(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】押しのけ機械、方法、車両空調設備及び車両
(51)【国際特許分類】
F04C 18/02 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
F04C18/02 311X
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558135
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2021058247
(87)【国際公開番号】W WO2021204591
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】102020110096.5
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516382847
【氏名又は名称】オーエーテー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ボント
(72)【発明者】
【氏名】ローマン レッサー
【テーマコード(参考)】
3H039
【Fターム(参考)】
3H039AA03
3H039AA12
3H039BB04
3H039BB15
3H039BB28
3H039CC01
3H039CC24
3H039CC26
(57)【要約】
本発明は、螺旋原理に基づく押しのけ機械、特にスクロール圧縮機であって、高圧チャンバ11、低圧チャンバ12、軌道周回する排出螺旋部13、カウンター螺旋部14及び背圧チャンバ15を有し、その背圧チャンバが低圧チャンバ12と排出螺旋部13との間に配置されており、排出螺旋部13がカウンター螺旋部14内へ次のように、すなわち駆動中に一時的に、作業媒体を収容するための少なくとも1つの第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bが形成されるように、係合し、かつ排出螺旋部13が、背圧チャンバ15と流体接続するための少なくとも1つの通過開口部17を有しており、通過開口部17が排出螺旋部13内に次のように、すなわち駆動中に排出螺旋部13の軌道周回する運動によって通過開口部17が一時的に、少なくとも部分的に第1の圧縮チャンバ16a内に、そして次に一時的に、少なくとも部分的に第2の圧縮チャンバ16b内に配置されるように、配置されている、押しのけ機械に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋原理に基づく押しのけ機械、特にスクロール圧縮機であって、高圧チャンバ(11)、低圧チャンバ(12)、軌道周回する排出螺旋部(13)、カウンター螺旋部(14)及び背圧チャンバ(15)を有し、前記背圧チャンバが前記低圧チャンバ(12)と前記排出螺旋部(13)とに間に配置されており、前記排出螺旋部(13)が前記カウンター螺旋部(14)内へ係合して、駆動中に一時的に、作業媒体を収容するための少なくとも1つの第1の圧縮チャンバ(16a)及び第2の圧縮チャンバ(16b)が形成され、かつ前記排出螺旋部(13)が、前記背圧チャンバ(15)と流体接続するための少なくとも1つの通過開口部(17)を有する、押しのけ機械において、
前記通過開口部(17)が前記排出螺旋部(13)内に次のように、すなわち駆動中に前記排出螺旋部(13)の軌道周回する運動によって前記通過開口部(17)が一時的に少なくとも部分的に前記第1の圧縮チャンバ(16a)内に、そして次に一時的に少なくとも部分的に前記第2の圧縮チャンバ(16b)内に配置されるように、配置されている、ことを特徴とする押しのけ機械。
【請求項2】
前記カウンター螺旋部(14)が螺旋セクション(18)を有し、前記通過開口部(17)は、前記第1の圧縮チャンバ(16a)から前記第2の圧縮チャンバ(16b)へ交代する場合に少なくとも1つの螺旋セクション(18)を通過し、前記螺旋セクションが径方向に互いに隣接する2つの圧縮チャンバ(16a、16b)の間に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の押しのけ機械。
【請求項3】
前記通過開口部(17)が、前記排出螺旋部(13)の底のセクション内に配置されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の押しのけ機械。
【請求項4】
前記通過開口部(17)が、円形、楕円形又は卵形状の横断面を有している、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項5】
前記第1の圧縮チャンバ(16a)が、120°~400°の、特に247°~367°の、軌道周回する前記排出螺旋部(13)の回転角度の角度領域内で、前記背圧チャンバ(15)と流体を案内するように接続ざれている、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項6】
前記第2の圧縮チャンバ(16b)が、270°~550°の、特に376°~504°の、軌道周回する前記排出螺旋部(13)の回転角度の角度領域内で、前記背圧チャンバ(15)と流体を案内するように接続されている、ことを特徴とする請求項1~5のいいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項7】
前記第1の圧縮チャンバ(16a)が、84%~40%の、特に80%~46%の、相対容積において、前記背圧チャンバ(15)と流体接続されている、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項8】
前記第2の圧縮チャンバ(16b)が、61%~19%の、特に44%~24%の、相対容積において、前記背圧チャンバ(15)と流体接続されている、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項9】
