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特表2023-520338変異IDH阻害剤とBCL-2阻害剤による併用療法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】変異IDH阻害剤とBCL-2阻害剤による併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20230510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K31/519
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/496
A61K31/5377
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557866
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 US2021023442
(87)【国際公開番号】W WO2021194950
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】62/993,166
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/024,743
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ブルックス,ネイサン アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ディナード,コートニー
(72)【発明者】
【氏名】ギルモア,レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】コノプレバ,マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】サラマ,ビビアン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC73
4C086CB05
4C086CB22
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、癌の治療のための、式(I)の変異IDH阻害剤とBcl-2阻害剤による併用療法に関する。
(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を治療する方法であって、IDH変異を有するヒト癌対象に治療的有効量の
(a)式:
【化1】
[式中:
は-CHCH(CH、-CHCH、-CHCHOCH、または-CH-シクロプロピルであり;
は-CHまたは-CHCHであり;かつ
XはNまたはCHである]
の第1の化合物またはその医薬的に許容される塩;および
(b)Bcl-2阻害剤である第2の化合物またはその医薬的に許容される塩
を投与することを含む方法。
【請求項2】
IDH変異がIDH1変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
IDH1変異がIDH1 R132変異である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
IDH変異がIDH2変異である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
IDH2変異がIDH2 R140またはIDH2 R172変異である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
第1の化合物においてXがNであり、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1の化合物においてXがNであり、Rが-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rが-CHCHであり、またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第1の化合物が:
7-[[(1S)-1-[4-[(1R)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;もしくは
1-エチル-7-[[(1S)-1-[4-[1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の化合物が式:
【化2】
の化合物またはその医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第1の化合物が:
【化3】
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌が固形腫瘍癌である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
固形腫瘍癌が胆管癌、頭頸部癌、軟骨肉腫、肝細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、神経膠腫、神経膠芽腫、膀胱癌、結腸直腸癌、副鼻腔未分化癌、または肺癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
固形腫瘍癌が胆管癌である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
癌が血液悪性腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群 骨髄増殖性腫瘍、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、T細胞性急性リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄性白血病、または原発性骨髄線維症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2の化合物がベネトクラクス、オバトクラクス、もしくはナビトクラクス、またはそれらのいずれか1つの医薬的に許容される塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第1の化合物が
【化4】
であり、第2の化合物がベネトクラクスであり、かつ癌が急性骨髄性白血病である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
IDH変異を有するヒト対象における癌の治療において、Bcl-2阻害剤またはその医薬的に許容される塩と組み合わせて使用するための、式:
【化5】
[式中:
は-CHCH(CH、-CHCH、-CHCHOCH、または-CH-シクロプロピルであり;
は-CHまたは-CHCHであり;かつ
XはNまたはCHである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項20】
IDH変異がIDH1変異である、請求項20に記載の使用するための化合物。
【請求項21】
IDH1変異がIDH1 R132変異である、請求項20に記載の使用するための化合物。
【請求項22】
IDH変異がIDH2変異である、請求項19に記載の使用するための化合物。
【請求項23】
IDH2変異がIDH2 R140またはIDH2 R172変異である、請求項22に記載の使用するための化合物。
【請求項24】
XがNである、請求項19に記載の使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項25】
