(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】女性型脱毛の診断及び治療のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/565 20060101AFI20230509BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230509BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20230509BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20230509BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20230509BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20230509BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230509BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230509BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20230509BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20230509BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K31/565
A61P17/14
A61P43/00 121
A61K31/506
A61K31/352
A61Q7/00
A61K8/63
A61K8/49
C12Q1/68
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/50 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559830
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021025405
(87)【国際公開番号】W WO2021202890
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517165298
【氏名又は名称】フォリア・インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴーレン、オファー、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッコイ、ジョン
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
2G045AA25
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4C083AC841
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4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZC75
(57)【要約】
植物性エストロゲンにより女性型脱毛を治療するために、組成物及び方法が本明細書において開示される。植物性エストロゲン治療を必要とする被験体を診断し、植物性エストロゲン治療の適用をガイドする方法も記載される。追加で、植物性エストロゲン予防的治療へ応答する可能性が高い、女性型脱毛について高いリスクがある対象を診断する方法が記載される。本明細書において記載される組成物を男性型脱毛症のための局所用ミノキシジルと組み合わせる方法が記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱毛症の治療を必要とする対象において前記脱毛症を治療する方法であって、
植物性エストロゲンを含有する組成物を前記対象の頭皮へ適用すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
植物性エストロゲンを含有する前記組成物の適用後に、前記対象が、後続して局所用ミノキシジル組成物を適用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物性エストロゲンがイソフラボンである、特許請求1に記載の方法。
【請求項4】
前記イソフラボンが、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンのうちの任意の1つまたは組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対象が、脱毛症のための植物性エストロゲンベースの治療へ応答するかどうかまたは前記治療から利益を得るかどうかを決定する方法であって、
前記対象のESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントを測定すること
を含む、前記方法。
【請求項6】
前記対象からDNAサンプルを収集することと;
前記サンプルからDNAを抽出することと;
前記ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントへ対応する前記抽出されたDNAのDNAセグメントを増幅することと;
データを分析して、前記対象の前記SNP rs1013718バリアントを決定することと、
をさらに含む、特許請求5に記載の方法。
【請求項7】
SNP rs1013718の前記バリアントが、「CC」、「CT」、または「TT」のうちの任意の1つまたは組み合わせである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記バリアントが「CC」である場合に、前記対象が、前記植物性エストロゲンベースの治療へ応答するかどうかまたは前記治療から利益を得るかどうかを決定すること
をさらに含む、特許請求7に記載の方法。
【請求項9】
前記バリアントが「CC」である場合に、前記対象が、女性型脱毛を発症するリスクの増加を有することを決定すること
をさらに含む、特許請求7に記載の方法。
【請求項10】
前記バリアントが「CC」である場合に発生する女性型脱毛のリスクに比較して、前記バリアントが「CT」または「TT」である場合に、前記対象が、女性型脱毛を発症するより低い前記リスクを有することを決定すること
をさらに含む、特許請求9に記載の方法。
【請求項11】
前記DNAサンプルが唾液サンプルである、特許請求6に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルから前記DNAを抽出した後に、前記DNAが精製され、後続して定量される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記DNAが、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応プロトコルによって増幅される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記DNAが、対立遺伝子識別プロットにおいて分析される、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
