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特表2023-520344血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法
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  • 特表-血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/727 20060101AFI20230510BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K31/727
A61P7/02
A61K38/55
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022557910
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021013026
(87)【国際公開番号】W WO2021201950
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/005,250
(32)【優先日】2020-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ウェブサイト(https://www.thrombosisresearch.com/article/S0049-3848(20)30013-X/fulltext)に公開された「Supplementation with antithrombin III ex vivo optimizes enoxaparin responses in critically injured patients」という表題を有する学術論文(Thromb Res.,2020 Mar.,Vol.187,p.131-138)
(71)【出願人】
【識別番号】508152917
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム
(71)【出願人】
【識別番号】522374010
【氏名又は名称】グリフォルス・シェアド・サービシズ・ノース・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェシカ・シー・カルデナス
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ・イー・ウェイド
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ-ウェイ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・エー・コットン
(72)【発明者】
【氏名】クリストン・オズボーン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084CA53
4C084DC35
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA541
4C084ZA542
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA27
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA36
4C086ZA54
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、そのリスクがあると特定された患者において血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法及び組成物に関し、方法は、患者に治療有効量の未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数の抗凝固薬、並びにアンチトロンビンIII(ATIII)を投与する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血栓症又は血栓塞栓症の発生を、そのリスクがあると特定された患者において減少させるための方法であって、患者に治療有効量の
未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びこれらの組合せからなる群から選択される抗凝固薬、並びに
アンチトロンビンIII(ATIII)
を投与する工程を含む方法。
【請求項2】
前記血栓症が静脈血栓症である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血栓塞栓症が静脈血栓塞栓症(VTE)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
リスクがあると特定された患者が、身体外傷患者、周術期患者、周産期患者、運動制限を有する患者、がん患者、敗血症患者、全身性炎症反応症候群患者、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
患者が身体外傷患者であり、患者が鈍的外傷、穿通性外傷、又はこれらの組合せを受けている、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.2IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.3IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.4IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.2IU/mL~約2.5IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL~約2.0IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL~約1.5IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
ATIIIが血漿由来又は組換え体である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
低分子量ヘパリンが、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、これらの組合せ、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ヘパリノイドが、ダナパロイド、デルマタン硫酸、スロデキシド、これらの組合せ、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗凝固薬が低分子量ヘパリンである、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
低分子量ヘパリンがエノキサパリン又はその薬学的に許容される塩である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
低分子量ヘパリンの治療有効量が約20mg~約180mgの1日量である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約20mg~約40mgの1日量である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約0.1~約2.5mg/kgである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約0.5~約1.5mg/kgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
