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特表2023-520347SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物
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  • 特表-SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物 図1
  • 特表-SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物 図2
  • 特表-SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/19 20060101AFI20230510BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230510BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230510BHJP
   A61K 31/365 20060101ALI20230510BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230510BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K36/19
A61P31/14
A61P31/12
A61P11/00
A61K31/365
A23L33/105
A23L2/00 F
A23L2/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558117
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 KR2021003462
(87)【国際公開番号】W WO2021206309
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043655
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0089909
(32)【優先日】2020-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522375958
【氏名又は名称】トンファ ファーム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ユン ジュ ビョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン ユン ハ
(72)【発明者】
【氏名】リ マ セ
(72)【発明者】
【氏名】リ ヒョン ヨン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B117
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD01
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4B018MF01
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4B117LK11
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4C086AA01
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4C088CA06
4C088MA02
4C088NA05
4C088NA14
4C088ZA59
4C088ZB33
(57)【要約】
本発明は、キツネノマゴ(Justicia procumbens)有機溶媒抽出物を有効成分として含む、COVID-19疾患の予防または治療用の薬学的組成物、ジュスチシジンA(Justicidin A)を有効成分として含む、COVID-19疾患の予防または治療用の薬学的組成物、ジュスチシジンB(Justicidin B)を有効成分として含む、COVID-19疾患の予防または治療用の薬学的組成物、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl Justicidin B)を有効成分として含む、COVID-19疾患の予防または治療用の薬学的組成物、およびこれらのCOVID-19疾患の予防または改善用の食品組成物に関する。本発明のキツネノマゴ無水エタノール抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、および6’-ヒドロキシジュスチシジンBは、有効なSARS-CoV-2ウイルス抑制能を示すため、SARS-CoV-2ウイルスによって引き起こされる疾患を効果的に予防、治療、または改善することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キツネノマゴ(Justicia procumbens L.)有機溶媒抽出物を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は、炭素数1以上4以下のアルコールである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、エーテル、クロロホルム、およびアセトンから選択されるいずれか一つ以上である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、無水エタノールである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記SARS-CoV-2による疾患は、コロナウイルス感染症-19である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記コロナウイルス感染症-19の症状は、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺炎、痰、喉の痛み、頭痛、喀血、吐き気、および下痢のうちのいずれか一つである、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記SARS-CoV-2による疾患は、呼吸器疾患である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記呼吸器疾患は、肺炎である、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
キツネノマゴ(Justicia procumbens L.)有機溶媒抽出物を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物。
【請求項10】
前記食品は、健康機能食品または飲料のうちのいずれか一つ以上である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ジュスチシジンA(Justicidin A)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項12】
ジュスチシジンA(Justicidin A)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物。
【請求項13】
前記食品は、健康機能食品または飲料のうちのいずれか一つ以上である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ジュスチシジンB(Justicidin B)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項15】
ジュスチシジンB(Justicidin B)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物。
【請求項16】
前記食品は、健康機能食品または飲料のうちのいずれか一つ以上である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl Justicidin B)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項18】
6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl Justicidin B)を含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物。
【請求項19】
前記食品は、健康機能食品または飲料のうちのいずれか一つ以上である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
キツネノマゴ抽出物を有効成分として含む、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に対する抗ウイルス用組成物。
