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特表2023-520233間葉系統前駆細胞又は幹細胞を使用する過炎症の治療方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】間葉系統前駆細胞又は幹細胞を使用する過炎症の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/28 20150101AFI20230509BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230509BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230509BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALN20230509BHJP
   C12N 1/04 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
A61K35/28
A61K35/545
A61P9/00
A61P11/00
A61P7/02
A61P29/00
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/42
C12N5/0775
C12N1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560101
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021058683
(87)【国際公開番号】W WO2021198454
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2020901052
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020901124
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020902312
(32)【優先日】2020-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020902425
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020903041
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020903694
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(31)【優先権主張番号】2020904312
(32)【優先日】2020-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516300656
【氏名又は名称】メゾブラスト・インターナショナル・エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィウ・イテスク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC12
4B065AC20
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
4C076AA12
4C076BB12
4C076CC11
4C076CC15
4C076DD23D
4C076DD41D
4C076DD43D
4C076DD55Q
4C076EE41
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA541
4C084ZA542
4C084ZA591
4C084ZB111
4C084ZB332
4C084ZC752
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZA36
4C087ZA54
4C087ZA59
4C087ZB11
(57)【要約】
本開示は、過炎症の治療又は予防を必要とする対象において過炎症を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過炎症の治療又は予防を必要とするヒト対象において過炎症を治療又は予防する方法であって、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記過炎症が、ウイルス感染によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルス感染が、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、又はコロナウイルスによって引き起こされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ウイルス感染が、コロナウイルスによって引き起こされる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コロナウイルスが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、又はCOVID-19である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)も有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記MLPSCが、凍結保存され、解凍されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記MLPSCが、中間凍結保存MLPSC集団から培養増殖される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記MLPSCが、少なくとも約5継代培養増殖される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記MLPSCが、100万個のMLPSC当たり少なくとも13pgのTNFR1を発現する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記MLPSCが、100万個のMLPSC当たり約13pg~約44pgのTNFR1を発現する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記培養増殖が、少なくとも20回又は30回の集団倍加を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がMISを有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象がウイルス性心筋炎を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記MLPSCが間葉系幹細胞(MSC)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記MLPSCが同種である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記MLPSCが、抗ウイルス薬又は血栓溶解剤を担持又は発現するように改変される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1用量当たり1×10~2×10個の細胞を投与することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
1用量当たり約1×10個の細胞を投与することを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が2回用量を受ける、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記対象の循環CRPレベルが治療後に減少する、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
対象の白血球数が治療後に減少する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記対象のFiO2レベルが治療後に減少し、かつ/又は前記対象のP/F比が治療後に増加する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象のDダイマーレベルが治療後に低減する、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記対象のDダイマーレベルが5μg/ml未満に低減する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象のBNPレベルが治療後に低減する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象のLVEF%が治療後に増加する、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物が、Plasma-Lyte A、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン(HSA)を更に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、Plasma-Lyte A(70%)、DMSO(10%)、HSA(25%)溶液を更に含み、前記HSA溶液が、5%HSA及び15%緩衝液を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、6.68×10超の生細胞/mLを含む、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
多系統炎症症候群(MIS)の治療又は予防を必要とするヒト対象において多系統炎症症候群(MIS)を治療又は予防する方法であって、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項32】
前記対象が小児である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
Dダイマーレベルの上昇に関連する疾患の治療又は予防を必要とするヒト対象においてDダイマーレベルの上昇に関連する疾患を治療又は予防する方法であって、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記疾患が血栓症又は肺塞栓症である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
治療が、前記対象のDダイマーレベルを15μg/ml未満に低減する、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
治療が、前記対象のDダイマーレベルを5μg/ml未満に低減する、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項37】
前記血栓症が動脈血栓症である、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過炎症の治療又は予防を必要とする対象において過炎症を治療又は予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染等の様々な状態に関連する呼吸器疾患は、一般集団において問題となる。多くの場合、これらは肺の状態を悪化させる過炎症を伴う。
【0003】
したがって、過炎症を有する患者において、特に新たな治療選択肢が必要とされるウイルス感染に続発する場合に、満たされていない治療的必要性が残る。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、驚くべきことに、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を投与することによって、過炎症の治療を達成することができることを見出した。
【0005】
したがって、第1の例では、本開示は、過炎症の治療又は予防を必要とするヒト対象において過炎症を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0006】
