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特表2023-520482生体試料中の標的分析物の迅速な検出のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】生体試料中の標的分析物の迅速な検出のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20230510BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/569 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560079
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021025115
(87)【国際公開番号】W WO2021202685
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,873
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/051,668
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522385902
【氏名又は名称】アップカラ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】UPKARA,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】モハンティ・プラバンス・エス
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ズオラン
(72)【発明者】
【氏名】ダス・サブヘンドゥ
(72)【発明者】
【氏名】タヴァーナー・ヨランダ
(72)【発明者】
【氏名】レディ・アルン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシ・パラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】アムル・シュルッティ
(72)【発明者】
【氏名】マンティラ・ジェニー
(72)【発明者】
【氏名】ブロンサルト・ローラ
(72)【発明者】
【氏名】レッズラフ・マリー
(57)【要約】
【課題】液体生体試料中の標的分析物を検出するための迅速ラテラルフロー装置が提供される。液体生体試料中の標的分析物を迅速に検出する方法も提供される。
【解決手段】当該装置は膜ストリップを備え、当該膜ストリップは、マトリックスと、マトリックスにガラス化された少なくとも1つのレポーターを有するコンジュゲートパッドと、マトリックスの中にまたは上にガラス化された、共有結合または静電結合した捕捉剤を含む1つまたは複数の検査部位と、任意選択で、マトリックスの中にまたは上にガラス化された1つまたは複数の捕捉剤を含むコントロールラインと、を含む。
【選択図】図18A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
迅速診断装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内において実質的に乾燥した膜層とを備え、
前記膜層が、
第1のマトリックスと、
第1の検査部位において、第1のマトリックス内または第1のマトリックス上にガラス化された捕捉剤と、
任意選択で、第1のマトリックス内にガラス化された、少なくとも1つのレポーターと、を備える、迅速診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、実質的に乾燥した基質膜をさらに含み、前記基質膜は、前記基質膜の中にまたは前記基質膜の上にガラス化された基質を含み、前記基質膜は、ハウジングに関連付けられ、かつ、前記膜層と接触するように構成される、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置において、前記膜層の近傍に配置されたスクリーン層をさらに含み、当該スクリーン層が、当該スクリーン層が液体生体試料と接触するときに、前記液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成された第2のマトリックスと、を含む、装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、サンプルパッドと前記第1の検査部位との間の前記第1のマトリックス内にまたは前記第1のマトリックス上に、前記レポーターが存在しかつガラス化されている、装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記捕捉剤が、前記第1の検査部位において前記第1のマトリックスに共有結合または静電結合している、装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記膜層の前記第1のマトリックスが、ニトロセルロース、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、装置。