(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】改善された設計のマルチチャンネル・ピペット操作システム
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20230510BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022557155
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-11-16
(86)【国際出願番号】 FR2021050517
(87)【国際公開番号】W WO2021198593
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513310243
【氏名又は名称】ジルソン エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュデク,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ギシャルドン,ステファン
【テーマコード(参考)】
2G052
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA14
2G052CA18
2G052CA21
2G052CA33
2G052JA08
2G052JA11
4G057AB18
4G057AB31
4G057AB34
(57)【要約】
本発明は、ピストン・ホルダ(34)と、前記ピストン・ホルダのガイド・ロッド(38)であって、ガイド部材(40)内に摺動自在にマウントされるガイド・ロッド(38)と、吸引チャンバ内に摺動自在に収容されるボトム端部を有する複数のピストン(20a,20b)と、機械的な接続(62)を用いて前記ピストン・ホルダにマウントされるピストン・ヘッド(56)とを包含する、マルチチャンネル・ピペット操作システムのための装置に関する。本発明によれば、前記機械的な接続(62)は、前記ピペット操作システムの横方向(10)に対して、かつそれの中心縦軸(14)に対して直交して向き付けされるピストン・ヘッドの回動軸(66)を合同して定義する2つの接触点(64a,64b)を包含し、また前記装置は、前記2つの接触点(64a,64b)が設定されるように、前記ピストン・ヘッド(56)を前記ピストン・ホルダ(34)に対して上向きに押し付ける前記ピストン(20a,20b)と関連付けされた弾性戻り手段(68)を、さらに包含する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチチャンネル・ピペット操作システムのための装置(32)であって、
- 前記ピペット操作システムの横方向(10)に延びるピストン・ホルダ(34)と、
- 前記ピストン・ホルダをガイドするためのロッド(38)であって、前記ピペット操作システムの中心縦軸(14)と平行に、かつ前記ピストン・ホルダ(34)と直交して延びるガイド・ロッドと、
- 前記ガイド・ロッド(38)を、前記中心縦軸(14)に沿ってガイドするための部材(40)であって、中に前記ガイド・ロッド(38)が摺動自在にマウントされるガイド部材(40)と、
- 前記ピストン・ホルダ(34)に沿って分配される複数のピストン(20a,20b)であって、それぞれのピストンが吸引チャンバ(13a,13b)内に摺動自在に収容される下側端部をはじめ、前記ピストン・ホルダ(34)に前記ピストン(20a,20b)をマウントするための機械的な接続(62)を介して前記ピストン・ホルダにマウントされるピストン・ヘッド(56)を有する複数のピストン(20a,20b)と、
- 前記ピペット操作システムの前記横方向(10)に沿って分配される試料採取コーン・ホルダ・チップ(6)の列であって、それぞれのチップ(6)が前記吸引チャンバ(13a,13b)のうちの1つとそれぞれ連通する試料採取コーン・ホルダ・チップ(6)の列と、
を包含し、それにおいて、
前記機械的なマウント接続(62)が、前記ピストン(20a,20b)のうちの少なくとも1つのために、前記ピペット操作システムの前記横方向(10)および前記中心縦軸(14)と直交して、または実質的に直交して向き付けされた前記ピストン・ヘッドの回動軸(66)を連帯的に定義する2つの接触点(64a,64b)を含むことと、
前記装置が、さらに、前記2つの接触点(64a,64b)を設定するために前記ピストン・ヘッド(56)を前記ピストン・ホルダ(34)に対して上向きに押し付ける前記ピストン(20a,20b)と関連付けされた弾性戻り手段(68)を含むことと、
を特徴とする、マルチチャンネル・ピペット操作システムのための装置(32)。
【請求項2】
前記弾性戻り手段が、断面がボトムから上向きにテーパーを有する全体的に円錐形状のコイルばね(68)によって形成されること、または前記弾性戻り手段が、変形されたワイヤの形状のばねによって形成されること、を特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ピストン・ホルダ(34)が、2つの反対側の自由横端部を有すること、を特徴とする、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ガイド・ロッド(38)が、前記中心縦軸(14)に沿って互いに間隔が離された2つの摺動ピボット接続(46a,46b)を介して、前記ガイド部材(40)内に摺動自在にマウントされること、を特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
各ピストン(20a,20b)が、それの下側端部において、前記ピストンと関連付けされた前記吸引チャンバ(13a,13b)の内側表面(49)を圧迫するシール(47)を担持すること、を特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記シール(47)がリップ・シールであることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
