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特表2023-520250セルスタック、セルスタックの製造方法、およびセルスタックを構成する燃料電池または電解セル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】セルスタック、セルスタックの製造方法、およびセルスタックを構成する燃料電池または電解セル
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/241 20160101AFI20230509BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20230509BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALI20230509BHJP
   C25B 9/19 20210101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M8/241
H01M4/86 M
H01M8/1004
H01M4/86 B
C25B9/19
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022569277
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2021058262
(87)【国際公開番号】W WO2021228466
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】102020112988.2
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516186234
【氏名又は名称】グリナリティ・ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Industriegebiet Sud E11, 63755 Alzenau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルシュ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ズッフスランド,イェンス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリック,ドミニク
【テーマコード(参考)】
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K021DB16
4K021DB53
5H018AA06
5H018EE02
5H018HH03
5H126AA02
5H126AA22
5H126BB06
(57)【要約】
本発明は、複数の単一セル(9、10、11、12)を有するセルスタック(2)に関し、各単一セル(9、10、11、12)は、カソード(6)、アノード(4)、介在膜(5)を含む膜電極アレンジメント(3)と、アノード(4)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第1の厚み勾配を有するアノードガス拡散層(7)またはチタン焼結体と、カソード(6)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第2の厚み勾配を有するカソードガス拡散層(8)とを有する。単一セル(9、10、11、12)において、アノードガス拡散層(7)およびカソードガス拡散層(8)は、アノードガス拡散層(7)の第1の厚み勾配およびカソードガス拡散層(8)の第2の厚み勾配が逆方向となるように互いに関して配置され、または、2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、アノードガス拡散層(7)は、これらのアノードガス拡散層(7)の総厚み勾配が最小になるように互いに関して配置され、および/または、2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、カソードガス拡散層(8)は、カソードガス拡散層(8)の総厚み勾配が最小になるように互いに関して配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単一セル(9、10、11、12)を有するセルスタックであって、各単一セル(9、10、11、12)が、カソード(6)、アノード(4)、および介在膜(5)を含む膜電極アセンブリ(3)と、アノード(4)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第1の厚み勾配を有するアノードガス拡散層(7)または焼結チタン成分と、カソード(6)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第2の厚み勾配を有するカソードガス拡散層(8)とを備え、
a)単一セル(9、10、11、12)において、前記アノードガス拡散層(7)および前記カソードガス拡散層(8)は、前記アノードガス拡散層(7)の前記第1の厚み勾配と前記カソードガス拡散層(8)の前記第2の厚み勾配が互いに逆向きとなるように互いに関して配置され、または
b)2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、前記アノードガス拡散層(7)は、これらのアノードガス拡散層(7)の全体の厚み勾配が最小になるように、互いに関して配置され、および/または、2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、前記カソードガス拡散層(8)は、これらのカソードガス拡散層(8)の全体の厚み勾配が最小になるように互いに関して配置されている、
ことを特徴とするセルスタック。
【請求項2】
全ての単一セル(9、10、11、12)において、前記アノードガス拡散層(7)および前記カソードガス拡散層(8)はそれぞれ、単一セル(9、10、11、12)ごとに、前記アノードガス拡散層(7)の前記第1の厚み勾配と前記カソードガス拡散層(8)の前記第2の厚み勾配とが互いに逆向きとなるように、互いに関して配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載のセルスタック。
【請求項3】
前記アノードガス拡散層(7)の前記第1の厚み勾配および前記カソードガス拡散層(8)の前記第2の厚み勾配は、線形である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のセルスタック。
【請求項4】
前記アノードガス拡散層(7)および前記カソードガス拡散層(8)はそれぞれ、マイクロポーラス層およびマクロポーラス担体材料を含み、前記アノードガス拡散層(7)の前記マイクロポーラス層は前記アノード(4)に向けられ、前記カソードガス拡散層(8)の前記マイクロポーラス層は前記カソード(6)に向けられている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のセルスタック。
【請求項5】
単一セル(9、10、11、12)の前記アノードガス拡散層(7)及び/又は前記カソードガス拡散層(8)が、100μm~300μmの範囲の層厚を有し、及び/又は
前記担体材料がフリースタイプおよび紙タイプから選択され、および/または
前記膜電極アセンブリ(3)がエッジング材によって円周に沿って縁取られている、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のセルスタック。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のセルスタック(2)を備える、燃料電池または電解セル。
【請求項7】
複数の単一セル(9、10、11、12)を有するセルスタック(2)を製造する方法であって、各単一セル(9、10、11、12)が、カソード(6)、アノード(4)、および介在膜(5)を含む膜電極アセンブリ(3)と、アノード(4)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第1の厚み勾配を有するアノードガス拡散層(7)または焼結チタン成分と、カソード(6)の露出側に配置され、機械横方向(y)に第2の厚み勾配を有するカソードガス拡散層(8)とを備え、
a)単一セル(9、10、11、12)において、前記アノードガス拡散層(7)および前記カソードガス拡散層(8)は、前記アノードガス拡散層(7)の前記第1の厚み勾配と前記カソードガス拡散層(8)の前記第2の厚み勾配が互いに逆向きとなるように互いに関して配置され、または
