(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】グラフェン膜格子工学用新規方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20230509BHJP
C01B 32/188 20170101ALI20230509BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20230509BHJP
C23C 16/26 20060101ALI20230509BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20230509BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20230509BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230509BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B01D71/02 500
C01B32/188
C01B32/194
C23C16/26
B01D53/22
B01D69/00
B01D69/02
B01D69/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560084
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2021058215
(87)【国際公開番号】W WO2021198210
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520352595
【氏名又は名称】ガズナット・エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クマール・ヴァルーン・アグラワル
(72)【発明者】
【氏名】シキ・フアン
(72)【発明者】
【氏名】クアン-ジュン・スー
【テーマコード(参考)】
4D006
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4D006GA41
4D006MA22
4D006MA31
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC05X
4D006NA31
4D006NA54
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB63
4D006PB66
4D006PB68
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC30A
4G146BA12
4G146BA48
4G146BC09
4G146BC25
4G146BC33A
4G146CA06
4G146CA08
4G146CA09
4G146CB11
4G146CB14
4G146CB26
4G146CB40
4G146DA07
4G146DA23
4G146DA26
4G146DA34
4G146DA40
4G146DA48
4K030AA09
4K030AA14
4K030BA27
4K030CA02
4K030CA12
4K030HA03
(57)【要約】
本発明は、選択性ガス分離のための分子篩分解能が0.2Åである、グラフェン膜を製造するミリセカンドガス化方法に関し、更にはその作製方法及び使用に関する。特に、本発明は、大きいCO2透過性を魅力的なCO2/N2及びCO2/CH4選択性と併せ持つグラフェン膜に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス選択分離フィルターの作製方法であって、
a)犠牲支持層上にグラフェンを設ける工程と、
b) 約120~300℃に含まれる反応器温度で前記グラフェン膜を1つ又は複数の過渡的オゾンガスパルスに供する工程と、
c)前記過渡的加圧オゾンガスパルスの間又は直後に反応チャンバーからオゾンをパージする工程と、
d)前記オゾン処理されたグラフェン膜を室温に冷却する工程と
を含み、
各過渡的オゾンガスパルスが、約0.01~約0.3秒間続く、
方法。
【請求項2】
過渡的オゾンガスパルスが、反応チャンバーに、オゾン源から約3~約27トール(3.9×10
-3~36ミリバール)のピーク圧で供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グラフェンエッチング時間が1s未満に良好に維持されるように、過渡的オゾンガスパルスがグラフェン膜に供される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)での反応器温度が、約150~約300℃、例えば、200~約300℃である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
過渡的オゾンガスパルスが、約3.0×10
16~約3.5×10
17分子cm
-3s、例えば、約3.2×10
16~約3.5×10
17分子cm
-3sのO
3量を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の過渡的オゾンガスパルスが、それぞれ100ms以下続き、0.5~4秒間、好ましくは1~3秒間の期間にわたって生成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記複数のオゾンガスパルスが、約10~20パルスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
オゾンが、真空パージシステムを介して最後の過渡的オゾンガスパルス後に反応チャンバーからパージされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
オゾンが、真空パージシステムに接続された不活性ガスパージ流によって最後の過渡的オゾンガスパルス後に反応チャンバーからパージされる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
不活性ガスパージが、約1~10秒間続く、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オゾンが、約1バール及び5バールの圧力でO
2及びO
3の混合物、特に、O
3モル含有量が約9%であるO
2及びO
3の混合物を含む緩衝液リザーバータンクを含む源から供給される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オゾン処理されたグラフェン膜が、反応チャンバー内でAr雰囲気下で冷却される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
厚さが約0.34nmであり、分子篩分解能が約0.2Åであるグラフェン膜を含むガス選択フィルターであって、分子篩分解能は、サイズ差が0.2Åの分子を篩にかける能力を指す、ガス選択フィルター。
【請求項14】
グラフェン膜のO
2透過性が、約100GPU(3.4×10
-8molm
-2s
-1Pa
-1)~約1,300GPU(例えば、1,300GPU)(4.4×10
-7molm
-2s
-1Pa
-1)である、請求項13に記載のガス選択フィルター。
【請求項15】
CO
2透過性が、約850GPU(2.8×10
-7molm
-2s
-1Pa
-1)~約11,850GPU(4.0×10
-6molm
-2s
-1Pa
-1)(例えば、11,850GPU)である、請求項13又は14に記載のガス選択フィルター。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法から得ることが可能なガス選択フィルター。
【請求項17】
ガスの分離、特にCO
2からのH
2、N
2、及び/又はCH
4の分離のための、請求項13から16のいずれか一項に記載のガス選択分離フィルターの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、顕著にH2、N2、及び炭化水素からの、例えば、ガス廃棄物又は廃液からの、CO2の分離に起因する炭素捕捉との関連で、特に、混合ガス分離に役立つガス選択分離フィルターの分野に関する。本発明は、より詳細には、原子の厚さのグラフェン多孔質膜を使用するフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の問題及び特定の寄与因子に取り組む背景では、開発されてきた1つの選択肢は、二酸化炭素をガス流から捕捉し、その後地下に隔離することによる温室効果ガスの排出の低減である。炭素捕捉及び貯蔵は、大型のポイント源、例えば、石炭燃焼火力発電所からのCO2排出を緩和するための戦略である。
【0003】
しかし、分子分離は、炭素捕捉のような環境問題の中心で工業的方法の重要な要素であり、高度にエネルギー集約的である(Shollら、2016年、Nature. 532、435~437頁)。分離方法のエネルギー効率及び資本コストを、ガスをそれらの動的直径に基づいて分離する高性能分子篩膜の使用により実質的に低減することができる(Maら、2018年、Science、361、1008~1011頁; Zhouら、2018年、Sci. Adv.、4、1~9頁; Zhangら、2017年、Adv. Mater.、29、1~6頁; Lozada-Hidalgoら、2016年、Science、351、68~70頁)。詳細には、燃焼後炭素捕捉等の分離方法のエネルギー効率の著しい向上は、CO2透過性を向上させることにより達成することができる(Merkelら、2010年、J. Memb. Sci.、359、126~139頁; Roussanalyら、2016年、J. Memb. Sci.、511、250~264頁)。
【0004】
単層グラフェン(SLG)格子に空孔欠陥を組み込むことによって作製されたガス篩ナノ多孔質単層グラフェン(N-SLG)は、拡散抵抗がナノポアで単一遷移状態によって制御されるので、高流量ガス分離には非常に有望である(Jiangら、2009年、Nano Lett.、9、4019~24頁; Celebiら、2014年、Science、344、289~292頁; Songら、2013、Science、342、95~98頁)。しかし、最先端のエッチング技術(Wangら、2017年、Nat. Nanotechnol.、12、509~522頁)で、主として空孔欠陥の核形成及び成長が、狭い細孔径分布の組込みのために必要な程度に制御されないので、同様の大きさの分子を篩にかけることができる空孔欠陥を組み込むことは難しい。
【0005】
分子篩分解能(MSR)は、0.2Åの分離される分子の動的直径の差として定義され、空孔を組み込んだ格子から予測されており、工業関連の混合物、例えば、CO2/N2(Liuら、2015年、J. Solid State Chem.、224、2~6頁)、CO2/CH4(Yuanら、2017年、ACS Nano.、11、7974~7987頁)、O2/N2(Vallejos-burgosら、2018年、Nat. Commun.、1~9頁)等の分離を可能とする。しかし、同様の大きさのガス分子(CO2/N2、CO2/O2、O2/N2)を篩にかけることができる空孔欠陥を組み込むためのSLGの制御されたエッチングは、サブオングストローム分解能でグラフェンでの空孔欠陥の核形成及び成長を制御するのが困難であるので捉えにくいままであった(Koenigら、2012年、Nat. Nanotechnol.、7、728~32頁; Wangら、2017年、Nat. Nanotechnol.、12、509~522頁; Zhaoら、2019年、Sci. Adv. 5、eaav1851)。これは、元の格子からの炭素原子の除去が、ナノポアのエッジでよりもはるかに遅い速度で進み(Chuら、1992年、Surf. Sci. 268、325~332頁)、空孔欠陥の制御された拡大がボトルネックのままであるからである。市販の膜(Polaris(商標))は、ポリマー薄膜複合材料をベースとし、一般に、CO2透過性が1,000GPU(1GPU=3.35×10-10molm-2s-1Pa-1)であり、CO2/N2選択性が約50である(Merkelら、2010年、J. Memb. Sci.、359、126~139頁)。
