(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】運転リスクの低減
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230510BHJP
G01C 21/34 20060101ALI20230510BHJP
G06Q 50/30 20120101ALI20230510BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20230510BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20230510BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20230510BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G01C21/34
G06Q50/30
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559681
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021024637
(87)【国際公開番号】W WO2021202367
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517411036
【氏名又は名称】ケンブリッジ モバイル テレマティクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE MOBILE TELEMATICS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マッデン、サミュエル ロス
(72)【発明者】
【氏名】パドウスキー、グレゴリー デイビッド
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
2F129AA03
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2F129FF32
2F129FF62
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2F129FF65
2F129FF72
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF27
5H181LL01
5H181LL04
5H181MB02
5L049CC42
(57)【要約】
とりわけ、有形の記憶媒体に保存されている命令は、プロセッサによって、基準系に対する運転されている車両の姿勢を表すデータを受信することと、受信した前記姿勢のデータを処理して、前記車両の前記運転におけるリスク要因を決定することと、を行うように実行可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
プロセッサと、
命令のための有形の記憶装置と、を備え、前記命令は、前記プロセッサによって、
基準系に対する運転されている車両の姿勢を表すデータを受信することと、
受信した前記姿勢のデータを処理して、前記車両の前記運転におけるリスク要因を決定することと、を行うように実行可能である、装置。
【請求項2】
前記リスク要因は、太陽グレアを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記リスク要因は、現在の太陽グレアを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記リスク要因は、未来の太陽グレアを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記リスク要因は、前記車両のピッチ又はロールを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記リスク要因は、道路勾配を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記命令は、さらに、前記プロセッサにより、前記車両の場所を表すデータを受信することと、前記場所のデータを処理し、前記リスク要因を決定することと、を行うように実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記命令は、さらに、時刻又は月日を表すデータを受信するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記姿勢のデータは、前記車両の現在の姿勢を表す、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記姿勢のデータは、前記車両の未来の姿勢を表す、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記姿勢のデータは、前記車両のロール又はピッチを表す、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記命令は、前記車両により取られ得るルートを予想するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記命令は、前記車両により取られた以前のルートを表すデータを受信するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記命令は、前記リスク要因を処理して運転リスクを決定するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記命令は、前記姿勢のデータ又は前記リスク要因又は対応する運転リスクを、サーバーに送信するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、携帯機器の一部である、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、サーバーの一部である、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
前記命令は、前記リスク要因のスコアを決定するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記命令は、
太陽グレアを示すデータを受信することと、
受信された前記太陽グレアのデータを処理し、前記車両の前記運転におけるリスク要因を決定することと、を行うように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記太陽グレアのデータは、天候データを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記太陽グレアのデータは、太陽の場所についてのデータを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記リスク要因は、前記車両の運転者が太陽グレアにさらされる時間の長さを含む、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記命令は、前記リスク要因を低減するルートを識別するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項24】
前記命令は、前記リスク要因を低減する出発時間を識別するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記命令は、前記車両の可能性の高い未来のトリップのタイミング及びルートを予想することと、前記リスク要因を低減するために1つ以上の代替ルート又は走行時間を提案することと、を行うように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記走行時間の前記1つ以上の代替ルートに関連付けられている保険料コスト節約をユーザに表示することを含む、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記命令は、前記車両のフロントガラスの構成の前記リスク要因への影響を決定するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項28】
前記命令は、危険な道路状況に関連付けられているリスク要因を低減するために1つ以上の代替ルート又は走行時間を提案するように、前記プロセッサにより実行可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記危険な道路状況は歩行者の存在を含む、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
決定された前記リスク要因に関連付けられている推定される運転リスクを保険会社に報告することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項31】
装置であって、
プロセッサと、
命令のための有形の記憶装置と、を備え、前記命令は、前記プロセッサによって、
基準系に対する運転される車両の姿勢に関連付けられているリスク要因を示すデータを受信することと、
前記車両のために、前記リスク要因に関連付けられている運転リスクを低減するルートを決定することと、を行うように実行可能である、装置。
【請求項32】
前記ルートを決定することは、前記ルートの予想される太陽グレアリスクを決定することを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記ルートを決定することは、前記ルートの予想される道路勾配又はロールリスクを決定することを含む、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
前記ルートを決定することは、前記姿勢に関連付けられている予想されるリスク要因を決定することと、前記ルートに関連付けられている危険な運転状況を決定することと、を含む、請求項31に記載の装置。
【請求項35】
