(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】構造漏れをシールするための方法および製剤
(51)【国際特許分類】
E02D 31/02 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
E02D31/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022566649
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(85)【翻訳文提出日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 AU2021050185
(87)【国際公開番号】W WO2021174303
(87)【国際公開日】2021-09-10
(32)【優先日】2020-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522425792
【氏名又は名称】ジーディーダブリューエス プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GDWS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】10 Rochester St., Botany, NSW 2019 (AU)
(74)【代理人】
【識別番号】110003487
【氏名又は名称】弁理士法人東海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ,エオイン
(72)【発明者】
【氏名】シャーキー,クレア
(72)【発明者】
【氏名】ホー,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】オ’ブライアン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトヘッド,デイビッド
(57)【要約】
構造体の漏出亀裂をシールする方法は、亀裂に隣接する構造体に、亀裂に向かって亀裂に合流するように送達チャネルを掘削することを含む。送達ノズルを送達チャネルに挿入し、ラテックスおよび水を含むシーラントを亀裂に圧力下で注入する。シーラントを、シーラントが亀裂の外表面にしみ出しを形成するまで注入し、これに反応性薬剤を噴霧してシーラントを硬化させ皮膜を形成してもよい。その後、皮膜が形成された後に送達チャネルを介してさらなるシーラントが注入され、亀裂内のシーラントの滲入を強化してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の漏出亀裂をシールする方法であって、
前記構造体の前記亀裂の近傍に前記亀裂に向かって前記亀裂に合流するように送達チャネルを掘削する工程と、
送達ノズルを前記送達チャネルに挿入し、前記送達ノズルを介してラテックスおよび水を含むシーラントを圧力下で前記亀裂に注入する工程と、
前記シーラントが前記亀裂の外表面にしみ出しを形成するまで前記シーラントを注入する工程と、
前記しみ出しに反応性薬剤を噴霧して、前記亀裂の表面全体にわたって前記シーラントを硬化させ、前記亀裂の外表面全体にわたって皮膜を形成する工程と、そして
前記皮膜が形成された後に前記送達チャネルを介してさらなるシーラントを注入する工程と、を備える方法。
【請求項2】
前記さらなるシーラントを注入する工程は、前記皮膜が形成された後に前記シーラントの圧力を上昇させる工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力は500psi超まで加圧される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力は2500psi未満まで加圧される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記送達チャネルを介して反応性薬剤を注入して前記亀裂内の前記シーラントを硬化させる工程をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応性薬剤は前記皮膜が形成された後に注入される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記亀裂の長さに沿ってさらなる送達チャネルを掘削する工程と、そして
前記さらなる送達チャネルを介してさらなるシーラントを注入する工程と、をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、内部導管と、前記内部導管の周りに保持可能な複数の交換可能な外部スリーブと、を有する送達ノズルを備える注入パッカーを使用する工程を備え、
