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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】長鎖分岐エチレン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/16 20060101AFI20230510BHJP
   C08F 210/18 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C08F210/16
C08F210/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557826
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 US2021024369
(87)【国際公開番号】W WO2021195502
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】63/000,954
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】フローゼ、ロバート ディー.ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ケラン
(72)【発明者】
【氏名】ザムラー、ロバート エル.
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AA02P
4J100AA19R
4J100AP17Q
4J100AS11Q
4J100DA01
4J100DA09
4J100DA42
4J100FA10
(57)【要約】
要約書エチレン系ポリマーは、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された分子量分布(MWD)曲線上のSmaxによって分割される、低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分を含む。低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分は、それぞれ、マーク-フウィンク-桜田曲線に従う式、log[η]=log(β)+αlog(M)-Lαlog(2)(log(β)は切片であり、αは傾きである)を使用した、固有粘度[η]の対数対絶対MW(M)の対数曲線のフィットとして所与の絶対分子量(MW)のために定義されるラダー特性Lを含む。低分子量ポリマー画分は、Smaxを下回るMWを有し、全てのL値は-0.35~0.35であり、高分子量ポリマー画分は、Smaxを上回るMWを有し、最大L値は0.8~1.5である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系ポリマーであって、
両方とも、重合単位であるエチレン、1つ以上のジエン、及び任意選択的に1つ以上のC~C12α-オレフィン由来である、低分子量ポリマー画分と、高分子量ポリマーと、を含み、
前記低分子量画分及び前記高分子量画分は、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された分子量分布(MWD)曲線上のSmaxによって分割され、このときSmaxは、前記MWD曲線の主要ピークの高分子量側の最大絶対傾きであり、前記主要ピークは、前記MWD曲線において最大の大きさのピークであり、
前記低分子量ポリマー画分及び前記高分子量ポリマー画分は、それぞれ、マーク-フウィンク-桜田曲線に従う式、log[η]=log(β)+αlog(M)-Lαlog(2)であって、式中、log(β)は切片であり、αは傾きである式を使用した、固有粘度[η]の対数対絶対MW(M)の対数曲線のフィットとして所与の絶対分子量(MW)のために定義されるラダー特性Lを含み、
前記低分子量ポリマー画分は、Smaxを下回るMWを有し、全てのL値は-0.35~0.35であり、
前記高分子量ポリマー画分は、Smaxを上回るMWを有し、最大L値は0.8~1.5である、エチレン系ポリマー。
【請求項2】
前記ジエンが、非共役型である、請求項1に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項3】
前記ジエンが、非環式である、請求項2に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項4】
前記ジエンが、1,4-ペンタジエン、1、5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルジアリルシラン、ジメチルアリルビニルシランを含む、請求項3に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項5】
前記高分子量ポリマー画分は、0.5~30重量%のポリマーを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項6】
前記高分子量ポリマー画分は、1~15重量%のポリマーを含む、請求項5に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項7】
前記低分子量ポリマー画分の全てのL値が、-0.2~0.2である、請求項1~6のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項8】
前記高分子量ポリマー画分のLの最大値が、0.9~1.1である、請求項1~7のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項9】
前記エチレン系ポリマーが、MWD面積メトリック、ATAILによって定量化される分子量テールを有し、ATAILが、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、0.06超である、請求項1~8のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項10】
TAILが、0.08超である、請求項9に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項11】
TAILが、0.10超である、請求項10に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項12】
前記エチレン系ポリマーが、0.86超の平均g’を有し、このとき平均g’は、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である、請求項1~11のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項13】
前記平均g’が、0.88超である、請求項12に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項14】
前記平均g’が、0.90超である、請求項13に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項15】
前記エチレン系ポリマーが、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、250,000ダルトン以下の重量平均分子量(M)を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項16】
前記エチレン系ポリマーが、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、150,000ダルトン以下の重量平均分子量(M)を有する、請求項15に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項17】
前記エチレン系ポリマーが、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、100,000ダルトン以下の重量平均分子量(M)を有する、請求項16に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項18】
前記MIが、0.1超であり、このときMIは、ASTM D1238によるg/10分で表すメルトインデックスである、請求項1~17のいずれか一項に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項19】
前記MIが、1超であり、このときMIは、ASTM D1238によるg/10分で表すメルトインデックスである、請求項18に記載のエチレン系ポリマー。
【請求項20】
前記MIが、2超であり、このときMIは、ASTM D1238によるg/10分で表すメルトインデックスである、請求項19に記載のエチレン系ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年3月27日出願の米国仮特許出願第63/000,954号に対する優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の実施形態は、概して、長鎖分岐を有するポリマー組成物、及びエチレン系ポリマー組成物が合成されるプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ポリエチレンポリマーなどのエチレン系ポリマーは、様々な触媒系を介して生成される。エチレン系ポリマーの重合プロセスに使用されるそのような触媒系の選択は、そのようなエチレン系ポリマーの特徴及び特性に寄与する重要な要因である。
【0004】
エチレン系ポリマーは、多種多様な物品のために製造される。重合プロセスは、様々な樹脂を様々な用途での使用に好適なものとする様々な物理的特性を有する、得られる幅広い種類のポリマー樹脂を生成するために、多くの点で変更され得る。エチレン系ポリマーの特性への分岐の影響は、分岐の長さと量に依存する。例えば、短鎖分岐は、そのエチレン系ポリマーの物理的特性に影響を及ぼす。短い分岐は、主に機械的及び熱的特性に影響を及ぼす。短鎖分岐頻度が増加すると、ポリマーは、層状結晶を形成できなくなり、機械的及び熱的特性が低下する。少量の長鎖分岐は、ポリマーの加工特性を有意に変更し得る。
【0005】
長鎖分岐(LCB)を形成するために、ポリマー鎖のビニル又は末端二重結合が、新しいポリマー鎖に組み込まれる。ビニル末端ポリマーの再組み込み、及びジエンコモノマーの導入は、ポリマーストランド上のビニル基が、第2のポリマーストランドに組み込まれる2つの機構である。加えて、長鎖分岐は、ラジカルを介して誘導される。3つの機構全てにおいて、分岐量を制御することは困難である。ラジカル又はジエンを使用して長鎖分岐を開始する場合、分岐が多くなりすぎ、それによって、ゲル化及び反応器汚損が発生し得る。再組み込み機構は、あまり多くの分岐を生成せず、分岐は、ポリマーストランドが生成された後にのみ発生し得、それによって、発生し得る分岐の量が更に限定される。
【0006】
長鎖分岐(LCB)の量が増加すると、溶融加工特性が増加する。長鎖分岐材料(例えば、低密度ポリエチレン、LDPE)は、加工助剤としてLLDPEに添加される。一般に、LDPEは、良好な加工特性を有するが、それから作製されたフィルムは、不十分な、引裂強度又はダート強度などの物理的特性を有する。直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から作製されたフィルムは、良好な、引裂強度又はダート強度などの物理的特性を有するが、効率的に加工することはできない。加工(溶融強度、せん断減粘)のためにはある程度のLDPEのブレンドが必要であるが、これらはLLDPEフィルムの物理的特性を低減する。LLDPE及びLDPEをブレンドするとき、研究者らは、加工性及び物理的特性のバランスを取りつつも、この両方の理想値を達成していない。
【発明の概要】
【0007】
より良好な加工性を提供するが、反応器の汚損がないポリマー形成を可能にする、高い溶融強度と、メルトインデックスによって示される通常から低い粘度を有するポリマー組成物を製造するための継続的なニーズが存在する。したがって、本開示のプロセス及びエチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマーのゲル化や反応器の汚損を起こすことなく、長鎖分岐を形成することを求めている。
【0008】
本開示の実施形態は、エチレン系ポリマーを対象としている。エチレン系ポリマーは、低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分を含む。低分子量画分及び高分子量画分を、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された分子量分布(MWD)曲線上のSmaxによって分割する。Smaxは、MWD曲線の主要ピークの高分子量側の最大絶対傾きであり、主要ピークは、MWD曲線において最大の大きさのピークである。
【0009】
エチレン系ポリマーの低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分は、それぞれ、マーク-フウィンク-桜田曲線に従う式、log[η]=log(β)+αlog(M)-Lαlog(2)(log(β)は切片であり、αは傾きである)を使用した、固有粘度[η]の対数対絶対MW(M)の対数曲線のフィットとして所与の絶対分子量(MW)のために定義されるラダー特性Lを含む。低分子量ポリマー画分は、Smaxを下回るMWを有し、全てのL値は0.35~0.35であり、高分子量ポリマー画分は、Smaxを上回るMWを有し、最大L値は0.8~1.5である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】炭素1000個当たりの分岐メチンの数が増加する場合のポリマーの分子量のグラフ表示である。
図2】分岐レベルに対する分子量分布(MWD)曲線の依存性を予測したグラフモデルである。
図3】ジエンの有無による2触媒バイモーダルエチレン系ポリマー分布の分子量分布(MWD)曲線である。
図4】従来の長鎖分岐(LCB)ポリマー及びLDPE、具体的にはDOW(商標)LDPE6621のマーク-フウィンク-桜田プロットである。
図5】ポリマー骨格が実線として示され、長鎖分岐が点線で示されているエチレン系ラダーポリマーの図である。この図は、本開示の長鎖分岐ポリマーについての、従来の標準対絶対重量平均分子量(MW)によって計算された分子量の差の視覚的描写を提供する。
図6】マーク-フウィンク-桜田プロットにおける本開示の長鎖分岐ポリマーを特徴付けるパラメータ及び変数の定義を示す、マーク-フウィンク-桜田プロットである。
図7】低MW画分が単鎖触媒によって生成され、高MW画分が二重鎖触媒によって生成される、一連のバイモーダルエチレン系ポリマーのマーク-フウィンク-桜田プロットである。
図8】実施例1~11の絶対MWの関数としての固有粘度及び固有粘度の傾きのプロットを示すグラフである。
図9】実施例1~11の絶対Mwの関数としてのラダー特性Lを示す。
図10】バイモーダル実施例のSmaxの前(左)及び後(右)のlog(M)の関数としてのラダー特性のグラフである。
図11】比較例のSmaxの前(左)及び後(右)のlog(M)の関数としてのラダー特性のグラフである。
図12】傾きの最大点を使用する高MWDテール面積メトリックの定義方法を示す絶対分子量分布(MWD)曲線のグラフである。
図13】触媒1の量、水素、及びジエンに対する溶融強度の3パラメータ線形最小二乗フィットを含むグラフである。
図14】オートクレーブ及び管状LDPEについての溶融強度対メルトインデックス(MI)のプロットである。
図15】四官能性長鎖分岐ポリマー及び比較LDPE樹脂についての溶融強度対メルトインデックス(MI)のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ポリマーを合成するためのプロセス及び本開示のプロセスによって合成されるポリマーの特定の実施形態についてここで説明する。本開示のポリマーを合成するためのプロセスが、異なる形態で実施され得、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0012】
定義