前記危険な運転状況は、前記ルート上の歩行者の存在を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
装置であって、
プロセッサと、
命令のための有形の記憶装置と、を備え、前記命令は、前記プロセッサによって、
車両が未来の時間で運転され得るルートを予想することと、
前記ルートに沿った運転において前記車両の姿勢に関連付けられているリスク要因を決定することであって、前記リスク要因は運転リスクの大きさに対応する、決定することと、
前記車両のための前記運転リスクの大きさがより小さい1つ以上の代替ルートを生成することと、を行うように実行可能である、装置。
【請求項37】
1つ以上の代替ルートを生成することは、前記代替ルートの予想される太陽グレアリスクを決定することを含む、請求項36に記載の装置。
【請求項38】
1つ以上の代替ルートを生成することは、前記ルートの予想される道路勾配又はロールを決定することを含む、請求項36に記載の装置。
【請求項39】
1つ以上の代替ルートを生成することは、前記姿勢に関連付けられている予想されるリスク要因を決定することと、前記代替ルートに関連付けられている危険な運転状況を決定することと、を含む、請求項36に記載の装置。
【請求項40】
前記危険な運転状況は、前記代替ルート上の歩行者の存在を含む、請求項39に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、運転リスクの低減に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な運転及び環境のリスク要因は、車両が交通事故に巻き込まれるリスク(すなわち、運転リスク)の予測因子に寄与することや、予測因子となることがある。そうしたリスクを安全な運転のために予測し、評価し、低減することは、一定の範囲の関係者には興味深い。そうしたリスク要因の影響を受けて運転されている車両に対して損害保険を掛けている会社は、例えば、保険契約の値段を適切に付けるために、危険な運転挙動のリスクを評価することに興味がある。
【発明の概要】
【0003】
一般に、一態様では、有形の記憶媒体に保存されている命令は、プロセッサによって、基準系に対する運転されている車両の姿勢を表すデータを受信することと、受信した前記姿勢のデータを処理して、前記車両の前記運転におけるリスク要因を決定することと、を行うように実行可能である。
【0004】
実装形態は、以下の特徴量の1つ又は2つ以上の組み合わせを含み得る。前記リスク要因は、太陽グレアを含む。前記リスク要因は、現在の太陽グレアを含む。前記リスク要因は、未来の太陽グレアを含む。前記リスク要因は、前記車両のピッチ又はロールを含む。前記リスク要因は、道路勾配を含む。前記命令は、さらに、前記プロセッサにより前記車両の場所を表すデータを受信することと、前記場所のデータを処理し、前記リスク要因を決定することと、を行うように実行可能である。前記命令は、さらに、時刻又は月日を表すデータを受信するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記姿勢のデータは、前記車両の現在の姿勢を表す。前記姿勢のデータは、前記車両の未来の姿勢を表す。前記姿勢のデータは、前記車両のロール又はピッチを表す。前記命令は、前記車両により取られ得るルートを予想するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、前記車両により取られた以前のルートを表すデータを受信するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、前記リスク要因を処理して運転リスクを決定するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、前記姿勢のデータ又は前記リスク要因又は対応する運転リスクを、サーバーに送信するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記プロセッサは、携帯機器の一部である。前記プロセッサは、サーバーの一部である。前記命令は、前記リスク要因のスコアを決定するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、太陽グレアを示すデータを受信することと、受信された前記太陽グレアのデータを処理し、前記車両の前記運転におけるリスク要因を決定することと、を行うように、前記プロセッサにより実行可能である。前記太陽グレアのデータは、天候データを含む。前記太陽グレアのデータは、太陽の場所についてのデータを含む。前記リスク要因は、前記車両の運転者が太陽グレアにさらされる時間の長さを含む。前記命令は、前記リスク要因を低減するルートを識別するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、前記リスク要因を低減する出発時間を識別するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、前記車両の可能性の高い未来のトリップのタイミング及びルートを予想することと、前記リスク要因を低減するために1つ以上の代替ルート又は走行時間を提案することと、を行うように、前記プロセッサにより実行可能である。前記走行時間の前記1つ以上の代替ルートに関連付けられている保険料コスト節約はユーザに表示される。前記命令は、前記車両のフロントガラスの構成の前記リスク要因への影響を決定するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記命令は、危険な道路状況に関連付けられているリスク要因を低減するために1つ以上の代替ルート又は走行時間を提案するように、前記プロセッサにより実行可能である。前記危険な道路状況は歩行者の存在を含む。決定された前記リスク要因に関連付けられている推定される運転リスクは、2つの保険会社に報告される。
【0005】
一般的に、一態様では、有形の記憶媒体に保存されている命令は、プロセッサによって、基準系に対する運転される車両の姿勢に関連付けられているリスク要因を示すデータを受信することと、前記車両のために、前記リスク要因に関連付けられている運転リスクを低減するルートを決定することと、を行うように実行可能である。
【0006】
実装形態は、以下の特徴量の1つ又は2つ以上の組み合わせを含み得る。前記ルートを決定することは、前記ルートの予想される太陽グレアリスクを決定することを含む。前記ルートを決定することは、前記ルートの予想される道路勾配又はロールリスクを決定することを含む。前記ルートを決定することは、前記姿勢に関連付けられている予想されるリスク要因を決定することと、前記ルートに関連付けられている危険な運転状況を決定することと、を含む。前記危険な運転状況は、前記ルート上の歩行者の存在を含む。
【0007】
一般的に、一態様では、有形の記憶媒体に保存されている命令は、プロセッサによって、車両が未来の時間で運転され得るルートを予想するように、実行可能である。リスク要因は、前記ルートに沿った運転において前記車両の姿勢に関連付けられて決定される。前記リスク要因は、運転リスクの大きさに対応しており、前記車両のための前記運転リスクの大きさがより小さい1つ以上の代替ルートが生成される。
【0008】
実装形態は、以下の特徴量の1つ又は2つ以上の組み合わせを含み得る。前記1つ以上の代替ルートを生成することは、前記代替ルートの予想される太陽グレアリスクを決定することを含む。前記1つ以上の代替ルートを生成することは、前記ルートの予想される道路勾配又はロールを決定することを含む。前記1つ以上の代替ルートを生成することは、前記姿勢に関連付けられている予想されるリスク要因を決定することと、前記代替ルートに関連付けられている危険な運転状況を決定することと、を含む。前記危険な運転状況は、前記代替ルート上の歩行者の存在を含む。
【0009】
これら及び他の態様、特徴量、及び実装形態は方法、装置、システム、構成要素、プログラム製品、ビジネスをする方法、機能を実施するための手段又はステップとして、及び他のやり方において表現されることが可能である。
【0010】
本開示の他の特徴量、目的、及び利点は、説明及び図面、及びクレームから明確であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】車両のフロントガラス及びロール角の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概観
モバイルテレマティクスデータ、例えば、車両の運動と、運転に関連付けられている他のパラメータとについてのデータは、運転及び環境のリスク要因を識別し、評価し、報告することと、運転リスクの予測又は評価をすることとに有用であり得る。モバイルテレマティクスシステムはスマートフォンアプリケーション(「アプリ(apps)」)、OBD IIデバイス、添着されている「ブラックボックス(black box)」ハードウェア、及び他のデバイス、又はそれらの組み合わせを用いて、モバイルテレマティクスデータを収集することが可能である。係るデバイスは未処理の運動特徴量(時間、位置、スピード、姿勢、及び向き等)を測定するためにセンサを用いる。他のデータの中でもとりわけ、そうした測定値を基にして、リスク要因を導出することが可能である。
【0013】
例えば、「危険なスピード違反」のリスク要因は直接に測定されることは不可能である。その代わりに、該リスク要因は測定されるスピード等の未処理の運動データにより特徴づけられている。そして該リスク要因は次いで、通り抜けている特定の道路区分におけるスピード制限に対して高いスピードとして解釈される。それゆえに、組み合わされている未処理の運動データの知見(この例では、スピード、位置、道路網)及び法定のスピード制限は、リスク要因の決定に必要とされ得る。運転リスクは、次いで、所与の時間において又はある期間にわたって識別される1つ以上のそうしたリスク要因に基づいて評価されるとともに予想される。
【0014】
