(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ガラスセラミック物品
(51)【国際特許分類】
C03B 13/01 20060101AFI20230510BHJP
F24C 15/10 20060101ALN20230510BHJP
H05B 6/12 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
C03B13/01
F24C15/10 B
H05B6/12 305
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558223
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2021057305
(87)【国際公開番号】W WO2021191161
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504374919
【氏名又は名称】ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ルコント
(72)【発明者】
【氏名】エルワン リュエ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュック ダブイノー
【テーマコード(参考)】
3K151
【Fターム(参考)】
3K151BA62
(57)【要約】
本発明は、ガラスセラミックから作られたプレートなどの少なくとも1つの基材を備えたガラスセラミック物品に関し、基材は、規格ISO4287に従って測定される算術平均表面粗さRaが、0.14~0.40μmであり、及び好ましくは、規格ISO4287に従って測定される最大断面高さRtが、1.15~5.00μmであるようなマイクロテクスチャを備えた面を有する。本発明はしたがって、上面は、製造プロセスの過程で発生し得るガラス欠陥を隠し、スクラッチは、非常に低い明度の変動しか引き起こさず、同時に複数の制約も満たしているガラスセラミック製品の開発を可能とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックから作られた少なくとも1つの基材、例えばプレートを備えたガラスセラミック物品であって、前記基材は、規格ISO4287に従って測定される算術平均表面粗さRaが、0.14~0.40μm、好ましくは0.15~0.30μmであるようなマイクロテクスチャを備えた面を有する、ガラスセラミック物品。
【請求項2】
規格ISO4287に従って測定される最大断面高さRtが、1.15~5.00μm、好ましくは1.25~3.00μmであることを特徴とする、請求項1に記載のガラスセラミック物品。
【請求項3】
前記基材が、3~6mmで黒色透明であり、光源D65下で20%未満、好ましくは10%未満の光透過率TL、及び625nmの波長に対して30%未満、好ましくは20%未満の光学透過率を本質的に有するガラスセラミックをベースとすることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項4】
前記マイクロテクスチャが、-0.2~-1.1μm、好ましくは-0.3~-1.0μmの偏り度Sskを有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項5】
前記マイクロテクスチャが、0.7~10.0μm、好ましくは0.8~5.0μmの最大山高さSpを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項6】
前記マイクロテクスチャが、0.7~10.0μm、好ましくは0.8~5.0μmの最大谷深さSvを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項7】
最大高さ分布において0.8μm超である表面領域の割合が、2~8%、好ましくは2~4%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項8】
谷の平均面積が、2×10
-3mm
2~10×10
-3mm
2、好ましくは3×10
-3mm
2~8×10
-3mm
2であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項9】
下面が、高さが60~120μm、好ましくは80~100μmである楕円滴形状部を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項10】
