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特表2023-520286PD1ベースワクチン接種組成物およびその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】PD1ベースワクチン接種組成物およびその方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230510BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 38/49 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P37/04
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 M
A61K38/49 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022547284
(86)(22)【出願日】2021-02-04
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 CN2021075254
(87)【国際公開番号】W WO2021164563
(87)【国際公開日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】62/978,911
(32)【優先日】2020-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515134117
【氏名又は名称】ヴェルシテック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ジウェイ
(72)【発明者】
【氏名】タン, ジウ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084DC21
4C084MA16
4C084MA56
4C084NA05
4C084ZB072
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA03
4C085AA13
4C085BB01
4C085BB23
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG06
(57)【要約】
本明細書で提供されるのは、PD1ベースTWIST1を含むDNAワクチンおよび組成物である。同様に提供されるのは、PD1ベースTWIST1ワクチンを投与することによりTWIST1特異的T細胞応答を誘導する方法である。同様に提供されるのは、PD1ベースTWIST1ワクチンおよび免疫チェックポイント阻害薬を投与することによりTWIST1特異的T細胞応答を誘導する方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるTWIST1特異的T細胞応答を誘導する方法であって、PD1およびTWIST1を含む有効量のDNAワクチンを前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項2】
腫瘍関連抗原(「TAA」)に対する免疫寛容の克服に効果的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TAAがTWIST1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
癌の浸潤および転移の制御に効果的である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記癌がTWIST-1-発現癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記癌が、中皮腫、AB1中皮腫、4T1乳癌、メラノーマ、結腸癌、前立腺癌、および胃癌からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
免疫チェックポイント阻害薬を前記対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫チェックポイント阻害薬が抗CTLA-4抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
DNAワクチン構築物の前記有効量が100μg~200mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ワクチンが、10日間~3週間の間隔で3回、筋肉内に投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗CTLA-4抗体が、200μg~400mgの投与量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ワクチンが、PD1ベースTWIST1ワクチンの投与の24時間後および4日毎に3回、腹腔内に投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
可溶性PD1およびTWIST1を含むDNAワクチン構築物。
【請求項14】
リンカーをさらに含む、請求項13に記載のDNAワクチン構築物。
【請求項15】
組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)をさらに含む、請求項14に記載のDNAワクチン構築物。
【請求項16】
(i)可溶性PD1;および(ii)TWIST1;ならびに許容可能な医薬担体、を含むDNAワクチン構築物を含む組成物。
【請求項17】
(i)可溶性PD1;および(ii)TWIST1;ならびに許容可能な医薬担体、を含むDNAワクチン構築物を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本国際出願は、2020年2月20日に出願された米国仮特許出願第62/978,911号の利益を主張する。この仮出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、癌免疫療法、癌ワクチン、その組成物および方法の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
悪性中皮腫は通常、胸膜から発生する、吹き付けアスベストへの曝露に関連する致死型の癌である。中皮腫の発生率および死亡率は、主に発展途上国で上昇が続いている(1)。悪性中皮腫の治療は難度が高く、その理由は、大部分の患者(>75%)が集学的治療(手術、化学療法、および/または放射線療法の組み合わせ)の後であっても再発を経験するためである(2)。ペメトレキセドとシスプラチンによる化学療法は、10年以上にわたり唯一の承認療法であったが、この手法は、せいぜいわずかな便益を達成したに過ぎず、多くの患者は、このような治療に適さない(3)。細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)、プログラム細胞死タンパク質1(PD1)およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)などの免疫チェックポイント分子を標的にする抗体は、特定の癌における治療効力を改善したが、それらの効果は、中皮腫の患者では満足できるものではない(4)。
特に、抗CTLA-4抗体を用いた中皮腫に対する最初のランダム化第3相試験は、その主要エンドポイントの全生存期間の改善を達成できなかった(5、6)。PD1およびPD-L1チェックポイント阻害抗体は、第1/2相試験で、進行型中皮腫の治療において、いくつかの有望な結果を示したが、全奏効率は、まだ、30%未満である(7、8)。既存の免疫療法の有効性を高めるために、我々は、中皮腫患者の能動ワクチン接種により抗腫瘍応答を誘発することが必要であると考えている。