が-CH-シクロプロピルである、請求項19または24に記載の使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項26】
が-CHCHである、請求項19~25のいずれか1項に記載の使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項27】
化合物が:
7-[[(1S)-1-[4-[(1R)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;もしくは
1-エチル-7-[[(1S)-1-[4-[1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン
である、請求項19に記載の使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項28】
化合物が:
【化6】
である、請求項19に記載の使用するための化合物またはその医薬的に許容される塩。
【請求項29】
第1の化合物が:
【化7】
である、請求項28に記載の使用するための化合物。
【請求項30】
癌が固形腫瘍癌である、請求項19~29のいずれか1項に記載の使用するための化合物。
【請求項31】
固形腫瘍癌が胆管癌、頭頸部癌、軟骨肉腫、肝細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、神経膠腫、神経膠芽腫、膀胱癌、結腸直腸癌、または肺癌である、請求項30に記載の使用するための化合物。
【請求項32】
固形腫瘍癌が胆管癌である、請求項31に記載の使用するための化合物。
【請求項33】
癌が血液悪性腫瘍である、請求項19~29のいずれか1項に記載の使用するための化合物。
【請求項34】
血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群 骨髄増殖性腫瘍、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、T細胞性急性リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、または原発性骨髄線維症である、請求項33に記載の使用するための化合物。
【請求項35】
血液悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である、請求項34に記載の使用するための化合物。
【請求項36】
Bcl-2阻害剤がベネトクラクス、オバトクラクス、ナビトクラクス、またはその医薬的に許容される塩からなる群から選択される、請求項19~35のいずれか1項に記載の使用するための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療のための、変異イソクエン酸脱水素酵素(IDH)阻害剤とBcl-2阻害剤での併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
IDHおよびIDH2は、イソクエン酸のα-ケトグルタル酸(α-KG)への変換を触媒し、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)をNADPHに還元する酵素である(Megias-Vericat J, et al., Blood Lymph. Cancer: Targets and Therapy 2019; 9: 19-32)。
【0003】
IDH1の新形態の(新規の)変異、例えばIDH1のアミノ酸残基R132での変異は、数種類の癌、例えば固形腫瘍癌および血液悪性腫瘍における腫瘍形成の一因となる(Badur MG, et al., Cell Reports 2018; 25: 1680)。IDH1変異は高レベルの2-ヒドロキシグルタラート(2-HG)の原因となって、細胞分化を阻害する可能性があり、変異IDH1の阻害剤は2-HGレベルを減少させ、細胞分化を促進する可能性がある(Molenaar RJ, et al., Oncogene 2018; 37: 1949-1960)。変異はIDH2、例えばアミノ酸残基R172、R140、およびR172にも生じる(Yang H, et al., Clin. Cancer. Res. 2012; 18: 5562-5571; Mondesir J, et al., J. Blood Med. 2016; 7: 171-180)。
【0004】
例えば、急性骨髄性白血病(AML)は、時間と共に治療の選択圧下でダイナミックに進化する前白血病性および白血病性クローンを含む多様な範囲の変異遺伝子および多クローン性のゲノム構造によって特徴づけられる(Bloomfield CD, et al., Blood Revs. 2018; 32: 416-425)。シタラビンとアントラサイクリン(“7+3”)による導入化学療法は、40年以上、新たにAMLと診断された対象に対する標準治療となっている。
【0005】
近年、AMLを治療するために5つのさらなる医薬が米国食品医薬品局に承認されている:ミドスタウリン、エナシデニブ、CPX-351、ゲムツズマブ・オゾガマイシン(Bloomfield CD, et al., Blood Revs. 2018; 32: 416-425)、およびイボシデニブ(Megias-Vericat J, et al., Blood Lymph. Cancer: Targets and Therapy 2019; 9: 19-32)である。AMLを患うおよそ60%~70%の成人が適切な導入療法後に完全寛解(CR)状態を達成することを期待することができ、AMLを患う成人の25%以上(CRを達成する患者の約45%)3年以上生存することを期待することができ、治癒できる可能性もある。
【0006】
しかしながら、IDH1耐性変異が7~14%のAML対象に観察され、付随する高2-HGレベルはエピジェネティックな過剰メチル化表現型および分化の遮断の原因となり得、白血病誘発の原因となり得る(Megias-Vericat J, et al., Blood Lymph. Cancer: Targets and Therapy 2019; 9: 19-3)。加えて、Flt3キナーゼの変異がおよそ3分の1のAML対象に観察されている(Lee HJ, et al., Oncotarget 2018; 9: 924-936).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、代替的な変異IDH関連癌治療に対する必要性が依然として存在する。
【0008】
特定の変異IDH1およびIDH2阻害剤がWO2018/111707A1に開示されており、例えば本明細書で「化合物A」として定義している化合物が開示されているが、この化合物はアロステリックな結合ポケット内で単一のシステイン(Cys269)を修飾する変異IDH1の共有結合性の阻害剤であり、該酵素を急速に不活性化し、α-KGレベルに影響することなく選択的に2-HG産生を阻害する(WO2018/111707A1)。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、癌を治療する方法であって、IDH変異を有するヒト癌対象に治療的有効量の
(a)第1の式I:
【化1】

[式中:
は-CHCH(CH、-CHCH、-CHCHOCH、または-CH-シクロプロピルであり;
は-CHまたは-CHCHであり;かつ
XはNまたはCHである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩;および
(b)Bcl-2阻害剤である第2の化合物またはその医薬的に許容される塩
