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特表2023-520343アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞
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  • 特表-アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞 図1
  • 特表-アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞 図2A
  • 特表-アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞 図2B
  • 特表-アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞 図2C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】アスペルギルス症を処置するためのキメラ抗原受容体ポリペプチド及び関連する免疫調節細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230510BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20230510BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230510BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230510BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230510BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20230510BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230510BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20230510BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20230510BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/31 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K19/00
C07K16/08
C07K14/725
A61P11/00
A61P35/00
A61P37/08
A61P11/06
A61K35/17
A61K35/15
A61K35/545
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557902
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 US2021023658
(87)【国際公開番号】W WO2021195069
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】16/826,681
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519080539
【氏名又は名称】アタラ バイオセラピューティクス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】511044113
【氏名又は名称】ザ ガバナーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ アルバータ
(71)【出願人】
【識別番号】510303442
【氏名又は名称】ザ ロイヤル インスティテューション フォー ザ アドバンスメント オブ ラーニング/マクギル ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アフタブ,ブレイク,トル
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ,ベンジャミン アルフレッド ウィリアム,ルーファス
(72)【発明者】
【氏名】シェパード,ドナルド,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ロワリー,トッド,ランバート
(72)【発明者】
【氏名】サルカール,サスミタ
(72)【発明者】
【氏名】カリル,アミラ イブラヒム アリー モハメド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB13
4C084ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZB13
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
哺乳動物におけるアスペルギルス関連疾患及び障害、好ましくはアスペルギルス感染に関連する疾患及び障害の標的化処置のための組成物及び方法が開示される。特に、アスペルギルスを標的とし殺傷する、養子細胞移入と共に使用することができるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞が開示される。したがって、開示される抗アスペルギルスエピトープCAR T細胞の養子移入を伴う、アスペルギルス関連疾患又は障害を患う対象に抗アスペルギルス免疫をもたらす方法もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗原結合ドメインがASP抗原に結合する、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項3】
前記抗原結合ドメインが、配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項5】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項6】
前記抗原結合ドメインが、配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインが、配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項8】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項9】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項10】
前記抗原結合ドメインが、配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項11】
前記抗原結合ドメインが、配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項12】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項14】
前記抗原結合ドメインが、配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項15】
前記抗原結合ドメインが、配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項16】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項17】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項18】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、ガラクトフラノースを含有するオリゴ糖である、請求項1から17のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項19】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、ガラクトフラノース残基の単糖、二糖、三糖、又は四糖である、請求項1から18のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項20】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、以下の構造:
【化1】
を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項21】
膜貫通ドメインが膜貫通又は膜結合ポリペプチドに由来する、請求項1から20のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項22】
膜貫通ドメインがCD28及び/又は41BBの膜貫通ドメインを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項23】
細胞内シグナル伝達ドメインが、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを少なくとも1つ含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項24】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項25】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、CD28又はその変異体のシグナル伝達ドメインを含む、請求項24に記載のCARポリペプチド。
【請求項26】
CD28シグナル伝達ドメインが、サブドメインYMNM、PRRP、PYAP、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つに少なくとも1つ以上の変異を含む、請求項25に記載のCARポリペプチド。
【請求項27】
CD28シグナル伝達ドメインが、サブドメインYMNM、PRRP、又はPYAPのうちのいずれか1つを欠く、請求項25又は26に記載のCARポリペプチド。
【請求項28】
CD28シグナル伝達ドメインが、YMNM、PRRP、及びPYAPから選択されるサブドメインのうちのいずれか2つを欠く、請求項25から27のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項29】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、41BBのシグナル伝達ドメイン又はその変異体を含む、請求項24から28のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項30】
細胞内シグナル伝達ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、天然CD3ζ又はその変異体を含む、請求項23から29のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項31】
変異型CD3ζが、機能的C末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を欠く、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項32】
変異型CD3ζが、2つの機能的C末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を欠く、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項33】
変異型CD3ζが、1つのみの機能的免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項34】
ヒンジ配列をさらに含む、請求項1から33のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項35】
ヒンジ配列がCD8a分子又はCD28分子に由来する、請求項34に記載のCARポリペプチド。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載のCARポリペプチドをコードする核酸。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸を含むベクター。
【請求項38】
請求項36に記載の核酸を含む細胞。
【請求項39】
請求項37に記載のベクターを含む細胞。
【請求項40】
請求項1から35のいずれか一項に記載のCARポリペプチドを発現する細胞。
【請求項41】
白血球である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項42】
リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、又は好酸球である、請求項38から41のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項43】
αβT細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、自然リンパ球(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、制御性T細胞、又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項38から42のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項44】
多能性幹細胞である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項45】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項46】
ウイルス抗原感作CTLである、請求項38から45のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項47】
エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス(BKV)、ジョンカニンガムウイルス(JCV)、ピコルナウイルス(例えばA型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、ヘパシウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(例えばD型肝炎ウイルス)、ヘペウイルス(例えばE型肝炎ウイルス)、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つに由来するウイルス抗原に感作されたCTLである、請求項46に記載の細胞。
【請求項48】
EBV感作CTLである、請求項46に記載の細胞。
【請求項49】
キメラ抗原受容体ポリペプチドの抗原結合ドメインがASP抗原に結合した場合、抗真菌効果を示す、請求項38から48のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項50】
投与されるヒト患者に対して同種である、請求項38から49のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項51】
投与されるヒト患者に対して自家である、請求項38から49のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項52】
それを必要とする哺乳動物におけるアスペルギルス関連疾患又は障害を処置する方法であって、有効量の請求項38から51のいずれか一項に記載のCAR発現細胞を哺乳動物に投与することを含み、それによって前記哺乳動物における前記疾患又は障害を有効に処置する、方法。
【請求項53】
アスペルギルス関連疾患又は障害が、肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、慢性肺アスペルギルス腫、アスペルギルス感作を有する重度の喘息、慢性空洞性肺アスペルギルス症、又は慢性線維性肺アスペルギルス症である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
哺乳動物に投与されるCAR発現細胞が、前記哺乳動物に対して自家である、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
哺乳動物に投与されるCAR発現細胞が、前記哺乳動物に対して同種である、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項56】
哺乳動物がヒトである、請求項52から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
CAR発現細胞がEBV感作CTLである、請求項52から56のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体が参照により組み込まれる、2020年3月23日に出願された米国特許出願第16/826,681号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
新規キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド、それらのCARポリペプチドを発現する免疫調節細胞、並びにアスペルギルス症を含むアスペルギルス関連疾患及び障害を処置するための関連する使用が、本明細書において提供される。
【背景技術】
【0003】
アスペルギルス(Aspergillus)の一部の種が広範な疾患の原因物質であることは公知である。例えば、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)は、高い死亡率に関連する侵襲性及び非侵襲性の肺感染症に関連している。特に免疫抑制患者は侵襲性肺アスペルギルス症を発症するリスクが高く、それは処置しなければ他の臓器に広まるおそれがある進行性の壊死性肺炎によって特徴付けられる疾患である。さらに、肺機能が低下した患者、例えば嚢胞性線維症を有する患者は、肺機能の減退、頻繁な入院、及び高い死亡率に関連する気道の慢性的な非侵襲性感染症を発症するリスクが高い。肺アスペルギルス症の両方の症状に対する現在の治療薬は、非侵襲性気道感染症を根絶することができず、侵襲性感染症を有する患者における奏効率も乏しいために、期待外れとなっている。したがって、アスペルギルス関連疾患及び障害の防止又は処置に有用な新規療法モダリティに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アスペルギルス関連疾患及び障害の防止又は処置に有用な新規療法モダリティに対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アスペルギルス関連疾患及び障害を処置するために、アスペルギルスによって発現される抗原(アスペルギルスに関連するガラクトフラノースのオリゴ糖の抗原等)をキメラ抗原受容体(CAR)発現T細胞の標的として使用することができるという発見に少なくとも部分的に基づいている。一部の態様では、アスペルギルス関連抗原を標的とするCARポリペプチドを発現する免疫細胞が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、アスペルギルス抗原標的ドメイン(例えば、ガラクトフラノース含有標的に結合する標的ドメイン)、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある特定の好ましい実施形態では、アスペルギルス抗原結合ドメインは、野生型及び/又は変異型アスペルギルス抗原を標的とする。好ましくは、標的ドメインは、任意のガラクトフラノース含有抗原実体を含み、これらとしては、限定されないが、多糖、例えば、Galf2、Galf3、又はGalf4が挙げられ、最も好ましくはGalf4が挙げられる。一部の実施形態では、アスペルギルス抗原は、アスペルギルス・フミガーツス又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)抗原であり、好ましくは、アスペルギルスフミガーツスの細胞壁(例えば、分生子の細胞壁又は菌糸の細胞壁)に発現される抗原である。一部の実施形態では、アスペルギルス抗原結合ドメインは一本鎖Fv抗体断片(scFv)である。