血栓症又は血栓塞栓症の発生を、そのリスクがあると特定された患者において減少させるための、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びこれらの組合せからなる群から選択される抗凝固薬並びにアンチトロンビン(ATIII)を含む組成物。
【請求項24】
前記血栓症が静脈血栓症である、請求項23に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記血栓塞栓症が静脈血栓塞栓症(VTE)である、請求項23又は24に記載の使用のための組成物。
【請求項26】
リスクがあると特定された患者が、身体外傷患者、周術期患者、周産期患者、運動制限を有する患者、がん患者、敗血症患者、全身性炎症反応症候群患者、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23から25のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
患者が身体外傷患者であり、患者が鈍的外傷、穿通性外傷、又はこれらの組合せを受けている、請求項23から26のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項28】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項23から27のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項29】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.2IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項23から28のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項30】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.3IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項31】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.4IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項32】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL超に増加させる濃度で投与される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項33】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL~約2.5IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項34】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL~約2.0IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項29に記載の使用のための組成物。
【請求項35】
ATIIIが患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL~約1.5IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される、請求項23から34のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項36】
ATIIIが血漿由来又は組換え体である、請求項23から35のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項37】
低分子量ヘパリンが、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、これらの組合せ、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から36のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項38】
ヘパリノイドが、ダナパロイド、デルマタン硫酸、スロデキシド、これらの組合せ、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項23から37のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項39】
抗凝固薬が低分子量ヘパリンである、請求項23から38のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項40】
低分子量ヘパリンがエノキサパリン又はその薬学的に許容される塩である、請求項39に記載の使用のための組成物。
【請求項41】
低分子量ヘパリンの治療有効量が約20mg~約180mgの1日量である、請求項23から40のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項42】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約20mgから約40mgの1日量である、請求項41に記載の使用のための組成物。
【請求項43】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約0.1~約2.5mg/kgである、請求項23から42に記載の使用のための組成物。
【請求項44】
低分子量ヘパリンの前記治療有効量が約0.5~約1.5mg/kgである、請求項43に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は医薬製品の分野に関する。本明細書のある特定の実施形態は、そのリスクがあると特定された患者において血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法及び組成物に関し、方法は、患者に治療有効量の1種又は複数の抗凝固薬、及びアンチトロンビンIII(ATIII)を投与する工程を含む。
【背景技術】
【0002】
関連技術の記載
深部静脈血栓症(DVT)及び肺塞栓症(PE)を含む障害である静脈血栓塞栓症(VTE)は、多発外傷性損傷を有する患者においてよく見られる合併症である。VTEは、リスクを減らす徹底した予防努力にもかかわらず、依然としてこの集団における院内死亡の最もよくある防止可能な原因の1つである[1,2]。患者の緊急度及び監視の程度に大きく依存して、予防下の患者の最大30%は入院中にVTEを経験する。これらの事象は、積極的介入、入院の延長、及び医療費の増加をもたらす[2,3]。退院の3カ月後、生存している外傷患者におけるVTE率は依然として10%を超え[4]、外傷集団全体における血栓塞栓性事象の30%は退院後に発生する[5]。これらは臨床的に重大でない事象ではない。実際にDrakeらは最近、退院後の防止可能又は潜在的に防止可能な死亡の10.8%は広範型PEに起因することを示した[6]。
【0003】
