(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】動き補償を伴う呼吸検出
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
A61M16/10 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558557
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 SG2021050168
(87)【国際公開番号】W WO2021194426
(87)【国際公開日】2021-09-30
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522043172
【氏名又は名称】レスメド・アジア・プライベート・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RESMED ASIA PTE. LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】マウン,キィ・トゥ
(72)【発明者】
【氏名】グウィー,ヨン・サーン
(72)【発明者】
【氏名】チー,レオン・キー
(72)【発明者】
【氏名】ジャガディーサン,プラヴィーン
(57)【要約】
ある酸素濃縮システムが、圧力センサと、動きセンサと、圧力センサから取得した1つ以上の圧力信号および動きセンサから取得した動き信号を使用して、酸素富化空気のボーラスを放出する時期を決定するように構成されたコントローラと、を備え得る。いくつかの実施形態においては、このコントローラが、圧力センサから取得した初期圧力信号および動きセンサから取得した動き信号に基づいてトリガ閾値を調整し得る。いくつかの実施形態においては、このコントローラが、圧力センサから取得した圧力信号を、動きセンサから取得した動き信号に基づいて調整し得る。いくつかの実施形態においては、このコントローラが、圧力センサから取得した圧力信号から潜在的な吸息開始を検出し、潜在的な吸息開始を検証するかどうかを、動きセンサから取得した動き信号に基づいて決定し得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力信号を生成するように構成された圧力センサであって、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結されている圧力センサと、
動き信号を生成するように構成された動きセンサと、
前記圧力センサおよび前記動きセンサに通信可能に連結された1つ以上のプロセッサであって、前記圧力センサから取得した初期圧力信号および前記動きセンサから取得した前記動き信号に基づいてトリガ閾値を調整するように、かつ、前記調整されたトリガ閾値を、前記圧力センサから取得した後続の圧力信号と比較して、前記導管を通じて前記ユーザに酸素富化空気のボーラスを提供する時期を決定するように、構成されている1つ以上のプロセッサと、
を備える酸素濃縮システム。
【請求項2】
前記1つ以上のプロセッサが、前記動き信号の大きさまたは周波数が所定の閾値よりも大きいと前記トリガ閾値を維持するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記初期圧力信号および前記動き信号に基づいて前記トリガ閾値を調整することが、
活動信号を生成することと、
前記活動信号のウィンドウが前記ユーザの活動の増加を示したときに前記トリガ閾値の大きさを増加させることと、
前記活動信号の前記ウィンドウが前記ユーザの活動の減少を示したときに前記トリガ閾値の大きさを減少させることと、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記活動信号を生成することが、
前記初期圧力信号から少なくとも1つの呼吸パラメータを導出することと、
前記動き信号から少なくとも1つの動きパラメータを導出することと、
前記少なくとも1つの呼吸パラメータと前記少なくとも1つの動きパラメータとを組み合わせて、前記活動信号を生成することと、
を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの呼吸パラメータが前記ユーザの呼吸速度であり、前記少なくとも1つの動きパラメータが、前記ユーザによる単位時間あたりの歩数である、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記活動信号を生成することが、
前記初期圧力信号から非呼吸信号を生成することと、
前記動き信号に基づいて前記非呼吸信号をスケーリングして、前記活動信号を生成することと、
を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記初期圧力信号にフィルタが適用されて前記非呼吸信号を生成する、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ウィンドウの長さが固定されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記初期圧力信号および前記動き信号に基づいて前記トリガ閾値を調整することが、前記動き信号に基づいて前記ウィンドウの長さを調整することをさらに含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項10】
前記動き信号に基づいて前記ウィンドウの前記長さを調整することが、前記動き信号の大きさまたは周波数が所定の閾値よりも大きいと前記ウィンドウの前記長さを縮めることを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記動きセンサが、前記送達導管に連結された加速度計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記動きセンサが、前記送達導管に連結された歪みゲージを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
周囲空気の加圧ストリームを生成するように構成された圧縮システムと、
酸素富化空気を生産するために前記周囲空気の加圧ストリームから少なくともいくらかの窒素を分離するように構成されているガス分離吸着剤を収容するキャニスタを備えるキャニスタシステムと、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
圧力信号を生成するように構成された圧力センサであって、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結されている圧力センサと、
動き信号を生成するように構成された動きセンサと、
前記圧力センサおよび前記動きセンサに通信可能に連結された1つ以上のプロセッサであって、前記圧力センサから取得した圧力信号を、前記動きセンサから取得した前記動き信号に基づいて調整するように、かつ、トリガ閾値を前記調整された圧力信号と比較して、前記導管を通じて前記ユーザに酸素富化空気のボーラスを提供する時期を決定するように、構成されている1つ以上のプロセッサと、
を備える酸素濃縮システム。
【請求項15】
前記動きセンサが、前記送達導管に連結された加速度計を備える、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記動き信号に基づいて前記圧力信号を調整することが、前記動き信号から導出された加速度が前記圧力センサの向きに対して成す方向を分析することを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記動きセンサが、前記送達導管に連結された歪みゲージを備え、前記動き信号に基づいて前記圧力信号を調整することが、前記送達導管の1つ以上の部分の測定された屈曲を分析することを含む、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記1つ以上のプロセッサが、前記トリガ閾値が前記調整された圧力信号と比較される前に、前記動き信号に基づいて前記トリガ閾値を調整するようにさらに構成されている、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
圧力信号を生成するように構成された圧力センサであって、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結されている圧力センサと、
動き信号を生成するように構成された動きセンサと、
前記圧力センサおよび前記動きセンサに通信可能に連結された1つ以上のプロセッサであって、トリガ閾値を、前記圧力センサから取得した圧力信号と比較することにより、潜在的な吸息開始を検出するように、前記潜在的な吸息開始を検証するかどうかを、前記動きセンサから取得した前記動き信号に基づいて決定するように、かつ、前記潜在的な吸息開始が検証されれば、前記導管を通じて前記ユーザに酸素富化空気のボーラスを提供するように、構成された1つ以上のプロセッサと、
を備える酸素濃縮システム。
【請求項20】
前記潜在的な吸息開始を検証するかどうかを前記動き信号に基づいて決定することが、前記動き信号の大きさを所定の閾値と比較することを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記動き信号の前記大きさが前記所定の閾値未満であれば、前記潜在的な吸息開始が検証される、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記潜在的な吸息開始を検証するかどうかを前記動き信号に基づいて決定することが、前記動き信号の周波数を所定の閾値と比較することを含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記動き信号の前記周波数が前記所定の閾値未満であれば、前記潜在的な吸息開始が検証される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記動きセンサが、前記送達導管に連結された加速度計を備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、
ユーザの気道圧を表す初期圧力信号および動き信号からトリガ閾値を計算することと、
前記ユーザの前記気道圧を表す後続の圧力信号を前記トリガ閾値と比較することと、
前記ボーラスの放出を制御するための前記トリガ信号を、前記比較に基づいて生成することと、
を含む方法。
【請求項26】
酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、
ユーザの気道圧を表す圧力信号を、動き信号に基づいて調整することと、
前記調整された圧力信号をトリガ閾値と比較することと、
前記ボーラスの放出を制御するための前記トリガ信号を、前記比較に基づいて生成することと、
を含む方法。
【請求項27】
酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、
圧力信号をトリガ閾値と比較して、潜在的な吸息開始を検出することと、
前記潜在的な吸息開始を検証するかどうかを、動き信号に基づいて決定することと、
前記ボーラスの放出を制御するための前記トリガ信号を、前記検証に基づいて生成することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I.関連出願の相互参照
本願は、2020年3月27日に出願された米国仮出願第63/000813号の優先権を主張するものであり、この仮出願は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
II.技術の分野
本技術は概して、呼吸障害を治療するための酸素富化空気を生産するシステムおよび方法に関するものである。いくつかの実施形態においては、呼吸データおよび動きデータの組み合わせが、酸素富化空気をユーザに効率的に提供するのに使用される。
【背景技術】
【0003】
III.関連技術の説明
A.ヒトの呼吸システムおよびその障害
身体の呼吸システムは、ガス交換を促進させる。鼻および口は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
これらの気道は、一連の分岐する管を含み、これらの管は、肺の奥深くに進むほど狭く、短くかつ多数になる。肺の主要な機能はガス交換であり、吸い込んだ空気から酸素を静脈血中へ取り入れさせ、二酸化炭素を退出させる。気管は、右および左の主気管支に分かれ、これらの主気管支はさらに分かれて、最終的に終末細気管支となる。気管支は、誘導気道を構成するものであり、ガス交換には関与しない。気道がさらに分割されると呼吸細気管支となり、最終的には肺胞となる。肺の肺胞領域においてガス交換が行われ、この領域を呼吸領域と呼ぶ。以下を参照されたい:「Respiratory Physiology」, by John B. West, Lippincott Williams & Wilkins, 9th edition published 2012。
【0005】
一連の呼吸障害が存在する。呼吸障害の例には、呼吸不全、肥満過換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、神経筋疾患(NMD)および胸壁障害が含まれる。
【0006】
呼吸不全とは、呼吸障害の総称であり、患者の需要を満たすための充分な酸素吸気または充分なCO2呼息を肺が行うことができていないことを指す。呼吸不全は、以下の障害のうちいくつかまたは全てを包含し得る。
【0007】
呼吸不全(一種の呼吸不全)の患者は、運動中に異常な息切れを経験することがある。
【0008】
肥満過換気症候群(OHS)は、低換気の原因が他に明確に無い状態における、重症肥満および覚醒時慢性高炭酸ガス血症の組み合わせとして定義される。症状には、呼吸困難、起床時の頭痛と過剰な日中の眠気が含まれる。
【0009】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の共通する特性を有する下気道疾患のグループのうちのいずれも包含する。これには空気の動きに対する抵抗の増加、呼吸の呼気相の延長および肺における正常な弾性の減少が含まれる。COPDの例として、気腫および慢性気管支炎がある。COPDの原因としては、慢性喫煙(第一危険因子)、職業被ばく、空気汚染および遺伝因子がある。症状を挙げると、労作時の呼吸困難、慢性咳および痰生成がある。
【0010】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病理を直接介してまたは神経病理を間接的に介して筋肉機能を損なう多数の疾患および病気を包含する広範な用語である。NMD患者の中には、進行性の筋肉障害によって特徴付けられる者もあり、結果的に歩行不可能、車椅子への束縛、嚥下困難、呼吸筋力低下に繋がり、最終的には呼吸不全による死亡に繋がる。神経筋肉障害は、急速進行性および緩徐進行性に分けることができる。急速進行性障害の特徴は、数か月にわたって悪化し、数年以内に死に至る筋肉障害(例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および10代のデュシェンヌ筋ジストロフィー(DMD)など)である。変性または緩徐進行性障害の特徴は、数年にわたって悪化するものの、予命の短縮は軽度にとどまる筋肉障害(例えば、肢帯型、顔面肩甲上腕型、および筋強直性筋ジストロフィー)である。NMDにおける呼吸不全症状を以下に挙げる:全身衰弱の増加、嚥下障害、労作および安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、および集中および気分の変化の困難。
【0011】
胸壁障害は、胸郭変形の1つのグループであり、呼吸筋肉と胸郭との間の連結の無効性の原因となる。これらの障害は、拘束性障害によって主に特徴付けられ、長期の炭酸過剰性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症および脊柱後側弯症の少なくとも一方は、重篤な呼吸不全を発症することがある。呼吸不全の症状を以下に挙げる:労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性胸部感染症、起床時の頭痛、疲労、睡眠の質の低下、および食欲不振。
【0012】
B.呼吸療法
多様な呼吸療法(例えば、非侵襲的換気(NIV)、侵襲的換気(IV)、および高流量療法(HFT))が、上記の呼吸障害の1つ以上の治療のために用いられている。
【0013】
1.加圧療法
呼吸圧力療法とは、(例えば、タンクベンチレータや陽陰圧体外式人工呼吸器(cuirass)などの陰圧療法とは異なり)患者の呼吸サイクル全体にかけて雰囲気に対して通常陽圧である制御された目標圧力において気道の入口へ空気を供給することの適用である。
【0014】
非侵襲的換気(NIV)は、上気道を通じて換気補助を患者へ提供するものであり、呼吸機能の一部または全体を行うことで、患者の呼吸の補助および身体中の適切な酸素レベルの維持の少なくとも一方を行う。換気補助は、非侵襲的患者インターフェースを介して提供される。NIVは、OHS、COPD、NMD、および胸壁障害などの形態のCSRおよび呼吸不全の治療に用いられている。いくつかの形態では、これらの療法で快適性および有効性が向上し得る。
【0015】
侵襲的換気(IV)は、自身で有効に呼吸することができなくなった患者に対して換気補助を提供し、気管切開管を用いて提供され得る。いくつかの形態では、これらの療法で快適性および有効性が向上し得る。
【0016】
2.流れ療法
全ての呼吸療法において、規定の治療圧力の送達が意図されているわけではない。いくつかの呼吸療法においては、(恐らくは正のベースライン圧力上に重畳された)吸気流量プロファイルの送達を目標持続時間にわたって行うことによる規定呼吸量の送達が企図されている。他の場合においては、患者の気道へのインターフェースが「開放」(シール解除)されており、呼吸療法は、調整ガスまたは高濃度空気の流れによって、患者自身の自発呼吸を補助するだけのものとすることができる。一例において、高流量療法(HFT)とは、連続的な、加熱された、加湿された空気流れを、シールされていないかまたは開口した患者インターフェースを通じて、呼吸サイクル全体にかけてほぼ一定に保持される「治療流量」で気道への入口へ提供することである。治療流量は、患者のピーク吸気流量を超えるようにノミナル設定されている。HFTは、OSA、CSR、呼吸不全、COPDおよび他の呼吸障害の治療のために用いられている。1つの作用メカニズムとして、患者の解剖学的死腔から呼気されたCO2のフラッシングまたは押し流しが可能になるため、高流量の空気を気道入口へ提供すると、換気効率が向上する。そのため、HFTは、死腔療法(DST)と呼ばれる場合がある。他の恩恵を挙げると、(恐らくは分泌制御の恩恵による)暖かさおよび加湿の向上や、気道圧の緩やかな上昇の可能性がある。一定の流量の代替例として、治療流量は、呼吸サイクルにわたって変動するプロファイルに追随し得る。
【0017】