一例では、過炎症は、ウイルス感染によって引き起こされる。ウイルス感染は、例えば、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、又はコロナウイルスによって引き起こされ得る。
【0007】
一例では、過炎症はコロナウイルス感染症によって引き起こされる。コロナウイルスは、例えば、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、COVID-19、229E、NL63、OC43、又はKHU1であり得る。一例では、コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、又はCOVID-19(SARS-CoV-2)である。
【0008】
別の例では、対象は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)も有する。別の例では、対象は、多系統炎症症候群を有する。この例では、対象は21歳未満であり得る。一例では、MISを有する対象は小児である。別の例では、対象は、ウイルス性心筋炎を有する。
【0009】
したがって、一例では、本開示は、ARDSを治療する方法を必要とするヒト対象においてARDSを治療する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。
【0010】
一例では、MLPSCは、凍結保存され、解凍されている。一例では、MLPSCは、中間凍結保存MLPSC集団から培養増殖される。別の例では、MLPSCは、少なくとも約5継代培養増殖される。一例では、MLPSCは、100万個のMLPSC当たり少なくとも13pgのTNFR1を発現する。一例では、MLPSCは、100万個のMLPSC当たり約13pg~約44pgのTNFR1を発現する。一例では、培養増殖MLPSCは、少なくとも20回の集団倍加にわたって培養増殖される。別の例では、培養増殖MLPSCは、少なくとも30回の集団倍加にわたって培養増殖される。一例では、MLPSCは、間葉系幹細胞(MSC)である。別の例では、MLPSCは、同種である。例えば、MLPSCは、同種MSCであり得る。
【0011】
別の例では、MLPSCは、抗ウイルス薬又は血栓溶解剤を担持又は発現するように改変される。一例では、抗ウイルス薬は、レムデシビルである。一例では、血栓溶解剤は、Eminase(アニストレプラーゼ(anistreplase))Retavase(レテプラーゼ)Streptase(ストレプトキナーゼ、カビキナーゼ(kabikinase))からなる群から選択される。
【0012】
別の例では、MLPSCは、抗ウイルスペプチド又はそれをコードする核酸を発現するように遺伝子改変される。
【0013】
一例では、組成物は、静脈内に投与される。
【0014】
一例では、本開示の方法は、1×10~2×10個の細胞を投与することを包含する。例えば、1×10~2×10細胞の複数回用量が、0、30、60、及び90日目に投与されてもよい。一例では、本開示の方法は、1用量当たり約1×10個の細胞を投与することを包含する。一例では、対象は、2回用量を投与される。
【0015】
一例では、対象の循環CRPレベルが治療後に減少する。一例では、対象の白血球数が治療後に減少する。一例では、対象のDダイマーレベルが治療後に低減する。一例では、対象のDダイマーレベルは、5ug/ml未満に低減する。一例では、対象のBNPレベルが治療後に低減する。一例では、対象のFiO2レベルが治療後に減少する。一例では、対象のP/F比が治療後に増加する。一例では、対象のLVEF%が治療後に増加する。
【0016】
別の例では、組成物は、Plasma-Lyte A、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヒト血清アルブミン(HSA)を更に含む。一例では、組成物は、Plasma-Lyte A(70%)、DMSO(10%)、HSA(25%)溶液を更に含み、HSA溶液は、5%HSA及び15%緩衝液を含む。
【0017】
一例では、組成物は、6.68×10超の生存細胞/mLを含む。
【0018】
別の例では、本開示は、多系炎症症候群(MIS)の治療又は予防を必要とするヒト対象において多系炎症症候群(MIS)を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。一例では、対象は、小児であり得る。
【0019】
別の例では、本開示は、Dダイマーレベルの上昇に関連する疾患の治療又は予防を必要とするヒト対象においてDダイマーレベルの上昇に関連する疾患を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。一例では、疾患は、静脈閉塞によって引き起こされる。一例では、疾患は、動脈閉塞によって引き起こされる。一例では、疾患は、血栓症によって引き起こされる。一例では、疾患は、肺塞栓症によって引き起こされる。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを15μg/ml未満に低減する。一例では、対象は、治療前に55%未満のLVEFを有する。一例では、対象は、治療前に52%未満のLVEFを有する。別の例では、対象は、400pg/ml超のBNPレベルを有する。別の例では、対象は、500pg/ml超のBNPレベルを有する。
【0020】
別の例では、本開示は、Dダイマーレベルの上昇に関連する疾患の治療又は予防を必要とするヒト対象においてDダイマーレベルの上昇に関連する疾患を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。一例では、疾患は血栓症又は塞栓症である。一例では、血栓症は動脈血栓症である。一例では、塞栓症は肺塞栓症である。
【0021】
別の例では、本開示は、血栓症の治療又は予防を必要とするヒト対象において血栓症を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。一例では、血栓症は静脈血栓症である。別の例では、血栓症は動脈血栓症である。別の例では、本開示は、肺塞栓症の治療又は予防を必要とするヒト対象において肺塞栓症を治療又は予防する方法に関し、方法は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)を含む組成物を対象に投与することを含む。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを15μg/ml未満に低減する。一例では、対象は、治療前に55%未満のLVEFを有する。一例では、対象は、治療前に52%未満のLVEFを有する。別の例では、対象は、400pg/ml超のBNPレベルを有する。別の例では、対象は、500pg/ml超のBNPレベルを有する。一例では、血栓症は動脈血栓症である。
【0022】
一例では、投与されるMLPSCは間葉系幹細胞(MSC)である。一例では、MLPSCは同種である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】予備結果1-PaO2/FiO2、白血球数。
図2】予備結果1-CRP、フェリチン。
図3】予備結果3-PaO2/FiO2、白血球数。
図4】予備結果3-CRP、フェリチン。
図5】結果概要。
図6】最低値PaO2/FiO2比(n=5)。
図7】中央値PaO2/FiO2比(n=5)。
図8】循環CRPレベル(n=5)。
図9】クレアチニンレベル(n=5)。
図10】フェリチンレベル(n=5)。
図11】細胞治療薬注入からの時間に応じた事象のスイマープロット。左側の数字は、表2に示される個々の患者識別子を表す。
図12】細胞治療薬注入からの時間に応じた中央値P:F比及び四分位間範囲。
図13】細胞治療薬注入からの時間に応じた中央値C反応性タンパク質レベル及び四分位間範囲。
図14】詳細な臨床経過、患者1。
図15】詳細な臨床経過、患者2。
図16】LVEF%、BNP(pg/ml)及びDダイマー(ug/ml)レベルの比較。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書全体を通して、特に別段の定めがない限り、又は文脈上別段の定めが必要でない限り、単一のステップ、組成物、ステップの群、又は組成物の群は、それらのステップ、組成物、ステップの群、又は組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含するものとみなされるものとする。
【0025】
当業者は、本明細書に記載される開示が、具体的に記載されるもの以外の変形及び修正を受け入れることを理解するであろう。本開示は、全てのそのような変形及び修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個別に又は集合的に言及又は示される全てのステップ、特徴、組成物及び化合物、並びに上述のステップ又は特徴のいずれか及び全ての組み合わせ又はいずれか2つ以上を含む。
【0026】
本開示は、例示のみを目的とする、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。機能的に等価な製品、組成物、及び方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本開示の範囲内である。
【0027】
本明細書に開示される任意の例は、特に別段の定めがない限り、任意の他の例に準用されるものとする。
【0028】
特に別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、(例えば、細胞培養、分子遺伝学、幹細胞分化、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学の)当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有するものと理解されるべきである。
【0029】
別段の指示がない限り、本開示で利用される外科的技法は、当業者に周知の標準的な手順である。
【0030】
間葉系統幹細胞又は前駆細胞の集団を得る及び富化する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、間葉系統幹細胞又は前駆細胞の富化集団は、間葉系統幹細胞又は前駆細胞上で発現される細胞表面マーカーの使用に基づくフローサイトメトリー及び細胞選別手順の使用によって得ることができる。
【0031】
本明細書に引用又は参照される全ての文書、及び本明細書に引用される文書に引用又は参照される全ての文書は、本明細書に言及される、又は参照により本明細書に組み込まれる任意の製品の製造業者の指示、説明、製品仕様、及び製品シートとともに、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
選択した定義
「及び/又は」という用語、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味するものと理解され、両方の意味又はいずれかの意味の明示的な支持を提供するものと理解されなければならない。
【0033】
本明細書で使用される場合、反対の記載がない限り、約という用語は、指定された値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を指す。
【0034】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変化形は、記載された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0035】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈によりそうではないと指示されない限り、単数及び複数の指示参照を含む。
【0036】
「単離された」又は「精製された」とは、その天然の環境の少なくともいくつかの構成要素から分離された細胞を意味する。この用語は、細胞の天然の環境からの全体的な物理的分離(例えば、ドナーからの除去)を含む。「単離された」という用語は、例えば、解離による、それが直接的に関与している隣接細胞との細胞の関係の変化を含む。「単離された」という用語は、組織切片にある細胞を指すものではない。細胞の集団を指すために使用される場合、「単離された」という用語は、本開示の単離された細胞の増殖から生じる細胞の集団を含む。