【請求項21】
ジュスチシジンA(Justicidin A)を有効成分として含む、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に対する抗ウイルス用組成物。
【請求項22】
ジュスチシジンB(Justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に対する抗ウイルス用組成物。
【請求項23】
6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl Justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に対する抗ウイルス用組成物。
【請求項24】
キツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための使用。
【請求項25】
ジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための使用。
【請求項26】
ジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための使用。
【請求項27】
6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための使用。
【請求項28】
SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるキツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む薬学的組成物の使用。
【請求項29】
SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む薬学的組成物の使用。
【請求項30】
SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物の使用。
【請求項31】
SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造における6’-ヒドロキシジュスチシジンBを有効成分として含む薬学的組成物の使用。
【請求項32】
キツネノマゴ有機溶媒抽出物を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法。
【請求項33】
ジュスチシジンA(justicidin A)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法。
【請求項34】
ジュスチシジンB(justicidin B)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法。
【請求項35】
6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キツネノマゴ(Justicia procumbens)有機溶媒抽出物およびその活性成分を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)は、2019年に発生した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2であり、一本鎖陽方向鎖RNAウイルス(positive-sense single-stranded RNA virus)に分類される。このウイルスによって感染した疾患をコロナウイルス感染症-19(Coronavirus disease 2019)と命名し、略してCOVID-19という。世界保健機関(World Health Organization、WHO)では、新型コロナウイルス感染症の世界的流行(Coronavirus pandemic)を公式発表し、2020年12月現在、大韓民国の感染者数は4万人以上に迫っており、調査によると世界で約7000万人以上が感染し、現在も感染は広がり続けている。
現在、COVID-19の治療剤として、ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus、HIV)の治療剤であるカレトラ(Kaletra、主成分:Lopinavir)やエボラウイルスの治療剤であるレムデシビル(Remdesivir)などのCOVID-19に対する臨床試験が行われている。
キツネノマゴ科(Acanthaceae)キツネノマゴ属(Justicia genus)は、約600種からなっている。代表的なキツネノマゴ属の植物としては、Justicia procumbens、Justicia pectoralis、Justicia gendarussa、Justicia anselliana、およびJusticia adhatodaなどがあり、キツネノマゴ属の植物は、抗ウイルス効果をはじめとする様々な生理学的活性があることが知られているが、それぞれの生理学的活性を示す活性成分については、まだ研究が十分に行われていない。このうちキツネノマゴ(Justicia procumbens)は、一年草であって、韓国、日本、中国、インドなどに分布する。キツネノマゴの薬理学的活性としては、全草のメタノール抽出物が、ウサギの血小板凝集および癌細胞の増殖を抑制する作用が知られており、地上部(Aerial part)のメタノール抽出物およびリグナン(Lignan)系の主要構成成分が、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus、VSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)などに対して抑制効果があることが知られている(Asano,et al.,1996;XU Xin-Ya,et al.,2019)。
しかしながら、SARS-CoV-2に関連する効果については、まだ知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、キツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、キツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、ジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、ジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、ジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、ジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することである。
また、本発明の目的は、6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は、キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
また、本発明は、キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)に対する抗ウイルス用組成物を提供する。
また、本発明は、キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の食品組成物を提供する。
また、本発明は、キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または改善用の化粧料組成物を提供する。
本発明のジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)は、キツネノマゴから分離して精製したものまたは合成したものを全て含む。
本発明のキツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)は、SARS-CoV-2の感染および増殖を抑制でき、これによりSARS-CoV-2による疾患を効果的に予防、治療、または改善することができる。
本発明のキツネノマゴ抽出物は、有機溶媒抽出物であってもよい。前記有機溶媒は、炭素数1以上4以下のアルコールであってもよい。
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、エーテル、クロロホルム、およびアセトンから選択されるいずれか一つ以上であってもよい。前記有機溶媒は、例えば、無水エタノールであってもよい。
前記SARS-CoV-2による疾患は、コロナウイルス感染症-19であり得る。前記コロナウイルス感染症-19は、呼吸器疾患であり得る。前記呼吸器疾患は、肺炎であり得る。前記コロナウイルス感染症-19の症状は、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、痰、喉の痛み、頭痛、喀血、吐き気、および下痢のうちの少なくとも1つであり得る。