を投与することを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1つの実施態様では、IDH変異はIDH1変異またはIDH2変異である。別の実施態様では、IDH変異はIDH1変異である。別の実施態様では、IDH1変異はIDH1 R132変異である。別の実施態様では、IDH1変異はR132H、R132C、R132G、R132L、またはR132Sである。別の実施態様では、IDH1 R132変異はR132Hである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Cである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Gである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Lである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Sである。
【0011】
別の実施態様では、IDH変異はIDH2変異である。別の実施態様では、IDH2変異はIDH2 R140変異またはIDH2 R172変異である。別の実施態様では、IDH2変異はR140変異である。別の実施態様では、R140変異はR140Q、R140L、またはR140Wである。別の実施態様では、IDH2変異はR172変異である。別の実施態様では、R172変異はR172K、R172M、R172G、R172S、またはR172Wである。
【0012】
本発明の方法の1つの実施態様では、第1の式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩において、XはNである。
【0013】
別の実施態様では、第1の式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩において、XはNであり、Rは-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rは-CHCHである。別の実施態様では、第1の式Iの化合物において、XはNであり、Rは-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rは-CHCHである。
【0014】
別の実施態様では、第1の化合物は:
7-[[(1S)-1-[4-[(1R)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;もしくは
1-エチル-7-[[(1S)-1-[4-[1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン
またはその医薬的に許容される塩である。
【0015】
別の実施態様では、第1の化合物は7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オンである。
【0016】
別の実施態様では、第1の化合物は:
【化2】
化合物A
またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、第1の化合物は化合物Aである。
【0017】
別の実施態様では、対象はIDH変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象は組織内にIDH変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象はIDH1変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象はIDH2変異を有していると同定されている。
【0018】
別の実施態様では、対象はR132 IDH1変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象は組織内にR132 IDH1変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象はIDH2変異、例えばIDH2 R172、R140、またはR172変異を有していると同定されている。別の実施態様では、対象は組織内にIDH2 R172、R140、またはR172変異を有していると同定されている。
【0019】
別の実施態様では、癌は血液悪性腫瘍であり、かつ、対象は血液、骨髄、リンパ節、またはリンパ液内にIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有していると同定されている。別の実施態様では、対象は血液細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、またはリンパ液細胞内にIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有していると同定されている。
【0020】
別の実施態様では、癌は固形腫瘍癌であり、かつ、対象は固形腫瘍組織内にIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有していると同定されている。別の実施態様では、対象は固形腫瘍組織細胞内にIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有していると同定されている。
【0021】
別の実施態様では、第1の化合物またはその医薬的に許容される塩は、第2の化合物またはその医薬的に許容される塩の前に投与される。
【0022】
別の実施態様では、第1の化合物またはその医薬的に許容される塩は、第2の化合物またはその医薬的に許容される塩の後に投与される。
【0023】
別の実施態様では、第1の化合物またはその医薬的に許容される塩は、第2の化合物またはその医薬的に許容される塩と共に製剤化される。
【0024】
本発明の方法の別の実施態様では、癌は固形腫瘍癌である。別の実施態様では、固形腫瘍癌は胆管癌、頭頸部癌、軟骨肉腫、肝細胞癌、メラノーマ、膵臓癌、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、神経膠腫、神経膠芽腫、膀胱癌、結腸直腸癌、肺癌、または副鼻腔未分化癌である。別の実施態様では、肺癌は非小細胞肺癌である。別の実施態様では、固形腫瘍癌は胆管癌である。
【0025】
別の実施態様では、癌が血液悪性腫瘍である。別の実施態様では、血液悪性腫瘍は急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群 骨髄増殖性腫瘍、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、T細胞性急性リンパ芽球性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、原発性骨髄線維症、または慢性骨髄性白血病である。別の実施態様では、血液悪性腫瘍は急性骨髄性白血病である。
【0026】
本発明は、血液細胞、骨髄細胞、または血液および骨髄細胞にIDH変異を有するヒト対象における癌の治療において、Bcl-2阻害剤またはその医薬的に許容される塩と組み合わせて使用するための、式I:
【化3】

[式中:
は-CHCH(CH、-CHCH、-CHCHOCH、または-CH-シクロプロピルであり;
は-CHまたは-CHCHであり;かつ
XはNまたはCHである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩も提供する。
【0027】