【0006】
本発明のある特定の実施形態は、抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗体結合ドメインがアスペルギルス関連抗原(「ASP」抗原)に結合する、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを対象とする。
【0007】
本発明のCARポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、及び/若しくは配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに/又は配列番号16、配列番号17、及び/若しくは配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列抗原結合ドメインを含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0008】
本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含むscFv抗体である抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0009】
他の実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、配列番号19、配列番号20、及び/若しくは配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに/又は配列番号22、配列番号23、及び/若しくは配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0010】
本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含むscFv抗体である抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、配列番号9を含むBR1可変重鎖配列若しくはその機能的断片、及び/又は配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列若しくはその機能的断片を含む抗原結合ドメインを含む。
【0012】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片、及び(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である抗原結合ドメインを含む。
【0013】
本発明のCARポリペプチドはまた、配列番号11を含むBR2可変重鎖配列若しくはその機能的断片、及び/又は配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列若しくはその機能的断片を含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0014】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドはまた、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、及び(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0015】
ある特定の実施形態では、CARポリペプチドは、Fv、F(ab')、及びF(ab')2からなる群から選択される抗体又はその機能的断片である抗原結合ドメインを含む。CARポリペプチドの抗原結合ドメインはまた、scFvであってもよい。一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、ガラクトフラノースのオリゴ糖に結合し、これは、一部の実施形態では、ガラクトフラノースの単糖、二糖、三糖、又は四糖であり得る。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、以下の構造:
【0016】
【化1】
を有するガラクトフラノースのオリゴ糖に結合する。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARの膜貫通ドメインは、膜貫通若しくは膜結合ポリペプチドに由来するか、又はCD28、41BB、それらの変異体、若しくはそれらの任意の組合せのうちのいずれかの膜貫通ドメインを少なくとも1つ含む。一部の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを少なくとも1つ含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域、例えば、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARは、変異体CD28共刺激ドメインを含む1つ以上の共刺激領域を含み、該変異体CD28共刺激ドメインは、その中にYMNM、PRRP、若しくはPYAPサブドメインのいずれかに1つ以上の変異を含むか、又はこれらのドメインの1つ以上の欠失を含む。他の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARは、変異体CD3ζ共刺激ドメインを含む1つ以上の共刺激領域を含み、該変異体CD3ζ共刺激ドメインは、その中にC末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)のいずれかに1つ以上の変異を含む。本明細書に開示されるCARは、ヒンジ領域を含んでもよい。
【0018】
一部の実施形態では、CARポリペプチドは、不完全な内部ドメイン(エンドドメイン)を含有する。例えば、CARポリペプチドは、細胞内シグナル伝達ドメイン又は共刺激ドメインのいずれかを含有し得るが、両方を含有することはない。これらの実施形態では、免疫エフェクター細胞は、免疫エフェクター細胞と欠損ドメインを含有する第2のCARポリペプチド(又は内因性T細胞受容体)との両方がそれぞれの抗原と結合しない限り活性化しない。したがって、一部の実施形態では、CARポリペプチドは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含有するが、共刺激シグナル伝達領域(CSR)を含有しない。他の実施形態では、CARポリペプチドは、CD28、41BB、若しくはそれらの変異体、又はそれらの組合せの細胞質ドメインを含有するが、CD3ζシグナル伝達ドメイン(SD)を含有しない。
【0019】
ある特定の態様ではまた、二重特異性CAR T細胞が本明細書において提供され、前記細胞は、アスペルギルス抗原(例えば、任意のガラクトフラノースのオリゴ糖を含有する抗原、Galf4抗原等)に選択的に結合する標的ドメインを含む第1のCARポリペプチド、及び別の異なる抗原に選択的に結合する標的ドメインを含む第2のCARポリペプチドを発現する。
【0020】
一部の態様では、開示されるCARポリペプチドをコードする単離核酸、及び発現制御配列と作動可能に連結した前記単離核酸を含有する核酸ベクターが、本明細書に開示される。加えて、これらのベクターをトランスフェクトされるか、若しくはそうでなければ開示される核酸を含む細胞、又は本明細書に開示されるCARポリペプチドを発現する細胞が、本明細書に開示される。網羅的なリストであることを意図するものではないが、細胞は、免疫エフェクター細胞、例えば、アルファ-ベータT細胞、ガンマ-デルタT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、自然リンパ球(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、又は制御性T細胞であり得る。本明細書に記載されるCARポリペプチドを発現する細胞はまた、多能性幹細胞、例えば誘導多能性幹細胞(iPSC)であってもよい。一部の実施形態では、CARの抗原結合ドメインがアスペルギルス関連抗原に結合する場合、細胞は、抗真菌免疫(例えば、真菌実体、例えばアスペルギルスに対する免疫応答を開始する)を呈する。ある特定の態様では、本発明のCARポリペプチドを発現する細胞は、1つ以上のウイルス抗原に感作されてもよい。そのようなウイルス感作細胞は、EBV関連抗原、CMV関連抗原、BKV関連抗原、及びJCV関連抗原の群から選択される1つ以上のウイルス抗原に感作される細胞傷害性T細胞であってもよく、したがって、そのようなウイルス抗原を認識し、結合する天然T細胞受容体を含む。本発明の細胞は、それらが投与される患者に対して自家又は同種であり得る。
【0021】
一部の態様では、それを必要とする哺乳動物におけるアスペルギルス関連疾患又は障害を防止(予防)又は処置(治療)する方法であって、本明細書に開示されるCAR発現細胞を含む有効量の養子免疫療法組成物を該哺乳動物に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。一部の実施形態では、防止又は処置されるアスペルギルス関連疾患又は障害は、肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、慢性肺アスペルギルス腫、アスペルギルス感作を有する重度の喘息、慢性空洞性肺アスペルギルス症、又は慢性線維性肺アスペルギルス症である。
【0022】
さらなる実施形態では、本発明は、アスペルギルス関連疾患又は障害の処置に有用な医薬品の調製における、本発明のCARポリペプチド、核酸、ベクター、及び/又はCAR発現細胞の使用を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】アスペルギルスGMを認識するワクチン接種マウスからのIgMモノクローナル抗体を示す図である。抗Galfモノクローナル抗体又はワクチン接種マウスからの抗体の野生型及びGM欠損(Δugm1)A.フミガーツスへの結合はAlexafluor 488抗マウスIgM二次抗体での間接免疫蛍光法によって検出し、菌糸をDraq5で対比染色した。
図2A】抗Galf IgMモノクローナル抗体がガラクトフラノースのオリゴ糖を認識することを示す図である。図2A~2Bは、示したBSA-Galf複合糖質のパネルを使用するELISAによって測定した場合に、抗Galf IgMモノクローナル抗体がガラクトフラノースのオリゴ糖を認識する(それによってBR1(図2A)及びBR2(図2B)抗体の特異性が示される)ことを示す。図2Cは、BR1及びBR2によって結合される最小エピトープの構造を示す。
図2B図2Aの続きである。
図2C図2Bの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細
本明細書に開示されるように、本発明は、アスペルギルス関連抗原(「ASP」抗原)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を組換え発現する免疫細胞に少なくとも部分的に関する。アスペルギルスの感染性/侵襲性のライフサイクルは、分生子と称される無性胞子の産生から始まる。それは空気中に分散し、吸入によって細気管支又は肺胞腔内に沈着する。マクロファージ殺傷を回避し、気道に定着した分生子は(例えば、免疫抑制された、リスクのある患者集団において)、発芽し、糸状菌糸の成長をもたらし、宿主の内皮へ侵入し、最終的には血流に到達して広がる。
【0025】
一部の好ましい実施形態では、ASP抗原は、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラバス(Aspergillus flavus)、アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・アスタス(Aspergillus ustus)、アスペルギルス・バージカラー(Aspergillus versicolor)、又はアスペルギルス・ニガーの細胞壁(例えば、分生子又は菌糸の細胞壁)に発現される抗原である。そのようなASP抗原として、これらに限定されないが、抗原多糖、例えば、任意のガラクトフラノース及び/又はガラクトフラノース含有分子が挙げられる。ガラクトフラノースは、多くの病原性原核生物及び真核生物の表面に存在する5員環型のガラクトースであり、その存在は、侵襲性アスペルギルス症を有する患者の体液中で検出されている。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書に開示される抗原は、アスペルギルスの細胞壁多糖、ガラクトマンナン(GM)、又はその断片のガラクトフラノース(Galf)側鎖を含み得る。好ましくは、抗原は、多糖、例えば、Galf2(2つのβ-1,5-又はβ-1,6-結合ガラクトフラノースサブユニットからなる)、Galf3(3つのβ-1,5-又はβ-1,6-結合ガラクトフラノースサブユニットからなる)、又はGalf4(4つのβ-1,5-又はβ-1,6-結合ガラクトフラノースサブユニットからなる)を含み(又はそれらであり)、より好ましくは、Galf4を含む(又はGalf4である)。最も好ましくは、CAR標的抗原は、サブユニットがβ-1,5-結合されたGalf4を含む(又はGalf4である)。一部の実施形態では、CARによって標的とされる抗原はGalF4であり、アスペルギルス関連疾患に関連する。好ましい実施形態では、ASPは、ASPに選択的に結合するキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現するように操作される免疫エフェクター細胞(すなわち、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、又は免疫エフェクター細胞、例えば細胞傷害性T細胞に分化することができる多能性幹細胞)によって標的とされる。
【0026】
ある特定の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインによって結合されるASPは、以下の構造:
【0027】
【化2】
を有する。
【0028】
T細胞療法の大きな進歩は、キメラ抗原受容体(CAR)の開発であった。第1世代CARは、T細胞によって発現する場合に、T細胞の標的を所定の疾患関連抗原(例えば、腫瘍、ウイルス、又は真菌関連抗原)に変更することができる人工受容体として開発された。そのようなCARは、典型的には、T細胞受容体(TCR)由来のシグナル伝達ドメイン、例えばCD3ζと融合した、標的特異的抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)を含む。抗原と結合すると、CARは、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)のリン酸化を惹起し、内因性抗原処理経路及びMHC拘束性を回避する細胞溶解、サイトカイン分泌、及び増殖に必要とされるシグナルカスケードを開始する。第2世代CAR設計には、活性化及び共刺激を増強するシグナル伝達ドメイン、例えばCD28及び/又は4-IBBがさらに含まれる。第2世代CARは、それ以前の対応物と比較して、より多くのIL-2分泌を誘導し、T細胞増殖及び持続性を高め、より大きな腫瘍拒絶を媒介し、T細胞生存期間を延長することが観察された。第3世代CARは、より強力なサイトカイン産生及び殺傷能に関する効力を増大するために複数のシグナル伝達ドメインを、例えばCD3ζ-CD28-OC40又はCD3ζ-CD28-4IBBのように組み合わせることによって作製される。
【0029】
定義
【0030】
「アミノ酸配列」という用語は、アミノ酸残基を表す略語、文字、符号、又は語の列挙を指す。本明細書で使用されるアミノ酸の略語は、アミノ酸の従来の一文字コードであり、次のように表現される:A、アラニン;B、アスパラギン又はアスパラギン酸;C、システイン;D アスパラギン酸;E、グルタメート、グルタミン酸;F、フェニルアラニン;G、グリシン;H ヒスチジン;I イソロイシン;K、リシン;L、ロイシン;M、メチオニン;N、アスパラギン;P、プロリン;Q、グルタミン;R、アルギニン;S、セリン;T、トレオニン;V、バリン;W、トリプトファン;Y、チロシン;Z、グルタミン又はグルタミン酸。
【0031】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン、特異的結合能を維持するその誘導体、及び免疫グロブリン結合ドメインと相同又は大部分相同である結合ドメインを有するタンパク質を指す。これらのタンパク質は、天然供給源に由来しても、部分又は全体が合成によって製造されてもよい。抗体は、モノクローナルであってもポリクローナルであってもよい。抗体は、任意の種由来の任意の免疫グロブリンクラス、例えばヒトクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEのいずれかのメンバーであってもよい。例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法及び組成物と共に使用される抗体は、抗Galf抗体であるクローンEB-A1、EB-A2、EB-A3、EB-A4、EB-A5、EB-A6、又はEB-A7である(Stynenら、Infect. Immun. 60(6):2237~2245ページ(1992)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。完全免疫グロブリン分子に加えて、免疫グロブリン分子のキメラ、断片、又はポリマー、及び標的抗原と選択的に結合する免疫グロブリン分子のヒト又はヒト化バージョンもまた、「抗体」という用語に含まれる。抗体は、本明細書で使用する場合、一本鎖可変断片抗体(scFv)であってもよい。
【0032】
「抗体断片」という用語は、全長未満の抗体の任意の誘導体を指す。例示的な実施形態では、抗体断片は、全長抗体の特異的結合能の重大な部分を少なくとも保持する。抗体断片の例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv、Fv、dsFv、ダイアボディ、Fc、及びFd断片が挙げられる。抗体断片はいかなる手段によって製造してもよい。例えば、抗体断片は、完全抗体の断片化によって酵素的又は化学的に製造されても、部分的抗体配列をコードする遺伝子から組換えによって製造されても、全体又は部分が合成によって製造されてもよい。任意選択で、抗体断片は一本鎖抗体断片であってもよい。或いは、断片は、例えばジスルフィド結合によって一緒に連結する複数の鎖を含んでもよい。任意選択で、断片はまた、多分子複合体であってもよい。機能的抗体断片は、典型的には少なくとも約50アミノ酸を含み、より典型的には少なくとも約200アミノ酸を含む。