外傷患者におけるVTEの正確な病態生理は完全には理解されていないが、それは間違いなく多因子性であり、異常な凝固活性化、内皮機能障害、持続性炎症、長引く不動状態、大量輸血、及び機械的換気を含むリスク因子の組合せに続発して生じると考えられる[2]。外傷患者における、VTEの強力な予測因子である外傷後のトロンビン生成の上昇は、いくつかの研究において報告されている[7~11]。したがって、出血制御が達成された後に、トロンビン生成を制限することによって止血恒常性を取り戻すことは、回復中の外傷患者において血栓塞栓性合併症を防止するために決定的に重要になる。
【0004】
これに対処するために、American Academy of Chest Physiciansは、プロトコール化された抗凝固を含む、外傷患者における積極的なVTE予防のための標準治療推奨事項を定めた[12]。利用される最もよく使用される予防抗凝固薬の1つは、抗FXaレベルを測定することによって院内でモニタリングされ得る低分子量ヘパリンであるエノキサパリン(Lovenox)である。エノキサパリンは、循環抗凝固物質であるアンチトロンビンIII(AT)の活性を強化することによって作用する。エノキサパリンはATに結合し、FXa及びトロンビンを阻害し、したがって凝固を下方調節するためにその活性を増加させる。ますます積極的な制度的血栓予防プロトコールにもかかわらず、外傷患者の50~70%は推奨抗FXa標的範囲(0.1~0.4IU/mL)を達成せず、これはエノキサパリン抗凝固に対する応答性の変化を示す[13,14]。そのような無応答性はVTEのリスクと関連付けられている。例えばMalinoskiらは、推奨抗FXa範囲を達成しなかった外傷及び手術患者におけるDVTの発生率の増加を示した[15]。低い抗FXaレベルに応答してエノキサパリン用量を調整する場合、VTEの発生率は変わらないままであるので、ヘパリノイドの用量を漸増しても無効であるようである[16]。Sabbaghらは1980年代半ばに、心肺バイパス術を受けている患者においてヘパリン抵抗性の逆転のために新鮮凍結血漿(FFP)の使用を初めて導入した[17]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、エノキサパリン抗凝固に対する良好な応答性を示す推奨抗FXa標的範囲を達成することを助け、ヘパリンベースの血栓予防を安全に改善するための新規処置戦略を提供し得る、組成物及び処置の方法を提供することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは驚くべきことに、新鮮凍結血漿(FFP)ではなくATIIIによるex vivo処理が、トロンビン生成のエノキサパリン媒介阻害の改善をもたらし、これがエノキサパリン血栓予防の有効性を増加させることを見出した。
【0007】
本開示は、そのリスクがあると特定された患者において血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法及び組成物を提供する。一部の実施形態では、方法は、患者に治療有効量の未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びこれらの組合せからなる群から選択される抗凝固薬、並びにアンチトロンビンIII(ATIII)を投与する工程を含む。
【0008】
一部の実施形態では、血栓症は静脈血栓症である。一部の実施形態では、前記血栓塞栓症は静脈血栓塞栓症(VTE)である。
【0009】
一部の実施形態では、リスクがあると特定された患者は、身体外傷患者、周術期患者、周産期患者、運動制限を有する患者(patients with restricted mobility)、がん患者、及びこれらの組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、患者は身体外傷患者であり、患者は鈍的外傷、穿通性外傷、又はこれらの組合せを受けている。
【0010】
一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL超に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.2IU/mL超まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.3IU/mL超まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.4IU/mL超まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL超まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.5~約2.5IU/mLの範囲まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.5~約2.0IU/mLの範囲まで増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.0IU/mL~約1.5IU/mLの範囲まで増加させる濃度で投与される。
【0011】
一部の実施形態では、ATIIIは血漿由来又は組換えATIIIである。
【0012】
一部の実施形態では、低分子量ヘパリンは、ベミパリン、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン、レビパリン、チンザパリン、これらの組合せ、及び/又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。一部の実施形態では、ヘパリノイドは、ダナパロイド、デルマタン硫酸、スロデキシド、これらの組合せ及び/又はそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗凝固薬は低分子量ヘパリンであり、より好ましくは、前記低分子量ヘパリンはエノキサパリン又はその薬学的に許容される塩である。
【0013】
一部の実施形態では、本発明の組成物は皮下投与される。一部の実施形態では、エノキサパリン又はその薬学的に許容される塩、及びATIIIを含む組成物は皮下投与される。一部の実施形態では、低分子量ヘパリンの治療有効量は、約20mg~約180mg、好ましくは20mg~40mgの1日量である。一部の実施形態では、エノキサパリンは、1日当たり約20mg~約180mg、又は1日当たり約20mg~約40mgの量で投与され得る。一部の実施形態では、低分子量ヘパリンの治療有効量は約0.1~約2.5mg/kgである。一部の実施形態では、低分子量ヘパリンの治療有効量は0.5~約1.5mg/kgである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の研究における、収容され、登録された患者の流れを示す図である。PE=肺塞栓症。
図2】ベースライン及び新鮮凍結血漿(FFP)又はAT濃縮物による処理後の外傷患者血漿におけるアンチトロンビン(AT)レベルを示す図である。ATは活性パーセントとして示される。FFP処理は30体積%であった。ATは120、150、180、又は200%の最終濃度まで補充した。データは標準偏差と共に平均として示される。点線は検出限界を表す。*は、ボンフェローニ補正を用いた一元配置分散分析後のベースライと比較したp<0.05を表す。
図3】エノキサパリン処理後の抗FXa及びトロンビンのレベルを示す図である。抗FXaレベル(A)及びピークトロンビンの変化(B)は、FFP又はAT補充の存在下又は非存在下のエノキサパリンによるそれらの血漿の処理後に外傷患者において測定された。デルタピークは、ベースラインの未処理血漿と比較した処理された血漿におけるトロンビンの変化パーセントを表す。データは標準偏差と共に平均として示される。*はボンフェローニ補正を用いた一元配置分散分析後のエノキサパリン単独と比較したp<0.05を表す。
