(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】拡張可能ECMO延長カニューレシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230510BHJP
A61M 60/34 20210101ALI20230510BHJP
【FI】
A61M1/36 141
A61M60/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559925
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 US2021025461
(87)【国際公開番号】W WO2021202931
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504311419
【氏名又は名称】タフツ メディカル センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カプール, ナビン ケー.
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA03
4C077DD01
4C077DD21
4C077DD22
4C077DD26
4C077EE01
(57)【要約】
従来のECMO還流カニューレとの使用のための延長カニューレおよびインラインコネクタが、提供される。延長カニューレは、後退可能シースを介して、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行可能である、自己拡張導管を含む。延長カニューレは、自己拡張導管の近位端が、従来のECMOカニューレの端部内およびその近位に配置される一方、自己拡張導管の遠位端が、患者の胸部大動脈内に配置され、脳酸素化を改善し、全身の動脈拍動性を維持し、末端器官障害の潜在性を低減させるように、従来のECMO還流カニューレを通して挿入され得る。延長カニューレおよび/またはインラインコネクタは、単一アクセスポートを使用して、追加の介入または血管機器の送達を可能にし、それによって、現代のVA-ECMOに関連付けられた合併症を回避するために使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入口および出口を有するECMO還流カニューレとの使用のための延長カニューレであって、前記延長カニューレは、
近位端および遠位領域を有する細長いシャフトと、
前記細長いシャフトの前記遠位領域に結合された導管と
を備え、
前記導管は、入口、出口、および内部管腔を有し、前記導管は、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径を有し、
前記導管は、前記延長カニューレが前記ECMO還流カニューレの管腔を通して挿入されると、前記導管の前記入口が前記ECMO還流カニューレの前記出口と流体連通し、前記導管の前記出口が患者の胸部大動脈内にあるように、選択された長さを有する、
延長カニューレ。
【請求項2】
前記細長いシャフトは、前記導管を前記ECMO還流カニューレ内に位置付けるように構成されている、請求項1に記載の延長カニューレ。
【請求項3】
前記導管の内径は、冠動脈、末梢血管、脳介入、または弁介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内、経弁膜空気圧、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るように構成されている、請求項1に記載の延長カニューレ。
【請求項4】
前記導管は、可撓性生体適合性コーティングで封入された支持構造を備えている、請求項1に記載の延長カニューレ。
【請求項5】
前記支持構造は、自己拡張メッシュ、織物、または編組を備えている、請求項4に記載の延長カニューレ。
【請求項6】
前記支持構造は、形状記憶合金、プラスチック、またはステンレス鋼を備えている、請求項4に記載の延長カニューレ。
【請求項7】
前記導管の上を覆って除去可能に配置され、前記導管を前記折り畳まれた挿入状態に保持するように構成されたシースをさらに備えている、請求項4に記載の延長カニューレ。
【請求項8】
前記導管の前記入口の近傍の前記支持構造は、前記シースが前記導管の上を覆って前進させられるとき、前記折り畳まれた挿入状態への前記導管の移行を促進する特徴を備えている、請求項7に記載の延長カニューレ。
【請求項9】
前記特徴は、前記支持構造の近位端のテーパ状幾何学形状を備えている、請求項8に記載の延長カニューレ。
【請求項10】
前記特徴は、前記支持構造の近位端を前記細長いシャフトに結合する複数の支持脚部を備えている、請求項8に記載の延長カニューレ。
【請求項11】
前記導管は、1つ以上の細孔を有する軟質可撓性材料を備えている、請求項1に記載の延長カニューレ。
【請求項12】
延長カニューレシステムであって、前記延長カニューレシステムは、
請求項1に記載の延長カニューレと、
インラインコネクタと
を備え、
前記インラインコネクタは、
ECMO回路の出口に結合されるように構成された第1の分岐と、
管腔を有する第2の分岐であって、前記管腔は、それを通した前記延長カニューレの挿入を可能にするように構成されている、第2の分岐と、
前記ECMO還流カニューレに結合されるように構成された出口と
を有し、
前記第1および第2の分岐は、前記インラインコネクタの前記出口と流体連通し、
前記第2の分岐は、前記インラインコネクタの前記出口と同一直線上にある、
延長カニューレシステム。
【請求項13】
ECMO還流カニューレとの使用のためのインラインコネクタであって、前記インラインコネクタは、
ECMO回路の出口に結合されるように構成された第1の分岐と、
前記第1の分岐と流体連通する出口であって、前記出口は、前記ECMO還流カニューレに結合されるように構成されている、出口と、
前記出口と流体連通する第2の分岐と
を備え、
前記第2の分岐は、前記出口と同一直線上にある、インラインコネクタ。
【請求項14】
前記第2の分岐から前記出口まで延びている管腔をさらに備え、前記管腔は、延長カニューレ、冠動脈、末梢血管、脳、または弁膜介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内空気圧、経弁膜軸方向流、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定されている、請求項13に記載のインラインコネクタ。
【請求項15】
前記インラインコネクタの前記第2の分岐の入口に結合されるように構成された端部キャップをさらに備えている、請求項13に記載のインラインコネクタ。
【請求項16】
前記端部キャップは、止血弁を含む、請求項15に記載のインラインコネクタ。
【請求項17】
前記端部キャップは、二重止血弁を備えている、請求項16に記載のインラインコネクタ。
【請求項18】
前記端部キャップは、前記インラインコネクタの前記第2の分岐の管腔内に受け取られるように構成されたストッパを備え、前記ストッパは、前記インラインコネクタの前記第2の分岐内の血液のたまりを防止するように構成されている、請求項16に記載のインラインコネクタ。
【請求項19】
前記端部キャップは、薬物注入カテーテル、または圧力または流動センサのうちの少なくとも1つを受け取るように構成された管腔を備えている、請求項18に記載のインラインコネクタ。
【請求項20】
体外式膜型人工肺治療(ECMO)中、酸素化血液の再灌流を改善する方法であって、前記方法は、
シース内に拘束された自己拡張導管を有する延長カニューレを提供することと、
患者内に位置付けられたECMO還流カニューレを通して、前記延長カニューレおよび前記シースの遠位端を挿入することと、
前記延長カニューレおよび前記シースの遠位端を患者の胸部大動脈内のある位置まで前進させることと、
前記シースを前記延長カニューレに対して後退させ、前記自己拡張導管を折り畳まれた挿入状態から拡張させられた展開状態に移行させることと、
酸素化血液を前記ECMO還流カニューレおよび前記延長カニューレの自己拡張導管を通して流動させ、血液を前記患者の胸部大動脈に送達することと
を含む、方法。
【請求項21】
前記シースを前記自己拡張導管の上を覆って前進させ、前記自己拡張導管を前記折り畳まれた挿入状態に収縮させることと、
前記延長カニューレおよび前記シースを前記患者から除去することと
をさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
インラインコネクタの出口を前記ECMO還流カニューレに結合し、前記インラインコネクタの第1の分岐をECMO回路の出口に結合することをさらに含み、
前記延長カニューレおよび前記シースの前記遠位端を前記患者内に位置付けられたECMO還流カニューレを通して挿入することは、前記延長カニューレおよび前記シースの前記遠位端を前記インラインコネクタの前記第2の分岐を通して挿入することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ECMO還流カニューレとの使用のための弁であって、前記弁は、
ECMO回路に流動的に結合されるように構成された端部キャップであって、
前記端部キャップは、近位端、ECMO還流カニューレに結合されるように構成された遠位端、およびそれらの間に延びている管腔を備え、前記管腔は、延長カニューレ、冠動脈、末梢血管、脳介入、または弁膜介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内、経弁膜空気圧または回転流ポンプ、薬物注入カテーテル、圧力または流動センサ、または置換用ECMO還流カニューレの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定されている、
端部キャップと、
前記端部キャップの管腔内に配置された止血弁と
を備え、
前記止血弁とは、前記ECMO回路から前記ECMO還流カニューレまでの一方向血流を可能にするように構成されている、弁。
【請求項24】
前記端部キャップの前記近位端は、ECMO回路に流動的に結合されるように構成されている、請求項23に記載の弁。
【請求項25】
前記端部キャップの前記遠位端は、インラインコネクタを介して、前記ECMO還流カニューレに結合されるように構成され、前記インラインコネクタは、前記ECMO回路に流動的に結合されるように構成された分岐を備えている、請求項23に記載の弁。
【請求項26】