前記交換可能な外部スリーブは、それぞれの送達チャネルの内径に適した異なる外径を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記注入パッカーは、前記送達ノズルの遠位端において、それぞれの外部スリーブと協働して間で拡張シールを圧縮する、少なくとも1つの交換可能な遠位保持カラーをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの交換可能な遠位保持カラーは、前記内部導管の遠位端の雄ねじ部と係合するための雌ねじ部を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの交換可能な遠位保持カラーは、各々がそれぞれの外部スリーブの外径に適合する外径を有している複数の交換可能な遠位保持カラーを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記内部導管は、第1の方向に回すと取り付けられた外部スリーブを取り付けられた遠位保持カラーに付勢する旋回ハンドルを有している環状体を、ねじ込み式に係合する、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記方法は、近位環状体と、内部導管と、前記内部導管の遠位端に取り付け可能な遠位カラーと、を備える注入パッカーを用いる工程を備え、
前記近位環状体および前記遠位カラーはそれぞれ、外部スリーブの何れかの端部に支持され、
前記方法は、前記遠位カラーに前記外部スリーブの重みがかかるように前記近位環状体を締め付けて、前記遠位カラーを前記送達導管内で拡張させる工程を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記シーラントは、比が約3:2のラテックスおよび水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
付与前の前記シーラントのpHを7.5以上に維持する塩基をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基は前記シーラントのpHを10超のpHに維持する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基は弱塩基を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基はアンモニアを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
1Lの前記シーラントは、約600mLのラテックス、約398mlの水、および約2mLのアンモニアを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記水は中性pHを有している、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応性薬剤は、前記シーラントのpHを7~8に低下させるように製剤される、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記反応性薬剤は、前記シーラントのpHを約7~7.5に低下させるように製剤される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法は、前記反応性薬剤のpHおよび前記亀裂から漏れる水のpHに応じて反応性薬剤の製剤を選択する工程を備える、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記方法は、付与前の前記亀裂から漏れる水のリトマス試験を備える、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記亀裂から漏れる水のpHが7未満の場合、水および塩化ナトリウムを含む反応性薬剤の第1の製剤が選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
反応性薬剤の前記第1の製剤は、これを構成する1Lについて、約995mlの水、約3mmの塩化カルシウムおよび約2mlの塩化ナトリウムを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
塩化ナトリウムの量は、前記亀裂から漏れる水のpHに応じて変えられる、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
反応性薬剤の前記第1の製剤を構成する1Lについて、前記塩化ナトリウムは、6~6.8のpH範囲に対して2~0mLの間で変えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記亀裂から漏れる水のpHが7超の場合、水および塩化カルシウムを含む反応性薬剤の第2の製剤が選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
反応性薬剤の前記第2の製剤は、これを構成する1Lについて、約995mLの水および約5mLの塩化カルシウムを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
