(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】呼吸器病原体を処置するためのヨウ素化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 33/18 20060101AFI20230510BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230510BHJP
A61M 11/04 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K33/18
A61P11/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61M11/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022548517
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-10-11
(86)【国際出願番号】 US2021023574
(87)【国際公開番号】W WO2021195017
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522316685
【氏名又は名称】アイオーキュア,インク.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ファーブ,マーク ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA09
4C086HA24
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
【解決手段】本明細書に提供されるのは、粘膜に対するヨウ素処置、およびこの方法による、例えば、吸入による気道病原体の処置と蒸気の蒸発との組み合わせによるもののための組成物、方法、使用、および製造品である。ある実施形態では、ヨウ素処置は、分子ヨウ素を放出する化合物および/または生理学的に活性なヨウ素含有化合物の投与を包含する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸器病原体に感染した対象の気道に投与するための蒸気を含む組成物であって、ここで、
(a)前記蒸気は、pHが7.0~10.0の水溶液を、摂氏30~80度(°C)の温度まで加温することによって生成され、前記水溶液は、ヨウ素放出性イオン化合物と元素状ヨウ素を総ヨウ素量0.5~10ppmで含み、
(b)前記投与は、一日当たり2時間以下であり、
(c)前記患者の気道に送達される総ヨウ素が、一日当たり8mg/kg体重を超えない、組成物。
【請求項2】
呼吸器病原体に感染した対象を処置するためのシステムであって、
pHが7.0~10.0の水溶液が入れられた容器であって、前記水溶液は、ヨウ素放出性イオン化合物と元素状ヨウ素を総ヨウ素量0.5~10ppmで含む、容器と、
前記容器の中の前記水溶液を摂氏30~80度(°C)の温度まで加温し、これによって蒸気を生成するように構成された加熱要素と、
前記蒸気が呼吸器病原体に感染した対象の気道に到達するように前記蒸気を供給するために構成された人工呼吸器と、を含み、
ここで、前記人工呼吸器は、1日当たり2時間以下前記蒸気を投与するために構成され、前記気道に送達される総ヨウ素が、1日当たり8mg/kg体重を超えない、システム。
【請求項3】
元素状ヨウ素とヨウ素放出性イオン化合物を含む一定量の投与量パックであって、(a)前記投与量パックをpHが7.0~10.0、かつ総ヨウ素量0.5~10ppmの水溶液に導入すること、(b)前記水溶液を摂氏30~80度(°C)の温度まで加温し、それによって、蒸気を生成すること、(c)前記蒸気を呼吸器病原体に感染した対象の気道に投与することであって、ここで、前記投与が1日当たり2時間以下の投与であり、前記気道に送達される総ヨウ素が、1日当たり8mg/kg体重を超えない、投与することを行うための指示書に伴う、一定量の投与量パック。
【請求項4】
製造品であって、請求項2に記載のシステムと、呼吸器病原体に感染した対象の気道に蒸気を投与することにおいて前記システムを使用するための指示書と、を含む、製造品。
【請求項5】
前記ヨウ素は前記対象の下気道に供給される、請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項6】
前記呼吸器病原体は、ウイルス、細菌、真菌類およびミコバクテリアからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項7】
前記呼吸器病原体はウイルスである、請求項6に記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項8】
前記呼吸器病原体はCOVID-19である、請求項7に記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項9】
前記ヨウ素放出性イオン化合物は、ヨウ化カリウムまたはポビドンヨウ素である、請求項1~8のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項10】
前記蒸気は、ACE阻害剤、ビタミンD、ヒドロキシクロロキン、亜鉛、コルチコステロイドと抗凝固剤から選択される薬剤、マウスウォッシュ、イベルメクチン、あるいは前記対象の細胞において細胞内pHまたはリソソームpHを増大させる薬物と同時に投与される、請求項1~9のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項11】
前記蒸気および前記対象は、密閉空間内に配置される、請求項1~10のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項12】
前記蒸気は、呼吸チューブ内に配置される、請求項1~11のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項13】
前記蒸気は、呼吸器系フェイスマスク内に配置される、請求項1~11のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項14】
前記蒸気は、鼻プロング内に配置される、請求項1~11のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項15】
前記蒸気は、人工呼吸器内に配置される、請求項1または3~14のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項16】
前記人工呼吸器は、前記水溶液を含む溶液容器と、前記水溶液の蒸発を促進する加熱要素と動作可能に連結されている、請求項2または15のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項17】
前記人工呼吸器の圧力および頻度は、前記対象の深呼吸を可能にするように構成される、請求項2または15~16のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項18】
前記人工呼吸器はヨウ素の自動補充システムを含む、請求項2または15~17のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項19】
前記人工呼吸器はアルカリの自動補充システムをさらに含む、請求項18に記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【請求項20】
前記人工呼吸器はアルカリの自動補充システムを含む、請求項2または15~17のいずれか1つに記載の組成物、システム、一定量の投与量パック、または製造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示されるのは、加熱されたヨウ素塩溶液の使用を含む、呼吸器感染症を処置するための方法である。
【背景技術】
【0002】
呼吸ウイルスが数多く存在しているが、近年で最も重篤なものは現在のコロナウイルス(COVID-19)である。インフルエンザは広く蔓延しており、近年のとある冬で米国では6万人が死亡した。他にも、SARS、呼吸系発疹ウイルス、抵抗性結核、抗生物質耐性肺炎、カンジダ症など、処置が困難な病原体が存在する。
【0003】
ウイルスに対する抗生物質は希少であり、あまり効果がないため、ウイルスは大きな問題である。
【0004】
抗生物質に対する応答が不十分である呼吸器細菌病原体が存在する。その一例として、結核の処置は、薬剤耐性の増加を満たしつつある。
【0005】
要約すると、多くの種類の呼吸器病原体、特にウイルスに対して有用である、広く有効な抗生物質が必要とされている。
【0006】
医薬品におけるヨウ素およびヨウ素化合物
ヨウ素溶液は、皮膚用、水溶液用、および空気滅菌用の防腐剤として知られている。
【0007】
ヨウ素化合物には他の医療用の用途がある。ヨウ化カリウムは、甲状腺疾病に対して、および原子力緊急事態において放射性ヨウ素の取込みをブロックするために、長きにわたり使用されている。
【0008】