本発明の薬学的組成物は、SARS-CoV-2による疾患を予防し治療するための通常の方法によって、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、エアロゾル、注射溶液などの形態に剤形化して使用されてもよい。例えば、本発明の薬学的組成物に含まれてもよい担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよび鉱物油が挙げられる。製剤化する場合は、通常用いられる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて調製される。
経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられ、これらの固形製剤は、複合組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンなどを混ぜて調製されてもよい。また、単に賦形剤以外に、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの潤滑剤が用いられてもよい。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられ、よく用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが用いられてもよい。
非経口投与のための製剤としては、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが挙げられる。非水性溶剤および懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどの植物性油、オレイン酸エチルなどの注射可能なエステルなどが用いられてもよい。
また、本発明の薬学的組成物は、さらに、担体、賦形剤または希釈剤を含んでもよい。担体、賦形剤または希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、二酸化ケイ素などの鉱物などが使用されてもよい。
本発明による薬学的組成物の投与量は、薬学的に有効な量でなければならない。「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な恩恵/リスク比で疾患を予防または治療するのに十分な量を意味し、有効容量の水準は、製剤化方法、患者の状態および体重、性別、年齢、重症度、薬物の形態、投与経路および期間、排泄速度、薬物に対する感受性などの要因に応じて、当業者により多様に選択できる。有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用および他の薬剤との併用可能性によって変わる。
本発明によるキツネノマゴ有機溶媒抽出物の投与量または服用量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度によってその範囲が様々であるが、成人を基準として0.001mg/kg~1000mg/kgを1回から数回に分けて服用することが好ましい。
本発明の薬学的組成物は、マウス、家畜、ヒトなどの哺乳動物に対して様々な経路を介して投与されてもよい。すべての投与方式は予想可能であり、例えば、経口、非経口、静脈内、真皮内、および皮下注射によって投与されてもよい。
また、別の一態様として、本発明は、キツネノマゴ有機溶媒抽出物を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法を提供する。
また、本発明は、ジュスチシジンA(justicidin A)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法を提供する。
また、本発明は、ジュスチシジンB(justicidin B)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法を提供する。
また、本発明は、6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を含む薬学的組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療方法を提供する。
本発明において、前記対象は、動物を指し、典型的に本発明の薬物を用いた治療により有益な効果が示される哺乳動物である。これらの対象の好適な例としては、ヒトなどの霊長類が挙げられる。また、これらの対象には、SARS-CoV-2による疾患の症状(例えば、発熱、倦怠感、咳、呼吸困難、肺炎、痰、喉の痛み、頭痛、喀血、吐き気、または下痢)を有するか、または有するおそれのある対象が全て含まれる。
SARS-CoV-2による疾患を予防または治療するのに有効な量とは、治療を必要とする対象において所望の成果を達成できる量、または治療を必要とする対象に対して客観的もしくは主観的な利点を提供できる量を意味する。SARS-CoV-2による疾患を予防または治療するのに有効な量は、単一または多重容量であってもよい。SARS-CoV-2による疾患を予防または治療するのに有効な量は、本発明の薬物を単独で提供する場合の量であってもよく、一つ以上の他の組成物(例えば、他の呼吸器疾患の治療剤など)と組み合わせて提供する場合の量であってもよい。
以上、本明細書に記載の数値は、特に明示されていない限り、均等範囲にまで含むものと解釈しなければならない。
また、本発明は、キツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための用途を提供する。
また、本発明は、ジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための用途を提供する。
また、本発明は、ジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための用途を提供する。
また、本発明は、6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物のSARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための用途を提供する。
また、本発明は、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるキツネノマゴ有機溶媒抽出物を有効成分として含む薬学的組成物の用途を提供する。
また、本発明は、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるジュスチシジンA(justicidin A)を有効成分として含む薬学的組成物の用途を提供する。
また、本発明は、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造におけるジュスチシジンB(justicidin B)を有効成分として含む薬学的組成物の用途を提供する。
また、本発明は、SARS-CoV-2による疾患の予防または治療のための薬剤の製造における6’-ヒドロキシジュスチシジンBを有効成分として含む薬学的組成物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のキツネノマゴ有機溶媒抽出物、ジュスチシジンB(justicidin B)、および6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)のそれぞれは、COVID-19に関連するSARS-CoV-2の細胞内感染および増殖を陽性対照群よりも高い比率で抑制する効果を示すため、究極的にSARS-CoV-2による疾患の予防または治療剤および改善剤として幅広く用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】は、本発明によるジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、および6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)の化学構造を示す図である。
図2】は、本発明によるキツネノマゴ無水エタノール抽出物のHPLC結果におけるジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、および6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)の位置を示す図である。
図3】は、本発明によるキツネノマゴ無水エタノール抽出物、ジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、および6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)のSARS-CoV-2ウイルス抑制効果および細胞生存率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい製造例、実施例および製剤例を提示する。しかし、下記の製造例、実施例および製剤例は、本発明をより理解しやすくするために提供するものに過ぎず、製造例、実施例および製剤例により本発明の内容が限定されるものではない。