前記通過開口部(17)は、前記第1の圧縮チャンバ(16a)から前記第2の圧縮チャンバ(16b)へ、あるいはその逆に交代する場合に、螺旋セクション(18)を通過する際に、5°~20°の回転角度の角度領域について閉鎖されている、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項10】
前記通過開口部(17)が制御幾何学配置(19)を有し、前記制御幾何学配置が前記排出螺旋部(13)の、前記カウンター螺旋部(14)へ向いた表面内に配置されている、ことを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項11】
前記制御幾何学配置(19)が、凹部及び/又は切り欠きを有している、ことを特徴とする請求項10に記載の押しのけ機械。
【請求項12】
前記カウンター螺旋部(14)の螺旋セクション(18)が、径方向内側の螺旋壁(20a)と径方向外側の螺旋壁(20b)を有しており、制御幾何学配置(19)及び/又は前記通過開口部(17)が、閉鎖された状態において螺旋壁(20a、20b)の間に配置されている、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の押しのけ機械。
【請求項13】
前記排出螺旋部(13)及び/又は前記カウンター螺旋部(14)が、少なくとも部分的に面取り部(21)を有している、ことを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載の押しのけ機械。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の押しのけ機械を駆動する方法において、
通過開口部(17)が駆動中に、排出螺旋部(13)の軌道周回する運動によって一時的に、少なくとも部分的に第1の圧縮チャンバ(16a)内に、そして次に一時的に、少なくとも部分的に第2の圧縮チャンバ(16b)内に配置され、かつそれぞれの圧縮チャンバ(16a、16b)が背圧チャンバ(15)と流体を案内するように接続されている、押しのけ機械を駆動する方法。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の押しのけ機械、特にスクロール圧縮機、を有する車両空調設備。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の押しのけ機械又は請求項15に記載の車両空調設備を有する車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された螺旋原理に基づく押しのけ機械に関する。さらに、本発明は、方法、車両空調設備及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭で挙げた種類の押しのけ機械は、特許文献1(独国特許出願公開第102017110913号明細書)から知られている。特許文献1には、スクロール圧縮器が記述されており、それは排出螺旋部とカウンター螺旋部とを有している。排出螺旋部がカウンター螺旋部内へ係合する。軌道周回する排出螺旋部によって、圧縮チャンバが形成され、その中で冷却剤が圧縮される。冷却剤の圧縮が可能になるようにするためには、排出螺旋部がカウンター螺旋部に密に添接しなければならない。したがって排出螺旋部がカウンター螺旋部に圧接されると、効果的である。そのために排出螺旋部の、カウンター螺旋部と逆の側に、背圧チャンバが配置されている。この種の背圧チャンバは、逆圧室(Back-Pressure-Raum)の名称でも知られている。背圧チャンバもしくは逆圧室は、圧力を構築する機能を有している。そのために排出螺旋部は開口部を有しており、その開口部が背圧チャンバもしくは逆圧室を圧縮チャンバと流体接続する。逆圧室内の圧力が排除螺旋部に、排除螺旋部をカウンター螺旋部に圧接させる力を供給するので、2つの螺旋部が互いに流体密に密閉される。
【0003】
冒頭で挙げた種類の既知のスクロール圧縮機において、背圧チャンバ内の圧力は、排出螺旋部をカウンター螺旋部に圧接させて、排出螺旋部がカウンター螺旋部に流体密に添接するようにするために、充分に大きくなければならない。しかしこの圧力は、大きすぎて、摩擦力が発生してはならず、その摩擦力は排出螺旋部の軌道周回運動を制動し、あるいは出力損失をもたらす。
【0004】
排出螺旋部をカウンター螺旋部に圧接し、かつ出力損失をできるだけ少なくするために、背圧チャンバ用に充分に高い圧力を準備することは、構造的な手間及び費用と結びついている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102017110913号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、排出螺旋部をカウンター螺旋部に圧接する圧力の発生を改良して、押しのけ機械の簡単かつコスト的に好ましい構造を可能にする、押しのけ機械を提供することである。さらに本発明の課題は、方法、車両空調設備及び車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この課題は、
-押しのけ機械に関しては、請求項1の対象によって、
-方法に関しては、請求項14の対象によって、
-車両空調設備に関しては、請求項15の対象によって、そして
-車両に関しては、請求項16の対象によって、
解決される。
【0008】