前記端部キャップの前記管腔は、前記ECMO還流カニューレの除去および前記ECMO還流カニューレより大きい第2のECMO還流カニューレの送達を可能にするようにサイズおよび形状を決定されている、請求項23に記載の弁。
【請求項27】
入口、出口、および内径を有するECMO還流カニューレとの使用のための延長カニューレであって、前記ECMO還流カニューレの管腔は、ECMO機械から患者の腎臓脈管の近位の患者の血管系内のある場所まで延びている血流経路を画定するように構成され、前記延長カニューレは、
近位端および遠位領域を有する細長いシャフトと、
細長い可撓性の折り畳み可能な管から成る導管であって、前記導管は、前記遠位領域内に配置された入口、出口、および内部管腔を有し、前記導管は、折り畳まれた挿入状態において前記ECMO還流カニューレの前記管腔を通して挿入され、前記ECMO機械からの血流と連通するとき、拡張させられた展開状態に移行するように構成され、前記拡張させられた展開状態における導管は、前記ECMO還流カニューレの前記管腔を通した前記血流経路の連続を形成する、導管と、
前記導管の前記入口を前記細長いシャフトの前記遠位領域に結合する接続構造と
を備え、
前記細長いシャフトは、前記導管を前記ECMO還流カニューレの前記管腔を通して前進させ、前記導管の前記入口を前記ECMO還流カニューレの前記出口内に位置付けるように構成され、
前記導管は、前記延長カニューレが前記ECMO還流カニューレの前記管腔を通して挿入され、前記拡張させられた展開状態に移行させられると、前記導管の前記入口が前記患者の腎臓脈管の近位の前記ECMO還流カニューレの前記出口内に位置し、前記導管の前記出口が前記ECMO還流カニューレの前記出口および前記患者の腎臓脈管を越えて延びているように、選択された長さを有する、延長カニューレ。
【請求項28】
前記細長いシャフトは、ステンレス鋼ハイポチューブを備えている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項29】
前記拡張させられた展開状態における前記導管の前記内部管腔は、冠動脈、末梢血管、脳、または弁介入のために使用される機器、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内、経弁膜空気圧、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルの送達を可能にするように構成されている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項30】
前記導管は、生体適合性布地を備えている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項31】
前記接続構造は、1つ以上のフープまたは支柱を備えている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項32】
前記接続構造は、形状記憶合金、プラスチック、またはステンレス鋼を備えている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項33】
前記導管の上を覆って除去可能に前進させられ、前記導管を前記折り畳まれた挿入状態に折り畳むように構成されたシースをさらに備えている、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項34】
前記接続構造は、前記シースが前記導管の上を覆って前進させられるとき、前記折り畳まれた挿入状態への前記導管の移行を促進する、請求項33に記載の延長カニューレ。
【請求項35】
前記接続構造は、テーパ状幾何学形状をさらに備えている、請求項34に記載の延長カニューレ。
【請求項36】
前記接続構造は、前記導管の近位端に結合された複数の支柱を備えている、請求項34に記載の延長カニューレ。
【請求項37】
前記導管は、前記導管の側方表面内に配置された1つ以上の細孔を含み、前記1つ以上の細孔は、前記出口からの噴射を低減させる、請求項27に記載の延長カニューレ。
【請求項38】
延長カニューレシステムであって、前記延長カニューレシステムは、
請求項27に記載の延長カニューレと、
前記ECMO還流カニューレと別個のインラインコネクタと
を備え、
前記インラインコネクタは、
ECMO回路の出口に除去可能に結合されるように構成された第1の分岐と、
管腔を有する第2の分岐であって、前記管腔は、それを通した前記延長カニューレの挿入を可能にするように構成されている、第2の分岐と、
前記ECMO還流カニューレに除去可能に結合されるように構成された出口と
を有し、
前記第1および第2の分岐は、前記インラインコネクタの前記出口と流体連通し、
前記第2の分岐は、前記インラインコネクタの前記出口と同一直線上にある、
延長カニューレシステム。
【請求項39】
入口、出口、内径、および血流経路を画定する内部管腔を有するECMO還流カニューレとの使用のための延長カニューレであって、前記入口は、ECMO機械と、患者の腎臓脈管の近位の患者の血管系内のある場所に配置されるように構成された前記出口との間に結合されるように構成され、前記延長カニューレは、
近位端、遠位端、それらの間に延びている長さ、および拡張させられた展開状態における管腔を有する可撓性の折り畳み可能な管から成る導管であって、前記導管は、前記ECMO機械からの血流と連通するとき、折り畳まれた挿入状態から前記拡張させられた展開状態に移行するように構成されている、導管と、
前記導管に結合された遠位領域を有する細長いシャフトであって、前記細長いシャフトは、前記折り畳まれた挿入状態における前記導管を前記内部管腔を通して前進させ、前記近位端を前記出口内に配置するように構成され、前記細長いシャフトは、前記血流経路の一部を形成しない、細長いシャフトと、
前記導管の前記入口を前記細長いシャフトの前記遠位領域に結合する接続構造と
を備え、
前記導管の長さは、前記近位端が前記出口内に位置するとき、前記患者の腎臓脈管の近位の前記患者の血管系内の場所に配置されるように選択され、前記導管は、前記管腔が、前記内部管腔を通して前記血流経路の連続を形成し、前記遠位端が前記患者の腎臓脈管を越えて延びているように、前記ECMO機械からの血流の存在下で、前記拡張させられた展開状態に移行する、延長カニューレ。
【請求項40】
前記細長いシャフトは、ステンレス鋼ハイポチューブを備えている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項41】
前記導管の前記管腔は、冠動脈、末梢血管、脳、または弁介入のために使用される機器、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内、経弁膜空気圧、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルの送達を可能にするように構成されている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項42】
前記導管は、生体適合性布地を備えている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項43】
前記接続構造は、1つ以上のフープまたは支柱を備えている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項44】
前記導管の上を覆って除去可能に前進させられ、前記導管を前記折り畳まれた挿入状態に折り畳むように構成されたシースをさらに備えている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項45】
前記接続構造は、前記シースが前記導管の上を覆って前進させられるとき、前記折り畳まれた挿入状態への前記導管の移行を促進する、請求項44に記載の延長カニューレ。
【請求項46】
前記接続構造は、前記近位端を前記細長いシャフトに結合する複数の支持脚部を備えている、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項47】
前記導管は、前記導管の側方表面内に配置された1つ以上の細孔を含み、前記1つ以上の細孔は、前記出口からの噴射を低減させる、請求項39に記載の延長カニューレ。
【請求項48】
延長カニューレシステムであって、前記延長カニューレシステムは、
請求項39に記載の延長カニューレと、
前記ECMO還流カニューレと別個のインラインコネクタと
を備え、
前記インラインコネクタは、
前記ECMO機械からの出口ラインに除去可能に結合されるように構成された第1の分岐と、
第2の分岐であって、前記第2の分岐は、それを通した前記延長カニューレの挿入を可能にするように構成されている、第2の分岐と、
前記ECMO還流カニューレに除去可能に結合されるように構成された第3の分岐と
を有し、
前記第1および第2の分岐は、前記第3の分岐と流体連通し、
前記第2の分岐は、前記第3の分岐と同一直線上にある、
延長カニューレシステム。
【請求項49】
心梗塞後、患者の心臓から負荷軽減するためのECMOシステムとの使用のための延長カニューレであって、前記ECMOシステムは、ECMO還流カニューレを含み、前記ECMO還流カニューレは、入口、出口、およびECMO機械から延びている血流経路を画定する管腔を有し、前記延長カニューレは、
近位端および遠位領域を有する細長いシャフトと、
前記細長いシャフトの前記遠位領域に結合された導管と
を備え、
前記導管は、入口、出口、および内部管腔を有し、前記導管は、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径を有し、
前記導管は、前記延長カニューレが前記ECMO還流カニューレの前記管腔を通して挿入され、前記拡張させられた展開状態に移行させられると、前記導管の前記入口が前記ECMO還流カニューレの前記出口と流体連通するように、選択された長さを有し、前記導管の前記出口は、前記患者の大動脈弓の中に延び、前記内部管腔は、前記管腔を通した前記血流経路の連続を形成し、血流を前記ECMOシステムから前記患者の大動脈弓に送達し、それによって、前記患者の右および左心室の心仕事量を低減させる、
延長カニューレ。
【請求項50】
前記導管は、前記ECMOシステムによって前記内部管腔を通して拍出される血液によって、前記展開状態に移行するように構成された軟質の可撓性材料を備えている、請求項49に記載の延長カニューレ。
【請求項51】
前記軟質の可撓性材料は、複数の細孔を備え、血液が、噴射を伴わずに、前記複数の細孔を通して前記管腔から退出する、請求項49に記載の延長カニューレ。
