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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】光学装置及びレーザシステム
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20230510BHJP
   H01L 21/268 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G02B3/00
G02B3/00 A
H01L21/268 J
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559658
(86)(22)【出願日】2021-03-23
(85)【翻訳文提出日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2021057416
(87)【国際公開番号】W WO2021197923
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020108647.4
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツェラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ティルコアン
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ヘルシュターン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハイメス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リンゲル
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ イリオン
(57)【要約】
本発明は、入射レーザビーム(18)を線形射出ビーム(12)に変換するための光学装置(20)であって、入射アパーチャ(34)であって、それを通して入射レーザビームが内部に放射され得る、入射アパーチャ(34)と、射出アパーチャ(36)とを有する波形整形光学ユニット(22)を含み、波形整形光学ユニットは、入射アパーチャを通して内部に放射される入射レーザビーム(18)が、射出アパーチャ(36)を通して出る、複数のビームセグメントを有するビームパケット(24)に変換されるように設計され、光学装置は、均一化光学ユニット(26)及び少なくとも1つの変換レンズ手段(30)をさらに含み、均一化光学ユニットは、線方向(x)に沿ったビームパケットの異なるビームセグメントを混合するように設計され、変換レンズ手段(30)は、混合されたビームセグメント(28)が重畳されて、線形射出ビームを形成するような方法で設計され、均一化光学ユニットは、第一のレンズアレイと、ビーム経路内で第一のレンズアレイの下流に配置された第二のレンズアレイとを含み、光学装置は、第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して変位させるように設計される変位装置をさらに含む、光学装置(20)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射レーザビーム(18)を、伝播方向(z)に沿って伝播する線形射出ビーム(12)であって、作業面(14)において、線方向(x)に沿って延びる線形ビーム断面を有し、且つゼロにならない強度を有する線形射出ビーム(12)に変換するための光学装置(20)であって、
- 入射アパーチャ(34)であって、それを通して前記入射レーザビーム(18)が内部に放射され得る、入射アパーチャ(34)と、射出アパーチャ(36)とを有する波形整形光学ユニット(22)であって、
前記入射アパーチャ(34)を通して内部に放射される前記入射レーザビーム(18)が、前記射出アパーチャ(36)を通して出る、複数のビームセグメントを有するビームパケット(24)に変換されるように設計される波形整形光学ユニット(22)、
- 均一化光学ユニット(26)及び少なくとも1つの変換レンズ手段(30)
を含み、
前記均一化光学ユニット(26)は、前記線方向(x)に沿った前記ビームパケット(24)の異なるビームセグメントを混合するように設計され、前記変換レンズ手段(30)は、前記混合されたビームセグメント(28)が重畳されて、前記線形射出ビーム(12)を形成するような方法で設計され、
前記均一化光学ユニット(26)は、第一のレンズアレイ(38)と、ビーム経路内で前記第一のレンズアレイ(38)の下流に配置された第二のレンズアレイ(40)とを含み、
前記光学装置(20)は、前記第二のレンズアレイ(40)を前記第一のレンズアレイ(38)に対して変位させるように設計される変位装置(54)を含む、光学装置(20)。
【請求項2】