図4】PE対PEなし患者のエノキサパリン処理後の抗FXa及びトロンビンのレベルを示す図である。抗FXaレベル(A)及びピークトロンビンの変化(B)は、FFP又はAT補充の存在又は非存在下のエノキサパリンによる処理後の、PEを発症した(白い棒)又は発症しなかった(黒い棒)患者からの血漿において測定された。データは標準偏差と共に平均として示される。*はシダック補正を用いた二元配置分散分析後の「PE」及び「PEなし」患者を比較したp<0.05を表す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書で使用される場合、セクションの見出しは、構成的な目的のためだけであり、記載される主題を限定すると決して解釈されるべきでない。特許、特許出願、論文、書籍、論説、及びインターネットウェブページを含むが、これらに限定されない、この出願において引用される全ての文献及び同様の資料は、任意の目的でそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。組み込まれる参考文献内の用語の定義が、本教示において提供される定義と異なるようである場合、本教示において提供される定義が支配するものとする。わずかな非実質的な逸脱が本明細書の本教示の範囲内であるように、本教示において論じられる温度、濃度、時間等の前に言外の「約」があることがわかるであろう。
【0016】
この出願において、単数形の使用は、そうでないことが明確に述べられていない限り複数形を含む。また、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(contain)」、「含有する(contains)」、「含有する(containing)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含む(including)」の使用は、限定することを意図しない。
【0017】
この明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに指示しない限り、複数の参照物を含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「約」は、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、質量又は長さに対して20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1%程度だけ変動する数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、質量又は長さを意味する。
【0019】
所与の化合物の用語「薬学的に許容される塩」は、所与の化合物の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的にもその他の点でも望ましくないことはない塩を指す。「薬学的に許容される塩」又は「生理学的に許容される塩」は、例えば、無機酸又は有機酸との化合物(又は重水素化類似体、立体異性体、又は立体異性体の混合物)の塩を含む。加えて、本明細書に記載の化合物が酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は酸性塩の溶液を塩基性化することによって得られ得る。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基化合物から酸付加塩を調製するための従来の手順に従って、遊離塩基を適切な有機溶媒に溶解し、溶液を酸で処理することによって生産され得る。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用され得る様々な合成方法を認識しているであろう。薬学的に許容される酸付加塩は、無機酸及び有機酸から調製され得る。
【0020】
用語「処置」又は「処置すること」は、疾患若しくは障害を防止する若しくはそれに対して保護すること、つまり臨床症状を発症させないこと;疾患若しくは障害を阻害すること、つまり臨床症状の発症を阻止する若しくは抑制すること;及び/又は疾患若しくは障害を軽減すること、つまり臨床症状の後退を引き起こすことを含む、哺乳動物等の対象における疾患又は障害の任意の処置を意味する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「防止すること」は、それを必要とする患者の予防的処置を指す。予防的処置は、適切な用量の治療剤を、病気、状態、疾患、又は障害に苦しむリスクがある対象に提供し、これにより病気、状態、疾患、又は障害の開始を実質的に防ぐことによって実現され得る。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「抑制すること」は、それを必要とする患者の予防的処置を指す。予防的処置は、適切な用量の治療剤を、病気、状態、疾患、又は障害の根本原因に苦しむ対象に提供するが、病気、状態、疾患、又は障害の症状の開始を実質的に防ぐことによって実現され得る。
【0023】
ヒト医薬において、最終的な1種又は複数の誘導事象は未知であり得るか、潜在性であり得るか、又は患者は1種又は複数の事象の発生の十分に後まで確認されないので、「防止すること」と「抑制すること」を区別することは常に可能であるわけではないことが当業者によって理解されるであろう。したがって、本明細書で使用される場合、用語「予防」は、「処置」の要素として、本明細書で定義される通りの「防止すること」及び「抑制すること」の両方を包含することが意図される。
【0024】
用語「治療有効量」は、そのような処置を必要とする対象に投与される場合、本明細書で定義される通りの、処置を遂げるのに十分な、医薬組成物として典型的に送達される量を指す。一方、用語「組成物」はパーツキットであってもよく、必ずしも単位剤形に共配合された両方の活性物質である必要はない。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「重症患者」は、集中治療室(ICU)に収容され、ICUに少なくとも12時間滞在する患者を指す。一部の実施形態では、重症患者はICUに少なくとも24時間滞在する。一部の実施形態では、重症患者はICUに少なくとも2日間、3日間又は4日間滞在する。一部の実施形態では、重症患者はICUから出た後に病院に収容されたままである。
【0026】
「重症」又は「重症患者」は、
1.急性非代償性心不全、New York Heart Association(NYHA)クラスIII又はIV、
2.長期(≦2日)呼吸補助を必要としない急性呼吸不全、
3.敗血症性ショックを伴わない急性感染、
4.急性リウマチ障害(急性腰痛、坐骨神経痛、脊椎圧迫、脚の急性関節炎、又は炎症性腸疾患のエピソードを含む)又は
5.がん
を含むが、これらに限定されない1種又は複数の状態を有し得る。
【0027】
静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子は、
a)年齢>75歳、
b)抗凝固療法を必要としたVTEの既往歴、
c)予想される顕著な不動化≧3日(レベル1- トイレに行くことを許可されない床上安静)、
d)肥満(男性のボディマスインデックス(BMI)>30又は女性のBMI>28.6);
e)静脈瘤又は慢性静脈不全、
f)下肢運動麻痺、
g)中心静脈カテーテル留置、
h)ホルモン療法(抗アンドロゲン、エストロゲン又は選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM))、
