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特表2023-520445バイオベースモノマーから調製された熱膨張性マイクロスフェア
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  • 特表-バイオベースモノマーから調製された熱膨張性マイクロスフェア 図1A
  • 特表-バイオベースモノマーから調製された熱膨張性マイクロスフェア 図1B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】バイオベースモノマーから調製された熱膨張性マイクロスフェア
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/18 20060101AFI20230510BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20230510BHJP
   C08J 9/32 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
B01J13/18
C08F20/28
C08J9/32
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559797
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021058757
(87)【国際公開番号】W WO2021198487
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20168102.0
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ラーション-クロン,アン
(72)【発明者】
【氏名】ザサドフスキー,ダリウシュ
【テーマコード(参考)】
4F074
4G005
4J100
【Fターム(参考)】
4F074BA91
4F074CB65
4F074CB84
4G005AA04
4G005AB13
4G005BA03
4G005BB08
4G005BB13
4G005DA05W
4G005DC02X
4G005DC34Y
4G005DC43Y
4G005DD04Z
4G005DD12Z
4G005DD60Z
4G005EA06
4G005EA08
4J100AC00Q
4J100AL03Q
4J100AL08P
4J100AL63R
4J100AM02Q
4J100AM15Q
4J100AM43Q
4J100BC02Q
4J100BC53P
4J100CA05
4J100CA06
4J100DA16
4J100EA12
4J100FA03
4J100FA21
4J100JA01
4J100JA13
4J100JA28
(57)【要約】
本発明は、中空コアを囲む熱可塑性ポリマーシェルを備える熱可塑性高分子マイクロスフェアに関し、熱可塑性ポリマーシェルは、その中に式1のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【化1】
式中、A~A11の各々は、独立してHおよびC~Cアルキルから選択され、ここで、各C1~4アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1~4アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換することができ、Xは、-O-、-NR”-、-S-、-OC(O)-、-NR”C(O)-、-SC(O)-、-C(O)O-、-C(O)NR”-、および-C(O)S-から選択される連結基であり、またR”は、ハロゲンおよびヒドロキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されるHまたはC1~2アルキルである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空コアを囲む熱可塑性ポリマーシェルを含む熱可塑性高分子マイクロスフェアであって、前記熱可塑性ポリマーシェルが式1のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含み、
【化1】
式中、
~A11の各々は、独立してHおよびC~Cアルキルから選択され、ここで、各C1~4アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシ、およびC1~4アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換することができ、
Xは、-O-、-NR”-、-S-、-OC(O)-、-NR”C(O)-、-SC(O)-、-C(O)O-、-C(O)NR”-、および-C(O)S-から選択される連結基であり、かつ
R”は、ハロゲンおよびヒドロキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されるHまたはC1~2アルキルである、熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項2】
以下の内容、すなわち、
-Xは-OC(O)-または-NR”C(O)-である、
-A~A11の前記アルキル基上の任意選択的な置換基は、ヒドロキシである、
-A~A11の前記アルキル基は、非置換である、
-A~A11のうちのいずれかまたはすべては、Hおよび任意選択的に置換されたC1~2アルキルから選択される、
-A10はHであり、かつA11はHまたはC1~2の非置換アルキルである、
-A10およびA11は両方ともHである、
-AはHであり、かつはHまたは非置換C1~2アルキルである、
-AおよびAは両方ともHである、
-A~Aのうちのいずれか1つ以上は、HおよびC1~4アルキル、例えばC1~2アルキルから選択され、各アルキルは任意選択的に1つ以上のヒドロキシ基で任意選択的に置換される、
-A、A、A、およびAはHであり、かつA、A、およびAは各々独立してHおよびC1~2アルキルから選択され、ここで各アルキルは1つのヒドロキシ基で任意選択的に置換される、
-A~Aのうちの1つ、例えば、A1は、CHOHなどのモノヒドロキシ置換C1~2アルキルであり、残りはHである、
-A~Aのうちの2つ以下が、非置換C1~2アルキルであり、残りはHである、
-A~AのすべてがHである、
-A~AのすべてがHである、
-A~A11のすべてがHである、のうちの1つ以上が式1の前記モノマーに適用される、請求項1に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項3】
前記モノマーが式2、式3、または式4のモノマーであって、
【化2】
【化3】
【化4】
式中、任意選択的に、式2、式3、または式4のいずれかにおいて、Aが、
-ヒドロキシで任意選択的に置換される、HまたはC1~4アルキル、
-H、メチル、またはメトキシ、
-Hまたはメトキシ、または
-H、から選択される、請求項2に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーシェルが、式1のモノマーのコポリマー、および式1のものではない1つ以上の他のエチレン性不飽和コモノマーを含み、任意選択的に、
-式1のモノマーの含有量が、少なくとも10重量%または15重量%である、かつ/または
-式1のモノマーの含有量が、最大90重量%、85重量%、60重量%、または45重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項5】
式1のものではない前記1つ以上の他のエチレン性不飽和コモノマーが、2つ以上のエチレン性不飽和C=C結合を有する架橋多官能性モノマー、および単一の非芳香族C=C二重結合を有するエチレン性不飽和モノマーから選択される、請求項4に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項6】
以下の内容、すなわち、
-前記コポリマーが、2~5個の異なるモノマーを含み、そのうちの少なくとも1つが式1のモノマーである、
-単一の非芳香族C=C二重結合を有する前記1つ以上の他のエチレン性不飽和コモノマーが、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステルモノマー、スチレンモノマー、ニトリル含有モノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ハロゲン化ビニルモノマー、ビニルエーテル、N置換マレイミド、ラクトンモノマー、およびイタコン酸ジアルキルエステルモノマーから選択される、
-前記コポリマーが、10重量%未満のビニル芳香族モノマーを含む、
-前記1つ以上の架橋多官能性モノマーが、前記ポリマー総重量の0~5重量%を構成する、のうち1つ以上が適用される、請求項5に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリマーシェルが、式1のモノマーのコポリマーを含み、前記コポリマーがニトリル含有モノマーをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項8】
前記ニトリル含有モノマーの前記含有量が、前記ポリマー総重量の30~90重量%である、請求項7に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーシェルが、式1のモノマーのコポリマーを含み、前記コポリマーが、ニトリル含有モノマーおよびイタコン酸ジアルキルエステルモノマーをさらに含み、好ましくは、前記ニトリル含有モノマーの含有量が、前記ポリマー総重量の30~90重量%であり、かつ前記イタコン酸ジアルキルエステルモノマーの含有量が、前記ポリマー総重量の1~50重量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項10】
以下の内容、すなわち、
-前記熱可塑性ポリマーシェルを構成する前記ポリマーのガラス転移温度(T)が、0~350℃の範囲である、
-前記Tstartが、50~250℃の範囲内である、
-前記Tmaxが、70~300℃の範囲内である、
-前記Tmaxが、前記熱可塑性ポリマーシェルを構成する前記ポリマーの融点より低い、のうち1つ以上が適用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項11】
乾燥形態である、または水性分散体もしくは湿潤ケーキの形態である、請求項1から10のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項12】
前記モノマーの残留量が、1,000ppm未満、特に500ppm未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項13】
膨張性であり、かつ前記中空コアが1つ以上の発泡剤を含み、以下の内容、すなわち、
-前記発泡剤、または前記発泡剤のうちの少なくとも1つが、前記熱可塑性ポリマーシェルを構成する前記ポリマーのTより高くない沸点(大気圧における)を有する、
-前記発泡剤、または前記発泡剤のうちの少なくとも1つが、-50~250℃の範囲内の大気圧での沸点を有する、
-前記膨張性マイクロスフェア内の発泡剤の含有量が、5~60重量%である、
-前記発泡剤、または少なくとも1つの発泡剤が、炭化水素、ジアルキルエーテル、およびハロカーボンから選択される、
-前記発泡剤が、C4~12アルカンおよびジアルキルエーテルから選択され、各アルキルがC2~5アルキルから選択される、のうちの1つ以上が適用される、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェア。
【請求項14】
1つ以上のモノマーと1つ以上の発泡剤とを含む有機相が、連続的な水相内に分散され、かつ重合が、重合開始剤によって開始されて、中空コアを囲む熱可塑性ポリマーシェルを含む熱可塑性高分子マイクロスフェアの水性分散体を形成し、前記中空コアが、前記1つ以上の発泡剤を備え、少なくとも1つのモノマーが、請求項1~6または10のいずれか一項で定義されるような式1のモノマーである、熱可塑性高分子マイクロスフェアを調製するためのプロセス。
【請求項15】
前記水性分散体から水を除去して、マイクロスフェアの湿潤ケーキまたは乾燥マイクロスフェアを形成する、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記発泡剤が、請求項13に定義されるとおりである、請求項14または請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記モノマー(複数可)の総重量に基づいて、0~20重量%の懸濁化剤が使用される、請求項14~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
