(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20230510BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230510BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20230510BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230510BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K31/47
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K31/337
A61K31/7048
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558549
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-04
(86)【国際出願番号】 CN2021082656
(87)【国際公開番号】W WO2021190546
(87)【国際公開日】2021-09-30
(31)【優先権主張番号】202010212751.5
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519108051
【氏名又は名称】深▲セン▼微芯生物科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHENZHEN CHIPSCREEN BIOSCIENCES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】21F-24F, Building B, Zhigu Industrial Park, Shuguang Community, Xili Street, Nanshan District, Shenzhen Guangdong 518057, China
(71)【出願人】
【識別番号】522379185
【氏名又は名称】成都微芯葯業有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU CHIPSCREEN PHARMACEUTICAL CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魯 先平
(72)【発明者】
【氏名】寧 志強
(72)【発明者】
【氏名】王 曉寧
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC28
4C086EA11
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、特にプロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物及びその使用に関する。本発明では、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療において、エトポシド及びパクリタキセルがそれぞれキアウラニブと併用投与された後、寛解率がそれぞれ40%及び50%であるのに対して、エトポシド単独投与の寛解率が約27%、パクリタキセル単独投与の寛解率が約21%であることを見出した。それは、エトポシド又はパクリタキセルと併用したキアウラニブが、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療において予想外の相乗効果を達成したことを示している。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物であって、前記プロテインキナーゼ阻害剤が下記の一般式(I)で表される構造を有する化合物、その遊離形態、塩の形態、エナンチオマー、又はジアステレオマーである、医薬組成物。
【化1】
(式中、ZはCH又はNであり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、又はトリフルオロメチル基であり、
R
4は、
【化2】
であり、
Xは、ベンゼン環又はピリジン環であり、
R
5は、水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基、及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基である。)
【請求項2】
前記プロテインキナーゼ阻害剤が下記の式(II):
【化3】
で表される構造を有する化合物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記化学療法薬には、トポイソメラーゼII阻害剤又はパクリタキセル若しくはその誘導体が含まれ、
前記トポイソメラーゼII阻害剤には、エトポシド又はテニポシドが含まれ、
前記パクリタキセル若しくはその誘導体には、パクリタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセルが含まれる、ことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、がん、好ましくは卵巣がんを治療及び/又は予防するために使用され、
