(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】多臓器機能不全症候群を治療又は予防するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20230510BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20230510BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230510BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20230510BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230510BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230510BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K9/127
A61K47/02
A61K47/24
A61K47/44
A61P9/02
A61P11/00
A61P13/12
A61P31/00
A61P39/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559503
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021070351
(87)【国際公開番号】W WO2021203143
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522382705
【氏名又は名称】ビバセレ バイオ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】クスベルト シンプキンス
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA17
4C076AA19
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC17
4C076DD15F
4C076DD23Z
4C076DD30Z
4C076DD38
4C076DD43Z
4C076DD51Z
4C076DD60Z
4C076DD63F
4C076EE53F
4C076FF16
4C076FF43
(57)【要約】
多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するためのPN組成物は、親油性又は疎水性成分、両親媒性乳化剤、極性液体担体、及び1つ以上の電解質を含み、両親媒性乳化剤は、極性液体担体中に親油性若しくは疎水性成分を含む親油性若しくは疎水性コアを有するミセル、並びに/又は脂質二重層及び/若しくは他の粒子構成として組織化されたリポソームを形成する。これは、一酸化窒素を取り込み、それを促進された迅速性で放出して、一酸化窒素のバランスを、臓器損傷を悪化させ生存率を低下させるものから、臓器損傷を逆転及び/又は阻害し、生存率を増加させるものにシフトさせることを可能にするPN組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療する方法であって、
治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.1%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体、及び
1つ以上の電解質
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することを含み、
前記PN組成物は、1~800nmの直径を有するリポソーム及び/又はミセルを含む、方法。
【請求項2】
前記親油性又は疎水性成分が、大豆油、チア豆油及び藻類油からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記両親媒性乳化剤が、リン脂質及びα-ホスファチジルコリンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記両親媒性乳化剤が、卵黄レシチン及び大豆レシチンからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記極性液体担体が、水、水性溶液及び非水性極性液体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非水性極性液体が、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール及び極性シリコーン液体からなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電解質が、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、プロピオン酸ナトリウム、ヒドロキシ酪酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸水素カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、プロピオン酸カリウム、ヒドロキシ酪酸カリウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、アミノ酸マグネシウム塩、塩化アンモニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸鉄、塩化鉄、グルコン酸鉄、硫酸銅及び硫酸マンガンのうちの1つ以上からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記PN組成物が、静脈内、動脈内、骨内又は心臓内のいずれかに投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記PN組成物が、1~50,000mlのO
2/100mlのPN組成物の酸素含有量を有する酸素化PN組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記PN組成物が、約1:200~約1:1.7の乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記PN組成物がミセル及びリポソームを含み、前記PN組成物中の前記ミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~200nmの範囲の直径を有し、前記PN組成物中の前記リポソームは、電子顕微鏡によって測定される場合、1~25nmの範囲の直径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記PN組成物が、準生理学的範囲のマグネシウムイオンの濃度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記PN組成物が、晶質剤、膨張剤、抗炎症剤、免疫調節剤及び親油性ガスからなる群から選択される1つ以上をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記PN組成物がグリセリンをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、ウイルス感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、COVID19ウイルスによって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、細菌感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、真菌感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記対象が、寄生虫感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
対象における敗血症による多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するための、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法であって、
治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.6%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体、及び
1つ以上の電解質
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することによって酸素飽和度を増加させる工程を含み、
前記PN組成物中の前記ミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~200nmの範囲の直径を有し、前記PN組成物は、1~25nmの直径を有するリポソームを含む、方法。
【請求項21】
対象における敗血症による多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するための、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法であって、
治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.6%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体、及び
1つ以上の電解質
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することによって低酸素症を軽減する工程を含み、
前記PN組成物中の前記ミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~200nmの範囲の直径を有し、前記PN組成物は、1~25nmの直径を有するリポソームを含む、方法。
【請求項22】
対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法であって、
治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.6%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体、及び
1つ以上の電解質
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することによって酸素飽和度を増加させる工程を含み、
前記PN組成物中の前記ミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~200nmの範囲の直径を有し、前記PN組成物は、1~25nmの直径を有するリポソームを含む、方法。
【請求項23】
対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するための、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法であって、
治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.6%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体、及び
1つ以上の電解質
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することによって低酸素症を軽減する工程を含み、
前記PN組成物中の前記ミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~200nmの範囲の直径を有し、前記PN組成物は、1~25nmの直径を有するリポソームを含む、方法。
【請求項24】
対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療する方法であって、前記対象は、重症疾患によって引き起こされるMODSを有し、
前記方法は、治療を必要とする対象に、
0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、
0.1%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、
極性液体担体
を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することを含み、
前記PN組成物は、1~800nmの直径を有するリポソーム及び/又はミセルを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年4月3日に出願された米国仮出願第63/004,769号の優先権を主張する。前述の出願の全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野は、医学的治療、特に多臓器機能不全症候群(MODS)を治療するための方法及び組成物である。
【背景技術】
【0003】
多臓器機能不全症候群(MODS)は、集中的な医学的介入を必要とする身体の多臓器不全である。MODSは、現在のICU診療における罹患率及び死亡率の主な原因である。MODSは、大外傷、熱傷、子癇、敗血症、膵炎、吸引症候群、体外循環(例えば、心臓バイパス)、複数回の輸血、虚血再灌流傷害、自己免疫疾患、熱誘導性疾患又は中毒/毒性などの多種多様な原因によって引き起こされる。MODSは広範囲の炎症と強く関連している。しかしながら、抗炎症剤は、MODSの治療において有効性を示すことができなかった。MODSの明確な単一の原因は明らかにされていない。
【0004】
MODSの管理は、その始まりとなる原因に対処し、各重要臓器の機能不全に特有の集中的な支持を提供しようとするものである。肺は、人工呼吸器によって支持され、肺への酸素の送達が増加する。腎臓は透析によって支持される。心臓は、心拍出量を増大させる薬理学的薬剤又は装置によって支持される。おそらく現存する実験プロトコル以外では、この時点では肝不全に対する日常的な支持はない。
【0005】
血管系不全を逆転させる試みのいくつかは、敗血症性ショックの患者に典型的に見られる低血圧(血圧低下)の治療及び/又は高濃度の一酸化窒素(NO)の低減に焦点を当ててきた。NOの過剰産生は、血管拡張及び血圧の低下を引き起こす。しかしながら、血圧を上昇させるだけでは、他の臓器系の改善には自動的につながらない。実際、生命を脅かす低血圧(血圧低下)を治療するための血管収縮薬であるレボフェド(Levophed)の投与は、臓器損傷を実際に悪化させることが知られている。同様に、敗血症性ショックを有する患者を一酸化窒素合成酵素阻害剤546C88で治療しようとする試みは成功せず、実際には死亡率の増加及び多臓器不全をもたらした。
【0006】
MODS患者では、血管を収縮させて血圧を上昇させる昇圧薬に対する血液の応答性が著しく低下する。さらに、心収縮性が低下する。心収縮性を増加させるドブタミンなどの他の血管作用活性薬又は他の機序を介して作用する他の薬剤もまた、MODSの有害作用を逆転させることができない。患者が死亡すると、患者は昇圧薬に対する応答性を失い、血圧は生存不可能なレベルまで低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮すると、MODS患者の臓器機能を改善する治療が必要とされている。本出願の発明者らは、予想外にも、リン脂質ナノ粒子(PN)組成物の投与が多臓器機能不全症候群を予防又は軽減し得ることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一態様は、多臓器機能不全症候群(MODS)の軽減又は予防を必要とする対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を軽減又は予防する方法である。本方法は、治療を必要とする対象に、0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、0.1%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、極性液体担体、及び1つ以上の電解質を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与する工程を含み、PN組成物は、1~500nmの平均直径を有するリポソーム及び/又はミセルを含む。いくつかの実施形態では、PN組成物は、親油性又は疎水性成分及び両親媒性乳化剤を10~50%(w/v)の総量で含む。