b)2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、前記アノードガス拡散層(7)は、これらのアノードガス拡散層(7)の全体の厚み勾配が最小になるように、互いに関して配置され、および/または、2つ以上の単一セル(9、10、11、12)において、前記カソードガス拡散層(8)は、これらのカソードガス拡散層(8)の全体の厚み勾配が最小になるように互いに関して配置されている、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記ガス拡散層は、ロール製品(1)として提供され、前記ガス拡散層を形成するよう個別化され、前記ガス拡散層を個別化するために、ガス拡散層がロール(1)から前記機械横方向(y)に連続して除去され、連続して除去された前記ガス拡散層は、各第2の除去されたガス拡散層が前記機械横方向(y)に対して180°回転するように用いられ、非回転のガス拡散層および回転済みガス拡散層が、単一セル(9、10、11、12)用の前記アノードガス拡散層(7)および前記カソードガス拡散層(8)として交互に使用される、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス拡散層がロール製品(1)として提供され、前記ガス拡散層を形成するよう個別化され、前記ガス拡散層を個別化するために、ガス拡散層がロール(1)から機械横方向(y)に連続して取り除かれ、連続して取り除かれた前記ガス拡散層がそれぞれ他のものの上に一つずつ積み上げられ、積層されるガス拡散層または互いに積層されたガス拡散層の各第2のものを、前記機械横方向(y)に対して180°回転させ、互いに積層されたガス拡散層を、他のものの上に1つずつ配置されるセルスタック(2)の単一セル(9、10、11、12)のアノードガス拡散層(7)またはカソードガス拡散層(8)として使用する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス拡散層がロール製品(1)として提供され、ガス拡散層を形成するよう個別化され、前記ガス拡散層を個別化するために、ガス拡散層がロール(1)から前記機械横方向(y)に連続して除去され、連続して除去されたガス拡散層がそれぞれ別のものの上に一つずつ積み上げられ、ランダムジェネレータを介して確定されたガス拡散層が前記機械横方向(y)に関して180°回転され、回転または非回転は同じ確率を有する、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な厚み分布を有するセルスタック及びこのようなセルスタックを製造する方法に関するものである。さらに、本発明は、このセルスタックを構成する燃料電池または電解セルに関する。
【背景技術】
【0002】
特に燃料電池のような電気化学的用途のためのガス拡散層は、生産のために不均一な厚み分布を有し得る。例示的な厚み変動は、線形厚み勾配、凹形状、凸形状、または波状形状であり、それらは、ガス拡散層の少なくとも1つのセクションで優勢になり得る。ガス拡散層は、典型的にはロール製品として提供され、これは、機械長手方向(これは、ロールが巻かれるかまたは巻き戻される方向である)および機械横方向(これは、機械長手方向に対して垂直に延び、したがってロールの幅となる方向である)を有している。このようなガス拡散層ロールは、特に機械横方向において製造のために厚み変動を有し、ここで厚み変動は、機械横方向におけるガス拡散層の層厚の厚み勾配として理解される。ガス拡散層の厚み勾配は、セルスタックの単一セル内の不均一な厚み分布をもたらし、したがって、単一セル内、ひいてはセルスタック内の不均一な圧力分布となる。セルスタック内の他の層の層厚と比較してガス拡散層の層厚が大きいため、ガス拡散層の不均一な厚み分布は特に問題である。不均一な圧力分布は、ガス拡散層の不均一な圧縮をもたらし、それによって接触抵抗、物質輸送、特にセル内の水と反応物の輸送などの特性が不均一になり、安定した動作が確保できなくなる可能性がある。
【0003】
さらに、セルスタックでの使用、したがって数百のガス拡散層(GDL)からなりうる多くの単一セルの連結において、特に線形の厚み勾配の場合、全体として非常に顕著な不均一の厚み分布となり、それによってセルスタックを組み立てることがより困難になり、あるいはもはや不可能にさえなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、可能な限り均一な厚さ分布を有するセルスタックを提供し、均一な厚さ分布を有するセルスタックを製造する方法を画定することである。さらに、本発明の目的は、恒久的に高く安定した出力密度を有する燃料電池または電解セルを画定することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、独立請求項の特徴によって達成される。従属請求項には、本発明の有利な改良および実施形態が含まれる。
【0006】
したがって、これは、複数の単一セルからなるセルスタックを提供することによって達成される。各単一セルは、カソード、アノード、および介在膜を含む膜電極アセンブリと、アノードの露出側、すなわち膜から離れる方向に面するアノードの側に配置されたアノードガス拡散層(以下:AGDL)と、カソードの露出側、すなわち膜から離れる方向に面するカソードの側に配置されたカソードガス拡散層(KGDL)とから構成されている。アノードガス拡散層の代わりに、電解セルによく見られるように、チタンの焼結部品、いわゆるチタン焼結体を設けることもできる。ただし、この場合、少なくとも1つのKGDLが設けられる。
【0007】
KGDLおよびまたAGDL(設けられている場合)の両方はそれぞれ、機械横方向における厚み勾配を有し、AGDLの厚み勾配は第1の厚み勾配であり、KGDLの厚み勾配は第2の厚み勾配である。機械横方向の厚み勾配とは、本発明によれば、対応するガス拡散層(以下:GDL)の層厚が機械横方向において局所的に変化することとして理解される。
【0008】
ここで、機械横方向とは、ロール製品として提供されるGDLの繰り出し方向又はロール方向に対して垂直に延びる方向と理解される。本発明の意味において、ガス拡散層製品は、ロール製品として製造され提供される。これは、GDLの層が、GDLを形成するための分離の前に最初は連続しており、GDLロール製品の幅に沿って列をなして互いに隣接し、また連続して対応する列をなして、ともに一種のカーペットの形態で提供されることを意味する。このカーペットのロール方向又は繰り出し方向は、機械長手方向である。機械横方向は、機械長手方向に対して垂直に延び、したがって、ロール製品の幅と比較されることにもなる。GDLは、このように、機械長手方向及び機械横方向にもわたっており、機械長手方向及び機械横方向に対して垂直に延びる一定の層厚を有している。
【0009】
GDLが機械横方向に観察される場合、この方向の層厚は厚み勾配を持つ。このため、少なくとも観察されたGDLの一部において、機械横方向に沿って層厚が変化していることがわかる。
【0010】
単一セルでは、AGDLの第1の厚み勾配とKGDLの第2の厚み勾配とが互いに逆向きとなるように、AGDLとKGDLとが互いに関して配置されている。このため、この単一セル内の厚み分布が均衡し、あるいは厚み差が好適に相互に打ち消される。したがって、単一セルの層内の圧力分布が均一であり、圧力ピークが回避されるように、圧力差は、単一セル内で低減され、さらには最小化され得る。このことは、さらに、単一セルが高い電力密度を恒久的に提供できるという結果をもたらす。
【0011】
ひとつの代替案によれば、AGDLは、このAGDLの総厚み勾配が最小となるように、2つ以上の単一セルにおいて互いに関して配置される。これは、アノード側のみでセルスタックを観察した場合、その第1の厚み勾配を有するAGDLは、第1の厚み勾配に起因する厚み差が等しくなるように配置されることを意味する。したがって、単一セルの厚み分布が改善されるのではなく、アノード側の全てのAGDLが厚み補償、言い換えれば、第1の厚み勾配の補償に関して特別に整列・配置されている。このようにして、セルスタックは、アノード側で可能な限り均一な厚み変化を有し、これによって、例えばセルスタックの組み立て時の圧力差をアノード側で低減することができ、あるいは防止することもできる。このことは、セルスタックの電力密度の向上にも寄与する。
【0012】
上述の理由により、本発明によれば、2つ以上の単一セルにおいて、KGDLは、これらのKGDLの総厚み勾配が最小になるように互いに関して配置されることが代替的又は付加的に提供される。したがって、セルスタックで使用されるすべてのKGDLは、すべてのKGDLにわたって厚み差が最小化されるように、それぞれの厚み勾配に関して整列される。
【0013】
AGDLとKGDLの両方が、それぞれの合計厚み勾配が最小になるように配置されると、セルスタックの電力密度に特に有利となる。
【0014】