具体的に課題は、高圧チャンバ、低圧チャンバ、軌道周回する排出螺旋部、カウンター螺旋部及び背圧チャンバを有し、その背圧チャンバが低圧チャンバと排出螺旋部との間に配置されている、螺旋部原理に基づく押しのけ機械、特にスクロール圧縮機によって、解決される。排出螺旋部がカウンター螺旋部内へ次のように、すなわち駆動中に一時的に、作業媒体を収容するための少なくとも1つの第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバが形成されるように、係合し、かつ排出螺旋部は、背圧チャンバと流体接続するための少なくとも1つの通過開口部を有している。通過開口部は排出螺旋部内に次のように、すなわち駆動中に排出螺旋部の軌道周回する運動によって通過開口部が一時的に、少なくとも部分的に第1の圧縮チャンバ内に配置され、かつ次に一時的に、少なくとも部分的に第2の圧縮チャンバ内に配置されるように、配置されている。
【0009】
高圧チャンバは、圧縮された作業媒体が、再び循環たとえば冷却循環へ供給される前に、流入する領域である。
【0010】
低圧チャンバは、吸い込み室と称することもできる。低圧チャンバからガスは、径方向外側からカウンター螺旋部と排出螺旋部の間へ流れる。
【0011】
排出螺旋部の軌道周回する運動というのは、円軌跡上の運動である。
【0012】
作業媒体は、好ましくは冷却流体、特に好ましくはガス状の冷却流体、たとえばCO2である。
【0013】
カウンター螺旋部と排出螺旋部との間には、少なくとも1つの第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバが配置されている。これらの圧縮チャンバ内には、駆動中に、作業媒体、たとえば流体、が配置されている。
【0014】
圧縮チャンバは、径方向外側の領域内に形成される。圧縮チャンバは、径方向内側へ移動する。圧縮チャンバの移動の間に、圧縮チャンバの容積が縮小する。それによって圧縮チャンバ内の圧力が上昇し、もしくは作業媒体が圧縮される。最後にこれらの圧縮チャンバが合体し、次に解消される。このプロセスが、連続的に行われる。
【0015】
通過開口部は、排出螺旋部の軌道周回する運動によって円軌道上で移動する。通過開口部の円軌跡は、第1の圧縮チャンバ及び第2の圧縮チャンバと次のように、すなわち通過開口部が一時的に、少なくとも部分的に第1の圧縮チャンバ内に、そしてその後に第2の圧縮チャンバ内に配置され、かつ背圧チャンバとの流体接続が形成されるように、交差する。
【0016】
言い換えると、通過開口部が第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバの上を次のように、すなわち通過開口部が一時的に、少なくとも部分的に第1の、そしてその後に第2の圧縮チャンバ内に配置されて、背圧チャンバとの流体接続が形成されるように、通過する。
【0017】
通過開口部は、排出螺旋部の軌道周回する運動によって、第1の圧縮チャンバから第2の圧縮チャンバへ場所を変える。それによって背圧チャンバが交互に一時的に、第1の圧縮チャンバと、そして第2の圧縮チャンバと流体接続される。
【0018】
排出螺旋部とカウンター螺旋部の間に2つより多い圧縮チャンバが形成されており、かつ通過開口部が2つより多い圧縮チャンバ内に一時的に、少なくとも部分的に配置されることも、可能である。
【0019】
本発明は、効果的である。というのは、少なくとも2つの異なる圧縮チャンバ内に通過開口部を一時的に互いに連続するように配置することによって、背圧チャンバ内に、排出螺旋部をカウンター螺旋部に圧接する圧力を発生させて、それによって排出螺旋部の軌道周回する運動を制動する、あるいはその他のやり方でネガティブに作用する、摩擦力ができるだけ小さくなり、かつ同時に排出螺旋部が充分流体密にカウンター螺旋部に配置されることが、可能になるからである。排出螺旋部からカウンター螺旋部へ作用する力は、背圧チャンバ内を支配する圧力によってもたらされる。
【0020】
したがって、背圧チャンバに圧力を供給し、かつ/又は背圧チャンバ内の圧力を調節する他の流体接続は、省くことができる。言い換えると、排出螺旋部内の通過開口部が充分に、背圧チャンバ内に充分な圧力を発生させることができる。それによって、他の流体接続を省くことができるので、コンパクトな建造形状が可能である。さらに、製造の手間と費用がより少ないことによって、時間とコストが削減される。
【0021】
本発明の好ましい実施形態が、下位請求項に記載されている。
【0022】
特に好ましい実施形態において、カウンター螺旋部が螺旋セクションを有しており、通過開口部は、第1の圧縮チャンバから第2の圧縮チャンバへ変化する場合に少なくとも1つの螺旋セクションを通過し、その螺旋セクションは、径方向に互いに隣接する2つの圧縮チャンバの間に配置されている。
【0023】
螺旋セクションというのは、カウンター螺旋部又は排出螺旋部の、第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバを限定するセクションである。
【0024】
螺旋セクションの通過が、効果的である。というのは、このようにして圧縮チャンバの間の移行を定めることができ、かつ2つの圧縮チャンバ内の通過開口部の配置を、時間的に直接次々と行うことができるからである。
【0025】
通過するという概念は、径方向に、あるいは径方向成分を有する方向に、螺旋セクションを横切ることを意味する。螺旋セクションは、完全にかつ/又は部分的に横切ることができる。
【0026】
他の特に好ましい実施形態において、通過開口部は排出螺旋部の底のセクション内に配置されている。
【0027】
通過開口部を排出螺旋部の底に配置することは、効果的である。というのは、それによって通過開口部による螺旋セクションの通過が容易になるからである。さらにそのようにして、背圧チャンバとの直線的かつできるだけ短い接続が実現可能である。
【0028】
底というのはベースプレートであって、そのベースプレートから始まって螺旋セクションが直交して延びている。
【0029】