前記変位装置(54)は、前記第二のレンズアレイ(40)を前記第一のレンズアレイ(38)に対して繰返し、特に周期的繰返し又は非周期的繰返し運動パターンで移動させるように設計される、請求項1に記載の光学装置(20)。
【請求項3】
前記変位装置(54)は、前記第二のレンズアレイ(40)を前記線方向(x)に沿って前後に移動させるように設計される、請求項1又は2に記載の光学装置(20)。
【請求項4】
前記変位装置(54)は、ハウジングフレーム(56)と、前記第二のレンズアレイ(40)を保持するための保持装置(58)とを含み、前記保持装置(58)は、前記ハウジングフレーム(56)において、特にそれが前記線方向(x)に沿って前後にシフト可能であるような方法でシフト可能に支持される、請求項1~3の何れか一項に記載の光学装置(20)。
【請求項5】
前記保持装置(58)は、前記ハウジングフレーム(56)において、軸受装置(62)を介して支持される、請求項4に記載の光学装置(20)。
【請求項6】
前記軸受装置(62)の軸受剛性は、前記ハウジングフレーム(56)に対する前記保持装置(58)の振動運動の周波数に適合される、請求項5に記載の光学装置(20)。
【請求項7】
前記保持装置(58)を前記ハウジングフレーム(56)に連結するばね手段が提供される、請求項4に記載の光学装置(20)。
【請求項8】
前記変位装置(54)は、前記保持装置(58)のシフト運動を駆動するための、特に可動コイル(66)又はピエゾアクチュエータの形態のアクチュエータ(64)を含む、請求項4~7の何れか一項に記載の光学装置(20)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの変換レンズ手段(30)は、フーリエレンズ(44)の形態である、請求項1~8の何れか一項に記載の光学装置(20)。
【請求項10】
前記第一のレンズアレイ(38)及び前記第二のレンズアレイ(40)は、それぞれの円柱軸に沿って延びる複数の円柱レンズ(42)を有し、特に、前記円柱レンズ(42)は、前記ビームパケット(24)が、並んで配置された複数の円柱レンズ(42)を通過するような幾何学的寸法にされる、請求項1~9の何れか一項に記載の光学装置(20)。
【請求項11】
前記それぞれの円柱軸は、前記伝播方向(z)に垂直に且つ前記線方向(x)に垂直に延び、特に、前記円柱レンズは、前記それぞれの円柱軸に沿って湾曲なしに形成される、請求項10に記載の光学装置(20)。
【請求項12】
前記波形整形光学ユニット(22)は、高い空間コヒーレンスを有する入射レーザビーム(18)が前記入射アパーチャ(34)を通して内部に放射されるとき、前記射出アパーチャ(36)から出る前記ビームパケット(24)が、大幅に低減された空間コヒーレンスを有し、特にインコヒーレントであるように設計される、請求項1~11の何れか一項に記載の光学装置(20)。
【請求項13】
ビーム断面において線形の強度プロファイルを有する強度分布を有する線形射出ビーム(12)を生成するためのレーザシステム(10)であって、
- 入射レーザビーム(18)を射出するための少なくとも1つのレーザ光源(16)、
- 前記入射レーザビーム(18)を前記線形射出ビーム(12)に変換するための、請求項1~12の何れか一項に記載の光学装置(20)
を含むレーザシステム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射レーザビームを線形射出ビームに変換するための光学装置及びかかる光学装置を含むレーザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなレーザシステムは、特に線形に延びるビーム断面を有する強度分布を有する高強度放射を生成する役割を果たす。線形範囲によって画定される軸は、以下の説明文では、強度分布の「長軸」と呼ばれる。線形範囲に垂直であり、且つ伝播方向に垂直な軸は、「短軸」とも呼ばれる。ビームの幾何学関係を説明するために、それぞれの場合に局所座標系を仮定すべきであり、長軸(x)、短軸(y)及び伝播方向(z)は、方向付けられた右手系のデカルト座標系を画定する。
【0003】
上記の線形ビームプロファイルは、例えば、ガラス又は半導体の表面を加工するため(例えば、テンパリング、アニーリング)に使用される。線形ビームプロファイルは、ここで、加工対象の表面上で長軸に対して実質的に垂直に走査される。放射により、例えば、再結晶プロセス、表面溶融、処理される材料中への異物の拡散プロセス又は表面領域における他の相変化を引き起こすことができる。このような加工プロセスは、例えば、TFTディスプレイの製造、半導体のドーピング、太陽電池の製造だけでなく、審美的意匠を有する建設用ガラス面の製造でも使用される。
【0004】
請求項1の前提部に記載の特徴を有する光学装置は、(特許文献1)に記載されている。
【0005】
