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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】回転電気機械のためのカバー
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
H02K5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559982
(86)(22)【出願日】2021-03-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2021055857
(87)【国際公開番号】W WO2021197770
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2003283
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508075579
【氏名又は名称】ヴァレオ エキプマン エレクトリク モトゥール
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】クレマン、ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ、ワルメ
(72)【発明者】
【氏名】チャーリー、ザネッラ
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン、ボーコテ
(72)【発明者】
【氏名】ダビド、デュモンターニュ
(72)【発明者】
【氏名】シャルル、デュメ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ、ダ、クルス、レベロ
(72)【発明者】
【氏名】アブデルアジズ、アジジ、サミル
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル、ファルギエール
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605AA20
5H605CC01
5H605DD07
(57)【要約】
本発明は、回転軸(X)を有する回転電気機械のためのカバーに関し、当該カバー(42)は、機械(10)のインバーター(36)に配置されるように設けられる。カバーは、半径方向に延び且つカバーの外周を形成するスカート(43)であって、当該外周がカバーの内側部分を定めるスカート(43)と、内側部分に配置され、少なくとも1つの軸方向開口部(45)を含む開口領域(44)とを備える。開口領域(44)は、カバーの内側部分の少なくとも50%にわたって延びる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(X)を有する回転電気機械のためのカバーであって、前記カバー(42)は、前記機械(10)のインバーター(36)に配置されることが意図されており、前記カバー(42)は:
a. 軸方向に延び且つ前記カバーの外周を形成するスカート(43)であって、前記外周が前記カバーの内側部分を定める、スカート(43)と、
b. 前記内側部分に配置され且つ少なくとも1つの軸方向開口部(45)を含む開口領域(44)と、
を備え、
前記カバー(42)が、前記開口領域(44)が前記カバーの前記内側部分の少なくとも50%にわたって延びる
ことを特徴とする、カバー。
【請求項2】
前記開口領域(44)は、前記カバー(42)の前記内側部分の少なくとも70%にわたって、特に84%にわたって、延びる
ことを特徴とする、請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記開口領域(44)は、複数の軸方向開口部(45)を有する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のカバー。
【請求項4】
前記機械(10)の少なくとも1つの相接続部(38)と軸方向に反対側に配置されることが意図される少なくとも1つの軸方向保護部分(47)を備え、前記軸方向保護部分(47)は前記内側部分内へ延びる
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項5】