【0006】
したがって、細孔径分布が狭く、サイズが選択された細孔を有するグラフェン膜を製造する新規方法の開発は、上記技術的な制限によってこれまで妨げられてきたナノ多孔質二次元膜の大規模展開を考慮して非常に魅力的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Shollら、2016、Nature. 532、435~437頁
【非特許文献2】Maら、2018年、Science、361、1008~1011頁
【非特許文献3】Zhouら、2018年、Sci. Adv.、4、1~9頁
【非特許文献4】Zhangら、2017年、Adv. Mater.、29、1~6頁
【非特許文献5】Lozada-Hidalgoら、2016年、Science、351、68~70頁
【非特許文献6】Merkelら、2010年、J. Memb. Sci.、359、126~139頁
【非特許文献7】Roussanalyら、2016年、J. Memb. Sci.、511、250~264頁
【非特許文献8】Jiangら、2009年、Nano Lett.、9、4019~24頁
【非特許文献9】Celebiら、2014年、Science、344、289~292頁
【非特許文献10】Songら、2013年、Science、342、95~98頁
【非特許文献11】Wangら、2017年、Nat. Nanotechnol.、12、509~522頁
【非特許文献12】Liuら、2015年、J. Solid State Chem.、224、2~6頁
【非特許文献13】Yuanら、2017年、ACS Nano.、11、7974~7987頁
【非特許文献14】Vallejos-burgosら、2018年、Nat. Commun.、1~9頁
【非特許文献15】Koenigら、2012年、Nat. Nanotechnol.、7、728~32頁
【非特許文献16】Zhaoら、2019年、Sci. Adv. 5、eaav1851
【非特許文献17】Chuら、1992年、Surf. Sci.、268、325~332頁
【非特許文献18】Kiwonら、2019年、Angew. Chem. Int. Ed.、131、16542-16546頁
【非特許文献19】Huangら、Nat. Commun.、2018年、9、2632頁
【非特許文献20】Liら、2009年、Science、324、1312~1314頁
【非特許文献21】Baeら、2009年、Nat. Nanotechnol. 5、1~5頁
【非特許文献22】Strudwickら、2015年、ACS Nano.、9、31~42頁
【非特許文献23】Heら、2019年、Energy Environ. Sci.、12~16頁
【非特許文献24】Zhaoら、2019年、5、eaav185
【非特許文献25】Gongら、2013年、J. Phys. Chem. C. 117、23000~23008頁
【非特許文献26】Giritら、2009年、Science. 323、1705~1708頁
【非特許文献27】Liら、2006年、Phys. Rev. Lett.、96、5~8頁
【非特許文献28】Suarezら、2011年、Phys. Rev. Lett.、106、8~11頁
【非特許文献29】Traczら、2003年、Langmuir. 19、6807~6812頁
【非特許文献30】Yangら、1981年、J. Chem. Phys. 75、4471~4476頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一般的な目的は、グラフェン膜をガス分離(例えば、H2/CO2、CO2/N2、及びCO2/CH4分離)に使用する効率的なガス選択フィルターを提供することである。
【0010】
本発明の特定の目的の1つは、CO2捕捉のための効率的なガス選択フィルターを提供することである。
【0011】
分子篩分解能が約0.2Åであるガス選択フィルターを提供することは有利である。
【0012】
特に1,000GPUを超える、高いO2及びCO2透過性を有する、魅力的なガス選択性(例えば、H2/CO2、CO2/N2、及びCO2/CH4、O2/N2)と組み合わせたガス選択フィルターを提供することは有利である。
【0013】
CO2/N2選択性が約10~約50であるガス選択フィルターを提供することは有利である。
【0014】
大面積フィルター面に対してさえ固有空孔欠陥が低密度であるガス選択フィルターを提供することは有利である。
【0015】
本発明の目的は、コスト効率が良く、良好なガス選択性を有し、分子篩分解能(例えば、0.1Å)の微調整を可能にし、高性能を有する、グラフェン膜を含むガス選択フィルター、及びグラフェン膜を含むガス選択フィルターの作製方法を提供することである。
【0016】
膜細孔密度の増加と細孔径分布(PSD)の絞り込みの組合せを達成することを可能にするグラフェン膜を含むガス選択フィルターの作製方法を提供することは有利である。
【0017】
CO2篩性能の向上と細孔径分布(PSD)の絞り込みの組合せを達成することを可能にするグラフェン膜を含むガス選択フィルターの作製方法を提供することは有利である。
【0018】
水分の存在下及び高圧下での0~200℃の温度領域における操作に安定なガス選択フィルターを提供することは有利である。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、請求項11によるガス選択分離フィルター及び請求項15によるその使用、並びに請求項1によるガス選択分離フィルターの作製方法を提供することによって達成された。
【0020】
ガス選択分離フィルターの作製方法であって、
a)犠牲支持層上にグラフェン膜を設ける工程と、
b)約120~300℃に含まれる反応器温度で前記グラフェン膜を1つ又は複数の過渡的加圧オゾンガスパルスに供する工程と、
c)過渡的加圧オゾンガスパルスの間又は直後に反応チャンバーからオゾンをパージする工程と、
d)オゾン処理されたグラフェン膜を室温に冷却する工程と
を含む、方法が本明細書において開示される。
【0021】
各過渡的オゾンガスパルスは、約0.01~約0.3秒間続く。
【0022】
厚さが約0.34nm(単層グラフェン)で、篩分解能が約0.2Åであるグラフェン膜を含むガス選択フィルターも、本明細書において開示される。
【0023】
ガス分離、特にCO2からのH2、N2、及び/又はCH4の分離のための本発明によるグラフェン膜を含むガス選択フィルターの使用も、本明細書において開示される。
【0024】
有利な実施形態では、グラフェン膜のO2透過性は、約100(3.4×10-8molm-2s-1Pa-1)~約1,300GPU(例えば、1,300GPU)(4.4×10-7molm-2s-1Pa-1)である。
【0025】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2透過性が、約850GPU~約26,000GPU、好ましくは1,000~約26,000GPUである。
【0026】
別の特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2透過性が、約850(2.8×10-7molm-2s-1Pa-1)~約11,850GPU(4.0×10-6molm-2s-1Pa-1)、好ましくは1,000~約15,000GPU、より詳細には約3,500~約15,000GPU(例えば、11,850GPU)である。
【0027】
別の特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2透過性が約3,000~約26,000GPU、特に約3,170~約25,530GPUである。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点は、特許請求の範囲、詳細な説明、及び図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施例1で行われる本発明による方法の主工程の例示となるワークフローを示す図である。
【
図2A】本発明による方法を行うための反応器のセットアップを示す概略図(A)である。
【
図2B】本発明による方法の種々の条件で得られた対応するO
3パルスプロファイルを示す図である。ミリセカンドガス化反応器(MGR)中の単一グラフェンに供給されるO
3パルスのプロファイルを示す。
【
図2C】本発明による方法の種々の条件で得られた対応するO
3パルスプロファイルを示す図である。ミリセカンドリークバルブ(MLV)を介したミリセカンドガス化反応器を介した反応チャンバーへのO
3供給の概略図を示す。
【
図2D】本発明による方法の種々の条件で得られた対応するO
3パルスプロファイル(を示す図である。オゾン源が実施例1において詳述するようにオゾン生成器によって生成されたO
3の9mol%を含む、実験データ(ドット)及びモデル化圧力(線)の両方に基づいて、0.1sのτ(MLV-1の開放時間)及び3バールのP
upを使用して操作された場合の反応チャンバー中の全圧力(O
2/O
3)プロファイルを示す。
【
図2E】本発明による方法の種々の条件で得られた対応するO
3パルスプロファイルを示す図である。0.1sのτ、3バールのP
up、及び0.5sのt
d(Arの遅延時間)を使用することによって得られた実験チャンバー圧力プロファイルを示す。
【
図3A】実施例2に説明するようにO
3の様々な量に曝露されたグラフェン膜のラマン分光特性評価を示す図である。A:様々な量に曝露されたグラフェンのラマンスペクトル、B:オゾン量の関数としてのI
D/I
G、I
2D/I
G比率(λ
L=457nm)、C:250℃で1.6×10
17分子cm
-3sのオゾン量を使用する試料上のI
D/I
G比率(λ
L=532nm)のラマンマップである。
【
図3B】実施例2に説明するようにO
3の様々な量に曝露されたグラフェン膜のラマン分光特性評価を示す図である。A:様々な量に曝露されたグラフェンのラマンスペクトル、B:オゾン量の関数としてのI
D/I
G、I
2D/I
G比率(λ
L=457nm)、C:250℃で1.6×10
17分子cm
-3sのオゾン量を使用する試料上のI
D/I
G比率(λ
L=532nm)のラマンマップである。
【
図3C】実施例2に説明するようにO
3の様々な量に曝露されたグラフェン膜のラマン分光特性評価を示す図である。A:様々な量に曝露されたグラフェンのラマンスペクトル、B:オゾン量の関数としてのI
D/I
G、I
2D/I
G比率(λ
L=457nm)、C:250℃で1.6×10
17分子cm
-3sのオゾン量を使用する試料上のI
D/I
G比率(λ
L=532nm)のラマンマップである。
【
図4A】実施例3に記載される本発明の方法(MGR条件:250℃、オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)によって作製されたグラフェン膜における空孔欠陥の収差補正高分解能透過型電子顕微鏡(Ac-HRTEM)画像及び格子適合細孔構造を示す図である。
【