他のリスク要因の中でもとりわけ、運転者らは日光が運転者らの目に入る状態での運転に困っている。太陽が地平近くにあり、運転者が太陽に向かっているとき、交通事故の可能性(運転リスクの一例)は実質的に上昇する。係る効果は周知であり、太陽グレア(sun glare)、太陽による盲目(sun blindness)、減能グレア(disability glare)、ベールで覆うようなグレア(veiling glare)、太陽によるブロック(sun block)、又は太陽のまばゆさ(sun dazzle)のような様々な名前により表されている。太陽グレアにより引き起こされる危険の検討は、萩田賢司、森健二「太陽のグレアが日本、千葉県における交通事故に与えた影響(The effect of sun glare on traffic accidents in Chiba Prefecture, Japan)」アジアントランスポートスタディーズ(Asian transport studies)3巻2号(2014)205-219頁に見ることが可能である。
【0015】
運転者が太陽グレアを経験する時間の量は、運転リスクの有用な予測因子の1つであるリスク要因の1つである。運転リスクの予測因子の1つであることに加えて、太陽グレアについての情報は、運転者が安全な運転挙動を取ることを補助するのに有用であることが可能である。例えば、運転者が太陽グレアを避けることを望んでいるとしても、しかしグレアを避ける又は低減するための最良のルートは太陽の方向、昼間のトリップのタイミング、1年のうちのどの季節か、及び取られるルートによって変化する。私たちが本明細書で説明する技術は、複数の代替ルートを認識するように、運転者に単純で信頼できる方法を提供することが可能である。該代替ルートは、運転者の走行嗜好(例えば、走行時間及び意図した目的地)を尊重すると同時に太陽グレアの影響を避ける又は低減する。
【0016】
モバイルテレマティクスデータは、とりわけ、所与の瞬間において、連続的な瞬間において又はある期間にわたって、運転されている車両の時間と、運転されている車両の位置と、運転されている車両の姿勢と、運転されている車両のスピードと、運転されている車両の加速度と、運転されている車両の向きと、を含むことが可能である。天候データ、マップデータ、太陽の位置データ、及び他のデータと結びつけて、モバイルテレマティクスデータにより運転者が1つ以上のルートに沿った1回以上のトリップ中に1度以上太陽グレアにさらされた時間、今さらされている時間、さらされ得る時間がどのくらいかの決定が可能になる。とりわけ、モバイルテレマティクスデータ(いくつかの場合では、同じ運転者又は1人以上の他の運転者により取られたトリップについての運転履歴データにより補われる)によりリスクを低減するために代替ルート又は出発時間が提案されることが可能である。
【0017】
太陽グレアに加えて、別の環境又は運転リスク要因は、運転されている間の所与の時間における及びある期間にわたった車両のピッチ(勾配)の程度である。車両が上り坂、下り坂、又は水平面上を走行するときを記録するとともに分析することにより、ピッチリスク要因が正確に評価され、車両の運転者が事故に遭う(すなわち、運転リスクに冒されやすい)かどうかの予想に用いられることが可能となる。
【0018】
車両のピッチの測定のためのシステムは、「道路勾配/車両ピッチの推定のための方法(Method for road grade/vehicle pitch estimation)」(米国特許第6,714,851号)に記載されるものを含む。道路勾配に基づいた車両の制御のためのシステムは、「アクセル解除による下り坂走行時のエンジンブレーキ力制御装置(Apparatus for controlling engine brake force during vehicle running on downhill with released accelerator)」(米国特許第5,287,773号)に記載されるものを含む。車両挙動及び複数のリスク要因(加速度、スピード違反又はながら運転等)の測定、情報の記録、及び中央サーバーへの該情報のアップロードのためのシステムは、「個人の携帯機器を用いた車両軌道特性の推論(Inference of vehicular trajectory characteristics with personal mobile devices)」(米国特許第9,228,836号)に記載されるものを含む。係る特許の各々はその全体を参照によって本明細書に援用する。
【0019】
本明細書に私たちは運転及び環境のリスク要因を導出するため及び係る要因の運転リスクを決定するためのモバイルテレマティクスデータの処理用の技術を記載する。
技術プラットフォーム
図1に示すように、私たちが本明細書に記載する技術のいくつかの実装形態では、車両34,36の1人以上の運転者30,32は、道路網42上で車両を運転するとき、スマートフォン又は他の携帯機器38,40を携行する。携帯機器の各々は、携帯機器の1つ以上のセンサ48,50からのモバイルテレマティクスデータを受信する1つ以上のネイティブアプリ44,46をインストールしているとともに、動作させることが可能である。いくつかの実装形態では、タグ80,82は車両に添着され又は設置されて、モバイルテレマティクスデータを収集するとともに携帯機器38,40に対して又は携帯機器38,40を通して送信する。私たちは、用語「携帯機器(mobile device)」を、そうしたタグも指すように用いる場合もある。携帯機器のセンサ又はタグのセンサは、様々な現在のモバイルテレマティクスデータを検出、測定、及びアプリに報告する。前記モバイルテレマティクスデータはとりわけ、車両の場所52、現在の時間、車両のスピード、車両姿勢に関係する携帯機器の姿勢(ピッチ、ヨー、及びロール等の配向)、現在の車両の加速度又は減速度を含む。履歴のモバイルテレマティクスデータはタグ又は携帯機器に保存されることも可能である。携帯機器の各々上で動作しているアプリは、携帯機器の無線通信構成要素を用いてモバイルテレマティクスデータ(携帯機器のセンサから又はタグのセンサからの)を、セルラーネットワーク56を通して中央サーバー54に通信することが可能である。
【0020】
図2に表すように、道路勾配リスク要因及び太陽グレアリスク要因は、共通の特性及び結果を共有するとみなされることが可能である。係るリスク要因の各々は、それだけでリスク要因とみなされることが可能である。例えば、太陽グレアリスク要因は、運転者が太陽グレアにさらされる合計時間に基づいて決定され、下記に示すように、特定の閾値を上回る値又はスコア(0.5より大きい太陽グレアリスクスコア(SG)等)を有することが可能である。別の例として、太陽グレアリスク要因は、運転者が太陽グレアにさらされながら横断歩道に接近している又は横断歩道を通過して運転している(横断歩道の場所はマップデータベースから決定される)ときに、決定されることが可能である(例えば、特定の時間の量について特定の値若しくはスコアを有するように決定される又は一般的に決定される)。
【0021】
道路勾配リスク要因及び太陽グレアリスク要因は、従来的なテレマティクス事象から導出される他のリスク要因の補足として決定されることも可能である。例えば、凍結状態中の運転は危険であり、そして凍結状態中に道路の勾配(ピッチ)が5度よりも大きい又は-5度よりも小さい道路区分の運転は、その組み合わせが異なる種類の運転リスクとみなされることが可能である範囲において、大変危険である。同様に、5度よりも大きい又は-5度よりも小さい道路勾配に組み合わされる急ブレーキは、大変危険であり得る。また、大変危険であることは、特定の値又はスコアを上回る太陽グレア、又は例えば0.5分よりも長く継続している太陽グレアに組み合わされているスピード違反により定義される運転リスクである(運転者が遅れずにブレーキをかけるのに十分に前方を見ることができないことを意味し得る)。
【0022】
図2に示すように、携帯機器上で動作しているアプリケーション、又はサーバー上で動作しているアプリケーション、又はそれらのうち2つの協働的組み合わせは、モバイルテレマティクスデータ(及び他の関連があるデータ)を処理して、センサ202,204,及び206(携帯機器38,40のセンサ48,50、タグ装置のセンサ、又は車両34,36の他のセンサ、又はそれらの組み合わせに相当し得る)により生成されるモバイルテレマティクスデータから1つ以上のリスク要因(太陽グレア角度及び強度222、道路勾配220、他の環境要因、基準点についての車両の姿勢に関連付けられている他の要因、及び他のリスク要因)を検出、推測、解釈、又は導出する。1つ以上のリスク要因は、次いで解釈される又は1つ以上の運転リスクの存在若しくは重大さについての情報を検出、推測、若しくは生成するように分析されてよい。前記運転リスクは、道路リスク226又は太陽グレアリスク228、又は従来的なテレマティクスリスク224(抽出されたテレマティクス事象218に基づいている)等である。運転リスク及び運転リスクのスコア又は大きさの生成では、他のリスク要因も考慮に入れられてよい。他のリスク要因は、運転者若しくは他の運転者についての運転履歴情報、運転についての他のコンテキスト情報(ピッチ又は他の姿勢情報、及び運転者挙動リスク等)を含み得る又はそれらに関係があり得る。
【0023】
いくつかの場合では、従来的なテレマティクスリスク、太陽グレアリスク、又は道路リスク、又はそれらの組み合わせは、保険会社ら又は運転者ら又は他の関係者らに対して直接報告されることが可能である。いくつかの例では、高度なテレマティクスリスク230は、例えば、従来的なテレマティクスリスク、道路リスク、又は太陽グレアリスクの分析及び集合により導き出されることが可能である。次いで、高度なテレマティクスリスク230は、保険会社ら又は運転者ら又は他の関係者らに対して報告されることが可能である。道路勾配データ220を用いることに加えて、226の道路リスクを推定する工程は、天候データベース210からの情報も用いることができる。
【0024】
従来的なテレマティクスリスク224を推定するように用いられているテレマティクス事象218は、とりわけ、配向センサデータ214及び推測されるトリップ軌道データ216から抽出される。道路勾配データ220は、配向センサデータ214と、推測されるトリップ軌道216と、他の情報源との組み合わせに基づいて抽出されることが可能である。太陽角度及び強度データ222は、配向センサデータ214と、推測されるトリップ軌道データ216と、天候データベース210からの天候情報と、太陽フラックスデータベース212からの太陽フラックス情報との組み合わせに基づいて抽出されることが可能である。トリップ軌道216は、マップデータベース208から得られるデータから推測されることが可能である。