前記スカート(43)は、少なくとも2つの半径方向保護部分(48)であって、当該少なくとも2つの半径方向保護部分(48)の各々が、前記機械(10)の少なくとも1つの相接続部(38)に半径方向に対向して配置されることが意図されている、少なくとも2つの半径方向保護部分(48)と、前記2つの半径方向保護部分(48)の間で周方向に延びる少なくとも1つの接続部分(49)と、を備え、前記接続部分は、軸方向において、前記半径方向保護部分の軸方向における高さ(H1)よりも小さい高さ(H2)を有する
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項6】
前記スカート(43)は、閉じた外周を形成する
ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項7】
少なくとも1つの取付部分(53)を更に備え、前記取付部分は、前記回転電気機械(10)のインバーター(36)に前記カバー(42)を取り付けるために取付要素(54)と協働することが意図されており、前記取付部分(53)は前記内側部分内に延びる
ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項8】
前記内側部分内に延びる少なくとも1つの把持手段(55)を更に備える
ことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のカバー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のカバー(42)と、インバーター(36)とを備え、前記カバーは前記インバーターに取り付けられる、回転電気機械。
【請求項10】
前記インバーター(36)はコンデンサーバンク(34)を備え、前記開口領域(44)は前記コンデンサーバンクと少なくとも部分的に軸方向に整列するように配置される
ことを特徴とする、請求項9に記載の機械。
【請求項11】
前記インバーター(36)は少なくとも1つのヒートシンクプレート(41)を備え、前記プレートは、少なくとも部分的に、前記インバーター(36)の1つの軸方向端部を形成し、少なくとも部分的に前記開口領域(44)に面して配置される
ことを特徴とする、請求項9又は10に記載の機械。
【請求項12】
前記インバーター(36)の1つの軸方向端部に配置されるシャッター(58)を更に備え、前記シャッターは、前記インバーターのコンデンサーバンク(34)に対向して配置される半径方向に延びる部分(61)を含む
ことを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、特に、回転電気機械のためのカバーに関する。
【発明の概要】
【0002】
発明は、オルタネーター、スターター-オルタネーター、或いは可逆性機械(reversible machines)や電気モータなどの回転電気機械の分野で特に有利に適用可能である。ちなみに、可逆性機械は、例えば自動車などの輸送体(vehicle)の熱機関を始動させるために、一方ではオルタネーター機能の発電機として、他方では電動機として、可逆的なやり方で動作可能な回転電気機械である。
【0003】
回転電気機械は、軸を中心に回転自在なローターと、固定されたステーターを備える。オルタネーターモードにおいて、ローターが回転している場合、それがステーターにおいて磁界を誘起し、そのことは、輸送体のうちの電気を消費するものに電力を供給するために及びバッテリーを充電するために、それを電流に変換する。モーターモードにおいて、例えば熱機関を始動させるために、ステーターは電気的に動力が供給されて、ローターを回転させる磁界を誘起する。
【0004】
ローターとステーターとで形成されるアセンブリは、インバーターが配置されたケーシングに配置される。機械の電子アセンブリを形成するインバーターは、従来はカバーで保護される。そのカバーは、半径方向に延びてインバーターの軸方向端面を覆うプレートと、プレートから軸方向に延びてインバーターの周縁を覆うスカートとを有する。プレート及び/又はスカートは、冷却気流が通ることを許容する開口部を有しうる。
【0005】
そのようなカバーは、回転電気機械の要素を、前記要素を冷却するという観点での性能を低下させることなく、保護するのに役立つ最適な形状を有していない。
【0006】
本発明の目的は、最適化されたカバー形状を提案することにより、先行技術の欠点の回避を助けることである。
【0007】
したがってこの目的のため、本発明は、回転軸を備える回転電気機械のためのカバーに関する。そのカバーは、前記機械のインバーターに配置されることを意図しており、軸方向に延び且つカバーの外周を形成するスカートを備え、前記外周は、カバーの内側部分と、前記内側部分に配置され且つ少なくとも一つの軸方向開口部を備える開口領域とを定める。本発明によれば、開口領域は、カバーの内側部分の少なくとも50%にわたって延びる。