前記卵巣がんは、悪性上皮性卵巣がん、卵管癌及び原発性腹膜癌から選択され、好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発卵巣がんであり、より好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記プロテインキナーゼ阻害剤の投与量が1~100mgであり、
前記トポイソメラーゼII阻害剤の投与量が1~100mgであり、
前記パクリタキセル若しくはその誘導体の投与量が10~200mg/m
2である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
がんを予防及び/又は治療するための薬物の調製における請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用であって、
前記がんが卵巣がんであり、
前記卵巣がんは、悪性上皮性卵巣がん、卵管癌、及び原発性腹膜癌から選択され、好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発卵巣がんであり、より好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんである、使用。
【請求項7】
必要とする患者に治療有効量の請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、がんを治療及び/又は予防するための方法であって、
前記がんが卵巣がんであり、
前記卵巣がんは、悪性上皮性卵巣がん、卵管癌及び原発性腹膜癌から選択され、好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発卵巣がんであり、より好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんである、ことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物を含むことを特徴とする、キット。
【請求項9】
前記プロテインキナーゼ阻害剤、及びトポイソメラーゼII阻害剤又はパクリタキセル若しくはその誘導体が、それぞれ同じまたは異なる仕様を有する単位製剤であり、
前記プロテインキナーゼ阻害剤が、好ましくは経口製剤であり、
前記トポイソメラーゼII阻害剤が、好ましくは経口製剤であり、
前記パクリタキセル若しくはその誘導体が、好ましくは静脈輸液製剤である、ことを特徴とする請求項8に記載のキット。
【請求項10】
前記プロテインキナーゼ阻害剤、及びトポイソメラーゼII阻害剤又はパクリタキセル若しくはその誘導体が、別々の容器で提供される、ことを特徴とする請求項8又は9に記載のキット。
【請求項11】
白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんを治療するための薬物の調製における、下記の式(II):
【化4】
で表される構造を有する化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジーの分野に関し、特にプロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Bプロテインキナーゼは、タンバク質の特定の残基のリン酸化を触媒する酵素ファミリーであり、チロシン及びセリン/スレオニンキナーゼに大別され、様々な細胞プロセスの調節及び細胞機能の維持において重要な役割を果たすタンバク質の大きなファミリーを表す。プロテインキナーゼは、タンバク質のチロシン、セリン及び/又はスレオニン残基のヒドロキシ基へのATPの末端リン酸エステルの転移を触媒するシグナル伝達経路の酵素成分である。哺乳動物における正常又は変異したプロテインキナーゼの過剰発現又は不適切な発現は広く研究されており、がんを含む多くの疾患の発症において重要な役割を果たすことが示されている。これらのキナーゼの部分的で非限定的なリストには、Janusキナーゼファミリー(Jak1、Jak2、Jak3及びTyk2)などの非受容体型チロシンキナーゼ、血小板由来増殖因子受容体キナーゼ(PDGFR)などの受容体型チロシンキナーゼ、及びb-RAFなどのセリン/スレオニンキナーゼが含まれる。異常なキナーゼ活性は、良性及び悪性の増殖性障害、ならびに免疫及び神経系の不適切な活性化による疾患を含む、多くの疾患状態で観察される。
【0003】
プロテインキナーゼは、構造的に関連する酵素の大きなファミリーとして、細胞内の様々なシグナル伝達プロセスの制御を担っている(例えば、Hardie及びHanks,The Protein Kinase Facts Book,I and II,Academic Press,San Diego,Calif.,1995を参照のこと)。プロテインキナーゼは、その構造及び触媒機能の保存性から共通の祖先遺伝子から進化したと考えられている。キナーゼは、ほとんど250~300個のアミノ酸を有する同様の触媒ドメインを含む。キナーゼは、そのリン酸化受容体(例えば、タンパク質-チロシン、タンパク質-セリン/スレオニン、脂質など)に基づいて各ファミリーに分類される。これらのファミリーのそれぞれに一般的に対応する配列モチーフが同定されている(例えば、Hanks及びHunter,(1995),FASEB J.9:576-596;Knightonら,Science,(1991)253:407-414;Hilesら,Cell,(1992),70:419-429;Kunzら,Cell(1993),73:585-596;Garcia-Bustosら,EMBO J.,(1994),13:2352-2361を参照のこと)。