前記基材の下側にある前記滴形状部が、エッジ間で測定した場合、垂直方向に250~500μm、好ましくは300~400μmの間隔を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項11】
摩耗領域と非摩耗領域との間の光沢差が、絶対値で20%未満、好ましくは15%未満であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品。
【請求項12】
2つのローラーのうちの一方が3~10GPa、好ましくは4~8GPaのビッカース硬度HV1を有する粒子材料によるショットピーニング処理を受けたローラーである前記2つのローラー間でマザーガラスをロール処理することによる、請求項1~11のいずれか一項に記載のガラスセラミック物品の製造方法であって、こうしてロール処理された前記マザーガラスは、続いてセラミック化プロセスに掛けられる、方法。
【請求項13】
前記ショットピーニング処理を受けた前記ローラーが、0.6~1.2μm、好ましくは0.8~1μmの粗さRaを有することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ショットピーニング処理を受けた前記ローラーが、4μm超、好ましくは8μm超の粗さRtを有することを特徴とする、請求項12及び13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ショットピーニング処理されたローラーが、前記ショットピーニング処理の後に研磨処理を受けないことを特徴とする、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックの分野に関する。より詳細には、本発明は、ガラスセラミックから作られた物品又は製品に関し、特に、家具面及び/又は調理面として用いられることを意図するガラスセラミックプレートに関する。ガラスセラミック又はガラスセラミック物品とは、本発明者らは、ガラスセラミック材料から作られた基材(プレートなど)をベースとする物品を意図しており、上記基材は、その最終目的のために必要とされる、装飾的若しくは機能的なアクセサリー又は追加要素を備えることができ、物品は、基材単独を、さらには追加要素を備えたもの(例えば、コントロールパネル、加熱素子などを備えた調理プレート)を指すことができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガラスセラミックプレートは、調理プレートとして用いられており、又は他の用途において、例えば暖炉用インサートを形成するために、加熱素子と組み合わせることもできる。最近、それらの使用は、日常生活の他の分野にも拡張されてきており、ガラスセラミックプレートは、家具面として、特に調理台、アイランド型の中央台(central islands)、コンソールなどを形成するために用いられ得る。これらの新規な用途でガラスセラミックが占める面の面積は、これまでのものよりも大きい。
【0003】
ガラスセラミックは、元は、前駆体ガラス又はマザーガラス又はグリーンガラスと称されるガラスであり、その特殊な化学組成のために、セラミック化と称される適切な熱処理によって、制御された結晶化を誘導することができる。この特殊な部分的結晶化構造が、ガラスセラミックに独特の特性を付与する。
【0004】
現在、様々な種類のガラスセラミックプレートが存在し、これらのプレート及び/又はそれらを得るために用いられるプロセスに対して、所望される特性に有害な影響を及ぼすリスクを発生させることなく、改変を成すことが非常に困難であることを考えると、異なる種類の各々は、多大な研究と多くの試行の結果であり、特にレンジ上面として用いる目的では、ガラスセラミックプレートは、一般に、スイッチがオフの場合に下にある加熱素子を少なくとも部分的に隠すのに充分に低く、かつユーザーが、場合(放射加熱など)に応じて、安全のために加熱素子のスイッチがオンであるかどうかを見ることができるのに充分に高い可視光波長範囲の透過率を有する必要がある。ガラスセラミックプレートはまた、特に放射ヒーターの場合、赤外範囲の波長でも高い透過率を有する必要があり、加熱ゾーンのパワーレベル及びレンジ天板(hob)の作動に関する表示を与えるコントロールパネルのディスプレイ並びにインジケーターライトを視認可能とする必要もある。ガラスセラミックプレートはまた、使用の分野で必要とされる充分な機械的強度も有する必要がある。特に、家庭用電化製品の分野における調理プレートとして、又は家具面として用いられることになる場合、ガラスセラミックプレートは、圧力、衝撃(支持、及び器具の落下など)などに対して良好な耐性を有する必要がある。