通過開口部が円形、楕円形又は卵型の横断面を有していると、効果的である。それによって、作業媒体の流れ特性を調節する、通過開口部の種々の好ましい形態が可能になる。たとえば、通過開口部の、駆動中に螺旋セクションが通過する際に最初に露出される領域が。まだ螺旋セクションによって覆われている領域よりも大きい横断面を有することが、可能である。それによって、通過開口部がまだ完全に開放される前に、背圧チャンバとの良好な流体接続を形成することが、可能である。
【0030】
好ましい実施形態において、第1の圧縮チャンバは、120°~400°の、特に247°~367°の、軌道周回する排出螺旋部の回転角度の角度領域内で、背圧チャンバと流体を案内するように接続されている。
【0031】
他の好ましい実施形態において、第2の圧縮チャンバは、270°~550°の、特に376°~504°の、軌道周回する排出螺旋部の回転角度の角度領域内で、背圧チャンバと流体を案内するように接続されている。
【0032】
第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバが背圧チャンバと接続されている、回転角度の角度領域は、それぞれ軌道周回する排出螺旋部の回転角度のできるだけ大きい領域にわたって、圧縮チャンバと背圧チャンバの流体接続が可能であるので、効果的である。
【0033】
第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバのための角度領域は次のように、すなわち第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバ内の圧力が、背圧チャンバ内に充分な圧力を発生させるため、かつ排出螺旋部を流体密かつわずかな出力損失でカウンター螺旋部に圧接するために、充分に大きくなった場合に初めて、圧縮チャンバが背圧チャンバと流体接続されるように、選択されている。
【0034】
特に好ましくは、第1の圧縮チャンバは、84%~40%の、特に80%~46%の相対容積において、背圧チャンバと流体接続されている。
【0035】
さらに特に好ましくは、第2の圧縮チャンバは、61%~19%の、特に44%から24%の、相対容積において、背圧チャンバと流体接続されている。
【0036】
圧縮チャンバの相対容積というのは、0°の回転角度における初期容積に対する、押しのけ機械の圧縮サイクルの間の所定の時点における圧縮チャンバの可変の容積である。圧縮チャンバの相対容積が小さくなるほど、それぞれの圧縮チャンバ内の圧力は、それだけ大きくなる。
【0037】
圧縮サイクルというのは、常に新しく形成される圧縮チャンバによって特徴づけられる、周期的なプロセスである。
【0038】
第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバが背圧チャンバと流体接続されている、相対容積の領域は、効果的である。というのは、それによって、それぞれの圧縮チャンバ内の圧力が、排出螺旋部をカウンター螺旋部に流体密に圧接することを可能にするために、充分に高くなった場合に初めて、圧縮チャンバがそれぞれ背圧チャンバと流体接続されることが、可能になるからである。
【0039】
実施形態において、通過開口部は、第1の圧縮チャンバから第2の圧縮チャンバへ、あるいはその逆に、変化する場合に、螺旋セクションを通過する際に、5°~20°の回転角度の角度領域の間、閉鎖されている。
【0040】
それによって、通過開口部が閉鎖されている期間を、できるだけ小さく維持することが、可能である。もっと正確には、通過開口部が閉鎖されている期間は、背圧チャンバ内の圧力への作用がきわめて小さくなるように、短い。したがって通過開口部が閉鎖されている期間は、背圧チャンバ内の圧力への、もしくは排出螺旋部への圧接力への効果をもたず、したがって押しのけ機械の機能への効果ももたない。
【0041】
他の実施形態において、通過開口部が制御幾何学配置を有し、その制御幾何学配置は、排出螺旋部の、カウンター螺旋部へ向いた表面内に配置されている。
【0042】
制御幾何学配置は、たとえば螺旋セクションと共に流体通路を画成し、その流体通路は、通過開口部が圧縮チャンバ内に配置される前に、通過開口部を圧縮チャンバと流体を案内するように接続する。制御幾何学配置は、通過開口部がより早期に、もしくはより長く、圧縮チャンバと流体を案内するように接続されることを、可能にする。それによって、通過開口部が螺旋セクションによって閉鎖されている期間を減少させることができる。
【0043】
制御幾何学配置が、凹部及び/又は切り欠きを有していると、効果的である。それによって制御幾何学配置は、既知の製造手段によって、かつわずかな手間で、簡単に形成することができる。
【0044】
好ましい実施形態において、カウンター螺旋部の螺旋セクションは、径方向内側の螺旋壁と径方向外側の螺旋壁とを有しており、制御幾何学配置及び/又は通過開口部は、閉鎖された状態において螺旋壁の間に配置されている。
【0045】
すなわち制御幾何学配置は、好ましくは、第1の通過開口部と第2の通過開口部が圧縮サイクルのどの時点でも、互いに流体接続されないように、形成されている。それによって圧縮チャンバ内の圧力降下が阻止される。
【0046】
好ましい実施形態において、排出螺旋部及び/又はカウンター螺旋部は、少なくとも部分的に面取り部を有している。面取り部によって、螺旋セクションの幅が部分的に減少されている。それによって回転角度の、螺旋セクションを通過するために通過開口部の移動する領域が、減少されている。したがって、面取り部は、通過開口部が閉鎖されている期間を短縮することを、可能にする。
【0047】
本発明の枠内において、さらに、押しのけ機械を駆動する方法が開示され、かつ請求され、それにおいて通過開口部は駆動中に排出螺旋部の軌道周回する運動によって一時的に、少なくとも部分的に第1の圧縮チャンバ内に、そして次に一時的に、少なくとも部分的に第2の圧縮チャンバ内に配置され、かつそれぞれの圧縮チャンバを背圧チャンバと流体を案内するように接続する。
【0048】
本発明の枠内において、押しのけ機械を有する車両空調設備が開示され、かつ請求される。
【0049】