【請求項52】
前記複数の細孔は、前記導管の側方表面内に配置されている、請求項49に記載の延長カニューレ。
【請求項53】
請求項49に記載の延長カニューレを使用して、急性心筋梗塞、心不全、心停止、肺塞栓症、心筋炎、または肺障害によって引き起こされる対象における心筋損傷を低減させることまたは防止することを行う方法。
【請求項54】
急性心筋梗塞、心不全、心停止、肺塞栓症、心筋炎、または肺障害によって引き起こされる対象における心筋損傷を低減させることまたは防止することを行う方法であって、前記方法は、ECMO支援中、延長カニューレを用いて、前記対象を治療することを含み、前記延長カニューレは、
遠位領域を有するロッドと
前記ロッドの前記遠位領域に結合された折り畳み可能な導管と
を備え、
前記折り畳み可能な導管は、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径を有し、
前記折り畳み可能な導管は、前記延長カニューレがECMO還流カニューレの管腔を通して挿入されると、前記折り畳み可能な導管の入口が前記ECMO還流カニューレの出口と流体連通し、前記折り畳み可能な導管の出口が、患者の大動脈弓の近傍にあるように、選択された長さを有する、方法。
【請求項55】
冠動脈血流の閉塞に起因する心筋梗塞サイズを低減させ、梗塞後心不全の発症を限定する方法であって、前記方法は、ECMO支援中、延長カニューレを用いて、前記対象を治療することを含み、前記延長カニューレは、
遠位領域を有するロッドと、
前記ロッドの遠位領域に結合された折り畳み可能な導管と
を備え、
前記折り畳み可能な導管は、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径を有し、
前記折り畳み可能な導管は、前記延長カニューレがECMO還流カニューレの管腔を通して挿入されると、前記折り畳み可能な導管の入口が前記ECMO還流カニューレの出口と流体連通し、前記折り畳み可能な導管の出口が患者の大動脈弓の近傍にあるように、選択された長さを有する、方法。
【請求項56】
急性心筋梗塞または心不全中の心臓内の心保護信号伝達経路を増加させ、心筋障害を低減させ、心筋回復を改善する方法であって、前記方法は、ECMO支援中、延長カニューレを用いて、前記対象を治療することを含み、前記延長カニューレは、
遠位領域を有するロッドと、
前記ロッドの前記遠位領域に結合された折り畳み可能な導管と
を備え、
前記折り畳み可能な導管は、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径を有し、
前記折り畳み可能な導管は、前記延長カニューレがECMO還流カニューレの管腔を通して挿入されると、前記折り畳み可能な導管の入口が前記ECMO還流カニューレの出口と流体連通し、前記折り畳み可能な導管の出口が患者の大動脈弓の近傍にあるように、選択された長さを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、全身灌流を改善し、静動脈体外式膜型人工肺治療(VA-ECMO)中、合併症を低減させるためのシステムおよび方法、より具体的に、インラインコネクタおよび自己拡張延長カニューレを使用して、酸素化血液を直接胸部大動脈に送達する灌流を改善するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓、腎臓、および脳を含むあらゆる主な器官系への動脈灌流は、動脈圧、血流、血管緊張、および器官内血管抵抗によって決定される。患者が、心不全、心肺不全、および心原性または敗血症性ショックに起因して、低動脈灌流を被るとき、静動脈体外式膜型人工肺治療(VA-ECMO)システムは、酸素化血液の流動を増強させることによって、循環およびガス交換支援の両方を提供するために使用され得る。例えば、Pavlushkov E,Berman M,Valchanov K. Cannulation techniques for extracorporeal life support. Ann Transl Med 2017;5(4):70. doi: 10.21037/atm.2016.11.47を参照されたい。具体的に、VA-ECMOは、血液を静脈系から排出し、この血液を患者の外側で酸素化し、次いで、例えば、大腿動脈を介して、酸素化血液を動脈系に戻す。VA-ECMOは、最も一般に、大腿静脈および大腿動脈内に設置された大口径カニューレを介して実施される(末梢VA-ECMOとして知られる)。VA-ECMOは、心肺支援のための確立された方略である。成人のヒトにおいて使用するための大口径ECMOカニューレは、概して、直径15フレンチ(5.0mm)~25フレンチ(8.3mm)に及び、3~8リットル/分の生命維持血流量を送達するために使用される。
【0003】
VA-ECMOの利用の増加にもかかわらず(米国だけで年間約5,000台の体外式膜型人工肺治療デバイスが使用される)、院内死亡率は、約60%のままである。これらの不良な転帰に関する1つの解説は、末梢からカニューレ挿入されるVA-ECMOが、腎臓障害を引き起こし、脳卒中のリスクを増加させ、脳虚血、出血、および血管障害を助長し得ることである。さらに、2つ以上の大口径カニューレが、VA-ECMOを用いた全身灌流のために必要とされる高流量を達成することが要求され得る。カニューレ数およびサイズは、出血、血管外傷、および急性四肢虚血の増加させられたリスクと直接関連付けられている。最後に、末梢からカニューレ挿入されるVA-ECMOは、大動脈全体を加圧し、心臓の内側の圧力を増加させ得、それは、肺内の流体を増加させ、それによって、急性肺障害を引き起こす。肺障害を軽減するために、大動脈内バルーンポンプおよびImpella(登録商標)ポンプ(AbioMed(Danvers,Massachusetts)によって市販されている)等の付随デバイスが、VA-ECMOと共に使用され、追加の血管穿刺を要求し得る。これらの合併症の全ては、増加させられた死亡率、長期罹患率、病院内に留まる長さ、および保健医療コストに関連付けられている。VA-ECMOに関連付けられた合併症を限定するための新しいアプローチが、要求される。
【0004】
研究によって、VA-ECMO支援は、従来のVA-ECMOを用いた動脈出口還流カニューレの出口領域に限定された高血流量から生じる増加させられた動脈圧および腎臓への拍動流動の損失に起因して、腎機能を減少させ、さらに、急性腎障害を引き起こし得ることが示されている。そのような障害は、次に、腎臓の自己制御機構を活性化させ得る。例えば、従来のVA-ECMOカニューレを用いて遭遇される高非拍動流量は、血管抵抗を増加させ、それは、次に、腎臓の仕事量を増加させ、酸素消費を悪化させることが観察されている。VA-ECMOを受ける患者の最大70%が、急性腎障害を発症し、それは、死亡率に直接関連付けられている。研究によって、VA-ECMOの使用が、動脈流動のかなりの増加につながり、かつ器官自体内の圧力の増加を助長し得、それが、次に、腎静脈内の流動を減少させることがさらに示されている。したがって、従来の還流カニューレとのVA-ECMO使用の正味効果は、腎臓を通した流動が減少されるような器官の内側の圧力の増加である。これらの生理学的所見は、腎臓障害のバイオマーカの増加と互いに関係し、腎臓障害に関与する1つの機構が、腎臓の内側の圧力上昇および腎臓を通した血流の正味減少に関連し得ることを示唆する。
【0005】
灌流障害を低減させるための既に知られている労力が、当技術分野において公知である。例えば、Afzalの米国特許第6,083,198号は、分割された流動領域を有する灌流カテーテルを説明しており、その中で、動脈還流カテーテルが、その長さに沿って、一連の開口を含み、大動脈弓を含む大動脈内により均一に血液を分散させる。しかしながら、その特許に説明されるシステムの1つの短所は、内側カテーテルが、外側カテーテルより低減させられた直径を含み、それによって、カテーテルの最遠位部分への流量を低減させることである。
【0006】
最近の研究によって、VA-ECMO使用が、脳卒中、例えば、急性虚血性脳卒中および出血性脳卒中の増加させられたリスクをもたらすことも示されている。VA-ECMOは、大動脈に向かって大腿動脈内で逆行性血流を誘発するので、脳は、従来の大腿動脈カニューレを介して送達される酸素化血液を受け取るための最後の重要な器官である。さらに、南北症候群を示す患者では、例えば、損なわれた肺機能が、左心室から上行大動脈の中への脱酸素化血液の駆出をもたらすとき、差動低酸素症が、酸素化血液を上半身に送達するための逆行性流動へのVA-ECMO患者の依存性の結果として生じ得る。この効果を緩和するために、医師は、現在、追加の血管穿刺を動脈または静脈内で実施し、合併症のリスクを増加させる追加の大口径カニューレを設置する。
【0007】
その中で酸素化血液が、例えば、大動脈弓までの外科手術切開を介して、直接中枢場所に送達される中枢VA-ECMOは、より多くの酸素化血流を脳に提供し、したがって、脳卒中のリスクを低減させると仮説が立てられている。しかしながら、そのようなカニューレ挿入は、例えば、Afzalの米国特許第6,210,365号に説明されるように、侵襲性外科手術を要求し、追加の潜在的合併症を伴う。理論化された別の解決策は、ECMOカニューレを介して、酸素化血液を直接患者の静脈側に送達するものであろう。しかしながら、それは、追加の大口径穿刺を患者の血管系内に生成することを要求し、元々のVA-ECMO構成から静脈循環内にあるすでに既存のカニューレによって、さらに複雑化され得る。加えて、末梢動脈から胸部大動脈内の中枢場所の中への堅いカニューレの設置は、大口径カニューレを腸骨大腿分岐、蛇行性大動脈を通して、または大動脈に張り付いたアテローム性物質を伴う、石灰化された大動脈を横断してナビゲートすることが不能であることによって、限定され得る。
【0008】
前述に照らして、酸素化血液をVA-ECMOを介して、大腿動脈内の進入点から患者のより中枢場所、例えば、胸部大動脈まで送達し、酸素化血液を脳に供給し、下行大動脈の下側部分への順行性流動を誘発するためのシステムおよび方法を提供することが望ましいであろう。そのようなシステムおよび方法は、したがって、脳への血流を改善し、脳機能を保存し、虚血性脳卒中のリスクを低減させ、腎臓障害を誘発し得る血流量および圧力を低減させ得る。
【0009】