残留モノマー低減の工程をさらに含み、前記マイクロスフェアが、好ましくは、硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤で処理され、少なくとも1つの遊離電子対を有し、かつ3つの酸素原子を結合する少なくとも1つの硫黄原子を含み、または過酸化物基を介して連結される少なくとも2つの硫黄原子を含み、より好ましくは、硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤で処理され、過酸化物基を介して連結される少なくとも2つの硫黄原子を含む、請求項14~17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
前記膨張性熱可塑性高分子マイクロスフェアが膨張するように、請求項13に記載の膨張性熱可塑性高分子マイクロスフェアを加熱することを含む、膨張性熱可塑性高分子マイクロスフェアを生成する方法。
【請求項20】
以下の用途、すなわち、
-起泡剤として、または低密度充填剤としての用途、
-発泡樹脂または低密度樹脂、塗料、コーティング(例えば、滑り止めコーティング、太陽光反射、断熱コーティング、および車体下部コーティング)、接着剤、セメント、インク(例えば、水性インクなどの印刷インク、溶剤性インク、プラスチゾルインク、感熱プリンター用紙、およびUV硬化インク)、紙および板紙、多孔質セラミック、不織材料、スポーツシューズソールなどの靴底、テクスチャ付き被覆材、人工皮革、食品パッケージ、ひび割れ充填剤、パテ、シーラント、玩具としての粘土、ワインコルク、爆発物、ケーブル絶縁体、保護用ヘルメットライナー用発泡体、および自動車のウェザーストリップの生産における用途、
-例えば、欠陥を取り除く、美的外観を改善する、または厚みを増すための、天然革の処理または加工における用途、
-プラスチックまたはゴム材料の製造における用途、のうちの1つ以上における、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱可塑性高分子マイクロスフェアの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオベースモノマーから少なくとも部分的に調製された熱膨張性マイクロスフェアおよびその製造のプロセスに関する。本発明はさらに、熱膨張性マイクロスフェアから調製された膨張したマイクロスフェアを提供する。
【背景技術】
【0002】
熱膨張性マイクロスフェアは、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第3615972号、国際公開第00/37547号、および国際公開第2007/091960号に記述される。いくつかの実施例は、Expancel(登録商標)という商品名で販売されている。これらは極めて低重量および低密度の充填剤を形成するように膨張させることができ、また発泡樹脂または低密度樹脂、塗料およびコーティング、セメント、インク、ならびにひび割れ充填剤などの用途での使用を見出すことができる。多くの場合膨張性マイクロスフェアを含有する消費者製品としては、軽量の靴底(例えば、ランニングシューズ用)、壁紙などのテクスチャ付き被覆材、太陽光反射性および断熱コーティング、食品パッケージシーラント、ワインコルク、人工皮革、保護用ヘルメットライナー用発泡材、および自動車用のウェザーストリップが挙げられる。
【0003】
熱膨張性ポリマーマイクロスフェアは、通常、熱可塑性高分子シェルを含み、中空コアは加熱により膨張する発泡剤を含む。発泡剤の例としては、低沸点の炭化水素またはハロゲン化炭化水素が挙げられ、これらは室温で液体であるが、加熱により気化する。膨張したマイクロスフェアを生成するために、熱可塑性高分子シェルが軟化するように膨張性マイクロスフェアを加熱し、そして発泡剤が気化および膨張し、それ故にマイクロスフェアを膨張させる。典型的に、マイクロスフェアの直径は、膨張中に1.5~8倍に増加することができる。膨張性マイクロスフェアは、様々な形態で、例えば、乾燥自由流動粒子として、水性スラリーとして、または部分的に脱水された湿潤ケーキとして市販されている。
【0004】
膨張性マイクロスフェアは、例えば、懸濁重合プロセスを使用して、発泡剤の存在下でエチレン性不飽和モノマーを重合することによって生成することができる。典型的なモノマーとしては、アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、二塩化ビニリデン、およびスチレンに基づくものが挙げられる。こうした熱可塑性ポリマーに関連付けられた問題は、それらが典型的には石油化学製品に由来し、そして持続可能な供給源に由来しないことである。しかしながら、許容可能な膨張性能が維持されることを確保する必要があるので、モノマーを単により持続可能な由来の代替物で置き換えることは必ずしも簡単ではない。例えば、ポリマーは、発泡剤が封入されるように、懸濁重合反応においてコアシェル粒子を得るために適切な表面エネルギーを有する必要がある。加えて、生成されたポリマーは、発泡剤を保持することができる良好なガスバリア特性を有していなければならない。さらに、ポリマーは、膨張中にシェルを伸張させることができるような、ガラス転移温度Tを上回る好適な粘弾性特性を有する必要がある。したがって、従来のモノマーのバイオベースモノマーによる置き換えは簡単ではない。
【0005】
膨張性マイクロスフェアが記述されており、ここで熱可塑性シェルを作り上げているモノマーの少なくとも一部分は、バイオベースであり、再生可能資源に由来する。
【0006】
国際公開第2019/043235号は、次の一般式を持つラクトンモノマーを含むポリマーを記述している。
【化1】
式中、R~Rは、各々独立してHおよびC1~4アルキルから選択される。
【0007】
国際公開第2019/101749号は、次の一般式を持つイタコン酸ジアルキルエステルモノマーを含むコポリマーを記述している。
【化2】
式中、RおよびRの各々は、アルキル基から別々に選択される。
【0008】
米国特許公開第2017/0081492号は、高分子成分がメタクリレートモノマーおよびカルボキシル含有モノマーを含む熱膨張性マイクロスフェアを記述する。メタクリレートモノマーの数多くの例の中でも、好適であるとして示唆されるものは、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルであるが、このモノマーを含有するポリマーの例は提供されておらず、またいずれかのこうしたポリマーまたはポリマーマイクロスフェアのいかなる特性も提供されていない。
【0009】
熱可塑性ポリマーシェルが少なくとも部分的に、持続可能な供給源に由来する代替的な熱可塑性膨張性マイクロスフェアに対するニーズが依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、中空コアを囲む熱可塑性ポリマーシェルを備える熱可塑性高分子マイクロスフェアに関し、熱可塑性ポリマーシェルは、その中に式1のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【化3】
~A11の各々は、独立してHおよびC~Cアルキルから選択され、ここで、各C1~4アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシル、およびC1~4アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換することができる。
【0011】
Xは、-O-、-NR”-、-S-、-OC(O)-、-NR”C(O)-、-SC(O)-、-C(O)O-、-C(O)NR”-、および-C(O)S-から選択される連結基である。基C(O)は、カルボニル基、C=Oを表す。R”は、ハロゲンおよびヒドロキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されるHまたはC1~2アルキルである。
【0012】
本発明はまた、1つ以上のモノマーと1つ以上の発泡剤とを含む有機相が、連続的な水相内に分散されており、また重合が、重合開始剤によって開始されて、中空コアを囲む熱可塑性ポリマーシェルを含む熱可塑性高分子マイクロスフェアの水性分散体を形成し、中空コアが、1つ以上の発泡剤を備え、少なくとも1つのモノマーが、式1のモノマーである、こうした熱可塑性高分子マイクロスフェアを調製するためのプロセスにも関する。
【0013】
本発明はさらに、熱可塑性高分子マイクロスフェアの使用、例えば、低密度充填剤および/または発泡剤の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A図1Aおよび図1Bは、単一コアおよび多重コアのマイクロスフェアを図示する図である。
図1B図1Aおよび図1Bは、単一コアおよび多重コアのマイクロスフェアを図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の考察では、「(メタ)アクリル-」という用語がしばしば使用される。これは、「アクリル-」という用語と「メタクリル-」という用語との両方を包含することを意図している。例えば、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」とを包含し、「(メタ)アクリルアミド」は、「アクリルアミド」と「メタクリルアミド」とを包含する。
【0016】
本発明による熱可塑性高分子マイクロスフェアは、少なくとも部分的にバイオベースであるモノマーから生成される。バイオベースによって、モノマーが、典型的に植物または微生物からの、生物由来の持続可能かつ再生可能資源に少なくとも部分的に由来することが意味される。結果として、それらは、持続可能な原材料に由来するマイクロスフェアの割合の増加、および原油などの再生不能鉱物資源に由来するモノマーへの依存の低減を助けるために使用することができる。
【0017】
熱可塑性高分子マイクロスフェアは、熱可塑性ポリマーシェルによって封入された中空コアを有し、これは、1つ以上の発泡剤を収容することができ、そして加熱により膨張させるようにすることができ、すなわち、マイクロスフェアは膨張性とすることができる。
【0018】
マイクロスフェアが膨張性であるためには、熱可塑性ポリマーシェルは、使用前に漏出するのを防止するために、発泡剤に対して十分に不透過性である必要がある一方で、それと同時にマイクロスフェアが加熱により膨張し、かつその体積を増加し、結果として、予め膨張した材料より低い密度の膨張したマイクロスフェアをもたらすことを可能にする特性を有する必要がある。
【0019】
式1のモノマー(持続可能な原材料から製造することができる)を含むポリマーは、必要とされる特性を有する熱膨張性マイクロスフェアを生産することができることが見出された。
【0020】
[高分子シェル]
本発明のマイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、式1の少なくとも1つのモノマーのポリマーまたはコポリマーであるか、またはこれを含む。実施形態では、シェルは、式1の2つ以上のモノマーを含むコポリマーであるか、またはこれを含む。実施形態では、式1のものではない1つ以上の他のエチレン性不飽和コモノマーがあることができ、そのコモノマーは単一の非芳香族C=C二重結合を有する。
【0021】
実施形態では、ポリマーは、少なくとも1つの式1のモノマーと、少なくとも1つの式1のものではない追加のモノマーとのコポリマーである。
【0022】
コポリマーは、2~5個の異なるコモノマー、例えば、2~3個のコモノマーに基づくものとすることができ、そのうちの少なくとも1つは式1のコモノマーである。
【0023】
式1のものではない好適なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル、ビニルエステル、スチレン(スチレンおよびα-メチルスチレンなど)、ニトリル含有モノマー(例えば、(メタ)アクリロニトリル)、(メタ)アクリルアミド、ビニリデンハロゲン化物(例えば、ビニリデンハロゲン化物、塩化ビニルおよび臭化ビニル)、ビニルエーテル(例えば、メチルビニルエーテルおよびエチルビニルエーテル)、マレイミドおよびN置換マレイミド、ジエン(例えば、ブタジエンおよびイソプレン)、ビニルピリジン、イタコン酸ジアルキルエステル、ラクトン、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0024】
