(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-16
(54)【発明の名称】質量分析イオンファンネル
(51)【国際特許分類】
H01J 49/06 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
H01J49/06 600
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575176
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-06
(86)【国際出願番号】 EP2021064356
(87)【国際公開番号】W WO2021249790
(87)【国際公開日】2021-12-16
(32)【優先日】2020-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505037981
【氏名又は名称】マイクロサイク システムズ パブリック リミテッド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドワード クリクトン
(57)【要約】
プリント回路基板から形成され、少なくとも3つの面から製造されたイオンファンネルを記載する。一態様では、面は縁から縁まで配置され、イオンを縁から遠ざかるようにバイアスするため設けられた近接する一式のガードレールである。別の態様では、ファンネル内からのガスの排出を容易にするために、回路基板内にスロットが設けられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンファンネルであって、
複数の個々の面であって、それぞれの面は、プリント回路基板から形成され、前記面は、底部と頂点を有する錐体構造を形成するために互いに対して縁から縁まで配置されていることと、
前記錐体構造の前記底部で画定された前記イオンファンネルの入口と、
前記錐体構造の前記頂点で画定された前記イオンファンネルからの出口とを備え、
前記ファンネルは、前記入口と前記出口の間の前記錐体構造内のイオン経路を画定するように構成され、
それぞれの前記複数の面は、各内面上に画定された複数の分離および区別される電極トラック有し、
前記複数の電極トラックは、イオン経路に対して実質的に横断して配置され、および底部から頂点まで延びており
隣接する電極トラックは、ラジオ周波数(RF)、およびDC電圧の両方に動作可能に結合し、RFイオンの拘束に影響を与えてイオンビームを集束させ、ファンネルの出口に指向し、
前記ファンネルは、DCバイアスされたそれぞれの前記面の縁に設けたガードレールをさらに備え、
前記ガードレールは、イオンを前記面の前記縁から遠ざかるように動作可能にバイアスするように構成され、
前記ガードレールは、前記錐体構造の前記底部から前記頂点まで延びていること
を特徴とするイオンファンネル。
【請求項2】
前記複数の面は、前記イオンビームが動作可能に移動する包囲された容積を画定するために互いに縁から縁まで配置される請求項1に記載のファンネル。
【請求項3】
前記複数の面は、第1の三角錐台面上の前記電極トラックのそれぞれが、第2の三角錐台面上の対応する電極トラックを有するように互いに対して配置される請求項1または2に記載のファンネル。
【請求項4】
それぞれの面上の前記複数の電極トラックは、前記他の面の複数の電極トラックから分離および区別され、それぞれのトラックは、各面の前記内面を横切って第1の縁から第2の縁まで延びる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項5】
それぞれの前記電極トラックは、互いに平行する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項6】
それぞれの前記の面は、前記プリント回路基板内に画定され、前記プリント回路基板を通って延びる複数のスロットを有し、前記スロットは、隣接するトラック間に設けられ、前記ファンネルの前記面を通してガスが排出される出口を動作可能に設ける請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項7】
前記ガードレールは、前記電極トラックより高いDC電圧を設ける請求項1乃至6のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項8】
前記ファンネルに設けられた固定具と同じ位置に置かれたバイアスレールをさらに備え、前記バイアスレールは、前記電極トラックに高められたDC電圧を与えられ、イオンを前記固定具から遠ざかるように動作可能にバイアスする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項9】
