(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】バイポーラプレートアセンブリとバイポーラプレートアセンブリの使用と複数のバイポーラプレートアセンブリを具備する電解または燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20230510BHJP
H01M 8/0206 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0232 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/028 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0245 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0247 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0265 20160101ALI20230510BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20230510BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230510BHJP
C25B 9/07 20210101ALI20230510BHJP
【FI】
C25B9/00 A
H01M8/0206
H01M8/0232
H01M8/028
H01M8/0273
H01M8/0245
H01M8/0247
H01M8/2483
H01M8/0258
H01M8/0265
H01M8/0228
C25B1/04
C25B9/07
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559648
(86)(22)【出願日】2021-02-25
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021054724
(87)【国際公開番号】W WO2021197718
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020109430.2
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501188672
【氏名又は名称】フォルシュングスツェントルム ユーリッヒ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツヴァイガルト ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ホルトヴェルト セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ベーア ヴィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】フェーダーマン ディルク
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC01
4K021CA08
4K021CA09
4K021DB04
4K021DB05
4K021DB11
4K021DB16
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H126AA08
5H126AA12
5H126AA13
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126DD17
5H126EE11
5H126EE29
5H126EE31
5H126FF03
5H126GG02
5H126HH01
5H126JJ03
(57)【要約】
【要約】 本発明は、電解または燃料電池スタックを形成する為のバイポーラプレートアセンブリ(1)に、そしてバイポーラプレートアセンブリと、複数のバイポーラプレートアセンブリを備える電解または燃料電池スタックとの使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解または燃料電池スタックを形成する為のバイポーラプレートアセンブリ(1)であって、
陽極側(5)と陰極側(6)との間における液密シールの作成に適応するとともに、前記陽極および陰極側の両方に流体供給通路(10)と流体排出通路(11)とをそれぞれ備える金属製分離装置(2)と、
前記陽極および陰極側で前記分離装置(2)に隣接して配設される2つの金属製流動分配器ユニット(3)であって、前記分離装置(2)を介して供給される流体を前記流体供給通路(10)と前記流体排出通路(11)との間で分配するように各々が設計される流動分配器ユニット(3)と、
前記分離装置(2)に液密方式で接続されるとともに各々が前記流動分配器ユニット(3)の一方を液密方式で周方向に囲繞する金属製フレーム要素(4)であって、前記流体供給通路(10)に流体を供給するように設計される貫通孔(12)と、前記流体排出通路(11)を介して排出される流体を排出するように設計される貫通孔(12)とを有するフレーム要素(4)と、