i)慢性心不全、
j)慢性呼吸不全、
k)活動性膠原血管病、
l)現在の入院の原因になっている急性感染性疾患、
m)赤血球生成刺激剤、
n)炎症性腸疾患、
o)静脈圧迫(腫瘍、血腫又は動脈異常)、
p)ネフローゼ症候群、及び
q)遺伝性又は後天性血栓形成傾向、
r)又はこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。
【0028】
一部の実施形態では、重症患者は、上記の状態1~4の任意の1種又は複数を有し、上で概説された通りの少なくとも2つの静脈血栓塞栓症(VTE)リスク因子a)~q)又は正常上限の2倍を超えるD-ダイマー結果を有する。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「血栓症」は、循環系を通る血液の流れを塞ぐ血管内の血塊の形成を指す。一部の実施形態では、血栓症は、静脈内に形成する血塊である「静脈血栓症」である。用語「血栓塞栓症」は、外れて、血流によって運ばれて別の血管を塞ぐ塊(血栓)の血管内の形成を指す。塊は、例えば、とりわけ肺(肺塞栓症)、脳(脳卒中)、胃腸管、腎臓、脚の血管を塞ぎ得る。
【0030】
この開示はある特定の実施形態及び例の文脈内にあるが、当業者は、本開示が具体的に開示された実施形態を越えて、他の代替の実施形態及び/又は実施形態の使用並びにその自明の変形及び均等物に及ぶことを理解するであろう。加えて、実施形態のいくつかの変形形態が詳細に示され、記載されるが、この開示の範囲内である他の変形は、この開示に基づいて当業者に容易に明らかであろう。
【0031】
実施形態の特定の特徴及び態様の様々な組合せ又は部分組合せが作られ、依然として本開示の範囲内に入り得ることも企図される。本開示の様々な形態又は実施形態を形成するために、開示される実施形態の様々な特徴及び態様が互いに組み合わされ得る、又は互いに置き換えられ得ることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示される本開示の範囲は、上記の特定の開示された実施形態によって限定されるべきでないことが意図される。
【0032】
しかし、本開示の主旨及び範囲内の様々な変更及び変形は当業者に明らかになるので、この記載は、本開示の好ましい実施形態を示しているが、単なる実例として与えられていることが理解されるべきである。
【0033】
本明細書で提示される記載において使用される専門用語は、任意の限定された又は制限的な様式で解釈されることを意図していない。むしろ専門用語は単に、システム、方法及び関連構成要素の実施形態の詳細な記載と共に利用されている。更に、実施形態はいくつかの新規の特徴を含むことができ、そのうちのただ1つが、その望ましい特性を単独で担っているのでもなく、本明細書に記載の実施形態の実行に必須であると考えられることもない。
【0034】
本開示は、そのリスクがあると特定された患者において血栓症又は血栓塞栓症の発生を減少させるための方法及び組成物を提供する。一部の実施形態では、方法は、患者に治療有効量の未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びこれらの組合せからなる群から選択される抗凝固薬、並びにアンチトロンビンIII(ATIII)を投与する工程を含む。一部の実施形態では、血栓症は静脈血栓症である。一部の実施形態では、前記血栓塞栓症は静脈血栓塞栓症(VTE)である。
【0035】
一部の実施形態では、リスクがあると特定された患者は、身体外傷患者、周術期患者、周産期患者、運動制限を有する患者、がん患者、敗血症患者、全身性炎症反応症候群患者、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0036】
一部の実施形態では、患者は身体外傷患者であり、患者は鈍的外傷、穿通性外傷、又はこれらの組合せを受けている。
【0037】
驚くべきことに本発明者らは、抗凝固薬と、血漿ではなくATIIIの補充が、患者においてATIIIレベルを増加させ、トロンビン生成の抗凝固薬、例えばエノキサパリン媒介阻害を改善することを見出した。
【0038】
一部の実施形態では、患者は血栓塞栓性合併症のリスクがある。
【0039】
一部の実施形態では、患者は、中等度又は重度の運動制限及びVTEの他のリスク因子を有する。
【0040】
一部の実施形態では、集中治療室に収容されている又は集中治療室で治療されている重症患者又は患者は静脈血栓塞栓性疾患を発症するリスクがある患者である。一部の実施形態では、患者は、(a)急性非代償性心不全、(b)急性呼吸不全、(c)敗血症性ショックを伴わない急性感染、(d)急性リウマチ障害又は(e)がんの1種又は複数に苦しんでいる。一部の実施形態では、患者は移動性の減少に苦しんでいる。
【0041】
一部の実施形態では、急性非代償性心不全はNew York Heart Association(NYHA)クラスIII又はIVである。一部の実施形態では、急性呼吸不全は長期(≦2日)呼吸補助を必要としない。一部の実施形態では、急性感染は敗血症性ショックを伴わない。一部の実施形態では、患者は、1種又は複数の急性リウマチ障害(急性腰痛、坐骨神経痛、脊椎圧迫、脚の急性関節炎、又は炎症性腸疾患のエピソードを含む)に苦しんでいる。
【0042】
一部の実施形態では、患者は静脈血栓塞栓性疾患を発症するリスクがある。別の実施形態では、患者は移動性の減少に苦しんでいる。別の実施形態では、血栓症は静脈血栓症である。
【0043】
一部の態様では、血栓症は基礎疾患又は状態の特徴である。そのような疾患又は状態の非限定的な例は、急性冠動脈症候群、心筋梗塞、不安定狭心症、難治性狭心症、血栓溶解療法後又は冠動脈形成術後に発生する閉塞性冠動脈血栓、血栓媒介性脳血管症候群、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、血栓塞栓性脳卒中、全身性塞栓症、虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症、心房細動、非弁膜症性心房細動、心房粗動、一過性虚血発作、静脈血栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓、凝固障害、播種性血管内凝固、血栓性血小板減少性紫斑病、閉塞性血栓血管炎、ヘパリン起因性血小板減少症に関連する血栓性疾患、体外循環に関連する血栓性合併症、器具使用に関連する血栓性合併症、人工装具の取付けに関連する血栓性合併症、血栓溶解療法又は経皮経管的冠動脈形成術に起因する閉塞性冠動脈血栓形成、静脈血管系における血栓形成、播種性血管内凝固障害、凝固因子の急速な消費及び全身性凝固がある状態であって、広範な臓器不全に至る、微小血管系全体に発生する生命を脅かす血栓の形成、出血性脳卒中、腎透析、血液酸素化、及び心臓カテーテル検査をもたらす状態を含む。
【0044】
一部の実施形態では、疾患又は状態は、塞栓性脳卒中、血栓性脳卒中、静脈血栓症、深部静脈血栓症、急性冠動脈症候群、及び心筋梗塞からなる群から選択される。
【0045】
一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.2IU/mL超に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.3IU/mL超に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.4IU/mL超に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.5IU/mL超に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.2~約2.5IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される。一部の実施形態では、ATIIIは患者のATIIIレベルを約1.5~約2.0IU/mLの範囲に増加させる濃度で投与される。