それぞれの前記面は、隣接する面の縁に近接するが、固定されていない、またはもたれていない、縁を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項10】
前記ガードレールは、RF源と動作可能に結合され、RF、およびDC電圧の両方が前記ガードレールに印加される請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項11】
前記ガードレールは、ガードレールのみに印加されるDC電圧を有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項12】
少なくとも前記面の部分集合は、三角錐台の幾何学的形状を有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項13】
それぞれの前記の面は、三角錐台の幾何学的形状を有する請求項12に記載のファンネル。
【請求項14】
イオンファンネルであって、
複数の個々の面であって、それぞれの面は、プリント回路基板から形成され、前記複数の面は、底部と頂点を有する錐体構造を形成するために互いに対して配置されていることと、前記錐体構造の前記底部で画定された前記イオンファンネルの入口と、前記錐体構造の前記頂点で画定された前記イオンファンネルからの出口とを備え、前記ファンネルは、前記入口と前記出口の間の前記錐体構造内のイオン経路を画定するように構成され、それぞれの前記複数の三角面は、各内面上に画定された複数の分離および区別される電極トラックを有し、前記複数の電極トラックは、イオン経路に対して実質的に横断し配置され、および底部から頂点まで延びており、隣接する電極トラックは、RF、およびDC電圧の両方に動作可能に結合し、RFイオンの拘束に影響を与えてイオンビームを集束させ、ファンネルの出口に指向し、それぞれの前記面は、前記錐体構造の前記底部から前記頂点まで移動する際に、ガスが動作可能に通過できる複数のスロットを有することを特徴とするイオンファンネル。
【請求項15】
前記複数の面は、前記イオンビームが動作可能に移動する包囲された容積を画定するために互いに縁から縁まで配置される請求項14に記載のファンネル。
【請求項16】
前記複数の面は、第1の三角錐台面上の前記電極トラックのそれぞれが、第2の三角錐台面上の対応する電極トラックを有するように互いに対して配置される請求項14または15に記載のファンネル。
【請求項17】
それぞれの面上の前記複数の電極トラックは、前記他の面の複数の電極トラックから分離および区別され、それぞれのトラックは、各面の前記内面を横切って第1の縁から第2の縁まで延びる請求項14乃至16のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項18】
それぞれの前記電極トラックは、互いに平行する請求項14乃至17のいずれか一項に記載のファンネル
【請求項19】
それぞれの前記面の前記縁に設けられたDCバイアスされたガードレールをさらに備え、前記ガードレールは、イオンを前記面の前記縁から遠ざかるように動作可能にバイアスするように構成されており、前記ガードレールは、前記錐体構造の前記底部から前記頂点まで延びる請求項14乃至18のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項20】
前記ガードレールは、前記電極トラックより高いDC電圧を与えられる請求項19に記載のファンネル。
【請求項21】
前記ファンネルに設けられた固定具と同じ位置に置かれたバイアスレールをさらに備え、前記バイアスレールは、前記電極トラックに高められたDC電圧を与えられ、イオンを前記固定具から遠ざかるように動作可能にバイアスする請求項14乃至20のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項22】
それぞれの前記面は、隣接する面の縁に近接するが、固定されていない、またはもたれていない、縁を有する請求項14乃至21のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項23】
前記ガードレールは、RF源と動作可能に結合され、RF、およびDC電圧の両方が前記ガードレールに印加される請求項19乃至20のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項24】