【0005】
最も一般的なガラスセラミック調理プレートは、暗色であり、特に黒色又は褐色又は橙褐色である。しかし、下側に乳白剤を有する透明基材から成るプレート、さらには特に乳白色又は白色不透明のプレートも存在する。
【0006】
Eurokera社からKerablack+の商品名で市販されているガラスセラミックプレートが存在する。これは、約0.1μmのRa及び1.0μmのRtという粗さを有する。
【0007】
粗さRaは、公知の粗さパラメータで、評価長さ全体にわたって定められる断面曲線の算術平均粗さ(連続する山と谷との間でのズレの絶対値の算術平均)であり、粗さRtは、評価長さ全体にわたる、断面曲線の最も深い谷と最も高い山との合計高さである。本明細書で考慮される粗さRa及び粗さRtは、規格ISO4287に従い、Mitutoyo社製の参照番号SJ401のプローブを用いて、4mmの評価長さにわたって測定される。
【0008】
また、Ra=0.03μm及びRt=0.4μmの表面粗さである黒色研磨ガラスセラミックプレート(Kanger(登録商標))も市販されている。研磨スポンジを用いた清掃及び調理容器の移動に起因する使用の過程で不可避である表面の摩耗は、このガラスセラミックの光沢に影響を及ぼさない。しかし、研磨は、コスト及び実行の複雑さのために回避されるべきである製造方法における追加工程を意味する。
【0009】
また、Ra=0.8μm及びRt=6.3μmの表面粗さであり、上面が高度にテクスチャ付与されたガラスセラミックプレート(未研磨Kanger(登録商標))も市販されている。これらのプレートは、大きな欠点を有する。表面の摩耗によって、光沢が大きく変動する。
【0010】
加えて、このような強いテクスチャは、表面の谷に引っかかった食品残渣を取り除くことが困難であることから、表面の清掃を困難にするものである。
【0011】
特開2009-149468号公報から、調理面の光沢レベルは維持しながら、キッチンの照明の反射によって引き起こされるまぶしさを回避する目的の、Raが0.04~0.13μmであるガラスセラミックプレートが公知である。このレベルの粗さを得るために、回転ロールのうちの少なくとも1つを、550μmの平均径の粒から成るアルミナ粉末でブラスト処理し、続いてそれを研磨することを必要とする複雑な方法が記載されている。ガラスセラミック基材上に得られる粗さ断面曲線は、この場合、谷は平坦で山は曲面である特定の形状となる。この繊細で複雑な方法は、ガラスセラミックプレートの製造コストを著しく押し上げることになる。
【0012】
さらに、非常に低いRtを呈するこの特定の断面曲線を有するこの低い表面粗さでは、ローラー間でのロール処理によるフラットガラスリボンの形成、及び続いてのフラットガラスのガラスセラミックへの変換という2つの主要な段階で実施される製造方法の過程で発生し得る欠陥を、充分に隠すことができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、したがって、表面の許容される耐摩耗性を維持しながら、製造プロセス中に発生し得る欠陥の視認性を制限する改善されたガラスセラミック製品を開発することを追求したものである。ロール処理によって得られたフラットガラスにある欠陥は、気泡、ピット、ストーン(溶融しなかった原材料の粒)、結晶化片、又はロール処理ロール上の堆積物に由来する「パッチ」であり得る。調理面の処理及び使用時に発生する欠陥は、点在するスクラッチ、調理器具を擦ること(一連のスクラッチ)又はスポンジで擦ることに起因する摩耗領域、さらには染みであり得る。
【0014】
特に、本発明は、調理プレートなどの1又は複数の加熱素子と共に用いられることを意図する、又は家具面として利用することを意図する新規なガラスセラミックプレートを目的とし、これらのプレートは、それらの使用に求められる他の特性を害することなく、特に維持及び清掃の容易さも、耐性、特に機械的耐性も害することなく、それらの寿命に対して不利となることなく、許容される耐摩耗性を維持し、同時に、必要に応じて装飾又は追加機能の存在も可能とする簡潔で、及び可能であれば柔軟性もあるソリューションを提案するように配慮もされている。
【0015】