製造例1:キツネノマゴ無水エタノール抽出物の製造
実験に用いたキツネノマゴ無水エタノール抽出物は、韓国の忠清北道堤川で栽培して採取した後、韓国国立生物資源館(National Institute of Biological Resources、Ministry of Environment、Korea)から植物の起源を同定されたキツネノマゴ(確証標本番号:NIBRVP0000642884、2017年)を用いて製造した。
乾燥したキツネノマゴを一定の長さに切断し、10倍液に相当する無水エタノール(anhydrous ethanol)を加え、24時間常温で浸漬抽出した後、濾過して一次抽出物を製造し、減圧濃縮した。ここに、さらに8倍液の無水エタノールを加え、24時間常温で再度浸漬抽出した後、濾過して二次抽出物を製造し、減圧濃縮した。前記濃縮物を合わせて総固形分含有量が約10%のキツネノマゴ無水エタノール抽出物を製造した後、抽出物固形分に対して1:1となるようにコロイド性二酸化ケイ素を均一に混合した。この混合物を60℃で減圧乾燥し、一定の細かさまで粉砕して粉末状のキツネノマゴ無水エタノール抽出物を製造した。

製造例2:有機合成法によるジュスチシジンA(justicidin A)の製造
ジュスチシジンA(9-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-4,6,7-トリメトキシ-3H-ナフト[2,3-c]フラン-1-オン)は、公知の方法(Gunaganti Naresh,et al.,2015)により製造し、以下の通りに同定した。
H-NMR(CDCl,500MHz)δ7.54(s,1H),7.06(s,1H),6.95(d,1H,J=7.9Hz),6.82(d,1H,J=1.5Hz),6.79(dd,1H,J=1.6,7.875Hz),6.04,6.08(dd,2H,J=1.45,22.775Hz),5.54(s,2H),4.13(s,3H),4.07(s,3H),3.80(s,3H).13C-NMR(CDCl,125MHz)δ169.6,151.7,150.4,147.9,147.6,147.5,134.5,130.7,128.6,126.1,124.6,123.7,119.4,110.9,108.3,106.2,101.3,100.7,66.7,59.7,56.2,55.9.ジュスチシジンAの純度は99.52%であった。