前述の加工プロセスにとって、長軸に沿った強度プロファイルが、できるだけ均一である実質的に一定の強度プロファイルを有し、短軸に沿った強度プロファイルが、対応する品質要求を満たすことが重要である。しかしながら、実際、強度プロファイルには、通常、例えば干渉アーチファクト(例えば、規則的回折パターン)、並びに/又は光学ユニットの欠陥及び形状誤差(例えば、収差)、並びに/又は粒子による光学ユニットの汚染(作業面上に影を作ることにつながる)に起因する強度プロファイルの局所的な不均一性がある。
【0006】
干渉アーチファクトを軽減するために、ミラーを用いてレーザビームの位置を長軸に沿って前後に周期的に移動させ、このようにして、ある期間にわたって平均化される強度プロファイルに対する破壊的影響を平滑化することが知られている。対応する光学装置は、例えば、(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/019374 A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2011/0097906 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、できるだけ均一な強度プロファイルを提供する目的に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、請求項1の特徴を有する光学装置によって達成される。光学装置は、入射レーザビームを、線形の強度プロファイルを有する射出ビームに変換するための装置である。この点において、射出ビームは、伝播方向に伝播し(空間に関して平均化される)、その強度分布は、光学装置の光学作業面において、本明細書中で「線方向」と指定される方向に沿って線形プロファイルを有するビーム断面を有する。ビームは、光学装置を通過する際、構成に応じて1回又は複数回偏向され得るため、線方向とは、ビーム断面が線方向に沿って局所的に長いことを意味すると理解すべきである。
【0010】
光学装置は、波形整形光学ユニットを含み、これは、入射アパーチャであって、それを通して入射レーザビームが内部に放射され得る、入射アパーチャと、射出アパーチャとを有する。射出アパーチャは、特に、射出アパーチャ長手方向に沿って長手方向に延びる。射出アパーチャ長手方向に沿った射出アパーチャ寸法は、特に、射出アパーチャ長手方向に垂直な方向よりかなり大きい。
【0011】
波形整形光学ユニットは、入射アパーチャを通して内部に放射される入射レーザビームがビームパケットに変換され、それが射出アパーチャを通して出るように構成される。特に、ビームパケットは、射出アパーチャの下流の理論上の視野平面において、全体的にすでに長い強度分布を形成し、特にすでに実質的に線形の特徴を有する。ビームパケットは、複数のビームセグメントを含み、これらは、特に、好ましくは長い射出アパーチャにわたって分布し、好ましくは射出アパーチャを完全に満たす。
【0012】
本明細書において、ビームパケットは、特に、ベクトル場によって数学的に説明することができる光分布を指し、各空間点は、関連する電磁場のポインティングベクトルに局所的に割り当てられる。
【0013】
波形整形光学ユニットは、特に、ほぼコヒーレントな入射レーザビームから、低減された空間コヒーレンスを有するか又はさらに実質的にインコヒーレントなビームパケットを生成するように設計される。
【0014】
光学装置は、均一化光学ユニットをさらに含み、これは、線方向に沿ったビームパケットの異なるビームセグメントを、ビームの断面が長く延びる方向に関して強度プロファイルが均一化されるような方法で重畳及び混合するように設計される。
【0015】
均一化光学ユニットは、第一のレンズアレイと、ビーム経路内で第一のレンズアレイの下流に配置された第二のレンズアレイとを含む。本明細書におけるレンズアレイとは、特に複数のレンズの配置を指す。レンズの配置は、不規則であり得るか、又はレンズは、並んで規則的パターンにおいて配置され得る。
【0016】
光学装置は、変換レンズ手段をさらに含み、これは、ビーム経路内で均一化光学ユニットの下流に配置される。変換レンズ手段は、混合されたビームセグメントが重畳及び均一化されて、線形射出ビームを形成するように設計される。この点において、変換レンズ手段は、特に、均一化にも寄与する。この目的のために、例えば、作業面は、変換レンズ手段の焦点領域内に延びることができる。例えば、捕捉された放射の各領域から、ビームセグメントが、線方向に沿った異なる領域、好ましくは全ての領域に集光されることが想定される。
【0017】
光学装置は、変位装置をさらに含み、これは、均一化光学ユニットの第二のレンズアレイを均一化光学ユニットの第一のレンズアレイに対して変位させるように設計される。
【0018】
