(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】産業上の利用のために人工知能モジュールを訓練すること
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20230510BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20230510BHJP
G06N 3/0475 20230101ALI20230510BHJP
【FI】
G06N20/00
G05B23/02 Z
G06N3/0475
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560023
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021056099
(87)【国際公開番号】W WO2021197783
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/059136
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】アミハイ、イド
(72)【発明者】
【氏名】コトリワラ、アルザム・ムザッファー
(72)【発明者】
【氏名】シウア、モンセフ
(72)【発明者】
【氏名】レンダース、フェリクス
(72)【発明者】
【氏名】ヤンカ、デニス
(72)【発明者】
【氏名】ホーレンダー、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】シュラーケ、ヤン・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】アブクワイク、ハディル
(72)【発明者】
【氏名】クレッパー、ベンヤミン
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA02
3C223AA11
3C223AA23
3C223BA01
3C223CC01
3C223EB01
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF08
3C223FF23
3C223FF26
3C223GG01
(57)【要約】
人工知能モジュール(10)、AIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成するコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、データストレージ(102)上に、第1のデータセット(12)及び第2のデータセット(14)を提供することを備え、第1のデータセットは、産業システムの第1の動作コンディションを示す1つ以上の第1のデータ要素(13)を含み、第2のデータセットは、産業システムの第2の動作コンディションを示す1つ以上の第2のデータ要素(15)を含み、第1の動作コンディションは、第2の動作コンディションと実質的に一致する。本方法は、第1のデータセット(12)の1つ以上の第1のデータ要素(13)を第2のデータセット(14)の1つ以上の第2のデータ要素(15)に変換するためのデータ変換を決定することと、第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素(13)及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に決定されたデータ変換を適用し、それによって、変換されたデータセットを生成することと、変換されたデータセットの少なくとも一部に基づいて、AIモジュール(10)を訓練するための訓練データセットを生成することとを更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工知能モジュール(10)、AIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成するコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
データストレージ(102)上に、第1のデータセット(12)及び第2のデータセット(14)を提供することと、ここにおいて、前記第1のデータセットは、産業システムの第1の動作コンディションを示す1つ以上の第1のデータ要素(13)を含み、前記第2のデータセットは、前記産業システムの第2の動作コンディションを示す1つ以上の第2のデータ要素(15)を含み、前記第1の動作コンディションは、前記第2の動作コンディションと実質的に一致する、
前記第1のデータセット(12)の前記1つ以上の第1のデータ要素(13)を前記第2のデータセット(14)の前記1つ以上の第2のデータ要素(15)に変換するためのデータ変換を決定することと、
前記第1のデータセットの前記1つ以上の第1のデータ要素(13)及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に決定された前記データ変換を適用し、それによって、変換されたデータセットを生成することと、
変換された前記データセットの少なくとも一部に基づいて、前記AIモジュール(10)を訓練するための訓練データセットを生成することと
を備える、方法。
【請求項2】
前記訓練データセットを生成することは、
前記AIモジュール(10)を訓練するための初期訓練データセットを提供することと、
変換された前記データセットの前記少なくとも一部で前記初期訓練データセットを補うことと
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記初期訓練データセットを補うことは、
前記初期訓練データセットに変換された前記データセットの前記少なくとも一部を追加すること、及び/又は、
変換された前記データセットの前記少なくとも一部で前記初期訓練データセットの少なくとも一部を置換することと
を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のデータセット(12)中で、前記産業システムの前記第1の動作コンディションを示す前記1つ以上の第1のデータ要素(13)を識別及び/若しくは選択すること、並びに/又は、
前記第2のデータセット(14)中で、前記産業システムの前記第2の動作コンディションを示す前記1つ以上の第2のデータ要素(15)を識別及び/若しくは選択すること
を更に備える、請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のデータセット(12)の前記1つ以上の第1のデータ要素(13)は、時間に関連し、及び/又は、
前記第2のデータセット(14)の前記1つ以上の第2のデータ要素(15)は、時間に関連する、
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記産業システムの少なくとも1つの動作パラメータに関して、前記1つ以上の第1のデータ要素(13)を前記1つ以上の第2のデータ要素(15)に一致させること、ここにおいて、前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記産業システムの動作を示す、
を更に備える、請求項1~5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの動作パラメータは、前記産業システムの動作時間であり、及び/又は、
前記1つ以上の第1のデータ要素(13)は、前記産業システムの動作時間に関して前記1つ以上の第2のデータ要素(15)に一致される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記データ変換は、前記1つ以上の第1のデータ要素(13)の各々について要素毎に決定される、
請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記データ変換は、機械学習アルゴリズムを使用して決定される、
請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記データ変換は、カーネル密度推定、ガウス回帰、人口ニューラルネットワーク、敵対的生成ネットワーク、和積ネットワーク、及び敵対的ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを使用して決定される、