【0009】
本出願の別の態様は、対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、0~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、0.6%~60%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、極性液体担体、及び1つ以上の電解質を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することを含み、PN組成物は、1~500nmの平均直径を有するリポソーム及び/又はミセルを含む、方法である。いくつかの実施形態では、PN組成物は、親油性又は疎水性成分及び両親媒性乳化剤を10~50%(w/v)の総量で含む。
【0010】
特定の実施形態では、親油性又は疎水性成分は、大豆油、チア豆油、藻類油及びシリコーン油からなる群から選択される。
【0011】
特定の実施形態では、両親媒性乳化剤は、リン脂質及びα-ホスファチジルコリンからなる群から選択される。特定の実施形態では、両親媒性乳化剤は、卵黄レシチン、大豆レシチン及び両親媒性ペプチドからなる群から選択される。
【0012】
特定の実施形態では、極性液体担体は、水、水性溶液及び非水性極性液体からなる群から選択される。
【0013】
特定の実施形態では、非水性極性液体は、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール及び極性シリコーン液体からなる群から選択される。
【0014】
特定の実施形態では、電解質は、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、プロピオン酸ナトリウム、ヒドロキシ酪酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、塩化カリウム、酢酸カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸水素カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、プロピオン酸カリウム、ヒドロキシ酪酸カリウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、アミノ酸マグネシウム塩、塩化アンモニウム、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸鉄、塩化鉄、グルコン酸鉄、硫酸銅及び硫酸マンガンのうちの1つ以上からなる群から選択される。
【0015】
特定の実施形態では、PN組成物は、2~3mEq/l K+(2~3mM)の準生理学的範囲のカリウムイオンの濃度を有する。
【0016】
特定の実施形態では、PN組成物は、準生理学的範囲のマグネシウムイオンの濃度を有する。
【0017】
特定の実施形態では、PN組成物はミセル及びリポソームを含み、PN組成物中のミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、30~450nmの範囲の平均直径を有し、PN組成物中のリポソームは、電子顕微鏡によって測定される場合、1~25nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、PN組成物はミセル及びリポソームを含み、PN組成物中のミセルは、電子顕微鏡によって測定される場合、15~800nmの範囲の直径を有し、PN組成物中のリポソームは、電子顕微鏡によって測定される場合、1~300nmの範囲の直径を有する。
【0018】
特定の実施形態では、PN組成物は、静脈内、動脈内、骨内又は心臓内のいずれかに投与される。
【0019】
特定の実施形態では、PN組成物は、1~50mlのO2/100mlのPN組成物の酸素含有量を有する酸素化PN組成物である。
【0020】
特定の実施形態では、PN組成物は、約1:200~約1:1の乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)を有する。特定の実施形態では、PN組成物は、約1:200~約1:1.7の乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)を有する。
【0021】
特定の実施形態では、PN組成物は、晶質剤をさらに含む。
【0022】
特定の実施形態では、PN組成物は、膨張剤をさらに含む。
【0023】
特定の実施形態では、PN組成物は、抗炎症剤又は免疫調節剤をさらに含む。
【0024】
特定の実施形態では、PN組成物は、親油性ガスをさらに含む。
【0025】
特定の実施形態では、対象は、インフルエンザウイルス又はコロナウイルス感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する。特定の実施形態では、対象は、大外傷、熱傷、子癇、敗血症、膵炎、吸引症候群、体外循環、心臓バイパス、複数回の輸血、虚血再灌流傷害、自己免疫疾患、熱誘導性疾患及び中毒/毒性からなる群からの1つ以上によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを有する。
【0026】
本出願の別の態様は、対象における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、5%~35%(w/v)の量の大豆油、0.5%~15%(w/v)の量のレシチン、電解質としての塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウムであって、総電解質組成が50mM~200mMである、塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウム、0.001mM~10mMの量のヒスチジン、並びに水を含む、有効量のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を投与することを含み、レシチンは、(1)水溶液中に親油性又は疎水性コアを有する脂質担持ミセルであって、得られたミセルは、電子顕微鏡によって決定される場合、30~500nmの範囲の平均直径を有し、前記脂質担持ミセルは、室温で少なくとも4週間安定である、ミセルと、(2)電子顕微鏡によって決定される場合、1~500nmの範囲の平均直径を有するリポソームとを形成する、方法である。特定の実施形態では、PN組成物は、酸素をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】質量分析によって測定された水(パネルA)及びPN組成物(パネルB)による一酸化窒素の取込みを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本出願の特定の態様及び例示的な実施形態を詳細に参照し、添付の構造及び図の例を示す。本出願の態様は、方法、材料及び例を含む例示的な実施形態と併せて説明され、そのような説明は非限定的であり、本出願の範囲は、一般的に知られているか、又は本明細書に組み込まれているすべての均等物、代替物及び修正物を包含することを意図している。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本出願が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。当業者は、本出願の態様及び実施形態の実施に使用することができる、本明細書に記載されたものと類似又は均等な多くの技術及び材料を認識するであろう。本出願の記載された態様及び実施形態は、記載された方法及び材料に限定されない。
【0029】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0030】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、及び/又は「約」別の特定の値までとして表現される場合がある。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用して値が近似値として表される場合、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。各範囲の終点は、他方の終点に関しても、他方の終点とは無関係にも有意であることがさらに理解されよう。また、本明細書に開示されているいくつかの値があり、各値はまた、値自体に加えて「約」その特定の値として本明細書に開示されていることも理解されたい。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。当業者によって適切に理解されるように、ある値が開示されている場合、その値「以下」、「その値以上」及び値の間の可能な範囲も開示されていることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「10以下」及び「10以上」も開示されている。
【0031】
「急性重症疾患」という用語は、患者を集中治療を直ちに必要とさせる任意の状態を含むことを意味する。この状態は、身体的外傷、熱傷外傷、感染症(本明細書中、敗血症、重症敗血症、敗血症性ショック)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性心筋梗塞又は他の血栓塞栓性事象を含むがこれらに限定されない身体への急性かつ広範な傷害によって引き起こされる場合がある。
【0032】
「集中治療」という用語、本明細書では「臓器支持療法」ともいう用語には、それだけに限らないが、換気療法、(例えば、機械的換気)、血液透析、昇圧療法、輸液療法、赤血球濃縮物、新鮮凍結血漿、血小板濃縮物、全血又は凝固因子濃縮物の投与を伴う輸血療法、全身抗生物質及び/又は抗ウイルス及び/又は抗真菌及び/又は抗原虫療法、非経口栄養、顆粒球注入、T細胞注入、幹細胞注入、抗凝固剤及び/又は低分子量ヘパリンを含む抗血栓療法、コルチコステロイドの投与、厳格な血糖コントロールなどが含まれる場合がある。
【0033】
本明細書で使用される「外傷」という用語は、爆風外傷、鈍的外傷、貫通外傷、化学的傷害(こぼれ、戦争又は中毒)によって引き起こされる外傷、放射線又は熱傷などの外因によって引き起こされる事故、傷害又は生体組織への衝撃などの突然の物理的傷害によって生じる任意のショック又は身体創傷を意味する。
【0034】
「ショック」という用語は、従来の臨床的意味で使用され、すなわち、ショックは、身体の臓器及び組織が十分な血流を受けていない医学的緊急事態である。これは、臓器及び組織から(血液中に運ばれる)酸素を奪い、老廃物の蓄積を許す。ショックは、5つの主要なカテゴリーの問題、すなわち、心原性(心臓の機能に関連する問題を意味する)、血液量減少性/出血性(血管内空間からの流体の損失又は血管の拡張のために血管内空間の総体積が低く、循環系の流体の体積が絶対的又は相対的な意味で低くなることを意味する)、神経原性(中枢神経系に対する重度の傷害によって引き起こされる)、敗血症性(通常は細菌による抗し難い感染によって引き起こされる)又はアナフィラキシー/アレルギー性(免疫細胞からの全身性ヒスタミン放出及び過剰な血管拡張によって引き起こされる)によって引き起こされる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「治療」及び「治療する」という用語は、多臓器機能不全症候群(MODS)を有するか、又はMODSを発症するリスクがある患者の管理及びケアのことを指す。この用語は、症状若しくは合併症を改善、緩和若しくは軽減すること、状態、疾患若しくは障害の進行を遅延させること、状態、疾患若しくは障害を治癒若しくは排除すること、及び/又は疾患の再発を予防することを含めて、状態、疾患若しくは障害のリスクを低減するか、若しくは状態、疾患若しくは障害を予防すること、という目的での本出願のリン脂質ナノ粒子組成物の投与などの、この状態に対する全範囲の治療を含むことを意図しており、ここで、「予防する」又は「予防」は、状態、疾患又は障害の発症を妨げる目的での患者の管理及びケアを指すと理解されるべきであり、症状又は合併症の発症を予防するためのPN組成物の投与を含む。治療される個体はヒトである。本出願に従って治療される個体は、様々な年齢及び/又は性別のものであり得る。
【0036】
「臓器不全」という用語は、身体恒常性を達成するため、及び/又はその機能不全臓器からの機能喪失を補償するために医学的介入を必要とする急性疾患患者における臓器機能の変化を指す。臓器には、心臓及び血管(心不全、血管虚脱、血圧低下、臓器不全)、肺(呼吸不全)、肝臓(肝不全)、腎臓(腎不全)、脳(脳症)が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
「多臓器機能不全症候群」(MODSと略す)という用語は、恒常性を達成するため、及び/又は機能不全臓器からの機能喪失を補償するために介入を必要とする急性疾患患者における複数の臓器の病理学的に変化した機能を指す。主な原因は、制御されない炎症反応を引き起こす。手術患者及び非手術患者では、敗血症が最も一般的な原因である。敗血症は、敗血症性ショックをもたらす場合がある。感染がない場合、敗血症様障害は全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる。SIRSと敗血症の両方が最終的にMODSに進行し得る。しかしながら、患者の1/3において、主な原因を見出すことができない。MODSは、SIRSから敗血症、重症敗血症、MODSに及ぶ連続体の最終段階として十分に確立されている。MODSは再灌流傷害とは異なることに留意すべきである。再灌流では、血流がないか又は少ない期間がある。血流が回復すると、再灌流傷害が活性酸素種から生じる。活性酸素種のスカベンジャーは、再灌流傷害から保護することができる。しかし、そのようなスカベンジャーは、MODSから保護しない。MODSは、血流が中断されていなくても起こり得る。本出願は、敗血症及びMODSの他の誘導因子を除去するための方法を提供する。例えば、本出願の方法は、インフルエンザウイルス又はコロナウイルス(例えば、SARS、MERS及びCOVID19ウイルス(変異体を含む))感染、並びに細菌、寄生虫及び真菌感染によって引き起こされる敗血症によって誘導されるMODSを治療するために使用されてもよい。
【0038】
「敗血症」という用語は、従来の臨床的意味で使用され、全身炎症状態(全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる)及び既知の又は疑われる感染の存在を指す。「重症敗血症」は、敗血症誘導性の臓器機能不全又は組織灌流低下(例えば、血圧低下、ラクタート上昇、尿量減少又は精神状態の変化として現れる)と定義される。「敗血症性ショック」は、重症敗血症に加え、静脈内輸液の投与にもかかわらず持続的な低血圧である。敗血症は、重症敗血症、敗血症性ショック、多臓器機能不全症候群/多臓器不全(MODS)及び死をもたらし得る。
【0039】
「全身性炎症反応症候群」又は「SIRS」という用語は、従来の臨床的意味で使用され、確認された感染過程のない傷害に応答した全身性炎症を指す。SIRSは、以下の基準のうちの2つ以上が存在する場合に診断することができる。1)体温が36℃未満(96.8°F)又は38℃超(100.4°F)、2)毎分90拍を超える心拍数、3)毎分20回を超える頻呼吸(高呼吸数)又は4.3kPa(32mmHg)未満の動脈血二酸化炭素分圧、4)4000細胞/mm3(4×109細胞/L)未満若しくは12,000細胞/mm3(12×109細胞/L)超の白血球数、又は10%超の未成熟好中球(バンド形態)の存在。感染が疑われるか又は証明される場合(培養、染色又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により)、SIRSとともに、これは定義によると敗血症である。
【0040】
「全身性炎症」という用語は、感染、非感染性抗原、外傷、熱傷、臓器/組織の破壊/変性/損傷、虚血、出血、中毒及び/又は悪性腫瘍に対する身体(血管系、免疫系、組織)の非特異的に保存された応答による急性疾患患者における臓器機能の変化である。
【0041】
「ミセル」及び「脂質担持ミセル(LM)」という用語は、疎水性物質を含有及び送達するのに適した疎水性コアを形成するミセル中心の疎水性単一尾部領域を隔離する、周囲の溶媒と接触している親水性「頭部」領域を有する凝集体を含む、液体中に分散した分子の凝集体に関して本明細書で互換的に使用される。