実施形態では、式1のものではないコモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、メチル(メタ)アクリレート、二塩化ビニリデン、メタクリル酸、メタクリルアミド、イタコン酸ジアルキルエステル、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
「(メタ)アクリルモノマー」は、次の一般式による化合物およびその異性体を意味する。
【化4】
式中、Rは、水素、および1~20(例えば、1~12)個の炭素原子を含有するアルキルからなる群から選択することができ、R’は、水素およびメチルからなる群から選択することができる。Rは、任意選択的に、1つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素を、置換基の一部として、例えば、ヒドロキシ基内に含む、またはアルキル主鎖の中へと、例えば、エーテルリンクとして組み込むことができる。(メタ)アクリルモノマーの例は、アクリル酸およびその塩、メタクリル酸およびその塩、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、またはメタクリル酸テトラヒドロフルフリルである。実施形態では、(メタ)アクリルモノマーとしては、RがHであるか、または1~4個の炭素原子(例えば、1~2個の炭素原子)を有するもの、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸が挙げられる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル」という用語は、メタクリル、およびアクリルを指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、およびメタクリレートを指す。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリル酸」という用語は、メタクリル酸、およびアクリル酸を指す。
【0026】
「ビニルエステルモノマー」は、次の一般式による化合物およびその異性体を意味する。
【化5】
式中、Rは、1~20(例えば、1~17)個の炭素原子を含有するアルキルから選択することができる。実施形態では、Rは、1つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素を、置換基の一部として、例えば、ヒドロキシ基内に、またはアルキル主鎖の中へと、例えば、エーテルリンクとして組み込まれるように任意選択的に含むことができる。ビニルエステルモノマーの例としては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、およびプロピオン酸ビニルが挙げられる。
【0027】
「ニトリル含有モノマー」は、次の一般式による化合物およびその異性体を意味する。
【化6】
式中、RおよびRは、互いに別々に、水素および1~17個(例えば、1~4個または1~2個)の炭素原子、またはニトリル基を含有するアルキルからなる群から選択されることができる。実施形態では、RおよびRは、1つ以上のヘテロ原子、例えば、酸素を、置換基の一部として、例えば、ヒドロキシ基内に、またはアルキル主鎖の中へと、例えば、エーテルリンクとして組み込まれるように任意選択的に含むことができる。ニトリル含有モノマーの例としては、アクリロニトリル(R=R=H)、メタクリロニトリル(R=CH、R=H)、フマロニトリル(R=CH、R=CN)、クロトニトリル(R=CH、R=CH)が挙げられる。実施形態では、ニトリル含有モノマーは、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルから選択することができる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリロニトリル」という用語は、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルを指す。
【0028】
「(メタ)アクリルアミドモノマー」は、次の一般式による化合物およびその異性体を意味する。
【化7】
式中、R、R、およびRを、互いに別々に、水素および1~17個(例えば、1~4個または1~2個)の炭素原子または1~17個の炭素原子(例えば、1~4個または1~2個)を有するヒドロキシアルキルを含有するアルキル、例えば、アクリルアミド(R=R=R=H)、メタクリルアミド(R=CH、R=R=H)、およびN-置換(メタ)アクリルアミドモノマー(N,N-ジメチルアクリルアミド(R=H、R=R=CH)、N,N-ジメチルメタクリルアミド(R=R=R=CH)、N-メチロールアクリルアミド(R=H、R=H、R=CHOH)など)からなる群から選択することができる。本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリルアミド」という用語は、メタクリルアミド、およびアクリルアミドを指す。
【0029】
「マレイミド」および「N-置換マレイミドモノマー」は、次の一般式による化合物を意味する。
【化8】
式中、Rは、水素、1~17個の炭素原子を含有するアルキル、またはハロゲン原子から選択することができる。
【0030】
実施形態では、Rは、H、CH、フェニル、シクロヘキシル、およびハロゲンからなる群から選択され、またさらなる実施形態では、Rは、フェニルおよびシクロヘキシルから選択される。
【0031】
実施形態では、式1のものではないエチレン性不飽和モノマーは、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)を実質的に含まない。ビニル芳香族モノマーが存在する場合、こうしたビニル芳香族モノマーは、ポリマーの総重量の10重量%未満、例えば、5重量%未満、1重量%未満、または0.1重量%未満で存在することができる(合成に使用されるモノマーの混合物中のビニル芳香族モノマーの重量から計算することができる)。
【0032】
なおさらなる実施形態では、式1のものではないモノマーは、国際公開第2019/043235号および国際公開第2019/101749号に記述される生物由来モノマーから選択することができる。
【0033】
それ故に、実施形態では、コポリマーは、次の一般式のラクトンモノマーを含むことができる。
【化9】
式中、R~Rは、各々独立してHおよびC1~4アルキルから選択される。
【0034】
他の実施形態では、コポリマーは、次の一般式のイタコン酸ジアルキルエステルモノマーを含むことができる。
【化10】
式中、RおよびRの各々は、アルキル基、例えばC1~4アルキル基から別々に選択される。
【0035】
こうした生物由来モノマーの使用は、マイクロスフェアの高分子シェルの生物由来含有量をさらに増加させるのを助けることができる。
【0036】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、(メタ)アクリルモノマー((メタ)アクリル酸および(メタ)アクリレートなど)、ニトリル含有モノマー、およびイタコン酸ジアルキルエステルモノマーから選択される。さらなる実施形態では、少なくとも1つは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、C1~12アルキル(メタ)アクリレート(例えば、C1~4アルキル(メタ)アクリレートおよびメチル(メタ)アクリレート)、ならびにイタコン酸C1~4ジアルキルエステル(例えば、イタコン酸C1~2ジアルキルエステル)から選択される。実施形態では、コモノマーは、アクリロニトリルおよびイタコン酸ジメチルから選択される。
【0037】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル含有モノマーから選択される。好ましくは、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、アクリロニトリルである。
【0038】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、イタコン酸ジアルキルエステルモノマー、例えば、イタコン酸ジメチルから選択される。
【0039】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、メチル(メタ)アクリルモノマー、例えば、メタクリル酸メチルまたはアクリル酸メチルから選択される。
【0040】
さらなる実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、好ましくはアクリロニトリルなどのニトリル含有モノマーを含み、さらにイタコン酸ジアルキルエステルモノマー、例えば、イタコン酸ジメチルを含む。
【0041】
さらなる実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、好ましくはアクリロニトリルなどのニトリル含有モノマーを含み、またさらにメチル(メタ)アクリレートを含む。
【0042】
実施形態では、式1のモノマーの含有量は、1~100重量%の範囲内であってもよい。実施形態では、含有量は、1~85重量%、1~60重量%、または1~45重量%の範囲内である。さらなる実施形態では、式1のモノマーの含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、少なくとも10重量%または15重量%、すなわち、10~100重量%または15~100重量%の範囲、例えば、10~85重量%、15~85重量%、10~70重量%、10~60重量%、15~60重量%、10~45重量%、または15~45重量%の範囲である。
【0043】
熱可塑性ポリマー中の式1のものではないコモノマーの含有量は、0~90重量%、または0~80重量%、または0~50重量%の範囲とすることができる。使用される場合、熱可塑性ポリマー内のそれらのコモノマーの個々の含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、5重量%以上、例えば、10重量%以上とすることができ、例示の範囲は、5~80重量%、10~80重量%、または5~50重量%、10~50重量%である。
【0044】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、(メタ)アクリロニトリル、好ましくはアクリロニトリルなどのニトリル含有モノマーから選択され、(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル含有モノマー、好ましくはアクリロニトリルの含有量は、5~90重量%、または10~90重量%の範囲内である。好ましくは、(メタ)アクリロニトリル、好ましくはアクリロニトリルなどのニトリル含有モノマーの含有量もまた、それぞれポリマーの総重量に基づき、30~90重量%、例えば、40~90重量%、45~80重量%、または50~80重量%などとすることができる。
【0045】
実施形態では、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーのうちの少なくとも1つは、イタコン酸ジアルキルエステルモノマー、例えばイタコン酸ジメチルから選択することができ、そしてイタコン酸ジアルキルエステルモノマー、例えば、イタコン酸ジメチルの含有量は、1~50重量%または2~40重量%の範囲内である。イタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)の含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、5~30重量%(10~20重量%など)とすることもできることが好ましい。
【0046】
さらなる実施形態では、式1のものではないエチレン性不飽和コモノマーは、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)を含み、またイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)をさらに含み、そしてニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)の含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、5~90重量%、または10~90重量%、または30~90重量%の範囲内であり、またイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)の含有量は、1~50重量%、または2~40重量%、または5~30重量%の範囲内である。
【0047】