【0008】
カバーにおけるそのような開口領域の存在は、冷却気流の通行をかなり改善するのに役立ち、それによって、カバーの機械的強度又は外部環境に対する機械の要素の保護に影響を与えることなく、インバーターのより良い冷却を行うことを可能にする。実際、カバーにおいて開口部の面積を大きくすることは、特に、カバーとインバーターの間、特にインバーターの軸方向端面における気流の循環を促進することを可能にする。更に、この新しいカバー形状は、機械の軸方向の必要スペースとその重量を減らし、インバーターの配置、特に機械が搭載される輸送体の汎用コンピュータにインバーターを接続するためのコネクタの配置を簡素化することにも役立つ。
【0009】
一実施形態によれば、開口領域は、カバーの内側部分の少なくとも70%、具体的には84%、にわたって延びる。この開口領域の寸法の増大は、インバーターの冷却性を向上させるために、カバーの形状を更に最適化するのに役立つ。
【0010】
一実施形態によれば、その開口領域は、内側部分の領域の全体にわたって延びる。
【0011】
一実施形態によれば、開口領域の軸方向開口部は、カバーの内側部分の少なくとも50%にわたって延びる。ここで、カバーは、カバーの内側部分の少なくとも50%にわたって延びる少なくとも1つの開口部を有することが理解されるべきである。また、カバーは他の開口部を有してもよい。
【0012】
一実施形態によれば、開口領域は、複数の軸方向開口部を備える。これは、内側部分に保護要素、把持要素、又は機械的強度などの要素を付加する可能性を維持したまま、開口領域を拡大することを可能にする。或いは、開口領域は、1つの軸方向開口部から形成されてもよい。
【0013】
一実施形態によれば、カバーは、機械の少なくとも1つの相接続部に軸方向に反対側に配置されることを意図した少なくとも1つの軸方向保護部分を備え、軸方向保護部分は内側部分内に延びる。軸方向保護部分は、機械の安全な運転を確保するために、ステーターの相とインバーターの相との間の電気的接続を外部環境から保護するのに役立つ。
【0014】
例えば、軸方向保護部分は、スカートから延びる。
【0015】
一実施形態によれば、スカートは、機械の少なくとも1つの相接続部に半径方向に対向して配置されることを意図した少なくとも1つの半径方向保護部分を備える。この半径方向保護部分は、機械の相接続部を外部環境から保護するのに役立つ。
【0016】
一実施形態によれば、スカートは、少なくとも2つの半径方向保護部分であって、各々が機械の少なくとも1つの相接続部に半径方向に対向して配置されるように意図されている少なくとも2つの半径方向保護部分と、前記2つの半径方向保護部分間で周方向に延びる少なくとも1つの接続部分とを備え、その接続部分は、軸方向において、半径方向保護部分の軸方向の高さよりも低い高さを有する。半径方向保護部分と接続部分との間の高さの違いは、カバーに一次半径方向開口領域を設けることを可能にする。その半径方向開口部は、インバーターの冷却性を向上させるのに役立つ。例えば、一次半径方向開口領域は、1つ又は複数の一次半径方向開口部から形成される。
【0017】
一実施形態によれば、接続部分の高さは、半径方向保護部分の高さの半分より小さい。すなわち、軸方向における一次半径方向開口領域の高さは、半径方向保護部分の軸方向厚さの半分よりも大きい。
【0018】
一実施形態によれば、スカートは、半径方向保護部分と接続部分との連続から形成される。
【0019】
一実施形態によれば、各半径方向保護部分は、二次的な半径方向開口領域を有する。これは、機械の冷却を向上させるのにも役立つ。例えば、二次半径方向開口領域は、1つ以上の二次半径方向開口部から形成される。
【0020】
例えば、二次半径方向開口領域の面積は、関連する保護部分の面積の15%~25%である。これは、カバーの機械的強度を確保して外部環境から機械を保護しながら、機械の冷却を向上させるのに役立つ。
【0021】
一実施形態によれば、スカートは、閉じた外周を形成する。これは、カバーの機械的強度を向上させるのに役立つ。
【0022】
一実施形態によれば、カバーは、少なくとも1つの取付部分を更に備え、取付部分は、回転電気機械のインバーターにカバーを取り付けるために取付要素と協働することを意図し、取付部分は内側部分内へと延びる。
【0023】