図4B】実施例3に記載される本発明の方法(MGR条件:250℃、オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)によって作製されたグラフェン膜における空孔欠陥の収差補正高分解能透過型電子顕微鏡(Ac-HRTEM)画像及び格子適合細孔構造を示す図である。
【
図4C】Ac-HRTEM画像に基づく空孔欠陥(欠損炭素原子数)の粒度分布、及び実施例3に記載されるモデルに基づいて算出された粒度分布を示すグラフである。
【
図4D】Ac-HRTEM画像によって抽出され、エッチング反応速度に基づいて算出された空孔欠陥の細孔径分布を示すグラフである。
【
図5A】本発明のグラフェン膜のSTM画像(MGR条件:250℃、オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)を、(A)、(B)、及び(C)のスケールバーがそれぞれ100nm、40nm、及び1nmで示す図である。実施例2に記載されるナノポアの原子分解能STM画像(C上端)及びナノポア全体の高さプロファイル(C下端)が示される。
【
図5B】本発明のグラフェン膜のSTM画像(MGR条件:250℃、オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)を、(A)、(B)、及び(C)のスケールバーがそれぞれ100nm、40nm、及び1nmで示す図である。実施例2に記載されるナノポアの原子分解能STM画像(C上端)及びナノポア全体の高さプロファイル(C下端)が示される。
【
図5C】本発明のグラフェン膜のSTM画像(MGR条件:250℃、オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)を、(A)、(B)、及び(C)のスケールバーがそれぞれ100nm、40nm、及び1nmで示す図である。実施例2に記載されるナノポアの原子分解能STM画像(C上端)及びナノポア全体の高さプロファイル(C下端)が示される。
【
図6】実施例3に説明するガス透過テストについてのセットアップを示す概略図である。
【
図7A】本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜の実施例3に記載されるガス篩性能の特性評価を示すグラフである。:オゾン濃度の関数としてのガス透過の発生を示す。
【
図7B】本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜の実施例3に記載されるガス篩性能の特性評価を示すグラフである。算出された活性化エネルギーを示す。
【
図7C】本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜の実施例3に記載されるガス篩性能の特性評価を示すグラフである。パージ遅延時間(t
d)を変化させて250℃(τ=0.1s)での本発明の方法におけるオゾン処理に供されたグラフェン膜のガス分離性能を示す。
【
図7D】本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜の実施例3に記載されるガス篩性能の特性評価を示すグラフである。250℃(オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)、290℃(オゾン量:1.8×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)、及び最適化された(反応器パージ用不活性ガスは、液体窒素によるヘリウム冷却である)290℃条件(オゾン量:1.2×10
17分子cm
-3s、t
d=0.2s He)での本発明の方法におけるオゾン処理に供されたグラフェン膜のAc-HRTEMから抽出されたガス分離性能及び細孔径分布である。
【
図7E】本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜の実施例3に記載されるガス篩性能の特性評価を示すグラフである。250℃(オゾン量:1.6×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)、290℃(オゾン量:1.8×10
17分子cm
-3s、t
d=0.5s Ar)、及び最適化された(反応器パージ用不活性ガスは、液体窒素によるヘリウム冷却である)290℃条件(オゾン量:1.2×10
17分子cm
-3s、t
d=0.2s He)での本発明の方法におけるオゾン処理に供されたグラフェン膜のAc-HRTEMから抽出されたガス分離性能及び細孔径分布である。
【
図8A】200℃での遅いO
2エッチングに比べて、本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜のガス分離性能の特性評価を示すグラフである。O
2でのグラフェン膜のin-situエッチングの間の透過側のCO
2及びN
2の発生を示す。
【
図8B】200℃での遅いO
2エッチングに比べて、本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜のガス分離性能の特性評価を示すグラフである。動的直径の関数としてのガス透過を示す。
【
図8C】200℃での遅いO
2エッチングに比べて、本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜のガス分離性能の特性評価を示すグラフである。O
2でのエッチングの前後のガスペア選択性に対応するものである。繰返しは、ガス透過試験の数日後にグラフェン膜のエッチングを繰り返すことを指す。
【
図8D】200℃での遅いO
2エッチングに比べて、本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜のガス分離性能の特性評価を示すグラフである。1hの酸素エッチング前後のグラフェン膜の見掛活性化エネルギーを示す。
【
図8E】200℃での遅いO
2エッチングに比べて、本発明の方法によるO
3量を増加させて処理された本発明のグラフェン膜のガス分離性能の特性評価を示すグラフである。本発明のグラフェン膜のCO
2/N
2混合分離性能の最先端技術の膜からのものとの比較である。標的領域は、アミン系吸収法のエネルギー効率を越えるために必要とされる膜性能を指す。
【
図9】実施例3で説明するように様々な温度での本発明のグラフェン膜のガス分離性能の単一成分及び混合ガス(20%CO
2、80%N
2)供給との比較を示すグラフである。
【
図10A】120~175℃でMGRによってエッチングされたN-SLGのラマンスペクトルを示すグラフである。Aは、欠陥密度が温度の関数で増加することを示し、Bは120℃及び150℃でのMGRによって作製されたN-SLGからのCO
2透過性を示し、Cは対応するCO
2/CH
4選択性を示す。MGRは0.2sのτ及び1バールのP
upで行われた。
【
図10B】120~175℃でMGRによってエッチングされたN-SLGのラマンスペクトルを示すグラフである。Aは、欠陥密度が温度の関数で増加することを示し、Bは120℃及び150℃でのMGRによって作製されたN-SLGからのCO
2透過性を示し、Cは対応するCO
2/CH
4選択性を示す。MGRは0.2sのτ及び1バールのP
upで行われた。
【
図10C】120~175℃でMGRによってエッチングされたN-SLGのラマンスペクトルを示すグラフである。Aは、欠陥密度が温度の関数で増加することを示し、Bは120℃及び150℃でのMGRによって作製されたN-SLGからのCO
2透過性を示し、Cは対応するCO
2/CH
4選択性を示す。MGRは0.2sのτ及び1バールのP
upで行われた。
【
図11A】SLGのÅスケールの空孔欠陥の予測可能なエッチングを考察する図である。SLGのエッチングのために使用されたオゾン源(オゾン源はO
3の9mol%を含む)のシミュレートされた全圧プロファイルの4つの場合についてのグラフである。
【
図11B】SLGのÅスケールの空孔欠陥の予測可能なエッチングを考察する図である。対応するシミュレートされたPSD(B)のシミュレートされた全圧プロファイルの4つの場合についてのグラフである。
【
図11C】SLGのÅスケールの空孔欠陥の予測可能なエッチングを考察する図である。「中間」の代表的な空孔欠陥を示すAc-HRTEM画像である。
【
図11D】SLGのÅスケールの空孔欠陥の予測可能なエッチングを考察する図である。「中間」圧力プロファイルを使用してエッチングされたN-SLGのAc-HRTEM画像に由来するPSDである。
【
図11E】SLGのÅスケールの空孔欠陥の予測可能なエッチングを考察する図である。
図11Dと比較される数学的モデルからシミュレートされたPSDである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
表現「グラフェン膜」は、グラフェン層、特に、例えばCVDによって得られる等のグラフェン単分子層である。例えば、単層グラフェン膜は、厚さが約0.34~1nmの範囲である。しかし、本発明の実施形態によるグラフェン膜は、また、二分子層グラフェン、又は二分子層グラフェンを備えた部分を含んでいてもよく、膜の表面積上での非常に均質な単分子層の達成は、膜の工業規模の製造に効率的でない可能性があることが理解される。
【0031】
表現「犠牲支持層」は、適切な支持体(例えば、その上に単層グラフェンを合成することができるCu、Ni、Pt、又は任意の他の金属基板)、特に、グラフェン膜が構造(機械的)支持体に適用される前又は後に犠牲になり得るグラフェン膜用の非多孔質支持体である。
【0032】
表現「膜性能」は、膜ガス透過性とそのガス選択性との組合せを指す。典型的には、ガス分離の分野において、1,000GPUのCO2透過性及び20以上のCO2/N2選択性は、良好な膜性能と見なされる。更に、35GPUのO2透過性及び3以上のO2/N2選択性(Kiwonら、2019年、Angew. Chem. Int. Ed.、131、16542-16546頁)は、良好な膜性能と見なされる。
【0033】
図面、特にまず
図1を参照して、ガス選択フィルターの作製方法の例示を示す。
【0034】
より詳細には、
図1に説明する実施形態の工程は、
a)犠牲支持層上にグラフェン膜を設ける工程、
b) 約120~300℃に含まれる反応器温度で前記グラフェン膜を1つ又は複数の過渡的オゾンガスパルスに供する工程、
c)過渡的加圧オゾンガスパルスの間又は直後に反応チャンバーからオゾンをパージする工程、
d)オゾン処理されたグラフェン膜を室温に冷却する工程を
含む。
【0035】
各過渡的オゾンガスパルス(transient ozone gas pulse)は、オゾン源から約3~約28トールの圧力で反応チャンバー内に供給される。O3が純粋なガスの形態ではなくO2とO3の混合物として送出されるので、これらの値はO3分圧に相当する。したがって、オゾン源中に存在するオゾンの含有量によって、反応器に適用される全圧は、反応器中で3~約28トールのオゾンガス分圧に達するように構成される必要があるであろう。
【0036】
特定の実施形態によれば、グラフェン膜は、不活性ガス雰囲気下で加熱された反応チャンバー内に設けられる。
【0037】
更なる特定の実施形態によれば、反応チャンバーはH2圧力下で加熱される。
【0038】
特定の実施形態によれば、反応チャンバーはH2圧力下で加熱され、次いで、不活性ガスはアルゴンに切り替えられ、反応チャンバーの温度は反応器温度に安定される。
【0039】
更なる特定の実施形態によれば、反応チャンバーの温度が反応器温度に安定される場合、アルゴン流はオフにされる。
【0040】
特定の実施形態によれば、過渡的オゾンガスパルスは、オゾン源から約3~約27トールの圧力で反応チャンバーに供給される。別の特定の実施形態によれば、過渡的オゾンガスパルスは、オゾン源から約5~約28トールの圧力で反応チャンバーに供給される。