この目的は、本発明に従って開発されるガラスセラミック製品の上面の特定のマイクロテクスチャ付与によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、したがって、ガラスセラミックから作られたプレートなどの少なくとも1つの基材を備えた新規なガラスセラミック物品に関し、上記基材は、規格ISO4287に従って測定される算術平均表面粗さRaが、0.14~0.40μm、好ましくは0.15~0.30μmであり、規格ISO4287に従って測定される最大断面高さ(total roughness)Rtが、1.15~5.00μm、好ましくは1.25~3.00μmであるようなマイクロテクスチャを備えた面を有する。
【0017】
マイクロテクスチャを備えた面は、特に、ガラスセラミック物品の上面、すなわち、ユーザーに向いている面を形成することを意図している。
【0018】
有利には、上記基材は、3~6mmで暗色の外観又は黒色透明であり、光源D65下で20%未満、好ましくは10%未満の光透過率TL、及び625nmの波長(光学特性は、赤色ディスプレイの発光に特徴的であるこの波長で測定される)に対して30%未満、好ましくは20%未満、さらにより好ましくは15%未満の光学透過率を本質的に有するガラスセラミックをベースとする。
【0019】
光学透過率は、任意の波長における透過した強度の入射強度に対する比を取ることにより、公知の方法で特定される。
【0020】
「本質的」の用語は、基材がそのような透過特性を、いかなるコーティングも存在しない状態で、単独で有することを意味するものと理解される。
【0021】
光学測定は、規格EN410に従って行われる。特に、視感透過率TLは、規格EN410に従い、光源D65を用いて2°で測定され、直接透過率及び考え得る拡散透過率の両方を考慮した全透過率(特に、可視ドメイン全体にわたって積分し、ヒトの眼のスペクトル感度曲線で重み付け)であり、測定は、例えば、積分球を備えた分光光度計(特に、Perkin Elmer社から製品Lambda 950として販売されている分光光度計)を用いて行われる。
【0022】
本発明は、しかし、明色のガラスセラミックプレート、特に乳白色又は白色不透明のプレートに適用することも可能である。
【0023】
粗さプロファイルを識別するために、Ssk、Sp、及びSvなどの他のパラメータも用いられる。
【0024】
Sskは、平均面に対する偏り度である。Ssk<0は、高さ分布が平均面よりも下側に非対称であることを示している(表面に谷が多い)。Ssk>0は、高さ分布が平均面よりも上側に非対称であることを示している(表面に山が多い)。
【0025】
Spは、山の最大高さを表す。
【0026】
Svは、谷の最大深さである。
【0027】
本発明によると、マイクロテクスチャは、好ましくは、-0.20~-1.1μm、好ましくは-0.3~-1μmの偏り度Ssk、及び0.7~10.0μm、好ましくは0.8~5.0μmの最大山高さSpを有する。特に、マイクロテクスチャの最大谷深さSvは、0.7~10.0μm、好ましくは0.8~5.0μmである。
【0028】
一般に、本発明による物品の下側には、高さが60~120μm、好ましくは80~100μmである楕円滴形状部(ellipsoidal teardrops)がある。特に、滴形状部は、エッジ間で測定した場合、垂直方向に250~500μm、好ましくは300~400μmの間隔を有する。
【0029】
本発明の別の目的は、2つのローラーのうちの一方が3~10GPa、好ましくは4~8GPaのビッカース硬度HV1を有する粒子材料によるショットピーニング処理を受けたローラーである2つのローラー間でマザーガラスをロール処理することによる、上記で述べたガラスセラミック物品の製造方法であり、こうしてロール処理されたマザーガラスは、続いて従来のセラミック化プロセスに掛けられる。
【0030】
有利には、ショットピーニング処理は、平均径0.2~2mm、好ましくは0.5~1.2mmの粒子を用いて実施される。これらの粒子は、例えば、マルテンサイト鋼粒子であってよい。ショットピーニングは、有利には、好ましくは2~6バール、又はさらには3~5バールの圧力による空気噴射式ショットピーニングである。粒子は、典型的には、1~5kg/分、又はさらには2~4kg/分の速度で、好ましくはローラー面に対して直角方向に発射される。ショットピーニングのカバー率は、有利には、90~110%、好ましくは約100%であり、すなわち、ローラー面が完全にピーニング処理される。こうしてピーニング処理されたローラーには、好ましくは、研磨を施すことなく、本発明による方法に用いられる。ピーニング処理されたローラーは、典型的には、0.6~1.2μm、又はさらには0.8~1.0μmの粗さRa、及び好ましくは、4μm超の、好ましくは8μm超の粗さRtを有する。