請求項1~9のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記データ変換は、非確率的に決定される、
請求項1~8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のデータセット(12)及び前記第2のデータセット(14)のうちの少なくとも1つは、前記産業システムの動作のシミュレーションを記述するシミュレーションデータを含み、
前記第1のデータセット(12)及び前記第2のデータセット(14)のうちの少なくとも1つは、前記産業システムの実際の動作を記述する動作データを含む、
請求項1~11のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のデータセット(12)は、前記産業システムの動作のシミュレーションを記述するシミュレーションデータを含み、前記第2のデータセット(14)は、前記産業システムの実際の動作を記述する動作データを含み、
前記データ変換を決定することは、前記データ変換を適用することによって、ノイズが変換された前記データセット中に再現されるように、前記第2のデータセットの前記1つ以上の第2のデータ要素の前記ノイズを決定することを備える、
請求項1~12のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
決定された前記ノイズは、前記1つ以上の第2のデータ要素(15)の測定ノイズを表し、及び/又は、
決定された前記ノイズは、前記産業システムの前記実際の動作に影響を及ぼす環境的影響を表す、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のデータセット(12)及び前記第2のデータセット(14)のうちの少なくとも1つは、前記産業システムの動作不良を記述する故障データを含み、
前記第1のデータセット及び前記第2のデータセットのうちの少なくとも1つは、前記産業システムの公称動作を記述する公称動作データを含む、
請求項1~14のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のデータセット(12)は、前記産業システムの公称動作を記述する公称動作データを含み、前記第2のデータセット(14)は、前記産業システムの動作不良を記述する故障データを含み、
前記データ変換を決定することは、前記データ変換を適用することによって、前記産業システムの前記動作不良が変換された前記データセット中に再現されるように、前記第2のデータセット中で、前記産業システムの前記動作不良を記述する前記故障データを決定することを備える、
請求項1~15のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータ(100)の1つ以上のプロセッサによって実行されると、前記コンピュータ(100)に、請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように命令するコンピュータプログラム。
【請求項18】
請求項17に記載のコンピュータプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
産業システムを監視及び/又は制御するために使用可能な人工知能モジュール(10)を訓練するための請求項1~16のうちのいずれか一項に記載の方法に従って生成される訓練データセットの使用。
【請求項20】
人工知能モジュール(10)、AIモジュールを訓練するコンピュータ実装方法であって、
請求項1~16のうちのいずれか1項に記載の訓練データセットを生成することと、
生成された前記訓練データセットで前記AIモジュール(10)を訓練することと
を備える、方法。
【請求項21】
産業プロセスを監視及び/又は制御するための人工知能モジュール(10)、AIモジュールを備えるコンピュータ(100)であって、
前記コンピュータ(100)は、請求項20に記載の方法に従って前記AIモジュール(10)を訓練するように構成され、及び/又は、
前記AIモジュール(10)は、請求項20に記載の方法に従って訓練される、
コンピュータ。
【請求項22】
産業システムを監視及び/又は制御するための請求項20に記載の方法に従って訓練される人工知能モジュール(10)の使用。
【請求項23】
産業システムを監視及び/又は制御するための請求項21に記載のコンピュータ(100)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に産業システムに関する。特に、本発明は、産業システムを監視及び/又は制御するためなど、産業上の利用のために人工知能モジュール(以下、「AIモジュール」と呼ばれる)を訓練するための訓練データセットを生成するコンピュータ実装方法に関する。本発明は更に、対応するコンピュータプログラム及びそのようなコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読媒体に関する。更に、本発明は、AIモジュールを訓練するための訓練データセットの使用、及び訓練データセットでAIモジュールを訓練するコンピュータ実装方法に関する。その上、本発明は、そのような訓練データセットで訓練されたAIモジュールを備えるコンピュータ、並びに産業システムを監視及び/又は制御するためのコンピュータ及び/又は訓練されたAIモジュールの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プラント、パワープラント、プロセスプラント、電気変換ステーション、中継ステーション、給電ステーション、変電ステーション、産業駆動システム、工場システム、製造システム、ドライブ、モータなどの産業システムは、通常、産業システムの正確な機能を保証し、産業システムの機能不全及び/又は故障を確実に検出するために、産業システムの動作中に監視及び/又は制御することができる1つ以上の構成要素を備える。例えば、産業駆動システムは、ドライブ、モータ、負荷、変圧器、ギアボックス、ポンプ、換気デバイス、加熱デバイス、空調デバイス、コントローラ、モーションコントロール、及び機械のうちの1つ以上を備えることができ、それらは、産業システムの動作中に監視及び/又は制御することができる。この目的のために、産業システムの1つ以上の構成要素に関連するセンサデータなどのデータを分析して、産業システムが完全に機能的であり、正確に作動しているかどうかを決定することができる。
【0003】
そのようなデータ又はデータセットを分析するために、例えば、人口ニューラルネットワークなどの人工知能モジュール(「AIモジュール」)が使用され得る。産業システムが完全に機能的であり、正確に作動しているかどうかを確実に決定するために、又は産業システムの1つ以上の構成要素の故障を確実に検出(又は予測)するために、AIモジュールは、適切且つ包括的な訓練データセットで訓練されるべきであり、それは、好ましくは、産業システムの全ての考えられる作動シナリオ、動作シナリオ、故障シナリオ、及び/又は故障モードをカバーすべきである。一般に、しかしながら、産業上の利用においてAIモジュールを訓練するためのデータは非常に少ない可能性があり、特に、産業システムのある特定の故障シナリオ及び/又はプロセス移行についてのデータは稀である可能性がある。結果として、産業システムを監視及び/又は制御するためにそのような(制限された)訓練データセットで訓練されたAIモジュールの使用は制限され得る。
【発明の概要】
【0004】
従って、例えば、産業システムを監視及び/又は制御するためなど、産業上の利用においてAIモジュールを訓練するための改善された及び/又は補強された訓練データセットを提供すること、並びに産業システムを監視及び/又は制御するための改善された(訓練された)AIモジュールを提供することが望ましくあり得る。
【0005】
これは、独立請求項の主題によって達成され、更なる実施形態は、従属請求項及び以下の説明に記載する。
【0006】
本開示の態様によると、例えば産業上の利用用途のために人工知能モジュール、AIモジュールを訓練するため、産業システムを監視するため、産業システムを制御するため、及び/又は産業システムの挙動を予測するための訓練データセットを生成するコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、