別の形態の流れ療法として、長期酸素療法(LTOT)または酸素補充療法がある。医師は、指定酸素濃度(周囲空気中の酸素分率が21%~100%)の酸素富化空気の連続流れを、指定流量(例えば、1リットル/分(LPM)、2LPM、3LPM)で患者気道へ送達させる旨を処方し得る。
【0018】
3.補充酸素
特定の患者の場合、補充酸素を加圧空気流れへ付加することにより、酸素療法と呼吸圧力療法またはHFTとの組み合わせが得られ得る。呼吸圧力療法へ酸素を付加した場合、これは、補充酸素を用いたRPTと呼ばれる。HFTへ酸素を付加した場合、その結果得られる療法は、補充酸素を用いたHFTと呼ばれる。
【0019】
C.呼吸療法システム
これら呼吸療法は、呼吸療法システムまたはデバイスによって提供され得る。このようなシステムおよびデバイスは、疾病を治療することなく、スクリーニング、診断、または監視のためにも用いられ得る。呼吸療法システムは、酸素源と、空気回路と、患者インターフェースと、を備え得る。
【0020】
1.酸素源
この分野の専門家は、呼吸不全患者の運動が、疾患進行を遅らせ、生活の質を高め、患者の寿命を延ばす長期的恩恵が得られると認識してきた。しかし、トレッドミルおよび定置式自転車などの定置型の運動は、これらの患者にとって激し過ぎる。そのため、動きやすさの必要性が、長く認識されている。最近まで、この動きやすさは、台車に載せた小型の圧縮酸素タンクまたはボンベを使用して促されてきた。これらのタンクの欠点は、格納できる酸素の量が限られていることと、搭載時の重量が約50ポンドと重いことである。
【0021】
呼吸療法用の酸素を供給するのに、酸素濃縮器が50年ほど使用されてきた。酸素濃縮器は、真空スイング吸着(VSA)、圧力スイング吸着(PSA)、真空圧力スイング吸着(VPSA)などのプロセスを実施し得る。酸素濃縮器(例えばPOC)は、例えば、スイング吸着プロセス(例えば、真空スイング吸着、圧力スイング吸着、または真空圧力スイング吸着)における減圧(例えば真空動作)および加圧(例えばコンプレッサ動作)の少なくとも一方に基づいて稼働し得、本明細書では、これらはいずれも、「スイング吸着プロセス」と称される。圧力スイング吸着法においては、1つ以上のコンプレッサを用いて、ガス分離吸着剤の粒子を含む1つ以上のキャニスタ内のガス圧力が増加され得る。かかるキャニスタは、ガス分離吸着剤の層など、ある質量のガス分離吸着剤を格納していると、ふるい床として機能し得る。圧力増加と共に、ガス中の特定の分子が、ガス分離吸着剤上に吸着され得る。加圧条件下においてキャニスタ内のガスの一部が除去されると、吸着されなかった分子が吸着された分子から分離される。吸着された分子はその後、ふるい床を通気することによって脱離され得る。酸素濃縮器についてのさらなる詳細については、例えば米国公開特許出願第2009-0065007号(公開日:2009年3月12日、タイトル「Oxygen Concentrator Apparatus and Method」)に記載がある。本明細書中、同文献を参考のため援用する。
【0022】
周囲空気は、およそ78%の窒素および21%の酸素を一般的に含み、その残余の内訳は、アルゴン、二酸化炭素、水蒸気および他の微量気体である。酸素よりも窒素を強く吸収するガス分離吸着剤を収容したキャニスタに、例えば空気などのガス混合物を加圧下で通過させると、窒素の一部または全部がキャニスタ内に留まり、キャニスタから出てくるガスは酸素に富むものとなる。ふるい床が窒素吸着能力の限界に達すると、通気することにより、吸着した窒素が脱着し得る。ふるい床はその後、酸素富化空気を生産する別のサイクルの準備が整う。2キャニスタシステムでキャニスタの加圧サイクルを交互に行うことにより、一方のキャニスタが酸素を分離しながら、他方のキャニスタを通気することができる(その結果、空気から酸素をほぼ連続的に分離する)。このようにして、ユーザへの補充酸素の供給などの多様な用途のために、例えば保存コンテナまたはキャニスタに連結された他の加圧可能な容器または導管中に酸素富化空気を蓄積させることができる。
【0023】
真空スイング吸着(VSA)は、代替的なガス分離技法を提供する。VSAは、ふるい床内に真空を作り出すように構成されたコンプレッサなど、真空を用いたふるい床の分離プロセスを通じてガスを吸引するのが典型的である。VPSA(真空圧力スイング吸着)は、複合的な真空および加圧技法を用いたハイブリッドシステムであると理解され得る。VPSAシステムは、例えば、分離プロセスのためにふるい床を加圧し得ることに加え、ふるい床を減圧するための真空を印加し得る。
【0024】
従来の酸素濃縮器の場合、嵩高かつ高重量であるため、酸素濃縮器を装着しながら通常の歩行活動を行うことは、困難かつ非実際的である。最近、大型の定置型酸素濃縮器の製造会社は、ポータブル酸素濃縮器(POC)の開発を開始している。POCの利点は、酸素富化空気を理論上エンドレスに生産し、患者(ユーザ)に動きやすさを提供できるということである。これらのデバイスを動きやすさのために小型化することを目的として、酸素富化空気生産に必要とされる多様なシステムが高密度化されている。重量、サイズおよび消費電力を最小限にするためには、POCは、生産された酸素富化空気の使用をできるたけ効率化する必要が有る。これは、酸素を一連のパルスとして供給し、各パルスまたはボーラスのタイミングを吸気開始と一致させることによって実現され得る。この治療モードは、パルス型酸素供給(POD)またはデマンドモードと称され、据置型酸素濃縮器に適した従来の連続的な流れ供給とは対照的である。PODモードは、本質的には吸息開始を決定するためのセンサを伴うアクティブ弁であるコンサーバを用いて実施され得る。
【0025】
2.空気回路
空気回路は、使用時に空気流れが呼吸療法システムの2つの構成要素(例えば、酸素源および患者インターフェース)間を移動するように、構築され配置された導管または管である。いくつかの場合において、吸息および呼息のための空気回路の別個の肢があり得る。他の場合において、吸息と呼息との両方のために単一の肢空気回路が用いられる。
【0026】
3.患者インターフェース
患者インターフェースは、例えば気道入口への空気流れを提供することによって呼吸装具へのインターフェースを装着者へ提供するのに用いられ得る。空気流れは、鼻および口の少なくとも一方へのマスク、口への管、または、患者気管への気管切開管を介して提供され得る。適用される療法に応じて、患者インターフェースは、(例えば患者の顔の領域との)シールを形成し得、これにより、療法実行のための周囲圧力と共に充分な分散の圧力において(例えば、例えば周囲圧力に対して約10cmH2Oの陽圧において)ガス送達を促進する。酸素送達などの他の療法形態においては、患者インターフェースが、約10cmH2Oの陽圧において気道へのガス供給の送達を促進するのに充分な密閉を含まない場合がある。鼻HFTなどの流れ療法の場合、患者インターフェースは、鼻孔への送気を行い(かつ完全なシールを明確に回避する)ように、構成されている。このような患者インターフェースの一例として、鼻カニューレがある。
【発明の概要】
【0027】
IV.本技術の簡単な説明
本技術の例示的方法および装置は、呼吸療法システムの制御を伴い得る。例えば、いくつかの実施形態においては、加速度計など少なくとも1つの動きセンサが、呼吸療法システム内に含まれ、ユーザの動きによって生じるノイズを補償し得る。いくつかのかかる実施形態においては、少なくとも1つの動きセンサからのデータが、流量センサおよび/または圧力センサ等、少なくとも1つの他のセンサからの潜在的ノイズデータを特定することによって、ユーザの呼吸の検出を補完するのに使用され得る。少なくとも1つの他のセンサからの潜在的ノイズデータを特定することにより、誤った呼吸検出の発生が最小化または回避され得、呼吸療法システムの電力消費全体が低減され得る。
【0028】
本開示の一態様は、圧力センサ、動きセンサ、および1つ以上のプロセッサを備える酸素濃縮システムに関するものである。圧力センサは、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結され、圧力信号を生成するように構成されている。動きセンサは、動き信号を生成するように構成されている。1つ以上のプロセッサは、圧力センサおよび動きセンサに通信可能に連結され、圧力センサから取得した初期圧力信号および動きセンサから取得した動き信号に基づいてトリガ閾値を調整し、調整されたトリガ閾値を、圧力センサから取得した後続の圧力信号と比較して、導管を通じて酸素富化空気のボーラスをユーザに提供する時期を決定するように構成されている。
【0029】
いくつかの実施形態においては、この1つ以上のプロセッサが、動き信号の大きさまたは周波数が所定の閾値よりも大きいとトリガ閾値を維持するようにさらに構成されている。
【0030】
いくつかの実施形態においては、初期圧力信号および動き信号に基づいてトリガ閾値を調整することが、活動信号を生成することと、その活動信号のウィンドウがユーザの活動の増加を示したらトリガ閾値の大きさを増加させることと、活動信号のウィンドウがユーザの活動の減少を示したらトリガ閾値の大きさを減少させることと、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態においては、活動信号を生成することが、初期圧力信号から少なくとも1つの呼吸パラメータを導出することと、動き信号から少なくとも1つの動きパラメータを導出することと、少なくとも1つの呼吸パラメータと少なくとも1つの動きパラメータとを組み合わせて活動信号を生成することと、を含む。いくつかの実施形態においては、少なくとも1つの呼吸パラメータがユーザの呼吸速度であり、少なくとも1つの動きパラメータが、ユーザによる単位時間あたりの歩数である。
【0032】
いくつかの実施形態においては、活動信号を生成することが、初期圧力信号から非呼吸信号を生成することと、動き信号に基づいて非呼吸信号をスケーリングして活動信号を生成することと、を含む。いくつかの実施形態においては、フィルタが初期圧力信号に適用されて非呼吸信号を生成する。
【0033】
いくつかの実施形態においては、ウィンドウの長さが固定されている。いくつかの実施形態においては、初期圧力信号および動き信号に基づいてトリガ閾値を調整することが、動き信号に基づいてウィンドウの長さを調整することをさらに含む。いくつかの実施形態においては、動き信号に基づいてウィンドウの長さを調整することが、動き信号の大きさまたは周波数が所定の閾値よりも大きいとウィンドウの長さを縮めることを含む。
【0034】
いくつかの実施形態においては、動きセンサが、送達導管に連結された加速度計を備える。いくつかの実施形態においては、動きセンサが、送達導管に連結された歪みゲージを備える。
【0035】
いくつかの実施形態においては、酸素濃縮システムが、周囲空気の加圧ストリームを生成するように構成された圧縮システムと、ガス分離吸着剤を収容するキャニスタを備えるキャニスタシステムと、をさらに備え、ガス分離吸着剤は、少なくともいくらかの窒素を周囲空気の加圧ストリームから分離し、酸素富化空気を生産するように構成されている。
【0036】
本開示の別の態様は、圧力センサと、動きセンサと、1つ以上のプロセッサと、を備える酸素濃縮システムに関するものである。圧力センサは、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結され、圧力信号を生成するように構成されている。動きセンサは、動き信号を生成するように構成されている。1つ以上のプロセッサは、圧力センサおよび動きセンサに通信可能に連結され、圧力センサから取得した圧力信号を、動きセンサから取得した動き信号に基づいて調整するように、かつトリガ閾値を、調整された圧力信号と比較して、導管を通じて酸素富化空気のボーラスをユーザに提供する時期を決定するように構成されている。
【0037】
いくつかの実施形態においては、動きセンサが、送達導管に連結された加速度計を備える。いくつかの実施形態においては、動き信号に基づいて圧力信号を調整することが、動き信号から導出された加速度が圧力センサの向きに対して成す方向を分析することを含む。いくつかの実施形態においては、動きセンサが、送達導管に連結された歪みゲージを備え、動き信号に基づいて圧力信号を調整することが、送達導管の1つ以上の部分の測定された屈曲を分析することを含む。いくつかの実施形態においては、1つ以上のプロセッサが、トリガ閾値が調整された圧力信号と比較される前に、動き信号に基づいてそのトリガ閾値を調整するようにさらに構成されている。
【0038】
本開示のさらに別の態様は、圧力センサと、動きセンサと、1つ以上のプロセッサと、を備える酸素濃縮システムに関するものである。圧力センサは、ユーザに酸素富化空気を提供するための送達導管に空気圧的に連結され、圧力信号を生成するように構成されている。動きセンサは、動き信号を生成するように構成されている。1つ以上のプロセッサは、圧力センサおよび動きセンサに通信可能に連結されており、トリガ閾値を、圧力センサから取得した圧力信号と比較することによって潜在的な吸息開始を検出するように、潜在的な吸息開始を検証するかどうかを、動きセンサから取得した動き信号に基づいて決定するように、かつ潜在的な吸息開始が検証されれば、導管を通じて酸素富化空気のボーラスをユーザに提供するように構成されている。
【0039】
いくつかの実施形態においては、潜在的な吸息開始を検証するかどうかを動き信号に基づいて決定することが、動き信号の大きさを所定の閾値と比較することを含む。いくつかの実施形態においては、動き信号の大きさが所定の閾値未満であれば、潜在的な吸息開始が検証される。いくつかの実施形態においては、潜在的な吸息開始を検証するかどうかを動き信号に基づいて決定することが、動き信号の周波数を所定の閾値と比較することを含む。いくつかの実施形態においては、動き信号の周波数が所定の閾値未満であれば、潜在的な吸息開始が検証される。いくつかの実施形態においては、動きセンサが、送達導管に連結された加速度計を備える。
【0040】
本開示のさらに別の態様は、酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、ユーザの気道圧を表す初期圧力信号および動き信号からトリガ閾値を計算することと、ユーザの気道圧を表す後続の圧力信号をトリガ閾値と比較することと、その比較に基づいて、ボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成することと、を含む方法に関するものである。
【0041】
本開示のさらに別の態様は、酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、ユーザの気道圧を表す圧力信号を動き信号に基づいて調整することと、調整された圧力信号をトリガ閾値と比較することと、その比較に基づいて、ボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成することと、を含む方法に関するものである。
【0042】
本開示のさらに別の態様は、酸素濃縮器からの酸素富化ガスのボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を生成する方法であって、圧力信号をトリガ閾値と比較して潜在的な吸息開始を検出することと、潜在的な吸息開始を検証するかどうかを動き信号に基づいて決定することと、ボーラスの放出を制御するためのトリガ信号を検証に基づいて生成することと、を含む方法に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
V.図面の簡単な説明
本技術の利点は、実施形態の以下の詳細な説明の恩恵を受けると共に、同様の参照番号が同様の構成要素を示す添付の図面を参照すれば、当業者にとって明らかになるであろう。
【
図1A】本技術の一形態に係る酸素濃縮器を描いている。
【
図1D】
図1Aの酸素濃縮器の圧縮システムの斜視側面図である。
【
図1E】熱交換導管を含む圧縮システムの側面図である。
【
図1F】
図1Aの酸素濃縮器の出口構成要素例の概略図である。
【
図1I】
図1Aの酸素濃縮器の分解されたキャニスタシステムの斜視図である。
【
図1K】
図1Jに描かれたキャニスタシステムの端部の組立図である。
【
図1M】
図1Lに描かれたキャニスタシステムの端部の組立図である。
【
図1N】
図1Aの酸素濃縮器のコントロールパネル例を描いている。
【
図1O】
図1Aの酸素濃縮器を含む接続された呼吸療法システムを描いている。
【
図2】本技術の一形態に係る適応型トリガシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
VI.実施形態の詳細な説明
本技術の実施形態について、図面を参照して詳述する。図中、同様の参照番号は同様または同一の要素を示すものとする。開示された実施形態は単なる例示であり、様々な形態で実施され得るものと理解されたい。公知の機能または構造物については、不必要な詳細で本開示を不明瞭にすることを避けるために、詳述していない。そのため、本明細書に開示された具体的な構造上および機能上の詳細は、限定的なものと解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の根拠として、および、適切に詳述された事実上あらゆる構造において本開示を多様に用いるよう当業者に教示するための代表的な根拠として、解釈されるべきである。
【0045】
A.酸素濃縮器の実施形態
図1A~
図1Nは、酸素濃縮器100の一実施形態を表している。本明細書に記載のとおり、酸素濃縮器100は、圧力スイング吸着(PSA)プロセスを用いて酸素富化空気を生産する。ただし、他の実施形態においては、酸素濃縮器100が、真空スイング吸着(VSA)プロセスまたは真空圧力スイング吸着(VPSA)プロセスを用いて酸素富化空気を生産するように変更され得る。
【0046】
1.外側ハウジング
図1Aは、酸素濃縮器100の外側ハウジング170の実施形態を描いている。いくつかの実施形態においては、外側ハウジング170が、軽量プラスチックを含み得る。外側ハウジング170は、圧縮システム入口105と、冷却システム受動的入口101と、外側ハウジング170の各端部における出口173と、出口ポート174と、コントロールパネル600と、を含む。入口101および出口173により、冷却空気がハウジングに進入し、ハウジングを通過し、ハウジング170内から出て、酸素濃縮器100の冷却を支援することができる。圧縮システム入口105により、圧縮システム内への空気進入が可能になる。出口ポート174は、酸素濃縮器100によって生産された酸素富化空気をユーザへ提供するための導管を取り付けるために用いられる。
【0047】
2.構成要素
図1Bは、一実施形態に係る酸素濃縮器100の構成要素の概略図を表している。酸素濃縮器100は、空気ストリーム内の酸素を濃縮して、酸素富化空気をユーザに提供し得る。
【0048】
酸素濃縮器100は、ポータブル酸素濃縮器であり得る。酸素濃縮器100は、例えば、酸素濃縮器を、手で持ち運び可能な、もしくは、キャリーケースに入れて持ち運び可能な、または、その両方が可能な重量およびサイズであり得る。一実施形態においては、酸素濃縮器100が、約20ポンド未満、約15ポンド未満、約10ポンド未満、または約5ポンド未満の重量を有する。一実施形態においては、酸素濃縮器100が、約1000立方インチ未満、約750立方インチ未満、約500立方インチ未満、約250立方インチ未満、または約200立方インチ未満の体積を有する。