【0031】
確認の意味で、ガラスセラミックプレートの製造は、一般に、以下のように行われるものである:ガラスセラミックを形成するために選択された組成のガラスが、溶融炉中で溶融され、溶融ガラスは、次に、回転ロール間に溶融ガラスを通すことによってロール処理されて、標準的なリボン又はシートとされ、このガラスリボンが所望される寸法に切断される。こうして切断されたプレートは、スクリーン印刷又はエナメルジェットによって堆積されるエナメル系装飾によって装飾され、続いてそれ自体が公知の方法でセラミック化され、セラミック化は、選択された熱プロファイルに従ってプレートを焼成して、ガラスを、膨張係数がゼロ又はほとんどゼロであり、特に700℃までの熱ショックに耐える「ガラスセラミック」と称される多結晶材料に変換することから成る。セラミック化は、一般に、(継続時間が5~90分間で様々である)核形成段階まで漸進的に昇温する工程(例:650~830℃)、結晶を成長させるための、(例えば850~1100℃の範囲内(乳白色/不透明ガラスセラミックの場合)での)新たな昇温、数分間(例:5~30分間)にわたる結晶成長段階の温度の維持、その後の室温までの急冷、を含む。
【0032】
該当する場合、このプロセスはまた、例えば水流ジェット、スコアリングホイールを用いた機械的スコアリングなどを用いた切断作業(一般的にはセラミック化の前)、及び続いての成形作業(研削、面取りなど)も含む。
【0033】
基材(又は基材のみで形成されている場合は、本発明による物品自体)は、一般に、プレート(の形態)、特に、少なくとも1つの光源及び/若しくは加熱素子と共に使用するための、特にこれらを覆う若しくは受けるための、又は家具面として使用するための、プレート(の形態)である。この基材(又はそれぞれ、このプレート)は、一般に、幾何学的形状、特に長方形、又はさらには正方形、又はさらには円形、又は楕円形などであり、一般に、使用の位置でユーザーの方を向く1つの面(又は視認可能面若しくは外部面、一般に、使用の位置で上面)、使用の位置で、例えば家具のフレーム又はケーシング中に、一般的には隠れている別の面(又は内部面、一般に、使用の位置で下面)、及びエッジ(又は厚み)を有する。上面又は外部面は、一般に平坦であるが、局所的に、少なくとも1つの高くなった領域及び/又は少なくとも1つの凹んだ領域及び/又は少なくとも1つの開口部及び/又は面取りされたエッジを有していてもよく、これらの形状の変動は、特に、プレートの連続的な変動を構成している。下面又は内部面も、平坦及び平滑であってよく、又は滴形状部を備えていてもよい。
【0034】
基材は、いかなるガラスセラミックをベースとしていてもよく、この基材は、有利には、ゼロからほとんどゼロの熱膨張係数(CTE)を有し、特に、熱膨張係数は、20~700℃で、30×10-7K-1未満(絶対値で)であり、特に、20~700℃で15×10-7K-1未満、又はさらには5×10-7K-1未満である。
【0035】
特に、黒色又は褐色基材を用いることで、下に配置された光源と組み合わせて、発光ゾーン又は装飾を表示することができ、同時に下にある何れの素子も隠される。それは、残留ガラス相中にβ水晶構造を有する結晶を含む黒色ガラスセラミックをベースとしていてもよく、その熱膨張係数の絶対値は、有利には、15×10-7K-1以下、又はさらには5×10-7K-1以下であり、Eurokera社からKerablack+の商品名で市販されているプレートのガラスセラミックなどである。
【0036】
本発明による基材は、所望に応じて、通常のエナメル設計でコーティングされてもよく、又は所望に応じて、基材の下側の一部に不透明塗料層でコーティングされてもよい。
【0037】
本発明による物品は、さらに、基材に付随して又は基材と組み合わされて、1若しくは複数の光源、及び/又は1若しくは複数の加熱素子(1若しくは複数の放射若しくはハロゲン素子、及び/又は1若しくは複数の大気圧ガスバーナー、及び/又は1若しくは複数の誘導加熱手段など)を備えていてもよい。1又は複数の光源は、1又は複数のディスプレイユニット構造、タッチセンサー制御による電子制御パネル、及びデジタルスクリーンなどと一体化又は結合されていてよい。これらの光源は、有利には、ある程度の間隔をあけて配置された複数の発光ダイオードから成るディスプレイによって形成され、ダイオードは、所望に応じて、1又は複数の導波路を伴っていてもよい。