【0004】
癌ワクチンは、患者自身の免疫監視の増強と適切な活性化を必要とする(9、10)。しかしながら、広範囲にわたる努力にもかかわらず、治療的癌ワクチンは、進行癌患者における臨床的応答の確立の点で、まだ、好ましい結果をほとんど示していない。これは、大部分が、免疫抑制腫瘍微小環境(TEM)内の腫瘍抗原の限られた免疫原性に起因する(13、14)。これらの試験は、DCベースワクチンの大きな治療可能性を示すが、既発症悪性腫瘍の治癒はまれである(1、3)。
【0005】
高頻度の上皮間葉転換(EMT)は、悪性中皮腫の重要な特徴である(17)。高EMTレベルは、中皮腫転移の増大および予後不良に密接に関連している(18、19)。ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス型転写因子TWIST1は、EMTを誘導し、メラノーマ、結腸癌、乳癌、前立腺癌、および胃癌を含む多くの固形腫瘍の転移過程を調節する最も重要な因子の1つである(20~23)。中皮腫EMTの調節および病因におけるTWIST1の役割は、ほとんどが未知のまま残されている(25)。ワクチンは、癌免疫療法のための安全で、簡単な費用対効果が大きい方法である。今まで、医院におけるその成功は、腫瘍関連抗原(TAA)に対する免疫寛容の問題により妨害されてきた。
【発明の概要】
【0006】
本明細書で提供されるのは、TWIST1に対する免疫寛容を破壊し、中皮腫に対し直接的にT細胞応答を誘発する効果的なsPD1ベースTWIST1 DNAワクチン、すなわち、sPD1-TWIST1である。TWIST1発現は、中皮腫患者の腫瘍形成に関連し、このタンパク質は、実験のAB1中皮腫の浸潤および転移のために必要である。予防的sPD1-TWIST1ワクチン接種は、皮下および転移性中皮腫成長の両方を制御する。sPD1-TWIST1ワクチン接種およびCTLA-4免疫チェックポイント阻害の組み合わせは、TWIST1特異的T細胞応答をさらに高め、中皮腫および乳癌モデルの両方における治療効果をもたらす。観察された抗腫瘍療法は、大きな細胞傷害性潜在力を有し、高度に保存された免疫優性短鎖ペプチドに対してsPD1-TWIST1ワクチン接種により特異的に誘発される、ワクチン誘発TWIST1特異的持続性記憶CD8+T細胞に依存する。種々の癌型でのTWIST1の広範な発現があるので、sPD1-TWIST1ワクチン接種は、癌免疫療法に有用である。
【0007】
本明細書で提供されるのは、対象におけるTWIST1特異的T細胞応答を誘導する方法であり、該方法は、PD1およびTWIST1を含む有効量のDNAワクチンを対象に投与することを含む。
【0008】
特定の実施形態では、方法は、腫瘍関連抗原(「TAA」)に対する免疫寛容の克服に効果的である。
特定の実施形態では、TAAはTWIST1である。
【0009】
特定の実施形態では、方法は、癌の浸潤および転移の制御に効果的である。
特定の実施形態では、癌はTWIST-1-発現癌である。
特定の実施形態では、癌は、中皮腫、AB1中皮腫、4T1乳癌、メラノーマ、結腸癌、前立腺癌、および胃癌からなる群より選択される。
【0010】
特定の実施形態では、方法は、免疫チェックポイント阻害薬を対象に投与することをさらに含む。
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害薬は、抗CTLA-4抗体である。
【0011】
特定の実施形態では、DNAワクチン構築物の有効量は、100μg~200mgである。
特定の実施形態では、ワクチンは、10日間~3週間の間隔で3回、筋肉内に投与される。
特定の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、200μg~400mgの投与量で投与される。
特定の実施形態では、ワクチンは、PD1ベースTWIST1ワクチンの投与の24時間後および4日毎に3回、腹腔内に投与される。
【0012】
本明細書で提供されるのは、可溶性PD1およびTWIST1を含むDNAワクチン構築物である。
特定の実施形態では、リンカーをさらに含む。
特定の実施形態では、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPa)をさらに含む。
【0013】
本明細書で提供されるのは、(i)可溶性PD1;および(ii)TWIST1;ならびに許容可能な医薬担体、を含むDNAワクチン構築物を含む組成物である。
【0014】
本明細書で提供されるのは、(i)可溶性PD1;および(ii)TWIST1;ならびに許容可能な医薬担体、を含むDNAワクチン構築物を含むキットである。
本特許または出願ファイルは、少なくとも1つのカラー図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要請があれば、必要な手数料を支払うことにより、特許庁により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】TWIST1の発現は、AB1中皮腫の浸潤および転移を促進する。(A)TNMステージによるTCGA中皮腫コホート(n=87)中のTWIST1発現。ステージI/II、n=26。ステージIII/IV、n=61。(B)TWIST1の弱(n=45、TWIST1≦8.346)または強(n=42、TWIST1>8.346)の発現レベルにより層別化した中皮腫患者のカプランマイヤー全生存曲線。(C)異なるマウス腫瘍細胞株でのTWIST1のウェスタンブロット分析。AB1細胞中のTWIST1の機能的役割を遺伝子過剰発現(OE)およびノックアウト(KO)により分析した。(D)TWIST1タンパク質のウェスタンブロット分析。WT、野性型AB1細胞;OE、レンチウイルスベクター媒介TWIST1過剰発現;KO、CRISPR/Cas9媒介TWIST1ノックアウト。(E)野性型、TWIST1過剰発現またはノックアウト細胞におけるビメンチン、N-カドヘリンおよびE-カドヘリンを含むEMT関連分子のqRT-PCR定量化。(F)コロニー形成アッセイのために示された代表的ウェル。(G)マトリゲル細胞浸潤アッセイ;代表的画像(上段)および定量化(下段)。(H)1×10個のAB1のBALB/cマウス(n=6匹)への静脈内接種後の肺転移。左パネル、生存曲線。右パネル、終了点で回収した肺の代表的画像。
図2】PD1ベースワクチン接種は、TWIST1特異的T細胞応答およびAB1中皮腫の増殖制御を強化した。(A)TWIST1 DNAワクチン構築物の概略図。tPa、組織プラスミノーゲンアクチベーターシグナル配列。(B)293T細胞中への遺伝子導入後のTWIST1 DNAワクチン構築物の発現。sPD1-TWIST1、sTWIST1またはモック発現プラスミドを遺伝子導入した293T細胞の細胞ライセートまたは培養上清を、抗TWIST1抗体を用いてウェスタンブロット分析に供した。(C)可溶性タンパク質とマウスPD-L1/L2遺伝子導入293細胞との間の結合のフローサイトメトリー分析。sPD1-TWIST1-FLAG(赤色実線)、sTWIST1-FLAG(黒色点線)またはモック(網掛領域)処理293T細胞から収集した遺伝子導入上清を用いて、マウスPD-L1またはPD-L2発現ベクターで一過性に遺伝子導入した293T細胞をインキュベートした。(D)治療スケジュールの略図。BALB/cマウス(n=4)の群は、3回のDNA/EPワクチン接種を受けた後、最後のワクチン接種の2週後にイムノアッセイまたは1×10個AB1細胞の皮下チャレンジのために屠殺された。(E)TWIST1特異的T細胞応答のエリスポット分析。(F)DNA/EPワクチン接種後に、IFNγ、IL-2、TNFα産生CD8+(上段)およびCD4+(下段)T細胞の細胞内染色。(G)精製CD3+T細胞の野性型(WT)またはTWIST1ノックアウト(KO)AB1細胞と共にインキュベーション後のサイトカイン産生。1×10個のAB1細胞の皮下チャレンジ後の、DNA/EPワクチン接種マウス(n=8)の腫瘍増殖(H)および生存曲線(I)。