第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して変位させることにより、中でも、均一化光学ユニットから出る(混合)ビームパケットの強度分布が変化する(以下の説明文では、均一化光学ユニットから出る混合ビームパケットは、「中間ビームパケット」とも呼ばれる)。特に、第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して変位させると、中間ビームパケットのビームセグメントの角度分布の変化及び/又は中間ビームパケットのビーム重心(すなわち中間ビームパケット全体のビーム断面の強度分布の重心)の空間シフトがもたらされる。
【0019】
中間ビームパケットのビームセグメントの角度分布の変化(換言すれば、中間ビームパケットの伝播方向の変化)の結果として、中間ビームパケットは、ビーム経路内で均一化光学ユニットに続く変換レンズ手段に異なる角度で入射することになる。変換レンズ手段におけるこのような角度変化により、中でも、射出ビームのビーム重心が空間的にシフトする。換言すれば、射出ビームのビーム重心は、第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して変位させることにより、空間的にシフトさせることができる。これにより、第一のレンズアレイに対する第二のレンズアレイの時間依存変位により、射出ビームを時間に応じて空間的にシフトさせ、従ってある期間にわたって平均化される破壊的干渉効果を平滑化することが可能となる。
【0020】
他方では、中間ビームパケットのビーム重心の空間シフトは、中間ビームパケットが、変化した位置において変換レンズ手段に入射するという結果を伴う。中間ビームパケットのこのような空間シフトにより、中でも、射出ビームのビーム成分の角度分布が変化する。換言すれば、射出ビームの伝播方向は、中間ビームパケットの空間位置を変化させることによって変化する。
【0021】
第一のレンズアレイに対する第二のレンズアレイの時間依存変化により、ビーム経路内で光学装置の下流にある領域(例えば、別の光学手段)は、この点で異なる方向から照明され得る。ビーム経路内の光学装置の下流の汚染物(例えば、下流の光学手段の粒子による汚染)も、その結果、同様に時間に応じて異なる方向から照明され、それによりこれらの汚染物によって作られる影が時間に応じて変化し、従って平均して平滑化されることになる。影によって生成される強度分布の不均一性がこのようにして軽減され得る。加えて、光学ユニットの不正確な形状に起因する不均一性も軽減され得る。
【0022】
要約すると、このような光学装置により、従って、ある期間にわたって平均化される強度分布の局所的な不均一性を平滑化し、従って工作物の表面加工のための大幅に改善された加工結果を実現することが可能となる。
【0023】
好ましくは、変位装置は、第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して繰返し運動パターンで変位させるように設計される。特に、光学装置の利用面における加工時間と比較して、変化の時間スケールは、極めて短いため、事実上、空間的に均一な強度が線方向に沿って実現される。繰返しとは、特に、初期構成が振動運動のように何度も適用されるか又は繰り返されることを意味する。この振動運動は、原則として、周期的又は非周期的であり得る。第二のレンズアレイは、参照位置によって前後に移動されることも想定される。しかしながら、繰返し運動は、好ましくは、一定の周波数で周期的に起こるのではなく、変化する、特にランダムに変化する周波数及び/又は振幅で特に無秩序に起こる。卓越周波数の寄与は、好ましくは、50~150Hzの範囲、特に75~125Hzの範囲内である(本明細書では、これは、特に運動パターンのフーリエスペクトルがいわゆる卓越周波数の寄与で比較的高い振幅を有することを意味する)。
【0024】
線方向に沿って特に均一な強度プロファイルを実現するために、変位装置が第二のレンズアレイを線方向に沿って前後に移動させるように設計される場合に好ましい。従って、射出ビームのビーム重心も同様に線方向に沿って、すなわち長軸に沿って前後に移動される。前後運動は、好ましくは、変化する、特にランダムに変化する周波数で起こり、この場合の卓越周波数の寄与は、50~150Hzの範囲、より具体的には75~125Hzの範囲内である。
【0025】
好ましい構成において、変位装置は、ハウジングフレームと、第二のレンズアレイを保持するための保持装置とを含む。保持装置は、特に、ハウジングフレームにおいてシフト可能に支持される。このような構成は、堅牢であり、それにより、比較的早く変位する場合でもレンズアレイを確実に保持することが可能となる。保持装置は、好ましくは、それが線方向に沿って前後にシフト可能であるようにハウジングフレームにおいて支持される。
【0026】
保持装置が、ハウジングフレームにおいて、例えば少なくとも1つの固体軸受によって支持される場合にさらに好ましい。また、ころ軸受を介して又は空気ばねによって取り付けることも想定可能である。軸受により、原理上、保持装置をハウジングフレームに対して振動運動で前後に変位させることが可能となる。この点において、変位装置は、保持装置がハウジングフレームに対して前後に振動することができるように設計される。
【0027】