-データストレージ上に、第1のデータセット及び第2のデータセットを提供することと、ここにおいて、第1のデータセットは、産業システムの第1の動作コンディションを示す、記述する、及び/又は表す1つ以上の第1のデータ要素を含み、第2のデータセットは、産業システムの第2の動作コンディションを示す、記述する、及び/又は表す1つ以上の第2のデータ要素を含み、第1の動作コンディションは、第2の動作コンディションと実質的に一致する、
-第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素を第2のデータセットの1つ以上の第2のデータ要素に変換及び/又はコンバートするためのデータ変換を決定することと、
-第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に決定されたデータ変換を適用し、それによって、少なくとも1つの変換されたデータセットを生成することと、
-少なくとも1つの変換されたデータセットの少なくとも一部に基づいて、AIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成することと
を備える。
【0007】
データ変換を決定し、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用することによって、AIモジュールを訓練するための包括的な訓練データセットを生成することができ、その訓練データセットは、産業システムの多数のシナリオをカバーすることができ、AIモジュールを包括的に訓練するために使用することができる。そのような訓練されたAIモジュールは、次いで、例えば、産業システムの正確な機能を保証するために、並びに/又は産業システム及び/若しくはその1つ以上の構成要素の故障若しくは機能不全を確実に検出するために、産業システムを監視及び/又は制御するために使用することができる。
【0008】
一般に、AIモジュールは、例えば、産業システムの動作を示すデータ、測定データ、動作データ、/又はシミュレーションデータなどの1つ以上の入力及び/又は入力データに基づいて分類結果を提供するように構成された分類器及び/又は分類器回路を指し得る。その中で、本開示によるAIモジュールは、例えば、1つ以上のプロセッサ及び/又はデータ処理デバイス上で1つ以上の機械学習アルゴリズムを採用及び/又は実行する任意のタイプの人口知能デバイス及び/又は回路を指し得る。そのような機械学習アルゴリズム及び/又はAIモジュールは、例えば、ロジスティック回帰、サポートベクター法、ブースティング、単純ベイズ法、ベイジアンネットワーク、k近傍法、人口ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、カーネル密度推定、ガウス回帰、敵対的生成ネットワーク、和積ネットワーク、敵対的ニューラルネットワークなどに基づき得る。
【0009】
本開示の文脈では、産業システムは、例えば、プラント、パワープラント、プロセスプラント、電気変換ステーション、中継ステーション、給電ステーション、変電ステーション、産業駆動システム、工場システム、製造システム、ドライブ、モータなどの任意のタイプの産業システムを指し得る。更に、産業システムの動作コンディションは、例えば、実行状態、アイドル状態、オフ状態などの産業システムの状態及び/又は作動状態を示し得る、記述し得る、及び/又は表し得る。代替として又は加えて、産業システムの動作コンディションは、例えば、産業システムの少なくとも一部における温度、圧力、流体レベル、換気、及び/又は流体の流量など、産業システムの動作に影響を及ぼす環境要因及び/又はパラメータを示し得、記述し得、及び/又は表し得る。
【0010】
本開示の文脈では、第1の動作コンディションが第2の動作コンディションと実質的に一致することは、第1の動作コンディションが第2の動作コンディションと同様及び/又は同等であることを意味し得る。それ故に、第1のデータセット及び第2のデータセット(並びに/又は第1及び第2のデータ要素)は、産業システムの同様の、同等の、及び/又は一致する動作コンディションを記述し得る。それ故に、第1及び第2のデータセット(並びに/又は第1及び第2のデータ要素)は、産業システムの第1及び第2の動作コンディションに関して、互いに同程度及び/又は一致し得る。故に、1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素に変換するための意味のあるデータ変換を導出することが可能である。しかしながら、以下により詳細に説明するように、第1及び第2のデータセットは、1つ以上の更なる動作コンディション、即ち、第1及び第2の動作コンディション以外の動作コンディションにおいて互いに異なる可能性があることに留意されたい。
【0011】
一般に、第1のデータセット及び第2のデータセットは、産業システムの動作を示す、記述する、及び/又は表すデータセットを指すことができる。その中で、第1のデータセット及び第2のデータセットは、同じソースを有し得、及び/又は同じデータタイプであり得る。例えば、第1及び第2のデータセットは、例えば、産業システムの動作中に取得されたセンサデータなどの同じ産業システムの測定データ(動作データとも呼ばれる)、又は産業システムの動作(若しくはその1つ以上の構成要素)をシミュレートするシミュレーションデータを指し得る。代替として、第1及び第2のデータセット(並びに/又は更なるデータセット)は、異なるソース及び/又は異なるデータタイプを有し得る。例えば、第1のデータセットは、第1の産業システムの測定データを指し得、第2のデータセットは、第1の産業システムとは異なる第2の産業システムの測定データを指し得る。代替として又は加えて、第1及び第2のデータセットのうちの一方は、産業システムの測定データを指し得、第1及び第2のデータセットのうちの他方は、産業システムのシミュレーションデータを指し得る。代替として又は加えて、第1のデータセット及び第2のデータセットは、第1及び第2の動作コンディション以外の1つ以上の動作コンディションにおいて異なり得る。例えば、第1及び第2のデータセットのうちの一方は、第1及び第2のデータセットのうちの他方と比較して追加のデータ又はデータ要素を包含し得る。そのような追加のデータ又はデータ要素は、例えば、故障データ、産業システムの1つ以上の追加の構成要素からのデータ、環境パラメータに関連するデータ、アラートデータ、イベントデータなどであり得る。それ故に、第1及び第2のデータセットは、第1及び第2の動作コンディションに関して互いに実質的に一致し得るが、第1及び第2のデータセットは、任意選択で、1つ以上の追加の動作コンディションに関して互いに異なり得る。
【0012】
同様に、更なるデータセットは、産業システムの動作を示す、記述する、及び/又は表すデータセットを指すことができる。更なるデータセットは、例えば、産業システムの測定データ、動作データ、及び/又はシミュレーションデータを指し得る。
【0013】
1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素に変換するためのデータ変換は、一般に、1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素にコンバートすることを可能にし得る。これは、例えば、変換されたデータセットが、1つ以上の第1のデータ要素よりも1つ以上の第2のデータ要素に酷似する1つ以上のデータ要素を備えることができることを意味し得る。故に、「データ変換」という用語は、広く理解されるべきであり、例えば、第1のデータ要素へのデータ変換の適用が正確に第2のデータ要素をもたらすことを必ずしも意味しない。むしろ、1つ以上の第1のデータ要素(及び/又は更なるデータ要素)にデータ変換を適用することによって、第2のデータ要素が近似及び/又は模倣され得る。
【0014】