本明細書で使用される場合、「マルチモーダル」は、様々な密度及び重量平均分子量を有する少なくとも2つのポリマー画分を有することを特徴とすることができ、任意選択的に、異なるメルトインデックス値も有し得る組成物を意味する。一実施形態では、マルチモーダルは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて少なくとも2つの異なるピークを有することによって定義され得る。具体的には、本実施形態では、GPC測定は、絶対GPCによって計算される。別の実施形態において、マルチモーダルは、短鎖分岐分布を示す結晶化溶出分別(CEF)クロマトグラムにおいて、少なくとも3つの別個のピークを有することによって定義され得る。マルチモーダルは、3つのピークを有する樹脂、及び3つより多くのピークを有する樹脂を含む。
【0013】
「バイモーダルポリマー」という用語は、低分子量画分であり得る第1のエチレン系ポリマー画分と、高分子量画分であり得る第2のエチレン系ポリマー画分との、2つの主要画分を有するマルチモーダルエチレン系ポリマーを意味する。
【0014】
「トリモーダルポリマー」という用語は、第1のエチレン系ポリマー画分、第2のエチレン系ポリマー画分、及び第3のエチレン系ポリマー画分の3つの主要画分を有するマルチモーダルエチレン系ポリマーを意味する。
【0015】
「ポリマー」という用語は、同じ又は異なる種類のモノマーにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つの種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」という用語、同様に2つ以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマーと、ターポリマーなどの3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマーとを含む。「バイモーダルポリマー」という用語は、各々が異なる触媒から形成された2つのポリマーを指す。
【0016】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、50モル%超のエチレンモノマーに由来している単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態は、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、極低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状及び実質的に直鎖状低密度樹脂の両方を含む、単一部位触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、及び高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)を含む。
【0017】
「ジエン」という用語は、2つのアルケン(二重結合)を有するモノマー又は分子を指す。
【0018】
本開示の実施形態は、少なくとも1つの多重鎖触媒、少なくとも1つの単鎖触媒、及び任意選択的に溶媒の存在下で、エチレン、少なくとも1つのジエン、任意選択的に少なくとも1つのC~C12α-オレフィンコモノマーを添加することによって、長鎖分岐ポリマーを合成するプロセスを含み、多重鎖触媒は、複数の重合部位を有する分子を含む。
【0019】
本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。「長鎖分岐」という用語は、100個を超える炭素原子を有する分岐を指す。「分岐」は、第三級又は第四級部位から延在するポリマーの一部を指す。分岐が第三級部位から延在する場合、他に2つの分岐があり、それらは、集合的に、分岐が延在するポリマーストランドであり得る。従来、長鎖分岐(LCB)は、スキーム1に示されるように、重合プロセスにおいて自然に発生し得る。これは、ポリマー鎖のビニル末端化及び高分子ビニルの再挿入を通して発生することにより、3官能性長鎖分岐を形成し得る。分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを判定するか、又はポリマー中のLCBの影響を識別し得る。例えば、LCBの効果は、van Gurp-Palmen分析のせん断流において観察され、また、低い角周波数でのせん断粘度の増加及びせん断減粘挙動の程度の増加は、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの影響は、通常、硬化(ひずみ硬化)の程度又は溶融物の強度(溶融強度)、及び達成される最大変形において識別される。ビニル末端ポリマーの限定された濃度(ポリマー鎖1つ当たり最大1つ)、及びLCBの形成を確保するために高いエチレン変換を実行する必要性に起因して、ポリマー(0.5未満のg’値を有するポリマー)内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。より多量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に確実に再挿入することを可能にするために、反応器内に低レベルのエチレン濃度がある。
【0020】
スキーム1:自然に発生する長鎖分岐:ビニル末端ポリマーにつながる連鎖移動事象
【0021】
【化1】
【0022】
スキーム1では、「Cat」は触媒であり、「P」はポリマー鎖である。
【0023】
自然に発生する分岐を通じて形成される最小限の長鎖分岐がある。天然起源のLCBを強化する1つの方法は、ラジカルプロセス、不均一プロセス、又は均一プロセスのいずれであっても、重合系にα,ω-ジエンを添加することである。一般に、ジエンは、α-オレフィンと同様の様式でポリマー鎖に付加されるが、ペンダントビニル基を残し、これはスキーム2に例解されるように、ポリマー鎖にもう一度挿入して、LCBを作成することができる。一般に、ジエンの長さは重要ではなく、2つのポリマー鎖を一緒に連結し得ることだけが重要である。原則として、ペンダントビニルの濃度は、反応器に添加されるジエンの量を通して制御され得る。したがって、LCBの程度は、ペンダントビニルの濃度によって制御することができる。
【0024】
スキーム2:ジエンの組み込みを介する長鎖分岐
【0025】
【化2】
【0026】
スキーム2では、「Cat」は触媒であり、「P」はポリマー鎖であり、この例中のジエンは、1,5-ヘキサジエンである。
【0027】
ジエンをポリマー合成系に組み込む従来のプロセスは、ゲル形成又は反応器汚損の根本的な欠陥をこうむる。以前に記載されている速度論的モデリング{Guzman-2010(J.D.Guzman,D.J.Arriola,T.Karjala,J.Gaubert,B.W.S.Kolthammer,AIChE 2010,56,1325)、国際出願第US2019/053524号(2019年9月27日出願)、同第US2019/053527号(2019年9月27日出願);同第US2019/053529号(2019年9月27日出願)、及び同第US2019/053537号(2019年9月27日出願)}は、ゲル形成へのより良好な理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖は、より多くの挿入されたオレフィン、したがって、より多くの挿入されたジエン、したがって、より多くのペンダントビニルを有し、より長いポリマー鎖が、触媒に再挿入されてLCBを形成する可能性が高いことを意味する。したがって、より長いポリマー鎖が、優先的に再挿入されて、更に大きなポリマー分子である四官能性長鎖分岐を形成し、ゲルの問題が生じる。スキーム2に示されるように、四官能性LCBは、短いセグメント(ジエンの2つの二重結合間の炭素数)を有し、それは、短いセグメントの両側にある2つの長鎖を架橋する。分岐の関数としての重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)のシミュレーションが、一定圧力のセミバッチ反応器内のポリエチレンについて、図1に示される。図1では、Mは、Mが無限大になると、わずかに増加するだけである。Mが、200,000グラム/モル(g/モル)を超える数に増加すると、ポリマーゲル、ゲル化の発生、又は反応器汚損が存在する。
【0028】
「ゲル」又は「ゲル化」という用語は、少なくとも2つの成分から構成される固体を指し、第1は三次元架橋ポリマーであり、第2はポリマーが完全に溶解しない媒体である。ポリマーがゲル化して完全に溶解しない場合、反応器は、ポリマーゲルで汚損され得る。
【0029】
「ラダー分岐」ポリマーという用語は、本出願に開示されるような4官能性長鎖分岐ポリマーを指し、「ラダー分岐機構」という用語は、「ラダー分岐」ポリマーがどのように形成されるかを指す。
【0030】
本開示の1つ以上の複数の実施形態では、長鎖分岐ポリマーを合成するプロセスは、長鎖分岐を達成し、ゲル形成又は反応器汚損を回避する。理論に拘束されるつもりはないが、ジエンの2つのアルケンを2つの近位ポリマー鎖にわたって協調様式で反応させることによって、反応器汚損が回避されると考えられる。例えば、スキーム3に示されるように、ジエンの1つのアルケンは、第2のアルケンの前に反応し、第2のアルケンは、あまりにも多くのエチレン分子がポリマーストランドに添加される前に反応し、それによって、第2のアルケンが反応部位に近接していることを取り除く。多くのエチレンモノマーが挿入される前の、ジエンの第1のアルケンの1つのポリマーへの反応、及びジエンの第2のアルケンの隣接するポリマー鎖への反応は、近位ポリマー鎖へのジエンの協奏的付加と称される。
【0031】
スキーム3:「ラダー分岐」機構とも称される、ジエンを協調様式で組み込むことの記述(Pはポリマー鎖)。
【0032】
【化3】
【0033】
ポリマーストランドは、ポリマー、又はより具体的にはコポリマーの直鎖状セグメントであり、分岐接合によって末端で任意選択的に接合される。例えば、スキーム1に示されるように、3つのポリマーストランドの末端を接合する三官能性分岐接合とは対照的に、四官能性分岐接合は4つのポリマーストランドの末端を接合する。
【0034】
多重鎖触媒及びジエンの組み合わせは、分岐の量及び種類に影響を及ぼす。本開示の実施形態は、ポリマー特性、例えば、1)複数のジエン種の使用、2)多重鎖触媒及び他の触媒種の使用、又は3)複数の反応器ゾーン又はゾーンの勾配を含む重合環境の組み合わせなどを制御することに関する。
【0035】
単鎖触媒を含む複数の触媒を使用することによって、ある程度の従来の長鎖分岐が可能となり得る。複数のジエン種の使用はまた、ラダー分岐を作成しないか、又は「従来の」LCBをもたらす傾向があるそれらのジエンも含む。本開示によるポリマーを合成するプロセスは、従来の長鎖分岐とは異なる。
【0036】
1つ以上の実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、近接して少なくとも2つの活性部位を有する触媒(多重鎖触媒)を含む。2つの活性部位を近接させるために、2つの活性部位は、18.5オングストローム(Å)未満離れ得る。いくつかの実施形態では、2つの活性部位は、2.5オングストローム(Å)~18.5Å、9Å~14Å、又は約11Åの距離を含む。様々な実施形態では、長鎖分岐ポリマーを重合するためのプロセスは、多重鎖触媒を含む。1つ以上の実施形態では、多重鎖触媒は、少なくとも1つの金属中心を含み得、ここで、2つの活性部位は、同じ金属中心上にある。いくつかの実施形態では、多重鎖触媒は、金属-配位子錯体を含み得、ここで、2つの活性部位(2つのポリマー鎖)は、同じ金属中心上にある。
【0037】
1つ以上の実施形態では、ジエンは非共役ジエンであり、非共役ジエンは非環式である。いくつかの実施形態では、ジエンはα,ω-ジエンであり、これは、二重結合の両方が末端であることを意味する。他の実施形態では、非共役ジエンは分岐基を含み、分岐基は、C~Cアルキルである。分岐基は、2-メチル-1,4-ペンタジエンなどのsp混成炭素原子、又は3-メチル-1,4-ペンタジエンなどのジエンのsp混成炭素原子上で生じ得る。様々な実施形態では、ジエンは、1,4-ペンタジエン、1、5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、1,8-ノナジエン、1,9-デカジエン、1,10-ウンデカジエン、1,11-ドデカジエン、ジメチルジビニルシラン、ジメチルジアリルシラン、ジメチルアリルビニルシランから選択される。
【0038】
X線結晶構造(A.D.Bond,Chem.Comm.2002,1664)によれば、1,9-デカジエンは、10.8Åの末端炭素間距離を有する。1,9-デカジエンが「ラダー分岐」機構を介して2つのポリマー鎖間にラングを形成するというデータがある一方、10個を超える炭素原子を有する直鎖状α,ω-ジエンも「ラダー分岐」機構を介してラングを形成する可能性があると考えられる。理論に拘束されることを意図することなく、10個を超える炭素原子を有するα、ω-ジエンがラングを形成し得るかどうかの問題は、2つのポリマー鎖間の距離によって決定され得る。例えば、2つのポリマー鎖が触媒の異なる金属原子(例えば、バイメタルの、不均一な)に存在する場合、α,ω-ジエンは、この構造を1,15-ヘキサデカジエンまで延ばすために、追加のメチレン単位(同じC-C結合長及び角度)を含み得る。理論に拘束されることを意図するものではないが、この16炭素類似体は、「ラダー分岐」メカニズムを介してラングを形成する可能性があると推定される。この様式で、ジエン、1,11-ドデカジエン(13.3Åの末端炭素間距離)、1,13-テトラデカジエン(15.9Åの末端炭素間距離)、1,15-ヘキサデカジエン(18.5Åの末端炭素間距離)が考えられ得る。いくつかの実施形態では、「ラダー分岐」メカニズムの二本鎖触媒が二金属触媒である場合、ジエンは18.5Å以下である。
【0039】
現代の計算技術は、触媒の鎖間距離を推定する方法として、既知の実験的結晶構造を高精度で再現し得ることが既知である。不均一系の場合、金属の表面濃度を推定し得、それは、多くの場合、ナノメートルの2乗当たりの金属原子(M/nm)で測定される。この表面被覆率は、均一に分散している場合、ポリマー鎖間の距離を反映するM-M距離に変換され得る、表面上のアクセス可能な金属の推定値を提供する。延在された表面の場合、1金属/nmは、所望のカットオフ内に十分である、金属原子間の10Åの距離をもたらす。18.5Åで、0.3金属/nmでの被覆を判定し得る。
【0040】
活性部位が近接している少なくとも2つの活性部位を有する触媒の例としては、バイメタル遷移金属触媒、不均一触媒、2つの関連する活性触媒を有するジアニオン性活性剤、2つ以上の成長しているポリマー鎖を有する連結された遷移金属触媒、モノアニオン性基、二座モノアニオン性基、三座モノアニオン性基、又は外部ドナーを有する単座、二座、若しくは三座モノアニオン性基を含む、第IV族オレフィン重合触媒が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
表1における触媒は、前述の触媒のクラス及び企図される特定の触媒の例示的な実施形態である。表1の実施例は、限定することを意図するものではなく、むしろ、前述の触媒のクラスについての単なる例示及び特定の実施例である。
【0042】
【表1】
【0043】
理論に拘束されるつもりはないが、この項で説明されるような機構は、ジエンコモノマーを所望の条件下で重合する場合、多重鎖触媒がどのように独自の架橋分子構造を作成し得るかを記載する。速度論の図解は、触媒中心が、2つのポリマーストランドを生成するスキーム4に示される。スキーム4は、ジエン架橋と連鎖移動との組み合わせによって、ジエン「ラダー分岐」ポリマー構造がどのように作成され得るかを示す。「ラダー分岐」ポリマーという用語は、1~12個の炭素原子を含む短鎖又はラングが2つの長鎖を一緒に連結する長鎖分岐を指す。示されるように、少なくとも2つのポリマー鎖部位を有する金属-配位子触媒は、2つの別個のポリマー鎖を成長させる。ジエンの1つのアルケンは、触媒の部位の1つに組み込まれ、成長部位の近接に起因して、ジエンの第2のアルケンは、次いで、第2のポリマー鎖に迅速に組み込まれ、それによって、ブリッジ又はラングを形成すると考えられる。ジエンのこの連続的な付加は、ジエンの「協調」付加と称され、2つの近位鎖を有さない触媒とは区別され、ここで、ジエンの付加が反応器内の後で反応するビニル含有ポリマーの濃縮をもたらす。「ラング」という用語は、ジエンがひとたび2つの別個のポリマーストランドに組み込まれると、それによって、ストランドを一緒に連結するジエンを指す。第1及び第2のポリマーストランドは、ポリマーが別の触媒に移動するか、ポリマーが触媒から放出されるか、触媒が死滅するか、又は別のジエンが付加されるまで成長し続ける。