【0033】
「抗原結合部位」という用語は、抗原のエピトープと特異的に結合する抗体の領域を指す。
【0034】
「アプタマー」という用語は、具体的な標的分子に結合するオリゴ核酸又はペプチド分子を指す。これらの分子は、一般的に、ランダム配列プールから選択される。選択されるアプタマーは、特有の三次構造を適応させ、高い親和性及び特異性で標的分子を認識することができる。「核酸アプタマー」とは、その立体構造を介して標的分子に結合し、それによってそのような分子の機能を阻害又は抑制するDNA又はRNAオリゴ核酸である。核酸アプタマーは、DNA、RNA、又はそれらの組合せによって構成され得る。「ペプチドアプタマー」とは、可変ペプチド配列が定常足場タンパク質に挿入されている組合せタンパク質分子である。ペプチドアプタマーの同定は、典型的には、選択されるペプチドアプタマーが細胞内の文脈において安定に発現して正確に折り畳まれる確率を高める酵母ツーハイブリッド(yeast dihybrid)のストリンジェントな条件下で実施される。
【0035】
「担体」という用語は、化合物又は組成物と組み合わせた場合に、その意図される用途又は目的のために、化合物又は組成物の調製、保存、投与、送達、効能、選択性、又は任意の他の特徴を補助するか又は容易にする化合物、組成物、物質、又は構造体を意味する。例えば、担体は、活性成分の任意の分解を最小限にし、対象における任意の有害な副作用を最小限にするように選択することができる。
【0036】
「キメラ分子」という用語は、天然状態において別々に存在する2つ以上の分子を接合することによって作出される単一分子を指す。単一キメラ分子は、その全ての構成分子の所望の機能性を有する。キメラ分子の1つの種類は、融合タンパク質である。
【0037】
「操作された抗体」という用語は、抗体の重鎖及び/又は軽鎖の可変ドメインに由来する抗原結合部位を含む抗体断片を少なくとも含み、任意選択でIgクラスのいずれか(例えば、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、及びIgY)由来の抗体の可変及び/又は定常ドメインの全体又は部分を含む組換え分子を指す。
【0038】
「エピトープ」という用語は、抗体が優先的且つ特異的に結合する抗原の領域を指す。モノクローナル抗体は、分子的に定義することができる分子の単一の具体的なエピトープに優先的に結合する。本発明では、複数のエピトープは、多重特異性抗体によって認識され得る。
【0039】
「融合タンパク質」という用語は、1つのポリペプチドのアミノ末端と別のポリペプチドのカルボキシル末端との間に形成されるペプチド結合を介した2つ以上のポリペプチドの接合によって形成されるポリペプチドを指す。融合タンパク質は、構成ポリペプチドの化学結合によって形成され得るか、又は単一の連続する融合タンパク質をコードする核酸配列由来の単一ポリペプチドとして発現し得る。一本鎖融合タンパク質とは、単一の連続するポリペプチド骨格を有する融合タンパク質である。融合タンパク質は、分子生物学における従来の技法を使用して、2つの遺伝子をインフレームで接合して単一の核酸にし、次いで核酸を、融合タンパク質が産生する条件下で適切な宿主細胞において発現させることによって調製することができる。
【0040】
「Fab断片」という用語は、酵素パパインを用いた抗体の切断によって生成される抗原結合部位を含む抗体の断片を指し、パパインは、ヒンジ領域のH鎖間ジスルフィド結合のN末端側で切断して、1つの抗体分子から2つのFab断片を生成する。
【0041】
「F(ab')2断片」という用語は、酵素ペプシンを用いた抗体分子の切断によって生成される2つの抗原結合部位を含有する抗体の断片を指し、ペプシンは、ヒンジ領域のH鎖間ジスルフィド結合のC末端側で切断する。
【0042】
「Fc断片」という用語は、抗体の重鎖の定常ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0043】
「Fv断片」という用語は、抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを含む抗体の断片を指す。
【0044】
「遺伝子構築物」とは、ポリペプチドの「コード配列」を含むか又はそうでなければ生物学的に活性なRNA(例えば、アンチセンス、デコイ、リボザイム等)に転写可能であり、細胞、例えば、ある特定の実施形態では哺乳動物細胞にトランスフェクトすることができ、構築物をトランスフェクトした細胞においてコード配列の発現を引き起こすことができる核酸、例えば、ベクター、プラスミド、ウイルスゲノム等を指す。遺伝子構築物は、コード配列と作動可能に連結する1つ以上の調節エレメント、及びイントロン配列、ポリアデニル化部位、複製起点、マーカー遺伝子等を含んでもよい。
【0045】
「同一性」という用語は、2つの核酸分子又はポリペプチド間の配列同一性を指す。同一性は、比較目的で整列させることができる各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列中の位置が同じ塩基で占められている場合、その分子は、その位置で同一である。核酸又はアミノ酸配列間の類似性又は同一性の程度は、核酸配列によって共有される位置における同一又はマッチするヌクレオチドの数の関数である。2つの配列間の同一性を計算するのに様々なアラインメントアルゴリズム及び/又はプログラムを使用することができ、それにはGCG配列分析パッケージ(ウィスコンシン大学、マディソン、ウィスコンシン)の一部として利用可能なFASTA又はBLASTが含まれ、それらを例えばデフォルト設定で使用することができる。例えば、本明細書に記載される特定のポリペプチドと少なくとも70%、85%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有し、好ましくは実質的に同じ機能を呈するポリペプチド、及びそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが企図される。別段の指示がない限り、類似性スコアはBLOSUM62の使用に基づく。BLASTPが使用される場合、類似性のパーセントはBLASTPの正のスコアに基づき、配列同一性のぱーセントはBLASTPの同一性スコアに基づく。BLASTPの「同一性」は、高スコア配列対中の同一である全残基の数及び分率を示し、BLASTPの「正」は、アラインメントスコアが正の値を有し、互いに類似する残基の数及び分率を示す。本明細書に開示されるアミノ酸配列に対してこれらの程度の同一性若しくは類似性、又は任意の中間の程度の同一性若しくは類似性を有するアミノ酸配列が企図され、本開示によって包含される。類似のポリペプチドのポリヌクレオチド配列は、遺伝子コードを使用して推定され、従来の手段によって、特に遺伝子コードを使用してそのアミノ酸配列を逆翻訳することによって取得することができる。
【0046】
「リンカー」という用語は、当技術分野において認識されており、2つの化合物、例えば2つのポリペプチドを接続する分子又は分子群を指す。リンカーは、単一の連結分子で構成されても、連結分子と、連結分子及び化合物を特定の距離だけ隔てることが意図されたスペーサー分子とを含んでもよい。
【0047】
「多価抗体」という用語は、2つ以上の抗原認識部位を含む抗体又は操作された抗体を指す。例えば、「二価」抗体は2つの抗原認識部位を有し、「四価」抗体は4つの抗原認識部位を有する。「単一特異性」、「二重特異性」、「三重特異性」、「四重特異性」等の用語は、多価抗体に存在する異なる抗原認識部位特異性の数(抗原認識部位の数とは異なる)を指す。例えば、「単一特異性」抗体の抗原認識部位は、全て同じエピトープと結合する。「二重特異性」抗体は、第1のエピトープと結合する少なくとも1つの抗原認識部位、及び第1のエピトープと異なる第2のエピトープと結合する少なくとも1つの抗原認識部位を有する。「多価単一特異性」抗体は、全てが同じエピトープと結合する複数の抗原認識部位を有する。「多価二重特異性」抗体は複数の抗原認識部位を有し、そのうちのいくつかは第1のエピトープと結合し、いくつかは、第1のエピトープと異なる第2のエピトープと結合する。
【0048】
「核酸」という用語は、単一ヌクレオチド、又は1つのヌクレオチドの3'位と別のヌクレオチドの5'末端とがリン酸基によって連結した2つ以上のヌクレオチドを含む天然又は合成分子を指す。核酸は長さによって限定されず、したがって、核酸にはデオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)が含まれ得る。
【0049】
「と作動可能に連結」という用語は、核酸と別の核酸配列との機能的関係を指す。プロモーター、エンハンサー、転写及び翻訳終止部位、並びに他のシグナル配列は、他の配列と作動可能に連結する核酸配列の例である。例えば、DNAと転写制御エレメントとの作動可能な連結とは、そのようなDNAの転写がDNAを特異的に認識、結合、及び転写するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるような、DNAとプロモーターとの物理的及び機能的関係を指す。
【0050】
「ペプチド」、「タンパク質」、及び「ポリペプチド」という用語は、あるアミノ酸のカルボキシル基によって別のアミノ酸のアルファアミノ基が連結された2つ以上のアミノ酸を含む天然又は合成分子を指すために相互に交換可能に使用される。
【0051】
「薬学的に許容される」という用語は、適切な医学的判断の範囲内において、ヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに好適で、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題若しくは合併症も伴わない、合理的なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0052】
「ポリペプチド断片」又は「断片」という用語は、特定のポリペプチドに関して使用する場合、アミノ酸残基が参照ポリペプチドそれ自体と比較して欠失しているが、残りのアミノ酸配列は参照ポリペプチドのアミノ酸配列と通例同一であるポリペプチドを指す。そのような欠失は、参照ポリペプチドのアミノ末端若しくはカルボキシ末端、又はその両方で生じ得る。断片は、典型的には、少なくとも約5、6、8、若しくは10アミノ酸長、少なくとも約14アミノ酸長、少なくとも約20、30、40、若しくは50アミノ酸長、少なくとも約75アミノ酸長、又は少なくとも約100、150、200、300、500、若しくはそれ以上のアミノ酸長である。断片は、参照ポリペプチドの生物活性を1つ以上保持することができる。様々な実施形態では、断片は、参照ポリペプチドの酵素活性及び/又は相互作用部位を含み得る。他の実施形態では、断片は免疫原性特性を有し得る。
【0053】
「タンパク質ドメイン」という用語は、構造的完全性を示すタンパク質の一部分、タンパク質の複数の部分、又はタンパク質全体を指し、この判定は、タンパク質の一部分、タンパク質の複数の部分、又はタンパク質全体のアミノ酸組成に基づくことができる。
【0054】
「一本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、重鎖ドメインと軽鎖ドメインとが連結しているFv断片を指す。1つ以上のscFv断片は、他の抗体断片(例えば重鎖又は軽鎖の定常ドメイン)と連結して、1つ以上の抗原認識部位を有する抗体構築物を形成してもよい。
【0055】
「スペーサー」とは、本明細書で使用する場合、融合タンパク質を含むタンパク質を接合するペプチドを指す。全般的に、スペーサーは、タンパク質を接合すること、又はタンパク質との間のある最小距離若しくは他の空間的関係を保存すること以外の特定の生物活性を有しない。しかしながら、スペーサーの構成アミノ酸は、分子のある特性、例えば分子の折り畳み、正味電荷、又は疎水性に影響を及ぼすように選択されてもよい。
【0056】
本明細書で使用する「特異的に結合する」という用語は、ポリペプチド(抗体を含む)又は受容体に言及している場合、タンパク質及び他の生物製剤の異種集団におけるタンパク質又はポリペプチド又は受容体の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定された条件(例えば抗体の場合は免疫アッセイ条件)下において、指定のリガンド又は抗体は、試料に存在する他のタンパク質にも、リガンド又は抗体が生物中で接触し得る他のタンパク質にも著しい量では結合しない場合、その特定の「標的」に「特異的に結合する」(例えば抗体は内皮抗原に特異的に結合する)。全般的に、第2の分子と「特異的に結合する」第1の分子は、第2の分子に対して約105M-1超(例えば、106M-1、107M-1、108M-1、109M-1、1010M-1、1011M-1、及び1012M-1以上)の親和定数(Ka)を有する。
【0057】
本明細書で使用する「特異的に送達する」という用語は、分子が特定の標的分子又はマーカーを有する細胞又は組織と優先的に会合し、標的分子を欠く細胞又は組織とは会合しないことを指す。当然のことながら、ある程度の非特異的相互作用が分子と非標的細胞又は組織との間で生じ得ることが認識される。そうであっても、特異的送達は、標的分子の特異的な認識を通して媒介されるものとして区別することができる。典型的には、特異的送達は、送達された分子と標的分子を有する細胞との間に、送達された分子と標的分子を欠く細胞との間よりもはるかに強い会合をもたらす。
【0058】
「対象」という用語は、投与又は処置の標的である任意の個体を指す。対象は、脊椎動物、例えば哺乳動物であり得る。したがって、対象はヒト又は獣医学上の患者であり得る。「患者」という用語は、臨床医、例えば内科医の処置下にある対象を指す。
【0059】
「治療的に有効な」という用語は、疾患又は障害の1つ以上の原因又は症状を改善するのに十分な分量である、使用される組成物の量を指す。そのような改善は、低減又は変化を必要とするだけであり、必ずしも排除を必要としない。
【0060】
「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、核酸、例えば発現ベクターのレシピエント細胞への導入、例えば核酸の前記細胞の染色体DNAへの導入を意味する。
【0061】
「処置(治療)」という用語は、疾患、病態、又は障害を治す、改善する、安定化する、又は防止することを意図する患者の医学的管理を指す。この用語には、積極的な処置、すなわち、疾患、病態、又は障害の改善に特に向けた処置が含まれ、原因処置、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の原因の除去に向けた処置も含まれる。加えて、この用語には、対症療法、すなわち、疾患、病態、又は障害の治癒よりも症状の緩和のために計画される処置;予防的処置、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の発症を最小限に抑えるか、又は部分的に若しくは完全に阻害することに向けた処置;及び支持療法、すなわち、関連する疾患、病態、又は障害の改善に向けた別の特定の療法を補うために用いられる処置が含まれる。
【0062】
「防止(予防)すること」という用語は、当技術分野で認識されており、状態に関して使用される場合は当技術分野で周知されており、この用語には、組成物を受けていない対象と比較して、対象における医学的状態の症状の頻度を低減させる、その発症を遅延させる組成物の投与が含まれる。したがって、アスペルギルス関連疾患又は障害の防止には、例えば、統計的に及び/又は臨床的に有意な量によって、例えば、非処置対照集団と比較して、予防的処置を受けている患者集団におけるアスペルギルス関連疾患若しくは障害の発生率を低減させること、及び/又は非処置対照集団と対比して、処置集団においてアスペルギルス関連疾患若しくは障害の出現を遅延させることが含まれる。
【0063】
「バリアント」という用語は、保存的アミノ酸置換、非保存的アミノ酸置換(すなわち縮重バリアント)、アミノ酸をコードする各コドン(すなわちDNA及びRNA)のゆらぎ位置内の置換、ペプチドのC末端に付加されるアミノ酸、又は参照配列と60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を有するペプチドを有するアミノ酸又はペプチド配列を指す。
【0064】
「ベクター」という用語は、ベクター配列が連結している別の核酸を細胞に輸送することができる核酸配列を指す。「発現ベクター」という用語には、細胞による発現に好適な形態の(例えば転写制御エレメントと連結した)遺伝子構築物を含有する任意のベクター(例えば、プラスミド、コスミド、又はファージ染色体)が含まれる。
【0065】
「ASP」又は「ASP抗原」という用語は、アスペルギルスによって発現され、CARによる標的となり得る抗原エピトープを包含することが意図され、この用語には、天然抗原分子の断片、バリアント(例えば、アレルバリアント)、及び誘導体が含まれる。
【0066】
キメラ抗原受容体(CAR)
ヒトにおけるアスペルギルス関連疾患及び障害を処置するために、免疫エフェクター細胞において発現して、アスペルギルス、例えば、アスペルギルス・フミガーツス、アスペルギルス・フラバス、アスペルギルス・クラバタス、アスペルギルス・ニデュランス、アスペルギルス・テレウス、アスペルギルス・アスタス、アスペルギルス・バージカラー、又はアスペルギルス・ニガーに対する抗ASP活性を増強することができる、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドが本明細書に開示される。好ましくは、そのようなCAR発現細胞は、アスペルギルス・フミガーツス及び/又はアスペルギルス・ニガーに対する抗ASP活性を増強する。
【0067】
一部の態様では、本明細書に開示されるCARは、3つのドメイン:外部ドメイン(エクトドメイン)、膜貫通ドメイン、及び内部ドメイン(エンドドメイン))から構成される。
【0068】
ある特定の実施形態では、CARの外部ドメインは、ASP結合領域、例えばGalf4結合領域を含み、抗原認識を担う。外部ドメインは、任意選択で、CARがグリコシル化され免疫エフェクター細胞の細胞膜にアンカーされ得るように、シグナルペプチド(SP)も含有する。
【0069】
本発明のCARポリペプチドは、配列番号13、配列番号14、及び/若しくは配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに/又は配列番号16、配列番号17、及び/若しくは配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0070】
本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0071】
他の実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、配列番号19、配列番号20、及び/若しくは配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに/又は配列番号22、配列番号23、及び/若しくは配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0072】