例として、第1のデータセット及び第2のデータセットは、例えば、データセットのうちの1つのみに存在するノイズ、データセットのうちの1つにおける欠側値、データセットのデータ要素によって記述される測定曲線の形状、及び/又はデータセットの1つ以上のデータ要素によって表されるパラメータの値に関して互いに異なり得る。そのような差異は、データ変換を適用することによって、第1及び第2のデータセットにおける上述の差異が、変換されたデータセット中に反映及び/又は再現されるように、データ変換によって反映及び/又はデータ変換中に含めることができる。
【0015】
それ故に、データ変換を決定することは、1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素と比較することを備え得る。代替として又は加えて、データ変換を決定することは、1つ以上の第1のデータ要素と1つ以上の第2のデータ要素との間の偏差及び/又は差異を決定することを備え得る。決定されたデータ変換を1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータ要素に適用し、変換されたデータセットを生成することによって、第1のデータセットと第2のデータセットとの間の差異及び/又は偏差を軽減することができ、そのため、変換されたデータセットは、第1のデータセットが第2のデータセットに似ているので、第2のデータセットにより酷似する。一般に、これは、例えば合成データセットに基づいて多数の変換されたデータセットを生成することを可能にし得、それらは、AIモジュールを訓練するための包括的な訓練データセットに組み合わせることができる。
【0016】
例えば、これは、シミュレーションデータを使用して、AIモジュールを訓練するための測定データを補うことを可能にし得、逆もまた同様である。代替として又は加えて、様々な異なる産業システム及び/又は異なるシミュレーションからのデータは、それらのうちの1つ以上にデータ変換を適用することに基づいて組み合わせることができる。代替として又は加えて、故障データを含むデータセットは、以下により詳細に説明するように、非故障データセット又は故障データを伴わないデータセットと組み合わせることができる。
【0017】
実施形態によると、訓練データセットを生成することは、
-AIモジュールを訓練するための初期訓練データセットを提供することと、
-少なくとも1つの変換されたデータセットの少なくとも一部で初期訓練データセットを補う、増補する、及び/又は補強することと
を備える。
【0018】
その中で、初期訓練データセットは、初期訓練データを備え得、それは、任意選択で、第2のデータセットを含み得る。初期訓練データセットを補うことによって、改善された訓練データセットを提供することができ、AIモジュールを包括的に訓練することを可能にし、そのため、訓練されたAIモジュールは、産業システムの複数の異なる動作シナリオ及び/又は動作コンディションを識別することができる。
【0019】
実施形態によると、初期訓練データセットを補うことは、少なくとも1つの変換されたデータセットの少なくとも一部を初期訓練データセットに追加することを備える。代替として又は加えて、初期訓練データセットを補うことは、少なくとも1つの変換されたデータセットの少なくとも一部で初期訓練データセットの少なくとも一部を置換することを備える。このようにして、初期訓練データセットを、効果的に補強する、増補する、補う、及び/又は改善することができる。
【0020】
実施形態によると、本方法は、第1のデータセット中で、例えば第1のデータセットを処理することに基づいて、産業システムの第1の動作コンディションを示す1つ以上の第1のデータ要素を識別及び/又は選択することを更に備える。本方法は、第2のデータセット中で、例えば第2のデータセットを処理することに基づいて、産業システムの第2の動作コンディションを示す1つ以上の第2のデータ要素を識別及び/又は選択することを更に備える。第1及び第2の動作コンディションに関して第1のデータ要素が第2のデータ要素と実質的に一致するように、1つ以上の第1及び第2のデータ要素が識別及び/又は選択され得る。それ故に、第1のデータセット及び第2のデータセットは、第1の及び第2のデータセットにわたって一致するデータ要素、例えばデータシーケンスについて検索され得る。
【0021】
実施形態によると、第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素は、時間に関連する。代替として又は加えて、第2のデータセットの1つ以上の第2のデータ要素は、時間に関連する。言い換えれば、第1及び/又は第2のデータセットは、時間に関連するデータ要素を備え得、及び/又はデータ要素の時系列即ち時間シーケンスに対応し得る。
【0022】
実施形態によると、本方法は、産業システムの少なくとも1つの動作パラメータに関して、1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素に一致させることを更に備え、少なくとも1つの動作パラメータは、産業システムの動作を示す。その中で、少なくとも1つの動作パラメータは、例えば、産業システムのイベント、状態、コンディション、作動コンディション、動作時間、時間、及び/又は作動状態を示すことができる。代替として又は加えて、少なくとも1つの動作パラメータは、例えば、産業システムの少なくとも一部における温度、圧力、流体レベル、換気、及び/又は流体の流量など、産業システムの動作に潜在的に影響を及ぼす環境要因又は影響を示すことができる。1つ以上の第1及び第2のデータ要素の一致に基づいて、互いに関連付けられた及び/又は対応するデータ要素の対を識別することができ、それは、これらのデータ要素の対のための正確なデータ変換を決定することを可能にし得る。
【0023】
実施形態によると、少なくとも1つの動作パラメータは、産業システムの動作時間である。代替として又は加えて、1つ以上の第1のデータ要素は、産業システムの動作時間に関して1つ以上の第2のデータ要素に一致される。
【0024】
実施形態によると、データ変換は、1つ以上の第1のデータ要素の各々について要素毎に決定される。それ故に、変換されたデータセットは、1つ以上の変換(又は変換された)データ要素を備え得、各々は、第1のデータ要素のうちの1つ及び/又はデータ変換によって変換された更なるデータ要素のうちの1つに対応する。
【0025】
実施形態によると、データ変換を決定することは、1つ以上の第1のデータ要素と1つ以上の第2のデータ要素との間の関数関係を決定することを備える。そのような関数関係は、例えば、1つ以上の第1のデータ要素を1つ以上の第2のデータ要素にコンバートすることを可能にする数学的関係を指し得る。
【0026】
例えば、データ変換は、データ要素の追加、データ要素の削除、データ要素の調整、データ要素のスケーリング、異なる基準又は座標系へのデータ要素の変換などを含み得る。
【0027】
実施形態によると、データ変換は、例えばAIモジュールに実装された機械学習アルゴリズムを使用して決定される。例として、データ変換は、カーネル密度推定、ガウス回帰、人口ニューラルネットワーク、敵対的生成ネットワーク、和積ネットワーク、及び敵対的ニューラルネットワークのうちの少なくとも1つを使用して決定することができる。しかしながら、任意の他の機械学習アルゴリズムが使用され得る。それ故に、データ変換は、AIモジュールにおいて実装され得る機械学習アルゴリズムによって学習され得る。次いで、訓練された機械学習アルゴリズム又はAIモジュールを使用して、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用して、1つ以上の変換されたデータセットを生成し得る。次いで、複数の変換されたデータセットを訓練データセットに組み合わせることができる。
【0028】
実施形態によると、データ変換は、非確率的に決定される。例えば、データ変換は、回帰に基づいて、及び/又は回帰問題を解くことに基づいて決定することができる。
【0029】
実施形態によると、第1のデータセット及び第2のデータセットのうちの少なくとも1つは、例えば、シミュレーション計算における産業システムの動作のシミュレーションを記述するシミュレーションデータを含み、第1のデータセット及び第2のデータセットのうちの少なくとも1つは、産業システムの実際の動作を記述する動作データを含む。その中で、動作データは、例えば、産業システムのセンサデータ、アクチュエータデータ、制御データ、及び/又はイベントデータを備える測定データを指し得る。
【0030】