を備えるバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項2】
前記分離装置(2)および前記フレーム要素(4)の各々が矩形の外周部を有して、前記外周部が特に合同であるように設計されることを特徴とする、請求項1に記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項3】
一方のフレーム要素(4)の全ての貫通孔(12)が他方のフレーム要素(4)の前記貫通孔(12)との整合状態で配置され、前記フレーム要素(4)の前記貫通孔(12)との整合状態で配置されて前記分離装置(2)の前記流体供給通路(10)および流体排出通路(11)と前記貫通孔を接続する貫通ホール(9)を前記分離装置(2)が備えることを特徴とする、請求項1または2に記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項4】
前記陽極側流体供給通路(10)と前記陽極側流体排出通路(11)とが互いに反対に配設されることと、前記陰極側流体供給通路(10)と前記陰極側流体排出通路(11)とが互いに反対に配設されることと、前記陽極側流体供給通路(10)と前記陰極側流体供給通路(10)とが互いに関して90°オフセットして配設されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項5】
前記流体供給通路(10)と前記流体排出通路(11)とが、前記分離装置(2)の前記陽極側および陰極側の表面に形成されて前記貫通ホール(9)から内向きに延在する凹溝の形で設けられることを特徴とする、請求項4に記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項6】
前記分離装置(2)が単一の分離プレートから成ることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項7】
互いに確実に接続される、特に互いにはんだ付けまたは溶接される2つの分離プレートを前記分離装置(2)が有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項8】
連続通過部を有する層、特にエキスパンドメタル、ファブリック、および/または、不織布の形の層で前記流動分配器ユニット(3)が製作されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの流動分配器ユニット(3)、特に両方の流動分配器ユニット(3)の前記通過部のサイズが前記分離装置(2)の方向に増大することを特徴とする、請求項8に記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項10】
前記分離装置(2)、および/または、前記流動分配器ユニット(3)の少なくとも一方、および/または、前記フレーム要素(4)が、耐腐食性金属で製作されるか、耐腐食性金属コーティングを備えることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項11】
前記分離装置(2)と前記流動分配器ユニット(3)と前記フレーム要素(4)とがともにはんだ付けまたは溶接されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項12】
特にはんだ付けまたは溶接によって、前記流動分配器ユニット(3)の一方に、好ましくは前記陽極側に配設される前記流動分配器ユニット(3)に、金属製ガス拡散層(8)が外部から装着されることを特徴とする、請求項1~11の1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)。
【請求項13】
電解または燃料電池スタックを形成する為の、請求項1~12のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)の使用。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1つに記載のバイポーラプレートアセンブリ(1)を複数備える電解または燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解または燃料電池スタックを形成する為のバイポーラプレートアセンブリに関する。さらに、本発明は、電解または燃料電池スタックを形成する為のこのようなバイポーラプレートアセンブリの使用に、そして複数のこのようなバイポーラプレートアセンブリを具備する電解または燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
膜電極ユニットとともに、バイポーラプレートは電解または燃料電池スタックの構造における中央コンポーネントである。両コンポーネントは反復ユニットをともに構築する。スタックでの反復ユニットの数により発電出力が決定される。
【0003】