本明細書において、取付(例えば、少なくとも1つの固体軸受)の剛性が、ハウジングフレームに対する保持装置の振動運動の周波数に適合される場合に特に好ましい。しかしながら、振動運動に適合するための剛性は、保持装置をハウジングフレームに連結する別のばね手段によっても提供され得る。
【0028】
保持装置のシフト運動を駆動するために、変位装置は、好ましくは、アクチュエータを含む。アクチュエータは、モータであり得る。アクチュエータは、例えば、可動コイル、ピエゾアクチュエータ及び/又は他のリニアモータである。
【0029】
変換レンズ手段は、特に、均一化光学ユニットによって混合されたビームセグメント(中間ビームパケット)を重畳させて、線形射出ビームを形成するように設計され、その結果、作業面において所望の線形強度分布が得られる。この目的のために、変換レンズ手段は、好ましくは、屈折フーリエ光学ユニット又はフーリエレンズ(特に結像効果を有さないもの)の形態で設計される。例えば、フレネルゾーンプレートの形態の設計が想定可能である。
【0030】
好ましい構成の一部として、第一及び第二のレンズアレイの各々は、それぞれの円柱軸に沿って延びる複数の円柱レンズを有する。ビームパケット内のビームセグメントを特に有効に混合するために、特に、円柱レンズが、並んで配置された複数の円柱レンズをビームパケットが通過するような幾何学寸法を有する場合に有利である。
【0031】
有効な均一化は、例えば、それぞれの円柱軸が伝播方向に垂直に且つ線方向に垂直に延びることによって実現され得る。特に、円柱レンズは、それぞれの円柱軸に沿って湾曲なしに設計される。
【0032】
射出ビームの特性は、波形整形光学ユニットの設計によっても重大な影響を受ける。波形整形光学ユニット内の光学プロセスは、複雑であり、特に光分布の空間コヒーレンスにも影響を与え、これは、破壊的な干渉アーチファクトの形成にとって重要である。波形整形光学ユニットは、好ましくは、高い空間コヒーレンスを有する入射レーザビームが入射アパーチャを通して内部に放射されるとき、射出アパーチャから出るビームパケットが、大幅に低減された空間コヒーレンスを有し、特にインコヒーレントであるように設計される。このようにして、均一化及び/又はビーム経路内でそれに続く集光の場合の干渉効果が軽減されるか又は完全に回避され、その結果、強度プロファイルの不均一性をさらに軽減することができる。
【0033】
導入部に記載された目的は、ビーム断面において線形の強度プロファイルを有する強度分布を有する線形射出レーザビームを生成するように設計されたレーザシステムによっても達成される。
【0034】
レーザシステムは、入射レーザビームを射出する少なくとも1つのレーザ光源からの供給を受け、且つ入射レーザビームを線形射出ビームに変換するための前述の種類の光学装置を含む。光学装置は、入射レーザビームがレーザ光源によって供給されるように配置される。
【0035】
レーザ光源は、特にマルチモード動作に適しているか又はそのために設計される。レーザ光源のレーザ放射は、原理上、光学装置内に直接放射させることができる。しかしながら、レーザシステムは、プリシェーピング光学ユニットをさらに含むことも想定され、それにより、レーザ放射は、それが光学装置に入射する前に波形整形される。プリシェーピング光学ユニットは、例えば、コリメーション光学ユニットの形態であり得る。例えば、プリシェーピング光学ユニットは、アナモルフィック効果を有することができ、その結果、入射レーザビームは、楕円形のビーム断面を有する。
【0036】
以下では、本発明を図に基づいてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】線形強度分布を生成するためのレーザシステム内のビーム経路を図解するための図を示す。
図2】均一化光学ユニット及び変換レンズ手段の効果を図解するための図を示す。
図3】第二のレンズアレイを第一のレンズアレイに対して変位させるための均一化光学ユニット及び変換レンズ手段のビーム経路を図解するための図を示す。
図4】変位装置の好ましい構成の概略図を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明及び図において、同じ参照符号は、それぞれ同じ又は対応する特徴に使用される。
【0039】
図1は、作業面14において、線方向(x方向に)に沿って延びる線形ビーム断面を有し、ゼロにならない強度を有する射出ビーム12を生成するためのレーザシステム10を概略図で示す。
【0040】
レーザシステム10は、レーザ放射を射出するための少なくとも1つのレーザ光源16を含む。レーザ光源16は、好ましくは、マルチモードレーザとして設計される。レーザ放射は、任意選択により、プリシェーピング光学ユニット(図示せず)を介して入射レーザビーム18を提供する。プリシェーピング光学ユニットは、例えば、コリメート効果を有し、且つ/又はレーザ放射を、楕円形のビーム断面を有する入射レーザビーム18に波形整形することができる。例えば、偏向ミラー及び/又はレンズ手段により、最初にレーザ放射を入射レーザビーム18に波形整形することも想定される。