本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0073】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、配列番号9を含むBR1可変重鎖配列若しくはその機能的断片、及び/又は配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列若しくはその機能的断片を含む抗原結合ドメインを含む。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドは、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列若しくはその機能的断片、及び(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列若しくはその機能的断片を含むscFv抗体である、抗原結合ドメインを含む。
【0075】
本発明のCARポリペプチドはまた、配列番号11を含むBR2可変重鎖配列若しくはその機能的断片、及び/又は配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列若しくはその機能的断片を含む抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明のCARポリペプチドはまた、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、及び(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である、抗原結合ドメインを含んでもよい。
【0077】
ある特定の実施形態では、CARポリペプチドは、Fv、F(ab')、及びF(ab')2からなる群から選択される抗体又はその機能的断片である抗原結合ドメインを含む。CARポリペプチドの抗原結合ドメインはまた、scFvであってもよい。一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、例えば、ガラクトフラノースの単糖、二糖、三糖、又は四糖であり得るガラクトフラノースのオリゴ糖に結合する。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、以下の構造:
【0078】
【化3】
を有するガラクトフラノースのオリゴ糖に結合する。
【0079】
一部の実施形態では、膜貫通ドメイン(TD)は、外部ドメイン(すなわち、細胞外ドメイン)を内部ドメイン(すなわち、細胞内ドメイン)に接続し、細胞によって発現する場合、細胞膜内に存在する。
【0080】
一部の実施形態では、内部ドメインは、抗原認識後に活性化シグナルを免疫エフェクター細胞に伝達する。一部のそのような実施形態では、内部ドメインは、細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)、及び任意選択で、共刺激シグナル伝達領域(CSR)を含有することができる。
【0081】
「シグナル伝達ドメイン(SD)」は、全般的に、リン酸化した場合にシグナル伝達カスケードを活性化する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する。「共刺激シグナル伝達領域(CSR)」という用語は、T細胞受容体によるT細胞活性化を増強することができる共刺激タンパク質受容体、例えば、CD28、41BB、及びICOS由来の細胞内シグナル伝達ドメインを指す。
【0082】
一部の実施形態では、内部ドメインは、SD又はCSRを含有するが、両方を含有することはない。これらの実施形態では、開示されるCARを含有する免疫エフェクター細胞は、欠損ドメインを含有する別のCAR(又はT細胞受容体)もまたそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化する。
【0083】
一部の実施形態では、開示されるCARは、式:
SP-ASP-HG-TM-CSR-SD;又は
SP-ASP-HG-TM-SD-CSR;
(式中、「SP」は任意選択のシグナルペプチドを表し、
「ASP」はASP抗原結合ドメイン(Galf4抗原結合ドメイン、又はガラクトフラノースのオリゴ糖に結合するscFv抗体、好ましくはBR1若しくはBR2抗体に由来するscFvであり得る)、
「HG」は任意選択のヒンジドメインを表し、
「TM」は膜貫通ドメインを表し、
「CSR」は1つ以上の共刺激シグナル伝達領域を表し、
「SD」はシグナル伝達ドメインを表し、
「-」はペプチド結合又はアミノ酸リンカーを表す)
によって定義される。
【0084】
さらなるCAR構築物は、例えばFresnakら、Nat. Rev. Cancer 16(9):566~81ページ(2016)に記載されており、その全体はこれらのCARモデルの教示について参照により組み込まれる。
【0085】
ある特定の実施形態では、CARは、例えば(限定されないが)、TRUCK、汎用CAR、自己駆動CAR、装甲CAR、自己破壊CAR、条件付きCAR、標識CAR、TenCAR、二重CAR、又はsCARであり得る。
【0086】
TRUCK(全体的なサイトカイン殺傷のために再指向されたT細胞(T cells redirected for universal cytokine killing))は、キメラ抗原受容体(CAR)及び炎症促進性サイトカインを共発現する。サイトカイン発現は、恒常的であってもT細胞活性化によって誘導されてもよい。CAR特異性によって標的とされると、炎症促進性サイトカインの局在化した産生により、内因性免疫細胞が感染症部位に動員され、抗真菌応答が増強し得る。
【0087】
汎用同種CAR T細胞は、内因性T細胞受容体(TCR)及び/又は主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子をもはや発現しないように操作され、それによって移植片対宿主病(GVHD)又は拒絶をそれぞれ防止する。
【0088】
自己駆動CARは、CAR及びケモカイン受容体を共発現し、例えば炎症性サイトカインに結合し、それによって化学誘引及び標的化を増強する。
【0089】
免疫抑制に抵抗性になるように操作されたCAR T細胞(装甲CAR)は、免疫抑制及び/又は免疫回避(例えば、グリオトキシン、CCR7欠損樹状細胞、又は他の免疫抑制/免疫調節療法)の影響をもはや受けないように遺伝子改変されてもよい。そのような遺伝子改変のための例示的な「ノックダウン」及び「ノックアウト」技法として、これらに限定されないが、RNA干渉(RNAi)(例えば、asRNA、miRNA、shRNA、siRNA等)及びCRISPR干渉(CRISPRi)(例えば、CRISPR-Cas9)が挙げられる。ある特定の実施形態では、CAR T細胞は、ドミナントネガティブ型の分子を発現するように操作される。一部のそのような実施形態では、分子の細胞外リガンド結合ドメイン(すなわち、外部ドメイン)は膜貫通ドメインと融合してリガンド結合に関して競合する。例えば、細胞外リガンド結合ドメインはCD8膜貫通ドメインと融合し、したがって標的細胞由来の免疫抑制及び/又は免疫回避リガンドに関して競合し得る。一部の実施形態では、CAR T細胞は、標的細胞の免疫抑制及び/又は免疫回避リガンドを活用するスイッチ受容体を発現するように操作される。そのような実施形態では、免疫抑制及び/又は免疫回避分子の細胞外リガンド結合ドメインは、シグナル伝達、刺激、及び/又は共刺激ドメインと融合する。さらなる実施形態では、CAR T細胞は、免疫抑制及び/又は免疫回避シグナル伝達を遮断するアプタマー又はモノクローナル抗体と共に投与され得る。なおさらなる実施形態では、CAR T細胞は、免疫抑制及び/又は免疫回避遮断分子を発現するベクター(例えば操作されたウイルス)と共に投与される。
【0090】
自己破壊CARは、電気穿孔法によって送達される、CARをコードするRNAを使用して設計することができる。或いは、T細胞の誘導性アポトーシスは、遺伝子改変リンパ球におけるチミジンキナーゼに結合するガンシクロビル、又はより近年に記載された低分子二量体化剤(dimerizer)によるヒトカスパーゼ9の活性化のシステムに基づいて達成することができる。
【0091】
条件付きCAR T細胞は、初期状態では、シグナル1とシグナル2との両方の完全な形質導入を可能とする回路を完成させる低分子の添加によってCAR T細胞を活性化するまで、不応性であるか又はスイッチが「オフ」になっている。或いは、T細胞は、その後投与される標的抗原を対象とする二次抗体に関する親和性を有するアダプター特異的受容体を発現するように操作され得る。
【0092】
標識CAR T細胞は、CARと、既存のモノクローナル抗体剤が結合するエピトープとを発現する。忍容不能な有害作用の状況において、モノクローナル抗体の投与はCAR T細胞を取り除き、追加のオフターゲット効果を伴わずに症状を和らげる。
【0093】
タンデムCAR(TanCAR)T細胞は、細胞内共刺激ドメイン及びCD3ζドメインと融合した異なる親和性を有する2つの連結した一本鎖可変断片(scFv)からなる単一CARを発現する。TanCAR T細胞活性化は、標的細胞が両方の標的を共発現する場合にのみ達成される。
【0094】
二重CAR T細胞は、異なるリガンド結合標的を有する2つの別々のCARを発現する。一方のCARがCD3ζドメインのみを含み、他方のCARが共刺激ドメインのみを含む。二重CAR T細胞の活性化は、病原体(例えば、アスペルギルスの分生子及び/又は菌糸)上に両方の標的が共発現することを必要とする。
【0095】
安全性CAR(sCAR)は、細胞内阻害ドメインと融合した細胞外scFvからなる。標準CARを共発現するsCAR T細胞は、標準CAR標的を有するがsCAR標的を欠く標的細胞と遭遇する場合にのみ活性化する。
【0096】
一部の実施形態では、開示されるCARの抗原認識ドメイン又は抗原結合ドメインは、目的の抗原を認識し、結合するscFvである。さらなる実施形態では、抗原認識ドメインは、本明細書に記載されている天然T細胞受容体(TCR)アルファ及びベータ一本鎖由来である。好ましくは、そのような抗原認識ドメインは、単純な外部ドメイン(例えば、HIV感染細胞を認識するCD4外部ドメイン)を有する。或いは、そのような抗原認識ドメインは、外来性の認識成分、例えば連結したサイトカイン(サイトカイン受容体を保有する細胞の認識をもたらす)を含む。全般的に、本明細書に開示される組成物及び方法に関して、所与の標的と高い親和性で結合するほぼ全てのものが、抗原認識領域として使用することができる。
【0097】
細胞内の内部ドメインは、抗原認識後に、CARを発現する免疫エフェクター細胞にシグナルを伝達し、前記免疫エフェクター細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つを活性化する。ある特定の実施形態では、T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性又はサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。したがって、内部ドメインは、T細胞受容体(TCR)の「細胞内シグナル伝達ドメイン」及び任意選択の共役受容体を含み得る。通例では細胞内シグナル伝達ドメイン全体を用いることができるが、多くの場合では鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分が使用される範囲において、そのような短縮された部分は、エフェクター機能シグナルを形質導入する限り、完全鎖の代わりに使用することができる。
【0098】
TCR複合体の一次活性化を制御し、刺激的に作用する細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)として公知のシグナル伝達モチーフを含有してもよい。ITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例としては、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32(FcガンマRIIa)、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、FcγRIγ、FcγRIIIγ、FcεRIβ(FCERIB)、及びFcεRIγ(FCERIG)に由来するものが挙げられる。
【0099】
特定の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)(TCRゼータ、GenBank受託番号BAG36664.1)に由来する。T細胞受容体T3ゼータ鎖又はCD247(分化抗原群247)としても公知のT細胞表面糖タンパク質CD3ゼータ(CD3ζ)鎖は、ヒトにおいてCD247遺伝子によってコードされるタンパク質である。CD3分子の細胞内尾部は、TCRのシグナル伝達能に不可欠な単一のITAMを含有する。ζ鎖(CD3ζ)の細胞内尾部は3つのITAMを含有する。一部の実施形態では、CD3ζ鎖は変異型CD3ζ鎖である。例えば、変異型CD3ζ鎖は、少なくとも1つのITAMに前記ITAMを非機能的にするような変異、例えば点変異を含む。一部のそのような実施形態では、膜近位ITAM(ITAM1)、膜遠位ITAM(C末端の第3のITAM、ITAM3)、又はその両方が非機能的である。さらなる実施形態では、2つの膜近位ITAM(ITAM1及びITAM2)又は2つの膜遠位ITAM(ITAM2及びITAM3)が非機能的である。なおさらなる実施形態では、ITAM2のみが非機能的である。一部の実施形態では、変異型CD3ζ鎖は、少なくとも1つのITAMが欠損しているような欠失(例えば短縮)変異を含む。一部のそのような実施形態では、CD3ζ鎖は膜近位ITAM(ITAM1)、膜遠位ITAM(ITAM3)、又はその両方を欠損している。他の実施形態では、CD3ζ鎖は、2つの膜近位ITAM(ITAM1及びITAM2)又は2つの膜遠位ITAM(ITAM2及びITAM3)を欠損している。さらなる実施形態では、CD3ζ鎖はITAM2を欠損している。変異型CD3ζを産生する方法は、当業者に公知である(例えば、Bridgemanら、Clin. Exp. Immunol. 175(2):258~67ページ(2014)及び国際公開第2019/133969号を参照のこと)。導入されたCARから少なくとも1つのITAMを除去することは、CD3ζ媒介アポトーシスを減少し得る。或いは、導入されたCARから少なくとも1つのITAMを除去することは、機能の喪失を伴わずにCARのサイズを縮小することができる。そのような変更されたCD3ζドメインを含むCARは、本発明によって企図される。
【0100】
また、特有な機能特性をCARに付与する変更されたCD28ドメインを含むCARも企図される。この点において、天然CD28ドメインは、刺激後のシグナル伝達経路を制御するアミノ酸配列YMNM、PRRP、及びPYAPからなる3つの細胞内サブドメインを含む(例えばこの教示について参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/010383号を参照のこと)。本明細書に記載されるCAR構築物は、YMNM、PRRP、及び/又はPYAPサブドメインのうちの1つ以上が前記サブドメインを増幅、減衰、又は不活性化するように変異又は欠失しており、それによってCAR-T機能をモジュレートする改変CD28ドメインを含んでもよい。一部の好ましい実施形態では、用いられる変更されたCD28ドメインは、国際公開第2019/010383号に記載されているようなMut06である。
【0101】
第1世代CARは、典型的には、内因性TCRからのシグナルの一次伝達物質であるCD3ζ鎖由来の細胞内ドメインを有した。第2世代CARは、様々な共刺激タンパク質受容体(例えば、CD28、41BB、ICOS)由来の細胞内シグナル伝達ドメインをCARの内部ドメインに付加して、追加のシグナルをT細胞に提供する。前臨床研究は、第2世代のCAR設計がT細胞の抗腫瘍活性を改善することを示している。より近年の第3世代CARは、効力をさらに増大するために複数のシグナル伝達ドメインを組み合わせる。これらのCARを移植したT細胞は、共刺激受容体/リガンド相互作用に依存しない増大、活性化、持続性、及び腫瘍根絶効率の改善を実証している(Imaiら、Leukemia 18:676~84ページ(2004)、及びMaherら、Nat Biotechnol 20:70~5ページ(2002))。
【0102】
例えば、CARの内部ドメインは、CD3ζシグナル伝達ドメインを単独で含むように設計することも、本発明のCARの文脈において有用な任意の他の所望の細胞質ドメインと組み合わせることもできる。例えば、CARの細胞質ドメインは、CD3ζ鎖部分及び共刺激シグナル伝達領域を含むことができる。共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの部分を指す。共刺激分子とは、リンパ球の抗原に対する効率的な応答に必要とされる、抗原受容体又はそのリガンド以外の細胞表面分子である。そのような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、並びにCD83、CD8、CD4、b2c、CD80、CD86、DAP10、DAP12、MyD88、BTNL3、及びNKG2Dと特異的に結合するリガンドが挙げられる。したがって、CARが、共刺激シグナル伝達要素としてのCD28と共に主に例示されるが、他の共刺激要素が単独で又は他の共刺激シグナル伝達要素と組み合わせて使用されてもよい。
【0103】
一部の実施形態では、CARはヒンジ配列を含む。ヒンジ配列とは、抗体の柔軟性を高める短いアミノ酸配列である(例えばWoofら、Nat. Rev. Immunol.、4(2): 89~99ページ(2004)を参照のこと)。ヒンジ配列は、抗原認識部分(例えば、抗ASP scFv)と膜貫通ドメインとの間に位置し得る。ヒンジ配列は、任意の好適な分子に由来するか又はそれから取得される任意の好適な配列であり得る。一部の実施形態では、例えば、ヒンジ配列はCD8a分子又はCD28分子に由来する。
【0104】
膜貫通ドメインは、天然供給源に由来しても合成供給源に由来してもよい。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合又は膜貫通タンパク質に由来し得る。例えば、膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8(例えば、CD8アルファ、CD8ベータ)、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、又はCD154、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA-1(CD11a、CD18)、ICOS(CD278)、4-1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、IL2Rベータ、IL2Rガンマ、IL7R α、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、及びPAG/Cbpに由来し得る(すなわち、少なくともそれらの膜貫通領域を含み得る)。或いは、膜貫通ドメインは合成であってもよく、その場合、膜貫通ドメインは、主に疎水性の残基、例えばロイシン及びバリンを含む。場合によっては、フェニルアラニン、トリプトファン、及びバリンのトリプレットが合成膜貫通ドメインの各末端に見出され得る。短い、例えば2~10アミノ酸長のオリゴ又はポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質内(endoplasmic)ドメインとの連結を形成し得る。