【0037】
「継代」、「継代させる」又は「継代培養」という用語は、細胞数が継続的に増加することができるように、細胞を生存させ、長期間培養条件下で増殖させるために使用される既知の細胞培養技術を指すために本開示の文脈で使用される。細胞株が経た継代培養の程度は、「継代数」として表されることが多く、これは、一般に、細胞が継代培養された回数を指すために使用される。一例では、1回の継代は、非接着細胞を除去し、接着した間葉系統前駆細胞又は幹細胞を残すことを含む。そのような間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、次いで、基質又はフラスコから(例えば、トリプシン又はコラゲナーゼ等のプロテアーゼを使用することによって)解離することができ、培地を添加することができ、任意選択的な洗浄(例えば、遠心分離による)を行うことができ、次いで、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、全体としてより大きな表面積を含む1つ以上の培養容器に再プレーティング又は再播種することができる。間葉系統前駆細胞又は幹細胞は次いで、培養で増殖し続けることができる。別の例では、非接着細胞を除去する方法として、非酵素処理のステップ(例えば、EDTAによる)が挙げられる。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、コンフルエンスで又はほぼコンフルエンス(例えば、約75%~約95%のコンフルエンス)で継代される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、培養培地の約10%、約15%、又は約20%細胞/mlの濃度で播種される。
【0038】
「培地」(単数又は複数)という用語は、本開示の文脈で使用される場合、培養中の細胞を取り囲む環境の構成要素を含む。培地は、細胞の増殖を可能にするのに好適な条件に寄与する、及び/又は条件を提供することが想定される。培地は、固体、液体、気体、又は相及び材料の混合物であり得る。培地は、液体増殖培地だけでなく、細胞増殖を維持しない液体培地も含むことができる。例示的な気体培地としては、ペトリ皿又は他の固体若しくは半固体支持体上で増殖する細胞が曝露される気相が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語は、間葉系統幹細胞若しくは前駆細胞の集団及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子を投与し、それによって過炎症の少なくとも1つの症状を低減又は排除することを含む。一例では、治療は、培養増殖された間葉系統幹細胞又は前駆細胞の集団を投与することを含む。一例では、治療応答は、ベースラインと比較して決定される。
【0040】
一例では、治療は、対象のCRPレベルに基づいて決定される。他の例では、治療は、白血球数、P/F比、又はフェリチンレベルのうちの1つ以上に基づいて決定される。一例では、治療は、ベースラインと比較してP/Fを50改善する。別の例では、治療は、対象のP/Fを200超増加させる。別の例では、治療は、対象のP/Fを250超増加させる。
【0041】
「C反応性タンパク質」又は「CRP」は、炎症媒介物質であり、急性炎症再発の条件下ではそのレベルが上昇し、炎症が収まると急速に正常化する。
【0042】
一例では、治療は、CRP、プロカルシトニン(PCT)及びフェリチンのレベルの低減に基づいて決定される。
【0043】
一例では、治療は、ベースラインと比較して、CRPを少なくとも100mg/dl低減する。別の例では、治療は、ベースラインと比較して、CRPを少なくとも150mg/dl低減する。一例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの80mg/dl以下への低減である。一例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの60mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの50mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの40mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの20mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの10mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの5mg/dl以下への低減である。別の例では、循環CRPレベルの減少は、CRPの3mg/dl以下への低減である。
【0044】
別の例では、治療は、CRPを0.5mg/dl~60mg/dlに低減する。別の例では、治療は、CRPを0.5mg/dl~30mg/dlに低減する。別の例では、治療は、CRPを0.5mg/dl~10mg/dlに低減する。
【0045】
一例では、治療は、フェリチンレベルを2000mg/dl未満に減少させる。別の例では、治療は、ベースラインと比較して、フェリチンレベルを少なくとも500mg/dl減少させる。別の例では、治療は、ベースラインと比較して、フェリチンレベルを少なくとも750mg/ml減少させる。別の例では、治療は、フェリチンレベルを700mg/dl未満に減少させる。
【0046】
別の例では、治療は、PCTレベルを0.12ng/ml未満に減少させる。別の例では、治療は、PCTレベルを0.1ng/ml未満に減少させる。別の例では、治療は、PCTレベルを0.08ng/ml未満に減少させる。
【0047】
一例では、ARDSを有する対象において、治療は、対象の中等度から重度のARDSを改善する。この例では、治療は、ベースラインと比較して、対象のP/Fを少なくとも50改善する。一例では、治療は、対象P/Fを200超改善する。
【0048】
一例では、治療はIL-6レベルを減少させる。別の例では、治療は、トリグリセリドレベルの変化に基づく。
【0049】
一例では、治療は、肺活量測定に基づいて決定される。一例では、肺活量測定は、American Association for Respiratory Care(AARC)のSpirometry Clinical Practice Guideline(American Association for Respiratory Care:AARC clinical practice guideline:Spirometry,1996 Update.,Respir Care.,41:629-638)に基づいて決定される。
【0050】
一例では、治療は、対象のFEV1を改善する。一例では、治療は、対象のFVCを改善する。別の例では、治療は、対象のFEV1/FVCを改善する。別の例では、治療は、対象の6分間歩行試験を改善する。
【0051】
一例では、6分間歩行試験の結果は、ATS statement:guidelines for the six-minute walk test(2002)Am J Respir Crit Care Med.,166:111-7に基づいて決定される。
【0052】
「Dダイマー」は、血餅に対するプラスミンの作用に続いて形成されたフィブリンの循環末端分解産物の1つである。Dダイマーレベルは、主要な血栓症及び凝固のマーカーである。一例では、本開示による治療は、対象におけるDダイマーレベルを低減し、したがって、血栓症及び凝固のリスクを低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを25μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを20μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを15μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを10μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを5μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを3μg/ml未満に低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを1μg/ml~15μg/mlに低減する。一例では、治療は、対象のDダイマーレベルを1μg/ml~10μg/mlに低減する。
【0053】
一例では、本開示の方法による治療は、対象の血栓症のリスクを低減する。一例では、対象のリスクは、治療を受けない対象と比較して低減する。一例では、治療は、動脈血栓症である血栓症のリスクを低減する。したがって、一例では、治療は心臓発作又は脳卒中のリスクを低減する。
【0054】
「B型ナトリウム利尿ペプチド」又は「BNP」は、心臓内の圧力の変化に応答して放出される心臓によって生成されたホルモンである。したがって、BNPは、心不全の状況下において一般的に評価されるマーカーである。BNPレベルは、一般に、正常な心臓を有する対象と比較して、心機能が低減した対象においてより高い。一例では、治療は、対象のBNPレベルを改善する。例えば、BNPレベルは、ベースライン又は本開示の方法による治療の前に観察されるレベルから減少することができる。一例では、BNPレベルは500pg/ml未満に低減する。別の例では、BNPレベルは、400pg/ml未満に低減する。別の例では、BNPレベルは、300pg/ml未満に低減する。別の例では、BNPレベルは、200pg/ml未満に低減する。別の例では、BNPレベルは、150pg/ml未満に低減する。別の例では、BNPレベルは、100pg/ml~400pg/mlに低減する。別の例では、BNPレベルは、100pg/ml~300pg/mlに低減する。
【0055】
一例では、治療は、対象の左心室駆出率(LVEF)のパーセンテージを改善する。例えば、LVEF%は、55%超まで増加させることができる。一例では、LVEF%は、58%超まで増加する。別の例では、LVEF%は、60%超まで増加する。別の例では、LVEF%は、65%超まで増加する。一例では、LVEFは、心エコー図によって測定される。
【0056】
「予防」又は「予防すること」という用語は、本明細書で使用される場合、間葉系統幹細胞若しくは前駆細胞の集団及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子を投与し、それによって過炎症の少なくとも1つの症状の発症を停止又は阻害することを含む。
【0057】
「過炎症」という用語は、本開示の文脈において、体内の重度かつ継続的な炎症プロセスを指すために使用される。例えば、過炎症は、気道及び/若しくは肺、腎臓、又は肝臓における重度かつ継続的な炎症プロセスを指すことができる。このようにして、過炎症は体内の複数の臓器とその血管系に影響を及ぼし得る。一例では、過炎症は、ウイルス感染によって引き起こされる。一例では、過炎症は、サイトカインストーム又はサイトカイン放出症候群(CRS)と関連する。一例では、サイトカインストーム又はCRSは、IL-6等の炎症性サイトカインの顕著な放出を伴う。
【0058】
一例では、過炎症は、続発性(又は後天的)血球貪食性リンパ組織球症(sHLH)を引き起こす。したがって、一例では、本開示の方法は、血液貪食性リンパ組織球症(sHLH)の治療を包含する。
【0059】
別の例では、過炎症は、CRP、PCT、IL-6及び/又はフェリチンの上昇と関連している。例えば、フェリチンは、2000mg/dl超であり得る。別の例では、フェリチンは、2500mg/dl超である。一例では、過炎症は細菌感染と関連している。一例では、本開示に従って治療される対象は、循環CRPレベルの上昇を有する。例えば、本開示に従って治療される対象は、100mg/dl超の循環CRPレベルを有し得る。別の例では、治療される対象は、120mg/dl超の循環CRPレベルを有する。別の例では、治療された対象は、150mg/dl超の循環CRPレベルを有する。別の例では、治療された対象は、90mg/dl~300mg/dlの循環CRPレベルを有する。