有利な一実施形態によれば、セルスタックの全ての単一セルにおいて、AGDL及びKGDLはそれぞれ、各単一セルのAGDLの第1の厚み勾配及びKGDLの第2の厚み勾配が互いに逆向きとなるように、互いに関して配置されている。このようにして、任意の数の単一セルを1つずつ積み重ねてセルスタックを形成することができ、このとき、単一セルごとの厚み勾配が最小化されているため、セルスタックも厚み変動が最小化され、したがって単一セルの層間の圧力差を低減し、さらに防止することができる。これにより、セルスタックの永久電力密度を向上させることができる。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、AGDLの第1の厚み勾配およびKGDLの第2の厚み勾配は、線形である。これは、両方の厚み勾配が一定の勾配を有することを意味し、GDLの層厚は、このように、少なくともGDLの一部において一貫して減少または増加する。セルスタックの厚み差または厚み変動は、この方法で特に容易に均一化され得るので、セルスタックの圧力差を大幅に低減することができ、これはセルスタックの安定性および恒久的に高い出力密度に寄与する。
【0016】
さらに、有利には、AGDLおよびKGDLはそれぞれ、マイクロポーラス層およびマクロポーラス担体材料からなり、AGDLのマイクロポーラス層はアノードに向けられており、KGDLのマイクロポーラス層はカソードに向けられている。マイクロポーラス層の使用は、特に有利な物質輸送を可能にし、したがって、反応ガス(燃料電池の場合:アノード用の水素およびカソード用の酸素)をアノードに特に有利に供給することができる。さらに、マイクロポーラス層の使用により、触媒コーティング膜とGDLの間の接触抵抗が低減される。
【0017】
マイクロポーラス層は、特にこの場合、マイクロポーラス層の疎水性に影響を与える規定量のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含むことができ、これによって単一セル内に形成または含まれる水の排水作用を制御することができる。炭素質材料、例えば、カーボンブラックまたはグラファイトを含むこともでき、これを介して、マイクロポーラス層の疎水性および親水性を制御することも可能である。特に、紙タイプおよびフリースタイプの材料が担体材料として有利であり、これは、特に平均直径7μmの炭化ポリアクリロニトリル繊維から形成することが可能である。マイクロポーラス層は、担体材料と比較して、著しく滑らかな表面および構造によって区別され、これにより電極(カソードまたはアノード)の非常に良好な接触が可能となり、その結果、電気抵抗が小さくなる。
【0018】
さらなる有利な実施形態は、単一セルのAGDLおよび/またはKGDLが、100μm~300μmの範囲の層厚を有することを提供する。GDLの比較的大きな層厚のために、膜電極アセンブリ(MEA)のさらなる構成要素の層厚に関連して、反応ガス用の非常に良好な流れ場を提供することができ、これにより反応ガスの均一な分配が可能になる。ここで、GDLの層厚は、GDLの全幅にわたり、1MPaの測定圧力で等間隔に測定した10個の測定値の平均値として定義される。
【0019】
担体材料は、フリースタイプおよび紙タイプから選択することが好ましい。
【0020】
膜電極アセンブリは、さらに有利には、エッジング材によって円周に沿って縁取られている。エッジング材料は、ここではキャリアフィルムと接着剤層とから構成でき、これにより、エッジング材料とMEAとからなる複合体の非常に良好なガス密閉性が確保される。さらに、エッジング材は、特にGDLエッジの領域において、MEAをGDL繊維から保護する。GDL繊維は、MEAを突き刺し、その結果電気短絡を引き起こす可能性がある。電気的短絡は、MEAの寿命の低下または完全な故障を引き起こす。
【0021】
燃料電池または電解セルもさらに有利に記述されており、これらは、上記に開示されたようなセルスタックを含んでいる。バランスのとれた厚さの違いによって区別されるセルスタックの使用により、燃料電池または電解セルも均一な厚さを有し、それによって恒久的に高い出力密度を達成することができる。
【0022】
本発明に従って、セルスタックを製造するための方法も同様に説明される。セルスタックは、上述のように設計され、複数の単一セルを有し、各単一セルは、カソード、アノード、及び介在膜を含むMEAと、アノードの露出側に配置され、機械横方向に第1の厚み勾配を有するAGDL又は焼結チタン部品と、カソードの露出側に配置され、機械横方向に第2の厚み勾配を有するKGDLとからなることを特徴とする。この方法は、本発明に係るセルスタックを製造するのに好適である。
【0023】
本発明に従う方法によれば、少なくとも1つの単一セルにおいて、特に全ての単一セルにおいて、単一セルごとのAGDLおよびKGDLは、AGDLの第1の厚み勾配およびKGDLの第2の厚み勾配が互いに逆向きとなるように、それぞれの場合に互いに関して配置されている。このようにして、GDLにおける厚み差または厚み変動を均一化することができるので、本発明によるこのステップを通過した各単一セルは、均一化された均一な厚み分布を有する。このように、均一な層厚分布を有する単一セルは、点や局所的な圧力応力を発生させることなく、1つずつ積層することができる。むしろ、単一セルの積層中に圧力ピークが回避されるため、活性圧力による単一セルの層における損傷が回避される。このようにして製造されたセルスタックは、恒久的に高い出力密度を持つことが特徴である。
【0024】
代替の実施形態によれば、2つ以上の単一セルにおいて、AGDLは、これらのAGDLの全体的な厚み勾配が最小になるように互いに関して配置される。有利には、AGDLは、セルスタックのアノード側のみを観察したときに、AGDLの均一な厚み分布が生じるように、セルスタックを形成するべく単一セルを組み立てる前に整列され、その結果厚みの変動が回避され均一化される。セルスタックにかかる圧力は、含まれるすべての層に均一に作用し、層内の損傷が回避される。
【0025】
代替または追加の実施形態によれば、上記の理由から、2つ以上の単一セルにおいて、KGDLは、これらのカソードガス拡散層の全体の厚み勾配が最小となるように、互いに関して配置される。
【0026】
特に、カソード側とアノード側とでそれぞれのGDLを厚さの差が最小になるように互いに整列すると、特に均一な層配置を有するセルスタックが得られ、該セルスタックは、層の表面全体に均一に分布する作用圧力に対して安定であり、その結果永続的に特に高い電力密度を得ることができる。
【0027】
ガス拡散層(KGDLおよびAGDL)は、有利には、ロール製品として提供され、展開後に個別化してGDLを形成し、ガス拡散層の分離のためにGDLがロールから機械横方向に連続して取り除かれ、連続して取り除かれたGDLは、各第2のGDLが機械横方向に対して180°回転されるように用いられ、非回転のGDLおよび回転済みGDLは、交互にAGDLおよびKGDLとして使用される。換言すれば、ロール製品の非回転面から、例えば、切り出しや打ち抜きなどの分離処理によってGDLを取り出すということである。ここでは、個別化される長さのGDLが露出する程度に少なくともロール製品をロール解除するような手順が使用される。このようにして、第1のGDLが、第2の長手方向エッジの延長方向における、ロールされていないロール製品の長手方向エッジから始まり、ロールの幅を通じて個別化される。続いて、第2の長手方向エッジの方向に第2のGDLが個別化される。この個別化は、第2の長手方向エッジに到達するまで続けられる。次の列は、再び第1の長手方向エッジから第2の長手方向エッジに向かって開始され、さらにGDLが個別化されるといった具合である。
【0028】
上記の実施形態では、GDLの分離後、原則的に2つの可能性がある。
【0029】
第1の可能性によれば、それぞれの個別化されたGDLは、互いに1つずつ積み重ねられ、例えば、機械横方向の第1の列からの第4のGDLが、機械横方向の第1の列からの第3のGDLの上に、第3のGDLが機械横方向の第1の列からの第2のGDLの上に、最下位が機械横方向の第1の列からの第1のGDLの上に、積み上げられる。GDLスタックの結果、各第2のGDLは、スタックにおいて機械横方向に対して180°回転している。
【0030】
第2の可能性によれば、各第2のGDLの機械横方向に対する180°の回転は、最初に、単一セルを形成するための層の積層中に行われてもよい。
【0031】
いずれの場合も、GDLロールから連続して取り出したGDLを、2つ目以降は180°回転させ、非回転GDLと回転GDLとを交互に同一セル内でAGDLとKGDLとして使用することが重要である。
【0032】
上記実施形態を例に基づいて説明する。GDLロールの全幅にわたって4つのGDLを連続して個別化することができ、GDLロールが機械横方向に直線的な厚み勾配を有すると仮定すると、機械横方向に連続して個別化した4つのGDLは、それぞれ同じ一定の勾配を有することとなる。この場合、これらは、第1のGDL、第2のGDL、第3のGDL、第4のGDLである。第2のGDLと第4のGDLは、機械横方向に180°回転している。これら4つのGDLは、例えば、1つずつ重ねられて、さらなる処理を施される。第4のGDLは第3のGDLの上に、第3のGDLは第2のGDLの上に、第2のGDLは第1のGDLの上に重ねられる。このとき、2つ目と4つ目のGDLが機械横方向に180°回転することで、4つのGDLの厚み勾配が均一になるように積層される。この4つのGDLをセルスタックで使用すると、次のようなケースがある。