実施形態によると、第1のデータセットは、例えば、第1の動作コンディションの産業システムの動作のシミュレーションを記述するシミュレーションデータを含み、第2のデータセットは、産業システムの実際の動作を記述する動作データを含む。例えば、第1のデータ要素は、シミュレーションデータ要素であり得、第2のデータ要素は、動作データ要素であり得る。更に、データ変換を決定することは、例えば、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用することによって、ノイズが変換されたデータセット中に再現されるように、第2のデータセットの1つ以上の第2のデータ要素のノイズを決定することを備える。それ故に、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用することによって、1つ以上の第2のデータ要素のノイズを、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に、例えば、変換されたデータセットがノイズを含むように、追加することができる。
【0031】
実施形態によると、決定されたノイズは、例えば測定値又はセンサ信号の統計的変動など、1つ以上の第2のデータ要素の測定ノイズを表す。代替として又は加えて、決定されたノイズは、例えば、動作している追加の構成要素、動作している追加のポンプ、産業システムの一部の温度、周囲温度など、産業システムの実際の動作に影響を及ぼす環境的影響を表す。それ故に、本開示の文脈では、ノイズという用語は、例えば、測定ノイズ及び1つ以上の第2のデータ要素中に反映される他の特性又は環境的影響を備えるものとして広く理解されるべきである。
【0032】
実施形態によると、第1のデータセット及び第2のデータセットのうちの少なくとも1つは、産業システムの動作不良を記述する故障データを含み、第1のデータセット及び第2のデータセットのうちの少なくとも1つは、産業システムの公称又は正常動作を記述する公称動作データを含む。公称動作データは、故障データがないデータを指し得る。
【0033】
実施形態によると、第1のデータセットは、産業システムの公称動作を記述する公称動作データを含み、第2のデータセットは、産業システムの動作不良を記述する故障データを含み、データ変換を決定することは、例えば、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用することによって、産業システムの動作不良が変換されたデータセット中に再現されるように、第2のデータセット中で、産業システムの動作不良を記述する故障データを決定することを備える。それ故に、1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素にデータ変換を適用することによって、例えば、変換されたデータセットが産業システムの動作不良を含む及び/又は反映するように、産業システムの動作不良を1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に追加することができる。
【0034】
本開示の更なる態様によると、コンピュータプログラムが提供され、コンピュータプログラムは、コンピュータの1つ以上のプロセッサによって実行されると、以上及び以下に説明するような、人工知能モジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを実行するようにコンピュータに命令する。
【0035】
本開示の更なる態様によると、コンピュータプログラムを記憶する非一時的コンピュータ可読媒体が提供され、コンピュータプログラムは、コンピュータの1つ以上のプロセッサによって実行されると、以上及び以下に説明するような、人工知能モジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを実行するようにコンピュータに命令する。
【0036】
本開示の更なる態様は、産業システムを監視及び/又は制御するために使用可能な人工知能モジュールを訓練するための、以上及び以下に説明するような、訓練データセットを生成する方法に従って生成された訓練データセットの使用に関する。
【0037】
本開示の更なる態様によると、人工知能モジュール、AIモジュールを訓練するコンピュータ実装方法が提供される。本方法は、
-以上及び以下に説明するような、人工知能モジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法に従って訓練データセットを生成することと、
-生成された訓練データセットでAIモジュールを訓練することと
を備える。
【0038】
本開示の更なる態様によると、産業プロセスを監視及び/又は制御するためのAIモジュールを備えるコンピュータが提供され、コンピュータは、AIモジュールを訓練するように構成され、及び/又はAIモジュールは、以上及び以下に説明するような、AIモジュールを訓練する方法に従って訓練される。
【0039】
本開示の更なる態様は、産業システムを監視及び/又は制御するための、以上及び以下に説明するような、AIモジュールを訓練する方法に従って訓練されたAIモジュールの使用に関する。
【0040】
本開示の更なる態様は、産業システムを監視及び/又は制御するための、以上及び以下に説明されるような、AIモジュールを訓練する方法に従って訓練されたAIモジュールを有するコンピュータの使用に関する。
【0041】
本開示の一態様を参照して以上及び以下に説明される任意の特徴、機能、ステップ、及び/又は要素は、以上及び以下に説明するような、本開示の任意の他の態様に等しく適用される。
【0042】
本開示のこれら及び他の態様は、以下に記載する例証的な実施形態から明らかになり、それらを参照して解明されるであろう。
【0043】
本開示の主題を、添付の図に例示する例証的な実施形態を参照して以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】例証的な実施形態によるAIモジュールを有するコンピュータを示す。
【
図2】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【
図3】例証的な実施形態による人工知能モジュールを訓練する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【
図4A】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図4B】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図4C】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図5】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【
図6A】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図6B】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図6C】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図6D】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図6E】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図7A】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図7B】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【
図8】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【
図9】例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図は、概略的なものでしかなく、原寸通りではない。原則として、図では、同一又は同様の部分には同一又は同様の参照符号が提供される。
【0046】
図1は、例証的な実施形態による人工知能モジュール10を有するコンピュータ100を示す。
【0047】