例えば、その軸方向取付部分は、スカートから又は軸方向保護部分から又は把持手段から、延びる。
【0024】
一実施形態によれば、取付部分は、半径方向に延び、取付要素が通過することができる開口部を備える。
【0025】
一実施形態によれば、カバーは、内側部分内へ延びる少なくとも1つの把持手段を更に備える。この把持手段は、機械を組み立てるプロセスの間、それらが一緒に取り付けられる前に、インバーターにおけるカバーの構成を簡素化することを可能にする。
【0026】
例えば、把持手段は、スカートから、又は取付部分から、又は軸方向保護部分から延びる。
【0027】
一実施形態によれば、把持手段は、半径方向平面において延びる平面部分から形成される。これにより、機械の軸方向の必要スペースを増やすことなく、カバーを移動させることが可能になる。これは、また、機械のリファレンスを記録するためのラベリングエリア(labelling area)を提供しうる。
【0028】
一実施形態によれば、把持手段の少なくとも一つの端部には、当該手段がスカートと距離を置いて軸方向に延びるように、セットバック部分が形成される。これは、機械の冷却を向上させるために、スカートの軸方向の高さを抑えるのに役立つ。
【0029】
本発明はまた、前述したように、インバーターとカバーとを備える回転電気機械に関し、カバーがインバーターに取り付けられている。回転電気機械は、有利には、オルタネーター、スターター-オルタネーター、可逆性機械又は電気モータを形成することができる。
【0030】
一実施形態によれば、インバーターは、機械のステーターの相に電力を供給するための、及び/又は、前記相から出る電流を整流するための電力ステージを備える。インバーターは、機械を制御するための制御ステージを更に備える。
【0031】
一実施形態によれば、インバーターは、少なくとも1つのヒートシンクプレートを備え、前記プレートは、少なくとも部分的に、前記インバーターの1つの軸方向端部を形成し、少なくとも部分的に開口領域に面して配置される。ヒートシンクプレートは、インバーターの要素を外部環境から保護するのに役立ち、また伝導によるインバーターの冷却を向上させるのに役立つ。
【0032】
一実施形態によれば、インバーターはコンデンサーバンクを備え、開口領域は、コンデンサーバンクと少なくとも部分的に軸方向に整列するように配置される。
【0033】
一実施形態によれば、機械は、前記機械のステーター及びローターを少なくとも部分的に囲むように配置されたケーシングを備え、インバーターは、カバーとケーシングとの間に軸方向に配置される。
【0034】
一実施形態によれば、回転電気機械は、インバーターの1つの軸方向端部に配置されたシャッターを更に備え、シャッターは、インバーターのコンデンサーバンクと反対側に配置された半径方向に延びる部分を含む。半径方向に延びる部分は、外部環境からコンデンサーバンクを保護するのに役立つ。
【0035】
一実施形態によれば、機械は、前記機械のステーター及びローターを少なくとも部分的に囲むように配置されたケーシングを備え、シャッターは、ケーシングとインバーターとの間に軸方向に配置される。シャッターは、ケーシングに配置された軸方向の開口部を、少なくとも部分的に覆うことを可能にする。そのためシャッターは、ローター又はステーターによって既に加熱されている冷却気流が、インバーターにおいて循環することを防ぐのに役立つ。
【0036】
一実施形態によれば、電力ステージ及び制御ステージは、それらの間に冷却通路を定めるように軸方向に重ねられ、一次半径方向開口領域は、特に、少なくとも部分的に前記冷却通路に面して配置される。
【0037】
一実施形態によれば、機械は、少なくとも1つの相端子を含むステーターを備え、インバーターは、少なくとも1つの電力端子を含む少なくとも1つの電力モジュールを備え、電力端子は、相接続を形成するために相端子に電気的に接続されている。
【0038】
本発明は、発明の非限定的な例示的実施形態の以下の詳細な説明を読むことによって及び添付の図面を検討することによって、よりよく理解されうる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、発明の一例による回転電気機械の概略部分断面図を示す。
図2図2は、インバーターに取り付けられる発明によるカバーの一例の概略部分斜視図を示す。
図3図3は、図2に示したカバーの概略部分斜視図を示す。
図4図4は、発明によるシャッターの一例を示す概略部分斜視図を示す。
図5図5は、発明によるカバーの他の例の概略部分斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