水電解において、バイポーラプレートは多様なタスクを実施しなければならない。それぞれの電池レベルに給水を導入し、給水を電池表面にわたって可能な限り均質に分配し、水と水素または酸素との混合物を電池レベルから排出する。更に、バイポーラプレートにおいて電流が可能な限り均質に伝導されなければならない。バイポーラプレートは非常に高く均質な導電性を有するべきである。加えて、バイポーラプレートは、2つの隣接電池の陽極および陰極区画を気密方式で分離し、外部に対して気密状態であり(漏出率<10-6(ミリバールl/s)、外部に対する陽極および陰極区画の密閉を補助する。最後に、バイポーラプレートは隣接する膜電極ユニットへの機械的および電気的接合を提供する。
【0004】
燃料電池の用途について、タスクは類似していることが知られている。
【0005】
バイポーラプレートは本質的に出発物質に関して区別可能である。黒鉛または黒鉛/プラスチック複合体で製作されたバイポーラプレートと、金属で製作されたバイポーラプレートとが知られている。プレートレベルにおける媒体分配を実現する為に、周知のバイポーラプレートは概して、作動物質または流体が伝導される個別通路を収容する。そして流路の側面に位置する網目を介して膜電極アセンブリの機械的および電気的接触が達成される。特に、流動場としても知られるこれらの流動分配構造の挿入は、特殊な製造プロセスを必要とする。黒鉛系バイポーラプレートのケースにおいて、これらは射出成形と圧縮成形とフライス加工とを主に含む。金属製バイポーラプレートは概して、打抜き加工、例えば深絞りにより流動分配構造が導入される薄い箔から成る。チタンは、その機械的特性、耐腐食性、そして導電性により電解の為の金属材料として使用されることが多く、一方で耐腐食性の鋼は燃料電池用途に使用され得る。研究では、多孔性構造から成る流動分配構造が検査目的で時折使用される。
【0006】
従来のバイポーラプレートにおいて、アクティブ電池エリアの上方の流動分配構造はマクロ構造を有する。通路および網目の幅は1mmの範囲内にある。やはり、通路長さははるかに大きい。ガス拡散層の形の多孔層の中間層でも、アクティブ電池エリアにおける流動分配は均質でない。そして、電流密度および温度分布の非均質性がこれに付随する。そしてこれは、高温スポットによる損傷あるいは経年劣化を招きうる。
【0007】
さらに、個別通路構造は、作動条件が変化した時に柔軟性を有していない。通路高さおよび通路奥行は、例えば体積流量と温度と液体/気体比とにより規定される規定作動点について設計される。開始または停止プロセス、負荷変化、理論混合比の変化、またはその他により引き起こされるこの作動点からの偏差が生じると直ぐに、これらは流体の均一な分配および排出の問題を招きうる。そして流量分配器構造の変化は常に、かなりの技術的および/またはコスト的努力と関連している。製造の為に新たな工具が用意されなければならない。流動条件の動的変化のケースでは、この解決法すら失敗する。
【0008】
別の短所は、従来のバイポーラプレートの通路/網目構造ではバイポーラプレートと膜電極ユニットとの間に接触圧力の均一な分布が見られないことを意味するということである。通路のエリアで、接触圧力は網目のエリアよりかなり低い。これは電流導入または電流放出の間の電気抵抗の追加を招く。特に、その結果として関係する電池コンポーネントの間の接触抵抗が上昇する。
【0009】
多孔性構造を備える流動分配構造は、一定の多孔性を備える均質構造を使用し、マクロ分布は良好であるがミクロ分布は充分でない粗すぎる多孔性構造であるか、あるいは、反対の作用を持つ細かすぎる多孔性構造であるという短所を有する。実際の動作の為のシールは実現され得ない、あるいは、複雑なプラスチック製のフレーム・シールの組み合わせを利用することによってのみ実現され得る。これらは多数の個々のコンポーネントから成り、これは実用的な電池スタック設計が実現可能ではないか、困難を伴ってのみ可能となることの理由である。非常に多数の個々のコンポーネントを備えるスタック設計は、漏出または他の不具合の確率も高める。さらに、1つの生産部品の陽極側と陰極側について多孔性構造を備えるバイポーラプレートを製造することは可能でない。多孔性分配器構造は陽極および陰極の為のモノポーラプレートとしてのみ利用可能である。陰極および陽極への水の供給および除去が電池スタックで行われ得る多孔性分配器構造を備えるバイポーラプレートは、知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この先行技術に基づいて、代替的なバイポーラプレートアセンブリを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この問題を解決する為に、本発明は、陽極側と陰極側との間における液密シールの作成に適応するとともに陽極側と陰極側の両方に流体供給通路と流体排出通路とをそれぞれ備える金属製分離装置と、陽極および陰極側で少なくとも1つの分離装置に隣接して配設される2つの金属製流動分配器ユニットであって、少なくとも1つの分離装置を介して供給される流体を流体供給通路と流体排出通路との間で分配するように各々が設計される流動分配器ユニットと、分離装置に液密方式で接続されるとともに流動分配器ユニットの一方を液密方式で各々が周方向に囲繞する金属製フレーム部材であって、流体供給通路へ流体を供給するように設計される貫通孔と流体排出通路を介して排出するように設計される貫通孔とを有するフレーム要素とを具備する、電解または燃料電池スタックを形成する為のバイポーラプレートアセンブリを提供する。
