した。ペプチドを真空乾燥し、秤量し、HPLCによって分析した。
【0173】
HPLC分析。YMC C18カラム(3.5μm、100A、50x2.1mm)を使用することにより、粗ペプチドをEttan LC HPLC器具で分析した。HPLC溶媒は-A:0.1%TFA/水、およびB:95%アセトニトリル/水/0.1%TFAであった。15分かけて20~40%Bの勾配を使用した。吸光度は、214nmで監視した。
【0174】
結果。
図5は、異なる活性化モード(AおよびB)を使用したビバリルジン類似体FPRPGGGGNGDFEEIPEEYL-アミドの合成後の比較RP-HPLC分析を示す。DIC/OxymaPureは、両方の合成で使用した。A)Fmoc-アミノ酸は、別個の混合チャンバ内で予備活性化した(粗ペプチドの計算純度93%、収率75%);B)Fmoc-アミノ酸は、カラム内で直接インライン活性化した(粗ペプチドの計算純度92%、収率72%)。
【0175】
図6は、異なる結合時間(A:10分、B:20分、C:40分)を用いて、ビバリルジン類似体FPRPGGGGNGDFEEIPEEYL-アミドを合成後の比較RP-HPLC分析を示す。DIC/OxymaPureをすべての合成で使用し、Fmoc-アミノ酸を別個の混合チャンバ内で、周囲温度で5分間予備活性化させた。
【0176】
異なるカップリング時間を使用して、次の結果が得られた:
-カップリング時間10分(A)-純度94%、収率66%;
-カップリング時間20分(B)-純度94%、収率76%;および
-カップリング時間40分(C)-純度93%、収率75%。
【0177】
実施例2
合成ペプチド。ペプチドホルモンセクレチンのN末端断片であるセクレチン(1~13)は、アミノ酸配列HSDGTFTSELSRL(各文字は、アミノ酸の1文字コードを表す)を有し、C末端アミド基で合成された。
【0178】
試薬の調製およびシステムへの取り付け。Fmoc-アミノ酸(0.5M)のN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、カップリング試薬(1.0M N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、DIC)、および添加剤(0.5Mエチルシアノ(ヒドロキシイミノ)アセテート、OxymaPure))から構成される溶液の入った容器を合成器に接続した。溶媒DMFは、専用の注入口でシステムに接続させた。20%ピペリジン(v/v)およびキャッピング試薬(0.3Mピリジンと組み合わせた0.3M無水酢酸)をDMF中で調製し、所定の注入口に接続した。すべての入口をパージして、チューブからガス/空気を除去し、チューブを対応する溶液または溶媒で満たした。
【0179】
ヒーター(すなわち、温度調節デバイス)。ヒーターの温度は、カップリングステップでの再循環中にカラム内で43℃を達成するように設定した。予備活性化ステップは、ヒーターを迂回して周囲温度で実施した。Fmoc-アミノ酸カップリング、Fmoc基の脱ブロッキングステップ、およびその後のカラム洗浄は、ヒーターを通過する溶液を使用して実施した。
【0180】
カラム反応器の準備。カラム反応器は、上記の実施例1について記載したとおり、準備した。
【0181】
個別に画定された混合チャンバでの予備活性化および活性化されたアミノ酸のカップリングを使用した合成。指定された当量数の0.5M Fmoc-アミノ酸溶液をアミノ酸容器からミキサーに圧送し、その後同量の当量数の0.5M OxymaPure溶液および3倍の当量数の1.0MDIC溶液を圧送した。試薬は、室温で、流速30ml/分で5分間、カラムおよびヒーターの両方を迂回する再循環によって、混合チャンバ内で混合した。次に、活性化されたアミノ酸をミキサーからヒーターを通してカラムに圧送した。圧送は、UVおよびガス気泡検出器によって監視した。次いで、混合物を、カラムを通して、流速100~200cm/hで所定の時間再循環させ、その後キャッピングした。
【0182】