塩化カルシウムの量は、前記亀裂から漏れる水のpHに応じて変えられる、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
反応性薬剤の前記第2の製剤を構成する1Lについて、前記塩化カルシウムは、7.0~8.8のpH範囲に対して0~6mlの間で変えられる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
反応性薬剤の前記第1の製剤は、淡水漏れに使用される、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
反応性薬剤の前記第2の製剤は、塩水漏れに使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記送達ノズルは、10mm~50mmの範囲の直径を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記送達チャネルは、前記亀裂から50~75mmの間で始まっている、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記送達チャネルは、10mm~50mmの直径を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記送達チャネルは、約45°の角度で延びている、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記送達チャネルは、100~200mmの深さまで延びている、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、構造漏れをシールするための方法および製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
構造的な水漏れは、従来、ポリウレタンフォームの注入によって塞がれる。しかしながら、ポリウレタンは耐久性が悪く、塩水で劣化し、付与が困難である。
【0003】
ラテックス系のシーリング組成物が提案されており、トンネルの修理または流出に関する封じ込め障壁の形成または廃棄物貯蔵施設を含みうる構造体のための土木工学シーリング用途への様々なマイニングを記載した国際公開第2019/169423号(RELBORGN PTY LTD.AND TRIOMVIRI PTY LTD)2019年9月12日によるものが含まれる。
【0004】
本発明は、先行技術の欠陥の少なくとも一部を克服または実質的に改善する方法を提供するか、または少なくとも代替手段を提供することを目指すものである。
【0005】
何らかの先行技術情報が本明細書で言及される場合、そのような言及は、その情報がオーストラリアまたは他の国における当該技術分野における共通の一般知識の一部を形成することを認めるものではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【0006】
本明細書には、後に反応性薬剤によって硬化するラテックス系シーラントを用いて構造体の漏出亀裂をシールする方法が提供されており、それによって、塩水に対する耐性のあるシールを含む耐久性シールが提供される。本発明による構造リークをシールする方法は、請求項1によって概説される。さらなる特徴は、従属請求項によって概説される。
【0007】
この方法は、亀裂に隣接する構造体に送達チャネルを掘削し、送達チャネルが亀裂に合流するまで亀裂に向かって穴を開ける工程を備える。
【0008】
その後、注入パッカーのような送達ノズルが送達チャネルに挿入され、送達ノズルを介してラテックスおよび水を含むシーラントが圧力下で亀裂に注入される。
【0009】
シーラントは、シーラントが亀裂の外表面にしみ出しを形成するまで注入される。その後、スプレーガンのようなものを用いてしみ出しに反応性薬剤が噴霧され、亀裂の表面全体にわたってシーラントを硬化させ、亀裂の外表面全体にわたって皮膜を形成する。
【0010】
その後、皮膜が形成された後に送達チャネルを介してさらなるシーラントが注入される。さらなるシーラントは、500psiを超えるような高い圧力で注入されてもよい。
【0011】
皮膜は外部障壁を形成し、これが加圧下で亀裂内にさらに注入されたシーラントを保持して、これにより亀裂全体内のシーラントの滲入が強化される。
【0012】
反応性薬剤が、亀裂内のシーラントを硬化させるために送達ノズルを介してさらに注入されてもよい。さらに、シーラントのさらなる付与のために、さらなる送達チャネルが亀裂の長さに沿って掘削されてもよい。
【0013】
シーラントは最初約10以上のpHを備えてもよく、反応性薬剤が付与されて、好ましくは約7~7.5にpHが下げられると、最適なシーラント特性が結果として与えられることが、我々の試行および実験により判明した。
【0014】