【0060】
他の例では、過炎症は、トリグリセリドの上昇又はフィブリノーゲンの減少と関連している。例えば、本開示に従って治療される対象は、>1.5mmol/Lのトリグリセリドレベルを有し得る。別の例では、治療される対象は、>2、>3、>4mmol/Lのトリグリセリドレベルを有する。別の例では、治療される対象は、1.5~5mmol/Lのトリグリセリドレベルを有する。別の例では、治療される対象は、2.5g/L以下のフィブリノーゲンレベルを有する。別の例では、治療される対象は、2.5g/L未満のフィブリノーゲンレベルを有する。
【0061】
一例では、過炎症は、多系統炎症症候群(MIS)を引き起こす。例えば、過炎症は、小児のMIS(MIS-C)を引き起こす可能性がある。
【0062】
一例では、過炎症はウイルス感染によって引き起こされる。例えば、過炎症は、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、又はコロナウイルスによって引き起こされ得る。一例では、過炎症は、コロナウイルスによって引き起こされ得る。例えば、コロナウイルスは、コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、又はCOVID-19であり得る。一例では、過炎症は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)によって引き起こされる。
【0063】
一例では、本開示の方法は、対象における疾患進行又は疾患合併症を抑制する。対象における疾患進行又は疾患合併症の「抑制」は、対象における疾患進行及び/又は疾患合併症を予防又は軽減することを意味する。したがって、一例では、本開示の方法は、過炎症がsHLHに進行するのを抑制する。
【0064】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒト対象を指す。例えば、対象は、成人であり得る。別の例では、対象は、小児であり得る。別の例では、対象は、青少年であり得る。「対象」、「患者」、又は「個体」等の用語は、状況に応じて、本開示において互換的に使用することができる用語である。
【0065】
本開示に従って治療される対象は、過炎症を示す症状を有し得る。例示的な症状には、疲労、呼吸困難、息切れ、運動不能又は運動能力の減少、血液又は粘液を伴う又は伴わない咳、息を吸う又は吐く際の疼痛、喘鳴、胸の圧迫感、原因不明の体重減少、及び筋骨格系の疼痛が含まれ得る。
【0066】
別の例では、対象は、18~75歳である。一例では、対象は50歳超である。別の例では、対象は、ARDSを有する。別の例では、対象は、肺炎を有する。一例では、対象は30歳未満である。例では、対象は21歳未満である。
【0067】
別の例では、対象は、ウイルス感染に続発するARDSを有する。一例では、対象のARDSは、ライノウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、又はコロナウイルスによる感染に続発する。一例では、対象のARDSは、コロナウイルスによる感染に続発する。例えば、対象のARDSは、SARS-CoV、MERS-CoV、又はCOVID-19による感染に続発し得る。
【0068】
一例では、本開示の方法は、多系統炎症症候群(MIS)を有する対象を予防又は治療する。一例では、対象は、MISを有する小児である。例えば、MISを有する対象は、1ヶ月~18歳であり得る。一例では、対象は、急性心不全を有する。心不全(HF)は、一般的に、一連の症状(呼吸困難、起坐呼吸(orthopnoea)、下肢腫脹)及び徴候(頸静脈圧の上昇、肺うっ血)を特徴とする臨床症候群である。急性心不全は、心不全の新たな徴候若しくは症状の急速な発症、又は心不全の徴候若しくは症状の悪化として広義に定義される。一例では、対象は、左心室駆出率の低下を有する。例えば、対象のLVEFは、45%未満であり得る。一例では、LVEFは40%未満である。別の例では、LVEFは、30%未満である。
【0069】
一例では、MISを有する対象は、以下の基準を満たす:
-以下のうち1つ以上:
○低血圧若しくはショック(心原性若しくは血管原性)
○心筋炎、心膜炎、若しくは弁膜炎を含むがこれらに限定されない重度の心臓病の特徴、トロポニン/プロBNPの著しい上昇、若しくは冠動脈異常。
○神経若しくは腎臓疾患(重度の呼吸器疾患のみを除く)を含むがこれらに限定されない他の重度の末端臓器関与;
又は、
-以下のうち2つ以上:
○斑状丘疹状皮疹
○両側性非化膿性結膜炎
○皮膚粘膜の炎症性徴候(口、手、若しくは足)
○急性の消化管症状(下痢、嘔吐、若しくは腹痛)。
【0070】
一例では、上記MIS基準を満たす対象は、発熱(摂氏38度以上の温度)を有する。
【0071】
別の例では、MISを有する対象は、炎症性マーカーの上昇を呈する。例えば、対象は、好中球増加症、リンパ球減少症、血小板減少症、低アルブミン血症、CRP上昇、赤血球沈降速度(ESR)、フィブリノーゲン、Dダイマー、フェリチン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、インターロイキン6(IL-6)、プロカルシトニン上昇のうちの1つ以上を呈し得る。一例では、対象は、好中球増加症、リンパ球減少症、血小板減少症、低アルブミン血症、CRP上昇、ESR、フィブリノーゲン、Dダイマー、フェリチン、LDH、IL-6、プロカルシトニン上昇のうちの2つ以上を有する。
【0072】
一例では、対象は、心筋炎、心膜炎、又は弁膜炎のうちの1つ以上を有する。一例では、対象は、ウイルス誘発性の心筋炎、心膜炎、又は弁膜炎を有する。例えば、対象は、ウイルス性心筋炎を有し得る。
【0073】
一例では、MISは、SARS-CoV、MERS-CoV、又はCOVID-19による感染に続発する。
【0074】
別の例では、本開示の方法は、軽度のARDSを有する対象を予防又は治療する。別の例では、本開示の方法は、中等度のARDSを有する対象を予防又は治療する。別の例では、本開示の方法は、重度のARDSを有する対象を予防又は治療する。別の例では、本開示の方法は、中等度又は重度のARDSを有する対象を予防又は治療する。別の例では、本開示の方法は、中等度、重度又は非常に重度のARDSを有する対象を予防又は治療する。
【0075】
「血栓症」という用語は、血栓又は凝血塊の形成を指すために本明細書において使用される。一例では、血栓症は、動脈内に凝血塊が発生する「動脈血栓症」である。そのような凝血塊は、心臓又は脳等の主要な器官への血流を妨げる可能性があるため、対象にとって特に危険である。一例では、血栓症は、静脈内に凝血塊が発生する「静脈血栓症」である。
【0076】
「血栓溶解」という用語は、凝血塊を分解する本開示の組成物を指して使用される。一例では、本開示の血栓溶解組成物は、血栓症のリスクを低減する。一例では、対象のリスクは、組成物を受けない対象と比較して低減する。一例では、組成物の投与は、動脈血栓症のリスクを低減する。したがって、一例では、組成物の投与は、心臓発作又は脳卒中のリスクを低減する。
【0077】
「肺塞栓症」という用語は、血流を通って体内の他の場所から移動した物質による肺の動脈の閉塞を指すために本明細書において使用される。
【0078】
本明細書で使用される場合、「遺伝子改変されていない」という用語は、核酸を用いたトランスフェクションによって改変されていない細胞を指す。疑義を回避するために、本開示の文脈において、Ang1をコードする核酸でトランスフェクトされた間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、遺伝子改変されたものとみなされる。
【0079】
「総用量」という用語は、本開示の文脈において、本開示に従って治療される対象によって受容される細胞の総数を指すために使用される。一例では、総用量は、1回の細胞の投与からなる。別の例では、総用量は、2回の細胞の投与からなる。別の例では、総用量は、3回の細胞の投与からなる。別の例では、総用量は、4回以上の細胞の投与からなる。例えば、総用量は、2~4回の細胞の投与からなり得る。
【0080】
間葉系統前駆細胞
本明細書で使用される場合、「間葉系統前駆細胞又は幹細胞(MLPSC)」という用語は、多分化能を維持しながら自己再生する能力を有し、かつ、間葉系起源、例えば、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞及び腱、又は非中胚葉起源、例えば、肝細胞、神経細胞及び上皮細胞のいずれかの多数の細胞型に分化する能力を有する未分化多能性細胞を指す。疑義を回避するために、「間葉系統前駆細胞」は、骨、軟骨、筋肉及び脂肪細胞等の間葉系細胞、並びに線維性結合組織に分化することができる細胞を指す。
【0081】
「間葉系統前駆細胞又は幹細胞」という用語は、親細胞及びそれらの未分化子孫の両方を含む。この用語はまた、間葉系前駆細胞、多能性間質細胞、間葉系幹細胞(MSC)、血管周囲の間葉系前駆細胞、及びそれらの未分化子孫も含む。
【0082】
間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、自家、同種、異種、同系、又は同質遺伝子系であり得る。自家細胞は、それらが再移植される同じ個体から単離される。同種細胞は、同じ種のドナーから単離される。異種細胞は、別の種のドナーから単離される。同系又は同質遺伝子細胞は、双子、クローン、又は高度に近交系の研究動物モデル等の遺伝的に同一の生物から単離される。
【0083】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、同種である。一例では、同種の間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、培養増殖され、凍結保存される。
【0084】
間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、主に骨髄に存在するが、例えば、臍帯血及び臍帯、成人末梢血、脂肪組織、海綿骨及び歯髄を含む多様な宿主組織にも存在することが示されている。これらはまた、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、靭帯、腱、骨格筋、真皮、及び骨膜にも見られ、中胚葉及び/又は内胚葉及び/又は外胚葉等の生殖系列に分化することができる。したがって、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織、及び線維性結合組織を含むがこれらに限定されない多数の細胞型に分化することができる。これらの細胞が入る特定の系統コミットメント及び分化経路は、機械的影響及び/若しくは成長因子、サイトカイン等の内因性生物活性因子、並びに/又は宿主組織によって確立される局所微小環境条件からの様々な影響に依存する。
【0085】
「富化された」、「富化」という用語、又はそれらの変形は、未処理の細胞の集団(例えば、その本来の環境における細胞)と比較した場合に、1つの特定の細胞型の割合又は複数の特定の細胞型の割合が増加された細胞の集団を説明するために本明細書で使用される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞が富化された集団は、少なくとも約0.1%又は0.5%又は1%又は2%又は5%又は10%又は15%又は20%又は25%又は30%又は50%又は75%の間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含む。これに関して、「間葉系統前駆細胞又は幹細胞が富化された細胞の集団」という用語は、「X%の間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含む細胞の集団」という用語を明示的に支持するものとみなされ、この場合のX%は、本明細書に記載されるパーセンテージである。間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、いくつかの例では、クローン原性コロニーを形成することができ、例えば、CFU-F(線維芽細胞)又はそのサブセット(例えば、50%又は60%又は70%又は70%又は90%又は95%)は、この活性を有することができる。