【0041】
別の特定の実施形態によれば、オゾン源は、ミリセカンドリークバルブを介して反応チャンバーに接続される。
【0042】
別の特定の実施形態によれば、グラフェンエッチング時間が1s未満に良好に維持されるように、過渡的オゾンガスパルスをグラフェン膜に供する。
【0043】
別の特定の実施形態によれば、過渡的オゾンガスパルスは約0.01~約0.2秒間続く。
【0044】
別の特定の実施形態によれば、各過渡的オゾンガスパルスは、100ms以下、例えば、約10ms~約100ms続く。
【0045】
別の特定の実施形態によれば、複数の過渡的オゾンガスパルスは、100ms以下の約10~20パルス、例えば、100ms以下、例えば、約10ms~約100msの約15パルスを含む。
【0046】
別の更なる特定の実施形態によれば、前記複数のパルスは、パルス間で約100ms~約500msの間隔で時間的に隔てられて順次生成される。
【0047】
別の特定の実施形態によれば、過渡的オゾンガスパルスは、約3.2×1016~約3.5×1017分子cm-3s、例えば、約1.6×1017分子cm-3sのO3量を含む。
【0048】
別の特定の実施形態によれば、オゾンは、過渡的オゾンガスパルスの間又は最後の過渡的オゾンガスパルスの直後若しくは最後の過渡的オゾンガスパルス後に短い遅延で、反応チャンバーからパージされる。短い遅延は、好ましくは10s未満、好ましくは1s未満、より好ましくは0~800msの範囲、例えば、約500msである。
【0049】
別の特定の実施形態によれば、オゾンは、最後の過渡的オゾンガスパルスの直後に反応チャンバーから直ちにパージされる。
【0050】
別の特定の実施形態によれば、オゾンは、反応チャンバーから真空パージシステムを介してパージされる。
【0051】
別の特定の実施形態によれば、オゾンは、最後の過渡的オゾンガスパルスの後に真空パージシステムに接続された不活性ガスパージ流によって反応チャンバーからパージされる。
【0052】
別の特定の実施形態によれば、不活性ガスパージは約1~10秒間続く。
【0053】
別の特定の実施形態によれば、不活性ガスパージは、加圧Ar又はHeパージである。
【0054】
別の特定の実施形態によれば、オゾン源は、約1及び5バールの圧力でO2とO3との混合物を含む緩衝液リザーバータンクを含む。
【0055】
別の特定の実施形態によれば、緩衝液リザーバータンクは、O2とO3との混合物を含み、O3モル含有量は約9%である。
【0056】
別の特定の実施形態によれば、緩衝液リザーバータンクは、オゾン生成器によって供給されるO2とO3との混合物の連続流で充填される。
【0057】
別の特定の実施形態によれば、緩衝液リザーバータンク中へのオゾン生成器によって供給されるO2とO3との混合物の連続流は、約100sccm~約200sccm、例えば、約100sccmである。
【0058】
別の特定の実施形態によれば、反応器温度は、約150~約300℃である。
【0059】
別の特定の実施形態によれば、反応器温度は約120~約290℃である。
【0060】
別の特定の実施形態によれば、反応器温度は、約150~約290℃である。
【0061】
別の特定の実施形態によれば、オゾン処理されたグラフェン膜は、不活性雰囲気下で反応チャンバー内で冷却される。
【0062】
別の更なる特定の実施形態によれば、オゾン処理されたグラフェン膜は、Ar雰囲気下で反応チャンバー内で冷却される。
【0063】
別の特定の実施形態によれば、犠牲支持体が銅である場合、冷却されたオゾン処理されたグラフェン膜は、次いで不活性雰囲気下でアニール温度処理に供されて銅を還元する。
【0064】
別の特定の実施形態によれば、犠牲支持体が銅である場合、冷却されたオゾン処理されたグラフェン膜は、次いで減圧雰囲気(例えば、H2)下で約300℃の温度でアニール温度処理に供されて銅を還元する。
【0065】
更なる特定の実施形態によれば、オゾン処理されたグラフェン膜は、更なる処理に供されて、平均細孔径、したがって、分画分子量をわずかに増加させることができ、前記更なる処理は、室温での冷却後のオゾン処理されたグラフェン膜を、約0.1~約2h、約150~300℃(例えば、約200℃)の温度でO2雰囲気(例えば、約1~10バールの圧力範囲)に供する更なる工程を含む。この場合、CO2及びO2透過性の他にCO2/N2及びO2/N2選択性もまた更に向上された。
【0066】
別の特定の実施形態によれば、オゾン処理されたグラフェン膜は、例えば、本出願人の以前の報告(Huangら、Nat. Commun.、2018年、9、2632頁)及びWO2019/175162等に記載された公知技術によって犠牲支持層を除去し、補強支持体を設けた後にガスフィルターモジュールに組み立てることができる。
【0067】
図面、特にまず
図2Aを参照して、ミリセカンドガス化システムとして本発明の方法によるガス選択フィルターの作製のための設定の例示を示す。
【0068】
より詳細には、本発明の実施形態によるミリセカンドガス化システム50は、入口6及び出口8を含む反応チャンバー4、反応チャンバー入口6に流体的に結合された反応チャンバー雰囲気制御システム53、反応チャンバー入口6に流体的に結合されたパージシステム55、反応チャンバー入口6に流体的に結合された加圧オゾン送出システム52、及び反応チャンバー出口8に流体的に結合された真空システム56を含む。
【0069】
ミリセカンドガス化システム50は、反応チャンバー4内の温度を加熱し制御するように構成された反応チャンバー加熱システム51を更に含む。
【0070】
オゾン送出システム52、反応チャンバー雰囲気制御システム53、及びパージシステム55は、個別の入口(図示せず)を介して反応チャンバー4に流体的に個々に接続されていてもよく、又は示すように、多重入口ポートコネクター又はバルブ59を介して単一反応チャンバー入口6に接続されていてもよい。
【0071】
オゾン送出システム52は、オゾン生成器14、及び場合によっては、オゾン生成器に下流にて流体的に接続された緩衝液リザーバータンク10を含んでいてもよいオゾン源、及びオゾン源と反応チャンバー入口6との間に配置されたミリセカンドリークバルブ9(MLV-1)を含む。オゾン送出システム52は、ミリセカンドリークバルブ9と反応チャンバー入口6との間に配置された圧力調整器13を更に含んでいてもよく、反応チャンバー入口6は、反応チャンバーに供給されるオゾンに対して最大圧力閾値を規制、特に設定するように構成されている。ミリセカンドリークバルブ9(MLV-1)は作動されて、反応チャンバー4に過渡的オゾンガスパルスを送出してもよい。加圧オゾン源及びミリセカンドリークバルブ9は、したがって、反応チャンバー4中の過渡的オゾンガスパルスを送出するように作動可能である。
【0072】
特定の実施形態によれば、緩衝液リザーバータンク10は、圧力調整器13で1~10バール(例えば、約5~約10バール)の圧力でオゾン生成器14によって生成されたO2とO3との混合物を含んでいてもよい。
【0073】
パージシステム55は、好ましくはアルゴン又はヘリウム等の不活性ガスを充填した加圧リザーバータンクを含んでもよいパージガス源65、及びパージガス源と反応チャンバー入口6との間に配置されたミリセカンドリークバルブ12(MLV-2)を含む。パージシステムミリセカンドリークバルブ12(MLV-2)は作動されて、反応チャンバー4にパージガスを急速に送出し、それにより、過渡的加圧オゾンガスパルスの間又は直後に、反応チャンバー出口8を介して反応チャンバー4からオゾンガスを急速にパージしてもよい。
【0074】
パージシステム55は、真空ポンプ16及び真空制御バルブ17を含む真空生成システム56を含むことが好ましく、前記真空制御バルブは、反応器ガス出口8を介して反応チャンバー4と流体連通して、過渡的加圧オゾンガスパルスの間又は直後に、反応チャンバー4からオゾンガスを排出させる。真空ポンプ16は、このように、オゾンパルス処理及びその後の不活性ガスパージの前にポンピング作動のままであってもよく、反応チャンバー中の真空圧力の制御は、真空制御バルブ17の開閉によって達成される。システムは、圧力変換器63を更に含み、反応チャンバー4の内部の圧力を監視してもよい。
【0075】
一実施形態によれば、ミリセカンドリークバルブ9の作動の終了直後に(例えば、0~1sの遅れ)、ミリセカンドリークバルブ12が作動されて、多重入口ポートバルブ59を介して反応チャンバー4に加圧パージガスを送出してもよい。
【0076】
特定の実施形態によれば、反応チャンバー雰囲気制御システム53は、1つ又は複数の雰囲気制御ガス源61a、61bに流体的に接続されたガスライン54と、オゾン処理前及びオゾン処理後に送出及び場合によっては、反応チャンバー4内への制御ガスの組成物(混合物)を制御するためのガス流コントローラ15とを含む。オゾン処理前に反応チャンバーに吹き込まれた制御ガスは、オゾン処理後に反応チャンバーに吹き込まれた制御ガスとは異なっていてもよい。例えば、反応チャンバーの加熱の間に、オゾン処理の前に、雰囲気制御ガスは、アルゴン又はヘリウム等の不活性ガスを含んでもよく、オゾン処理後に、雰囲気制御は、銅支持層を還元するための還元ガス等の反応ガス、特に、H2、又は膜細孔径を制御するための酸化ガス、特にO2であってもよい。
【0077】
ガス流コントローラ15の出口は、反応器ガス入口6と流体連通している多重ポートバルブ59の入口7を介して多重入口ポートバルブ59に接続されていてもよい。
【0078】
反応チャンバー加熱システム51は、反応チャンバー4内の温度を測定するように構成された温度センサ20、加熱手段18、及び反応チャンバー4内の温度及び所望の反応温度の関数として加熱手段によって生成される熱量を制御するために加熱手段及び温度コントローラに接続された温度コントローラ19を含む。
【0079】
特定の実施形態によれば、グラフェンエッチング時間を1秒未満に良好に維持するために、予め定められた時間(例えば、約0.01~約0.3秒)にわたって、予め定められたオゾン量(例えば、約3×1016~約3.8×1017分子cm-3、例えば、約3.2×1016~約3.5×1017分子cm-3)を送出するように制御された方法でミリセカンドバルブ12(MLV-2)が作動される。
【0080】
特定の実施形態によれば、本発明によるガス選択フィルターは、細孔密度が約1.0×1012~約1.6×1012cm-2である。
【0081】
特定の実施形態によれば、本発明によるガス選択フィルターは、細孔径分布が約0.1~約0.5Å、典型的には約0.2Åである。
【0082】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、炭素捕捉(O2/N2、CO2/CH4、及びCO2/N2分離)に有利に使用することができる。
【0083】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、O2透過性が約100~1,300GPU(例えば、1,300GPU)である。
【0084】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2透過性が約850~11,850GPU(例えば、11,850GPU)である。
【0085】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、O2/N2選択性が約1.6~約3.4(例えば、3.4)である。
【0086】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2/O2選択性が約7.4~約12.6(例えば、7.4)である。
【0087】
特定の態様によれば、本発明によるガス選択フィルターは、CO2/N2選択性が約8.6~約27.6(例えば、21.7)である。
【0088】