各機械的なマウント接続(62)の前記2つの接触点(64a,64b)が、関連付けされたピストン軸(48a,48b)に関して対称に配されること、を特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
各機械的なマウント接続(62)の前記2つの接触点(64a,64b)が、
- 前記ピストン上に備えられたトロイダル表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられ、互いに対して相対的に傾斜される2つの平らな表面(72)を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられ、互いに対して相対的に傾斜される2つの平らな表面(72)を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた円錐状表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面(72)を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた平らな表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面(72)を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面(72)を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面(72)を使用する、セカント軸を伴う方法、または、
- 前記ピストン上に備えられたトロイダル表面(70)と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面(72)を使用する、セカント軸を伴う方法、
のうちのいずれかで作られることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記吸引チャンバ(13a,13b)が、平行なチャンバ軸(50a,50b)を有すること、を特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
すべての前記チャンバ軸(50a,50b)が、前記ピペット操作システムの同一の横平面内に配されること、を特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記チャンバ軸(50a,50b)が、前記ピペット操作システムの2つの別々の平行な横平面(P1,P2)内においてずらし配置態様で配されること、を特徴とする、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ピストン・ヘッド(56)もまた、前記チャンバ軸(50a,50b)によって定義される同じ前記2つの横平面(P1,P2)内において、これらのチャンバ軸が前記ピストン軸(48a,48b)とペア毎に一致するようにずらし配置態様で配されること、を特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ピストン・ヘッド(56)が、すべて、前記チャンバ軸(50a,50b)によって定義される前記2つの横平面(P1,P2)と平行、かつそれらの間に配される横線(84)に沿って整列され、その結果、前記ピストン軸(48a,48b)が、それらの対応するチャンバ軸(50a,50b)に関して傾斜されるようになること、を特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記ピストン・ホルダ(34)が、互いに固定される2つの部品(34a,34b)から作られ、それらの間に前記ピストン・ヘッド(56)と前記弾性戻り手段(68)とが配されること、または前記ピストン・ホルダ(34)がワンピースで作られること、を特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の装置(32)を包含するマルチチャンネル・ピペット操作システム(1)であって、好ましくは、マニュアル、モータ付き、またはハイブリッド試料採取ピペット、またはそのほかのオート・ピペットの多関節アームに接続されることが意図された下側部分を形成するカセットとする、マルチチャンネル・ピペット操作システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内の液体の較正試料採取および導入のために意図された、ラボラトリ・ピペットとも呼ばれるマルチチャンネル試料採取ピペットまたはそのほかの空気置換送液ピペット等のマルチチャンネル・ピペット操作システムの分野に関する。
【0002】
本発明は、液体の試料採取および分配の操作の間にわたって操作者によってその手の中に保持されることが意図された試料採取ピペットに好ましく適用できるが、自動化されたピペット操作システムにも適用される。
【背景技術】
【0003】
従来技術から、ハンドルを形成するボディをはじめ、ピペット試料採取コーン・ホルダ・チップを端部にいくつか有する下側部分を統合するタイプの設計を有するマルチチャンネル試料採取ピペットが周知であり、ピペット試料採取コーン・ホルダ・チップの周知の機能は、消耗品とも呼ばれる試料採取コーンの担持である。
【0004】
周知の態様におけるマルチチャンネル・ピペットの基本原理は、圧力の降下および試料採取コーン内の液体の上昇を生じさせる体積の変動に基づく。一般に、各ピペット操作の間、およびマルチチャンネル・ピペットの各チャンネルの間に引き渡される体積の差に従って重量測定仕様が設定される。このことは、圧力変動を発生させるすべてのピストンの移動のコントロールを必要とするという結果に帰する。
【0005】