本発明の他の視点として、本発明に係る押しのけ機械又は車両空調設備を有する車両が開示され、かつ請求される。
【0050】
以下、添付の図面を参照しながら実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は、押しのけ機械の本発明に係る実施例のカウンター螺旋部と排出螺旋部の図式的な断面を示している。
【
図2】
図2は、圧縮サイクルの間、0°の回転角度において、押しのけ機械の本発明に係る実施例のカウンター螺旋部と排出螺旋部の図式的な断面を示している。
【
図3】
図3は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、60°の回転角度において示している。
【
図4】
図4は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、160°の回転角度において示している。
【
図5】
図5は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、300°の回転角度において示している。
【
図6】
図6は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、400°の回転角度において示している。
【
図7】
図7は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、460°の回転角度において示している。
【
図8】
図8は、
図2に示す押しのけ機械の図式的な断面を、560°の回転角度において示している。
【
図9】
図9は、押しのけ機械の本発明に係る実施例の排出螺旋部の断面を示している。
【
図10】
図10は、押しのけ機械の本発明に係る実施例の断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1は、押しのけ機械10内の排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の配置を図式的に示している。
【0053】
排出螺旋部13とカウンター螺旋部14は、互いに係合している。排出螺旋部13とカウンター螺旋部14は螺旋セクション18を有しており、それらの螺旋セクションがベースプレートもしくは底上に直交して配置されている。底もしくはベースプレートは、円形である。螺旋セクション18は、底もしくはベースプレートから離れるように延びている。組み込まれた状態において、排出螺旋部13の螺旋セクションは、カウンターセクションの方向に延びており、カウンター螺旋部14の螺旋セクション18は、排出螺旋部13の方向に延びている。
【0054】
カウンター螺旋部14は、押しのけ機械10内に固定的もしくは動かないように配置されている。排出螺旋部13は押しのけ機械10内に、カウンター螺旋部14内で軌道周回する運動が可能であるように、配置されている。押しのけ機械10の構造は、
図10と
図11の記述において、詳しく説明される。軌道周回する運動というのは、円軌跡上の運動である。
【0055】
カウンター螺旋部の中心もしくは中心点の領域内に、出口開口部22が配置されている。出口開口部22は、カウンター螺旋部14内に偏心して配置されている。
【0056】
圧縮サイクルの間の排出螺旋部13の位置は、軌道周回する運動の回転角度によって示すことができる。圧縮サイクルというのは、連続的に繰り返される圧縮プロセスの1通過もしくは1周期である。すなわち、
図1は、排出螺旋部13の181°の回転角度における、押しのけ機械10の圧縮サイクル内の時点を示している。
【0057】
排出螺旋部13内に、通過開口部17が配置されている。通過開口部17は、排出螺旋部13の底もしくはベースプレート内に配置されている。通過開口部17は、排出螺旋部13の2つの螺旋セクション18の間の中央に配置されている。通過開口部17は、底の表面に対して直交して延びている。通過開口部17は、組み込まれた状態において、ベースプレートの、カウンター螺旋部14へ向いた側とベースプレートの、カウンター螺旋部14とは逆の側との間に延びている。通過開口部17は、ベースプレートの両側にそれぞれ開口部を有しており、それらが底もしくはベースプレートの両側を互いに接続している。言い換えると、通過開口部17は、ベースプレートの2つの側の間の通路を形成している。通過開口部17は、円形の横断面を有している。他の形状も可能である。通過開口部17は、好ましくは孔を有している。通過開口部17の直径は、好ましくは0.1mm~1mmの間である。
【0058】
通過開口部17は、作業媒体の流れ特性を制御するために制御幾何学配置19を有している。
【0059】
制御幾何学配置19は、実質的に排出螺旋部13の径方向に延びている。言い換えると、制御幾何学配置19が延びる方向は、径方向成分を有している。代替的に、制御幾何学配置19の他の形状と方向も可能である。制御幾何学配置19は、通過開口部17から始まって排出螺旋部13の径方向外側へ向かって延びている。
【0060】
制御幾何学配置19は、排出螺旋部13の底もしくはべースプレートの表面に配置されている。制御幾何学配置19は、排出螺旋部13の底を貫通していない。
【0061】
制御幾何学配置19は、スリットを有している。スリットは、まっすぐである。径方向内側の端部に、通過開口部17が配置されている。制御幾何学配置の径方向外側の端部は、円形のセクションを有している。他の形状も可能である。制御幾何学配置19は、好ましくはフライス加工穴もしくは切り欠き穴として形成されている。
【0062】
カウンター螺旋部14の螺旋セクション18は、径方向内側の螺旋壁20aと径方向外側の螺旋壁20bとを有している。制御幾何学配置19と通過開口部17の寸法は、径方向内側の螺旋壁20aと径方向外側の螺旋壁20bとの間に延びている。制御幾何学配置19と通過開口部17は、螺旋壁20a、20bを越えて張り出していない。言い換えると、制御幾何学配置19と螺旋セクション18を重ねた場合に、制御幾何学配置19と通過開口部17は、側壁20a、20bを越えて張り出さず、完全に覆われている。