【0049】
酸素富化空気は、ガス分離吸着剤を含有しており、ふるい床と称され得るキャニスタ302および304内の周囲空気を加圧することによって周囲空気から生産され得る。酸素濃縮器中において有用に用いられるガス分離吸着剤は、少なくとも窒素を空気ストリームから分離させて、酸素富化空気を生産することができる。ガス分離吸着剤の例としては、空気ストリームからの窒素分離が可能な分子篩が挙げられる。酸素濃縮器内において用いられ得る吸着剤の例としては、高圧下における空気ストリームからの窒素分離を行うゼオライト(天然)または合成結晶質アルミノ珪酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。利用可能な合成結晶質アルミノ珪酸塩の例としては、OXYSIV吸着剤(入手元:UOPLLC、デスプレーンズ、IW)、SYLOBEAD吸着剤(入手元:W.R.Grace&Co、コロンビア、MD)、SILIPORITE吸着剤(入手元:CECAS.A.、パリ、フランス)、ZEOCHEM吸着剤(入手元:ZeochemAG、ウエーティコン、スイス)、およびAgLiLSX吸着剤(入手元:Air Products and Chemicals、Inc.、アレンタウン、PA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
図1Bに示すとおり、空気は、空気入口105を通じて酸素濃縮器へ進入し得る。空気は、圧縮システム200により空気入口105中へ引き込まれ得る。圧縮システム200は、酸素濃縮器の周囲から空気を引き込み、この空気を圧縮し得、これにより、圧縮空気をキャニスタ302および304の一方または双方の内部へ押し込まれ得る。一実施形態においては、入口マフラー108が、圧縮システム200によって空気が酸素濃縮器中へ引き込まれる際に生産される音を低減するように、空気入口105に連結され得る。一実施形態においては、入口マフラー108が、水分および音を低減し得る。例えば、吸水材(例えば、ポリマー吸水材またはゼオライト材料)は、入来空気からの水の吸着と、空気入口105中へ進入する空気音の低減とをどちらとも行うために用いられ得る。
【0051】
圧縮システム200は、空気を圧縮するように構成された1つ以上のコンプレッサを含み得る。圧縮システム200によって生産された加圧空気は、キャニスタ302および304の一方または双方の内部へ押し込まれ得る。いくつかの実施形態においては、周囲空気が、キャニスタ内においておよそ13~20ポンド/平方インチのゲージ圧(psig)の範囲において加圧され得る。キャニスタ内に配置されるガス分離吸着剤の種類に応じて、他の圧力を用いてもよい。
【0052】
各キャニスタ302/304には、入口弁122/124および出口弁132/134が連結される。
図1Bに示すとおり、入口弁122はキャニスタ302に連結され、入口弁124はキャニスタ304に連結される。出口弁132はキャニスタ302に連結され、出口弁134はキャニスタ304に連結される。入口弁122/124は、圧縮システム200から各キャニスタへの空気の通過を制御するのに用いられる。出口弁132/134は、通気プロセス時に各キャニスタからのガスを放出するのに用いられる。いくつかの実施形態においては、入口弁122/124および出口弁132/134が、シリコンプランジャソレノイド弁であり得る。しかし、他の種類の弁を用いてもよい。プランジャー弁の場合、静音性があり、かつずれが小さい点において、他の種類の弁よりも有利である。
【0053】
いくつかの実施形態においては、2段弁作動電圧が、入口弁122/124および出口弁132/134の制御のために生成される。例えば、入口弁を開放させるために、高圧(例えば、24V)が入口弁へ付加され得る。次に、電圧を(例えば7V)へ低下させると、入口弁の開放状態が維持される。弁開放状態を維持するための電圧が低いほど、使用電力も低くなり得る(電力=電圧*電流)。このように電圧が低下すると、発熱および消費電力が最小化され、電源180(以下に記述)からのランタイムが延びる。弁への電力が断ち切られると、弁はバネ作用によって閉鎖する。いくつかの実施形態においては、電圧が、必ずしも段階的応答ではない時間の関数として付加され得る(例えば、初期24Vから最終7Vへの曲線状の電圧低下)。
【0054】
一実施形態においては、加圧空気が、キャニスタ302または304のうち1つの内部へ送られ、他方のキャニスタは通気される。例えば、使用時に、入口弁122は開放され、入口弁124は閉鎖される。圧縮システム200からの加圧空気は、キャニスタ302中へ押し込まれる一方、キャニスタ304中への進入は入口弁124によって阻止される。一実施形態においては、コントローラ400が、弁122,124,132および134へ電気的に連結される。コントローラ400は、メモリ420中に保存されたプログラム命令を実行することが可能なプロセッサ410を1つ以上含む。これらのプログラム命令は、本明細書中にさらに詳述されている方法など、酸素濃縮器の動作に用いられる多様な事前規定された方法をコントローラが行うように構成されている。プログラム命令は、入口弁122および124を相互に逆位相で動作させる(すなわち、入口弁122または124のうち一方が開放しているとき、他方の弁が閉鎖している)ためのプログラム命令を含み得る。キャニスタ302の加圧時に、出口弁132は閉鎖され、出口弁134は開放される。入口弁と同様、出口弁132および134も、相互に逆位相に動作される。いくつかの実施形態においては、電圧、ならびに入力弁および出力弁の開放に用いられる電圧の持続時間が、コントローラ400によって制御され得る。コントローラ400は、外部デバイスと通信して、プロセッサ410によって集められたデータを送信したり、プロセッサ410向けの命令を外部デバイスから受信したりし得るトランシーバ430を含み得る。
【0055】
チェック弁142および144は、それぞれキャニスタ302および304に連結されている。チェック弁142および144は、キャニスタの加圧および通気時に発生する圧力差によって受動的に動作させられる一方向弁であり得るか、アクティブ弁であり得る。チェック弁142および144は、キャニスタの加圧時に生産された酸素富化空気が各キャニスタから流出でき、かつ酸素富化空気または他の任意のガスのキャニスタ内への逆流を阻止できるように、キャニスタに連結される。このようにして、チェック弁142および144は、加圧時に各キャニスタからの酸素富化空気の流出を可能にする一方向弁として機能する。
【0056】
本明細書中で用いられている「チェック弁」という用語は、流体(気体または液体)の一方向への流動を可能にするとともに、流体の逆流を阻止する弁を指す。利用に適したチェック弁の例としては、ボールチェック弁、ダイヤフラムチェック弁、バタフライチェック弁、スイングチェック弁、ダックビル弁、アンブレラ弁、およびリフトチェック弁が挙げられるが、これらに限定されない。加圧下では、加圧された周囲空気中の窒素分子が、加圧されたキャニスタ内のガス分離吸着剤によって吸着される。圧力が増加すると、キャニスタ内のガスに含まれる酸素が多くなるまで、より多くの窒素が吸着される。吸着されなかったガス分子(主に酸素)は、圧力が、キャニスタに連結されたチェック弁の抵抗を充分に越える値に到達すると、加圧されたキャニスタから流出する。一実施形態においては、前方方向におけるチェック弁の圧力降下が、1psi未満である。逆方向における破壊圧力は、100psiを超える。しかし、1つ以上の構成要素の変更により、これらの弁の動作パラメータも変化することが理解されるべきである。前方流れ圧力が増加すると、酸素富化空気生産が一般的に低下する。逆流のための破壊圧力が低下した場合または低すぎる値に設定された場合、酸素富化空気圧力も概して低下する。
【0057】
例示的実施形態においては、キャニスタ302が、圧縮システム200中において生産されてキャニスタ302中に送られた圧縮空気によって加圧される。キャニスタ302の加圧時に、入口弁122は開放され、出口弁132は閉鎖され、入口弁124は閉鎖され、出口弁134は開放される。出口弁132が閉鎖されると、出口弁134が開放され、これにより、キャニスタ302の加圧時におけるキャニスタ304の雰囲気への実質的な同時通気が可能になる。キャニスタ内の圧力がチェック弁142を開放させるのに充分になるまで、キャニスタ302が加圧される。キャニスタ302中に生産された酸素富化空気は、チェック弁を通過し、一実施形態においては、アキュムレータ106中において集められる。
【0058】
一定期間後、ガス分離吸着剤は窒素で飽和することになり、有意な量の窒素を入来空気から分離させることができなくなる。このポイントは、所定の時間の酸素富化空気生産後に到達することが多い。上記の実施形態においては、キャニスタ302中のガス分離吸着剤がこの飽和点に到達すると、圧縮空気の流入が停止され、キャニスタ302が通気されて、窒素が除去される。通気時に、入口弁122は閉鎖され、出口弁132は開放される。キャニスタ302の通気時に、キャニスタ304への加圧により、酸素富化空気の生産を上記の方法と同じ方法で行う。キャニスタ304の加圧は、出口弁134の閉鎖および入口弁124の開放によって達成される。酸素富化空気は、チェック弁144を通じてキャニスタ304から出る。
【0059】
キャニスタ302の通気時に、出口弁132が開放され、加圧ガス(主に窒素)が濃縮器出口130を通じてキャニスタから大気中に出る。一実施形態においては、通気ガスをマフラー133へ方向付けることにより、キャニスタからの加圧ガスの放出に起因して発生するノイズを低減することができる。ガスがキャニスタ302から放出されると、キャニスタ302中の圧力が低下するため、窒素がガス分離吸着剤から脱着される。放出された窒素が出口130を通じてキャニスタから出ると、キャニスタは、空気ストリームからの窒素の新たな分離が可能な状態にリセットされる。マフラー133は、酸素濃縮器から出たガスの音を消音するための連続気泡発泡体(または別の材料)を含み得る。いくつかの実施形態においては、空気入力および酸素富化空気出力のための消音構成要素/技術の組み合わせにより、50デシベルを下回る音レベルにおいて酸素濃縮器を動作させることが可能となり得る。
【0060】
キャニスタの通気時に、窒素のうち少なくとも大部分が除去されると有利である。一実施形態においては、キャニスタが再利用されて空気からの窒素を分離する前に、キャニスタ内の窒素のうち少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約98%または実質的に全てが除去される。いくつかの実施形態においては、他のキャニスタまたは貯蔵された酸素富化空気からキャニスタの中に導入される酸素富化空気ストリームを用いて窒素除去が支援され得る。
【0061】
例示的実施形態においては、キャニスタ304が通気されているときに、酸素富化空気の一部がキャニスタ302からキャニスタ304へ移送され得る。キャニスタ304の通気中に行われるキャニスタ302からキャニスタ304への酸素富化空気の移送は、吸着剤に隣接する窒素の分圧低下により、吸着剤からの窒素の脱離を促進する。酸素富化空気の流れも、キャニスタから脱離された窒素(および他のガス)をパージするのに役立つ。一実施形態においては、酸素富化空気が、2つのキャニスタ間の流れ抵抗器151,153および155を通じて移動し得る。流れ抵抗器151は、トリクル流れ抵抗器であり得る。流れ抵抗器151は、例えば0.009D流れ抵抗器であり得る(例えば、流れ抵抗器の半径0.009”は、内部の管の直径未満である)。流れ抵抗器153および155は、0.013D流れ抵抗器であり得る。他の種類およびサイズの流れ抵抗器も企図され、キャニスタの連結に用いられる特定の構成および管材料に応じて用いられ得る。いくつかの実施形態においては、流れ抵抗器が、圧入型流れ抵抗器であり得、各管中の直径を狭くすることにより、空気流を制限する。いくつかの実施形態においては、圧入型流れ抵抗器が、サファイア、金属またはプラスチック製であり得る(他の材料も企図される)。
【0062】
キャニスタの間の酸素富化空気の流れは、弁152および弁154の利用によっても制御される。弁152および154は、通気プロセス時に短い持続時間にわたって開放され得(および他の場合に閉鎖され得)、これにより、パージされているキャニスタからの過度の酸素損失を回避する。他の持続時間も、企図される。例示的な実施形態においては、キャニスタ302が通気され、キャニスタ304中において生産された酸素富化空気の一部をキャニスタ302中に送ることにより、キャニスタ302をパージすることが望ましい。酸素富化空気の一部は、キャニスタ304が加圧されると、キャニスタ302の通気時に流れ抵抗器151を通じてキャニスタ302中へ移動する。さらなる酸素富化空気が、キャニスタ304から弁154および流れ抵抗器155を通じてキャニスタ302中へ送られる。弁152は、移送過程時に閉鎖させたままでもよいし、あるいは、さらなる酸素富化空気が必要な場合は開放させたままでもよい。適切な流れ抵抗器151および155の選択と、弁154の開放部の制御とにより、制御された量の酸素富化空気をキャニスタ304からキャニスタ302へ送ることが可能になる。一実施形態においては、制御された量の酸素富化空気は、キャニスタ302をパージするためおよびキャニスタ302の通気弁132を通じた酸素富化空気の損失を最小化するのに充分な量である。この実施形態はキャニスタ302の通気について述べているが、同じプロセスを流れ抵抗器151、弁152および流れ抵抗器153を用いたキャニスタ304の通気のために用いることが可能であることが理解されるべきである。
【0063】
一対の均圧/通気弁152/154が流れ抵抗器153および155と協働することにより、これら2つのキャニスタ間のガス流バランスが最適化される。その結果、キャニスタのうち一方の通気のための流量制御が、キャニスタのうち他方からの酸素富化空気により向上可能となる。また、これら2つのキャニスタ間の流れ方向も向上する。流れ弁152/154は、2方向弁として動作し得るが、このような弁を通じた流量は、弁を通過する流体の方向によって異なることが分かっている。例えば、キャニスタ304から弁152を通じてキャニスタ302へ流動する酸素富化空気の流量は、キャニスタ302から弁152を通じてキャニスタ304へ流れる酸素富化空気の流量よりも高い。単一の弁が用いられた場合、キャニスタ間において送られる酸素富化空気は最終的に過度に多くなるかまたは少なくなり、時間と共にキャニスタからは異なる量の酸素富化空気が経時的に生産され始める。対向する弁および流れ抵抗器を平行な空気通路上において用いると、2つのキャニスタ間の酸素富化空気の流れパターンが均等化され得る。このような流れの均等化により、一定量の酸素富化空気を複数のサイクルにわたってユーザへ利用可能にすることが可能になり得、また、他方のキャニスタをパージするための酸素富化空気量の予測も可能になり得る。いくつかの実施形態においては、空気通路に絞り弁を設けなくてもよいが、代わりに、弁に内蔵抵抗を設けるかまたは空気通路そのものの半径を小さくして抵抗を提供するようにし得る。
【0064】
場合によっては、酸素濃縮器を一定期間にわたって停止し得る。酸素濃縮器を停止した場合、圧縮システムからの断熱損失の結果として、キャニスタの内部温度が低下し得る。温度が低下すると、キャニスタ内でガスにより占められる体積が低下する。キャニスタが低温になると、キャニスタ内が負圧になり得る。キャニスタに繋がる弁およびキャニスタから延びる弁(例えば、弁122,124,132および134)は、気密的にシールされるのではなく、動的にシールされる。そのため、停止後、圧力差に対応するために外部空気がキャニスタに進入し得る。キャニスタに外気が入ると、外気中の水分がガス分離吸着剤に吸着され得る。キャニスタ内の水が吸着すると、ガス分離吸着剤が徐々に劣化し得、ガス分離吸着剤の酸素富化空気生産能力が徐々に低下する。
【0065】
一実施形態においては、双方のキャニスタを停止する前に加圧することにより、酸素濃縮器の停止後に外部空気がキャニスタに進入する事態を回避することができる。キャニスタを陽圧下において保存することにより、キャニスタ内の空気の内部圧力により、弁を気密的に閉鎖された位置へ押し込むことができる。一実施形態においては、停止時におけるキャニスタ内の圧力を、少なくとも周囲圧力よりも高くすべきである。本明細書中で用いられるように、「周囲圧力」という用語は、酸素濃縮器が配置されている雰囲気の圧力を指す(例えば、室内の圧力、室外の圧力、飛行機内の圧力)。実施形態においては、停止時におけるキャニスタ内の圧力が、少なくとも標準的気圧よりも高い(すなわち、760mmHg(Torr)、1atm、101,325Paよりも高い)。一実施形態においては、停止時におけるキャニスタ内の圧力が、少なくとも周囲圧力の約1.1倍であり、少なくとも周囲圧力の約1.5であるか、または少なくとも周囲圧力の約2倍である。
【0066】
一実施形態においては、加圧空気を圧縮システムから各キャニスタ中へ方向付けて全ての弁を閉鎖させて、加圧空気をキャニスタ中に閉じ込めることにより、キャニスタの加圧を達成することができる。例示的実施形態においては、停止シーケンスが開始されると、入口弁122および124が開放され、出口弁132および134は閉鎖される。入口弁122および124は、共通導管によって接合されているため、キャニスタ302および304双方を空気として加圧可能であるか、1つのキャニスタからの酸素富化空気を他方のキャニスタへ移送可能であるか、あるいは、その両方が可能である。この状況は、圧縮システムと2つの入口弁との間の通路においてこのような移送が行われた場合に発生し得る。酸素濃縮器は、交互の加圧/通気モードにおいて動作するため、キャニスタのうち少なくとも1つを任意の所与の時期において加圧状態にする必要がある。別の実施形態においては、圧力が、圧縮システム200の動作によって各キャニスタ中において増加され得る。入口弁122および124が開放されると、キャニスタ302および304間の圧力が均等化されるが、いずれかのキャニスタ中の均等化された圧力は、停止時に空気がキャニスタに進入する事態を阻止するのには不十分であり得る。キャニスタへの空気進入を確実に阻止するために、双方のキャニスタ中の圧力を少なくとも周囲圧力を超えるレベルまで増加させるだけの充分な時間にわたって圧縮システム200を動作させることができる。キャニスタの加圧方法に関わらず、キャニスタが加圧された後、入口弁122および124は閉鎖されるため、加圧空気はキャニスタ中に閉じ込められ、その結果、停止期間中のキャニスタへの空気進入が阻止される。
【0067】