ヨウ素は他の用途では安全ではないというのが、医師らにおいて一致する意見である。Harrisonの「Principles of Medicine」およびGoodmanとGilmanの薬理学のテキストなどの標準的な教科書において、ヨウ素は一定のレベルを超えると吸息に対し有毒であることをほとんどの医師が確認しており、さらに、ヨウ素は胃腸に過剰に暴露されると死亡を生じかねないため、粘膜表面には安全でないという認識も存在する。PubChem(https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Iodine#section=NIPH-Clinical-Trials-Search-of-Japan)には、皮膚に対するヨウ素の抗生物質としての使用のみが記載されている。
【0009】
さらに、ヨウ素を使った市販のうがい薬(Eggers et al.2018,In Vitro Bactericidal and Virucidal Efficacy of Povidone-Iodine Gargle/Mouthwash Against Respiratory and Oral Tract Pathogens.Infect Dis Ther.2018 Jun;7(2):249-259)も存在するとともに、ヨウ化カリウムは洗浄液として使用され(Derscheid et al.,Am J Respir Cell Mol Biol.2014 Feb;50(2):389-397.Increased Concentration of Iodide in Airway Secretions Is Associated with Reduced Respiratory Syncytial Virus Disease Severity.)、いずれも室温で使用される。
【0010】
2020年6月発行のScientific Americanでは、COVIDが特集された。ファストトラック薬(fast-track drugs)の記事では、ヨウ素の使用どころか、抗ウイルス複合剤と各種免疫療法以外のいずれの処置法も考慮すらされていない。それは、重度ウイルス性呼吸器感染症に対処する方法に関する最先端技術思考を反映している。
【0011】
本出願人がCOVID患者に対するヨウ素の使用について、大手医療センターの呼吸器内科医にメールを送ったところ、Fisher Scientificからダウンロードされたヨウ素の毒性に関する記事とともに返答があった。この記事には、「吸入すると有害である」という表現があった。
【発明の概要】
【0012】
ここでは、より詳細に論じられる進歩性について要約する。本出願人は、ヨウ素化学の特性を、多様かつ関連のない医学専門分野や環境生物学の情報と組み合わせて活用し、困難な呼吸器感染症の処置方法を革新しようとしている。
【0013】
a.抗生物質は水蒸気の形態にある。本出願人は、ヨウ素水蒸気を感染症の処置に使用する参考文献を見出していない。
【0014】
b.蒸気は加熱される。通常、物質は加熱されるとその活性と毒性が増加させるとされているため、ヨウ素の加熱水蒸気を処置に使用するという文献は存在しない。
【0015】
c.蒸気を形成する溶液は、ヨウ素のみならず、ヨウ素放出性塩も含有している(「塩」の定義は、有機物でありながら水中でイオン化するポビドンなどの物質を含む)。溶存ヨウ素を含有する一部の化合物は、ヨウ素を溶液中に放出する。このような化合物が水中で平衡混合物を形成するという性質を活用して、病原体と反応する活性型元素状ヨウ素をより安全な形で送達するのは、今回が初めてである。少ない割合の元素状ヨウ素が呼吸器官内の病原体と反応し、その多くが直ちに溶液から取り出されて平衡状態が回復する。
【0016】
d.元素状ヨウ素があまり放出されないように、上限温度は(典型的に80℃に)制限されている。一定の温度を下回ると、活動は最小限になる。これは、平衡かつ加熱状態の溶液の効果を現行の課題に適用することに基づく安全対策である。
【0017】
e.百万分率は考えられる制限を超えて増加する可能性があり、理由として、それらの制限は純粋なヨウ素蒸気に基づくものであり、一方で塩を伴う溶液では、一般にヨウ素の90%以上が塩形態で溶解するためである。
【0018】
f.1日当たりの投与量を毒性レベルより下に抑えることができ、1日当たりの総許容量は、化学物質によりさらに高濃度の使用が可能なため、起こり得る危機的状況にある患者の処置に対してより合理的である短時間に濃縮することができる(毒性は、あらゆる時点での遊離元素状ヨウ素の濃度と、1日に許容される総量の両方から生じる可能性があり、新たな投与方法によって解決することができる)。
【0019】
g.ヨウ素はpHが高いほど病原体に対して有効である。そのアルカリ度は水蒸気の一部として送達することができるが、純粋な元素状ヨウ素の蒸気を使用したときには関連性がなかった。アルカリ度は、投与量を減らすことで毒性を減少させるためにも使用することができる。
【0020】
本出願人は、眼手術前の結膜滅菌にポビドンヨウ素点眼薬などの物質の安全で成功例のある使用に関するあまり知られていない一部の眼科研究から、ヨウ素は粘膜表面に安全でないという認識に異議を唱えている(1つの参考文献は、Isenberg and Apt.The Ocular Application of Povidone-Iodine,Community Eye Health.2003;16(46):30-31である)。さらに、眼科医である本出願人は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌による眼感染症の患者にポビドン点眼薬を処方することがあり、あらゆる場面で看護師、薬剤師、または医師から、「Dr.Farb,do you know what you are doing?」のような呼びかけを受けた。彼らに文献を紹介し進めていくと、成功率はそれら感染症の処置において100%であった。呼吸器科医や感染症の専門家のほとんどは眼科の文献を読まないため、言及したメールに象徴されるように、このような思考は危険とみなすであろう。
【0021】
次の課題は、知られているヨウ素の呼吸器系に対する毒性に対処する方法である。
【0022】
本出願人は、すべての医師が実際に気づいていない別の学問、すなわちハロゲンの物理化学を使用して、一般的な医学の常識に異を唱える。ポビドンやヨウ化カリウムなどのヨウ素放出性イオン性化合物(ヨウ素が他の原子と結合しており、結合を切断しないと塩として放出することができないチロキシンなどの物質と対照的)は、溶液中で元素状(分子状ともいう)ヨウ素と平衡状態で存在する。ここで、ヨウ素処置の好ましい源であるとともにルゴール液の成分であるヨウ化カリウムの一例における重要な式は、次のとおりである:
KI(aq)+I2(s)→KI3(aq)
I3は溶解性が高いため、溶液中にある間、I2は少量しか利用できない。それにより、吸気から毒性が軽減される。I2が病原体と反応すると、平衡状態により、KI3からより多くのI2の作製が引き出される。ヨウ素放出性化合物は非常に溶解性が高いため、これらの溶液中に遊離ヨウ素はほとんど存在せず、一部の研究によると1~10%の場合がある。
【0023】
別の例は、次亜ヨウ素酸すなわちHIOである。この酸は速やかに分解する:
5HIO→HIO3+2I2+2H2O。
【0024】
病原体と反応してそれを不活性化するのは遊離ヨウ素であり、大半の体細胞は遊離ヨウ素を扱うことができる(溶液中のヨウ素は基本的な健康に必要であり、血液中を循環して甲状腺に使用される)ため、加熱され吸引された溶液中のヨウ素を呼吸器に提供することは、ヨウ素が表面に着地して病原体を攻撃するまで毒性作用がほとんど生じないようにヨウ素を適用する方法となる。
【0025】
このようなヨウ化塩溶液を加温することには、肺をはじめとする呼吸器系のあらゆる場所への到達が容易になり、体温に達するまでの最初の数秒間は反応性をさらに高くするという利点がある。
【0026】
平衡で少量の遊離ヨウ素を形成するヨウ素放出性化合物の水溶液を蒸気化することは、本出願人が知る限り、これまでに検討されたことがなく、理由としては、感染症および呼吸器内科、眼科、薬学、ならびに物理化学の分野を橋渡しすることが困難であること、同時にヨウ素は痛みを伴い、毒性で、面倒なものであるとの懸念による可能性が高い。
【0027】
理論に縛られることを望むものではないが、ヨウ素は温かく湿った空気と結びつくと、より高い温度からより活発な反応を誘発し、ヒト代謝産物または病原体代謝産物に関係なく、肺の表面に堆積した物質のあらゆる層を緩めることで、より高い治療有効性を実現する。COVID-19は肺の粘膜表面上にコーティングを放つことが報告されている。この処置方法は、そのような層への浸透の助けとなる。
【0028】
投与量と毒性
緊急時には高い百万分率の短パルスでウイルスを死滅させることができ、公表されている毒性標準は長時間の曝露を想定して作られているため、安全とされる量より多くの量を使用するという代替手段もある。仮に従来のヨウ素に着目した方法を使用し、投与量を溶液中のヨウ素分子の数またはヨウ素の重量に従い決めた場合、本明細書中で提唱する処置は、実際よりも毒性が強いと考えられるであろう。その理由として、元素状ヨウ素はほとんど存在せず、溶液中では部分的にしか保持されていないため、感染面に着地するまでの気道通過時において毒性はほとんど認められないからである。
【0029】