図3】sPD1-TWIST1ワクチンは、AB1肺転移を抑制した。ワクチン接種BALB/cマウス(n=4)は、最後のワクチン接種の2週後に1×10個のAB1細胞を受け、生物発光により腫瘍増殖(A)が監視された。代表的生物発光画像(B)を示す。28日目に、マウスの体重が測定され(C)、その後、マウスは、(D)巨視的な評価(左)およびH&E染色(右)用の肺の収集のために屠殺された。(E)終了点での脾臓中のT細胞サブセット(上段)および免疫抑制細胞サブセット(下段)のエフェクター機能の評価。
図4】チェックポイント調節は、既発症中皮腫の治癒のためのsPD1-TWIST1ワクチン接種の抗腫瘍活性を高める。(A)治療試験の略図。BALB/cマウスに5×10個のAB1細胞を皮下接種し、続けて、sTWIST1、sPD1-TWIST1または模擬ワクチン接種を7日目に行い、10日毎に3回繰り返した。注入毎に200μgの投与量の抗CTLA4抗体を腹腔内に8日目、およびワクチン接種の間4日毎に投与した。治療的ワクチン接種後の腫瘍増殖測定値(B)および無腫瘍生存曲線(C)。腫瘍径が>15mmに達するとマウスを屠殺した。(D)全ての群のT細胞応答(左)またはsPD1-TWIST1 DNA/EPワクチン接種とCTLA-4阻害の併用群のT細胞応答(右)。TWIST1ペプチドまたは対照ペプチド卵白アルブミン(OVA257-264)による脾細胞のエクスビボ刺激後に、分泌IFNγをエリスポットアッセイにより定量化した。矢印は、その群中の個々の無腫瘍マウスを示す。雌BALB/cマウス(n=5)の群は、2×10個の4T1細胞を乳腺中に接種され、続けて、1日目にワクチン接種を開始し、10日毎に3回繰り返した。注入毎に200μgの投与量の抗CTLA4抗体を腹腔内に2日目、およびワクチン接種の間4日毎に投与した。(E)4T1接種後27日目に回収した4T1原発腫瘍増殖曲線(左)および腫瘍重量(右)。(F)肺中のクローン原性転移性細胞の計数(左)およびインキュベーションの14日後のクローン原性コロニーの代表的画像(右、×200希釈因子)。(G)代表的ドットプロットおよび脾臓中のIFNγ+TNFα+CD8+T細胞のパーセンテージを終了点で測定した。
図5】併用療法は、免疫優性TWIST1エピトープに対する永続性のT細胞免疫応答を誘導した。腫瘍アブレーションの60日後に、sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4併用群の保護マウス(n=5)の皮下に再チャレンジを行い、腫瘍増殖(A)を測定した。AB1-Luc腫瘍の代表的生物発光画像(B)を示す。(C)種々のエフェクター:標的(E:T)比率でのAB1細胞に対するT細胞の細胞傷害性アッセイ。初期の完全な腫瘍拒絶後にsPD1-TWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4併用療法を受けたマウスの脾臓からT細胞を単離した。(D)T細胞養子移入に対する略図(上段)および腫瘍成長曲線(下段)。無感作またはワクチン接種/保護マウス由来のT細胞を、7日目のAB1-Luc腫瘍を有するSCIDマウスに養子導入し、150mg/kgのシクロホスファミド(Cy)の腹腔内注入の1日後に腫瘍増殖を評価した。全体TWIST1配列をカバーするミニプール(E)またはミニプール37~39中のペプチド(F)を用いた、TWIST1免疫優性エピトープのキャラクタリゼーション。
図6】TWIST1の発現は、AB1中皮腫の浸潤および転移を促進する。(A)野性型、TWIST1過剰発現またはノックアウト細胞中のFSP1、ZEB1およびオクルディンを含むEMT関連分子のqRT-PCR定量化。(B)種々のTWIST1発現を有する異なるAB1細胞のインビトロ増殖。皮下へ1×10細胞を受けたBALB/cマウスの腫瘍増殖(C)および生存曲線(D)。(E)創傷治癒遊走アッセイでの明視野画像化。生細胞イメージング顕微鏡により創傷中への細胞遊走を監視し、明視野画像を引っ掻き後の示した時間後に捕捉した。
図7】PD1ベースワクチン接種は、TWIST1特異的T細胞応答およびAB1中皮腫の増殖制御を高めた。脾細胞由来のIFNγ、IL-2、TNFα産生CD4またはCD8T細胞の特定を示すフローサイトメトリー散布図に対するゲーティング戦略。
図8】sPD1-TWIST1ワクチンは、AB1肺転移を抑制した。(A)静脈内チャレンジBALB/cマウスの終了点での肺画像。(B)終了点での脾臓中のNK細胞の評価。
図9】併用療法は、免疫優性TWIST1エピトープに対する永続性のT細胞免疫応答を誘導した。(A)種々のエフェクター:標的(E:T)比率でのAB1細胞に対する、マウスから単離したT細胞の細胞傷害性アッセイ。(B)IFNγエリスポットにより測定した、TWIST1ペプチド、ミニプール37~39、ミニプール40~42または単一15マーペプチドのいずれかに対するT細胞応答。完全腫瘍拒絶後に、sPD1-TWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4併用療法を受けたマウス由来の2×10個の脾細胞をアッセイに用いた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
チェックポイント免疫療法は、癌治療のための大きなブレークスルーであるが、まだ、その有効性は、悪性中皮腫を含む多くのタイプの悪性腫瘍に対して限定的であることが多い。免疫療法の有効性は、免疫監視に依存することを考慮して、腫瘍自己抗原に対する免疫寛容を破壊する能動免疫獲得法が開発されている。現在の免疫療法におけるTAA自己免疫寛容の制約は、2つの手法により克服される。1つ目は、PD1ベースDNAワクチン接種戦略を用いて、TWIST1特異的抗腫瘍T細胞免疫の誘導のために自己免疫寛容を回避することである。2つ目は、PD1ベースTWIST1ワクチンおよびチェックポイント阻害剤抗CTLA1抗体の併用法が、TWIST1特異的T細胞応答を顕著に高め、既発症中皮腫の免疫療法治癒に繋がったことであり、これは、広範囲のTWIST1発現癌に対する大きな意味を有した。TWIST1、ベーシック・ヘリックス・ループ・ヘリックス型転写因子、は、ヒト中皮腫腫瘍形成に関連し、免疫コンピテントマウスAB1モデルにおいて、中皮腫の浸潤および転移に必要である。PD1ベースワクチン接種は、皮下および転移性中皮腫致死的チャレンジの両方に対して、TWIST1特異的T細胞応答を誘導することにより、予防的制御を提供した。さらに、CTLA-4阻害単独は、既発症中皮腫に対してなんらの免疫療法有効性を示さなかったが、それのPD1ベースワクチン接種との組み合わせは、60%完全寛解をもたらした。機構的には、これらの機能的T細胞は、新規の高度に保存された免疫優性TWIST1エピトープを認識し、細胞傷害活性および持続性の記憶を示し、既発症AB1中皮腫および4T1乳癌に対する永続性の腫瘍退縮および延命効果に繋がった。PD1ベースワクチン接種は、腫瘍自己抗原TWIST1に対する免疫寛容を破壊することにより中皮腫を制御する。本明細書で提供されるのは、広範囲のTWIST1発現腫瘍に対する免疫療法を強化するためのPD1ベースワクチン接種である。
【0017】
結果