特定の実施形態では、ポリマーはコポリマーであり、式1のモノマーの含有量は、1~85重量%、1~60重量%、1~45重量%、10~45重量%、または15~45重量%の範囲内であり、式1のものではないエチレン性不飽和コモノマーは、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)を含み、またイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)をさらに含み、そしてニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)の含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、5~90重量%、または10~90重量%、または30~90重量%の範囲内であり、またイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)の含有量は、1~50重量%、または2~40重量%、または5~30重量%の範囲内である。
【0048】
さらなる特定の実施形態では、ポリマーはコポリマーであり、式1のモノマーの含有量は、1~45重量%、10~45重量%、または15~45重量%の範囲内であり、式1のものではないエチレン性不飽和コモノマーは、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)を含み、またイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)をさらに含み、そしてニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルなど)の含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、10~90重量%、または30~90重量%の範囲内であり、そしてイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(イタコン酸ジメチルなど)の含有量は、5~30重量%の範囲内である。
【0049】
なおさらなる特定の実施形態では、ポリマーはコポリマーであり、式1のモノマーの含有量は、15~45重量%の範囲内であり、式1のものではないエチレン性不飽和コモノマーは、(メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルを含み、またイタコン酸ジメチルをさらに含み、そして(メタ)アクリロニトリル、好ましくは、アクリロニトリルの含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、30~90重量%の範囲内であり、またイタコン酸ジメチルの含有量は、5~30重量%の範囲内である。
【0050】
実施形態では、ポリマーの総生物由来モノマー含有量は、それぞれポリマーの総重量に基づき、少なくとも10重量%、例えば、少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%、例えば、10~90重量%、例えば、20~80重量%、または30~70重量%の範囲内である。
【0051】
実施形態では、式1のモノマーおよび式1のものではないポリマーの(メタ)アクリレートモノマーの総含有量は、ポリマーの総重量に基づき、50重量%未満であり、特に、1~45重量%または15~45重量%の範囲内である。
【0052】
ポリマーのモノマー含有量は、ポリマー合成で使用されるモノマーの重量割合、すなわち、使用されるモノマーの総重量におけるモノマーの重量百分率から計算することができる。
【0053】
特定の実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき10~70重量%の、下記で定義されるような式1のモノマー、
【化11】
ポリマーの総重量に基づき30~90重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき0~50重量%の、好ましくは1~50重量%の、イタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)またはメチル(メタ)アクリレート、からなるコポリマーを含む。
【0054】
特定の実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき10~70重量%の下記で定義されるような式2、式3、または式4のモノマー、
【化12】
【化13】
【化14】
式中、Aは、H、またはH、メチル、またはメトキシ、特にHまたはメトキシなどでヒドロキシで任意選択的に置換されるC1-4アルキルから選択され、そしてより具体的には、Hである、モノマー、
ポリマーの総重量に基づき30~90重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき0~50重量%の、好ましくは1~50重量%の、イタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)またはメチル(メタ)アクリレート、からなるホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0055】
さらなる特定の実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき10~60重量%のアクリル酸テトラヒドロフルフリル、
ポリマーの総重量に基づき30~90重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき1~50重量%のイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)またはメチル(メタ)アクリレート、からなるコポリマーを含む。
【0056】
なおさらなる特定の実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき10~60重量%のアクリル酸テトラヒドロフルフリル、
ポリマーの総重量に基づき30~80重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき5~30重量%のイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)またはメチル(メタ)アクリレート、からなるコポリマーを含む。
【0057】
好ましい実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき15~45重量%のアクリル酸テトラヒドロフルフリル、
ポリマーの総重量に基づき30~80重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき5~20重量%のメチル(メタ)アクリレートからなる、コポリマーを含む。
【0058】
さらなる好ましい実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき20~40重量%のアクリル酸テトラヒドロフルフリル、
ポリマーの総重量に基づき55~75重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき5~20重量%のメチル(メタ)アクリレートからなる、コポリマーを含み、
アクリル酸テトラヒドロフルフリルおよびメチル(メタ)アクリレートの総量は、ポリマーの総重量に基づき25~45重量%である。
【0059】
別の好ましい実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、
ポリマーの総重量に基づき15~45重量%のアクリル酸テトラヒドロフルフリル、
ポリマーの総重量に基づき30~80重量%の、ニトリル含有モノマー((メタ)アクリロニトリルなど)、好ましくはアクリロニトリル、および
ポリマーの総重量に基づき5~20重量%のイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)、からなるコポリマーを含む。
【0060】
[架橋多官能性モノマー]
実施形態では、ポリマーまたはコポリマーは、2つ以上のエチレン性不飽和C=C結合を有する1つ以上の架橋多官能性モノマーを含むことができる。エチレン性不飽和C=C結合を含む基の例としては、ビニル基およびアリル基が挙げられる。
【0061】
実施形態では、こうした架橋多官能性モノマーは、2つ以上のエチレン性不飽和C=C結合を含む1~100個の炭素原子を含む化合物から選択することができる。化合物は、炭化水素とすることができ、またはOもしくはNなどの1つ以上のヘテロ原子を含むことができる。
【0062】
実施形態では、化合物は、1~12個の炭素原子、例えば、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、およびトリビニルシクロヘキサンを含む。
【0063】
その他の実施形態では、化合物は、例えば、1~6(メタ)アクリレート基(ジ、トリ、またはテトラエステルなど)を含む、1つ以上の(メタ)アクリレート基を含むエステルから選択することができる。エステル基は、例えば、1~60個の炭素原子または1~40個の炭素原子(1~20個の炭素原子または1~10個の炭素原子など)を含む炭化水素主鎖に結合することができる。炭化水素主鎖は、例えば、エーテル、エステル、またはアミド結合の形態で、1つ以上のヘテロ原子、例えば、1つ以上のO原子またはN原子を含むことができる。別の方法として、または追加的に、炭化水素主鎖はまた、少なくとも1つのエチレン性不飽和C=C結合も含むことができる。例えば、実施形態では、架橋多官能性モノマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和C=C結合を含み、かつさらに1つ、好ましくは2つの(メタ)アクリレート基または(メタ)アクリロイル基が架橋剤に結合された、架橋剤を含むことができる。
【0064】
架橋多官能性モノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルホルマルトリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、PEG#400ジ(メタ)アクリレート、PEG#600ジ(メタ)アクリレート、アクリル化エポキシ化大豆油(例えば、エベクリル860)、3-アクリロイルオキシグリコールモノアクリレート、トリアクリルホルマル、 またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。実施形態では、少なくとも三官能性である1つ以上の架橋モノマーが使用される。架橋官能性モノマーの量は、ポリマー総重量の0~5重量%、0~3重量%、または0~1重量%、例えば、0.1~5重量%、0.1~3重量%、または0.1~1重量%であってもよい。含有量は、熱可塑性高分子マイクロスフェアを合成するために使用されるモノマー混合物内に存在する架橋官能性モノマーの量から計算することができる。
【0065】
[式1のモノマー]
【化15】
式1では、A~A11の各々は独立してHおよびC~Cアルキルから選択され、ここで各C1~4アルキル基は、ハロゲン、ヒドロキシヒドロキシ、およびC1~4アルコキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換することができる。
【0066】
Xは、-OC(O)-、-NR”C(O)-、および-SC(O)-から選択される連結基である。基C(O)は、カルボニル基、C=Oを表す。R”は、ハロゲンおよびヒドロキシから選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換されるHまたはC1~2アルキルである。実施形態では、Xは、-OC(O)-および-NR”C(O)-から選択される。特に好ましい実施形態では、Xは-OC(O)-である。
【0067】
実施形態では、A10およびA11の炭素原子の総数は、0~12個、例えば、0~6個の炭素原子である。
【0068】
式1では、以下のいずれかを適用することができる:
-Xは-OC(O)-である
-A~A11のアルキル基上の任意選択的な置換基は、ヒドロキシである、
-A~A11のアルキル基は、非置換である、
-A~A11のうちのいずれかまたはすべては、Hおよび任意選択的に置換されたC1~2アルキルから選択される、
-A10およびA11のうちの1つはHであり、もう一方はHまたはC1~2の非置換アルキルである、
-A10およびA11は両方ともHである、
-AはHであり、またAはHまたは非置換C1~2アルキルである、
-AおよびAは両方ともHである、