前記ガードレールには、ガードレールのみに印加されるDC電圧を有する請求項19乃至20のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項25】
少なくとも前記面の部分集合は、三角錐台の幾何学的形状を有する請求項14乃至24のいずれか一項に記載のファンネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、質量分析に関し、より詳細には、質量分析において使用され、イオン化源からのビームを質量分析計検出器に向けて指向、および集束させるイオンファンネルに関する。
【背景技術】
【0002】
イオンファンネルは、通常、開口部が減少するプレート電極の積み重ね(通常は30~100)から構築される。反対極性のRF電位が隣接する電極に印加され、時には疑似電位とも呼ばれる、イオンファンネルを通過するイオンを放射状に限定する有効電位を生成する。連続する電極の開口部が、減少するにつれて、最終的な結果として、イオンファンネルに入る空間的に分散したイオン曇は、イオンファンネルを出るときにはるかに小さい半径サイズに効率的に集束される。
【0003】
個々のプレート電極のそれぞれに、交互のRF電圧が重畳された個々のDCを供給する必要がある。その結果、特定の順序で正確に組み立てる必要がある部品の複雑なキットとなる。イオンファネルは、従来のイオン光学では実現が困難な、電極の微細ピッチから利益を得ることができる。これには、必要な電圧を生成する別個の分配回路基板、典型的にはプリント回路基板(PCB)、が必要であると理解されるであろう。電極一式は、複雑な配線ネットワークを介して接続されるか、PCBに統合して直接半田付けされる。ソケット、または半田パッドの物理的サイズは、最終的に電極ピッチを制限し、これはこれらの種類のデバイスの実際のアプリケーションに影響を与える可能性がある。
【0004】
最近、プリント回路基板(PCBs)の使用を含むイオンファンネルの設計が開発されている。非特許文献1では、4つのくさび形PCBを組み合わせて、電極をトラックに置き換えたイオンファンネルの四角錐類似体を作製するファンネルの構造を検討する。これは、究極的にイオンファンネルの機能を確実に保証しながら、組み立てが複雑になる可能性のある非対称配置を規定する。これは、電極を設ける際に、PCB技術を使用することで明らかに利点があるが、製造されたファンネルは、2つのチャンバーを連結し、その堅固な構造は、(積み重ねられたプレートイオンファンネルに特有である)ガスが放射状に脱出できないことを意味する。これにより、下流チャンバーのガス負荷が増加し、出口でのガス流が出口領域でのイオンの動きを妨害する可能性がある。また、デバイスは、ドーターボードを半田付けし、接着剤で固定する前に半分ずつを合わせることによって2つに分かれて構成されているため、熟練したオペレーターが必要である。それは、非常に手作業であるため、理論的には有利であるが、大量のPCB製造技術とは、少なくとも部分的に互換性がないように思われる。また、この設計では、隙間がトラック間隔に同じでないと、イオン損失の可能性がある2つ部分が交わるトラックに隙間を導入するということで、構造の精度/許容度への依存度がさらに高まるという点で困難を抱えている。
【0005】
したがって、従来のイオンファンネルのこれらおよび他の制約に対処できるイオンファンネルを提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Schlottmann, F., et al. A Simple Printed Circuit Board-Based Ion Funnel for Focusing Low m/z Ratio Ions with High Kinetic Energies at Elevated Pressure. J. Am. Soc. Mass Spectrom. 30, 1813-1823 (2019)
【発明の概要】
【0007】
イオンファンネルであって、それぞれがプリント回路基板から形成されており、底部と頂点を有する錐体構造を形成するために互いに対して配置された、複数の面と、錐体構造の底部で画定されたイオンファンネルの入口と、錐体構造の頂点で画定されたイオンファンネルの出口とを備え、ファンネルは、入口と出口の間の錐体構造内のイオン経路を画定するように構成されており、それぞれの複数の面は、各内面上に画定された複数の分離および区別される電極トラック有しており、複数の電極トラックは、イオン経路に対して実質的に横断するように配置され、および底部から頂点まで延びており、隣接する電極トラックは、RF、およびDC電圧の両方に動作可能に結合され、RFイオンの拘束に影響を与えてイオンビームを集束させ、ファンネルの出口に指向する。