図1Cを参照すると、酸素濃縮器100の実施形態が描かれている。酸素濃縮器100は、圧縮システム200と、キャニスタシステム300と、外側ハウジング170内に配置された電源180とを含む。入口101を外側ハウジング170内に設けることにより、環境からの空気が酸素濃縮器100に進入することが可能になる。入口101により、区画内への空気流入が可能になるため、区画内の構成要素の冷却が支援される。電源180は、酸素濃縮器100の電力源を供給する。圧縮システム200は、入口105およびマフラー108を通じて空気を引き込む。マフラー108は、圧縮システムによって引き込まれる空気のノイズが低減することができ、また、入来空気から水分を除去するための乾燥剤材料も含み得る。酸素濃縮器100は、出口173を介した酸素濃縮器からの空気および他のガスの排出に用いられるファン172をさらに含み得る。
【0068】
3.圧縮システム
いくつかの実施形態においては、圧縮システム200が、1つ以上のコンプレッサを含む。別の実施形態においては、圧縮システム200が、キャニスタシステム300の全キャニスタに連結された単一のコンプレッサを含む。
図1Dおよび
図1Eを参照すると、コンプレッサ210およびモータ220を含む圧縮システム200が図示されている。モータ220は、コンプレッサ210に連結され、圧縮機構を動作させるための動作力をコンプレッサへ提供する。例えば、モータ220は、回転構成要素を提供するモータであり得る。この回転構成要素により、空気を圧縮するコンプレッサの構成要素の周期運動が発生する。コンプレッサ210がピストン型コンプレッサであれば、モータ220により、コンプレッサ210のピストンの往復動を発生させる動作力が得られる。ピストンの往復動により、圧縮空気がコンプレッサ210によって生産される。圧縮空気の圧力は、コンプレッサの動作速度(例えば、ピストンの往復動速度)によって、ある程度推定され得る。そのため、モータ220は、可変速モータであり得、コンプレッサ210によって生産される空気の圧力を動的に制御するために、多様な速度において動作することができる。
【0069】
一実施形態においては、コンプレッサ210には、ピストンを有する単一のヘッドウォブル型コンプレッサが含まれる。他の種類のコンプレッサも用いられ得る(例えば、ダイヤフラムコンプレッサおよび他の種類のピストンコンプレッサ)。モータ220は、DCまたはACモータであり得、コンプレッサ210の圧縮構成要素へ動作力を提供する。モータ220は、一実施形態においては、ブラシレスDCモータであり得る。モータ220は、可変速モータであり得、コンプレッサ210の圧縮構成要素を可変速において動作させるように構成されている。
図1Bに示すとおり、モータ220は、コントローラ400に連結され得る。コントローラ400は、モータ動作の制御のために、動作信号をモータへ送る。例えば、コントローラ400は、モータをオンにすること、モータをオフにすること、および、モータの動作速度を設定すること、を行うための信号をモータ220へ送り得る。そのため、
図2に表すとおり、圧縮システム201は、速度センサを含み得る。速度センサは、モータ220の回転速度および圧縮システム200の他の往復動作速度の少なくとも一方を決定するのに使用されるモータ速度トランスデューサであり得る。例えば、モータ速度トランスデューサからのモータ速度信号がコントローラ400に提供され得る。速度センサまたはモータ速度トランスデューサは、例えばホール効果センサであり得る。コントローラ400は、圧力センサ(例えば、アキュムレータ圧力センサ107)など、酸素濃縮器の速度信号および他の任意のセンサ信号の少なくとも一方に基づき、モータ220を介して圧縮システムを動作させ得る。そのため、
図2に表すとおり、コントローラ400は、速度センサ201からの速度信号やアキュムレータ圧力センサ107からのアキュムレータ圧力信号等のセンサ信号を受信する。コントローラは、かかる信号(単数または複数)を用いて、本明細書に詳述するアキュムレータ圧力およびモータ速度の少なくとも一方等のセンサ信号に基づいて圧縮システムを動作させるための1つ以上の制御ループ(例えばフィードバック制御)を実施し得る。
【0070】
圧縮システム200は、本質的にかなりの熱を発生する。熱は、モータ220による電力消費、および、電力から機械的運動の変換によって発生する。コンプレッサ210は、空気圧縮によるコンプレッサ構成要素の動きに対する抵抗増加に起因して熱を生成する。コンプレッサ210による空気の断熱圧縮によっても、熱が本質的に生成される。そのため、空気の連続的加圧により、封入容器中に熱が発生する。さらに、電源180は、圧縮システム200への給電時に熱を発生させ得る。さらに、酸素濃縮器のユーザは、屋内よりも周囲温度が高くなる可能性がある、空調のない環境(例えば、屋外)においてデバイスを動作させ得るため、入来空気は既に加熱状態になる。
【0071】
酸素濃縮器100内において熱が発生すると、問題になり得る。リチウムイオン電池は、長寿命かつ軽量であることから、一般に酸素濃縮器の電源として使用されている。しかし、リチウムイオン電池パックは高温では危険であるため、安全制御が酸素濃縮器100に採用され、危険なほど高い電源温度が検出された場合にシステムを停止させる。さらに、酸素濃縮器100の内部温度の上昇と共に、濃縮器によって生成される酸素量が低下し得る。その部分的原因として、高温では一定量の空気中の酸素量が減少するためである。酸素生産量が所定量を下回ると、酸素濃縮器100は自動停止し得る。
【0072】
酸素濃縮器はコンパクトであるため、放熱は困難であり得る。典型的な解決方法を挙げると、1つ以上のファンの使用により封入容器中に冷却空気の流れを発生させる方法がある。しかし、このような解決方法の場合、電源180からさらに電力が必要になるため、酸素濃縮器のポータブル利用時間が短くなる。一実施形態においては、受動的冷却システムが、モータ220によって発生する機械的動力を利用するために用いられ得る。
図1Dおよび
図1Eを参照すると、圧縮システム200は、外部回転電機子230を有するモータ220を含む。詳細には、モータ220(例えば、DCモータ)の電機子230は、電機子を駆動する定常場の周囲を包囲する。モータ220は、システム全体への熱に大きく影響するため、モータから熱を伝達し、封入容器から除去すると有用である。外部高速回転では、モータの主要構成要素とその周囲の空気との相対速度が非常に高くなる。電機子の表面積は、内部に取り付けられた場合よりも、外部に取り付けられた場合に大きくなる。熱交換速度は表面積および速度の二乗に比例するため、外部に取り付けられたより大きな表面積の電機子を用いた場合、モータ220からの放熱能力が増加する。電機子を外部に取り付けたときの冷却効率の利得により、1つ以上の冷却ファンを無くすことができるため、酸素濃縮器の内部を適切な温度範囲内に維持しつつ、重量および消費電力が低減する。さらに、外部に取り付けられた電機子が回転すると、モータの近隣の空気が動くため、さらなる冷却が行われる。
【0073】
その上、外部回転電機子によりモータ効率が支援され得、熱の生成が低減する。外部回転電機子を有するモータは、内燃機関中において機能するフライホイールと同様に動作する。モータがコンプレッサを駆動させる際、回転に対する抵抗は、低圧力において低くなる。圧縮空気の圧力が高くなると、モータ回転に対する抵抗が高くなる。その結果、モータは、一貫した理想的な回転安定性を維持できなくなり、コンプレッサの圧力要求に応じてサージおよび低速化が発生する。このようなモータのサージおよびその後の低速化の傾向は、非効率であり、そのため熱の原因となる。外部回転電機子を用いた場合、モータの角運動量が大きくなるため、モータの可変抵抗の補償が支援される。モータの仕事量が大きくなくてすむため、モータから発生する熱が低下し得る。
【0074】
一実施形態においては、空気移送デバイス240を外部回転電機子230に連結することにより、冷却効率がさらに増加し得る。一実施形態においては、空気移送デバイス240が外部回転電機子230に連結されると、外部回転電機子230の回転は空気移送デバイス240に空気流を発生させて、この空気流がモータの少なくとも一部を通過する。一実施形態においては、空気移送デバイス240が、外部回転電機子230に連結された1つ以上のファンブレードを含む。一実施形態においては、空気移送デバイス240が外部回転電機子230の動きにより回転するインペラとして機能するように、複数のファンブレードが環状リング内に配置され得る。
図1Dおよび
図1Eに示すとおり、空気移送デバイス240は、モータ220と整列した様態で外部回転電機子230の外面へ取り付けられ得る。空気移送デバイス240を電機子230に取り付けることにより、空気流を外部回転電機子230の主要部分へ方向付けることが可能になり、これにより、使用時における冷却効果が可能になる。一実施形態においては、空気移送デバイス240により、外部回転電機子230の大部分が空気流路中に配置されるように、空気流が方向付けられる。
【0075】
さらに、
図1Dおよび
図1Eを参照すると、コンプレッサ210によって加圧された空気は、コンプレッサ出口212においてコンプレッサ210から出る。コンプレッサ出口導管250は、圧縮空気をキャニスタシステム300へ移送するように、コンプレッサ出口212に連結される。上記のとおり、空気が圧縮されると、空気の温度が上昇する。このような温度上昇は、酸素濃縮器の効率にとって有害であり得る。加圧空気の温度を低下させるために、コンプレッサ出口導管250が、空気移送デバイス240によって生産される空気流路中に配置される。コンプレッサ出口導管250の少なくとも一部は、モータ220の近隣に配置され得る。そのため、空気移送デバイス240によって生成された空気流が、モータ220およびコンプレッサ出口導管250と接触し得る。一実施形態においては、コンプレッサ出口導管250の大部分が、モータ220の近隣に配置される。一実施形態においては、
図1Eに示すとおり、コンプレッサ出口導管250が、モータ220の周囲にらせん状に巻かれる。
【0076】
一実施形態においては、コンプレッサ出口導管250が、熱交換金属によって構成されている。熱交換金属の例を非限定的に挙げると、アルミニウム、炭素鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、銅ニッケル合金またはこれらの金属の組み合わせから形成される他の合金がある。よって、コンプレッサ出口導管250は、本質的に空気圧縮に起因する熱を除去する熱交換器として機能し得る。圧縮空気からの熱除去により、一定圧力における一定体積内の分子の数が増加する。その結果、各圧力スイングサイクル時に各キャニスタによって生成可能な酸素富化空気量が増加し得る。
【0077】
本明細書中に記載の放熱機構は、受動的なものであるか、または、酸素濃縮器100に必要な要素を利用する。よって、例えば、さらなる電力を必要とするシステムを用いること無く、放熱の増加が可能になり得る。さらなる電力が不要になるため、電池パックのランタイム増加が可能になるとともに、酸素濃縮器のサイズおよび重量の最小化が可能になる。同様に、さらなるボックスファンまたは冷却ユニットの利用も不要になり得る。このようなさらなる特徴を無くすことにより、酸素濃縮器の重量および消費電力が低下する。
【0078】
上記のとおり、空気の断熱圧縮に起因して、空気温度が上昇する。キャニスタシステム300中のキャニスタの通気時に、キャニスタから放出されるガスの圧力が低下する。キャニスタ中のガスの断熱減圧に起因して、通気と共にガス温度が低下する。一実施形態においては、キャニスタシステム300からの冷却された通気ガス327が、電源180および圧縮システム200へ方向付けられる。一実施形態においては、キャニスタシステム300のベース315が、通気ガスをキャニスタから受領する。通気ガス327は、ベース315を通じてベースの出口325および電源180へ方向付けられる。通気ガスは、上記のとおり、ガス減圧によって冷却されるため、結果的に電源180の冷却を提供する。圧縮システムが動作すると、空気移送デバイス240は、冷却された通気ガスを集め、ガスを圧縮システム200のモータへ方向付ける。また、ファン172は、通気ガスが圧縮システム200を横切ってハウジング170の外部へ方向付けられることも助長し得る。このようにして、電池からのさらなる電力を全く必要とすること無く、さらなる冷却を得ることが可能になり得る。
【0079】
4.キャニスタシステム
酸素濃縮器システム100は、それぞれがガス分離吸着剤を含む少なくとも2つのキャニスタを含み得る。酸素濃縮器システム100のキャニスタは、成形ハウジングから形成されて配設され得る。一実施形態においては、キャニスタシステム300が、
図1Iに描かれているとおり、2つのハウジング構成要素310および510を含む。様々な実施形態においては、酸素濃縮器100のハウジング構成要素310および510が、2つのキャニスタ302および304ならびにアキュムレータ106を画定する2つの部分の成形プラスチックフレームを形成し得る。ハウジング構成要素310および510は、別々に形成された後に一緒に連結され得る。いくつかの実施形態においては、ハウジング構成要素310および510は、射出成形または圧縮成形され得る。ハウジング構成要素310および510は、ポリカーボネート、メチレンカーバイド、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性ポリマーから作られ得る。別の実施形態においては、ハウジング構成要素310および510が、熱硬化性プラスチックまたは(ステンレス鋼または軽量アルミニウム合金などの)金属製であり得る。酸素濃縮器100の重量を減少させるために、軽量材料が使用され得る。いくつかの実施形態においては、2つのハウジング310および510が、ネジまたはボルトを使用して一緒に固定され得る。代替として、ハウジング構成要素310および510は、溶着され得る。
【0080】
図示のとおり、弁座322,324,332および334、ならびに空気通路330および346は、酸素濃縮器100の空気流全体に必要とされる密閉接続の数を減少させるために、ハウジング構成要素310に統合され得る。
【0081】
ハウジング構成要素310および510内の種々のセクション間の空気通路/管材料は、成形導管の形態をとり得る。成形流路の形態である空気通路用導管は、ハウジング構成要素310および510において複数の平面を占有し得る。例えば、この成形空気導管は、ハウジング構成要素310および510において、異なる深さで、かつ異なるx、y、z位置に形成され得る。いくつかの実施形態においては、潜在的な漏洩箇所を減少させるために、これらの導管の大半または略すべてが、ハウジング構成要素310および510に統合され得る。
【0082】
いくつかの実施形態においては、ハウジング構成要素310および510が適切に密閉されるように、ハウジング構成要素310と510とを連結する前に、ハウジング構成要素310および510の様々な箇所との間にOリングが配置され得る。いくつかの実施形態においては、構成要素は、ハウジング構成要素310および510に統合されるか、または、別々に連結されるか、あるいは、その両方で可能である。例えば、管材料、流れ抵抗器(例えば、圧入式流れ抵抗器)、酸素センサ、ガス分離吸着剤、チェック弁、プラグ、プロセッサ、電源等は、ハウジング構成要素310および510が連結される前および連結された後の少なくとも一方で、これらのハウジング構成要素に連結され得る。
【0083】
いくつかの実施形態においては、ハウジング構成要素310および510の外側につながる孔337が、流れ抵抗器などのデバイスを挿入するのに使用され得る。また、成形性向上のために孔が設けられることもある。これらの孔の1つ以上が、成形後に(例えば、プラスチック製プラグで)塞がれ得る。いくつかの実施形態においては、この通路を密閉するためにプラグを挿入する前に、流れ抵抗器が通路に挿入され得る。圧入式流れ抵抗器は、圧入式流れ抵抗器とそれぞれの孔との間での摩擦嵌合を可能にする直径を有し得る。いくつかの実施形態においては、圧入式流れ抵抗器の外側に接着剤が追加して、挿入後の圧入式流れ抵抗器を適所に保持することができる。いくつかの実施形態においては、プラグが、それぞれの管と摩擦嵌合し得る(か、外面に接着剤が塗布され得る)。圧入式流れ抵抗器および他の構成要素の少なくとも一方は、(例えば、それぞれの孔の直径よりも小さい直径を有する)先細りの工具またはロッドを使用して、それぞれの孔に挿入され送り込まれ得る。いくつかの実施形態においては、圧入式流れ抵抗器が、それぞれの管の特徴部に当接して挿入を止めるまで、それぞれの管に挿入され得る。この特徴部としては、例えば、縮径部等を挙げることができる。また、他の特徴部も考えられる(例えば、管材料の側面の隆起やネジ山など)。いくつかの実施形態においては、圧入式流れ抵抗器が、ハウジング構成要素に(例えば、細い管部位として)成形され得る。
【0084】
いくつかの実施形態においては、スプリングバッフル139がハウジング構成要素310および510のそれぞれのキャニスタ受容部に入れられ、バッフル139のスプリング側がキャニスタの出口を向くように配置され得る。スプリングバッフル139は、ガス分離吸着剤が出口孔に入るのを防ぎつつ、キャニスタ内のガス分離吸着剤に力を印加し得る。スプリングバッフル139の使用により、膨張(例えば熱膨張)を許容しつつ、ガス分離吸着剤のコンパクト性を保つことができる。ガス分離吸着剤のコンパクト性が保たれることにより、酸素濃縮器システム100の動作中にガス分離吸着剤が破損することが防止され得る。
【0085】
いくつかの実施形態においては、フィルタ129が、ハウジング構成要素310および510のそれぞれのキャニスタ受容部に、それぞれのキャニスタの入口に面するように配置され得る。フィルタ129は、キャニスタに入る供給ガスストリームから粒子を取り除く。
【0086】
いくつかの実施形態においては、圧縮システム200からの加圧空気が、空気入口306に入り得る。空気入口306は、入口導管330に連結されている。空気が入口306を通じてハウジング構成要素310に入り、導管330を通って、弁座322および324へと移動する。
図1Jおよび
図1Kは、ハウジング310の端面図を描いている。
図1Jは、ハウジング310に弁を取り付ける前のハウジング310の端面図を描いている。
図1Kは、ハウジング310に弁が取り付けられたハウジング310の端面図を描いている。弁座と322および324は、入口弁122および124をそれぞれ受容するように構成されている。入口弁122はキャニスタ302に連結され、入口弁124はキャニスタ304に連結される。ハウジング310は、出口弁132および134をそれぞれ受容するように構成された弁座332および334も含む。出口弁132はキャニスタ302に連結され、出口弁134はキャニスタ304に連結される。入口弁122/124は、導管330から各キャニスタへの空気の通過を制御するために用いられる。
【0087】
一実施形態においては、加圧空気が、キャニスタ302または304のうち一方の内部へ送られ、他方のキャニスタは通気される。例えば、使用時に、入口弁122は開放され、入口弁124は閉鎖される。圧縮システム200からの加圧空気は、キャニスタ302内へ押し込まれる一方、キャニスタ304内への進入は入口弁124によって阻止される。キャニスタ302の加圧時に、出口弁132は閉鎖され、出口弁134は開放される。入口弁と同様、出口弁132および134も、相互に逆位相に動作される。弁座322は、ハウジング310を通ってキャニスタ302に入る開口323を含む。同様に、弁座324は、ハウジング310を通ってキャニスタ302に入る開口375を含む。導管330からの空気は、それぞれの弁322および324が開いていれば、開口323または375を通過してキャニスタに入る。