-A~Aのうちのいずれか1つ以上は、HおよびC1~4アルキル、例えばC1~2アルキルから選択され、各アルキルは任意選択的に1つ以上のヒドロキシ基で任意選択的に置換される、
-A、A、A、およびAはHであり、A、A、およびAは各々独立してHおよびC1~2アルキルから選択され、ここで各アルキルは1つのヒドロキシ基で任意選択的に置換される、
-A~Aのうちの1つ、例えば、A1は、CHOHなどのモノヒドロキシ置換C1~2アルキルであり、残りはHである、
-A~Aのうちの2つ以下が、非置換C1~2アルキルであり、残りはHである、
-A~AのすべてがHである、
-A~AのすべてがHである、
-A~A11のすべてがHである。
【0069】
実施形態では、A~AはすべてHであり、すなわち、モノマーは式2のものである。
【化16】
【0070】
実施形態では、Xは-OC(O)-であり、例えば、モノマーは式3のものである。
【化17】
【0071】
実施形態では、式3では、A10およびA11の両方がHであり、その結果、モノマーは式4のものである。
【化18】
【0072】
実施形態では、式2、式3、または式4では、Aは、ヒドロキシル基で任意選択的に置換されるHまたはC1~4アルキルであり、例えば、ヒドロキシル基で任意選択的に置換されるC1~2アルキルである。実施形態では、Aは、H、メチル、またはメトキシであり、例えば、Hまたはメトキシから選択される。
【0073】
特定の実施形態では、熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルは、式4のモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含み、AはHである。式4のモノマーは、その時アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)である。
【0074】
熱可塑性高分子マイクロスフェアの熱可塑性ポリマーシェルが、アクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFA)である式Iのモノマーのコポリマーを含む実施形態では、コポリマーは、(メタ)アクリルモノマー(例えば、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸塩)、(メタ)アクリロニトリルモノマー(例えば、アクリロニトリル)および/またはイタコン酸ジアルキルエステルモノマー(例えば、イタコン酸ジメチル)などの、式1のものではない1つ以上のエチレン性不飽和コモノマーをさらに含んでもよい。
【0075】
式1のモノマーは、異なる経路を介してバイオマスから生成することができる。例えば、それらは、トウモロコシの穂軸、オート麦、小麦ふすま、もみ殻、サトウキビ、およびおがくずなどの多くの農業および他の植物ベースの製品の副産物である、フルフラールから調製することができる。
【0076】
フルフラール、または対応する代用の類似体は、例えば、米国特許第2838523号または国際公開第2014/152366号に記述される技法を使用して、例えば、水素化によって、対応するテトラヒドロフルフリルアルコール化合物を最初に生成することによって、式1のモノマーに変換することができる。次いで、このアルコール化合物を、任意選択的に、-OH官能基の好適な変換後に使用して、例えば、縮合反応を通して式1のモノマーを生成することができる。
【0077】
例として、Xが-OC(O)-である場合、式1のエステルは、例えば、米国特許第3458561号またはLal & Green,J.Org.Chem.,1955,20,1030-1033に記述されているように、対応する不飽和カルボン酸、ハロゲン化アシル、またはカルボン酸無水物を使用する酸触媒によるエステル化によって形成することができる。別の方法として、それらは、ヒドロキシカルボン酸を用いてエステルを作り出し、続いて脱水して、例えば米国特許第5250729号に記述されるように、Xへと結合された基内にC=C二重結合を生成することによって作製することができる。さらなる実施例では、例えば米国特許第475213号に記述されるように、エステル交換を使用することができる。
【0078】
[マイクロスフェアおよびポリマーシェルの特性]
ポリマーシェルは、ポリマーシェルを構成するポリマーのガラス転移温度(T)以上で軟化する。ポリマーシェルのコア内の発泡剤(複数可)は、典型的に、シェル内の熱可塑性ポリマーのTを下回る温度で気化を開始し、それ故にポリマーがその軟化温度を上回って、すなわちTを上回って加熱された時にマイクロスフェアの膨張を引き起こすように選択される。また、その沸点がポリマーのTよりも高いが、その溶融温度を下回るように、発泡剤を選択することも可能であり、これにより気化が行われる前にシェルが最初に軟化する。しかしながら、マイクロスフェアが歪み、これは不均質かつ効率の低い膨張を引き起こす可能性があるため、これは望ましくない。
【0079】
膨張が開始する温度はTstartと呼ばれ、一方で最大膨張に達する温度はTmaxと呼ばれる。一部の用途では、マイクロスフェアは、例えば、押出成形または射出成形プロセスにおける熱可塑性材料の発泡のような高温用途で使用されるように、高いTstartおよび高い膨張能力を有することが望ましい。膨張性マイクロスフェアに対するTstartは、50~250℃、例えば、60~200℃、または70~150℃の実施形態にある。膨張性マイクロスフェアのTmaxは、70~300°C、最も好ましくは、例えば、70~230°Cまたは75~160°Cの範囲内の実施形態にある。
【0080】
ポリマーシェルを構成するポリマーのT、またはポリマーのうちの少なくとも1つは、Tstartと同一またはそれを下回ることができる。
【0081】
maxは、典型的に、膨張したマイクロスフェアの崩壊を回避するために、ポリマーシェルを構成するポリマーの融点を下回る。
【0082】
膨張性マイクロスフェアは、好ましくは1~500μm、より好ましくは3~200μm、最も好ましくは3~100μmの体積中位径を有する。
【0083】
本明細書で使用される場合、膨張性マイクロスフェアという用語は、以前には膨張していない、すなわち、未膨張の膨張性マイクロスフェアを指す。
【0084】
膨張性高分子マイクロスフェアでは、熱可塑性ポリマーシェルは、発泡剤を収容する中空コアまたは空洞を囲む。マイクロスフェアは、理想的には、いわゆるマルチコアマイクロスフェアとは対照的に、単一コアだけを含む。これらは図1Aおよび図1Bに例示され、ここで、1は熱可塑性ポリマーを示し、また2は発泡剤を収容する中空領域を示す。図1Bでは、このようにいかなる高分子シェルもなく、構造は、より発泡タイプまたはセル状タイプの構造内に発泡剤のポケットを備える高分子ビーズの代表的なものである。したがって、「コア-シェル」という用語は、単一コアのマイクロスフェアを、多重コアのマイクロスフェアと関連付けられた発泡/セル状構造から区別する。
【0085】
単一コアのマイクロスフェアは、ポリマーの単位質量当たりより多くの発泡剤を備える傾向があるため、マルチコアマイクロスフェアまたは発泡体と比較して、膨張特性が著しく改善される。それ故に、実施形態では、膨張性マイクロスフェアの所与のバッチまたは収集では、少なくとも60質量%が、単一コアのマイクロスフェア(発泡体/セル状構造とは対照的にコア/シェル構造を有する)であり、またさらなる実施形態では、少なくとも90質量%または少なくとも95質量%など、少なくとも80質量%が単一コアのマイクロスフェアである。
【0086】
[膨張性マイクロスフェアの膨張]
膨張は、Tstartを上回る温度に膨張性マイクロスフェアを加熱することによって達成される。温度上限は、マイクロスフェアが崩壊を開始する時によって設定され、またポリマーシェルおよび発泡剤の正確な組成に依存する。TstartおよびTmaxについての範囲(下記でさらに定義される)は、好適な膨張温度を見出すために使用することができる。
【0087】
膨張したマイクロスフェアの密度は、加熱についての温度および時間を選択することによって制御することができる。加熱は、任意の好適な手段によって、例えば、欧州特許第0348372号、国際公開第2004/056549号、または国際公開第2006/009643号に記述されるデバイスを使用することができる。
【0088】
膨張性マイクロスフェアは、乾燥形態で、または実施形態では水性媒体である、液体懸濁媒体中でのいずれかで加熱することによって膨張させることができる。実施形態では、結果としてもたらされる膨張したマイクロスフェアは、より少ない発泡剤を収容していてもよい。これは、マイクロスフェアの膨張に伴い、熱可塑性ポリマーシェルがより薄くなり、発泡剤が多いほど浸透性がより高くなるためである。
【0089】
膨張は、典型的に、未膨張マイクロスフェアの直径より、1.5~8、例えば、2~5倍大きい粒子直径をもたらす。膨張後、マイクロスフェアの密度は典型的に0.6g/cm未満である。好ましい実施形態では、膨張したマイクロスフェアの密度は、0.06以下、例えば、0.005~0.06g/cmの範囲内である。典型的に、加熱された粒子の密度が1g/cm以上である場合、マイクロスフェアは膨張していないか、またはマイクロスフェアの実質的な凝集がある。
【0090】
膨張したマイクロスフェアの体積中位径は、典型的に750μm以下、例えば、500μm以下、またはより一般的には、300μm以下である。膨張したマイクロスフェアの体積平均径はまた、典型的に5μm以上、例えば、7μm以上、10μm以上、または20μm以上である。例示の範囲としては、5~750μm、5~500μm、5~300μm、7~750μm、10~300μm、20~750μm、20~500μm、または20~300μmが挙げられる。
【0091】
[発泡剤]
実施形態では、発泡剤、時として起泡剤または推進剤と称されることもある発泡剤は、マイクロスフェアの膨張を可能にするために熱可塑性シェルのTを上回る温度で十分に高い蒸気圧を有するように選択される。
【0092】
実施形態では、発泡剤、または複数の発泡剤のうちの少なくとも1つの沸点温度(大気圧における)は、熱可塑性ポリマーシェルを構成するポリマーのTより高くはない。実施形態では、発泡剤の大気圧における沸点は、-50~250℃、例えば、-20~200℃、または-20~100℃の範囲内とすることができる。実施形態では、膨張性マイクロスフェア内の発泡剤の量は、少なくとも5重量%であり、または実施形態では、少なくとも10重量%である。実施形態では、マイクロスフェア内の発泡剤の最大量は、マイクロスフェアの総重量に基づいて、60重量%、例えば、50重量%、35重量%、または25重量%である。例示の範囲としては、5~60重量%、5~50重量%、5~35重量%、5~25重量%、10~60重量%、10~50重量%、10~35重量%、および10~25重量%が挙げられる。
【0093】
発泡剤は、炭化水素、例えば、1~18個の炭素原子(3~12個の炭素原子など)を有する炭化水素とすることができ、また実施形態では4~10個の炭素原子とすることができる。炭化水素は、飽和または不飽和炭化水素とすることができる。炭化水素は、脂肪族または芳香族、典型的に脂肪族(分岐炭化水素、直鎖炭化水素、および環状炭化水素を含む)とすることができる。脂肪族炭化水素は、典型的に不飽和である。実施形態では、炭化水素は、C~C12アルカン、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、ドデカン、およびイソドデカンなどの直鎖または分岐アルカンから選択される。実施形態では、炭化水素は、C~C10アルカンから選択される。
【0094】
発泡剤のさらなる例としては、ジアルキルエーテルおよびハロカーボン、例えば、クロロカーボン、フルオロカーボン、またはクロロフルオロカーボンが挙げられる。ジアルキルエーテルは、各々が、C~Cアルキル基、例えば、C~Cアルキル基から選択される2つのアルキル基を含むことができる。ハロカーボンは、実施形態で、塩素およびフッ素から選択される1つ以上のハロゲン原子を含むC~C10ハロカーボンとすることができる。実施形態では、ハロカーボンは、ハロアルカン、C~C10へのハロアルカンなどである。ジアルキルエーテルおよびハロアルカン中のアルキル基またはハロアルキル基は、直鎖、分岐、または環状とすることができる。
【0095】
発泡剤は、単一の化合物または化合物の混合物とすることができる。例えば、上述の発泡剤のうちの任意の1つ以上の混合物を使用することができる。
【0096】
実施形態では、環境上の理由から、1つ以上の発泡剤は、例えばアルカンなどの(ジ)アルキルエーテルおよび炭化水素から選択される。さらなる実施形態では、1つ以上の発泡剤は、アルカンから選択される。ハロアルカンは、その潜在的なオゾン層破壊特性に起因して、またその概してより高い地球温暖化係数にも起因して、回避されることが好ましい。飽和炭化水素は、不飽和炭化水素よりも好ましい。なぜなら、後者は熱可塑性高分子シェルを調製するために使用されるモノマーとの副反応を潜在的に受ける可能性があるためである。これは、中空コア中の発泡剤の量を低減する可能性があり、または高分子マイクロスフェアの形成を妨害する可能性さえある。