【0008】
複数の面は、好ましくは、三角錐台の幾何学的形状を有するようにそれぞれ形成され、好ましくは、イオンビームが動作可能に移動する包囲された内容積を画定するために互いに縁から縁まで配置される。
【0009】
複数の面は、好ましくは、第1の面上の電極トラックのそれぞれが第2の面上に対応する電極トラックを有するようにお互い対して配置される。
【0010】
それぞれの面の複数の電極トラックは、好ましくは、他の面の複数の電極トラックとは
分離および区別され、それぞれのトラックとは、第1の縁から第2の縁まで各内面を横切って延びる。
【0011】
それぞれの電極トラックは、お互い実質的に平行であることが最適である。
【0012】
それぞれの面は、好ましくは、プリント回路基板内に画定され、プリント回路基板を通って延びる複数のスロットを有し、スロットは、隣接するトラック間に設けられ、ファンネルの面を貫通してガスが排出される出口を動作可能に設けている。
【0013】
ファンネルは、最適に、面の縁に設けられた複数のガードレールをさらに備え、イオンを面の縁から遠ざかるように動作可能にバイアスするように構成されており、ガードレールは、錐体構造の底部から頂点まで延びる。ガードレールは、好ましくは、電極トラックよりも高いDC電圧を設ける。
【0014】
ファンネルに設けられた固定具と同じ位置に置かれたバイアスレールをさらに備え、バイアスレールは、電極トラックに高められたDC電圧を与えられ、イオンを固定具から遠ざかるように動作可能にバイアスする。
【0015】
好ましくは、それぞれの面は、隣接する面の縁に近接するが、固定されていない、またはもたれていない、縁を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これらおよび他の側面並びに特徴は、以下の図面を参照してよりよく理解されるであろう。
【
図1A】本開示による3面イオンファンネルの底部および頂点からの斜視図である。
【
図1B】本開示による3面イオンファンネルの底部および頂点からの斜視図である。
【
図1C】本開示による5面イオンファンネルの底部および頂点からの斜視図である。
【
図1D】本開示による5面イオンファンネルの底部および頂点からの斜視図である。
【
図2】本開示によるガードレールの動作を概略に示す組み立てっていない状態の2つの三角形の面の図である。
【
図3】
図3Aは、本開示によるファンネルの三角形の面の電気部品を駆動するために使用できる電子回路の図であり、ガードレールのない配置を示す図である。
図3Bは、本開示によるファンネルの三角形の面の電気部品を駆動するために使用できる電子回路の図であり、逆位相を設けたガードレールを有する配置を示す図である。
図3Cは、本開示によるファンネルの三角形の面の電気部品を駆動するために使用できる電子回路の図であり、同位相を設けたガードレールを有する構成を示す図である。
【
図4】本開示の一態様による三角形の面の一部の側面断面図である。
【
図5】本開示の別態様による三角形の面の一部の側面断面図である。
【
図6A】ガードレールがオフの場合の影響を示す静電ポテンシャルシミュレーション図である。
【
図6B】ガードレールがオンの場合の影響を示す静電ポテンシャルシミュレーション図である。
【
図7A】ガードレールがオフの場合の影響を示すイオン軌跡シミュレーション図である。
【
図7B】ガードレールがオンの場合の影響を示すイオン軌跡シミュレーション図である。
【
図8】
図8Aは、本開示によるイオンファンネルの中心線を含む平面における断面を示す図である。ファンネル内にイオンが存在しないことを示す図である。
図8Bは、本開示によるイオンファンネルの中心線を含む平面における断面を示す図である。ファンネル内に接地された固定具が存在する場合のシミュレートされたイオン軌跡を示す図である。
図8Cは、本開示によるイオンファンネルの中心線を含む平面における断面を示す図である。ファンネル内にバイアスされた固定具が存在する場合のシミュレートされたイオン軌跡を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本開示による複数の面105を備えるイオンファンネル100の2つの例を示す。
図1Aおよび
図1Bでは、イオンファンネルは、3つの面から形成されているのに対して、
図1Cおよび