1つの実施態様では、IDH変異はIDH1変異またはIDH2変異である。別の実施態様では、IDH変異はIDH1変異である。別の実施態様では、IDH1変異はIDH1 R132変異である。別の実施態様では、IDH1変異はR132H、R132C、R132G、R132L、またはR132Sである。別の実施態様では、IDH1 R132変異はR132Hである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Cである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Gである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Lである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Sである。
【0028】
別の実施態様では、IDH変異はIDH2変異である。別の実施態様では、IDH2変異はIDH2 R140変異またはIDH2 R172変異である。別の実施態様では、IDH2変異はR140変異である。別の実施態様では、R140変異はR140Q、R140L、またはR140Wである。別の実施態様では、IDH2変異はR172変異である。別の実施態様では、R172変異はR172K、R172M、R172G、R172S、またはR172Wである。
【0029】
1つの実施態様では、対象はIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有していると同定されている。
【0030】
1つの実施態様では、使用するための化合物は、XがNである式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、使用するための化合物は、Rが-CH-シクロプロピルである式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、使用するための化合物は、Rが-CHCHである式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、使用するための化合物は、XがNであり、Rが-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rが-CHCHである式Iの化合物またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、化合物は、XがNであり、Rが-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rが-CHCHである式Iの化合物である。
【0031】
別の実施態様では、化合物は:
7-[[(1S)-1-[4-[(1R)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;もしくは
1-エチル-7-[[(1S)-1-[4-[1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン
またはその医薬的に許容される塩である。
【0032】
別の実施態様では、化合物は7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オンまたはその医薬的に許容される塩である。
【0033】
別の実施態様では、化合物は:
【化4】
(化合物A)、またはその医薬的に許容される塩である。
【0034】
別の実施態様では、化合物は化合物Aである。
【0035】
癌を治療するための、式Iの化合物とBcl-2阻害剤を組み合わせて使用するための新規の方法が本明細書で提供される。従って、本発明のいくつかの態様は、癌の治療において、Bcl-2阻害剤との同時の、別々の、または連続的な組み合わせに使用するための式Iの化合物を提供する。さらに、本発明のいくつかの態様は、固形腫瘍癌の治療において、Bcl-2阻害剤との同時の、別々の、または連続的な組み合わせに使用するための式Iの化合物を提供する。加えて、本発明のいくつかの態様は、血液悪性腫瘍の治療において、Bcl-2阻害剤との同時の、別々の、または連続的な組み合わせに使用するための式Iの化合物を提供する。
【0036】
本発明は、血液細胞、骨髄細胞、リンパ節、またはリンパ液内にIDH変異を有するヒト対象における癌の治療に使用するための、式Iの化合物を含む医薬組成物も提供する。
【0037】
1つの実施態様では、IDH変異はIDH1変異またはIDH2変異である。別の実施態様では、IDH変異はIDH1変異である。別の実施態様では、IDH1変異はIDH1 R132変異である。別の実施態様では、IDH1変異はR132H、R132C、R132G、R132L、またはR132Sである。別の実施態様では、IDH1 R132変異はR132Hである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Cである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Gである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Lである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Sである。
【0038】
別の実施態様では、IDH変異はIDH2変異である。別の実施態様では、IDH2変異はIDH2 R140変異またはIDH2 R172変異である。別の実施態様では、IDH2変異はR140変異である。別の実施態様では、R140変異はR140Q、R140L、またはR140Wである。別の実施態様では、IDH2変異はR172変異である。別の実施態様では、R172変異はR172K、R172M、R172G、R172S、またはR172Wである。
【0039】
本発明は、血液、骨髄、リンパ節、リンパ液、血液細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、またはリンパ液細胞内にIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、またはIDH2 R172、R140、もしくはR172変異)を有すると同定されているヒト対象における癌の治療のための医薬の製造における、式Iの化合物の使用も提供する。
【0040】
本発明の方法の1つの実施態様では、癌は最前線の癌である。別の実施態様では、最前線の癌は固形腫瘍癌である。別の実施態様では、最前線の癌は血液悪性腫瘍である。別の実施態様では、最前線の血液悪性腫瘍は最前線のAMLである。
【0041】
本発明の方法の別の実施態様では、癌は再発癌である。別の実施態様では、再発癌は固形腫瘍癌である。別の実施態様では、再発癌は血液悪性腫瘍である。別の実施態様では、再発血液悪性腫瘍は再発AMLである。
【0042】
本発明の方法の別の実施態様では、癌は難治性癌である。別の実施態様では、難治性癌は固形腫瘍癌である。別の実施態様では、難治性癌は血液悪性腫瘍である。別の実施態様では、難治性血液悪性腫瘍は難治性AMLである。
【0043】
本発明の方法の別の実施態様では、癌は進行癌である。別の実施態様では、進行癌は進行固形腫瘍癌である。別の実施態様では、進行癌は進行血液悪性腫瘍である。別の実施態様では、進行血液悪性腫瘍は進行AMLである。
【0044】
別の実施態様では、AMLは急性前骨髄球性白血病である。
【0045】
本発明の方法の1つの実施態様では、Bcl-2阻害剤はベネトクラクス、オバトクラクス、ナビトクラクス、またはそれらのいずれか1つの医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、Bcl-2阻害剤はベネトクラクスまたはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、Bcl-2阻害剤はベネトクラクスである。
【0046】
本発明は、
(a)第1の式I:
【化5】

[式中:
は-CHCH(CH、-CHCH、-CHCHOCH、または-CH-シクロプロピルであり;
は-CHまたは-CHCHであり;かつ