カップリングにおいて直線スルーフロー(カラムを1回通過させる)を使用した合成。これらの実験では、2または4当量の0.5MFmoc-アミノ酸溶液を含むDMFを、同量のOxymaPure溶液および6当量または12当量の1.0MDIC溶液とそれぞれ混合した。Fmoc-アミノ酸を5分間予備活性化し、樹脂(2.777g、0.41mmol/gの添加)を含有する25mlの合成カラムを通って圧送させた。2当量での実験では、流速4cm/hを使用し、4当量での実験では、流速は8cm/hであった。ミキサーが空になった後、DMFで流れを継続し、これを1.5カラム容量に適用し、その後キャッピングした。
【0183】
キャッピング。アミノ酸カップリングステップ後、0.3M無水酢酸および0.3Mピリジンを含むDMFを使用して、キャッピングした。1カラム容量のキャッピング溶液をカラムから圧送し、その後1.3カラム容量のDMFを圧送した。樹脂とキャッピング溶液との接触時間は、5分であった。キャッピングおよびその後の洗浄の進行は、UV検出によって監視した。
【0184】
Fmoc基の除去。手順は、実施例1に記載のとおり、実施した。
【0185】
ミキサーの洗浄。ミキサー洗浄は、実施例1について記載したとおりに行った。
【0186】
切断および脱保護。合成されたペプチドの切断および完全な脱保護は、2.5%トリイソプロピルシラン(TIS)および2.5%水を含む95%トリフルオロ酢酸(TFA)で実施した。200mgの樹脂を2mlの切断カクテルで2時間処理した。ペプチドを10容量の冷ジエチルエーテルで沈殿させ、樹脂を0.1容量のTFAで2回洗浄し、エーテルに加え、混合し、遠心分離させた。ペレットを同量のジエチルエーテルで2回洗浄した。ペプチドを真空乾燥し、秤量し、HPLCによって分析した。
【0187】
HPLC分析。粗ペプチドは、ガードカラムを備えたPhenomenex Aeris C18カラム(2.6μm、100A、150x2.1mm)を用いて、50℃で、Agilent 1100シリーズHPLC装置で分析した。HPLC溶媒は-A:0.1%TFA/水、およびB:70%アセトニトリル/水/0.1%TFAであった。30分かけて20~57%Bの勾配を使用した。吸光度は、214nmで監視した。
【0188】
結果。
図7は、活性化されたFmoc-アミノ酸をカラム(A)で再循環させ、4当量のFmoc-アミノ酸(B)を使用して、および2当量(C)を使用して、カップリング混合物をカラムに1回通すことによって合成されたセクレチン1~13)のHPLC分析を示す。合成スケールは、1.139mmol(25mlカラム)であり、Aの再循環時間は40分、流速は150cm/hであった。1回通過させるカップリングの流速は、Bでは1.3ml/分、Cでは0.6ml/分であった。合成されたペプチドの計算収率および純度を以下の表1に示す。
【表1】
【0189】
カラム内の再循環では、同量のFmoc-アミノ酸当量を使用した1回通過カップリングと比較して、より高い純度およびより高い収率がもたらされると結論付けることができる。4当量のアミノ酸を使用した1回通過カップリングでは、2当量を使用した場合と比較して、より高い純度および収率がもたらされる。
【0190】
図8は、合成スケール(1.138mmol;25mlカラム)の異なる数のアミノ酸当量を使用して合成されたセクレチン1~13)-アミド(HSDGTFTSELSRL-アミド)の比較RP-HPLC分析を示す。合成ペプチドの計算収率および純度を以下の表2に示す。
【表2】
【0191】
記載されたシステムにより、2当量、1.3当量、1.2当量、さらには1.1当量などの少量のアミノ酸当量を使用して、ペプチド合成を高効率で実施できると結論付けることができる。このシステムによる合成により、高収率および高純度のペプチドが得られる。
【0192】
図9は、異なるスケールで合成されたセクレチン(1~13)のHPLC分析を示す。A)12.5mlカラム中0.570mmol;B)25mlカラム中1.138mmol;C)50mlカラム中2,277mmol。Fmoc-アミノ酸のスケール当量は、2.0であった。合成されたペプチドの計算収率および純度を以下の表2に示す。
【表3】
【0193】
本システムを使用して実施されるペプチド合成は、規模に依存することなく、拡張可能であり、同様の結果がもたらされると結論付けることができる。

図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】