【0041】
レーザシステム10は、光学装置20をさらに含み、それにより、入射レーザビーム18は、線形射出ビーム12に変換される。
【0042】
幾何学的関係を説明するために、デカルト座標系(x,y,z)が図に示されている。図の例では、入射レーザビーム18は、z方向に沿って伝播する。射出ビーム12の線形範囲によって画定される軸は、x軸(「長軸」という)に沿って延びる。線方向に垂直であり、且つ伝播方向に垂直な軸は、「短軸」(y軸)と呼ばれる。
【0043】
広い面積を加工するために、非常に長い線形強度プロファイルを実現することが望ましい場合がある。この点において、前述の種類の複数のレーザシステム(10、10’)を提供して、それらを、強度分布が相互に補い、長い線を形成するように配置することが想定される。
【0044】
光学装置20は、複数の光学アセンブリを含み、これらは、ビーム経路内で連続的に配置される。図1に簡略的に示されているように、入射レーザビーム18は、最初に波形整形光学ユニット22を通して案内され、それが入射レーザビーム18をビームパケット24に波形整形する。ビームパケット24は、その後、均一化光学ユニット26によって混合され、中間ビームパケット28に変換される。中間ビームパケット28は、最後に、変換レンズ手段30を通過し、これは、均一化光学ユニット26の下流に配置されて、中間ビームパケット28を線形射出ビーム12に変換し、これは、線方向xに沿って実質的に均一な強度を有する。
【0045】
光学装置は、任意選択により、ビーム経路内で変換レンズ手段30の下流に配置されたコリメート/集光光学ユニット32をさらに含むことができる。
【0046】
波形整形光学ユニット22は、入射アパーチャ34であって、それを通して入射レーザビーム18が内部に結合され得る、入射アパーチャ34と、射出アパーチャ36であって、それを通してビームパケット24が出る、射出アパーチャ36とを有する。波形整形光学ユニット22は、ここで、特に、入射レーザビーム18の隣接するビームセグメントが、これらが波形整形光学ユニット22を通過するときにビームパケット24のビームセグメントに再構成されるように機能する。
【0047】
波形整形光学ユニット22は、好ましくは、高い空間コヒーレンスを有する入射レーザビーム18が入射アパーチャ34を通して内部に放射されるとき、射出アパーチャ36から出るビームパケット24が、大幅に低減された空間コヒーレンスを有し、特にインコヒーレントであるように設計される。この目的のために、波形整形光学ユニット22は、例えば、射出アパーチャ36から出るビームパケット24のビームセグメントが波形整形光学ユニット22内で異なる光路長に沿って移動しているように設計され得る。特に、ビームセグメントの光路長の違いは、レーザ放射のコヒーレンス長と比較して大きい。
【0048】
図2は、均一化光学ユニット26及び変換レンズ手段30の構成及び動作モードを概略的に示す。均一化光学ユニット26は、第一のレンズアレイ38と、ビーム経路内で第一のレンズアレイの下流に配置された第二のレンズアレイ40とを含む。図2に例として示されているように、レンズアレイ38、40の各々は、複数の円柱レンズ42を有し、これは、それぞれの円柱軸に沿って延びる。図の例におけるそれぞれの円柱軸は、図の平面に直交して、いわば(局所的)伝播方向(z)に直交して且つ(局所的)線方向(x)に直交して延びる。円柱レンズ42は、ビームパケット24が、並んで位置する複数の円柱レンズ42を通過するような幾何学寸法を有する。
【0049】
図2から明らかであるように、レンズアレイ38、40は、円柱レンズ42がビームパケット24を捕捉し、ビームパケット24の異なるビームセグメントを相互に混合し、重畳させるように配置される。このように混合され、重畳されたビームセグメントは、中間ビームパケット28を形成し、これは、さらに伝播して、均一化光学ユニット26の下流に配置された変換レンズ手段30に入射する。
【0050】
変換レンズ手段30は、特に中間ビームパケット28のビームセグメントを重畳させて、線形射出ビーム12を形成するように設計され、その結果、作業面14内で所望の線形強度分布が得られる。例えば、好ましくは、変換レンズ手段30は、結像しないフーリエレンズ44によって形成される。フーリエレンズ44は、特に、作業面14がフーリエレンズ44の焦点面内に延びるように配置される(図2を参照されたい)。
【0051】
特に、前述のように、好ましくは入射レーザビーム18のコヒーレンスを実質的に排除する波形整形光学ユニット22と組み合わせて、ビームパケット24のビームセグメントの混合及び重畳は、射出ビーム12が(局所的)線方向xに沿ってすでに比較的均一であるようにする効果を有する。それでもなお、強度プロファイルは、局所的に不均一となる。例えば、干渉効果が強度プロファイル中の周期的な不均質性につながることが想定可能である(図3の参照符号46で示される詳細を参照されたい)。さらに、ビーム経路内の局所的汚染物(例えば、フーリエレンズ44の下流に配置された光学手段50上の粒子48)が影52を作り、その結果、強度プロファイルが局所的に不均一となる。