Andersonの米国特許第8,996,095号(特許文献1)は、プッシュ部材と、経皮的経管腔冠動脈血管形成術中の使用のために、冠動脈内に位置付けられるように構成された遠位管状部材とを有する冠動脈ガイド延長カテーテルを説明している。その特許に説明されるガイド延長カテーテルは、介入手技中、冠動脈ガイドカテーテルの遠位端を安定させ、心臓の鼓動に起因する患者の心門から離れるような移動を防止するように設計される。同様に、O’Donovanの米国特許第10,485,956号は、プッシュ部材内の溝と、介入冠動脈デバイスを誘導するための遠位シャフトとを有するガイド延長カテーテルを説明している。そのような冠動脈ガイド延長カテーテルは、小管腔直径と、達成され得る結果として生じる低血流量とに起因して、VA-ECMO内で灌流カニューレとしての使用のために非好適である。ガイド延長カテーテルは、典型的に、6フレンチ(2mm)~8フレンチ(2.7mm)の固定された直径を有する。これらの冠動脈ガイド延長カテーテルは、血流を方向転換させるようにではなく、むしろ、冠動脈血管系の遠位部分の中への冠動脈機器の送達を促進するように意図される。
【0010】
Hogendijkの米国特許第6,632,236号(特許文献2)は、ステント送達において使用するための自己拡張カテーテルを説明しており、その中で、カテーテルは、折り畳まれた送達状態において経管腔的に挿入され、送達シースの除去時、拡張させられた展開状態に自己拡張する。その特許は、エラストマポリマーコーティングを有する自己拡張ワイヤ織物から形成され、血管介入中、塞栓症に対して保護するように構成された自己拡張アンカを説明している。Hogendijkに説明される概念は、血流を方向転換させるのではなく、むしろ、血流中の要素を濾過するように意図される。同様に、Kratoskaの米国特許第6,183,443号は、血管内血管形成術カテーテルを経皮的に導入するための拡張可能導入器シースを説明している。そのような自己拡張カテーテルは、酸素化血液を灌流するためのVA-ECMOシステムとの使用のために検討されていない。
【0011】
既に知られているECMO灌流カテーテルの不利点に照らして、単一アクセスポートを使用して、胸部大動脈および大動脈弓への血流を向上させ、脳酸素化を改善し、全身動脈拍動性を維持し、腎臓への灌流障害の潜在性を低減させ、それによって、現代のVA-ECMOに関連付けられた出血および血管障害を回避し得るECMOシステムとの使用のためのデバイスを提供することが望ましいであろう。
【0012】
さらに、既に知られている再灌流カテーテルの小流動管腔サイズを回避し、それによって、上行大動脈および大動脈弓への向上させられた血流量を可能にする一方、還流カニューレを導入するために要求される大腿動脈への血管開口部の直径を維持または低減させるECMOシステムとの使用のためのデバイスを提供することが望ましいであろう。
【0013】
現代の実践では、VA-ECMOは、冠動脈血管形成術、大動脈弁形成術、または大動脈弁置換術等の一般に実施される救命手技を支援するためにも使用される。しかしながら、これらのアプローチの主な限界は、既存のVA-ECMO回路に加え、要求される介入機器のための血管シースおよび/またはカテーテルを設置するための追加の血管アクセスの必要があることである。これは、末梢血管疾患、付随血管障害、または他の救命機器によって占有される脈管を有する患者にとって、法外となり得る。さらに、緊急条件下、追加の血管アクセスを設置することは、困難であり、障害のリスクを増加させ得る。
【0014】
米国特許第5,125,903号(特許文献3)、第5,195,980号、第5,269,764号、第7,938,809号は、患者の血管系の中への細長い介入デバイスの通過を可能にするための止血弁と、例えば、灌流、吸引、造影剤、薬品等の外側源との接続のための側面ポートとを有する経皮的カテーテル導入器/コネクタを説明している。これらのシステムは、VA-ECMOとの使用のために設計されていない。さらに、いずれの既存のアプローチも、追加の介入機器の送達のためのVA-ECMO回路への単純かつ効果的アクセスを可能にしない。ECMO回路へのアクセスを提供するために使用される現在のY-コネクタは、ECMO還流カニューレの有効管腔における低減が、望ましくない圧力勾配を生成すること、ねじれまたはカテーテル途絶のリスクを伴わない追加のカテーテルの導入を阻止する困難な角形成要件を含む多数の不利点に悩まされる。そのような既に知られているコネクタは、導入器シースが、介在接続管類に起因して、通常より約25~30cm遠位に挿入されることを要求し、それによって、療法介入のための胸部大動脈、大動脈起始部、大動脈弁、または冠動脈血管系へのアクセスを限定する。そのようなコネクタはまた、ECMO接続解除および再接続中、出血のリスクももたらし、ECMO回路からの接続解除に起因して、空気塞栓症および汚染のリスクが増加させられる。例えば、Dmitriy S. Sulimov,MD et al.,“Rescue Peripheral Intervention Using a Peripheral ECMO-Cannula as Vascular Access,” J Am Coll Cardiol Intv. 2020 Jan 9. Epublished DOI:10.1016/j.jcin.2019.11.038を参照されたい。
【0015】
したがって、介入機器の送達のために、ECMO回路への単純かつ効果的アクセスを提供するためのコネクタを提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第8,996,095号明細書
【特許文献2】米国特許第6,632,236号明細書
【特許文献3】米国特許第5,125,903号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の原理によると、既に知られているECMO再灌流カテーテルの不利点を克服するECMOシステムとの使用のためのデバイスおよび方法が、提供される。具体的に、本発明に従って構築されたデバイスは、単一アクセスポートを使用して、胸部大動脈への血流を向上させ、脳酸素化を改善し、全身動脈拍動性を維持し、末端器官障害の潜在性を低減させ、追加の介入または血管機器の送達を可能にし、それによって、現代のVA-ECMOに関連付けられた出血および血管障害を回避する。
【0018】
本発明の一側面によると、従来のECMO還流カニューレとの使用のための延長カニューレが、提供される。延長カニューレは、近位端および遠位領域を有する細長いシャフトと、細長いシャフトの遠位領域に結合された導管とを含む。細長いシャフトは、導管の遠位端が腎動脈を越えて、例えば、胸部または腹部大動脈内に延びているように、近位端を従来のECMO還流カニューレの管腔と流体連通させて位置付けるために使用され得る。シャフトは、ECMO還流カニューレの近位端の近傍のポートを通して延びている近位端を含み得、それは、臨床医によって操作され得る。導管は、入口と、出口と、それらの間に延びている管腔内部と、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行するように構成された直径とを有する。導管の内径は、冠動脈、末梢血管、脳介入、または弁介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または大動脈内、経弁膜空気圧、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定され得る。
【0019】
好ましい実施形態では、導管は、延長カニューレが従来のECMO還流カニューレの管腔を通して挿入されると、導管の入口が従来のECMO還流カニューレの出口と流体連通し、導管の出口が腎動脈を越えて延び、患者の胸部大動脈、例えば、下行大動脈、大動脈弓、または上行大動脈内に常駐し得るように、選択された長さを有する。本発明の原理によると、本明細書で使用されるように、患者の胸部大動脈は、導管の出口が患者の胸腔の真下から横隔膜のレベルに接近する下行大動脈内に常駐し得るように、横隔膜のレベルの上方に下行大動脈の一部を含み得る。導管は、可撓性生体適合性コーティング、例えば、ePTFEで封入された自己拡張メッシュ、織物、または編組等の支持構造を含み得る。代替として、支持構造は、形状記憶合金、プラスチック、またはステンレス鋼製のスパインまたは骨組を含み得る。さらなる代替として、導管は、可撓性スパインに結合された1つ以上の細孔を有する中空ソックス構造の形態をとり得る。例えば、複数の細孔が、導管の側方表面内に配置され得る。この後者の実施形態では、ソックス状構造は、ECMO回路から駆出される血液で充填されると、拡張する。例えば、導管は、ECMOシステムによって内部管腔を通して拍出される血液によって、展開状態に移行し得るように、軟質の可撓性材料から形成され得る。軟質の可撓性材料の複数の細孔は、血液が、噴射を伴わずに、管腔から退出することを可能にする。
【0020】
本発明の延長カニューレは、ECMO機械からの酸素化血液の改善された送達を提供することが予期される。例えば、導管は、延長カニューレが、ECMO還流カニューレの管腔を通して挿入され、例えば、ECMO機械からの血流の存在下で、拡張させられた展開状態に移行させられると、導管の入口がECMO還流カニューレの出口と流体連通し得、導管の出口が患者の腎臓脈管を越えて、例えば、大動脈弓の中に延び得、内部管腔が、内部管腔を通して、血流経路の連続を形成し、ECMO機械からの血流を患者の腎臓脈管を越えて、例えば、患者の大動脈弓に送達し、それによって、患者の右および左心室の心仕事量を低減させるように選択された長さを有し得る。さらに、心仕事量の低減は、左心室障害を低減させ、心梗塞の長期効果を低減させ得る。
【0021】
延長カニューレは、導管の上を覆って除去可能に配置され、導管を折り畳まれた挿入状態に保持するようにサイズおよび形状を決定されたシースをさらに含み得る。さらに、導管の入口の近傍の支持構造は、シースが導管の上を覆って前進させられるとき、折り畳まれた挿入状態への導管の移行を促進する特徴を含み得る。例えば、特徴は、支持構造の近位端のテーパ状幾何学形状を含み得る。代替として、特徴は、支持構造の近位端を細長いシャフトに結合する複数の支持脚部を含み得る。
【0022】
本発明の別の側面によると、本発明の延長カニューレは、ECMO回路の出口に結合されるように構成された第1の分岐と、延長カニューレの挿入を可能にするように構成された第2の分岐と、従来のECMO還流カニューレに結合されるように構成された出口とを有するインラインコネクタを含み得る。第1および第2の分岐は、インラインコネクタの出口と流体連通し、第2の分岐は、好ましくは、インラインコネクタの出口と同一直線上にある。インラインコネクタは、従来のECMO還流カニューレに除去可能に結合され得るか、または、単一ユニットとして、従来のECMO還流カニューレの中に組み込まれ得る。