【0086】
本開示の一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、間葉系幹細胞(MSC)である。MSCは、均一な組成物であり得るか、又はMSCが富化された混合細胞集団であり得る。均一なMSC組成物は、接着性骨髄又は骨膜細胞を培養することによって得ることができ、MSCは、独自のモノクローナル抗体で同定される特定の細胞表面マーカーによって同定され得る。MSCが富化された細胞集団を得るための方法は、例えば、米国特許第5,486,359号に記載されている。MSCの代替供給源には、限定されないが、血液、皮膚、臍帯血、筋肉、脂肪、骨、及び軟骨周囲が含まれる。一例では、MSCは同種である。一例では、MSCは、凍結保存される。一例では、MSC培養物は、培養増殖され、凍結保存される。
【0087】
別の例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、CD29+、CD54+、CD73+、CD90+、CD102+、CD105+、CD106+、CD166+、MHC1+MSCである。
【0088】
単離又は富化された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、培養によってインビトロで増殖させることができる。単離又は富化された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、凍結保存し、解凍し、その後、培養によってインビトロで増殖させることができる。
【0089】
一例では、単離又は富化された間葉系統前駆細胞又は幹細胞を、培養培地(無血清又は血清補充)、例えば、5%ウシ胎仔血清(FBS)及びグルタミンを補充したα最小必須培地(αMEM)に、50,000生細胞/cmで播種し、37℃、20%Oで一晩培養容器に付着させる。その後、必要に応じて培地を交換及び/又は変更し、細胞を更に68~72時間、37℃、5%Oで培養する。
【0090】
当業者に理解されるように、培養された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、生体内の細胞とは表現型が異なる。例えば、一実施形態において、それらは、以下のマーカー、CD44、NG2、DC146及びCD140bのうちの1つ以上を発現する。培養された間葉系統前駆細胞又は幹細胞はまた、生体内の細胞とは生物学的に異なり、生体内ではほとんど非循環性(静止状態)である細胞と比較してより高い増殖速度を有する。
【0091】
一例では、細胞の集団は、選択可能な形態のSTRO-1+細胞を含む細胞調製物から富化される。これに関して、「選択可能な形態」という用語は、細胞が、STRO-1+細胞の選択を可能にするマーカー(例えば、細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解される。マーカーはSTRO-1であり得るが、そうである必要はない。例えば、本明細書に記載及び/又は例示されるように、STRO-2及び/又はSTRO-3(TNAP)及び/又はSTRO-4及び/又はVCAM-1及び/又はCD146及び/又は3G5を発現する細胞(例えば、間葉系前駆細胞)は、STRO-1も発現する(及びSTRO-1 brightであり得る)。したがって、細胞がSTRO-1+であるという指標は、細胞がSTRO-1発現のみによって選択されることを意味しない。一例では、細胞は、少なくともSTRO-3発現に基づいて選択され、例えば、それらはSTRO-3+(TNAP+)である。
【0092】
細胞又はその集団の選択への言及は、特定の組織源からの選択を必ずしも必要としない。本明細書に記載されるように、STRO-1+細胞は、多種多様な供給源から選択され得るか、又は単離され得るか、又は富化され得る。とはいえ、いくつかの例では、これらの用語は、STRO-1+細胞(例えば、間葉系前駆細胞)を含む任意の組織、又は血管新生組織、又は周皮細胞(例えば、STRO-1+周皮細胞)を含む組織、又は本明細書に列挙される組織のうちのいずれか1つ以上からの選択に支持を提供する。
【0093】
一例では、本開示において使用される細胞は、TNAP+、VCAM-1+、THY-1+、STRO-2+、STRO-4+(HSP-90β)、CD45+、CD146+、3G5+、又はこれらの任意の組み合わせからなる群から個別に又は集合的に選択される1つ以上のマーカーを発現する。
【0094】
「個別に」とは、本開示が、列挙されたマーカー又はマーカーの群を別々に包含し、個々のマーカー又はマーカーの群が本明細書に別々に列挙されていない場合であっても、添付の特許請求の範囲は、そのようなマーカー又はマーカーの群を互いに別々にかつ分割可能に定義し得ることを意味する。
【0095】
「集合的に」とは、本開示が、任意の数又は組み合わせの列挙されたマーカー又はマーカーの群を包含し、そのような数又は組み合わせのマーカー又はマーカーの群が本明細書に具体的に列挙されていない場合であっても、添付の特許請求の範囲は、そのような組み合わせ又は部分的組み合わせを、マーカー又はマーカーの群の任意の他の組み合わせから別々にかつ分割可能に定義し得ることを意味する。
【0096】
本明細書で使用される場合、「TNAP」という用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することが意図される。例えば、この用語は、肝臓アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)、及び腎臓アイソフォーム(KAP)を包含する。一例では、TNAPはBAPである。一例では、本明細書で使用されるTNAPは、ブダペスト条約の規定に基づいて受託番号PTA-7282の下、2005年12月19日にATCCに預託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されたSTRO-3抗体に結合することができる分子を指す。
【0097】
更に、一例では、STRO-1+細胞は、クローン原性CFU-Fを生じさせることができる。
【0098】
一例では、かなりの割合のSTRO-1+細胞は、少なくとも2つの異なる生殖細胞株に分化することが可能である。STRO-1+細胞がコミットされ得る系統の非限定的な例としては、骨前駆細胞、胆管上皮細胞及び肝細胞に多能性である肝細胞前駆体、乏突起膠細胞及び星状膠細胞に進行するグリア細胞前駆体を生成することができる神経拘束細胞、ニューロンに進行するニューロン前駆体、心筋及び心筋細胞の前駆体、グルコース応答性インスリン分泌膵臓β細胞株が挙げられる。他の系統としては、限定されないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞及び軟骨細胞、並びに以下の前駆細胞が挙げられる:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、角質細胞等の皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、腎管上皮細胞、平滑筋及び骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靭帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄間質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、星状細胞、及び乏突起膠細胞。
【0099】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、単一のドナー、又は複数のドナーから得られ、ドナー試料又は間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞は、その後プールされ、次いで培養増殖される。
【0100】
本開示に包含される間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、対象に投与する前に凍結保存されてもよい。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、対象に投与する前に培養増殖され、凍結保存される。
【0101】
一例では、本開示は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞だけでなく、その子孫、それらから誘導される可溶性因子、及び/又はそれらから単離された細胞外小胞も包含する。別の例では、本開示は、間葉系統前駆細胞又は幹細胞だけでなく、それらから単離された細胞外小胞も包含する。例えば、細胞培養培地への細胞外小胞の分泌に好適な条件下で、一定期間、本開示の間葉系統前駆細胞又は幹細胞を培養増殖させることが可能である。分泌された細胞外小胞は、その後、治療に使用するために培養培地から得ることができる。
【0102】
本明細書で使用される「細胞外小胞」という用語は、細胞から自然に放出される、約30nm~最大で10ミクロンのサイズの範囲であるが、典型的には、200nm未満のサイズである脂質粒子を指す。それらは、タンパク質、核酸、脂質、代謝産物、又は放出細胞(例えば、間葉系幹細胞、STRO-1細胞)由来の小器官を含むことができる。
【0103】
「エクソソーム」という用語は、本明細書で使用される場合、概して、約30nm~約150nmのサイズであって、それらが細胞膜に輸送されて放出される哺乳類細胞のエンドソーム区画に由来する細胞外小胞のタイプを指す。これらは、核酸(例えば、RNA、マイクロRNA)、タンパク質、脂質、及び代謝産物を含み得、1つの細胞から分泌され、他の細胞に取り込まれてそれらのカーゴを送達することによって、細胞間通信で機能する。
【0104】
細胞の培養増殖
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞が培養増殖される。「培養増殖された」間葉系統前駆細胞又は幹細胞培地は、それらが細胞培養培地で培養され、継代されている(すなわち、継代培養された)という点で、新たに単離された細胞と区別される。一例では、培養増殖された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、約4~10継代培養増殖されている。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10継代培養増殖される。例えば、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5継代培養増殖され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5~10継代培養増殖され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5~8継代培養増殖され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5~7継代培養増殖され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、10継代よりも多く培養増殖され得る。別の例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、7継代よりも多く培養増殖され得る。これらの例では、幹細胞は、凍結保存される前に培養増殖させて、中間凍結保存MLPSC集団を提供してもよい。一例では、本開示の組成物は、中間凍結保存MLPSC集団から調製される。例えば、中間凍結保存MLPSC集団は、後に更に考察するように、投与前に更に培養増殖され得る。したがって、一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、培養増殖され、凍結保存される。これらの例の一実施形態において、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、単一のドナー、又は複数のドナーから得ることができ、ドナー試料又は間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞は、その後プールされ、次いで培養増殖される。一例では、培養増殖プロセスは以下を含む:
-i.継代増殖によって生存細胞の数を増加させ、少なくとも約10億個の生存細胞の調製物を提供することであって、継代増殖は、単離された間葉系統前駆細胞又は幹細胞の一次培養物を確立することと、次いで、前の培養物から単離された間葉系統前駆細胞又は幹細胞の第1の非一次(P1)培養物を連続的に確立することと、を含む、提供すること、
-ii.単離された間葉系統前駆細胞又は幹細胞のP1培養物を、継代増殖によって間葉系統前駆細胞又は幹細胞の第2の非一次(P2)培養物に増殖させること、
-iii.間葉系統前駆細胞又は幹細胞のP2培養物から得られたプロセス内中間体間である間葉系統前駆細胞又は幹細胞調製物を調製し、凍結保存すること、及び
-iv.凍結保存されたプロセス内中間体である間葉系統前駆細胞又は幹細胞調製物を解凍し、プロセス内中間体である間葉系統前駆細胞又は幹細胞調製物の継代増殖によって増殖させること。
【0105】
一例では、増殖させた間葉系統前駆細胞又は幹細胞調製物は、以下を含む抗原プロファイル及び活性プロファイルを有する:
-i.約0.75%未満のCD45+細胞、
-ii.少なくとも約95%のCD105+細胞、
-iii.少なくとも約95%のCD166+細胞。
【0106】
一例では、増殖させた間葉系統前駆細胞又は幹細胞調製物は、対照と比較して、CD3/CD28活性化PBMCによるIL2Ra発現を少なくとも約30%阻害することができる。
【0107】
一例では、培養増殖された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、約4~10継代培養増殖され、この場合、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、更に培養増殖される前に少なくとも2又は3継代後に凍結保存されている。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5継代培養増殖され、凍結保存され、次いで、投与又は更に凍結保存される前に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5継代更に培養増殖される。
【0108】
一例では、本開示の組成物中の間葉系統前駆細胞又は幹細胞の大部分は、ほぼ同じ世代数である(すなわち、それらは、互いの約1回又は約2回又は約3回又は約4回の細胞倍加以内である)。一例では、本組成物における細胞倍加の平均数は、約20~約25回の倍加である。一例では、本組成物における細胞倍加の平均数は、一次培養物から生じる約9~約13(例えば、約11又は約11.2)倍加、加えて、1経路当たり約1回、約2回、約3回、又は約4回の倍加(例えば、1経路当たり約2.5回の倍加)である。本組成物における例示的な平均細胞倍加は、それぞれ、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、及び約10継代によって産生される場合、約13.5回、約16回、約18.5回、約21回、約23.5回、約26回、約28.5回、約31回、約33.5回、及び約36回のいずれかである。
【0109】
間葉系統前駆細胞又は幹細胞の単離及びエクスビボ増殖のプロセスは、当該技術分野で既知の任意の機器及び細胞ハンドリング方法を使用して実施することができる。本開示の様々な培養増殖実施形態は、細胞の操作を必要とするステップ、例えば、播種、供給、接着培養物の解離、又は洗浄のステップを用いる。細胞を操作する任意のステップは、細胞を傷つける可能性がある。間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、一般に、調製中に一定量の傷害に耐えることができるが、細胞への傷害を最小限に抑えながら、所与のステップを適切に実行するハンドリング手順及び/又は機器によって、細胞を操作することが好ましい。
【0110】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、例えば参照により本明細書に組み込まれるUS6,251,295に記載されるように、細胞源バッグ、洗浄液バッグ、再循環洗浄バッグ、入口及び出口ポートを有する回転膜フィルター、濾液バッグ、混合ゾーン、洗浄細胞のための最終生成物バッグ、及び適切なチューブを含む装置で洗浄される。
【0111】
一例では、本開示による間葉系統前駆細胞又は幹細胞組成物は、CD105陽性及びCD166陽性であり、CD45陰性であることに関して、95%均一である。一例では、この均一性は、エクスビボ増殖、すなわち、複数の集団倍加を通じて持続する。一例では、組成物は、少なくとも1つの治療用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含み、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、約1.25%未満のCD45+細胞、少なくとも約95%のCD105+細胞、及び少なくとも約95%のCD166+細胞を含む。一例では、この均一性は低温貯蔵及び解凍後も持続し、細胞はまた、概して約70%以上の生存率も有する。
【0112】
一例では、本開示の組成物は、実質的なレベルのTNFR1、例えば、百万個の間葉系統前駆細胞又は幹細胞当たり13pg超のTNFR1を発現する間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含む。一例では、この表現型は、エクスビボ増殖及び低温保存を通じて安定である。一例では、100万個の間葉系統前駆細胞又は幹細胞当たり約13~約179pg(例えば、約13pg~約44pg)の範囲におけるTNFR1のレベルの発現は、エクスビボ増殖及び凍結保存を通じても持続する所望の治療電位と関連付けられる。
【0113】
一例では、培養増殖された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも110pg/mlの量で腫瘍壊死因子受容体1(TNFR1)を発現する。例えば、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも150pg/ml、又は少なくとも200pg/ml、又は少なくとも250pg/ml、又は少なくとも300pg/ml、又は少なくとも320pg/ml、又は少なくとも330pg/ml、又は少なくとも340pg/ml、又は少なくとも350pg/mlの量でTNFR1を発現することができる。
【0114】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも13pg/10細胞の量でTNFR1を発現する。例えば、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも15pg/10細胞、又は少なくとも20pg/10細胞、又は少なくとも25pg/10細胞、又は少なくとも30pg/10細胞、又は少なくとも35pg/10細胞、又は少なくとも40pg/10細胞、又は少なくとも45pg/10細胞、又は少なくとも50pg/10細胞の量でTNFR1を発現する。
【0115】
別の例では、本明細書に開示される間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、T細胞上のIL-2Rα発現を阻害する。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも約30%、代替的には少なくとも約35%、代替的には少なくとも約40%、代替的には少なくとも約45%、代替的には少なくとも約50%、代替的には少なくとも約55%、代替的には少なくとも約60、IL-2Rα発現を阻害することができる。
【0116】
一例では、本開示の組成物は、例えば、少なくとも約1億個の細胞又は約1億2500万個の細胞を含むことができる、少なくとも1つの治療用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含む。
【0117】
細胞の改変
一例では、本開示の間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、投与時に細胞の溶解が阻害されるような方法で改変され得る。抗原の改変は、免疫学的非応答性又は寛容性を誘導することができ、それによって、正常な免疫応答における外来細胞の拒絶反応の最終的な原因である免疫応答のエフェクター相(例えば、細胞傷害性T細胞生成、抗体産生等)の誘導を防止する。この目標を達成するために改変され得る抗原としては、例えば、MHCクラスI抗原、MHCクラスII抗原、LFA-3及びICAM-1が挙げられる。
【0118】
間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、横紋骨格筋細胞の分化及び/又は維持のために重要なタンパク質を発現するように遺伝子改変されてもよい。例示的なタンパク質としては、成長因子(TGF-β、インスリン様成長因子1(IGF-1)、FGF)、筋原性因子(例えば、MyoD、ミオゲニン、筋原性因子5(Myf5)、筋原性制御因子(MRF))、転写因子(例えば、GATA-4)、サイトカイン(例えば、カルジオトロフィン1)、ニューレギュリンファミリーのメンバー(例えば、ニューレギュリン1、2及び3)、並びにホメオボックス遺伝子(例えば、Csx、ティンマン及びNKxファミリー)が挙げられる。
【0119】
本開示の間葉系統前駆細胞又は幹細胞はまた、抗ウイルス剤又は血栓溶解剤を担持又は発現するように改変されることもできる。一例では、薬剤は、抗ウイルス薬である。一例では、薬剤は、抗インフルエンザ剤である。一例では、薬剤は、抗SARS-CoV(例えば、SARS-Cov2)である。例示的な薬剤は、レムデシビルである。一例では、薬剤は、血栓溶解薬である。血栓溶解剤の例として、Eminase(アニストレプラーゼ)、Retavase(レテプラーゼ)、Streptase(ストレプトキナーゼ、カビキナーゼ)が挙げられる。一例では、血栓溶解剤はヘパリンである。
【0120】
本開示の間葉系前駆細胞又は幹細胞は、薬剤が細胞に吸収されることを可能にするのに十分な時間及び条件下で細胞を薬剤とともに培養することにより、抗ウイルス剤又は血栓溶解剤を担持するように改変され得る。一例では、抗ウイルス剤又は血栓溶解剤は、本明細書に開示される間葉系統前駆細胞又は幹細胞の培養培地に添加される。例えば、本明細書に開示される間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、抗ウイルス剤又は血栓溶解剤を含む培養培地で培養増殖させることができる。
【0121】
別の例では、抗ウイルス剤又は血栓溶解剤は、ペプチドである。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、抗ウイルス又は血栓溶解ペプチド、又はそれをコードする核酸を発現するように遺伝子改変される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、インビトロでウイルスベクターとの接触を介して改変される。例えば、ウイルスを細胞培養培地に添加することができる。遺伝子組換えの非ウイルス法を用いてもよい。例としては、プラスミド転移、及びインテグラーゼ又はトランスポザーゼ技術の使用による標的遺伝子組み込みの適用、リポソーム又はタンパク質形質導入ドメイン媒介送達、並びにエレクトロポレーション等の物理的方法が挙げられる。
【0122】
遺伝子改変の効率が100%であることはほとんどなく、改変に成功した細胞の集団を富化することが通常望ましい。一例では、改変細胞は、新しい遺伝子型の機能的特徴を利用することによって富化することができる。改変細胞を富化する1つの例示的な方法は、選択可能な又はスクリーニング可能なマーカー遺伝子を使用する陽性選択である。「マーカー遺伝子」とは、マーカー遺伝子を発現する細胞に明確な表現型を付与する遺伝子を指し、したがって、そのような形質転換された細胞を、マーカーを有しない細胞と区別することができる。選択マーカー遺伝子は、選択的薬剤(例えば、抗生物質)に対する耐性に基づいて「選択」することができる形質を付与する。スクリーニング可能なマーカー遺伝子(又はレポーター遺伝子)は、観察又は試験を通して、すなわち、「スクリーニング」(例えば、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFP、又は非形質転換細胞に存在しない他の酵素活性)によって識別することができる形質を付与する。一例では、遺伝子改変された間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、ネオマイシン等の薬物に対する耐性、又はlacZの発現に基づく比色選択に基づいて選択される。