【0046】
一部の実施形態では、ATIIIは血漿由来又は組換えATIIIである。
【0047】
エノキサパリン
一部の実施形態では、エノキサパリンはエノキサパリンのナトリウム塩である。エノキサパリンナトリウムは、ブタ腸粘膜に由来するヘパリンベンジルエステルのアルカリ解重合によって得られる生体物質である。その構造は、鎖の非還元末端の2-O-スルホ-4-エンピラノスロン酸基及び還元末端の2-N,6-O-ジスルホ-D-グルコサミンを特徴とする。エノキサパリン構造の約20%(15%~25%の範囲)は、多糖鎖の還元末端に1,6アンヒドロ誘導体を含有する。平均分子量は約4500ダルトンである。エノキサパリンナトリウムの非限定的な例は、商標名Lovenox(登録商標)で商品化されている。Lovenox 100mg/mLの濃度は、0.1mLの注射用水当たり10mgのエノキサパリンナトリウムを含有する(およそ1000IUの抗第Xa因子活性[W.H.O. First International Low Molecular Weight Heparin Reference Standardを参照して])。
【0048】
アンチトロンビンIII
アンチトロンビン(AT)は、通常およそ12.5mg/dLの濃度でヒト血漿中に存在し、トロンビンの主な血漿インヒビターである、分子量58,000のアルファ2-糖タンパク質である。ATによるトロンビンの不活性化は、トロンビンの活性セリン及びATのアルギニン反応部位の相互作用が関与する、両者の不活性な1:1の化学量論的複合体をもたらす共有結合の形成によって発生する。ATは、第IXa、Xa、XIa、及びXIIa因子を含む凝固カスケードの他の成分並びにプラスミンを不活性化することもできる。ATの非限定的な例は、商標名Thrombate III(登録商標)(Grifols Therapeutics LLC社、USA)で商品化されている。
【0049】
この発明の組成物は、経口投与用の錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、若しくはエリキシル剤、坐剤、無菌液剤若しくは懸濁剤若しくは注射可能な投与等の形態であり得るか、又は成形品に組み込まれ得る。投与の方法は、対象ごとに変わり、処置される哺乳動物の種類、その性別、体重、食事、併用薬、全体的な臨床状態、採用される特定の化合物及び/又は塩、これらの化合物及び/又は塩が採用される特定の使用等の因子、並びに医学分野の当業者が認識する他の因子に依存する。
【0050】
本発明の組成物は、所望の純度を有する活性剤を生理学的に許容される担体、賦形剤、安定剤等と混合することによって、保存又は投与用に調製されてもよく、持続放出又は時限放出製剤で提供され得る。治療的使用に許容される担体又は希釈剤は、医薬分野で周知されている。
【0051】
一部の実施形態では、治療的投与のために使用される投与製剤は無菌である。無菌性は、0.2ミクロン膜等の滅菌膜に通す濾過によって、又は他の従来の方法によって容易に実現される。製剤は、典型的には、凍結乾燥形態で又は水溶液として保存される。この発明の調製物のpHは、典型的には3~11、又は5~9、又は7~8である。投与の経路は、静脈内(ボーラス及び/又は注入)、皮下、筋肉内等の注射によるか、又は結腸、直腸、鼻若しくは腹腔内であり得る。坐剤、埋め込みペレット剤又は小型シリンダー、エアロゾル、経口投与製剤(例えば、錠剤、カプセル剤及びロゼンジ剤)並びに局所製剤、例えば、軟膏剤、滴下剤及び皮膚貼付剤等の他の剤形が使用され得る。滅菌膜は、望ましくは生分解性ポリマー又は合成シリコーン、例えば、Silastic、シリコーンゴム又は商業的に入手可能な他のポリマー等の不活性材料を採用し得るインプラント等の成形品に組み込まれ得る。好ましくは、本発明の組成物は皮下投与される。
【実施例
【0052】
本発明は、以下の実施例を参照することにより更に定義される。組成物及び方法の両方に対する多くの変形が、本発明の範囲から逸脱することなく実行され得ることは、当業者に明らかであろう。
【0053】
研究は、TX、HoustonのMemorial Hermann Hospital、レベル-1外傷センター、及びHoustonのUniversity of Texas Health Science Centerで行われた、前向きに収集されたデータの単一施設、後ろ向きコホート分析であった。最高レベル外傷チーム発動の基準を満たし、入院から72時間以内に患者又は法的に認定された代理人から同意が得られた、2012年10月~2016年10月に収容された成人患者(≧16歳)を含む研究については、Institutional Review Boardからの事前承認が得られた(HSC-GEN-12-0059)。患者が24時間以内に退院又は死亡した場合、同意の棄権証を得た。患者は、<16歳であった場合、妊娠していた場合、囚人であった場合、全体表面積の20%を超える火傷を有していた場合、入院前抗凝固薬を服用していた場合、24時間以内に死亡した場合、又は同意が得られなかった場合、除外された。前向き検出力分析は、0.05のアルファ及び0.90%の検出力を使用して、トロンビン生成の20%差を検出するのに一群当たり50人の患者(血栓塞栓性事象を有する対有しない)で十分であると推定した。
【0054】
救急部への入院時に患者背景、バイタルサイン、標準臨床検査値、損傷の機序及び重症度、並びに入院前の輸液及び/又は血液製剤投与を収集した。転帰(PE、非入院日数、人工呼吸器非使用日数、集中治療室(ICU)非在室日数、死亡率)、並びに24時間の血液製剤投与及び輸液を患者記録から収集した。年齢、性別、損傷機序及び損傷重症度に基づいて、PEを有する及び有しない患者を比較するためにマッチさせた群設計を使用した。全てのPE患者を特定した後、この時間枠内に収容された、PE群と同様の年齢、性別、並びに損傷機序及び重症度を有する非PE患者を選択した。マン・ホイットニー検定を行い、これらの特徴をPE及び非PE群間で比較した。p=0.06に近づく差異が特定された場合、新しい非PE患者を選択し、群が適切にマッチするまで比較を再実行した。
【0055】
PE分類
施設は日常的に、DVTについてスクリーニングすることなくPE症状をモニタリングしているので、VTEは、この研究ではPEの発症と定義した。患者が咳又は息切れ等のPEに関連する軽度な症状を示す場合でさえ、又は無症候性肺塞栓が、他の徴候の検査過程中に偶発的に特定された場合、胸部の標準的な造影コンピュータ断層撮影血管造影図(CTA)を実施し、診断を確定した。PEの全ての診断は、放射線基準を使用して臨床的に確定され、CTA由来の胸部画像は、肺血管系における造影剤充填欠損についてスタッフの放射線科医により調べられた。次いでPE診断は、充填欠損の場所に基づいて、中枢(左及び/若しくは右主肺動脈又は1つ若しくは複数の葉動脈の関与)、又は区域/亜区域(区域及び/又は亜区域動脈の関与)と分類された。
【0056】
試料採取