【0038】
特に、本発明による物品は、様々なタイプのヒーターの使用に適合する良好な耐熱性を有し、これまでに示されたようなメンテナンス、スクラッチ、又は摩耗の問題を引き起こさない。
【0039】
以下の例は、図面を参照しながら、限定することなく、本発明を説明するものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、比較例1によるガラスセラミックプレートの光干渉法によって得た画像である。
【
図2】
図2は、本発明の例1による物品を示す同じ種類の画像である。
【
図3】
図3は、本発明の例2による物品を示す同じ種類の画像である。
【
図4】
図4は、本発明の例3による物品を示す同じ種類の画像である。
【
図5】
図5は、3つの比較例及び3つの本発明による例に対する、光沢差とパラメータSskとを関連付けるグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明によるガラスセラミックプレートの製造のために、上側ロール処理用ローラーの面を以下のように改変する。
【0042】
空気噴射式ショットピーニングを、鏡面研磨したローラーの面に対して直角に、粒径が0.5~1.2mmの粒を含む鋼(マルテンサイト)製のショットをブラストすることによって行う。ブラスト圧は、約4バールである。ショットのブラスト速度は、およそ3kg/分である。4パスの後、本発明者らは、ローラー面上に、0.8~1μmの粗さRa及び8μmよりも高いRtに相当する光沢がある(satiny)とされる面状態の形成を確保する。
【0043】
ショットピーニングが完了すると、ローラーをアルコールで洗浄する。
【0044】
本発明者らは、こうして、ローラー面の特定のランダムなテクスチャを得る。
【0045】
下側ローラーは、突起部を形成するように調製する。
【0046】
このようにして調製されたローラーを用いて、マザーガラスを数十時間にわたって連続的にロール処理し(「ロール処理サイクル」)、その間、マザーガラスのリボンを、連続的に2つのローラー間に通す。このロール処理サイクルの後、上側ローラーを、鏡面研磨面が得られるまで連続研磨工程に掛け、その後、上記で述べたようにショットピーニングによって、そのローラーに再度テクスチャを付与することができる。
【0047】
本発明による実施例は、同じロール処理サイクル中の異なる時間に取ったロール処理ガラスのサンプルである。
【実施例】
【0048】
実施例1
実施例1のテクスチャ付与したマザーガラスのサンプルは、1時間のロール処理ローラーの操作後に取る。
【0049】
実施例2
実施例2のテクスチャ付与したマザーガラスのサンプルは、数十時間のロール処理ローラーの操作に相当する時間t1で取る。
【0050】
実施例3
実施例3からのテクスチャ付与したストックガラスのサンプルは、ロール処理ローラー操作の時間t2(およそt1の2倍に等しい)で取る。
【0051】
粗さ測定値Ra及びRtは、594×525mmのプレートで、Mitutoyo Sj-400粗度計を用い、規格ISO4287に従って、4mmの評価長さにわたって15点で測定する。表面特性評価の仕上げは、規格ISO25178に従って確立されるパラメータSsk、Sp、及びSvが得られる光干渉法による。これらすべての特性値を、表1に示す。
【0052】
本発明による3つの実施例を、比較例を構成する3つの市販品:Eurokera KB+(比較例1)、Kanger(登録商標)未研磨品(比較例2、Kanger(登録商標)研磨品(比較例3)と比較した。
【表1】
【0053】
ガラスセラミックサンプルを、以下で定めるように、キッチンでの使用を表す摩耗試験に掛ける。
【0054】
光沢差を以下のようにして測定する。
【0055】
光沢差は、摩耗領域の光沢と非摩耗領域の光沢との差を非摩耗領域の光沢で除したものである。この差の絶対値が大きい程、摩耗領域と非摩耗領域との間のコントラストが大きくなる。
【0056】
摩耗領域は、Norton炭化ケイ素(SiC)P240グリット研磨紙から得た直径18mmディスクを用いて調製する。ディスクを、Taber製のLinear Abraser装置に搭載し、5N/cm2の圧力をSiCディスクに掛ける。往復動作(1サイクル)を、38.1mmのストロークで15サイクル/分のスピードで行う。特性評価すべきサンプル上に、3つの摩耗領域を作製する。
【0057】