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記捕捉剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む抗原である、装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置において、前記捕捉剤が、ウイルスコートタンパク質とを含み、任意選択で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、またはそれらの断片を含む、装置。
【請求項9】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記捕捉剤が、抗体であって、当該抗体が、ウイルスコートタンパク質と、任意選択で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、またはそれらの断片のいずれかと、選択的に結合する、装置。
【請求項10】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記少なくとも1つのレポーターが、抗体を含み、任意選択で、抗ヒトIgGか、抗ヒトIgMか、またはそれらの組み合わせを含む、装置。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記少なくとも1つのレポーターが、検出可能な標識か、酵素か、またはその両方を含む、装置。
【請求項12】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記レポーターが粒子に結合している、装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置において、前記粒子が、ナノ粒子であるか、任意選択で、ナノシェル粒子か、金コロイド粒子か、またはそれらの組み合わせである、装置。
【請求項14】
請求項13に記載の装置において、前記粒子が、酸化ケイ素のコアおよび当該コアを被覆する金シェル層を含むナノシェル粒子であり、前記コアが半径を有し、シェル層が厚さを有し、任意選択で、前記半径と前記厚さの比が3:1~12:1である、装置。
【請求項15】
請求項12に記載の装置において、前記レポーターが、前記粒子および酵素、検出可能な標識、またはそれらの組み合わせと結合している、装置。
【請求項16】
請求項12に記載の装置において、前記レポーターが、酵素と、任意選択で西洋わさびペルオキシダーゼと、共有結合している、装置。
【請求項17】
請求項12に記載の装置において、前記レポーターが、酵素にまたは検出可能な標識に結合していない第2の抗体をさらに含む、装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置において、前記レポーターの数と前記第2のレポーター抗体の数の比が、80:20~20:80であり、任意選択で、約50:50である、装置。
【請求項19】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記ハウジングがサンプルポートを含む、装置。
【請求項20】
前請求項19に記載の装置において、前記サンプルポートが、ガラス化されたアッセイ試薬をさらに含む、装置。
【請求項21】
請求項19に記載の装置において、前記サンプルポートが前記膜層の第1の端に近接して位置し、前記第1の標的部位が前記膜層の第2の端に近接して位置する、装置。
【請求項22】
請求項21に記載の装置において、前記実質的に乾燥した基質膜をさらに含み、前記実質的に乾燥した基質膜は、前記サンプルポートと前記第1の検査部位との間の前記ハウジング内に配置される、装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置において、前記基質膜は、回転位置調整によって前記基質膜を前記膜層に接触させるように構成されたレバーと関連付けられる、装置。
【請求項24】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記捕捉剤が、抗体、抗原またはアプタマーである、装置。
【請求項25】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の装置において、前記膜層と前記スクリーン層との間に配置される取り外し可能なセパレータ層をさらに含む、装置。
【請求項26】
請求項1ないし3のいずれかに記載の装置において、前記捕捉剤が、生体試料中の標的分析物に特異的なアプタマーである、装置。
【請求項27】
請求項26に記載の装置において、前記標的分析物が病原体を含む、装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置において、前記病原体が、ウイルス、細菌、または毒素を含む、装置。
【請求項29】