XはNまたはCHである]
の化合物またはその医薬的に許容される塩;および
(b)Bcl-2阻害剤である第2の化合物またはその医薬的に許容される塩
での治療のためのヒト対象を同定する方法であって、
癌を有するヒト対象を同定すること;および
ヒト対象が血液、骨髄、リンパ節、リンパ液、血液細胞、骨髄細胞、リンパ節細胞、リンパ液細胞、または固体組織内にIDH変異を有するかどうかを決定すること
を含む方法であり、
対象が癌を有する方法も提供する。
【0047】
1つの実施態様では、IDH変異はIDH1変異またはIDH2変異である。別の実施態様では、IDH変異はIDH1変異である。別の実施態様では、IDH1変異はIDH1 R132変異である。別の実施態様では、IDH1変異はR132H、R132C、R132G、R132L、またはR132Sである。別の実施態様では、IDH1 R132変異はR132Hである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Cである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Gである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Lである。別の実施態様では、IDH1変異はR132Sである。
【0048】
別の実施態様では、IDH変異はIDH2変異である。別の実施態様では、IDH2変異はIDH2 R140変異またはIDH2 R172変異である。別の実施態様では、IDH2変異はR140変異である。別の実施態様では、R140変異はR140Q、R140L、またはR140Wである。別の実施態様では、IDH2変異はR172変異である。別の実施態様では、R172変異はR172K、R172M、R172G、R172S、またはR172Wである。
【0049】
治療のためのヒト癌対象を同定する本発明の方法の1つの実施態様では、第1の式Iの化合物において、XはNであり、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、第1の式Iの化合物において、XはNであり、Rは-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rは-CHCHであり、またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、第1の化合物において、XはNであり、Rは-CH-シクロプロピルであり、かつ、Rは-CHCHである。
【0050】
治療のためのヒト癌対象を同定する方法の別の実施態様では、第1の化合物は:
7-[[(1S)-1-[4-[(1R)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;
7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン;もしくは
1-エチル-7-[[(1S)-1-[4-[1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)プロピル]フェニル]エチル]アミノ]-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オン
またはその医薬的に許容される塩である。
【0051】
別の実施態様では、第1の化合物は7-[[(1S)-1-[4-[(1S)-2-シクロプロピル-1-(4-プロプ-2-エノイルピペラジン-1-イル)エチル]フェニル]エチル]アミノ]-1-エチル-4H-ピリミド[4,5-d][1,3]オキサジン-2-オンである。
【0052】
別の実施態様では、第1の化合物は:
【化6】
(化合物A)またはその医薬的に許容される塩である。別の実施態様では、第1の化合物は化合物Aである。
【0053】
変異IDH1およびIDH2酵素活性をアッセイする方法は当業者に知られており、例えばWO2018/111707A1に記載されている。
【0054】
上記および本発明の記載を通して用いられている通り、下記の用語は、特段の記載がない限り、下記の意味を有すると理解されなければならない。
【0055】
用語「血液組織」は、血液、骨髄、脾臓、リンパ節、またはリンパ液を指す。
【0056】
用語「固形腫瘍組織」は、血液組織ではない組織を指す。固体組織の非限定的例は、胆管組織、膵臓組織、頭部組織、頸部組織、肝臓組織、皮膚組織、星状細胞組織、乏突起膠細胞組織、神経膠組織、脳組織、膀胱組織、結腸直腸組織、および肺組織である。
【0057】
本明細書で用いられている「Bcl-2阻害剤」は、Bcl-2と結合し、癌細胞における細胞毒性、癌細胞におけるBcl-2発現の下方制御、癌細胞におけるミトコンドリア機能障害、および癌細胞におけるアポトーシスの1つ以上をもたらす化合物である。その効果を決定する方法は当業者に知られており、例えばWen M, et al., Front. Pharmacol. 2019; 10: 391に記載されている。
【0058】
用語「変異IDH阻害剤」は、変異IDH酵素(例えば、変異IDH1酵素または変異IDH2酵素)による2-HGの酵素活性および/または産生を阻害する化合物を指す。変異IDH1および変異IDH2酵素活性をアッセイする方法は当業者に知られており、例えばWO2018/111707A1に記載されている。用語「変異IDH阻害剤」において、単語「変異」は、IDH遺伝子を指し、阻害剤を指すものではない。
【0059】
用語「固形腫瘍癌」は、癌が血液または骨髄ではない組織に由来することを意味する。
【0060】
用語「血液悪性腫瘍」は、血液、骨髄、リンパ節、またはリンパ液に由来する癌に関する。
【0061】
用語「最前線の癌(frontline cancer)」は、治療対象の癌について、ヒト癌対象がこれまでに治療されていないことを意味する。
【0062】
用語「難治性癌」は、治療はされたが、ヒト癌対象が治療に反応しなかった癌を指す。
【0063】
用語「再発癌」は、ヒト癌対象が一定期間治療に反応したが、癌が再発したことを意味する。
【0064】
用語「進行癌」は、リンパ節または癌の起点以外の他の組織に転移した癌を指す。例えば、AMLは血液または骨髄以外の組織に転移したAMLである。
【0065】
用語「癌対象」は、癌と診断された対象を意味する。
【0066】
用語「固形腫瘍対象」は、固形腫瘍癌と診断された対象を意味する。1つの実施態様では、固形腫瘍癌は胆管癌である。
【0067】
用語「血液悪性腫瘍対象」は、血液悪性腫瘍と診断された対象を意味する。1つの実施態様では、血液悪性腫瘍対象はAML対象である。用語「AML対象」は、AMLと診断された対象を意味する。AMLを診断する方法は当業者に知られており、例えばDohner H, et al., Blood 2017; 129: 424-447に記載されている.
【0068】
用語「急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)」、「急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)」、および「急性非リンパ性白血病」は同義語である。
【0069】
血液悪性腫瘍(例えば、AML)治療に対する反応性」には、全生存の改善、治療に対する部分反応、長期にわたる安定した疾患の改善、または完全寛解(骨髄中5%未満の骨髄芽球もしくは循環芽球の欠如で決定される)もしくは血液学的回復(赤血球輸血を必要とせず、末梢血好中球絶対数が1,000細胞/μLを超え、血小板数が100,000/μLを超え、髄外疾患がないことで証明される)を特徴とする長期生存の改善を含む(Bloomfield CD, et al., Blood Revs. 2018; 32: 416-425).