光沢は、X-Rite社から販売されているColor i7のタイプの装置を用いて測定する。
【0058】
3つの摩領域の各々に対して、中央に1回、最初の位置の両側に2回の、3回の測定を行う。そして、摩耗サンプルの光沢値は、3つの摩耗領域の平均光沢である。
【0059】
非摩耗サンプル上では、やはり9回の測定を行い、平均して非摩耗領域の光沢値を得る。光沢差は、光沢差の平均に対する標準偏差と共に記す。
【0060】
結果を表2に報告する。
【0061】
表2はまた、最大高さ分布が0.8μm以内のゾーンの特性評価、すなわち、これらのゾーンが占める表面の割合(dist0.8)、これらのゾーンの平均面積、及びこれらのゾーンの密度(画像1~4を参照)も示す。
【0062】
これらの特性は、光干渉法によって得られる画像に対して行った画像処理を通して確立する。
【0063】
最大高さ分布が0.8μm以内の領域を、
図1~4に白色で示す。
【表2】
【0064】
表1から分かるように、山高さ値及び谷深さ値は、比較例1(Eurokera KB+)よりも本発明による実施例の方が著しく大きい。偏り度Sskは、ロール処理サイクルの開始時点では比較例1と大きな違いはないが、ロール処理サイクルの過程で大きく減少している(本発明による実施例2及び3)。
【0065】
表2から分かるように、光干渉法によって確立される画像の分析から得られる表面の谷部に占められる割合(最大高さ分布(Sp)に関して0.8μmである深さに位置する領域が占める表面の%)は、比較例1よりも本発明による実施例の方が非常に大きい。本発明の実施例によるガラスセラミックの表面上の谷の面積さらには密度は、比較例1と比較して著しく大きい。谷は、標準的な観察条件下で(プレートを、45°の傾き、60cmの距離で、約2000Luxの照度で観察する)、面上に明るいスポットとして裸眼で知覚可能である。
【0066】
これらの特性は、欠陥の知覚の低下を説明するのに重要である。本発明によるガラスセラミックの表面上において谷の密度がより高いことが、プレート製造法の過程で発生し得るガラスセラミックの面に存在する欠陥の、上記で述べた観察条件下での知覚を改変する。
【0067】
限定されない実施例として、比較例1の面と比較して本発明による物品の面での知覚が低い欠陥は、直径0.8mm未満の気泡、長さ50mm未満の点在するスクラッチ、及び直径1mm未満のスポットであり得る。
【0068】
図5にプロットした直線によって示されるように、光沢差(表2の値)は、3つの比較例及び3つの本発明による実施例において、パラメータSsk(表1の値)と相関していることが分かる。R
2値は、1に近い。
【0069】
本発明によるガラスセラミックで得られる光沢差(絶対値で)は、比較例1に相当するガラスセラミック(Eurokera KB+)の場合よりも僅かに高いが、許容不可と見なされる比較例2に相当するガラスセラミック(Kanger(登録商標)未研磨)で観察されるよりも著しく低く維持されている。光沢差(絶対値で)は、比較例3に相当するガラスセラミック(研磨Kanger(登録商標))で観察されるよりも大きいが、このガラスセラミックの製造は、本発明の実施例によるガラスセラミックと比較して、追加の研磨工程が必要であり、これは、追加のコスト及びこの工程の実施の複雑さのために、回避されるべきである。
【0070】
本発明によるテクスチャプロファイルによって、プレートの製造方法の過程で発生し得る欠陥を隠すことへの需要と、摩耗の影響を受けた領域と摩耗されていない領域との間の光沢差を制限することへの需要の両方を満たす妥協点を実現することができる。
【0071】
本発明によるテクスチャプロファイルは、黒色又は暗色のガラスセラミックプレートに特に適しているが、乳白色、明色、又は透明白色のガラスセラミックプレートにも、それらが面外観を改変可能である限りにおいて、有利に適用可能である。
【0072】
本発明はしたがって、簡便で経済的な方法で、その上面は製造プロセスの過程で発生し得るガラス欠陥を隠し、摩耗によって発生する光沢の変動は非常に僅かなものでしかないガラスセラミック製品を開発することを可能としたものであり、一方上記製品の使用に特異的な、特に熱的及び機械的な制約にも配慮し、耐久性のある清掃の容易なガラスセラミック製品を維持している。
【0073】
本発明による物品は、特に、新規なシリーズのコンロ用の調理プレート若しくはレンジ天板、又は新規なシリーズの調理台、コンソール、戸棚、アイランド型の中央台、又は暖炉用インサートなどの製造に有利に用いることができる。
【国際調査報告】