【0042】
本明細書で使用される「リポソーム」という用語は、長い疎水性炭化水素鎖を含む尾部基及び親水性頭部基を有する脂質から構成される小胞構造を指す。脂質は、水性物質を含有及び送達するのに適した内部水性コア環境と、疎水性物質、特に酸素などのガスを含有するのに適した脂質壁とを有する脂質二重層を形成するように配置される。
【0043】
治療方法
本出願の一態様は、患者における多臓器機能不全症候群(MODS)を治療又は予防する方法であって、本出願のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物を含む、有効量のPN組成物を対象に投与することを含む、方法に関する。本出願の発明者らは、予想外にも、本出願のPN組成物の投与が多臓器機能不全症候群(MODS)を予防又は軽減し得ることを見出した。
【0044】
本出願のPN組成物は、敗血症、大外傷、熱傷、膵炎、吸引症候群、体外循環(例えば、心臓バイパス)、複数回の輸血、虚血再灌流傷害、自己免疫疾患、熱誘導性疾患、子癇、中毒/毒性を含むがこれらに限定されない、組織傷害に影響される複数の異なる疾患状態によって引き起こされるMODSを治療又は予防するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、インフルエンザウイルス又はコロナウイルス(例えば、SARS、MERS及びCOVID19ウイルス)感染によって引き起こされる敗血症に起因するMODSを治療又は予防するために使用される。
【0045】
一実施形態では、本方法は、MODSの治療又は予防において一酸化窒素の可逆的な取込み及び放出を提供するのに有効な量で本出願のPN組成物を投与することを含む。本出願は、NOのより効果的な再分布を促進するPN組成物を提供することによって、一酸化窒素(NO)過剰産生に関連する負の結果に対処しようとするものである。NOの過剰産生は、血管拡張及び血圧低下を引き起こす。MODSを有するか又はMODSを発症するリスクがある患者では、血管を収縮させて血圧を上昇させるレボフェド(Levophed)、バソプレッシン又はエピネフリンなどの昇圧薬に対する血液の応答性が著しく低下する。
【0046】
一酸化窒素合成酵素(NOS)は、アルギニンのNOへの変換を触媒する酵素である。以前に、NOの過剰産生によって引き起こされる問題を軽減するために、NOSの阻害剤(546C88)を試験した。しかし、この試験は死亡率が増加したため早期に終了した(Lopezら、Crit.Care Med.2004、第32巻第1号第21~30頁)。NOSを阻害することの主な問題は、血管開存性を維持するためにNOが必要であることである。したがって、NOを除去すると血圧が上昇するが、組織灌流も低下し、臓器不全を促進する。NOSを阻害することに関する別の問題は、それがミトコンドリア電子伝達及びATP産生を促進する役割を果たすことである。しかしながら、NOSの阻害は、ミトコンドリアの酸素消費速度、ATP産生を減少させ、ミトコンドリアの酸化ストレス及び不可逆的障害をもたらし得ることが知られている。
【0047】
理論に拘束されることを望むものではないが、本出願のPN組成物は、NO及び本出願のリン脂質ナノ粒子(PN)組成物の両方が疎水性であるという事実に部分的に基づいて予測されるNOのより効果的な管理を提供するために、一酸化窒素の局所濃度によって変化する方法で一酸化窒素を取り込むか又は放出する可能性がある一酸化窒素の可変リザーバを含むと考えられる。
【0048】
この場合、NOは、血液の水性環境と比較して、PNの疎水性領域に優先的に局在する。
図1は、質量分析によって測定された水及び本出願のPN組成物中のNOの取込み及び放出を示す図である。実験手順を実施例8に記載する。
【0049】
一酸化窒素を放出しない一酸化窒素阻害剤又は一酸化窒素捕捉剤とは異なり、PNは、吸収する一酸化窒素を迅速に放出する。これにより、PNは一酸化窒素の再分配剤として作用することが可能になり、過剰産生された領域ではバイオアベイラビリティを低下させ、濃度が不十分な領域では一酸化窒素濃度を増加させるために放出して、一酸化窒素のバランスを非生存に有利なものから生存に有利なものに変化させる。PN及びその類似体は、阻害剤及び捕捉剤とは対照的に、一酸化窒素再分配剤と呼ばれる新しいクラスの治療薬と見なすことができる。
【0050】
したがって、血流へのPNの注入は、局所濃度が不足している領域では容易に放出され得る過剰産生されたNOのその中への取込みを可能にすると考えられる。言い換えれば、PN組成物は、その生合成又はパラクリンオートクリン効果に影響を及ぼすことなくNOのバイオアベイラビリティを低下させるのに役立つ。過剰産生された一酸化窒素の減少はまた、一酸化窒素とスーパーオキシドとの反応の生成物である反応性の高いフリーラジカルであるペルオキシナイトライトの産生を減少させることも可能である。いくつかの実施形態では、PN組成物は、60~65mHgの平均血圧又は臨床状況によって必要とされる他の好適な血圧の目標を達成するためにMODS患者に注入される。
【0051】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物の投与を受ける患者は、昇圧薬(血管作用薬とも呼ばれる)で治療されたか、又は治療中である。昇圧薬及び血管作用薬の例としては、レボフェド(Levophed)、バソプレッシン及びエピネフリン、ジアプレザ(Giapreza)、フェニレフリン、ドーパミン及びドブタミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
本出願のPN組成物は、そのような治療を必要とする対象に静脈内、動脈内、骨内又は心臓内に投与してもよい。特定の実施形態では、PN組成物は、50~5000ml、50~4000ml、50~3000ml、50~2000ml、50~1000ml、50~500ml、100~5000ml、100~4000ml、100~3000ml、100~2000ml、100~1000ml、100~500ml、200~5000ml、200~4000ml、200~3000ml、200~2000ml、200~1000ml、200~500ml、500~5000ml、500~4000ml、500~3000ml、500~2000ml、500~1000ml、1000~5000ml、1000~4000ml、1000~3000ml及び1000~2000mlの量で投与される。いくつかの実施形態では、PN組成物は、30秒~24時間の期間に、対象の正常血液量の約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%又は90%に等しい量で投与される。
【0053】
特定の実施形態では、PN組成物は、0.1~5000ml/分、0.1~2000ml/分、0.1~1000ml/分、0.1~500ml/分、0.1~200ml/分、0.1~100ml/分、0.1~50ml/分、0.1~20ml/分、0.1~10ml/分、0.1~5ml/分、0.1~2ml/分、0.1~1ml/分、1~5000ml/分、1~2000ml/分、1~1000ml/分、1~500ml/分、1~200ml/分、1~100ml/分、1~50ml/分、1~20ml/分、1~10ml/分、1~5ml/分、1~2ml/分、2~5000ml/分、2~2000ml/分、2~1000ml/分、2~500ml/分、2~200ml/分、2~100ml/分、2~50ml/分、2~20ml/分、2~10ml/分、2~5ml/分、5~5000ml/分、5~2000ml/分、5~1000ml/分、5~500ml/分、5~200ml/分、5~100ml/分、5~50ml/分、5~20ml/分、5~10ml/分、10~5000ml/分、10~4000ml/分、10~3000ml/分、10~2000ml/分、10~1000ml/分、10~500ml/分、10~200ml/分、10~100ml/分、10~50ml/分、20~5000ml/分、20~4000ml/分、20~3000ml/分、20~2000ml/分、20~1000ml/分、20~500ml/分、20~200ml/分、20~100ml/分、20~50ml/分、50~5000ml/分、50~4000ml/分、50~3000ml/分、50~2000ml/分、50~1000ml/分、50~500ml/分、50~200ml/分、50~100ml/分、100~5000ml/分、100~4000ml/分、100~3000ml/分、100~2000ml/分、100~1000ml/分、100~500ml/分、100~200ml/分、200~5000ml/分、200~4000ml/分、200~3000ml/分、200~2000ml/分、200~1000ml/分、200~500ml/分、500~5000ml/分、500~4000ml/分、500~3000ml/分、500~2000ml/分、500~1000ml/分、1000~5000ml/分、1000~4000ml/分、1000~3000ml/分、1000~2000ml/分、2000~5000ml/分、2000~4000ml/分、2000~3000ml/分、3000~5000ml/分、3000~4000ml/分又は4000~5000ml/分の速度で与えられる。
【0054】
さらに他の実施形態では、PN組成物は、約500~700ml/分、400~800ml/分又は300~900ml/分の速度で与えられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、酸素化なしで与えられる。他の実施形態では、PN組成物は、酸素化PN組成物である。いくつかの実施形態では、PN組成物は、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~50、10~40、10~30、10~20、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~40、20~30、25~50、25~40、25~30、30~50、30~40又は40~50mlのO2/100mlのPN組成物の酸素含有量を有する酸素化PN組成物である。
【0056】
脳、腎臓、心臓、筋肉、脾臓又は他の組織の灌流、心拍出量、収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧、1回拍出量係数、ミトコンドリア酸化的リン酸化とそれに続く近赤外分光法又は他の手段、血中ラクタート又は膜分極などの他の血行動態パラメータを使用して、対象における血圧を上昇させるのに必要なPN組成物の「有効量」を決定してもよい。
【0057】
本出願のPN組成物が対象に投与され、対象を循環している間、心停止剤又は強心剤などの様々な薬剤を対象の循環系に直接投与するか、対象の心筋に直接投与するか、又は本出願のPN組成物に添加してもよい。これらの成分は、規則的な心収縮活動を維持する、心細動を停止する、又は心筋(myocardium)若しくは心筋(heart muscle)の収縮活動を完全に阻害するなどの所望の生理学的効果を達成するために添加される。
【0058】
心停止剤は、心筋収縮を停止させる材料であり、リドカイン、プロカイン及びノボカインなどの麻酔剤、並びに心筋収縮阻害を達成するのに十分な濃度のカリウムイオンなどの一価カチオンを含む。この効果を達成するのに十分なカリウムイオンの濃度は、一般に15mMを超える。
【0059】
リン脂質ナノ粒子(PN)組成物
一実施形態では、MODSを治療又は予防するためのPN組成物は、親油性又は疎水性成分、1つ以上の両親媒性乳化剤、極性液体担体、及び1つ以上の電解質を含む。両親媒性乳化剤は、極性液体担体によって囲まれた親油性コアを有する親油性若しくは疎水性物質担持ミセル(LM)並びに/又は脂質二重層及び親水性内部(又はコア)を含有するリポソームを形成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、電子顕微鏡によって決定される場合、1~500nm、1~400nm、1~300nm又は1~200nmの直径を有するLM及びリポソームを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、(1)電子顕微鏡によって決定される場合、30~500nm、30~400nm、30~300nm、30~200nm、30~150nm、30~120nm、30~100nm、30~80nm、30~500nm、30~400nm、30~300nm、30~200nm、30~150nm、30~120nm、30~100nm、30~80nm、40~500nm、40~400nm、40~300nm、40~200nm、40~150nm、40~120nm、40~100nm、40~80nm、50~500nm、50~400nm、50~300nm、50~200nm、50~150nm、50~120nm、50~100nm、50~80nm、100~500nm、100~400nm、10~300nm、100~200nm、100~150nm又は100~120nmの直径を有するLMと、(2)電子顕微鏡によって決定される場合、1~30nm、1~25nm、1~20nm、1~15nm、1~10nm、3~30nm、3~25nm、3~20nm、3~15nm、3~10nm、5~30nm、5~25nm、5~20nm、5~15nm、5~10nm、1~30nm、7~25nm、7~20nm、7~15nm、7~10nm、10~30nm、10~25nm、10~20nm又は10~15nmの直径を有するリポソームとを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、電子顕微鏡によって決定される場合、1~100nm、1~80nm、1~50nm、1~40nm、1~30nm、1~25nm、1~20nm、1~15nm、1~10nm、1~5nm、5~100nm、5~80nm、5~50nm、5~40nm、5~30nm、5~25nm、5~20nm、5~15nm、5~10nm、10~100nm、10~80nm、10~50nm、10~40nm、10~30nm、10~25nm、10~20nm、15~100nm、15~80nm、15~50nm、15~40nm、15~30nm、15~25nm、15~20nm、20~100nm、20~80nm、20~50nm、20~40nm、20~30nm、20~25nm、25~100nm、25~80nm、25~50nm、25~40nm、25~30nm、30~100nm、30~80nm、30~50nm、30~40nm、40~100nm、40~80nm、40~50nm、50~100nm、50~80nm又は80~100nmの平均粒径を有するナノ粒子(ミセル及びリポソームの両方を含む)を含む。いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、電子顕微鏡によって決定される場合、16~18nm、15~19nm又は14~20nmの平均粒径を有するナノ粒子を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、例えばマルバーン・ゼータサイザー・モデル又はナノZSを使用した動的光散乱によって決定される場合、10~300nm、10~200nm、10~150nm、10~120nm、10~100nm、10~90nm、10~70nm、10~50nm、10~30nm、30~300nm、30~200nm、30~150nm、30~120nm、30~100nm、30~90nm、30~70nm、30~50nm、50~300nm、50~200nm、50~150nm、50~120nm、50~100nm、50~90nm、50~70nm、70~300nm、70~200nm、70~150nm、70~120nm、70~100nm、70~90nm、80~300nm、80~200nm、80~150nm、80~120nm、80~100nm、80~90nm、90~300nm、90~200nm、90~150nm、90~120nm、90~100nm、100~300nm、100~200nm、100~150nm、100~120nm、120~300nm、120~200nm、120~150nm、150~300nm、150~200nm又は200~300nmの平均直径を有するナノ粒子(ミセル及びリポソームの両方を含む)を含む。いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、92~96nm、90~98nm又は85~105nmの平均粒径を有するナノ粒子を含む。
【0064】