請求項27に記載の装置において、前記病原体がウイルス、任意選択でSARS-CoV-2またはインフルエンザウイルスである、装置。
【請求項30】
請求項26に記載の装置において、前記捕捉剤が、ヒトACE2タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含むアプタマーである、装置。
【請求項31】
液体生体試料中の標的分析物の存在または非存在を決定する方法であって、
ハウジングと、前記ハウジングに関連付けられたガラス化膜層とを備える装置を提供することであって、当該ガラス化膜層は、第1のマトリックスと、第1の標的部位で前記第1のマトリックスに共有結合または静電結合した捕捉剤とを含む、提供することと、
当該装置を液体生物試料と接触させることであって、前記液体生物試料がガラス化膜層またはその一部を再水和させ、それによって前記標的分析物が前記液体生物試料に存在する場合、前記標的分析物を前記捕捉剤およびレポーターと結合させる、接触させることと、
前記第1の標的部位における検出可能な信号の有無により、標的分析物の存在または非存在を検出することと、を含む、方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法において、前記再水和されたガラス化膜層中の液体が前記基質膜を再水和するように、前記再水和されたガラス化膜層を、基質膜中にまたは基質膜上にガラス化された基質を含む基質膜に接触させることをさらに含む、方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法において、表面毛細管現象により、前記基質を前記基質膜から前記第1の標的部位に向かって移動させることをさらに含む、方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法において、前記レポーター剤が、前記ガラス化膜層の中にまたは前記ガラス化膜層の上にガラス化され、それによって、前記接触させるステップが、前記レポーター剤が前記分析物を結合できるように、前記少なくとも1つのレポーター剤を前記第1のマトリックスから放出する、方法。
【請求項35】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記レポーターが抗体である、方法。
【請求項36】
請求項35に記載の方法において、前記抗体が、検出可能な標識と、任意選択で酵素と、を含む方法。
【請求項37】
請求項35に記載の方法において、前記レポーターが、検出可能な標識に結合していない第2の抗体をさらに含む、方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法において、前記レポーターの数と第2のレポーター抗体の数の比が、80:20~20:80であり、任意選択で約50:50である、方法。
【請求項39】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記レポーターが粒子に結合している、方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、前記粒子が、ナノ粒子であるか、任意選択でナノシェル粒子か、金コロイド金粒子か、またはそれらの組み合わせである、方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法において、前記粒子が、酸化ケイ素のコアおよび当該コアを被覆する金シェル層を含むナノシェル粒子であり、前記コアが半径を有し、シェル層が厚さを有し、任意選択で、前記半径と前記厚さの比が3:1~12:1である、方法。
【請求項42】
請求項39に記載の方法において、前記レポーターが、前記粒子と酵素、検出可能な標識、またはそれらの組み合わせに結合している、方法。
【請求項43】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記レポーターが、酵素、蛍光体、またはその両方からなる群より選択される検出可能な標識に共有結合している、方法。
【請求項44】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記液体生体試料が、唾液、血液、血清、血漿、気管支肺胞洗浄液、喀痰、又は鼻腔液を含む、方法。
【請求項45】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記膜層の前記第1のマトリックスが、ニトロセルロース、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、方法
【請求項46】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記捕捉剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む、方法