【0023】
第2の分岐からインラインコネクタの出口まで延びている管腔は、好ましくは、延長カニューレ、冠動脈、末梢血管、脳、または弁膜介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内空気圧、経弁膜軸方向流、または回転流ポンプの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定される。インラインコネクタは、天然大腿部脈管へのワイヤ再アクセスも提供し、それによって、ECMOカニューレの除去およびECMOカニューレ抜去時に血管閉鎖デバイスの送達を可能にし、それによって、脈管の外科手術修復の必要性を回避するために使用され得る。本発明のインラインコネクタは、インラインコネクタの洗流のためのサイドアームも含み得、それは、順行性灌流シースに接続され、酸素化血液を送達し、四肢虚血に対して保護し得る。
【0024】
インラインコネクタの第2の分岐は、直接インラインコネクタの中に組み込まれるか、または標準的ECMOカニューレまたは管類に結合し、カニューレ挿入、交換、または除去を促進するように設計される特別に適合された止血弁を含み得る。好ましくは、特別に適合された止血弁は、既存のECMO回路の中に組み込まれ得る独立型部品であり得る。
【0025】
加えて、インラインコネクタは、インラインコネクタの第2の分岐の入口に結合されるように構成された端部キャップを含み得る。端部キャップは、二重止血弁も含み得る。代替として、端部キャップは、インラインコネクタの第2の分岐の管腔内に受け取られ、それによって、酸素化血液が第1の分岐からインラインコネクタの出口まで流動するにつれて、血液のたまりを防止するようにサイズおよび形状を決定されたストッパを含み得る。加えて、端部キャップは、薬物注入カテーテル、または圧力または流動センサのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定された管腔を含み得る。
【0026】
本発明のさらに別の側面によると、ECMOカニューレは、大腿静脈を通して位置付けられるように構成され得、延長カニューレの入口は、患者の肺動脈内に配置され、それによって、血液が肺動脈からECMO回路の中に引き込まれることを選択的に可能にするカニューレとしての役割を果たす。このアプローチを用いることで、肺を横断する流動を低減させ、それによって、左心室への前負荷を減少させることによって、左心室壁応力および膨張を低減させることが可能であり得る。
【0027】
なおもさらなる代替として、延長カニューレの出口は、患者の大動脈起始部または左心室内に配置され得、冠動脈、末梢、脳血管、または弁膜介入のためのカテーテル、または大動脈の内側の空気圧または回転流ポンプ、例えば、大動脈内バルーンポンプ(IABP)、または経弁膜回転流ポンプ、例えば、Impella(登録商標)ポンプ(AbioMed(Danvers,Massachusetts)によって市販されている)等の左心室内への追加のポンプ技術の設置のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズを決定され得る。
【0028】
本発明のさらに別の側面によると、入口と、出口とを有するECMO入口カニューレとの使用のための延長カニューレが、提供される。延長カニューレは、近位端および遠位領域を有する細長いシャフトと、細長いシャフトの遠位領域に結合された拡張可能導管とを含む。導管は、入口と、出口と、内部管腔とを有し、折り畳まれた挿入状態と拡張させられた展開状態との間で移行する直径を有する。導管は、延長カニューレがECMO入口カニューレの管腔を通して挿入されると、導管の出口がECMO入口カニューレの出口と流体連通し、導管の入口が患者の右心室内にあるように、選択された長さを有する。
【0029】
本発明の延長カニューレを使用する方法も、提供される。例えば、本発明の延長カニューレは、急性心筋梗塞、心不全、心停止、肺塞栓症、心筋炎、または肺障害によって引き起こされる対象内の心筋損傷を低減させることまたは防止することを行うために使用され得る。加えて、本発明の延長カニューレは、冠動脈血流の閉塞に起因する心筋梗塞サイズを低減させ、梗塞後心不全の発症を限定するために使用され得る。さらに、本発明の延長カニューレは、急性心筋梗塞または心不全中の心臓内の心保護信号伝達経路を増加させ、心筋障害を低減させ、心筋回復を改善するために使用され得る。
【0030】
本発明の別の側面によると、ECMO還流カニューレとの使用のための弁が、提供される。弁は、ECMO回路に流動的に結合され得る端部キャップを含み得る。端部キャップは、近位端と、ECMO還流カニューレに結合され得る遠位端と、それらの間に延びている管腔とを有する。管腔は、延長カニューレ、冠動脈、末梢血管、脳、または弁介入のためのカテーテル、順行性四肢灌流のためのカテーテル、または、大動脈内、経弁膜空気圧または回転流ポンプ、薬物注入カテーテル、圧力または流動センサ、または置換用ECMO還流カニューレの送達のためのカテーテルのうちの少なくとも1つを受け取るようにサイズおよび形状を決定され得る。好ましくは、特別に適合された端部キャップは、既存のECMO回路の中に組み込まれ得る独立型部品であり得る。好ましい実施形態では、弁は、止血弁が、ECMO回路からECMO還流カニューレまでの一方向血流を可能にするように、端部キャップの管腔内に配置された止血弁を含む。端部キャップの近位端は、ECMO回路に流動的に結合されるように構成され得る一方、端部キャップの遠位端は、上で説明されるように、インラインコネクタを介して、ECMO還流カニューレに結合され得る。端部キャップの管腔は、好ましくは、ECMO還流カニューレの除去およびECMO還流カニューレより大きい第2のECMO還流カニューレの送達を可能にするようにサイズおよび形状を決定される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】
図1Aは、本発明の原理に従って構成されたECMO中の再灌流を改善するための延長カニューレの側面図であり、延長導管は、拡張状態にあり、送達シースは、除去されている。
【0032】
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの延長カニューレの側面図であり、延長導管は、送達シース内で収縮状態にある。
【0033】
【
図2】
図2は、
図1Aの延長カニューレの代替実施形態の側面図であり、延長導管は、拡張状態にあり、送達シースは、除去されている。
【0034】
【
図3A】
図3Aは、本発明の延長カニューレとの使用のために構成された例示的インラインコネクタの概略図である。
【0035】
【0036】
【
図4-1】
図4A-4Cは、ECMOシステム内の例示的インラインコネクタと例示的延長カニューレの併用を図示する概略図である。
【0037】
【
図4-2】
図4Dは、ECMOシステム内の例示的インラインコネクタとの代替の例示的延長カニューレの飼養を図示する概略図である。
【0038】
【
図5】
図5は、本発明の原理によるECMO中の灌流を改善するための例示的ステップのフローチャートである。
【0039】
【
図6-1】
図6A-6Eは、本発明の延長カニューレを使用してECMO中の灌流を改善するための例示的ステップを図示する。
【
図6-2】
図6A-6Eは、本発明の延長カニューレを使用してECMO中の灌流を改善するための例示的ステップを図示する。
【0040】
【
図7】
図7は、VA-ECMO脳卒中リスクを図示するグラフである。
【0041】
【
図8】
図8は、ECMO上の患者における南北症候群を描写する。
【0042】
【
図9】
図9は、本発明の原理による代替カニューレ挿入を使用して達成されるもの(胸部大動脈への血液の送達)と比較された標準的従来のECMOカニューレ挿入に関する種々のパラメータを図示する一連のグラフである。
【0043】
【
図10】
図10は、標準的従来のECMOカニューレ挿入、Impellaポンプ、および本発明の例示的システムの使用から生じる種々のパラメータを図示する一連のグラフである。
【
図11】
図11は、標準的従来のECMOカニューレ挿入および本発明の例示的代替(潅注)カニューレ挿入システムに関して取得される腎動脈血液速度を表す一連のグラフである。
【0044】
【
図12】
図12は、標準的従来のECMOカニューレ挿入、および本発明の例示的代替カニューレ挿入システムに関する腎動脈拍動性および腎動脈微小血管抵抗を図示するグラフである。
【0045】
【
図13】
図13は、標準的従来のECMOカニューレ挿入、および本発明の例示的代替カニューレ挿入システムの使用に関連付けられた腎臓障害分子の尿レベルを示すグラフである。
【0046】
【
図14A】
図14Aは、従来のECMOカニューレ挿入中の左心室および右心室応答を図示する。
【0047】
【
図14B】
図14Bは、本発明の延長カニューレを使用するECMO中の左心室および右心室応答を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0048】
胸部大動脈、上行大動脈、および大動脈弓への血流を向上させ、それによって、頸動脈および他の下流動脈への正常順行性流動を促進する一方、高血流量および腎臓への再灌流障害の潜在性を低減させるためにECMOシステムとの使用のためのシステムおよび方法が、提供される。本発明のシステムおよび方法は、損なわれた肺機能を伴う患者における南北症候群の発生率も改良し、それによって、患者の脳血管系への酸素化血液の適正な流動を確実にし得る。
【0049】
図1Aを参照すると、従来のVA-ECMOカニューレとの使用のために好適な延長カニューレ10が、説明される。延長カニューレ10は、延長カニューレ10の遠位領域11と近位領域13との間に延びているシャフト17を含む。シャフト17は、カニューレ10が従来のECMO再灌流カニューレを通して前進させられることを可能にするために十分な剛性を有する材料(例えば、ステンレス鋼ロッド)から形成され、それによって、自己拡張導管12の遠位領域11は、その出口が患者の腎動脈を越えて延びている(好ましくは、患者の上行大動脈内または大動脈弓に近接して延びている)状態で配置され得る。自己拡張導管12は、随意に、ハンドル15を含み得、ハンドル15は、延長カニューレ10を操縦するために、自己拡張導管12の近位領域13においてシャフト17に結合されている。
【0050】