コンピュータ100は、データを記憶するためのデータストレージ102を更に備える。例えば、第1のデータセット、第2のデータセット、変換されたデータセット、初期訓練データセット、訓練データセット、1つ以上の更なるデータセット、及び/又は他のデータは、データストレージ102上に記憶することができる。
【0048】
コンピュータ100は、データ処理のための1つ以上のプロセッサ105を含む処理回路104を更に備える。更に、コンピュータプログラム及び/又はソフトウェア命令は、データストレージ102中に記憶することができ、処理回路104によって実行されると、本開示による訓練データセットを生成する方法及び/又はAIモジュール10を訓練する方法を実行するようにコンピュータ100に命令する。
【0049】
一般に、AIモジュール10は、例えば、産業システムの動作を示すデータ、測定データ、及び/又はシミュレーションデータなどの1つ以上の入力及び/又は入力データに基づいて分類結果を提供するように構成された分類器及び/又は分類器回路10を指し得る。その中で、AIモジュール10は、例えば、1つ以上のプロセッサ、例えばプロセッサ105若しくは他のプロセッサ、及び/又はデータ処理デバイス上で1つ以上の機械学習アルゴリズムを採用及び/又は実行する任意のタイプの人口知能デバイス及び/又は回路を指し得る。そのような機械学習アルゴリズム及び/又はAIモジュール10は、例えば、ロジスティック回帰、サポートベクター法、ブースティング、単純ベイズ法、ベイジアンネットワーク、k近傍法、人口ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク、カーネル密度推定、ガウス回帰、敵対的生成ネットワーク、和積ネットワーク、敵対的ニューラルネットワークなどに基づき得る。
【0050】
コンピュータ100及び/又はAIモジュール10は、以上及び以下により詳細に説明するように、AIモジュール10を訓練する訓練データセットを生成するように、及び/又はAIモジュール10を訓練するように構成され得る。代替として又は加えて、コンピュータ100及び/又はAIモジュール10は、産業システムを監視及び/又は制御するように構成され得る。
【0051】
図2は、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【0052】
ステップS1は、データストレージ102上に、第1のデータセット及び第2のデータセットを提供することを備え、第1のデータセットは、産業システムの第1の動作コンディションを示す1つ以上の第1のデータ要素を含み、第2のデータセットは、産業システムの第2の動作コンディションを示す1つ以上の第2のデータ要素を含み、第1の動作コンディションは、第2の動作コンディションと実質的に一致する。
【0053】
ステップS2は、第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素を第2のデータセットの1つ以上の第2のデータ要素に変換するためのデータ変換を決定することを備える。
【0054】
ステップS3は、第1のデータセットの1つ以上の第1のデータ要素及び/又は1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に決定されたデータ変換を適用し、それによって、1つ以上の変換されたデータセットを生成することを備える。
【0055】
ステップS4は、1つ以上の変換されたデータセットの少なくとも一部に基づいて、AIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成することを備える。
【0056】
図3は、例証的な実施形態による、特に、
図2の方法に従って及び/又は本開示の様々な態様に従って生成された訓練データセットで人工知能モジュール10を訓練する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【0057】
ステップS1は、例えば、
図2を参照して及び/又は本開示の1つ以上の態様を参照して説明したように、訓練データセットを生成することを備える。
【0058】
ステップS2は、生成された訓練データセットでAIモジュール10を訓練することを備える。例えば、少なくとも1つの機械学習アルゴリズムは、例えば、AIモジュール10の1つ以上の重み及び/又はパラメータ値を調整するために、訓練データセットを処理するために利用され得る。代替として又は加えて、訓練は、教師あり学習、半教師あり学習、教師なし学習、深層学習、及び/又は強化学習に基づき得る。
【0059】
図4A~4Cは、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。
【0060】
図4A~4Cに示す例では、複数の第1のデータ要素13を備える第1のデータセット12と、複数の第2のデータ要素15を備える第2のデータセット14とが例示され、互いに比較される。第1のデータセット12及び第2のデータセット14は、等距離でサンプリングされたデータ、例えば時系列データに対応し得る。
【0061】
第1のデータセット12は、産業システムの動作のシミュレーションを記述するシミュレーションデータ12に対応し、第2のデータセット14は、産業システムの実際の動作を記述する動作データ14又は測定データ14に対応する。
【0062】
例えば、
図4Aは、シミュレータからの等距離でサンプリングされた第1のデータ要素13と、産業システムの動作中に測定又は決定された第2のデータ要素15との比較を示す。シミュレータデータ、第1のデータ要素13、及び/又は第1のデータセット12は、例えば温度の影響などの環境的影響に起因する測定ノイズ又は他のノイズ効果を包含せず、第1のデータセット12に対して訓練された機械学習モデル及び/又はAIモジュール10は、産業システムの動作中に発生するノイズのあるデータに対して正確な予測を実行することができないことがある(逆もまた同様)。
【0063】
図4Bは、第1のデータ要素13と第2のデータ要素15との一致を例示する。
図4A~4Cの例では、第1及び第2のデータセット12、14は等間隔でサンプリングされるので、第1のデータセット12からの各データ要素13は、第2のデータセット14からのデータ要素15に一致することができる。これは、例えば、
図4Cにおいて三角形によって示すノイズ及び/又はノイズの分布を決定、導出、及び/又は学習することを可能にし、それは、第2のデータセット14をより酷似させるために、例えば、更なるシミュレータデータ、1つ以上の更なるデータセット、及び/又は第1のデータセット12に追加することができる。
【0064】
それ故に、第1のデータ要素13を第2のデータ要素15と比較することに基づいて、第1のデータ要素13を第2のデータ要素15にコンバート及び/又は変換するためのデータ変換を決定することができる。この決定されたデータ変換が、第1のデータセット12のデータ要素13に、及び/又は更なるシミュレーションデータ及び/若しくは更なる動作データなどの1つ以上の更なるデータセットの1つ以上の更なるデータ要素に適用されると、第2のデータセット14により酷似する1つ以上の変換されたデータセットを生成することができる。
図4A~4Cに例示する例では、そのようなデータ変換は、第1のデータセット及び/又は更なるデータセット(複数可)へのノイズの追加を備え、そのため、ノイズは、変換されたデータセット(複数可)中に反映及び/又は再現される。
【0065】
決定されたデータ変換、ノイズ、及び/又はノイズ分布は、次いで、
図4Cに示すように、AIモジュール10を訓練するために使用することができる更なるデータセット及び/又は更なるデータ要素に適用することができる。それ故に、
図4Cに例示するように、学習されたノイズ分布から、産業システムの実データに類似する新しいシーケンスをサンプリングすることができる。
【0066】
データ変換、ノイズ、及び/又はノイズ分布の決定及び/又は学習は、AIモジュール10及び/又はとりわけカーネル密度推定、ガウス回帰及び/又は敵対的ニューラルネットワークのような方法を使用することによって達成することができる。
図4A~4Cは、この決定及び/又は学習問題を単変量として例示するが、ほとんどの場合、例えば、いくつかの信号、特に設定点値、及び場合によっては一般的な気象条件、アラーム、イベント、生産製品などのような非時系列データの埋め込みも考慮すると、多変量であり得ることに留意されたい。