比較において、甲状腺機能亢進症に対するヨウ素の推奨用量は750mg/日である。放射性ヨウ素の存在下でのヨウ素の取込みを防ぐための推奨用量は、成人で130mg/日(CDC)である。正常な栄養は0.150mg/日である。Poisoning & Drug Overdose,6e,2012,Kent R.Olson,page 1499によると、短期間の暴露は0.1ppmでも刺激性の可能性あり、1.5~2ppmでは作業が困難となる。ACGIHが推奨するヨウ素蒸気の仕事場上限値(TLV-C)は0.1ppm(1mg/m3)である。生命または健康に直ちに危険を及ぼすとされる大気レベル(IDLH)は2ppmである(Owen,Kelly,Poisoning and Drug Overdose,Access Medicine [McGraw Hill Medical],Chapter 84,Iodine,by Kelly P.Owen)。BurnetとStoneによる研究では、in vitro、0.1ppmで1分以内にウイルスが完全に不活性化されたことが示唆されている。ウイルスの病原性低下は、0.005ppmで生じた。
【0030】
CDCウェブサイト(https://www.cdc.gov/nceh/radiation/emergencies/ki.htm)は、次のように述べている:「FDAによると、放射性ヨウ素による内部汚染(または内部汚染の可能性)後、以下の量を服用することが適切である:生後1か月までの新生児には16mg(65mg錠の1/4、または溶液の1/4mL)を投与する必要がある。この用量は、乳児と非乳児の両方に対する用量である。生後1か月から3歳までの幼児と小児は、32mg(65mg錠の1/2、または溶液の1/2mL)を服用する必要がある。この用量は、乳児と非乳児の両方、および小児に適用される。3~18歳の小児は65mg(1つの65mg錠、または1mLの溶液)を服用する必要がある。成人サイズ(150ポンド以上)の小児は、年齢に関係なく、完全な成人向け用量を服用する必要がある。成人は、130mg(1つの130mg錠、または2つの65mg錠、あるいは2mLの溶液)を服用する必要がある。授乳中の女性は、130mgの成人用量を服用する必要がある」。
【0031】
EUにおける毒性試験(https://echa.europa.eu/registration-dossier/-/registered-dossier/5883/7/6/2)では、液体ヨウ化カリウムを2年間摂取したラットの実験データが示されている。簡単にまとめると、10ppmでは長期的な効果は認められず、100ppmでのみ長期的な寿命減少が認められた。
【0032】
いくつかの実施形態では、ヨウ素の濃度は、溶液中よりも蒸気中の方が低くなる。ある実施形態では、例えば、毒性を回避するために、肺または人工呼吸器入力管中に生じる空気混合ヨウ素濃度は、長期間投与では2ppm未満である。他の実施形態では、この濃度は、例えば、溶液中のヨウ素の平衡濃度、投入空気の温度と流量から算出される。さらに他の実施形態では、BennettとStoneにより、2ppmより高い濃度でウイルス殺傷率が優れていることが見出されたため、2ppmより高い人工呼吸器空気ヨウ素のパルスが使用される。このように、一時的により高用量を使用することで、殺傷率を高めることができる。このような高用量は、ある実施形態では、1日中連続投与した場合の一日毒性値を超えてもよい。
【0033】
WHO Guidelines for Drinking-water Quality,1996,2nd ed.Vol.2は、次のように述べている:「ヨードチンキ30~250ml(体重1kgにつき総ヨウ素量約16~130mg)の用量は致死的であると報告されている。急性口腔毒性は主に消化管の刺激によるものであり、著しい体液損失とショックが重度の症例に生じる」。
【0034】
YeonとJung(Yeon and Jung,Effects of temperature and solution composition on evaporation of iodine as a part of estimating volatility of iodine under gamma irradiation,Nuclear Engineering and Technology,Volume 49,Issue 8,December 2017,Pages 1689-1695)は、十分に換気を行った開放空間中、26~80℃の温度範囲で、I
2とIとの混合溶液を用いてI
2蒸発実験を行った。I
2の蒸発は、I
2濃度に依存して、主に一次速度論に従うことが観察された。蒸発速度定数は、温度上昇により急激に増加した。それらの
図4は、室温26℃と比較して、蒸発速度は50℃で10倍超、80℃で30倍超であることを示している。
【0035】
上記の情報と、ヨウ素蒸気が肺から血管系へと容易に浸透する事実を考慮すると、上記の毒性測定値の最低値、すなわち16mg/kg/日を最大値として慎重に考慮することが妥当である。安全のために、総ヨウ素含有量は、8または10mg/kg/日を超えないようにすることを提案する。その結果、蒸気中で2ppmを超えない最大値(短パルス以外における)と16mg/kg/日との組合せにより、患者は一般に認識されている毒性の最低値を維持し、実際には最大10mg/kg/日および0.1ppmとすれば明らかに安全となる。人工呼吸器を使用しても、1ppmの値では空気中に失われる量が多いと考えられるので、肺用量と血液への吸収量の両方に対する安全係数が組み込まれている。したがって、適用される投与量は、考えられ得る毒性用量の10%以下で有効である可能性が高い。
【0036】
ルゴールヨウ素を用いた事例を考慮する。ルゴール液を50℃で毎分0.3ml、送気量を1分当たり6リットル(平均)とすると、溶液濃度0.1ppmでは、平均的な成人の1日あたりの最大無毒量を投与するには、248分の処置が行われることとなる。これをより現実的なものとするには、濃度を1ppmに上昇し、呼吸の頻度と量を1分につき12リットルに増やすと、その日の最大無毒量に達するまでの処置時間は12分となる。医師が仮に、患者が1日に250mgまでヨウ化物を摂取してもよいと判断し、ヨウ素を1ppmで短期間にわたり送達される場合、送達には数分を要することになる。ある実施形態では、安全であるが抗病原性活性を呈するヨウ素の値を可能にするために、人工呼吸器または他のヨウ素送達装置(本明細書に記載されるあらゆる装置であってよい)は、1日ごとのキログラムあたりのミリグラム(mg/kg)の合計数を、患者に導入される空気の体積と、総合的(total)および/または生物活性形態にあるヨウ素の濃度に基づき計算し、そうすることで総量は1日につき16mg/kgを決して超えず、(様々な実施形態では)1日あたり15、10、8、5、または1mg/kgなどのより低く安全な値に設定することができ、いくつかの実施形態では、甲状腺疾患などの疾病を抱える患者に投与される総量をカスタマイズすることができる。人工呼吸器またはその他のヨウ素送達装置は、時間に基づく算出を行うようにも設定することができ、そうすることで、例えば、1日1回、1時間にわたり15mg/kg以下を患者に投与して、24時間を通して安定的に維持量を患者に投与する場合に可能となるよりもppm数の多いヨウ素の濃縮レジメンが可能となる。BennettとStoneによるin vitro試験では、より高濃度でより高いウイルス殺傷率が得られるという根拠が存在する。これを要約したものが
図2である。
【0037】
インビトロ
溶液中のウイルスに対するヨウ素の有効性に関する文献は、ほとんど全て冷ヨウ素溶液に関するものであり、いずれも空気や水の除菌を目的とした人体外のものである。
【0038】
Letters in Applied Microbiology(51(2):158-63)に報告されるように、Andreas SauerbreiとPeter Wutzlerは、皮膚上の様々なウイルスに対して、ヨウ素を5分以内に使用することに成功したことを研究した。
【0039】
1945年に、 StoneとBurnet(Stone and Burnet,The Action Of Halogens On Influenza Virus With Special Reference To The Action Of Iodine Vapour On Virus Mists,Australian Journal of Experimental Biology and Medical Science,1 Sept.1945;https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1038/icb.1945.32)は、ウイルスのミストにヨウ素の蒸気を当てるビンを作製した。実験では、そのビンの中にヨウ素結晶を入れ、蒸気を生成させることが含まれていた。蒸気を生成する別の方法には、ヨウ素結晶をメタノールに溶解することが含まれていた。その結果、0.1ppmでインフルエンザウイルスが破壊されることが発見された。それ以下は、破壊的な効果はあっても、完全ではなかった。これは、ミストに対するミストの効果であって、インビボの感染ではない。いずれの場合も、マウスを導入する前に試験槽にヨウ素を導入した(典型的な治療シナリオではない)。空気殺菌に関心を持っていた。医師および看護師のためのガーゼマスクにヨウ素を含浸させるという実用的な提案をしている。彼らは、Burnet et al.として関連記事を公開した(Burnet et al.,Action of iodine vapour on influenza virus in droplet suspension,Aust J Sci.1945 Feb;7:125)。このアプローチは、ヒトではテストされず、処置の代わりに、感染していないマウスの予防および消毒に使用された。ヨウ素は蒸気で蒸発させることも、噴霧化することもしなかった。
【0040】