【0033】
第一のケースでは、第1の単一セルに対して、第4のGDLを例えばAGDLとして、第3のGDLをKGDLとして使用することができる。このようにして、GDLの層厚の傾斜が同じであるために、GDLの層厚の差が最小化され、かつ、相殺され得る、単一セルを得ることができる。
【0034】
第2のケースでは、例えば、4つの単一セルのそれぞれのアノード側で、4つのGDLをすべてAGDLとして使用することができる。このとき、2つ目と4つ目のGDLが機械横方向に180°回転するため、アノード側のセルスタックでも厚みの差が均一になる。つまり、厚み勾配が打ち消される。
【0035】
第3のケースでは、例えば、4つの単一セルのそれぞれのアノード側で、4つのGDLすべてをKGDLとして使用することができる。第2、第4のGDLが機械横方向に180度回転するため、カソード側のセルスタックでも厚み差が均一になる。つまり、厚み勾配が打ち消される。
【0036】
第4のケースでは、アノード側とカソード側の2つの単一セルに、それぞれ2つのGDLを重ね合わせて使用することができる。したがって、アノード側とカソード側にそれぞれ1つずつGDLが配置された非回転の状態と、アノード側とカソード側とにそれぞれ1つずつGDLが機械方向に180°回転した状態で、アノード側とカソード側とでGDLの厚み勾配が相殺され、厚みのばらつきが少なく、高い出力密度が持続的に得られるセルスタックとなるのである。また、セルスタックに作用する圧力は全層に均一に分散され、圧力のピークが生じない。
【0037】
上記の例は、任意の数の個別化されたGDLについて実施することができる。ここで、第2の長手方向エッジまで機械横方向に個別化された、各ケースの最後のGDLは、第1の長手方向エッジから始まる機械横方向に個別化される、各ケースの第1のGDLと、ロールの長手方向で新しい列において隣接する。GDLの横方向への回転は、GDLをロール製品から分離した後、したがって可能な限りの積層の前に直接行われるか、またはセルスタックを形成するために個々の層を積み重ねる間に最初に行われるかのいずれかである。
【0038】
さらなる有利な実施形態は、ガス拡散層がロール製品として提供され、個別化してGDLを形成し、GDLを個別化するために、GDLがロールから機械横方向に連続して除去され、連続して除去されたGDLがそれぞれ別のもうひとつの上に1つずつ積層され、もうひとつの上に1つずつ積層されるかまたは積層されたGDLの第2のものの各々が、機械横方向に対して180°回転され、もうひとつのもの上に1つずつ積層されたGDLが、もうひとつのものの上に1つずつ配置されたセルスタックの単一セルのAGDLまたはKGDLとして使用されることを特徴とする。既に上述したように、機械横方向におけるGDLの回転は、ロール製品からGDLを分離した後に、したがって可能な限り積層の前に直接行われるか、又はセルスタックを形成するために個々の層の積層中の最初にも行われるかのいずれかである。両方の実施形態において、セルスタックのアノード側(AGDLとしてのGDLの使用)またはセルスタックのカソード側(KGDLとしてのGDLの使用)のいずれかで、個別化されたGDLおよびその積層(各第2のGDLの機械横方向への180°回転を含む)を使用すると、セルスタックの厚さの差の均一化が達成されて、圧力ピークが低減または防止することが可能になる。
【0039】
有利な一実施形態によれば、GDLはロール製品として提供され、個別化してGDLを形成し、GDLを個別化するために、GDLはロールから機械横方向に連続して除去され、連続して除去されたGDLはそれぞれ、もうひとつのものの上に1つずつ積み重ねられる。しかし、この場合、GDLはランダムジェネレータによって確定され、機械横方向に対して180°回転され、回転と非回転が同じ確率となるようにされている。これにより、AGDLとKGDLをランダムに回転させることができるため、統計的に見て、第1の厚み勾配と第2の厚み勾配が相殺される、あるいは厚み差が小さくなるように配置することができる。このようにして、厚み差の少ないセルスタックを得ることができる。層が平坦に重なっているため、層内で局所的に圧力ピークが発生しない。セルスタック内のセルの数は有限であるため、実際の回転数と非回転数は互いに不均一であり、45%~55%以内に収めうる。GDLの回転は、例えば、ロール製品からのGDLの分離に続く積層中に実行でき、また、セルスタックのための層の積層中の最初に実行されてもよい。
【0040】
本発明の更なる詳細、利点、及び特徴は、図面に基づいて例示的な実施形態の以下の説明からもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、GDLロール製品を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2C図2Cは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2D図2Dは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2E図2Eは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2F図2Fは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図2G図2Gは、第1の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3A図3Aは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3B図3Bは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3C図3Cは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3D図3Dは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3E図3Eは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3F図3Fは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3G図3Gは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3H図3Hは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3I図3Iは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3J図3Jは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図3K図3Kは、第2の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図4A図4Aは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4B図4Bは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4C図4Cは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4D図4Dは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4E図4Eは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4F図4Fは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図4G図4Gは、第3の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5A図5Aは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5B図5Bは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5C図5Cは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5D図5Dは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5E図5Eは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5F図5Fは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図5G図5Gは、第4の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6A図6Aは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6B図6Bは