【0004】
変異、過剰発現若しくは不適切な調節、調節異常又は調節不全、ならびに増殖因子又はサイトカインの過剰産生又は産生不足による不適切なキナーゼ活性は、がんなどの様々な疾患を含むがこれらに限定されない多くの疾患に関し得る。プロテインキナーゼは、治療的介入の標的として重要な酵素の一種となっている。特に、チロシンキナーゼcKitの過剰活化は血液学的悪性症に関連しており、がん治療の標的となっている(Heinrich,Griffithら,Blood 2000,96(3):925-32)。同様に、JAK3シグナル伝達は白血病及びリンパ腫に関連しており、潜在的な治療標的として使用されている(Heinrich,Griffithら,2000))。プロテインキナーゼは、細胞サイクルの調節においても中心的な役割を果たしている。シグナル伝達経路の様々な構成要素における欠陥は、様々な形態のがんを含む多種の疾患を引き起こすことが分かっている(Gaestelら,Current Medicinal Chemistry,(2007)14:2214-2234)。近年、発癌性シグナル伝達経路に関連するプロテインキナーゼは、様々な種類のがんを含む多種の疾患の治療において重要な薬物標的となっている。また、様々なプロテインキナーゼ阻害剤も抗腫瘍薬として使用されている。
【0005】
キアウラニブは、深▲セン▼微芯生物科技股▲フン▼有限公司が独自に開発した完全知的財産権を有する新規なプロテインキナーゼ阻害剤である。キアウラニブは、複数のプロテインキナーゼを標的とする小分子抗腫瘍標的薬物であり、VEGFR/PDGFR/c-Kit、Aurora B、CSF-1R標的に対する高い選択的阻害活性により、抗腫瘍血管新生、腫瘍細胞の有糸分裂の阻害、腫瘍炎症性微小環境の調節という3つの経路による抗腫瘍相乗作用機構を持ち、総合的な抗腫瘍作用を発揮する。この製品は、従来のVEGFR標的阻害剤(スニチニブ/Sunitinib、ソラフェニブ/Sorafenibなど)と比較して、有糸分裂のキー酵素Aurora Bに対する阻害活性が特有であり、腫瘍組織のゲノム不安定性を低下させ、腫瘍細胞の転移を阻害する潜在的な作用を持っている。キアウラニブは、腫瘍血管新生、細胞有糸分裂及び腫瘍炎症性微小環境という3つの相補の作用機構を阻害することにより抗腫瘍活性を発揮し、同時にその高い標的選択性により、オフターゲット効果による副作用のリスクも低減する。
【0006】
DNAトポイソメラーゼは、主に触媒作用によりDNAのトポロジー構造を変化させる重要な細胞内リボザイムである。真核細胞のトポイソメラーゼは、主にトポイソメラーゼI(Topo I)とトポイソメラーゼII(Topo II)に分けられる。その中で、触媒プロセスで形成された中間生成物によりDNA二本鎖が一時的に切断されたものをTopo IIと呼ぶ。Topo IIは、細胞DNA複製、転写及び有糸分裂などの重要な生命プロセスにおいて重要な役割を果たす。
【0007】
DNA Topo IIは、DNA二本鎖のねじれの解消(切断と再結合)を媒介する役割を果たしており、通常には、DNAと切断やすい複合体を形成する。Topo II阻害剤は、Topo IIを標的とする抗腫瘍薬であり、その抗癌作用は酵素自体の活性を阻害することではなく、酵素DNA切断複合体の形成を促進し、平衡反応を酵素DNA切断複合体に向かわせ、その半減期を延長して安定させ、DNA Topo IIが媒介するDNA再結合反応を妨害し、DNAの一本鎖又は二本鎖の切断を引き起こし、DNA複製に影響を与え、細胞殺傷作用を発揮することにある。切断可能な複合体の形成と安定した存在は、DNAの異常な組換えを促進し、それによりアポトーシスプログラムを開始して細胞死を引き起こす。
【0008】
細胞におけるTopo IIの重要な役割に対する知見から、このような化合物の研究は常に抗腫瘍薬の開発におけるホットスポットの1つである。現在発売されているトポイソメラーゼIIには、エトポシドやテニポシドなどがある。
【0009】
パクリタキセルは、発見された最も優れた天然の抗がん剤であり、臨床では乳がん、卵巣がんならびに一部の頭頸癌及び肺癌の治療に広く使用されている。パクリタキセルは、抗癌活性を持つジテルペンアルカロイド化合物として、その新規で複雑な化学構造、広範で重要な生物活性、新しく独特な作用機構、天然資源の希少により、植物学者、化学者、薬理学者、分子生物学者に非常に好まれ、20世紀後半の世界中の人気の抗癌剤及び研究の焦点となっている。ドセタキセルやナブパクリタキセルなどの誘導体は、パクリタキセルと同様の効果を有する。
【0010】
中国では、卵巣がんは、年間発生率が子宮頸癌及び子宮体部悪性腫瘍に次ぐ第3位の女性生殖器系腫瘍であり、ますます増加している傾向があり、死亡率が女性生殖器悪性腫瘍の第1位であり、女性の健康を深刻に脅かす悪性腫瘍である。卵巣悪性腫瘍には様々な病理学的タイプが含まれ、その中で最も一般的なのが卵巣悪性腫瘍の約70%を占める上皮癌で、次のがそれぞれ約20%と5%を占める悪性生殖細胞腫瘍と性索間質性腫瘍である。