自己拡張導管12は、その近位端における入口16と、その遠位端における出口14と、血流を可能にするためにそれを通して延びている管腔とを有する。自己拡張導管12は、従来のVA-ECMOカニューレの出口から、患者の腎動脈の上方の位置まで、より好ましくは、胸部大動脈の中に、例えば、30~120cm延びているために十分な長さを有する。下記により完全に説明されるように、自己拡張導管12は、可撓性および生体適合性の覆いによって覆われたメッシュ、織物、または編組等の自己拡張支持構造を含む。さらに、
図1Aに示されるように、自己拡張導管12は、1つ以上の放射線不透過性マーカ18を含み得、放射線不透過性マーカ18は、出口14に隣接する自己拡張導管12の遠位端に沿って配置され、その場所が蛍光透視的に決定されることを可能にする。加えて、自己拡張導管12の遠位端に近接する生体適合性の覆いは、省略され、血液がそれを通して側方から退出し、胸部大動脈に灌流することを可能にし得る。
【0051】
自己拡張導管12の支持構造は、自己拡張導管12が、折り畳まれた挿入状態から拡張させられた展開状態に移行し得るように、形状記憶金属またはステンレス鋼から形成される、ワイヤメッシュ、織物、または編組から作製され得る。
図1Bに描写されるように、導管の支持構造は、中心管腔を形成する事前に設定された拡張直径を有するステンレス鋼メッシュ、織物、または編組から形成され得、それによって、導管は、より小さい直径送達シース40内に引っ張られると、収縮させられ得る。代替として、支持構造は、ニッケルチタン合金(「ニチノール」)等の形状記憶金属から形成され、内部管腔を形成する所定の拡張直径を有するメッシュ、織物、または編組であり得る。このように、導管は、下記にさらに詳細に説明されるように、送達シース40内に引っ張られると、折り畳まれた挿入状態に収縮させられ得る。
【0052】
支持構造は、好ましくは、延伸ポリテトラフルオロエチレン(「ePTFE」)等の生体適合性ポリマーコーティングで封入される。拡張させられた展開状態では、自己拡張導管12は、従来のVA-ECMOカニューレの内部管腔と実質的に同じである直径、またはさらに大きい直径をとり、したがって、大腿部血管系内により大きい口径の開口部を要求しない。例えば、自己拡張導管12の管腔は、拡張状態において、15フレンチ~25フレンチの範囲であり得る。従来のECMOカニューレを通して挿入されると、自己拡張導管12は、従来のVA-ECMO還流カニューレを導入するために要求される大腿動脈内の血管開口部の直径を維持しながら、上行大動脈および大動脈弓への向上させられた血流を可能にする。いくつかの実施形態では、生体適合性ポリマーコーティングは、血液が、材料を通して側方から灌流し、それによって、出口14からの噴射を低減させることを可能にする、細孔を含み得る。
【0053】
依然として、
図1Aを参照すると、1つの好ましい実施形態では、自己拡張導管12の近位端における入口16は、送達シース内への自己拡張導管12の再捕捉を促進するための特徴を有し得る。例えば、
図1に示されるように、自己拡張導管12は、自己拡張導管12の回収を促進するテーパ状幾何学形状19を有し得る。例えば、自己拡張導管12の支持構造は、入口16の縁に沿って常駐し、それによって、テーパ状幾何学形状19を形成する側方に変位されたワイヤフープを含み得る。代替として、シャフト17の遠位端は、自己拡張導管12の支持構造の近位端に結合された支持脚部に結合され得、それによって、下記にさらに詳細に説明されるように、シースを支持脚部の上を覆って前進させることが、自己拡張導管12の支持構造が折り畳まれた挿入状態に内向きに折り畳まれることを引き起こす。加えて、自己拡張導管12の遠位端は、非外傷性領域を含み得る。
【0054】
ここで
図2を参照すると、本発明の延長カニューレ10’の代替実施形態が、説明される。本実施形態では、導管12’は、ポリエチレンまたはナイロン等の軟質の可撓性材料から作製され、導管12’は、細孔を含み得、細孔は、一部の血液が材料を通して側方に灌流することを可能にする一方、大部分の流動を導管12’を通して出口14’に方向づける。細長いシャフト17’は、延長導管12’を従来のECMOカニューレの管腔に通すこと、入口16’をECMOカニューレの出口の近傍、出口14’を患者の腎動脈の上方、より好ましくは、患者の胸部大動脈の中に延びている遠位領域11’内に位置付けることを補助するためのスパインとしての役割を果たす。シャフト17’は、デバイス10’を操縦するためのハンドル15’に結合され得る。導管12’は、好ましくは、その近位端に、
図1Bに関して上で説明されるように、送達シースから解放されると、導管12’の近位端における開口部16’を拡張させる自己拡張支援フープ19’を含む。導管12’は、放射線不透過性マーカ18’を出口14’の近傍に含み得る。支援フープ19’は、従来のECMOカニューレを通した血流が、導管12’の近位端の中に注がれ、導管12’の残部を完全に開放させることを確実にする。
図1Aの実施形態に関して、導管12’は、再灌流手技の完了時、シース40を細長いシャフト17’および導管12’の上を覆って遠位に前進させることによって、折り畳まれ得る。
【0055】
図3Aに関して、本発明の延長カニューレとの使用のために好適なインラインコネクタ20が、説明される。インラインコネクタ20は、酸素化血液をECMO回路から受け取るために、従来のECMO機械の出口に結合されるように構成された第1の分岐入口22と、その中に溶接された止血弁を有する第2の分岐入口26と、従来のECMOカニューレに結合されるように構成された出口24とを有する。第1の分岐入口22および第2の分岐入口26はそれぞれ、出口24と流体連通し、それぞれ、
図3Bに関して下記に説明されるように、随意の止血弁25を含み得る。第1の分岐入口22と出口24との間に延びている流路は、したがって、ECMO回路から受け取られる酸素化血液が、従来のECMOカニューレおよび自己拡張導管12を通して流動することを可能にする。さらに、第2の分岐入口26と出口24との間に延びている流路は、折り畳まれた挿入状態における(例えば、送達シース40内に配置されているときの)自己拡張導管12のそれを通した送達を可能にするようにサイズおよび形状を決定される。故に、
図1および2の延長カニューレ10または10’は、第2の分岐入口26の止血弁を通して挿入され、出口24に結合された従来のECMO還流カニューレの管腔を通して前進させられ得る。
【0056】
当業者によって理解されるであろうように、第2の分岐26と出口24との間に延びている流路は、それを通した他の介入ツール(例えば、冠動脈、末梢、または脳血管または弁膜介入のためのカテーテル、および/または空気圧、回転、または経弁膜流動ポンプを含む)の送達も同様に可能にするようにサイズおよび形状を決定され得る。延長カニューレ10または10’および他の大口径介入デバイスまたは小カテーテルの送達も、出口24との第2の分岐入口26の共線性に起因して、可能である。介入手技において使用される既に知られているY形状のコネクタと異なり、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26と出口24との線形整列は、デバイスが、曲がることなしに挿入されることを可能にする。故に、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26と出口24との線形整列は、大口径デバイス、例えば、経カテーテル大動脈弁置換(TAVR)弁、Impellaポンプのための送達カテーテル、または冠動脈、脳、または末梢血管介入ガイドカテーテル等のより小さいカテーテルの送達に適応する。
【0057】
インラインコネクタ20は、延長カニューレまたは他の介入デバイスが送達されるために要求されるとき、例えば、ECMO還流カニューレをクランプ締めし、ECMO還流カニューレをECMO回路から結合解除し、第1の分岐入口22および出口24を介して、それぞれ、インラインコネクタ20をECMO回路およびECMO還流カニューレに結合し、ECMO還流カニューレをクランプ締め解除することによって、従来のECMO還流カニューレに除去可能に結合され得る。代替として、インラインコネクタ20は、ECMO還流カニューレ、例えば、15、17、19、21、または25フレンチの従来のECMO還流カニューレの一部として、一体的に構築され得る。故に、インラインコネクタ20は、いずれのデバイスもそれを通して送達されないとき、第2の分岐入口26に結合された端部キャップを含み得る。上で説明されるように、第2の分岐入口26は、止血弁を含み、延長カニューレまたは他の介入デバイスの送達中、血液の逆流を防止し得、端部キャップは、第2の分岐入口26に結合され、止血弁のさらなる露出を防止し得る。
【0058】
第2の分岐入口26に結合され、それと流体連通する随意のサイドアーム27も、
図3Aに示される。サイドアーム27は、インラインコネクタ20の洗流のために使用され得るか、または、インラインコネクタ20を順行性灌流カテーテルに流動的に結合し、患者の下肢を灌流させ、四肢虚血に対して保護するために使用され得る。例えば、順行性灌流カテーテルが、サイドアーム27を介して、インラインコネクタ20および従来のECMO還流カニューレを通して挿入され、酸素化血液が患者の下肢に送達されるように、患者内に位置付けられ得る。
【0059】
本発明の別の側面によると、種々の端部キャップおよび管類アダプタが、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26との使用のために提供され得る。例えば、止血弁25は、使用されていないとき、第2の分岐入口26を選択的に閉鎖するためにサイズを決定される直径、例えば、3/8インチを有し得る。代替として、端部キャップは、
図3Bに描写されるように、延長カテーテルがそれを通して挿入されるとき、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26を通した血液の逆流を防止するために、二重止血弁を含み得る。さらなる代替として、端部キャップは、血液が第2の分岐入口26の管腔内にたまりを作ることを防止するように、実質的に、第2の分岐入口26の管腔の長さにわたって延びている長さを有するストッパ部分を有し得る。
【0060】
ここで