特定の実施形態によれば、本発明の方法におけるエッチングガス(O3)の圧力、及びそのような圧力へのグラフェン膜の曝露時間の制御による、細孔核形成及び拡大の制御は、有利に以下を可能にした:
(i)CO2篩分けに適したPSDを維持しながら空孔欠陥の密度を増加させる
(ii)ミリセカンドの時間スケールで高い核形成密度を生成することによる細孔の拡大の減速。
【0089】
矩形状の高いO3圧力曝露プロファイル(典型的に、圧力時間曲線での面積を増加させる約28トールのO3圧力を維持すること)は、最も狭いPSDにつながり、オゾンガス圧力プロファイルを、本発明による高圧曝露の複数のパルスの形態で有利に構成して、CO2篩分けのための適切なPSDを維持しながらの空孔欠陥の密度の増加及び細孔拡大率の減速の両方を達成して細孔径を制御することが可能である。
【0090】
特定の実施形態によれば、温度が核形成の反応速度、その上エッチングの反応速度を加速し、一方、核形成及び拡大が圧力に個別の依存性を有するので、高圧曝露の複数のオゾンガスパルスを含む本発明の方法は、エッチング温度の上昇を使用する方法よりも驚くほどはるかに有効である。
【0091】
特定の実施形態によれば、グラフェン膜のCO2/N2分離性能は、高圧において複合的な微小曝露時間の形態で過渡的オゾンガスパルスを構成することによって更に向上させることができる。
【0092】
上記概念の実施は、最先端技術と比較してN-SLGにおけるより狭いPSDをもたらし、CO2篩性能を向上させて、CO2透過性が4,400±2070GPU、CO2/N2選択性が33.4±7.9で最も高い選択性が40に近い。
【0093】
顕著な観察されたCO2透過性は、得られたCO2透過性が複数のパルスに対して約3,000GPUであり、更には約25,530GPU以下であるので、約1,020GPU以下の市販膜から得られたCO2透過性より非常に高い。
【0094】
更に、本発明によるガス選択フィルターのCO2/N2選択性(典型的に、単一パルスに対して約15.0、複数のパルスに対して12.5~約39.8)は、流出ガス(例えば、鉄鋼及びセメント工業)からのCO2捕捉のための価値あるツールとしての使用を高価なN2加圧の必要なしで可能にする。
【0095】
高い透過性は、ガス混合物の所与の体積の処理のために必要とされる膜面積を低減し、それによって、分離方法の資本コストを低減するであろう。低減された面積は、順に、供給側に沿った圧力損失を低減し、それは、燃焼後捕捉等の低い供給圧力の分離用途には重要であると判明する可能性がある。
【0096】
本発明について記載したが、以下の実施例は、例示のために示すのであって、限定のために示すのではない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
0.2Åの分子篩分解能を備えた単層膜の作製方法。
ガス選択フィルターの作製のための本発明の方法は、
図1及び
図2に示され、下に詳述する。
【0098】
工程a:犠牲支持層上の合成されたCVDグラフェンを設ける。
支持されたグラフェンは、前述(Liら、2009年、Science、324、1312~1314頁; Baeら、2009年、Nat. Nanotechnol. 5、1~5頁)のように、Cu箔上に低圧CVD(LPCVD)によって合成された犠牲支持層2(例えば、Cu)上に支持されたCVD単層グラフェン1として設けられた。簡潔に、Cu箔を、CO2雰囲気中で700トールで30分間1000℃でアニールして有機物汚染を除去した。その後、CO2流を停止し、チャンバーを排気した。続いて、H2の8sccmをチャンバーに導入して、1000℃でCu表面をアニールした。グラフェン成長については、CH4の24sccmを30分間460ミリトールの全圧で加えた。成長後に、チャンバーを、H2流を維持しながら室温に急速に冷却した。
【0099】
Cu箔を熱アニールによって前処理してCu(111)を得て、グラフェンの均一性を向上させ、以下のように固有空孔欠陥の密度を低減した:市販のCu箔を、高純度アルミナチューブ(99.8%の純度、直径:5cm、長さ:1.2m、MTI社)を備えた3領域高温炉中で熱プレアニールし、溶融石英チューブ(直径:6cm、長さ:1.4m、MTI社)で覆って、シリカ汚染を防いだ。Alfa-Aesar社(純度99.8%、25μm)及びStrem Chemicals社(純度:99.9%、50μm)から供給されたCu箔を炉内に設置し、700トールのCO2で1000℃に加熱して有機汚染物を除去した(Strudwickら、2015年、ACS Nano.、9、31~42頁)。その後、CO2を排出し、反応器を、700トールの圧力に10/90のH2/Ar混合物で充填した。続いて、反応器を1h、1075℃で維持した。この後、0.1℃ min-1に制御して1000℃に冷却し、その後、反応器を室温に冷却した。
【0100】
工程b:犠牲支持層上のCVDグラフェンをO3パルスによる空孔欠陥の制御核形成及び拡大に供する。
上記するようにして得られた銅(1、2)上の単層グラフェンを、ガスパージシステム55、加圧オゾン送出システム52、及び反応チャンバー雰囲気制御システム53を備えた1インチ×10cmのステンレス鋼反応チャンバー4を備えたミリセカンドガス化システム内で、単層グラフェン用支持体3上に設置した。パージシステム55は、真空ポンプ16及び真空制御バルブ17を含む真空生成システム56を含む。反応チャンバー雰囲気制御システム53は、制御ガス(例えば、Ar又はH2)入口7及び制御ガス流量コントローラ15に接続されており、前記制御ガス(例えば、Ar又はH2)入口7は、反応器入口6に接続された多重ポートバルブ59を介して反応チャンバー4と流体連通している。
【0101】
オゾン送出システム52は、ミリセカンドリークバルブ9(MLV-1)を介して反応チャンバー4に接続されたオゾン源14、10を含む。
【0102】
ガスパージシステム55は、好ましくは、ミリセカンドリークバルブ12(MLV-2)を介して反応チャンバー4の反応器ガス入口6と流体連通したパージガス源65を含む。
【0103】
オゾン源は、オゾン生成器14(Absolute Ozone(登録商標)Atlas 30)によって生成されたO2及びO3の連続的な混合物流(O3中に9mol%)により圧力調整器13を用いて1バール~5バールの圧力で維持される、オゾン生成器14によって生成される酸素とオゾンとの混合物を含むバッファタンクリザーバ10を含む。
【0104】
銅(1、2)上の単層グラフェンを、加熱手段18(例えば、反応チャンバーの周りを包む加熱テープ)を含む反応チャンバー加熱システム51、温度コントローラ19、及び反応チャンバー4内に設置されて反応チャンバー4内の温度を監視する温度センサ20(例えば、熱電対)を備えた反応チャンバー4に装着した。銅1上の単層グラフェンを含む反応チャンバー4を、反応チャンバー加熱システム51の温度傾斜ステージ中(室温から反応器温度まで)に反応チャンバー雰囲気制御システム(例えば、マスフローコントローラ)を介してもたらされるH2雰囲気(0.8トール)下で加熱した(例えば120~290℃)。その後、不活性ガス入口を、Arに切り替え、反応器温度(例えば、250℃)に安定させた。
【0105】
その後、LabVIEW(登録商標)プログラムによって制御されたミリセカンドリークバルブ9(MLV-1)を一定時間(例えば、0.01~0.2s)開放して、3~27トールの範囲のピークO
3圧力で、バッファタンクリザーバ10から反応チャンバー4中に短いO
3パルスの形態でオゾンを送出し(
図2B)、一方、真空制御システム56はO
3を抜き出し、反応器の短い保持時間を制御した。場合によっては、不活性ガスパージ(加圧Ar又はHe、例えば、10バール)を制御するガスパージ源65のミリセカンドリークバルブ12(MLV-2)を同期された遅延時間(t
d)(例えば、0s~1s)開放して、オゾン送出後(MLV-1を閉じた時)、O
3の迅速除去を促進し、不活性ガスパージは約10s続くであろう(
図2E)。
【0106】
O
3量を、以下のTable 1(表1)に詳述するように、MLV-1開放時間(τ)及びO
3供給圧(P
up)を変えることによって制御された時間の関数としてO
3圧力の曲線における面積によって算出した(
図2D)。
【0107】
【0108】
反応器についての圧力制御システムのモデルを、
図2Cに示す。反応器の入口は、ミリセカンドリークバルブ(MLV)と接続されている。MLVは、MGRをO
2/O
3リザーバに接続し、リザーバの圧力はP
upである。MGRの出口は、出口バルブを介して真空ポンプと接続され、0バールのP
pumpを維持する。MGR中のO
2/O
3混合物の全圧P
rは、当初は0である。
【0109】
数学的モデルを、MLVを開閉する場合に、オゾンの圧力プロファイルを調査するために構築した。簡潔に、MLV-1バルブをt=0sで開放し、t=τで閉じる。0<t<τの間、O2/O3混合物をMGR中に送出する。本出願人らは、C1をMLVの流量係数として定義し(MLVにわたる流量は、式S1において示すように流量係数にMLVにわたる圧力差を掛けることによって得られる)、反応チャンバー中のガスの内部流量として
【0110】
【0111】
を定義する。
【0112】
【0113】
C2は、反応チャンバーから排出されたガスの流量として、出口バルブの輸送係数
【0114】
【0115】
として定義される。
【0116】
【0117】
したがって、反応チャンバーに蓄積されたガスの量
【0118】
【0119】
は、以下のように算出される:
【0120】
【0121】
したがって、0<t<τの間、反応チャンバー中の圧力変化は、
【0122】
【0123】
[式中、Vrは、反応器の体積(150cm3)である]
である。
【0124】
t>τの場合、MLVを閉じ、O2/O3混合物を真空ポンプによって排出して圧力の指数関数的減衰に至る。圧力プロファイルにおける対応する変化は、下記によって捉えられる:
【0125】
【0126】
本発明者らは、式S4及び式S6を解いた後、反応チャンバーの圧力を算出することができた。
0<t<τ
【0127】
【0128】
t=τ、Pr=Pr-τの場合、
t>τである。
【0129】
【0130】
MLV開放の実験データをτ=0.1s(
図2B及び
図2D)にフィッティングさせることによって、C
1及びC
2を、それぞれ5.5×10
-8及び1.7×10
-7mols
-1Pa
-1として得た。
【0131】
O3量は、反応チャンバーにおけるO3送出の総量について説明するために定義され、以下:
【0132】
【0133】
[式中、[O3]がO3の濃度であり、PO3はO3の分圧であり、NAはアボガドロ数6.023×1023mol-1であり、R=8.314Jmol-1K-1であり、t0はエッチング開始時間(バルブが開放する場合)であり、tfはエッチングが終了する時間である]
のように算出される。Arパージなしで、tfはオゾン圧力が0まで低下する時間である。Arパージで、tfは、Arパージが開始する時間に相当する。ここで報告された量は、複数の圧力プロファイルの積分の平均値を取ることによって算出された。
【0134】
全体として、3.2×1016~3.5×1017分子cm-3sのO3量を、エッチング時間を1s未満に良好に維持して送出した。
【0135】
続いて、試料をAr雰囲気において室温に冷却した。冷却後、銅(1、2)上の単層グラフェンを300℃でH2雰囲気において反応器中でアニールして銅を還元した。
【0136】