【0011】
卵巣がんの治療は、常に婦人科腫瘍が直面する最も困難な課題になっており、その治療の基として理想的な細胞減少手術であり、卵巣がん化学療法の主なレジメンとして白金類を主とする併用化学療法レジメンである。末期患者では上記の治療で完全に寛解されても、70%~80%のが再発する恐れがある。
【0012】
白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんの臨床治療が最も困難である。白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんを治療するには、新しい治療構想を提供して白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんを効果的に治療できるレジメンを検討するのが非常に重要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明では、プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物が、がん、特に、白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんに対して予想外の治療作用を有することを見出した。
【0014】
第1の態様では、本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物を提供する。ここで、前記プロテインキナーゼ阻害剤には、CN200910223861.5に記載の化合物が含まれる。CN200910223861.5の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。前記プロテインキナーゼ阻害剤は、好ましくは一般式(I)で表される構造を有する化合物であり、
【化1】
式中、ZはCH又はNであり、
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基又はトリフルオロメチル基であり、
R
4は、
【化2】
であり、
Xはベンゼン環又はピリジン環であり、
R
5は、水素、ハロゲン、メチル基、メトキシ基又はトリフルオロメチル基からなる群より選択される1つ又は複数の置換基である。
前記プロテインキナーゼ阻害剤には、式(I)の化合物の遊離形態、塩の形態、エナンチオマー又はジアステレオマーが含まれる。
【0015】
好ましい形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤は、式(II):
【化3】
で表される構造を有する化合物であり、その化学名がN-(2-アミノフェニル)-6-(7-メトキシキノリン-4-オキシ)-1-ナフタレンカルボキサミドであり、一般名がキアウラニブ(Chiauranib)である。
【0016】
前記化学療法薬には、トポイソメラーゼII阻害剤又はパクリタキセル若しくはその誘導体が含まれる。前記トポイソメラーゼII阻害剤には、エトポシド又はテニポシドが含まれる。前記パクリタキセル若しくはその誘導体には、パクリタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセルが含まれる。
【0017】
前記プロテインキナーゼ阻害剤の投与量は、1~100mg、好ましくは20~80mg、最も好ましくは50mgである。前記トポイソメラーゼII阻害剤の投与量は、1~100mg、好ましくは20~80mg、最も好ましくは50mgである。前記パクリタキセル若しくはその誘導体の投与量は、10~200mg/m2、好ましくは50~100mg/m2、最も好ましくは60mg/m2である。
【0018】
前記医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含んでもよい。
【0019】
第2の態様では、本発明は、がんを予防及び/又は治療するための薬物の調製における上記医薬組成物の使用を提供する。前記がんは卵巣がんである。前記卵巣がんには、悪性上皮性卵巣がん、卵管癌及び原発性腹膜癌が含まれる。
【0020】
好適な一実施形態では、前記がんは、白金難治性・白金耐薬性再発の卵巣がんである。前記白金難治とは、白金含有レジメンによる治療中の腫瘍の進行を指す。前記白金耐薬とは、白金含有治療レジメンによる治療終了後6ヶ月以内の腫瘍の進行又は再発を指す。
【0021】
好適な一実施形態では、前記がんは白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんである。前記末期にはステージとしてステージIIIとステージIVがある。ステージIII:腫瘍が卵巣又は卵管の片方または両方に及ぼす場合、或いは細胞学的又は組織学的に確認された骨盤外腹膜の広がり、及び/又は腹膜後リンパ節への転移を伴う原発性腹膜癌;ステージIV:腹腔以外の遠い箇所への転移。
【0022】