親油性又は疎水性成分は、極性液体担体中に分散されて、極性外面と親油性若しくは疎水性成分及び/又は他の疎水性分子で満たされた内部疎水性空間とを有する単層ミセルと、極性外面及び内部親水性空間を有する二重層リポソームとを含有するナノエマルジョンを形成する。酸素及び一酸化窒素(NO)などの疎水性ガスは、水又は他の水性環境と比較して、ミセルの脂質コアに優先的に溶解するので、本出願のPN組成物は、酸素及び他の疎水性ガスを身体組織に運ぶ能力を提供する。
【0065】
親油性又は疎水性コア中の疎水性ガスの溶解度は、これらのガスの組織への取込み及び輸送を促進する。内因的に生成されたガスである一酸化炭素、一酸化窒素及び硫化水素も、血管緊張及びアポトーシス過程の調節のためにエマルジョン中に運ばれ得る。
【0066】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、好気的代謝を促進する酸素化PN組成物である。いくつかの実施形態では、PN組成物は、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~5、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~50、10~40、10~30、10~20、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~40、20~30、25~50、25~40、25~30、30~50、30~40又は40~50mlのO2/100mlのPN組成物の酸素含有量を有する酸素化PN組成物である。
【0067】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~5、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~50、10~40、10~30、10~20、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~40、20~30、25~50、25~40、25~30、30~50、30~40又は40~50mlのNO/100mlのPN組成物の量でNOを含む。
【0068】
キセノン及びアルゴンは、発作などの病的状態において脳を保護することができる疎水性ガスである。いくつかの実施形態では、PN組成物は、1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~5、1~2、2~50、2~40、2~30、2~20、2~10、2~5、5~50、5~40、5~30、5~20、5~10、10~50、10~40、10~30、10~20、15~50、15~40、15~30、15~20、20~50、20~40、20~30、25~50、25~40、25~30、30~50、30~40又は40~50mlのO2/100mlのPN組成物の量でXe又はAr又は両方を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、本出願のPN組成物は、アポトーシスの阻害剤(例えば、アポトーシス阻害ペプチドであるZ-VAD-FMY)、ミトコンドリア完全性の保護剤(例えば、ミトコンドリア内孔開口の阻害剤であるシクロスポリンA)、ジアシルグリセロール若しくは環状GMPなどのシグナル伝達の調節剤、又はコエンザイムQ10などの抗酸化剤をさらに含む。
【0070】
30nm未満の平均直径を有するリポソームを有するPNを使用する場合、リポソームは内皮細胞層を横切り、間質腔に入ることができる。そのようなリポソームは、血管空間の透過性が増加していない状況において、又は親油性若しくは疎水性メディエーターの細胞吸収を促進するために、又は細胞内機構を有利に調節し得る分子若しくは細胞成分の侵入を促進するために使用されてもよい。
【0071】
特定の場合には、本出願のPN組成物は、浸透力を発揮し、プロスタグランジン、一酸化窒素、ロイコトリエン及びトロンボキサンなどの組織傷害のメディエーター、並びに血小板活性化因子などの他の親油性又は疎水性メディエーターを吸収することができる。したがって、場合によっては、本出願のPNは、MODS患者によって産生される毒性分子を吸収することができる。例えば、腸及び胸管リンパ節で産生されるリンパ因子は、急性肺傷害及び赤血球変形能をもたらす場合がある。他の毒性分子には、ロイコトリエン、プロスタグランジン、一酸化窒素、エンドトキシン及び腫瘍壊死因子(TNF)が含まれるが、これらに限定されない。PN組成物中のPNは、親油性又は疎水性化学メディエーターの効果的な吸収を可能にする。他の場合には、PNに、エンドトキシンに対する抗体などの毒性化学メディエーターに対するアンタゴニストを充填してもよい。
【0072】
例えば毛細血管漏出によって引き起こされる血管壁透過性の増加を有するMODS患者では、上記のリン脂質ナノ粒子(PN)のサイズが小さいことにより、さもなければより大きな構造によって制限されるであろう間質腔へのそれらの進入が容易になる。毛細血管漏出は、内皮細胞の死及び好中球の作用によって引き起こされる。これは、IL-1及びTNFなどのサイトカイン並びに一酸化窒素によって媒介される。好中球は、損傷した内皮細胞に接着し、活性酸素種及びミエロペルオキシダーゼなどの細胞壁損傷酵素を放出する。PNは、毛細血管漏出を介して間質に入り、例えば間質腔内の抗炎症効果を提供することができる。
【0073】
好ましくは、PN組成物は、室温(例えば、25℃)又は5℃で少なくとも3日間、7日間、2週間、4週間、12週間、20週間、180日間、30週間、40週間、1年間又はそれ以上の期間安定なLM及び/又はリポソームを含むように製剤化される。安定性は、ミセル直径の変化を測定することによって決定してもよい。不安定なエマルジョンは、合体してより大きな直径のミセルを形成するミセルを有するであろう。特定の好ましい実施形態では、PN組成物は、室温で少なくとも4週間安定である。
【0074】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、5%~40%(w/v)の量の大豆油及び0.1%~18%(w/v)の量のレシチンから形成される。いくつかの実施形態では、PN組成物は、50~200mMの最終濃度のNaClをさらに含む。いくつかの実施形態では、PN組成物は、1~5%の量のグリセリンをさらに含む。一実施形態では、PN組成物は、10%(w/v)の大豆油、0.6%(w/v)の卵レシチン、1.13%(w/v)のグリセリン及び77mMのNaClを含む。別の実施形態では、PV組成物は、20%(w/v)の大豆油、1.2%(w/v)の卵レシチン及び2.25%(w/v)の卵レシチンを含む。別の実施形態では、PV組成物は、20%(w/v)の大豆油、1.2%(w/v)の卵レシチン及び2.25%(w/v)の卵レシチン及び77mMのNaClを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、組成物は、10%~40%(w/v)、好ましくは15%~35%の量の大豆油、6%~18%(w/v)、好ましくは10%~15%の量のレシチン、電解質としての塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウムであって、総電解質組成が50mM~200mMである、塩化ナトリウム及び乳酸ナトリウム、0.1mM~10mMの量のヒスチジン、並びに水から、レシチンが、(1)水溶液中に親油性又は疎水性コアを有する脂質担持ミセルであって、得られたミセルは、動的光散乱によって決定される場合、70~150nm、好ましくは90nm~120nmの平均直径を有し、室温で少なくとも4週間安定である、ミセルと、(2)電子顕微鏡によって決定される場合、1~25nmの範囲の直径を有するリポソームとを形成するように形成される。
【0076】
別の実施形態では、PN組成物は、10~40%(w/v)の大豆油及び6~18%(w/v)の卵レシチン又は大豆レシチンを含む。いくつかの実施形態では、PN組成物は、0.6%(w/v)のNaCl、0.385%(w/v)の乳酸Na(L)及び0.155%(w/v)のヒスチジンをさらに含む。いくつかの実施形態では、PN組成物は、20~30%(w/v)の大豆油、12%(w/v)の卵レシチン又は大豆レシチン、0.6%(w/v)のNaCl、0.385%(w/v)の乳酸Na(L)及び0.155%(w/v)のヒスチジンを含む。
【0077】
別の実施形態では、PN組成物は、20%(w/v)の大豆油、12%(w/v)の卵レシチン又は大豆レシチン、0.6%(w/v)のNaCl、0.385%(w/v)の乳酸Na(L)及び0.155%(w/v)のヒスチジンを含み、PN組成物は、動的光散乱によって測定される場合、80~120nmの平均直径を有するナノ粒子(リポソーム及びミセルを含む)を形成する条件下で調製される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、電子顕微鏡によって測定される場合、1~25nm又は7~20nmの範囲の直径を有するリポソームと、電子顕微鏡によって測定される場合、30~130nm又は40~100nmの範囲の直径を有するミセルとを含む。
【0078】
別の実施形態では、PN組成物は、30%(w/v)の大豆油、12%(w/v)の卵レシチン又は大豆レシチン、0.6%(w/v)のNaCl、0.385%(w/v)の乳酸Na(L)及び0.155%(w/v)のヒスチジンを含み、PN組成物は、動的光散乱によって測定される場合、80~120nmの平均直径を有するナノ粒子(リポソーム及びミセルを含む)を形成する条件下で調製される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、電子顕微鏡によって測定される場合、1~25nm又は7~20nmの範囲の直径を有するリポソームと、電子顕微鏡によって測定される場合、30~130nm又は40~100nmの範囲の直径を有するミセルとを含む。
【0079】
チア豆、カボチャ種子又は他の源からの油などの他の油を使用してもよい。特定の実施形態では、上記のPN組成物は、ミセルの形成後にPN組成物に添加される、約2~40%(w/v)、約2~20%(w/v)、約4~10%(w/v)、又は約5%(w/v)のアルブミン若しくはアルブミンポリマー又はアミノ酸若しくはペプチドとコンジュゲートされたアルブミンポリマーをさらに含んでもよい。他の実施形態では、疎水性又は親水性成分は、赤血球ゴースト内に担持される。
【0080】
特定の実施形態では、LMは、PN組成物の10~40%(w/w)を構成し、リポソームは、PN組成物の5~30%(w/w)を構成する。いくつかの実施形態では、LMは、大豆油を使用して作製され、リポソームは、大豆油の抗炎症効果よりも大きい抗炎症効果を有するチア豆油を使用して作製される。
【0081】
特定の実施形態では、本出願のPN組成物は、大豆油、チア豆油及び藻類油からなる群から選択される親油性又は疎水性成分、リン脂質及びα-ホスファチジルコリンからなる群から選択される乳化剤、並びに0.2~20mM、0.5~10mM、0.5~5mM又は0.5~2mMの最終濃度のアミノ酸又はn-アセチルアミノ酸を含む。
【0082】
特定の実施形態では、PN組成物は、0.001~10mM、0.01~10mM、0.1~10mM、0.2~10mM、0.5~10mM、1~10mM、2.5~10mM、5~10mM又は7.5~10mMの最終アミノ酸濃度を有する。特定の実施形態では、PN組成物は、0.001、0.01、0.1、0.2、0.5、1、2.5、5、7.5又は10mMの最終アミノ酸濃度を有する。乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)は、約1:400~約1:1、好ましくは約1:200~約1:50の範囲であってもよい。一実施形態では、乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)は、約1:100である。別の実施形態では、乳化剤:親油性又は疎水性成分比(w/w)は、約1.2:100である。
【0083】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、リポソームから実質的になり、大豆油などの親油性又は疎水性成分を含まない。
【0084】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、LM及び/又はリポソーム中に1つ以上の医薬品有効成分又は薬剤(例えば、核酸、タンパク質、小分子薬など)を含む。医薬品有効成分又は薬剤は、LM若しくはリポソームの親油性若しくは疎水性コア又はリポソームの親水性コアに組み込むことができる。
【0085】
一実施形態では、PN組成物は、大豆油、卵リン脂質、及び0.1フェムトモル(fM)~10mMの最終濃度でフェムトモル濃度又はそれを超える濃度で作用するアミノ酸、ベータ-エンドルフィン又は他の調節剤を含む。
【0086】
本出願のPN組成物は、ヘモグロビン、ヘモグロビンの誘導体、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンの誘導体を含まない。本明細書で使用される場合、組成物がいずれのヘモグロビン、ヘモグロビンの誘導体、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンの誘導体も含有しない場合、又は組成物がヘモグロビン、ヘモグロビンの誘導体、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンの誘導体を0.1%w/v未満のレベルで含有する場合、組成物は「ヘモグロビン、ヘモグロビンの誘導体、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンの誘導体を含まない」である。
【0087】
本出願のPN組成物は、典型的にはCa++、K+、Mg++及びAl+++を含まない。特定の実施形態では、Ca++及びK+は、使用直前(例えば、使用前24時間以内)にPN組成物に添加される。他の実施形態では、Ca++はPN組成物と予め混合される。Al+++は骨、脳、造血、ヘム合成、グロブリン合成、鉄の吸収及び代謝、並びに胎児の発育に対して毒性であるため、すべての油及び他の成分は可能な限り最小量のAl+++を有さなければならない。特定の実施形態では、PN組成物は、25mg/l、20mg/l、10mg/l又は5mg/l未満の濃度のAl+++を含有する。他の実施形態では、PN組成物はAl+++を含まない、すなわち従来の方法では検出できない。
【0088】
特定の実施形態では、本出願のPN組成物中のミセルは、いかなる種類の粒子にも封入されていない自由移動ミセルである。さらに、ミセルの壁は、ミセルがPN組成物と接触する組織の細胞膜と容易に併合することができるように、両親媒性乳化剤分子の単層又は二重層のいずれかで構成される。さらに、本出願のPN組成物中のミセルは、ヘモグロビン、ヘモグロビンの誘導体、パーフルオロカーボン及びパーフルオロカーボンの誘導体を含まない。
【0089】
親油性又は疎水性成分
本明細書で使用される場合、「親油性成分」という用語は、天然に存在するか、又は天然に存在しない脂溶性材料を指す。親油性成分の例としては、脂肪アシル、グリセロ脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、ポリケチド、非天然脂質(複数可)、カチオン性脂質(複数可)、両親媒性アルキルアミノ酸誘導体、アジアルキルジメチルアンモニウム、ポリグリセロールアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、トリ-n-オクチルアミン、ホウ酸、トリス(3,5-ジメチル-4-ヘプチル)エステル、トリグリセリド、ジグリセリド並びに他のアシルグリセロール、例えばテトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロール、ヘプタグリセロール、オクトグリセロール、ノナグリセロール及びデカグリセロール、疎水性ペプチド、疎水性多糖類、シリコーン、リポペプチド、シクロペプチド並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、親油性又は疎水性成分は、大豆油、チア豆油又は藻類油を含む。
【0090】
一実施形態では、親油性成分は大豆油である。親油性成分はまた、高濃度の抗炎症性オメガ3脂肪酸を有するチア豆に由来してもよい。大豆油は、血栓形成性及び凝血促進性であり、したがって、凝固が望まれる場合に好ましいであろう。出血がもはや問題ではなくなった後、オメガ3脂肪酸が豊富な油は、それらの抗血栓形成特性のために好まれるであろう。オメガ3脂肪酸が豊富な油には、チア油、藻類油、カボチャ油、亜麻仁油又は魚油が含まれるが、これらに限定されない。
【0091】