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6C図6Cは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6D図6Dは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6E図6Eは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6F図6Fは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図6G図6Gは、第5の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7A図7Aは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7B図7Bは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7C図7Cは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7D図7Dは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7E図7Eは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7F図7Fは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図7G図7Gは、第6の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8A図8Aは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8B図8Bは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8C図8Cは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8D図8Dは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8E図8Eは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8F図8Fは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図8G図8Gは、第7の実施形態によるセルスタックを製造する方法を示す図である。
図9A図9Aは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9B図9Bは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9C図9Cは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9D図9Dは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9E図9Eは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9F図9Fは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図9G図9Gは、第8の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10A図10Aは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10B図10Bは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10C図10Cは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10D図10Dは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10E図10Eは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図10F図10Fは、第9の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11A図11Aは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11B図11Bは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11C図11Cは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11D図11Dは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11E図11Eは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図11F図11Fは、第10実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12A図12Aは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12B図12Bは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12C図12Cは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12D図12Dは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12E図12Eは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図12F図12Fは、第11の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図13A図13Aは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図13B図13Bは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図13C図13Cは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図13D図13Dは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図13E図13Eは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図13F図13Fは、第12の実施形態に係るセルスタックの製造方法を示す図である。
図14A図14Aは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図14B図14Bは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図14C図14Cは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図14D図14Dは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図14E図14Eは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図14F図14Fは、第13の実施形態によるセルスタックの製造方法を示す図である。
図15図15は、各々が400個のGDLを有する500個のセルスタックにわたる線形勾配を有するGDLのための統計的回転の結果のシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図では、本発明の本質的な特徴のみが示されている。他の特徴は、明確化のために省略されている。さらに、同一の特徴/構成要素には、同一の参照符号を付す。
【0043】
図1は、GDLロール製品1を詳細に示しており、これは、GDLの材料が特定の幅および長さを有するように製造され、ロール1を形成するために巻き上げられていることを意味する。この例示的な実施形態では、例えば、機械長手方向xで見た列R1、R2ごとの機械横方向yにおいて、4つのGDLがそれぞれのケースで互いに隣接して個別化できることが示されている。GDLロール1は、第1の長手方向エッジ1aと第2の長手方向エッジ1bとを有する。
【0044】
図2Aは、ロール1から繰り出されたGDL材料を示す図である。GDL材料、したがって個別化される全てのGDL#1、#2、#3、#4が、層厚方向zに厚み勾配を有することが分かる。本実施形態では、線形厚み勾配、つまり層厚方向zの層厚変化が一定の傾きによって、機械横方向y全体にわたって区別される。したがって、機械横方向yに配列された全てのGDL#1~#4の傾きは同じであり、機械横方向yの層厚減少量も同じである。