第3の態様では、本発明は、がんの治療及び/又は予防のための方法を提供し、必要とする患者に治療有効量の上記医薬組成物を投与する工程を含む。前記がんは卵巣がん、好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発卵巣がん、最も好ましくは白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんである。
【0023】
好適な一実施形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤の投与量は、1~100mg、好ましくは20~80mg、最も好ましくは50mgである。前記プロテインキナーゼ阻害剤は、好ましくは経口投与剤形であり、最も好ましくはカプセルであり、好ましくは1日1回、毎朝空腹時に経口摂取する。
【0024】
好適な一実施形態では、前記トポイソメラーゼII阻害剤の投与量は、1~100mg、好ましくは20~80mg、最も好ましくは50mgである。前記トポイソメラーゼII阻害剤は、好ましくは経口投与剤形であり、最も好ましくはカプセルであり、好ましくは毎朝空腹時に経口摂取し、21日間連続服用して7日間休み、28日ごとに1治療サイクルとし、最大6つの治療サイクルとする。
【0025】
好適な一実施形態では、前記パクリタキセル若しくはその誘導体の投与量は、10~200mg/m2、好ましくは50~100mg/m2、最も好ましくは60mg/m2である。前記パクリタキセル若しくはその誘導体は、好ましくは非経口投与剤形であり、より好ましくは静脈内投与剤形であり、好ましくは週1回(d1、d8、d15)投与され、3週間ごとに1治療サイクルとし、最大6つの治療サイクルとする。
【0026】
好適な一実施形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤及び化学療法薬は、別々に、同時に又は順次に投与されることができる。
【0027】
好適な一実施形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法物質の併用治療サイクルが終了した後、治療のためにプロテインキナーゼ阻害剤を投与し続けることができる。
【0028】
第4の態様では、本発明は、有効量の上記医薬組成物を含むキットを提供する。
【0029】
好適な一実施形態では、前記キットにおいて、前記プロテインキナーゼ阻害剤、及びトポイソメラーゼII阻害剤又はパクリタキセル若しくはその誘導体は、それぞれ同じまたは異なる仕様を有する単位製剤である。前記プロテインキナーゼ阻害剤は経口製剤であることが好ましい。前記トポイソメラーゼII阻害剤は経口製剤であることが好ましい。前記パクリタキセル若しくはその誘導体は静脈輸液製剤であることが好ましい。
【0030】
好適な一実施形態では、前記プロテインキナーゼ阻害剤及び化学療法薬は別々の容器で提供される。前記プロテインキナーゼ阻害剤及び化学療法薬は、同時に、前後又は順次に投与されることができる。
【0031】
好適な一実施形態では、前記キットは、同じパッケージに以下:
プロテインキナーゼ阻害剤を含む第1の容器と、
化学療法薬を含む第2の容器と、を含む。
【0032】
最後に、本発明は、白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんを治療するための薬物の調製における式(II)で表される構造を有する化合物の使用をさらに提供する。
【化4】
【0033】
本発明では、「再発・難治性の末期卵巣がんの治療におけるキアウラニブカプセルの有効性と安全性を検討するための単群、多施設(Multi-Center)、非無作為化、非盲検(Open-Label)の臨床試験」により、キアウラニブ単剤が複数回の化学療法、白金難治性・耐薬再発を経験した末期卵巣がんの被検者において腫瘍寛解の予備的有効性を示すことが確認された。「白金難治性・白金耐薬性再発卵巣がんの治療における化学療法と併用したキアウラニブのステージII多施設臨床試験」により、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療が予備的に示唆され、エトポシドとパクリタキセルをそれぞれキアウラニブと併用投与した場合、客観的奏効率(Objective Response Rate)が改善された。エトポシド単剤の奏効率は約27%、パクリタキセル単剤の奏効率は約21%であるが、2つの化学療法薬をそれぞれキアウラニブと併用した場合の客観的奏効率は、それぞれ40%と50%に達した。この結果、エトポシド又はパクリタキセルと併用したキアウラニブによって、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療において予想外の相乗効果を取得したことが認められた。登録症例の実況から、エトポシド又はパクリタキセルと併用したキアウラニブは、白金難治性・耐薬再発の末期(ステージIII及びステージIV)悪性上皮性卵巣がん、特に転移が起こったステージIII及びステージIV悪性上皮性卵巣がんの治療において治療効果が優れたことが認められた。
【0034】
本明細書で使用される「含有する」、「含む」又は「包括する」という用語は、記載された要素、整数又は工程を含むが、不他の任意の要素、整数又は工程を排除しないことを意味する。本明細書では、「含有する」、「含む」又は「包括する」という用語が使用される場合、別段の指示がない限り、記載された要素、整数又は工程からなる状況も包含する。
【0035】