【0025】
他の情報源の中でもとりわけ、モバイルテレマティクスデータは、スマートフォン又は他の携帯機器の1つ以上のセンサ202と、1つ以上のタグ206と、例えば、1つ以上の携帯機器又はタグに位置する、1つ以上の全地球測位衛星システム(GNSS)受信機とにより生成されるとともにそれらから受信されてよい。GNSSは、とりわけ、アメリカ合衆国の全地球測位システム(GPS)、ロシアの全地球測位衛星システム(GLONASS)、ヨーロッパの全地球測位衛星システム(Galileo)、中国の北斗衛星導航系統(BDS)、及びインドのインド地域航法衛星システム(IRNSS)等の任意の全地球衛星測位システムを含むことが可能である。そうしたセンサから利用可能とされるデータの種類の例は、
図2に記載されている。
【0026】
図3に示すように、いくつかの実装形態では、携帯機器38上で動作しているアプリ44は、携帯機器を用いてセンサ48及び、いくつかの場合では、タグ52から取得したモバイルテレマティクスデータをセルラーネットワーク56(又は無線ネットワーク又は任意の他の適当なネットワーク)を介してサーバー54にアップロードする。サーバー上で動作しているアプリケーションは、マップデータベース24からのマップデータと、天候データ26と、地形データベース31からの地形情報と、他の種類のデータと、と共にモバイルテレマティクスデータを処理して、運転者により体感される太陽グレアの角度及び強度に基づいた1つ以上の運転リスク要因の重要性を識別する又は評価する。サーバーも、リスク要因及び他のリスク要因の値及びいくつかの場合では他の有用な情報に基づいて、運転リスクの程度又は運転スコア23を決定する又は保存することも可能である。その作業の実行では、サーバー上で動作しているアプリケーションは、運転者ら又は道路網の一部又は天候又は他の要因に関連付けられている保険金支払いデータ29を考慮に入れることが可能である。
【0027】
モバイルテレマティクスデータは、スマートフォン及びタグで、連続的な瞬間において又はある期間にわたって又はトリップ中に、繰り返し収集されることが可能である。サーバーは次いで、連続した又は集計されたリスク要因又は複数の要因の値若しくはスコアを決定することが可能であり、所与の運転者に対する連続的な時間又はトリップに関する運転リスクの程度を決定することが可能である。そうしたモバイルテレマティクスデータは、複数のスマートフォンを用いて複数の運転者らの運転時間又はトリップの期間の間収集されるとともにサーバーに報告されることも可能である。次いで、サーバーはモバイルテレマティクスデータと、リスク要因の値又はスコアと、長期間にわたり運転者の母集団にわたって体感されている運転リスクの程度又はスコアとを処理、分析、集計、又は要約することが可能である。
【0028】
恩恵及び適用
モバイルテレマティクスデータ、リスク要因の値及びスコア、運転リスクの程度及びスコアは異なる様々な関係者のための異なる用途を有することが可能である。例えば、そうした情報は1つ以上の保険会社27に対して提供され、保険引受又は他の目的のために用いられることや、1人以上の運転者の各々に、その人が、どのトリップで、どのルート上で、どの時間中に、どの季節に、及びどの場所で、所与のリスク要因(太陽グレア等)をどのくらいの大きさで(例えば、程度で)、どのくらいの頻度で体感するかを、及びそれらの情報の項目のいずれかの組み合わせを通知するためにそれらの運転者と共有されることが可能である。加えて、リスク要因の値又はスコア、及び運転リスクの程度又はスコアは、複数の運転者、複数の地形、複数のトリップ特性、又は複数の天候状態にわたって、技術のホスト又は保険者により収集されるとともに、次いで要約されるとともに、1つ以上の保険会社に対して提供されることが可能である。
【0029】
後述するように、本明細書に記載する技術の別の利点及び適用は、1つ以上のリスク要因からの運転リスクを考慮に入れるとともに最小化する、未来のトリップのための代替ルート又は出発時間に関する情報を運転者に提供することである。
【0030】
利用ベース保険のコンテキストでは、保険会社は、太陽グレアが低減されているルートを走行すること又はそれらが低減されている時間中に走行することによる、より安全な運転に対して運転者に直接報酬を与えてもよく(例えば、ルート#1の代わりにルート#2を取ると、その月の保険料は1ドルだけ減額され得る)、道路凍結が低減されている時間中に走行することによる、より安全な運転に対して運転者に直接報酬を与えてもよい。
【0031】
私たちは複数のリスク要因うちの2つの特定の例(つまり、太陽グレア及び道路勾配)を論じているとはいえ、本明細書に記載している技巧は他のリスク要因の範囲に適用可能である。太陽グレアリスク要因及び道路勾配リスク要因の両方に関しては、例えば、外部の基準点に対する車両の姿勢(ピッチ、ロール、又はヨー)が影響を持つようになる。太陽グレアの場合では、車両がルートに沿って、特定の季節の特定の時刻に運転されるときの、空の太陽の場所に対する車両の姿勢は、太陽グレアリスク要因の存在又は程度に影響する。道路勾配の場合では、地球の中心に対する車両の姿勢は、道路勾配リスク要因に影響する。
【0032】
外部の基準点に対する車両の姿勢に関連する他のリスク要因も、本明細書に記載している技術からの恩恵を被り得る。例えば、後退している(バックしている)時間の量、又はバック運転事象の数は、リスク要因とみなされ得る。別の例として、本明細書に記載されている技術は、月グレアリスク要因又は月光リスク要因、又は両方を決定することが可能である。一般的に、車両が特定の日の特定な時間にルートに沿って運転されているときの、空の月の場所に対する車両の姿勢は、運転者により体感される月グレアの存在若しくは程度又は月光の存在若しくは程度に影響する。例えば、月グレアの場合では、部分的な月又は満月があるとすれば、また運転者が月に向き合っているような車両の姿勢であれば、次いで、運転者はかなりの月グレアを体感する。月グレアに関連付けられている危険の研究は、レデルマイアー(Redelmeier,D.A.)とシャフィール(Shafir,E)「満月とオートバイ関連の死亡率:人口ベースの二重対象研究(The full moon and motorcycle related mortality: population based double control study)」BMJ、j5367(2017年)に見ることが可能である。他方で、新月であるとすれば、又は運転者が月に向き合っていないような車両の姿勢であれば、次いで、運転者はわずかな月グレアを体感する又は月グレアを体感しない。最も好都合な月齢は満月で、最も好都合な月の位置は運転者の向きの反対側の方位角である状態で、月も車両に有益な光源を提供し得る(例えば、なぜなら、歩行者、自転車に乗る人、道路標識の光反射及び他の特徴量が、係るシナリオにおいて運転者にとって最も視認可能であり得るから)。それゆえに、本明細書に記載されている技巧は、太陰暦等の他のデータに加えて複数のモバイルテレマティクスデータを処理するように用いられ、車両の運転者により体感される月グレアのレベル又は有益な月光のレベル、又は両方を識別することが可能である。係るデータも次いで、月グレアリスク要因又は月光リスク要因、又は両方を次のように決定するように用いられ得る。すなわち、高い月グレアリスクは運転者により体感される高いレベルの月グレアに対応し、高い月光リスクは運転者により体感される低いレベルの有益な月光に対応するように決定する。いくつかの実装形態では、月グレアデータ及び月光データは、他のリスク要因の決定を補う又は本明細書に記載されている他の適用に用いられることが可能である。
【0033】
太陽グレアリスク要因
本明細書に記載されている技術は、例えば、太陽グレアに関連する運転リスクに関して、太陽グレアリスク要因と、関連する評価及びスコアとを検出、分析、採点、及び報告するように用いられることが可能である。
【0034】
太陽グレアリスク要因の場合では、携帯機器のアプリ又はサーバーのアプリケーション又は両方により実行される計算法は、以下の要素及び工程を考慮に入れるとともに含んでよい。
【0035】
1.
図4に示すように、例えば、ソフトウェアプロセスは、太陽90が運転者92に対してどのように現れるか又はどのように現れ得るか、例えば、車両94に対する空の太陽の場所、車両の姿勢、天候状態、及びフロントガラスの構成及び車両の他の部品及びそれらの種類のデータの組み合わせを決定することが可能である。係るデータは、存在し得る太陽グレアリスク要因及び太陽グレアリスク要因の重大さを提案することが可能である。係る目的のために、技術は、車両94に対する太陽90の場所及び固定の参照点(地球の中心等)に対する車両94の姿勢を決定するとともに記載することが可能である。
【0036】
2.地球の中心に向かう方向98に対する車両のピッチ96が決定される。
3.太陽高度102についての既知の情報は、決定されているピッチにおける車両と太陽との間の相対太陽高度100を算出するために用いられる。太陽高度は次の通りに算出される。経度及び緯度における場所は、「個人の携帯機器を用いたテレマティクス(Telematics using personal mobile devices)」と題する米国特許第8,457,880号に記載されるように、一連のGNSS測定値をマップデータベースからの場所データと組み合わせることにより推定される。前記米国特許はその全体を参照によって本明細書に援用される。タイムスタンプも、測定毎にGNSSから導出されることが可能である。車両の高度は、本文書の道路勾配の節に記載されるように、GNSS測定値により推定され、気圧の推定値により補正されることが可能である。地平に対する太陽の角度は、次いで、太陽に関する天体暦の使用により算出されることが可能である。後の論述のために、未処理のRSEをラジアンでの「相対太陽高度(relative solar elevation)」とする。
【0037】
4.