【0063】
排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の間に、第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bが形成されている。圧縮チャンバ16a、16bは、作業媒体を収容して圧縮するために用いられる。作業媒体として、たとえばガス状の冷却剤が可能である。圧縮チャンバ16a、16bについては、後に詳細に説明する。
【0064】
排出螺旋部13とカウンター螺旋部14は、それぞれ螺旋壁20a、20bに沿って面取り部21を有している。面取り部21は、螺旋巻き全体にわたって延びている。代替的に、面取り部21が、螺旋セクション18に部分的に配置されている。すなわち、2つの圧縮チャンバ16a、16bの間で交代する場合に、面取り部21が螺旋セクション18の、通過開口部17が螺旋セクション18を通過する、その領域内だけに配置されていることが、可能である。
【0065】
図2~8には、押しのけ機械10の圧縮サイクルの種々の状態が図式的に示されている。以下においては、排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の互いに対する相対位置が、それぞれの構成部分の幾何学配置を見る視線を有するスナップショットとして記述されている。
【0066】
図2は、互いに係合する排出螺旋部13とカウンター螺旋部14を有する圧縮サイクルの図式的な表示を、回転角度0°において示している。
【0067】
回転角度0°において、押しのけ機械10の圧縮サイクルが開始される。回転角度0°は、少なくとも2つの圧縮チャンバ16a、16bの1つが閉鎖されている状態を記述する。0°において2つの圧縮チャンバが閉鎖されていることが、可能である。
【0068】
圧縮チャンバが排出螺旋部14とカウンター螺旋部14によって流体密に包囲されている場合に、圧縮チャンバは閉鎖されている。
【0069】
第1の圧縮チャンバ16aは、まだ開放されている。第2の圧縮チャンバ16bは、閉鎖されている。圧縮チャンバ16a、16bは、螺旋部13、14の径方向外側の領域内に配置されている。排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の径方向内側の領域内には、過去の圧縮サイクルの他の2つの第1の圧縮チャンバ16cと第2の圧縮チャンバ16dが形成されている。圧縮チャンバ16a、16bの相対容積は、圧縮チャンバ16c、16dの相対容積よりも大きい。
【0070】
排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の配置の中央の領域内に、内側の圧縮チャンバ23が配置されている。内側の圧縮チャンバ23は、2つの互いに合体された圧縮チャンバから形成されている。
【0071】
付加的に、出口開口部22とカウンター螺旋部14の径方向外側の領域との間に2つの2次出口開口部22a、22bもしくは前出口開口部が配置されている。2次出口開口部22a、22bは、カウンター螺旋部14の中心からそれぞれ異なる径方向の間隔を有している。
【0072】
排出螺旋部13内に、制御幾何学配置19を有する通過開口部17が配置されている。通過開口部17と制御幾何学配置19は、カウンター螺旋部14の螺旋セクション18によって覆われている。したがって通過開口部17は、閉鎖されている。
【0073】
図3は、排出螺旋部13の回転角度が60°である場合において、圧縮サイクルのスナップショットを示している。
図3においては、2つの圧縮チャンバ16a、16bは閉鎖されている。
図3内の圧縮チャンバ16a、16bの相対容積は、
図2内の圧縮チャンバ16a、16bの相対容積よりも小さい。
【0074】
通過開口部17と制御幾何学配置19は、圧縮チャンバ16d内に配置されている。言い換えると、通過開口部17は螺旋セクション18によって覆われておらず、もしくは閉鎖されていない。
【0075】
図4は、160°の回転角度における圧縮サイクルを示している。圧縮チャンバ16a、16bの相対容積は、上述した図におけるよりも小さい。
【0076】
通過開口部17は、カウンター螺旋部14の螺旋セクション18によって覆われている。制御幾何学配置19は、第1の圧縮チャンバ16a内へ部分的に張り出している。したがって通過開口部17は、第1の圧縮チャンバ16aと流体接続されている。
【0077】
圧縮チャンバ16c、16dは、内側の圧縮チャンバ23として合体している。
【0078】
図5は、回転角度300°における圧縮サイクルを示している。第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bの相対容積は、さらに減少している。2つの螺旋部の径方向外側の領域内に、新しい圧縮チャンバ16e、16fが形成され始めている。
【0079】
通過開口部17と制御幾何学配置19は、完全に第1の圧縮チャンバ16a内に配置されている。
【0080】
図6は、400°の回転角度において圧縮サイクルを示している。排出螺旋部13、14の径方向外側の領域内に、2つの新しい圧縮チャンバ16e、16fが形成されている。圧縮チャンバ16a、16bの相対容積は、さらに減少している。通過開口部17及び制御幾何学配置19の1セクションは第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。制御幾何学配置19の一部が、カウンター螺旋部14の螺旋セクション8によって覆われている。出口開口部22は、部分的に内側の圧縮チャンバ23内及び第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。
【0081】