脱毛症の治療または予防を必要とする対象において前記脱毛症を治療または予防するための組成物であって、
植物性エストロゲンまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む、
前記組成物。
【請求項16】
前記植物性エストロゲンがイソフラボンである、特許請求15に記載の組成物。
【請求項17】
前記イソフラボンが、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンのうちの任意の1つまたは組み合わせである、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、スクラブ剤及び/または防腐物質をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、局所用組成物として製剤化される、特許請求15に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際出願は、2020年6月10日に出願された米国特許第16/946,219号に関し、その利益を主張し、2020年4月02日に出願された米国仮出願第63/004,159号への優先権を主張し、各々の全体の内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、女性型脱毛の治療についての方法及び組成物に関する。ダイズイソフラボンを含有する局所用組成物、そして治療の方法が記載される。追加で、女性型脱毛、及びダイズイソフラボン治療が脱毛の治療に有効である尤度を予測する方法が記載される。
【背景技術】
【0003】
女性の男性型脱毛症とも称される女性型脱毛(FPHL)は、女性の頭皮上の毛嚢の進行性小型化である。当該脱毛は、60歳までに女性集団のうちの30~40%が影響を受ける、頻繁に起こる病態である。当該脱毛は、頭皮の頭頂領域のびまん性薄毛を特徴とするが、前頭部の生え際は損なわれないままである。FPHLの追加のサインとしては前頭部の頭皮のより広い薄毛が挙げられ、それは「クリスマスツリー」に似た三角形の図形を禿げかかった領域にもたらす。FPHLは、最もよくみられる脱毛の形態である。女性型脱毛についてのSinclairスケールは、脱毛の程度を査定するために一般的に使用される。女性型脱毛は遺伝性であるが、その発症に影響を及ぼすホルモンに依存する。
【0004】
2%の局所用ミノキシジルが、FPHLの治療のための唯一の米国FDA認可薬物である。2%のミノキシジル単剤療法を使用する場合に、FPHL患者のうちの13~20%が再発毛において中等度の増加を経験すると推定される。5%のミノキシジル溶液も、FPHLのための治療として使用される。臨床試験から、5%のミノキシジルが、非軟毛カウントの平均変化に基づいて、2%のミノキシジルよりも良好な有効性を有することを示唆される。男性における臨床試験から、5%のミノキシジルを使用する場合に、患者のおよそ40%が発毛を経験することを示唆する。2%及び5%の両方のミノキシジルによる有害事象についてのリスクは低いが、刺激性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、及び多毛症が報告されている。母集団全体におけるミノキシジルの変動する有効性と組み合わせて、治療応答を惹起するのに要求される治療時間が長い(およそ6か月)ことに起因して、代替治療は、重要な臨床的有用性を有するだろう。
【0005】
ダイズイソフラボンは、ダイズにおいて天然に見出された植物性エストロゲンである。植物性エストロゲンは、エストロゲン様の生物学的活性を有する植物由来化合物である。ダイズ中で最も豊富なイソフラボンは、ゲニステイン及びダイゼインである。エストロゲン受容体へ結合する能力に起因して、イソフラボンは、エストロゲン受容体によって媒介される病態(例えば乳癌及び子宮内膜症)のための可能な治療として研究されてきた。
【0006】
エストロゲン媒介性疾患に対するイソフラボンの効果は、文献中では矛盾する報告がある。例えば、イソフラボン吸収は日本の集団中で閉経期乳癌に対して保護的効果を有することが報告されているが、高い血清イソフラボンレベルは英国の集団中で乳癌率の増加と関連した。イソフラボンとエストロゲン媒介性疾患との相互作用のメカニズムは、複雑であり、おそらく遺伝的素因に依存することは明らかである。
【発明の概要】
【0007】
イソフラボンにより女性型脱毛(FPHL)を治療するために、組成物及び方法が本明細書において開示される。植物性エストロゲン感度の個人間変動に起因して、治療方法は、植物性エストロゲンの選択及び投薬量をガイドするために診断試験を要求するだろう。追加で、方法は、対象がFPHLを発症するリスク、及びイソフラボンがFPHLを予防する予防効果を有する尤度を予測するものであると記載される。
【0008】
例示的な実施形態において、脱毛症の治療を必要とする対象において当該脱毛症を治療する方法は、植物性エストロゲンを含有する組成物を対象の頭皮へ適用することを包含する。
【0009】
いくつかの実施形態において、植物性エストロゲンを含有する組成物の適用後に、対象は、後続して局所用ミノキシジル組成物を適用する。
【0010】
いくつかの実施形態において、植物性エストロゲンは、イソフラボンである。
【0011】
いくつかの実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンのうちの任意の1つまたは組み合わせである。
【0012】
例示的な実施形態において、対象が、脱毛症のための植物性エストロゲンベースの治療へ応答するかどうかまたは当該治療から利益を得るかどうかを決定する方法は、対象のESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントを測定することを包含する。
【0013】
いくつかの実施形態において、方法は、対象からDNAサンプルを収集することと;サンプルからDNAを抽出することと;ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントへ対応する抽出されたDNAのDNAセグメントを増幅することと;データを分析して、対象のSNP rs1013718バリアントを決定することと、を包含する。
【0014】
いくつかの実施形態において、SNP rs1013718のバリアントは、「CC」、「CT」、または「TT」のうちの任意の1つ(または組み合わせ)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、方法は、バリアントが「CC」である場合に、対象が、植物性エストロゲンベースの治療へ応答するかどうかまたは当該治療から利益を得るかどうかを決定することを包含する。
【0016】
いくつかの実施形態において、方法は、バリアントが「CC」である場合に、対象が、女性型脱毛を発症するリスクの増加を有することを決定することを包含する。
【0017】