図5に示すように、太陽108の既知の配向に対する車両の向き(例えば、走行の方向106又は概念上のヨー)は決定されていて、既知の太陽方位は、車両方向と太陽の方向との間の相対方位角110を算出するために用いられる。向きの推定値は、GNSSチップセット、磁力計、及びマップマッチされた道路区分により提供される。係る特徴量は、磁力計データが気圧計データに置き換えられている状態で、ピッチに関して
図8に記載されているものと類似した及び実質的に同一の技巧を用いて単一の推定値に組み合わされる。1つ以上のセンサの組み合わせからのデータはなくてよい。この場合には、平滑化は残りのセンサに対して実行されることが可能である。いくつかの実装形態では、全てのセンサからの信号がないならば、リスクの指標は作られない。後の論述のために、未処理のRSAをラジアンでの「相対太陽方位(relative solar azimuth)」とする。
【0038】
5.
図6に示すように、装置が基準系の車に添着されているとするならば、次いで、米国特許第10,440,451号に記載されるように、車両のロールは算出されることが可能である。前記米国特許はその全体を参照によって本明細書に援用される。天頂63に対するロール61のラジアンでの角度θ(シータ)の条件では、θ=0は車両が完全に水平(ロール又はピッチがない)であることを示し、私たちは次のようにフロントガラス65の角度を補正する。
【0039】
RSA=未処理のRSA*cos(θ)+未処理のRSE*sin(θ)
RSE=-未処理のRSA*sin(θ)+未処理のRSE*cos(θ)
なぜなら路面は通常の交通流に対して横方向にほぼ水平であるので、車両のロール角61が0に等しいと想定される又はいくつかの実装形態では無視されることが可能である。
【0040】
6.太陽フラックスのデータベースを参照して、運転の特定の時刻及び季節(及びきれいな空気の条件で)中の車両の場所で予想される太陽フラックスが決定される(米国特許公報第2019/0221023号により記載されるもの等)ことが可能である。その全体を参照によって本明細書に援用する。係る推定値は日光をブロックし得る建物又は丘陵等の遮断物を、地形図及び建物調査からの利用可能な情報に基づいて、考慮に入れる。SFを、0と1との間の浮動小数点数としての太陽フラックスとする。
【0041】
7.天候情報のデータベースを参照して、車両の経度及び緯度での視程は、運転の時間における天候状態の条件(ステップ3のように推定される経度、緯度及び時間の状態で)で決定されることが可能である。WCを0と1との間の浮動小数点数としての天候の清澄さとする。
【0042】
8.運転者の目の視点からの太陽グレアリスクスコア、SGを算出する。次の通りに決定される。
1.もし|RSA|>0.3又は|RSE|>0.15ならば、SG=0
2.そうでなければ、SG=([1-|RSA|/0.3]*[1-|RSE|/0.15]*SF*WC)0.25
場合1では、係るRSA及びRSA値はおおよそ太陽グレアがほとんどの状況において問題とみなされ得ないレベルを超える。場合2では、太陽グレアは一般的に、方位角(RSA)が運転者に集中するにつれて、及び高度(RSE)が地平に近づくにつれて、悪化し、遮断物を含む太陽フラックス(SF)及び天候(WC)の影響により調整される。
【0043】
9.これまで述べてきたように、項目1から項目6を通して説明される決定(時間、位置、姿勢及び向き)のために、データはスマートフォン又は他の携帯機器(又はタグ、又は両方)において収集されるとともに項目7及び項目8が米国特許第9,228,836号に記載されるように決定されるサーバーに伝達される(次いで又は後に)ことが可能である。前記米国特許のその全体を参照によって本明細書に援用する。いくつかの実装形態では、7及び8における項目は携帯機器(又はタグ)それ自身により決定される。
【0044】
10.
図7に示すように、携帯機器のアプリにより収集されるモバイルテレマティクスデータは、例えば、タイムスタンプ、場所(例えば、GNSSに基づいた経度及び緯度、又はネットワークでの場所、又はそれらの両方)、車両の向き120(例えば、0.0度が真北であるときの37.243度)及び車両姿勢122,124,126(GNSS、気圧計、若しくは別のデバイスからのデータ又はそれらの組み合わせに基づいた)を含むことが米国特許第9,228,836号に記載されるように可能である。その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0045】
11.アプリ又はアプリケーション又は両方の機能の1つは、上記に言及した複数のデータストリームを補完するとともに時間的に整列することである。
サーバー上で動作しているアプリケーション又は携帯機器上で動作しているアプリ又は両方は次の情報にアクセスする。該情報は、リスク要因及び運転リスクの処理にも用いられる。
【0046】
12.道路網のマップ。
13.トリップの場所及び時間の天候情報。サーバーは向き、場所、高度情報を用いて、車の位置、ピッチ又は他の姿勢、及び向きを推定する。サーバーは車両の経路を道路網マップに一致もさせ、米国特許第9,228,836号に記載されるように、典型的に場所及び高度の推定値を改善する。その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0047】
特定の一連の計算作業1から13は上記に記載されているが、様々な他の一連のそうした作業(及び他の作業)も適用されることが可能である。例えば、携帯機器とサーバーとの間の作業の分割は、未処理のデータストリームを携帯機器からサーバーに送信すること及び計算及び他の作業をサーバーよりもむしろ携帯機器において実施すること等の適切な、効率の良い、又は効果的な任意のやり方で、決定されてよい。
【0048】
作業1から作業13からの利用可能なデータに基づいて、サーバー又は携帯機器又は両方は、一連のテレマティクス運動データサンプル(それぞれ時間、位置、向き、及び姿勢を含む)を提供することが可能である。タイムスタンプ及び車両の緯度の条件では、サーバーは太陽高度及び太陽方位を算出することが可能である。サーバーは、次いで、相対太陽高度、相対太陽方位、及びロールを算出することが可能である。
【0049】
SGの計算法は、例えば、車両の車両識別番号が利用可能ならば、改善されることが可能である。その場合には、製造元、型及び年が決定される。係る情報は、フロントガラスの寸法及び形状を、車両仕様のデータベースを調べることにより、決定するために用いられることが可能である。サーバーは、太陽の光線が、所与のサイズ及び寸法のフロントガラスの条件下で、運転者の目に直接ぶつかるかどうかを決定することが可能である。もしそうであれば、サーバーは、その土地の天候を用いて、太陽グレアの予想された強度を修正することが可能である。例えば、天候が曇りであるとすれば、サーバーにより決定される効果的なグレアは低減される。
【0050】
代替ルートの計画
なぜなら、運転者らは頻繁に同じ場所の間を、おおよそ同じ時刻に走行するので、例えば、未来の日付の運転者のもっともらしいトリップのタイミング及びルートを予想することが可能である。予想と月日及び天候についての情報とに基づいて、私たちが説明する技術は、運転者がより少ない太陽グレアを体感する1つ以上の代替ルート又は走行時間を提案するために用いられることが可能である。未来のトリップの予想は、道路勾配又は他のリスク要因に関して、1つ以上の代替ルート又は時間を提案するために用いられることも可能である。
【0051】
太陽グレア事故は特定のタイプの道路でより起こりやすい。萩田らは歩行者のいる道路は特に危険だと示唆する。本明細書に記載している技術は、歩行者の存在等、より危険な道路状況に関連付けられている太陽グレアを運転者が体感する可能性がより低い1つ以上の代替ルート又は代替走行時間を提案することが可能である。
【0052】