マニュアル(機械式とも呼ばれる)、モータ付き、またはハイブリッド・マルチチャンネル・ピペットには、このピペットの横方向に延びるピストン・ホルダが備えられ、従来的にこのピストン・ホルダは、『レーキ』と呼ばれている。また、この同じピペットの中心縦軸と平行に延びる、ピストン・ホルダをガイドするためのロッドも備えられる。それに加えて、ガイド部材が、中心の縦軸に沿ってガイド・ロッドが摺動自在にガイドされることを可能にする。この状況に関して言えば、複数のピストンがピストン・ホルダに沿って分配されており、各ピストンは、吸引チャンバ内に摺動自在に収容される下側端部をはじめ、ピストンをピストン・ホルダにマウントするための機械的な接続を介してピストン・ホルダにマウントされるピストン・ヘッドを有する。
【0006】
ピストン・ホルダにピストンをマウントするための各機械的な接続は、概して、この接続に対して特定の硬直性を与える、ピストンの平面と直交する平らな支持体を含む。したがって、これが、結果として、ピストンの平面と垂直であり、かつガイド・ロッドの摺動接続の軸を通る軸を伴うトルクを発生し得る。この寄生トルクは、2つの主要な不利益を招き、それらの第1は、観察される『レーキ効果』にあり、第2は、ピストン・ホルダおよびピペットのそのほかの可動要素の、それらの並進運動の間における無視できない摩擦に対応する。
【0007】
第1の不利益についての注意として述べるが、レーキ効果は、マルチチャンネル・ピペットの2つの正反対の位置にある最端のチャンネルの間において引き渡される体積の差によって定量化される。この効果は、したがって、ピストン・ホルダを支持するロッドの摺動ガイド接続のクリアランスにおける、その同じピストン・ホルダの変位の角度振幅によって直接的な影響を受ける。したがって、現行の設計に観察されるレーキ効果に起因して、マルチチャンネル・ピペットが有する重量測定パフォーマンスが制限される。
【0008】
摩擦および可能性としてマルチチャンネル・ピペットの可動要素の押し詰まりに関係する第2の不利益については、後者が、特にピペット操作およびパージの力に関するエルゴノミクスの点において影響を受ける。
【0009】
まったく同じか、または類似した不利益が、モータ付きまたはハイブリッド・ピペット、またはそのほかの任意のタイプのマルチチャンネル・ピペット操作システムにも観察されることに注意を要する。それの代替としてそれを、オート・ピペットの多関節アームに接続されることが意図された下側部分を形成するカセットとすることができる。
【0010】
それに加えて、リターンおよび/またはパージばねを含むマルチチャンネル・ピペットについては、それが圧縮されたときに、このばねが接続摺動ガイド内のそれの並進運動の軸に対応する軸を伴う別の寄生トルクをガイド・ロッド上に発生させる。寄生トルクは、ピストン・ホルダへ伝達され、それが、前述の並進運動の軸周りの別の寄生回転運動を受けるという結果を伴う。これは、ピストンの間の、ピペットの中心縦軸からのそれらの距離に依存するピペット操作ストロークにおける差異の別の原因である。またこれはピストン・ホルダとピペットの固定された周囲要素の間における追加の摩擦/押し詰まりのリスクも生じさせる。
【0011】
要するに、リターンおよび/またはパージばねは、ピペットの重量測定パフォーマンスをはじめ、ピペット操作およびパージの力に関するピペットの使用のエルゴノミクスをさらに低下させがちである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、したがって、従来技術の解決策において遭遇する、上に述べられている問題を少なくとも部分的に克服する解決策を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、第一にマルチチャンネル・ピペット操作システムのための装置に関し、前記装置は、
- 前記ピペット操作システムの横方向に延びるピストン・ホルダと、
- 前記ピストン・ホルダをガイドするためのロッドであって、前記ピペット操作システムの中心縦軸と平行に、かつ前記ピストン・ホルダと直交して延びるガイド・ロッドと、
- 前記ガイド・ロッドを、前記中心縦軸に沿ってガイドするための部材であって、中に前記ガイド・ロッドが摺動自在にマウントされるガイド部材と、
- 前記ピストン・ホルダに沿って分配される複数のピストンであって、それぞれのピストンが吸引チャンバ内に摺動自在に収容される下側端部をはじめ、前記ピストン・ホルダに前記ピストンをマウントするための接続メカニズムを介して前記ピストン・ホルダにマウントされるピストン・ヘッドを有する複数のピストンと、
- 前記ピペット操作システムの前記横方向に沿って分配される試料採取コーン・ホルダ・チップの列であって、それぞれのチップが前記吸引チャンバのうちの1つとそれぞれ連通する試料採取コーン・ホルダ・チップの列と、
を包含する。
【0014】
本発明によれば、前記機械的なマウント接続が、前記ピストンのうちの少なくとも1つのために、好ましくはそれらのうちのいくつか、またはそれらのうちの全部のために、前記ピペット操作システムの前記横方向および前記中心縦軸と直交して、または実質的に直交して向き付けされた前記ピストン・ヘッドの回動軸を連帯的に定義する2つの接触点を含む。前記装置は、さらに、前記2つの接触点を設定するために前記ピストン・ヘッドを前記ピストン・ホルダに対して上向きに押し付ける前記ピストンと関連付けされた弾性戻り手段を含む。
【0015】
このように本発明は、マルチチャンネル・ピペット操作システム上において一般に実装されていた原理、すなわち、ピストン・ホルダ内におけるピストンのヘッドのある種の埋め込みを導くピストン・ホルダとピストンの間の接続のために比較的高い硬直性を提供するという事実との関係を遮断している。本発明においては、むしろその逆に、これらの接続に、前記ピストン・ホルダとの前記2つの接触点によって定義される回動軸周りに前記ピストン・ヘッドが枢動する可能性とともに、特定の柔軟性が導入される。
【0016】