その後、銅(1、2)上の得られた単層グラフェンを使用して、以前に報告されたように(Huangら、Nat. Commun.、2018年、9、2632頁)、ガスフィルターとして使用するための強化膜を作製した。ナノ多孔質カーボン(NPC)膜を強化材としてグラフェン上に堆積した。NPCを、N-SLGの上部にツラノース及びポリスチレン-コ-ポリ(4-ビニルピリジン)(PS-P4VP)の溶液をスピンコートすることによって製造した。ブロック共重合体(ポリ(スチレン-b-4-ビニルピリジン)、ポリマー源)0.1g及びツラノース(Sigma Aldrich社)0.2gを、DMF(Sigma Aldrich社)に溶解し、その後、180℃で加熱処理を行った。ポリマー膜の熱分解をH2/Ar雰囲気において500℃で1h行って、グラフェンの上部にNPC膜を形成した。NPC/N-SLG/CuをNa2S2O8溶液(水中で20質量%)に浮かべてCu箔をエッチングした。Cuエッチング後、浮いているNPC/N-SLG膜を脱イオン水中ですすいで残基を除去した。最後に、NPC/N-SLGを多孔質タングステン支持体上にすくい上げた。
【0137】
(実施例2)
得られたグラフェン膜の特性評価
得られたグラフェン膜を、以下のように、ラマン、透過型電子顕微鏡(TEM)、高分解能TEM(HRTEM)、及び収差補正HRTEM(Ac-HRTEM)撮像によって特性決定した:
【0138】
ラマン特性評価
異なるO3量の条件下で実施例1で説明するようにして得られたグラフェン膜を、標準湿式転写法によってSiO2/Siウェーハ上に転写した。単一点データ収集及びマッピングを、青色レーザー(λL=457nm、EL=2.71eV)及び緑色レーザー(λL=532nm、EL=2.33eV)を備えたRenishaw顕微ラマン分光器を使用して行った。ラマンデータの分析をMATLAB(登録商標)を使用して行った。D及びGピーク高さの算出については、バックグラウンドを、最小二乗曲線適合ツール(lsqnonlin)を使用してラマンデータから差し引いた。
【0139】
O
3量の4.8×10
16~3.5×10
17分子cm
-3sの増加に曝露されたグラフェン膜のラマン分光は、重要なDピーク及びD’ピークを明らかにした(
図3A及び
図3C)。I
D/I
D’比率は、はるかに7を下回り、3に達し、欠陥のほとんどがグラファイトのエッジ状の欠陥であることを示した。I
D/I
Gマッピングは、大面積にわたって、欠陥を均一に生成することができることを示した(
図3B)。これは、本発明の方法が、固有の欠陥(0.04±0.02のI
D/I
G比率)が低密度で、高品質(通常、高品質単層グラフェンのI
2D/I
Gは2.0を超えるものである)グラフェン膜(4.8±0.25のI
2D/I
G比率)を作製することを可能にすることを支持する。
【0140】
TEM試料の作製
転写によって誘発される汚染は、予め作られた薄い多孔質ポリマー膜(例えば、ポリベンズイミダゾール)を用いて実施例1で説明するようにして得られたグラフェン膜を補強することによって、透過型電子顕微鏡(TEM)グリッドにそれを転写する前に最小化した。予め作られた多孔質膜の使用によって、ナノ多孔質グラフェンの表面におけるポリマー溶液によって誘発される汚染を回避する。そのような汚染は、グラフェン上に多孔質膜を直接形成する場合(Heら、2019年、Energy Environ. Sci.、12~16頁;Zhaoら、2019年、5、eaav185)、又はPMMA系転写手法(Gongら、2013年、J. Phys. Chem. C. 117、23000~23008頁)を使用する場合に回避するのが困難である。更に、予め作られた多孔質膜のマイクロメートルサイズの開放領域は、ナノ多孔質グラフェンを撮像する多くの機会を提供する。薄い多孔質ポリマー補強層は、一旦それがナノ多孔質グラフェンの上部に位置してAc-HRTEM撮像に理想的な熱伝導性炭素多孔質強化材を形成すれば、炭化することができる耐熱性ポリベンズイミダゾール共重合体(FUMATECH BWT社、ドイツによって提供されるfumion(登録商標)AM)から作られた。
【0141】
ポリベンズイミダゾール共重合体を、非溶媒誘発相分離を使用して多孔性薄膜に加工した。簡潔に、一滴のポリマーのDMAc中1.5質量%溶液を、スライドガラスでそれを穏やかに押すことによって25μmのCu箔の上部に広げた。薄いポリマー溶液でコーティングされたCu箔をIPrOH槽に浸漬し、ポリマー溶液層を薄い多孔質ポリマー膜中に沈殿させた。多孔質ポリマー膜を乾燥させた後に、Cu箔を20質量%過硫酸ナトリウム水性浴中でエッチングし、残留する浮遊ポリベンズイミダゾール共重合体多孔質膜を水槽に転写し、過硫酸ナトリウムを除去した。浮遊するポリベンズイミダゾール共重合体多孔質膜を、その表面上にナノ多孔質グラフェンを備えたCu箔を使用して、水槽からすくい上げた。多孔質膜をナノ多孔質グラフェンの上部で完全に乾燥した後、一滴のIPrOHをその上に注入して、IPrOHの蒸発時にナノ多孔質グラフェン表面へのポリマー膜の接着性を向上させた。続いて、多孔質ポリマー膜をH2/Ar流において500℃で熱分解して、多孔質炭素によって補強されたナノ多孔質グラフェンの形成をもたらした。次に、Cu箔を20質量%過硫酸ナトリウム浴でエッチングし、結果として生じる補強されたナノ多孔質グラフェンを水で洗浄し、400メッシュの金TEMグリッドに転写した。最後に、補強されたナノ多孔質グラフェンを装着したTEMグリッドを、H2が存在する状態で900℃で1時間活性炭内部で洗浄して、ナノポアを覆う汚染を除去した。ナノ多孔質グラフェンは、汚染を容易に吸着し、したがって、H2中での900℃での洗浄は、撮像期間の前にナノポアのほとんどを曝露するのに重要である。洗浄は、次の予防措置をとって細孔を大きくすることができるシステムでのO2の存在を回避することによってなされた:(i)吸着されたO2を、システムを3回排気し、約2×10-3トールの真空を200℃で2h適用することによって高温への加熱前に除去した。(ii)900℃への加熱前に、システムをH2の一定流で約850トールに加圧してO2漏れを回避した。システムは、洗浄手順の残りに対して、H2の一定流において約850トールで加圧したままであった。対照実験は、グリッド作製工程がナノポアの組込みを引き起こさないことを示した。
【0142】
HRTEM撮像
高分解能TEM(HRTEM)を、80kVの加速電圧で操作されたTalos F200X(FEI)顕微鏡を使用して行い、ナノポアを核形成もせず、拡大もしなかった。量率を撮像の間に約500e-s-1Å-2で維持した。明らかにナノポアを示し、撮像中に、細孔を拡大しなかったことを確認するために以下の手順を行った:i)30連続画像を、各2sの曝露時間で得た;ii)第1の画像及び最後の画像を比較して細孔拡大が撮像中に起こらなかったことを確認した;iii)最初の5~8つの画像を一体化して最終画像を形成し、ナノポアははっきり目に見えた。典型的には、Talos中のMGR処理されたグラフェン試料のHRTEM撮像中に、細孔は、焦点調節及び撮像の間に約8×103e-Å-2の量を受けた。
【0143】
Ac-HRTEM撮像
収差補正(Cs)HRTEM(Ac-HRTEM)を、ウエインタイプのモノクロメーターを備えた二重補正Titan Themis 60-300(FEI)を使用して行った。80keVの入射電子ビームを全ての実験に使用して電子放射線損傷を低減した。入射電子ビームを単色化(「レインボー」モード照明)して色収差の影響を低減し、約17~21μmの負のCs及びわずかなオーバフォーカスを使用して画像中に「明るい原子」コントラストを付与した。量率を撮像の間に約2×104e-s-1Å-2で維持し、スリットを使用して電子線に撮像される試料の面積のみを曝露した。
【0144】
80keVの入射電子によって炭素原子に転写することができる最大エネルギーは、格子内炭素原子についてのノックオンエネルギー閾値(つまり、17eV)未満である15.8eVである(Giritら、2009年、Science. 323、1705~1708頁)。意見の一致のもとに、元の面積からのノックオンは撮像中に観察されなかった。上記Giritら、2009年に類似して、秒のスケール、及び1秒未満でさえの場合における細孔エッジの再構成及びエッジ原子のノックオンは、より長い曝露時間の後にのみ観察された(つまり、細孔拡大)。MGR処理後にグラフェン試料の細孔ライブラリを構築するために撮像された細孔を、細孔拡大を回避するのに十分に低い量に曝露した。典型的には、MGR処理されたグラフェン試料の撮像中に、細孔は、焦点調節及び撮像の間に約2×105e-Å-2の量を受け、最初の5~10個のフレーム(各フレームは約5×103e-Å-2の量に相当する)を最終画像に統合した。必要な場合、画像を、ガウス、平均及び/又はバンドパスフィルターの組合せで加工して、グラフェン格子をより明確にした。
【0145】
TEM像の分析
六角形のメッシュを、細孔を囲むグラフェン格子と一致するように手動で適合させ、細孔の欠損炭素原子に対応するメッシュのポイントを、続いて除去した。ダングリングボンド及びStone-Wales欠陥を無視した。そのような分析は、欠損原子の数を定量し、かつ細孔の形状を描く強力なツールである。用いた撮像条件(つまり、80keV)では、エッジの再構成が存在するので、細孔の得られたエッジ構造を注意して取るべきである。3つの別々に作製した試料からの合計204の細孔を次のMGR条件で処理されたグラフェンについて分析した:250℃、1.6×1017分子cm-3s(τ=0.1s、td=0.5s Ar)
【0146】
細孔径をImageJ(登録商標)ソフトウェアを使用して決定した。細孔径を、細孔内部に収まる可能な最大の円をフィッティングすることによって算出した。グラフェン格子によって囲まれた細孔のみを分析に使用した(つまり、汚染に接触する細孔を無視した)。3つの別々に作製した試料からの合計347の細孔を、次のMGR条件で処理されたグラフェンについて分析した:250℃、1.6×10
17分子cm
-3s(τ=0.1s、t
d=0.5s Ar)。空孔欠陥及び格子適合細孔構造のAc-HRTEM画像を、
図4A及び
図4Bに示す。Ac-HRTEMに基づいた6~20個の炭素原子を欠損している細孔についての空孔欠陥の粒度分布、及び下記に記載するモデルに基づいた算出された粒度分布を
図4Cに示す。
【0147】
グラフェンの高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)及び収差補正HRTEM(Ac-HRTEM)を行って、本発明の方法によって得られたグラフェン膜の細孔径分布(PSD)、細孔密度、及び細孔構造を理解した。いくつかのナノポア異性体は、原子数Vを正確に除去することによって形成された異なる構造の細孔として定義され、観察された。これらの異性体はP-Vjと呼ばれる。例えば、P-10i、P-10ii、及びP-10iiiは、10個の炭素原子を除去するが、異なる構造を提供する(
図4A及び
図4B)。異性体の相対的な数は、空孔欠陥の異性体のカタログ化と一致した(Chuら、1992、Surf. Sci.、268、325~332頁)。例えば、P-11及びP-7の最もあり得る異性体であると予測されるP-11i及びP-7iを、それぞれ確かに最も頻繁に観察した。P-7iの他の異性体は、P-7iの極めて高い確率(42%)及び他のP-7異性体の低い確率(<10%)に恐らく寄与すると観察されなかった。いくつかの高確率異性体、例えば、P-6iii、P-8ii、P-11i、P-12i、P-16ii、P-17i、及びP-20iiiは、観察及びシミュレーション予測されたガス篩ナノポア間の間隙を満たしていることが初めて観察された(上記のChuら、1992)。ガス篩分けに対して膨大な注意を引いたナノポア、例えば、P-10i、P-13i、及びP-16iは、また、それらがナノポアの数のごく一部分だけを構成するにもかかわらず、観察された。欠損炭素原子の数に基づいたPSDは、P-16未満のナノポアの大部分と対数正規分布を有していた(
図4C)。後部では、いくつかのナノポアは、細長構造を有し、その一方、いくつかのナノポアは、より小さな細孔の合体によって形成されると思われた。