同一、類似又は比較可能な要素は、図面毎に同じ参照符号を使用する。また、個々の図面は必ずしも同じ縮尺でないことに留意されるべきである。また、以下に説明する実施形態は、何ら限定的なものではない。特に、以下に説明される特徴の中から選択したもののみを含む発明の変形を、説明される他の特徴から切り離して考えることが可能である。
【0041】
図1は、特に自動車やドローンなどの輸送体のための、コンパクト且つ多相の回転電気機械10の例を示す。この機械10は、オルタネーターモードにおいて、機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを機械エネルギーに変換するためにモーターモードで動作させることができる。この回転電気機械10は、例えば、オルタネーター、スターター-オルタネーター、可逆性機械、又は電動機である。
【0042】
この例において、機械10はケーシング11を備え、当該ケーシング11にインバーター36が搭載される。このケーシング11の内側において、それは更に、シャフト13と、シャフト13と一体となって回転するローター12と、ローター12を取り囲むステーター15とを有する。ローター12の回転運動は、軸Xを中心に行われる。残りの説明において、軸方向は軸Xに対応し、当該軸Xはシャフト13をその中心で通過し、その一方で半径方向の方位は、軸Xと同時的(concurrent)である平面、特に軸Xに垂直な平面、に対応する。半径方向に関し、内側という用語は、軸に向かって方向付けられる要素又は第2要素よりも軸に近い要素に対応し、外側という用語は軸からの隔たりを表す。
【0043】
本例において、ケーシング11は、互いに接合される前方端部プレート16と後方端部プレート17とを備える。これらの端部プレート16、17は中空形状であり、シャフト13の回転可能な取り付けのために、それぞれのボールベアリング18、19に結合されたベアリングキャリアを中心的に担持する。更に、ケーシング11は、回転電気機械10を輸送体に搭載するための取付手段(不図示)を有する。
【0044】
シャフト13の前方端部には、プーリ20などの駆動部材が固定されていてもよい。この部材は、回転運動をシャフトに伝達することを可能にし、或いはシャフトがその回転運動をベルトに伝達することを可能にする。説明の残りにおいて、前方/後方という用語はこの部材に言及する。したがって、前方面は、その部材の方向に向けられた面であり、後方面は、前記部材から離れる方向に向けられた面である。
【0045】
シャフト13の後方端部は、このケースにおいて、整流子22に属するスリップリング21が装着されている。ブラシホルダー(図示せず)は、スリップリング21を擦るように配置される複数のブラシを備える。ブラシホルダーは、インバーター36に接続され、特にインバーターの制御モジュール23に接続される。
【0046】
前方端部プレート16及び後方端部プレート17は、ローター12の前方軸面に配置された前方ファン25及び前記ローターの後方軸面に配置された後方ファン26の回転によってもたらされる空気循環によって機械10を冷却できるように、気流の通過のための実質的に横方向の開口部を有していてもよい。
【0047】
この例において、ローター12は、2つのポールホイール(pole wheels)31を有するクローポールローター(claw-pole rotor)である。各ポールホイール31は、横方向に向いたプレートと、磁極を形成する複数の爪と、円柱状のコアとから形成される。ローターは、コアの周りに巻かれるコイル35を有する。例えば、整流子22に属するスリップリング21は、前記コイル35にワイヤ接続で接続されている。また、ローター12は、隣り合う2つの爪の間に介在する永久磁石などの磁気要素32を備えてもよい。代替的に、ローターは、磁極を形成する永久磁石を収容する積層スタックから形成されてもよい。
【0048】
この例示的な実施形態において、ステーター15は、電気巻線28の取り付けのためのスロット絶縁部が備えつけられる、スロットが設けられる積層スタックから形成された本体27を有する。巻線は本体27においてスロットを通過し、ステーターの本体の両側における前方張り出し部及び後方張り出し部を形成する。更に、巻線28は、少なくとも1つの導電体を有する1つ以上の相から形成される。各相は、インバーター36に電気的に接続される相出力部33を形成する端部を有する。
【0049】