「予防」という用語は、疾患又は病気又はその症状の発生又は発生頻度の抑制又は遅延を含み、一般に、病気又は症状の発症前、特にリスクのある個体の病気又は症状の発生前の薬物投与を指す。
【0036】
本明細書で使用される「治療」という用語とは、疾患の臨床的又は診断的症状の軽減又は排除により証明される、対象におけるがんの進行の減速、停止又は逆転を指す。治療には、例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍増殖の停止又は既存の腫瘍の退縮など、症状の重症度、症状の数や再発頻度の低減が含まれ得る。
【0037】
「医薬組成物」という用語とは、非限定の組み合わせ製品又は限定の組み合わせ製品を指す。「非限定の組み合わせ」という用語は、例えば、有効成分であるプロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬が、別々の実在物として、同時に、特定の時間制限なしに、又は同じまたは異なる時間間隔で、患者に順次に投与されることを意味する。このような投与によれば、患者において予防又は治療に有効なレベルの前記2つの活性剤が提供される。いくつかの実施形態においては、医薬組成物で使用されるプロテインキナーゼ阻害剤及び化学療法薬の2つの分子は、それらが単独で使用される場合のレベルを超えないように投与される。「限定の組み合わせ」という用語は、2つの活性剤が、単一の実在物の形態で同時に患者に投与されることを意味する。2つの活性剤の用量及び/又は時間間隔は、好ましくは、各部の併用が疾患又は病気の治療においていずれかの単成分により達成できる効果を超えた効果を生じるように選択される。各成分は、それぞれ別個の製剤形態をしてもよく、その製剤形態が同じであっても異なっていてもよい。
【0038】
併用治療に言及する場合、本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、併用投与される場合に併用作用により所望の生物学的又は医学的応答(抑制又は改善された、再発・難治性卵巣がんを含む一つまたは複数のがんの臨床的又は診断的症状)を引き起こす併用投与量を指す。例えば、併用治療について言及する場合には、本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、治療サイクル中の同じ日又は異なる日に一緒に投与(順次に又は同時に)された場合、治療上有効及び/又は相乗的な併用作用を生じる量である。
【0039】
「投与」という用語は、当業者に知られている様々な方法及び送達システムのいずれかを用いて、本発明に係る薬学的組み合わせ中の各有効成分を個体に物理的に導入することを指す。本発明に係る薬学的組み合わせ中の各有効成分の投与経路には、経口、静脈内(例えば、注入(点滴としても知れらる)又は注射)、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髓、局所又は他の非経口投与経路が含まれる。本明細書で使用される「非経口投与」という用語は、胃腸及び局所投与以外の投与方法を指し、通常には、静脈内の注射や注入であり、また、非限定的には、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内の注射や注入を含み、さらに体内電気穿孔法も含む。それに対応して、本発明に係る薬学的組み合わせ中の各有効成分は、カプセル剤、錠剤、注射剤(輸液又は注射液を含む)、シロップ剤、スプレー剤、トローチ剤、リポソーム又は坐剤などに製剤化されることができる。
【0040】
「用量」という用語は、有効性を引き出す薬物の量である。用量は、特に断りがない限り、遊離形態の薬物の量に関連する。薬物が薬学的に許容される塩の形態である場合、薬物の量は遊離形態の薬物の量に比例して増加する。例えば、用量は、製品パッケージ又は製品情報シートに記載されいている。
【0041】
「薬学的に許容される」という用語とは、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題又は合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適する、合理的な利点/リスク比に見合う化合物、材料、組成物及び/又は剤形を指す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、プロテインキナーゼ阻害剤と化学療法薬とを含む医薬組成物及びその使用を開示しており、当業者が本明細書の内容を参考して適切に改良して実現することができる。なお、すべての同様の置換及び変更は、当業者にとって自明であり、本発明に含まれると見なされる。本発明に係る使用については、好ましい実施形態を通じて説明したが、当業者なら、本発明の内容、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている使用に対して変更又は適切な変化及び組み合わせを行うことにより本発明の技術を実現及び適用することが可能であることは明らかである。
【実施例】
【0043】
以下、非限定的な例により本発明をさらに説明するが、本発明が包含する範囲を限定することを意図しない。
【0044】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語を定義する。