TWIST1の発現は、中皮腫進行と相関し、AB1中皮腫の浸潤および転移を促進する。我々は、最初に、ヒト中皮腫中のTWIST1発現の効果を、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の中皮腫コホート(MESO)からの異なるステージの87人の患者間のその発現レベルを比較することにより調査した。より高いTWIST1発現は、初期ステージ腫瘍(TNM IまたはII)に比べて、進行ステージ中皮腫(TNM IIIおよびIV)の患者で見つかった(図1A)。加えて、患者が彼らの腫瘍中のTWIST1発現に基づいて2つの群に層別化された場合、強いTWIST1発現を有する患者は、有意に低減した全生存期間を示し(図1B)、TWIST1発現と中皮腫腫瘍形成の関連性を示唆した。
【0018】
我々は次に、2種の中皮腫細胞株、AB1およびAE17中の、ならびに4T1乳癌細胞株中のTWIST1タンパク質の発現を調査した。以前の知見(26)と一致して、TWIST1は4T1細胞中で検出された(図1C)。さらに、我々は、両方の中皮腫細胞株は同様にTWIST1タンパク質を発現し、その最高の発現レベルは、AB1細胞中で検出されることを見出した。AB1中皮腫発生におけるTWIST1発現の役割を調査するために、我々は、TWIST1発現がレンチウイルスベクター媒介過剰発現またはCRISPR/Cas9媒介ノックアウト(KO)によりそれぞれ操作されるAB1細胞を構築した(図1D)。リアルタイムqPCRを用いて、我々は、TWIST1の過剰発現は、ビメンチン、N-カドヘリン、線維芽細胞特異的タンパク質1(FSP-1)およびジンクフィンガーE-box結合ホメオボックス1(ZEB1)を含む間葉系マーカーの発現を誘導し、またE-カドヘリンおよびオクルディンの発現の抑制も誘導することを見出した(図1Eおよび図6A)。この結果は、TWIST1は、他のEMT転写因子と協調し、中皮腫のEMTおよび転移を促進することを示唆した。TWIST1過剰発現またはサイレンシングは、インビトロAB1細胞の短期増殖を変えないが(図6B)、AB1細胞のコロニー形成効率は、TWIST1発現と密接に関連する(図1F)。具体的には、過剰発現細胞は、高められたクローン原性活性を示したが、一方、KO細胞は、低減した活性を示した。それらのインビトロクローン原性活性と一致して、皮下過剰発現腫瘍は、同系BALB/cマウスの皮下KO腫瘍に比較して、同等に加速された増殖速度および有意に短縮された生存時間を示した(図6C~D)。我々は次に、TWIST1の発現が、AB1中皮腫の浸潤および転移に影響を与えるかどうかを判定することを試みた。TWIST1発現のKOは、AB1細胞の遊走を顕著に低減し、一方、その過剰発現は、マトリゲル細胞浸潤アッセイ(図1G)および創傷治癒遊走アッセイの両方でそれを促進した(図6E)。中皮腫転移を推進するTWIST1の役割をさらに検証するために、我々は、BALB/c免疫コンピテントマウスの尾静脈を介してAB1細胞の静脈内(i.v.)注射によるインビボ転移モデルを確立した。このモデルは、全肺中に転移巣を形成し、臨床転帰により、全ての治療動物の30日以内の人道的安楽死が必要であった(図1H)。このモデルを用いて、我々は、野性型(WT)細胞に比べて、TWIST1過剰発現は、AB1細胞の転移活性を高め、一方、KOは、それらの肺への転移能力を有意に抑制し、動物の無腫瘍生存を延長したことを見出した。全体として、これらの知見は、TWIST1は、中皮腫浸潤、転移および腫瘍進行の根底にある重要な転写因子であるという考えを裏付け、TWIST1は、癌成長および転移を阻止するための治療標的として機能し得ることを示唆する。
【0019】
PD1ベースワクチン接種は、TWIST1特異的T細胞応答およびAB1中皮腫の増殖制御を高めた。sPD1ベース融合DNAワクチンがTWIST1特異的抗中皮腫免疫を高めるかどうかを判定するために、我々は、最初に、sPD1とTWIST1(sPD1-TWIST1)を連結する融合タンパク質をコードするDNAワクチン構築物を生成して、従来のsTWIST1 DNAワクチンと比較した(図2A)。これらの2つの構築物からのコード化TWIST1タンパク質の発現は、ウェスタンブロット分析により確認された(図2B)。重要なのは、両TWIST1タンパク質は、可溶型として分泌され得るが、sPD1-TWIST1のみが、PD-L1/L2発現細胞と相互作用し(図2B~C)、sPD1ベースTWIST1ワクチンは、以前に示したように(11、28)、TWIST1抗原をDCに向けることにより、養子T細胞免疫を改善し得る。これを試験するために、我々は、sPD1-TWIST1が、BALB/cマウス中、インビボでTWIST1特異的免疫応答を高め得るかどうかの判定を試みた。手短に説明すると、我々が以前に確立したように(11、28)、100μgのsPD1-TWIST1またはsTWIST1のDNAプラスミドをEPを介して、3週間間隔で3回、筋肉内(i.m)注射した。最後のワクチン接種の2週後、全てのマウスを屠殺し、免疫応答分析のために血液および脾臓検体を収集した(図2D)。我々は、sPD1-TWIST1ワクチン接種が、sTWIST1ワクチン接種に比べて、TWIST1特異的T細胞応答を有意に高めたことを見出した(図2E)。さらに、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスは、TWIST1ペプチドプールでエクスビボ刺激後、より高い頻度のIFNγおよびTNFα発現CD4+T細胞、ならびにTNFα発現CD8+T細胞を有し(図2Fおよび図7)、sPD1ベースワクチンは、TWIST1自己抗原に対する免疫寛容を破壊することを示す。重要なのは、対照と比較した場合、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスのCD3+T細胞は、WT AB1細胞とインビトロで共培養した場合、有意により多量のIFNγおよびTNFαを放出したが、TWIST1 KO細胞ではそうではなく(図2G)、従って、TWIST1発現腫瘍細胞の認識における、ワクチン誘発T細胞の特異性を示すことである。TWIST1ワクチン接種のインビボ腫瘍増殖を制御する能力を評価するために、3回目のワクチン接種の2週後に、致死用量の1×10個のWT AB1細胞をワクチン接種マウスの皮下に(s.c.)接種した(図2D)。我々は、sPD1-TWIST1ワクチンが、sTWIST1またはモックワクチンに比べて、AB1中皮腫成長を有意に抑制したことを見出した(図2H)。さらに、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスのみが、AB1チャレンジマウスの生存時間を実質的に延長し、37.5%の無腫瘍生存をもたらした(図2I)。まとめると、我々の結果は、sPD1-TWIST1ワクチンが、中皮腫に対する防御免疫を生成するために、TWIST1免疫寛容の破壊に有用であるという考えを裏付けた。
【0020】
sPD1-TWIST1ワクチンは、AB1肺転移を抑制した。TWIST1の発現は、中皮腫転移活性に関与するので、我々は次に、AB1中皮腫細胞の転移の抑制におけるTWIST1ワクチンの活性を調べることを試みた。上記と同じ転移モデルを用いて、ホタルルシフェラーゼを安定に形質導入したWT AB1細胞(AB1-Luc)をワクチン免疫マウスの静脈内に注射して肺転移を誘導し、肺腫瘍増殖を生物発光画像化により監視した。モックワクチン接種に比べて、非標的化sTWIST1 DNAワクチンは、何らの抗中皮腫活性も示すことができなかった(図3A~B)。肺転移の有意な低減は、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスでのみ見出された。AB1注射の28日後の終了点で、sTWIST1ワクチン接種およびモック治療群のマウスは、有意に低減した体重を示した(図3C)。重要なのは、インビボ画像化結果と一致して、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスは、肺表面上に有意に低減した転移結節(図8A)およびより少ない肺中の転移領域(図3D)を有し、AB1中皮腫の転移抑制におけるsPD1-TWIST1の強力な影響を示唆する。