前記ピストン・ヘッドにおいて許容されるこの移動の自由度は、第一にピストン・ホルダのレーキ効果が制限されることを可能にし、そのことが、精度/再現性に関する利得を都合よく導き、前記ピペット操作システムのためのより良好な重量測定パフォーマンスの獲得を可能にする。また、この移動の自由度は、並進運動で移動する要素の、特に前記ピストン・ホルダおよび前記ピストンの摩擦および押し詰まりのリスクを制限することも可能にする。このことは、都合よく、マニュアル・ピペットのときにはピペット操作およびパージの力における低減を結果としてもたらし、したがって、より良好なピペットの使用のエルゴノミクスを導き、あるいはモータ付きおよびハイブリッド・ピペットにおいては、駆動モータのサイズならびにバッテリのサイズの低減を導く。
【0017】
さらにまた、前記ピストン・ヘッドの前記機械的なマウント接続の前記2つの接触点の特定の位置決めの好結果として、リターンおよび/またはパージばねからの結果としてもたらされる寄生トルクを、シールを備える前記ピストンを使用して吸収することが容易になる。実際に前記ガイド・ロッドの並進運動の軸に沿って及ぼされるこの寄生トルクは、直接前記ピストン・ホルダへ、その後前記ピストンへ、最後に、それぞれの吸引チャンバの内の放射状の接触点を設定する前記シールへと伝達される。前記ピストン・シールを介した、前記ガイド・ロッドの並進運動の軸に沿った前記寄生トルクを吸収するこの方法は、レーキ効果を大きく制限する一方、前記ピペットの可動部品の摩擦を低減する。前記ピペットの重量測定パフォーマンスがさらに増加し、ピペット操作およびパージの力をさらに低減することが可能である。
【0018】
さらにまた、この寄生トルクを吸収するピストン・シールの使用は、前記ピストン・ホルダの両端部を、前記ピペット操作システムの固定された部分によって個別にガイドする必要がなくなることから、このシステムの設計の単純化を、したがってそれの重量の軽減を可能にする。個別にガイドする必要がなくなるというよりは、むしろ、前記ピストン・ホルダの前記両端部を、前記ピペット操作システムのそのほかの部分との接続を伴うことなく自由なままにしておくことが可能である。
【0019】
最後に、提案されている解決策が、前記ピストン・シールがオートクレーブ内の多数回のサイクルに耐えることを都合よく可能にする一方、エルゴノミクスに有害な摩擦力の発生を伴うことなく、必要とされるシールを、それらと関連付けされた吸引チャンバへ継続的に提供することに注意する。このように、提案されている解決策は、重量測定および使用のエルゴノミクスの点において特に効率的であることを明らかにする一方、満足の得られる前記ピストン・シールの寿命を確保する。
【0020】
また、本発明は、好ましくは、次に挙げる、個別に、または組み合わせで採用されるオプションの特徴のうちの少なくとも1つも含む。
【0021】
好ましくは、前記弾性戻り手段が、断面がボトムから上向きにテーパーを有する全体的に円錐形状のコイルばねによって形成される。このばねの形状および向きは、前記ピストン・ヘッドの前記回動軸周りの前記ピストン・ヘッドの枢動を容易にする一方、前記ピストン・ホルダに対するピストンの軸押しを確保する。
【0022】
それに代えて、前記弾性戻り手段が、変形されたワイヤの形状のばねによって形成される。
【0023】
前記ピストン・ホルダは、2つの反対側の自由横端部を有する。
【0024】
前記ガイド・ロッドは、前記中心縦軸に沿って互いに間隔が離された2つの摺動ピボット接続を介して、前記ガイド部材内に摺動自在にマウントされる。
【0025】
各ピストンは、それの下側端部において、前記ピストンと関連付けされた前記吸引チャンバの内側表面を圧迫するシールを担持する。
【0026】
好ましくは、前記シールをリップ・シールとする。
【0027】
各機械的なマウント接続の前記2つの接触点は、関連付けされたピストン軸に関して対称に配される。
【0028】
各機械的なマウント接続の前記2つの接触点は、
- 前記ピストン上に備えられたトロイダル表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられ、互いに対して相対的に傾斜される2つの平らな表面を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられ、互いに対して相対的に傾斜される2つの平らな表面を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた円錐状表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた平らな表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの球状表面を使用する方法、
- 前記ピストン上に備えられた球状表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面を使用する、セカント軸を伴う方法、または、
- 前記ピストン上に備えられたトロイダル表面と、前記ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面を使用する、セカント軸を伴う方法、
のうちのいずれかで作られる。
【0029】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記吸引チャンバが平行なチャンバ軸を有する。
【0030】
すべての前記チャンバ軸を、前記ピペット操作システムの同一の横平面内に配するか、または前記ピペット操作システムの2つの別々の平行な横平面内においてずらし配置態様で配することが可能である。後者の場合においては、前記ピストン・ヘッドもまた、前記チャンバ軸によって定義される同じ前記2つの横平面内において、これらのチャンバ軸が前記ピストン軸とペア毎に一致するようにずらし配置態様で配することが可能である。それに代えて、前記ピストン・ヘッドを、すべて、前記チャンバ軸によって定義される前記2つの横平面と平行、かつそれらの間に配される横線に沿って整列させることが可能であり、その結果、前記ピストン軸が、それらの対応するチャンバ軸に関して傾斜されるようになる。
【0031】