この例ではケーシング11に取り付けられているインバーター36は、機械の電子アセンブリを形成する。インバーターは、巻線28の電気相から又は電気相に、電力信号を受けるように又は供給するように使用される電力ステージを備える。電力ステージは、相接続部38を形成するために相出力部33に電気的に接続されるように配置された電力端子37を含む少なくとも1つの電力モジュール24を備える。その電力モジュールは、ステーターの相によって発生した交流電圧を直流電圧に変換するための及び/又は、逆に、直流電圧を交流電圧に変換してステーターの相に供給するためのブリッジ電圧整流器を形成する。インバーターはまた制御ステージを備え、当該制御ステージは、特にブラシホルダーを介してローター12に入力される電圧を調整することを可能にする制御モジュール23を有し、輸送体の外部のコンピュータとのインターフェースを提供する。
【0050】
図1及び図2に示す例では、電力ステージと制御ステージが軸方向に互いに重ねられている。より詳細には、この例において、電力ステージは、ケーシング11に取り付けられた第1ヒートシンク39と呼ばれるヒートシンクを備え、電力モジュール24が、前記第1ヒートシンクに取り付けられる。更に、制御ステージは、第1ヒートシンク39に取り付けられる第2ヒートシンク40と呼ばれるヒートシンクを備え、制御モジュール23が、前記第2ヒートシンクに取り付けられる。例えば、その2つのヒートシンクは、各々が金属などの熱伝導性の材料で形成される。
【0051】
また、インバーター36は、インバーターからの電気信号をフィルタリングするための少なくとも1つのコンデンサ(図示せず)を含む。そのコンデンサは、1つ又は複数のコンデンサを含みうるコンデンサーバンク34に配置される。コンデンサーバンクは、例えば、第1ヒートシンク39における凹部に配置される。前記凹部は、第2ヒートシンク40によって閉じられていてもよい。コンデンサーバンク34は、この例において、前記バンクの冷却を向上させるために、2つのヒートシンクの間に配置される。
【0052】
機械10は、インバーター36に装着されるカバー42を更に備える。例えば、そのカバーは、プラスチックなどの電気的に絶縁性の材料から形成される。さらなる例として、そのカバーは一体型部品であり、特に、例えば成形によって、単一部品として形成される。
【0053】
カバー42は、軸方向に延び且つカバーの外周を形成するスカート43を含む。言い換えれば、その外周は、内側においてカバーの内側部分が定められる外側周部を形成する。カバー42は、その内側部分に配置された開口領域44を有する。開口領域44は、カバー42の内側部分の軸方向端部エリアの少なくとも50%にわたって、特に少なくとも70%にわたって、延びる。カバーの内側部分の軸方向端部エリアは、スカートの外周で区切られたエリアであると定められる。換言すれば、カバー42は、前記カバーの軸方向端部エリアの全体の半分未満を覆うエリアにわたって軸方向に閉じられている。
【0054】
図2に示す例において、開口領域44は、カバー42の内側部分の軸方向端部エリアの84%に等しいエリアにわたって延びる。所定の速度でのインバーター36の温度は、開口領域の開口率がこの例の場合、平均して約143.2℃であるのに対し、開口率が20%未満である従来のカバーを備える先行技術のインバーターの温度は約147℃であった。発明のこの例示的な実施形態では、所定の速度でのインバーター36の温度は、したがって、先行技術のカバーと比較して3.8℃だけ低下している。
【0055】
開口領域44は、コンデンサーバンク34と少なくとも部分的に軸方向に整列するように配置されてもよい。更に、この例において、インバーター36は、制御ステージを覆うように配置されたヒートシンクプレート41を含む。例えば、ヒートシンクプレート41は、金属材料から形成される。より具体的には、コンデンサーバンク34と接触する第2ヒートシンク40の部分とヒートシンクプレート41との間に熱接着剤を配設してもよい。これは、伝導によるコンデンサーバンクの冷却を改善するのに役立つ。カバー42がその面積の少なくとも50%にわたって、特にコンデンサーバンク34の上方で、軸方向に開口しているという事実は、当該バンクの冷却を更に向上させるのに役立つ。実際、ヒートシンクプレート41の後方軸方向端面は、より多くの量の冷却気流にさらされ、このことは、カバー42と当該プレート41との間に軸方向に熱気が滞留することを防止することにも役立つ。
【0056】
開口領域44は、ヒートシンクプレート41に面して配置される。更に、この例において、制御モジュール23を輸送体の外部のコンピュータに接続して機械を制御するために、信号接続部46が前記プレート41及び開口領域44を貫通するように配置される。