【0105】
一部の実施形態では、CARは2つ以上の膜貫通ドメインを有し、それらは、同じ膜貫通ドメインの繰り返しであっても異なる膜貫通ドメインであってもよい。
【0106】
一部の実施形態では、CARは、この教示について参照により組み込まれる国際公開第2015/039523号に記載されているような複数鎖CARである。複数鎖CARは、異なる膜貫通ポリペプチドに別々の細胞外リガンド結合及びシグナル伝達ドメインを含むことができる。シグナル伝達ドメインは、膜近傍位置に集合するように設計することができ、これにより天然受容体により近い、最適なシグナル伝達を付与する柔軟な構造体が形成される。例えば、複数鎖CARは、FCERIアルファ鎖の一部及びFCERIベータ鎖の一部を、これらのFCERI鎖が自然と一緒に二量体化してCARを形成するように含むことができる。
【0107】
一部の実施形態では、CARは1つのシグナル伝達ドメインを含有する。他の実施形態では、CARは1つ以上のシグナル伝達ドメイン(共刺激シグナル伝達ドメイン)を含有する。1つ以上のシグナル伝達ドメインは、CD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、FcγRI-γ、FcyRIII-y、FcεRIβ、FcεRIy、DAP10、DAP12、CD32、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、CD137(41BB)、ICOS、CD27、CD288、CD80、NKp30、OX40、及びそれらの変異体から選択されるポリペプチドであり得る。
【0108】
一部の実施形態では、抗ASP結合剤は、一本鎖可変断片(scFv)抗体である。好ましくは、そのような抗ASP抗原結合剤は、一本鎖可変断片(scFv)抗Galf抗体、より好ましく抗Galf4抗体である。抗ASP scFvの親和性/特異性は、大部分が重(VH)及び軽(VL)鎖の相補性決定領域(CDR)内の特定の配列によって駆動される。各VH及びVL配列は、3つのCDR(CDR1、CDR2、CDR3)を有する。
【0109】
一部の実施形態では、抗ASP結合剤は、天然抗体、例えばモノクローナル抗体に由来する。場合によっては、抗体はヒト抗体である。場合によっては、抗体は、ヒトに投与される場合に、より低い免疫原性となるような変更を受けている。例えば、変更は、キメラ化、ヒト化、CDR移植、脱免疫化、及び最も類似したヒト生殖細胞系列配列に対応するフレームワークアミノ酸の変異のうちの1つ以上の技法から生じるものであってもよい。好ましくは、抗体は、Stynenら、Infect. Immun. 60(6):2237~2245ページ(1992)に記載されているようなモノクローナル抗体EB-A1、EB-A2、EB-A3、EB-A4、EB-A5、EB-A6、及びEB-A7のいずれかである。
【0110】
また、ASP抗原、例えばGalf4、及び少なくとも1つの追加の疾患関連抗原を標的とする二重特異性CARも開示される。また、異なる抗原、例えば別のASP抗原と結合する別のCARと組み合わせた場合にのみ働くように設計されたCARも開示される。例えば、これらの実施形態では、開示されるCARの内部ドメインは、シグナル伝達ドメイン(SD)又は共刺激シグナル伝達領域(CSR)のみを含有することができ、両方を含有することはできない。第2のCAR(又は内因性T細胞)は、活性化する場合、欠損シグナルを提供する。例えば、開示されるCARがSDを含有するがCSRを含有しない場合、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、CSRを含有する別のCAR(又はT細胞)がそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化する。同様に、開示されるCARがCSRを含有するがSDを含有しない場合、このCARを含有する免疫エフェクター細胞は、SDを含有する別のCAR(又はT細胞)がそれぞれの抗原と結合する場合にのみ活性化する。
【0111】
CARリガンド結合ドメイン
本明細書に開示されるCARの細胞外ドメインは、全般的に、標的抗原と結合する抗原認識ドメインを含む。そのような抗原特異的結合ドメインは、典型的には、抗体に由来する。一部の実施形態では、抗原結合ドメインは、機能的抗体断片又はその誘導体(例えば、scFv若しくはFab、又は抗体の任意の好適な抗原結合断片)である。好ましい実施形態では、抗原結合ドメインは一本鎖可変断片(scFv)である。一部のそのような実施形態では、scFvはモノクローナル抗体(mAb)由来である。ある特定の好ましい実施形態では、抗原特異的結合ドメイン(例えばscFv)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるSadelainら、Nat. Rev. Cancer 3:35~45ページ(2003)に開示されているリンパ球活性化に関与する膜貫通及び/又はシグナル伝達モチーフと融合する。
【0112】
抗ASP抗体及びscFv
一部の実施形態では、本発明のCARに用いられる抗ASPscFvは、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変重鎖(VH)ドメイン、並びにCDR1、CDR2、及びCDR3配列を有する可変軽鎖(VL)ドメインを含むことができる。好ましい実施形態では、scFvは抗Galf4 scFvである。
【0113】
scFvが由来し得、本発明のCARに用いることができる一部のそのような抗体としては、例えば、Stynenら、Infect. Immun. 60(6):2237~2245ページ(1992)(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようなモノクローナル抗体EB-A1、EB-A2、EB-A3、EB-A4、EB-A5、EB-A6、及びEB-A7が挙げられ、それらは全て、アスペルギルスの細胞壁ガラクトマンナン分子のガラクトフラノース含有側鎖を認識し、結合することが示されている。同様にその全体が参照により組み込まれる、Latgeら、Medical Mycology 47(Supplement 1):S104~S109 (2009)も参照のこと。
【0114】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR1」と称される抗体に由来し、BR1抗体の重鎖は以下のDNA配列によってコードされる:
【0115】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR1」と称される抗体に由来し、BR1抗体の重鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0116】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR1」と称される抗体に由来し、BR1抗体の軽鎖は以下のDNA配列によってコードされる:
【0117】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR1」と称される抗体に由来し、BR1抗体の軽鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0118】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR2」と称される抗体に由来し、BR2抗体の重鎖は以下のDNA配列によってコードされる:
【0119】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR2」と称される抗体に由来し、BR2抗体の重鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0120】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR2」と称される抗体に由来し、BR2抗体の軽鎖は以下のDNA配列によってコードされる:
【0121】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、本明細書において「BR2」と称される抗体に由来し、BR2抗体の軽鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0122】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR1可変重鎖配列又はその機能的断片を含み、BR1可変重鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0123】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含み、BR1可変軽鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0124】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR1可変軽鎖配列又はその機能的断片に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)BR1可変重鎖配列又はその機能的断片を含む。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR1可変軽鎖配列又はその機能的断片に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)BR1可変重鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である。
【0125】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR2可変重鎖配列又はその機能的断片を含み、BR2可変重鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0126】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含み、BR2可変軽鎖は以下のアミノ酸配列を有する:
【0127】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR2可変軽鎖配列又はその機能的断片に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)BR2可変重鎖配列又はその機能的断片を含む。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、BR2可変軽鎖配列又はその機能的断片に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)BR2可変重鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である。
【0128】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗ASP抗原結合ドメインは、BR1抗体からのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む可変重鎖配列を含み、BR1可変重鎖CDR1配列はRYWMS(配列番号13)であり、BR1可変重鎖CDR2配列はEINPDSSTINYTPSLKD(配列番号14)であり、BR1可変重鎖CDR3配列はPRGYYAMDY(配列番号15)である。
【0129】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗ASP抗原結合ドメインは、BR1抗体からのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む可変軽鎖配列を含み、BR1可変軽鎖CDR1配列はKASQDVSTAVA(配列番号16)であり、BR1可変軽鎖CDR2配列はSSSYRYT(配列番号17)であり、BR1可変軽鎖CDR3配列はQQHYSTPWT(配列番号18)である。
【0130】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)、配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列を含む。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)、配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列を含むscFv抗体である。
【0131】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗ASP抗原結合ドメインは、BR2抗体からのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む可変重鎖配列を含み、BR2可変重鎖CDR1配列はRYWMN(配列番号19)であり、BR2可変重鎖CDR2配列はEVNPDSSTINYTPSLKD(配列番号20)であり、BR2可変重鎖CDR3配列はPRGNYGIDY(配列番号21)である。
【0132】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗ASP抗原結合ドメインは、BR2抗体からのCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む可変軽鎖配列を含み、BR可変軽鎖CDR1配列はKASQYIITSVA(配列番号22)であり、BR2可変軽鎖CDR2配列はSSSYRYT(配列番号23)であり、BR2可変軽鎖CDR3配列はQQHFSIPWT(配列番号24)である。
【0133】
一部の実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)、配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列を含む。一部の好ましい実施形態では、CARポリペプチドの抗原結合ドメインは、配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列に共有結合した(ペプチド結合又は1つ以上のアミノ酸を含むリンカーを通して)、配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列を含むscFv抗体である。
【0134】
核酸及びベクター
また、開示される免疫エフェクター細胞においてASP特異的CARの発現を可能にする、開示されるASP特異的CARをコードするポリヌクレオチド及びポリヌクレオチドベクターも開示される。
【0135】
開示されるCARをコードする核酸配列及びその領域は、当技術分野で公知の組換え法を使用することによって、例えば、標準技法を使用して、その遺伝子を発現する細胞由来のライブラリーをスクリーニングすること、それを含むことが公知のベクターから遺伝子を得ること、又はそれを含有する細胞及び組織から直接単離すること等によって取得することができる。或いは、目的の遺伝子は、クローニングされるのではなく合成によって産生することができる。
【0136】
CARをコードする核酸の発現は、典型的には、CARポリペプチドをコードする核酸をプロモーターと作動可能に連結し、構築物を発現ベクターに組み込むことによって達成される。典型的なクローニングベクターは、所望の核酸配列の発現の制御に有用な転写及び翻訳終結因子、開始配列、並びにプロモーターを含有する。
【0137】
開示される核酸は、いくつかの種類のベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、及びコスミドを含むがこれらに限定されないベクターにクローニングすることができる。特定の目的のベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター、及び配列決定ベクターが挙げられる。
【0138】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に提供され得る。ウイルスベクター技術は当技術分野で周知であり、例えば、Sambrookら(2001、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)並びに他のウイルス学及び分子生物学マニュアルに記載されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、これらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、及びレンチウイルスが挙げられる。全般に、好適なベクターは、少なくとも1つの生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、簡便な制限エンドヌクレアーゼ部位、及び1つ以上の選択マーカーを含有する。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドベクターは、レンチウイルス又はレトロウイルスベクターである。
【0139】
ウイルスに基づくいくつかの系は、哺乳動物細胞への遺伝子移入のために開発されている。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムのための簡便なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、当技術分野で公知の技法を使用してベクターに挿入し、レトロウイルス粒子にパッケージングすることができる。次いで、組換えウイルスは単離され、in vivo又はex vivoにおいて対象の細胞に送達することができる。
【0140】
好適なプロモーターの一例は、最初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それと作動的に連結した任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強力な構成的プロモーター配列である。好適なプロモーターの別の例は、伸長成長因子-1α(EF-1α)である。しかしながら、他の構成的プロモーター配列、例えば、これらに限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、MND(骨髄増殖性肉腫ウイルス)プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長鎖末端反復配列(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタインバーウイルス最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、並びにヒト遺伝子プロモーター、例えば、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、及びクレアチンキナーゼプロモーターもまた使用することができる。或いは、プロモーターは誘導性プロモーターであり得る。誘導性プロモーターの例としては、これらに限定されないが、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、及びテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0141】