【0045】
「約」という用語は、数値と併せて使用される場合、所定の数値よりも5%小さい下限と、所定の数値よりも5%大きい上限とを有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0046】
「有害事象」(AE)という用語とは、薬品(薬物)を投与された患者又は臨床試験被検者に生じる有害な医療事象を指すが、必ずしも治療と因果関係があるとは限らない。その発生が治療に関連しているかどうかにかかわらず、臨床研究の過程で発生した既存の他の疾患の再発を含める。侵襲的な臨床検査は、その自体が有害事象とは見なされないが、これらの検査を引き起こす原因は有害事象と見なされるべきである。
実施例1 再発・難治性卵巣がんの治療におけるキアウラニブカプセルの有効性と安全性を検討するための単群、多施設、非無作為化、非盲検臨床試験
1.試験設計
【0047】
・ 単群、多施設、非無作為化、非盲検Ib期の試験。
・ 主な登録基準:
組織学的に診断された上皮性卵巣がん、卵管癌又は原発性腹膜癌、
白金系含有化学療法レジメンを受けた必要があること、
白金系耐薬患者は、2つ以上の異なる化学療法レジメンを受けた後、疾患の進行又は再発が起こった必要があること、
白金類感受性患者は、2つ以上の異なる化学療法レジメンを受けた後、疾患の進行又は再発が起こたか、或いはさらなる化学療法を受けることを拒否する必要があること。
・ 投与方法:キアウラニブを50mgで1日1回に毎朝空腹時に経口摂取し、28日ごとを治療サイクルとし、治療サイクルの間に休薬間隔期がない。次のいずれかの事情が発生するまで治療を続けた(いずれか早い方):疾患の進行、耐えられない毒性反応、死亡、インフォームドコンセントの撤回又は追跡調査の喪失。
・ 有効性指標:研究者及び画像専門家がRECIST1.1基準に従って評価した。
・ 主要的:客観的奏効率(ORR)
・ 副次的:無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、第16週の疾患制御率(16W-DCR)、病勢コントロール率(DOR)、全生存期間(OS)。
2.被検者集団
【0048】
この研究では、再発・難治性卵巣がんの被検者が25名登録され、以前の治療レジメンの数が≧3個であった。最終の白金含有化学療法に感受性のある方が3名(12.0%)、最終の白金含有化学療法に難治又は耐薬のある方が22名(88.0%)であった。試験データ締切日(2019年3月20日)の時点で、疾患進行による治療終了の方が16名(64.0%)、有害事象による治療終了の方が3名(12.0%)であった。治療終了の他の原因としては、被検者の自主的な中止、試験の終了、及び追跡調査の喪失がある。
【0049】
最大の解析対象集団(FAS)と安全性データ集団(SS)が分析に使用され、各データ集団には25名の被検者が含まれた。
3.有効性の結果
【0050】
各有効性指標の評価状況を表1に示す。25名の被検者中、確認された最良の治療効果としては、部分寛解(PR)1名(4.0%)、疾患安定(SD)14名(56.0%)、疾患進行(PD)7名(28.0%)、評価不能(NE)3名(12.0%)であった。ORRが4.0%であった。
【0051】
試験データ締切日(2019年3月20日)の時点で、PFSが達成された研究事象(疾患の進行又は死亡)の数が12名で、PFSの中央値が3.7ヶ月(95%CI、1.8~NE)であった。TTPの中央値が3.7ヶ月(95%CI、1.8~NE)で、16W-DCRが32.0%で、DOR及びOSの中央値が推定できなかった。
【0052】
【0053】
複数回の化学療法、白金難治性・耐薬再発を経験した卵巣がん被検者では、キアウラニブ単剤が腫瘍寛解の予備的有効性を示した。
5.安全性評価
【0054】
安全性指標は、有害事象、バイタルサイ、ECG及び実験室結果の異常を包含し、CTCAE V4.03によって判断した。研究に登録された再発・難治性卵巣がんの被検者25名をすべて安全性データ集団(SS)に入力して分析した。その結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
これらのデータは、キアウラニブ単剤治療の毒性反応の特徴がVEGFR標的薬(ソラフェニブ、スニチニブなど)について報告されているのと同様であり、大半の被検者がそれに耐えることができ、安全性が制御可能であることを示唆している。
実施例2 白金難治性・白金耐薬性再発の末期卵巣がんの治療における化学療法と併用したキアウラニブの第II相多施設臨床試験
1.試験設計
【0057】
・ 多施設、無作為化、オープン設計、第II相試験。
・ スクリーニング時の無治療期間(TFI)が3ヶ月以上であるかどうかに従って層別化され、キアウラニブとエトポシドの併用群(CE群)又はキアウラニブとパクリタキセルの併用群(CP群)に1:1の割合でランダムに割り当てられた。
・ 試験は、予備実験と正式な試験の2つの段階に分けられた。正式な試験の開始前に、キアウラニブと化学療法薬の併用投薬の安全性を予備的に評価し、化学療法薬がキアウラニブの薬物動態に及ぼす潜在的な影響を分析するために、各グループの3名の被検者が予備試験に含まれた。すべての予備試験被検者は第1のサイクルの安全性及び薬物動態評価を完成した後、正式な試験への登録が開始された。