好ましくは、前記ピストン・ホルダが、互いに固定される2つの部品から作られ、それらの間に前記ピストン・ヘッドと前記弾性戻り手段が配される。それに代えて、前記ピストン・ホルダが、たとえば、200または300μL等の小容量の試料採取が意図されたピペットのためにワンピースで作られる。
【0032】
最後に、本発明は、この種の装置を包含するマルチチャンネル・ピペット操作システムにも関係し、前記ピペット操作システムは、好ましくはマニュアル、モータ付き、またはハイブリッド試料採取ピペットである。それに代えて、それを、たとえば、自動化されたピペット操作システムとすることが可能である。
【0033】
本発明のそのほかの利点および特徴は、以下の非限定的な詳細な説明の中に現れてくるであろう。
【0034】
この説明は、次に挙げる添付図面に関して与えられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】空気置換マルチチャンネル試料採取ピペットを示した正面図である。
【
図2】手前の図面内に示されているピペットの統合された部分を形成する、本発明の第1の好ましい実施態様に従った装置の図である。
【
図2a】
図1および2に示されているピペットの部分的な斜視図である。
【
図3】
図2および2aに示されている装置の上側部分の軸方向断面図である。
【
図4】
図2および2aに示されている装置の下側部分の斜視図である。
【
図5a】第1の好ましい実施態様に実装されるピストン・ホルダを示した斜視図である。
【
図5b】手前の図面内に示されているピストン・ホルダの部分の拡大斜視図である。
【
図6】ピストン・ホルダ上にピストンをマウントするための機械的な接続を示した手前の図面内に示されている装置の部分の拡大正面図である。
【
図7a】手前の図面内に示されている機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7b】代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7c】別の代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7d】さらに別の代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7e】さらに別の代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7f】さらに別の代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図7g】さらに別の代替に従った機械的なマウント接続の部分的な斜視図である。
【
図8】
図5に示されている装置の部分を示した斜視図である。
【
図10】本発明の第2の好ましい実施態様の形式の装置の、
図5に類似する正面図である。
【
図11】第2の好ましい実施態様に実装されるピストン・ホルダを示した斜視図である
【
図12】本発明の第3の好ましい実施態様に従った装置を示した部分分解斜視図である。
【
図13】手前の図面のピストン・ホルダと直交する平面に沿った断面図である。
【
図14】
図12のピストン・ホルダと平行な平面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
最初に
図1乃至3を参照すると、本発明の好ましい実施態様に従ったマルチチャンネル試料採取ピペット1が示されている。それにもかかわらず、本発明がピペットに限定されることはないが、任意のマルチチャンネル・ピペット操作システムに、特に、オート・ピペットと呼ばれる自動化されたピペット操作システムに適用される。
【0037】
図1乃至3のこの実施態様においては、ピペットが、たとえば1200μlといった高容量の試料採取のために好ましく意図されている。しかしながら、その設計は、より小さい容量、たとえば200または300μLの試料採取にも適合する。
【0038】
マニュアル、モータ付き、またはハイブリッド空気置換ピペット1は、上側部分のハンドル2を形成するボディをはじめ、それの下側端部において、上からコーンまたは消耗品8をプレス嵌めすることが意図された試料採取コーン・ホルダ・チップ6を統合する下側部分4を包含する。
【0039】
試料採取コーン・ホルダ・チップ6は、矢印10によって表されている、ピペットのラテラル方向とも呼ばれるピペット操作システムの横方向において互いに間隔が離されている。各チップ6は、上側端部において吸引チャンバ13a、13bと、また下側端部において試料採取コーン8と連通する貫通オリフィス12を有する。貫通オリフィス12は、関連付けされたチップ6に中心合わせされているか、またはされてなく、言い換えると、上にプレス嵌めされるコーンが中心合わせされるチップの中心軸7にそれが中心合わせされているか、またはされていない。
【0040】
ピペット1は、下側部分4の中心縦軸および本発明に特有の装置32のそれにも対応する中心縦軸14を有する。この軸14は、ピペットの高さ15の方向と平行であり、横方向10と直交する。中心縦軸14は、ハンドル2と交差し、一般に、横方向10における当該軸の両側に配置されるチップ6がまったく同じ数を有するように配置される。さらにまた、概して軸14は、貫通オリフィス12の軸およびそれらの関連付けされたチップ6およびコーン8の軸7と平行であり、また、以下に述べるピペットの可動要素の摺動/並進運動の方向に対応する高さ15の方向に対しても平行である。
【0041】
図1乃至3に示されている例においては、チップの単一の横列が形成されるように、方向10に整列する12個のチップ6が備えられる。また、それぞれのチップ6の中心軸7は、方向10に延びる同一の直線9を挟み取る。
【0042】
当業者に周知のとおり、下側部分4は、ハンドルを形成するボディ2上に螺合される態様で好ましくマウントされる。
【0043】
本発明の特徴のうちの1つは、下側部分4の殆どすべてをはじめ、ハンドル2の小部分を形成する装置32の設計にある。装置32は、その全体が
図2に示されているが、それの第1の好ましい実施態様の説明は、すべて