【請求項47】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記捕捉剤が、ウイルスコートタンパク質か、任意選択で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、またはそれらの断片を含む、方法。
【請求項48】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記少なくとも1つのレポーターが検出可能なラベルを含む、方法。
【請求項49】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、標的分析物の存在または非存在を検出することが、
前記検出可能な標識のための基質と前記装置を接触させること、および
前記基質が前記検出可能な標識と結合したときに生じる信号を検出することを含む、方法。
【請求項50】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記信号が蛍光信号または色の変化を含む、方法。
【請求項51】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記装置が、前記膜層上に配置されたスクリーン層をさらに含み、当該スクリーン層が、前記液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成される、方法。
【請求項52】
請求項31ないし34のいずれか一項に記載の方法において、前記標的分析物の存在または非存在が約20分以内に検出される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本出願は、2020年3月31日に出願された米国仮出願番号:63/002,873および2020年7月14日に出願された米国仮出願番号:63/051,668に依り、それらの優先権を主張し、それぞれの内容全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、生体試料中の1つまたは複数の標的分析物の有無を検出するための迅速診断装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生体試料中の抗体、酵素、病原体の有無を検出する標準的な血清診断法は、多くの場合、複雑な実験手順を実行するために、コールドチェーン輸送と保管、特殊な機器、および熟練作業者を必要とする。酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ポリメラーゼ連鎖反応、ビーズベースのプロファイリングキット(Luminex(登録商標)アッセイなど)などの方法では、検査結果を得るまでに最低3時間以上かかり、試料の劣化や汚染により精度が低下し、偽陽性や偽陰性につながる可能性がある。パンデミックや疫病の流行時など、検査サンプルの数が検査室のスタッフやリソースを圧倒する場合、患者は検査結果を得るまでに数日から数週間待たされることもある。正確な検査結果を得るまでに時間がかかると、病原体の感染を助長し、その結果、医療施設がさらに疲弊し、患者の治療が損なわれる危険性が高くなる。
【0004】
生体試料中の抗体や病原体など、1つまたは複数の分析対象物を迅速かつ確実に検出するアッセイが求められる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下の概要は、本開示に特有のいくつかの革新的な特徴の理解を容易にするために提供されるものであり、完全な説明であることを意図するものでない。本開示の様々な態様の完全な理解は、明細書、請求項、図面、および要旨全体を一体として捉えることによって得ることができる。
【0006】
本明細書で提供されるのは、液体生体試料中の1つまたは複数の標的分析物を迅速に検出するための装置および方法であり、それによって、アッセイ材料はコールドチェーン保管を必要とせず、堅牢で55℃以上の高温で数週間または数ヶ月間長期保管しても活性を維持し、ポイントオブケアで直接使用され得、オプションとして人間の目以外の複雑な検出機器を使用しないものである。本開示の装置は、ガラス化マトリックスを含む膜を含み、当該ガラス化マトリックスは、捕捉剤と1つまたは複数の所望のレポーター分子とを有し、当該捕捉剤は、任意選択で共有結合的に、前記マトリックスに結合されているかされていなくてもよく、当該捕捉剤自体が検出可能な標識(例えば酵素)を含んでもいなくてもよく、当該レポーター分子(例えば、抗体、核酸、その他)は、任意選択で前記マトリックスまたは前記装置の他のマトリックス層にガラス化され、それによって、前記ガラス化マトリックス及び/又は他のマトリックス層が、液体生体試料と接触と再水和してもよく、前記レポーターが放出され、前記試料中の前記標的分析物が前記捕捉剤と前記レポーターとを結合し、前記標的分析物の有無が検出される。いくつかの態様において、本明細書に記載された装置及び方法は、定性的及び/又は定量的な検出結果を提供する。本開示の装置は、時間及び温度に安定であり、コールドチェーン輸送又は保管を必要としない。さらに、開示された装置及び方法は、いくつかの態様によれば、有利には、約20分以内での迅速なポイントオブケア診断結果を可能にする。