【0044】
スキーム4:結果として生じる分子構造を含む「ラダー分岐」反応速度論の図解。金属-配位子触媒は、L-Mでまとめて表される。
【0045】
【化4】
【0046】
1つ以上の実施形態では、単一部位触媒として、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、又はビス(フェニルフェノキシ)触媒を挙げることができるが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細及び例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、及び国際公開第93/08221号に提供されており、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。ビス(フェニルフェノキシ)触媒の詳細及び例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号に提供されており、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0047】
ビス(フェニルフェノキシ)触媒は、均一触媒の一例である。均一触媒の他の例として、拘束幾何触媒が含まれる。不均一系触媒の例としては、不均一チーグラー・ナッタ触媒を挙げることができる。そのようなチーグラー・ナッタ触媒の例は、有機マグネシウム化合物、ハロゲン化アルキル若しくはハロゲン化アルミニウム又は塩化水素、及び遷移金属化合物から導出されるものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery,Jr.et al.)、同第4,547,475号(Glass et al.)、及び同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
触媒系
1つ以上の実施形態では、本明細書に記載のマルチモーダルエチレン系コポリマー組成物を生成するために使用することができる触媒系の特定の実施形態がここに記載されている。本開示の触媒系は、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載の特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0049】
「独立して選択される」という用語は、R、R、R、R、及びRなどのR基が、同一であっても異なってもよいこと(例えば、R、R、R、R、及びRが、全て置換アルキルであるか、又はR及びRが、置換アルキルであり、Rが、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を、補足し例示することを意図するものであり、排除するものではない。
【0050】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に変換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「助触媒」及び「活性化剤」という用語は、互換的な用語である。
【0051】
ある特定の炭素原子を含有する化学基を記載するために使用される場合、「(C~C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がx及びyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子を有することを意味する。例えば、(C~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態及び一般構造において、特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換してもよい。括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される、化学基のR置換バージョンは、任意の基Rの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「Rがフェニル(-C)である厳密に1つの基Rで置換された(C~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される化学基が1個以上の炭素原子を含有する置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小及び最大合計数は、x及びyの両方に、全ての炭素原子を含有する置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0052】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物の炭素原子若しくはヘテロ原子又は官能基に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が、置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した全ての水素原子(H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物又は官能基の炭素原子又はヘテロ原子に結合した少なくとも2個の、ただし、全てよりは少ない水素原子が、置換基によって置き換えられることを意味する。
【0053】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素又は水素ラジカルを意味する。「水素」及び「-H」は、互換的であり、明記されていない限り、同じものを意味する。
【0054】
「(C~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子の炭化水素ジラジカルを意味し、各炭化水素ラジカル及び各炭化水素ジラジカルは、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合及び非縮合多環式を含み、二環式を含む、3個以上の炭素原子)又は非環式であり、非置換であるか、若しくは1つ以上のRによって置換されている。
【0055】
本開示において、(C~C40)ヒドロカルビルは、非置換若しくは置換(C~C40)アルキル、(C~C40)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、又は(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、上記の(C~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子を有し(すなわち、(C~C20)ヒドロカルビル)、実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0056】
「(C~C40)アルキル」及び「(C~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、1~40個の炭素原子又は1~18個の炭素原子の、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換されている、飽和直鎖又は分岐炭化水素ラジカルを意味する。非置換(C~C40)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、及び1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、及び[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含めてラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C~C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、又は1,1-ジメチルエチルであり得る。
【0057】
「(C~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は芳香環炭素原子である、非置換又は(1つ以上のRによって)置換された単環式、二環式、又は三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ1個、2個、又3個の環を含み、式中、単環は芳香族であり、2個又は3個の環は独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個のうちの少なくとも1つは芳香族である。置換(C~C40)アリールの例は、非置換(C~C20)アリール非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキルフェニル、2,4-ビス(C~C)アルキルフェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダケニル、ヘキサヒドロインデニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、及びフェナントレンである。置換(C~C40)アリールの例は、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、及びフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0058】
「(C~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、かつ非置換であるか、又は1つ以上のRで置換されているものであるかのいずれかとして、同様の様式で定義される。非置換(C~C40)シクロアルキルの例は、非置換(C~C20)シクロアルキル、非置換(C~C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、及びシクロデシルである。置換(C~C40)シクロアルキルの例は、置換(C~C20)シクロアルキル、置換(C~C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、及び1-フルオロシクロヘキシルである。
【0059】
(C~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換又は置換(C~C40)アリーレン、(C~C40)シクロアルキレン、及び(C~C40)アルキレン(例えば(C~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同じ炭素原子上にあるか(例えば、-CH-)、又は隣接する炭素原子上にあるか(すなわち、1,2-ジラジカル)、又は1個、2個、又は2個より多くの介在する炭素原子によって離間されている(例えば、それぞれ、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C~C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち、-CHCH-)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち、-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C~C50)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、又はナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0060】
「(C~C40)アルキレン」という用語は、非置換又は1つ以上のRで置換された炭素数1~40の飽和直鎖又は分岐鎖のジラジカル(すなわち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C~C50)アルキレンの例は、非置換(C~C20)アルキレンであり、非置換-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH)8-、-CHHCH、及び-(CH)4C(H)(CH)を含み、「C」は、水素原子が、二級若しくは三級アルキルラジカルを形成するために除去される炭素原子を表す。置換(C~C50)アルキレンの例は、置換(C~C20)アルキレン、-CF-、-C(O)-、及び-(CH14C(CH(CH-(すなわち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。前述のように、2つのRは一緒になって、(C~C18)アルキレンを形成することができるので、置換(C~C50)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、及び2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンも挙げられる。
【0061】
「(C~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換されている、3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(すなわち、ラジカルは、環原子上にある)を意味する。
【0062】
「ヘテロ原子」という用語は、水素又は炭素以外の原子を指す。ヘテロ原子の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、又は-Si(R)-が挙げられ、各R、各R、及び各Rは、非置換(C~C18)ヒドロカルビル又は-Hである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1つ以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子又は分子骨格を指す。「(C~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子のヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素が1個以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1個又は2個の炭素原子、(2)1個又は2個のヘテロ原子、又は(3)1つの炭素原子及び1つのヘテロ原子上に存在し得る。各(C~C50)ヘテロヒドロカルビル及び(C~C50)ヘテロヒドロカルビレンは、非置換又は置換(1つ以上のRによって)、芳香族又は非芳香族、飽和又は不飽和、直鎖又は分岐鎖、環式(単環式及び多環式、縮合多環式及び非縮合多環式を含む)又は非環式であってもよい。
【0063】
(C~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換若しくは置換(C~C40)ヘテロアルキル、(C~C40)ヒドロカルビル-O-、(C~C40)ヒドロカルビル-S-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C~C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C~C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C~C40)ヘテロシクロアルキル、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C20)シクロアルキル-(C~C19)ヘテロアルキレン、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)ヘテロアルキレン、(C~C40)ヘテロアリール、(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)アルキレン、(C~C20)アリール-(C~C19)ヘテロアルキレン、又は(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)ヘテロアルキレンであってもよい。