【0088】
チェック弁142および144(
図1Iを参照)は、それぞれキャニスタ302および304に連結される。チェック弁142および144は一方向弁であり、キャニスタの加圧および通気時に発生する圧力差によって受動的に動作させられる。キャニスタ302および304で生産された酸素富化空気は、これらのキャニスタからハウジング構成要素510の開口542および544に入る。通路(非図示)が、開口542および544を導管342および344にそれぞれ繋げている。キャニスタ302内で生産された酸素富化空気は、キャニスタ内の圧力がチェック弁142を開くのに十分であれば、キャニスタから開口542を通って導管342に入る。チェック弁142が開いていると、酸素富化空気が導管342を通ってハウジング310の端の方へと流れる。同様に、キャニスタ304内で生産された酸素富化空気も、キャニスタ内の圧力がチェック弁144を開くのに十分であれば、キャニスタから開口544を通って導管344に入る。チェック弁144が開いていると、酸素富化空気が導管344を通ってハウジング310の端の方へと流れる。
【0089】
どちらのキャニスタからの酸素富化空気も、導管342または344を通って、ハウジング310内に形成された導管ハウジング346に入る。導管346は、この導管を導管342、導管344、およびアキュムレータ106に連結する開口を含む。そのため、キャニスタ302または304で生産された酸素富化空気は、導管346へと移動してアキュムレータ106に入る。
図1Bに表すとおり、アキュムレータ106内のガス圧は、アキュムレータ圧力センサ107などのセンサによって測定され得る。(
図1Fも参照。)そのため、アキュムレータ圧力センサは、蓄積された酸素富化空気の圧力を表す信号を提供する。適切な圧力トランスデューサの一例が、HONEYWELL ASDXシリーズのセンサである。適切な代替圧力トランスデューサが、GENERAL ELECTRIC社のNPAシリーズのセンサである。一部のバージョンでは、圧力センサが、代替として、アキュムレータ106と、ボーラスでユーザに送達するための酸素富化空気の放出を制御する弁(例えば供給弁160)と、の間の出力経路など、アキュムレータ106の外側のガスの圧力を測定し得る。
【0090】
一定期間後、ガス分離吸着剤は窒素で飽和することになり、有意な量の窒素を入来空気から分離させることができなくなる。キャニスタ内のガス分離吸着剤がこの飽和点に達すると、圧縮空気の流入が止められ、窒素を除去するためにキャニスタが通気される。キャニスタ302は、入口弁122を閉じ、出口弁132を開くことによって通気される。出口弁132は、キャニスタ302からの通気ガスを、ハウジング310の端部によって画定された容積内へと放出する。キャニスタからのガス放出によって出る音を低減するために、発泡材がハウジング310の端部を覆い得る。同様に、キャニスタ304も、入口弁124を閉じ、出口弁134を開くことによって通気される。出口弁134は、キャニスタ304からの通気ガスを、ハウジング310の端部によって画定された容積内に放出する。
【0091】
キャニスタ302の通気時に、キャニスタ304への加圧により、酸素富化空気の生産を上記の方法と同じ方法で行う。キャニスタ304の加圧は、出口弁134の閉鎖および入口弁124の開放によって達成される。酸素富化空気は、チェック弁144を通じてキャニスタ304から出る。
【0092】
例示的実施形態においては、キャニスタ304が通気されているときに、酸素富化空気の一部がキャニスタ302からキャニスタ304へ移送され得る。キャニスタ304の通気時に行われるキャニスタ302からキャニスタ304への酸素富化空気の移送は、吸着剤に隣接する窒素の分圧低下により、吸着剤からの窒素の脱離を促進する。酸素富化空気の流れも、キャニスタから脱離された窒素(および他のガス)をパージするのに役立つ。キャニスタ間での酸素富化空気の流れは、
図1Bに描かれているとおり、流れ抵抗器および弁を使用して制御される。ハウジング構成要素510には、キャニスタ間での酸素富化空気の移送に使用する3本の導管が形成されている。
図1Lに示すとおり、導管530は、キャニスタ302をキャニスタ304に連結する。流れ抵抗器151(非図示)は、使用中の酸素富化空気の流れを制限するために、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管530内に配設されている。導管532も、キャニスタ302を304に連結する。導管532は、
図1Mに示すとおり、弁152を受容する弁座552に連結されている。流れ抵抗器153(非図示)が、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管532に配設されている。導管534も、キャニスタ302を304に連結する。導管534は、
図1Mに示すとおり、弁154を受容する弁座554に連結されている。流れ抵抗器155(非図示)が、キャニスタ302とキャニスタ304との間の導管534に配設されている。一対の均圧/通気弁152/154が流れ抵抗器153および155と協働することにより、これら2つのキャニスタ間の空気流バランスが最適化される。
【0093】
アキュムレータ106内の酸素富化空気は、供給弁160を通過して、ハウジング構成要素510に形成された膨張チャンバ162に入る。ハウジング構成要素510内の開口(非図示)が、アキュムレータ106を供給弁160に連結する。一実施形態においては、膨張チャンバ162が、チャンバを通過するガスの酸素濃度を推定するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。
【0094】
5.出口システム
出口システムは、キャニスタのうち1つ以上に連結され、酸素富化空気をユーザへ提供する1つ以上の導管を含む。一実施形態においては、キャニスタ302および304のいずれかの内部において生産された酸素富化空気が、
図1Bに概略的に示すとおり、チェック弁142および144それぞれを通じてアキュムレータ106内に集められる。キャニスタから出た酸素富化空気は、アキュムレータ106内に集められた後、ユーザへ提供され得る。いくつかの実施形態においては、管にアキュムレータ106を接続することにより、酸素富化空気をユーザへ提供することができる。酸素富化空気は、酸素富化空気をユーザの口腔および鼻の少なくとも一方へ移送する気道送達デバイスを通じてユーザへ提供され得る。一実施形態においては、出口が、酸素をユーザの鼻および口腔の少なくとも一方へ方向付ける管を含み得る。この管は、ユーザの鼻へ直接接続されていない場合がある。
【0095】
図1Fを参照すると、酸素濃縮器のための出口システムの実施形態の概略図が図示されている。アキュムレータ106からユーザへの酸素富化空気の放出を制御するように、供給弁160が出口管に連結され得る。一実施形態においては、供給弁160が、電磁駆動プランジャー弁である。ユーザへの酸素富化空気送達を制御するように、コントローラ400により供給弁160が作動される。供給弁160の作動は、圧力スイング吸着法プロセスに対して、タイミングが調整されないか、あるいは、同期しない。その代わりに、作動は、以下に述べるようにユーザの呼吸と同期する。いくつかの実施形態においては、供給弁160は、酸素富化空気の供給のために臨床的に有効な振幅プロファイルを確立させるための連続値作動を有し得る。
【0096】
アキュムレータ106内の酸素富化空気は、
図1Fに示すとおり、供給弁160を通過して膨張チャンバ162内へ移動する。一実施形態においては、膨張チャンバ162は、膨張チャンバ162を通過するガスの酸素濃度を推定するように構成された1つ以上のデバイスを含み得る。膨張チャンバ162中の酸素富化空気は、供給弁160によるアキュムレータ106からのガス放出を通じて短時間蓄積され、その後、小型オリフィス流れ抵抗器175を通じて、流量センサ185へ、次いで微粒子フィルタ187へと放出される。流れ抵抗器175は、0.025D流れ抵抗器であり得る。他の種類およびサイズの流れ抵抗器が用いられ得る。いくつかの実施形態においては、ハウジング中の空気通路の直径が、ガス流制限のために限定され得る。流量センサ185は、導管を流れるガスの流量を表す信号を生成するように構成された任意のセンサであり得る。微粒子フィルタ187は、ユーザへの酸素富化空気送達の前の細菌、埃、細粒微粒子などのフィルタリングのために用いられ得る。酸素富化空気は、フィルタ187を通過してコネクタ190へ移動する。コネクタ190は、酸素富化空気を、送達導管192を介してユーザへ送るとともに、圧力センサ194へ送る。出口通路の流体力学は、供給弁160のプログラムされた作動と相まって、酸素のボーラスが、正確なタイミング、かつ、ユーザの肺中への迅速な送達を過度な無駄無しに確保する振幅プロファイルで提供されることを、をもたらし得る。
【0097】
膨張チャンバ162は、1つ以上の酸素センサを含み得る。これらの酸素センサは、上記チャンバを通過するガスの酸素濃度を決定するように適合される。一実施形態においては、膨張チャンバ162を通過するガスの酸素濃度が、酸素センサ165を用いて推定される。酸素センサは、ガス内の酸素濃度を測定するように構成されたデバイスである。酸素センサの例を非限定的に挙げると、超音波酸素センサ、電気酸素センサ、化学酸素センサ、および光学式酸素センサがある。一実施形態態において、酸素センサ165は、超音波酸素センサであり、超音波エミッタ166および超音波レシーバ168を含む。いくつかの実施形態においては、超音波エミッタ166が、複数の超音波エミッタを含み得、超音波レシーバ168は、複数の超音波レシーバを含み得る。複数のエミッタ/レシーバを有する実施形態においては、複数の超音波エミッタおよび複数の超音波レシーバが、軸方向に(例えば、軸整列に対して垂直であり得るガス流路を横切って)整列され得る。
【0098】
使用時に、(エミッタ166からの)超音波をチャンバ162内の酸素富化空気を通してレシーバ168へ方向付け得る。超音波酸素センサ165は、酸素富化空気の組成を決定するために酸素富化空気を通過する音の速度を検出するように構成され得る。音の速度は、窒素と酸素との中で異なり、2つのガスの混合物では、混合物を通過する音の速度は、混合物中の各ガスの相対的量に比例する中間値であり得る。使用時に、レシーバ168における音は、エミッタ166から送られた音に対して、僅かに位相がずれる。この位相変化は、ガス媒体の音の速度が、ワイヤを通る比較的高速の電子パルスと比べて、相対的に低速であることに起因する。この位相変化は、エミッタとレシーバとの間の距離に比例し、膨張チャンバ162を通過する音の速度に反比例する。この箱中のガスの密度に起因して、この膨張チャンバを通過する音の速度が影響を受け、密度は、膨張チャンバ中の酸素対窒素の比に比例する。そのため、位相変化を用いて、膨張チャンバ中の酸素濃度を測定することができる。このようにして、アキュムレータ106内の酸素の相対的濃度を、アキュムレータ106を通過する検出音波の1つ以上の特性の関数として推定することができる。
【0099】
いくつかの実施形態においては、複数のエミッタ166およびレシーバ168が用いられ得る。エミッタ166およびレシーバ168からの読み取り値の平均化により、乱流系に固有であり得る誤差を減少させることができる。いくつかの実施形態においては、通過時間を測定すること、および、測定された通過時間を他のガスおよびガス混合物の少なくとも一方の所定の通過時間と比較すること、により、他のガスの存在検知も可能である。
【0100】
例えばエミッタ166とレシーバ168との間に数個の音波サイクルが可能になるように、エミッタ166とレシーバ168との間の距離を増加させることで、超音波センサシステムの感度の増加が可能になり得る。いくつかの実施形態においては、少なくとも2つの音サイクルが存在する場合に、2つの時点における固定基準に相対する位相変化の測定により、トランスデューサの構造的変化による影響を低減させることができる。前の位相変化が後の位相変化から差し引かれると、膨張チャンバ162の熱膨張に起因する変化を低減またはキャンセルすることができる。エミッタ166とレシーバ168との間の距離の変化に起因する変化は、測定インタバルでほぼ同じであり得る一方、酸素濃度の変化に起因する変化は累積的であり得る。いくつかの実施形態においては、後に測定された変化に、介在するサイクル数が乗算されて、隣接する2つのサイクル間の変化と比較可能である。例えば、2009年3月12日に米国公開第2009/0065007A1号として公開された「Oxygen Concentrator Apparatus and Method(酸素濃縮装置およびその方法)」と題する米国特許出願第12/163549号に、膨張チャンバ内の酸素検知に関するさらなる詳細が記載されており、参照により、本明細書に援用される。
【0101】
流量センサ185は、出口システム中を流れるガスの流量の決定に用いられ得る。利用可能な流量センサの例としては、ダイヤフラム/ベローズ流量計、ロータリ-流量計(例えば、ホール効果流量計)、タービン流量計、オリフィス流量計、および超音波流量計が挙げられるが、これらに限定されない。流量センサ185は、コントローラ400に連結され得る。出口システム中を流れるガスの流量は、ユーザの呼吸量の指標となり得る。出口システム中を流れるガスの流量の変化を用いて、ユーザの呼吸速度を決定することも可能であり得る。コントローラ400は、供給弁160の作動を制御するための制御信号またはトリガ信号を生成し得る。かかる供給弁作動制御は、流量センサ185によって推定されたユーザの呼吸速度および呼吸量の少なくとも一方に基づき得る。
【0102】
いくつかの実施形態においては、超音波センサ165および例えば流量センサ185により、提供される酸素の実際の量の測定値を提供することができる。例えば、流量センサ185は、提供されるガスの体積を(流量に基づいて)測定することができ、超音波センサ165は、提供されるガスの酸素濃度を提供し得る。コントローラ400は、これらの2つの測定値を共に用いて、ユーザへ提供される酸素の実際の量の概算値を決定することができる。
【0103】
酸素富化空気は、フィルタ187へ向けて流量センサ185を通過する。フィルタ187により、細菌、埃、細粒微粒子等が除去された後、酸素富化空気がユーザへ提供される。フィルタリングされた酸素富化空気は、コネクタ190へ向けてフィルタ187を通過する。コネクタ190は、フィルタ187の出口を圧力センサ194および送達導管192に連結させる「Y字型」コネクタであり得る。圧力センサ194は、送達導管192を通じてユーザへ移動するガスの圧力を監視するように用いられ得る。いくつかの実施形態においては、圧力センサ194が、感知面へ付加される陽圧または陰圧の量に比例する信号を生成するように構成され得る。圧力センサ194によって感知される圧力の変化は、以下に述べるように、ユーザの呼吸速度および吸息開始(トリガインスタントとも呼ばれる)を決定するのに使用され得る。コントローラ400は、ユーザの呼吸速度および吸息開始の少なくとも一方に基づいて、供給弁160の作動を制御し得る。一実施形態においては、コントローラ400は、流量センサ185または圧力センサ194のいずれか、もしくは、これらの両方から提供される情報に基づいて、供給弁160の作動を制御し得る。
【0104】
酸素富化空気は、送達導管192を通じてユーザへ提供され得る。一実施形態においては、送達導管192が、シリコーン管であり得る。送達導管192は、
図1Gおよび
図1Hに示すとおり、気道送達デバイスによってユーザに連結され得る。気道送達デバイスは、酸素富化空気を鼻腔または口腔へ提供することが可能な任意のデバイスであり得る。気道送達デバイスの例を以下に非限定的に挙げる:鼻マスク、鼻枕、鼻プロング、鼻カニューレ、およびマウスピース。鼻カニューレ気道送達デバイス196を
図1Gに示す。鼻カニューレ気道送達デバイス196は、ユーザが周囲からの空気を呼吸することを可能にしつつユーザへの酸素富化空気送達を可能にするように、ユーザの気道の近隣(例えば、ユーザの口および鼻の少なくとも一方の近隣)に配置される。
【0105】
別の実施形態においては、酸素富化空気をユーザへ提供するために、マウスピースが用いられ得る。
図1Hに示すとおり、マウスピース198が、酸素濃縮器100に連結され得る。マウスピース198を酸素富化空気のユーザへの提供のために用いられる唯一のデバイスにし得るし、あるいは、マウスピースを鼻送達デバイス(例えば、鼻カニューレ)と組み合わせて用いてもよい。
図1Hに示すとおり、酸素富化空気は、鼻カニューレ気道送達デバイス196およびマウスピース198の両方を通じてユーザに提供され得る。
【0106】
マウスピース198を、ユーザの口内に取り外し可能に配置することができる。一実施形態においては、マウスピース198を、ユーザの口中の1本以上の歯へ取り外し可能に接続することができる。使用時に、酸素富化空気は、ユーザの口中へマウスピースを介して方向付けられる。マウスピース198は、ユーザの歯に適合するように成型されたナイトガードマウスピースであり得る。あるいは、マウスピースは、下顎骨位置変更デバイスであり得る。一実施形態においては、少なくともマウスピースの大部分が、使用時にユーザの口中に配置される。
【0107】
使用時に、マウスピースの近隣において圧力変化が検出されると、酸素富化空気がマウスピース198へ方向付けられ得る。一実施形態においては、マウスピース198が、圧力センサ194に連結され得る。ユーザがユーザの口腔を通じて空気を吸息すると、圧力センサ194は、マウスピースの近隣の圧力降下を検出し得る。酸素濃縮器100のコントローラ400は、吸息開始時に、ユーザへの酸素富化空気のボーラスの放出を制御し得る。
【0108】
個人の典型的な呼吸時に、吸息は、鼻を通じて、口腔を通じて、あるいは、鼻および口腔双方を通じて行われ得る。さらに、呼吸は、多様な要因により、1つの通路から別の通路へ変化し得る。例えば、より活発な活動時に、ユーザは、鼻を通じた呼吸を、口を通じた呼吸(あるいは口および鼻を通じた呼吸)へ切り換え得る。単一の送達モード(鼻または口)に依存するシステムの場合、監視された通路を通じた呼吸が停止した場合に適切に機能できなくなり得る。例えば、ユーザへの酸素富化空気提供のために鼻カニューレが用いられる場合、吸息開始を決定するために、吸息センサ(例えば、圧力センサまたは流量センサ)が鼻カニューレに連結される。ユーザが鼻を通じた呼吸を停止し、口を通じた呼吸に切り換えると、鼻カニューレからのフィードバックが無いため、酸素濃縮器100は、いつ酸素富化空気を提供すればよいのかわからなくなり得る。このような状況下において、酸素濃縮器100は、吸息センサがユーザの吸息を検出するまで、流量を増加するか、酸素富化空気の提供頻度を増加させるか、あるいは、これらの両方を行い得る。ユーザが呼吸モードの切り換えを頻繁に行うと、デフォルトの酸素富化空気提供モードに起因して、酸素濃縮器100の作動頻度が高くなり、その結果、システムのポータブル利用時間が制限される。
【0109】
一実施形態においては、