反応性薬剤の製剤は、亀裂からしみ出す水のpHに応じて選択してもよい。pHが7未満の場合、典型的には地下水漏出であり、典型的には淡水であるが、反応性薬剤の第1の製剤は塩化ナトリウムを含んでいてもよく、塩化ナトリウムは水のpH範囲に応じて変えられてもよい。逆に、pHが7超の場合、典型的には塩水漏れであるが、反応性薬剤の第2の製剤は、塩化カルシウムを含んでいてもよく、同様に、これは漏れた水の測定pHに基づいて変えられてもよい。
【0015】
シーラントを注入するために注入パッカーが使用されてもよく、これは、送達チャネルの直径に一致するように異なる直径の交換可能なスリーブを含む。注入パッカーは、付与の間にポンプや送達ホースを排水する必要がないように設計されており、これによって製品の無駄がなくなり、タスクに費やされる時間が最大化される。
【0016】
そのようなものとして、前述のことを念頭に置き、実施形態に従えば、構造体の漏出亀裂をシールする方法が提供され、該方法は、前記構造体の前記亀裂の近傍に前記亀裂に向かって前記亀裂に合流するように送達チャネルを掘削する工程と、送達ノズルを前記送達チャネルに挿入し、前記送達ノズルを介してラテックスおよび水を含むシーラントを圧力下で亀裂に注入する工程と、前記シーラントが前記亀裂の外表面にしみ出しを形成するまで前記シーラントを注入する工程と、前記しみ出しに反応性薬剤を噴霧して、前記亀裂の表面全体にわたって前記シーラントを硬化させ、前記亀裂の外表面全体にわたって皮膜を形成する工程と、前記皮膜が形成された後に前記送達チャネルを介してさらなるシーラントを注入する工程と、を備える。
【0017】
前記さらなるシーラントを注入する工程は、前記皮膜が形成された後に前記シーラントの圧力を上昇させる工程をさらに含んでもよい。
【0018】
前記圧力は500psi超まで加圧されてもよい。
【0019】
前記圧力は、2500psi未満まで加圧されもよい。
【0020】
前記方法は、前記送達チャネルを介して反応性薬剤を注入して、前記亀裂内の前記シーラントを硬化させる工程をさらに備えてもよい。
【0021】
前記反応性薬剤は前記皮膜が形成された後に注入されてもよい。
【0022】
前記方法は、前記亀裂の長さに沿ってさらなる送達チャネルを掘削する工程と、そして前記さらなる送達チャネルを介してさらなるシーラントを注入する工程と、をさらに備えていてもよい。
【0023】
前記方法は、送達導管と、前記送達導管上を摺動可能な小径スリーブと、前記小径スリーブ上を摺動可能な大径スリーブと、を備える注入パッカーを使用する工程を備えていてもよく、前記方法は、前記送達チャネルの直径に基づいて前記大径スリーブを保持または除去する工程を備えていてもよい。
【0024】
前記注入パッカーは、前記送達導管の遠位端に取り付け可能な大径遠位カラーおよび小径遠位カラーをさらに含んでもよく、前記方法は、前記大径遠位カラーを前記大径スリーブに取り付ける工程を含んでもよい。
【0025】
前記方法は、近位環状体と、内部導管と、前記内部導管の遠位端に取り付け可能なカラーと、を備える注入パッカーを使用する工程を備えてもよく、前記近位環状体および前記遠位カラーはそれぞれ、外部スリーブのいずれかの端部に支持され、前記方法は、前記遠位カラーに前記外部スリーブの重みがかかるように前記近位環状体を締め付けて、前記遠位カラーを前記送達導管内で拡張させる工程を備えていてもよい。
【0026】
前記シーラントは、比が約3:2のラテックスおよび水を含んでいてもよい。
【0027】
前記方法は、付与前のシーラントのpHを7.5超に維持する塩基をさらに含んでいてもよい。
【0028】
前記塩基は前記シーラントのpHを10超のpHに維持してもよい。
【0029】
前記塩基は弱塩基からなってもよい。
【0030】
前記塩基はアンモニアからなってもよい。
【0031】
1Lのシーラントは、約600mLのラテックス、約398mlの水、および約2mLのアンモニアを含んでいてもよい。
【0032】
前記水は中性pHを有していてもよい。
【0033】
前記反応性薬剤は、前記シーラントのpHを7~8に低下させるように製剤されてもよい。
【0034】
前記反応性薬剤は、前記シーラントのpHを約7~7.5に低下させるように製剤されてもよい。
【0035】
前記方法は、前記反応性薬剤のpHおよび前記亀裂から漏れる水のpHに応じて反応性薬剤の製剤を選択する工程を備えてもよい。
【0036】
前記方法は、付与前の前記亀裂から漏れる水のリトマス試験を備えてもよい。
【0037】
前記亀裂から漏れる水のpHが7未満の場合、水および塩化ナトリウムを含む反応性薬剤の第1の製剤が選択されてもよい。
【0038】
反応性薬剤の前記第1の製剤は、これを構成する1Lについて、約995mlの水、約3mmの塩化カルシウムおよび約2mlの塩化ナトリウムを含んでいてもよい。
【0039】
塩化ナトリウムの量は、前記亀裂から漏れる水のpHに応じて変えられてもよい。
【0040】
反応性薬剤の前記第1の製剤を構成する1Lについて、塩化ナトリウムは、6~6.8のpH範囲に対して2~0mLの間で変えられてもよい。