特定の実施形態では、親油性又は疎水性成分は、シス又はトランス配置の1つ以上のアルケニル官能基を有する不飽和脂肪酸を含む。シス配置は、隣接する水素原子又は他の基が二重結合の同じ側にあることを意味する。トランス配置では、これらの部分が二重結合の異なる側にある。二重結合の剛性はその立体配座を凍結させ、シス異性体の場合、鎖を屈曲させ、脂肪酸の立体配座自由度を制限する。一般に、鎖が有する二重結合が多いほど、その柔軟性は低くなる。鎖が多くのシス結合を有する場合、鎖はその最も接近可能な立体配座で非常に湾曲する。例えば、1つの二重結合を有するオレイン酸は、その中に「ねじれ」を有するが、2つの二重結合を有するリノール酸は、より顕著な屈曲を有する。3つの二重結合を有するα-リノレン酸は、フック形状を好む。これの効果は、脂肪酸が脂質二重層中のリン脂質の一部であるか、又は脂質液滴中のトリグリセリドである場合などの制限された環境では、シス結合が脂肪酸を密に充填する能力を制限し、したがって膜又は脂肪の融解温度に影響を及ぼし得ることである。いくつかの実施形態では、親油性又は疎水性成分は、シス配置の1つ以上のアルケニル官能基を有する最大1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%(w/v)の不飽和脂肪酸(複数可)を含む。
【0092】
シス不飽和脂肪酸の例としては、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ペトロセリン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、セトレイン酸、ネルボン酸、キシメン酸(ximenic acid)及びルメプエン酸(lumepueic acid);α-リノレン酸、ステアリドン酸、エイコサテトラエン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサペンタエン酸及びドコサヘキサエン酸などのn-3系不飽和脂肪酸;リノール酸、リノエライジン酸、γ-リノレン酸、ビス-ホモ-γ-リノレン酸及びアラキドン酸などのn-6系不飽和脂肪酸;共役リノール酸及びα-エレオステアリン酸などの共役脂肪酸;ピノレン酸、シアドン酸、ジュニペリン酸及びコルンビン酸などの5位に二重結合を有する脂肪酸;上記以外の多価不飽和脂肪酸、例えば、ヒラゴン酸(hiragonic acid)、モロクチン酸、クルパノドン酸及びニシン酸(nishinic acid);イソ酪酸、イソ吉草酸、イソ酸及び抗イソ酸などの分岐脂肪酸;α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、ミコール酸及びポリヒドロキシ酸などのヒドロキシ脂肪酸;エポキシ脂肪酸;ケト脂肪酸;並びに環状脂肪酸が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、親油性又は疎水性成分は両親媒性分子も含む。
【0093】
親油性又は疎水性成分は、PN組成物の約1~80%、1~70%、1~60%、1~50%、1~40%、1~30%、1~20%、5~80%、5~70%、5~60%、5~50%、5~40%、5~30%、5~20%、10~80%、10~70%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、15~80%、15~70%、15~60%、15~50%、15~40%、15~30%、15~20%、20~80%、20~70%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、30~80%、30~70%、30~60%、30~50%、30~40%、40~80%、40~70%、40~60%、40~50%、40~80%、40~70%、40~60%、40~30%、50~80%、50~70%、50~60%、60~80%、60~70%又は70~80%(w/v)を構成してもよい。特定の実施形態では、親油性又は疎水性成分は、PN組成物の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%及び約35%(w/v)を構成する。いくつかの実施形態では、親油性又は疎水性成分は、PN組成物の0~35%、5~35%、10~35%、15~35%、20~35%、25~35%、30~35%、0~30%、5~30%、10~30%、15~30%、20~30%、25~30%、0~25%、5~25%、10~25%、15~25%、20~25%、0~15%、5~15%若しくは10~15%(w/v)、又は10%、15%、20%、25%、30%若しくは35%からなる群から選択される整数値を含む任意のパーセント範囲の組合せを含む。さらに他の実施形態では、親油性又は疎水性成分の上限及び/又は下限は、本明細書に記載の列挙された濃度のいずれかによって定義される。
【0094】
両親媒性乳化剤
両親媒性乳化剤は、その疎水性尾部がミセルの親油性又は疎水性コアにあり、その親水性末端が極性担体と接触している任意の両親媒性物質又は両親媒性分子であり得る。乳化剤の例は、卵リン脂質、純粋なリン脂質、又は両親媒性ペプチドである。
【0095】
本明細書で使用される場合、「両親媒性物質」という用語は、親水性及び親油性又は疎水性の両方の特性を有する化合物を指す。両親媒性物質の例としては、天然に存在する両親媒性物質、例えば、リン脂質、コレステロール、糖脂質、脂肪酸、胆汁酸及びサポニン、並びに合成両親媒性物質、例えばペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
リン脂質の例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、イソホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、卵黄レシチン、大豆レシチン及び水素添加リン脂質などの天然又は合成のリン脂質が挙げられる。
【0097】
糖脂質の例としては、グリセロ糖脂質及びスフィンゴ糖脂質が挙げられる。グリセロ糖脂質の例としては、ジガラクトシルジグリセリド(例えば、ジガラクトシルジラウロイルグリセリド、ジガラクトシルジミリストイルグリセリド、ジガラクトシルジパルミトイルグリセリド、ジガラクトシルジステアロイルグリセリド)及びガラクトシルジグリセリド(例えば、ガラクトシルジラウロイルグリセリド、ガラクトシルジミリストイルグリセリド、ガラクトシルジパルミトイルグリセリド及びガラクトシルジステアロイルグリセリド)が挙げられる。スフィンゴ糖脂質の例としては、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド及びガングリオシドが挙げられる。
【0098】
ステロールの例としては、コレステロール、コレステロールヘミスクシネート、3β-[N--(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール、エルゴステロール及びラノステロールが挙げられる。
【0099】
一実施形態では、乳化剤は、卵リン脂質又は卵黄レシチンを含む。別の実施形態では、乳化剤は、大豆レシチン又はアルファ-ホスファチジルコリンである。
【0100】
他の実施形態では、乳化剤は、PN組成物の0.1~60%、0.1~50%、0.1~40%、0.1~30%、0.1~20%、0.1~15%、0.1~10%、0.1~5%、0.1~2%、0.3~60%、0.3~50%、0.3~40%、0.3~30%、0.3~20%、0.3~15%、0.3~10%、0.3~5%、0.3~2%、0.6~60%、0.6~50%、0.6~40%、0.6~30%、0.6~20%、0.6~15%、0.6~10%、0.6~5%、0.6~2%、2~60%、2~50%、2~40%、2~30%、2~20%、2~15%、2~10%、2~5%、6~60%、6~50%、6~40%、6~30%、6~20%、6~15%、6~10%、10~60%、10~50%、10~40%、10~30%、10~20%、10~15%、15~60%、15~50%、15~40%、15~30%、15~20%、20~60%、20~50%、20~40%、20~30%、30~60%、30~50%、30~40%、40~60%、40~50%又は50~60%(w/v)を構成してもよい。特定の実施形態では、乳化剤は、PN組成物の約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約18%、約20%(w/v)、又はこれらの列挙された整数のいずれか2つの間の任意の他の範囲のレベルで存在する。他の実施形態では、乳化剤は、PN組成物の約7~9%、9~11%、11~13%、13~15%、15~17%、17~19%、10~14%、9~15%若しくは8~16%(w/v)、又はこれらの列挙された整数のいずれか2つの間の任意の他の範囲のレベルで存在する。さらに他の実施形態では、乳化剤の上限及び/又は下限は、本明細書に記載の列挙された濃度のいずれかによって定義される。
【0101】
特定の好ましい実施形態では、乳化剤は、上記の量又は範囲の1つの卵黄レシチン又は大豆レシチンなどのレシチンである。
【0102】
極性液体担体
極性液体担体は、脂質とエマルジョンを形成することができる任意の薬学的に許容される極性液体であり得る。「薬学的に許容される」という用語は、本出願の組成物又は医薬の製剤に使用するのに十分な純度及び品質を有し、動物又はヒトに適切に投与した場合に有害なアレルギー反応又は他の不都合な反応を引き起こさない分子実体及び組成物を指す。ヒト使用(臨床及び市販)及び獣医学的使用の両方が本出願の範囲内に等しく含まれるので、薬学的に許容される製剤は、ヒト使用又は獣医学的使用のいずれかのための組成物又は医薬を含むであろう。一実施形態では、極性液体担体は、水又は水系溶液である。別の実施形態では、極性液体担体は、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール及び極性シリコーン液体などの非水性極性液体である。
【0103】
水性溶液は、一般に、全血と等浸透性又はほぼ等浸透性の生理学的に適合性の電解質ビヒクルを含む。担体は、例えば、生理食塩水、生理食塩水-グルコース混合物、リンゲル液、乳酸加リンゲル液、ロックリンゲル液、クレブス-リンゲル液、ハルトマン平衡塩類溶液、ヘパリン加クエン酸ナトリウム-クエン酸-デキストロース溶液、並びにポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール及びエチレンオキシド-プロピレングリコール縮合物などの高分子血漿代替物であり得る。PN組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、充填剤及び塩などの他の成分をさらに含んでもよく、その選択は、利用される剤形、治療される状態、当業者の決定に従って達成されるべき特定の目的、及びそのような添加剤の特性に依存する。
【0104】
電解質
一実施形態では、本出願のPN組成物は、1つ以上の電解質を含む。本出願で使用される電解質には、典型的には、医薬目的に使用される様々な電解質が含まれる。電解質の例としては、ナトリウム塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、プロピオン酸ナトリウム、ヒドロキシ酪酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウム)、カリウム塩(例えば、塩化カリウム、酢酸カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸水素カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、プロピオン酸カリウム及びヒドロキシ酪酸カリウム)、カルシウム塩(例えば、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム及び酢酸カルシウム)、マグネシウム塩(例えば、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム及びアミノ酸マグネシウム塩)、アンモニウム塩(例えば、塩化アンモニウム)、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛及び酢酸亜鉛)、鉄塩(例えば、硫酸鉄、塩化鉄及びグルコン酸鉄)、銅塩(例えば、硫酸銅)及びマンガン塩(例えば、硫酸マンガン)が挙げられる。中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム、グリセロリン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム及び硫酸亜鉛が特に好ましい。
【0105】
カルシウム、ナトリウム、マグネシウム又はカリウムイオンの濃度は、典型的には、血漿中のそのようなイオンの通常の生理学的濃度の範囲内である。一般に、これらのイオンの所望の濃度は、カルシウム、ナトリウム及びマグネシウムの溶解した塩化物塩から得られる。ナトリウムイオンはまた、同様に溶液中にあるナトリウムの溶解有機塩に由来する場合がある。
【0106】
一実施形態では、電解質は、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム又はその両方を含む。
【0107】
特定の実施形態では、PN組成物は、約0.2~1%、0.3~0.9%、0.4~0.8%、0.5~0.7%又は約0.6%(w/v)のパーセント濃度の塩化ナトリウムを含む。
【0108】
別の実施形態では、医薬濃度は、50~150mM、70~130mM、80~120mM、90~110mM、95~100mM又は約97.4mMの濃度の塩化ナトリウムを含む。
【0109】
別の実施形態では、PN組成物は、約0.1~0.7%、0.2~0.6%、0.3~0.5%、0.35~0.45%、0.38~0.39%又は約0.385%(w/v)のパーセント濃度のL-乳酸ナトリウム、D-乳酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む。
【0110】
別の実施形態では、PN組成物は、10~60mM、20~50mM、30~40mM又は約34mMの濃度のL-乳酸ナトリウム、D-乳酸ナトリウム又はそれらの混合物を含む。
【0111】
一実施形態では、ナトリウムイオン濃度は、約70~180mM、90~170mM、70~160mM、100~160mM、110~150mM、120~140mM、125~135mM、131~133mM又は約131.4mMの範囲である。
【0112】
一実施形態では、カルシウムイオンの濃度は、約0.5~4.0mM、0.5~1.0mM、0.5~2mM、0.5~3mM、1~2mM、1~3mM、1~4mM、2~2.5mM、2~3mM、2~4mM、2.5~3mM又は3~4mMの範囲である。
【0113】
一実施形態では、マグネシウムイオンの濃度は、0~10mMの範囲である。別の実施形態では、マグネシウムイオンの濃度は、約0.3~0.45mM、0.3~0.35mM、0.3~0.4mM、0.35~0.4mM、0.35~0.4mM、0.35~0.4mM又は0.4~0.45mMの範囲である。本発明のPN組成物に過剰量のマグネシウムイオンを含まないことが最良であるが、それは、高いマグネシウムイオン濃度が心収縮活動の強度に悪影響を及ぼすためである。本発明の好ましい実施形態では、溶液は準生理学的量のマグネシウムイオンを含有する。
【0114】
一実施形態では、カリウムイオンの濃度は、0~5mEq/l K+(0~5mM)、好ましくは2~3mEq/l K+(2~3mM)の準生理学的範囲内である。したがって、PN組成物は、保存された輸血血液中のカリウムイオン濃度の希釈を可能にする。その結果、高濃度のカリウムイオン並びにそれによって引き起こされる潜在的な心不整脈及び心不全をより容易に制御することができる。準生理学的量のカリウムを含有するPN組成物はまた、対象の血液置換及び低温維持の目的にも有用である。
【0115】
一実施形態では、塩化物イオンの濃度は、50~200mM、50~150mM、70~180mM、70~130mM、80~170mM、80~120mM、90~160mM、90~110mM、95~150mM、95~100mM又は約97.4mMの範囲である。別の実施形態では、塩化物イオンの濃度は、110mM~125mMの範囲である。
【0116】