【0123】
本開示の組成物
本開示の一例では、間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子は、組成物の形態で投与される。一例では、そのような組成物は、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。したがって、一例では、本開示の組成物は、培養増殖された間葉系統前駆細胞又は幹細胞を含むことができる。
【0124】
「担体」及び「賦形剤」という用語は、活性化合物の貯蔵、投与、及び/又は生物学的活性を促進するために当該技術分野で従来使用されている組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th Ed.,Mac Publishing Company(1980)を参照。担体はまた、活性化合物の任意の望ましくない副作用を低減し得る。好適な担体は、例えば、安定であり、例えば、担体中の他の成分と反応することができない。一例では、担体は、治療に用いる投薬量及び濃度では、レシピエントにおいて顕著な局所的又は全身的な有害作用を生じない。
【0125】
本開示に好適な担体として、従来使用されてきたもの、例えば、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、ラクトース、リンゲル液、緩衝溶液、ヒアルロナン、及びグリコールが、特に(等張性の場合)溶液のための例示的な液体担体である。好適な医薬担体及び賦形剤としては、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。
【0126】
別の例では、担体は、例えば、細胞が増殖又は懸濁される培地組成物である。例えば、そのような培地組成物は、それが投与された対象においていかなる副作用も誘発しない。
【0127】
例示的な担体及び賦形剤は、細胞の生存能並びに/又は代謝症候群及び/若しくは肥満を軽減、予防、若しくは遅延させる細胞の能力に悪影響を及ぼさない。
【0128】
一例では、担体又は賦形剤は、細胞及び/又は可溶性因子を好適なpHで維持するための緩衝活性を提供し、それによって生物学的活性を発揮する。例えば、担体又は賦形剤は、リン酸緩衝食塩水(PBS)である。PBSは、細胞及び因子と最小限に相互作用し、細胞及び因子の迅速な放出を可能にするため、魅力的な担体又は賦形剤を表し、そのような場合、本開示の組成物は、血流に、あるいは組織内に又は組織を取り囲む若しくは組織に隣接する領域内に、例えば注射によって、直接適用するための液体として生成され得る。
【0129】
間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子はまた、レシピエント適合性であり、かつ、レシピエントに有害ではない生成物に分解する足場内に組み込まれ得るか、又は埋め込まれ得る。これらの足場は、レシピエント対象に移植される細胞に支持及び保護を提供する。天然及び/又は合成の生分解性足場は、そのような足場の例である。
【0130】
様々な異なる足場が、本開示の実施において成功裏に使用され得る。例示的な足場は、限定されないが、生物学的に分解可能な足場を含む。天然の生分解性足場は、コラーゲン、フィブロネクチン、及びラミニンの足場を含む。細胞移植の足場に好適な合成材料は、広範な細胞増殖及び細胞機能を支持することができるはずである。そのような足場はまた、再吸収可能であってもよい。好適な足場は、ポリグリコール酸足場(例えば、Vacanti,et al.J.Ped.Surg.23:3~91988;Cima,et al.Biotechnol.Bioeng.38:1451991;Vacanti,et al.Plast.Reconstr.Surg.88:753-91991に記載されるような)、又はポリ酸無水物、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の合成ポリマーを含む。
【0131】
別の例では、間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子は、ゲル足場(例えば、Upjohn CompanyのGelfoam)において投与され得る。
【0132】
本明細書に記載の組成物は、単独で、又は他の細胞との混合物として投与され得る。異なる方の細胞は、投与の直前若しくは少し前に本開示の組成物と混合されてもよいか、又は投与の前の一定期間、一緒に共培養されてもよい。
【0133】
一例では、組成物は、有効量又は治療的若しくは予防的に有効な量の間葉系統前駆細胞若しくは幹細胞及び/又はそれらの子孫及び/又はそれらに由来する可溶性因子を含む。例えば、組成物は、約1×10個の幹細胞~約1×10個の幹細胞又は約1.25×10個の幹細胞~約1.25×10個の幹細胞/kg(80kg対象)を含む。一例では、組成物は2×10細胞/kgを含む。投与される細胞の正確な量は、対象の年齢、体重、及び性別、並びに治療される障害の程度及び重症度を含む様々な要因に依存する。
【0134】
一例では、50×10~200×10細胞が投与される。他の例では、60×10~200×10個の細胞又は75×10~150×10個の細胞が投与される。一例では、75×10個の細胞が投与される。別の例では、150×10個の細胞が投与される。
【0135】
一例では、組成物は、5.00×10超の生存細胞/mLを含む。別の例では、組成物は、5.50×10超の生存細胞/mLを含む。別の例では、組成物は、6.00×10超の生存細胞/mLを含む。別の例では、組成物は、6.50×10超の生存細胞/mLを含む。別の例では、組成物は、6.68×10超の生存細胞/mLを含む。
【0136】
一例では、本開示の方法は、6億個の細胞の総用量を投与することを包含する。例えば、本開示に従って治療された対象は、細胞の総用量が6億個を超えない限り、上記の組成物の複数回用量を受けることができる。例えば、対象は、2億個の細胞の3回用量を受けてもよい。一例では、細胞の総用量は、5億個の細胞である。一例では、細胞の総用量は、4億個の細胞である。例えば、対象は、1億個の細胞の4回用量を受けてもよい。一例では、対象は、ベースライン時に1億個の細胞の1回用量、続いて3ヶ月にわたって1ヶ月に1回投与される1億個の細胞の3回用量を受ける。一例では、用量は2×10細胞/kgである。一例では、用量は2×10細胞/kgであり、対象は2回用量又は3回用量を受ける。一例では、用量は2×10細胞/kgであり、対象は3回を超える用量を受ける。
【0137】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、組成物の細胞集団の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%を含む。
【0138】
本開示の組成物は、凍結保存され得る。間葉系統前駆細胞又は幹細胞の凍結保存は、当該技術分野で既知の低速冷却方法又は「高速」凍結プロトコルを使用して行うことができる。好ましくは、凍結保存方法は、非凍結細胞と比較して、凍結保存細胞の類似した表現型、細胞表面マーカー及び増殖速度を維持する。
【0139】
凍結保存組成物は、凍結保存溶液を含み得る。凍結保存溶液のpHは、典型的には6.5~8、好ましくは7.4である。
【0140】
凍結保存溶液は、例えば、PlasmaLyte A(商標)等の滅菌された非発熱性等張溶液を含んでもよい。100mLのPlasmaLyte A(商標)は、526mgの塩化ナトリウムUSP(NaCl)、502mgのグルコン酸ナトリウム(C11NaO)、368mgの酢酸ナトリウム三水和物USP(CNaO・3HO)、37mgの塩化カリウムUSP(KCl)、及び30mgの塩化マグネシウムUSP(MgCl・6HO)を含有する。抗菌剤は含まれていない。pHは、水酸化ナトリウムを用いて調整する。pHは、7.4(6.5~8.0)である。
【0141】
凍結保存溶液は、Profreeze(商標)を含み得る。凍結保存溶液は、追加的又は代替的に、培養培地、例えば、αMEMを含み得る。
【0142】
凍結を促進するために、通常、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の凍結保護剤が、凍結保存溶液に添加される。理想的には、凍結保護剤は、細胞及び患者にとって無毒であり、非抗原性であり、化学的に不活性であり、解凍後に高い生存率を提供し、洗浄せずに移植を可能にするべきである。しかしながら、最も一般的に使用される凍結保護剤であるDMSOは、ある程度の細胞傷害性を示す。ヒドロキシルエチルデンプン(HES)を代替物として又はDMSOと組み合わせて使用して、凍結保存溶液の細胞傷害性を低減することができる。
【0143】
凍結保存溶液は、DMSO、ヒドロキシエチルデンプン、ヒト血清成分、及び他のタンパク質増量剤のうちの1つ以上を含み得る。一例では、凍結保存溶液は、約5%のヒト血清アルブミン(HSA)及び約10%のDMSOを含む。凍結保存溶液は、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)及びトレハロースのうちの1つ以上を更に含み得る。
【0144】
一実施形態において、細胞は、42.5% Profreeze(商標)/50% αMEM/7.5% DMSOに懸濁され、制御速度冷凍庫で冷却される。
【0145】
凍結保存組成物は、解凍されて対象に直接投与されてもよいか、又は例えばHAを含む別の溶液に添加されてもよい。代替的に、凍結保存組成物を解凍し、間葉系統前駆細胞又は幹細胞を投与前に代替の担体に再懸濁させてもよい。
【0146】
一例では、本開示の細胞組成物は、Plasma-Lyte A、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びヒト血清アルブミン(HSA)を含むことができる。例えば、本開示の組成物は、Plasma-Lyte A(70%)、DMSO(10%)、HSA(25%)溶液を含み得、HSA溶液は、5%のHSA及び15%の緩衝液を含む。
【0147】
一例では、本明細書に記載の組成物は、単回用量として投与されてもよい。
【0148】
いくつかの例では、本明細書に記載の組成物は、複数回用量にわたって投与され得る。例えば、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回の用量である。他の例では、本明細書に記載の組成物は、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回の用量にわたって投与され得る。
【0149】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、対象に投与する前に培養増殖され得る。細胞培養の様々な方法が、当該技術分野で既知である。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、約4~10継代培養増殖される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10継代培養増殖される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、少なくとも5継代培養増殖される。これらの例では、幹細胞は、凍結保存される前に培養増殖され得る。
【0150】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、投与前に無血清培地で培養増殖される。
【0151】
いくつかの例では、細胞は、細胞が対象の循環に出ることは許容しないが、細胞によって分泌される因子が循環に入ることを許容するチャンバ内に含まれる。このようにして、可溶性因子は、細胞が対象の循環内に因子を分泌することを許容することによって対象に投与され得る。そのようなチャンバは、可溶性因子の局所レベルを増加させるために、対象の部位に同様に植え込むことができる。