図1Hに表すとおり、マウスピース198を鼻カニューレ気道送達デバイス196と併用してユーザに酸素富化空気を提供する。マウスピース198および鼻カニューレ気道送達デバイス196はどちらとも、吸息センサに連結される。一実施形態においては、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達デバイス196が、同一の吸息センサに連結される。別の実施形態においては、マウスピース198および鼻カニューレ気道送達デバイス196が、異なる吸息センサに連結される。いずれかの実施形態においては、吸息センサ(単数または複数)が、吸息開始を口または鼻から検出し得る。酸素濃縮器100は、近隣において吸息開始が検出された送達デバイス(すなわち、マウスピース198または鼻カニューレ気道送達デバイス196)へ酸素富化空気を提供するように構成され得る。あるいは、いずれかの送達デバイスの近隣において吸息開始が検出された場合、酸素富化空気をマウスピース198および鼻カニューレ気道送達デバイス196双方へ提供し得る。例えば
図1Hに示すような2重送達システムを用いると、睡眠中のユーザにとって特に有用であり得、鼻呼吸/口呼吸間の切り換えを意識的な努力無く遂行し得る。
【0110】
6.コントローラシステム
酸素濃縮器100の動作は、本明細書中に記載のような酸素濃縮器100の多様な構成要素に連結された内部コントローラ400を用いて自動的に行われ得る。
図1Bに示すとおり、コントローラ400は、1つ以上のプロセッサ410および内部メモリ420を含む。酸素濃縮器100の動作および監視に用いられる方法は、内部メモリ420またはコントローラ400に連結された外部メモリ媒体に保存された、1つ以上のプロセッサ410によって実行可能であるプログラム命令によって、実施可能である。メモリ媒体は、多様な種類のメモリデバイスまたはストレージデバイスのうちいずれかを含み得る。「メモリ媒体」という用語には、インストール媒体(例えば、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、フロッピーディスク、またはテープデバイス)、コンピュータシステムメモリもしくはランダムアクセスメモリ(例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、ダブルデータレートランダムアクセスメモリ(DDRRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、拡張データアウトランダムアクセスメモリ(EDORAM)、ランダムアクセスメモリ(RAM))、または、不揮発性メモリ(例えば、磁気媒体(例えば、ハードドライブまたは光学記憶装置)))を含むことが意図される。メモリ媒体は、他の種類のメモリまたはその組み合わせも含み得る。加えて、このメモリ媒体は、プログラムを実行するコントローラ400に近接して所在し得るか、インターネットなどのネットワークを経てコントローラ400に接続する外部コンピューティングデバイスに所在し得る。後者の事例においては、外部コンピューティングデバイスが、実行するためのプログラム命令をコントローラ400へ提供し得る。「メモリ媒体」という用語は、異なる場所(例えば、ネットワークを介して接続された異なるコンピューティングデバイス中)に常駐し得る2つ以上のメモリ媒体を含み得る。
【0111】
いくつかの実施形態においては、コントローラ400が、プロセッサ410を含む。プロセッサ410には、例えば、酸素濃縮器100中に配置された回路基板上に設けられた、1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラ等が含まれる。プロセッサ410は、メモリ420に記憶されたプログラミング命令を実行するように構成されている。いくつかの実施形態においては、プログラミング命令は、プロセッサ410の外部のメモリが別個にアクセスされないように、プロセッサ410中に組み込まれ得る(すなわち、メモリ420は、プロセッサ410の内部に設けられ得る)。
【0112】
プロセッサ410は、限定するものではないが、圧縮システム200、システム中を流れる流体の制御に用いられる弁のうち1つ以上(例えば、弁122,124,132,134,152,154,160)、酸素センサ165、圧力センサ194、流量センサ185、温度センサ(図示せず)、ファン172、および、電気制御が可能な他の任意の構成要素等、酸素濃縮器100の多様な構成要素に連結され得る。いくつかの実施形態においては、別個のプロセッサ(および/またはメモリ)が、これらの構成要素のうち1つ以上に連結され得る。
【0113】
コントローラ400は、酸素濃縮器100を動作させるように構成される(例えば、プログラム命令によってプログラムされる)とともに、故障状態または他のプロセス情報の有無等、酸素濃縮器100を監視するようにさらに構成されている。例えば、一実施形態においては、コントローラ400は、システムが動作しているが所定の期間にわたってユーザによる呼吸が検出されない場合にアラームを発するように、プログラムされる。例えば、コントローラ400が75秒間の期間にわたって呼吸を検出しない場合、アラームLEDが点灯されるか、可聴アラームが鳴るか、あるいは、これらの両方が行われ得る。例えば睡眠時無呼吸エピソード時にユーザの呼吸が本当に止まった場合、このアラームはユーザを覚醒させるのが充分可能であり、これにより、ユーザは呼吸を再開する。この呼吸動作は、コントローラ400がこのアラーム機能をリセットするのを充分可能にする。あるいは、送達導管192がユーザから取り外されてシステムがオンのまま放置されてしまう場合、このアラームは、ユーザに酸素濃縮器100をオフにするよう促すためのリマインダとして機能し得る。
【0114】
コントローラ400は、酸素センサ165へさらに接続されて、膨張チャンバ162を通過する酸素富化空気の酸素濃度の連続的または定期的監視のためにプログラムされ得る。最小酸素濃度閾値は、コントローラがユーザに対し酸素濃度低下について警告するためのLED視覚アラームおよび可聴アラームの少なくとも一方を発するように、コントローラ400内にプログラムされ得る。
【0115】
コントローラ400は、内部電源180にも接続され、内部電源の充電レベルを監視するように構成され得る。最小電圧および現在の閾値の少なくとも一方がコントローラ400内にプログラムされ、これにより、コントローラがユーザに対して電力低下状態について警告するためのLED視覚アラームおよび可聴アラームの少なくとも一方を発することができる。これらのアラームは、断続的に作動し、電池の利用可能な充電がゼロに近づくにつれて頻度を上げて作動してもよい。
【0116】
図1Oは、酸素濃縮器100を含む、接続された呼吸療法システム450の一実施形態を表している。酸素濃縮器100のコントローラ400は、コントローラ400がGlobal System for Mobile Telephony(GSM)または他のプロトコル(例えばWiFi)等の無線通信プロトコルを用いて、ネットワーク470経由等でクラウドベースのサーバ460等のリモートコンピューティングデバイスと通信するように構成されたトランシーバ430を含む。ネットワーク470は、インターネット等の広域ネットワーク、またはイーサネット等のローカルエリアネットワークであり得る。コントローラ400は、Bluetooth(商標)等の短距離無線通信プロトコルを用いてスマートフォン等のポータブルコンピューティングデバイス480と通信できるように構成されたトランシーバ430内に短距離無線モジュールも含み得る。例えばスマートフォン480等のポータブルコンピューティングデバイスは、酸素濃縮器100のユーザ1000と関連付けられ得る。
【0117】
サーバ460は、GSM等の無線通信プロトコルを用いてポータブルコンピューティングデバイス480との無線通信も行い得る。スマートフォン480のプロセッサは、「アプリ」と称されるプログラム482を実行して、スマートフォン480と、ユーザ1000、酸素濃縮器100およびサーバ460の少なくとも1つと、の対話(interaction)を制御し得る。サーバ460は、酸素濃縮器100およびユーザ1000についての動作データを記憶するデータベース466にアクセスし得る。
【0118】
サーバ460は、以下にさらに記載のとおり、酸素濃縮器100の動作および監視する方法を実行し得る分析エンジン462を含む。サーバ460は、有線または無線接続されたたパーソナルコンピューティングデバイスワークステーション等の他のデバイス464ともネットワーク470を介して通信し得る。パーソナルコンピューティングデバイス464のプロセッサは、「クライアント」プログラムを実行して、パーソナルコンピューティングデバイス464とサーバ460との対話を制御し得る。クライアントプログラムの一例がブラウザである。
【0119】
さらなる実施形態においては、サーバ460が、ポータルシステムをホストするように構成され得る。ポータルシステムは、ポータブルコンピューティングデバイス480から、または酸素濃縮器100から直接、酸素濃縮器100の動作に関するデータを受信し得る。上記のとおり、パーソナルコンピューティングデバイス464は、ブラウザ等のクライアントプログラムを実行して、パーソナルコンピューティングデバイス464のユーザ(HMEの代表者など)が、サーバ460によってホストされたポータルシステムを介して、酸素濃縮器100、および、接続された呼吸療法システム450内の他のPOCの動作データにアクセスできるようにし得る。このようにして、かかるポータルシステムは、HMEにより、例えば酸素濃縮器100など、接続された呼吸療法システム450におけるPOCデバイスのユーザの集団を管理するのに利用され得る。ポータルシステムは、これによって受信された動作データに基づき、ユーザまたはデバイスの状態に関する実用的な洞察をPOCデバイスおよびそのユーザの集団に提供し得る。かかる洞察は、動作データに適用される規則に基づき得る。
【0120】
コントローラ400により実施可能なさらなる機能について、本開示の他の部分に詳細な記載がある。例えば、POCのコントローラは、コンプレッサ制御を実施してシステム内の圧力を調節し得る。そのため、POCは、ふるい床の下流のアキュムレータ内などに圧力センサを備え得る。POC内のコントローラ400は、圧力センサおよびモータ速度センサからの信号を1つ以上のモード等で使用して、コンプレッサの速度の調整を制御することができる。この点に関して、コントローラは、圧力粗調節モードおよび圧力微調節モードと称される二重制御モードを実施し得る。圧力粗調節モードは、POCの種々の流量設定(または「流れ設定」)間での変更のために、および、始動/初回起動のために、実施され得る。その後、圧力粗調節モードの各動作が完了すると、圧力微調節モードが後を引き継ぎ得る。
【0121】
圧力粗調節モードでは、モータ速度が、前回の動作状態に応じて増大または低減するように設定/制御される。増減時に、コントローラは、圧力センサからの測定値を使用して、ふるい床内のセンサの上流の推定圧力を生成する。いくつかの実施形態においては、この推定圧力は、例えば、POCの選択流量設定と関連付けられ、製造時に作成された所定の目標圧力に到達したときなどに、モータ速度の増減を終了させるための判定に使用される。この圧力推定値は、圧力センサからのデータを使用して(例えば線形)回帰を実行することによって計算され得、これにより、コントローラは、回帰パラメータ(例えば、線の傾きおよび切片パラメータ)をセンサ信号サンプルから決定する。この圧力推定値は、回帰パラメータおよび既知のシステム応答遅延を用いて計算される。
【0122】
圧力微調節モードでは、モータが、圧力センサからの信号を使用してシステムの圧力を維持するように設定/制御される。圧力粗調節モードが完了すると、モータ速度の増減が停止され(すなわち、速度がベース速度で維持され)、粗モードに起因するベースモータ速度へのさらなる変更は、代わりに、PID(比例、積分、微分)コントローラなど2つのコントローラを用いて実施され得る。圧力微調節モード時に、目標圧力が適格な圧力推定値と比較されて、第1のコントローラ(例えばPIDコントローラ)に印加される第1のエラー信号を生成し、PIDコントローラのPID出力をモータのベース速度と合計することにより、第2のコントローラ(例えばPIDコントローラ)を使用して前記モータを制御するためのモータ速度設定を得る。第1のPIDコントローラの適格な圧力推定値は、回帰を用いて計算される。この点に関して、圧力信号からのサンプルが、最良適合アルゴリズム(例えば線形回帰)に適用されて、吸着サイクル中の圧力信号からのデータの回帰パラメータ(例えば、線の傾きおよび切片)を決定し得る。傾きが正であれば、これらのパラメータ(例えば、圧力センサからの圧力サンプルではなく、傾きおよび切片)が、圧力スイング吸着サイクルの所与の吸着段階の特定時期と併せて適用されて、線形回帰から回帰直線のピーク値を決定し得る。傾きが負であれば、切片パラメータがピーク値とされ得る。回帰情報からのピーク値は、その後、最新のピーク値(例えば6以上)の平均を維持する移動平均バッファに適用され得る。平均ピーク値はその後、コントローラの適格な圧力推定値となり得る。かかるプロセスのバージョンが、2019年9月24日に出願された米国仮特許出願第62/904858号においてさらに詳述されており、その開示全体が、参照により本明細書に援用される。
【0123】
加えて、POCのコントローラは、供給弁制御を実施して、システム内のボーラスサイズ(体積)を調節するように構成され得る。供給弁制御は、任意選択で、POCの流量センサを使用せずに実施され得る。POCは、例えば、ふるい床の下流のアキュムレータにある圧力センサ107などの圧力センサを備え得、POCによって生成されたボーラスサイズを圧力の関数として調節し得る。かかるボーラスサイズ調節は、アキュムレータ圧力の関数であり得る。
【0124】
7.コントロールパネル
コントロールパネル600は、ユーザとコントローラ400との間のインターフェースとして機能して、ユーザが酸素濃縮器100の所定の動作モードを開始することおよびシステムの状態を監視することを可能にする。
図1Nは、コントロールパネル600の一実施形態を描いている。内部電源180を充電するための充電入力ポート605が、コントロールパネル600に配設され得る。
【0125】
いくつかの実施形態においては、コントロールパネル600が、酸素濃縮器100のための多様な動作モードを起動するためのボタンを含み得る。例えば、コントロールパネルは、電源ボタン610、流量設定ボタン620~626、活性モードボタン630、スリープモードボタン635、高度ボタン640、および電池チェックボタン650を含み得る。いくつかの実施形態においては、これらのボタンのうち1つ以上が、各LEDを有し得る。このLEDは、各ボタンが押圧されたときに発光し得、各ボタンが再度押圧されたときに電力オフにされ得る。
【0126】
電源ボタン610は、システムの電力をオンまたはオフにさせ得る。システムをオフにするために電源ボタンが起動されると、コントローラ400は、システムを停止状態にさせるための停止シーケンスを開始し得る(例えば、双方のキャニスタが加圧された状態)。
【0127】
流量設定ボタン620,622,624,および626により、酸素富化空気の流量選択が可能になる(例えば、ボタン620により0.2LPM、ボタン622により0.4LPM、ボタン624により0.6LPM、およびボタン626により0.8LPM)。他の実施形態においては、流量設定の数が増大または低減され得る。流量設定が選択された後、酸素濃縮器100は、動作を制御して、選択された流量設定に従って酸素富化空気の生産を達成する。
【0128】
ユーザが通常時に酸素濃縮器100を用いる場所よりも高い場所にユーザが行く場合、高度ボタン640が活性化され得る。
【0129】
電池チェックボタン650が電池チェックルーチンを酸素濃縮器100内において開始すると、相対的な残留電池電力LED655がコントロールパネル600上において発光される。
【0130】
検出された呼吸速度または深さを閾値に比較することにより推定されるようにユーザの活動が比較的低い場合(例えば、熟睡時、座位時)において、ユーザの呼吸速度または深さが低くなるときがある。ユーザの活動が比較的高い場合(例えば、歩行時、動き時)において、ユーザの呼吸速度または深さが高くなるときがある。活性/スリープモードは自動的に推定され得かつ/または、ユーザは、ボタン630を押して活性モードを、そしてボタン635をおしてスリープモードを、手動で表示することができる。
【0131】
8.動作方法
酸素濃縮器100を動作させ、監視する下記の方法は、コントローラ400の1つ以上のプロセッサ410など、先述のとおり、酸素濃縮器100のメモリ420などのメモリに記憶された1つ以上の関数および/またはそれらの関数に対応する関連データを含んだりするプログラム命令によって構成された1つ以上のプロセッサによって実行され得る。代替として、下記の方法のステップの一部または全部が、サーバ460などの外部コンピューティングデバイスの1つ以上のプロセッサによって同様に実行され、上記のとおり、接続された呼吸療法システム450の一部を形成し得る。この後者の実施形態においては、プロセッサ410が、酸素濃縮器100のメモリ420に記憶されたプログラム命令により、外部コンピューティングデバイスで実施されるそれらのステップの実行に必要な測定値およびパラメータを外部コンピューティングデバイスに送信するように構成され得る。
【0132】
重量、サイズ、および電力消費を最小化するために、酸素濃縮器100が、酸素富化空気を一連のパルスとしてユーザに送達し得る。かかるパルス状酸素送達(POD)またはデマンド動作モードでは、コントローラ400が、放出される1つ以上のパルスまたはボーラスのサイズを調節して、選択された流量設定に従って酸素富化空気の送達を達成し得る。送達された酸素富化空気の効果を最大化するために、コントローラ400は、各ボーラスの放出をユーザの吸息と同期させるようにさらにプログラムされ得る。ユーザの吸息時にユーザへの酸素富化空気のボーラス放出を行うと、例えばユーザの呼息時に酸素放出を行わないことにより、不要な酸素発生が回避され得る。制御パネル600上の流量設定が、微量(1分あたりの呼吸速度を乗じたボーラス量)の送達酸素(例えば、0.2LPM、0.4LPM、0.6LPM、0.8LPM、1.1LPM)に対応し得る。
【0133】
酸素濃縮器100によって生産された酸素富化空気はアキュムレータ106に貯蔵され、POD動作モードでは、ユーザが吸息すると、そのユーザに放出される。酸素濃縮器100によって提供される酸素富化空気量は、供給弁160によって部分的に制御される。一実施形態においては、供給弁160の開口が、コントローラ400によって推定されたような適切な量の酸素富化空気をユーザに提供することができるだけの充分な量の時間の間行われる。酸素の浪費を最小化するために、酸素富化空気は、ユーザの吸息の開始が検出された直後にボーラスとして提供され得る。例えば、酸素富化空気のボーラスは、ユーザ吸息の最初の数ミリ秒において供給され得る。
【0134】