製造例3:有機合成法によるジュスチシジンB(justicidin B)の製造
ジュスチシジンB(9-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-6,7-ジメトキシ-3H-ナフト[2,3-c]フラン-1-オン)は、公知の方法(David C. Harrowven,et al.,2001)により製造し、以下の通りに同定した。
H-NMR(CDCl,500MHz)δ7.70(s,1H),7.18(s,1H),7.11(s,1H),6.97(d,1H,J=7.7Hz),6.86(d,1H,J=1.45Hz),6.83(dd,1H,J=1.7,8.025Hz),6.07(d,2H,J=22.6Hz),5.37(s,2H),4.05(s,3H),3.81(s,3H).13C-NMR(CDCl,125MHz)δ170.0,151.9,150.2,147.7,147.6,139.7,139.6,133.3,128.9,128.5,123.6,118.6,118.4,110.7,108.3,106.1,105.9,101.3,68.1,56.2,55.9.ジュスチシジンBの純度は98.55%であった。

製造例4:有機合成法による6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)の製造
6’-ヒドロキシジュスチシジンBを下記工程により合成した。

工程1:6,7-ジメトキシ-3-オキソ-1,3-ジヒドロナフト[2,3-c]フラン-4-イルトリフルオロメタンスルホネート(3.0g、7.65mmol)をジオキサン(90ml)溶媒に溶解し、5-メトキシメトキシ-6-(4,4,5,5,-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ベンゾ[1,3]ジオキソール(2.83g、9.18mmol)、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(1.12g、1.53mmol)、水酸化リチウム一水和物(642mg、15.3mmol))を窒素雰囲気下で順次加えた。60℃まで昇温して4時間反応させた。常温に冷却した後、水を加えて反応を終了させ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を無水NaSOで乾燥させ、濾過および濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物6,7-ジメトキシ-9-(6-メトキシメトキシ-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-3H-ナフト[2,3 -c]フラン-1-オン(9g、21.2mmol)を得た。
H NMR:(DMSO-d,400MHz)δ7.92(s,1H),7.48(s,1H),6.95(s,1H),6.87(s,1H),6.73(s,1H),6.08(d,2H,J=2.8Hz),5.38-5.49(m,2H),4.90(d,1H,J=6.8Hz),4.81(d,1H,J=6.8Hz),3.93(s,3H),3.65(s,3H),2.93(s,3H).

工程2:6,7-ジメトキシ-9-(6-メトキシメトキシ-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-3H-ナフト[2,3-c]フラン-1-オン(8g、18.9mmol)をエタノール(80ml)に溶解し、12M HCl 44mlを滴加して50℃で12時間反応させた。反応終了後に水100mlを加え、ジクロロメタン(200ml、100ml、50ml)で抽出した。得られた有機層を水(150ml)、brine(100ml)を用いて洗浄し、無水NaSOで乾燥した後、濾過して濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、標題化合物9-(6-ヒドロキシ-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル)-6,7-ジメトキシ-3H-ナフト[2,3-c]フラン-1-オン(6’-HJB、5.20g、13.7mmol、72.5%)を得た。6’-ヒドロキシジュスチシジンBの純度は98.76%であった。
H NMR:(DMSO-d,400MHz)δ9.01(s,1H),7.88(s,1H),7.46(s,1H),6.95(s,1H),6.63(s,1H),6.57(s,1H),6.00(d,2H,J=2.00Hz),5.41(s,2H),3.93(s,3H),3.66(s,3H).
ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、および6’-ヒドロキシジュスチシジンBの構造を図1に示した。

製造例5:キツネノマゴの含水エタノール抽出物および有機溶媒抽出物の製造
実験に用いたキツネノマゴ無水エタノール抽出物は、韓国の忠清北道堤川で栽培して採取した後、韓国国立生物資源館(National Institute of Biological Resources、Ministry of Environment、Korea)から植物の起源を同定されたキツネノマゴ(確証標本番号:NIBRVP0000590019、2016年)を用いて製造した。
乾燥したキツネノマゴを一定の長さに切断し、粉砕した後、10gを正確にとり、エタノール、95%含水エタノール、60%含水エタノール、30%含水エタノール、水、ブタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、イソプロパノール、メタノール、ジクロロメタンを溶媒として100mlずつ2回(1次2時間、2次1時間)、80~90℃で還流抽出して濾過し、減圧濃縮して0.2~1.9gを得た。(表1を参照)
【表1】
実施例1:キツネノマゴ抽出物の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)パターンおよびジュスチシジンA(justicidin A)、ジュスチシジンB(justicidin B)、6’-ヒドロキシジュスチシジンB(6’-hydroxyl justicidin B)の同定
前記製造例1の方法により製造したキツネノマゴ無水エタノール抽出物に含まれている活性成分を確認するために、高速液体クロマトグラフィー(HPLC、Agilent 1260、USA)を下記表2の条件下で行い、その結果を図2に示した。
【表2】
HPLC試験の結果、キツネノマゴ無水エタノール抽出物から、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、および6’-ヒドロキシジュスチシジンBが検出された。具体的には、キツネノマゴ無水エタノール抽出物中のジュスチシジンAのピークは、RT(Retention Time)約52分、ジュスチシジンBのピークは、RT約48分、6’-ヒドロキシジュスチシジンBのピークは、RT約38分で検出された。