いくつかの実施形態において、方法は、バリアントが「CC」である場合に発生する女性型脱毛のリスクに比較して、バリアントが「CT」または「TT」である場合に、対象が、女性型脱毛を発症するより低いリスクを有することを決定することを包含する。
【0018】
いくつかの実施形態において、DNAサンプルは、唾液サンプルである。
【0019】
いくつかの実施形態において、サンプルからDNAを抽出した後に、DNAは精製され、後続して定量される。
【0020】
いくつかの実施形態において、DNAは、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応プロトコルによって増幅される。
【0021】
いくつかの実施形態において、DNAは、対立遺伝子識別プロットにおいて分析される。
【0022】
例示的な実施形態において、脱毛症の治療または予防を必要とする対象において当該脱毛症を治療または予防するための組成物は、植物性エストロゲンまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む。
【0023】
いくつかの実施形態において、植物性エストロゲンはイソフラボンである。
【0024】
いくつかの実施形態において、イソフラボンは、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンのうちの任意の1つまたは組み合わせである。
【0025】
いくつかの実施形態において、組成物は、スクラブ剤及び/または防腐物質をさらに含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、組成物は、局所用組成物として製剤化される。
【0027】
例示的な実施形態において、脱毛症の治療または予防を必要とする対象において当該脱毛症を治療または予防するためのキットは、植物性エストロゲンまたはその薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む局所用組成物;及びミノキシジルを含む局所用組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本明細書において開示される方法の実施形態のために使用され得る例示的なプロセス流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
男性型脱毛症(AGA)は、50歳までに集団のおよそ50%が影響を受ける一般的な皮膚病変である。現在、男性及び女性の両方のAGAの治療のために米国食品医薬品局(FDA)によって承認された唯一の薬物は、局所用ミノキシジルである。臨床試験から、16週間の5%のミノキシジル療法に従った後に患者のおよそ30~40%が再発毛することが実証された。本明細書において使用される時、「予防する」または「予防」という用語及びその単語の他の派生語は、脱毛症(例えば男性型脱毛症)を参照して使用される場合に、脱毛症のリスクがあるがその治療を受けない類似する個体の可能性に比べて、所与の治療を受ける個体における脱毛症の尤度の低減を指す。それゆえ、「予防する」及び「予防」という用語は、そうでない所与の個体について予想されるだろうものよりもより少ない程度の脱毛症(例えば男性型脱毛症)をもたらす治療を網羅する。脱毛症(例えば男性型脱毛症)の予防のための有効性は、例えば対象が治療(例えば局所用治療)を投与され、別の対象が偽薬を投与される比較試験を介して確立され得る。これらの状況下で、局所用治療により治療された対象が、偽薬を投与された対象と比べて、経時的により少ない、例えば、少なくとも5%少ない、少なくとも10%少ない、少なくとも15%少ない、少なくとも20%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも30%少ない、少なくとも35%少ない、少なくとも40%少ない、少なくとも45%少ない、少なくとも50%少ない、またはそれらを超えて少ない脱毛を経験するならば、治療は、脱毛症(例えば男性型脱毛症)の予防に有効である。
【0030】
本明細書において使用される時、「対象」という用語は、男性型脱毛症(または脱毛症の他の形態)のための治療処置を必要とするヒトを指す。好ましい実施形態において、対象は女性である。
【0031】
本明細書において使用される時、「治療する」、「治療」、または「治療すること」という用語は、目的が、疾患または病態(例えば男性型脱毛症または脱毛症の他の形態)の進行または重症度を好転、軽減、向上、阻害、遅延、または停止することである治療処置を指す。「治療」という用語は、疾患または病態(例えば男性型脱毛症または脱毛症の他の形態)の少なくとも1つの悪影響または症状を低減または軽減することを包含する。1つまたは複数の症状が低減したならば、治療は一般的に「有効」である。代替的に、疾患の進行が低減または停止されるならば、治療は「有効」である。すなわち、「治療」は、治療の非存在下において予想されるものに比較して、症状を改善することだけでなく、症状の進行もしくは悪化を中断することまたはそれらを少なくとも減速することも包含する。有益または所望される臨床結果としては、1つもしくは複数の症状(複数可)の軽減、疾患の程度の縮小、疾患の安定した(すなわち悪化しない)状態、疾患進行の遅延もしくは減速、疾患状態の向上もしくは緩和、寛解(部分または完全どうかにかかわらず)、及び/または死亡率の減少が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、脱毛の程度もしくは量が低減されるならば、または脱毛の進行が減速もしくは停止されるならば、治療は有効であると判断される。疾患の「治療」という用語は、疾患の症状または副作用からの救済(緩和治療が挙げられる)を提供することも包含する。
【0032】
本明細書において使用される時、「含むこと」または「含む」という用語は、組成物、方法などを参照して使用され、方法または組成物中に存在する構成要素(複数可)または方法のステップを指し、それでもなお組成物、方法などについて規定されていない要素も包含することを可能にする。
【0033】
「~からなること」という用語は、本明細書において記載される時、組成物、方法、及びそのそれぞれの構成要素を指し、実施形態のその記載中で列挙されない任意の要素を除外する。
【0034】
本明細書において使用される時、「~から本質的になること」という用語は、所与の実施形態のために要求される要素を指す。当該用語は、その実施形態の基本的且つ新規または機能的な特徴(複数可)に物質的に影響しない要素の存在を許容する。
【0035】
本明細書において使用される時、「脱毛症」という用語は、男性及び女性における脱毛のすべての形態を指し、当該形態としては、牽引性脱毛症、男性型脱毛症、男性型禿頭症(MPB)、女性型脱毛(FPHL)、円形脱毛症、全身性脱毛症、休止期脱毛、化学療法誘導性脱毛症、毛髪の脱落、眉脱毛、あごひげ脱毛、及び薄毛が挙げられることがこれらに限定されない。当該用語は、その実施形態の基本的且つ新規または機能的な特徴(複数可)に物質的に影響しない要素の存在を許容する。