図1Dでは、イオンファンネルは、5つの面から形成されている。各例では、個々の面はプリント回路基板からそれぞれ形成され、イオンファンネルが、底部110と頂部120を有する錐体構造を有するように互いに対して配置される。これらの例示的な構成は、それぞれ三角錐台の幾何学的形状を有する、PCBs、プリント回路基板から製造される。この形状は、イオンファンネルを画定する錐体構造を形成するために、縁から縁まで面を積み重ねることを容易にするという点で、特に有利であることが理解されるであろう。
【0018】
イオンファンネルへの入口110Aは、イオンファンネル100の底部110で画定され、イオンファンネルからの出口120Aは、角錐構造の頂点120で画定される。出口120Aは、頂点に画定された開口部から形成されるので、個々の三角形の面105が実際の点を形成するために物理的に交わらないので、錐体構造は、事実上切頭錐体であることが理解されるであろう。
【0019】
ファンネルは、入口110Aと出口120Aとの間の錐体の内部容積内に、イオン経路を画定するように構成される。イオン経路は、入口110Aから出口120Aまで延びる。イオン経路に沿って移動する入口110Aで、イオンファンネルに入る空間的に分散したイオン雲は、イオンファンネルの出口120Aを出る際に、はるかに小さい半径サイズに効率的に集束される。
【0020】
この集束は、複数の三角形の面の各内面140上に画定された複数の分離および区別される電極トラック130を設けることによって、達成される。複数の電極トラック130は、イオンは経路を実質的に横断するように配置され、低部から頂点まで延びる。既知のイオンファンネルの動作と同様に、隣接する電極トラックは、RFおよびDC電圧の両方に動作可能に結合され、RFイオンの拘束に影響し、イオンビームをファンネルの出口に集束させ、指向させる。
図5に視覚化されるように、これは、個々のトラック130に近接する領域におけるRF疑似電位500の生成によってもたらされる。
【0021】
図1から明らかなように、また
図7のシミュレーション結果においても、複数の三角形の面105は、好ましくは、イオンビーム700が動作可能に移動する包囲された内容積140を画定するために、互いに縁から縁まで配置される。それらは、分離および区別されるが、複数の三角形の面は、好ましくは、第1の三角形の面上の電極トラックのそれぞれが第2の三角形面の上に対応する電極トラックを有するように互いに対して配置される。
【0022】
図1、3、および7のそれぞれに示すように、各面上の複数の電極トラック130は、好ましくは、他の面上の複数の電極トラックから分離および区別される。各トラック130は、第1の縁領域205から、第2の縁領域210まで、それぞれの三角形の面の内面を横切って延びる。縁領域は、実際には、面の側面215になくてもよい。各電極トラックは、互いに実質的に平行であることが最適であり、ファンネルの入口から出口までのイオンビームの進行方向に対して、実質的に横断的に延びている。電極トラックは、従来のPCB製造技術を使用して製造することができる。
【0023】
電極トラックに加えて、個々の三角形の面は、好ましくは、プリント回路基板によって画定された基板内に画定され、貫通して延びる複数のスロット150を有する。スロット150は、隣接するトラック130の間に設けられ、ファンネルの面を通してガスが排出することができる出口を動作可能に設ける。トラック間に切り込まれたスロット150を設けることにより、例えば、この例では、標準的なPCB製造技術を使用して達成することができる。これにより、ファンネルは、放射状にガスを排出することができ、これは、この容量を有しない従来技術のファンネルよりも有利であり、その結果、イオンビームの下流側でガス負荷が増加する。しかし、最大許容空間電荷を増加させることによって、トラック密度を最大化するために、これらの穿孔を含まないことが、状況によっては有益である場合があることを理解されるであろう。
【0024】
図2および3に見られるように、ファンネルは、最適には、三角形の面の縁215に設けられた複数のガードレール220をさらに備える。各面は、望ましくは、隣接する面の縁に近接しているが、固定されていない、またはもたれていない、縁を有する。ガードレール220は、
図2の概略図から明らかなように、イオン250を三角形の面の縁から遠ざかるように動作可能にバイアスするように構成される。ガードレールは、錐体構造の低部から頂点まで延びる。ガードレールは、好ましくは、電極トラックよりも高いDC電圧を備える。
【0025】
平らな壁で作られたイオンファンネルは、イオンをそれらの隅に集中させる傾向があることが理解されるであろう。これは、デバイス軸に垂直な面でのイオン拡散の等方性の性質と、横断する際に、ファンネルの「壁」が非等方的に閉じられることの自然な結果である。したがって、本発明者は、PCBイオンファンネルの接合部が、重要な領域であることを確認した。高められたDC電位に一式のガードレール、またはトラックを配置することにより、基板の縁付近のイオンがデバイスの隅に到達するのを防止することができる。隅とは、隣接する2つの三角形の面の間の領域である。これにより、PCB間の接合部の構造の重要性は、軽減される。