図1は、Stone et al.が発表した、外気中(肺の中ではない)のウイルス殺滅に有効な濃度の表である。本発明者は、このデータに基づいて、吸気中のヨウ素濃度を理想的には0.01~0.2ppmの範囲にすることを提案しているが、特定の実施形態では、2ppmまで上げても安全であるはずである。しかしながら、ヨウ素溶液の化学的性質によって、水滴中のヨウ素をより高いppmにすることが可能である。本発明者は、低濃度で長時間使用するよりも、比較的高濃度のヨウ素(例えば、0.1ppm以上)の短パルスが、毒性のリスクを伴わずに、より速い治療効果を有すると示唆している。これは、ある実施形態では、人工呼吸器または他のヨウ素送達装置のタイマーと結合した制御機構、いくつかの実施形態ではコンピュータ化されたものによって調整され得る。
【0041】
Eggers 2019,Infectious Disease Management and Control with Povidone Iodine,Maren,Infectious Diseases and Therapy volume 8,pages 581-593(2019))は以下の通り主張する。「元素状ヨウ素は応用後、水溶液中でいくつかの形態に変化し得、分子状のヨウ素(I2)および次亜ヨウ素酸(HOI)が抗菌活性の面で最も効果的である。ヨウ素分子は、アミノ酸、核酸、および膜成分などの病原体の重要な構造を自由に酸化させ得る。このような状況では、殺菌活性によって消費されるヨウ素を補うために、PVPと結合したヨウ素がより多く溶液中に放出され、平衡が達成される。この平衡が保たれることによって、微生物が増殖する時期にも効果が持続し、刺激性が低いため患者の忍容性も高くなる。電子顕微鏡検査および生化学的な観察によって、PVP-Iが孔の形成を誘導することで微生物の細胞壁を破壊し、細胞質の漏出を引き起こすという仮説が立証される。これまでPVP-Iに対する耐性が報告されていないのは、各病原体の感受性標的が多様であるためと考えられ、抗生物質耐性が懸念される中、重要な側面であるとされる。」彼らは続けて以下の通り述べている、「PVP-1は、家庭および医療現場の両方で一般的に使用されるヨウ素製剤を指す。ポビドン、ヨウ化水素、および元素状ヨウ素の複合体で構成され、微生物の生存および複製に重要な構造を対象とする。一般的な製剤は、1%の有効ヨウ素を含む10%のPVP-I溶液からなる。」
【0042】
上記の研究は、潜在的に毒性であるヨウ素の量が溶液中で制限され、これまでの医療行為が許すよりも安全であることを示している。
【0043】
事例研究
本発明者はコロナウイルス感染症を患い、次の日記に詳述されているようにヨウ素蒸気を吸入して治癒した。
【0044】
3月16日、月曜日の夜、(前の週にテルアビブからアムステルダム、そしてアムステルダムからJFKまで飛行し、かつオランダ国内で電車に乗車した後)私はマンハッタンで一日を過ごし、ペンシルバニア駅を通過してロングアイランドのアパートに戻ってきた。オランダでは、数日後に重病になった同僚の隣に長時間座っていた。体調は良い。
【0045】
3月17日:火曜日:風邪と思われる症状が出始めた。
【0046】
3月18日、水曜日~3月20日、金曜日:これは通常の風邪の症状とは異なるので、ただの風邪ではないと気づき始めた。3月22日、日曜日の朝まで4時間おきにタイレノールを服用していたにもかかわらず熱と汗が出始め、極度の疲労感(30~60分くらい起きているとまた寝る必要がある)、中程度の咳、中程度の息切れ(私の場合、毎日1~2時間の高強度の運動の代わりに20分の低強度の運動をして疲労と息切れを感じるということだった)があった。さらに、食べ物の味覚能力が低下していることに気づいた。
【0047】
3月20日、金曜日:自分がコロナであることに気づき、治療法について自分の医療経験および知識で考え始めた。
【0048】
3月22日、日曜日午前8:30:熱で汗だくになり自動車までかろうじてたどり着くのができた。私は、水を入れた加湿器、ライターからAC電気変換器までを持参し、マスクを着用した。近所の薬局で液体ヨウ素(チンキ剤とポビドンの両方)を購入した。自動車を駐車し、加湿器に(約1クォートの水に約1液量オンスの)ヨウ素を入れ、窓をほとんど閉めた状態で1時間ほど加湿器から息を吹き込んだ。私は休憩を取り、加湿器を補充し、プロセスを繰り返した。12:00までに、体調は95%回復し、自宅のアパートの中を歩き回り、仕事をし、少し昼寝をする必要があったのみで、熱もなく、タイレノールも必要としなかった。それ以来、元気に過ごしている。その後、水とヨウ素を入れた鍋の上で5分ほど呼吸をすることで補足したが、実際には必要ではなかった。
【0049】
数週間後、コロナの抗体検査で陽性、およびコロナの鼻腔スワブ検査で2回陰性が出た。
【0050】
pH
さらに別の実施形態では、ヨウ素の効果を向上させるためにpHが調整される。HsuおよびNomura(Hsu and Nomura,Sterilization Action Of Chlorine And Iodine On Bacteria And Viruses In Water Systems (US Army Technical Report))は、実験10で、pHが高いほど殺菌率が高くなることを発見した。ある実施形態では、ヨウ素/蒸気の組み合わせが肺に苛性にならずにそのpHを高くすることができる物質が、処置の有効性を高める方法および製剤を構成する。Gomez et al.は、炭酸水素塩溶液のエアロゾルの吸入を提案し、多くの場合pHが7から8まで上昇し、嚢胞性線維症における痰の粘性が低下した。(Gomez et al.,Safety,Tolerability,and Effects of Sodium Bicarbonate Inhalation in Cystic Fibrosis.Clinical Drug Investigation,Nov.13,2019)。別の製剤はカーボネートまたは水酸化物を含み得る。
【0051】
Eschenbacher WL,Gross KB,Muench SP,Chan TL (Eschenbacher WL,Gross KB,Muench SP,Chan TL,Am Rev Respir Dis.1991 Feb;143(2):341-5.Inhalation of an alkaline aerosol by subjects with mild asthma does not result in bronchoconstriction) (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1990950)は、喘息患者がpH10.3という高アルカリ性蒸気でも反応性血管収縮を起こさないことを発見した。つまり、pH10.3までのヨウ素を含むアルカリ性の溶液や蒸気が安全で、ヨウ素単独よりも有効である可能性が高いことを意味する。
【0052】
定義
呼吸器系は、口、鼻、副鼻腔、咽頭(上気道系)、ならびに気管、および肺(下気道系)で構成されている。ほとんどの呼吸器病原体は両方に影響を及ぼすが、通常、肺の感染はより深刻である。気管および/または肺における感染症は、本明細書に下気道感染症と呼ばれ、そのような感染症は、記載される方法、組成物、使用、および製造品によって処置される疾患の一実施形態を示す。
【0053】
インフルエンザ、特にコロナウイルスは、最も深刻な形態で肺の粘膜に影響を与え、または浸透する。粘膜上のウイルスに対するヨウ素の安全性および有効性に対する本発明者の信念から、さらなる問題は、肺にそれを入れる方法である。
【0054】
加温された溶液は、特定の実施形態では、治療上有効な量の揮発性ヨウ素の放出(例えば、26℃以上)をもたらす25℃(室温)以上の溶液として―または、他の実施形態では、本明細書に記載される別の温度範囲内の溶液として定義され、それぞれが別の実施形態を表している。現実的には、少なくとも30度以上に加熱することよって、実質的に送達および反応性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、Stone et al.によるミスト中のインフルエンザ死滅に有効なヨウ素濃度の表である。
【
図2】
図2は、例えば、目標曝露時間(201)、用量(202)、pH(203)、呼吸器頻度および/または圧力(204)、流体量(205)、濃度(206)、流体温度(207)、患者体重(208)、および空気流量(209)を含む、吸入ヨウ素の用量を計算するための例示的かつ非限定的な入力(200)を概略的に示す図である。入力は、CPU(220)をプログラムするために使用され、CPU(220)は、次に、時間当たりに吸入されるヨウ素の目標ミリグラムを計算し(221)、例えば、システムへのヨウ素の添加(231)(例えば、装置内の溶液へのヨウ素またはヨウ素放出性化合物の添加、または装置への追加のヨウ素含有溶液の供給を介して)、ヨウ素パルス化(232)、pH(233)および呼吸器頻度および/または圧力(234)などの制御機構(230)に指示する。この図は、入力数を制限するものではない。本明細書に議論されるように、患者の呼吸の予想量は、一定期間にわたるppmを計算する際に使用される因子であり得る。コンピュータが年齢、体重、または身長に基づいて患者の呼吸量をデフォルトで計算するようにプログラムされていてもよく、あるいは呼吸器の動作量または他の因子に依存してもよい。
【
図3】