【0064】
「(C~C40)ヘテロアリール」という用語は、合計4~40個の炭素原子及び1~10個のヘテロ原子の非置換又は置換(1つ以上のRによる)単環式、二環式、又は三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、又は三環式ラジカルは、それぞれ、1個、2個、又は3個の環を含み、2個又は3個の環は、独立して縮合又は非縮合であり、2個又は3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、一般に(C~C)ヘテロアリール、(C~C12)ヘテロアリールなど)は、x~y個の炭素原子(4~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換又は1つ若しくは2つ以上のRによって置換されているものと同様な様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環又は6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子の数であり、1、2、又は3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、又はPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソオキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、及びテトラゾール-5-イルである。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子の数であり、1又は2であり得、ヘテロ原子は、N又はPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、及びピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-又は6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、及びベンズイミダゾール-1-イルである。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、キノリン-2-イル、及びイソキノリン-1-イルである。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合した5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、又は6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例は、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルである。縮合5,6,6-環系の例は、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例は、アクリジン-9-イルである。
【0065】
前述のヘテロアルキルは、(C~C50)の炭素原子又はそれより少ない炭素原子及び1個以上のヘテロ原子を含有する飽和直鎖又は分岐鎖ラジカルであり得る。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子及び1つ又は2つ以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖又は分岐鎖ジラジカルであってもよい。上に定義されたようなヘテロ原子は、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、及びS(O)を含んでもよく、ヘテロアルキル基及びヘテロアルキレン基の各々は、非置換であるか、又は1つ以上のRによって置換される。
【0066】
非置換(C~C40)ヘテロシクロアルキルの例は、非置換(C~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S、S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、及び2-アザ-シクロデシルである。
【0067】
「ハロゲン原子」又は「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、又はヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、又はヨウ化物(I)といったハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0068】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、及び(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rによって置換されている場合、1つ以上の二重及び/又は三重結合は、任意選択的に、置換基R中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、並びに(ヘテロ原子含有基における)炭素-窒素、炭素-リン、及び炭素-ケイ素二重結合を含有すること、ただし、存在するとしたら置換基R中に存在し得るか、又は存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得るような任意の二重結合は含まないことを意味する。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、エチレン系ポリマーを重合するためのプロセスにおける単鎖触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含む。
【0070】
【化5】
【0071】
式(I)において、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムから選択される金属であり、金属は、+2、+3、又は+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、又は2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子又は二座配位子であり、nが2である場合、各Xは単座配位子であり、同じであるか又は異なっており、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R)-、又は-P(R)-から独立的に選択され、Lは、(C~C40)ヒドロカルビレン又は(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、ここで、(C~C40)ヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1炭素原子~10炭素原子のリンカー骨格を含む部分(これにLが結合している)を有し、又は、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)中の2つのZ基を連結する1原子~10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子~10原子のリンカー骨格の1~10個の原子の各々は、独立して炭素原子又はヘテロ原子であり、各ヘテロ原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、又はN(R)であり、独立して各Rは、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、R及びRは独立して、-H、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルからなる群から選択される。
【0072】
【化6】
【0073】
式(II)、(III)、及び(IV)中、R31~35、R41~48、又はR51~59の各々は、独立して(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R)3、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、又は-Hから選択され、ただし、R又はRのうちの少なくとも一方が式(II)、式(III)、又は式(IV)を有するラジカルであることを条件とする。
【0074】
式(I)において、R2~4、R5~7、及びR9~16の各々は、独立して(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R)3、-P(R、-N(R、-N=CHR、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、及び-Hから選択される。
【0075】
式(I)による金属-配位子錯体の例示的な例は、触媒4である。
【0076】
【化7】
【0077】
1つ以上の実施形態では、単鎖触媒は、式(V)による金属-配位子錯体を含む。
【0078】
【化8】
【0079】
式(V)において、Mは、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、第III族又はランタニド金属である。各Rは、独立して、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン原子、及び水素原子からなる群から選択される。任意選択的に、2つ以上のR基は共に、1つ以上の環構造に結合することができる。各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0080】
式(V)において、Zは、[(RG]であり、下付き文字mは、1又は2であり、各Gは、独立して、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、又はホウ素から選択され、ただし、Gが炭素、ケイ素、又はゲルマニウムである場合、nは2であり、Gがホウ素である場合、nは1である。各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0081】
式(V)において、Yは、-O-、-S-、-NR-、及び-PR-からなる群から選択され、各R、R、又はRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0082】
式(V)において、各Xは、(C~C40)炭化水素、(C~C40)ヘテロ炭化水素、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、Si(-Si(R、-Ge(R)3、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン原子、及び水素原子である。各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0083】
式(V)による金属-配位子錯体の例示的な例は、触媒2である。
【0084】
【化9】
【0085】
1つ以上の実施形態では、単鎖触媒は、式(VI)による金属-配位子錯体を含む。
【0086】
【化10】
【0087】
式(VI)において、Mは、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、第III族又はランタニド金属である。各Xは、(C~C40)炭化水素、(C~C40)ヘテロ炭化水素、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、Si(-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン原子、及び水素原子である。各R及びRは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。(X)の下付き文字nは、1又は2である。Cpは、非置換又は最大5つの置換基で置換され得るシクロペンタジエニルである。5つの置換基のそれぞれは、(C~C)ヒドロカルビル、(C~C)ヘテロヒドロカルビル、又はハロゲンであり得る。任意選択的に、5つの置換基のうちの2つは、一緒に結合して環を形成し得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、Cpは、シクロペンタジエニル、インデニル、及びフルオレニルから選択される。
【0089】
式(VI)において、Nは窒素であり、Pは、リンであり、各Rは、独立して(C~C30)ヒドロカルビルである。
【0090】
式(VI)による金属-配位子錯体の例示的な例は、触媒3である。
【0091】
【化11】
【0092】
実施形態では、多重鎖触媒は、式(VII)による金属-配位子錯体を含む。
【0093】
【化12】
【0094】
式(VII)において、Mは、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、第III族又はランタニド金属である。各Xは、(C~C40)炭化水素、(C~C40)ヘテロ炭化水素、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、Si(-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン原子、及び水素原子である。各Rは、独立して、(C~C30)ヒドロカルビル又は(C~C30)ヘテロヒドロカルビルである。
【0095】
式(VII)において、R71~R76は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビルである。
【0096】
式(VII)による金属-配位子錯体の例示的な例は、触媒1である。
【0097】
【化13】
【0098】
本開示の実施形態に従った触媒系では、二種金属活性化剤錯体対第IV族金属-配位子錯体のモル比は、例えば1:5000~100:1、1:100~100:1、1:10~10:1、1:5~1:1、又は1.25:1~1:1などの1:10,000~1000:1であり得る。触媒系は、本開示に記載の1つ以上の二種金属活性化剤錯体の組み合わせを含み得る。
【0099】
共触媒成分
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属ベース触媒を活性化するための当該技術分野で既知の任意の技術によって触媒的に活性にされ得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含む系は、錯体を活性化助触媒と接触させるか、又は錯体を活性化助触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性にされ得る。本明細書で使用するのに好適な活性化共触媒としては、アルキルアルミニウム、ポリマー、又はオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られている)、中性ルイス酸、及び非ポリマー、非配位性、イオン形成化合物(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)が挙げられる。好適な活性化技法は、バルク電気分解である。前述の活性化助触媒及び技法のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリド若しくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニムウヒドリド若しくはジアルキルアルミニウムハライド、又はトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマー又はオリゴマーのアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウムで修飾されたメチルアルモキサン、及びイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0100】