図3Bを参照すると、端部キャップ34は、従来のECMOシステムの出口管類の中に挿入され得るアダプタ部分35を含む。端部キャップ34は、好ましくは、第2の分岐入口26の管腔より小さい直径を有し、例えば、薬物注入または圧力/流動監視のために好適である内部管腔36を含む。さらに、端部キャップ34は、管腔36内に位置付けられ、それを通した血液の逆流を防止する止血弁を含み得る。当業者によって理解されるであろうように、止血弁の代替として、または、それに加え、端部キャップ34は、例えば、スクリュ(開口)弁、バルーン弁、二重膜弁等を含み得る。代替として、管腔36は、所望される手技に応じて選択された直径を有し得る。端部キャップ34は、上で説明されるように、上で説明されるインラインコネクタ20の第2のアームに結合され、それを通して、介入ツールの送達および/または既存のECMOカニューレの除去を可能にし得る。端部キャップ34は、例えば、インラインコネクタおよび/または既存のECMOカニューレに回転可能に結合され得るスクリュキャップであり得る。
【0061】
本発明の別の側面によると、端部キャップ34は、既存のECMOカニューレの中に直接組み込まれ得る。例えば、既存のECMOカニューレとECMO回路を結合するためのインラインコネクタの使用の代わりに、端部キャップ34は、例えば、既存のECMOカニューレが端部キャップ34を介してECMO回路と流体連通するように、一緒に結合される2つの別個の構成要素または一体型構成要素のいずれかとして、直接、既存のECMOカニューレに結合され得る。上で説明されるように、端部キャップ34は、1つ以上の止血弁を含み、それを通した血液の逆流を防止し得る。既存のECMOカニューレが、除去および/または置換され、例えば、より大きい直径ECMOカニューレのために既存のECMOカニューレを交換する必要がある場合、既存のECMOカニューレは、端部キャップ34の管腔を通して除去され得る。
【0062】
例えば、ECMOカニューレが除去される必要がある時点で、クランプ締めが、ECMO回路が端部キャップ34から結合解除され得るように、ECMO回路に印加され得る。ガイドワイヤが、次いで、端部キャップ34の管腔を通して導入され得る。既存のECMOカニューレは、ガイドワイヤの上を覆って除去され得、新しいより大きいECMOカニューレ、例えば、19フレンチカニューレが、ガイドワイヤの上を覆って、端部キャップ34の管腔を通して前進させられ、患者の血管系内に位置付けられ得る。ECMO回路は、次いで、端部キャップ34に再結合され、クランプ締め解除され、血液が、再び、ECMO回路から、新しいより大きいECMOカニューレを通して、流動することを可能にし得る。同様に、ECMO回路は、介入ツールが患者に送達される必要があるとき、上で説明される様式において、端部キャップ34から結合解除され、介入手技が完了すると、再結合され得る。
【0063】
ここで
図4A-4Cを参照すると、
図1Aおよび1Bの延長カニューレの実施形態の動作が、
図3Aのインラインコネクタ20と併せて、図式的に描写される。最初に、従来のECMOカニューレ60が、
図4Aに示されるように、インラインコネクタ20の出口24に結合され、例えば、大腿動脈までの切開を介して、患者の動脈血管系の中に挿入される。ECMO機械からの出口ラインは、第1の分岐入口22に結合される。
図4Bに示されるように、延長カニューレ10が、送達シース40内でその折り畳まれた挿入状態において自己拡張導管12とともに配置されており、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26の止血弁を通して前進させられる。延長カニューレ10は、例えば、シース40上に配置される放射線不透過性マーカバンドを使用して、例えば、蛍光透視法下で決定され得るように、自己拡張導管12の遠位端が、所望の場所、例えば、胸部大動脈内に配置され、自己拡張導管12の近位端が、従来のECMO還流カテーテルの遠位出口の近傍にあるように位置付けられる。
【0064】
シース40の管腔は、好ましくは、自己拡張導管12を受け取り、その折り畳まれた挿入状態に保持するようにサイズを決定される。例えば、シース40の管腔は、1.40mm~1.50mm、より好ましくは、1.45mmの直径を有し得る。シース40は、従来のVA-ECMO還流カニューレの管腔を通して容易に挿入されるようにそれに対してサイズを決定される外径を有する。シース40は、自己拡張導管12に対して後退させられ、それによって、自己拡張導管12が折り畳まれた挿入状態から拡張させられた展開状態に自己拡張することを可能にし得るように、自己拡張導管12の上を覆ってスライド可能に配置される。
【0065】
ここで
図4Cを参照すると、シース40および自己拡張導管12が、上で説明されるように、所望の場所内に位置付けられると、シース40は、後退させられる一方、自己拡張導管12は、細長いシャフト17およびハンドル15によって、定位置に保持され、それによって、導管12がその拡張させられた展開状態に自己拡張することを可能にする。自己拡張導管12の長さの大部分は、従来のECMO還流カニューレ60の遠位端を越えて延びているので、ECMO機械からの酸素化血液は、従来のECMO還流カニューレを用いてアクセス可能なそれらを越えた領域に送達され得る。本発明の一側面によると、他の介入ツール、例えば、血管カテーテル、弁カテーテル、または大動脈内または経弁膜ポンプ、例えば、Impella(登録商標)ポンプ(AbioMed(Danvers,Massachusetts)によって市販されている)も、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26を介して、ECMOカニューレを通して挿入され、VA-ECMOと同時に、追加の介入手技を実施し得る。さらに、動脈修復ツールが、インラインコネクタを通して、患者の血管系に送達され、例えば、動脈カニューレの除去を促進し得る。例えば、インラインコネクタは、天然大腿部脈管へのワイヤ再アクセスを提供し、それによって、ECMOカニューレの除去と、ECMOカニューレ抜去時の血管閉鎖デバイスの送達とを可能にし、それによって、脈管の外科手術修復の必要性を回避するために使用され得る。
【0066】
延長カニューレ10の1つの好ましい実施形態では、自己拡張導管12は、30~40cmまたはより長い長さを有する。このように、血液は、患者の腎動脈に近接する高流量を回避し、灌流障害のリスクを低減させるために、患者の腎動脈口の上方の患者の胸部大動脈の近傍に送達され得る。加えて、自己拡張導管12の遠位端が、放射線不透過性マーカバンド18を使用して、蛍光透視法下で決定され得るように、上行大動脈内に配置される場合、自己拡張導管12からの流出は、酸素化血液を大動脈起始部に近接する心臓動脈に提供し、順行性流動を頸動脈および下流動脈に提供することもできる。
【0067】
依然として、
図4Cを参照すると、患者が、ECMOから除去されるべきとき、シース40は、細長いシャフト17の上を覆って再挿入され、前進させられ、自己拡張導管12を折り畳み、回収し得る。この場合、シース40は、シャフト17を静止したままにしながらのシース40の前進が、自己拡張導管12が内向きに折り畳まれるようにし、その低減させられた直径の折り畳まれた挿入状態に戻らせるであろうように、最初に、自己拡張導管12のテーパ状近位端19に係合するであろう。延長カニューレ10およびシース40は、次いで、第2の分岐入口26内の止血弁を通して除去され得る。
図2の実施形態の使用および動作は、上で説明されるものと実質的に同じである。
【0068】
ここで
図4Dを参照すると、本発明の原理に従って構成された延長カニューレおよびシースのさらなる代替実施形態が、説明される。自己拡張導管12’’は、
図4Cの自己拡張導管12と同様に構築される。例えば、自己拡張導管12’’は、入口16’’と、出口14’’と、1つ以上の放射線不透過性マーカバンド18’’とを有し、それらは、それぞれ、自己拡張導管12の入口16、出口14、およびバンド18と対応する。自己拡張導管12’’は、テーパ状入口幾何学形状19の代わりに、自己拡張導管12’’が、自己拡張導管12’’を細長いシャフト17’’に結合し、除去のための再納置を促進する複数の角度付けられた脚部41を有するという点で、自己拡張導管12と異なる。好ましくは、角度付けられた脚部41は、シース40の遠位端が、角度付けられた脚部41の上を覆って前進させられると、脚部が、内向きに撓曲し、自己拡張導管12’’の支持構造が内向きに折り畳まれるように、可撓性かつ均一長である。
【0069】
さらに、シース40は、迅速交換構成を有し得、シース40は、自己拡張導管12、12’’の全長を被覆するために好適な長さを有するが、支持シャフトに継合され、ハンドルが、支持シャフトの端部に結合される。このように、シース40は、延長カニューレの細長いシャフト17の近位端の上を覆って後方装填され、支持シャフトを使用して、ハンドルを介して、シャフト17の近位端を操作する能力に干渉せずに、操作され得る。
【0070】
依然として、
図4Dを参照すると、延長カニューレの代替実施形態に関する動作は、
図4A-4Cの実施形態のそれに類似する。
図4Dに示されるように、自己拡張導管12’’およびシース40は、インラインコネクタ20(
図2参照)を通して、従来のECMO還流カニューレ60の管腔の中に前進させられ、自己拡張導管12’’は、シース40内で折り畳まれた挿入状態にある。シース40は、近位に引き出される一方、自己拡張導管12’’は、細長いシャフト17’’を使用して、静止したままにされ、それによって、自己拡張導管12’’がその所定の直径まで自己拡張することを可能にする。シース40が、完全に引き出されると、従来のECMO還流カテーテル60を通した血流は、角度付けられた脚部41を通して、自己拡張導管12’’の出口に方向づけられ、それは、自己拡張導管12’’の支持構造が自己拡張するにつれて、外向きに撓曲する。ECMO手技が、完了すると、ECMO機械からの血流は、休止させられる。シース40は、次いで、上で説明されるように、延長カニューレの細長いシャフト17’’の上を覆って後方装填され、シース40の支持シャフトを使用して、遠位に前進させられる。シース40の遠位端が、角度付けられた脚部41に接触すると、脚部を内向きに撓曲させ、自己拡張導管12’’の支持構造の近位端をその挿入直径に移行させる。故に、シース40のさらなる遠位前進は、自己拡張導管12’’の残りの長さを折り畳まれた挿入状態に移行させ、それによって、延長カニューレの除去を促進する。
【0071】
ここで
図5を参照すると、本発明の原理によるECMO中の灌流を改善するための例示的ステップのフローチャートが、提供される。方法50のステップのうちのいくつかは、
図6A-6Eを参照することによってさらに詳述され得る。例えば、
図6Aは、上で説明されるように、インラインコネクタ20の出口24および第1の入口22を介してECMO機械61に結合された患者の大腿動脈FAを通して挿入される、従来のECMOカニューレ60を図示する。