【0036】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別段明らかに指示しない限り、複数の参照先を包含する。同様に、「または」という単語は、「文脈が別段明らかに指示しない限り、「及び」を包含することが意図される。本明細書において記載されるものに類似または同等の方法及び材料は、本開示の実践または試験において使用され得るが、好適な方法及び材料が下で記載される。「e.g.」という略語は、ラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、非限定例を指示するように本明細書において使用される。したがって、「e.g.」という略語は、「例えば」という用語と同意語である。
【0037】
脱毛症(例えば女性型脱毛または男性型脱毛症)の様々な症状を治療または予防する方法が本明細書において開示される。これらの方法の1つの態様は、植物性エストロゲンを含有する、頭皮へ適用される局所用組成物の使用を包含する。一実施形態において、方法は、頭皮へ適用される局所用組成物に後続する局所用ミノキシジル組成物の適用をさらに包含する。
【0038】
一実施形態において、植物性エストロゲンは、皮膚区画(少なくとも1つの毛嚢を含有する頭皮の区画等)へ適用される。別の実施形態において、植物性エストロゲンは、男性型脱毛症またはFPHLを治療するために少なくとも1つの毛嚢を含有する頭皮へ適用される。一実施形態において、植物性エストロゲンは、イソフラボンである。イソフラボンの例としては、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0039】
治療剤(特に本明細書において記載され、本方法において使用される植物性エストロゲン)は、当業者の知識に従って組成物へと製剤化され得る。一実施形態において、植物性エストロゲンは、局所用の緩慢放出または持続放出のために製剤化される。
【0040】
治療剤(特に本明細書において記載され、本方法において使用される植物性エストロゲン)は、当業者の知識に従って組成物へと製剤化され得る。一実施形態において、植物性エストロゲンは、治療剤の水溶解度を増加させるためにカプセル化される。別の実施形態において、植物性エストロゲンは、治療剤の分解を介する喪失を低減するために(例えば治療剤の酸化を低減するために)カプセル化される。
【0041】
一実施形態において、ゲニステインまたはダイゼインは、低い水溶解度及び容易な酸化分解反応を克服するためにカプセル化される。
【0042】
本発明の別の態様は、対象が、植物性エストロゲンによる治療へ応答する可能性が高いかどうかを決定するために使用される診断の試験または方法である。一実施形態において、植物性エストロゲンを含有する治療への対象の応答の可能性の高さは、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントを測定することによって決定される。別の実施形態において、対象は、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントについての3つの可能な試験結果のうちの1つを有し得る。別の実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントとしては、「CC」、「CT」、または「TT」が挙げられ得る。本発明の一実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718の「CC」バリアントの対象は、植物性エストロゲン治療からの保護的効果を有すると予測される。さらに本発明の別の実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718の「CC」バリアントの対象は、「CT」バリアントまたは「TT」バリアントの女性に比較して、FPHLを発症するリスクの増加を有すると予測される。
【0043】
本発明の他の1つの態様は、対象が、FPHLを予防するための植物性エストロゲンによる予防的治療から利益を得る可能性が高いかどうかを決定するために使用される診断の試験または方法である。一実施形態において、植物性エストロゲンを含有する予防的治療への対象の応答の可能性の高さは、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントを測定することによって決定される。別の実施形態において、FPHLを予防する植物性エストロゲンによる予防的治療から利益を得る可能性が高い対象は、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントについての3つの可能な試験結果のうちの1つを有し得る。別の実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718のバリアントとしては、「CC」、「CT」、または「TT」が挙げられ得る。一実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718の「CC」バリアントの対象は、FPHLを予防するための植物性エストロゲンによる予防的治療から利益を得ると予想される。さらに本発明の別の実施形態において、ESR2遺伝子におけるSNP rs1013718の「CC」バリアントの対象は、「CT」バリアントまたは「TT」バリアントの女性に比較して、FPHLを発症するリスクの増加を有し、FPHLを予防するための植物性エストロゲンによる予防的治療から利益を得る可能性が高いだろうと予測される。
【0044】
別の実施形態において、植物性エストロゲンは、シャンプー、フォーム、軟膏、スプレー、溶液、ジェル、緩慢放出カプセル、経口錠剤、ドライシャンプー、あるいは任意の類似する化合物もしくは送達ビヒクルまたは方法論で製剤化される。局所用適用が好ましい。一実施形態において、組成物は局所用クリームで製剤化される。別の実施形態において、組成物は、スタイリングジェル、スタイリングフォーム、及びヘアコンディショナーからなる群から選択されるヘアスタイリング製品で製剤化される。
【0045】
別の実施形態において、組成物は、頭皮の表面のアブレージョンを増進するためにスクラブ剤を含み得る。スクラブ剤の例としては、(1)無機粒子及び/または金属粒子[体心立法結晶の形態の窒化ホウ素(Borazon(登録商標));アルミノケイ酸塩(例えば霞石);ジルコン;アルミニウムの混合酸化物(エメリー等);酸化亜鉛;酸化アルミニウム(アルミナまたはコランダム等);酸化チタン;酸化チタンコーティング雲母;カーバイド、特に炭化ケイ素(カーボランダム);または他の金属酸化物;金属及び合金(アイアンショット、スチールショット、及び特にパーライト等);ケイ酸塩(ガラス、石英、砂、またはバーミキュライト等);炭酸カルシウム(例えばボラボラサンド(Bora-Bora sand)またはローズドブリグノールサンド(Rose de Brignoles sand))または炭酸マグネシウム;塩化ナトリウム;軽石;非晶質シリカ;ダイヤモンド;セラミック等]、ならびに(2)有機粒子[等]果物の内果皮、特にアプリコット内果皮(例えばScrubami(登録商標)アプリコット);木材セルロース(例えば粉砕されたタケの茎);ココナッツの殻(例えばココナッツスクラブ);ポリアミド、特にナイロン6;砂糖;プラスチックマイクロビーズ(例えばポリエチレンまたはポリプロピレン);粉砕されたクルミ;粉砕された杏仁;粉砕された殻、ならびに(3)有機化合物及び無機化合物に会合する混合粒子、及び上記の化合物中のコーティングされた粒子が挙げられる。スクラブ剤は、スクラブ効果を有する最大の寸法で5ミリメートル未満のマイクロビーズの形態であり得る。