ルイス酸活性化剤(助触媒)は本明細書に記載されるように、1~3個の(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウム又はトリ((C~C20)-ヒドロカルビル)-ボラン化合物である。実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)-置換アルミニウム、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ボラン化合物、トリ((C~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C~C18)アリール)ボラン化合物、及びそれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。更なる実施形態では、13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化助触媒は、トリス((C~C20)ヒドロカルビルボレート(例えばトリチルテトラフルオロボレート)又はトリ((C~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用されるとき、「アンモニウム」という用語は、((C~C20)ヒドロカルビル)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C~C20)ヒドロカルビルN(H) 、又はN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同一でも異なっていてもよい。
【0101】
中性ルイス酸活性化剤(助触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ボラン化合物、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、及び単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマー又はオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモル数の比は、1:1:1~1:10:30であり、実施形態では、1:1:1.5~1:5:10である。
【0102】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成性助触媒、強ルイス酸、又はそれらの組み合わせを組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成することができる。好適な活性化助触媒としては、ポリマー又はオリゴマーアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性、相溶性、非配位性、イオン形成化合物が挙げられる。例示的な好適な助触媒としては、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化獣脂アルキル)メチル、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1)アミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
いくつかの実施形態では、前述の活性化共触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C~C)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C~C)ヒドロカルビル)ボラン、又はホウ酸アンモニウムとオリゴマー若しくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数の1つ以上の活性化助触媒の総モル数との比は、1:10,000~100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、いくつかの実施形態では少なくとも1:1000、及び10:1以下であり、更にいくつかの実施形態では、1:1以下である。アルモキサンを単独で活性化助触媒として使用する場合、好ましくは、用いられるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化共触媒として使用する場合、いくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数は、0.5:1~10:1、1:1~6:1、又は1:1~5:1である。残りの活性化共触媒は一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量におおよそ等しいモル量で用いられる。
【0104】
4官能性長鎖分岐ポリオレフィンの特性評価
分岐の程度に応じて、核磁気共鳴(NMR)などの様々な方法が、LCBを判定するか、又はポリマー中のLCBの影響を識別し得る。例えば、LCBの効果は、van Gurp-Palmen分析のせん断流において観察され、また、低い角周波数でのせん断粘度の増加及びせん断減粘挙動の強度は、LCBに起因し得る。伸長流では、LCBの影響は通常、硬化の程度又は溶融物の強度、及び達成される最大変形で特定される。他のプロット、例えば、マーク-フウィンク-桜田プロット、拡大分子量分布(MWD)、及びg’プロットなどは、LCBに関する追加の情報を提供する。ビニル末端ポリマーの限定された濃度(ポリマー鎖1つ当たり最大1つ)、及びLCBの形成を確保するために高い変換を実行する必要性に起因して、ポリマー内の高レベルの天然LCBを達成することは困難である。高い変換を確保するために、反応器内のエチレン濃度が低く、したがって、大量のビニル末端ポリマーを第2のポリマー鎖に再挿入することを可能にする。
【0105】
ジエンをポリマー合成系に組み込む従来のプロセスは、高分岐レベルでのゲル形成又は反応器汚損の根本的な欠陥をこうむる。前述の速度論的モデリング(国際出願第US2019/053524号(2019年9月27日出願)、同第US2019/053527号(2019年9月27日出願)、同第US2019/053529号(2019年9月27日出願)、及び同第US2019/053537号(2019年9月27日出願))は、ゲル形成へのより良好な理解を可能にする良好な予測結果を提供し得る。例えば、より長いポリマー鎖は、比例してより多くのペンダントビニルを有し、より多くのペンダントビニルを含有するポリマー鎖は、触媒に再挿入されてLCBを形成する可能性が高い。したがって、より大きなポリマー鎖が、優先的に再挿入されて、更に大きなポリマー分子である四官能性分岐を形成し、LCBレベルが閾値に達する場合、ゲルの問題又は不安定結果が生じる。従来の四官能性分岐の関数としての重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)のシミュレーションが、一定圧力のセミバッチ反応器内のエチレン系ポリマーのために、図1に示される。図1では、Mは、Mが無限大になると、わずかに増加するだけである。この例では、Mが、1モル当たり200,000グラム(g/モル)を超える数に増加すると、ポリマーの分子量分布(MWD)は不安定になり、ゲル形成が始まる。MWDは、重量平均分子量Mを数平均分子量Mで割って定義される(M/M)。
【0106】
ポリマーゲルは、本開示の目的のために、その高分岐レベル及び/又は高分子量に起因して相分離されたポリマー画分であると狭義に定義される。ポリマーゲルは、溶液中又は溶融状態で観察され得、光学的透明度、並びにフィルム及び繊維の性能などの特性を妨害する傾向がある。ポリエチレンインターポリマーゲルは、高温キシレンへのポリマーの不溶性度によって測定され得る。ゲル含有量は、多くの場合、GPCポリマーの回収パーセンテージと相関し、したがって、それから推定される。ポリマーゲルが形成される場合、それらは反応器内に堆積し、汚損をもたらし得る。
【0107】
分子量の影響
2つの触媒、例えば触媒1及び触媒2を反応器に添加する場合、2つの触媒のMWが異なるため、バイモーダル分布が存在し得る。触媒のうちの1つが二重鎖触媒である場合、触媒は、ジエンを効果的にラダー分岐させることができる。二重鎖触媒は、2つの重合部位のみを有する多重鎖触媒の実施形態である。二重鎖触媒の金属中心でのジエン反応の効率のため(ビニルの蓄積は不要)、二重鎖触媒は、ポリマー鎖を効率的に一緒に結合するが、単鎖触媒は十分なジエンを挿入できず、顕著なLCBを形成するか、又は汚損の問題を生じさせる。図3は、2つの触媒によって生成されたポリマーのMWDを示し、二重鎖触媒によって、より高MWポリマーの少量画分が生成され、高MWの肩部として現れる。ジエンを添加すると、この肩部は更に高MWに移動するが、単鎖触媒由来の主ピークは、本質的に影響を受けない。
【0108】
マーク-フウィンク-桜田分析
マーク-フウィンク-桜田プロットは、固有粘度[η]と絶対分子量Mとの間の指数法則関係を説明する。
η=βMα (1)
【0109】
一般に、[η]は、ポリマーの断面回転半径又は骨格分子量に従う。絶対MWが側鎖上の質量を含むが、骨格MWは含まないという点で、絶対MW(M)と骨格MW(M)との間に差があることに留意されたい。絶対分子量を利用して、log[η]対logMのマーク-フウィンク-桜田プロットは、以下を導く。
log(η)=log(β)+αlog(M) (2)
【0110】
本出願において、基数10である対数がlogと示されることに留意されたい。
【0111】
直鎖状ポリマーの場合、log[η]対logMのプロットは、傾きαと垂直方向オフセットlogβを導く。αの値は、150℃の典型的な溶媒であるトリクロロベンゼンについて、ポリエチレンではα=0.73であることが知られている。以下の評価の多くにおいて、α=0.73である。
【0112】
短鎖分岐を導入する場合、ホモポリマー依存性からの偏差が生じる。例えば、10モル%のオクテンでは、全分子量の23%が側鎖に存在し、M=10/13Mであることを意味する。
【0113】
【数1】
log(η)=log(β)+αlog(M)-αlog(1.3) (4)
【0114】
α=0.73、αlog1.3=0.083の場合、このポリマーのマーク-フウィンク-桜田プロットは、ホモポリマー(コモノマーなし)と平行であるが、対数スケール上で0.083低くオフセットしている。短鎖分岐は全ての分子量で骨格に沿って均一に分布しているため、線はホモポリマー依存性に平行である。
【0115】
長鎖分岐のマーク-フウィンク-桜田プロットに対する効果は、より複雑である。側鎖に顕著な分子量(長鎖分岐)があるため、マーク-フウィンク-桜田依存性も減少する。しかしながら、従来のジエン又は高圧(LDPE)プロセスによる長鎖分岐形成が樹枝状に、又はbranch-on-branch構造を有して成長するため、均一に分布せず、高分子量種は、より長鎖分岐を有する。これらの概念は、絶対分子量が大きくなるにつれて、直鎖状ホモポリマー依存性から更に外れるマーク-フウィンク-桜田挙動につながる(図4参照)。
【0116】
原則として、骨格分子量と絶対分子量との間の関係を決定することができる場合、マーク-フウィンク-桜田プロットを予測することができる。しかしながら、これは従来のジエン及び高圧プロセスにおいて複雑すぎる。固有粘度は、(dW/dLogM)シグナルが0.03未満になると、高MW末端でカットオフされることに留意されたい。
【0117】
「ラダーポリマー」という用語は、高分子量画分が四官能性長鎖分岐を含むポリエチレン系ポリマーの高分子量画分を指す。水素化セグメントによって分解されたラダーポリマーは、骨格分子量と絶対分子量との間に定義された関係を有する(図5を参照)。図5では、黒色に示されているポリマー骨格。点線は、スキーム3に示されるような四官能性分岐を示す。絶対MWは、骨格MWの2倍を超えない。原則として、絶対MWは、ラダーポリマー中に存在する遊離鎖の程度に応じて、骨格MWの2倍に近くなければならず、これらの遊離鎖は、同一のポリマー鎖上の連続的水素化分解事象に由来する。遊離鎖のパーセンテージ、つまり質量は、ポリマー全体の分子量に対して小さくなる。骨格MWが絶対MWの半分である上限値を使用して、M=1/2Mである。
【0118】
【数2】
log(η)=log(β)+αlog(M)-αlog(2) (6)
【0119】
α=0.73、αlog2=0.220の場合、このポリマーのマーク-フウィンク-桜田プロットは、10モル%のコポリマーよりもはるかに低下する。ラダーのマーク-フウィンク-桜田依存性は、10モル%のオクテンコポリマーよりも更に低下するが、LDPE及び従来のジエン分岐とは異なり、ホモポリマー依存性より低い範囲に限定される(図4)。
【0120】
図6は、理論上の線形ホモポリマー指数法則関係(式2)及び理論上のラダー限界(式6)を示す。実際のデータは、直鎖状ポリマーからラダー分岐ポリマーへの遷移を示す。
【0121】
ラダーポリマーの場合、ホモポリマー(ジエンを含むがオクテンを含まない)を考慮すると、鎖は直鎖状(式2)又は長鎖分岐(式6)のいずれかである。式6は、1つのLCB(ラング)又は2つ以上のLCBが存在するかどうかに関わらず有効である。最低MWのポリマー鎖は、LCBをほとんど含有しないが、最高MWのポリマー鎖は、通常、少なくとも1つのLCBを含有し、これらの間には、一部の鎖が直鎖であり、一部がラダー長鎖分岐である遷移期間がある。この遷移期間は、図6に示されるように、変曲点(d[η]/dM=0、及びd[η]/dM>0)を有する必要がある。
【0122】
単鎖触媒が大部分の低MW直鎖状ポリエチレン系ポリマーを形成し、MWがSmaxを下回るようにし、二重鎖触媒がわずかな高MWラダー長鎖分岐ポリエチレン系ポリマーを形成するバイモーダルポリマーは、MWがSmaxを超える、予想されるマーク-フウィンク-桜田シフトを示す(表2~表10のデータに基づく実施例に関する図7参照)。(Smax値は、以下のセクションでより詳細に説明される)。大部分の低MW直鎖状ポリエチレン系ポリマーは式2に従う一方で、わずかな高MWラダー長鎖分岐ポリエチレン系ポリマーは式6に従う。大量の高MW画分は粘度を増加させ、それにより反応器からポンプ排出することが困難になる。高MW画分の量を制御できる場合、全体的な粘度は反応器汚損が発生し得る点に到達せず、ポリマーを反応器から無事に取り出すことができる。
【0123】
図6では、低MW画分中の直鎖状ポリマーと高MW画分のラダー分岐ポリマーとの間に変曲点がある。しかしながら、バイモーダル分布が、各々異なるコモノマー組み込みレベルを有する2つの触媒に由来するため、短鎖分岐の変曲点も存在する。
【0124】
先に提示した式は、i)低MW画分中にオクテンがなく、ラダーポリマー中にオクテンがない、ii)低MW画分中にオクテンがなく、ラダーポリマー中のオクテンが10モル%、iii)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、ラダーポリマー中にオクテンがない、iv)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、ラダーポリマー中のオクテンが10モル%である場合に、適用可能である。
【0125】
i)低MW画分中にオクテンがなく、ラダーポリマー中にオクテンがない:
ηlow=βMα (7)
log(ηlow)=log(β)+α log(M) (8)
【0126】
【数3】
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M)-αlog(2) (10)
【0127】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式8~10は以下の通りである。
log(ηlow)-log(ηhigh)=αlog(2)=0.220 (11)
【0128】
ii)低MW画分中にオクテンがなく、ラダーポリマー中のオクテンが10モル%:
log(ηlow)=log(β)+αlog(M) (8)
【0129】
【数4】
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M)-αlog(2.6) (12)
【0130】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式8~12は以下の通りである。
log(ηlow)-log(ηhigh)=αlog(2.6)=0.303 (13)
【0131】
iii)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、ラダーポリマー中にオクテンがない:
【0132】
【数5】
log(ηlow)=log(β)+αlog(M)-αlog(1.3) (15)
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M)-αlog(2) (10)