【0057】
開口領域44は、少なくとも1つの軸方向開口部45から形成される。図2及び図3に示す例において、開口領域は、3つの軸方向開口部45を有する。それらの開口部45は、この例において、異なる形状及びサイズである。
【0058】
カバー42は、少なくとも1つの相接続部38に対して軸方向へ反対側に配置された少なくとも1つの軸方向保護部分47を含んでいてもよい。その軸方向保護部分は、スカート43から内側部分内へ延びる。前記部分47は、半径方向に延びる。図2に示す例において、ステーター15は、機械の外周に沿ってペアにまとめられた6つの相出力部33を備える。したがって、この例において、カバー42は、3つの軸方向保護部分47を含み、当該3つの軸方向保護部分47の各々が2つの相接続部38に対して軸方向に反対側に配置される。代替的に、各軸方向保護部分は、単一の相接続部又は2より多い数の相接続部と対向して配置されうる。
【0059】
スカート43は、インバーター36及び特に制御ステージを少なくとも部分的に取り囲むように、円周方向に延びる。スカート43は、少なくとも2つの半径方向保護部分48と、少なくとも1つの接続部分49とを備える。各半径方向保護部分48は、機械の少なくとも1つの相接続部38に半径方向に対向して配置される。好ましくは、各軸方向保護部分47は、半径方向保護部分48から延びる。図2に示す例において、スカート43は3つの半径方向保護部分48を備え、各半径方向保護部分48は2つの相接続部38と半径方向に対向して配置される。或いは、各半径方向保護部分は、単一の相接続部又は2より多い複数の相接続部に対向して配置されることも可能である。
【0060】
接続部分39は、2つの半径方向保護部分48の間で円周方向に延びる。したがって、スカートは、半径方向保護部分48及び接続部分49の連続から形成される。接続部分49は、特に、互いに関して軸方向に整列するように、延びる。例えば、この例において、スカート43は、閉じた環状の外周を形成する。
【0061】
図3に示すように、接続部分49は、この例において、半径方向保護部分48のそれぞれの高さH1よりも小さい高さH2を有し、当該高さH1、H2は、軸方向に測定される。接続部分49の軸方向端部は、好ましくは、隣り合う半径方向保護部分48の軸方向端部と半径方向平面において整列されるように配置される。
【0062】
図2に示す例において、接続部分49の高さH2は、半径方向保護部分48の高さH1の半分未満である。
【0063】
半径方向保護部分48と接続部分49との間の高さの差は、カバー42に一次半径方向開口領域を形成することを可能にする。例えば、一次半径方向開口領域は、1つ又は複数の一次半径方向開口部50から形成される。2つの半径方向保護部分48は、接続部分49及び一次半径方向開口部50の両方によって、互いに分離される。電力ステージ及び制御ステージのスタックは、前記ステージ間に冷却通路52を定め、それは図2において見られることができる。各一次半径方向開口部50は、少なくとも部分的に前記冷却通路52に面して配置される。
【0064】
図2及び図3の例において、各半径方向保護部分48は二次半径方向開口領域を含んでいてもよく、当該二次半径方向開口領域は、例えば1つ以上の二次半径方向開口部51から形成される。その二次半径方向開口部は、インバーター36及び相接続部38の冷却を改善するのに役立つ一方、当該接続部が機械の外部環境から保護されるのを可能にする。例えば、二次半径方向開口領域の面積は、関連する保護部分48の面積の15%~25%である。
【0065】
より具体的には、ここに示す例において、各二次半径方向開口部51は、スカートの軸方向端部から、特に、関連する軸方向保護部分47から延びる。この例を引き続き参照すると、二次半径方向開口領域は、3つの二次半径方向開口部51から形成される。前記開口部51のうちの2つは、この例において、それぞれの相接続部38と軸方向保護部分47との間に軸方向に配置される。他の開口部51は、この例において、2つの相接続部38間に半径方向に配置される。
【0066】
カバー42は、当該カバーをインバーター36に取り付けるために配置された複数の取付部分53を備えてもよい。この目的のために、各取付部分は、例えば、取付要素54が挿入される開口部を有する。カバー及びインバーターは、特にネジ止め又はクリップ止めによって、一緒に組み立てられる。図3に示す例において、各取付部分53は、スカート43からカバー42の内側部分へ半径方向に延び、特に接続部分49から延びる。各取付部分53は、特に、当該取付部分を強化するように、軸方向に延びるリム56によって部分的に囲まれてもよい。