追加のプロモーターエレメント、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を制御する。典型的には、これらは開始部位の30~110bp上流の領域に位置するが、近年では、いくつかのプロモーターは、開始部位の下流にも機能エレメントを含有することが示されている。プロモーターエレメント間の間隔は多くの場合柔軟であり、そのためプロモーター機能は、エレメントが互いに対して反転又は移動した場合であっても保存される。
【0142】
CARポリペプチド又はその部分の発現を評価するために、細胞に導入される発現ベクターは、選択マーカー遺伝子若しくはレポーター遺伝子のいずれか又はその両方を含有して、ウイルスベクターを介してトランスフェクト又は感染させる試みがなされた細胞の集団からの発現細胞の同定及び選択を容易にすることもできる。他の態様では、選択マーカーは、DNAの別々の小片に保有され、同時トランスフェクション手順に使用されてもよい。選択マーカーとレポーター遺伝子との両方は、宿主細胞での発現を可能にする適切な調節配列と隣接していてもよい。有用な選択マーカーとしては、例えば抗生物質耐性遺伝子が挙げられる。
【0143】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされた可能性のある細胞を同定するため、及び調節配列の機能性を評価するために使用される。全般に、レポーター遺伝子とは、レシピエント生物又は組織に存在することもそれによって発現することもない遺伝子であって、ある容易に検出可能な特性、例えば、酵素活性によって発現が示されるポリペプチドをコードする、遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞に導入された後の好適な時間にアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、又は緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる。好適な発現系は周知であり、公知の技法を使用して調製しても、商業的に取得してもよい。全般に、レポーター遺伝子の最も高いレベルの発現を示す最小の5'隣接領域を有する構築物は、プロモーターとして同定される。そのようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子と連結され、プロモーター駆動転写をモジュレートする能力に関して薬剤を評価するために使用することができる。
【0144】
遺伝子を細胞に導入し発現させる方法は、当技術分野で公知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、当技術分野のいかなる方法によっても宿主細胞、例えば、哺乳動物、細菌、酵母、又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0145】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿法、リポフェクション法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法、電気穿孔法等が挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えばSambrookら(2001、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと。
【0146】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、とりわけレトロウイルスベクターは、遺伝子を哺乳動物、例えばヒト細胞に挿入するための最も広く使用される方法になっている。
【0147】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する化学的手段としては、コロイド分散系、例えば高分子複合体、ナノカプセル剤、マイクロスフェア、ビーズ、並びに水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質に基づく系が挙げられる。in vitro及びin vivoにおいて送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば人工膜小胞)である。
【0148】
非ウイルス送達システムが使用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。別の態様では、核酸は、脂質と会合してもよい。脂質と会合する核酸は、リポソームの水性内部に封入され得るか、リポソームの脂質二重層内に散在し得るか、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合する連結分子を介してリポソームに結合し得るか、リポソームに捕捉され得るか、リポソームと複合体を形成し得るか、脂質を含有する溶液に分散され得るか、脂質と混合され得るか、脂質と組み合わされ得るか、懸濁液として脂質に含有され得るか、ミセルに含有される若しくはミセルと複合体を形成し得るか、又はそうでなければ脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA、又は脂質/発現ベクター会合組成物は、溶液においていかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは二重層構造に存在しても、ミセルとして存在しても、構造が「崩壊」していてもよい。また、単に溶液中に散在し、場合によりサイズの点でも形状の点でも均一でない凝集体を形成してもよい。脂質は、天然に存在する脂質でも合成脂質でもよい脂肪物質である。例えば、脂質としては、細胞質に天然に存在する脂肪滴、並びに長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する化合物のクラス、例えば、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドが挙げられる。使用に好適な脂質は、商業的供給源から取得することができる。例えば、ジミリストイル(dimyristyl)ホスファチジルコリン(「DMPC」)はSigma、St. Louis、Mo.から取得することができ、リン酸ジセチル(「DCP」)はK & K Laboratories(Plainview、N.Y.)から取得することができ、コレステロール(「Choi」)はCalbiochem-Behringから取得することができ、ジミリストイル(dimyristyl)ホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids, Inc(Birmingham、Ala.)から取得され得る。
【0149】
免疫エフェクター細胞
また、開示されるCARを発現するように操作される免疫エフェクター細胞(本明細書では「CAR-T細胞」とも称される)も開示される。一部の実施形態では、これらの細胞は、処置される対象から取得される(すなわち、自家である)。しかしながら、一部の好ましい実施形態では、患者に対して同種の免疫エフェクター細胞株又はドナーエフェクター細胞が使用される。免疫エフェクター細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位由来組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含むいくつかの供給源から取得することができる。免疫エフェクター細胞は、当業者に公知の多くの技法、例えばFicoll(商標)分離を使用して対象から採取される血液から取得することができる。例えば、個体の循環血由来の細胞は、アフェレーシスによって取得され得る。一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、赤血球細胞を溶解し単球を枯渇させることによって、例えばPERCOLL(商標)勾配を介した遠心分離又は対向流遠心溶出によって、末梢血リンパ球から単離される。免疫エフェクター細胞の具体的な亜集団は、ポジティブ又はネガティブセレクション技法によってさらに単離することができる。例えば、免疫エフェクター細胞は、ポジティブセレクションを受ける細胞に特有な表面マーカーを対象とする抗体の組合せを使用して、例えば、所望の免疫エフェクター細胞のポジティブセレクションに十分な時間の抗体コンジュゲートビーズとのインキュベーションによって、単離することができる。或いは、免疫エフェクター細胞集団の濃縮は、ネガティブセレクションを受ける細胞に特有な表面マーカーを対象とする抗体の組合せを使用するネガティブセレクションによって遂行することができる。
【0150】
一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、感染性疾患及び外来物質から身体を防御することに関与する任意の白血球を含む。例えば、免疫エフェクター細胞は、リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、又はそれらの任意の組合せを含み得る。例えば、免疫エフェクター細胞は、Tリンパ球、好ましくは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含み得る。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるCARを含む免疫エフェクター細胞は、免疫系の細胞、例えば細胞傷害性T細胞に分化することができる多能性幹細胞である。一部の好ましい実施形態では、本発明の免疫エフェクター細胞は、CARを発現する誘導多能性幹細胞(iPSC)である。
【0152】
T細胞又はTリンパ球は、細胞表面のT細胞受容体(TCR)の存在によって、他のリンパ球、例えばB細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)から区別することができる。それらは、胸腺において成熟するためにT細胞と称される(だが、一部は扁桃においても成熟する)。T細胞のサブセットはいくつか存在し、それぞれが別個の機能を有する。
【0153】
ヘルパーT細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞及びメモリーB細胞への成熟、並びに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む免疫学的プロセスにおいて、他の白血球細胞を補助する。ヘルパーT細胞は、表面にCD4糖タンパク質を発現するため、CD4+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現するMHCクラスII分子によってペプチド抗原を提示される場合に活性化する。活性化すると、ヘルパーT細胞は急速に分裂し、能動免疫応答を制御又は補助するサイトカインと称される低分子タンパク質を分泌する。ヘルパーT細胞は、異なるサイトカインを分泌して異なる種類の免疫応答を容易にするTH1、TH2、TH3、TH17、TH9、又はTFHを含むいくつかの亜型のうちの1つに分化することができる。
【0154】
細胞傷害性T細胞(TC細胞又はCTL)は、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を破壊し、移植片拒絶にも関係する。細胞傷害性T細胞は、表面にCD8糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞としても公知である。これらの細胞は、全ての有核細胞の表面に存在するMHCクラスI分子と会合した抗原に結合することによって、標的を認識する。IL-10、アデノシン、及び制御性T細胞によって分泌される他の分子を介して、CD8+細胞は、不活性化させてアネルギー状態にすることができ、これにより自己免疫疾患を防止する。
【0155】
メモリーT細胞とは、感染が回復した後長期間持続する抗原特異的T細胞のサブセットである。メモリーT細胞は、同種抗原に再曝露されると短時間で多数のエフェクターT細胞に増大し、したがって、免疫系に過去の感染の「メモリー」を提供する。メモリー細胞はCD4+又はCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0156】
以前は抑制性T細胞として公知であった制御性T細胞(Treg細胞)は、免疫学的寛容の維持に非常に重要である。その主な役割は、免疫反応の終盤にT細胞媒介免疫を停止すること、及び胸腺におけるネガティブセレクションのプロセスを回避した自己反応性T細胞を抑制することである。CD4+Treg細胞の2つの主なクラス-天然に存在するTreg細胞及び適応Treg細胞-が記載されている。
【0157】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞(ナチュラルキラー(NK)細胞と混同されるべきではない)は、獲得免疫系と自然免疫系との橋渡しをする。主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子によって提示されるペプチド抗原を認識する従来のT細胞と異なり、NKT細胞は、CD1dと称される分子によって提示される糖脂質抗原を認識する。
【0158】
一部の実施形態では、T細胞はCD4+細胞の混合物を含む。他の実施形態では、T細胞は、細胞表面発現に基づいて1つ以上のサブセットに関して濃縮される。例えば、場合によっては、T細胞は、細胞傷害性CD8+Tリンパ球である。一部の実施形態では、T細胞は、α及びβ鎖の代わりに1本のγ鎖及び1本のδ鎖を有する別個のT細胞受容体(TCR)を有するγδT細胞を含む。
【0159】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウイルス感染及び形質転換細胞を殺傷することができるCD56+CD3-大顆粒リンパ球であり、自然免疫系の決定的な細胞サブセットを構成する(Godfreyら、Leuk, Lymphoma 53:1666~1676ページ(2012))。細胞傷害性CD8+Tリンパ球と異なり、NK細胞は、事前の感作を必要とせずに腫瘍細胞に対する細胞傷害を開始し、MHC-I陰性細胞を根絶することもできる。NK細胞は、サイトカインストーム、腫瘍崩壊症候群、及びオンターゲット、オフ腫瘍効果に関する潜在的に致死的な合併症を回避し得るため、より安全なエフェクター細胞である。NK細胞は、がん細胞の殺し屋として周知の役割を有し、NK細胞の障害はMMの進行に非常に重要であることが十分に裏付けられているが、NK細胞媒介抗MM活性を増強し得る手段は、開示されるCAR以前は十分に探索されてはいなかった。
【0160】
エプスタインバーウイルス(EBV)誘導リンパ増殖性疾患(EBV-LPD)及び他のEBV関連がんは、同種造血細胞移植(HCT)又は固形臓器移植(SOT)のレシピエント、特にGVHDを防止又は処置するためにある特定のT細胞反応性Abを受けたレシピエントの罹患及び死亡の重大な原因である。自家又は同種EBV特異的細胞傷害性T細胞の養子移入による予防及び処置並びにその後のEBV関連リンパ増殖に対する免疫の長期回復は、同種組織移入に関するこれらの一様に致死的な合併症の管理において良い転帰をもたらしている。したがって、一部の実施形態では、本発明の1つ以上のCARポリペプチドを含む開示される免疫エフェクター細胞は、同種又は自家EBV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である。例えば、EBV特異的細胞傷害性T細胞の生成は、EBV血清陽性自家又は同種ドナー由来のPBMCを単離すること、並びにそれらを単球及びNK細胞の枯渇によってT細胞に関して濃縮することを伴い得る。EBV特異的細胞傷害性T細胞はまた、ドナーPBMC又は精製ドナーT細胞を、1つ以上のEBV抗原を発現し、そのEBV抗原を非刺激T細胞に提示し、それによってEBV特異的CTLの刺激及び増大を引き起こす「刺激」細胞と接触させることによって、産生され得る。注目すべきことに、一部の好ましい実施形態では、そのような方法は、CD3+細胞を含む対象から細胞(例えば、PBMC)の試料を取得すること、及び前記CD3+細胞を抗原及び/又は抗原提示刺激細胞に接触させることを含む。好ましくは、CD3+ T細胞は、当技術分野で公知の方法(例えば、試料からのCD3+細胞のポジティブセレクション及び/又は試料からの望ましくない細胞若しくは成分の枯渇によるネガティブセレクション)によって、抗原に接触させる前に試料から単離される。例えば、限定されないが、そのような方法としては、蛍光標識細胞分取(FACS)を使用する選択、抗CD3ビーズ(例えば、磁気ビーズ)、プラスチック付着法を用いる選択、抗CD56、溶出を使用するNK細胞の枯渇、及び/又はそれらの組合せが挙げられる。EBV抗原としては、例えば、潜在膜タンパク質(LMP)及びEBV核抗原(EBNA)タンパク質、例えばLMP-1、LMP-2A、及びLMP-2B、並びにEBNA-1、EBNA-2、EBNA-3A、EBNA-3B、EBNA-3C、及びEBNA-LPが挙げられる。1つ以上のEBV特異的抗原を認識するT細胞受容体を含む細胞傷害性T細胞は、そのEBV抗原に「感作」されていると考えられ、したがって、本明細書では「EBV感作細胞傷害性T細胞」と称す。本発明の1つ以上のCARポリペプチドを含み得る同種又は自家EBV特異的細胞傷害性T細胞集団を生成する公知の方法は、例えば、Barkerら、Blood 116(23):5045~49ページ(2010)、Doubrovinaら、Blood 119(11):2644~56ページ(2012)、Koehneら、Blood 99(5):1730~40ページ(2002)、及びSmithら、Cancer Res 72(5):1116~25(2012)ページに記載されており、これらはこれらの教示について参照により組み込まれる。同様に、細胞傷害性T細胞は、サイトメガロウイルス(CMV)、パピローマウイルス(例えばHPV)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス(例えば、BKV、JCV、及びメルケル細胞ウイルス)、レトロウイルス(例えば、レンチウイルス、例えばHIVも含むHTLV-I)、ピコルナウイルス(例えばA型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、ヘパシウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(例えばD型肝炎ウイルス)、ヘペウイルス(例えばE型肝炎ウイルス)等を含む他のウイルス抗原に「感作」されてもよい。一部の好ましい実施形態では、標的抗原は腫瘍ウイルス由来である。一部のそのような実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用されるT細胞は、多機能性T細胞、すなわち、複数の免疫エフェクター機能を誘導することができ、例えば単一の免疫エフェクター(例えば単一のバイオマーカー、例えばサイトカイン又はCD107a)のみを産生する細胞よりも効果的な病原体に対する免疫応答を実現するT細胞である。より少ない機能のT細胞、単一機能性T細胞、又はさらには「疲弊」T細胞は、慢性感染症の間、免疫応答を支配することがあり、したがって、ウイルス関連合併症からの保護に悪影響をもたらす。さらに好ましい実施形態では、本発明のCAR-T細胞は多機能性である。ある特定の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用される少なくとも50%のT細胞は、CD4+T細胞である。一部のそのような実施形態では、前記T細胞は、50%未満がCD4+T細胞である。なおさらなる実施形態では、前記T細胞は大部分がCD4+T細胞である。一部の実施形態では、本発明のCAR-T細胞を生成するために使用される少なくとも50%のT細胞は、CD8+T細胞である。一部のそのような実施形態では、前記T細胞は、50%未満がCD8+T細胞である。なおさらなる実施形態では、前記T細胞は大部分がCD8+T細胞である。一部の実施形態では、T細胞(例えば本明細書に記載される感作T細胞及び/又はCAR-T細胞)は、対象に投与される前、細胞ライブラリー又はバンクに保存される。