【0045】
ここで、図2Bに示すように、方法ステップ100においてGDL材料を個別化して4つのGDL#1~#4を形成すると、こうして4つの別々のGDL#1~#4が得られ、#1が絶対的に最大の層厚を有し、#4が絶対的に最も小さい層厚を有するが、それぞれの厚み勾配、すなわち層厚が機械横方向yに減少する勾配は、4つのGDL#1~#4すべてにおいて同一である。図2Bは、この場合の個別化されたGDL#1~#4を、機械横方向yに沿った断面図として示したものである。
【0046】
図2Cは、個別化されたGDL#1~#4を示す上面図である。GDL#1~#4は、機械長手方向xと機械横方向yとにまたがって示されている。方法ステップ200において、第2のGDL#2及び第4のGDL#4は、機械横方向yに180°回転される。この結果、図2D及び2EのGDL#1~#4の図が得られる。図2DはGDL#1~#4の側面図、すなわち図2Bと同様の機械横方向yにおける断面図を示し、図2E図2Cと同様のGDL#1~#4の上面図を示している。
【0047】
特に図2Dにおいて、回転したGDL#2、#4と回転していないGDL#1、#3の層厚方向zにどのような勾配プロファイルがあるかを観察することができる。
【0048】
ここで図2D及び図2Eの非回転GDL#1及び#3と回転GDL#2及び#4とを用いて、セルスタック2を、#1、#2、#3、#4の順序で製造すると、#1又は#3に相当するAGDL7と、#2又は#4に相当するKGDL8との間で、アノード4、カソード6及び介在膜5からなるMEA3を組み立てることができる。それぞれの層は、ここでは機械横方向yに1層ずつ積層されている。層厚方向zで見ると、図2Fのような配置となる。GDL#1~#4は、機械横方向yに連続して互いに積層される。2つの単一セル9、10が示されているが、これを積層してセルスタック2を形成することができる。
【0049】
図2Fから明らかなように、第2のGDL#2および第4のGDL#4の180°回転は、単一セル9、10への組立てに有利であることがわかる。つまり、単一セル9、10を形成する組み立て後に、GDL#1~#4の厚み差が打ち消される。このため、単一セル9、10の組み立てによってセルスタック2においても厚み差が打ち消される結果が得られる。
【0050】
すなわち、各単一セル9、10において、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とが互いに逆となり相殺されるように、AGDL7とKGDL8とが互いに関して配置されている。
【0051】
そのため、セルスタック2のすべての層で均一な厚み分布と圧力分布が得られ、セルスタック2の電力密度が恒常的に非常に高くなる。
【0052】
図2Gは、図2B及び図2CのGDL#1~#4、従って非回転状態のGDLを組み立てて、2つの単一セル9、10を有するセルスタック2aを形成した場合を示す。ここで、単一セル9、10又はセルスタック2aにおいて厚み差が、相殺又は最小化されていないことが分かる。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配に起因する厚み変動が大きくなっている。
【0053】
そのため、セルスタック2aの全層に均一な圧力分布が得られず、セルスタック2aの電力密度が低下してしまう。
【0054】
図3は、第2の実施形態に従うセルスタックの製造方法を説明するための図である。既に図2に示したGDLロール製品と同様に、GDLロール製品1も機械横方向yに厚み勾配を有し、GDLロール製品1の層厚は第1の長手方向エッジ1aから第2の長手方向エッジ1bにかけて一定の勾配で連続的に変化している。
【0055】
図2とは対照的に、1列のR1、R2に対して、いずれの場合も3つのGDL#1、#2、#3、および#4、#5、#6が個別化されている。図3B及び図3Cはそれぞれ、第1列R1の3つの個別化されたGDL#1~#3を側面図(機械横方向yの断面)及び上面図(機械長手方向x及び機械横方向yにまたがるそれぞれのGDLの上面図)で示したものである。図3D及び図3Fは、それぞれ、第2列R2の3つの個別化されたGDL#4~#6を、側面図(機械横方向yの断面)及び上面図(機械長手方向x及び機械横方向yにまたがるそれぞれのGDLの上面図)で示したものである。
【0056】
方法ステップ200において、再び、各第2のGDL(#2、#4、#6)は、機械横方向yに180°回転される。図3F、3G、3H、および3Iに示すようなGDL#1~#6の図は、このようにして得られる。
【0057】
図3Jは、3つの単一セル9、10、11を組み立てた後のセルスタック2を示し、各単一セルは、アノード4、カソード6、および介在膜5を有する膜電極アセンブリ3、ならびにアノード側のAGL7およびカソード側のKGDL8から構成されている。単一セル9は、AGDL7としてGDL#1(回転していない)を有し、KGDL8としてGDL#2(回転している)を有する。単一セル10は、AGDL7としてGDL#3(回転していない)、KGDL8としてGDL#4(回転している)を有する。単一セル11は、AGDL7としてGDL#5(回転していない)、KGDL8としてGDL#6(回転している)を有する。
【0058】
このように、各単一セル9~11は、それぞれのケースにおいて、単一セルのAGDLの第1の厚み勾配とKGDLの第2の厚み勾配とが反対方向となり、単一セルごとの厚み差が相殺されるように、機械横方向yに180°回転されたGDLを有している。
【0059】
また、図3Jから、機械横方向の厚み差または厚み変動もセルスタック2内で相殺されるため、セルスタック2の全層に同じ圧力が作用し、圧力ピークを回避できることが分かる。従って、セルスタック2のパワー密度も恒常的に高くなる。
【0060】
図3Kは、図3B、3C、3D、3EのGDL#1~#6、すなわち非回転状態のGDLを組み立てて、3つの単一セル9、10、11を有するセルスタック2aを形成した場合である。ここで、単一セル9、10、11やセルスタック2aにおいて、厚み差が打ち消されたり、最小化されたりすることはないことが判る。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とによる厚みのばらつきが大きくなっている。
【0061】
そのため、セルスタック2aの全層にわたって均一な圧力分布が得られず、セルスタック2aの電力密度が低下してしまう。
【0062】
図4は、第3の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0063】
本実施形態では、GDLロール製品1は、機械横方向yに凹んだ形状を有している。したがって、機械横方向に沿って、GDLロール製品1は、一方の長手方向エッジ1aから他方の長手方向エッジ1bまで、反対方向に延びる2つの厚み勾配を有する。第1のGDL#1から第2のGDL#2にかけては、層厚方向zに勾配が減少し、第3のGDL#3から第4のGDL#4にかけては、層厚方向zに勾配が増加する。ここで、このGDLロール製品1を、1列あたり4つのGDL#1、#2、#3、#4に個別化すると、その切断パターンは、図4Bおよび4Cに示すようになる。図4B図2Bおよび3Bと同様に、機械横方向yの断面図、図4C図2Cおよび3Cと同様に機械長手方向xおよび機械横方向yにわたるGDL#1~#4の平面図を示す。
【0064】
図2及び図3と同様に、GDL#2及びGDL#4も方法ステップ200において機械横方向に180°回転され、それにより図4D及び図4Eに示すようにGDL#1~#4の切断パターンが生じる。
【0065】
ここで、GDL#1~#4をAGDL7及びKGDL8として単一セル9、10に連続して使用し、すなわちGDL#1を単一セル9のAGDL7、GDL#2を単一セル9のKGDL8、GDL#3を単一セル10のAGDL7、GDL#4を単一セル10のKGDL8にすると、単一セル9、10への組み立て時に、図4FのようにGDL#1~#4内に存在する厚さの差異又は厚さのバラツキが打ち消されることになる。単一セル9、10における厚みの均一化により、単一セル9、10からなるセルスタック2も全体的に厚み差が均一化されることになる。
【0066】
図4Gは、対照的に、GDL#1~#4のいずれも180°回転させなかった場合、単一セル9および10において、厚さの均一化は生じないことを示している。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配が互いに強化され(セルスタック2a参照)、単一セルの層内で大きな圧力不均一が広がっていることがわかる。
【0067】
図5は、第4の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0068】