【0097】
[マイクロスフェアの生成]
マイクロスフェアは、懸濁重合プロセスで調製することができる。本プロセスでは、モノマーおよび発泡剤を含む有機液滴の水性分散体(またはエマルション)は、フリーラジカル開始剤の存在下で重合され、ここで、モノマーのうちの少なくとも1つは式1による。
【0098】
これを行う典型的なやり方としては、米国特許第3615972号、米国特許第3945956号、米国特許第4287308号、米国特許第5536756号、欧州特許第0486080号、米国特許第6509384号、国際公開第2004/072160号、および国際公開第2007/091960号に記述されるプロセスが挙げられる。
【0099】
懸濁重合の典型的なプロセスでは、モノマー(複数可)および発泡剤(複数可)を一緒に混合して、いわゆる油相または有機相を形成する。次いで、油相を、例えば、撹拌することによってまたは他のかき混ぜる手段によって水性混合物と混合して、エマルションの形態とすることができる液滴の微細な分散体を形成する。エマルションまたは分散体の液滴サイズは、操作することができ、またこれらの液滴サイズは典型的に、最大500μm、そして典型的には3~100μmの範囲内の中位径を有する。分散体またはエマルションは、当技術分野で知られているデバイスによって調製されてもよい。
【0100】
分散体またはエマルションは、界面活性剤、ポリマー、または粒子などの当技術分野で知られているような、いわゆる安定化化学物質または懸濁化剤で安定化されてもよい。
【0101】
[エマルション安定剤]
実施形態では、エマルションが形成される。さらなる実施形態では、エマルションは、いわゆる「ピッカリングエマルション」プロセスによって安定化される。エマルション液滴の安定化は、いくつかの理由から好ましい。安定化を有しないと、モノマーおよび発泡剤を含有するエマルション液滴の合体が生じる場合がある。合体は、不均一なエマルション液滴サイズの分布が、異なるサイズを有するエマルション液滴の望ましくない割合をもたらし、これが結果として重合後の熱膨張性マイクロスフェアの望ましくない特性につながるなどの悪影響を有する。さらに、安定化は、熱膨張性マイクロスフェアの集合を防止する。加えて、安定化は、不均一な熱膨張性マイクロスフェアの形成、ならびに/または熱膨張性マイクロスフェアの不均一な熱可塑性シェルおよび不完全な熱可塑性シェルの形成を防止する場合がある。懸濁化剤は、モノマー(複数可)の総重量に基づいて、最大20重量%、例えば、1~20重量%の量で存在することが好ましい。
【0102】
一部の実施形態では、懸濁化剤は、Ca、Mg、Ba、Zn、Ni、およびMnなどの金属の塩、酸化物、および水酸化物からなる群から選択され、例えば、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、シュウ酸カルシウム、ならびに亜鉛、ニッケル、およびマンガンの水酸化物から選択される1つ以上である。これらの懸濁化剤は、高pH、好ましくは5~12、最も好ましくは6~10で好適に使用される。水酸化マグネシウムが使用されることが好ましい。しかしながら、例えば、式1のモノマーまたはもたらされたポリマーが加水分解されやすい場合がある場合、時として、アルカリ性条件を回避する必要がある。
【0103】
したがって、実施形態では、例えば、1~6の範囲内(3~5の範囲内など)の低pHで作業することが有利である場合がある。このpH範囲に対して好適な懸濁化剤は、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ガム寒天、シリカ、コロイド状粘土、アルミニウムまたは鉄の酸化物および水酸化物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、シリカが使用される。
【0104】
シリカが使用される場合、シリカゾル(コロイド状シリカ)の形態とすることができ、これは典型的にシリカ粒子を含む水性シリカゾルである。
【0105】
シリカ粒子は、重合プロセス中に有機相と水相との間の界面に安定化保護層を提供することができ、これは懸濁または乳化した有機相液滴の合体を防止または低減する。
【0106】
シリカ粒子は、例えば、米国特許第3615972号に開示されるような、1つ以上の補助安定剤と組み合わせることができる。補助安定剤は、金属イオン(Cr(III)、Mg(II)、Ca(II)、Al(III)、またはFe(III)など)、および凝集剤(アジピン酸およびジエタノールアミンの重縮合オリゴマーなど)から任意選択的に、還元剤と共に選択することができる。
【0107】
実施形態では、コロイド状シリカ粒子の表面は、1つ以上の金属イオンで修飾されて、いわゆる「電荷逆転」したシリカゾルを生成することができる。こうした表面修飾は、+3または+4酸化状態を形式的に採用する元素を含む部分を用いた修飾を含む。こうした修飾元素の例としては、ホウ素、アルミニウム、クロム、ガリウム、インジウム、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、およびセリウムが挙げられる。ホウ素、アルミニウム、チタン、およびジルコニウムは、シリカ表面、とりわけアルミニウム修飾水性シリカゾルを修飾するために特に好適である。これらは、例えば、米国特許第3007878号、米国特許第3139406号、米国特許第3252917号、米国特許第3620978号、米国特許第3719607号、米国特許第3745126号、米国特許第3864142号、および米国特許第3956171号に記述されているような知られている方法を使用して調製することができる。
【0108】
実施形態では、表面は、例えば、1つ以上の有機シラン化合物で修飾された後、1つ以上の有機基を含むことができる。シリカ表面上にあることができる典型的な有機シラン基としては、国際公開第2018/011182号および国際公開第2018/213050号に記述されるものが挙げられる。それ故に、有機シラン部分は、基E-Si≡によって表されてもよく、ここで、-Si≡は、1つ以上のシロキサン(-Si-O-Si)結合を介してシリカ粒子の表面に結合されるシラン部分由来のケイ素原子である。
【0109】
Eは、アルキル、エポキシアルキル、アルケニル、アリール、ヘテロアリール、C1~6アルキルアリール、およびC1~6アルキルヘテロアリールから選択することができる有機基である。これらは、任意選択的に、-Rまたは-LRから選択される1つ以上の基で置換することができる。存在する場合、Lは、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)O-、-C(O)OC(O)-、-C(O)OC(O)-、-N(R)-、-N(R)C(O)-、-N(R)C(O)N(R)-、および-C(O)N(R)-から選択される連結基である。
【0110】
は、水素、F、Cl、Br、アルキル(例えば、C1~6アルキル)、アルケニル(例えば、C1~6アルケニル)、アリール(例えば、C5~8アリール)、ヘテロアリール(例えば、O、S、およびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むC5~8ヘテロアリール)、C1~3アルキル-アリールおよびC1~3アルキル-ヘテロアリールから選択することができる。アルキル基は、C1~6アルキルとすることができる。アリール基は、5~8員環を有するものとすることができる。ヘテロアリール基は、O、SおよびNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む、5~8員環を有するものとすることができる。R基は、任意選択的に、OH、F、Cl、Br、エポキシ、-C(O)OR、-OR、および-N(Rから選択される1つ以上の基で置換することができる。Rは、HまたはC1~6アルキルである。
【0111】
実施形態では、Eは、ヒドロキシ、チオール、カルボキシル、エステル、エポキシ、アシルオキシ、ケトン、アルデヒド、(メタ)アクリルオキシ、アミノ、メルカプト、アミド、およびウレイドから選択される1つ以上の基を含むことができる。実施形態では、Eは、エポキシ基または1つ以上のヒドロキシ基を含むことができる。
【0112】
具体的な例では、Eは、エポキシ基、(メタ)アクリルアミド基、または1つ以上のヒドロキシ基で任意選択的に置換されたC1~6アルキルから選択される1つ以上の基から選択することができる。実施形態では、Eは、-R-O-Rとすることができ、式中、RはC1~6アルキルであり、Rは、エポキシ基または1つ以上のヒドロキシ基で任意選択的に修飾されたC1~6アルキルである。
【0113】
Eの具体的な例としては、3-グリシドキシプロピル、ジヒドロキシプロポキシプロピル[例えば、HOCHCH(OH)CHOC-]、およびメタクリルアミドプロピルが挙げられる。
【0114】
有機シラン修飾コロイド状シリカは、米国特許第2008/0245260号、国際公開第2012/123386号、国際公開第2004/035473号、および国際公開第2004/035474号に記述される手順を使用して作製することができる。
【0115】
表面修飾の割合に関しては、これは、コロイド状シリカの表面1平方メートル当たり、μモル修飾基の単位で表現することができる。実施形態では、1つ以上の有機基からの表面被覆は、0.35~3.55μモル/m、例えば、0.35~2.82μモル/m、または0.77~2.82μモル/mの範囲内である。
【0116】
[補助安定剤]
懸濁化剤の効果を高めるために、少量の1つ以上の補助安定剤を添加することもできる。実施形態では、補助安定剤の量は、モノマー(複数可)の総重量に基づいて、最大1重量%、例えば0.001~1重量%の量で存在する。補助安定剤は、例えば、水溶性スルホン化ポリスチレン、アルギネート、カルボキシメチルセルロース、水酸化テトラメチルアンモニウムもしくは塩化テトラメチルアンモニウム、または水溶性複合樹脂性アミン縮合物(ジエタノールアミンおよびアジピン酸の水溶性縮合物、エチレンオキシドの水溶性縮合物など)、尿素およびホルムアルデヒド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、タンパク質性などの両性材料(ゼラチン、糊、カゼイン、アルブミン、グルチン、およびこれに類するものなど)、メトキシセルロースのような非イオン性材料、通常乳化剤として分類されるイオン性材料(石鹸、アルキル硫酸塩、およびスルホン酸塩など)、ならびに長鎖四級アンモニウム化合物のうちの1つ以上から、選択することができる有機材料とすることができる。
【0117】
[割合]
好適な、典型的にバッチ式の、膨張性マイクロスフェアを調製するための手順では、重合は、反応容器内で行われる。実施形態では、本手順は、モノマー(複数可)と、発泡剤(複数可)とを含む100部のモノマー相と、0.1~5部の重合開始剤と、100~800部の水相と、1~20部の懸濁化剤と、を含むか、またはそれらからなる、混合物を調製することを含む。次いで、混合物は均質化される。モノマー相の液滴サイズは、例えば、様々な懸濁化剤を有するすべての類似の製造方法に適用することができる、米国特許第3,615,972号に記述される原理により、最終的な膨張性マイクロスフェアのサイズを決定する。必要とされるpHは、上述のような、使用される懸濁化剤に依存する。
【0118】
[開始剤]
得られたエマルションは、少なくとも1つの開始剤を使用する従来のラジカル重合に供される。典型的に、開始剤は、モノマー相の重量に基づいて0.1~5重量%の量で使用される。従来のラジカル重合開始剤は、過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、過酸化エステル、過酸化ジカーボネート、またはアゾ化合物などの有機過酸化物のうちの1つ以上から選択される。好適な開始剤としては、ペルオキシ二炭酸ジセチル、ペルオキシ二炭酸ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)、過酸化ジオクタニル(dioctanyl peroxide)、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過酸化ジデカノイル、過酢酸tert-ブチル、過ラウリン酸tert-ブチル、過安息香酸tert-ブチル、tert-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、クメンエチルペルオキシド、ジイソプロピルヒドロキシジカルボキシレート、2,2’-アゾ-ビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-プロピオン酸メチル)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、およびこれに類するものが挙げられる。光開始剤またはマイクロ波支援開始と組み合わせた放射線(高エネルギーイオン化放射線、UV放射線など)を用いて重合を開始することも可能である。