【0067】
カバー42は把持手段55を含んでいてもよく、当該把持手段55は、機械を組み立てる過程の間に、インバーター36におけるカバーの配置を、それらが一緒に取り付けられる前に、単純化することを可能にする。図3に示す例において、把持手段55は、カバー42の内側部分内へ半径方向平面において延びる平面部分から形成される。これは、特に、自動把持デバイスを用いてカバー42をインバーター36上に位置決めすることを可能にする。より具体的には、この例において、カバーは2つの把持手段55を備える。第1把持手段は2つの取付部分53間において延び、第2把持手段は、取付部分53と軸方向保護部分47との間において延びる。例えば、各把持手段55は、スカート43からゼロではない軸方向距離で軸方向に延びる。すなわち、この例において、各把持手段55は、スカート43を含まない半径方向平面において延びる。この目的のために、各把持手段55は、より詳細には、関連する取付部分53を部分的に囲むリム56の軸方向端部から、又は軸方向保護部分47と前記手段55との間に形成される軸方向セットバック(set-back)部分57から、延びる。
【0068】
図2に示すように、機械10の軸方向端部は、異なる半径方向平面に配置された複数の要素によって:すなわち信号接続部46、ヒートシンクプレート41、カバー42、及び特にカバーの把持手段55によって、局所的に形成される。
【0069】
図1及び図4に示すように、回転電気機械10は、インバーター36とケーシング11との間に軸方向に配置されるシャッター58を更に備える。より具体的にはこの例において、そのシャッターは、後方端部プレート17と第1ヒートシンク39との間に挟まれて取り付けられ、インバーター36をケーシング11に取り付けるための要素の通過のための開口部を備えてもよい。そのシャッターは、更に、より強固なやり方でシャッターを組み立てるのを助けるために、少なくとも1つのダンパー60を含んでいてもよい。
【0070】
例えば、シャッター58は、環状形状を有し、後方端部プレート17に形成された軸方向開口部を少なくとも部分的に覆うように配置される。シャッター58は、ステーターの相出力部33が通過可能な開口部59を含む。
【0071】
図4に示す例において、シャッター58は、インバーター36のコンデンサーバンク34と軸方向に整列するように配置された半径方向に延びる部分61を含む。その半径方向に延びる部分61は、特に、シャッターの外部半径方向突出部を形成するように、半径方向に延びる。例えば、半径方向に延びる部分61は、その外周において、軸方向に延びるリム62により囲まれる。
【0072】
シャッターは、特に、プラスチックなどの電気絶縁材料から形成される。例えば、シャッター58の少なくとも一部は、当該シャッターの剛性を高めるのに役立つ溝付きエリアを含む。溝付きエリアは、特に半径方向に延びる部分61にわたって延びる。
【0073】
図5は、把持手段55を具体的に形成する部分を含まないカバー42の他の例を示す。このカバーを形成する他の特徴及び要素は、図2及び図3を参照して説明したカバーの第1例の説明に開示されているものと同一又は本質的に同一である。
【0074】
したがって、カバー42のこの第2例において、開口領域44は、カバー42の内側部分の軸方向端部エリアの少なくとも95%にわたって延びる。すなわち、この例において、軸方向保護部分47を形成するエリア及び取付部分53を形成するエリアを除けば、内側部分の全エリアが開口される。この例において、開口領域44は、単一の軸方向開口部45から形成される。
【0075】
図示しないこの第2の例示的な実施形態の1つの変形例において、取付部分53及び軸方向保護部分47を、それらがカバーの内側部分内に延びないように修正すること、したがって100%に等しい開口率を得るために開口領域の開口率を更に増加させることが考えられる。
【0076】
本発明は、特にオルタネーター、スターター-オルタネーター、又は可逆性機械の分野に適用可能であるが、それはあらゆるタイプの回転機械にも適用されうる。
【0077】
当然のことながら、先の説明は例示としてのみ与えられており、本発明の分野を限定するものではなく、様々な要素を任意の他の同等のものと置き換えることによって、そこから逸脱することはないだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】