【0007】
いくつかの態様において、膜ストリップを含むラテラルフロー免疫測定装置が提供される。膜ストリップは、マトリックスと、コンジュゲートパッドと、1つまたは複数のテスト領域と、任意選択で、コントロール領域とを含む。コンジュゲートパッドは、少なくとも1つのレポーターを含み、この少なくとも1つのレポーターは、1つまたは複数の検出可能な標識と、抗原または抗体であって、任意選択で検出可能な標識または標識分子を含む、標的分析物に対する抗原または抗体と、を含みうる。当該レポーターは、マトリックスにガラス化される。1つまたは複数のテスト領域は、任意選択で標的分析物の種類に対し特異的な、共有結合した捕捉抗体またはアプタマーを含み、この共有結合した捕捉抗体またはアプタマーはマトリックスにガラス化されている。コントロール領域は、マトリックスにガラス化される1つまたは複数の第2の捕捉剤を含み、コントロール領域の第2の捕捉剤は、任意選択でコンジュゲートパッドにさらに含まれ得る、コントロール試薬を結合するのに適している。
【0008】
本開示のこれら及び他の目的、特徴、及び態様は、本明細書に記載される図面及び詳細な説明を参照することによってさらに理解される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面に記載された態様は、本質的に例説的および例示的であり、特許請求の範囲によって定義される主題を限定することを意図していない。例示的な態様の以下の詳細な説明は、同様の構造が同様の参照数字で示される、以下の図面と併せて読むことで理解され得る。
図1図1は、本開示による装置の例示的な態様を示し、捕捉抗原およびレポーター抗体は、膜層マトリックスにガラス化されている。
図2A図2Aは、本開示による方法ステップを示し、図1による装置は、分析物を含む液体生体試料と接触させられる。
図2B図2Bは、本開示による方法ステップを示し、標的分析物は、膜層で捕捉抗原及びレポーター抗体を結合させる。
図2C図2Cは、本開示による方法ステップを示し、基質が装置に加えられ、信号が検出される。
図3図3は、本開示による装置の例示的な態様を示し、捕捉抗原は膜層でガラス化され、レポーター抗体は汚染物質スクリーン層に組み込まれる。
図4図4は、本開示による方法ステップを示し、図3による装置は、液体生体試料と接触させられる。
図5図5は、本開示による装置の例示的な態様を示し、取り外し可能なセパレータ層が2つのチャネルの間に配置される。
図6図6は、ELISA及びLuminexアッセイの標準的な利用可能な方法と比較した、本開示されている装置及び方法の例示的な比較優位性を示している。
図7A図7Aは、本開示によるラテラルフロー膜ストリップの例示的な態様を示す図である。
図7B図7Bは、本開示によるラテラルフロー膜ストリップの例示的な態様を示す図である。
図7C図7Cは、本開示によるラテラルフロー膜ストリップの例示的な態様を示す図である。
図8図8は、本開示によるラテラルフローカセットの例示的な態様を示す図である。
図9A図9Aは、本開示によるラテラルフローカセットの分解斜視図である。
図9B図9Bは、本開示によるラテラルフローカセットの分解斜視図である。
図10図10は、本開示によるラテラルフロー膜ストリップの例示的な態様を示す図である。
図11A図11Aは、本開示による方法ステップを示し、図10によるラテラルフロー膜ストリップは、液体生体試料と接触させられる。
図11B図11Bは、本開示による方法ステップを示し、関心対象の分析物及び未結合のレポーター抗体は、ラテラルフロー検査ストリップ上で捕捉され、検出される。
図12図12は、複数のラテラルフロー膜ストリップを含む本開示によるカセットの例示的な態様を示す図である。
図13A図13Aは、複数のラテラルフロー膜ストリップを含む本開示によるカセットの例示的な態様の分解斜視図である。
図13B図13Bは、複数のラテラルフロー膜ストリップを含む本開示によるカセットの例示的な態様の分解斜視図である。
図14図14は、本開示による例示的なマルチストリップ・ラテラルフローアッセイを示す図である。
図15A図15Aは、本開示による複数の膜ストリップを有するラテラルフローカセットを示し、各ストリップは、標的分析物の濃度を決定するために、捕捉された標的分析物の連続希釈のために提供される。
図15B図15Bは、図15Aによるカセットの複数の膜ストリップを示す図である。
図16図16は、単一のストリップ上に複数の検査領域を有する、本開示のいくつかの態様に従った例示的な膜ストリップを示す。
図17図17は、提供されるようないくつかの態様による例示的な検査ストリップを示す図であり、Aは、例示的な膜ストリップの様々な領域を示し、Bは、膜ストリップを通じた例示的な流体流量および総流量を示し、Cは、装置への基質の適用後の望ましい線状のフロントラインを示す。
図18A図18Aは、膜層への基質の適用のためのレバー上の基質膜を含む、本明細書で提供されるいくつかの態様による装置を示す図である。
図18B図18Bは、いくつかの態様による膜ストリップに対する基質膜及びレバーの位置を示す図17Aの装置を示す図である。