免疫抑制環境の形成は、腫瘍免疫回避および中皮腫発生に関連することが報告された(11、29、30)。この転移モデルで中皮腫関連免疫抑制環境の克服におけるワクチン誘発T細胞免疫の重要性を示すために、我々は、実験の終了点でのT細胞機能ならびに種々の免疫抑制細胞の発生頻度をエクスビボで分析した。我々は、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウスは、対照と比較して、有意に高いレベルのIFNγおよびTNFα産生CD4+およびCD8+T細胞(図3E)、ならびにNK細胞(図8B)を有することを見出した。さらに、多形核および単球性骨髄由来サプレッサー細胞骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)サブセットおよびCD4+制御性T細胞(Treg)を含む、免疫抑制細胞の発生頻度は、sTWIST1またはモックワクチン接種マウスよりも、sPD1-TWIST1ワクチン接種マウス中で有意に低かった(図3F)。まとめると、これらの結果は、sPD1-TWIST1ワクチン接種は、AB1中皮腫の転移を抑制し、腫瘍関連免疫抑制を低減することを示した。
【0021】
チェックポイント調節は、既発症中皮腫の治癒のためのsPD1-TWIST1ワクチン接種の抗腫瘍活性を高める。腫瘍負荷ホストにおける内因性抗腫瘍T細胞応答の調節の除去での抗体媒介免疫チェックポイント阻害の成功を考慮して、我々は、sPD1-TWIST1ワクチンにより生成された抗中皮腫応答が抗CTLA-4(α-CTLA-4)抗体によるチェックポイント阻害から恩恵を受けることができるかどうかを調べた。我々は、α-CTLA-4抗体は、sPD1-TWIST1ワクチン接種の抗腫瘍活性を高め得ることを仮定した(31)。この仮説を試験するために、我々は最初に、既発症AB1中皮腫に対する抗腫瘍有効性を調査した。最初に、マウスの皮下に致死用量の5×10個のAB1細胞を接種し、これに続けて、sTWIST1、sPD1-TWIST1または模擬ワクチン接種を固形腫瘍が触知できる腫瘍接種の7日後に開始して、10日間隔で3回実施した(図4A)。同時に、注入毎に200μgの投与量のα-CTLA-4抗体を腹腔内(i.p.)に8日目に、およびワクチン接種の間、4日毎に投与した。我々は、α-CTLA-4単剤療法は、既発症AB1中皮腫に対して、なんらの抗腫瘍活性を示さず、全てのマウスは、それらの臨床転帰により40日以内に安楽死させる必要があったことを明らかにした(図4B~C)。sPD1-TWIST1ワクチン接種単剤療法は、腫瘍増殖を遅らせるわずかな抗中皮腫活性を示し、1/6マウスで腫瘍退縮を生じた。特に、腫瘍接種の25日後に測定して、sPD1-TWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4の併用療法は、α-CTLA-4単剤療法およびPBS治療群の両方に比べて、腫瘍増殖を減速させ、腫瘍体積の有意な減少があった(α-CTLA-4単独に比べてp=0.0224;PBSに比べてp=0.0386)。PD1ベースワクチンのα-CTLA-4治療との併用療法はまた、マウスの6/10での腫瘍根絶に到達し、一方、sTWIST1およびα-CTLA-4併用療法は、動物生存に対する有意な強化を示すことができず、終了点で1/7のみの無腫瘍生存であった(図4B~C)。この結果は、効果的抗腫瘍応答の誘発におけるsPD1-TWIST1ワクチン接種の重要な役割を実証した。次に、我々は、これらのマウスでのTWIST1特異的T細胞応答を測定し、sPD1-TWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4併用療法由来の脾細胞が、より多くのTWIST1特異的T細胞を誘発し、一方、sTWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4併用療法も、単剤療法も、そのようにできないことを見出した(図4D)。特に、腫瘍根絶を有するマウスは、担腫瘍マウスより強力なIFNγ T細胞応答を誘発し、既発症AB1中皮腫の除去におけるワクチン誘発T細胞応答の関与を示している。別のモデルでは、以前の調査は、4T1乳癌転移におけるTWIST1および乳癌免疫療法のためのTWIST1ワクチン接種の役割を主に実証した(26、27)。我々は、sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4の併用療法が腫瘍増殖および原発性4T1乳房腫瘍のサイズを低減し、4T1肺転移に対してより強力な抗腫瘍効果を有し(図4E~F)、これには、顕著に増大したインビボIFNγ+TNFα+CD8+T細胞が付随した(図4G)ことを見出した。まとめるとこれらの結果は、チェックポイント調節物質α-CTLA-4が、sPD1-TWIST1ワクチン接種により誘発された抗腫瘍活性を有意に高め、既発症AB1中皮腫の退縮ならびに乳腺癌および転移性4T1乳癌の増殖抑制を誘導することを示した。
【0022】
併用療法は、免疫優性TWIST1ペプチドに対する永続性のT細胞免疫応答を誘導した。我々は次に、併用sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4により誘導された抗腫瘍応答の持続力を調査することを試みた。sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4の併用療法を受けた後にAB1中皮腫を除去した別のマウス群で、追加のより高い投与量の1×10個のAB1-Luc細胞をそれらの反対側の側腹部の皮下に初期完全腫瘍拒絶の90日を越える日数後に再チャレンジした。AB1-Luc中皮腫の完全拒絶は、これらのマウスで21日後に観察されたが、一方、全ての無感作マウスは、AB1-Lucチャレンジで死亡し(図5A~B)、長期記憶応答の誘導を示唆する。中皮腫除去に関与したT細胞の型を詳しく検討するために、初期の完全腫瘍拒絶後のsPD1-TWIST1ワクチン接種マウス由来の精製した脾臓T細胞を用いて、インビトロ細胞傷害性アッセイを実施した。上記のIFNγ応答と一致して、併用sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4を受けたマウス由来のCD3+T細胞は、sTWIST1併用療法(図5C)または単剤療法(図9A)に比べて、高められたインビトロ細胞傷害活性を示した。より重要なことに、標的細胞の死滅は、CD8+T細胞により実施されたが、CD4+T細胞によっては実施されなかったことである(図5C)。加えて、これらの細胞傷害性CD8+T細胞の養子移入は、AB1-Luc腫瘍を有するSCIDマウスの腫瘍増殖の減速および長期生存をもたらし(図5D)、効果的抗中皮腫CTLの誘導における併用療法の重要な役割を示す。次に我々は、併用sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4により誘導されたT細胞により認識されるTWIST1アミノ酸配列を特徴付けた。エクスビボ単離脾細胞を最初に、全体TWIST1タンパク質をカバーする3つの15マーを含むミニプールを用いたエリスポットアッセイでスクリーニングした。および特異的反応性は、ミニプール37~39(DKLSKIQTLKLAARYIDFLYQVL)に対して主に見出された(図5Eおよび図9B)。対照的に、ミニプール40~42(ARYIDFLYQVLQSDELDSKMASC)(これは、以前に報告したエピトープLYQVLQSDELを含む)に対しては、応答は認められなかった(26、32)。次に、我々は、2つのミニプール中の個別の単一15マーを試験し、ペプチド37および38は、ペプチド39よりも強力な活性を示すことが明らかになり、ペプチド37~38(DKLSKIQTLKLAARYIDFL)はBALB/cマウス中の免疫優性エピトープを含むことを示唆する(図5Fおよび図9B)。特に、この配列は、異なるホスト種間で高度に保存されている。従って、これらのデータは、併用療法が、TWIST1タンパク質内の免疫優性短鎖エピトープに対するワクチン特異的および永続性抗腫瘍CD8+CTL応答を誘発したことを示す。