イオンの他の源には、ナトリウム塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、酢酸ナトリウム、グリセロリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、アミノ酸ナトリウム塩、プロピオン酸ナトリウム、3-ヒドロキシ酪酸ナトリウム及びグルコン酸ナトリウム)、カリウム塩(例えば、酢酸カリウム、グルコン酸カリウム、炭酸水素カリウム、グリセロリン酸カリウム、硫酸カリウム、乳酸カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、クエン酸カリウム、アミノ酸カリウム塩、プロピオン酸カリウム及び3-ヒドロキシ酪酸カリウム)、カルシウム塩(例えば、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム及び酢酸カルシウム)、マグネシウム塩(例えば、硫酸マグネシウム、グリセロリン酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム及びアミノ酸マグネシウム塩)、アンモニウム塩、亜鉛塩(例えば、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、グルコン酸亜鉛、乳酸亜鉛及び酢酸亜鉛)、鉄塩(例えば、硫酸鉄、塩化鉄及びグルコン酸鉄)、銅塩(例えば、硫酸銅)及びマンガン塩(例えば、硫酸マンガン)が含まれる。中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、乳酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム、グリセロリン酸カリウム、グルコン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、塩化コリン及び硫酸亜鉛が特に好ましい。
【0117】
PN組成物のガス運搬能力
ミセル及び/又は赤血球ゴーストなどの形態のPN組成物中の親油性又は疎水性成分は、PN組成物が純粋な水溶液よりも大量の親油性ガスを運ぶ能力を提供する。具体的には、親油性ガスは、PN組成物の親油性部分に溶解されて、親油性又は疎水性成分と、PN組成物の親油性又は疎水性部分に存在する場合がある任意の他の疎水性液体材料との均一な溶液を形成する。
【0118】
一実施形態では、親油性ガスは酸素である。酸素は、水よりも脂質に4.41倍可溶性である(Battionら、J.Amer.Oil Chem.Soc.1968、45:830-833)。したがって、より高い脂質含有量を有するPN組成物は、より低い脂質含有量を有するPN組成物よりも多くの酸素を運ぶことができるであろう。一実施形態では、PN組成物は、約1~80%(w/v)の脂質含有量を有する。他の実施形態では、PN組成物は、約10~80%(w/v)、20~60%(w/v)、約20~50%(w/v)、約20~40%(w/v)又は約20~25%(w/v)の脂質含有量を有する。さらに別の実施形態では、PN組成物は、約21.8%の脂質含有量を有する。特定の実施形態では、PN組成物は、通常の空気の存在下で親油性又は疎水性成分と極性液体成分とを混合することによって調製される。他の実施形態では、PN組成物は、通常の空気又は純酸素をPN組成物に所望の期間バブリングすることによってさらに酸素化される。気泡は空気塞栓の可能性のために循環中で望ましくないので、気泡トラップを追加して気泡を除去し、ミセルのコア、極性担体に可溶化されているか、又はタンパク質若しくは他の添加剤に付着しているガスのみを残す必要があろう。気泡の生成を回避するために、混合チャンバ内のPN組成物の穏やかな移動と組み合わせて、ガスで濃縮された雰囲気でミセルを平衡化することによって、ガスをミセルに充填してもよい。充填はまた、1気圧を超える圧力下で行い、続いて過剰なガスの放出を可能にするために圧力を解放してもよい。
【0119】
別の実施形態では、親油性ガスは、キセノン(Xe)又はアルゴン(Ar)である。別の実施形態では、親油性ガスは一酸化窒素(NO)である。別の実施形態では、親油性ガスは硫化水素(H2S)である。さらに別の実施形態では、親油性ガスは一酸化炭素(CO)である。
【0120】
一実施形態では、PN組成物は、ガス混合物(例えば、酸素、硫化水素、一酸化炭素及び/又は一酸化窒素の混合物)が充填されたミセルを含有する。別の実施形態では、PN組成物は、様々なガスが充填されたミセルの混合物を含有する。例えば、ミセルの混合物は、50%のNO充填ミセル及び50%のO2充填ミセルを含有してもよい。
【0121】
剛性の非平面分子
PN組成物は、剛性の非平面構造を有する分子をさらに含んでもよい。そのような分子は、ミセル構造の疎水性コア内にガス分子のより大きな不規則性及びより多くの空間を作り出し、それによってミセルのガス運搬能力を改変する。そのような分子の例としては、(+)ナロキソン、(+)モルヒネ及び(+)ナルトレキソンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
一実施形態では、剛性の非平面構造を有する分子は、オピエート受容体アンタゴニスト(-)ナロキソンとは異なり、オピエート受容体に結合せず、(-)ナロキソンのように疼痛を増加させない(+)ナロキソンである。別の実施形態では、(+)ナロキソンは、10-5~10-4Mの濃度で使用される。別の実施形態では、(+)ナロキソンは、10-4M以上の濃度で使用される。
【0123】
蘇生時に、内皮細胞(EC)傷害及び毛細血管漏出(CL)を含むMODSをもたらし得る状態を受けている患者の組織において炎症過程が引き起こされる場合がある。敗血症及び他の疾患では、全身性炎症は、疾患によって引き起こされる可能性があり、同様の順序でEC傷害及びCLをもたらす。したがって、一実施形態では、(+)ナロキソンは、10-5~10-4Mで抗炎症効果を生じる濃度範囲で使用される(Simpkins CO、Ives N、Tate E、Johnson M.Naloxone inhibits superoxide release from human neutrophils(Life Sci.1985年10月14日;37(15):1381-6))。
【0124】
非平面構造を有する分子には、分岐構造を有する有機分子も含まれる。そのような分子の例としては、トリ-n-オクチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、ホウ酸、トリス(3,5-ジメチル-4-ヘプチル)エステル、金属錯体化及び非金属錯体化ジュウテロポルフィリンジメチルエステル及びそれらの誘導体、ヘキサフェニルシロール並びにシリコーンポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
血漿成分
PN組成物は、血漿成分をさらに含んでもよい。一実施形態では、血漿は動物血漿である。別の実施形態では、血漿はヒト血漿である。いかなる特定の科学理論にも拘束されることを望むものではないが、血液代替物の投与は、凝固因子の濃度を望ましくないレベルに希釈する可能性があると考えられる。したがって、酸素運搬成分の希釈剤として血漿を使用することにより、この問題が回避される。赤血球、白血球及び血小板が本質的に除去されることを条件として、当技術分野で公知の任意の手段によって血漿を収集することができる。好ましくは、自動血漿泳動装置を使用して得られる。血漿泳動装置は市販されており、例えば、限外濾過又は遠心分離によって血液から血漿を分離する装置を含む。Auto C、A200(Baxter International Inc.、イリノイ州ディアフィールド)製のような限外濾過に基づく血漿泳動装置は、凝固因子を保存しながら赤血球、白血球及び血小板を効果的に除去するので好適である。
【0126】
血漿は、その多くが当技術分野で周知である抗凝固剤を用いて収集してもよい。好ましい抗凝固剤は、シトラートなどのカルシウムをキレート化するものである。一実施形態では、クエン酸ナトリウムは、抗凝固剤として、0.2~0.5%、好ましくは0.3~0.4%、最も好ましくは0.38%の最終濃度で使用される。血漿は、新鮮、凍結、プール及び/又は滅菌のものでもよい。外因性源からの血漿が好ましい場合があるが、PN組成物の製剤化及び投与の前に対象から収集される自己血漿を使用することも本出願の範囲内である。
【0127】
天然源からの血漿に加えて、合成血漿を使用してもよい。本明細書で使用される「合成血漿」という用語は、少なくとも1つの血漿タンパク質を含む任意の水溶液を指す。血漿タンパク質に似たタンパク質を使用してもよい。
【0128】
膨張剤
一実施形態では、PN組成物は、脂質ミセルに加えて、膨張剤をさらに含有する。膨張剤は、毛細血管床の開窓を横切って身体の組織の間質腔に入ることによって循環からの喪失を防止するのに十分なサイズの分子から構成される。膨張剤の例としては、デキストラン(例えば、低分子量デキストラン)、デキストラン誘導体(例えば、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシデキストラン、カチオン性デキストラン及び硫酸デキストラン)、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、分岐、非置換又は置換デンプン、ゼラチン(例えば、修飾ゼラチン)、アルブミン(例えば、ヒト血漿、ヒト血清アルブミン、加熱ヒト血漿タンパク質及び組換えヒト血清アルブミン)、PEG、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、アカシアゴム、グルコース、デキストロース(例えば、グルコース一水和物)、オリゴ糖類(例えば、オリゴ糖)、多糖分解産物、アミノ酸及びタンパク質分解産物が挙げられるが、これらに限定されない。中でも、低分子量デキストラン、ヒドロキシエチルデンプン、変性ゼラチン、組換えアルブミンが特に好ましい。
【0129】
その抗酸化効果のために、アルブミンはまた、ミセルの成分との活性酸素種相互作用を最小限に抑えるために使用されてもよく、ミセル構造を安定化する可能性もある。一実施形態では、膨張剤は、約2%、5%、7%又は10%(w/v)のアルブミンである。別の実施形態では、膨張剤は、3万~5万ダルトン(D)の分子量範囲の多糖、例えばデキストランである。さらに別の実施形態では、膨張剤は、5万~7万Dの分子量範囲の多糖、例えばデキストランである。高分子量デキストラン溶液は、毛細血管からの漏出速度が低いため、組織の膨潤を防ぐのにより効果的である。
【0130】
一実施形態では、多糖の濃度は、正常なヒト血清の約28mmHgに近似する(ナトリウム、カルシウム及びマグネシウムの塩化物塩と一緒にした場合、ナトリウムの有機塩からの有機イオン及び上記のヘキソース糖の)コロイド浸透圧を達成するのに十分である。
【0131】
別の実施形態では、膨張剤は、PN組成物の約2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、10%、15%、20%、25%又は30%(w/v)の量のグリセロール又はマンニトールである。他の実施形態では、PN組成物は、グリセロール又はマンニトールを2~5%w/vの量で含む。
【0132】
晶質剤
PN組成物はまた、晶質剤を含んでもよい。晶質剤は、PN組成物の形態で、好ましくは800mOsm/lを超える容積モル浸透圧濃度を達成することができる、すなわちPN組成物を「高張性」にする任意の晶質であり得る。PN組成物中の好適な晶質及びそれらの濃度の例としては、6%w/vのデキストラン中の3%w/vのNaCl、7%のNaCl、7.5%のNaCl及び7.5%のNaClが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、PN組成物は、800~2400mOsm/lの容積モル浸透圧濃度を有する。
【0133】
抗炎症剤及び免疫調節剤
一実施形態では、本出願のPN組成物は、抗炎症剤又は免疫調節剤をさらに含む。活性酸素種を阻害することが示される抗炎症剤の例としては、ヒスチジン、アルブミン、(+)ナロキソン、プロスタグランジンD2、フェニルアルキルアミンクラスの分子が挙げられるが、これらに限定されない。他の抗炎症化合物及び免疫調節薬としては、インターフェロン;ベタセロン、β-インターフェロンを含むインターフェロン誘導体;イロプロスト、シカプロストを含むプロスタン誘導体;コルチゾール、プレドニゾロン、メチル-プレドニゾロン、デキサメタゾンを含む糖質コルチコイド;シクロスポリンA、メトキサレン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートを含む免疫抑制剤;ジロートン、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含むリポキシゲナーゼ阻害剤;ロイコトリエンアンタゴニスト;ACTH及びその類似体を含むペプチド誘導体;可溶性TNF受容体;抗TNF抗体;インターロイキン又は他のサイトカインの可溶性受容体;インターロイキン又は他のサイトカインの受容体に対する抗体、T細胞タンパク質;並びに単独で又は組み合わせて投与されるカルシポトリオール及びその類似体が挙げられる。
【0134】
炭水化物及びアミノ酸
PN組成物は、炭水化物又は炭水化物の混合物を含有してもよい。好適な炭水化物には、単純なヘキソース(例えば、グルコース、フルクトース及びガラクトース)、マンニトール、ソルビトール又は当技術分野で公知の他のものが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、PN組成物は、ヘキソースの生理学的レベルを含む。「ヘキソースの生理学的レベル」は、2mM~50mMのヘキソース濃度を含む。一実施形態では、PN組成物は、5mMグルコースを含有する。時には、細胞に栄養を提供するためにヘキソースの濃度を高めることが望ましい。したがって、ヘキソースの範囲は、栄養のための最小限のカロリーを提供するために必要に応じて約50mMまで拡大してもよい。
【0135】
他の好適な炭水化物には、医薬目的に使用される様々な糖類が含まれる。糖類の例としては、キシリトール、デキストリン、グリセリン、スクロース、トレハロース、グリセロール、マルトース、ラクトース及びエリスリトールが挙げられる。
【0136】
PN組成物は、1つ以上のアミノ酸及び/又は1つ以上のオリゴペプチドを含有してもよい。好適なアミノ酸には、アラニン、アルギニン、アスパルタート、アスパラギン、システイン、グルタマート、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、バリン及び2-アミノペンタエン酸が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、アミノ酸は、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン及びシステインからなる群から選択される。別の実施形態では、PN組成物は、アポトーシスを防止することが知られている1つ以上のアミノ酸を含む。そのようなアミノ酸の例としては、グルタミン、グリシン、プロリン及び2-アミノペンタエン酸が挙げられる。
【0137】
アミノ酸は、0.1fM~200mM、0.1fM~100pM、100pM~10nM、10nM~10μM、0.01~200mM、0.2~50mM又は0.5~2mMの濃度範囲で使用してもよい。一実施形態では、アミノ酸は、1mMの濃度で使用される。
【0138】
緩衝剤
本出願のPN組成物は、流体のpHをpH7~8の生理学的範囲に維持するための生物学的緩衝剤をさらに含んでもよい。生物学的緩衝剤の例としては、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2-([2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]アミノ)グリシエタンスルホン酸(TES)、3-[N-トリス(ヒドロキシ-メチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシエチル]-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、トリス[ヒドロキシメチル]-アミノエタン(THAM)及びトリス[ヒドロキシルメチル]メチルアミノメタン(TRIS)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
一実施形態では、緩衝剤は、ヒスチジン、イミダゾール、イミダゾール環の両性部位を保持する置換ヒスチジン若しくはイミダゾール化合物、ヒスチジン若しくはグリシンを含有するオリゴペプチド(グリシルグリシンなど)又はそれらの混合物である。ヒスチジンはまた、活性酸素種を減少させ、細胞収縮を阻害することができる。(例えば、Simpkinsら、J Trauma.2007、63:565-572を参照)。ヒスチジン又はイミダゾールは、約1Mm、5Mm、10Mm、20Mm、30Mm、40Mm、50Mmの濃度で、又は約0.1Mm~約200Mm、1Mm~約100Mm、5Mm~約50Mm、5Mm~約20Mmの濃度範囲で、又は本明細書に列挙したヒスチジン濃度のいずれかの間の任意の他の範囲で使用してもよい。