図18C図18Cは、膜ストリップと基質パッドとの間の接触を促進するためにレバーが作動されたときの、いくつかの態様による膜ストリップに対する基質膜およびレバーの位置を示す図17Aのデバイスを示す図である。
図18D図18Dは、いくつかの態様による完全に組み立てられた例示的な装置を示す。
図18E図18Eは、レバーが拡大領域であってもよいし、拡大領域を含んでもよい、本明細書で提供されるいくつかの態様による完全に組み立てられた例示的な装置の別の例を示す引き伸ばし図である。
図19図19は、サンプルとして組換えSARS-CoV-2 Sタンパク質を用いて処理され、10pg/ml未満に検出される、本明細書に提供されるいくつかの態様に従って提供される装置を示す図である。
図20図20は、サンプルとして組換えSARS-CoV-2 Sタンパク質を用いて処理され、基質TMBMXを用いて検査したときに1pg/ml未満に検出された、本明細書に提供されるいくつかの態様に従って提供される装置を示す図である。
図21図21は、熱的に不活性化したSARS-CoV-2を試料として用いて処理され、基質TMBMXを用いて検査した場合に、生体試料において予想されるよりも100倍以上低い負荷でSタンパク質が検出された、本明細書に提供するいくつかの態様に準じて提供される装置を示す図である。
図22図22は、捕捉剤を検査部位に直接結合させること(A)と、捕捉剤を結合させる分子で検査部位をプレコートすること(B)とを比較する、本明細書に提供するいくつかの態様に従って提供される装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、液体生体試料中の標的分析物を迅速に診断的に検出するための装置および方法を提供する。本明細書で詳述するように、結合した捕捉剤、および任意にレポーターを、マトリックスにガラス化すると、液体生体試料と接触したときにマトリックスの迅速な再構成が可能になり、それによってレポーターおよび捕捉剤を放出し、コールドチェーン輸送または保管の必要なしに、標的分析物の迅速なポイントオブケア免疫測定検出を可能にする。特定の分子を膜に埋め込み、共有結合または静電結合させ、あるいは他の方法で膜と関連付け、ガラス化処理を行うことで、分子を効果的に安定化させ、それにより、その後の厳しい条件下での保管にもおいてもその活性を維持し、通常のコールドチェーン保管プロセスの必要性を排除できることが見出された。すべての分析材料は、任意選択で、本明細書に提供される装置内または装置とともに、液体生体試料(例えば血液、血漿、血清、唾液、気管支肺胞洗浄液、喀痰、鼻腔液、皮膚分泌物、緩衝液、水、または生体試料もしくはその一部を含むかもしくは生体試料である他の液体)または他の液体で再構成することにより、活性をほとんどまたは全く失うことなくガラス化材料を再構成し、それによって生体試料中に存在してもしなくてもよい1つまたは複数の分析物の検出のための堅牢な測定系を提供できるように、本明細書で提供されるような装置において、または装置を用いて、全ての分析材料が任意にガラス化され得る。
【0011】
被験体、特にヒトの被験体における感染性物質(標的分析物の一例として)の存在を検出することは、診断医に多くの課題をもたらす。例えば、ウイルス性因子自体の検出は、特に感染が最近でウイルス量が少ない場合、または活動中の感染が治まったが、以前に感染が起こったかどうか、または被験者が持続的な免疫を持っているかどうかを知ることが望まれる場合には、困難である場合がある。ウイルス感染により、被験者の体内にウイルスに対する抗体が産生されることがある。これらの抗体の検出は、ウイルスへの以前または現在の曝露に関連する情報を提供することができる。非限定的な例として、ヒトコロナウイルスであるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群の原因ウイルス;SARS)やMERS-CoV(中東呼吸器症候群の原因ウイルス;MERS)などのベータコロナウイルスによる感染は、新しい株の増加によりいくつかの課題を提起している。感染力の強い新型コロナウイルスSARS-CoV-2(COVID-19病の原因ウイルス;COVID-19)におけるこれらの新型株の検出には、この新型ウイルスに特異的な診断法の開発が必要であった。
【0012】
本明細書で提供される装置及び方法は、生体試料中の1つまたは複数の標的分析物を、迅速で、再現可能で、任意選択的に定量可能に検出することを提供する。本明細書で提供されるように、装置は、ハウジングと、ハウジング内の実質的に乾燥した膜層とを含み、膜層は、第1のマトリックスと、第1の検査部位において第1のマトリックスにまたはその上にガラス固化した捕捉剤とを含む。この装置は、液体生体試料(または液体中の標的分析物)が試料適用部位において適用され、液体が膜を濡らして試料適用部位以外の位置の1つまたは複数の検査部位に向かって移動するラテラルフローアッセイの形態であってよい。試料適用部位と検査部位との間の液体は、検査部位において標的分析物を効果的に局在化させて生体試料内の標的分析物の存在の有無を検出することができるレポーターおよび/または捕捉剤(または他の所望の分子)を、湿潤して再水和させてもよい。