【0046】
別の実施形態において、組成物は、頭皮の中への植物性エストロゲンの吸収を増進するためにスクラブ剤を含み得る。スクラブ剤の例としては、サリチル酸が挙げられる。
【0047】
一実施形態において、植物性エストロゲンを含む組成物は、薬物として製剤化され得る。一実施形態において、植物性エストロゲンを含む組成物は、化粧品として製剤化され得る。
【0048】
組成物中に存在する治療剤の量は、公知の方法論を用いて当業者によって決定され得る。ある特定の実施形態において、植物性エストロゲンは、重量で約0.0020%~0.0030%または約0.0025%の濃度で組成物中に存在する。別の実施形態において、治療剤(植物性エストロゲン等)は、重量で約0.0025%、0.0033%、0.005%、0.01%、0.02%、0.025%、または0.10%の濃度で組成物中に存在する。
【0049】
他の実施形態において、治療剤(植物性エストロゲン等)は、重量で約0.1%~35%、約1.0%~30%、約0.2%~30%、約0.2%~25%、約0.2%~20%、約0.2%~15%、約0.2%~10%、約0.2%~5%、約0.2%~4%、約0.2%~3%、約0.2%~2%、約0.2%~1%、約10.0%~30%、約15.0%~30%、約20.0%~30%、約10%~20%、約10%~15%、約15%~20%、約15%~60%、約20%~60%、約50%~60%、及び約45%~55%の濃度で本明細書において開示される方法における使用のための局所用組成物中に存在する。
【0050】
一実施形態において、組成物は、重量で約0.025%、約0.033%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.25%、約0.30%、約0.40%、約1.0%、約1.5%、約2.0%、または約2.5%の濃度で植物性エストロゲンを含む。
【0051】
本開示において使用される組成物(特に植物性エストロゲンを含有する組成物)は、防腐物質(EDTA(重量で製剤の0.1~0.5%)及び/またはメタ重亜硫酸ナトリウム(重量で製剤の0.1~0.5%)等)と共に製剤化され得る。いくつかの実施形態において、浸透促進物質は、アルコール、グリコール、脂肪酸、脂肪エステル、脂肪エーテル、閉塞剤、界面活性剤、ジメチルアミノプロピオン酸誘導体、テルペン、スルホキシド、環状エーテル、アミド、及びアミンからなる群のうちの1つまたは複数から選択される。本明細書において使用される製剤の他の構成要素は、当技術分野において公知の化粧品用に承認された賦形剤(水、増粘物質などが挙げられる)から選ばれ得る。
【0052】
組成物は、皮膚への適用のためのアプリケーターと共にキット中でパッケージングされ得る。本発明の態様は、治療剤(植物性エストロゲン等)の組成物及びアプリケーターを含むキット、ならびに治療剤(植物性エストロゲン等)の組成物及びヘアブラシまたはくし(特に頭皮における治療物質の透過を促進する、使用後の軽度のアブレージョンがあるように、頭皮上のスクラブ効果を提供するブラシまたはくし)を含むキットにも関する。一実施形態において、治療剤は、各々の投与により投与される組成物の固定体積(1投与あたり1mlの局所用組成物等)を提供する測定用量アプリケーター中で提供される。
【0053】
別の実施形態において、組成物は局所用ミノキシジル製剤を含むキット中でパッケージングされ得る。例えば、2%のミノキシジル局所用剤溶液、3%の局所用ミノキシジル溶液、5%の局所用ミノキシジル溶液、5%の局所用ミノキシジルフォーム、10%の局所用ミノキシジル溶液である。
【0054】
上で記載される及びこの文書の全体にわたる範囲は、これらの範囲内に含有される単一値を網羅することも意図されることは理解されるだろう。例えば、1~50%の間の範囲で特定の成分を含む製剤については、5%または49%のパーセンテージも開示されることが意図される。
【0055】
治療剤
本開示の方法は、植物性エストロゲンまたは他の化合物と共に使用され得る。好適な植物性エストロゲンは利用され得、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、ホルモノネチン、ビオカニンA、ダイジン、ゲニスチン、グリシチン、オノニン、シッソトリン、アセチルダイジン、アセチルゲニスチン、アセチルグリシチン、マロニルダイジン、マロニルゲニスチン、マロニルグリシチン、マロニルオノニン、またはマロニルシッソトリンが挙げられるがこれらに限定されない。追加で、植物性エストロゲンの誘導体は利用され得、上で言及される化合物の誘導体が挙げられる。他の実施形態において、活性化されて植物性エストロゲンになるプロドラッグは、利用され得る。
【0056】
一実施形態において、植物性エストロゲンは、0.0025%~40%、重量で0.0025%~25%、または重量で0.005%~22.5%、または重量で0.0075%~20%、または重量で1%~17.5%、または重量で1.5%~15%、または重量で2%~14.5%、または重量で2.5%~14%、または重量で5%~13.5%、または重量で7.5%~12.5%、または重量で8%~12%、または重量で8.5%~11.5%、または重量で9%~11%、または重量で9.25%~10.75%、または重量で9.5%~10.5%、または重量で9.6%~10.4%、または重量で9.7%~10.3%、または重量で9.8%~10.2%、または重量で9.9%~10.1%、または重量で9.95%~10.05%、または重量で9.96%~10.04%、または重量で9.97%~10.03%、または重量で9.98%~10.02%、または重量で9.99%~10.01%の濃度での組成物中の、ゲニステインもしくはダイゼイン、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物である。
【0057】
一実施形態において、植物性エストロゲンは、範囲の重量下限として重量で0.25%、0.5%、0.75%、1%、1.5%、2%、2.5%、5%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.25%、9.5%、9.6%、9.7%、9.8%、9.9%、9.95%、9.96%、9.97%、9.98%、または9.99%から、重量で10.01%、10.02%、10.03%、10.04%、10.05%、10.1%、10.2%、10.3%、10.4%、10.5%、10.75%、11%、11.5%、12%、12.5%、13.5%、14%、14.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%の重量上限までの範囲(例えば0.25%~10.01%、0.25%~10.02%、0.5%~10.01%、0.5%~10.02%などの範囲)の濃度での組成物中の、ゲニステイン、またはその薬学的に許容される塩もしくは水和物である。
【0058】