【0041】
前記亀裂から漏れる水のpHが7超の場合、水および塩化カルシウムを含む反応性薬剤の第2の製剤が選択されてもよい。
【0042】
反応性薬剤の前記第2の製剤は、これを構成する1Lについて、約995mLの水および約5mLの塩化カルシウムを含んでいてもよい。
【0043】
塩化カルシウムの量は、前記亀裂から漏れる水のpHに応じて変えられてもよい。
【0044】
反応性薬剤の前記第2の製剤を構成する1Lについて、塩化カルシウムは、7.0~8.8のpH範囲に対して0~6mlの間で変えられてもよい。
【0045】
反応性薬剤の前記第1の製剤は、淡水漏れに使用されてもよい。
【0046】
反応性薬剤の前記第2の製剤は、塩水漏れに使用されてもよい。
【0047】
前記送達ノズルは、10mm~50mmの範囲の直径を備えていてもよい。
【0048】
前記送達チャネルは、前記亀裂から50~75mmの間で始まっていてもよい。
【0049】
前記送達チャネルは、10mm~50mmの直径を備えていてもよい。
【0050】
前記送達チャネルは、約45°の角度で延びていてもよい。
【0051】
前記送達チャネルは、100~200mmの深さまで延びていてもよい。
【0052】
さらなる側面によれば、構造漏れをシールするための2液型製剤が提供され、前記製剤は、ラテックスおよび水を含むシーラントと、前記シーラントのpHを約10超に上昇させる塩基と、並びに、前記シーラントに付与されたときに前記シーラントのpHを約7~7.5まで低下させる反応性剤薬剤の選択物と、を含み、前記反応性薬剤の選択物は、亀裂からしみ出す水のpHに応じて第1および第2の反応性薬剤製剤から選択される。
【0053】
前記第1の製剤は、水および塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0054】
塩化ナトリウムは、前記亀裂からしみ出す水のpH範囲6~6.8に対して、2~0mLの間で変えることができる。
【0055】
第2の製剤は、水および塩化カルシウムを含んでいてもよい。
【0056】
塩化カルシウムは、前記亀裂からしみ出す水のpH範囲7~8.8に対して、0~6mLの間で変えることができる。
【0057】
本発明の他の側面も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明の範囲内に入り得る他の形態にかかわらず、あくまでも例として、ここでは本開示の好ましい実施形態を、以下の添付の図面を参照しながら説明する。
【0059】
【
図1】
図1は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【
図2】
図2は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【
図3】
図3は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【
図4】
図4は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【
図5】
図5は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【
図6】
図6は、一実施形態による構造体の漏出亀裂のシールを図示している。
【0060】
【
図7A】
図7Aは、一実施形態による注入パッカーの2つの構成形態の1つを示している。
【
図7B】
図7Bは、一実施形態による注入パッカーの2つの構成形態の1つを示している。
【0061】
【
図8】
図8は、一実施形態に係る構造体の漏出亀裂をシールする方法のステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図8を参照すると、
図1に示すような構造体102の漏出亀裂101をシールする方法130は、ステップ118における適切な反応性薬剤115の選択のため、ステップ117において亀裂101から漏れる水のpHを決定する工程を備えていてもよい。
【0063】
方法130は、ドリルビット130を用いて、典型的にはコンクリートである構造体102の漏出亀裂101の近傍に、亀裂101に向かって送達チャネル104がこれに合流するまで、送達チャネル104を掘削する工程を備える。
【0064】
典型的には、送達チャネル104は、亀裂101から50~75mmの間で始まってもよく、
図7に示すような注入パッカー105に合うように10mm~50mmの直径を備えてもよく、約45°の角度で100~200mmの深さまで延びてもよい。さらなる送達チャネル104が、亀裂101の長さに沿って掘削されてもよい。
【0065】
図3に示すように、ステップ120において、注入パッカー105の送達ノズル131が送達チャネル104に挿入される。送達ノズル131は、シーラントの望ましい流量のために選択された直径を備えていてもよく、10mm~50mmの範囲の外径を備えていてもよい。
【0066】