【0161】
治療方法
【0162】
開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞は、ASP発現標的に対して抗真菌免疫応答を誘発することができる。開示されるCAR改変免疫エフェクター細胞によって誘発される抗真菌免疫応答は、能動免疫応答であっても受動免疫応答であってもよい。加えて、CAR媒介免疫応答は、CAR改変免疫エフェクター細胞がASPに特異的な免疫応答を誘導する養子免疫療法手法の一部であってもよい。
【0163】
開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞は、アスペルギルス感染に関連する多種多様な疾患又は障害の防止及び/又は処置に用途を見出すことができる。そのような疾患及び障害としては、例えば、肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、慢性肺アスペルギルス腫、アスペルギルス感作を有する重度の喘息、慢性空洞性肺アスペルギルス症、及び慢性線維性肺アスペルギルス症が挙げられる。
【0164】
キメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞の養子移入は、有望な抗真菌治療である。患者の免疫エフェクター細胞の採取後、細胞は、開示されるASP特異的CARを発現するように遺伝子操作され、次いで患者に戻し注入され得る(すなわち、自家細胞移入)。さらに、患者以外のドナーから取得した免疫エフェクター細胞が、開示されるASP特異的CARを発現するように遺伝子操作され、次いでCAR含有細胞が患者に注入され得る(すなわち、同種細胞移入)。一部の実施形態では、抗ASP CARポリペプチドを含む免疫エフェクター細胞は、同種EBV特異的細胞傷害性T細胞である。
【0165】
開示されるCAR改変免疫エフェクター細胞は、単独で投与されても、希釈剤及び/又は他の成分、例えば、IL-2、IL-15、若しくは他のサイトカイン、若しくは細胞集団と組み合わせた医薬組成物として投与されてもよい。簡潔に述べると、医薬組成物は、本明細書に記載される標的細胞集団を、1種以上の薬学的又は生理学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせて含むことができる。そのような組成物は、緩衝液、例えば、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等;炭水化物、例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチド又はアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTA又はグルタチオン;アジュバント(例えば水酸化アルミニウム);及び保存剤を含んでもよい。一部の実施形態では、開示される方法における使用のための組成物は、静脈内投与のために製剤化される。医薬組成物は、アスペルギルス関連疾患を処置するのに適切な任意の方法、すなわち、胸腔内投与(胸膜内投与)等で投与することができる。投与の分量及び回数は、患者の状態及び患者の疾患の重症度のような因子によって決定されるが、適切な投薬量は、治験によって決定されてもよい。
【0166】
「免疫学的有効量」、又は「治療量」が示される場合、投与される本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染又は転移の程度、及び状態における個々の差を考慮して内科医によって決定することができる。全般的に、本明細書に記載されるT細胞を含む医薬組成物は、範囲内の全ての整数値を含む細胞104~109個/kg体重、例えば細胞105~106個/kg体重の投薬量で投与され得る、と言うことができる。T細胞組成物はまた、これらの投薬量で複数回投与されてもよい。細胞は、免疫療法において一般的に公知の注入技法を使用することによって投与することができる(例えばRosenbergら、New Eng. J. of Med. 319:1676ページ(1988)を参照のこと)。特定の患者に最適な投薬量及び処置計画は、医学の技術分野の当業者によって、疾患の徴候に関して患者をモニタリングし、それに応じて処置を調整することによって容易に決定することができる。
【0167】
ある特定の実施形態では、活性化T細胞を対象に投与し、次いでその後再び採血し(又はアフェレーシスを実施し)、そこからのT細胞を、開示される方法に従って活性化し、これらの活性化及び増大したT細胞を患者に再注入することが所望され得る。このプロセスは、数週間ごとに複数回実行することができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、10cc~400ccの採血から活性化することができる。ある特定の実施形態では、T細胞は、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、又は100ccの採血から活性化される。この複数回採血/複数回再注入プロトコルを使用することは、T細胞のある特定の集団を選抜することに役立ち得る。
【0168】
開示される組成物の投与は、任意の簡便な方法、例えば注射、輸注、又は植込によって実行することができる。本明細書に記載される組成物は、患者に皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射によって、胸腔内、又は腹腔内投与することができる。一部の実施形態では、開示される組成物は、皮内又は皮下注射によって患者に投与される。一部の実施形態では、開示される組成物はi.v.注射によって投与される。組成物はまた、腫瘍、リンパ節、又は感染部位に直接注射されてもよい。
【0169】
一部の実施形態では、開示されるCARは、外科的処置と組み合わせて投与される。開示されるCARはまた、抗カビ(抗真菌)薬物療法と組み合わせて投与されてもよい。挙げられるのは、限定されないが、アスペルギルス症の標準処置として当技術分野で公知の薬物、例えば、副腎皮質ステロイド、イトラコナゾール、ボリコナゾール、脂質アンフォテリシン製剤、ポサコナゾール、イサブコナゾール、イトラコナゾール、カスポファンギン、ミカファンギン、及びアンフォテリシンBである。
【0170】
タンデム及び二重CAR-T細胞は、2つの別個の抗原結合ドメインを有するという点で特有である。タンデムCARは、細胞内共刺激及び刺激ドメインに接続した、細胞外環境に面した2つの連続した抗原結合ドメインを含有する。二重CARは、1つの細胞外抗原結合ドメインが細胞内共刺激ドメインに接続し、第2の別個の細胞外抗原結合ドメインが細胞内刺激ドメインに接続するように操作されている。刺激ドメインと共刺激ドメインは2つの別々の抗原結合ドメインの間で分割されるため、二重CARは「分割CAR」とも称される。タンデムCAR設計においても二重CAR設計においても、両方の抗原結合ドメインの結合は、T細胞におけるCAR回路のシグナル伝達を可能にするために必要である。これらの2つのCAR設計は、異なる別個の抗原に関する結合親和性を有するため、「二重特異性」CARとも称される。
【0171】
「生きている治療薬」の形態としてのCAR-T細胞に関する1つの主要な懸念事項は、そのin vivoでの操作可能性及び潜在的な免疫刺激副作用である。CAR-T療法をより良好に制御し、望まない副作用を防止するために、オフスイッチ、安全性機構、及び条件付き制御機構を含む様々な特徴が設計されている。例えば、自己破壊CAR-T細胞と標識/タグCAR-T細胞の両方は、CAR発現T細胞のクリアランスを促進する「オフスイッチ」を有するように操作される。自己破壊CAR-Tは、CARを含有するが、外因性分子の投与時に誘導性となるアポトーシス促進性自殺遺伝子又は「排除遺伝子」を発現するように操作されてもいる。HSV-TK(単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ)、Fas、iCasp9(誘導性カスパーゼ9)、CD20、MYC TAG、及び短縮型EGFR(内皮成長因子受容体)を含む様々な自殺遺伝子がこの目的のために用いられ得る。例えば、HSKは、プロドラッグのガンシクロビル(GCV)を、複製DNAに組み込まれて最終的に細胞死を引き起こすGCV三リン酸に変換することができる。iCasp9は、カスパーゼ9二量体化及びアポトーシスを引き起こす低分子AP1903と結合するFK506結合タンパク質の成分を含有するキメラタンパク質である。しかしながら、標識/タグCAR-T細胞は、CARを有するが、選択マーカーを発現するように操作されてもいる細胞である。この選択マーカーに対するmAbの投与は、CAR-T細胞のクリアランスを促進することになる。短縮型EGFRは抗EGFR mAbによって標的化可能なそのような抗原のうちの1つであり、セツキシマブの投与は、CAR-T細胞の排除を促進するように働く。これらの特徴を有するように作出されたCARは、「切り替え可能なCAR」に対してはsCAR、及び「制御可能なCAR」に対してはRCARとも称される。「阻害性CAR」(iCAR)としても公知の「安全性CAR」は、2つの抗原結合ドメインを発現するように操作されている。これらの細胞外ドメインのうちの1つはASPに関連する抗原に対するものであり、細胞内共刺激及び刺激ドメインに結合する。しかしながら、第2の細胞外抗原結合ドメインは正常組織に特異的であり、細胞内阻害ドメインに結合する。iCARへの複数の細胞内阻害ドメインの組込みも可能である。正常組織の存在下では、この第2の抗原結合ドメインの刺激が働いてCARを阻害することになる。この二重抗原特異性のために、iCARが二重特異性CAR-T細胞の形態でもあることは注意されるべきである。安全性CAR-T操作は、CAR-T細胞の感染/侵入組織に対する特異性を増強し、ある特定の正常組織が、標準CARではオフターゲット効果をもたらす非常に低いレベルのASP関連抗原を発現することがある状況において好都合である(Morgan 2010)。条件付きCAR-T細胞は、細胞内共刺激ドメイン及び別々の細胞内共刺激因子に接続した細胞外抗原結合ドメインを発現する。共刺激及び刺激ドメイン配列は、外因性分子の投与時に結果として生じる複数のタンパク質が一緒に細胞内に入り、CAR回路を完成させるように操作されている。この点で、CAR-T活性化はモジュレートすることができ、場合によっては、特定の患者に合わせて「微調整」するか又は患者専用とすることさえ可能である。二重CAR設計と同様、刺激ドメインと共刺激ドメインは、条件付きCARにおいて不活性である場合は物理的に離れており、このため、これらもまた「分割CAR」とも称される。
【0172】
一部の実施形態では、これらの設計された特徴のうちの2つ以上を組み合わせて、増強した多機能CAR-Tを作出してもよい。例えば、二重CAR設計又は条件付きCAR設計のいずれかを有し、TRUCKのようにサイトカインも放出するCAR-T細胞を作出することができる。一部の実施形態では、二重-条件付きCAR-T細胞は、それぞれがそれぞれの共刺激ドメインに結合する、2つの別個のASP抗原に対する2つの別々の抗原結合ドメインを有する2つのCARを発現するように作製することができる。共刺激ドメインは、活性化分子が投与された後にのみ、刺激ドメインと共に機能的となり得る。このCAR-T細胞が効果的となるためには、ASPが両方のASP抗原を発現していなければならず、且つ活性化分子が患者に投与されなければならない。この設計は、それによって二重CAR-T細胞と条件付きCAR-T細胞との両方の特徴を組み込む。
【0173】
典型的には、CAR-T細胞はα-βT細胞を使用して作出されるが、γ-δT細胞もまた使用することができる。一部の実施形態では、CAR-T細胞を生成するために使用される、記載されたCAR構築物、ドメイン、及び操作された特徴は、NK(ナチュラルキラー)細胞、B細胞、肥満細胞、骨髄由来食細胞、及びNKT細胞を含む他の種類のCAR発現免疫細胞の生成において同様に用いることができる。或いは、CAR発現細胞は、T細胞とNK細胞の両方の特性を有するように作出することができる。他の実施形態では、CARを形質導入した細胞は、それらが投与される患者に対して自家又は同種であり得る。
【0174】
レトロウイルス形質導入(γ-レトロウイルスを含む)、レンチウイルス形質導入、トランスポゾン/トランスポザーゼ(Sleeping Beauty及びPiggyBacシステム)、及びメッセンジャーRNA移入媒介遺伝子発現を含むCAR発現のためのいくつかの異なる方法が使用され得る。遺伝子編集(遺伝子挿入又は遺伝子欠失/破壊)もまた、CAR-T細胞を操作する可能性に関してますます重要になっている。CRISPR-Cas9、ZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)、及びTALEN(転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ)システムは、CAR-T細胞を生成し得る3つの潜在的な方法である。
【0175】
[実施例]
BR1及びBR2抗体の単離及び特徴付け
TT-Galf4の合成
PBS中の破傷風トキソイド(Statens Serum Institute)をプロパルギルリンカーに添加し、一晩反応させた。次いでゲル濾過カラムを使用してプロパルギル化タンパク質を濃縮した。BCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher)及びMALDI-TOF MSを使用して、それぞれタンパク質の量の定量化及びアミノ基の改変の判定を行った。次に、プロパルギル化タンパク質を、前に記載されたようなアジド-アルキンヒュスゲン環化付加によってGalf4-N3にコンジュゲートした。簡潔に述べると、プロパルギル化タンパク質を、封止したガラスバイアル中でオリゴ糖と共に銅粉末の存在下で一晩インキュベートした。インキュベーション後に、反応をEDTAでクエンチし、タンパク質をPBSで洗浄した。最後に、この結合体をゲル濾過カラムによって精製した。得られたタンパク質濃度及びオリゴ糖組込みの程度を、それぞれBCAタンパク質アッセイ(Thermo Fisher)及びMALDI-TOF MSによって評価した。
【0176】
免疫化
免疫化の前日に、TT-Galf4及びミョウバン(Alhydrogel(登録商標)、Brenntag AG)を作用濃度に希釈し、回転振盪機上で一晩インキュベートした。0日目、14日目、及び21日目に、合計6μgのTT-Galf4及び30μgのミョウバンを腹腔内に、4μgのTT-Galf4及び20μgのミョウバンを皮下に投与することによって、動物を免疫化した。31日目に顎下穿刺(非致死)又は心臓穿刺(致死)から血清を採取した。マウスを31日目に以降に詳述するように感染させた。
【0177】
抗Galf4 ELISA及びモノクローナル抗体エピトープマッピング
高結合ELISAプレートを、ウェル当たり100μLのPBS中0.1μgのウシ血清アルブミン(BSA)-Galf4(又はエピトープマッピングに使用される他のBSA複合糖質)で一晩4℃でコーティングした。ウェルをリン酸緩衝生理食塩水+0.05% Tween(商標)-20(PBS-T)で洗浄し、PBS中で調製した1% BSAでブロッキングした。洗浄後、PBS-T中0.1% BSAで段階希釈した血清試料又はモノクローナル抗体をウェルに添加し、2時間インキュベートした。洗浄後、1:5000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした抗マウスIgG又は抗マウスIgM二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)と共にプレートをインキュベートした。洗浄後、ウェルを200μLのテトラメチルベンジジン(TMB)で発色させ、反応を100μLの2N硫酸で停止させた。次いで450nmでの吸光度を読み取った。
【0178】
免疫蛍光法
24ウェルプレート中のポリ-D-リシンカバーガラスにDMEM培地中1×105個の分生子を接種し、5% CO2中37℃で10時間成長させた。特に記載しない限り、各ステップの間に菌糸をPBSで穏やかに3回洗浄した。真菌を4% PFAで固定し、50%ウシ胎仔血清、PBS中で調製した1.5% BSA溶液でブロッキングした。次いで血清試料をブロッキング溶液で1:500に希釈し、未洗浄のカバーガラスに室温で1時間添加した。洗浄後、ブロッキング緩衝液で1:500に希釈した、Alex Fluor(登録商標)488(Invitrogen)にコンジュゲートした抗マウス又は抗ウサギIgG、A、M二次抗体中で、菌糸を室温でさらに1時間暗所でインキュベートした。次いでPBSで1:1000に希釈したDRAQ(商標)5(Invitrogen)で菌糸を対比染色し、洗浄し、PFA中で固定した。最後の一連の洗浄後、カバーガラスをスライド上に載せ、LSM 780を使用して画像化した。
【0179】
感染モデル
全身感染モデルでは、マウスを免疫化の開始後31日目に尾静脈注射によって分生子3×107個/マウスで静脈内感染させた。肺感染の研究では、マウスを、感染の前日から始めて48時間ごとに200μgの抗Ly6G(クローン1A8、Bio X Cell)抗体で腹腔内処置することによって好中球減少状態にした。感染当日、マウスをイソフルランによって麻酔し、次いで0.1% tween-80を含有する50μLの容量のPBS中1×107個のA.フミガーツスの分生子で気管内感染させた。
【0180】
モノクローナル抗体の生成
A.フミガーツスのチャレンジを生き延びた免疫化マウスからモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを生成した。マウスを免疫化し、上に記載したようにチャレンジした。感染から14日後、感染を生き延びたマウスの脾臓を採集し、脾細胞を商業的に不死化するために新鮮な状態でMediMabs(Montreal、Qc)に輸送した。ハイブリドーマを、BSA-Galf4 ELISAによって抗Galf4抗体の産生についてスクリーニングした。BSA-Galf4によって反応性であった11種の安定なハイブリドーマを、次いで野生型A.フミガーツス(Af293)及びGalf欠損A.フミガーツス(Δugm1)の菌糸を使用する免疫蛍光法によって天然のGMとのそれらの反応性を試験した。
【0181】