本実施形態では、GDLロール製品1は、機械横方向yに凸の形状を有している。機械横方向に沿って、GDLロール製品1は、このように、一方の長手方向エッジ1aから他方の長手方向エッジ1bまで、図4とは逆に層厚方向zに増加する傾斜で第1のGDL#1から第2のGDL#2まで、および層厚方向zに減少する傾斜で第3のGDL#3から第4のGDL#4まで逆方向に延びる二つの厚み勾配を有している。このGDLロール製品1を、1列あたり4つのGDL#1、#2、#3、#4に個別化すると、その切断パターンは図5Bおよび5Cに示すようになる。ここで図5Bは、図2B図3B図4Bと同様に、機械横方向yの断面図、図5Cは、図2C図3C図4Cと同様に、機械長手方向xおよび機械横方向yにまたがるGDL#1~#4の上面図を示す。
【0069】
図2及び図4と同様に、GDL#2及びGDL#4も方法ステップ200において機械横方向に180°回転され、それにより図5D及び図5Eに示すようなGDL#1~#4の切断パターンが結果として得られる。
【0070】
ここで、単一セル9、10に対して、GDL#1~#4をAGDL7およびKGDL8として連続して使用し、すなわちGDL#1を単一セル9のAGDL7、GDL#2を単一セル9のKGDL8、およびGDL#3を単一セル10のAGDL7、GDL#4を単一セル10のKGDL8にすると、単一セル9、10を形成するべく組み立てる際、図5FのようにGDL#1~#4において存在した厚み差または厚み変動は打ち消されることになる。単一セル9、10における厚みの均一化により、単一セル9、10からなるセルスタック2も全体的に厚み差が均一化されることになる。
【0071】
これに対し、図5Gは、GDL#1~#4のいずれも180°回転させなかった場合(セルスタック2a参照)、単一セル9、10においても厚みの均一化が起こらないことを示している。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とが互いに補強し合うため、単一セル9、10の層内では大きな圧力不均一性が支配的になっていることがわかる。
【0072】
図6は、第5の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0073】
本実施形態では、GDLロール製品1は、機械横方向yに波状形状を有する。機械横方向yに沿って、GDLロール製品1は、このように、一方の長手方向エッジ1aから他方の長手方向エッジ1bまで3つの厚み勾配を有し、第1の厚み勾配と第3の厚み勾配とは同じ方向に延びて増加し、間にある厚み勾配は減少する方向に延びている。
【0074】
また、第1及び第4のGDL#1、#4は層厚方向zに増加する傾斜を有し、第2及び第3のGDL#2、#3はそれぞれ層厚方向zに増加及び減少する1つの傾斜を有している。このGDLロール製品1を、1列あたり4つのGDL#1、#2、#3、#4を形成するように個別化すると、その切断パターンは、図6Bおよび6Cに示すようになる。ここで図6B図2B、3B、4B、および5Bと同様であり、機械横方向yの断面図を示し、図6Cは、図2C、3C、4C、および5Cと同様に、機械長手方向xおよび機械横方向yにまたがるGDL#1~#4の上面図を示す。
【0075】
先の図と同様に、GDL#2およびGDL#4は、方法ステップ200において機械横方向に180°回転され、それにより図6Dおよび図6Eに示すようなGDL#1~#4の切断パターンがもたらされる。
【0076】
ここで、単一セル9、10に対してGDL#1~#4をAGDL7、KGDL8として連続して使用し、単一セル9のAGDL7としてGDL#1、単一セル9のKGDL8としてGDL#2、単一セル10のAGDL7としてGDL#3、単一セル10のKGDL8としてGDL#4となるように、これを組み立ててセルスタック2を形成する。これらを組み立てる際、図6Fに示すように、GDL#1~#4に存在する厚み差や厚みバラツキが相殺され、単一セル9、セルスタック2を形成するために、図6Fに示すように、GDL#1~#4に存在する厚み差または厚み変動は相殺されるが、単一セル9、10内でAGDL7とKGDL8との厚み差の完全な均一化は生じない。
【0077】
これに対し、図6Gは、GDL#1~#4のいずれも180°回転させなかった場合、単一セル9、10から組み立てられたセルスタック2aにおいて厚みの均一化は生じないことを示している。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とが互いに補強し合うため、単一セル9、10の層内では大きな圧力不均一性が支配的になっている。
【0078】
図7は、第6の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0079】
本実施形態では、GDLロール製品1は、機械横方向yに第1長手方向エッジ1aから第2長手方向エッジ1bに向かって厚み勾配が増加している。具体的には、第1及び第2のGDL#1、#2にかけて機械横方向yに増加する傾斜が見られ、第3及び第4のGDL#3、#4は厚み勾配のない一定の層厚を有している。
【0080】
このGDLロール製品1を、1列あたり4つのGDL#1、#2、#3、#4に個別化すると、その切断パターンは、図7Bおよび7Cに示すようになる。図7B図2B、3B、4B、5B、および6Bと同様に、機械横方向yの断面図、図7C図2C、3C、4C、5C、および6Cと同様に、機械長手方向xおよび機械横方向yにまたがるGDL#1-#4の上面図を示している。
【0081】
先の図と同様に、GDL#2およびGDL#4は、方法ステップ200において機械横方向yに180°回転され、それにより図7Dおよび図7Eに示すようなGDL#1~#4の切断パターンがもたらされる。
【0082】
ここで、セルスタック2を形成するべく組み立てられる単一セル9、10に対して、単一セル9のAGDL7としてGDL#1、単一セル9のKGDL8としてGDL#2、単一セル10のAGDL7としてGDL#3、単一セル10のKGDL8としてGDL#4となるように、AGDL7およびKGDL8としてGDL#1~#4を連続して使用し、単一セル9へ組み立て際、図7Fに示すように、GDL#1~#4に存在する厚み差または厚み変動が単一セル9、10内で相殺され、それぞれのAGDL7とそれぞれのKGDL8との厚み差がセルスタック2内で完全に均一化される結果となる。また、単一セル10は、GDL#3、#4の厚さが均一であるため、全体として均一な厚さ分布となり、セルスタックの均一性にも寄与している。
【0083】
これに対し、図7Gは、GDL#1~#4のいずれも180°回転させなかった場合、単一セル9において厚みの均一化は生じないことを示している。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とが互いに補強し合うため、単一セル9の層内では大きな圧力不均一が支配的になっていることがわかる。単一セル10は、GDL#3および#4の厚さが均一であるため、全体として均一な厚さ分布を有し、よって、セルスタックの不均一性には寄与しない。
【0084】
図8は、第7の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0085】
本実施形態では、GDLロール製品1は、第1の長手方向エッジ1から第2長手方向エッジ1bに向かって機械横方向yに減少する厚み勾配を有する。具体的には、第1及び第2のGDL#1、#2にかけて減少勾配が見られ、第3及び第4のGDL#3、#4は厚み勾配のない一定の小さい層厚を有している。
【0086】
このGDLロール製品1を、1列あたり4つのGDL#1、#2、#3、#4に個別化すると、その切断パターンは、図8Bおよび8Cに示すようになる。ここで図8Bは、図2B、3B、4B、5B、6B、および7Bと同様に、機械横方向yの断面図を示し、図8Cは、図2C、3C、4C、5C、6C、および7Cと同様に、機械長手方向xおよび機械横方向yにまたがるGDL#1~#4の上面図を示している。
【0087】
先の図と同様に、GDL#2およびGDL#4は、方法ステップ200において機械横方向に180°回転され、それにより図8Dおよび図8Eに示すようなGDL#1~#4の切断パターンがもたらされる。
【0088】
ここで、セルスタック2に組込まれる単一セル9、10に対して、単一セル9のAGDL7としてGDL#1、単一セル9のKGDL8としてGDL#2、単一セル10のAGDL7としてGDL#3、単一セル10のKGDL8としてGDL#4のように、AGDL7およびKGDL8としてGDL#1~#4を連続して使用すると、単一セル9へ組み立てる際、図8Fに示すように、GDL#1~#4に存在する厚み差または厚み変動は、単一セル9、10において相殺され、セルスタック2内では、それぞれのAGDL7とそれぞれのKGDL8の間で厚み差が完全に均一化される結果となる。また、単一セル10は、GDL#3、#4の厚さが均一であるため、全体として均一な厚さ分布となり、セルスタックの均一性にも寄与している。
【0089】
図8Gは、GDL#1~#4のいずれも180°回転させなかった場合、単一セル9において厚みの均一化が生じないことを示している。むしろ、AGDL7の第1の厚み勾配とKGDL8の第2の厚み勾配とが互いに補強し合うため、単一セル9の層内では大きな圧力不均一が支配的となる。単一セル10は、GDL#3、#4の厚さが均一であるため、全体として均一な厚さ分布を有し、したがって、セルスタック2aの不均一性にも寄与しない。