【0012】
ゆえに本発明によるバイポーラプレートアセンブリは、幾つかの別々のコンポーネント、すなわち分離装置と流動分配器ユニットとフレーム要素とから成る。水電解のケースにおいて、分離装置は、2つの隣接電池の陽極および陰極区画を気密方式で分離し、ここで電流を均質に伝導し、それぞれの電池レベルに給水を導入し、水と水素または酸素との混合物を電池レベルから排出する。流動分配器ユニットは、分離装置を介して供給された給水を電池表面にわたって均質に分配する。フレーム要素は、分配器構造のエリアにおいてバイポーラプレートアセンブリを外部に対して気密状態で密閉して、隣接する膜電極ユニットへの機械的接合を確立するように作用する。本発明によるバイポーラプレートアセンブリが幾つかの個々のコンポーネントで製作されるという事実により、特に流動分配器ユニットの設計が非常に自由に選択され得るので、電池内で所望の流動場が非常に良好に調節され得る。加えて、適当な選択により、設計された作動点からの偏差が作動中に発生した場合でも、電池の適正な機能が保証され得る。全てのコンポーネントが金属材料で製作されるという事実により、適当な結合プロセスを使用して単体のバイポーラプレートアセンブリを形成するようにこれらが容易に結合され得る。1つの可能な結合プロセスは、例えば拡散溶接である。このプロセスで、バイポーラプレートアセンブリの全てのコンポーネントが、予定の構造に従って互いの上に載置され、加熱式真空炉へ導入される。加えて、力および経路制御を介して移動され得る押圧装置が炉に収容される。プロセス雰囲気、必要であれば不活性ガス(通常は<10-4ミリバールの真空)、真空、温度、押圧力、そしてプロセス時間の適当な組み合わせにより、バイポーラプレートコンポーネントが接触点で共に溶接される。設定されるプロセスパラメータは、本質的に、個々のコンポーネントの材料とそのサイズおよび設計とに依存する。
【0013】
好ましくは、分離装置とフレーム要素の各々は矩形の外周部を有し、外周部は特に合同であるように設計される。したがって、分離装置とフレーム要素とは単純に相互の上に載置されて気密方式で結合される。
【0014】
本発明の実施形態は、1つのフレーム要素の全ての貫通孔が他のフレーム要素の貫通孔との整合状態で配置されることと、フレーム要素の貫通孔との整合状態で配置されて分離装置の流体供給通路および流体排出通路とこれらを接続する貫通ホールを分離装置が備えることとを特徴とする。こうして、分離装置と2つのフレーム要素とを介して流体の供給および排出が実現される簡易で安価な構造が作成される。
【0015】
有利には、陰極側流体供給通路と陰極側流体排出通路とが互いに反対に配設されること、および、陽極側流体供給通路と陰極側流体供給通路とが互いに90°オフセットして配設されることで、陽極側流体供給通路と陽極側流体排出通路とが互いに反対に配設される。こうして、電気化学電池が直交流で作動する。
【0016】
好ましくは、流体供給通路および流体排出通路は、分離装置の陽極側および陰極側表面に形成されて貫通ホールから内向きに延在する凹溝の形で設けられる。この結果、簡易で安価な構造が製造される。各貫通ホールには、単一の凹溝、あるいは例えばビームのように配設された複数の凹溝が割り当てられ得る。
【0017】
本発明の変形によれば、分離装置は単一の分離装置プレートから成り、プレートはその陽極側および陰極側の表面に流体供給通路と流体排出通路とを備える。
【0018】
代替的に、互いに確実に接続される、特に互いにはんだ付けされる、あるいは、溶接される2つの分離プレートを分離装置が有することも可能である。各分離装置プレートの片側のみが流体供給通路および流体排出通路を備えればよく、これが分離装置の陽極側または陰極側を形成するので、製造の観点から見てこれは有利であり得る。
【0019】
有利には、連続通過部を有する層、特にエキスパンドメタル、ファブリック、および/または、不織布の形の層で流動分配器ユニットが製作される。通路構造と比較して、この種の連続通過部を備える層は、通路のサイズがより自由に選択され、それゆえ作動条件に良好に適応し得るという利点を有する。他方で、流動分配ユニットと膜電極ユニットとの間の接触圧力分布が著しく低下して、はるかに均一になるが、これは電解電池のケースにおいては電流導入中の電気抵抗の低下、あるいは、燃料電池のケースにおいては放電と関連する。さらに、異なる設計を有し得る幾つかの重複層を組み合わせることによりターゲット方式で流動場に影響を与え得る。
【0020】