図7Aおよび
図7Bは、実施形態によるパッカー105を、より詳細には、様々な直径の送達チャネル104に合わせてパッカー105を再構成できる方法を、図示している。
【0067】
具体的には、送達ノズル131は、これを通ってシーラントが送達チャネル104に注入される内部導管109と、交換可能な外部スリーブ108と、を備えていてもよい。
【0068】
パッカー105は、各々が対応するスリーブ108の外径に適合する遠位保持カラー106をさらに備えてもよい。各保持カラー106は、内部導管109の遠位端の雄ねじ部と係合する雌ねじ部を備えてもよい。保持カラー106は、手で、内部送達導管の雄ねじ部にねじ込まれ、これから外されてもよい。
【0069】
送達ノズル131は、ゴムなどの遠位拡張シール135をさらに備えてもよい。
図7Aおよび
図7Bは同じサイズの遠位拡張シール135を示しているが、実施形態では、パッカー105は、対応するスリーブ108および保持カラー106に適合する外径の同様の拡張シール135を備えてもよい。
【0070】
拡張シール135は、保持カラー106とスリーブ108との間で圧縮され、これにより保持カラー106が拡張されて送達チャネル104の内表面に対してシールする。
【0071】
図7は、
図7Bに示される比較的大きなスリーブ108Bおよび保持カラー106Bの直径よりも小さい直径を有する、外部スリーブ108Aおよび対応する保持カラー106Aを示す。
【0072】
例えば、外部スリーブ108Aおよび保持カラー106Aは、14mmの送達チャネル104に適した14mmの外径を備えてもよく、一方、外部スリーブ108Bおよび保持カラー106Bは、18mmの送達チャネルに適した18mmの外径を備えてもよい。それぞれの拡張シール135は、同様に、対応する直径を有していてもよい。
【0073】
旋回ハンドル111を有する近位環状体110は、外部スリーブ108の近位端に支持され、内部導管109に沿って遠位端に向かって外部スリーブ108を付勢して、保持カラー106に対して拡張シール135を圧縮してもよい。環状体110は、内部導管109の近位端に雄ねじ部132を係合する雌ねじ部を備えていてもよい。
【0074】
パッカー105は、内部導管109に接続された主円筒型ハンドル133を有していてもよい。
【0075】
主円筒型ハンドル133は、これを通して内部導管109を流体接続するボア134を備えていてもよい。内部ボア134は、これに送達ホースを接続するための適切な連結用の雌ねじ部を備えていてもよい。
【0076】
このように、使用中、主円筒型ハンドル133を片手で保持しながら、旋回ハンドル111を回してもよい。
【0077】
例えば、
図4に示すようにステップ121においてシーラントを注入するため、主ハンドル133のボア134に送達ホースを連結し、送達ノズル131の遠位端を送達チャネル104に挿入してもよい。
【0078】
一旦、必要な挿入深さに達すると、主ハンドル133をしっかりと保持しながら、旋回ハンドル111を時計回りに回転させて外部スリーブ108を遠位保持カラー106に向かって付勢し、拡張シール135を送達導管104の内表面に向けて拡張させてもよく、これによりタイトなシールが形成されて、圧力下でシーラントを亀裂101に注入可能となる。
【0079】
必要に応じて、スパナを使用してハンドル133を動かすために六角ナット136または類似のものを使用してもよい。
【0080】
送達ノズル131を取り外すには逆の手順をとってもよく、旋回ハンドル111を反時計回りに回転させ、拡張シール135を緩めて送達ノズル131を取り外し可能とする。
【0081】
直径14mmの外部スリーブ108Aに、拡張シール135Aと保持カラー106Aが係合されていると仮定すると、直径18mmの送達チャネル104に対してパッカー105を再構成する工程は、保持カラー106を手で緩めて外す工程と、次いで拡張シール135Aおよび外部スリーブ108Aを内部導管109から摺動させる工程と、を備えてもよい。外部スリーブ108Aおよび拡張シール135Aは、保持カラー106Aを係合するための内部導管109の遠位ねじ部を逃れられる内径を有していてもよい。
【0082】
その後、内部導管109上に直径18mmの外部スリーブ108Bを、続いて直径18mmの拡張シール135Bを、さらに続いて直径18mmの保持カラー106Bを摺動させて、内部導管109の遠位端のねじ部にねじ込んでもよい。
【0083】
ステップ122において、亀裂101の程度を調査するため、注入パッカー105を介して水を注入してもよい。
【0084】
図5に示すように、ステップ123において、シーラント113が亀裂101内に注入される。
【0085】
シーラントポンプにより、シーラント貯留槽からホースコネクタ112を介してシーラント113を供給してもよい。圧縮機により、ホースコネクタ112を介してシーラント113をポンプで送るためにシーラント貯留槽を加圧するのに必要な体積および圧力の空気を供給してもよい。圧縮機は、シーラント113の供給量および圧力を変化させるように調整可能であってもよい。