図7は、460°の回転角度において圧縮サイクルを示している。第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bの相対容積は、さらに減少している。通過開口部17と制御幾何学配置19は、完全に第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。出口開口部22は、第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。出口開口部22は、部分的に排出螺旋部13によって覆われている。
【0082】
図8は、排出螺旋部14の回転角度560°において圧縮サイクルを示している。第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bは、内側の圧縮チャンバ23として合体している。出口開口部22は、完全に内側の圧縮チャンバ23内に配置されている。通過開口部17と制御幾何学配置19は完全に、新しく形成された第1の圧縮チャンバ16e内に配置されている。
【0083】
図9は、通過開口部17と制御幾何学配置19の領域内の排出螺旋部13の断面を示している。通過開口部17は、直線的に延びている。通過開口部17は、排出螺旋部13の表面に対して直交して延びている。ここで表面というのは、カウンター螺旋部14へ向いた表面である。
【0084】
制御幾何学配置19は、排出螺旋部13の表面内に配置されている。言い換えると、制御幾何学配置19は凹部を有している。制御幾何学配置19の実施形態として、たとえば切り欠き穴又はフライス穴が可能である。制御幾何学配置19が間隙を有し、間隙が、カウンター螺旋部14の方向に開放し、排出螺旋部13の方向に閉鎖されていることが、可能である。制御幾何学配置19は、排出螺旋部13の径方向に沿って延びている。制御幾何学配置について、他の方向づけと幾何学配置も考えられる。すなわち制御幾何学配置19がまっすぐに延びていないことも、可能である。
【0085】
図10と11は、それぞれ押しのけ機械10の本発明に係る実施例の断面を示している。
【0086】
押しのけ機械10は、ハウジング24を有している。ハウジング24は、円筒状の形状を有している。ハウジング24内には、ドライブ25が配置されている。ドライブ25として、たとえば電気モータ又は機械的なドライブ25が考えられる。ドライブ25は、軸26と結合されており、かつ軸26を駆動する。
【0087】
軸26は、ハウジング24の長手方向に延びている。軸26の軸方向の端部には、偏心ピンを備えた偏心軸受27が配置されている。偏心軸受27によって、排出螺旋部13が軸26と結合されている。
【0088】
ハウジング24内で、排出螺旋部13の偏心軸受27とは逆の側に、カウンター螺旋部14が配置されている。カウンター螺旋部14は、押しのけ機械10のハウジング24内に固定的かつ移動しないように配置されている。カウンター螺旋部14がハウジング24と一体的に形成されていることが、可能である。
【0089】
排出螺旋部13の、カウンター螺旋部14とは逆の側に、低圧チャンバ12が配置されている。低圧チャンバ12と排出螺旋部13の間に、背圧チャンバ15が配置されている。
【0090】
排出螺旋部13は、軸26の長手方向に対して平行な方向に移動可能にハウジング24内に配置されている。言い換えると、排出螺旋部13は、カウンター螺旋部14の方向に、かつカウンター螺旋部14から離れるように、摺動可能である。排出螺旋部13の底に、通過開口部17が配置されている。通過開口部17を通して、駆動中に圧縮チャンバ16を背圧チャンバ15と流体を案内するように接続することが可能である。
【0091】
カウンター螺旋部14の、排出螺旋部13とは逆の側に、高圧チャンバ11が配置されている。
【0092】
互いに入れ子になる螺旋部13、14によって、圧縮チャンバ16が形成されている。言い換えると、圧縮チャンバ16は、排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の螺旋セクション18によって画成されている。
【0093】
作業媒体、たとえば冷却剤は、圧縮サイクルの開始時に、螺旋部13、14の径方向外側の領域内に吸い寄せられる。作業媒体は、排出螺旋部13とカウンター螺旋部14の間の圧縮チャンバ16a、16b内へ移送される。
【0094】
駆動中に、軸26の回転及び軸26と排出螺旋部13の偏心した結合によって、排出螺旋部13の軌道周回する運動が生じる。
【0095】
排出螺旋部13の軌道周回する運動によって、圧縮チャンバ16の相対的な容積が減少する。圧縮チャンバ16は、一時的なものである。圧縮チャンバ16は、連続的に螺旋配置の外側の径方向の領域内で繰り返し新しく形成されて、次に螺旋配置の径方向内部へ移動し、そして螺旋配置の径方向内部で解消される。圧縮チャンバ16の移動路は、螺旋形状である。
図2~8に示す実施例において、5つまでの圧縮チャンバ16、23が可能である。それは、第1の圧縮チャンバと第2の圧縮チャンバ16を有する2対と1つの内側の圧縮チャンバ23である。さらに、より多い、あるいはより少ない圧縮チャンバ16、23を有する構成も、可能である。
【0096】
通過開口部17は、147°と367°の間の回転角度の角度領域内で、第1の圧縮チャンバ16aと背圧チャンバ15との間に流体接続を形成する。376°と504°の間の回転角度の角度領域内で、通過開口部17は、第2の圧縮チャンバ16bと背圧チャンバ15との間に流体接続を形成する。367°と376°の間の回転角度の角度領域内では、通過開口部17はカウンター螺旋部14の螺旋セクション18によって閉鎖されている。
【0097】
通過開口部17は、まず、圧縮サイクルの第1の圧縮チャンバ16a内に、そして次に第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。通過開口部17は、圧縮サイクル毎に、それぞれ1回、圧縮チャンバ16a、16bの1つの中に配置されている。第2の圧縮チャンバ16bの後に、通過開口部17は、それに続く圧縮サイクルの第1の圧縮チャンバ16cへ移動する。