図3は、呼吸器と連動した例示的なヨウ素、アルカリ、または他の製剤の自動充填プロセスの模式図である。少なくとも1つのセンサ(302)からの入力を受信するメモリ付きコンピュータ(301)は、第1のアクチュエータ(303)に、第1のバルブ(304)を開いて治療材料(図示せず)を保存容器(305)から蒸発容器(306)に放出するように指示し、そこから呼吸チューブ(307)を介して患者の呼吸器系(図示せず)に接続されるようになっている。その容器はさらに、呼吸器系への連絡を開いたり遮断したりするために、コンピュータ(301)による制御を介して下流アクチュエータ(308)と第2のバルブ(309)に接続される。このコンピュータ制御は、容積センサであってもよい少なくとも1つのセンサ(302)に依存しており、それによって、適切な投与および第1の弁(304)を通る適切な移動を決定するために、治療物質の容積または同等の測定が行われる。アルカリ、またはアルカリとヨウ素の組み合わせの自動充填の場合、例えば、任意のpHセンサがあってもよい。蒸発容器(305)の再充填が必要なときが明確になるように、容積を感知することは最も重要である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本明細書に提供されるのは、ヨウ素ならびにヨウ素および/または薬理的活性のヨウ素種を生成する化合物を含む、気道感染症を処置するための方法、組成物、使用および製造品である。
【0057】
いくつかの実施形態では、呼吸器病原体に感染した対象の気道に投与するための蒸気を含む組成物が提供され、ここで、(a)蒸気は、pHが7.0~10.0の水溶液を、摂氏30~80度(°C)の温度まで加温することにより生成され、水溶液は、ヨウ素放出性イオン化合物と元素状ヨウ素を総ヨウ素量1.5~10ppmで含み、(b)投与は、一日当たり2時間以下あり、(c)患者の気道に送達される総ヨウ素が、一日当たり8mg/kg体重を超えない。ある実施形態では、蒸気は元素状ヨウ素を含む。他の実施形態では、蒸気はヨウ素放出性イオン化合物をさらに含む。
【0058】
他の実施形態では、呼吸器病原体に感染した対象を処置するためのシステムが提供され、該システムは、(a)pHが7.0~10.0の水溶液が入れられた容器であって、水溶液は、ヨウ素放出性イオン化合物と元素状ヨウ素を総ヨウ素量1.5~10ppmで含む、容器、(b)容器の中の水溶液を摂氏30-110度(°C)の温度まで加温し、これによって蒸気を生成するために構成された加熱要素、および(c)蒸気が呼吸器病原体に感染した対象の気道に到達するように蒸気を供給するために構成された人工呼吸器を含み、ここで、人工呼吸器は、気道に送達される総ヨウ素が、1日当たり8mg/kg体重を超えない、1日当たり2時間以下蒸気を投与するために構成される。ある実施形態では、蒸気は元素状ヨウ素を含む。他の実施形態では、蒸気はヨウ素放出性イオン化合物をさらに含む。
【0059】
他の実施形態では、元素状ヨウ素とヨウ素放出性イオン化合物を含む一定量の投与量パックが提供され、(a)投与量パックをpHが7.0~10.0、かつ総ヨウ素量1.5~10ppmの水溶液に導入すること、(b)水溶液を摂氏30~110度(°C)の温度まで加温し、それによって、蒸気を生成すること、および(c)蒸気を呼吸器病原体に感染した対象の気道に投与することであって、ここで、投与が1日当たり2時間以下の投与であり、気道に送達される総ヨウ素が、1日当たり8mg/kg体重を超えない、投与することのための指示書を伴う。ある実施形態では、蒸気は元素状ヨウ素を含む。他の実施形態では、蒸気はヨウ素放出性イオン化合物をさらに含む。
【0060】
本明細書に記載される方法、システムおよび組成物の様々な実施形態では、蒸気は液滴の形態であり、ならびに/または元素状ヨウ素および/もしくは記載のヨウ素放出性イオン化合物を含む。
【0061】
他の実施形態では、蒸気または噴霧化された液体を含む組成物が提供され、蒸気または噴霧化された液体は、呼吸器病原体(例えば、気道を感染する病原体)に感染した対象の下気道に投与するために元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む。
【0062】
他の実施形態では、下部呼吸器病原体に感染した対象を処置する方法が提供され、該方法は、対象の下気道に蒸気または噴霧化された液体を投与する工程を含み、蒸気または噴霧化された液体は、元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む。
【0063】
さらに他の実施形態では、対象の下気道への投与によって呼吸器病原体を処置するための薬物の製造において、元素状ヨウ素および/またはヨウ素放出性化合物を含む蒸気または噴霧化された液体の使用が提供される。
【0064】
他の実施形態では、元素状ヨウ素および/またはヨウ素放出性化合物を含む、液体または固体形態の一定量の投与量パックが提供される。飽和ヨウ化カリウム溶液(SSKI(登録商標)として市販される)の使用は、1つの標準的な使用方法であり、本明細書に記載されている。例としての1つの実施形態は、1mlのSSKIを10倍に希釈することを含む。この場合、1mlには76.4mgのヨウ素が含まれており、これは1日の安全な投与量の範囲内である。その1mlを、医師が選んだ一連の時間内に患者の肺に蒸発させることができる。そして、別の実施形態では、例として、その量は、吸気量中のppmが0.1ppmとなるように、送達のタイミングを決めることができる。NIOSHによる不快感の報告は1.5ppmからなるから、安全性の範囲内でより強いウイルス殺傷力を発揮するために、期間限定で1ppmに設定することは問題がないと思われる。呼吸器感染症の患者に危険が及ぶような極端なケースでは、例えば、10分などの時間制限付きで1.9などの目標ppmまで濃度を上げることを医師が決定する場合がある。投与量パックは、溶液への導入のために示され、その後、溶液は加温され、それによって蒸気が生成される。蒸気は、呼吸器病原体に感染した対象の下気道への投与に適応される。ある実施形態では、溶液はヨウ素またはヨウ素放出性化合物を導入する前に加温される。他の実施形態では、溶液はヨウ素またはヨウ素放出性化合物を溶液へと導入した後に加温される。
【0065】
他の実施形態では、元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む一定量の投与量パックが提供される。投与量パックは、溶液への導入のために示され、その後、溶液は噴霧化または加温され、それによって液滴が生成される。液滴は、呼吸器病原体に感染した対象の下気道への投与に適応される。
【0066】
さらに他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む一定量の投与量パック、および(b)(i)一定量の投与量パックの含有量を溶液と組み合わせる、(ii)蒸気を産生するために溶液を25°C以上の温度まで加温させる、ならびに(iii)蒸気を呼吸器病原体に感染した対象に投与するための指示書を含むラベル、を含む。
【0067】
さらに他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)液体リザーバ、および元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む溶液と動作可能に接続される人工呼吸器、および(b)(i)溶液を加温させ、それによって蒸気を生成する、ならびに(ii)蒸気を呼吸器病原体に感染した対象の下気道に投与するための説明書を含むラベルを含む。当業者は、本開示に照らして、典型的には、リザーバは、そこに含まれる溶液を加温させるように構成されてもよい(例えば、加熱要素と関連してもよい)ことを理解するであろう。
【0068】
さらに他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)噴霧器、および元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む溶液と動作可能に接続される人工呼吸器であって、ここで、噴霧器が溶液を液滴に噴霧化するように構成される、人工呼吸器、および(b)(i)溶液を液滴に噴霧化する、ならびに(ii)液滴を呼吸器病原体に感染した対象の下気道に投与するための説明書を含むラベルを含む。
【0069】
記載されるシステムおよび製造品は、いくつかの実施形態では、特定の量または温度範囲の水に投入される粉末またはバイアルを含む。他の実施形態では、患者使用のための一定量の投与量パック、アンプルまたは液体製剤は、説明書に温度仕様を含む。溶液から吸引されるヨウ素の量は、投与時の溶液の温度によって変動し、温度が高いほど治療レベルに到達しやすいと考えられる。
【0070】
さらに他の実施形態では、元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む一定量の投与量パックが提供され、投与量パックを加温された溶液に導入するために示され、加温された溶液は、人工呼吸器内に配置され、それによって呼吸器病原体に感染した対象に投与するための蒸気が生成される。
【0071】