図6Bに示されるように、ガイドワイヤ62が、ガイドワイヤ62の遠位端が、患者の血管系、例えば、上行大動脈内または大動脈弓に近接して等、胸部大動脈TA内の所望の場所に前進させられるまで、インラインコネクタ20の第2の分岐入口26および出口24を通して、およびECMOカニューレ60を通して挿入され得る。
【0072】
ステップ51では、シース40(シース40は、その中に配置された折り畳まれた挿入状態の自己拡張導管12を有している)の遠位端が、ECMOカニューレ60を通して、例えば、ガイドワイヤ62の上を覆って、インラインコネクタ20を介して前進させられる。シース40の遠位端は、
図6Cに示されるように、ステップ52において、患者の血管系内の所望の中枢場所に位置付けられるまで前進させられる。ステップ53では、シース40は、
図6Dおよび6Eに示されるように、シース40の管腔内にスライド可能に配置された自己拡張導管12に対して後退させられる一方、自己拡張導管12は、静止したままであり、自己拡張導管12を折り畳まれた挿入状態から拡張させられた展開状態に移行させる。
図6Dは、患者の血管系内で部分的に完全に拡張させられた自己拡張導管12を図示し、
図6Eは、例えば、自己拡張導管12がシース40から完全に露出させられたときの患者の血管系内で完全に拡張させられた自己拡張導管12を図示する。故に、ステップ54では、酸素化血液が、ECMOカニューレ60から、患者の血管系、例えば、上行大動脈内または大動脈弓に近接する中枢場所に灌流され得る。結果として、隣接する脈管、例えば、冠動脈および/または頸動脈の中への血流が、より正常な順行性流動パターンを伴って生じるであろう。当業者によって理解されるであろうように、自己拡張導管12の出口は、下行大動脈、例えば、胸腔の真下から横隔膜のレベルに接近する下行大動脈の部分または横隔膜の上方の下行大動脈の部分内に位置付けられ得る。
【0073】
本発明の一側面によると、ECMOポンプが、拍動流動を発生させ、自己拡張導管12の出口に、患者の心拍動を模倣する、圧力変動を生成するようにプログラムされ得る。結果として、患者は、連続的流動とは対照的に、動脈の弾性を維持し、動脈硬化を低減させる等、かなりの利益を受け取り得る。ECMO療法が完了すると、ステップ55において、自己拡張導管12は、上で説明されるように、シース40の管腔内の折り畳まれた挿入状態に戻され得、ステップ56において、シース40およびその中に配置される自己拡張導管12は、患者から除去され得る。
【0074】
図7は、VA-ECMOを含む、種々の療法を受ける、患者に関する脳卒中リスクを図示するグラフである。示されるように、VA-ECMOを受ける患者は、概して、全脳卒中、例えば、急性虚血性脳卒中および出血性脳卒中の最も高いリスクを有する。本発明の原理によると、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、酸素化血液を脳血管系に提供し、順行性流動を自己拡張導管の出口から提供することが予期される。これは、次に、虚血性脳卒中のリスクを低減させ、腎臓障害を誘発し得る血流量および圧力を低減させることが予期される。
【0075】
図8に関して、本発明のシステムおよび方法のさらに予期される利益が、説明される。
図8は、ECMO上の患者、特に、損なわれた肺機能を有する患者において生じ得る「南北症候群」と称される状況を図示する。そのような場合、心臓が鼓動しているが、左心室によって循環に戻される血液は、不良に酸素化され得る。この場合、従来のECMO還流カテーテルが、採用される場合、患者の中に再灌流される酸素化血液は、肺からの順行性流動脱酸素化血液と混合し、差動低酸素症をもたらす。本発明の延長カニューレは、血液を上行大動脈の中に送達するように設計されるので、本発明のシステムおよび方法は、損なわれた肺機能の効果をかなり改良し、南北症候群の発生率および重症度を低減させることが予期される。
【0076】
本発明の原理に従って構成される延長カニューレを利用する、実験からの臨床前データは、従来のECMO還流カニューレと比較して、優れた性能を実証する。
図9は、標準的VA-ECMOカニューレ挿入中に測定された種々のパラメータと、本発明の延長カニューレ(
図9では、「代替カニューレ挿入」として定義される)を使用して測定されたものを比較する一連のグラフである。特に、本発明の代替カニューレ挿入は、標準的VA-ECMOカニューレ挿入と比較して、低減させられた肺動脈平均動脈圧(MAP)、低減させられた右動脈圧、低減させられた肺毛細血管楔入圧、低減させられた腎動脈流速、および低減させられた腎臓間質圧力(臓器圧)をもたらす。これらの所見は、延長カニューレの設置が、標準的VA-ECMO単独と比較して、心臓、肺、および腎臓障害を低減させ得ることを示唆する。具体的に、このデータは、標準的カニューレ挿入(大腿動脈への血液の送達)とは対照的に、代替カニューレ挿入を用いて、低減させられた心圧(右心房圧および肺毛細血管楔入圧)、正常腎動脈速度、および正常腎臓間質(器官)圧を示す。さらに、
図10に示されるように、本発明の代替カニューレ挿入は、標準的VA-ECMOカニューレ挿入と比較して、腎動脈および大腿動脈内に増加させられた拍動動脈流動を提供する。偽手術された動物と比較して、標準的大腿部カニューレ挿入ECMOは、腎臓および大腿動脈脈圧、例えば、拍動性を低減させる。標準的カニューレ挿入と比較して、代替カニューレ挿入(胸部大動脈への血液の送達)は、増加させられた腎臓および大腿動脈脈圧、例えば、拍動性を有する。改善された生理学的拍動性は、より少ない障害にさらに関連付けられている。
【0077】
図11および12は、標準的ECMOカニューレ挿入と比較される、本発明の代替カニューレ挿入の使用のさらなる比較を提供し、改善された腎動脈拍動性および腎臓内の低減させられた微小血管抵抗を実証する。
図11に関して、標準的カニューレ挿入と比較して、代替(潅注)カニューレ挿入は、3時間の拍出後、腎動脈内の拍動性を保存している。
図12に関して、標準的カニューレ挿入と比較して、代替(潅注)カニューレ挿入は、2および6時間の拍出後、拍動性(腎臓抵抗係数)を保存し、腎動脈内の腎動脈微小血管抵抗を低減させる。同様に、
図13は、本発明の代替カニューレ挿入(「ALT ECMO」)が、より低いレベルの腎臓障害分子1(KIM-1)を尿中にもたらすことを実証し、より少ない腎臓障害が患者によって被られることを示す。標準的VA-ECMOと比較して、ALT ECMOは、尿中のより低い(正常)レベルの腎臓障害マーカに関連付けられている。
【0078】
図14Aおよび14Bは、標準的ECMOカニューレ挿入と比較される、本発明の代替カニューレ挿入の使用のさらなる比較を提供し、左および右心室仕事量の両方におけるかなりの予期しない低減を実証する。
図14Aは、梗塞後60分時、標準的腎臓下出口場所における大腿動脈内への動脈ECMOカニューレ挿入の開始直後、および標準的動脈ECMOカニューレ挿入から10分後の左および右心室に関するトレースを含む測定された圧力対容積のグラフである。「PVA」と称されるそれぞれの圧力対容積ループ内の面積は、心周期中、心臓によって実施される仕事量の評価尺度である。
図14Aのグラフは、左心室(LV)に関する圧力/容積ループが、ECMO再灌流によって実質的に不変であることを示す。同様に、右心室(RV)も、標準的動脈ECMOカニューレ挿入後、仕事量における大きな低減を経験しない。可能性として考えられる解説として、限定することを意図するわけではないが、左および右心室仕事量が、腎動脈の下方への連続的高流量の導入が、下行大動脈内の血柱を停滞させ、それは、次に、LV圧力を高いままにさせるので、実質的に不変であると仮定される。したがって、心臓は、ECMO注入血液によって生成された順行性流動に対する抵抗を克服するように仕事し続けなければならないと考えられる。故に、標準的ECMOカニューレ挿入中、動脈血液の大腿部送達は、大動脈全体を加圧し、それによって、それに対して天然心臓が拍動しなければならない、負荷を増加させる。
【0079】
対照的に、
図14Bに示されるように、本発明の延長カニューレが、大動脈弓内のECMO出口を拡張するように展開されると、左心室(LV)および右心室(RV)の両方は、
図14Aにおける標準的動脈ECMOカニューレ挿入と比較して、ECMOアクティブ化の開始後およびその後、仕事量におけるかなりの低減を経験する。具体的に、左心室(LV)に関する圧力/容積ループは、かなり減少し、右心室(RV)に関する圧力/容積ループは、さらに減少し、したがって、ECMO再灌流中の心仕事量を低減させることにおける本発明の延長カニューレの有効性を図示する。再び、解説として、限定することを意図するものではないが、左および右心室仕事量のかなりの減少は、大動脈弓の中への血液の送達に起因し、それは、下行大動脈および大動脈弓に隣り合った動脈への順行性血流を向上させると仮定される。したがって、結果として生じる順方向流動は、ECMO再灌流の開始後10分の間に十分に発達し、LVの負荷を軽減し、それによって、より少ない心拍出量であるが、はるかに低い圧力において引き起こす。さらに、LVにおける低減させられた負荷は、血液が肺に移行し、RV仕事量をさらに低減させることを補助し得ると考えられる。故に、血液を大動脈弓内に送達することによって、動脈樹は、加圧されず、それによって、心臓が、そうでなければ、それに対抗して仕事する必要があり得る増加させられた圧力負荷を回避し、それは、心室圧力を増加させることを犠牲にせずに、心臓のより効果的静脈排出、したがって、低減させられたRVおよびLV容積を可能にする。
【0080】
本発明の種々の例証的実施形態が、上で説明されるが、種々の変更および修正が、本発明から逸脱することなく、その中で行われ得ることが、当業者に明白であろう。例えば、当業者によって理解されるであろうように、本明細書に説明されるシステムおよび方法は、VA-ECMOシステムとの使用のために限定されない。例えば、本発明の延長カニューレは、例えば、静脈-静脈ECMO(VV-ECMO)システムと共にも使用され得る。さらに、本明細書に説明される延長カニューレおよびインラインコネクタは、従来のECMO排出カテーテルと共に使用されて得るように、延長カニューレが、大腿静脈における排出カテーテルから患者の肺動脈または右心室内まで延び、それによって、血液が、直接、心臓から外に拍出され、心室補助デバイスとして効果的に機能することを可能にする。添付の請求項は、本発明の真の範囲内に該当する、全てのそのような変更および修正を対象とするように意図される。
【国際調査報告】