【0119】
重合が本質的に完了する時、マイクロスフェアは通常、水性スラリーまたは分散体として得られ、これは、そのようなものとして使用することができ、またはベッド濾過、フィルタープレス、葉状濾過、回転濾過、ベルト濾過、または遠心分離などの任意の従来の手段によって、脱水されて、いわゆる湿潤ケーキを得ることができる。噴霧乾燥、棚乾燥、トンネル乾燥、回転乾燥、ドラム乾燥、空気乾燥、ターボ棚乾燥、ディスク乾燥、または流動層乾燥などの任意の従来の手段によってマイクロスフェアを乾燥して、粉末マイクロスフェアを生成することも可能である。マイクロスフェアは、懸濁形態(例えば、水性懸濁液として)、湿潤形態(例えば、湿潤ケーキ)、または乾燥形態(例えば、粉末化)で提供することができる。それらは、予め膨張した形態または膨張した形態のいずれかで提供することができる。
【0120】
[残留モノマーの低減]
適切な場合、マイクロスフェアは、任意の段階で、例えば、国際公開第2004/072160号または米国特許第4287308号に記述される手順のうちのいずれかによって、残留未反応モノマーの量を低減する、またはさらに低減するように処理されてもよい。
【0121】
残留モノマーの反応性は、そのマイクロスフェアを食品、飲料、および医薬品のパッケージなどの用途にとってあまり望ましくないものにする可能性があるため、残留モノマーの存在は望ましくない。
【0122】
マイクロスフェアのポリマーシェルまたはコポリマーシェルを調製する際の式1のモノマーの使用は、ポリマー中に残っている残留モノマーの量を低減するのを助けることができる。
【0123】
例えば、マイクロスフェアは、残留未反応モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリル、および式1によるモノマー(アクリル酸テトラヒドロフルフリルなど)のうちの1つ以上など)の量を低減する、またはさらに低減するために、硫黄のある特定のオキソ酸、またはその塩もしくは誘導体などの薬剤で処理されてもよい。
【0124】
一実施形態では、マイクロスフェアは、当該残留モノマーの少なくとも一部と直接的にまたは間接的に反応する薬剤で処理され、当該薬剤は、硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択されるもので、これは少なくとも1つの遊離電子対を有し、かつ3つの酸素原子を結合する、または過酸化物基を介して連結される少なくとも2つの硫黄原子を含む、少なくとも1つの硫黄原子を含む。驚くべきことに、こうした処理を用いて、マイクロスフェア内のモノマーの残留量は、例えば、1,000ppm未満、特に500ppm未満など、2,000ppm未満に低減することができることが見出された。
【0125】
好ましい実施形態によれば、マイクロスフェアは、硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択され、過酸化物基を介してともに連結される少なくとも2つの硫黄原子を含む薬剤で処理される。特に好ましいのは、過硫酸塩である。驚くべきことに、こうした過硫酸塩処理を用いて、マイクロスフェア内のモノマーの残留量は、500ppm未満、例えば、300ppm未満、特に200ppm未満、そしてさらには100pm未満などへとさらに低減することができることが見出された。驚くべきことに、過硫酸塩処理は、特に、マイクロスフェア内の残留アクリロニトリルの量を、500ppm未満に、例えば、300ppm未満、特に200ppm未満、さらには100ppm未満、または50ppm未満などへと低減する場合がある。
【0126】
薬剤は、そのようなものとして、または前駆体からの1つ以上の化学反応を通してその場で形成されて添加されてもよい。
【0127】
硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤のための好適な薬剤は、少なくとも1つの遊離電子対を有する少なくとも1つの硫黄原子を含み、また、重亜硫酸塩(亜硫酸水素塩とも呼ばれる)、亜硫酸塩、および亜硫酸を含む3つの酸素原子を結合し、その中で重亜硫酸塩および亜硫酸塩が好ましい。好適な対イオンとしては、アンモニウム、ならびにアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンなどの一価または二価の金属イオンが挙げられる。最も好ましいのは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアンモニウムである。また、上記の群のうちのいずれかを含む有機化合物(アルキル亜硫酸塩またはジアルキル亜硫酸塩など)も、使用されてもよい。特に好ましい薬剤は、亜硫酸ジメチル、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸水素マグネシウムである。最も好ましいのは重亜硫酸ナトリウムである。
【0128】
前駆体の例としては、二酸化硫黄、塩化スルホニル、二亜硫酸塩(メタ重亜硫酸塩またはピロ亜硫酸塩とも呼ばれる)、亜ジチオン酸塩(ditionite)、ジチオン酸塩(ditionate)、スルホキシル酸塩(例えば、ナトリウム、カリウム、または上記で定義される他の対イオンの)が挙げられる。好ましい前駆体は、二酸化硫黄、二亜硫酸塩、および亜ジチオン酸塩である。特に好ましい前駆体は、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、および亜ジチオン酸ナトリウムである。対応する酸が存在する限り、それらもまた有用である。前駆体は、例えば、酸化還元反応によって、かつ/または単純に水性媒体中に溶解されることによって、上記で定義されるように、活性薬剤を形成するために簡単に反応することができる。
【0129】
過酸化物基を介して連結される少なくとも2つの硫黄原子を含む、硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤に対して好適な薬剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、または過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩が挙げられる。好ましいのは、過硫酸ナトリウムである。対応する酸が存在する限り、それらもまた有用である。
【0130】
上記で定義されるような薬剤は、達成することができる膨張の程度など、マイクロスフェアの重要な特性に悪影響を与えることなく、モノマーと直接的または間接的に反応することが見出された。さらに、マイクロスフェア上またはマイクロスフェア内に残っている反応生成物は、例えば、アクリロニトリルより毒性が低く、また変色のいかなる著しい問題も引き起こさない。
【0131】
残留モノマーと反応するためにマイクロスフェアを薬剤と接触させる工程の間、マイクロスフェアは、好ましくは約0.1~約50重量%のマイクロスフェア、最も好ましくは約0.5~約40重量%のマイクロスフェアを含む水性スラリーまたは分散体の形態であることが好ましく、一方で薬剤は、好ましくは液相内に、好ましくは約0.1重量%から最高で飽和限界までの濃度、最も好ましくは約1~約40重量%の濃度で溶解される。しかしながら、マイクロスフェアは、別の方法として、薬剤またはその混合物を溶解する任意の他の液体媒体中に懸濁されることが可能である。スラリーまたは分散体は、重合混合物に由来し、マイクロスフェアはその重合混合物から生成されることが好ましい。
【0132】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、以前に定義した薬剤または前駆体の添加は、次にモノマーと反応する亜硫酸塩、重亜硫酸塩、または過硫酸塩を含む溶液をもたらすと考えられる。
【0133】
少なくとも1つの遊離電子対を有し、かつ3つの酸素原子を結合する硫黄原子のモル数、または2つの硫黄原子と結合する過酸化物基のモル数として表現される薬剤の量は、残留モノマーのモル量と比較され、好ましくは少なくとも約等モルであり、より好ましくは約等モル~約200%過剰であり、最も好ましくは、モル基準で約等モル~約50%過剰であり、特に最も好ましくは、モル基準で約モル~約25%過剰である。スラリーまたは分散体が重合混合物に由来する場合、そしてそれ故に液相内にも残留モノマーを含有する場合、これらのモノマーは、マイクロスフェア内またはマイクロスフェア上に存在するものに加えて考慮されなければならない。
【0134】
残留モノマーと反応する薬剤または薬剤のための前駆体は、マイクロスフェアの生産中に、任意選択的に重合を依然として実行している時に、添加されてもよいが、薬剤または前駆体の添加の時点では、重合はほぼ完了し、そして15%未満、好ましくは10%未満の残留モノマーしか残っていないことが好ましい。薬剤または前駆体は、好ましくは、マイクロスフェアが形成されたが、依然としてスラリーまたは分散体の状態である時、そして最も好ましくは、マイクロスフェアが重合が行なわれたのと同じ反応容器内に依然としてある時に、添加される。
【0135】
別の方法として、薬剤または前駆体は、マイクロスフェアが重合化反応器から取り出された後、任意選択的に脱水、洗浄、または乾燥などの後続する操作のいずれかの後に、別個の工程でマイクロスフェアに添加されてもよい。残留モノマーを含む未処理のマイクロスフェアは、その後は中間生成物と見なすことが可能であり、これらは任意選択的に別の場所に搬送し、そして残留モノマーを除去するために薬剤と接触させることができる。
【0136】
上記の選択肢のうちのいずれかでは、薬剤または前駆体は、すべて一度に、または少しずつ添加されてもよい。
【0137】
マイクロスフェアを薬剤と接触させる工程の間のpHは、好ましくは約3~約12であり、最も好ましくは約3.5~約10である。当該工程の間の温度は、好ましくは約20~約100℃、最も好ましくは約50~約100℃、特に最も好ましくは約60~約90℃である。
【0138】
当該工程の間の圧力は、好ましくは約1~約20バール(絶対圧力)、最も好ましくは約1~約15バールである。当該工程に対する時間は、好ましくは少なくとも約5分、最も好ましくは少なくとも約1時間である。いかなる危機的な上限もないが、実用的かつ経済的理由から、時間は、好ましくは約1~約10時間、最も好ましくは約2~約5時間である。当該工程の後、マイクロスフェアは、任意の好適な従来の手段によって脱水され、洗浄され、かつ乾燥されることが好ましい。
【0139】
[マイクロスフェアの使用]
本発明の膨張性マイクロスフェアおよび膨張したマイクロスフェアは、様々な用途、典型的には起泡剤および/または低密度充填剤として有用である。
【0140】
マイクロスフェアを使用することができる用途の例としては、発泡樹脂または低密度樹脂、塗料、コーティング(例えば、滑り止めコーティング、太陽光反射、断熱コーティング、および車体下部コーティング)、接着剤、セメント、インク(例えば、水性インクなどの印刷インク、溶剤性インク、プラスチゾルインク、感熱プリンター用紙、およびUV硬化インク)、紙および板紙、多孔質セラミック、不織材料、スポーツシューズソールなどの靴底、テクスチャ付き被覆材、人工皮革、食品パッケージ、ひび割れ充填剤、パテ、シーラント、玩具としての粘土、ワインコルク、爆発物、ケーブル絶縁体、保護用ヘルメットライナー用発泡体、および自動車のウェザーストリップの生産が挙げられる。マイクロスフェアはまた、例えば、欠陥を取り除く、美的外観を改善する、または厚みを増すための、天然革の処理または加工でも使用することができる。
【0141】
マイクロスフェアはまた、ポリマーまたはゴム材料の製造でも使用することができる。例としては、熱可塑性プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(エチレン-ビニルアセテート)、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンポリマー、ポリ乳酸、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、およびポリテトラフルオロエチレン)、熱可塑性エラストマー(例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンコポリマー、熱可塑性ポリウレタン、および熱可塑性ポリオレフィン)、スチレン-ブタジエンゴム、天然ゴム、加硫ゴム、シリコーンゴム、ならびに熱硬化性ポリマー(例えば、エポキシ、ポリウレタン、およびポリエステル)が挙げられる。