【0013】
いくつかの態様において、装置は、実質的に乾燥した膜を含むラテラルフロー装置であり、この膜は、マトリックスと、マトリックスにガラス化された共有結合または静電結合捕捉剤(例えば抗原、アプタマー、ヌクレオチド、または抗体)を含む一つ以上の検査領域含むコンジュゲートパッドと、任意選択で、マトリックスにガラス化された少なくとも一つのレポーター抗体と、任意選択で、マトリックスにガラス化された一つ以上の第2の捕捉剤を含むコントロール領域を含むコンジュゲートパッドと、を含む。
【0014】
いくつかの態様において、液体生体試料中の関心対象の分析物を検出するための迅速診断装置が提供され、膜層であって、膜層は、第1のマトリックスと、第1のマトリックスにガラス化された捕捉剤と、及び第1のマトリックスにガラス化された少なくとも1つのレポーターとを含む。任意選択で、装置は、膜層上に配置された、または他の方法で膜層と接触するスクリーン層をさらに備える。スクリーン層は、存在する場合、第2のマトリックスを含むことができ、液体生体試料中の汚染物質(例えば、関心対象の分析物以外の分子)を実質的に捕捉し隔離するフィルターとして機能するように構成される。
【0015】
いくつかの態様において、液体生体試料中の目的の分析物を検出するための迅速診断装置が提供され、当該迅速診断装置は、膜層と、スクリーン層とを含み、当該膜層は、第1のマトリックスおよび第1のマトリックスにガラス化された捕捉剤を含み、当該スクリーン層は、膜層上に配置されるか、または他の方法で膜層と接触し、当該スクリーン層は、液体生体試料中の汚染物質を実質的に捕捉および隔離するフィルターとして機能するように構成された第2のマトリックスと、任意選択で、第1のマトリックスか第2のマトリックスかまたはその両方にガラス化された少なくとも1つのレポーターとを含む。
【0016】
いくつかの態様において、液体生体試料中の目的の分析物を検出するための迅速診断デバイスであって、膜層と、基質膜の中にまたは基質膜の上にガラス化された基質を含む実質的に乾いた基質膜と、を備える迅速診断デバイスが提供される。膜層は、第1のマトリックスと、第1のマトリックスにガラス化された捕捉剤とを含む。基質膜は、ハウジングと関連付けられ、望ましいときに膜層と接触するように構成され、任意選択で膜層が液体で濡れた後において、任意選択で液体生体試料単独からまたはさらなる湿潤剤と一緒に、膜層と接触するように構成される。
【0017】
本明細書で提供される膜層または装置全体は、任意選択で、実質的に乾燥している。「実質的に乾燥」とは、0.1以下、任意選択で0.05以下、任意選択で0.04以下、任意選択で0.03以下、任意選択で0.02以下、任意選択で0.01以下の水分残留比(グラムH2O/グラム乾燥重量)を有することと定義される。
【0018】
「非晶質」または「ガラス」とは、0.3以下の秩序パラメータを持つ原子の位置の長距離秩序が存在しない非結晶性物質を指す。液体からガラス質固体への変換は、ガラス転移温度Tgで起こる。いくつかの態様において、ガラス固化媒体は、アモルファス(非晶質)材料であってもよいし、またはアモルファス材料を形成してもよい。他の態様では、生体材料はアモルファス材料であってもよい。
【0019】
「ガラス転移温度」とは、材料が液体のように振る舞う温度以上、固相のように振る舞ってアモルファス/ガラス状態になる温度未満を意味する。これは温度の固定点ではなく、使用する測定のタイムスケールに依存して変化する。いくつかの態様では、ガラス状態は、生体組成がそのガラス転移温度未満に低下したときに入る状態を指すことがある。他の態様では、ガラス状態は、ガラス化混合物および/またはガラス化剤がそのガラス転移温度未満に低下したときに入る状態を指すことがある。さらに他の態様では、ガラス状態は、結晶またはゲルの機械的剛性を有するが、液体を特徴付ける分子のランダムで無秩序な配置を有することがある。
【0020】
「結晶」とは、原子、イオン、または分子の三次元構造で、周期的に繰り返される特定の幾何学的配列からなり、格子または単位胞と呼ばれるものをいう。
【0021】
「結晶性」とは、ガラス状態や非晶質とは異なり、原子レベルで規則正しく配列された構成要素を含む物質の形態を意味する。結晶性固体は、結晶化温度Tcで凝固する。
【0022】
本明細書で使用される「ガラス化」は、材料を非晶質材料に変換するプロセスである。非晶質固体は、いかなる結晶構造も有していなくてもよい。
【0023】
本明細書で使用される「ガラス化混合物」とは、1つまたは複数のガラス化剤、任意選択で溶解剤、および任意選択で他の材料、を含む生物材料とガラス化培地の不均質な混合物を意味する。
【0024】