【0140】
別の実施形態では、本出願のPN組成物は、インビボ生物学的Phを維持するために通常の生物学的成分を使用する。簡潔には、ラクタートなどのいくつかの生物学的化合物は、インビボで代謝され、他の生物学的成分と作用して動物において生物学的に適切なpHを維持することができる。生物学的成分は、低体温及び本質的に無血状態においてさえ、生物学的に適切なpHを維持するのに有効である。通常の生物学的成分の例としては、カルボン酸、その塩及びエステルが挙げられるが、これらに限定されない。カルボン酸は、RCOOXの一般構造式を有し、式中、Rは、炭素が置換されていてもよい1~30個の炭素を含有するアルキル、アルケニル又はアリール、分岐鎖又は直鎖であり、Xは、水素若しくはナトリウム若しくは酸素の位置で結合することができる他の生物学的に適合性のあるイオン置換基であるか、又は1~4個の炭素を含有する短い直鎖又は分岐鎖のアルキル、例えば、-CH3、-CH2CH3である。カルボン酸及びカルボン酸塩の例としては、乳酸塩及び乳酸ナトリウム、クエン酸塩及びクエン酸ナトリウム、グルコン酸塩及びグルコン酸ナトリウム、ピルビン酸塩及びピルビン酸ナトリウム、コハク酸塩及びコハク酸ナトリウム、並びに酢酸塩及び酢酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
凝固促進剤
出血を制御しない積極的な大量蘇生は、初期に形成された軟らかい血栓を破壊し、凝固因子を希釈することによって出血を悪化させ得る。特定の実施形態では、PN組成物は、1つ以上の凝固促進剤をさらに含んでもよい。凝固因子の例としては、第VII因子、トロンビン、血小板及びトラネキサム酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの因子は、天然源又は非天然源に由来するものであってもよい。特定の実施形態では、第7因子が70~150IU/kgの濃度でPN組成物に添加され、プロトロンビン複合体が15~40IU/kgの濃度でPN組成物に添加され、フィブリノーゲンが50~90mg/kgの濃度でPN組成物に添加される。天然由来又は合成の血小板又は血小板代替物を添加してもよい。
【0142】
抗酸化剤
特定の実施形態では、PN組成物は、1つ以上の抗酸化剤をさらに含んでもよい。抗酸化剤の例としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ロンガリット(CH2OHSO2Na)、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、システイン、塩酸システイン、ホモシステイン、グルタチオン、チオグリセロール、α-チオグリセリン、エデト酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸イソプロピル、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、チオグリコール酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、1,3-ブチレングリコール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムカルシウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、アミノ酸亜硫酸塩(例えば、L-リジン亜硫酸塩)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、パルミチン酸アスコルビル、ビタミンE及びそれらの誘導体(例えば、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、d-δ-トコフェロール、混合トコフェロール及びトロロックス)、グアヤク、ノルジヒドログアヤレチン酸(NDGA)、L-アスコルビン酸ステアラートエステル、大豆レシチン、パルミチン酸、アスコルビン酸、ベンゾトリアゾール及びペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]2-メルカプトベンズイミダゾールが挙げられるが、これらに限定されない。中でも、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ホモシステイン、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、グルタチオン及びトロロックスが好ましい。
【0143】
その他の成分
上記の成分に加えて、PN組成物は、ペニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、セファロスポリン、エリスロマイシン、アモキシシリン-クラブラナート、アンピシリン、テトラサイクリン、トリメトプリム-スルファメトキサゾール、クロラムフェニコール、シプロフロキサシン、アミノグリコシド(例えば、トブラマイシン及びゲンタマイシン)、ストレプトマイシン、サルファ薬、カナマイシン、ネオマイシン、ランドモノバクタムなどの抗生物質;抗ウイルス剤、例えば、塩酸アマンタジン、リマンタジン、アシクロビル、ファムシクロビル、ホスカルネット、ガンシクロビルナトリウム、イドクスウリジン、リバビリン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ペンシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、インターフェロンアルファ及びエドクスジン;塩酸テルビナフィン、ナイスタチン、アムホテリシンB、グリセオフルビン、ケトコナゾール、硝酸ミコナゾール、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール、安息香酸、サリチル酸、ボリコナゾール、カスポファンギン及び硫化セレンなどの抗真菌剤;ビタミン、アミノ酸、アルコール及びポリアルコールなどの血管拡張剤、界面活性剤、腫瘍壊死因子(TNF)又はインターロイキンなどの有害なサイトカインに対する抗体、並びにプロスタグランジン、ロイコトリエン、プロオピオメラノコルチンフラグメント及び血小板活性化因子などの血管効力(vascular potency)のメディエーター及び免疫調節剤を含むがこれらに限定されない他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0144】
特定の実施形態では、PN組成物は、乳酸イオン又はグルタミン酸イオンなどの有益なアニオンをさらに含有してもよい。高張性ラクタート含有組成物は、急性血行動態障害を有する患者における脳浮腫の軽減に有効であることが分かっている。一実施形態では、PN組成物は、250~2400Mmの乳酸又はラクタートを含有する。別の実施形態では、PN組成物は、250~2400Mmの乳酸又はラクタート及び2~10Mmのカリウムを含有する。
【0145】
特定の他の実施形態では、PN組成物は、置換カチオンを含有してもよい。例えば、PN組成物は、ナトリウムイオンを置換するためにコリンを含有してもよい。
【0146】
いくつかの他の実施形態では、PN組成物は、カリウム流出を防止することによってプログラム細胞死を阻害することができるカリウムチャネル遮断薬をさらに含む。
【0147】
特定の実施形態では、PN組成物は、抗癌薬並びに/又はCamp及びジアシルグリセロールなどの細胞内シグナル分子をさらに含有する。他の実施形態では、PN組成物は、小胞体、リボソーム及びミトコンドリアなどの1つ以上のオルガネラ又はオルガネラ成分を全体的又は部分的にさらに含有する。
【0148】
他の実施形態では、PN組成物は、赤血球、修飾赤血球又は血液の他の細胞成分と組み合わせてもよい。
【0149】
さらに他の実施形態では、PN組成物は、免疫応答を改変し、鎮痛を提供するために、β-エンドルフィン及びメラノサイト刺激ホルモン、エンケファリン又はオピエートなどのプロオピオメラノコルチンフラグメントをさらに含む。β-エンドルフィンを0.01~100nm、好ましくは0.1~10nm、より好ましくは約1nmの最終濃度で使用して、敗血症状態の好中球機能を調節してもよい(例えば、Simpkinsら、J Natl Med Assoc.1988、80:199-203)。
【0150】
さらに他の実施形態では、PN組成物は、精神疾患の治療又は精神疾患の予防のための1つ以上の向神経剤をさらに含む。
【0151】
PN組成物の調製
PN組成物は、親油性又は疎水性成分、乳化剤、水性担体及び任意の他の成分を混合してエマルジョンを形成することによって調製してもよい。一般的に使用される混合方法には、撹拌、振盪、均質化、振動、マイクロ流動化及び超音波処理が含まれるが、これらに限定されない。
【0152】
例示的なホモジナイザーは、APV2000ホモジナイザー(SPX Corporation)である。エマルジョンは、100nm未満のナノエマルジョンについては約15,000~20,000psi、又は約300nmのより大きなミセルエマルジョンについては約22,000~28,000psiの圧力設定で形成されてもよい。所望のサイズのミセルを生成するために、複数回(サイクル)の均質化が必要な場合がある。均質化サイクルの数は、製剤に応じて異なる場合があり、例えば、6サイクル、8サイクル、10サイクル、12サイクル、15サイクルを必要とする場合がある。
【0153】
好適な粒子分析器及び/又はゼータ電位分析器を使用して、ミセル組成物のサイズ及び安定性を評価及び監視してもよい。例示的な分析器には、マルバーン・ゼータサイザー・ナノZSが含まれ、これはサイズとゼータ電位の両方の測定値を提供することができる。
【0154】
一実施形態では、PN組成物は、上記の成分からの予め形成された脂質エマルジョンを水性担体と混合することによって形成される。さらに、PN組成物は、赤血球ゴースト内に担持され得る。具体的には、エマルジョンは、親油性ガスがエマルジョンの親油性又は疎水性部分に溶解することを可能にするが、ガス塞栓のリスクを高める可能性があるマイクロバブルを形成しないように調製されるべきである。
【0155】
特定の実施形態では、アルブミン若しくはアルブミンポリマー、又はアミノ酸若しくはペプチドとコンジュゲートされたアルブミンポリマーは、2~40%(w/v)、約2~20%(w/v)、約4~10%(w/v)又は約5%(w/v)の量でPN組成物に添加される。アルブミン若しくはアルブミンポリマー、又はアミノ酸若しくはペプチドとコンジュゲートされたアルブミンポリマーは、ミセルの形成後にPN組成物に添加される。一実施形態では、親油性又は疎水性成分、乳化剤、水性担体及び任意の他の非アルブミン成分を混合してエマルジョンを形成する。次いで、アルブミン、アルブミンポリマー、又はアミノ酸若しくはペプチドとコンジュゲートされたアルブミンポリマーを、所望の濃度でエマルジョンに溶解する。
【0156】
いくつかの実施形態では、パートA又はパートAとパートBの混合物に、使用前に酸素、一酸化窒素、一酸化炭素、キセノン、アルゴン、硫化水素、他の疎水性ガス又はこれらのガスの混合物を充填する。これらのガスは、最初のボーラス後に好気的代謝のための酸素を送達するため、MODSから保護するための最初の一酸化炭素ボーラスを提供するため、血管の狭窄若しくは閉塞を伴う血管疾患若しくは状態において血管を開くため、外傷性脳損傷若しくは発作の影響から保護するためのキセノン若しくはアルゴン、又は長期の組織保存を促進するための硫化水素を提供するために使用されてもよい。一酸化窒素充填ミセルはまた、降圧薬として使用されてもよい。パートA、パートB、又はパートAとパートBとの混合物のいずれも、オートクレーブ処理によって滅菌することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、凝固を促進する大豆油は、抗炎症性であり、凝固を減少させるチア豆油で置き換えられる。一実施形態では、大豆油を含むPN組成物は、出血が発生している注入の初期段階で使用される。チア豆油を含むPN組成物は、出血がもはや問題ではないときの注入の後期段階に使用される。
【0158】
いくつかの他の実施形態では、パートA中のグリセロールは、マンニトールで置き換えられる。他の実施形態では、卵リン脂質をα-ホスファチジルコリンで置き換えて、(卵リン脂質の卵タンパク質による汚染に起因する)潜在的なタンパク質汚染源及びアナフィラキシーを排除する。さらに他の実施形態では、レシピ2のパートBのアミノ酸は、N-アセチルアミノ酸で置き換えられる。一実施形態では、PN組成物は、非酸素化PN組成物である。本明細書で使用される場合、「非酸素化PN組成物」という用語は、大気中で調製され、任意の酸素化装置又は方法によって酸素を充填されない製剤を指す。
【0159】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、15~35%(w/v)の量の親油性又は疎水性成分、6%~18%(w/v)の量の両親媒性乳化剤、極性液体担体、及び1つ以上の電解質を含み、両親媒性乳化剤は、極性液体担体中に親油性又は疎水性成分を含む親油性又は疎水性コアを有する脂質担持ミセル(LM)を形成し、LMは、20~140nmの範囲の直径を有する。いくつかのさらなる実施形態では、PN組成物は、電子顕微鏡法によって測定される場合、30~140nm、30~130nm、30~120nm、30~100nm、30~90nm、30~80nm、30~70nm、40~140nm、40~130nm、40~120nm、40~100nm、40~90nm、40~80nm、50~140nm、50~130nm、50~120nm、50~100nm、50~90nm、50~80nm、50~70nm、60~140nm、60~130nm、60~120nm、60~100nm、60~90nm、60~80nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~110nm、80~100nm、100~140nm、100~130nm、100~120nm、100~110nm、120~140nm、120~130nm又は130~140nmの範囲の直径を有するLMを含む。
【0160】
いくつかのさらなる実施形態では、PN組成物は、電子顕微鏡によって測定される場合、1~30nm、1~25nm、1~20nm、1~15nm、1~10nm、3~30nm、3~25nm、3~20nm、3~15nm、3~10nm、5~30nm、5~25nm、5~20nm、5~15nm、5~10nm、7~30nm、7~25nm、7~20nm、7~15nm、7~10nm、10~30nm、10~25nm、10~20nm、10~15nm、15~30nm、15~25nm、15~20nm、20~30nm、20~25nm又は25~30nmの範囲の直径を有するリポソームをさらに含む。
【0161】
いくつかのさらなる実施形態では、PN組成物は、動的光散乱によって測定される場合、約70~160nm、70~150nm、70~140nm、70~130nm、70~120nm、70~100nm、70~90nm、80~160nm、80~150nm、80~140nm、80~130nm、80~120nm、80~100nm、80~90nm、90~160nm、90~150nm、90~140nm、90~130nm、90~120nm、90~100nm、90~98nm、92~96nm又は95~100nmの範囲の平均直径を有するナノ粒子(ミセル及びリポソームを含む)を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、電子顕微鏡によって測定される場合、30~500nmの範囲の直径を有するLMと、1~30nmの範囲の直径を有するリポソームとの混合物を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、LMとリポソームとの混合物を含み、すべての粒子の平均直径は、電子顕微鏡によって決定される場合、5~25nm、5~20nm、5~15nm、5~10nm、10~25nm、10~20nm、10~15nm、15~25nm、15~20nm又は20~25nmの範囲である。