【0090】
図9は、第8の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0091】
本実施形態は、図2のものと同様であるが、GDL#1~#4を形成するために個別化されたGDLが、一例として、アノード側にのみ、すなわち専らAGDL7として使用されている点で異なっている。したがって、GDL#1は第1の単一セル9のAGDL7として、GDL#2は第2の単一セル10のAGDL7として、GDL#3は第3の単一セル11のAGDL7として、GDL#4は第4の単一セル12のAGDL7として使用される。
【0092】
機械横方向yにおける第2及び第4のGDL#2、#4の回転により、図9Fに示すように、セルスタック2の組み立て後(簡略化のためKGDL8は省略されている)、AGDL7の対応する整列により、厚さ差又は厚さ変動の均一化がアノード側のセルスタック2全体にわたって達成される。このようにして、全体的な厚み勾配が低減されるか、あるいは均一化される。AGDL7は、それらの厚み勾配が相殺されるようにセルスタック2に配置され、それによって、非常に均一な圧力分布がセルスタック2の全ての層にわたって達成され、セルスタック2は、恒久的に高い出力密度によって区別される。
【0093】
これに対して、セルスタック2aでは、全層にわたって均一な圧力分布が得られない(図9G参照)。なお、この場合、第2及び第4のGDL#2、#4は、機械横方向yに回転されない。
【0094】
図10は、第9の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0095】
本実施形態は、図4(GDLロール製品1の層厚方向zの凹形状)と同様であるが、GDL#1~#4を形成するために個別化したGDLをアノード側にのみ、すなわち専らAGDL7として例示的に使用する点で異なっている。したがって、第1の単一セル9、第2の単一セル10、第3の単一セル11、および第4の単一セル12では、AGDL7としてGDL#1が使用される。
【0096】
機械横方向yにおける第2及び第4のGDL#2、#4の回転により、図10Fに示すように、セルスタック2の組み立て後(簡略化のためにKGDL8は省略されている)、AGDL7の対応する整列によって、厚み差又は厚み変動の著しい減少が、アノード側のセルスタック2の全体にわたって達成される。AGDL7は、このように、それらの厚み勾配が全体として減少するようにセルスタック2に配置され、その結果厚さ変動が減少し、それによって、非常に均一な圧力分布がセルスタック2の全層にわたって達成され、セルスタック2は永久に高いパワー密度によって区別される。
【0097】
図11は、第10の実施形態に従うセルスタックの製造方法を説明するための図である。
【0098】
本実施形態は、図5(GDLロール製品1の層厚方向zに凸の構成)と同様であるが、GDL#1~#4を形成するよう個別化したGDLをアノード側にのみ、すなわち専らAGDL7として例示的に使用する点で相違している。したがって、第1の単一セル9、第2の単一セル10、第3の単一セル11、および第4の単一セル12では、AGDL7としてGDL#1が使用される。
【0099】
図11Fに示されるように、機械横方向yにおける第2及び第4のGDL#2、#4の回転に起因して、セルスタック2の組み立て後(KGDL8は簡略化のために省略されている)、AGDL7の対応する整列によって、厚み差又は厚み変動の低減が、アノード側のセルスタック2の全体にわたって達成される。AGDL7は、このように、その厚み変動が低減されるようにセルスタック2に配置され、それによって、セルスタック2の全層にわたって非常に均一な圧力分布が達成され、セルスタック2は、恒久的に高い出力密度によって区別される。
【0100】
図12は、第11の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0101】
本実施形態は、図6(波形)のものと同様であるが、GDL#1~#4を形成するよう個別化されたGDLが、一例としてアノード側のみに使用され、すなわち専らAGDL7として使用される点で相違する。したがって、第1の単一セル9、第2の単一セル10、第3の単一セル11、第4の単一セル12では、GDL#1がAGDL7として使用される。
【0102】
機械横方向yにおける第2及び第4GDL#2、#4の回転により、セルスタック2の組み立て後(簡略化のためKGDL8は省略されている)、図9Fに示すように、AGDL7の対応する整列により、アノード側のセルスタック2の全体にわたって厚み差又は厚み変動の均一化が達成される。AGDL7は、このように、それらの厚み勾配が相殺されるようにセルスタック2に配置され、それによって、非常に均一な圧力分布がセルスタック2の全ての層にわたって達成され、セルスタック2は、永久に高い電力密度によって区別される。
【0103】
図13は、第12の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0104】
本実施形態は、図7(第1及び第2のGDL#1、#2の層厚を増加させ、第3及び第4のGDL#3、#4の層厚を一定にする)のものと同様であるが、一例としてGDL#1~#4を形成するよう個別化したGDLがアノード側にのみ、すなわち専らAGDL7として用いられる点で相違している。したがって、第1の単一セル9、第2の単一セル10、第3の単一セル11、および第4の単一セル12では、GDL#1がAGDL7として使用される。
【0105】
図13Fに示すように、機械横方向yにおける第2及び第4GDL#2、#4の回転に起因して、セルスタック2の組み立て後(KGDL8は簡略化のために省略されている)、AGDL7の対応する整列によって、厚さ差又は厚さ変動の低減が、アノード側のセルスタック2全体にわたって達成される。AGDL7は、このように、その厚み変動が低減されるようにセルスタック2に配置され、それによって、セルスタック2の全層にわたって非常に均一な圧力分布が達成され、セルスタック2は、恒久的に高い出力密度によって区別される。
【0106】
図14は、第13の実施形態に従うセルスタックの製造方法を示す図である。
【0107】
本実施形態は、図8のもの(第1及び第2のGDL#1、#2の層厚を減少させ、第3及び第4のGDL#3、#4の層厚を一定にする)と同様であるが、一例としてGDL#1~#4を形成するよう個別化したGDLはアノード側にのみ、すなわち専らAGDL7として使用する点で相違している。したがって、GDL#1は、第1の単一セル9、第2の単一セル10、第3の単一セル11、および第4の単一セル12において、AGDL7として使用される。
【0108】
機械横方向yにおける第2及び第4GDL#2、#4の回転により、セルスタック2の組み立て後(KGDL8は簡略化のために省略される)、図14Fに示されるように、AGDL7の対応する整列によって、厚み差又は厚み変動の低減は、アノード側のセルスタック2全体にわたって達成される。AGDL7は、このように、その厚み変動が低減されるようにセルスタック2に配置され、それによって、セルスタック2の全層にわたって非常に均一な圧力分布が達成され、セルスタック2は、永久に高い出力密度によって区別される。
【0109】
図15は、第14の実施形態によるGDLの統計的回転の結果を示す図である。シミュレーションの基礎として、ここでは、線形厚み勾配を有する400個のGDLが使用された。シミュレーションは、500個のセルスタックについて繰り返された。96.2%(481個)のケース、すなわち20個以下のGDLペア、言い換えれば40個のGDL、言い換えればGDL総数の10%以下のGDLにおいて、その厚み勾配は均一化されていなかった。このように、GDLの統計的な回転または非回転は、95%以上のケースで、セルスタックの全体的な厚み不均一性を90%以上減少させる結果となった。
【0110】
本発明の上記説明に加えて、その補足的な開示のために、図1図15をここに明示的に参照するものである。
【符号の説明】
【0111】
1 GDLロール製品
1a GDLロール製品の第1の長手方向エッジ
1b GDLロール製品の第2の長手方向エッジ
2 セルスタック
2a セルスタック
3 膜電極アセンブリ
4 アノード
5 膜
6 カソード
7 AGDL
8 KGDL
9 単一セル
10 単一セル
11 単一セル
12 単一セル
#1 第1のGDL
#2 第2のGDL
#3 第3のGDL
#4 第4のGDL
R1 GDL列
R2 GDL列
x 機械長手方向
y 機械横方向
z 層厚方向
図1
図2a-e】
図2f-g】
図3a-i】
図3j-k】
図4a-e】
図4f-g】
図5a-e】
図5f-g】
図6a-e】
図6f-g】
図7a-e】
図7f-g】
図8a-e】
図8f-g】
図9a-e】
図9f-g】
図10a-e】
図10f
図11a-e】
図11f
図12a-e】
図12f
図13a-e】
図13f
図14a-e】
図14f
図15
【国際調査報告】