図2乃至9に関して行う。
【0044】
周知の態様において、下側部分4は、固定本体16をはじめ、この固定本体16と相対的に、摺動方向15に移動可能なアッセンブリ19を包含する。
【0045】
ピペットの下側部分の固定本体16は、互いに一体化されるか、または取り付けられるいくつかの要素を使用して作られるか、またはワンピースとして作られる。そこには、特に、吸引チャンバ13a、13b、およびコーン保持チップ6があり、これらの要素は、チャンバ13a、13bの上側端部により横切られる固定横保持プレート21によって完全になる。
図2aに部分的に示されているとおり、外側の取り外し可能なカバー17が、固定本体16の周囲に配されており、このカバーは、概して、装置32の下側部分を、チップ6の下側部分だけが下向きにこのカバー17の外側に突出するようにカバーする。後者は、固定横保持プレート21のエッジを収容するための凹部を内側に有する。
【0046】
一方、可動アッセンブリ19は、カバー17の内側で横方向10に延びる全体的にバーの形状のレーキとも呼ばれるピストン・ホルダ34を含む。ピストン20a、20bは、横方向10において互いに規則的な間隔でピストン・ホルダに沿って分配されており、それぞれは、軸14と平行に向き付けされている。ピストン・ホルダ34は、全体的にピストン20a、20bのピストン・ヘッドの収容が可能となるように、それらの上方に位置する。より詳細に述べれば、これらのピストン・ヘッドは、摺動方向15の両方向における並進運動が、この同じ方向におけるピストン・ホルダの前後移動に従うことが可能となるように、ピストン・ホルダ34によってブロックされる。
【0047】
各ピストン20a、20bは、関連付けされた吸引チャンバ13a、13bのうちの1つの中に摺動自在に収容される下側端部を有し、吸引チャンバ自体が、それぞれチップ6のうちの1つと連通している。
【0048】
下側ピペット部分4の可動アッセンブリ19は、ピストン・ホルダ34のガイド・ロッド38と固定的に接続される。ガイド・ロッド38は、中心縦軸14と平行に、たとえば、後者に中心合わせされて延び、このロッド38もまた、ピストン・ホルダ34と直交して延びることが含意される。それがハンドル2を通り、ピペットの下側部分4の一体部分を形成する固定ガイド部材40内において軸14に沿って摺動自在にマウントされており、またそれは、ハンドル2内にも侵入する。
【0049】
より具体的に述べれば、軸14に沿って摺動自在に固定ガイド部材40内に収容されるガイド・ロッド38が、
図3を参照すると示されている。これら2つの半径方向の間に、ピペット操作のためのリターンばね42と、パージばね44が備えられる。これらは、円筒状圧縮コイルばねであり、軸方向においてガイド・ロッド38を圧迫する。このロッド38の上側部分においては、第1の摺動ピボット接続が形成されるように、ショルダ46aが中空ガイド部材40の内側表面と協働する。それに加えて、その下側端部においては、第1の摺動ピボット接続から方向15において間隔が離された第2の摺動ピボット接続が形成されるように、ガイド部材40が、最小限のクリアランスを伴ってロッド38が通過するボア46bを有する。これら2つの接続の間の間隔は、したがって、効率的なガイドが獲得されるように、またガイド・ロッド38の寄生クリアランスがもっともよく制限されるように、可能な限り大きくする。
【0050】
この第1の好ましい実施態様について、
図3乃至5は、チャンバ13a、13bおよびピストン20a、20bのアレンジメントに関するピペット特徴の1つを示している。ピストンは、2つの平行な横列が形成されるように、ずらし配置態様で配置される。第1のピストン20aは、ピペットの第1の横平面P1内に収まることによって第1のピストン列を形成し、言い換えるとこれらの第1のピストン20aのピストン軸48aは、すべて同一の、方向10ならびに15に対して平行な横平面P1内に収まる。同様に、第2のピストン20bは、平面P1と平行かつ、それとは区別されるピペットの第2の横平面P2内に内接させることによって第2のピストン列を形成する。これらの第2のピストン20bのピストン軸48bは、したがって、同一の、これもまた方向10ならびに15に対して平行な第2の横平面P2内にすべて内接させられる。さらにまた、この第1の実施態様においては、ピストン軸48a、48bが互いに平行であり、2つの平面P1、P2は、軸14の両側に位置する。
【0051】
ピストンのこの特定のアレンジメントは、吸引チャンバ13a、13bに対しても適用される。実際、チャンバは、2つの平行な横列が形成されるように、ずらし配置態様で配置される。第1のチャンバ13aは、第1の横平面P1内に収まることによって第1のチャンバ列を形成し、言い換えるとこれらの第1のチャンバ13aのチャンバ軸50aは、すべて同一の横平面P1内に収まり、関連付けされた第1のピストン20aのピストン軸48aとペア毎に一致する。同様に、第2のチャンバ13bは、第2の横平面P2内に収まることによって第2のチャンバ列を形成し、言い換えるとこれらの第2のチャンバ13bのチャンバ軸50bは、すべて同一の第2の横平面P2内に収まり、関連付けされた第2のピストン20bのピストン軸48bとペア毎に合流する。
【0052】
図5a、5b、および6に示されているとおり、この特定のアレンジメントを達成するためにピストン・ホルダ34は、横平面P1内において整列する第1の一連のシート52aと、平面P2内において整列する第2の一連のシート52bとを含む。シート52aは、第1のピストン20aのピストン・ヘッド56を収容するべく備えられており、シート52bは、第1のピストン20bのピストン・ヘッド56を収容するべく備えられている。
【0053】
図5は、ピストン20a、20bのそれぞれの下側端部に、関連付けされている吸引チャンバ13a、13bの内側表面49を圧迫するシール47が備えられることを示す。シール47は、たとえばエラストマ材料から作られ、本発明の範囲からの逸脱を伴うことなくほかの形状を考えることがたとえ可能であるとしても、好ましくはリップ・シールとする。