代替ルートを計画する目的のために、サーバーは、第一に携帯機器又はタグから、十分な期間(例えば2週間)にわたる所与のユーザの運転データを収集することができる。その後は、運転者がおおよそ同じ一組の点の間をおおよそ同じ時刻に走行する(例えば、朝又は晩の通勤(通学))傾向があるかどうかサーバーは決定することが可能である。又はサーバーは、道路勾配又は他のリスク要因と関連がある未来のトリップの運転者の他の挙動を予想することが可能である。いくつかの実装形態では、係る情報はユーザにより提供されることが可能である(例えば、ユーザが自分の家、職場、又は他の目的地を指定することにより)。
【0053】
任意の所与のルート及び時間(例えば、明朝の通勤(通学))のために、サーバーは、運転者により体感される可能性の高い太陽グレアの程度を決定するとともに、総計太陽グレアスコア(例えば、極角が、ある閾値μ0よりも小さい秒数)を算出することが可能である。以前の日における観測されている走行時間の範囲の条件では、サーバーは、運転者が最小の太陽グレアを体感し得る出発時間を算出するとともに、運転者に対して出発時間を提案することが可能である。提案される出発時間は季節とともに、例えば、1年の間の特定の日とともに変化し得る。係る情報は例えば、アプリ又はウェブポータルを通じて運転者に伝達され得る。
【0054】
時々、異なる向き及び車両姿勢の他の態様を包含する一組の点の間の複数の道理に合ったルートがある。この場合では、いくつかの代替ルートを、それら各自の太陽グレアスコアに基づいて評価することが可能であり、このとき、走行時間又は走行距離又は両方に道理をわきまえた制約を課す。より低い太陽グレアスコアを有し、別のルートと走行時間及び走行距離がおおよそ同じルートは、運転者に対する提案においてサーバーにより好まれ得る。
【0055】
利用ベースの保険の場合では、運転者はより危険な運転のために保険料において直接費用を払う。サーバーが太陽グレアを避けるために代替出発時間又は代替ルートを提案するならば、サーバーは、運転者にウェブブラウザ用アプリを通じて、運転者が代替ルートを取るならば節約される保険料コストを表示する。
【0056】
保険数理の目的のために、モバイルテレマティクスデータと、対応するリスク要因と、推定されている運転リスクとは保険会社に対して、例えば、保険数理のデータサンプル等の複数の形態又は極角が閾値μ0よりも小さい秒数等において報告されることが可能である。
【0057】
太陽グレア技術の他の実装形態も可能である。例えば、これまで述べてきたように、携帯機器と別個のセンサタグは向き、ピッチ、及びロールの改善されている推定値を生成する。いくつかの場合では、車両が水平面上(すなわち、天頂と直角をなす)を走行していると想定されることにより、ピッチの影響は、処理されている太陽グレアにおいて無視されることが可能である。いくつかの例では、車両のロール又はヨー(向き)の影響は、車両が常に完全に直立し、太陽光線が接近してくる方向に向かうという仮定により、無視されることが可能である。いくつかの例では、マップマッチング(及びマップ)は、未処理の向き情報又はピッチ情報又は両方を用いることを優先して、無視されることが可能である。
【0058】
モバイルテレマティクスデータストリームは、典型的に補間される必要があるが、それらは必ずしも時間的に整列される必要はない。太陽グレアは、ある時間スケールにわたって考慮されるときに、持続的に存在する又は存在しない可能性が高く、モバイルテレマティクスデータが、太陽グレアスコアを実質的に変更することなく、サブサンプルされることを可能にする。
【0059】
いくつかの例では、分析の結果(例えば、運転リスク要因、運転リスク、太陽グレアスコア、又は代替ルート又は代替時間)は、複数の形態(アプリで、ウェブページ上で、又は印刷された形態で、又はそれらの組み合わせ)において掲示されることができる。
【0060】
時々、天候の影響は無視されることが可能である。そして技術は、任意のその時の天候情報、又はその場所及びその季節の季節的な推定値を用いることをやめることが可能である。
【0061】
スマートフォン又は他の携帯機器を用いる代わりに、モバイルテレマティクスデータは1つ以上の他の車載データ収集プラットフォーム(OBD II デバイス又は他の特殊用途デバイス(「ブラックボックス(black box)」)等)により収集されることが可能である。
【0062】
いくつかの場合では、技術は、現地の地理又は世界的な地理、マップマッチング又は天候を補正する必要はなく、経度及び緯度(又は経度又は緯度の概数、又は両方)のみが用いられる必要がある。
【0063】
他のリスク要因の利用ベースの評価は、太陽グレア(例えば、太陽グレアスコア)と組み合わされることが可能であり、運転リスクのより正確な推定値を生成する。例えば、危険なスピード違反に関連付けられているペナルティは、危険なスピード違反が太陽グレアの期間中に起こるとすれば、より大きくなる。
【0064】
他の運転リスク要因は、太陽グレアスコア又は他の運転リスクの評価の決定において考慮されることが可能である。遠方の山脈は、太陽をブロックすることにより太陽グレアを低減し得る。係る大規模な地理効果は、例えば、次のことにより、太陽グレアの推定値に組み入れられることが可能である。すなわち、車両からの太陽方位の地上に沿った方向を見積もることと、道筋に沿った任意の場所に日光をブロックするのに十分高い高所があるかどうかを調査することとにより、組み入れられることが可能である。
【0065】
同様に、近くの建物は、日光をブロックすることにより、太陽グレアを低減し得る。マップが車両近くのエリアにおける、正確な又は推定された建物の高さ情報及び建物の大きさ情報を提供するならば、結果として生じる日光をブロックする効果は識別されることが可能で、太陽グレアの推定値は改善される。存在、おおよその高さ、場所、及び車両の近くのエリアにおける建物についての他の情報は、未処理のGNSS測定値(個々のGNSS衛星までの擬似距離測定値等)を含むモバイルテレマティクスデータにより、例えば次のようにして、推定されることも可能である。すなわち、GNSS衛星のどれが、遮るものがない空の視界の条件で、車両で観測可能になると予想され得るかをGNSSコンステレーションのエフェメリスを用いて判定し、そうした衛星が車両中のGNSS受信機で視認可能であるかどうかを決定する。いくつかの実装形態では、閾値期間以内の同じ又は同様のルート上の異なる複数の車両において取得されるGNSS測定値は、建物の検知における信頼度を増加するために組み合わされ得る。
【0066】
グレアスコアの正確さは、運転者の座高に加えて、フロントガラス及びサンバイザーの幾何形状の推定結果(車両の製造元及び型により決定される)を用いて改善されることが可能である。係る情報のいずれかが利用可能である又は推定されることが可能であるならば、太陽グレアスコアは、運転者によって体感される太陽グレアのより正確な表現を提供するように修正されることが可能である。
【0067】
本技術の適用に関連する追加の情報は、「個人の携帯機器を用いた車両軌道特性の推論(Inference of vehicular trajectory characteristics with personal mobile devices)」と題する米国特許第9,228,836号及びセンサタグを論じる「車両モバイルテレマティクスデータを取得するためのシステム及び方法(System and method for obtaining vehicle telematics data)」と題する米国特許第10,440,451号に見ることが可能である。その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0068】
道路勾配リスク要因
いくつかの例では、本明細書に記載する技術は、車両が時々、ある期間中に、特定のルート上で、又はトリップ中に体感するピッチの角度に関連付けられているリスク要因を扱うことが可能である。私たちは、「道路勾配(road pitch)」と「車両ピッチ(vehicle pitch)」とを交換可能に用いる。そして車両が道路区分に整列させられるときに、典型的にはそうであるように、その2つが同一である。道路勾配は、車両の姿勢の一態様に関連付けられている。
【0069】