さらに他の実施形態では、呼吸器病原体に感染した対象を処置する方法が提供され、該方法は、元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む加熱された蒸気を前記対象に投与する工程を含む。他の実施形態では、呼吸器病原体を処置するための加熱された蒸気を含む組成物が提供され、前記加熱された蒸気は、元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む。さらに別の実施形態では、呼吸器病原体を処置するための薬物の製造において元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む加熱された蒸気の使用が提供される。他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む蒸発可能な液体、および(b)包装器材を含み、ここで、包装器材は、前記蒸発可能な液体を加熱して蒸気を生成し、前記蒸気を対象に投与することによって、呼吸器病原体に感染した対象を処置することを使用者に指示するラベルを含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、(一定量の投与量パックの含有量が導入される)溶液は、人工呼吸器に配置される。他の実施形態では、溶液は、例えば、溶液によって生成された蒸気が人工呼吸器に導入されるように、記載の人工呼吸器と動作可能に接続された蒸発装置内に配置される。
【0073】
他の実施形態では、溶液は、特定の実施形態では、非侵襲的呼吸補助装置、例えば、呼吸チューブまたは呼吸系フェイスマスクであり得る外来患者用装置に配置される。他の実施形態では、外来患者用装置は、部屋用の加湿器、家庭用ポット、または専門家の操作を必要としないその他のタイプの蒸発促進装置である。
【0074】
さらに他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む一定量の投与量パック、および(b)(i)投与量パックを溶液に導入する、(ii)溶液を加温する、ならびに(iii)呼吸器病原体を処置するために対象の下気道に加温された溶液の蒸気を投与することを使用者に指示するラベルを含む包装器材を含む。
【0075】
さらに他の実施形態では、製造品が提供され、該製造品は、(a)蒸発可能な液体を含む医薬組成物であって、蒸発可能な液体が元素状ヨウ素またはヨウ素放出性化合物を含む、医薬組成物、および(b)包装器材であって、対象の下気道に液体の蒸気を投与することによって呼吸器病原体の処置に使用することを使用者に指示するラベルを含む、包装器材を含む。
【0076】
記載される投与量パックおよび/または組成物は、ある実施形態では、それらの使用頻度に関する説明書が伴い、その非限定的な実施形態は、毎日1回の投与量、毎日2回の投与量、および所定期間中の連続的投与量である。そのような説明書は、いくつかの実施形態では、対象がさらされる毎日の投与量の制御を可能にする。
【0077】
ヨウ素、ヨウ素放出性イオン化合物、およびそれらを含む溶液
用語「ヨウ素」は、本明細書では元素自体を指すために使用され、例えば、その一般的な分子形態「I下付き2」である。ヨウ素放出性化合物は、次亜ヨウ素酸などのヨウ素放出性塩、およびヨウ素を含有するおよび放出するイオン分子を包含する。ヨウ素およびヨウ素放出性化合物を含有する溶液は、記載される方法、組成物、使用および製造品において包含される。ある実施形態では、記載される化合物は、蒸発の目的で生体利用可能なヨウ素(I下付き2)を生成することができる。ある実施形態では、ヨウ素は、記載される蒸気の中に治療上有効な量、すなわち、抗微生物活性がある量で存在する。他の実施形態では、ヨウ素は、本明細書に言及された量または範囲のいずれかで存在する。
【0078】
(本明細書に言及される任意の方法、組成物、使用、または製造品の)記載されるヨウ素放出性化合物は、ある実施形態では、遊離元素状ヨウ素または別の活性ヨウ素化合物を溶液または蒸気で放出する化合物を含む。この用語は、たとえそれらがヨウ素原子を含んでいても、溶液中または蒸気中に遊離元素状ヨウ素または別の活性ヨウ素化合物を放出しない化合物を包含することを意図していない―そのような化合物の非限定的な例は生の海藻および甲状腺ホルモンである。他の実施形態では、ヨウ素放出性化合物は揮発性化合物である。
【0079】
ある実施形態では、蒸発のためのヨウ素放出性化合物は、200°C未満(あるいは他の実施形態では150°C未満、125°C未満、または100°C未満)の沸点、あるいは、他の実施形態では、少なくとも30分(または、他の実施形態では、少なくとも45分、60分、90分、または120分)の水溶液中の室温半減期、あるいは、他の実施形態では、自由に組み合せ得る両方の特性を有する。当業者は、本開示を考慮して、特定の活性ヨウ素種が減少することは、記載される方法および組成物を実施するために重要ではないことをさらに理解するであろう。ある実施形態では、活性ヨウ素種が何であれ、記載される溶液および/または蒸気は、特定の実施形態では、本明細書で言及される濃度のいずれかであるかなりの濃度で元素状ヨウ素を含む。
【0080】
(本明細書で言及される任意の方法、組成物、使用、または製品の)記載されるヨウ素放出性化合物は、それぞれが別個の実施形態を表す次亜ヨウ素酸(HOI)、ポビドンヨウ素(2-ピロリジノン、1-エテニルホモポリマー)、有機または無機ヨウ素担体、またはヨウ素塩である。ある実施形態では、ヨウ素塩はヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、またはその混合物である。
【0081】
本開示に照らして、用語「活性ヨウ素化合物」は、記載された装置によって達成可能な濃度で有意な抗ウイルス活性を有するヨウ素含有化合物を指すことを当業者は理解するであろう。他の実施形態では、例えば、気化組成物の場合、さらなる有利な特性は、有効濃度で蒸発されるのに十分な流動性、および装置から対象の呼吸器への移動に残存するのに十分な安定性である。
【0082】
単に例示として、ヨウ素の0.1ppm=1.038mg/m^3である。ヨウ化カリウムは、SSKIと略される飽和溶液として簡便に調製され得る。SSKIは、1mL当たり約764mgのヨウ化物を含有している。1mL当たり約15の点滴薬が含まれ、したがって、ヨウ化物の用量は1滴当たり約51mgである。したがって、空気の1立方メートルで0.1ppmを達成するには、50滴の水に1滴のSSKIを入れる。
【0083】
複合体を形成していない分子ヨウ素(I下付け2)は、いくつかの実施形態では、記載されるヨウ素溶液中の活性成分である。これは、投与量の計算、および人工呼吸器内の殺生物性非錯化ヨウ素の量を決定する方法に使用できる量であり、新しい平衡に継続的に到達するという理解と組み合わせて使用できる。ヨウ素を含有する他の化合物の濃度も測定することができるが、標準化を容易にするために、特定の実施形態では、I下付け2 に基づく用量計算が使用される。このような計算は当業者には知られており、それらの非限定的な例はWadai et al.で提供される(Wada et al.,Relationship between Virucidal Efficacy and Free Iodine:Concentration of Povidone-Iodine in Buffer Solution,Biocontrol Science,2016,Vol.21,No.1,21-270)。
【0084】
さらに他の実施形態では、(本明細書に言及される任意の方法、組成物、使用、または製造品の)記載される溶液は、元素状ヨウ素およびヨウ素放出性イオン化合物(その非限定例は、ポビドンヨウ素、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、およびこれらの組み合わせ)の両方を含む。本明細書に提供されるように、ヨウ素塩の存在は、水溶液中の元素状ヨウ素の溶解性を増加させる。さらに、元素状ヨウ素とヨウ素塩の両方が存在する(例えば、平衡状態)ことによって、元素状ヨウ素レベルを補充することが可能になり、何時間にもわたって治療範囲内の元素状ヨウ素濃度を維持することが可能になる。
【0085】
ヨウ素溶液が加熱され、分子状ヨウ素および/または他の生理活性ヨウ素化合物が蒸気で蒸発すると、溶液中の分子状ヨウ素は、まだ溶液中にある塩または担体との新しい平衡に達することによって補充される。
【0086】
記載される方法、組成物、使用、または製造品のヨウ素含有溶液は、いくつかの実施形態では、0.1~10ppm(ppm)、あるいは、他の実施形態では、0.2~10ppm、0.3~10ppm、0.4~10ppm、0.5~10ppm、0.6~20ppm、0.8~20ppm、1~20ppm、0.2~15ppm、0.3~15ppm、0.4~15ppm、0.5~15ppm、0.6~15ppm、0.8~15ppm、1~15ppm、0.2~10ppm、0.3~10ppm、0.4~10ppm、0.5~10ppm、0.6~10ppm、0.8~10ppm、1~10ppm、1~10ppm、2~10ppm、3~10ppm、4~10ppm、または5~10ppmの溶液濃度で分子ヨウ素を含有する。ある実施形態では、投与量は、1日に投与される蒸気中のヨウ素含有量が対象の体重の8mg/kg未満となるように調整される。
【0087】
記載される方法、組成物、使用、または製造品のヨウ素含有蒸気は、いくつかの実施形態では、0.01~2ppm(ppm)、あるいは、他の実施形態では、0.02~2ppm、0.03~2ppm、0.04~2ppm、0.05~2ppm、0.06~2ppm、0.08~2ppm、0.1~2ppm、0.02~1.5ppm、0.03~1.5ppm、0.04~1.5ppm、0.05~1.5ppm、0.06~1.5ppm、0.08~1.5ppm、0.1~1.5ppm、0.02~1ppm、0.03~1ppm、0.04~1ppm、0.05~1ppm、0.06~1ppm、0.08~1ppm、0.1~1ppm、0.1.5~1ppm、0.2~1ppm、0.3~1ppm、0.4~1ppm、または0.5~1ppmの蒸気濃度で分子ヨウ素を含有する。ある実施形態では、投与量は、1日に投与される蒸気中のヨウ素含有量が対象の体重の8mg/kg未満となるように調整される。