患者試料を入院時に、エノキサパリンの臨床投与前に採取した。標準的な病院臨床検査のための血液採取と共に、追加の20mLの血液を研究目的で得た。血液を、3.2%クエン酸を含有するバキュテナー管に移し、30分後に3,200rpmで20分間、室温で遠心分離し、乏血小板血漿を得た。次いで血漿試料を等分し、分析まで-80℃で保存した。別のプロトコール(HSC-MS-09-0314)下の15人の健常な同意したボランティアからも血漿を採取した。ボランティアは、抗凝固薬又は抗血小板薬を服用していた場合、妊娠していた場合、又は心血管疾患の履歴を有した場合、除外された。健常対象は、年齢の中央値31(30、35)を有し、50%男性であり、63%コーカサス人であった。5人のドナーからの新鮮凍結血漿(FFP)をGulf Coast Regional Blood Centerから購入した。5人のドナーのプールを全てのex vivo実験に使用した。
【0057】
血漿分析
クエン酸化血漿試料を使用直前に解凍した。最初に、健常な無傷のボランティアからの血漿を使用して、エノキサパリンのex vivo投与を最適化した。トロンビン生成の50%阻害を達成するために必要なエノキサパリンのex vivo用量は、文献[22~24]において以前に特定されたものと同様の0.13IU/mLであることが見出された。本発明者らが血漿に0.13IU/mLのエノキサパリン用量を混ぜたことを考慮して、エノキサパリンに応答した本発明者らの標的抗FXaレベルは0.13IU/mLと定義された。全ての血漿試料をex vivoで0.13IU/mLのエノキサパリンで処理することによって、健常な無傷のボランティアと外傷患者とのエノキサパリンに対する応答を比較した。30体積%の用量のFFP又はベースライン値に基づいて80%、120%、150%、180%、及び200%の最終濃度までのGrifols社によって提供されたTHROMBATE III(登録商標)の形態のAT濃縮物を使用して、外傷患者試料にATを追加で補充した。これは、エノキサパリンに対する患者血漿応答を、健常対照において観察されるレベルまで改善するために行われた。本発明者らの以前の研究と同様に、本発明者らは、6単位の血漿を輸血する効果をモデル化するために30体積%の用量のFFPを選んだ[25]。計算は、THROMBATE III(登録商標)の所与のロットについて製造業者によって提供された活性(IU)(およそ500IU/10mL)及び患者のベースラインAT活性レベルに基づいた。AT補充を、ACL-TOPを使用してAT活性を測定することによって確認した。トロンビン生成及び抗FXaレベルを測定して、エノキサパリン及びATの補充に対する応答を判定した。健常ボランティアの血漿は、エノキサパリンによる処理前後の正常なAT、抗FXa、及びトロンビン生成レベルについての無傷対照として機能した。
【0058】
ACL-TOP Coagulation Analyzer(Instrumentation Laboratory社、Bedford MA)を使用して、AT活性及び抗FXaレベルを発色により決定した。以前に記載されている通りに、較正された自動トロンボグラム(CAT)(Thermo Fisher Scientific社、Waltham MA)を使用してトロンビン生成を測定した[8]。CAT分析から得られる関連パラメーターは、ラグタイム(トロンビン生成の開始までの時間;分)、ピーク(トロンビン最高生成量;nM)、ピークまでの時間[ttpeak](ピークに到達するのにかかる時間;分)、内因性トロンビン活性[ETP](経時的に生成されたトロンビンの総量;nM)、及び速度(トロンビン生成曲線の傾きによって決定されるトロンビン生成の速度;nM/分)を含む。
【0059】
統計
GraphPad Prism 6(La Jolla、CA)を使用して全ての分析を行った。多重比較について、それぞれボンフェローニ又はシダック補正を用いて一元配置又は二元配置分散分析検定を行った。指示される場合、マン・ホイットニー検定を行った。データはp<0.05で有意と見なした。
【0060】
結果
患者コホートの登録を記載するコンソートダイアグラムが図1に提供される。研究期間中、6,089人の最高レベル外傷発動を本発明者らの施設で受けた。
【0061】
これらのうち3,797人が本発明者らの研究における参加基準を満たした。血漿試料は、これらの患者のうち2,613人について本発明者らのバイオレポジトリーにおいて入手可能であった。合計55人のPEを有する患者が研究期間中に特定された。これらの患者のうち、3人は入院前抗凝固薬使用のために除外し、7人は生存不可能な外傷性脳損傷による死亡ゆえに除外された。これにより、完全分析のための100人の患者が残った(PEを有しない46人及びPEを有する54人)。PE診断までの時間の中央値は入院の9日目(4、14)であった。PEを発症したこれらの患者のうち、68.5%は症候性であり、31.5%は無症候性であった。ほとんどのPEは区域又は亜区域動脈に位置し(67%)、残りは中枢に位置した(33%)。PE患者のおよそ85%が、血栓除去術、tPA注入、下大静脈(IVC)フィルター留置術、未分画ヘパリン点滴、又は別の抗凝固薬を含む血栓症関連介入を受けた。8人の患者(15%)だけが、エノキサパリン単独で維持された。患者背景、損傷の種類/重症度、及び転帰をTable 1(表1)にまとめる。PEを発症した患者と発症しなかった患者の間に、背景又は損傷の種類及び重症度の明らかな差異はなかった。しかし、PEを発症した患者は、有意に多い量の入院前クリスタロイド並びに搬送中及び入院の最初の24時間にわたる血液製剤の単位を受けた(全てp<0.05)。更に、PEを発症した患者は、有意に少ない人工呼吸器非使用日数、ICU非在室日数、及び非入院日数(全てp<0.01)を有したが、全体の院内死亡率は同じであった(8.5%対9.3%;p>0.05)。最後に、骨盤骨折率の差異は観察されなかったが、PEを発症した患者は下肢骨折率の有意な増加を有した(28%対11%;p<0.05)。
【0062】
【表1】
【0063】
しかし、そのような骨折の存在は、AT補充あり又はなしでのATレベル、AT欠乏症率、トロンビン生成、又はエノキサパリンに対する応答性等のこの研究の関連する転帰に影響を及ぼさなかった。
【0064】
健常血漿に対するエノキサパリンの効果対外傷患者血漿に対するエノキサパリンの効果。
以前の報告(7)と同様に、ラグタイムの短縮、ピークの増加、ピークまでの時間の減少、及びトロンビン生成速度の増加によって証明される通り、ベースラインのトロンビン生成は、健常ドナーと比較して外傷患者において有意に上昇した(Table 2(表2))。
【0065】
【表2】
【0066】
外傷患者は、健常対照と比較してエノキサパリン処理後に有意に低い抗FXaレベルも示した。エノキサパリン処理に応答して、外傷患者の59%と比較して、全ての健常ドナーが0.13IU/mLの標的抗FXa応答を達成した(p<0.01)。健常対照と比較して、外傷患者は、ピークトロンビン阻害の減少、内因性トロンビン活性(ETP)阻害の減少、及びトロンビン生産速度の延長の減少によって証明される通り、エノキサパリンによる処理後にトロンビン生成の阻害の有意な減少を示した。
【0067】
FFP又はATによるエノキサパリンの補充
FFP又はATによる補充がATレベルを増加させ、エノキサパリンに対する応答を改善するかどうかを決定するために、外傷患者血漿をex vivoで、FFP(30体積%)又はAT(120~200%の最終濃度)に加えてエノキサパリン(0.13IU/mL)で処理した(図2)。FFPは98(96、102)のベースラインATレベルを有した。FFPによる処理はATレベルに対して効果を有しなかったが、AT補充はベースラインATレベルを有意に増加させた(検出限界=180%)。FFPによる処理はエノキサパリン単独から抗FXaレベルを改善しなかったが、AT補充エノキサパリンは抗FXaレベルを用量依存的に増加させた(図3A:全ての用量p<0.05)。
【0068】