【0067】
代替的な学習アプローチでは、データ変換は、シミュレーションから元のデータ要素13の周囲の分布を学習することによってはアプローチされず、(非確率的)回帰問題としてアプローチされ得る。
【0068】
一般に、第1のデータセット12及び第2のデータセット14が、機械学習アルゴリズム及び/又はAIモジュール10に共に提示されるために、動作コンディション、例えば第1及び第2の動作コンディションに関して十分に同程度である場合、有利であり得る。
【0069】
図5は、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。特に、
図5は、適切なデータセット12、14を見出し、データ変換を決定し(又はデータ変換を学習し)、更なるシミュレーションデータの助けを借りて追加の訓練データ又は変換されたデータセットを生成し、更なるシミュレートされたデータを変換し、例えば、産業システムの予測、監視、及び/又は制御のためにAIモジュール10及び/又は機械学習モデルを訓練し、訓練されたAIモジュール10を使用し、及び/又は機械学習モデルを適用するプロセスを例示する。
【0070】
例えば、ステップS1では、定常状態は、データセット、例えば、第1のデータセット12及び/又は第2のデータセット14中で検索され得、オペレータ変更は、任意選択的に、ステップS2において適用され得る。更に、第1及び第2のデータセット12、14並びに/又はそのデータ要素13、15は、ステップS3において一致され得る。例えば、シミュレーションデータ12は、(
図5においてプラントとして例示する)産業システムの一致する安定状態のために生成され得る。任意選択で、ステップS4において、オペレータ変更が第2のデータセットに適用され得る。更に、変換サンプルは、例えば
図4A~4Cに例示するように、第1及び第2のデータセット12、14に基づいてステップS5において生成され得、データストレージ102中に記憶され得る。ステップS6では、一致する第1及び第2のデータセット12、14並びに/又は一致する第1及び第2のデータ要素13、15に対応し得る記憶された変換サンプルから、データ変換を導出することができ、例えば、AIモジュール10を使用して学習することができる。その上、追加のシミュレーションデータ、即ち更なるデータセット(複数可)をステップS7において生成し、データストレージ102中に記憶することができる。ステップS6において決定されたデータ変換を、次いで、これらの追加のシミュレーションデータ又は更なるデータセットに適用して、変換されたデータ及び/又は変換されたデータセット(複数可)を生成し、例えば、複数の変換されたデータセットを組み合わせることに基づいて、ステップS8において訓練データセットを生成することができる。訓練データセットを使用して、AIモジュール10を、産業システムを監視及び/又は制御するためにステップS9において訓練することができる。更に、訓練されたAIモジュール10は、次いで、産業システムの挙動を監視、制御、及び/又は予測するためにステップS10において使用することができる。
【0071】
図4A~5の例では、第1のデータセット12がシミュレーションデータに対応するが、プロセスを逆にして、シミュレータデータに似るように動作データを変換し、(主に)シミュレータデータに対して訓練され得るAIモジュール10及び/又は機械学習モデルに変換されたデータを供給することもできることに留意されたい。
【0072】
その上、
図5に例示する方法は、異なる産業システムから、例えば、小規模実験プラントなどのプラントAから、大規模生産プラントなどのプラントBにデータをどのように変換するかを学習するときにも適用することができる。
【0073】
図6A~6Eは、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。特に、
図6A~6Cは、産業システム中の漏れ検出用のデータ駆動型流れインジケータを実装するための本開示の例証的な使用ケースを例示する。
図6A~6Eは各々、データ要素の高速フーリエ変換の振幅を任意単位の周波数の関数として示す。
【0074】
流れ測定は、産業システム又はプラントの動作を制御及び/又は監視する重要な構成要素であり得る。流れ誘起振動信号を体積流量と相関させることができるので、振動データを活用して、漏れ検出用のデータ駆動型流れインジケータを開発することができる。
【0075】
そのような流れインジケータを開発するために、例えば、プロセスシミュレータ又は試験リグのうちのいずれかを使用して、訓練データ、例えば、初期訓練データセットが収集され得、センサは、試験リグのパイプに沿った異なる対象位置に設置され得る。制御された実験を実行することによって、システムを、異なる状態、例えば、「中断されない流れ」及び「漏れを伴う流れ」で実行することができる。異なる流れ状態が与えられると、分類モデル及び/又はAIモジュール10は、例えば、生の振動データの高速フーリエ変換(FFT)をこれらの状態にマッピングすることに基づいて訓練することができる。
【0076】
データ駆動型フロー検出器の場合、その成功は、現実世界の設定におけるその関連性に依存し得る。従って、AIモジュール10が高い一般化力を有することは、訓練データセット又は初期訓練データセットにさらされていない場合であっても、流れを確実に検出することが可能であるという点で有利であり得る。しかしながら、プロセスシミュレータ又は試験リグを使用して行われる実験は、例えば、産業システム中で動作する追加のポンプに起因する周波数の励振など、環境的影響に起因する測定ノイズ又は他のノイズ効果を包含しないことがある。
【0077】
例えば、
図6Aは、中断されない流れを示す試験リグにおいて行われた実験の実験データのFFTを示す。
図6Bは、産業システムの動作中の動作データ又は実データのFFTを示す。見られるように、
図6Aに示す実験データのFFTの振幅は、
図6Bの振幅よりも小さい。加えて、追加のデータ要素及び/又は追加の周波数20が、
図6Bに示す動作データ又は実データのFFTにおいて発生する。
【0078】
図6A及び6Bについて、システム構成は、試験リグ及び実プラントについて同じに設定されたが、実際のセットアップが追加のポンプ動作を含み、それが追加の周波数20をもたらすという違いがあった。これらの図を見ることによって、同じ周波数が両方において励起されることを観察することができるが、
図6Bの実プラントデータは、周波数20のいくらかの追加の励起を有し、およそ2倍の振幅を有する。結果として、
図6Aに示すこの試験リグからのデータに対して訓練された機械学習モデル及び/又はAIモジュール10は、
図6Bに示す所与の実際のノイズのあるプラントデータに対して良好に機能しないことがある。
【0079】
シミュレーション及び試験リグにおいて多くの制御された実験を行うことが可能であり得るが、実プラント又は産業システムにおいて同様の実験を行うことは、コスト、安全性、及びリソースを含むある特定の制約を課し得る。実際には、機会が与えられると、非常に限られた数の実験が実プラント又は産業システムにおいて行われ得る。実験を制御することによって、データシーケンス、データセット及び/又はデータ要素を、実データ又は動作データと合成データ又はシミュレーションデータとの間でより容易に一致させることができる。
【0080】
本開示によると、しかしながら、そのような異なるデータセット間のデータ変換を決定することができる。データ変換は、次いで、機械学習モデル及び/又はAIモジュール10を訓練するための初期訓練データセットを増強するために、1つ以上の更なるデータセットに適用することができる。このプロセスは、
図6C~6Eに図示する。
【0081】
特に、
図6Cは、
図6Aに図示するものと同様のシミュレーション実験からのシミュレーションデータを示す。その中で、
図6Cに示すデータは、第1のデータセット12に対応し得る。更に、
図6Dは、追加のデータ要素又は周波数20を有する産業システムの動作データ又は測定データを示し、それは、本開示の文脈ではノイズ又はノイズ効果と見なすことができる。その中で、
図6Dに示すデータは、第2のデータセット14に対応し得る。第1のデータセット12と第2のデータセット14との比較に基づいて、データ変換が決定され得、それは、