実施例2:SARS-CoV-2に感染したVero細胞株における抑制効果の比較試験
キツネノマゴ無水エタノール浸漬抽出物およびその主要物質であるジュスチシジンA、ジュスチシジンB、6’-ヒドロキシジュスチシジンB、キツネノマゴ含水エタノール還流抽出物、キツネノマゴの各種有機溶媒抽出物のSARS-CoV-2抑制効果を確認するために、Vero細胞株を24時間培養した後、製造例1~5において製造した試験薬物を0.1micromolar(またはmicrogram)から50micromolar(またはmicrogram)まで10種類の濃度で投与した。これと同時に、韓国疾病管理本部(KCDC)から提供されたSARS-CoV-2に感染させた。詳しくは、384ウェルプレートにウェル当たり1.2×10個のVero細胞を接種した。翌日、各濃度の化合物を2倍に連続希釈してVero細胞に処理した。次いで、化合物を処理した細胞をSARS-CoV-2(COVID‐19)に感染させるために37℃で24時間培養した。その後、細胞を固定して細胞膜を透過化(permeabilization)し、anti-SARS-CoV-2 Nucleocapsid(N)一次抗体を37℃で処理し、二次抗体も37℃で処理した。細胞核は、Hoechst 33342で染色して確認し、蛍光発現をOperetta大容量画像解析装置(Perkin Elmer)を用いてイメージングした。結果画像から、内部分析プログラムであるImage Mining(IM)ソフトウェアを用いて感染細胞の割合を計算し、薬物のSARS-CoV-2ウイルス抑制能を測定して表3~5にまとめ、薬物濃度に応じた反応曲線および50%抑制能(IC50)値をXLFit(IDBS)ソフトウェアを用いて導出し、その結果を表6~7および図3にまとめた。各試験物質の細胞生存率(cell viability)を表8~10および図3に示した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
前記表3~10および図3から分かるように、製造例1~4において製造されたキツネノマゴ無水エタノール抽出物およびそれらの活性成分であるジュスチシジンA、ジュスチシジン-B、6’-ヒドロキシジュスチシジンBのSARS-CoV-2抑制能は、50%抑制濃度(IC50)値で比較したとき、陽性対照群であるレムデシビル(Remdesivir)、カレトラの主成分であるロピナビル(Lopinavir)およびクロロキン(Chloroquine)よりもはるかに優れていることを確認した。これらの試験群は、試験した最高濃度まで特に細胞毒性は示さなかった。
また、製造例5において製造されたキツネノマゴ含水エタノールおよび有機溶媒抽出物では、水抽出物を除く全ての含水エタノール抽出物および有機溶媒抽出物において優れたSARS-CoV-2抑制能を確認し、細胞毒性については、いずれも50μg/mLで80%以上の細胞生存率が観察された。

実施例3:SARS-CoV-2に感染したVero細胞株における治療効果の比較試験
キツネノマゴ無水エタノール浸漬抽出物およびその主要物質であるジュスチシジンBおよび6’-ヒドロキシジュスチシジンBのSARS-CoV-2治療効果を確認するために、VERO細胞を培養し(2×10cell/well)、MOI 0.1(2×10PFU/100ul)のSARS-CoV-2ウイルスを接種した後、37℃のincubatorで1時間処理して感染させた。感染させた細胞をPBSでwashingし、製造例1、3および4において製造した薬物を濃度別に細胞に注入した。その後48時間目の培養液を得て、SARS-CoV-2ウイルス粒子内に存在するRNA levelをqRT-PCRで測定し、対照群(薬物処理をしていないウイルス感染群)と比較分析した。薬物のIC50を測定するために、濃度は100μMから2段階ずつ希釈して使用した。ここで細胞生存率は、WST-1 assayで確認した。