【0023】
考察
悪性中皮腫の治療のための新規および潜在的治療標的の解明は、この高悪性度腫瘍型に対する効果的治療の非存在下で、差し迫った必要性のまま残されている。以前の研究は、マウスモデルにおける乳癌および前立腺癌を制御するための抗原特異的T細胞応答を誘発する免疫療法の手法として、TWIST1を送達するための酵母およびポックスウイルスベクターの使用について記載した(26、27、33)。比較すると、本研究は、我々の知る限りでは、免疫コンピテント中皮腫癌モデルでのDNAワクチンによるTWIST1特異的T細胞の誘導を最初に示すものである。我々の結果は、sPD1-TWIST1ワクチン接種が、TWIST1特異的T細胞応答に依存する皮下および転移性中皮腫チャレンジの両方での腫瘍抑制を提供するために、中皮腫免疫療法のための治療的介入としての潜在力を有することを示す。重要なのは、我々は、CTLA-4免疫チェックポイント阻害と組み合わせたsPD1-TWIST1ワクチン接種が、免疫抑制TME中で、TWIST1特異的T細胞をさらに活性化および強化して、より良好な細胞傷害活性および長く続く記憶を付与し、マウス中の既発症AB1中皮腫および4T1乳癌に対して、永続性の腫瘍退縮および延命効果に繋がることを示すことである。最終的に、我々は、効果的T細胞は、マウスおよびヒトTWIST1配列間で高度に保存された、高度に免疫優性短鎖ペプチドを認識し、それにより、ヒトPD1-TWIST1ワクチンをさらに最適化し、その有効性を最大化し、潜在的副作用を最小化するための論理的根拠を提供することを明らかにした。
【0024】
我々の研究は、TWIST1が中皮腫浸潤および転移に必要であることを示す。多数の腫瘍モデルでは、癌細胞は、増殖を維持するために、またはEMT誘導を介して転移拡散を促進するために、TWIST1に依存したままであることが示された(20、21、23)。しかし、以前の2つの論文、1つは要約形式、のみが、発現上昇したTWIST1発現と中皮腫の予後不良との間に関連性がある可能性を報告した(24、25)。中皮腫での高TWIST1発現の役割は、まだ探求されていないままである。ここで、我々は、TWIST1発現と中皮腫患者の臨床ステージとの間の関連を報告する。ノックアウトおよび過剰発現手法により、我々は、TWIST1がEMT関連分子の発現を促進し、中皮腫細胞インビトロ浸潤およびインビボ転移を増大する方向に調節することをさらに示す。TWIST1による浸潤の促進は、2種の異なる浸潤アッセイで検出された。TWIST1インビボ発現により媒介される転移能を調査するために、我々は、AB1細胞の静脈内注射により実験的転移モデルを確立した。これは、肺転移および動物の急速死亡を生じた。我々は、TWIST1のサイレンシングは、AB1中皮腫の転移能力をほぼ消滅させ、一方、その過剰発現は、転移をさらに顕著に強化しないことを明らかにし、これは、浸潤および血管内異物侵入が達成されると、極端に高いTWIST1発現の維持は、中皮腫に必要でない可能性があることを意味する(22、23)。興味深いことに、より少ない程度ではあるが、TWIST1は、クローン原性潜在力およびAB1中皮腫の皮下腫瘍増殖を促進する。これと一致して、以前の研究はまた、TWIST1は、p53腫瘍抑制因子経路を妨害し、種々の悪性細胞に対し、生存優位性を提供することを明らかにした(20、21)。全体として、TWIST1の阻害は、中皮腫成長および転移を阻止する。従って、我々は、TWIST1が中皮腫ワクチンのための潜在的抗原として機能し得ることを支持する。
【0025】
sPD1-TWIST1ワクチンは、T細胞応答の誘発に対する免疫原性を有する。癌細胞により異常に発現される自己タンパク質である標的化TAAは、腫瘍ワクチンの共通の戦略である。しかし、この手法は、高親和性T細胞の胸腺欠失の問題に直面し、弱められた低結合力レパートリーを残す。それにもかかわらず、分化抗原(例えば、チロシナーゼ関連タンパク質2、TRP2)または癌精巣抗原(例えば、前立腺酸ホスファターゼ、PAP)の治療的ワクチン接種は、胸腺免疫寛容をバイパスし、腫瘍退縮を誘導することが示された(14、34~36)。TWIST1は、マウス精巣またはヒト胎盤中で主に発現され、それを、治療ワクチンのための可能な癌抗原候補にする(26、37)。実際に、酵母またはポックスウイルスベクターにより送達される2つのTWIST1ベースワクチンは、何らの明確な毒作用なしに、TWIST1特異的CD8+およびCD4+T細胞免疫応答を誘発する能力を実証した(26、27、33)。しかし、両ワクチン接種戦略は、限定的なT細胞活性化および治療効力を示し、ワクチン免疫原性を改良する必要性を示唆した。ここで、我々は、TWIST1特異的T細胞応答を高め、最も効果的な腫瘍除去を達成するための2つの手法を採用した。1つは、sPD1ベースワクチン接種を採用することであり、もう1つは、このワクチンと免疫チェックポイント阻害薬を組み合わせることである。
【0026】
本発明の試験は、TWIST1に対する免疫寛容のDNAワクチンによる破壊は、TWIST1抗原のsPD1への融合を必要とすることを示す。sPD1ベースワクチン接種は、抗原結合を高め、PD1/PD-L相互作用を介して、DCによる取り込みを高めることにより、HIV-1 p24特異的CD8+T細胞応答を増強することが、以前に報告された(28)。加えて、単剤療法としてのsPD1-p24ワクチン接種は、効力の高いエフェクターCD8+T細胞を誘発し、p24異種抗原を発現している悪性中皮腫を防止および治癒した(11)。このような戦略のTWIST1への適用は、TWIST1特異的CD8+およびCD4+T細胞の誘導に成功し、これは、従来のsTWIST1ワクチン接種によっては達成されなかった。ワクチンコード化sPD1-TWIST1は、PD-L1/L2への結合のために細胞外に分泌する能力を保持するが、ワクチン投与のためのEPの使用は、局在化した炎症をインビボで誘導し、DC動員を促進し(28)、これはまた、検出されるワクチン免疫原性の強化に寄与する可能性がある。ワクチン誘発T細胞は、TWIST1発現の認識を介して、AB1中皮腫に対して反応性であり、移植皮下AB1腫瘍の拒絶および肺転移の低減に繋がる。特に、増大したワクチン誘発IFNγおよびTNFα産生CD4+/CD8+T細胞は、MDSCおよびFoxp3+CD4+Tregなどの免疫抑制ネットワークの抑制に付随する。これらの属性の全ては、抗TWIST1免疫応答の生成に寄与し、我々がsPD1-TWIST1ワクチン接種で観察した改善された予防効果に寄与し得る。
【0027】