いくつかの実施形態においては、圧力センサ194が、ユーザの吸息開始を決定するように、用いられ得る。例えば、ユーザの吸息は、圧力センサ194の利用によって検出され得る。使用時に、送達導管192は、鼻気道送達デバイス196および/またはマウスピース198を通じてユーザの鼻および/または口に連結される。よって、送達導管192中の圧力は、ユーザの気道圧を示す。吸息開始時に、ユーザは、鼻および/または口を通じて空気を体内へ引き込むことを開始する。空気が引き込まれる際、送達導管192の端部において引き込まれる空気のベンチュリ作用に部分的に起因して、送達導管192の端部において負圧が生成される。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、圧力の低下を検出し、吸息開始を示す。吸息開始が検出されると、供給弁160が開口されて、酸素富化空気のボーラスがアキュムレータ106から放出される。
【0135】
いくつかの実施形態においては、圧力センサ194が、ユーザの呼息開始を決定するように、用いられ得る。送達導管192における圧力の正の変化または上昇は、ユーザによる呼息を示す。コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、圧力の上昇を検出し、呼息開始を示し得る。いくつかの実施形態においては、陽圧変化が感知されると、次の吸息開始の検出まで供給弁160が閉鎖される。他の実施形態においては、正の圧力変化が感知されると、供給弁160が、ボーラス持続時間と称される所定のインタバル後に閉鎖され得る。
【0136】
隣接する吸息開始間のインタバルを測定することにより、ユーザの呼吸速度が推定され得る。吸息開始時と後続の呼息開始時との間のインタバルを測定することにより、ユーザの吸気時間が推定され得る。いくつかの実施形態においては、ユーザの呼吸速度および/または吸気時間が、ボーラス持続時間を調整するのに使用され得る。いくつかの実施形態においては、ユーザの活動レベル(例えばユーザの呼吸速度)が所定の閾値を超えると、コントローラ400がアラーム(例えば、視覚的および/または聴覚的)を実施して、現在の呼吸速度が酸素濃縮器100の送達能力を超えていることをユーザに警告する。例えば、閾値は、1分あたり40回(BPM)の呼吸に設定され得る。
【0137】
他の実施形態においては、圧力センサ194が、異なる箇所に位置付けられ得る。例えば、圧力センサ194は、感知導管内に配置され得る。感知導管は、ユーザの気道と空気圧的に連通するが、送達導管192から別個に設けられる。かかる実施形態においては、圧力センサ194からの圧力信号が、依然としてユーザの気道圧を表す。別例として、圧力センサ194は、鼻カニューレ気道送達デバイス196である。かかる実施形態においては、圧力センサ194からの信号が、1本以上の電気導管または1つ以上の無線送信機、受信機、および/もしくはトランシーバを介してコントローラ400に提供され得る。いくつかの実施形態においては、圧力センサ194の感度が、特に圧力センサ194が酸素濃縮器100内に配置されかつ酸素濃縮器100をユーザに連結させる送達導管192を通じて圧力差が検出された場合、圧力センサ194のユーザからの物理的距離によって影響を受け得る。鼻カニューレ気道送達デバイス196における圧力センサ194の配置により、感度が向上し得る。
【0138】
図2は、調整モジュール710と、閾値モジュール720と、トリガモジュール730と、POD動作モード中に酸素濃縮器100によって実施され得る監視モジュール740と、を有する適応型トリガシステム700を表すブロック図である。システム700の様々なモジュールは、システム700の処理構成要素として実装され得るか、メモリに420に記憶され、コントローラ400によって実施されるプログラム命令として別の形で符号化され得る。この様々なモジュールの機能は、以下に記載のようなものであり得るが、他の実施形態においては、この機能の区分けがモジュール間で異なり得る。
【0139】
調整モジュール710は、例えば、測定された圧力信号(例えば、圧力センサ194によって生成された信号)、弁制御信号(例えば、コントローラ400によって生成された信号供給弁160)、および/または測定された温度信号(例えば、酸素濃縮器100内の温度センサによって生成された信号)を受信するように構成され得る。調整モジュール710は、測定された圧力信号を、ユーザの気道圧をより正確に表すように調整するように構成され得る。例えば、調整モジュール710は、弁制御信号を使用して、測定された圧力信号に含まれる、酸素富化空気のボーラスの各回の放出の結果としての圧力パルス(単数または複数)または圧力効果(単数または複数)を除去し得る。別例として、調整モジュール710は、測定された温度信号を使用して、これらの変動によって生じ得る、測定された圧力信号における任意のオフセットドリフト(例えば、熱またはその他)を除去することによって温度の変動を補償し得る(例えば、圧力センサ194は温度感受性であり得る)。さらなる別例として、調整モジュール710は、測定された圧力信号に対してノイズ低減フィルタリングを実行し得る。調整モジュール710の出力は、時間の関数としての調整された圧力信号である。
【0140】
閾値モジュール720は、調整モジュール710からの調整された圧力信号を監視するように、かつ適切なトリガ閾値を時間の関数と繰り返し決定するように構成され得る。閾値モジュール720は、調整された圧力信号から活動信号を生成するように構成された活動推定サブモジュールを有し得る。いくつかの実施形態においては、この活動信号が、ユーザの呼吸速度などの呼吸パラメータに対応し得る。いくつかの実施形態においては、この活動信号が、他のタイプの活動を示し得る。例えば、非呼吸活動を示す活動信号を生成するのに、適切なカットオフ周波数(例えば10Hz)を有するフィルタ(例えば、2次バターワースハイパスフィルタなどのハイパスフィルタ)が使用され得る。
【0141】
閾値モジュール720は、活動推定サブモジュールからの活動信号に基づいてトリガ閾値を調整するように構成された閾値更新サブモジュールも有し得る。閾値更新サブモジュールは、例えば、活動信号がユーザの活動の増加を示すと、トリガ閾値の大きさを増加させ得る。同様に、閾値更新サブモジュールは、活動信号がユーザの活動の減少を示すと、トリガ閾値の大きさを減少させ得る。これらの調整は、ユーザの活動が増加している期間中に、調整された圧力信号におけるノイズ増を補償するのに役立ち得る。
【0142】
いくつかの実施形態においては、閾値更新サブモジュールが、固定長ウィンドウ(例えば、5~15秒間)の活動信号を分析し得る。他の実施形態においては、閾値更新サブモジュールが、活動信号の調整可能長ウィンドウを分析し得る。かかる実施形態においては、閾値モジュール720が、閾値更新サブモジュールによって使用されるウィンドウの長さを、活動信号、調整された圧力信号、および/またはトリガ閾値の関数として調整するように構成されているウィンドウ調整サブモジュールも有し得る。例えば、ウィンドウ調整サブモジュールは、ウィンドウの長さを一時的に短縮し、トリガ閾値が、孤立した短いノイズ増発現から(例えば、咳またはカニューレ隆起から)迅速に回復できるようにし得る(これにより、カニューレ隆起は、カニューレの一部との物理的接触によって生じる擾乱であり得る)。かかる実施形態においては、ウィンドウ調整サブモジュールが、トリガ閾値がそのトリガ閾値の最近の移動平均を超えた時間量に基づいてウィンドウの長さを調整し得る。
【0143】
トリガモジュール730は、閾値モジュール720からのトリガ閾値を、調整モジュール710からの調整された圧力信号に適用してトリガ信号(例えば、デジタルブール信号または比例制御信号)を生成するように構成され得る。このトリガ信号は、酸素富化空気のボーラスの放出をユーザの吸息と同期させるのに使用され得る。このトリガ信号は、例えば、供給弁160に提供され得る。いくつかの実施形態においては、トリガモジュール730が、調整された圧力信号をトリガ閾値と比較して吸息開始を特定し得る。かかる実施形態においては、調整された圧力信号の大きさがトリガ閾値の大きさを上回っていると、トリガモジュール730が吸息開始を検出し得る。いくつかの実施形態においては、トリガモジュール730が、以前に検出された吸息開始からの時間をブラックアウト継続期間と比較し得る。かかる実施形態においては、トリガモジュール730が、以前に検出された吸息開始からの時間がブラックアウト継続期間よりも長い場合にのみ、吸息開始を検出し得る。いくつかの実施形態においては、トリガモジュール730が、以前に検出された吸息開始の後に呼気開始が検出された場合にのみ、吸息開始を検出し得る。
【0144】
監視モジュール740は、調整モジュール710からの調整された圧力信号およびトリガモジュール730からのトリガ信号に基づいて、ユーザの1つ以上の呼吸パラメータ(例えば、ユーザの呼吸速度または吸気時間)を計算するように構成され得る。例えば、監視モジュール740は、ユーザの現在の呼吸速度を、単一の最近の呼吸持続時間または2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均のいずれかの逆数と推定し得る。呼吸持続時間は、吸息開始の連続検出間の時間の長さと推定され得る。別例として、監視モジュール740は、ユーザの吸気時間を、調整された圧力が継続的に所定の閾値(例えば0)を下回っている時間と推定し得る。監視モジュール740によって計算された呼吸パラメータのうちの1つ以上が、トリガモジュール730に提供され得る。いくつかの実施形態においては、トリガモジュール730が、これらの呼吸パラメータに基づいてブラックアウト継続期間の長さを調整し得る。トリガモジュール730は、例えば、ユーザの呼吸速度の増加を受けてブラックアウト継続期間の長さを短縮し得る。同様に、トリガモジュール730は、ユーザの呼吸速度の減少を受けてブラックアウト継続期間の長さを延長し得る。監視モジュールによって計算された呼吸パラメータ740のうちの1つ以上は、システム700の1つ以上の外部モジュール(例えば、ボーラス調整モジュールまたはユーザデータ報告モジュール)にも提供され得る。
【0145】
適応型トリガシステムに関するさらなる詳細が、例えば、「Methods and Apparatus for Treating a Respiratory Disorder(呼吸障害を治療するための方法および装置)」と題する国際特許出願第PCT/AU2019/050302号に記載され得、同文献は、参照により本明細書に援用される。
【0146】
いくつかの実施形態においては、流量センサ185が、ユーザによる吸息および/または呼息の開始を決定するのに使用され得る。例えば、コントローラ400は、圧力センサ194からの圧力信号を分析して、吸息開始を示す圧力の低下を検出するのと略同じ方法で、流量センサ185からの流れ信号を分析して、吸息開始を示す負の流量を検出し得る。同様に、コントローラ400は、流量センサ185からの流れ信号を分析して、呼息開始を示す正の流量も検出し得る。吸息開始が検出されると、供給弁160が開口されて、酸素富化空気のボーラスがアキュムレータ106から放出され得る。同様に、供給弁160は、呼息開始を検出すると、次の吸息開始が検出されるまで閉鎖され得る。
【0147】
いくつかの実施形態においては、ユーザによる吸息および/または呼息の開始を決定するのに、流量センサ185が圧力センサ194と併用され得る。かかる実施形態において、
図2の適応型トリガシステム700は、例えば、調整モジュール710が測定された流れ信号(例えば、流量センサ185によって生成された信号)も受信するように変更され得る。さらに、かかる実施形態においては、調整モジュール710が、調整された圧力信号および調整された流れ信号の両方を生産するように構成され得る。さらに、かかる実施形態においては、閾値モジュール720、トリガモジュール730、および/または監視モジュール740が、調整された圧力信号および調整された流れ信号の両方を使用して上記の動作を実行するように再構成され得る。
【0148】
いくつかの実施形態においては、ユーザによる吸息および/または呼息の開始を決定するのに、流量センサ185が圧力センサ194なしで使用され得る。かかる実施形態においては、
図2の適応型トリガシステム700が、例えば、調整モジュール710が、測定された圧力信号ではなく測定された流れ信号(例えば、流量センサ185によって生成された信号)を受信するように再構成されている。さらに、かかる実施形態においては、調整モジュール710が、調整された圧力信号ではなく調整された流れ信号を生産するように再構成され得る。さらに、かかる実施形態においては、閾値モジュール720、トリガモジュール730、および/または監視モジュール740が、調整された流れ信号を使用して上記の動作を実行するように再構成され得る。
【0149】
いくつかの実施形態においては、以前に検出された吸息開始からの時間が所定の閾値よりも長いと、酸素濃縮器100が自動送達モードを開始し得る。自動送達モード中は、例えば、吸息開始が検出されるか否かにかかわらず、酸素富化空気のボーラスがユーザに自動的に送達される。自動送達モードは、処方された量の酸素富化空気をユーザが引き続き確実に受け取るのに役立つ。いくつかの実施形態においては、酸素濃縮器100が、ユーザの呼吸が検出された後に自動送達モードを終了し、POD動作モードを再開し得る。いくつかの実施形態においては、酸素濃縮器100が、自動送達モードを終了し、所定の期間(例えば、45秒、1分、2分、3分など)後にPOD動作モードを再開し得る。
【0150】
いくつかの実施形態においては、自動送達モードを開始するのに使用される所定の閾値が固定値(例えば、5から15秒間)である。他の実施形態においては、所定の閾値が繰り返し調整される。所定の閾値は、例えば、2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均に基づいて繰り返し調整され得る。所定の閾値は、例えば、スケーリング定数(例えば、1.25、1.5、2、2.5など)および2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均の積として繰り返し計算され得る。別例として、所定の閾値は、所定の期間(例えば、2秒、3秒、4秒など)および2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均の合計として繰り返し計算され得る。
【0151】
いくつかの実施形態においては、自動送達モード中に送達されるボーラスのサイズおよび/または頻度が固定されている。他の実施形態においては、ボーラスのサイズおよび/または頻度が繰り返し調整される。ボーラスのサイズおよび/または頻度は、例えば、2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均に基づいて繰り返し調整され得る。別例として、ユーザに自動的に送達されるボーラスのサイズは、以前に検出された1つ以上の吸息開始を受けて、以前にユーザに送達された1つ以上のボーラスのサイズに対応し得る。同様に、ボーラスがユーザに自動的に送達される速度は、以前に検出された1つ以上の吸息開始を受けて1つ以上のボーラスが以前にユーザに送達された速度に対応し得る。
【0152】
B.動き補償
酸素濃縮器のユーザが動くと、酸素濃縮器の1つ以上の構成要素も動き得る。例えば、ユーザが動くと、送達導管(例えば送達導管192)および/または気道送達デバイス(例えば、鼻カニューレ気道送達デバイス196および/またはマウスピース198)も動き得る。これらの動きは、酸素濃縮器内の1つ以上のセンサ(例えば、酸素センサ165、流量センサ185、圧力センサ194)の測定値に影響し得る。例えば、酸素濃縮器100の送達導管192の動きは、酸素センサ165、流量センサ185、および/または圧力センサ194の酸素濃度、流量、および/または圧力信号にノイズを生じ得る。そのため、いくつかの実施形態においては、1つ以上の動きセンサが、ユーザの動きによって生じるノイズを補償するために上記のシステムに含められ得る。
【0153】
例えば、
図3Aおよび
図3Bに示すとおり、動きセンサが酸素濃縮器100内に含められ得る。
図3Aに示すとおり、動きセンサ802Aが、コントローラ400と共にコントローラボード801上に位置付けられている。
図3Bに示すとおり、動きセンサ802Bが、送達導管192沿いに位置付けられている。いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Bがユーザの近くに位置付けられ得、他の実施形態においては、動きセンサ802Bが外側ハウジング170の近くに位置付けられ得る。他の実施形態においては、動きセンサ802Aおよび802Bが、異なる箇所に位置付けられ得る。これらのセンサは、例えば、外側ハウジング170の壁部沿いまたはキャニスタシステム300上など、酸素濃縮器100内の任意の場所に位置付けられ得る。別例として、動きセンサ802Aおよび802Bは、例えば、ユーザが携行または装着する、酸素濃縮器100とは別のデバイスに組み込まれ得る。かかる実施形態においては、その別のデバイスが、例えば、パーソナルセルラーデバイスまたは腕時計であり得る。いくつかの実施形態においては、複数の動きセンサが酸素濃縮器100内に含められ得る。例えば、動きセンサ802Aおよび802Bの両方が酸素濃縮器100に含められ得る。
【0154】
加速度計、ジャイロスコープ、チルトスイッチ、歪みゲージ、気圧計、または高度計など、様々な動きセンサを本技術で使用することができる。例えば、いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Aおよび/または802Bが、1つ以上の方向の加速を測定するように構成された加速度計(例えば、1軸加速度計、2軸加速度計、または3軸加速度計)であり得る。別例として、いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Bが、送達導管192の1つ以上の部分の屈曲を測定するように構成された歪みゲージであり得る。さらなる別例として、いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Aおよび/または802Bが、ユーザがもたらした高度の変化を測定するように構成された気圧計および/または高度計であり得る。
【0155】
動きセンサによって生成されたデータ802Aおよび802Bは、コントローラ400によって受信される。いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Aおよび802Bが、1本以上の電気導管を通じてコントローラ400に通信可能に連結され得る。かかる実施形態においては、動きセンサ802Aおよび802Bが、生成されたデータを、集積回路間通信(I2C)、シリアルペリフェラルインターフェース(SPI)、コントローラエリアネットワーク(CAN)、汎用非同期送受信(UART)、イーサネット、ユニバーサルシリアルバス(USB)などの標準的な通信プロトコル、またはカスタム通信プロトコルを用いて送信し得る。いくつかの実施形態においては、動きセンサ802Aおよび802Bが、生成されたデータを、1つ以上の無線送信機、受信機、および/またはトランシーバを通じてコントローラ400に無線送信し得る。かかる実施形態においては、動きセンサ802Aおよび802Bが、生成されたデータを、Bluetooth、WiFi、ZigBee、Z Wave、NEC Infrared(IR)、符号分割多重接続(CDMA)、Global System for Mobile Communications(GSM)、またはLong-Term Evolution(LTE)などの標準的な通信プロトコル、またはカスタム通信プロトコルを用いて送信し得る。