【表11】
【表12】
前記表11から分かるように、SARS-CoV-2ウイルスで1時間先に感染させたVERO細胞にキツネノマゴ無水エタノール浸漬抽出物およびその活性成分であるジュスチシジンBおよび6’-ヒドロキシジュスチシジンBを処理したときのSARS-CoV-2抑制能は、ウイルスと薬物を同時に処理したときと同様に50%抑制濃度(IC50)値で比較した場合、陽性対照群であるヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine)よりも約8倍~187倍優れていることを確認した。表12の50%細胞生存濃度の結果から、これらの試験群の細胞毒性は、薬効を示す薬効濃度に対して少なくとも約288倍以上であり、非常に安全な薬物であることが確認できた。

下記製剤例1~製剤例3により、本発明の一実施形態による医薬品、食品および飲料の製造例について詳しく説明する。下記製造例において、キツネノマゴ抽出物は、キツネノマゴのメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘキサン、酢酸エチル、ジクロロメタン、エーテル、クロロホルム、およびアセトン抽出物から選択されるいずれか一つ以上であってもよい。

製剤例1:医薬品の製造
1-1:散剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンBまたは6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
乳糖 100mg
タルク 10mg
前記成分を混合し、気密布に充填して散剤を製造する。

1-2:錠剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンBまたは6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
コーンスターチ 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
前記成分を混合した後、通常の錠剤の製造方法により打錠して錠剤を製造する。

1-3:カプセル剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
コーンスターチ 100mg
乳糖 100mg
ステアリン酸マグネシウム 2mg
通常のカプセル剤の製造方法により、前記成分を混合し、ゼラチンカプセルに充填して錠剤を製造する。

1-4:注射剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンB、ジュスチシジンAまたは6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
注射用滅菌蒸留水 適量
pH調整剤 適量
通常の注射剤の製造方法により、1アンプル当たり(2ml)前記成分含有量で製造する。

1-5:液剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
砂糖 20g
異性化糖 20g
レモン香料 適量
精製水を加えて全体を1,00mlに合わせる。通常の液剤の製造方法により、前記成分を混合した後、褐色瓶に充填して滅菌し、液剤を製造する。

1-6:吸入剤の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
1,1,1,2-テトラフルオロエタン 15g
無水エタノール 1.5g
クエン酸(無水物) 0.05mg
ポリエチレングリコール 500mg
通常の吸入剤の製造方法により、前記成分を混合して容器に充填する。

製剤例2:食品の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
ビタミン混合物 適量
ビタミンAアセテート 70μg
ビタミンE 1.0mg
ビタミンB1 0.13mg
ビタミンB2 0.15mg
ビタミンB6 0.5mg
ビタミンB12 0.2μg
ビタミンC 10mg
ビオチン 10μg
ニコチン酸アミド 1.7mg
葉酸 50μg
パントテン酸カルシウム 0.5mg
ミネラル混合物 適量
硫酸第一鉄 1.75mg
酸化亜鉛 0.82mg
第一リン酸カリウム 15mg
第二リン酸カルシウム 55mg
クエン酸カリウム 90mg
炭酸カルシウム 100mg
塩化マグネシウム 24.8mg
前記ビタミンおよびミネラル混合物の組成比は、健康機能食品に適した成分を好ましい実施例として混合組成しているが、その配合比を任意に変更してもよく、通常の健康機能食品の製造方法により、前記成分を混合した後、通常の方法により、健康機能食品の組成物の製造(例えば、栄養キャンディなど)に用いてもよい。

製剤例3:飲料の製造
キツネノマゴ抽出物、ジュスチシジンA、ジュスチシジンB、または6’-ヒドロキシジュスチシジンB 100mg
クエン酸 1000mg
オリゴ糖 100g
梅濃縮液 2g
タウリン 1g
精製水を加えて全体が900mlとなるようにする。
通常の健康機能性飲料の製造方法により、前記成分を混合し、約1時間85℃で攪拌加熱した後、製造された溶液を濾過して滅菌した2リットルの容器に取って密封滅菌し、冷蔵保管してから本発明の健康機能性飲料の組成物の製造に用いる。
前記組成比は、比較的嗜好飲料に適した成分を好ましい実施例として混合組成しているが、消費者の階層や国、使用用途など、地域的、民族的嗜好度によってその配合比を任意に変更してもよい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】