【0142】
これらの膨張したマイクロスフェアの用途の一部では、特に、パテ、シーラント、玩具としての粘土、本革、塗料、爆発物、ケーブル絶縁体、多孔質セラミック、および熱硬化性ポリマー(エポキシ、ポリウレタン、およびポリエステルのような)において有利である。一部の事例では、例えば、車体下部コーティング、シリコーンゴム、および軽量発泡体において、本発明の膨張したマイクロスフェアと膨張性マイクロスフェアとの混合物を使用することも可能である。
【実施例
【0143】
本発明は、以下の非限定的な実施例に関連してさらに記述される。別段の記載がない場合、すべての部および百分率は重量部または重量百分率である。
【0144】
[分析の詳細]
膨張特性は、STARソフトウェアを実行しているPCとインターフェース接続された、Mettler Toledo TMA/SDTA851熱機械分析装置で乾燥粒子上で評価した。分析するサンプルを、直径6.8mmおよび深さ4.0mmの酸化アルミニウムるつぼに収容された0.5mg(+/-0.02mg)の熱膨張性マイクロスフェアから調製した。るつぼを、直径6.1mmの酸化アルミニウムのリッドを使用して封止した。TMA膨張プローブタイプを使用して、サンプルの温度を、プローブで0.06Nの負荷(正味)を加えながら、20℃/分の加熱速度で、約30℃から240℃へと上昇した。プローブの垂直の変位を測定して、膨張特性を分析した。
-膨張の初期温度(Tstart):プローブの変位が開始した時の温度(℃)、すなわち、膨張を開始する温度、
-膨張の最大温度(Tmax):プローブの変位がその最大に達した時の温度(℃)、すなわち最大膨張が得られた温度、
-最大変位(Lmax):プローブの変位が最大に達した場合のプローブの変位(μm)、
-TMA密度:プローブの変位がその最大値に達した時に、サンプル重量(d)を試料の体積増加(dm)で割ったもの。TMA密度が低いほど、マイクロスフェアは良好に膨張し、またTMA密度が低いほど、通常、より望ましい膨張特性を示す。0.2g/cm以下のTMA密度が望ましいと考えられ、また少なくとも0.15g/cm以下のTMA密度が特に望ましいと考えられる。
【0145】
粒子サイズおよびサイズ分布は、湿潤サンプルの上でMalvern Mastersizer Hydro 2000 SM装置でレーザー光散乱によって決定された。粒子サイズの中央値は、体積中位径、D(50)として提示される。スパンは、[D90-D10]/D50から計算され、式中、D90は体積ベースでマイクロスフェアの90%を包含する直径であり、またD10はマイクロスフェアの10%を包含する直径である。
【0146】
発泡剤の量は、STARソフトウェアを用いたMettler Toledo TGA/DSC 1での熱重量分析(TGA)によって決定した。可能な限り多くの水分を、また存在する場合には残留モノマーも排除するため、分析前にすべてのサンプルを乾燥させた。分析は、窒素の雰囲気下で、25℃分-1の加熱速度を使用して、30℃で開始し、650℃で終わるように実施した。
【0147】
得られたマイクロスフェアスラリー中の残留モノマーの量は、水素炎イオン化検出器(FID)および極性分離カラムを装備したガスクロマトグラフ(GC)を使用するガスクロマトグラフィーを使用する溶媒抽出後に決定された。マイクロスフェアスラリーの規定されたアリコートを、規定量の内部標準と共に、3時間の間撹拌しながらアセトンで抽出した。抽出されたサンプルを遠心分離し、そして上清の一部をGCサンプルバイアル内に移した。スラリーサンプル内の各モノマーの残留濃度を、GC-FID(水素炎イオン化検出器を装備したガスクロマトグラフ)を用いて分析し、ここで、異なるモノマーを極性Agilent InnoWaxカラムで分離した。重亜硫酸ナトリウムまたは過硫酸ナトリウムを用いた処理の前および後の一部の実施例のマイクロスフェアに対して決定された残留モノマーの量は、下記の表6および表7に明記される。
【0148】
[合成手順]
熱可塑性コア/シェルマイクロスフェアを、以下の表1~表3で特定される構成成分および量を使用して、以下の一般的な手順に従って調製した。
【0149】
有機相を、モノマー、架橋剤、および発泡剤(複数可)を撹拌容器内で混合することによって調製した。次いで、これを、安定剤、重合開始剤、水酸化ナトリウム、および酢酸を含む水相と混合した。これらの最後の2つの構成成分は、水相のpHがおおよそ4.5であることを確保するために添加した。
【0150】
典型的な実験では、水相の含有量は以下の通りであった。

添加水: 362.5g
NaOH(1M) 15.8g
酢酸(10%) 25.3g
安定剤(シラン化コロイド状シリカ) 32.0g
開始剤(35%ペルオキシ二炭酸ジセチル) 7.5g
すすぎ水 50.0g
【0151】
すすぎ水は、様々な構成要素を添加した後に、入口パイプを反応器へと洗い流すために使用される水を指す。
【0152】
混合物を、プロペラミキサーを使用して激しく撹拌して、均質な分散体を形成した。混合物の油(有機)相含有量は、40重量%であった。様々な実施例のモノマー混合物を表1に示す。油相組成を表2に示し、また水相組成を表3に示す。
【0153】
[実施例1~15]
これらの実施例で使用されるモノマーは、アクリロニトリル、イタコン酸ジメチル、およびアクリル酸テトラヒドロフルフリルである。水相および有機相を、1Lの体積の回転子/固定子反応器に移した。定常撹拌下で、57℃に温度を昇温し、その温度で5時間保持することによって、重合が開始した。次いで、反応器温度を63℃に昇温し、同じ混合条件下で温度を4時間保持した。次いで、あらゆる残留未反応モノマーのレベルを低減するために、重亜硫酸ナトリウムの20重量%水溶液を70℃の温度で添加した。添加量は、重亜硫酸ナトリウムの量が(乾燥ベースで)全有機相の14重量%であることを確保するように選択された。次いで、温度を4.5時間保持した後、室温まで放冷した。
【0154】
スラリーを、63μmのフィルターを通して濾過して、凝集粒子を除去した。次いで、得られたマイクロスフェアを、密度、粒子サイズ、膨張特性、濾過した凝集材料の量、および長期安定性(すなわち、4か月後の膨張特性)について分析した。
【0155】
比較例16
イタコン酸ジメチル、アクリロニトリル、およびアクリル酸メチルモノマーに基づくマイクロスフェアを、実施例1~15について上述したものと類似の手順に従って調製した。
【0156】
[実施例17]
実施例17のマイクロスフェアは、重亜硫酸ナトリウムの添加した量を、重亜硫酸ナトリウムの量が(乾燥ベースで)全有機相の5.7重量%となることを確保するように選択したことのみを修正して、実施例1~15について記載したものと類似の手順に従って調製された。
【0157】
[実施例18~21]
実施例18~21のマイクロスフェアを、あらゆる残留未反応モノマーのレベルを低減するために、重亜硫酸ナトリウムの代わりに過硫酸ナトリウムの25重量%の水溶液を73℃の温度で添加したことのみを修正して、実施例1~15について記載したものと類似の手順に従って調製した。添加量は、過硫酸ナトリウムの量が(乾燥ベースで)全有機相の5.7重量%であることを確保するように選択された。
【0158】
[実施例22~32]
実施例22~32のマイクロスフェアを、あらゆる残留未反応モノマーのレベルを低減するために、重亜硫酸ナトリウムの代わりに過硫酸ナトリウムの25重量%の水溶液を73℃の温度で添加したことのみを修正して、実施例1~15について記載したのと類似した手順に従って調製した。添加量は、過硫酸ナトリウムの量が(乾燥ベースで)全有機相の2.5重量%であることを確保するように選択された。実施例23、26、および28~31では、メタクリル酸メチル(MMA)をさらなるモノマーとして添加した。実施例27では、アクリル酸メチル(MA)をさらなるモノマーとして添加した。
【0159】
マイクロスフェアの様々な特性を表4および表5に提示される。
【0160】
【表1】
(1)量の単位は、総モノマーの重量%である(架橋剤を除く)
(2)ACN=アクリロニトリル
(3)DMI=イタコン酸ジメチル
(4)THFA=アクリル酸テトラヒドロフルフリル
(5)MA=アクリル酸メチル
(6)MMA=メタクリル酸メチル
【0161】
【表2】
(1)量の単位は、100重量部のモノマーに加えた重量部
(2)架橋剤=トリメチロールプロパントリメタクリレート
(3)有機相、すなわちモノマー、発泡剤、および架橋剤の充填量(重量%);iB=イソブタン、nB=n-ブタン、iP=イソペンタン、iO=イソオクタン
【0162】
【表3】
(1)シリカA=体積平均粒子サイズが60nmの50重量%の水性コロイド状シリカであり、またこれは60:40モル比のグリシドキシプロピルシランおよびプロピルシランで表面修飾され、総表面被覆はシリカ表面の2.37μモル/mである。
(2)シリカB=体積平均粒子サイズが32nmの50重量%の水性コロイド状シリカであり、またこれは50:50モル比のグリシドキシプロポキシシランおよびプロピルシランで表面修飾され、総表面被覆はシリカ表面の2.37μモル/mである。
【0163】
【表4】
(1)未膨張マイクロスフェアの体積中央値粒子サイズ
(2)[D90-D10]/D50
(3)TGAによって測定されたマイクロスフェアの揮発性物質含有量(単位:重量%)、マイクロスフェアの総重量に基づく
(4)GCによって測定されたポリマーシェル内の残っているすべての未反応モノマーの合計
【0164】
【表5】
(1)測定せず。
【0165】
【表6】
(1)ACN=アクリロニトリル
(2)THFA=アクリル酸テトラヒドロフルフリル
(3)DMI=イタコン酸ジメチル
(4)MMA=メタクリル酸メチル
(5)MA=アクリル酸メチル
【0166】
【表7】
(1)ACN=アクリロニトリル
(2)THFA=アクリル酸テトラヒドロフルフリル
(3)DMI=イタコン酸ジメチル
(4)MMA=メタクリル酸メチル
(5)MA=アクリル酸メチル
【0167】
さらなる比較のために、国際公開第2019/043235号および国際公開第2019/101749号の開示、特に開示された比較例を参照することができる。
【0168】
国際公開第2019/043235号では、カプロラクトン/アクリロニトリルおよび乳酸/アクリロニトリルコポリマーからマイクロスフェアを調製する試みが行われた(実施例31~42、25ページ、15行目~28ページ、4行目に記載)。カプロラクトンおよび乳酸は両方とも、生物由来モノマーである。これらの試みは成功しなかった。
【0169】
同様に、国際公開第2019/101749号では、アクリロニトリル/アクリル酸メチル/マレイン酸ジメチルおよびアクリロニトリル/アクリル酸メチル/マレイン酸ジエチルコポリマーからマイクロスフェアを調製する試みが行われた(実施例25~30、24ページ、16行目~26ページ、5行目に記載)。マレイン酸ジメチルおよびマレイン酸ジエチルは、生物由来モノマーである。これらの試みも成功しなかった。
【0170】
本明細書に提示される結果は、式1のモノマーは、膨張性熱可塑性高分子マイクロスフェアを生成するために首尾よく使用することができること、したがって、こうしたマイクロスフェア内の持続可能に調達される材料の含有量を改善するために使用することができることを実証する。こうした結果は、上述の比較例を考慮すると、予想外である。
【0171】
結果はまた、マイクロスフェアが数か月の保存後にも依然として順調に膨張させることができることも示し、良好な保存寿命と良好な発泡剤保持特性を有することを示す。
【0172】
結果はさらに、マイクロスフェア内の残留モノマー含有量の低減を、熱可塑性ポリマーシェル内での式1のモノマーの使用によって達成することができることを示す。
【0173】
さらに、結果は、少なくとも1つの遊離電子対を有し、かつ3つの酸素原子を結合する、または過酸化物基を介して結合される少なくとも2つの硫黄原子を含む少なくとも1つの硫黄原子を含む硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤を用いたマイクロスフェアの処理が、マイクロスフェア内の残留モノマーの量を低減することを示す。特に、過酸化物基を介して結合される少なくとも2つの硫黄原子を含む硫黄のオキソ酸、その塩および誘導体からなる群から選択される薬剤を用いたマイクロスフェアの処理は、残留モノマーの量を、例えば、100ppm未満へなど、著しく低減する場合がある。残留アクリロニトリルの量の低減は、こうした過硫酸塩処理を使用する時に特に顕著である。
図1A
図1B
【国際調査報告】