いくつかの場合では、携帯機器又はタグによりサンプリングされるとともに記録されているセンサデータは、スマートフォン又は他の携帯機器のピッチ(及び非明示的には車両のピッチ)を示すのに十分なモバイルテレマティクスデータを提供する。スマートフォンは、時折(又はいくつかの場合では頻繁に)モバイルテレマティクスデータを、無線ネットワークを通じてサーバーにアップロードすることが可能である。サーバーは、データを単独で又は同じ車両若しくは異なる車両において測定された他のモバイルテレマティクスデータとの組み合わせにおいて処理し、各データサンプリング時間(例えば、1秒当たり1つの推定値)における道路勾配の単一の推定値を提供する。1つ以上の道路勾配リスク要因は、次いで、結果として生じる道路勾配データから導出されることが可能である。結果として生じる道路勾配リスク要因は、次いで、サーバーにより用いられ、いくつかの方法のいずれかにより運転リスクを評価することが可能である。
【0070】
例えば、所与の道路勾配(又は道路勾配の特定の範囲内の道路勾配)を走行するのに使われる期間は、運転リスク要因として集計されるとともに記録されることが可能である。各道路勾配の走行に費やす時間の総量も生成されることが可能である。道路勾配に対して費やされる総期間の関係は、複数のリスク要因の有益な指標の1つとなることが可能であり、例えば、険しい坂道を運転することは本来的に危険であるという点において、運転リスクと一致する。
【0071】
また、例えば、各道路勾配推定値又は道路勾配測定値の組み合わせ又は道路勾配推定値の総計は、他の運転及び環境リスク要因と組み合わされることが可能であり、共通のリスク評価を改善する(例えば、運転リスクは2つ以上のそれぞれのリスク要因の組み合わせに関連付けられる)。例えば、険しい坂道を下ることと、着氷の雨の中を走行することとは、各々独立に、重大な運転リスクをもたらす。しかしながら、着氷性の暴風雨の間に下り坂を走行することは、実質的に個々のどちらのリスクよりも、より高い運転リスクを内含する。
【0072】
本明細書に記載の技術を用いる道路勾配リスク要因分析の利点の中には、より正確な運転リスクの評価、より正確な保険料の価格付け、より良い運転者の運転リスクの運転者による理解、及び整備士による特殊な装置の設置の必要性の欠如がある。
【0073】
車両のピッチを運転リスクのリスク要因として用いるという点においては、アプリは次の情報を車両が運転されている間にスマートフォン又は他の携帯機器によって収集するとともに保存する(特定の携帯機器上のデータの可用性に依存する)。つまり、電話の時計の時間、3軸加速度計値、場所、緯度/経度/高度位置、位置の精度、スピード、向き、3軸ジャイロスコープ値、気圧計値、磁力計値、及び携帯機器の状態値(画面状態(オン/オフ、ロックされている/アンロックされている)等)、通話状態、及び音声チャネルの状態を収集するとともに保存する。トリップの終わりには、データは携帯機器において圧縮され、サーバーにアップロードされることが可能である。
【0074】
サーバーは、次いで、アップロードされたデータを用いて、車両に対する電話の姿勢を、「個人の携帯機器を用いた車両軌道特性の推論(Inference of vehicular trajectory characteristics with personal mobile devices)」米国特許第9,228,836号に記載されているもの等の技巧を用いて算出する。その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0075】
車両のピッチ及び車両の姿勢の他の態様は、次いで、次に述べるものを含む様々な手法において推定されることが可能である。
GNSSデータ(おおよそ1秒に1回のスピードSG及び高度AG等)が利用可能ならば、サーバーは妥当なスピードデータ及び高度データを平滑化し、物理的に信じがたい値を検出することが可能である。サーバーは、次いで、DG、GNSS高度の変化率を、AGの差分を取ること、又はSavitzky-Golayフィルターの場合、解析解を用いることにより、算出することが可能である。(
図9の(902)において有限差分アプローチに対してSavitzky-Golayフィルターを用いることの恩恵を示す。)GNSS道路勾配は、次いで、DG/SGとして決定されることが可能である。
【0076】
気圧情報が利用可能であれば、サーバーは第一に、空気圧から高度に推定値を用いて換算することが可能である。
(log(海面気圧)-log(圧力))/圧力定数
そこで「圧力(pressure)」は観測される空気圧、「圧力定数(pressure_constant)」は(地表重力定数*乾き空気のモル重量)/(気体定数*海面標準温度)=([9.80665m/s^2]*[0.0289644kg/mol])/([8.31447J/(mol*K)]*[288.15K])=0.000118558、及び「海面気圧(sea_level_pressure)」は101325パスカル(1013.25ミリバール)である。私たちは次いで、例えばSavitzky-Golayフィルターを用いて標高推定値を平滑化するとともに、標高の変化率DBを算出することが可能である。気圧の道路勾配は、次いで、DB/SGである。
【0077】
サーバーは、測定時間における海面気圧を再推定することにより、係る推定値を改善することが可能である。サーバーは、GNSS高度測定値及び圧力測定値を用いることにより、係る再推定を実施し、各サンプルにおける海面気圧について解く。サーバーは、次いで、海面での単一の平均推定値を算出し、標準101325パスカル(1013.25ミリバール)推定値を改善された推定値に置き換え、前段落のように処理する。係る補正により、サーバーが天候により引き起こされる気圧変動を補うことが可能となる。
【0078】
サーバーは、道路網を用いてマップマッチングを実施することが可能である。係る行為により、サーバーが複数のGNSSポイントを道路区分に沿った経路上に対応付けることが可能となる。道路区分毎の開始標高及び終了標高(開始EM及び終了EM)、及び長さLの条件で、サーバーはマップマッチした道路勾配(終了EM-開始EM)/Lを算出することが可能である。GNSSスピードは、不必要であることに注意する。
【0079】
サーバーは、マップマッチされている位置の推定値を高度の2次地形データベース(米国標高データセット(NED)又は3D標高プログラム(3DEP)等)に組み合わせることが可能である。係るデータは、道路区分よりもより細かい地理空間のスケールの高度の推定値を提供することが可能である。ゆえに、道路区分の偏狭な変動を捕捉することが可能である。特に、車両位置はGNSSにより測定され、次いで、マップマッチされる。そして、マップマッチングはGNSS位置の場所を改善する。そして次いで、高度は、道路地形又はGNSS高度に代わり、地形データベースから参照される。
【0080】
係る推定値は、
図8に示すように、入力データの誤差又は複雑さのために、誤差がある可能性がある。例えば、GNSSデータが高い精度を有すると言える場合であっても、間違っていることもある(806)。気圧データは、運転者が車両に対してドアを閉めるならば、異常なスパイクを示すことが可能である(802)。道路マップから導出されるピッチは、道路勾配において誤った不連続性を生成する(804)。このような誤差は、様々な方法を通じて検出されることが可能である。第1に、データが物理的に信じがたいならば、ソフトウェアはそれを拒絶する。例えば、アメリカ合衆国の勾配が緩くされている幹線道路は、8度の最大勾配を有する。そして、ソフトウェアが急な勾配を観測するならば、次いで、道路勾配推定値はおそらく妥当でなく、ソフトウェアはその推定値を拒絶することが可能である。第2に、1つの推定値が他の推定値と相反するならば、私たちはそれを拒絶することが可能である。例えば、GNSSピッチ推定値が6度であるが、しかし、気圧の推定値、マップマッチされた推定値及び地形推定値が-3度付近であるならば、次いで、私たちはGNSS推定値を拒絶することが可能である。
【0081】