好ましくは、少なくとも1つの流動分配器ユニットの、特に両方の流動分配器ユニットの通過部のサイズは、分離装置の方向において増大する。通過部が大きく、これに対応した目の粗い構造であると、流動分配器ユニットの関連エリア全体にわたって低圧力損失である粗い流動分配が得られる。通過部が小さく、これに対応した目の細かい構造であると、アクティブ電池エリアにわたって流動をより均等に分配して、膜電極ユニットの局所的な機械的応力を低下させる。
【0021】
分離装置、ならびに/あるいは、流動分配器ユニットおよび/またはフレーム要素の少なくとも一方、が耐腐食性金属で製作されるか、耐腐食性金属コーティングを備えると有利である。その際に、例えば、耐腐食性金属としての、あるいは耐腐食性金属コーティングとしてのチタンの使用が適当である。
【0022】
有利には、分離装置と流動分配器ユニットとフレーム要素とがともにはんだ付けまたは溶接され、拡散溶接プロセスの使用が好ましく、分離装置とフレーム要素との気密接続を達成しながら単体構造が簡易な方式で達成され得る。単体バイポーラプレートでは、個々の部品の数が大きく減少したことで電解または燃料電池スタックがはるかに容易に組み立てられ得る。熱結合バイポーラプレートアセンブリで役立つ別の利点は、本発明により、2つのフレーム要素の間、したがってバイポーラプレートアセンブリの内部に収納される分離装置に流体供給通路と流体排出通路とが設けられるので、本発明によるバイポーラプレートアセンブリが膜電極ユニットに接続された時に流体供給通路と流体排出通路とが接触圧力分布に負の作用を及ぼさないことである。材料結合によるバイポーラプレートアセンブリの別の利点は、バイポーラプレートアセンブリのコンポーネントの間に接触または境界抵抗が生じない(あるいは大きく低下する)ことである。これらの抵抗は、接触力に応じて重複および補強要素に存在し、効率の低下を招く。
【0023】
有利には、特にはんだ付けあるいは溶接によって、流動分配器ユニットの1つに、好ましくは陽極側に配設された流動分配器ユニットに、金属製ガス拡散層が外部から装着される。
【0024】
さらに、本発明は、電解または燃料電池スタックを形成するために本発明によるバイポーラプレートアセンブリを使用することを提案する。
【0025】
加えて、本発明では、上記の問題を解決するように本発明による複数のバイポーラプレートアセンブリを具備する電解または燃料電池スタックが作成される。
【0026】
本発明の更なる利点および特徴は、添付図を参照した本発明の1つの実施形態によるバイポーラプレートアセンブリについての以下の記載から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態によるバイポーラプレートアセンブリの分解斜視図である。
【
図2】バイポーラプレートアセンブリの別の分解斜視図である。
【
図3】バイポーラプレートアセンブリの分離装置の陰極側の図である。
【
図5】
図1に示されている陰極側流動分配ユニットの分解斜視図である。
【
図6】組立状態での流動分配器ユニットの部分的斜視図である。
【
図7】
図6の矢印VIIの方向における流動分配ユニットの部分的側面図である。
【
図8】
図6の矢印VIIIの方向における流動分配ユニットの部分的側面図である。
【
図9】組立済みバイポーラプレートの一部分の断面図である。
【
図10】
図9のような組立済みバイポーラプレートの一部分の、流動通過中の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1,2,9は、実質的に中央に配設された金属製分離装置2と、分離装置2に隣接して各々が配設される2つの金属製流動分配器ユニット3と、バイポーラプレートアセンブリ1の組立状態において周方向気密方式で流動分配器ユニット3を各々が囲繞する2つの金属製フレーム要素4とをメインコンポーネントとして有する、本発明の1つの実施形態によるバイポーラプレートアセンブリ1を示す。分離装置2はバイポーラプレートアセンブリ1を陽極側5と陰極側6とに分離し、
図1,2,9ではそれぞれ破線7により分離が記号表示されている。陽極側5は
図1および2の各ケースで左に、そして
図9では破線7の上方に位置しており、陰極側6は
図1および2で右に、そして
図9では破線7の下方に位置している。さらなるメインコンポーネントとして、流動分配器ユニット3の外向き表面を被覆する金属製ガス拡散層8が陽極側に設けられるが、原則として任意であり、関連の膜電極ユニットのコンポーネントにも相当する。
【0029】
金属製分離装置2は、陽極側5と陰極側6との間に液密シールを作成するように設計される。本ケースでは、金属シートの形の単一の分離プレートから成る。しかしながら原則として、例えば、はんだ付けあるいは溶接によって互いに確実に接続される2つの分離装置プレートから分離装置2を形成することも可能である。分離装置2は矩形、本ケースでは方形の外周部を有し、好ましくは互いに一定間隔で配設される貫通ホール9をプレート縁部に沿って備える。1つのプレート側、例えば陽極側5に面するプレート側の2つの両側プレート縁部には、プレート中心の方向で内向きに延在する付加的な凹溝状通路またはブラインドホールが、貫通ホール9を始点として設けられて、一方のプレート縁部に沿って延在する通路は流体供給通路10を形成し、他方のプレート縁部に沿って延在する通路は流体排出通路11を形成する。流体供給通路10および流体排出通路11の奥行は、各ケースでプレート厚さより小さい。プレートの反対側では、90°オフセットしたプレート縁部に沿って延在する貫通ホール9に、流体供給通路10と流体排出通路11とを形成する付加的通路も設けられる。したがって、流体供給通路10または流体排出通路11の後側に別の流体供給通路10または流体排出通路11が設けられることは決してない。