【0098】
通過開口部17を通して作業媒体の一部が、背圧チャンバ15内へ流入する。それによって、背圧チャンバ15内の圧力が上昇する。その圧力によって、排出螺旋部13に軸方向の力が供給される。この力がカウンター螺旋部14の方向に作用する。排出螺旋部13は軸方向に移動可能であるので、排出螺旋部がカウンター螺旋部14に圧接される。排出螺旋部13がカウンター螺旋部14に圧接されることによって、可能な限りわずかな出力損失で作業媒体の圧縮がもたらされる。
【0099】
制御幾何学配置19は、駆動中にカウンター螺旋部14の、排出螺旋部へ向いた側と共に流体を案内する通路を形成する。それによって、通過開口部17が圧縮チャンバ16内に完全に又は部分的に配置される前に、圧縮チャンバ16と背圧チャンバ15との間に流体を案内する接続が形成されることが、可能である。
【0100】
出口開口部22を通って、圧縮された作業媒体が高圧チャンバ11内へ流入する。高圧チャンバ11を通って作業媒体が、再び作業循環内へ、特に冷却循環内へ、達する。2次出口開口部22a、22bは、駆動中に、カウンター螺旋部14の中心点に対する間隔の違いによって押しのけ機械10の種々の圧力領域内に配置されている。
【0101】
次に、
図2~
図8を用いて圧縮サイクルを説明する。特に、圧縮チャンバ16a、16bが考察される。
【0102】
図2は、0°の回転角度において圧縮サイクルを示している。0°の回転角度においては、少なくとも2つの圧縮チャンバ16a、16bの1つは閉鎖されている。
図2においては、圧縮チャンバ16の1つと背圧チャンバ15との間に流体接続は形成されていない。というのは、制御幾何学配置19を有する通過開口部17は、螺旋セクション18によって完全に覆われているからである。
【0103】
回転角度60°において(
図3を参照)、第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bは閉鎖されている。圧縮チャンバ16a、16bの相対容積は、回転角度の増大につれて減少する。通過開口部17と制御幾何学配置19は、円軌跡上を移動する。
【0104】
回転角度160°において(
図4を参照)、通過開口部17は、さらに移動されている。通過開口部17は、螺旋セクション18によって覆われており、その螺旋セクションが第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bを分離している。通過開口部17は、第1の圧縮チャンバ16a内に配置されていない。
【0105】
通過開口部17の制御幾何学配置19は、部分的に第1の圧縮チャンバ16a内に配置されている。制御幾何学配置19と螺旋セクション18が、通路を画成する。この通路によって、背圧チャンバ15が第1の圧縮チャンバ16aと流体を案内するように接続されている。
【0106】
図5に示される300°の回転角度において、通過開口部17と制御幾何学配置19は、完全に第1の圧縮チャンバ16a内に配置されている。作業媒体は、直接通過開口部17を通して背圧チャンバ15内へ流入することができる。
【0107】
第1の圧縮チャンバ16a内の圧力は、
図5においては
図4の第1の圧縮チャンバ16a内よりも高い。圧縮チャンバ16a、16b内の圧力は、相対体積の縮小につれて上昇する。
【0108】
図6は、400°の回転角度において、通過開口部17が第2の圧縮チャンバ16b内に配置されていることを、示している。通過開口部17と制御幾何学配置19は、カウンター螺旋部14の螺旋セクション18を通過している。螺旋セクション18を通過する間、通過開口部17は螺旋セクション18によって閉鎖されている。
【0109】
背圧チャンバ15がどの圧縮チャンバ16とも接続されていない期間は、背圧チャンバ15内の圧力が低下して、排出螺旋部13がもはやカウンター螺旋部14に流体密に圧接されなくなるのには、充分ではない。
【0110】
図7には、回転角度460°における圧縮サイクルの状態が示されている。通過開口部17と制御幾何学配置19は、完全に第2の圧縮チャンバ16b内に配置されている。第1と第1の圧縮チャンバ16a、16bは、その直前に一体化されて、内側の圧縮チャンバ23を形成する。
図7においては、進行している圧縮サイクルと同時に新しい圧縮サイクルが開始されることが、認識される。
【0111】
回転角度560°において(
図8を参照)、第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bは、内側の圧縮チャンバ23として一体化されている。通過開口部17と制御幾何学配置19は、新しい圧縮サイクルの後続の第1の圧縮チャンバ16e内に配置されている。
【0112】
複数の圧縮サイクルが並列に行われることが、可能である。第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16b及び第1の圧縮チャンバ16cと第2の圧縮チャンバ16dは、異なる圧縮サイクルに対応づけられている。言い換えると、各圧縮サイクルが1対の第1の圧縮チャンバ16aと第2の圧縮チャンバ16bを有している。
【符号の説明】
【0113】
10 押しのけ機械
11 高圧チャンバ
12 低圧チャンバ
13 排出螺旋部
14 カウンター螺旋部
15 背圧チャンバ
16a 第1の圧縮チャンバ
16b 第2の圧縮チャンバ
16c 第1の圧縮チャンバ
16d 第2の圧縮チャンバ
16e 第1の圧縮チャンバ
16f 第2の圧縮チャンバ
17 通過開口部
18 螺旋セクション
19 制御幾何学配置
20a 径方向内側の螺旋壁
20b 径方向外側の螺旋壁
21 面取り部
22 出口開口部
22a 2次出口開口部
22b 2次出口開口部
23 内側の圧縮チャンバ
24 ハウジング
25 ドライブ
26 軸
27 偏心軸受
【国際調査報告】