加えて、所与の運転者は同じ道路を繰り返し走行し得る。同様に、複数の運転者は同じ又は異なる時間において同じ道路を走行し得る。これにより、データベースが、異なる状況(異なる気圧状況等)の同じ時間中又は違う時間中に、同じ道路の1つ以上のデバイスから複数の測定値を収集することが可能になる。これは、特定の妨害変数及び誤差の独立したサンプル(海面気圧及びGNSS誤差等)を提供する。同じ道路勾配についての部分的に若しくは完全に独立した複数の推定値にわたってデータを平均すること又は組み合わせることにより、ソフトウェアは、特定の場所における極めて正確な道路勾配の推定値を生成することが可能である。それは十分な証拠を提供もし、道路網及び地形データベースの標高誤差を検出するとともに補正することが可能である。例えば、GNSS及び気圧の道路勾配が単一のトリップにおけるマップマッチされた道路勾配と相反するならば、ソフトウェアはマップをより正確であるとみなすことが可能である。しかしながら、ソフトウェアが異なる海面気圧及びGNSS衛星コンステレーションの状態の20回のトリップにわたって同じGNSS及び気圧の道路勾配を観測するならば、ソフトウェアはマップが不正確であると結論付けることが可能である。
【0082】
同じ又は異なる複数の車両からの一連の妥当な道路勾配推定値の条件では、ソフトウェアは、複数の推定値の加重合計を用いて複数の推定値をまとめて単一の推定値にする。加重値は、観測結果に応じてもよい(例えば、報告されたGNSS精度が所与のサンプルに対して低いならば、次いで、GNSS推定値の加重値も減少される)。ソフトウェアは、前段落に記載されているように、頻繁に測定される道路の道路勾配を用いて、最適な加重値を選択するとともに有効にすることが可能である。
【0083】
毎秒の道路勾配の推定値を条件とすると、ソフトウェアは、今や様々な手法で該推定値を用いて道路勾配リスク要因と、運転者の安全運転に関連付けられている運転リスクの対応する評価とを導出することが可能である。
【0084】
各リスク要因(例えば、車両ピッチ又は太陽グレアのための)は、個々の時点又は個々の場所、又はその2つの組み合わせにおいて評価されることが可能である。加えて、各リスク要因は、次のスピード違反挙動リスク要因等の他の複数のリスク要因(及びそれらの組み合わせ)との組み合わせにより評価されることが可能である。すなわち、総時間(例えば、「運転者が過去6か月の間、スピード制限を超えて12.5時間運転した」)、総走行マイル数(例えば、「運転者が過去6か月の間、スピード制限を超えて189.1キロメートル(117.5マイル)運転した」)、事象の総数(例えば、「運転者が35回の別個のスピード違反事象に関与した」)、又は事象のヒストグラム(例えば、「運転者がスピード制限を最大スピード時速16-32キロメートル(10-20mph)超えた12回の危険なスピード違反事象及びにスピード制限を時速34-48キロメートル(21-30mph)超えた7回の危険なスピード違反事象に関与した、等」)との組み合わせにより評価されることが可能である。幅広い種類のリスク要因は、単独で又は組み合わせで評価されるとともに、例えば、保険会社に対して報告されることが可能である。
【0085】
これらの測定はトリップ毎、又は固定の期間(1週間又は6か月等)にわたって行われることが可能である。
対象とされる道路勾配リスク要因は、下記のものの1つ又は2つ以上の組み合わせを含むことが可能である。すなわち、
大きい道路勾配のある道路を運転すること(水平面上を走行するよりも、本来、より危険であり得るように)。
【0086】
道路勾配のある状態での高加速及び大きな速度変化(「Δv(delta-v)」)事象。これは危険な前進加速、道路勾配と結びついたブレーキング及びコーナリングを含む。例えば、下り坂の走行中にブレーキをかけることは、タイヤがスリップする可能性がより高いのでより危険である。そして上り坂の走行中にブレーキをかけることは、相補的な理由のため、危険がより少ない。
【0087】
道路勾配のある状態での危険なスピード違反事象。
道路勾配のある状態でのながら運転。例えば、下り坂上の急なコーナリング中にテキストメッセージを送ることは、特に危険である。
【0088】
道路勾配要因に加えて対象とされているリスク要因は、より広い一連の運転リスク要因の各々又は2つ以上の組み合わせを含み得り、次のものを含む。すなわち、
天候要因。例えば、吹雪中に下り坂を走行することは、吹雪でない下り坂を走行する時よりも、より危険である。
【0089】
運転者の経験。例えば、経験のない運転者は、より経験のある運転者よりもより危険である。
運転中の照明状況。夜に運転すること、又は太陽のグレアの中に運転することは、リスクに影響し得る。
【0090】
所与の運転者又は運転者の母集団の、個々のトリップに及び複数のトリップにわたって関連付けられている大きく利用可能な一連のモバイルテレマティクスデータを用いることにより、複数のリスク要因の様々なスコアは、以下のものの1つ又は2つ以上の組み合わせを含めて生成されることが可能である。すなわち、
パーセンタイル値のスコア。人口全体の履歴データを用いて運転者のスコアを他の運転者のスコアと比較し、パーセンタイル値を決定する(例えば、運転者は安全の93パーセンタイルである)。運転者は、スコアへと因子化されることが可能な保険金支払履歴データも有する。
【0091】
推定される保険金支払スコア。スコアを保険金支払コストに対して回帰推定することにより、特定の運転者に関して可能性の高い未来の保険金支払コストの推定値が予想されることが可能である。
【0092】
運転者の修正スコア。理想的に、運転者は自分自身の危険な運転挙動について学び、それを改善し得る。できの悪い運転者は自分のパーセンタイルスコアが提示されるならば、その運転者は自身のパーセンタイルスコアに落胆し、運転者安全プログラムに関心を持つのをやめ得る。その機会を低減するために、より多くの激励を提供するべくスコアを修正することは有益である。特に、最小のスコアを上昇させることが可能である(例えば、スコアが0から100の代わりに40から100を変動する)。その上、運転スコアにおける初期改善が比較的単純でかつ劇的であるように、ユーザに視認可能なスコアスケールが設定され、できの悪い運転者の改善を激励することが可能である。
【0093】
とりわけ、携帯機器のアプリは危険な運転挙動及び運転スコアを運転者に掲示するように形成されることが可能である。
他の実装形態
ピッチリスク要因分析の他の実装形態は、可能である。例えば、これまで述べてきたように、タグ又は他の小さなデバイスは車の安定した場所に添着されることが可能である。(例えば、運転者はタグ又は他の小さなデバイスを、フロントガラス上に両面テープを用いて設置することが可能である。)タグ装置は3軸の加速度計と、クロックと、メモリと、プロセッサと、電話と通信するためのBluetooth(登録商標)トランシーバーとを備えることが可能である。そうしたデバイスは、米国特許第10,440,451号に記載されている。その全体を参照によって本明細書に援用する。
【0094】
タグは道路勾配を推定する追加の方法を提供することが可能である。なぜなら、その装置は車両に対して添着されるので、重力の方向の変化は車両のロール及びピッチに直接関係する。特に、アプリは、米国特許第10,440,451号に記載されているように、電話を用いてタグを配向させることが可能である。その全体を参照によって本明細書に援用する。係る配向は、車両に対して「前」「下」「左」のどの方向であるかを示す。
【0095】
タグが配向されると、アプリは少ない期間にわたって平均化された、観測された重力の方向を考慮し、重力ベクトルVを生成することが可能である。なぜなら、タグは配向されているので、Vは車両の基準系に関して表現されることが可能である。Uを単位長さに再スケールされた重力ベクトルとする。すなわち、U=V/|V|である。Fを車両の順方向における単位ベクトルとする。次いで、タグ道路勾配は、arcsin(F・U)であり、・は、ベクトル間の標準内積である。
【0096】
他の実装形態も以下のクレームの範囲内である。
【国際調査報告】