【0156】
コントローラ400は、動きセンサ802Aおよび802Bから受信したデータを使用して、ユーザの動きによって生じたノイズを補償し得る。例えば、
図4A~
図4Dに示すとおり、
図2の適応型トリガシステム700は、かかるノイズを補償するように変更され得る。
図4A~
図4Dの実施形態のそれぞれにおいては、適応型トリガシステム700のモジュール(例えば、調整モジュール710、閾値モジュール720、トリガモジュール730、または監視モジュール740)のうちの1つが、異なるモジュール(例えば、調整モジュール910、閾値モジュール920、トリガモジュール930、または監視モジュール940)で置き換えられている。残りのモジュールは、
図2に関して先に記載したように動作する。
【0157】
図4Aに示すとおり、調整モジュール710は、適応型トリガシステム900Aにおいて、調整モジュール910で置き換えられている。調整モジュール910は、例えば、測定された圧力信号(例えば、圧力センサ194によって生成された信号)、弁制御信号(例えば、供給弁160を制御するためにコントローラ400によって生成された信号)、測定された温度信号(例えば、酸素濃縮器100内の温度センサによって生成された信号)、および/または測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)を受信するように構成され得る。調整モジュール710と同様、調整モジュール910も、弁制御信号、測定された温度信号、および/またはノイズ低減フィルタリングを用いて、測定された圧力信号を、ユーザの気道圧をより正確に表すように調整し得る。加えて、調整モジュール910は、測定された動き信号を用いて、ユーザの動きによって生じるノイズを補償し得る。例えば、適応型トリガシステム900Aが
図3Aおよび/または
図3Bの出口システムと併用される実施形態においては、調整モジュール910が、圧力センサ194によって生成された測定された圧力信号を、動きセンサ802Aおよび/または802Bによって生成された測定された動き信号に基づいて増大または低減し得る。例えば、動きセンサ802Aおよび/または802Bが加速度計である実施形態においては、圧力センサ194の向きに対する測定された加速度の方向が、測定された圧力信号が増大されるべきか低減されるべきかを示し得る。別例として、動きセンサ802Bが歪みゲージである実施形態においては、送達導管192の1つ以上の部分の測定された屈曲が、測定された圧力信号が増大されるべきか低減されるべきかを示し得る。さらなる別例として、動きセンサ802Aおよび/または802Bが気圧計および/または高度計である実施形態においては、測定された高度変化が、測定された圧力信号が増大されるべきか低減されるべきかを示し得る。
【0158】
図4Bに示すとおり、閾値モジュール720は、適応型トリガシステム900Bにおいて、閾値モジュール920で置き換えられている。閾値モジュール720と同様、閾値モジュール920も、調整モジュール710からの調整された圧力信号を監視するように、かつ適切なトリガ閾値を時間の関数と繰り返し決定するように構成され得る。さらに、閾値モジュール920は、活動推定サブモジュール、閾値更新サブモジュール、および/またはウィンドウ調整サブモジュールを有し得る。ただし、これらのサブモジュールのうちの少なくとも1つの機能は、測定された動き信号に基づいて変更され得る。
【0159】
活動推定サブモジュールは、調整された圧力信号および/または測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)に基づいて活動信号を生成するように構成され得る。例えば、いくつかの実施形態においては、活動推定サブモジュールが、調整された圧力信号から呼吸パラメータ(例えば、ユーザの呼吸速度)、および測定された動き信号から動きパラメータ(例えば、ユーザによる単位時間あたりの歩数)を導出し得る。活動推定サブモジュールはその後、呼吸パラメータおよび動きパラメータを組み合わせて活動信号を生成し得る。活動信号は、例えば、呼吸パラメータおよび動きパラメータの加重和として計算され得る。別例として、いくつかの実施形態においては、活動推定サブモジュールが、調整された圧力信号から(例えば、適切なカットオフ周波数を有するハイパスフィルタを使用して)非呼吸信号を生成し得る。活動推定サブモジュールはその後、測定された動き信号に基づいて非呼吸信号をスケーリングし得る。測定された動き信号が、例えば、ユーザによる動きの増量を示すと、より大きなスケーリングファクタが非呼吸信号に適用されて活動信号を生成し得る。同様に、測定された動き信号が、ユーザによる動きの減量を示すと、より小さいスケーリングファクタが非呼吸信号に適用されて活動信号を生成し得る。
【0160】
閾値更新サブモジュールは、活動推定サブモジュールからの活動信号および/または測定された動き信号(例えば動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)に基づいてトリガ閾値を調整するように構成され得る。閾値更新サブモジュールは、例えば、活動信号がユーザの活動の増加を確実に示すと、トリガ閾値の大きさを増加させ得る。同様に、閾値更新サブモジュールは、活動信号がユーザの活動の減少を確実に示すと、トリガ閾値の大きさを減少させ得る。閾値更新サブモジュールは、測定された動き信号を使用して活動信号の信頼性を評価し得る。例えば、適応型トリガシステム900Bが
図3Aおよび/または
図3Bのアウトレットシステムと併用される実施形態においては、酸素濃縮器100の1つ以上の構成要素の動きが、圧力センサ194の測定値に影響し得、ひいては活動信号に影響する。そのため、動きセンサ802Aおよび/または802Bによって生成された動き信号の大きさおよび/または周波数が所定の閾値より大きいと、閾値更新サブモジュールは、例えば、活動信号を一時的に無視し、トリガ閾値を現在値に維持し得る。
【0161】
いくつかの実施形態においては、閾値更新サブモジュールが、固定長ウィンドウ(例えば、5~15秒間)の活動信号を分析し得る。他の実施形態においては、閾値更新サブモジュールが、活動信号の調整可能長ウィンドウを分析し得る。かかる実施形態においては、閾値モジュール920が、閾値更新サブモジュールによって使用されるウィンドウの長さを、活動信号、調整された圧力信号、および/またはトリガ閾値、および/または測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)の関数として調整するように再構成されているウィンドウ調整サブモジュールを有し得る。ウィンドウ調整サブモジュールは、例えば、ウィンドウの長さを一時的に短縮して、トリガ閾値が、孤立した短いノイズ増発現から(例えば、咳またはカニューレ隆起から)迅速に回復できるようにし得る。かかる実施形態においては、ウィンドウ調整サブモジュールが、トリガ閾値がそのトリガ閾値の最近の移動平均を超えた時間量に基づいてウィンドウの長さを調整し得る。いくつかの実施形態においては、ウィンドウ調整サブモジュールが、測定された動き信号を分析してノイズ増の発現を特定するように構成され得る。例えば、測定された動き信号の大きさおよび/または周波数が所定の閾値よりも大きいと、ウィンドウ調整サブモジュールによってノイズ増の発現が特定され得る。
【0162】
図4Cに示すとおり、トリガモジュール730は、適応型トリガシステム900Cにおいて、トリガモジュール930で置き換えられている。トリガモジュール730と同様、トリガモジュール930も、閾値モジュール720からのトリガ閾値を、調整モジュール710からの調整された圧力信号に適用してトリガ信号(例えば、デジタルブール信号または比例制御信号)を生成するように構成され得る。このトリガ信号は、酸素富化空気のボーラスの放出をユーザの吸息と同期させるのに使用され得る。このトリガ信号は、例えば、供給弁160に提供され得る。いくつかの実施形態においては、トリガモジュール930が、調整された圧力信号をトリガ閾値と比較して吸息開始を識別し得る。かかる実施形態においては、調整された圧力信号の大きさがトリガ閾値の大きさを上回っていると、トリガモジュール930が吸息開始を検出し得る。トリガモジュール730と同様、トリガモジュール930も、ブラックアウト継続期間および/または呼気開始の検出を使用して、吸息開始を誤検出するリスクを低減し得る。ただし、トリガモジュール930は、測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)も使用して、吸息開始を誤検出するリスクを低減し得る。トリガモジュール930は、例えば、測定された動き信号の大きさおよび/または周波数が所定の閾値未満だと、吸息開始を検証し得る。
【0163】
図4Dに示すとおり、監視モジュール740は、監視モジュール940において、適応型トリガシステム900Dで置き換えられている。監視モジュール740と同様、監視モジュール940も、調整モジュール710からの調整された圧力信号およびトリガモジュール730からのトリガ信号に基づいて、ユーザの1つ以上の呼吸パラメータ(例えば、ユーザの呼吸速度または吸気時間)を計算するように構成され得る。ただし、監視モジュール940も、測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)に基づいてユーザの1つ以上の動きパラメータ(例えば、ユーザによる単位時間あたりの歩数)を計算するように構成され得る。監視モジュール940は、測定された動き信号も使用して、1つ以上の呼吸パラメータの計算の精度を高め得る。例えば、監視モジュール940は、測定された動き信号の1つ以上の対応区分の大きさおよび/または周波数が所定の閾値よりも大きいと、調整された圧力信号の1つ以上の区分を呼吸パラメータの計算から除外し得る。監視モジュール740によって計算された呼吸パラメータと同様、監視モジュール940によって計算された呼吸および/または動きパラメータも、トリガモジュール730および/またはシステム900Dにとって外部である1つ以上のモジュール(例えば、ボーラス調整モジュールまたはユーザデータ報告モジュール)に提供され得る。
【0164】
図4A~
図4Dの実施形態においては、適応型トリガシステム700のモジュール(例えば、調整モジュール710、閾値モジュール720、トリガモジュール730、または監視モジュール740)のうちの1つだけが、異なるモジュール(例えば、調整モジュール910、閾値モジュール920、トリガモジュール930、または監視モジュール940)で置き換えられた。ただし、他の実施形態においては、複数のモジュールおよび/またはサブモジュールを置き換えることができる。例えば、調整モジュール910、閾値モジュール920、トリガモジュール930、および/または監視モジュール940のうちの2つ以上が、適応型トリガシステムに組み込まれ得る。
【0165】
図4A~
図4Dの実施形態においては、ユーザによる吸息および/または呼息の開始を決定するのに、測定された圧力信号(例えば、圧力センサ194によって生成された信号)が使用された。ただし、上記のとおり、他の実施形態においては、ユーザによる吸息および/または呼息の開始を決定するのに、測定された流れ信号(例えば、流量センサ185によって生成された信号)が使用され得る。かかる実施形態においては、測定された流れ信号が単独で使用され得るか、測定された圧力信号(例えば、圧力センサ194によって生成された信号)と併用され得る。
【0166】
上記のとおり、いくつかの実施形態においては、以前に検出された吸息開始からの時間が所定の閾値よりも長いと、酸素濃縮器100が自動送達モードを開始し得る。自動送達モード中は、例えば、吸息開始が検出されるか否かにかかわらず、酸素富化空気のボーラスがユーザに自動的に送達される。いくつかの実施形態においては、ボーラスのサイズおよび/または頻度が繰り返し調整される。例えば、監視モジュール940によって計算された1つ以上の呼吸パラメータが、ボーラスのサイズおよび/または頻度を調整するのに使用され得る。別例として、別々に計算された1つ以上の呼吸パラメータ(例えば、2つ以上の最近の呼吸持続時間の移動平均)が、ボーラスのサイズおよび/または頻度を調整するのに使用され得る。かかる実施形態においては、測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)を使用して、これらの計算の精度を高めることができる。例えば、測定された動き信号の1つ以上の対応区分の大きさおよび/または周波数が所定の閾値より大きいと、測定された流れ信号(例えば、流量センサ185によって生成された信号)および/または測定された圧力信号(例えば、圧力センサ194によって生成された信号)の1つ以上の区分が呼吸パラメータの計算から除外され得る。
【0167】
いくつかの実施形態においては、さらなるセンサが、上記のシステムおよび方法に組み込まれ得る。例えば、心拍数モニタによって生成された測定された心拍数信号が、測定された動き信号(例えば、動きセンサ802Aまたは802Bによって生成された信号)と併用されて、ユーザの動きによって生じたノイズを補償し得る。かかる実施形態においては、測定された心拍数信号が、上記のモジュールのいずれかに供給され得る。心拍数の増加は、ユーザによる動きの増加を示し得る。同様に、心拍数の減少は、ユーザによる動きの減少を示し得る。そのため、調整モジュール910も、例えば、測定された心拍数信号を使用して、測定された圧力を調整し得る。別例として、閾値モジュール920の活動推定サブモジュールが、測定された心拍数信号から心拍数パラメータを導出し得る。活動推定サブモジュールはその後、心拍数パラメータを呼吸パラメータおよび動きパラメータと組み合わせて、活動信号を生成し得る。さらなる別例として、閾値モジュール920の閾値更新サブモジュールが、測定された心拍数信号を使用して、活動信号の信頼性を評価し得る。さらなる別例として、閾値モジュール920の閾値更新サブモジュールが、測定された心拍数信号の大きさおよび/または周波数に基づいてウィンドウの長さを調整し得る。さらなる別例として、トリガモジュール930が、測定された心拍数信号の大きさおよび/または周波数に基づいて吸息開始を検証し得る。さらなる別例として、監視モジュール940が、測定された心拍数信号の大きさおよび/または周波数に基づいて、調整された圧力信号の1つ以上の区分を呼吸パラメータの計算から除外し得る。さらなる別例として、測定された心拍数信号が、自動送達モード中に送達されるボーラスのサイズおよび/または頻度を調整するのに使用され得る。
【0168】
D.用語集
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態において、以下の定義のうち1つ以上が適用され得る。本技術の他の形態において、別の定義も適用され得る。
【0169】
空気:本技術の特定の形態においては、空気が、78%の窒素(N2)、21%の酸素(O2)、1%の水蒸気、二酸化炭素(CO2)、アルゴン(Ar)、および他の微量ガスからなる大気という意味で捉えられ得る。
【0170】
酸素富化空気:大気の酸素濃度(21%)よりも高い酸素濃度(例えば、少なくとも約50%の酸素、少なくとも約60%の酸素、少なくとも約70%の酸素、少なくとも約80%の酸素、少なくとも約87%の酸素、少なくとも約90%の酸素、少なくとも約95%の酸素、少なくとも約98%の酸素、または少なくとも約99%)を有する酸素。「酸素富化空気」を簡略的に「酸素」と呼ぶ場合もある。
【0171】
医療用酸素:医療用酸素は、80%以上の酸素濃度を有する酸素富化空気と定義される。
【0172】
周囲:本技術の特定の形態においては、「周囲」という用語が、(i)治療システムまたは患者の外部、および(ii)治療システムまたは患者を直接包囲するものを意味するものとしてとられるべきである。
【0173】
流量:単位時間あたりに送出される空気の瞬時の量(または質量)。流量とは、瞬間の量を指し得る。場合によっては、流量について言及した場合、スカラー量(すなわち、大きさのみを有する量)を指す。他の場合において、流量について言及した場合、ベクトル量(すなわち、大きさおよび方向両方を持つ量)を指す。流量には、符号Qが付与され得る。「流量」を簡略的に「流れ」もしくは「空気流」と呼ぶ場合もある。
【0174】
流れ療法:患者の呼吸サイクル全体にかけて通常陽圧である治療流量と称される制御された流量において気道への入口に空気流れを送達することを含む、呼吸療法。
【0175】
患者:呼吸障害に罹患しているかまたはしていない人。
【0176】
圧力:単位面積あたりの力。圧力は、多様な単位で表現され得る(例えば、cmH2O、g-f/cm2、およびヘクトパスカル)。1cmH2Oは、1g-f/cm2に等しく、およそ0.98ヘクトパスカル(1ヘクトパスカル=100Pa=100N/m2=1ミリバール~0.001atm)である。本明細書において、他に明記無き限り、圧力はcmH2Oの単位で付与される。
【0177】
E.一般的注意事項
本明細書中用いられる「接続される」という用語は、1つ以上の物体または構成要素間の直接的接続または間接的接続(例えば、1つ以上の介在的接続)を意味する。「接続される」という言い回しは、物体または構成要素が直接相互接続されるような物体または構成要素間の直接的接続を意味する。本明細書中において用いられるように、デバイス「を得る」という言い回しは、当該デバイスを購入または構築したことを意味する。
【0178】
本開示において、特定の米国特許、米国特許出願および他の文献(例えば、論文)を参考のため援用する。しかし、このような米国特許、米国特許出願および他の文献の本文を、そのような本文と本明細書中に記載の他の記載および図面との間に矛盾が存在しない範囲内において、参考のためひとえに援用する。そのような矛盾が生じた場合、そのような参考のため援用された米国特許、米国特許出願および他の文献中のそのような矛盾のある記載は全て、本特許中において参考のため特定的に援用されない。
【0179】
本技術の多様な態様のさらなる改変例および代替実施形態は、当業者にとって本記載に鑑みて明らかになり得る。よって、本記載は、あくまで例示的なものとして解釈されるべきであり、本技術を実行する一般的様態を当業者に教示する目的のためのものである。本明細書中に図示および記載された本技術の形態は、実施形態としてとられるべきであることが理解されるべきである。本技術の本記載の恩恵に鑑みれば当業者にとって全て明らかであるように、要素および材料は、本明細書中に例示および記載したものにおいて代替可能であり、部分およびプロセスは逆転され得、本技術の特定の特徴は独立的に利用され得る。添付の特許請求の範囲に記載のような本技術の意図および範囲から逸脱すること無く、本明細書中に記載の要素において変更が可能であり得る。
【国際調査報告】