併用sPD1-TWIST1およびα-CTLA-4抗体治療は、相乗的に作用し、TWIST1特異的T細胞応答および免疫療法の有効性を高める。現在まで、ワクチン接種を介した抗腫瘍T細胞の誘導は、おそらく、誘導免疫応答が望ましい臨床転帰を生成するためには十分に強力または広範でない、またはTME中で、エフェクターT細胞による免疫チェックポイント分子の取得がそれらを次第に疲弊させ、エフェクター機能を発揮できなくするために、より少ない臨床的成果に遭遇してきた(13、38、39)。加えて、単剤療法としてのCTLA-4およびPD1阻害は、限られた数の患者でのみ機能し、それらの臨床的有用性は、既存の腫瘍特異的T細胞応答の存在下で最も効果的である(40)。従って、最近の研究は、これらの新規治療戦略の全体有効性を高めるために組み合わせ戦略を探索してきた。癌ワクチンと免疫チェックポイント調節の組み合わせは、前臨床モデルおよび癌患者の両方で有望な結果を示した(31、41~43)。従って、PD1阻害は、抗原送達のためにPD-L相互作用を伴うsPD1-TWIST1タンパク質の標的化を破壊する可能性があるので(28)、我々は、代わりα-CTLA-4抗体と組み合わせる場合には、sPD1-TWIST1ワクチン接種誘導抗腫瘍T細胞応答が最適化できると仮定した。我々は、α-CTLA-4抗体も、sPD1-TWIST1ワクチン接種も、単剤療法としては、中皮腫退縮を誘導できないことを見出した。しかし、それらの併用免疫療法は、中皮腫の除去のために、効果的で、永続性のCD8+CTLを誘導した。我々は、この二重治療は、複数の作用機序を介して機能すると考えている。一方では、非標的化ワクチンは、併用免疫療法設定であっても、T細胞応答の誘導に失敗するので、sPD1ベースDC標的化が不可欠であり、従って、T細胞免疫刺激におけるsPD1ベースワクチン接種戦略のユニークな利点を明確に示す。他方では、α-CTLA-4抗体は、T細胞刺激に対する免疫抑制を戻すために不可欠であり、これは、sPD1-TWIST1ワクチン接種単剤療法では、ほとんど無効にされる。それにもかかわらず、CD8+CTLの活性化は、AB1中皮腫および4T1乳癌モデルの両方で観察される併用免疫療法の成功に重要であるが、それらが抗腫瘍活性を媒介する詳細機序は、まだ解明される必要がある。全体として、我々の結果は、悪性中皮腫に対する単剤療法としてのワクチン接種またはCTLA-4阻害の主な使用制限を明らかにする。より重要なことは、我々は、抗腫瘍免疫療法の有効性を促進するための、併用sPD1ベースワクチン接種およびα-CTLA-4抗体免疫療法の優位性を示すことである。
【0028】
sPD1-TWIST1ワクチン接種およびα-CTLA-4併用療法により誘発された効果的T細胞は、TWIST1抗原内の高度に免疫優性短鎖ペプチドを認識する。これは、この研究の前には報告されていない。以前に、TWIST1エピトープLYQVLQSDELが、4T1乳癌に対してマウスCTLを特異的に活性化するために特定された。これは、要約形式として発表された(44)。このエピトープは、T細胞の長期刺激後に、エクスビボ培養上清中のIFNγ産生を評価することにより、TWIST1特異的T細胞応答を検出するための次の研究で使用され、T細胞応答のその弱い誘導因子を示唆するのであろう(26、32、33)。対照的に、我々の結果は、LYQVLQSDEL以外のミニプール37~39の短鎖ペプチドに対するT細胞応答がAB1中皮腫の治癒マウス中に主に存在することを示す。観察された特異性は、PD1ベースワクチン接種手法および腫瘍型に依存する可能性がある。それにもかかわらず、我々の知見は、PD1ベースTWIST1ワクチン設計のさらなる最適化のための論理的根拠を提供する。
【0029】
まとめると、TWIST1をコードするsPD1ベースDNAワクチンを用いた免疫化は、TWIST1特異的T細胞応答を誘導し、転移を抑制し、中皮腫成長を制御する。sPD1-TWIST1ワクチン接種とCTLA-4免疫チェックポイント調節との合理的な組み合わせは、TWIST1特異的T細胞媒介腫瘍拒絶を促進する。種々の固形腫瘍型にわたる広範囲の発現があるので、この前臨床試験は、将来のヒトTWIST1抗原を標的とする臨床試験のための基盤として役立つであろう。
【0030】
実施例
方法
マウス。全てのマウスは、HKU Laboratory Animal Unit(LAU)の標準操作手順に従って維持し、全ての手順は、HKUの教育および研究における生動物の使用に関する委員会(CULATR)により承認された(認可番号#4249-17)。6~8週齢雌BALB/cおよびSCIDマウスを使用した。
【0031】
細胞株および培養条件AB1細胞株(European Collection of Cell Culturesから購入)および4T1細胞株(Prof.Jian-Dong Huang(School of Biomedical Science,HKU)から譲り受けた)を、完全Roswell Park Memorial Institute-1640培地(RPMI、Gibco;10%FBS、2mMのL-グルタミンおよび抗生物質を補充)中で維持した。TWIST1 KO腫瘍細胞を生成するために、HEK293T細胞に、TWIST1(TWIST1 sgRNA、5’-TTGCTCAGGCTGTCGTCGGC-3’)標的化Cas9-シングルガイドRNA含有レンチウイルス発現ベクターpLentiCRISPRを、pCMV-VSV-GおよびpsPAX2プラスミド(Dr.Kin-Hang Kok(Department of Microbiology,HKU)から譲り受けた)と共に遺伝子導入した。TWIST1過剰発現腫瘍細胞を生成するために、TWIST1遺伝子をpCDHベクター(System Biosciences)に挿入し、pPACKH1レンチウイルスパッケージングシステム(System Biosciences)と一緒に、HEK293T細胞の遺伝子導入に使用した。これらの遺伝子導入の上清由来のウィルスをAB1細胞の形質導入とそれに続くピューロマイシン選択に使用した。TWIST1過剰発現、KOおよびルシフェラーゼ発現細胞株(AB1-Luc)を、1μg/mlのピューロマイシン(Thermo Scientific)を補充した完全RPMI中で維持した。T細胞および脾細胞を、50μMの2-メルカプトエタノール(Sigma)を補充した完全RPMI中で培養した。
【0032】
抗体。次の抗体をウェスタンブロッティングに使用した:抗TWIST1(クローンTwist2C1a、Abcam)、抗β-アクチン(クローンAC-15、Abcam)および抗GAPDH(クローンEPR16891、Abcam)。次の抗体をeBioscienceから購入し、フローサイトメトリーに使用した:抗CD11b(クローンM1/70)、抗Ly6C(クローンHK1.4)、抗Ly6G(クローン1A8-Ly6g)、抗CD3(クローン17A2)、抗CD4(クローンGK1.5)、抗CD8(クローン53-6.7)、抗PD1(クローンJ43)。次の抗体をBioLegendから購入し、フローサイトメトリーに使用した:抗CD25(クローン3C7)、抗Foxp3(クローン150D)、抗CD49b(HMα2)、抗PD-L1(クローン10F.9G2)、抗PD-L2(クローンTY25)、抗IFNγ(クローンXMG1.2)、抗TNF-α(クローンMP6-XT22)、抗IL-2(クローンJES6-5H4)。細胞表面および細胞内免疫染色法を以前記載したように(11)実施した。FlowJoソフトウェア(Tree Star、v10)を用いてフローサイトメトリーデータ分析を実施した。インビボ試験で使用した抗CTLA4抗体は、BioXcellから購入した(クローン9D9)。
【0033】
腫瘍モデル。腫瘍細胞を回収し、100μlのPBS中の5×10個の細胞の単細胞懸濁液をBALB/cマウスの右後部側腹中に(AB1モデルの場合)または第2の乳腺中に(4T1モデルの場合)皮下注射した。腫瘍体積をノギスで測定した(腫瘍体積=1/2(長さ×幅2))。ルシフェラーゼ発現腫瘍をIVISスペクトル(PerkinElmer)で測定し、Living Image software(バージョン4.0、PerkinElmer)を用いて、以前記載したように(11、45)、対象領域(ROI)内の光子/s/cm/srとして提示したAB1実験の転移モデルでは、1×10個のAB1細胞をBALB/cマウスの尾静脈に注射し、非侵襲的生物発光画像化およびH&E染色により、終了点での肺中のAB1細胞のコロニー形成を測定した。原発腫瘍アブレーションの60日後に、動物の反対側の側腹部にAB1-Lucの再チャレンジを実施した。4T1自然発生的転移モデルでは、終了点での標準的クローン原性アッセイにより4T1腫瘍細胞の肺中への転移が試験される(46)。検体を亜鉛ホルマリン固定液(sigma)で固定した後、次のH&E染色のために、パラフィンブロックに埋め込んだ。転移領域は、ImageJにより測定される転移腫瘍により占められる肺領域のパーセンテージとして定義された。