【0088】
さらに他の実施形態では、例えば、24時間以下の曝露時間の間、分子状ヨウ素は、1.5ppmを超える、2ppmを超える、3ppmを超える、4ppmを超える、または5ppmを超える濃度で記載の蒸気中に存在する。他の実施形態では、ヨウ素は、15ppmを超える、20ppmを超える、30ppmを超える、40ppmを超える、または50ppmを超える濃度で溶液中に存在する。対象の蒸気への曝露時間は、様々な実施形態では、20時間未満、16時間未満、12時間未満、10時間未満、8時間未満、6時間未満、4時間未満、3時間未満、または2時間未満である。前述のヨウ素濃度および露光時間は自由に組み合わせられてもよい。さらに別の実施形態では、非常に高い濃度のヨウ素、例えば、2~10ppm、3~10ppm、4~10ppm、5~10ppm、2~5ppm、または2~4ppmを含有する蒸気は、30~60分間、15~30分間、または1~15分間対象に投与される。ある実施形態では、処置は1日2回まで投与されてもよい。
【0089】
他の実施形態では、例えば、甲状腺疾患を有する対象の場合、分子ヨウ素は、0.1~5ppm、または、他の実施形態では、0.2~5ppm、0.3~5ppm、0.4~5ppm、0.5~5ppm、0.6~5ppm、0.8~5ppm、または1~5ppmの濃度で溶液中に存在する。
【0090】
ある実施形態では、記載されるヨウ素含有蒸気は、ヨウ素(および/または、様々な実施形態では、ヨウ素含有化合物)を含む溶液または混合物を摂氏25度(°C)以上の温度に加温することによって産生される。より具体的な実施形態では、溶液または混合物は、26~80°C、30~80°C、35~80°C、40~80°C、45~80°C、50~80°C、55~80°C、60~80°C、65~80°C、70~80°C、75~80°C、80~80°C、26~100°C、30~100°C、35~100°C、40~100°C、45~100°C、50~100°C、55~100°C、60~100°C、65~100°C、70~100°C、75~100°C、または80~100°Cに加温される。
【0091】
ある実施形態では、記載される蒸気は、7.0~10.3、7.0~10.0、7.0~9.5、7.0~9.0、7.5~10.3、7.5~10.0、7.5~9.5、または7.5~9.0のpHを有する溶液から得られた。
【0092】
他の実施形態では、記載される蒸気は、凝縮すると、7.0~10.3、7.0~10.0、7.0~9.5、7.0~9.0、7.5~10.3、7.5~10.0、7.5~9.5、または7.5~9.0のpHを有する。
【0093】
ヨウ素送達システム
様々な実施形態では、空気(酸素を含む)、蒸気、または薬剤を対象の呼吸器系に提供するすべてのシステムは、ヨウ素およびヨウ素放出性化合物を送達する手段として包含される。それは、例えば、人工呼吸器、加湿器、蒸発器、および温められた蒸気または蒸気を発生させ得る特殊な加熱容器と特殊でない加熱容器の両方(例えば、キッチンポットなど)を含む。用語「人工呼吸器」は、対象が吸入する空気の組成物を物理的に含み、それに影響を与えるあらゆる種類の装置を包含することを意図している。ある実施形態では、記載される人工呼吸器は密閉され、または他の実施形態では、少なくとも部分的に密閉される。他の実施形態では、人工呼吸器は呼吸チューブを含む。密閉型人工呼吸器システム(例えば、PAPR)(電動ファン付き呼吸用保護具)が含まれている。アンブ蘇生器(バッグ・バルブ・マスク)は人工呼吸器の別の実施形態と考えられる。「フェイスマスク」は、薬剤の有無にかかわらず、吸入された空気の呼吸を可能にするマスクを指し、別の実施形態では、人工呼吸器の構成要素ともみなされる(保護フェイスマスクは包含されない)空気吸入用の鼻プロング(通常は補助酸素)も、別の実施形態では、人工呼吸器の構成要素とされる。ある実施形態では、記載される人工呼吸器は、機械式人工呼吸器であり、呼吸が停止した、失敗している、または不十分な患者の肺への空気および/または酸素の送達または移動を可能にする機械化された装置として定義される。さらなる実施形態では、機械化された人工呼吸器は、以下の属性(単独でまたは組み合わせで)のいずれかを有する:a.ガス送達をモニタリングおよびカスタマイズする、b.(例えば、肺胞の崩壊を防ぐために)肺内圧を最小限に維持する、およびc.口または鼻から気管に挿入された管を介して、肺に空気および/または酸素を送達する。
【0094】
本発明者は、水蒸気飽和度および暖かい温度を維持するために加熱ワイヤを使用するそれらの人工呼吸器では、水蒸気の凝縮(したがって、管または上気道系におけるヨウ素の凝縮)が少なくなるため、ヨウ素が肺に到達可能になるため、この処置はより良くなることを提案する。同様に、患者が、ヨウ素を添加した蒸発器や温水ポットから呼吸する場合は、より多くのヨウ素が肺に到達することを確実にするように、発生源の近くで吸入するべきである。特にコロナウイルスは肺の表面に被膜を形成するため、粘膜繊毛クリアランスに依存する肺の末梢部では処置効果が高くなるように、すべての症例で深呼吸を促す必要がある。本発明者の推奨は、肺末梢へのヨウ素曝露が最大化するように人工呼吸器を設定することを確実にすることである。ヨウ素が肺の末梢に到達することが重要であるため、肺の末梢に到達するように圧力や吸入の周期(頻度)を調整するオプションが、本出願人が提唱する制御システムの一部として利用できることが望ましいと考えられる。
【0095】
呼吸器からの過剰な圧力がコロナウイルスによる罹患率を増加させる可能性があるといういくつかの報告(Swift,Diana,Medscape News,2020年4月13日,Higher Mortality Rate in Ventilated COVID-19 Patients in Large Sample (Medscape,article 928605)のため、いくつかの実施形態では、圧力の増加のような使用は、ヨウ素の投与量の増加と同時に短時間だけ使用することが示唆される。
【0096】
いくつかの実施形態では、記載される方法、組成物、使用、または製造品の人工呼吸器、加湿器、蒸発器あるいは加熱容器は、ヨウ素自動充填システムを含む。代替的にまたは追加的に、人工呼吸器または他のヨウ素送達装置は、アルカリ自動充填システムを含み、これは、他の実施形態では、そこに含まれる溶液の目標pH範囲を維持するように構成され、これは、様々な実施形態では、本明細書に言及される任意のpHまたはpH範囲であってよい。ある実施形態では、そのアルカリは炭酸水素または重炭酸塩であり得る。
【0097】
ある実施形態では、ヨウ素自動充填システムは、肺への曝露を長時間維持することを支援する。その範囲は、自動充填コントローラと、人工呼吸器と通信し、コンピュータによって制御される弁を備えた容器内に保持される、設定量の化合物を特定の時間範囲中に放出するメモリを備えたコンピュータ制御システムを含む機器によって設定することができる。これは、特定の実施形態では、ヨウ素の濃度を検出するセンサと組み合わせることができ、センサはデータをコンピュータに送信し、コンピュータはバルブコントローラーに命令を送信する。他の実施形態では、人工呼吸器の流体のpHを監視するためにpHセンサが含まれており、pHを特定の数値に維持するために炭酸水素ナトリウムなどのアルカリに対して同様の方法で動作する自動充填がある。コンピュータは、総投与量を毒性レベル以下に保つために、経時的に投与量のデータを集計し、ユーザインタフェースを介して、コンピュータとの無線または有線通信により提供し、ローカルおよびコンピュータを介して警告を発生するように設定され得る。入力装置またはインタフェースは、患者の体重および他の状況のレジメンをカスタマイズするために自動充填器に取り付けることができる。
【0098】
記載される蒸気は、様々な実施形態では、呼吸チューブ、呼吸フェイスマスク、または鼻プロング内に配置され、これらの各々は別個の実施形態を表す。さらに別の実施形態では、蒸気は人工呼吸器内に配置される。まだ他の実施形態では、蒸気は加湿器または蒸発器内に配置される。
【0099】
代替的にまたは追加的に、人工呼吸器、加湿器、蒸発器、または加熱容器は、水の蒸発を促進する加熱要素(その非限定的な例は、加熱ワイヤ(複数可)または他の浸漬要素、加熱プレート[これは、いくつかの実施形態において、溶液を保持するチャンバに隣接する]、及び溶液を保持するチャンバの周囲にある要素)を含む。
【0100】
標的病原体
言及される方法、組成物、使用、または製造品のいずれかによって処置される病原体は、いくつかの実施形態では、ウイルスである。より具体的な実施形態では、ウイルスはCOVID-19である。
【0101】
他の実施形態では、本明細書に記載されるコロナウイルスは、重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-1型およびSARS-CoV-2型のヒトおよびコウモリ重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)である。ある実施形態では、処置されるウイルスはSARS-CoV-2である。
【0102】