【0152】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、全身的に投与され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、対象の気道に投与され得る。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、対象の肺に投与され得る。別の例では、本開示の組成物は、静脈内に投与される。別の例では、組成物は、静脈内に及び対象の気道に投与される。
【0153】
一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、週1回投与される。例えば、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、2週間毎に週1回投与され得る。別の例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、週2回投与される。一例では、間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、毎月1回投与され得る。一例では、2回用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞が、2週間にわたって週1回投与される。別の例では、2回用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞が、2週間毎に週1回投与される。別の例では、4回用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞が、後続の用量が毎月投与される前に、2週間にわたって投与される。一例では、2回用量の間葉系統前駆細胞又は幹細胞は、後続の用量が毎月1回投与される前に、2週間毎に1回投与され得る。一例では、4回用量が毎月投与される。
【0154】
本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上述の実施形態に対して多数の変形及び/又は修正が行われ得ることが、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0155】
以下の特定の実施例は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる方法においても本開示の残りの部分を限定するものではない。更に詳述することなく、当業者は、本明細書の記載に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。
【実施例
【0156】
過炎症の治療のための、エクスビボで培養増殖された成人同種骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)
組成物
組成物は、健常な成人ドナーの骨髄から単離された、培養増殖された間葉系間質細胞(ceMSC)からなる。最終組成物は、Plasma-Lyte A、ジメチルスルホキシド(DMSO)及びヒト血清アルブミン(HSA)中に製剤化されたceMSCを含む。
【0157】
目的
以下を決定すること:
-安全性
-以下におけるベースラインからの変化:
○白血球数。
○P/F比。
○循環CRPレベル。
○フェリチンレベル
【0158】
測定値
ベースライン測定は、第1の用量(試験0日目)の投与前に行われた測定であるとみなした。白血球数、P/F比、循環CRPレベル及びフェリチンレベルを毎日測定した。
【0159】
対象
中等度のCOVID-19関連ARDSを有することを特徴とする患者(n=5)に、間葉系幹細胞(1kg当たり200万個の細胞)の静脈内注入を行った。
【0160】
解析
治療した患者の予備データを表1及び図1~5に示す。
【表1】
【0161】
MSC注入後11日間の5人の患者において、P/F比、CRP、クレアチニン及びフェリチンレベルが示される(図6~10)。0日目は、第1の用量の直前である。2~5日目に、全ての患者に第2の用量を投与した。P/F比は概して経時的に増加し、いくつかの事例ではARDSグレードの改善を示した。循環CRPレベルは、概して経時的に減少し、炎症の低減が示された。
【0162】
集団の拡張
患者集団を11人に拡張し、対象(表2)に、48~120時間間隔で2回用量(静脈内)を200万細胞/kg/注入で投与した。細胞生存率は、78~90%の範囲であった。
【表2】
【0163】
臨床転帰
臨床転帰を図11に示す。全ての患者を死亡又はICU退室まで追跡し、ICUでの死亡率は18%であった(95% CI;2~52%)。観察期間にわたって、10人(91%、95% CI;59~100%)の患者が抜管された。1人の患者(患者7)は、推定広範囲肺塞栓症による突然の代償不全のために、抜管から3日後に再挿管された。血栓溶解療法は酸素化及び血行動態の改善をもたらしたが、最終的には機械的な換気を必要としたまま、敗血症性ショックにより注入後23日目に患者が死亡した。研究期間の終了時に、9人(82%、95% CI;48~97%)の患者が機械的換気から解放され、9人(82%、95% CI;48~97%)が集中治療室から退室し、7人(64%、95% CI;31~89)が退院した。2人は、安定した状態で内科病棟に入院中である。最初の注入から抜管までの中央値時間は10日であった(IQR:3~10日)。機械的換気の中央値期間は12日であった(IQR:7~12日)。
【0164】
生理学的データ
0日目~3日目の1日の中央値P:F比(中央値差+78mmHg、p=0.002)によって評価されるように、酸素化の改善が認められた(表3及び表4、図12)。CRPレベルは、0日目~5日目に減少した(中央値219.2~36.5mg/L、p=0.002、図13、表3及び表4)。発熱曲線又は白血球数に変化は認められなかった。フェリチンレベル及びSOFAスコアには、0日目~3日目又は5日目には顕著な変化は見られなかった。
【表3】
【表4】
【0165】
安全性
注入関連の有害事象は認められなかった。
【0166】
多系統炎症症候群(MIS)治療のための、エクスビボで培養増殖された成人同種骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)
生来健康な男児が高熱を呈し、COVID-19抗体は陽性であったが、ウイルスは陽性ではなかった。彼は当初、高用量ステロイド、静脈内免疫グロブリン、昇圧剤、高用量アスピリン、及び抗血小板薬を用いたMISのための治療を受けた。これらの複数の治療薬にもかかわらず、彼は、心臓ポンプ機能の悪化、並びに炎症、心充血、及び血管内での血液凝固のバイオマーカーの持続的な上昇を経験した。入院から4日後、小児をある用量の静脈内間葉系幹細胞(2×10細胞/kg)で治療し、続いて2日後に第2の静脈内用量で治療した。
【0167】
2回のMSC用量が投与された3日間の期間にわたり、CRP、Dダイマー及びBNPレベルが減少し、一方でLVEF%が増加した(表5、図14)。炎症性バイオマーカーの顕著な減少も観察された(図14)。表5に示されるように、主要な血栓症及び凝固のマーカーであるDダイマーレベルが劇的に低減し(>20μg/mLから2.6μg/mLへ)、心機能が顕著に改善され、駆出率が51%から68%に増加した。小児はその後、自宅退院した。
【表5】
【0168】
生来健康な女児は、COVID-19抗体は陽性であったが、ウイルスは陽性ではなかった。彼女は、当初、IVステロイド、昇圧剤、低用量アスピリンを用いたMISのための治療を受け、予防措置として挿管された。入院から2日後、小児をある用量の静脈内間葉系幹細胞(2×10細胞/kg)で治療し、続いて2日後に第2の静脈内用量で治療した。
【0169】
2回のMSC用量が投与された4日間の期間にわたり、CRP、トロポニンI、フェリチン、クレアチニン、BUN及びBNPのレベルが減少し、一方でLVEF%が増加した(表6、図15)。炎症性バイオマーカーの顕著な減少も観察された(図15)。フィブリノーゲンレベルの低減は、細胞の第2の用量の後に観察された。更に、表6に示すように、心機能が顕著に改善され、駆出率が43.3%から61.8%に増加した。
【表6】
【0170】
上記の表に記載されているように、細胞治療薬の投与後、両方の小児は、LV駆出率及びB型ナトリウム利尿タンパク質の急速な正常化、並びにレメステムセル(remestemcel)-Lによる治療と時間的に関連するDダイマーの改善を示した(図16)。更に、連続心エコー画像診断により、弁全体の逆流の重症度の低減、及びLV末端収縮期容積の増加が示された。後者の観察は、細胞治療薬の投与と時間的に関連するLV収縮状態の改善と一致する。
【0171】
移植レシピエントにおける過炎症の治療のための、エクスビボで培養増殖された成人同種骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)
成人男性は、重度のクローン病のために結腸切除及び移植を受けた。その後、患者は細菌性ARDS、及び移植拒絶反応を示す症状を呈した。患者はまた、上葉に小葉中心性肺気腫のCT所見を有するCOPDに罹患していた。患者は、経口バンコマイシン(再発性Clostridium difficile感染の病歴のために開始)及び経口オーグメンチン(肺炎のために開始)による治療を含むいずれの治療にも応答しなかった。大腸内視鏡検査により、小腸粘膜にパッチ性の活動性炎症、構造的歪み、及び局所的に増加したアポトーシス活性(5/10連続的陰窩)が認められ、急性細胞拒絶反応については不確定であった。胸部CTでは、主に下葉において多巣性の気管支周囲結節性及び依存性の圧密性混濁の新たな所見が認められ、肺炎が疑われた。更に大腸内視鏡検査を行ったところ、回腸は正常であり、結腸粘膜は全体にわたり紅斑性であった。病理は急性細胞拒絶反応について再び不確定に戻ったが、炎症性変化が存在した。
【0172】
その後、患者に、2回の静脈内間葉系幹細胞(2×10細胞)の注入、続いて、結腸壁への1.5億MSCの直接投与(内視鏡的)を行った。患者の呼吸器ARDSは細胞治療後に消失し、患者は自宅退院となり、酸素が取り外され、1日に3~4回排便があった。半固体の硬さ。2週間後の経過観察では、臨床徴候の劇的な改善が見られ、回腸の炎症は最小限であり、結腸に背景炎症はなく、移植拒絶反応の証拠もなかったことが明らかになった。息切れは報告されず、下痢はベースラインに戻り(10~12回の発生頻度)、発熱又はSOBは報告されず、補助的なOの使用は必要なかった。気管支洗浄培養も感染について陰性であった。更なる経過観察により、特許が自宅にあり、体調が良好であることが明らかになった。
【0173】
広範に記載されている本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように本発明に対して多数の変形及び/又は修正が行われ得ることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0174】
上で考察された全ての刊行物は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0175】
本明細書に含まれる文書、行為、材料、デバイス、物品等の任意の考察は、本発明のための文脈を提供することのみを目的としている。これらの事項のいずれか又は全てが、従来技術の基盤の一部を形成するか、又は本出願の各請求項の優先日よりも前に存在したために、本発明に関連する分野における共通の一般的な知識であったことを認めるものとみなされるべきではない。
【0176】
本出願は、2020年4月3日に出願されたAU2020/901052、2020年4月8日に出願されたAU2020/901124、2020年7月6日に出願されたAU2020/902312、2020年7月14日に出願されたAU2020/902425、2020年8月25日に出願されたAU2020/903041、2020年10月12日に出願されたAU2020/903694、及び2020年11月23日に出願されたAU2020/904312からの優先権を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9-1】
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図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16
【国際調査報告】