いくつかの実施形態において、植物性エストロゲンの頭皮への送達に最適化された担体または送達ビヒクルにより製剤化された植物性エストロゲンが、本明細書において提供される。植物性エストロゲンは、複数の異なる製剤または放出方法を使用して放出され得、時限放出、クリーム、軟膏、スプレー、カプセル、または他の放出方法が挙げられる。例えば、植物性エストロゲンは、シャワーを浴びる最中の利用のためにシャンプーの中へ取り込まれ得る。他の実施形態において、植物性エストロゲンは軟膏または他の局所用クリーム中に含まれ、それは皮膚の中へ緩慢に吸収され得るように頭皮へ適用され得る。他の実施形態において、植物性エストロゲンは、頭皮へ適用される、液体スプレーまたはエアロゾル媒体中に含まれ得る。他の実施形態において、植物性エストロゲンは、化学物質または薬剤が頭皮の真皮の中へ緩慢に放出されることを可能にする、カプセルまたは他の緩慢放出ビヒクルの中へ取り込まれ得る。植物性エストロゲンをカプセル化するカプセルまたはビヒクルとしては、リポソーム、非イオン性リポソーム、ニオソーム、Novasome I、エリスロマイシン-Zn複合体、マイクロスフェア、ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、及びナノエマルションが挙げられ得るがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、当該カプセルまたはビヒクルとしては、頭皮へ適用されるゲルまたはフォームが挙げられ得る。植物性エストロゲンは、ヘアケア製品(シャンプー、スタイリングジェル、スタイリングフォーム、ヘアコンディショナー、ヘアセラム、ヘアマスクなど等)中で製剤化され得ることが具体的に企図される。
【0059】
前述の植物性エストロゲンのうちの任意のものは、ルーチンに(例えば毎日1回、毎日2回、1日おき、または週1回)使用され得る。植物性エストロゲンのルーチンの使用は、男性型脱毛症患者におけるミノキシジルのためのアジュバント療法として指示されるだろう。好ましい実施形態において、前述の植物性エストロゲンのうちの任意のものの組成物(例えばシャンプー)は、ミノキシジルの有効性を増加させるために、ミノキシジルを使用する対象によって毎日使用され得る。
【0060】
男性型脱毛症を治療または予防するための治療の有効性は、対象の身体の所与の領域(例えば頭皮の所与の領域)上の毛髪の密度のモニタリングによって決定され得る。脱毛の率が治療後に例えば10%以上まで低減したならば、当該治療は男性型脱毛症の予防のために有効である。同様に、毛髪密度が同じままであるならば、当該治療は男性型脱毛症の予防のために有効である。毛髪の密度が治療後に例えば5%以上まで、例えば10%以上まで増加するならば、当該治療も、男性型脱毛症の治療及び/または予防のために有効であると判断される。
【0061】
男性型脱毛症を治療または予防する治療の有効性は、全体的な写真撮影のモニタリングによって決定され得る。例えば、患者または専門家は、全体的な写真の前後の治療応答を利用して査定することができる。
【0062】
上で指摘されるように、脱毛症のすべての形態は本明細書において記載される技術から利益を受け得ることが企図される。例えば、本明細書において記載される技術、は男性ホルモン性脱毛症を予防または治療するために適用可能であり得る。
【0063】
上で記載される様々な方法及び技法は、本発明を実行するための複数の手法を提供する。当然、記載されるすべての目的または利点は、必ずしも本明細書において記載される任意の特定の実施形態に従って達成され得るとは限らないことが理解されるべきである。したがって例えば、必ずしも本明細書において教示または示唆される他の目的または利点を達成せずに、本明細書において教示される1つの利点または利点の群を達成または最適化する様式で方法が遂行され得ることを、当業者は認識するだろう。様々な代替物が本明細書において言及される。いくつかの実施形態は特異的に1つまたは複数の特色を含むが、他のものは特異的に1つまたは複数の特色を除外する一方で、さらに他のものは1つまたは複数の有利な特色の組入れによって特定の特色を減じることが理解されるべきである。
【0064】
さらに、当業者は、異なる実施形態からの様々な特色の適用可能性を認識するだろう。同様に、上で検討された様々な要素、特色、及びステップ、そして各々のかかる要素、特色、またはステップについての他の公知の均等物は、本明細書において記載される原理に従って方法を遂行するために、当業者によって様々な組み合わせで用いられ得る。様々な要素、特色、及びステップの中でも多様な実施形態において、あるものは特異的に含まれ、他のものは特異的に除外されるだろう。
【0065】
ある特定の実施形態及び実施例の文脈において本出願を開示したが、本出願の実施形態が、具体的に開示される実施形態を超えて、他の代替実施形態及び/または使用ならびにその修飾及び均等物へ拡張されることは、当業者によって理解されるだろう。
【0066】
本明細書における値の範囲の列挙は、範囲内に収まる各々の分離した値を個別に指す簡便方法として供されることが単に意図される。本明細書において別段指示されない限り、あたかも本明細書においてそれが個別に列挙されるかのように、各々の個別の値は明細書の中へ援用される。本明細書において記載されるすべての方法は、本明細書において別段指示されない限りまたは別段明らかに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順序で遂行され得る。任意の及びすべての実施例、または本明細書におけるある特定の実施形態に関して提供される例示的な文言(例えば「等の」)の使用は、単に本出願をより良好に明らかにすることが意図され、請求項に記載されなければ、本出願の範囲に対する限定をもたらさない。本明細書内の文言は、本出願の実践に不可欠な任意の請求されていない要素の指示として解釈されるべきでない。
【0067】
本出願のある特定の実施形態が、本明細書において記載される。それらの実施形態についての変動は、前述の記載の読了に際して当業者に明らかになるだろう。当業者は必要に応じてかかる変動を用いることができ、出願は本明細書において具体的に記載される以外で実践され得ることが企図される。したがって、本出願の多くの実施形態は、適用法令において認められるように、本明細書に添付される請求項中で列挙される対象物のすべての修飾及び均等物を包含する。さらに、そのすべての可能な変動における上で記載される要素の任意の組み合わせは、本明細書において別段指示されない限りまたは別段明らかに文脈と矛盾しない限り、本出願によって包含される。
【0068】
本明細書において参照されるすべての特許、特許出願、特許出願の出版物、及び他の資料(論文、書籍、明細書、出版物、文書、物体、及び/または同種のもの等)は、この参照によってすべての目的のためにそれらの全体が本明細書において援用され、但し、それらと関連する任意の審査ファイル履歴、本文書と矛盾もしくは対立するそれらのうちの任意のもの、または本文書と関連する特許請求の最も広い範囲へ現在もしくは後に限定的な影響を有し得るそれらのうちの任意のものを除く。一例として、援用された資料のうちの任意のものと関連する用語の記載、定義、及び/または使用と、本文書と関連するものとの間に、任意の矛盾または対立があっても、本文書における用語の記載、定義、及び/または使用が優先するものとする。
【実施例】
【0069】
実施例1:植物性エストロゲン感受性の診断的評価
【0070】
使用のための適応症
【0071】