【0164】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、約12%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約30~500nmの直径を有するLM及び約1~25nmの直径を有するリポソームを含む。いくつかの実施形態では、PN組成物は、約12%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約40~100nmの直径を有するLM及び約7~20nmの直径を有するリポソームを含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、約5~35%の大豆油及び約0.5~20%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約15~800nmの直径を有するLM及び約1~300nmの直径を有するリポソームを含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、約5~25%の大豆油及び約0.5~1.5%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約30~400nmの直径を有するLM及び約1~150nmの直径を有するリポソームを含む。
【0167】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、約5~25%の大豆油及び約0.5~1.5%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約30~400nmの直径を有するLM及び約1~150nmの直径を有するリポソームを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、約12%の卵レシチンを含み、電子顕微鏡によって決定される場合、約40~100nmの直径を有するLM及び約7~20nmの直径を有するリポソームを含む。
【0169】
いくつかの実施形態では、上記のPN組成物は、1~10%、1~8%、1~5%、1~3%、1~2%、5~10%、2~8%、2~5%、2~3%、3~10%、3~8%、3~5%、5~10%、5~8%又は8~10%(w/v)/の量のグリセリンをさらに含む。
【0170】
いくつかの実施形態では、上記のPN組成物は、50~200mM、50~150mM又は50~100mMの最終濃度のNaClをさらに含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、酸素、一酸化炭素、一酸化窒素又はキセノンを濃縮せずに大気下で調製される。
【0172】
特定の実施形態では、PN組成物は、臨床適用の前に親油性ガスを充填されてもよい。そのようなガスの例としては、酸素、キセノン、アルゴン、一酸化窒素、一酸化炭素、硫化水素が挙げられるが、これらに限定されない。ガスは、血管機能及び細胞性塞栓症の調節に十分な量で存在する。本明細書で使用される場合、「親油性ガスが充填されたPN組成物」は、PN組成物中のそのような親油性ガスの含有量を増加させるプロセスにかけられたPN組成物を指す。PN組成物には、親油性ガスをPN組成物に所望の期間バブリングすることによって、又は加圧下で親油性ガスの存在下でPN組成物を撹拌することによって、親油性ガスを充填してもよい。
【0173】
一実施形態では、PN組成物は、純酸素又は21%~100%(v/v)、好ましくは40%~100%(v/v)、より好ましくは60%~100%(v/v)、最も好ましくは80%~100%(v/v)の範囲の酸素含有量を有するガスを混合物に30秒以上、好ましくは1~15分間、より好ましくは1~5分間バブリングすることによって酸素化される。酸素を加圧下で添加し、続いて圧力を1気圧に下げてもよい。一実施形態では、PN組成物は、適用の直前に酸素化される。PN組成物は、マサチューセッツ州アンドーバーのPhilips Healthcareによって製造されたEvergo Portable Pulse Dose Oxygen concentratorなどの可搬式酸素タンク又は可搬式酸素濃縮器を使用して酸素化してもよい。
【0174】
別の方法は、添加されるガスで満たされた雰囲気でエマルジョンを平衡化させることであり得る。ほとんどの場合、ガス塞栓になり得る気泡を除去するために気泡トラップが必要となるであろう。特定の組成のPN組成物の平衡時間は、実験的に決定してもよい。
【0175】
いくつかの実施形態では、PN組成物は、酸素化脂質エマルジョンを含む。本明細書で使用される場合、「酸素化脂質エマルジョン」又は「酸素化PN組成物」という用語は、その中に含まれる酸素の総濃度が大気平衡条件で同じ液体中に存在するものよりも高くなるように酸素を吸収させられた特定のタイプのガス化脂質エマルジョン又はガス化流体を指す。
【実施例】
【0176】
以下の実施例は、本出願の方法を実施する方法の完全な開示及び説明を当業者に提供するために記載されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされてきたが、いくらかの実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に断りのない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0177】
実施例1:リン脂質ナノ粒子(PN)組成物の調製
パートAの調製
大豆油10%~20%=10~20グラム
卵黄リン脂質0.6%~12%=0.6~12グラム
水を最終容量100mlまで添加する
pH=8.0になるまで水酸化ナトリウムを添加する
超音波処理してリン脂質ナノ粒子を生成する
パートBの調製
NaCl0.6グラム
乳酸Na(L)0.385グラム
ヒスチジン0.155グラム
【0178】
パートAは単独で使用してもよく、又は使用24時間以内にパートBと混合してもよく、又は予め混合してもよい。いずれか又は両方のパートを凍結乾燥してもよく、使用時に水を添加することができる。いくつかの実施形態では、グリセリンを1.13%(w/v)又は2.25(w/v)の最終濃度で最終生成物に添加した。
【0179】
実施例2:PN組成物による患者AにおけるMODSの治療
【0180】
心臓移植に失敗した39歳の女性である患者AにおいてMODSが発症した。心室補助装置の使用後でさえ、患者は心停止を起こした。多臓器が機能不全であった。生存可能なレベルの酸素化を達成するために人工呼吸器を介して100%の酸素を必要とすることによって、肺の機能不全が明らかであった。心停止の開始及び自発収縮を回復させるためにエピネフリンを心臓に直接注射する必要性によって、心臓の不全が実証された。心停止に対処するために、患者の胸部を開いた。患者は腎不全のため尿排出がなかった。高用量のレボフェド(Levophed)を投与され、輸液ボーラス投与を受けているにもかかわらず、平均動脈圧(MAP)はわずか43mmHgであった。肺機能は、わずか132のP/F比によって示されるように重度に損なわれていた。P/Fが低いほど、また、血圧が低いほど、生存率は低い。
【0181】
患者に、30分間にわたって本出願のPN組成物500mlを与えた。他の介入は行わなかった。これは、43mmHgから69mmHgへのMAPの増加によって示されるように、肺機能の改善をもたらした。P/F比は132から235に増加した。
【0182】
実施例3:PN組成物による患者BにおけるMODSの治療
【0183】
69歳の女性である患者Bは、感染した足を有し、敗血症性ショックを発症し、これがMODSを引き起こした。肺は人工呼吸器による支持を必要とした。腎機能を透析によって支持した。患者は、心停止後に心不全を有していた。アルブミン及び生理食塩水のボーラス投与を受け、100マイクログラム/分のレボフェド(Levophed)、0.1単位/分のバソプレッシン及び30マイクログラム/分のエピネフリンである極めて高用量の昇圧薬を投与されていたにもかかわらず、患者のMAPはわずか39mmHgであった。人工呼吸器を使用しているにもかかわらず、患者のP/F比はわずか131であった。
【0184】
患者に、30分間にわたって本出願のPN組成物500mlを与えた。追加の介入なしで、患者のMAPは39mmHgから59mmHgに増加し、患者のP/F比は131から240に増加した。
【0185】
実施例4:PN組成物による患者CにおけるMODSの治療
【0186】
患者Cは65歳の女性であり、心膜腔への血液の貯留により心タンポナーデを発症して救急外来を受診した。これにより、心臓の拡張が著しく制限され、十分な血流を身体の残りの部分に送達することができなかった。心タンポナーデは2回の心停止エピソードをもたらし、心膜腔からの血液の穿刺排液を必要とした。これらの事象はMODSをもたらした。血圧及び酸素化をそれぞれ改善するための輸液ボーラス及びマスクによる酸素の失敗後、患者に人工呼吸器を装着し、昇圧薬を投与した。肺の機能不全が、低いP/F比によって確認された。腎不全はクレアチニンの増加に反映された。肝臓障害が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)に対するアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の比の増加によって示された。臓器の灌流不良が、ラクタートの上昇によって示された。患者に、32マイクログラム/分のレボフェド(Levophed)及び0.04単位/分のバソプレッシンである昇圧薬を投与した。
【0187】
患者に、120分間にわたって本出願のPN組成物765mlを与えた。PN組成物の投与を受けた後、患者のMAPは68mmHgから86mmHgに増加した。患者のP/F比は63から116に増加した。レボフェド(Levophed)の用量を32マイクログラム/分から10マイクログラム/分に減量した。表1は、PN注入の24時間後の患者の血液検査パラメータの改善を示す。クレアチニンの減少は、腎機能の改善が見られたことを示した。ASTはアスパラギン酸トランスアミナーゼであり、ALTはアラニンアミノトランスフェラーゼである。両方とも肝組織に存在する酵素である。AST/ALT比が高いほど、肝損傷の程度は悪化する。正常なAST/ALT比は1.0未満である。PN組成物後のこの比の減少は、肝機能の改善の指標である。ラクタートは、体内の組織の全体的な灌流の指標である。ラクタートが高いほど予後は悪くなる。PN組成物の注入後のラクタートの減少は、全体的な組織灌流の改善の指標である。トリグリセリドレベルは、血液中の脂質の量を示す。PN組成物の注入後、トリグリセリドレベルは109から増加し、注入の翌日には736mg/dLであった。トリグリセリド濃度は、経時的な血流中のPNレベルの変化の指標である。この上昇したトリグリセリドの有害作用は観察されなかった。この上昇の24時間後、トリグリセリドレベルは244mg/dLまで低下した。
【0188】
【0189】
これらの結果の期間中にPN組成物の注入の他に介入はなかった。測定値は、PN組成物の注入後に、心血管系、肺系、腎臓系及び肝臓系の改善が見られたことを示した。さらに、組織を通る全体的な血流の改善が見られた。
【0190】
実施例5:PN組成物による患者DにおけるMODSの治療
【0191】
患者Dは65歳の男性であり、検査によってCOVID-19の診断が確認された。患者はMAPの減少を有し、これは輸液によって逆転されなかった。患者の血圧を生存可能なレベルまで上昇させるために、昇圧薬が必要であった。患者は、輸液の注入後にMAPが増加しなかったときに敗血症性ショックの基準を満たした。患者の血圧は、11マイクログラム/分の昇圧薬レボフェド(Levophed)を投与されたにもかかわらず68mmHgであった。患者の肺の状態が著しく悪化し、患者は人工呼吸器を装着した。最大の人工呼吸器による支持にもかかわらず、患者の肺の状態は減少し続け、その結果、患者のPF比はわずか56であった。患者に2.4時間かけてPN組成物200mlを静脈内投与した。これにより、MAPが68mmHgから78mmHgに上昇した。患者のP/F比は56から199に増加した。
【0192】
7日後、依然として人工呼吸器を装着している間に、5マイクログラム/分のレボフェド(Levophed)及び0.04単位/分のバソプレッシンを投与すると、患者のP/F比は62に低下した。患者にPN組成物200mlを2.5時間与えた。これにより、血圧が67mmHgから70mmHgに上昇し、P/F比が62から191に上昇した。
【0193】
6日後、患者は依然として人工呼吸器を装着しており、バソプレッシンを0.04単位/分で用いてレボフェド(Levophed)を5マイクログラム/分投与した。P/F比は81まで低下した。患者に、10分間にわたってPN組成物400mlを与えた。これにより、P/F比は81から145に増加した。血圧は上昇し、その結果、患者は昇圧薬を完全に離脱することができた。昇圧薬を中止し、MAPは107mmHgであった。
【0194】
実施例6:PN組成物による患者EにおけるMODSの治療
【0195】
患者Eは臨床基準でCOVID-19と診断された62歳の男性であった。患者は、COVD-19を診断するための検査が利用可能になる前に来院した。患者は敗血症性ショック状態であった。患者はまた、多巣性肺炎及びグラム陽性球菌に陽性であった血液培養も有していた。血圧低下のために、患者に、レボフェド(Levophed)、バソプレッシン及びフェニレフリンである高用量の昇圧薬を投与した。これらの処置にもかかわらず、患者は心静止期心停止に陥った。Advanced Cardiac Life Supportプロトコルに従った。しかし、患者は応答しなかった。患者にPN組成物1000mlを与えた。この後、患者の血圧は67mmHgに上昇し、患者は昇圧薬を離脱することができた。患者の酸素要求量は、100%の吸気酸素から55%の吸気酸素に減少した。
【0196】
実施例7:PN組成物による患者FにおけるMODSの治療
【0197】
患者F#5は、COVID-19及び敗血症性ショックと診断された58歳の女性であった。患者は重症肺炎を患っていた。患者は人工呼吸器を装着していた。高用量の昇圧薬を投与されていたにもかかわらず、患者は心静止期心停止に陥った。患者は、Advanced Cardiac Life Supportプロトコルに応答しなかった。患者にPN組成物1000mlを与えるまで、患者の血圧は0であった。この注入後、患者の血圧は平均69mmHgまで上昇した。PN組成物の前に、100%の吸気酸素が与えられたにもかかわらず、患者の酸素飽和度は55%であった。PN組成物の注入後、患者の酸素要求量は55%に低下した。
【0198】
実施例8:水及びPN組成物中の一酸化窒素含有量
【0199】
500マイクロリットルのPN(20%の大豆油、1.2%の卵レシチン、2.25%のグリセリンを含有、動的光散乱による平均粒径400nm)を15mLバイアルに入れ、ヘリウム中100ppmの一酸化窒素をPNに2分間バブリングした。同じ方法を脱イオン水中の一酸化窒素の添加に使用した。試料流体に充填された一酸化窒素の定量には、連続サンプリング四重極質量分析計を使用した。パージ容器内の水を37℃に維持し、必要に応じて消泡溶液を含有させた。PN及び水中の充填された一酸化窒素の測定のために、100マイクロリットルの試料流体を装置のパージ容器に注入した。試料ガスは流体から迅速に放出され、パージ容器から質量分析計に向かってボーラスとして輸送された。検出器との試料ガス接触によって生成された信号を、Peakfit(Systat Software Inc.、イリノイ州シカゴ(米国))を使用して積分し、脱イオン水で得られた飽和値と比較した。各群で10回の測定を行った。取り込まれた一酸化窒素の体積を曲線下面積として決定した。平均値及び標準誤差は、PN及び水についてそれぞれ3.19×10-3±0.19×10-3及び2.12×10-3±0.17×10-3モル/リットルであり、20%PN中のNOの溶解度が水の溶解度の1.5倍であることを示している。PN及び水からの一酸化窒素のオフロードは、それぞれ約2秒で急速であった。
【0200】
得られたデータを以下の表2に示す。
【0201】
【0202】
図1に示すように、水(パネルA)と比較して、PNはより多くの一酸化窒素を取り込んだ(パネルB)。
図1に示す代表的な実験では、曲線下面積は、吸収された一酸化窒素の量と相関し、一酸化窒素の放出速度は、水からの放出と同様に急速である。この急速な放出は、PNが一酸化窒素の分布を非生存から生存にシフトさせることを可能にする。
【0203】
本明細書で使用される用語及び説明は、例示のみを目的として記載されており、限定を意味するものではない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に定義される本発明の趣旨及び範囲内で多くの変形が可能であり、それらの均等物では、特に明記しない限り、すべての用語が可能な限り最も広い意味で理解されるべきであることを認識するであろう。
【国際調査報告】