図7Aおよび
図7Bは、ガードレールをオフにした場合(
図7A)とガードレールをオンにした場合(
図7B)のシミュレーションでの効果を示す。シミュレーション結果は、ガードレールをオンにすると、三角形の面の個々の面を接触させる必要なく、ファンネルを通るイオンの伝達が、30%から約85%に増加することを実証する。
図7の例では、隣接する三角形の面の間の間隔が、各面の電極トラック間の分離の2倍になるようにシミュレーションが行われた。このことは、三角形の面を形成する個々のPCB基板を接合または接着する必要なく、ファンネルを製造できることを実証したと理解されるであろう。基板を一緒に半田付けする必要なく、通常の大量生産技術(例えば、はんだリフロー)で個別に製造することができる。ガードレールは、DCバイアスされており、特定の構成ではRF源にも結合されている場合もある。
【0026】
図4および8で示すように、ファンネルは、ファンネル内に設けられたねじ頭のような固定具と同い場所に配置されたバイアスレール400をさらに備えてもよい。バイアスレール400は、電極トラックに高められたDC電圧で設けられ、DCバイアス電位420を生成することによって、固定具からイオンを動作可能にバイアスする。ファンネルを通過するイオンフ流動700内のイオンは、トラック50およびバイアスレール400のそれぞれから遠ざかるように動作可能にバイアスされ、一般的に錐体構造の主軸を概ね中心とする経路を採用する。
【0027】
そのような構成は、他の外部ハードウェアと共に本開示によるイオンファンネルの使用を容易にするという点で、特に有利である。これらの高められたDCと共にバイアスレールを使用しると、(前述のネジのような)固定具からイオンが遠ざかるのを防ぐことができる。これは、固定具をイオンファンネル容積内に配置することもできることを意味する。これらのDCバイアスレールが存在しない場合、これらの固定具は、制御不能に充電され、イオンの伝達を遮断するか、(接地されている場合は)ファンネルからイオンが抽出されて信号が減少する。
図8は、流入電位が、内部固定具上のイオン損失を防止する程度に高くバイアスされた固定具400を示すシミュレートされたイオン軌跡を示す。これは、(イオンはあらゆる方向から引き込まれるが)明確にするために狭い帯域での損失のみを示す指図であることに留意するべきである。電位は、局所電極の電位よりも高いレベルにある必要があるが、相当な範囲の調整が可能である。これは、固定具の他の電気部品に直接接続によって、決定される可能性がある。特定の構成は、調整可能な電位としてこれらを設けて、固定具の位置、および/または分析される質量スペクトルの種類に依存して変更を容易にすることができる。
図8Bは、接地された固定具が、どのようにイオンを吸引し、最終的に放出するかを示しているので、ファンネルを介して好ましい経路から離れた代替出口を提示する。
図8Cは、周囲のDC電位より高くバイアスされている場合の固定具を統合することができるイオンを示す。一部のイオン軌跡は、固定具の「上流」側で終結しているように見えるが、実際には、これらは障害物の周りを表示面の外側の方向に迂回している。これらのシミュレーションの場合、ファンネルの入力DCに等しい電位をイオンの流れが遮断されることなく、使用することができる。
【0028】
これは、外部端を絶縁インサートに固定し、特定のトラックを備えたヘッドにDC電位を供給することによって、実現できる。
【0029】
本明細書に開示される実施形態は、3面および5面の錐体構造を参照することが理解されるであろう。本開示によれば、典型的には、三角錐台の幾何学的形状を備えた3つの面が、イオン濃縮に必要な包囲されたファンネル容積を得るために必要な表面の最小数であるが、本開示は、これらの3と5の表面構成に限定されると考える必要がないことが理解されるであろう。本開示によるイオンファンネルの例示的な実施形態が、説明されたことは理解される。本発明者は、少なくとも3つの側面を有するイオンガイドを製造することが可能であり、各側面は、好ましくは、くさび形、または三角形の構成を有し、個々に平面形状であることを確認した。互いに対して組み立てられたとき、平面の側面のいずれも他の平面の側面と平行でないため、複数の側面が互いに協力して、各縁部で互いに接する複数の平面を有するファンネル形状を採用する。複数のPCBのそれぞれにトラックを設けることにより、これらのトラックに電圧を動作可能に印加して、ファンネルを通って移動するイオンの通過を制限することができる。これは、積み重ねられたリング/積み重ねられたPCBデバイスと比較して、部品数と複雑さが軽減される