【0086】
シーラント113は、ラテックスおよび水を、好ましくは約3:2の比率で含む。シーラント113は、その長期保存を可能にするために付与前のシーラント113のpHを7.5超(好ましくは約10~10.5のpH)に維持するための塩基を含んでもよい。塩基は、アンモニア等の弱塩基を含んでいてもよい。
【0087】
シーラント113が剪断下で厚くなるにつれて、シーラント113を高すぎる圧力で注入しないように注意しなければならない。エアレーションを避けるためにも、注意が必要である。
【0088】
一実施形態において、1Lのシーラント113は、約600mlのラテックスと、約398mLの水と、約2mLのアンモニアと、を含む。シーラント113用の水は、この水が中性pHを有することを確かめるため、混合前に検査してもよい。
【0089】
ステップ124において、シーラント113を硬化させる反応性薬剤115が付与される。反応性薬剤115は、シーラント113のpHを約10~10.5のpHから約7~7.5に低下させるために付与されるが、これは結果として生じるシーラント113のシーリング特性のために最適なpHであることが、試行および実験で示されている。
【0090】
反応性薬剤115の製剤は、結果として約7~7.5の最適なシーラントのpHが達成されるように、反応性薬剤115のpHおよび亀裂101から滲み出る水のpHに応じて選択してもよい。
【0091】
例えば、7~7.5未満のpHを有する水の場合、反応性薬剤115の第1の製剤を選択してもよく、これを構成する1Lには、約995mLの水と、約3mLの塩化カルシウムと、約2mLの塩化ナトリウムと、が含まれる。
【0092】
塩化ナトリウムの量は、水のpHに応じて以下の表に従って変えられてもよい。
【表1】
【0093】
7超のpHを有する水の場合、反応性薬剤115の第2の製剤を選択してもよく、これを構成する1Lには、約995mLの水と、約5mLの塩化カルシウムと、が含まれる。
【0094】
塩化カルシウムの量は、水のpHに応じて以下の表に従って変えられてもよい。
【表2】
【0095】
反応性薬剤112の第1の製剤は、典型的には6~8.5の範囲のpHを有する淡水または地下水に付与するために選択され得る。反応性薬剤115の第2の製剤は、典型的には約7.6~8.4の範囲のpHを有する塩水に使用され得る。
【0096】
図5に示すように、シーラント113が亀裂101の外表面にしみ出し114を形成するまでシーラント113を注入してもよい。
【0097】
図6に示すように、ステップ125において、スプレーガン107を用いて反応性薬剤115をしみ出し114に噴霧してもよく、これにより暴露されたシーラント113が硬化して皮膜116が形成される。
【0098】
一旦、皮膜116が形成され、これにより亀裂101の入口がシールされてから、さらなるシーラント113が注入パッカー105を介して注入されてもよく、これは、外部皮膜116で形成された障壁でブロックされることにより、亀裂101のより深くに押し込まれる。このとき、シーラント113は、ステップ127において、500~2500psiの範囲であり得るより高い圧力下で注入されてもよい。
【0099】
必要に応じて、送達チャネル104を通して反応性薬剤を注入し、シーラント113を後方から硬化させてもよい。
【0100】
シーラント113を、他の送達チャネル104を介して同様に注入し、亀裂101をシールしてもよい。
【0101】
一旦、十分な量のシーラント113が注入されてから、ステップ128において、シーラント113の硬化を許容して固まってはいるが柔軟なシールとしてもよく、これにより亀裂101が効果的にシールされる。
【0102】
前述した記載では、説明の目的のため、本発明の完全な理解を提供するために特定の名称を使用した。しかしながら、当業者には、本発明を実施するために特定の詳細が必須ではないことが明らかであろう。つまり、本発明の特定の実施形態についての先の説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。それらは、網羅的であることを意図したものではなく、また開示された形態そのものに本発明を限定するものでもなく、上記の教示に照らして多くの修正および変形が明らかに可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実際的応用を最もよく説明するために選択および説明されており、これにより、当業者が、企図される特定の使用に適するように様々な変形を加えた様々な実施形態および種々の実施形態を最もよく利用可能とされている。以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物が、本発明の範囲を定義すると意図される。
【0103】
本明細書で使用する「約」または類似の用語は、特に断らない限り、記載された値の10%以内と解釈されるべきである。
【図】
【国際調査報告】