【0034】
定量的逆転写酵素-PCR。総細胞RNAをRNeasyキット(Qiagen)で抽出し、cDNAをSuperScript III First-Strand Kit(Thermo Scientific)により生成した。その後、次のプライマーをPrimeStar HS DNA Polymerase(Takara)と共に用いてPCRを実施した:Twist1、5’-AGCTACGCCTTCTCCGTCTG-3’、5’-CTCCTTCTCTGGAAACAATGACA-3’;ビメンチン、5’-TGACCTCTCTGAGGCTGCCAACC-3’、5’-TTCCATCTCACGCATCTGGCGCTC-3’;N-カドヘリン、5’-AAAGAGCGCCAAGCCAAGCAGC-3’、5’-TGCGGATCGGACTGGGTACTGTG-3’;E-カドヘリン、5’-ACACCGATGGTGAGGGTACACAGG-3’、5’-GCCGCCACACACAGCATAGTCTC-3’;Fsp1、5’-CCTGTCCTGCATTGCCATGAT-3’、5’-CCCACTGGCAAACTACACCC-3’;Zeb1、5’-GATTCCCCAAGTGGCATATACA-3’、5’-TGGAGACTCCTTCTGAGCTAGTG-3’;オクルディン、5’-TGCTAAGGCAGTTTTGGCTAAGTCT-3’、5’-AAAAACAGTGGTGGGGAACATG-3’;アクチン、5’-GGCATGGGTCAGAAGGATT-3’、5’-GGGGTGTTGAAGGTCTCAAA-3’;Gapdh、5’-GGTCCTCAGTGTAGCCCAAG-3’、5’-AATGTGTCCGTCGTGGATCT-3’。
【0035】
インビトロ腫瘍細胞ベースアッセイ。各ウェル当り0.5×10個の細胞の密度のAB1細胞を、増殖アッセイのために96ウェルプレートの完全RPMI培地中に播種し、製造業者の説明書に従い、MTS細胞生存率アッセイ(Promega)を0、24、48および72時間で実施した。各ウェル当り500個の完全RPMI培地中のAB1細胞の初期細胞密度で、コロニー形成アッセイを6ウェルプレートで実施し、標準プロトコル(47)に従って、9日後にクリスタルバイオレット(0.5w/v)で染色した。単層創傷治癒アッセイのために、プラスチックチップ(1mm)により引っ掻き傷を付けた1日後に、1×10個の細胞を6ウェルプレート中に播種した。細胞を洗浄してデブリを除去後、細胞を完全RPMI培地中で培養し、創傷治癒を経時的に監視した。細胞浸潤アッセイのために、AB1細胞を無血清RPMI培地中で一晩飢餓状態にした。30μlの解凍マトリゲル(BD Biosciences)を用いて、8μmの細孔径のミクロポアフィルターを備えた各浸潤チャンバー(Transwell、BD Biosciences)をコートした。次に、チャンバーを37℃で30分間インキュベートし、無血清RPMIで静かに濯いだ。その間に、トリプシン処理後にAB1細胞を回収し、無血清RPMI培地で1回洗浄した。次に、無血清RPMI中の1×10細胞/mlの密度の250μlのAB1細胞を上段チャンバーに加えた。化学誘引物質としての10%FBSと共に、500μlのRPMIを下段チャンバーに加えた。37℃で24時間のインキュベーション後、フィルター上のマトリゲルを綿棒で除去した。クリスタルバイオレット染色後、膜をPBSで数回洗浄し、その後、画像を取得した。次に、細胞染色を抽出緩衝液で室温下、30分間溶解し、吸光度をマイクロプレートリーダーにより560nmで読み取った。
【0036】
エクスビボ細胞調製。以前記載したように(11、45)、脾細胞を単離した。腫瘍を小片に切断し、1mg/mlのコラゲナーゼIV(Sigma)および0.5U/mlのDNアーゼI(Roche)で37℃下、1.5~2.0時間消化した。細胞を70μmストレーナーを通した後、40%/80%パーコール勾配(Sigma)に供した。×800gで20分の遠心分離後、界面層の白血球を回収した。CD3+、CD4+およびCD8+T細胞を含むT細胞をUntouched T Cell Isolation Kit(Miltenyi Biotech)により単離した。
【0037】
エリスポット、サイトカイン産生アッセイおよびT細胞細胞傷害性アッセイ。単離脾細胞中のIFNγ産生T細胞をエリスポットアッセイにより評価した(11、45)。11アミノ酸による15マーオーバーラッピングとして生成された49ペプチドのマウスTWIST1ペプチドライブラリーをGL Biochem(Shanghai)により合成した。共培養上清中のサイトカイン濃度をLEGENDplex T Helper Cytokine Panel(BioLegend)により測定した。精製T細胞のAB1細胞に対する細胞毒性効果をNonRadioactive Cytotoxicity Assay(Promega)を用いて、製造業者の説明書に従って測定した。
【0038】
統計分析。全データは平均値±s.e.m.で表される。試験概要、標本数、および統計解析に関する情報は、本文、図、および図の説明に示される。平均差異の有意性は、ノンパラメトリックマン・ホイットニーU検定またはウィルコクソンマッチドペア検定(matched-pairs tests)を対応のないおよび対応のある分析のそれぞれに対して用いてデータセットを比較して決定した。2元配置分散分析を用いて、マウス腫瘍体積データを異なる群間で比較した。生存データをカプランマイヤー生存曲線としてプロットし、log-rank(Mantel-Cox)検定を実施し、GraphPad Prism7ソフトウェア中の差異を分析した。全ての統計解析では、P<0.05、**P<0.01および***P<0.001である。
【0039】
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【0040】
前述の特定の実施形態の記載は、当該技術(引用されたおよび本明細書に参照により組み込まれた文書の内容を含む)の技能の範囲内の知識を適用することにより、他者が、過度の実験をすることなく、また本開示の一般的概念から逸脱することなく、様々な用途に向けてこのような特定の実施形態を容易に修正および/または適応させることができるという本開示の一般的性質を完全に明らかにしている。従って、このような適応および修正は、本明細書で提示された教示および手引きに基づいて、開示された実施形態の等価物の意味および範囲に入ることが意図されている。本明細書の用語または表現が、当業者の知識と組み合わせて、本明細書で提供される教示および手引きを考慮して当業者により解釈され得るように、本明細書の表現または用語は、説明を目的とし、限定を目的とするものではないことを理解されたい。
【0041】
本開示の種々の実施形態を上記で記載してきたが、それらは例示の目的のみで提示され、限定するものではないことを理解されたい。形式および詳細における種々の変更を、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなしに本明細書でなし得ることが当業者には明らかであろう。従って、本開示は、上述した例示的実施形態のいずれかにより限定されるべきではなく、次の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ定められるべきものである。
【0042】
本明細書で引用される全ての参考文献は、それぞれ個別の刊行物または特許または特許出願が具体的に、個別にその全体が参照により組み込まれることが示された場合と同程度にそれらの全体が本出願において参照により本明細書に組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】