HairDx試験は、ESR2遺伝子における遺伝子バリアントSNP rs1013718の報告のために指示される。この報告は、女性が、試験された遺伝子バリアントに基づいて、植物性エストロゲン感受性及び女性型脱毛を発症するリスクの増加を有するかどうかを記載する。
【0072】
臨床実績
【0073】
植物性エストロゲン感受性及び女性型脱毛(Sinclairグレード3、4、または5)のある女性のおよそ85~88%は、SNP rs1013718の「CC」バリアントを有する。
【0074】
しかしながら、SNP rs1013718の「CC」バリアントの多くの女性は、女性型脱毛を発症しないだろうが、それでも植物性エストロゲンによる治療から利益を得るだろう。
【0075】
分析実績
【0076】
HairDx試験の精度を、双方向遺伝子シーケンシングに比較して決定した。HairDx試験からの結果は、99%を超えて正確であった。
【0077】
サンプル試験の結果
【0078】
エストロゲン受容体2(ESR2)遺伝子における特異的なバリアント(SNP rs10137185)のためのDNAサンプル。
【表1】
【0079】
類似する遺伝的変動の女性は、CTバリアントまたはTTバリアントの女性に比較して、女性型脱毛の発症のリスクの増加を有し、植物性エストロゲンによる治療から利益を得るだろう。
【表2】
【0080】
類似する遺伝的変動の女性では、女性型脱毛の発症のリスクが増加しておらず、植物性エストロゲンによる治療から利益を得ないだろう。
【表3】
【0081】
類似する遺伝的変動の女性では、女性型脱毛の発症のリスクが増加しておらず、植物性エストロゲンによる治療から利益を得ないだろう。
【0082】
オッズ比
【0083】
オッズ比は、遺伝子バリアントと女性型脱毛を発症するリスク及び植物性エストロゲン治療への応答性との間の関連性の強さを記載するものである。CCバリアントを保有する女性(オッズ比>1)は、CTバリアントまたはTTバリアントを保有する女性(オッズ比=1)に比較して、女性型脱毛を発症するリスクの増加を有する。
【表4】
【0084】
【0085】
実施例2:植物性エストロゲン感受性の決定のための手順
【0086】
注:参照ユーザーマニュアル及び指示書に従う。これらのユーザーマニュアル及び指示書への参照は、PureLink(登録商標)ゲノムDNAキットユーザーマニュアル(25-1012、Thermo fisher)及びTaqMan(登録商標)SNP遺伝子型決定アッセイユーザーガイド(出版番号MAN0009593改訂版B.0)へのものであり、それらの各々は、参照することによってそれらの全体が本明細書に援用される。
【0087】
サンプリング機器
【0088】
唾液収集デバイス - 液体輸送媒質中のOragene OCD100A/OGD 610(DNA genotek Inc)。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
リアルタイムPCR装置
【0093】
HairDx試験は、以下のリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)装置を使用して遂行されるだろう。例示的なプロセス流れ図については、
図1を参照されたい。
【0094】
表4:リアルタイムPCR装置の具体的な詳細
【表9】
【0095】
HairDx試験ワークフロー
【0096】
検体収集及びDNA抽出
【0097】
抽出したDNAの質は、リアルタイムPCRアッセイによる感度に本質的に結びつき、したがってサンプルは以下のガイドラインに従って、収集及び保存されなくてはならない。
唾液サンプルを、ORA collect-Dx OGD-610収集デバイスにより提供された指示書に従って収集し取り扱う。
収集した唾液サンプルからのDNAを、受け取り後30日以内に抽出する。
DNAを、PureLink(商標)ゲノムDNAミニキット(カタログ番号:K182002)抽出プロトコルを使用して収集デバイスから抽出する。
優良試験所基準は、1分析あたり少なくとも1つの陽性及び陰性の抽出対照を含むことを推奨する。
抽出したサンプルを、長期保存のために-80℃~-20℃で保存する。
注:もし長期間保存するならば、低濃度のDNAは不安定であるかもしれない。
【0098】
表5:推奨される抽出プロトコル(商業的プラットフォーム)
【表10】
【0099】
表6:DNAの抽出前に要求されるステップ
【表11】
【0100】
DNA定量
1.Biotek PowerWave XSを使用して、Take 3マイクロプレートによりgDNAを定量する(UV/可視光分光測光吸収をA260/A280nmの波長で測定する)。
2.設置、操作、較正、洗浄、及び保守の手順を含むすべてのステップは、別段明記されない限り製造者の指示書に従って遂行される。
3.gDNAサンプルチューブを、最大スピードで5~20秒間ボルテックスで撹拌する。微量遠心分離機を使用して5~10秒間DNAサンプルチューブを遠心分離して、蓋から液体を除去する。
4.2μLのTEバッファーを使用して、装置を空にする。
5.2μLの各々のgDNAサンプルを二重で読み取る。
6.適切な方法により決定されるように、精製したgDNAは1.7~1.9のA260/A280比を有するべきである。
7.必要であるならば、gDNAを、使用の前に0.1mMのEDTAを含有する10mMのトリス(pH8.0)(TEバッファー-低EDTA)またはヌクレアーゼフリー水中で希釈する。
【0101】
3.0試験手順及びPCRセットアップ
【0102】
注:
隣接するウェル中で、各々のプライマー/プローブマスターミックスと共に、各々のサンプル、陽性対照、または陰性対照を実行すること、例えばサンプル1を反応ウェルA1及びB1中で試験することが推奨される。
PCRセットアップの開始の前に、サンプルを適切なプラスチック製品内の適切なウェルへ割り当て、この情報を追跡可能性の目的のために記録する。
アンプリコンフリー領域内で、PCR試薬及びTaqManアッセイ混合物を融解する。
PCR Pro Ampマスターミックス、及びプライマープローブマスターミックスの各々を短時間ボルテックスで撹拌し遠心分離する。
【0103】
3.1 TaqManプローブ/アッセイの希釈
【0104】
40×または80×のあらかじめデザインされたカスタムのTaqMan(登録商標)SNP遺伝子型決定アッセイを、1×TEバッファーにより20×ワーキングストック溶液へ希釈する。
【0105】
注:1×TEバッファー組成物:DNaseフリー滅菌済み濾過水中で、10mMのトリスHCl、1mMのEDTA(pH8.0)。
【0106】
注:即時使用可能になるまでTaqMan試薬を暗所で保存する。それらを反応混合物へ最後に添加する。一旦添加したならば、プレートをサーモサイクラー上で実行した後に廃棄するまで、プレートを暗所で保存する。凍結融解サイクルを最小限にする。
【0107】
3.2要求される反応の数について、以下の構成要素を+10%過剰で組み合わせる。
【0108】
1.ヌクレアーゼフリー水中で対照を含む各々のDNAサンプルを希釈して、1ウェルあたり20ngを加える。少なくとも0.2ng/μLの最終濃度が要求される。
2.表1に従って以下の構成要素を添加する。