【0052】
以下で詳細に説明するように、第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して変位させることにより、強度プロファイルにおける上述の不均一性を軽減させることができる。
【0053】
第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して変位させるために、光学装置20は、変位装置54を有する(図2及び3に概略的に示されている)。変位装置54は、好ましくは、第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して、特に線方向xに沿って前後に移動させるように設計される。
【0054】
第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して変位させることにより、中でも、中間ビームパケット28のビームセグメントの角度分布の変化及び/又は中間ビームパケット28のビーム重心の空間シフトがもたらされる。
【0055】
中間ビームパケット28のビームセグメントの角度分布の変化(換言すれば、中間ビームパケット28の伝播方向の変化)の結果、中間ビームパケット28は、均一化光学ユニット26に続くフーリエレンズ44上に異なる角度で入射する。フーリエレンズ44におけるこのような角度変化により、中でも、射出ビーム12のビーム重心が空間的にシフトする(図3では、例として第二のレンズアレイの「下方への」変位について左下に破線で示されている)。これに関して、射出ビーム12のビーム重心は、第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して前後に移動させることにより、前後に空間的にシフトさせることができる。このようにして、干渉効果による不均一性は、平均して平滑化され得る(図3の左下に概略的に示されている)。
【0056】
中間ビームパケット28のビーム重心の空間シフトは、中間ビームパケット28が、変化した位置でフーリエレンズ44に入射するという結果を伴う。中間ビームパケット28のこのようなシフトにより、中でも、フーリエレンズ44の特定の領域が受ける中間ビームパケット28の強度の寄与がより少なくなり、その結果、射出ビーム12の光分布は、優先的な角度又は非対称性を実現する(図3において、例えば中央の参照位置から「上方への」中間ビームパケット28のシフトについて右下に示されている)。この点において、第二のレンズアレイ40を第一のレンズアレイ38に対して前後に移動させることにより、射出ビーム12の伝播方向を時間に応じて変化させることができる。その結果、フーリエレンズ44の下流のビーム経路内の(例えば、後続の光学ユニット50上の)汚染物48(例えば、塵埃粒子)が時間に応じて異なる方向から照明される。このような汚染物48によって生じる影52は、この点において、同様に時間的に変化し、従って強度プロファイルに対する影の破壊的影響を平均して平滑化することができる。
【0057】
図4は、変位装置54の好ましい構成を示す。
【0058】
変位装置54は、ハウジングフレーム56と、第二のレンズアレイ40を保持するための保持装置58とを含む。保持装置58は、特定の領域において切欠き部60を有し、それは、レーザビームを、レンズアレイ40を通して伝送させるための窓の役割を果たす。
【0059】
保持装置58は、ハウジングフレーム56において、軸受装置62(例えば、複数の固体軸受を含む)を介して支持され、その結果、保持装置58は、ハウジングフレーム56に対して前後に振動することができる。ここで、軸受装置62の軸受剛性が、ハウジングフレーム56に対する保持装置58の振動運動の周波数に適合される場合に好ましい。
【0060】
保持装置58のハウジングフレーム56に対する振動運動を駆動するために、変位装置は、アクチュエータ64をさらに有し、これは、例えば、好ましくは可動コイル66として設計される。
【符号の説明】
【0061】
10 レーザシステム
12 線形射出ビーム
14 作業面
16 レーザ光源
18 入射レーザビーム
20 光学装置
22 波形整形光学ユニット
24 ビームパケット
26 均一化光学ユニット
28 中間ビームパケット
30 変換レンズ手段
32 集光光学ユニット
34 入射アパーチャ
36 射出アパーチャ
38 第一のレンズアレイ
40 第二のレンズアレイ
42 円柱レンズ
44 フーリエレンズ
48 汚染物
50 光学手段
52 影
54 変位装置
56 ハウジングフレーム
58 保持装置
60 切欠き部
62 軸受装置
64 アクチュエータ
66 可動コイル
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】