【0133】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式15~10は以下の通りである。
【0134】
【数6】
【0135】
iv)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、ラダーポリマー中のオクテンが10モル%である:
log(ηlow)=log(β)+αlog(M)-αlog(1.3) (15)
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M)-αlog(2.6) (12)
【0136】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式15~12は以下の通りである。
log(ηlow)-log(ηhigh)=αlog(2.6)-αlog(1.3)=αlog(2)=0.220 (17)
【0137】
長鎖分岐がなく、両方のポリマー画分が同じオクテン組み込み(例えば、オクテン0モル%又はオクテン5モル%又はオクテン10モル%)を有するバイモーダル分布である比較例として、低MW画分と高MW画分との対数粘度間の差はゼロになる。更に、コモノマー組み込み(LCBなし)に差があるバイモーダルポリマー(i)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、高MW画分中にオクテンがない、ii)低MW画分中にオクテンがなく、高MW画分中のオクテンが10モル%)は、以下の通りである。
【0138】
i)低MW画分中のオクテンが10モル%であり、高MW画分中にオクテンがない:
log(ηlow)=log(β)+αlog(M)-αlog(1.3) (15)
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M) (18)
【0139】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式15~18は以下の通りである。
log(ηlow)-log(ηhigh)=-αlog(1.3)=-0.083 (19)
【0140】
i)低MW画分中にオクテンがなく、高MW画分中のオクテンが10モル%:
log(ηlow)=log(β)+αlog(M) (8)
log(ηhigh)=log(β)+αlog(M)-αlog(1.3) (20)
【0141】
それぞれ低MW領域と高MW領域との対数粘度間の差である、式8~20は以下の通りである。
log(ηlow)-log(ηhigh)=αlog(1.3)=0.083 (19)
【0142】
比較例は、オクテン組み込みの極値について-0.083~+0.083の対数粘度の差の理論範囲を提供する。高MW画分にLCBを有し、オクテン組み込みに変動があるラダーポリマーについては、値の範囲は0.137~0.303であった。これらの範囲は、2つの樹脂に関連するマーク-フウィンク-桜田パラメータの差、並びにこれらの実験測定値に関連するエラーバーの両方を提供する。
【0143】
値g’は、分岐ポリマーの粘度を同じ絶対MWの直鎖状ポリマーの粘度で除算したものとして明確に定義される。
【0144】
【数7】
【0145】
g’を平均化する様々な方法がある。g’ave、つまり平均g’は、g’の重量平均値である(B.H.Zimm,W.H.Stockmayer,J.Chem.Phys.1949,17,1301)。ポリマー組成物全体がラダーポリマーからなる場合、ラダー分岐ポリマーの粘度を同じ絶対MWを有する直鎖状ポリマーの粘度で除算するとき、g’を決定することができる(両ポリマーは同じコモノマー含有量を有する)。
【0146】
直鎖状ポリマーの粘度は、以下によって与えられる。
log(ηlinear)=log(β)+αlog(M) (22)
ηlinear=10{log(β)+αlog(M)} (23)
【0147】
ラダーポリマーの粘度は、以下によって与えられる。
log(ηLadder)=log(β)+αlog(M)-αlog(2) (24)
ηLadder=10{log(β)+αlog(M)-αlog(2)} (25)
【0148】
【数8】
g’=10-αlog(2)same M (27)
g’=0.603,for all M (28)
【0149】
LDPEの平均g’の値は、0.6値未満であることが多い。このg’のラダー限界は、全てのポリマー鎖がラダー分岐であると仮定する。これまでの研究(2019年9月27日出願の国際出願第US2019/053524号、2019年9月27日出願の同第US2019/053527号、2019年9月27日出願の同第US2019/053529号、及び2019年9月27日出願の同第US2019/053537号)は、全てのポリマー鎖がラダー分岐であるわけではないことを示している。この研究は、LCBがほとんどないか又は全くない単鎖触媒から生成された大部分のポリマー鎖を有する。この場合、g’ave値(重量平均g’)は、表4に示されるように、これまで達成可能であったものよりもはるかに高い。
【0150】
ラダー特性(L)
前述のように、ポリマーの溶融特性と粘度又はメルトインデックスとのバランスを取る継続的な問題がある。本開示のエチレン系ポリマーは、低分子量画分及び高分子量画分を含む。高分子量画分は、スキーム3に示されるように、ラダーポリマーが四官能性長鎖分岐を有するラダーポリマーを含む。理論に拘束されることを意図するものではないが、高分子量画分中のラダーポリマーと低分子量画分中の直鎖状ポリマーという独自性により、溶融加工特性は、粘度を増加させず、かつメルトインデックスを減少させずに増強され、反応器中の粘度又は汚損の問題がないようにする。
【0151】
ラダー特性を推定するために、新しいパラメータ(L)が導入される。マーク-フウィンク-桜田プロット(log η対log M)は、低MW画分が直鎖状ポリマーに基づき、高MW画分がラダーポリマーに基づく、2乗則依存性を示す(図6及び図7)。所与の試料について、Lがラダーポリマーの画分であり、(1-L)が直鎖状ポリマーの画分である方程式に、全てのデータ点を適合させることができる。
log(η)=(1-L)*log(ηLinear)+L*log(ηLadder) (29)
log(ηLinear)=log(β)+αlog(M) (22)
log(ηLadder)=log(β)+αlog(M)-αlog(2) (24)
log(η)=log(β)+αlog(M)-L*αlog(2) (30)
【0152】
前述のように(2019年9月27日出願の国際出願第US2019/053524号、2019年9月27日出願の同第US2019/053527号、2019年9月27日出願の同第US2019/053529号、及び2019年9月27日出願の同第US2019/053537号)、Smaxは、スケーリングされたMWDの主要ピーク(傾きの絶対値)のRHS(高MW側)での最大下降傾きの最初のインスタンス(変曲点)である。絶対Mの関数としての粘度の傾きをプロットする場合、約0.73の初期傾きと、続く遷移期間、その後の約0.73の別の傾きがあることがわかる。遷移期間において、傾きは減少し、続いて再び増加して、その後0.73に近づく。特定の例では、図8はこの変化を示す。
【0153】
低MW及び高MW画分について、2つの傾きが決定される。傾きは、低MW画分が最後の5個の傾きの平均であり、高MW画分が最後の傾きである、全25個のデータ点から内挿される。
【0154】
図9は、実施例1~11のラダー特性を示す。ラダーの特徴は、Smax未満は約ゼロであり、その後、高MW側で約1まで増加する。
【0155】
max前後のlog(M)の関数としてラダー特性(L)をプロットすることができる。図10(左)に見られるように、Lは、全てのサンプルの全てのデータポイントについて、log(M)<Smaxのとき-0.35~+0.35の間にある(-0.35<L<0.35)。Smaxを超えると(図10右参照)、LはLog(M)に従って増加し、Lの最大値(Lmax)は0.7~1.5の間にある(0.7<Lmax<1.5)。LCBを含まない2つのバイモーダル比較例も図10に示されており、それらはLmax基準を満たさない。単一二重鎖触媒(バイモーダルポリマーではない)の先行技術の例は、両方の定義が比較例のいずれについても満たされないことを示す(図11参照)。
【0156】
「ラダー分岐」MWDの目視検査により、分岐ポリマーで通常見られる高MWテールの特徴の欠如があることが示される。図12は、モデルが、「ラダー分岐」ポリマーのテーリングの欠如をどのように予測するかを実証する。「ラダー分岐」MWDデータは、多くの実験でテールが特徴的に欠如していることを示すが、重合条件及びジエン/触媒のペアリングに応じてテールが形成される可能性があることも示す。
【0157】
多分散度指数(M/M、M/Mなど)は、テーリングの既知のメトリクスであるが、低MWD人工物に対する感受性に起因して好ましくない。したがって、多分散度指数のより焦点を絞ったバージョンを使用して、MWDの高MW部分でのみ積分が実施される標準物を開発する。M/M及びM/Mメトリクスは、ジエン「ラダー分岐」を従来の分岐から区別することに成功し、高MWベースライン選択及びベースラインノイズに非常に感受性である。
【0158】
MWD曲線の下の面積は、MWD分散度指数(M/M、M/Mなど)を計算するために必要とされるより高いモーメントと比較して、ベースラインの問題に比較的非感受性である。したがって、MWDの非加重積分を伴うメトリクスを開発することが決定された。これらのMWD面積メトリクス、AHIGH及びATAILは、MWD曲線の右側に定義された領域についてGPC曲線の面積から計算される。MWD面積メトリクス(AHIGH及びATAIL)は、スケーリングされたMWD曲線(dW/logM)から導出され、MWDの主要ピーク又は最高ピークは、単一性の値を有するものとして定義される。2つ以上のピークが同じ高さを有する場合、最も高いMWピークが主要ピークである。MWD曲線における独立変数は、Log(M)であり、これは、10を底とするMの対数である。MWD面積メトリクスの両方は、MWDの高MW部分の最大勾配のポイントに依存する。面積メトリクスを評価するために必要な量及び限界は、以下に列記され、図12に実証される。
【0159】
max=スケーリングされたMWDの主要ピーク(勾配の絶対値)のRHS(より高いMW側)での最大下降勾配の最初の場合
【0160】
smax=最大勾配のポイントでのスケーリングされたMWDの高さ
【0161】
pt1=SmaxのLogM値
【0162】
pt2=Smax正接がx軸と交差するLogM値
【0163】
MWD面積メトリクスは、以下に定義され、ここで、AHIGHは、最大勾配のポイントの後にあるMWD領域の面積に過ぎない。第2の面積メトリックであるATAILは、図12に示される小さな高MW面積であり、AHIGHから三角形の面積を差し引きすることによって評価される。
【0164】
【数9】
【0165】
現在のバイモーダルポリマーでは、これらは少量の高MW分岐材料を含むバイモーダルポリマーであるため、ATAILは0.04値を超える。この場合、ATAILを0.06より大きくすることが必要である。
【0166】
本開示のプロセスから生成されるエチレン系ポリマー
スキーム4に記載されているように、「ラダー分岐」から生成されたポリマーは、本開示に含まれる。
【0167】
本開示の実施形態では、エチレン系ポリマーは、低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマーを含み、両方とも、重合単位であるエチレン、1つ以上のジエン、及び任意選択的に1つ以上のC~C12α-オレフィン由来である。低分子量画分及び高分子量画分を、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定された分子量分布(MWD)曲線上のSmaxによって分割する。前述のように、Smaxは、MWD曲線の主要ピークの高分子量側の最大絶対傾きであり、主要ピークは、MWD曲線において最大の大きさのピークである。
【0168】
本開示のエチレン系ポリマーでは、低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分は、それぞれラダー特性Lを含む。ラダー特性Lは、マーク-フウィンク-桜田曲線に従う式、log[η]=log(β)+αlog(M)-Lαlog(2)(log(β)は切片であり、αは傾きである)を使用した、固有粘度[η]の対数対絶対MW(M)の対数曲線のフィットとして、所与の絶対分子量(MW)のために定義される。低分子量ポリマー画分は、Smaxを下回るMWを有し、全てのL値は0.35~0.35であり、高分子量ポリマー画分は、Smaxを上回るMWを有し、最大L値は0.8~1.5である。
【0169】
本開示の実施形態では、エチレン系ポリマーは、メルトインデックスの基数10の対数のマイナス17倍+25よりも大きい溶融強度(MS)を含む(MS>-17log(MI)+25)。この式において、MSはcNで表す溶融強度(Rheotens装置、190℃、2.4mm/秒、ダイ出口からホイールの中心まで120mm、押出速度38.2秒-1、長さ30mm、直径2mm、及び流入角180°のキャピラリーダイ)であり、MIは、ASTM D1238によってg/10分で表すメルトインデックスである。いくつかの実施形態では、溶融強度(MS)は、メルトインデックスの対数のマイナス17倍+30よりも大きい(MS>-17log(MI)+30)。様々な実施形態では、溶融強度(MS)は、メルトインデックスの対数のマイナス17倍+35よりも大きい(MS>-17log(MI)+35)。前述のように、一般に、溶融強度が増加すると、メルトインデックスが減少する。この式によって示されるように、溶融強度は増加し得(ポリマーが20cNの溶融強度を有するように)、メルトインデックスは正常範囲に留まる(0.1~5など)。
【0170】
本開示の実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン、ジエン、及び任意選択的に1つ以上のC~C12α-オレフィンに由来する重合単位を含む。エチレン系ポリマーは、20超の190℃での溶融粘度比(V0.1/V100)と、0.86超の平均g’とを含み、このとき平均g’は、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である。いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、10cN超の溶融強度を有する。
【0171】
本開示の実施形態では、エチレン系ポリマーは、エチレン、ジエン、及び任意選択的に1つ以上のC~C12α-オレフィンに由来する重合単位を含む。エチレン系ポリマーは、10cN超の溶融強度と、0.86超の平均g’とを含み、このとき平均g’は、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である。1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、20を超える190℃での溶融粘度比(V0.1/V100)を有する。
【0172】
1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、低分子量ポリマー画分と高分子量ポリマー画分とを含み、低分子量ポリマー画分及び高分子量ポリマー画分は各々、エチレン、ジエン、及び任意選択的に1つ以上のC~C12α-オレフィンに由来する重合単位を含む。
【0173】
1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.70超の平均g’を有する。1つ以上の実施形態では、平均g’は0.86超であり、平均g’は、このとき平均g’は、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される固有粘度比である。いくつかの実施形態では、平均g’は0.88超である。様々な実施形態では、平均g’は0.90超である。
【0174】
いくつかの実施形態では、高分子量ポリマー画分は、0.5~30重量パーセント(重量%)のポリマーを含む。他の実施形態では、高分子量ポリマー画分は、1~15重量%のポリマーを含む。
【0175】
1つ以上の実施形態では、低分子量ポリマー画分の全ての値Lは、-0.2~0.2である。いくつかの実施形態では、高分子量ポリマー画分のLの最大値は、0.9~1.1である。