3.体積は反応ウェルあたりで与えられ、陽性対照及び陰性対照を考慮に入れて反応ウェルの数を掛けるべきである。2つの追加の反応もピペッティング誤差を補うために添加するべきである。調製したPCR反応マスターミックスを、完全に混合し10秒間遠心分離しなくてはならない。
【0109】
表7:1サンプルあたりのPCR反応のためのセットアップ
【表12】
【0110】
実施例:SNPの遺伝子型を決定する10のサンプル、1つの陽性対照、及び1つの陰性対照について、PCR Taqmanマスターミックス(SNP)の最終体積は、14×14=193μL(12の反応及びピペッティング誤差を考慮して2つの余剰)であるだろう。
各々のサンプルまたは対照のために、試験されているSNPについてのPCRマスターミックスから15μLを分注する。
各々のサンプルについて、10μLの抽出したgDNAサンプルを、SNPに適切なマスターミックスを含有するウェルへ添加する。
各々の陽性対照反応について、10μLの陽性対照をSNPマスターミックスを含有するウェルへ添加する。
少なくとも1つの陽性対照が各々のマスターミックスに含まれて、反応効率についての詳細を提供するべきである。
各々の陰性対照反応について、11.25μLの陰性対照をSNPマスターミックスを含有するウェルへ添加する。
【0111】
表8:PCRの反応ウェルあたりの分注体積
【表13】
*20ngのgDNAが11.25μL未満の体積をもたらす事例において、ヌクレアーゼフリー水を添加して、反応体積の合計を25μLにする。
【0112】
プラスチック製品をここで接着フィルムによりシールし、次いで短時間遠心分離して、ウェルの一番下へ反応混合物を導き、気泡を消失させるべきである。非光学シールをこのステップのために使用することができる。遠心分離後に、増幅のための認証されたサーマルサイクラーへプラスチック製品を移す。装置マニュアルは、増幅実行のセットアップについての指示書を参照するべきである。増幅は装置に特有のパラメーターに従って実行されるべきである。
【0113】
サーマルサイクラー条件
【0114】
リアルタイムPCR装置を操作し、データ分析及びプログラムを遂行する方法の情報について、Quantstudio 5マニュアルを参照して、装置は、本明細書において記載される条件に従う。各々のサンプルについての増幅プロットを視覚的に検査して、記録された結果が真の増幅に起因し、定義された閾値を超えて記録されたバックグラウンドノイズへ帰着できないことを保証することは重要である。各々のチャンネルに適切なフルオロフォアを選択し、関係のある標的へ割り当てる。
【0115】
以下の設定によりリアルタイムPCR装置を構成する。
実験タイプ:定性的
使用する試薬:TaqMan
試薬ランプスピード:標準
反応液体積:25μL
パッシブリファレンス色素:ROX
【0116】
表9:HairPGx試験のためのサーマルサイクリング条件
【表14】
【0117】
表10:HairPGx標的SNPの存在を検出するために使用した検出器チャンネル
【表15】
【0118】
結果の解釈
【0119】
内部対照
【0120】
内部対照の検出は、陽性結果を要求しない。内部対照が失敗したが、サンプルがHairPDx SNPのうちの1つについて陽性として報告される例において結果は、有効であると判断されるべきである。サンプルがすべての標的について陰性であり、内部対照が陰性であることが報告される事例において、同じサンプルであるが1:10に希釈したものを使用して、アッセイを反復するべきである。次いで内部対照が陽性ならば、以前の結果は取扱い誤差/PCR阻害に起因するものであり、新しい再試験結果を報告するべきである。内部対照が再テスト後に陰性としてそれでもなお報告された事例においては、そのときサンプルは、抽出ステップから開始して再試験するべきである。
【0121】
実験データの分析
【0122】
使用する装置に基づくデータ分析のための指示書に従う。
表11:データ分析のための指示書
【表16】
【0123】
自動コールを行うためのQuantstudioデスクトップ及び分析ソフトウェアの使用のための指示書。
【0124】
対立遺伝子識別プロット(
図2を参照)を、結果タブ下で見ることができる。データは結果タブにおいて提示されない事例においては分析をクリックする。
【0125】
1.結果タブ下で、ドロップダウンオプションを使用して、対立遺伝子識別プロットを選択する。
【0126】
2.プロットの構成(configure plot)上でクリックし、以下の通り選択をすることによって、プロットを構成することができる。SNPアッセイ:関心のアッセイを選択することができ、プロットタイプ:デカルトまたは極のいずれかを選択する。一旦これが行われたならば、対立遺伝子識別プロットは、選択されたSNPアッセイについて提示される。
【0127】
注:すべてのウェルがプレートレイアウト中で選択されているので、プロット中のポイントはすべてシアンであり、プロット中のまたはプレートレイアウト上にどこでもクリックすることによって、ウェルを選択から外すことができる。これを行うことによって、プロット中のデータポイントはコールカラーへ変化する。
【0128】
3.予想される対照データクラスターの確認。
a.プロット中のそれぞれのデータポイントをハイライト表示するために、ウェル表またはプレートレイアウト下の対照を含有するウェルを選択する。
b.各々の遺伝子型の対照についてのデータポイントが、プロットの予想される軸に沿ってクラスター化することをチェックする。
【0129】
4.陰性対照ウェルのみが選択されていることを確認するために、プロットの左下隅のクラスターをクリックし、対応するウェルのみがプレートレイアウトまたはウェル表中で選択されていることを確実にする。
【0130】
サンプルは、以下の理由:サンプルがDNAを含有しない、サンプルがPCR阻害物質を含有する、及び/またはサンプルが配列欠失についてホモ接合である、に起因して、陰性対照と予想外にクラスター化し得る可能性がある。
【0131】
5.プロット中の他のクラスターの精査するために、以下のステップに従う。
a.クリックによってクラスターの付近にボックスを生成し、選択した関連するウェルへボックスをドラッグする。
b.対応するウェルが、プレートレイアウトまたはウェル表中で選択されているかどうかをチェックすることによって確認する。
【0132】
6.サンプル結果が3つの遺伝子型クラスターの外側に入るならば、外れ値を検出することができる。外れ値が検出される事例において、外れ値そして増幅しなかったサンプルについての再試験の遂行によって、結果を確認するべきである。
【0133】
手動コールを行うための指示書:
【0134】
手動コールを結果タブ下で遂行することができる。
1.ドロップダウンメニューを使用して、対立遺伝子識別プロットを選択する。
2.画面が分析されたデータを示さなかった場合は、分析オプションをクリックする。
3.対立遺伝子識別プロット下で、投げ縄ツール(lasso tool)を使用して、サンプルを手動コールを行うために選択することができる。
5.
【化1】
ボタンをクリックし、コールドロップダウンオプションの適用(apply call dropdown option)を使用して、対立遺伝子コールを選択する。
6.分析をクリックする。
表12:対立遺伝子識別プロット中のクラスターアサインメント
【表17】
【国際調査報告】