【0148】
上記と同じオゾン量で150℃で行われたエッチング実験は、250℃のものと比較して、はるかに低い細孔密度を生じた。PSDを評価するために、時間の関数として一定時間間隔中に核形成された細孔の拡大を追跡した。簡潔に、O3曝露を、n個の等間隔Δtに分割した。O3曝露の終わりに、時間工程tiの間に核形成した細孔についての欠損炭素原子数(vi)を以下:
【0149】
【0150】
[式中、N
iは、時間工程iの間に生成された新しい核の数であり、ΔC
iは、時間工程iでの存在する欠陥からエッチングされた炭素原子の総数である]
のように算出できた。モデルによって抽出されたPSDは、Ac-HRTEM観察のものとよく一致する(
図4D)。
【0151】
STM
走査型トンネル顕微鏡(STM)撮像を、低温走査型トンネル顕微鏡(CreaTec Fischer & Co.社)の使用によって行った。N-SLG試料を、石英管炉において、50sccmのH2流下で800トール、及び900℃で3時間還元した。続いて、1時間ですぐに、試料をSTM超高真空(UHV)チャンバーに入れた。
【0152】
Cu箔上の実施例1に記載のようにして得られたグラフェン膜を、グラフェンを転写する必要なしで使用し(
図5A及び
図5B)、STMチャンバー内部で900℃で3時間加熱して、観察前に表面を洗浄した。多孔質グラフェン試料上のSTM撮像を、77K及び2×10
-10mbarでUHV STMシステム(Createc)を用いて行った。STMプローブは、市販のプラチナ及びイリジウム(Pt/Ir)合金ワイヤ(Pt:90質量%、直径:0.25mm、Alfa Aesar)の機械的切断方法によって作製した。異なるバイアス電圧及びトンネル電流で画像を得た。STM画像傾きを、WSxMソフトウェアでの平坦化によって低減した。
【0153】
100nm×100nmの走査領域に基づいた画像は、空孔欠陥の高密度(~10
12cm
-2)が格子に組み入れられたことを明らかにした。空孔欠陥のサイズはHRTEM観察に一致した(
図5C)。時には、いくつかのナノポアは、整列しているように見え、純粋に確率的なエッチングから予想されたより均一に分散されるように見えた(
図5B)。この独自の配置は、グラフェン上にO
3の化学吸着によって形成されたエポキシ基の協同の直線クラスタリング(C-C結合に橋掛けするO原子)を起源とする可能性がある(Liら、2006年、Phys. Rev. Lett.、96、5~8頁)。直線クラスタリングは、エポキシ基の低エネルギー構造によって駆動され、エポキシ基の拡散の低障壁によって促進される(Suarezら、2011年、Phys. Rev. Lett.、106、8~11頁)。
【0154】
(実施例3)
空気分離及び燃焼後炭素捕捉能力
単一成分及び混合ガス透過テストを、
図6に記載するように透過モジュール中で行った。透過テストを、全てオープンエンドモードで行った。透過セットアップにおいて使用される全ての機器(マスフローコントローラ(MFC)、オーブン、及びMS)は、5%の誤差内で較正された。実施例1で説明したようにして得られたオゾン処理されたグラフェン膜をVCR系モジュール(Swagelok VCR継手)に挟み、耐漏出フィッティングをした。供給ラインとスイープラインをオーブン内部で予熱して、温度変動を防いだ。予め較正されたMFCは供給ガスの流量を調整し、供給圧力(1.5~2.0バール)を背圧調整器によって調整した。別の予め較正されたMFCは、1バールの圧力でスイープガス(Ar)の流量を制御し、それは、透過濃度のリアルタイム分析のために予め較正された質量分析計(MS)に透過ガスを運んだ。MSは、Ar中のHe、H
2、CO
2、O
2、N
2、CH
4、及びC
3H
8の透過流において同様の濃度で予め較正された。試験前に、全ての膜を100℃に加熱して、グラフェン表面上の汚染を除去した。混合透過テストについて、等モルのガス混合物又は特定濃度(20%のCO
2、80%のN
2)を、供給側で使用した。測定をリアルタイムで連続的に行い、定常状態のデータのみを報告した。一旦定常状態が確立されたなら、ガスフラックスを算出した。
【0155】
ガスフラックスは、3.2×10
16~3.5×10
17分子cm
-3s(τ=0.01~0.2s)のO
3量を使用する本発明の方法に従って作製された1mm
2の大きさのオゾン処理されたグラフェン膜を介して観察され、H
2及びCO
2をCH
4から分離することができ、H
2及びCO
2の透過性は最も高いO
3量で30倍単調に増加することが判明した(
図7A)。H
2/CH
4選択性及びCO
2/CH
4選択性(それぞれ9.7~19.9及び6.1~16.5)は、対応するクヌーセン選択性(それぞれ2.8及び0.6)よりはるかに高かった。これは、組み込まれた空孔欠陥が、確かに有利に同様の大きさの分子を篩にかけることができたことを裏付けている。興味深いことには、H
2、CO
2、及びCH
4についての活性化エネルギーは、それらの吸着熱(それぞれ、2.7、9.9、及び8.7kJ/mole)を観察された見掛活性化エネルギーから引くことによって取り出され、著しく変化しなかった(
図7B)。より高量での選択性の減少は、隣接した細孔の合体に起因し得、それは、あふれ出る輸送を促進すると期待される。
【0156】
Arパージが同期された(td=0~1.0s)(10バール)エッチング反応器を妨害することは、CO
2篩性能を向上させた(
図7C)。2,620GPUのCO
2透過性は、対応するCO
2/N
2選択性及びCO
2/CH
4選択性が27.6と20.0であり、1.6×10
17分子cm
3sのO
3量で達成することができ(τ=0.1s、t
d=0.5s)、Ac-HRTEMによって観察されたナノポアの捕集がCO
2篩分けには確かに魅力的であることを証明した。Arパージによる残留O
3の迅速除去も、比較的より低い構造破壊がラマン分光法によって観察されたということに反映された。パージの使用は、CO
2透過性の著しい損失なしでCO
2/CH
4選択性を向上させた(
図7C)。N
2からのCO
2の篩分けは0.3ÅのMSRに相当し、0.2ÅのMSRに相当する12.6のCO
2/O
2選択性を達成することができた。
【0157】
エッチング反応速度を制御して、最適化されたO
3量で広範囲の反応器温度(つまり、120~290℃)で魅力的なCO
2/CH
4選択性を得ることができた(
図7D及び
図10)。所与のオゾン量(τ=0.1s、t
d=0.5s)については、ガス透過性の向上及び選択性の低下は、エッチング温度の関数として観察され、より高温度でのより速いエッチング反応速度に寄与した。これは、平均細孔径(エッジ間の間隔)が290℃で約0.2nm増加したHRTEM由来PSDにおいて証明された(
図7E)。t
dを0.5から0.2sに減少することによってO
3量を最適化し、パージシステムとして加圧Heパージを使用することによって、290℃での平均細孔径を低減することができた。これは、H
2/N
2選択性及びCO
2/N
2選択性の向上に反映された(
図7D)。
【0158】
本発明の方法は、特定の分子篩用途に対して分画分子量を調整することができるという特有の利点を有する。
【0159】
これは、200℃のin-situでO2を使用して、空孔欠陥を拡大することによって更に支持される。簡潔に、透過側がArでスイープされながら、本発明のオゾン処理されたグラフェン膜の供給側は、CO2/N2混合物で加圧され、定常状態の操作が達成された。エッチングを開始するために、スイープガスをO2に切り替えた。続いて、透過側のCO2及びN2の分圧を、オンライン質量分析計を使用して、時間の関数として追跡した。反応器の後、スイープをArに切り替えて状態-状態透過データを測定した。
【0160】
200℃でのO
2曝露に際して、透過側のCO
2及びN
2の濃度は、時間の関数として増加した(
図8A)。しかし、CO
2濃度の増加は、はるかに速く、その結果、CO
2透過性及びCO
2/N
2選択性が向上した(
図8B及び
図8C)。性能の向上は永久で、数日間にわたってテストする数サイクル後に観察することができた。数日後の同じグラフェン膜上でのO
2系細孔拡大の繰返しは、CO
2/N
2選択性の更なる向上をもたらした(
図8A及び
図8C)。細孔拡大は、全てのガス分子の見掛活性化エネルギーの低減によって確認された(H
2に対して2kJmol
-1及び他のガスに対して4kJmol
-1、
図8D)。
【0161】
O
2での遅い細孔拡大は、約0.1Åだけ分画分子量を変えることができ、200℃でのO
2でのグラファイトのエッチング反応速度と一致した。O
2での一次反応速度を仮定して、1.6×10
-7nm min
-1Torr
-1のエッチング速度均一性をこれらの条件で推定した(Chuら、1992年、Surf. Sci. 268、325~332頁; Traczら、2003年、Langmuir. 19、6807~6812頁; Yangら、1981年、J. Chem. Phys. 75、4471~4476頁)。その結果、1~2hの細孔拡大は、O
2透過に有利であり、CO
2/O
2選択性を12.6から7.4に低下させ、O
2/N
2選択性を1.6から3.4に向上させた(
図8C)。それを1,300GPUのO
2透過性と組み合わせると、本発明のガス選択分離フィルターは、O
2/N
2分離がO
2を濃縮するのに必要な病院等の分散型の小規模用途に魅力的なものとなる。燃焼後捕捉の文脈では、変えた分画は、CO
2透過性及びCO
2/N
2選択性をそれぞれ9,600GPU及び24.4とし、本発明者らが非常に魅力的なCO
2/N
2分離性能を実現することを可能にした(
図8E)。MGR(250℃、1.6×10
17分子cm
-3s(τ=0.1s、t
d=0.5s Ar))によって処理された別の膜は、1hのO
2処理後に11,850GPUのCO
2透過性及び21.7のCO
2/N
2選択性を得た。CO
2/N
2分離性能は、単一成分からのものに類似し、混合分離係数は、対応する理想的な選択性よりわずかに高く(
図9)、それは、N
2に対するCO
2の競合的吸着に起因し得る。
【0162】
全体として、これらのデータは、本発明の方法が、O3曝露時間を数ミリ秒に限定することによって、グラフェン膜中の空孔欠陥の制御された取り込みを可能にすることを支持する。グラフェン中のPSDは、オゾン処理後にO3量及びO2雰囲気中の遅い拡大によって調整することができる(膜モジュールにおいてin-situエッチングを行うために、MGRによって処理されたグラフェン膜を、1~2h、200℃でO2雰囲気に曝露した)。0.2ÅのMSRは、CO2/O2選択性及びCO2/N2選択性はそれぞれ12.6及び27.5以下で魅力的なCO2/CH4、CO2/N2、O2/N2分離性能で達成された。報告された膜の空隙率は約1%だけであり、それにもかかわらず、非常に短い拡散経路に起因し、非常に大きなガス透過性が実現され、空隙率を増加させることによって更にガス透過性を向上させる大きな可能性があることを示した。
【0163】
200℃での酸素曝露による空孔欠陥の遅い拡大は、分画分子量を0.1Åだけ変えることができた。結果として生じる3.4のO2/N2選択性と、1,300ガス透過単位(GPU)の対応するO2透過性、及び11,850GPUの対応するCO2透過性の21.7のCO2/N2選択性により、本発明のガスフィルター膜はエネルギー効率の良い分散空気分離及び燃焼後炭素捕捉にとって魅力的なものとなる。
【0164】
(実施例4)
高圧でO3の複数のミクロのパルスを使用する本発明の方法による細孔径分布のÅスケールの制御
上記のようなカスタムミリセカンドガス化反応器(MGR)を使用して、O3の限定された量に、つまり、0~760トールの圧力範囲及び120~290℃の温度領域における数ミリ秒の時間分解能で、銅箔上に化学蒸着(CVD)を使用して合成されたままの単層グラフェンを曝露した。簡潔に、曝露時間及び圧力を、O3の導入及びパージに関与する2つの同期されたミリセカンドリークバルブ(MLV)によって制御した。