【0030】
金属製フレーム要素4も同様に、分離装置2に類似して形状が方形であり、フレーム要素4の外周部の各々は分離装置2の外周部に適応している。各フレーム要素4はその側縁部に沿って貫通孔12を備え、その数および位置は分離装置2の貫通ホール9の数および位置に対応するので、フレーム要素4が分離装置2の両側に意図的に載置されると直ぐに、フレーム要素4の貫通孔12と分離装置2の貫通ホール9とが互いに整合する。
【0031】
金属製流動分配器ユニット3の各々はエキスパンドメタルの複合体により形成されるが、金属製ファブリック、不織布、あるいはその他も原則として使用され得る。使用されるエキスパンドメタルの各々は、異なるサイズ、ゆえに異なる多孔性の通過部13を有する。図の実施形態では、これらの異なるエキスパンドメタルによるエキスパンドメタル組み合わせが選択されている。各ケースで分離装置に面して配設される目の粗いエキスパンドメタルは、粗い流動分布および機械的支持を提供する。中間および目の細かいエキスパンドメタルは接触力および流動をアクティブ電池表面に分配するのに使用される。流動分配ユニット3の材料はフレーム要素4の内周部へ正確に挿入される。陽極側5および陰極側6における流動分配の為の材料の構造は異なっていてもよい。本ケースにおいて、エキスパンドメタル複合体も陽極および陰極について互いに90°回転される。後続の結合プロセスを考慮して、材料および関連のフレーム要素4の厚さは互いに一致している。
【0032】
全てのコンポーネントはチタンで製作されるが、特に耐腐食性についての後続の要件を満たす他の金属材料も使用され得る。
【0033】
バイポーラプレートアセンブリ1を組み立てる為に、個々のコンポーネントは、好ましくは熱結合プロセスを使用して、このケースでは拡散結合プロセスを使用して結合される。バイポーラプレートアセンブリ1の全てのコンポーネントは、意図された構造に従って互いの上に載置され、加熱式真空炉に載置される。加えて、力制御および経路制御により移動され得る押圧装置が炉に収容される。バイポーラプレートコンポーネントは、プロセス雰囲気、必要であれば不活性ガス(通常は<10-4ミリバールの真空)、真空、温度、押圧力、そしてプロセス時間の適当な組み合わせにより、接触点で共に溶接される。設定されるプロセスパラメータは、本質的に、個々のコンポーネントの材料とそのサイズおよび設計に依存する。
【0034】
電解または燃料電池スタックにおいて、バイポーラプレートアセンブリ1は、膜電極ユニットのように反復ユニットを形成する。電解または燃料電池スタックを製作する為に、それ自体周知の方式で、例えば互いに押圧されるエンドプレートおよびクランプ要素を使用することにより、反復ユニットが適宜重ねられて互いに接続される。流体または媒体は、陽極および陰極区画について別々に供給または除去される。貫通ホール9と貫通孔12と流体供給または流体排出通路10,11とから成る組立済みの電解または燃料電池スタックの側縁部に沿って延在する各ホール列は、それぞれ陽極側5および陰極側6についての流体供給部または流体排出部に相当する。供給および排出は常に、反対のホール列を介して行われる。ゆえに、陽極区画の為の接続部は陰極区画の為の接続部に対して90°回転されている。陽極および陰極区画の流体について直交流構成が形成される。一般的に、流体は、導管によって電解または燃料電池スタックに接続される。このケースで、ここでは詳細に示されていない長形マニホルドが、導管から個々のホール列へ供給流体を分配するようにスタックの外側または内側にやはり設けられる。ホール列を介して流体が供給される時には、バイポーラプレートアセンブリ1内を流動する時に2つの部分的な流動への分割が生じる。バイポーラプレートアセンブリの断面における流動は、
図10では対応の矢印14により記されている。この分割は、分離装置2の流体供給通路10および流体排出通路11のアセンブリにより決定される。これらの通路で偏向される部分的流動は流動分配ユニット3へ進入して、目の粗いエキスパンドメタルへ下方から導入される。これは、流体供給通路10がフレーム要素4より更にプレートの内部まで延在するという事実により可能となる。対応して反対の流体排出通路11で流体の流出が行われる。陽極側5および陰極側6の流体供給通路10および流体排出通路11を90°回転させることにより、電気化学電池が直交流で作動する。
【符号の説明】
【0035】
1 バイポーラプレートアセンブリ
2 分離装置
3 流動分配器ユニット
4 フレーム要素
5 陽極側
6 陰極側
7 破線
8 ガス拡散層
9 貫通ホール
10 流体供給通路
11 流体排出通路
12 貫通孔
13 通過部
14 矢印
【国際調査報告】