・ 主な選択基準:組織学的又は細胞学的に診断された悪性上皮性卵巣がん、卵管癌又は原発性腹膜癌;白金難治性又は白金耐薬性再発卵巣がん;過去に一次以上の白金含有化学療法(少なくとも4つの白金含有治療の治療サイクル)を受け、白金難治性又は白金耐薬治療が二次以下であった。
・ 投与方法:併用化学療法段階とキアウラニブ単剤維持段階の2つの治療段階が含まれる。すべての被検者は、疾患の進行、耐えられない毒性、インフォームドコンセントの撤回又は死亡(いずれか早い方)まで治療を受けた。
・ 併用化学療法段階:
CE群:予備試験段階では、キアウラニブカプセルを25mg、1日1回、経口投与し、レジメン所定時点で薬物動態研究のサンプリングを完了した後、研究者が忍容性と予備的有効性の観察を総合的に考慮して経口投与量を1日1回、50mgに増量するかどうかを決定した。正式な試験段階では、キアウラニブカプセルを50mg、1日1回、毎朝空腹時に経口連続投与し、また、エトポシド軟カプセル剤を、50mg、毎朝空腹時に経口投与した。21日間連続服用して7日間休み、28日ごとを治療サイクルとし、最大6つの治療サイクルを行わった。
CP群:予備実験及び正式な試験段階でのキアウラニブの服用レジメンがCE群と同じであり、また、パクリタキセルインフュジョンを60mg/m2、静脈点滴、週1回、投与(d1、d8、d15)した。3週間ごとを治療サイクルとし、最大6つの治療サイクルを行わった。
・ 単剤維持段階:CE群とCP群ではいずれもキアウラニブ単剤の維持治療を受けた。
・ 有効性指標:固形腫瘍RECIST 1.1版(2009年)基準を用いて有効性判定を行った。
・ 主要的:無増悪生存期間(PFS)
・ 副次的:客観的寛解率(ORR)、全生存期間(OS)、無増悪期間(TTP)、病勢コントロール率(DOR)
2.被検者集団
【0058】
2019年12月26日まで、合計21名(CE群10名、CP群11名)が登録された。登録された被検者の治療時間が0~5サイクルであった。以下の有効性結果が締切日以前の評価可能なデータに基づいたものであった。
3.有効性の結果
【0059】
各有効性指標の評価状況を表3に示す。21名の被検者には、有効性判定記録(CE群5名、CP群6名)のある症例が11名であった。最良の有効性反応としては、CE群で2名(40.0%)がPRを達成し、3名がSDを達成し、また、CP群で3名(50.0%)がPRを達成し、2名がSDを達成し、1名がPDを達成した。
【0060】
【0061】
過去のデータによると、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療では、エトポシド単剤の寛解率が約27%、パクリタキセル単剤の寛解率が約21%であった。今回のデータは、エトポシド及びパクリタキセルがそれぞれキアウラニブと併用投与された後、寛解率がそれぞれ40%と50%であったことを示唆しており、エトポシド又はパクリタキセルと併用したキアウラニブが、白金難治性・耐薬再発の末期卵巣がんの治療において予想外の相乗効果を達成したことを示している。登録症例の実況から、エトポシド又はパクリタキセルと併用したキアウラニブが、白金難治性・耐薬再発の末期(ステージIII及びステージIV)悪性上皮性卵巣がん、特に転移が発生するステージIII及びステージIVの悪性上皮性卵巣がんの治療において優れた治療効果を持っていることが認められた。
5.安全性評価
【0062】
安全性指標には、各バイタルサイ、有害事象及び実験室検査指標を検出又は観察することによる安全性評価が含まれる。有害事象の重症度は、CTCAE V4.03基準に従って判断した。
【0063】
2019年12月26日現在、合計21名(CE群10名、CP群11名)が登録された。登録された被検者の治療時間が0~5サイクルであった。安全性結果が締切日以前の評価可能なデータに基づいたものであった。その結果を表4に示す。
【0064】
【0065】
これらのデータは、エトポシド及びパクリタキセルがそれぞれキアウラニブと併用投与された後、各化学療法薬単剤、キアウラニブ単剤についての報告と比較して、有害事象のタイプが類似しており、新しい安全性シグナルが見られなかった。有害事象の発生率が増加しているが、大半の患者がそれに耐えることができ、有害事象に起因した治療終了がなく、安全性が制御可能であることが示唆された。
【0066】
以上、本発明について詳細に説明した。本明細書では具体的な例を用いて本発明の原理及び実施形態について述べたが、上記実施例の説明は、最良の態様、本発明の方法及びその要旨を理解するために使用されるものであり、それにより、当業者が、任意の装置又はシステムの製造や使用、及び任意の組み合わせた方法を含む本発明を実践することも可能になる。なお、当業者にとって、本発明の原理から逸脱することなく、本発明に対していくつかの改良や修飾を行う可能性もあり、これらの改良及び修飾も本発明の特許請求の範囲内に含まれることに留意されたい。本発明の特許保護の範囲は請求項によって限定されるが、当業者が想到し得る他の実施例も含む。これらの他の実施例が請求項の文字表現と異なるものではない構造要素を有する場合、又はそれらが請求項の文字表現と実質的な相違のない同等の構造要素を含む場合、それらの他の実施例も請求項の範囲内に含まれるべきである。
【国際調査報告】