【0070】
用語「IDH1 R132変異」は「R132 IDH1変異」と同義語であり、例えば対象の核酸(例えば、DNA)において決定される対象のIDH1遺伝子のアミノ酸残基132でのIDH1変異を指す。
【0071】
用語「IDH変異を有すると同定されている」は、ヒト対象の組織または細胞由来の核酸(例えば、DNA)が、ヒト対象がIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、IDH2R140変異、またはIDH2 R172変異)を有するかどうかを決定するために分析されていることを意味する。1つの実施態様では、ヒト対象の血液、血液細胞、骨髄、骨髄細胞、リンパ節、リンパ節細胞、リンパ液、またはリンパ液細胞がIDH変異について分析されている。別の実施態様では、ヒト対象の固体組織がIDH変異について分析されている。別の実施態様では、ヒト対象の固体組織がIDH変異について分析されている。
【0072】
本発明の方法において、ヒト対象がIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、IDH2R140変異、またはIDH2 R172変異)を有すると同定する当事者は、第1および第2の化合物を投与する当事者と異なっていてもよい。1つの実施態様では、ヒト対象がIDH変異(例えば、IDH1 R132変異、IDH2R140変異、またはIDH2 R172変異)を有すると同定する当事者は、第1および第2の化合物を投与する当事者と異なっている。
【0073】
遺伝子変異を同定する分析方法は当業者に知られており(Clark, O., et al., Clin. Cancer. Res. 2016; 22: 1837-42)、例えば限定されるものではないが、染色体分析(Guller JL, et al., J. Mol. Diagn. 2010; 12: 3-16)、蛍光in situハイブリダイゼーション (Yeung DT, et al., Pathology 2011; 43: 566-579)、サンガー配列決定(Lutha, R et al., Haematologica 2014; 99: 465-473)、代謝プロファイリング(Miyata S, et al., Scientific Reports 2019; 9: 9787)、ポリメラーゼ連鎖反応(Ziai, JM and AJ Siddon, Am. J. Clin. Pathol. 2015; 144: 539-554)、および次世代配列決定(例えば、全トランスクリプトーム配列決定)(Lutha, R et al., Haematologica 2014; 99: 465-473;およびWang H-Y, et al., J. Exp. Clin. Cancer Res. 2016; 35: 86)が含まれる。
【0074】
用語「と組み合わせて」は、癌の治療において、式Iの化合物がBcl-2阻害剤と同時に、別々に、または連続的に組み合わせで使用されているか、または使用されることを意味する。
【0075】
用語「治療」、「治療する」、および「治療すること」等とは、癌の進行を遅らせる、防ぐ、または止めることを含むことを意味する。これらの用語はまた、癌が実際に排除されない場合であっても、および癌の進行自体を遅らせる、防ぐ、または止めていなくても、障害または状態の1つ以上の症状を緩和、改善、減弱、排除、または軽減することを含む。
【0076】
「治療的有効量」は、対象に対する生物学的もしくは医学的反応または所望の治療効果を誘発する、対象に投与される化合物またはその医薬的に許容される塩の量を意味する。治療的有効量は、当業者として担当臨床医により、既知の技術を使用して類似の状況下で得られた結果を観察することによって容易に決定することができる。対象に対する有効量を決定する際に、担当臨床医は、対象の体格、年齢および一般的な健康状態、関与する特定の疾患または障害、疾患または障害の程度や関与または重症度、個々の対象の反応、投与された特定の化合物、投与方法、投与された製剤のバイオアベイラビリティ特性、選択された用法、併用薬の使用、およびその他の関連する状況を含むがこれらに限定されない多数の要因を考慮する。
【0077】
本発明の方法で投与される化合物は、経口、静脈内、経皮経路を含む、化合物を生物学的に利用可能にするいずれかの経路によって投与される医薬組成物として任意に製剤化することができる。1つの実施態様では、そのような組成物は経口投与用に製剤化される。そのような医薬組成物およびその調製方法は、当該技術分野において周知である。(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (D.B. Troy, Editor, 21st Edition, Lippincott, Williams & Wilkins, 2006)を参照のこと)。
【0078】
「医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤」は、哺乳動物、例えばヒトへの生物学的活性剤の送達のために当該技術分野で一般的に受け入れられている媒体である。
【0079】
当業者には、本発明の方法で投与される化合物が塩を形成することができることが理解されよう。化合物は、多数の無機酸および有機酸のいずれかと反応して、医薬的に許容される酸付加塩を形成する。そのような医薬的に許容される酸付加塩およびそれらを調製するための一般的な方法論は、当該技術分野において周知である。例えば、P. Stahl, et al., HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS: PROPERTIES, SELECTION AND USE, (VCHA/Wiley-VCH, 2008)を参照のこと。
【0080】
「医薬的に許容される塩類」または「医薬的に許容される塩」は、本発明の化合物類の比較的無毒な無機および有機塩または塩類を指す(S.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts”, Journal of Pharmaceutical Sciences, Vol 66, No. 1, January 1977)。
【実施例
【0081】
材料および方法
2-HG阻害アッセイ
細胞株構成
MOLM14野生型ヒト白血病細胞およびMOLM14_R132コンストラクト細胞株は、IDH1 WT(ドキシサイクリン誘導性) pSLIK-IDH1-FLAG(Addgeneプラスミド #66802)およびIDH1 R132H(ドキシサイクリン誘導性) pSLIK-IDH1-R132H-FLAG(Addgeneプラスミド #66803)を用いてMOLM14細胞のレンチウイルストランスフェクションによって作成し、ジャン-エマヌエル・サリー博士(トゥールーズ癌研究センター(Centre de Recherches en Cancerologie de Toulouse), UMR1037, Inserm, トゥールーズ第3ポール・サバティエ大学(Universite de Toulouse 3 Paul Sabatier, Toulouse), フランス; bioRxiv 749580; doi.org/10.1101/749580)の厚意によって提供される。MOLM14-WTおよびMOLM14-R132変異細胞は、10%FBS(シグマ社)および1xPen/Strep(シグマ社)を含有する5mLの完全RPMI培地内の6ウェルプレートに播種される(1x10/ウェル)。2μg/mlのドキシサイクリンと共にインキュベーションした後、細胞を37℃で4日間インキュベートする。
【0082】
細胞を12ウェルプレート(100,000細胞/ウェル)に1mLにて3連で播種する。細胞を2μg/mlのドキシサイクリンで処理してIDH1発現を誘導し、次いでDMSO、または0.1もしくは1μMの化合物Aで処理し、37℃で4日間インキュベートする。
【0083】
65μLの培地を収集および遠心分離し、60μLの上清培地を収集し、-80℃で凍結する。
【0084】
LCMS 2-HG代謝物分析.