さらに別の実施形態では、ウイルスは、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ワクシニアウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、ポリオーマウイルスSV40、アデノウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、コクサッキーウイルス、ライノウイルス、単純疱疹ウイルス、風疹、麻疹、またはポリオウイルスであり、それらの各々は別個の実施形態を表す。他の実施形態では、病原体は別のウイルスの病原体であり、それらの各々は別個の実施形態を表す。他の実施形態では、ウイルスは脂質エンベロープウイルスである一方、他の実施形態では、ウイルスは脂質エンベロープ化されていない。代替的にまたは追加的に、ウイルスはヘマグルチニン(haemagglutinin)、ノイラミニダーゼ、または両方を発現する。
【0103】
ある実施形態では、標的病原体はヘマグルチニンを発現する。Eggers 2019は、「インフルエンザウイルスは、現代社会において最も重要な流行病の原因となっており、毎年発生すると、約300万人~500万人が重症化し、年間で25万人~50万人が死亡するとされている。プラーク阻害アッセイを使用したインフルエンザ研究では、1.56-mg/mlのPVP-I処置によって、H1N1、H3N2、H5N3、H9N2を含むヒト(8株)および鳥(5株)インフルエンザAウイルスによるMDCK細胞への感染が23から98%に抑制されることが示された。受容体結合分析は、宿主特異的シアル酸受容体の阻害ではなく、ヘマグルチニン阻害がPVP-I殺ウイルス活性の原因である可能性が高いことを明らかにした。さらに、PVP-Iによる宿主細胞受容体へのウイルス付着阻害と感染細胞からのウイルス放出阻害という2つの特異的なウイルス増殖抑制機構が実証された。」と主張する。
【0104】
代替的にまたは追加的に、標的病原体はノイラミニダーゼを発現する。Eggers 2019は、「PVP-I製剤は、幅広い抗ウイルス性を有することも知られている。これらの効果は、原理的にヨウ素の抗菌活性と機構的に類似している。例えば、PVP-Iの殺ウイルス作用機構は、ノイラミニダーゼなどの本質的なウイルス酵素の阻害を伴うことが決定されている。この酵素の不活性化は、宿主細胞からのウイルスの放出を遮断し、感染していない細胞へのウイルスのさらなる拡散を防ぐ。加えて、PVP-Iはさらにウイルスのヘマグルチニンを阻害し、宿主細胞の受容体への付着が阻害される。PVP-Iは、ウイルスの複製に必要な重要な機構の両方を同時に標的とすることで、突然の突然変異による耐性が生じる可能性を低減する。」と主張している。
【0105】
さらに他の実施形態では、呼吸器病原体は病原菌である。より具体的な実施形態では、病原体は結核であり、いくつかの実施形態では、抗生物質耐性結核である。他の実施形態では、病原体は肺炎を引き起こす抗生物質耐性菌である。さらに別の実施形態では、病原体は別の病原菌であり、それらの各々は別個の実施形態を表す。他の実施形態では、それは呼吸器誘導の感染性肺炎の原因菌のいずれかであり得る。他の実施形態では、病原体は真菌であり、それらの非限定的な例はカンジダ(例えば、肺炎を引き起こすことが知られているカンジダアルビカンス)である。(Dermawan et al.,Mandanas)
【0106】
さらに、本明細書では、人工呼吸器の蒸気を使用して、元素状ヨウ素およびヨウ素放出性化合物を16mg/kg/日の元素状ヨウ素を超えない用量で対象に投与し、人工呼吸器によって引き起こされる肺炎の発生率を低減する方法を提供される。入力溶液に添加すると、ヨウ素およびヨウ素放出性化合物は、換気関連肺炎の発症を処置および妨害することができる。米国疾病予防管理センターによると、人工呼吸器関連肺炎は、人工呼吸器を使用している人に発生する肺感染症である。人工呼吸器は、患者の口または鼻に入れられた管、または首の前の穴から酸素を供給することによって、患者の呼吸を助けるために使用される機械である。細菌が管を通って入り、患者の肺に入ると、感染が発生する可能性がある。」彼らが参照する研究論文、Klompas M et al.にはヨウ素についての言及はない。
【0107】
考えられる作用機構
ある実施形態では、理論によって限定されることを望むことなく、記載された方法及び組成物は、表面タンパク質および/または脂肪酸の修飾によって効果を発揮する。McDonnellおよびRussellは、「塩素に似ている、ヨウ素の抗菌力は低濃度でさえ、迅速であるが、正確な作用様式は未知である。McDonnellとRussellは、「塩素と同様に、ヨウ素の抗菌作用は低濃度でも速やかに起こるが、正確な作用機序は不明である。ヨウ素は、微生物に急速に浸透し、タンパク質(特に遊離硫黄アミノ酸のシステインおよびメチオニン)、ヌクレオチド、脂肪酸の主要な群を攻撃し、細胞死に至る。ヨウ素の抗ウイルス作用についてはあまり知られていないが、非脂質ウイルスおよびパルボウイルスは、脂質エンベロープウイルスよりも感受性が低い。細菌と同様に、ヨウ素はエンベロープウイルスの表面タンパク質を攻撃すると考えられるが、不飽和炭素結合と反応して膜脂肪酸を不安定にする可能性もある。」と書いている。
【0108】
追加の薬剤
別の実施形態では、ヘパリンまたは他の抗凝固剤が併用投与される。特に血液凝固時間の遅い患者にヨウ素剤を使用することの価値の一つは、このコロナの合併症において抗凝固剤の使用を最小限に抑えることである。
【0109】
現在、コロナウイルスが血栓を引き起こすことが非常に懸念されているため、ヨウ素がin vitroで赤血球凝集を減少させることは興味深い。Sriwilaijaroen(Sriwilaijaroen et al.,Mechanisms of the action of povidone-iodine against human and avian influenza A viruses:its effects on hemagglutination and sialidase activities,Virology Journal volume 6,Article number:124(2009))は、以下を主張する。「受容体結合阻害およびヘマグルチニン阻害アッセイから、PVP-Iは宿主特異的なシアル酸受容体ではなく、ウイルスのヘマグルチニンに影響を与えることが示された。」引用された研究によると、この凝集は宿主よりもウイルスに関係している。
【0110】
ある実施形態では、ACE阻害剤(Rohan)、ビタミンD(McCall)、イベルメクチン、コルチコステロイド(その一例はデキサメタゾン(Giardina))、マウスウォッシュ(Vlessides)-特にアルコールなどの殺菌化合物を高含量で含むもの、および/またはステロイドもしくは他の抗ウイルス化合物が共投与されるが、これらはそれぞれ別々の実施形態を表す。特定の実施形態では、追加の化合物は、ヨウ素またはヨウ素放出性化合物と同じ組成物で投与される。
【0111】
他の実施形態では、植物表面の消毒のためのヨウ素蒸気の使用が提供される。
【0112】
細胞内pHまたはリソソームpHを標的とする薬剤との併用投与
さらに他の実施形態では、記載される方法、組成物、使用、または製造品は、細胞内pHまたはリソソームpHを増加させる追加の活性剤をさらに含むか、または利用する。いくつかの実施形態では、薬物はクロロキンまたはヒドロキシクロロキンである。細胞内pHまたはリソソームpHを増加させる活性剤の他の非限定的な例は、アミノキノリン、例えば、アモジアキン、ヒドロキシクロロキン(HCQ)、クロロキンなどの4-アミノキノリン;プリマキンおよびパマキンなどの8-アミノキノリン;ならびにメフロキンなどである。ある実施形態では、さらなる活性薬剤は、ヨウ素またはヨウ素放出性化合物と同じ組成物で投与される。
【0113】
本発明者は、ヨウ素処置とクロロキンのような他の薬剤を組み合わせることが、例えば、細胞内pHや下気道における病原体の標的細胞のエンドソームやリソソームのpHを上昇させることによって、相補的に病原体を抑制すること場合がある、と提案している。KrogstadおよびSchlesinger(Am J Trop Med Hyg.1987 Mar;36(2):213-20,The basis of antimalarial action:non-weak base effects of chloroquine on acid vesicle pH.)は、「生物学的に活性な濃度のクロロキンは、3-5分以内に寄生虫の酸性小胞のpHを上昇させる。」と書いている。代替的にまたは追加的に、ヨウ素溶液にpH上昇剤が含まれている。本開示は、投与経路が何であれ、これらの実施形態のそれぞれを新薬の組み合わせとして包含する。
【0114】
さらに他の実施形態では、pH上昇剤を添加したヨウ素溶液をクロロキン経口処置と同時に使用する。
【0115】
対象
ある実施形態では、記載される組成物、方法、使用、および製造品によって処置される対象は、ヒトである。他の実施形態では、対象は動物であり、それらの非限定的な例はイヌ、ネコ、ウマ、およびウシである。
【0116】
他の実施形態では、感染症(例えば、下気道病原体)、特定の実施形態ではコロナウイルスを有する対象において形成される血栓の形成を阻害するための、ヨウ素(または他の実施形態では、ヨウ素放出性化合物)のin vivo使用が提供される。ある実施形態では、ヨウ素は吸入を介して投与される。他の実施形態では、ヨウ素は経口で投与される。さらに別の実施形態では、別の投与経路が利用され、それらの非限定的な例は静脈内投与である。様々な実施形態では、記載される抗凝固剤使用は予防的、または治療用である。代替的にまたは追加的に、投与されるヨウ素のレベルは、毒性レベル以下、例えば、(合併症を伴わない平均的な患者の場合)1日当たり16mg/kg未満に維持される。
【国際調査報告】