請求項に照らして必要な場合にのみ限定されると考えられる本開示の範囲から逸脱することなく、これらの例示的な実施形態に変更を加えることができる。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンファンネルであって、
複数の個々の面であって、それぞれの面は、プリント回路基板から形成され、前記面は、底部と頂点を有する錐体構造を形成するために互いに対して縁から縁まで配置されていることと、
前記錐体構造の前記底部で画定された前記イオンファンネルの入口と、
前記錐体構造の前記頂点で画定された前記イオンファンネルからの出口とを備え、
前記ファンネルは、前記入口と前記出口の間の前記錐体構造内のイオン経路を画定するように構成され、
それぞれの前記複数の面は、各内面上に画定された複数の分離および区別される電極トラック有し、
前記複数の電極トラックは、イオン経路に対して実質的に横断して配置され、および底部から頂点まで延びており
隣接する電極トラックは、ラジオ周波数(RF)、およびDC電圧の両方に動作可能に結合し、RFイオンの拘束に影響を与えてイオンビームを集束させ、ファンネルの出口に指向し、
前記ファンネルは、DCバイアスされたそれぞれの前記面の縁に設けたガードレールをさらに備え、
前記ガードレールは、イオンを前記面の前記縁から遠ざかるように動作可能にバイアスするように構成され、
前記ガードレールは、前記錐体構造の前記底部から前記頂点まで延びていること
を特徴とするイオンファンネル。
【請求項2】
前記複数の面は、前記イオンビームが動作可能に移動する包囲された容積を画定するために互いに縁から縁まで配置される請求項1に記載のファンネル。
【請求項3】
前記複数の面は、第1の三角錐台面上の前記電極トラックのそれぞれが、第2の三角錐台面上の対応する電極トラックを有するように互いに対して配置される請求項1または2に記載のファンネル。
【請求項4】
それぞれの面上の前記複数の電極トラックは、前記他の面の複数の電極トラックから分離および区別され、それぞれのトラックは、各面の前記内面を横切って第1の縁から第2の縁まで延びる請求項1乃至3のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項5】
それぞれの前記電極トラックは、互いに平行する請求項1乃至4のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項6】
それぞれの前記の面は、前記プリント回路基板内に画定され、前記プリント回路基板を通って延びる複数のスロットを有し、前記スロットは、隣接するトラック間に設けられ、前記ファンネルの前記面を通してガスが排出される出口を動作可能に設ける請求項1乃至5のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項7】
前記ガードレールは、前記電極トラックより高いDC電圧を設ける請求項1乃至6のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項8】
前記ファンネルに設けられた固定具と同じ位置に置かれたバイアスレールをさらに備え、前記バイアスレールは、前記電極トラックに高められたDC電圧を与えられ、イオンを前記固定具から遠ざかるように動作可能にバイアスする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項9】
それぞれの前記面は、隣接する面の縁に近接するが、固定されていない、またはもたれていない、縁を有する請求項1乃至8のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項10】
前記ガードレールは、RF源と動作可能に結合され、RF、およびDC電圧の両方が前記ガードレールに印加される請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項11】
前記ガードレールは、ガードレールのみに印加されるDC電圧を有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項12】
少なくとも前記面の部分集合は、三角錐台の幾何学的形状を有する請求項1乃至11のいずれか一項に記載のファンネル。
【請求項13】
それぞれの前記の面は、三角錐台の幾何学的形状を有する請求項12に記載のファンネル。
【国際調査報告】