全2-HGおよび(α-KG)の濃度に対するIDH1阻害の効果は、細胞培養上清の液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)分析によって決定される。2-HGとα-KGを細胞培養培地にスパイクすることにより、検量線を作成する。この方法は、LC-MSによる分析の前にO-ベンジルヒドロキシルアミンによる誘導体化を利用する。10μLの各標準物質またはサンプルをディープウェル96ウェルプレートに入れ、10μM d5-2-ヒドロキシグルタラートおよび10μM d6-α-KGを含有する100μLの内部標準液と合わせる。ピリジンバッファー(8.6%ピリジン、pH5)中の50μLの1MO-ベンジルヒドロキシルアミンおよびピリジンバッファー中の50μLの1M N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)を各サンプルに加える。誘導体化反応は室温で1時間進行させる。ベックマンバイオメックFXリキッドハンドラーを使用して、300μLの酢酸エチルを各サンプルに加える。プレートを密閉し、5分間ボルテックスした後、エッペンドルフ5810R遠心分離機で4000rpmにて5分間遠心分離する。上層の220μLを新しい96ウェルプレートに移す。サンプルを50℃の加熱窒素下で乾燥させ、100μLのメタノール/水(1:1)で戻す。1μLの誘導体化サンプルを、島津製作所のProminence 20A HPLCシステムとThermo Quantum Ultra(商標)トリプル四重極質量分析計からなるLC-MSシステムに注入する。分析対象物は、0.6mL/分の流速でWater XBridge(商標)C18カラム(2.1×50mm、3.5μm)に分離される。移動相Aは水中の0.1%ギ酸であり、移動相Bはメタノールである。勾配プロファイルは、0分、5% B;2分、100% B;4.00分、100% B;4.1分、5% B; 5.50分、そして停止である。質量分析計は、陽イオン選択反応モニタリングモードで動作するHESI-IIプローブを利用する。検量線は、分析物濃度vs.分析物/内部標準ピーク面積比をプロットし、Xcalibur(商標)ソフトウェアで1/濃度重み付けを使用してデータの二次適合を実行することによって作成される。未知物質の分析物濃度は、検量線から逆算する。
【0085】
本質的に上記の通り実施した実験において、表1の結果が得られる。
【表1】
【0086】
表1の結果は、MOLM14_R132細胞株コンストラクトにおいて、化合物Aが変異IDH1による2-HG産生を阻害することを立証している。
【0087】
細胞生存率アッセイ
MOLM14野生型およびMOLM14_R132細胞を2μg/mlのドキシサイクリンで処理してIDH1 WTおよびIDH1-R132Hの発現を誘導し、次いで37℃で4日間インキュベートする。細胞を2μg/mLのドキシサイクリンを含有する1mLの増殖培地中の4(12ウェル)プレートに10,000細胞/ウェルで播種する。
【0088】
以下に記載の通り、DMSO(3連で)、または0、125、250、500、もしくは1000nMの化合物A(各3連で)で細胞を処理する:上記の最初のインキュベーション後、1xドキシサイクリン+1x化合物AまたはDMSOを含む0.5mLの培地を加え、3日間インキュベートする。3日後、1Xドキシサイクリン+1X化合物AまたはDMSOを含む別の0.5mL分量の新鮮な培地を加え、さらに3日間インキュベートする。次いで、ベネトクラクス(0、25、50、100、または200nM)を単剤として、または1X化合物Aと組み合わせて加えた。2日後、フローサイトメトリー濾過チューブ内で細胞を収集し、およびフローサイトメトリー用に処理する。アネキシンVバインディングバッファー(ABB、2mL)[1M Hepesバッファー(10mL)、5M NaCl(28mL)、1M CaCl(5mL)、HO(957mL)]で細胞を洗浄し、次いで1500rpmで5分間遠心分離する。細胞をABB(50μL)で染色し、APCアネキシンV抗体 (1μL、バイオレジェンド社 カタログ番号640941)で染色し、および20分間暗闇状態に置いた。ABB(2mL)で細胞を洗浄し、1500rpmで5分間遠心分離した。