図6Dに示す周波数20をもたらすノイズ又はノイズ効果の追加を含み得る。次いで、決定されたデータ変換を第1のデータセット12及び/又は更なるデータセットに適用して、
図6Eに例証的に示すような1つ以上の変換されたデータセットを生成することができ、データ変換の適用に起因して、追加のデータ要素又は周波数20が再現され、反映され、及び/又は含まれる。次いで、出力された、増補された又は変換されたデータセットを使用して、より高い一般化力を有する可能性が高く、このことから、実プラント又は産業システムにより適している訓練機械学習モデル10及び/又はAIモジュールへの訓練データセットを生成することができる。
【0082】
図7A及び7Bは、例証的な実施形態によるAIモジュールを訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示する。特に、
図7A及び7Bは、故障データを増補及び/又は補強するための本開示の例証的な使用ケースを例示する。
図7A及び7Bは各々、任意単位の時間の関数としての信号又はデータ要素の振幅を示す。
【0083】
第1のデータセット12は、
図7Aに示し、それは、産業システムの健全な動作又は公称動作からの公称動作データを指し得る。第2のデータセット14は、
図7Bに示し、それは、故障又はプロセス異常が存在する故障データを指し得るか、又は包含し得る。通常、そのような異常な(即ち、障害)イベント又はデータは非常に少ない。そのようなデータは、しかしながら、本開示に従って生成することができる。
【0084】
例えば、データセットの1つ以上の障害エピソード又はセグメントは、非障害データセットの特性を使用して変換することができるか、又は逆もまた同様である。非障害データ要素を生成するために、非障害データセットの分布は、例えば、経験的分布、カーネル密度推定、及び/又は、例えば、敵対的生成ネットワーク、変分オートエンコーダなどの生成モデルを使用して推定することができる。このようにして、データ変換を導出することができる。その後、この分布推定及び/又はデータ変換は、例えば既存の障害データ要素又はデータセットと組み合わせて使用されて、新しい障害データ要素又はデータセットを生成することができる。例えば、これは、非障害データ時系列12中の各点又はデータ要素の周囲の標準偏差22を推定し、次いで、±2標準偏差22の範囲(データの約95%)中の障害データ時系列又はデータセット14の平均の周囲の点又はデータ要素をサンプリングすることによって行うことができる。これは、障害データセット14が非障害データセット12とほぼ同じ分散を有するが、異なる値を中心とすると仮定し得る。
【0085】
図8は、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【0086】
図8では、X
1,...,mは、異なる障害モード及び/又は障害シナリオを示し、nは、各モードからの例、データ要素、及び/又はデータセットの数である。
図8のより太い矢印は、より複雑な例、データ要素、及び/又はデータセットの生成を指す。
【0087】
例えば、機械学習段階に関して、
図8は、モデル訓練及び/又はAIモジュール10の訓練並びに変換されたデータセット(複数可)及び/又は訓練データセット(複数可)の生成を例示する。
図8では、X(及びy又はk)は、データラベルを指し得、そのため、X
1,...,mは、異なる障害モードを示し得、y又はkは、正常データを示す。モデル及び/又はAIモジュール10は、入力データが与えられると、ラベルX及びy又はkの確率を予測し得る。
【0088】
この場合、障害データに変換される分布を学習するために使用される正常データは、好ましくは、分布を正確に捕捉するために、障害データの動作コンディションと一致し得る。これは、1分当たりの回転数又は一般的な回転機器についての電力消費のような動作コンディション、又は流れ、温度、若しくは圧力のようなプロセスコンディションの近似に基づいて選択されたデータによって達成することができる。
【0089】
図8のステップS1では、例えば、複数の動作モードで非障害のセンサデータが決定され得る。センサデータは、第1及び/又は第2のデータセットとして使用され得る。ステップS2では、データ変換は、例えばカーネル密度推定を通じて、それに基づいて決定され得る。データ変換は、次いで、
図8においてX
n,mによって示す、障害例、データ要素、及び/又はデータセットにステップS3において適用されて、
図8においてアクセント~を有するX
n,mによって示す変換されたデータセットを生成し得る。
【0090】
図9は、例証的な実施形態によるAIモジュール10を訓練するための訓練データセットを生成する方法のステップを例示するフローチャートを示す。
【0091】
ステップS1では、1つ以上のデータセット、例えば第1のデータセット12が、関心のあるデータ要素及び/又はシーケンスについて検索される。データ要素及び/又はシーケンスは、例えば、プロセス値、設定点の変化、ポンプのような資産についてのある特定の負荷状況、及び/又は、例えば、パイプ漏れのような故障の存在などの外部理由などのある特定のデータ特性のために関心を引くものであり得る。次いで、対応する第2のデータセット14が存在するかどうか、又は第2のデータセット14をシミュレーション及び/又は実験によって生成することができるかどうかがチェックされ得る。第2のデータセット14は、第1のデータセット12中で見出されるシーケンス中に存在する構成及び/又はシーケンスを模倣して、ステップS2において生成することができる。第2のデータセット14が例えば履歴データセットのみであり、シミュレーション及び/又は実験によって新しいデータを生成することができない場合、ステップS2’において、第2のデータセット14中で同様のシーケンスについて検索することができる。
【0092】
次のステップS3では、第1のデータセット12のデータ要素を第2のデータセット14のデータ要素に、又はその逆に変換するためのデータ変換を決定及び/又は学習するためにステップS4において使用することができる予備訓練データセットを生成することができる。例えば、第1及び第2のデータセット12、14からのデータ要素は、例えば、データセットのうちの1つからの予測子シーケンス及び他のデータセットからのラベルシーケンスに一致させることができる。
【0093】
この予備訓練データセットを用いて、機械学習アルゴリズム及び/又はAIモジュール10を、例えば、ガウス回帰、カーネル密度推定、和積ネットワーク、若しくは敵対的生成ネットワークの助けを借りて確率分布p(A|B)を学習することによって、又は一方のデータセットから他方のデータセットへの値をマッピングする回帰関数を単に学習することによって、データ変換を実行するように訓練することができる。
【0094】
データ変換が学習及び/又は決定されると、ステップS5において、1つ以上の変換されたデータセットを生成し、例えば訓練データセットにマージすることができる。代替として、ステップS5’では、第1又は第2のデータセット12、14のうちの一方からのデータ要素を、第1及び第2のデータセット12、14のうちの他方におけるシーケンスを一致させることなく変換して、ステップS6において(組み合わせられた)訓練データセットを作成して、ステップS7において、例えば予知保全、プロセス監視、時系列予測などのための機械学習モデルなどの1次機械学習タスクのためにAIモジュール10を訓練することができる。
【0095】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明したが、そのような例示及び説明は、例示又は例証であって限定的ではないと見なされるべきであり、本発明は、開示した実施形態に限定されない。開示した実施形態に対する他の変形形態は、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された発明を実施する際に当業者が理解及び達成することができる。
【0096】
特許請求の範囲では、「備える」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。ある特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示さない。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【国際調査報告】