【0165】
単一パルスの使用よりも複数のミクロパルスを使用するという利点は、単一パルスの場合でのような反応器中のガス流を制御する2つのMLVのコンダクタンスによって圧力プロファイルが固定されないということである。確かに、複数の過渡的パルスによるO
3送出は、MLV開放時間(τ
o)、2つの連続パルス間の時間間隔(τ
i)、及びパルス数(F)の関数としていくつかの圧力プロファイルを調査することを可能にする(
図11A)。詳細には、単一パルス条件(τ
o=100ms)と比較して、「低」は、より低く水平な圧力プロファイルを維持するために、より短いτ
o及びより長いτ
i(τ
o=10ms、τ
i=500ms、及びF=15)に基づいた。対照的に、「中間」(τ
o=10ms及びF=15)及び「高」(τ
o=100ms及びF=15)をより短いτ
i(100ms)で使用してよりシャープな圧力プロファイルを達成した。
【0166】
確かに、単一パルス(対照実験、
図11A及び
図11Bのパネルi)の場合と比較して、ピーク圧力に基づいて「中間」及び「高」と呼ばれる2つの矩形パルス圧力プロファイルで更により狭いPSDを達成することができた(
図11A及び
図11Bのパネルiii及びパネルiv)。「低」圧力プロファイルは、長い後部を備えたPSDをもたらした(
図11A及び
図11Bのパネルii)。
【0167】
PSDを予測するための次の数学的モデルを、以下のように確立した。
【0168】
グラフェンとのO3の反応は以下のように進む:O3分子は、グラフェンに化学吸着して格子上にエポキシ基を生じる。エポキシ基は室温でさえ非常に可動であり、拡散に対する低エネルギー障壁(~0.73eV)に寄与し、続いてまわりに拡散してエネルギー最小化エポキシクラスタを形成し、結局エーテル鎖に発達する。鎖中に存在する歪みは、結局C-C結合切断(核形成事象)を引き起こす。したがって、核形成率はエポキシ基の数に比例し、したがって、O3圧力Pに比例する(式2)。既存のナノポアの拡大の場合には、O3分子が、ナノポアエッジに直接結合することができる。細孔拡大は、エネルギー障壁が約1.1eVの格子からのCO及びCO2の放出によって進む。この場合、拡大率はPn[式中、n<1(式3)である]に比例する。その後、本発明者らは、nについての0.5の値が、実験的に観察されたPSDを合理的に十分予測することを示す。
【0169】
【0170】
[式中、θは核形成密度であり、Cは欠損炭素原子の数であり、tは時間であり、kθ及びkeは、それぞれ細孔核形成及び拡大についての速度定数である]
【0171】
式2及び式3は、反応器中のO3圧力プロファイルが、PSDを決定する際に重要な役割を果たすことを示す。それらはまた、細孔核形成が細孔拡大に比較して、Pのより強い関数であり、より高いPで比較的促進されることを示す。他方、細孔核形成及び拡大のためのエネルギー障壁が比較可能であるので、反応温度は、核形成の反応速度と拡大の反応速度との相対的な調整のための最適パラメータではない。実際、温度を上昇させると、両方の事象の速度を増加するであろう。P依存性を考慮すると、圧力プロファイルが温度より強い役割を果たすと期待される。この洞察によって引き起こされて、狭いPSDに達するためにいくつかの圧力プロファイルをスクリーニングした。
【0172】
PSDを予測するための数学的モデルのロバスト性を、収差補正高分解能透過型電子顕微鏡(Ac-HRTEM)を使用して、ナノポアを撮像することによって確認した(
図11c及び
図11d)。簡潔に、自作のレース状炭素支持体を使用して、顕微鏡検査用N-SLG試験片を作製した。試験片を900℃で還元雰囲気においてアニールして、細孔エッジでの酸素官能基も失われる転写関連汚染物質を除去した。ナノポアも核形成せず、著しくナノポアも拡大しない条件で画像を得た。Ac-HRTEMによって撮像されたナノポア中の欠損炭素原子の数を、グラフィックス的手法を使用して近似した。グラフィックス的手法は下記工程からなる:i)細孔の輪郭を手で描画した;ii)細孔の外形を元のグラフェン格子の上部に(ランダム位置で)重ね、Ac-HRTEM画像に一致させるために同じスケールを維持した;iii)空孔欠陥内の炭素原子を全て取り除き、ImageJソフトウェアを使用して欠損C原子数を数えた(完全に除去されたC原子のみを欠損C原子として数えた)。本発明者らは、輪郭(ナノポアのエッジ)及び元の格子が完全に一致せず、画像中に存在する格子歪みに起因するので、この欠損炭素原子数C
不一致が実数の過大評価であると言及する。
【0173】
提案されたグラフィックス的手法の輪郭とデジタルグラフェン格子との間の固有の不一致よって生じる誤差は、輪郭線の長さ及び幾何学的因子(炭素原子を表すドットの相対的サイズ及び使用される輪郭線の厚さ、並びに輪郭とデジタル格子との間の不一致の程度等)の関数である。誤差を最小化するために、空孔欠陥の輪郭を形成する炭素原子数及び幾何学的因子を(ある程度まで)考慮する補正係数(C補正)を示した。
C補正∝GC輪郭(4)
[式中、C輪郭は、空孔欠陥の輪郭を形成し、輪郭の長さを測定し、グラフェン格子における炭素原子間の距離(0.142nm)によって除算することによって抽出することができる炭素原子数であり、Gは幾何補正係数である]
【0174】
欠損炭素原子(C欠損)の推定数を次の式:
C欠損=C不一致-GC輪郭(5)
を使用して算出した。
【0175】
本発明者らのシステムの幾何補正係数を、既知構造(つまり、欠損炭素原子の既知数及び輪郭中の炭素原子数)の10の細孔をシミュレートし、幾何学的手法を使用してそれらを分析し、炭素欠損原子(carbon missing atom)の実数とC欠損との間の誤差を最小化して算出した。算出された幾何学的係数は2.5であった。グラフィックス的手法を示されるP-22に使用する欠損炭素原子の算出された数は21であり、5%の誤差に相当する。
【0176】
グラフィックス的手法の有効性を、4つの空孔欠陥をそれらの各々3つの異なる不一致角度で分析することによって確認した。分析された空孔欠陥は、P-6、P-13、P-22、及びP-65であった(それぞれ、6、13、22、及び65の欠損炭素原子を含む)。グラフィックス的手法による欠損炭素原子の算出された数は、欠損炭素原子の実数に十分一致した(観察された誤差は、≦10%であった)。
【0177】
空孔欠陥の分析の代替手法は、それらのまわりのグラフェン格子を正確に描画し、欠損炭素原子の数を数えることである。しかし、この種の分析は時間がかかり、格子がそれらのまわりで完全に解像される空孔欠陥に限定される。
【0178】
全体として、グラフィックス的手法は、強力なツールであり、ナノ多孔質グラフェン試料のPSDを有意に算出する。それは、完全に細孔のまわりで格子を解像する必要がないので、細孔の膨大な数の分析を可能にする。
【0179】
「中間」の場合からの代表的なナノポアを
図11cに示す。150を超えるナノポアを分析してPSD及び細孔密度を得た。抽出されたPSDは、上記モデル予測されたPSDとよく一致する(
図11d及び
図11e)。画像分析から抽出された空孔欠陥の密度(5.7×10
12cm
-2)は、モデルによって予測されたもの(5.3×10
12cm
-2)に類似し、マルチパルスミリセカンドガス化からPSDを予測する際にモデルのロバスト性を確認する。Ac-HRTEM画像についてのbinサイズは、画像分解能の限定に起因するいくつかの場合での欠損炭素原子の正確な数の決定における不確実性(1~3個の炭素原子)のために3個の炭素原子である。
【0180】
この研究で達成されたより狭いPSDの分離性能を理解するために、N-SLGをポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP)の薄膜で機械的に補強し、その後、ポリマーで補強された膜を5μmの孔のアレイを有する多孔質タングステン支持体に湿潤転写することによって膜を作製した。比較のため、N-SLG膜のないスタンドアロンの250±10nmの厚みのPTMSP膜は、CO2透過性が33,290±7,140GPU、及びCO2/N2分離係数が10.7±0.1であり、初期の報告書と一致している。
【0181】
モデルに基づいて、対照(単一パルスの場合(0~13.5トールのオゾン)、「低」、「中間」、及び「高」圧力プロファイルについての空孔欠陥の密度は、それぞれ1平方cm(cm-2)当たり1.8×1012、7.2×1012、5.3×1012、及び1.3×1013個の細孔だった。ナノポアのアンサンブルから、13個の欠損炭素原子で作られているナノポア(P-13)又はP-13より大きいナノポアのみが、合理的に低いエネルギー障壁でのCO2輸送を可能にするのに十分に大きな電子密度隙間を有し、特に、O3エッチングナノポアは酸素機能化されると考える。したがって、P-13ナノポア又はより大きなナノポアは、CO2透過性を決定するであろう。実際、全てのPSDの中で、「低」プロファイルは、CO2透過性ナノポアの最も高い密度(1.8×1012cm-2)を引き起こし、最も高いCO2透過性(25,530GPU)を生じる。2つの他の場合(「中間」及び「高」)では、CO2透過性細孔の密度はより低く(それぞれ、3.8×1011及び2.9×1011cm-2)、単一パルス条件(1.9×1011cm-2)に類似し、その結果、全体のより高い欠陥密度を有しているにもかかわらずCO2透過性はより低い(それぞれ3,170及び4,400±2,070GPU)。「中間」及び「高」も対照シングル(4,870±1600GPU)と同様のCO2透過性を有する。しかし、興味深いことには、それらは、狭いPSDにより、より高いCO2/N2選択性を示す。
【0182】
CO2/N2選択性を、N2輸送をも可能にするより大きなナノポアの数に対してCO2輸送を可能にするナノポアの数によって決定する。「低」圧力プロファイルによって得られたPSDは、スタンドアロンのPTMSPと比較して、分離係数(12.5±0.5)の実質的な向上を引き起こさなかった。これは、合理的に低いエネルギー障壁でN2輸送を可能にすると知られている16個の炭素原子を欠損しているもの(P-16)より大きなナノポアの実質的な数の存在による。対照的に、「高」及び「中間」圧力プロファイルは、非常に向上した分離係数(それぞれ33.4±7.9、18.6±0.8)を引き起こし、最も高い分離係数は39.8であった。これは、PTMSP(10.7±0.1)からのものと比較して著しく高く、また、過渡的パルスが単一パルス(15.0±0.5)である本発明の方法に由来するものより更に高く、本発明の1つの態様によるマルチミクロパルスミリセカンドエッチングの魅力を実証する。要約すると、高性能燃焼後炭素捕捉膜(CO2透過性4,400±2070GPU及び対応するCO2/N2選択性33.4±7.9)を達成することができた。
【符号の説明】
【0183】
50 ミリセカンドガス化システム
3 単層グラフェン用支持体
4 反応チャンバー
6 反応チャンバー入口
8 反応チャンバー出口
51 反応チャンバー加熱システム
18 加熱手段
19 温度コントローラ
20 温度センサ
52 オゾン送出システム
10 緩衝液リザーバータンク
13 圧力調整器
14 オゾン生成器
9 ミリセカンドリークバルブ(MLV-1)
53 反応チャンバー雰囲気制御システム
61a、61b 制御ガス源
54 制御ガスライン
15 制御ガス流量コントローラ
55 ガスパージシステム
65 パージガス源
56 真空生成システム
16 真空ポンプ
17 真空制御バルブ
63 圧力変換器
12 ミリセカンドリークバルブ(MLV-2)
59 多重入口ポートバルブ
5 オゾン入口
57 パージガス入口
7 制御ガス入口
【国際調査報告】