DAPI(インビトロジェン社 カタログ番号D3571)およびカウンティングビーズ(インビトロジェン社 カタログ番号C36950)をアネキシンVバインディングバッファーに加え[DAPI(5μL、2g/mL)+カウンティングビーズ(5μL(520,000ビーズ/50μL))+ABB(150μL)]、全容量160μL/チューブとなるようにし、次いでGalliosフローサイトメーター(ベックマン・コールター社)で分析される。カウンティングビーズが250ビーズ/サンプルに達したときに細胞収集を停止する。分析にKalusaソフトウェアを用いる。ゲートされた(gated)アネキシンVネガティブ/DAPIネガティブ細胞のパーセンテージは%生存細胞を構成し、一方アネキシンVポジティブ細胞のパーセンテージは%アポトーシスを構成する。
【0089】
本質的に上記の通り実施した実験において、表2A~2Cおよび3の結果が得られる。
【表2】
【0090】
表2A~2Cの結果は、いずれかの化合物単独で処理し細胞の白血病細胞生存率のレベルと比較して、ベネトクラクスと化合物Aの組み合わせが白血病細胞生存率のさらなる減少をもたらすことを立証している。
【表3】
【0091】
表3の結果は、それぞれの化合物単独で処理した細胞のアポトーシスレベルと比較して、ベネトクラクスと化合物Aの組み合わせが白血病細胞のアポトーシスレベルの増加をもたらすことを立証している。
【0092】
AML-PDXモデル
オスのNSGマウス(6~9週齢、ジャクソン・ラボラトリー社)に250cGyを照射し、翌日、AML-PDX(1x10細胞/100μL)を静脈内注射した。後眼窩経路で末梢血液を収集し、処理し、フローサイトメトリーによってhCD45+細胞を測定し、白血病の発症を確認する。
【0093】
白血病の生着1%を超えると、マウスをビヒクルでの処理群、化合物A(10mg/kg、毎日の強制経口投与)での処理群、ベネトクラクス(50mg/kg、2週間強制経口投与し、1週間休薬する(2サイクル))での処理群、またはベネトクラクス(50mg/kg、2週間強制経口投与し、1週間休薬する(2サイクル))と化合物A(10mg/kg、毎日の強制経口投与)の組み合わせでの処理群にランダムにグループ分けする。6週間の治療後に残っている残存疾患のレベルの評価に基づいて、上記の2サイクルを超えて付加的な投薬を利用してもよい。
【0094】
後眼窩経路で2週間に1回末梢血液を収集し、処理し、フローサイトメトリーによって白血病負荷(%hCD33+/hCD45+細胞)を測定し、分化(全hCD45+細胞の中の%hCD14+細胞パーセンテージ)を測定する。65μLの染色/洗浄バッファー(DPBS中の5%熱失活(HI)-FBS)をチューブ毎に加え、3~4回ピペットで上下に混合し、100μLの血液懸濁液を5mLのポリプロピレンチューブに移す。製造者の使用説明書に従って染色を加える(抗ヒトCD33-APC(BDバイオサイエンス社 カタログ番号551378)、抗ヒトCD14-PE-Cy7(BDバイオサイエンス社 カタログ番号557742)、および抗ヒトCD45-APC-Cy7(BDバイオサイエンス社 カタログ番号557833))。サンプルを室温で30分間インキュベートし、光から保護する。インキュベーション後、1.5mLの1XBD Lyse/Fixバッファー(37℃、(BD#558049))を各サンプルに加え、室温で12分間インキュベートする。次いでチューブを1500RPMIで5分間遠心分離する。BD Lyse/Fix溶液を吸引し、細胞ペレットを染色/洗浄バッファーで2回洗浄する。次いで固定細胞を200μLの染色/洗浄バッファーに再懸濁し、次いで濾過フローチューブに移す。標準的なフローサイトメトリーの原理および技術を用いて、サンプルをGalliosフローサイトメーター(ベックマン社、テキサス)で分析する。集団ゲーティング(Population gating)およびパーセント集団のデータ分析は、Flow Joソフトウェアで実施する。
【0095】
本質的に上記の通り実施した実験において、表4および5の結果が得られる。
【表4】
【表5】
【0096】
表4および5の結果は、ベネトクラクスと化合物Aの組み合わせはAML細胞分化レベルの増加をもたらさないが、該組み合わせはいずれかの化合物単独を用いて得られた白血病負荷と比較して白血病負荷の低下をもたらすことを立証しており、白血病負荷を減少することは関連する臨床的エンドポイントである。
【国際調査報告】