【0054】
ピストン・ヘッド56がピストン・ホルダと協働する態様は、本発明に特有であり、
図6を参照してそれについて述べる。これに関しては、この
図6の教示が、第1および第2のピストン20a、20bの両方に適用できることに注意する。以下においては、便宜上、第1のピストン20aだけを参照する。
【0055】
まずはじめに、ピストン・ホルダ34は、方向15にスタックされることによって互いに固定される2つの部品34a、34bから作られている。主要部品34aは、他方の上に位置し、かつピストン・ヘッド56を受け入れるための、下向きに開いたシート52a、52bが現れるような下側表面構造を有する主要部品である。他方の部品34bは、ピストン20a、20bのための通過オリフィス58に差し込まれる単純な閉じカバーを形成する。通過オリフィス58は、したがって、ピストン・ヘッド56が配される空間60が形成されるようにペアのシート52a、52bと整列する。それに代えて、ピストン・ホルダ34が単一部品として製造されること、言い換えると一体で/ワンピースで、たとえばモールディングによって作られることも可能である。ワンピースでレーキ34を製造するためのこの解決策は、それに加えて、たとえば、200または300μL等の小容量の試料採取が意図されたピペットの下側部分について好ましい。
【0056】
図6は、ピストン・ホルダ34にピストン・ヘッド56をマウントするための機械的な接続62を示している。この接続62が、好ましくは、ピペットのすべてのピストン20a、20bのために取り入れられている。これには、ピストン・ヘッドの回動軸66を連帯的に定義する2つの接触点64a、64bが含まれる。この2点接続62は、ピストン・ヘッドの回動軸66が横方向10および軸14と直交するか、または実質的に直交するように向き付けされる。言い換えると、この回動軸66は、バー形状のピストン・ホルダ34と直交して向き付けされ、それによりピストン20aが、それのヘッド周りに、ピストン34と相対的に、この同じ2つの要素20a、34によって定義される横平面内において枢動することが可能になる。
【0057】
2つの接触点64a、64bは、ピストン軸48aに関して対称に配され、かつシート52a上において直径方向に反対側となる。
【0058】
2つの接触点64a、64bを維持するために、装置32は、ピストン・ヘッド56を上向きに、ピストン・ホルダ34のシート52aに対して押し付けるリターンばね68も含む。ここでは、ばね68を、断面がボトムから上に向かうテーパーを有し、ピストン軸48a上に好ましく中心合わせされる全体的に円錐形状のコイルばねとする。このばね68の形状および向きは、回動軸66周りのピストン・ヘッド56の枢動を容易にする一方、ピストン・ホルダ34に対するピストン20aの軸押しを確保する。ばね68は、空間60内に収容され、したがって、閉じカバー34bを圧迫する下側端部と、直径がより小さい、ピストン20aのショルダ70を圧迫する上側端部を有する。
【0059】
図7a乃至7gは、機械的なマウント接続62の2つの接触点64a、64bを獲得するためのいくつかの幾何学的な選択肢を示している。
【0060】
まずはじめに
図7aにおいては、ピストン軸48a上に中心合わせされる表面70がピストン・ヘッド56に備えられ、ここでは、表面70がトロイダルである。それは、ピストン軸48aに関して対称に配されるシート52aの2つの部材72上のバイパンクチュアル・ベアリングに属する。ここでは、2つの部材72が互いに関して傾斜された、横方向10と平行な2つの平らな表面であり、これらの表面72は、
図5bにも見ることができる。
【0061】
図7bにおいては、表面70が、球状表面であり、ピストン・ホルダに備えられた2つの傾斜された平らな表面72と接触する。
【0062】
図7cにおいては、表面70が、円錐状表面であり、ピストン・ホルダに備えられた2つの球状表面72と接触する。
【0063】
図7dにおいては、表面70が、ピストン軸48aと直交する平らな表面であり、ピストン・ホルダに備えられた2つの球状表面72と接触する。
【0064】
図7eにおいては、表面70が、ピストン上に備えられた球状表面であり、ピストン・ホルダに備えられた2つの球状表面72と接触する。
【0065】
図7fにおいては、表面70が、球状表面であり、ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面72と接触し、ピストン軸48a上の点において交差する軸を伴う。
【0066】
最後に、
図7gにおいては、表面70が、軸48aを伴うトロイダル表面であり、ピストン・ホルダ上に備えられた2つの円筒状表面72と接触し、これもまた、ピストン軸48a上の点において交差する軸を伴う。
【0067】
図8および9を参照し、本発明によって与えられる多様な利点を説明する。
【0068】
まずはじめに、機械的なマウント接続62に導入された柔軟性の好結果として、各ピストン20a、20bのピストン・ヘッド56が、2つの接触点64a、64bによって定義されるそれの回動軸66周りに実際に枢動することが可能である。この移動の自由度は、ピストン・ホルダ34のレーキ効果が制限されることを可能にし、そのことが、精度/再現性に関する利得と、より良好な重量測定パフォーマンスの獲得を都合よく導く。また、この移動の自由度は、並進運動で移動する要素、特にピストン・ホルダ34およびピストン20a、20bの摩擦および押し詰まりのリスクを制限することも可能にする。このことは、都合よく、ピペット操作およびパージの力における低減を結果としてもたらし、したがって、ピペットの使用のより良好なエルゴノミクスを導く。
【0069】
それに加えて、2つの接触点64a、64bの特定の位置決めの好結果として、リターンおよび/またはパージばねから結果としてもたらされる寄生トルク、すなわち軸14に沿って及ぼされ、