【0176】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、MWD面積メトリック、ATAILによって定量化される分子量テールを有し、ATAILは、三重検出器を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、0.06超である。1つ以上の実施形態では、ATAILは0.08超であるか、又はATAILは0.10超である。
【0177】
いくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、250,000ダルトン以下の重量平均分子量(M)を有する。1つ以上の実施形態では、エチレン系ポリマーは、絶対ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定されるとき、150,000ダルトン以下又は100,000ダルトン以下の重量平均分子量(M)を有する。
【0178】
1つ以上の実施形態では、メルトインデックス(MI)は0.1超であり、このときMIは、ASTM D1238によるg/10分で表すメルトインデックスである。いくつかの実施形態では、MIは、0.1~5.0又は0.3~3.0である。様々な実施形態では、MIは、1超又は2超である。いくつかの実施形態では、MIは3超であり、このときMIは、ASTM D1238によるg/10分で表すメルトインデックスである。
【0179】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーの溶融強度は、10cN超であり得る(Rheotensデバイス、190℃、2.4mm/秒、ダイ出口からホイールの中心まで120mm、押出速度38.2秒-1、長さ30mm、直径2mm、及び流入角180°のキャピラリーダイ)。1つ以上の実施形態では、MSは、20cN超、30cN超、又は45cN超である。いくつかの実施形態では、MSは50cN超である。
【0180】
様々な実施形態では、エチレン系ポリマーは、25を超える190℃での溶融粘度比(V0.1/V100)を含む。いくつかの実施形態では、190℃での溶融粘度比(V0.1/V100)は、30超である。
【0181】
「溶融強度」は、センチニュートン(cN)の単位を有し、Rheotens装置、190℃、2.4mm/秒、ダイ出口からホイールの中心まで120mm、押出速度38.2秒-1、長さ30mm、直径2mm、及び流入角180°のキャピラリーダイによって決定される。
【0182】
「レオロジー比」及び「溶融粘度比」は、190℃でのV0.1/V100によって定義され、V0.1は、0.1ラジアン/秒の角周波数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度であり、V100は、100ラジアン/秒の角周波数で190℃でのエチレン系ポリマーの粘度である。
【0183】
前項に記載される長鎖分岐重合プロセスは、オレフィン、主にエチレンの重合に利用される。いくつかの実施形態では、重合スキーム中に単一種類のオレフィン又はα-オレフィンのみが存在し、本質的に少量の組み込まれたジエンコモノマーンを有するホモポリマーを作成する。しかしながら、追加のα-オレフィンを重合手順に組み込んでもよい。追加のα-オレフィンコモノマーは、典型的には、20個以下の炭素原子を有する。例えば、α-オレフィンコモノマーは、3~10個の炭素原子、又は3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、4-メチル-1-ペンテン、及びエチリデンノルボルネンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、及び1-オクテンからなる群から、又は代替的に1-ヘキセン及び1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0184】
長鎖分岐ポリマー、例えば、エチレン、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンなどのコモノマーのホモポリマー及び/又はインターポリマー(コポリマーを含む)は、少なくとも50モルパーセントのエチレン由来の単位を含み得る。「少なくとも50モルパーセント」に包含される全ての個々の値及び部分範囲は、別個の実施形態として本明細書に開示され、例えば、エチレン系ポリマー、エチレンのホモポリマー及び/又はインターポリマー(コポリマーを含む)、並びにα-オレフィンなどの任意選択的な1つ以上のコモノマーは、少なくとも60モルパーセントのエチレン由来の単位、少なくとも70モルパーセントのエチレン由来の単位、少なくとも80モルパーセントのエチレン由来の単位、又は50~100モルパーセントのエチレン由来の単位、又は80~100モルパーセントのエチレン由来の単位を含み得る。
【0185】
エチレン系ポリマーのいくつかの実施形態では、エチレン系ポリマーは、追加のα-オレフィンを含む。エチレン系ポリマー中の追加のα-オレフィンの量は、50モルパーセント(モル%)以下であり、他の実施形態は、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも0.01モル%~25モル%を含み、更なる実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも0.1モル%~10モル%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンは1-オクテンである。
【0186】
いくつかの実施形態では、長鎖分岐ポリマーは、少なくとも50モルパーセントのエチレン由来の単位を含み得る。少なくとも90モルパーセントからの全ての個々の値及び部分範囲は本明細書に含まれ、別個の実施形態として本明細書に開示される。例えば、エチレン系ポリマーは、少なくとも93モルパーセントのエチレン由来の単位、少なくとも96モルパーセントの単位、少なくとも97モルパーセントのエチレン由来の単位、又は代替的に、90~100モルパーセントのエチレン由来の単位、90~99.5モルパーセントのエチレン由来の単位、又は97~99.5モルパーセントのエチレン由来の単位を含み得る。
【0187】
長鎖分岐ポリマーのいくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、50%未満であり、他の実施形態では、少なくとも1モルパーセント(モル%)~20モル%を含み、更なる実施形態では、追加のα-オレフィンの量は、少なくとも5モル%~10モル%を含む。いくつかの実施形態では、追加のα-オレフィンは1-オクテンである。
【0188】
任意の従来の重合プロセスを用いて、長鎖分岐ポリマーを生成し得る。かかる従来の重合プロセスとしては、1つ以上の従来の反応器、例えばループ反応器、等温反応器、流動床気相反応器、撹拌槽型反応器、バッチ反応器などの並列、直列、又はそれらの任意の組み合わせを使用する、溶液重合プロセス、気相重合プロセス、スラリー相重合プロセス、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。
【0189】
一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば一重ループ反応器系において、溶液重合によって生成され得、ここで、エチレン、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系及び任意選択的に1つ以上の助触媒の存在下で重合される。別の実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示及び本明細書に記載の触媒系及び任意選択的に1つ以上の他の触媒の存在下で重合される。本明細書に記載の触媒系は、任意に1つ以上の他の触媒と組み合わせて、第1の反応器又は第2の反応器において使用することができる。一実施形態では、エチレン系ポリマーは、二重反応器系、例えば二重ループ反応器系において、溶液重合によって生成することができ、そこで、エチレン、及び任意選択的に1種以上のα-オレフィンは、本明細書に記載の触媒系の存在下で両方の反応器において重合される。
【0190】
別の実施形態では、長鎖分岐ポリマーは、一重反応器系、例えば一重ループ反応器系において、溶液重合によって生成され得、ここで、エチレン、及び任意選択的に1つ以上のα-オレフィンは、本開示に記載の触媒系、及び前項に記載の任意選択的に1つ以上の助触媒の存在下で重合される。いくつかの実施形態では、長鎖分岐ポリマーを生成するための長鎖分岐重合プロセスは、触媒系の存在下で、エチレン及び任意選択的に少なくとも1つの追加のα-オレフィンを重合することを含む。
【0191】
長鎖分岐ポリマーは、1つ以上の添加剤を更に含み得る。かかる添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、加工助剤、紫外線安定剤、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。エチレン系ポリマーは、任意の量の添加剤を含み得る。エチレン系ポリマーは、エチレン系ポリマー及び1つ以上の添加剤の重量に基づいて、そのような添加剤の合計重量で約0~約10パーセント妥協し得る。エチレン系ポリマーは、充填剤を更に含み得、その充填剤としては、有機又は無機充填剤を挙げることができるが、これらに限定されない。長鎖分岐ポリマーは、エチレン系ポリマー及び全ての添加剤又は充填剤の合計重量に基づいて、例えば炭酸カルシウム、タルク、又はMg(OH)などの充填剤を約0~約20重量パーセント含有し得る。エチレン系ポリマーは、1つ以上のポリマーと更に配合されてブレンドを形成することができる。
【0192】
いくつかの実施形態では、長鎖分岐ポリマーを生成するための重合プロセスは、2つのポリマー生成部位を有する触媒の存在下で、エチレン及び少なくとも1つの追加のα-オレフィンを重合することを含み得る。2つのポリマー生成部位を有するそのような触媒系から得られる長鎖分岐ポリマーは、ASTM D792(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に従って、例えば、0.850g/cm~0.960g/cm、0.880g/cm~0.920g/cm、0.880g/cm~0.910g/cm、又は0.880g/cm~0.900g/cmの密度を有し得る。
【0193】
別の実施形態では、長鎖重合プロセスから生じる長鎖分岐ポリマーは、5~100のメルトフロー比(I10/I)を有し得、メルトインデックスIは、ASTM D1238(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に従って、190℃及び2.16kgの荷重で測定され、メルトインデックスI10は、ASTM D1238に従って、190℃及び10kgの荷重で測定される。他の実施形態では、メルトフロー比(I10/I)は、5~50であり、他では、メルトフロー比は、5~25であり、他では、メルトフロー比は、5~9である。
【0194】
いくつかの実施形態では、長鎖重合プロセスから得られる長鎖分岐ポリマーは、1~20の分子量分布(MWD)を有し得、ここで、MWDは、M/Mとして定義され、光散乱法を用いて、Mは、重量平均分子量であり、Mは、数平均分子量である。他の実施形態では、触媒系から得られるポリマーは、1~10のMWDを有する。別の実施形態は、1~3のMWDを含み、他の実施形態は、1.5~2.5のMWDを含む。
【0195】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(従来のGPC)
クロマトグラフィー系は、内部IR5赤外検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(Valencia、Spain)高温GPCクロマトグラフ、及びPrecision Detectors(現在は、Agilent Technologies)2角レーザ光散乱(LS)検出器モデル2040に結合された4-キャピラリー粘度計(DV)からなる。全ての絶対光散乱測定に関して、15度角が測定に使用される。オートサンプラオーブン区画を摂氏160度に設定し、カラム区画を摂氏150度に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混床式カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、これは、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源を、窒素スパージした。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流速は1.0ミリリットル/分であった。
【0196】
GPCカラムセットの較正を、580~8,400,000の範囲の分子量を有する少なくとも20の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて実施し、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準物質を、Agilent Technologiesから購入した。1,000,000以上の分子量については50ミリリットルの溶媒中の0.025グラムで、また1,000,000未満の分子量については50ミリリットルの溶媒中の0.05グラムでポリスチレン標準物質を調製した。ポリスチレン標準物質を穏やかに撹拌しながら摂氏80度で30分間溶解させた。ポリスチレン標準物質ピーク分子量を、式33を使用して、ポリエチレン分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り)。
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン (33)
式中、Mは、分子量であり、Aは、0.4315の値を有し、Bは、1.0に等しい。
【0197】
第3次と第5次との間の多項式を使用して、それぞれのポリエチレン同等較正点にあてはめた。NIST標準NBS 1475が52,000Mwで得られるように、カラム分解能及びバンドの広がり効果を補正するために、Aに対してわずかな調整(約0.415~0.44)を行った。
【0198】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式34)及び対称性(式35)を、200マイクロリットル注入で、以下の式に従って測定した:
【0199】
【数10】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【0200】
【数11】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも早い保持体積でのピーク前部を指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は、24,000超となるべきであり、対称性は、0.98~1.22の間となるべきである。
【0201】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動様式で調製し、2mg/mlを試料の目標重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素スパージされたセプタキャップ付きバイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振とうしながら摂氏160度で2時間溶解させた。
【0202】
n(GPC)、Mw(GPC)、及びMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して式36~38に従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPC結果、等間隔のデータ収集点(i)でのベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、及び点(i)の狭い標準較正曲線から得られるポリエチレン同等分子量に基づいた。
【0203】
【数12】