FFP処理は治療応答率を59%から80%に改善したが、120%までのATの補充は、治療的抗FXaレベルに達した92%の外傷患者血漿をもたらした。AT補充を150%以上に上げた後、これは100%に増加した。加えて、FFP又はAT補充が、トロンビン生成を阻害するエノキサパリンの能力を改善できるかどうかを決定している間に、本発明者らは、FFP及びATの両方がエノキサパリン単独と比較してピークトロンビン阻害を有意に増加させることができることを見出した(全てp<0.05)。最大の阻害が150~200%のATレベルで観察された(図3B)。
【0069】
PEを有する及び有しない患者からの血漿におけるエノキサパリンの効果。
ベースラインAT活性は、AT欠乏症の発生率の差異がない群間で同様であった(Table 3(表3))。しかし、トロンビン生成を比較する場合、PEを発症した患者はベースラインで、PEを有しない患者と比較してトロンビン生成の有意に高いピーク(13%)及び速い速度(24%)を有した。更に、PEを発症した患者は、抗FXaレベル及びトロンビン生成の変化の両方によって測定して、ex vivoでエノキサパリンに対する有意に減少した応答を有した。エノキサパリンに応答した抗FXaレベルは、PEを発症した患者と比較して、発症しなかった患者からの血漿において有意に高かった(0.14対0.13IU/mL;p<0.05)。エノキサパリンによるex vivo処理は、PEを発症しなかった患者においてピークトロンビンの30.6%の減少の中央値をもたらしたが、PEを発症した患者においてはピークトロンビンのわずか20.7%の減少が検出された(p<0.01)。
【0070】
【表3】
【0071】
PE患者血漿におけるATによるエノキサパリンの補充。
エノキサパリンへのex vivo応答に対するATの補充の効果を決定するために、PE及びPEなし患者の両方からの血漿をエノキサパリン及びATで処理し、抗FXa及びトロンビン阻害の変化を観察した。ATは、試験した全ての患者からの血漿において、全ての用量で、有意に抗FXaレベルを増加させ、ピークトロンビン生成を減少させた。エノキサパリン単独により、PE患者血漿は、PEなし患者と比較して低い抗FXaレベル(図4A)及びピークトロンビン阻害の減少(図4B)を示したが、AT補充が120%以上である場合、エノキサパリン応答のこれらの差異はもはや明らかでなかった。
【0072】
考察
積極的なプロトコール化された血栓予防にもかかわらず、外傷患者集団におけるVTEの持続率は、新しい、証拠に基づいた処置戦略を必要とする重大な健康管理上の懸念である。AT濃縮物は、先天性AT欠乏症を処置するために使用される、FDA承認の臨床的に利用可能な治療薬である。今日まで、外傷患者においてVTE予防を改善することにおけるAT補充の潜在的な役割を示すデータはほとんどない。ここで本発明者らは、重度損傷患者、特にPEを発症した患者からの血漿試料がエノキサパリンに対する感受性の減少を示し、ATの補充がエノキサパリン媒介トロンビン阻害をex vivoで改善することを実証する。
【0073】
エノキサパリン及び他の低分子量ヘパリン分子は、回復中の救命救急患者において最もよく利用される予防剤である。エノキサパリンは、抗FXaレベル及びトロンビンのAT阻害の両方を増加させ、VTEの防止において不可欠な補因子となる。AT欠乏症は一般的に、血液学的基準によって、80~120%の範囲の正常レベルを有する活性が<80%と定義される。この定義によると、入院中AT欠乏症は、この研究に登録された外傷患者のおよそ20%において発生し、これは他で報告された率と同様である[3]。患者の大部分は正常限界内のATレベルを有したが、全患者血漿試料の半分だけが、エノキサパリンによる処理後に0.13IU/mLの標的抗FXaレベルを達成した。
【0074】
本発明者らは以前に、健常対象と比較して外傷患者が、VTEの既知のリスク因子[7]である非常に上昇したトロンビン生成を示すことを示した[8]。実際、顕著な上昇がこの研究でも検出された。このような過度の長引くトロンビン生成の状況において、ATの循環レベルは、エノキサパリンによる予防的抗凝固を促進するのに十分でない可能性がある。本発明者らの知見によると、そのような高レベルのトロンビン生成と競うには、超生理的レベルのATIIIが必要であり得るようである。ここで本発明者らは、外傷患者血漿への120%までのATの補充がエノキサパリン有効性を59%から92%に上げたこと、及びATを120%超に増加させることが抗FXaレベル及びトロンビン生成の阻害の両方に関するエノキサパリン応答を最適化したことを示す。ATレベルを150%に上げた場合、100%の最大有効性が得られた。これらの知見は、文献中の他の報告と一致する。敗血症の動物モデルは、高用量のAT(約160%)が、凝固亢進の緩和、炎症の減少、及び臓器障害からの保護に最も有益であることを示した[26]。ATIII活性をそのような高レベルで維持することは、全ての外傷患者には実現可能でない可能性があるが、それらの抗FXaレベルの日常的な評価後に潜在的な応答性について患者をスクリーニングすることは適切であり得る。治療的範囲を達成しない患者は、ATIII療法の最良の候補であり得る。これは、区域又は亜区域血栓を有する患者に、危険な介入の有効で安全な代替方法も提供する可能性がある。
【0075】
入院時の同様のATレベルにもかかわらず、後にPEを発症した患者は、発症しなかった患者と比較してエノキサパリンに対する有意に減少した応答を有し、この欠陥はAT補充により正された。この知見は、ここで評価していないエノキサパリン抵抗性の他の機序が存在し得るが、それでもATレベルを修正することが血漿エノキサパリン感受性を増加させるための有効な介入であることを示唆する。
【0076】
FFPは過去にヘパリン抵抗性を処置するために使用されてきたが[17、28]、本発明者らはここで、それが著しい効果を有することを見出さなかったが、このことは以前の研究と一致する[18]。70kgの成人におけるおよそ6単位又は約20ml/kgに等しい30体積%でさえも、FFPはATレベルにも、エノキサパリンに対する抗FXaの応答にも効果を有しなかった。しかし、FFPはトロンビン生成をエノキサパリン単独よりも有意に減少させることができた。これは、組織因子経路インヒビター、プロテインC、プロテインS及びトロンボモジュリン等のトロンビン生産に影響を及ぼす、バランスのとれたFFPに存在する他の循環抗凝固物質に加えて、内因性ATに起因する可能性が高い。したがって、以前に示された通り、FFPの投与は内因性凝固亢進血漿をバランスのとれた血漿で希釈することによって、トロンビン生成を緩和するように機能し得るが[25]、本発明者らのデータは、それがPE予防の改善に対するごくわずかな直接的効果を有することを示唆する。
【0077】
まとめると、外傷はATレベルの減少、トロンビン生成の増加及びエノキサパリンに対する応答性の減少に関連する。PEを発症した患者において、トロンビン生成はより高く、エノキサパリンに対する応答はより低く、FFPではなくATによるex vivo処理は、トロンビン生成のエノキサパリン媒介阻害の改善をもたらした。
【0078】
略語
AIS、簡易損傷スケール;ANOVA、分散分析;AT、アンチトロンビンIII;CAT、較正された自動トロンボグラム;CTA、コンピュータ断層撮影血管造影図;DVT、深部静脈血栓症;ETP、内因性トロンビン活性;FFP、新鮮凍結血漿;FXa、凝固因子Xa;GCS、グラスゴーコーマスケール;ICU、集中治療室;ISS、損傷重症度スコア;Kg、キログラム;PE、肺塞栓症;RBC、赤血球;RPM、分当たりの回転数;ttPeak、ピークまでの時間;VTE、静脈血栓塞栓症;w-RTS、加重修正外傷スコア。
(参考文献)
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】