図8においては矢印74によって略図的に参照されているトルクを容易に吸収することが可能となる。この吸収は、ピストン20a、20bの、シール47を備える下側端部を使用して生じる。実際にこの寄生トルク74は、ピストン・ホルダ34へ直接、その後ピストン20a、20bへ、最後に、それぞれのチャンバ13a、13bの内側表面49上の放射状接触点76を設定するシール47へと伝達される。これらの放射状接触は、そのうちの1つが
図8に矢印78によって略図的に参照されているが、軸66を統合し、かつ方向15と平行な平面内においてピストンの寄生回転を伴わずに、特に、
図9において矢印80によって略図的に参照されているばね68の戻り力の好結果として維持される。
【0070】
ピストン・シール47を介した、軸14に沿う寄生トルクを吸収するこの方法は、レーキ効果を大きく制限する一方、ピペットの可動要素の摩擦を低減する。重量測定パフォーマンスが増加し、ピペット操作およびパージの力が低減される。
【0071】
さらにまた、ピストン・シール47を使用した軸14に沿う寄生トルクの吸収は、ピペットの設計の単純化および重量の低減を可能にする。実際に、ピストン・ホルダ34の横方向の両端部を、ピペットの固定部品によって個別にガイドする必要がなくなり、それに加えてそれらは、
図2aに見られるとおり、下側部分のカバー17によって画定される内部空間内において優先的に自由である。『自由』端は、ピペットのほかの部分、特に固定部品との直接的な機械的な接続を有しない端部を意味する。
【0072】
最後に述べれば、提案されている解決策は、ピストン・シール47が多数回のオートクレーブ・サイクルに耐えることも可能にする一方、必要とされるシールをそれらと関連付けされたチャンバ13a、13bに提供する。これに関して言えば、ピペット操作システムの分野で周知の、広く使用されている態様において、オートクレーブは、特定の温度および圧力条件の下に、飽和水蒸気の存在する中での部品の滅菌を可能にする動作からなることに注意する。温度、圧力、および水蒸気の組み合わされた作用は、部品、特に接合箇所の寸法を変更し得る。それにもかかわらず、各ピストンに与えられた回転の自由度の好結果として、本発明は、シールがそれのチャンバ内において良好なシーリングを継続的に確保することを、チャンバ内における再位置決め能力に起因してそれの位置が常に最適にとどまることから、限定的な接触を伴う場合でさえ可能にする。
図10および11は、本発明の第2の好ましい実施態様を示し、それにおいてピストン・ヘッド56は、ずらし配置態様で配されることはそのまま残されたチャンバ13a、13bの軸50a、50bによって定義される横平面P1およびP2と平行に配される横線84に沿ってすべて整列する。また、横線84の位置は、2つの平面P1、P2の間でもある。その結果、ピストン軸48a、48bは、それらに対応するチャンバ軸50a、50bに関して、すべて、第1のピストン20aのための所定の方向、および第2のピストン20bのための反対の方向において傾斜されている。ピストン軸48a、48bの傾斜は、並進運動の間に漸進的に変化するが、たとえば5乃至10°の範囲の適度に小さい角度範囲内である。ピペット操作の間におけるこの傾斜の漸進的変化は、機械的な接続62内のばね68の弾性変形によって可能になる。
【0073】
この第2の実施態様においては、ピストン・ヘッド56を受け入れるためのシート52a、52bもまた、横線84に沿ってピストン・ホルダ34上にすべて整列させることが可能である。このことは、たとえば、
図5aおよび5bに見ることができる、シート52a、52bの2つの横列の間のオフセットから結果としてもたらされがちな二次レーキ効果を都合よく制限する。
【0074】
当然のことながら、非限定的な例としてだけここで今述べたばかりの、その範囲が付随する請求の範囲によって限定される本発明に対して、当業者によって多様な変更が行われる可能性はある。たとえば、本発明を、たとえばより低容量の試料採取のために意図された
図12乃至14の第3の実施態様に示されているとおり、すべてのチャンバの軸およびすべてのピストンの軸が同一平面内に位置する場合にも適用することが可能である。
【0075】
この第3の実施態様においては、それの特徴を上に述べられている実施態様のそれらと組み合わせること、および/または相互交換することが可能であるが、各チップ6は、それの関連付けされた吸引チャンバ13a、13bとともにワンピースで作られる。
【0076】
図12乃至14においては、各ピストン20a、20bのヘッドの上側部分だけが示されている。図示されていない下側部分には、この上側部分と結合されることが意図されている。たとえば、200および300μLタイプの容量の試料採取のために考えられた第1の可能性によれば、ピストンの下側部分が、嵌め合いによって上側部分のチップ100を受け入れるべく提供される。たとえば、より小さい10または20μLタイプの容量の試料採取のために考えられた第2の可能性によれば、ピストンの下側部分が、ピストン・ヘッド56が組み込まれた上側部分のボア102内へのプレス嵌めによる結合のために提供される。
【0077】
この第3の実施態様においては、別の特徴が、レーキ34に対してピストン・ヘッド56を保持するための弾性戻り手段にある。これらの手段が、ここでは、特に、それぞれが方向10および15と実質的に直交し、かつ2つのピストン・ヘッド56を、それぞれ軸方向に圧迫する2つの端部の枝106を包含するワイヤの態様で作られるクリップ104の形式を取る。クリップは、概してC字形状を取り入れ、C字の下側部分が2つの実質的に平行な端部の枝106によって形成され、C字の上側部分108が、レーキ34の上側表面を軸方向に圧迫し、C字の中央部分110が、方向10と直交する方向においてレーキ34をバイパスしている。
【0078】
その結果として、各クリップ104は、変形されたワイヤによって製造され、それの概してC字形状および2つの端部の枝106が助けとなって、2つの隣接するピストン・ヘッド56に対して戻り力を印加することが可能になる。それに代えて、各ワイヤ製のクリップが、概してU字形状を維持するが、1つのピストン・ヘッド56に対してだけ戻り力を印加することも可能である。
【国際調査報告】