【0204】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(flowrate marker、FM)は、試料中のそれぞれのデカンピーク(RV(FM試料))のRVを、狭い標準較正(RV(FM較正済み))内のデカンピークのそれと整合することによって各試料のポンプ流量(流量(見かけ))を直線的に補正するために使用した。こうして、デカンマーカーピークの時間におけるいかなる変化も、実行全体にわたって流量(流量(有効))における線形シフトに関連すると推測される。流量マーカーピークのRV測定の精度を最高にするため、最小二乗適合ルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式にフィットさせる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーのピークに基づいてシステムを較正した後、(狭い標準較正に対する)有効流量を式26のように計算する。流量マーカーピークの処理を、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを介して行った。許容される流量補正は、実効流量が、見かけ流量の+/-2%以内になるようにする。
流量(有効)=流量(見かけ)(RV(FM較正済み)/RV(FM試料)) (39)
【0205】
三重検出器GPC(TDGPC)(絶対GPC)
クロマトグラフィーシステム、分析条件、カラムセット、カラム較正及び従来の分子量モーメントの計算及び分布を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)に記載されている方法に従って実施した。
【0206】
IR5検出器からの粘度計及び光散乱検出器オフセットの決定に関して、多重検出器オフセットの決定のための体系的手法は、Balke、Moureyらによって公開されたもの(Mourey and Balke,Chromatography Polym.Chpt 12,(1992))(Balke,Thitiratsakul,Lew,Cheung,Mourey,Chromatography Polym.Chpt 13,(1992))に一致する様式で行われ、それは、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアを使用して、広いホモポリマーポリエチレン標準物(M/M>3)からの三重検出器log(MW及びIV)の結果を、狭い標準較正曲線からの狭い標準カラム較正の結果に最適化する。
【0207】
分子量データは、PolymerChar GPCOne(商標)を用いて、Zimm(Zimm,B.H.,J.Chem.Phys.,16,1099 (1948))及びKratochvil(Kratochvil,P.,Classical Light Scattering from Polymer Solutions,Elsevier,Oxford,NY(1987))によって公開されたものと合致する様式で得る。分子量の判定において使用される全体的な注入濃度は、好適な直鎖状ポリエチレンホモポリマー、又は既知の重量平均分子量のポリエチレン標準物のうちの1つに由来する、質量検出器面積及び質量検出器定数から得られる。(GPCOne(商標)を使用して)計算される分子量は、以下に述べるポリエチレン標準物のうちの1つ以上に由来する、光散乱定数、及び0.104の屈折率濃度係数、dn/dcを使用して得られる。一般に、(GPCOne(商標)を使用して判定される)質量検出器応答(IR5)及び光散乱定数は、約50,000g/モルを超える分子量を有する直鎖状標準物から判定され得る。粘度計の較正(GPCOne(商標)を使用して判定される)は、製造業者によって記載される方法を使用して、又は代替的に、標準参照材料(SRM)1475a(米国国立標準技術研究所(NIST)から入手可能)などの好適な直鎖状標準物の公開された値を使用して、達成され得る。較正標準に関する特定の粘度面積(DV)及び注入された質量を、その固有粘度に関連付ける(GPCOne(商標)を使用して得られる)粘度計定数を計算する。クロマトグラフィー濃度は、第2のウイルス係数効果(分子量に対する濃度効果)への対処を排除するのに十分に低いと仮定される。
【0208】
絶対重量平均分子量(Mw(Abs))は、(GPCOne(商標)を使用して)光散乱(LS)の面積積分クロマトグラム(光散乱定数によって因数分解)を、質量定数及び質量検出器(IR5)面積から回収された質量で割って得られる。分子量及び固有粘度応答は、信号対雑音が低くなるクロマトグラフィーの端部で線形に外挿される(GPCOne(商標)を使用して)。他のそれぞれのモーメント、Mn(Abs)及びMz(Abs)は、等式40~41に従って次のように計算される。
【0209】
【数13】
【0210】
動的機械的スペクトル(又は小角度振動せん断)
複素粘度(η)、弾性率(G’、G’’)、タンデルタ、及び位相角(δ)は、190℃での、0.1~100ラジアン/秒の周波数範囲における動的振動周波数掃引試験によって得られる。歪のレベルは、100ラジアン/秒、190℃での歪掃引試験によって特定される線形粘弾性レジーム内に設定される。試験は、TA Instrumentsによる歪制御レオメーターARES-G2上の直径25mmのステンレス鋼平行板で実施される。実際の試験の前に、厚さ3.3mmの試料を絞り、次いで、2工程でトリミングする。最初のステップでは、試料を2.5分間溶融し、3mmのギャップまで絞り、トリミングする。190℃での更なる2.5分の浸漬時間後、試料を2mmのギャップまで絞り、余分な材料をトリミングする。この方法は、システムが熱平衡に届くことを可能にするために、更に5分の遅延を組み込む。試験は、窒素雰囲気下で実行する。
【0211】
バッチ式反応器重合手順
バッチ反応器の重合反応は、2LのParr(商標)バッチ反応器内で行われる。反応器を電気加熱マントルによって加熱し、冷却水を含有する内部蛇管冷却コイルによって冷却した。反応器及び加熱/冷却システムの両方は、Camile(商標)TGプロセスコンピュータによって制御及び監視される。反応器の底部には、反応器の内容物をステンレス鋼のダンプポットに移すダンプ弁が取り付けられている。ダンプポットには、触媒失活溶液(典型的には、5mLのIrgafos/Irganox/トルエン混合液)が事前に充填されている。ポット及びタンクの両方を窒素でパージして、ダンプポットを30ガロンのブローダウンタンクに通気する。重合又は触媒補給のために使用した全ての溶媒を溶媒精製カラムに通過させて、重合に影響を及ぼし得る一切の不純物を除去する。1-オクテン及びIsoparEを、A2アルミナを含有する第1のカラム、Q5を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。エチレンを、A204アルミナ及び4Åモレキュラーシーブを含有する第1のカラム、Q5を含有する第2のカラムの2つのカラムに通す。移送に使用されるNを、A204アルミナ、4Åモレキュラーシーブ及びQ5を含有する単一のカラムに通す。
【0212】
反応器は、反応器の負荷に応じて、IsoparE溶媒及び/又は1-オクテンを含有し得るショットタンクから最初に装填される。ショットタンクは、ショットタンクを取り付けたラボスケールを使用して負荷設定点まで充填する。液体供給物の添加後、反応器を重合温度設定点まで加熱する。エチレンが使用される場合、反応圧力設定点を維持するための反応温度で、エチレンが反応器に添加される。添加されるエチレンの量は、マイクロモーション流量計(Micro Motion)によって監視される。いくつかの実験では、150℃での標準条件は、575gのIsoparE中の、25gのエチレン、22gの1-オクテン、240psiの水素であり、別の実験では、150℃での標準条件は、602gのIsoparE中の、22gのエチレン、1-オクテンなし、192psiの水素である。
【0213】
プロ触媒及び活性剤を適量の精製したトルエンと混合して、所望のモル濃度の溶液を得る。プロ触媒及び活性剤は、不活性グローブボックス内で処理され、シリンジ内に引き込まれ、触媒ショットタンク内に加圧移送される。シリンジを5mLのトルエンで3回すすぐ。触媒が添加された直後に、実行タイマーが始まる。エチレンを使用する場合は、それは、反応器内の反応圧力設定点を維持するためにCamileによって添加される。重合反応を10分間実行し、次いで、撹拌機を停止し、下部のダンプ弁を開放して、反応器の内容物をダンプポットに移す。ダンプポットの内容物をトレイ中に注ぎ、ラボフード内に置き、そこで、溶媒を一晩蒸発させる。残存するポリマーを含有するトレイは、真空オーブンに移され、真空下で140℃まで加熱されて、あらゆる残存する溶媒も除去する。トレイが周囲温度まで冷却された後、効率を測定するためにポリマーの収量が測定され、ポリマー試験に供された。
【実施例
【0214】
2つの触媒を用いるバイモーダルラダー分岐
バイモーダルポリマーは、二重鎖触媒(触媒1){(a)Figueroa,R.;Froese,R.D.;He,Y.;Klosin,J.;Theriault,C.N.;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,1695-1709、(b)Froese,R.D.;Jazdzewski,B.A.;Klosin,J.;Kuhlman,R.L.;Theriault,C.N.;Welsh,D.M;Abboud,K.A.Organometallics 2011,30,251-262.}及び単鎖触媒(触媒2、3及び4)を用いて生成された。使用されたジエンは、1,4-ペンタジエン(ペンタジエン)及びジメチルジビニルシラン(ジビニルシラン)であった。
【0215】
【化14】
【0216】
比較例は、単一の二重鎖触媒のみの実験である比較例1-C19、1-C20、1-C21を含む重合反応に加え、ジエンを除いた(1-C1、1-C2)重合反応を含む。比較例を作製するための手順は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年9月27日出願の国際出願PTCUS2019/053524号、2019年9月27日出願の同2019/053527号、2019年9月27日出願の同2019/053529号、及び2019年9月27日出願の同2019/053537号に見出され得る。
【0217】
ジエンを含有する各実施例では、反応器に組み込まれたジエンの量は、反応器内の他の反応物と比較して少なかった。したがって、ジエンの添加は、反応器に添加されるコモノマー、エチレン、及び溶媒の量に影響を及ぼさなかった。
【0218】
【表2】
0.1μmolの触媒2、10μmolのMMAO-3A、25gのエチレン、T=150℃、活性化剤:メチルジ(C1837)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0219】
【表3】
10μmolのMMAO-3A、14gのエチレン、T=150℃、活性化剤:メチルジ(C1837)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)
【0220】
【表4】
【0221】
【表5】
【0222】
【表6】
粘度から推定されるMI:MI=10^^{4.7435-0.88267Log(V0.1)-0.40245Log(V100)}
【0223】
【表7】
ポリマーの重量画分が0.03であるlog(M)におけるlog(η)。0.03を超えるポリマーの低い方から5つの重量画分について、log(η)測定値の平均。脚注1の値と標準との間の差、log(η)=-3.4+0.73log(M)。脚注2の値と標準との間の差、log(η)=-3.4+0.73log(M)。
【0224】
比較例1-C19、1-C20、1-C21は、低MW画分の特許請求される範囲内にあるラダー特性(L)を有さない。非ジエン比較例(1-C1、1-C2)は、高MW画分の特許請求される値内にあるラダー特性(L)を有さない。
【0225】
【表8】
0.1μmolの触媒2、10μmolのMMAO-3A、25gのエチレン、22gのオクテン、580gのIsoParE、T=150℃、活性化剤:メチルジ(C1837)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート。
【0226】
【表9】
【0227】
【表10】
粘度から推定されるMI:MI=10^^{4.7435-0.88267Log(V0.1)-0.40245Log(V100)}
【0228】
表8、表9及び表10は、少量のジエンが存在するバイモーダルポリマーの実施例を集めている。実施条件は表8に提供され、MW及びコモノマー組み込みデータを表9に集める。表10は、溶融強度並びにメルトインデックス値を含むせん断及び伸長レオロジーを提供する。溶融強度は、この数値がインフレーションフィルムライン上のバブル安定性に関連するため、重要な値のうちの1つである。
【0229】
表8は、触媒1量の変動、添加された水素、及び添加されたジエン(ペンタジエン)がメルトインデックスに影響を及ぼす実験の設計を提供する。当業者であれば、これらの状態が一般にMI及びMSにどのように影響するかを知っており、すなわち、i)触媒1が高MW画分であるため、触媒1の量が多いほど、高MW画分の重量画分が大きくなり、したがってMIが低くなる、ii)水素が低いほど、全MWが低くなり、MIが高くなる、iii)転化されるジエンが多いほど、ラダー画分中のLCBが多くなり、MIが低くなる。3つのパラメータが変化するため、MI及びMSもまた、表10に示されるように変化する。
【0230】
3つのパラメータである触媒1の量(μmol)、水素(psi)、及びジエンの添加量(g)の単純な線形最小二乗フィットを用いて、ペンタジエンを含む実施のためにMSを適合させることができる(図13)。
MS=185.3*触媒1(μmol)-0.48*H2(psi)+204.4*ペンタジエン(g)+24.48 (42)
【0231】
予想した通り、触媒1量が多く、水素が低く、かつペンタジエンが多いと、高い溶融強度をもたらす。
【0232】
表11では、エントリー1-35及び1-36の重合反応のための反応器条件。エントリー1-35の場合、重合反応は、二重鎖触媒である触媒1と、単鎖触媒である触媒3を含む。エントリー1-36の場合、重合反応は、二重鎖触媒である触媒1と、単鎖触媒である触媒4を含む。
【0233】
【表11】
活性化剤:メチルジ(C1837)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、10μmolのMMAO-3、ジエン:ペンタジエン
【0234】
【表12】
【0235】
【表13】
【0236】
【表14】
【0237】
粘度から推定されるMI:MI=10^{4.7435-0.88267Log(V0.1)-0.40245Log(V100)}
【0238】
図14は、15種類のオートクレーブ及び管状LDPE樹脂(DOW(商標)LDPE PG7004、DOW(商標)LDPE 770G、DOW(商標)LDPE 6621、DOW(商標)LDPE 310E、DOW(商標)LDPE 410E、DOW(商標)LDPE 450E、DOW(商標)LDPE 751A、DOW(商標)LDPE 421E、DOW(商標)LDPE 7481、DOW(商標)LDPE 50041、DOW(商標)LDPE 4005、DOW(商標)LDPE 722、AGILITY(商標)EC 7220、AGILITY(商標)EC 7000、DOW(商標)LDPE 320E)のMS対MIのプロットを示す。一般に、これらは、低MI値が高溶融強度値をもたらすパターンに従う。溶融強度の上限は30cNである。LDPEは、曲線上に描かれた線を下回る。
【0239】
図15は、ラダーポリマー並びにLDPE樹脂のMS対MIのプロットを示す。バイモーダルラダー技術は、LDPE限界(線)の上にあるMI/MS関係を達成することができる。
【0240】
特許請求の範囲に記載の主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な修正を加えることができることが当業者には明らかであろう。したがって、本明細書は、そのような修正及び変形が添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内に入る限り、説明した実施形態の修正及び変形を網羅することが意図される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】