抗Galf4抗体がA.フミガーツスのチャレンジに対する防御を媒介することができるかどうかを判定するために、モノクローナル抗Galf4抗体を生成した。A.フミガーツスのチャレンジを生き延びた免疫化マウスから取得した脾細胞からハイブリドーマを生成した。合計600種のハイブリドーマから、11種のクローンがELISAによってBSA-Galf4に結合する抗体を産生した。11種のクローンのうち、免疫蛍光法によって判定して、天然のGM多糖に対して特異的な抗体を産生した2種のIgM抗体産生ハイブリドーマ(BR1及びBR2)を特定した(図1)。これらの2種のクローンによって産生された抗体の抗原特異性を、複合糖質のパネルとの抗体反応性を試験することによってさらに評価した。この技法を使用して、BR1によって認識された最小の認識可能なエピトープはβ-(1-5)結合したGalfの二糖であると判定され(図2Cを参照のこと)、一方、BR2はGalfの単糖を認識することが可能であった(図2D)。感染に対する防御を媒介するこれらの抗体の能力を判定するために、未処置の好中球減少マウスにBR1又はBR2抗体を感染当日の開始時及び48時間後に投与した。未処置のマウス、又はBR1若しくはBR2抗体療法を受けたマウスの間で生存率の差は観察されなかった。
【0182】
アスペルギルス関連抗原に特異的に結合するBR1及びBR2抗体の能力を考慮すると、BR1及びBR2抗体に由来する抗原結合ドメインをCARポリペプチド形式で使用することが、アスペルギルス関連疾患及び障害の養子免疫療法に有用なCAR発現細胞の開発に有用であると予想される。
【0183】
本発明のいくつかの実施形態を記載した。にもかかわらず、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されるだろう。したがって、他の実施形態は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0184】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、開示される発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に引用した刊行物及びそれらが引用される目的としての材料は、参照により明確に組み込まれる。
【0185】
当業者は、単に慣例的な実験を使用して、本明細書に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識することになり、又は確かめることができるだろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
【手続補正書】
【提出日】2022-11-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内シグナル伝達ドメイン、及び少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域を含み、前記抗原結合ドメインがASP抗原に結合する、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド。
【請求項2】
前記抗原結合ドメインが、配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項3】
前記抗原結合ドメインが、配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項4】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項5】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号13、配列番号14、及び/又は配列番号15を含むBR1可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号16、配列番号17、及び/又は配列番号18を含むBR1可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項6】
前記抗原結合ドメインが、配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項7】
前記抗原結合ドメインが、配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項8】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項9】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号19、配列番号20、及び/又は配列番号21を含むBR2可変重鎖配列、並びに(ii)配列番号22、配列番号23、及び/又は配列番号24を含むBR2可変軽鎖配列を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項10】
前記抗原結合ドメインが、配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項11】
前記抗原結合ドメインが、配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項12】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項13】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号9を含むBR1可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号10を含むBR1可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項14】
前記抗原結合ドメインが、配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項15】
前記抗原結合ドメインが、配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項16】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含む、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項17】
前記抗原結合ドメインが、(i)配列番号11を含むBR2可変重鎖配列又はその機能的断片、並びに(ii)配列番号12を含むBR2可変軽鎖配列又はその機能的断片を含むscFv抗体である、請求項1に記載のCARポリペプチド。
【請求項18】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、ガラクトフラノースを含有するオリゴ糖である、請求項1から17のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項19】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、ガラクトフラノース残基の単糖、二糖、三糖、又は四糖である、請求項1から18のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項20】
前記抗原結合ドメインが結合するASP抗原が、以下の構造:
【化1】
を有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項21】
膜貫通ドメインが膜貫通又は膜結合ポリペプチドに由来する、請求項1から20のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項22】
膜貫通ドメインがCD28及び/又は41BBの膜貫通ドメインを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項23】
細胞内シグナル伝達ドメインが、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを少なくとも1つ含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項24】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項25】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、CD28又はその変異体のシグナル伝達ドメインを含む、請求項24に記載のCARポリペプチド。
【請求項26】
CD28シグナル伝達ドメインが、サブドメインYMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、PYAP(配列番号27)、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つに少なくとも1つ以上の変異を含む、請求項25に記載のCARポリペプチド。
【請求項27】
CD28シグナル伝達ドメインが、サブドメインYMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、又はPYAP(配列番号27)のうちのいずれか1つを欠く、請求項25又は26に記載のCARポリペプチド。
【請求項28】
CD28シグナル伝達ドメインが、YMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、及びPYAP(配列番号27)から選択されるサブドメインのうちのいずれか2つを欠く、請求項25から27のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項29】
少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域が、41BBのシグナル伝達ドメイン又はその変異体を含む、請求項24から28のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項30】
細胞内シグナル伝達ドメインの少なくとも1つのシグナル伝達ドメインが、天然CD3ζ又はその変異体を含む、請求項23から29のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項31】
変異型CD3ζが、機能的C末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を欠く、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項32】
変異型CD3ζが、2つの機能的C末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を欠く、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項33】
変異型CD3ζが、1つのみの機能的免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含む、請求項30に記載のCARポリペプチド。
【請求項34】
ヒンジ配列をさらに含む、請求項1から33のいずれか一項に記載のCARポリペプチド。
【請求項35】
ヒンジ配列がCD8a分子又はCD28分子に由来する、請求項34に記載のCARポリペプチド。
【請求項36】
請求項1から35のいずれか一項に記載のCARポリペプチドをコードする核酸。
【請求項37】
請求項36に記載の核酸を含むベクター。
【請求項38】
請求項36に記載の核酸を含む細胞。
【請求項39】
請求項37に記載のベクターを含む細胞。
【請求項40】
請求項1から35のいずれか一項に記載のCARポリペプチドを発現する細胞。
【請求項41】
白血球である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項42】
リンパ球、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、又は好酸球である、請求項38から41のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項43】
αβT細胞、γδT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、B細胞、自然リンパ球(ILC)、サイトカイン誘導キラー(CIK)細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、制御性T細胞、又はそれらの任意の組合せから選択される、請求項38から42のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項44】
多能性幹細胞である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項45】
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)である、請求項38から40のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項46】
ウイルス抗原感作CTLである、請求項38から45のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項47】
エプスタインバーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス(BKV)、ジョンカニンガムウイルス(JCV)、ピコルナウイルス(例えばA型肝炎ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えばB型肝炎ウイルス)、ヘパシウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、デルタウイルス(例えばD型肝炎ウイルス)、ヘペウイルス(例えばE型肝炎ウイルス)、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つに由来するウイルス抗原に感作されたCTLである、請求項46に記載の細胞。
【請求項48】
EBV感作CTLである、請求項46に記載の細胞。
【請求項49】
キメラ抗原受容体ポリペプチドの抗原結合ドメインがASP抗原に結合した場合、抗真菌効果を示す、請求項38から48のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項50】
投与されるヒト患者に対して同種である、請求項38から49のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項51】
投与されるヒト患者に対して自家である、請求項38から49のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項52】
それを必要とする哺乳動物におけるアスペルギルス関連疾患又は障害を処置する方法であって、有効量の請求項38から51のいずれか一項に記載のCAR発現細胞を哺乳動物に投与することを含み、それによって前記哺乳動物における前記疾患又は障害を有効に処置する、方法。
【請求項53】
アスペルギルス関連疾患又は障害が、肺アスペルギルス症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、アスペルギルス腫、慢性肺アスペルギルス腫、アスペルギルス感作を有する重度の喘息、慢性空洞性肺アスペルギルス症、又は慢性線維性肺アスペルギルス症である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
哺乳動物に投与されるCAR発現細胞が、前記哺乳動物に対して自家である、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項55】
哺乳動物に投与されるCAR発現細胞が、前記哺乳動物に対して同種である、請求項52又は53に記載の方法。
【請求項56】
哺乳動物がヒトである、請求項52から55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
CAR発現細胞がEBV感作CTLである、請求項52から56のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARの膜貫通ドメインは、膜貫通若しくは膜結合ポリペプチドに由来するか、又はCD28、41BB、それらの変異体、若しくはそれらの任意の組合せのうちのいずれかの膜貫通ドメインを少なくとも1つ含む。一部の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを少なくとも1つ含む。一部の実施形態では、本明細書に開示されるCARは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域、例えば、ポリペプチドCD8、CD3ζ、CD3δ、CD3γ、CD3ε、CD32、DAP10、DAP12、CD79a、CD79b、CD28、CD3C、CD4、b2c、41BB、ICOS、CD27、CD28δ、CD80、NKp30、OX40、FcγRI-γ、FcγRIII-γ、FcεRI-β、FcεRI-γ、それらの変異体、又はそれらの任意の組合せのうちのいずれか1つのシグナル伝達ドメインを含む共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARは、変異体CD28共刺激ドメインを含む1つ以上の共刺激領域を含み、該変異体CD28共刺激ドメインは、その中にYMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、若しくはPYAP(配列番号27)サブドメインのいずれかに1つ以上の変異を含むか、又はこれらのドメインの1つ以上の欠失を含む。他の好ましい実施形態では、本明細書に開示されるCARは、変異体CD3ζ共刺激ドメインを含む1つ以上の共刺激領域を含み、該変異体CD3ζ共刺激ドメインは、その中にC末端免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)のいずれかに1つ以上の変異を含む。本明細書に開示されるCARは、ヒンジ領域を含んでもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0100】
また、特有な機能特性をCARに付与する変更されたCD28ドメインを含むCARも企図される。この点において、天然CD28ドメインは、刺激後のシグナル伝達経路を制御するアミノ酸配列YMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、及びPYAP(配列番号27)からなる3つの細胞内サブドメインを含む(例えばこの教示について参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/010383号を参照のこと)。本明細書に記載されるCAR構築物は、YMNM(配列番号25)、PRRP(配列番号26)、及び/又はPYAP(配列番号27)サブドメインのうちの1つ以上が前記サブドメインを増幅、減衰、又は不活性化するように変異又は欠失しており、それによってCAR-T機能をモジュレートする改変CD28ドメインを含んでもよい。一部の好ましい実施形態では、用いられる変更されたCD28ドメインは、国際公開第2019/010383号に記載されているようなMut06である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2023520343000001.app
【国際調査報告】