本明細書で使用する「生体材料」または「生体試料」は、生体から分離または誘導される可能性のある材料を指す。生体材料の例としては、タンパク質(例えば、酵素、または非酵素的に機能するタンパク質)、細胞、組織、器官、細胞ベースの構築物、唾液またはその一部、血液またはその一部、核酸、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、生体材料は、哺乳類細胞を指す場合がある。他の局面では、生体材料は、ヒト間葉系幹細胞、マウス線維芽細胞、白血球、赤血球、血小板、細菌、ウイルス、哺乳動物細胞、リポソーム、酵素、組織(例えば、腸、肝臓、ニューロン、またはその他)、またはそれらの組み合わせを指す場合がある。他の態様において、生体材料は、精子細胞、精母細胞、卵母細胞、胚、胚胞、またはそれらの組み合わせを含む生殖細胞を指してもよい。他の態様において、生体材料は、全血、赤血球、白血球、血小板、血漿、血液血清、唾液、胃吸引液、鼻腔液、藻類、菌類、またはこれらの組み合わせを指すことがある。
【0025】
本明細書で使用される「ガラス化剤」は、ガラス化剤と他の材料との混合物が冷却または乾燥する際に、非晶質構造を形成する材料、または他の材料における結晶の形成を抑制する材料である。ガラス化剤はまた、浸透圧保護を提供するか、またはそうでなければ脱水中の細胞の生存を可能にし得る。いくつかの態様において、ガラス化剤は、生体材料の保管に適した非晶質構造をもたらす任意の水溶性溶液であってよい。他の態様では、ガラス化剤は、細胞、組織、または器官内に吸収されてもよい。
【0026】
本明細書で使用する「保管可能」、「保管」、または「保管安定」は、生体材料が保存され、後の時間に使用するために生存し続けることができる能力を指す。
【0027】
本明細書で使用される「極低温以上」とは、-80℃を超える温度を指す。本明細書で使用する「室温」とは、18℃以上で37℃以下の温度範囲を指す。
【0028】
「親水性」とは、水分子を引き寄せる、または水分子と優先的に会合することを意味する。水に対して特別な親和性を持つ親水性材料は、水との接触を最大化し、水との間でより小さな接触角を有する。
【0029】
「疎水性」とは、水との親和性が低いことを意味する。疎水性の材料は、本来的に水をはじくので水滴ができやすく、水との接触角が小さい。
【0030】
本明細書で使用する「周囲温度」(「環境温度」)は、約16℃以上、約30℃以下の温度を指す。
【0031】
本明細書で使用される「液体生体試料」は、目的の標的分析物を含む可能性のある液体試料を指す。態様において、液体生体試料は、被験体、例示的にはヒト患者から取得される。態様において、被験体は、SARS-CoV-2感染(すなわち、COVID-19病)、またはインフルエンザもしくは他のウイルス性、細菌性、もしくは真菌感染症などの任意の他の感染性疾患などの疾患または状態を有することが疑われている。液体生体試料は、本明細書に記載のマトリックスを通って流れることができ、かつ目的の分析物を潜在的に保有する任意の試料であってよい。いくつかの態様において、液体生体試料は、唾液、血液、血清、血漿、気管支肺胞洗浄液、喀痰、鼻腔液、皮膚分泌物、又はそれらの組み合わせを含む。
【0032】
本明細書で使用される場合、「被験体」は、動物、任意選択で、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ネズミ、ヒツジ、ブタ、ウサギ、または他の哺乳動物である。
【0033】
本明細書で提供される装置及び方法は、生体試料内の標的分析物の存在又は非存在を検出するために使用され得る。標的分析物は、任意の生体材料であってよい。任意選択で、標的分析物は、ウイルス又はその一部分である。他の態様では、標的分析物は、細菌又はその一部であってもよい。任意選択で、標的分析物は、タンパク質、任意選択で酵素的に活性なタンパク質であってもよい。例示的な目的だけのために本開示を通じて使用され、例示される例示的なウイルスは、ヒトコロナウイルスである。本明細書で提供されるような装置及び方法は、任意の他のウイルス、細菌、真菌、又はその一部に関しても同様に記載されることが理解される。ヒトコロナウイルス(HCoVs)は、ポジティブセンスの、長い(30,000bp)一本鎖RNAウイルスである。HCoVは、スパイク(S)、ヌクレオキャプシド(N)、膜糖タンパク質(M)、エンベロープ(E)などの構造タンパク質に加え、プロテアーゼ(nsp3、nsp5)、ヘリカーゼ(nsp13)、RNA依存RNAポリメラーゼ(RdRp、nsp12)などの非構造タンパク質によって特徴づけられている。スパイクタンパク質は、ウイルスの付着および宿主細胞への侵入のための重要な認識因子であることが知られている。本開示は、特異的で堅牢なシステムにおいて、任意の感染性物質または他の標的分析物の存在または非存在を特異的に検出することができる装置および方法を提供するものである。いくつかの態様において、このシステムは、1つまたは複数のHCoV、任意選択でSARS-CoV-2の検出に適用される。
【0034】
本明細書で使用される捕捉剤は、標的分析物と(任意選択で、選択的に)結合する、任意選択で抗原、酵素、抗体又はアプタマーである。いくつかの態様において、捕捉剤は抗体である。任意選択で、捕捉剤はアプタマーである。任意選択で、捕捉剤は抗原であり、この抗原は、任意選択で、タンパク質、核酸又は脂肪物質の形態である。任意選択で、捕捉剤は、酵素である。任意選択で、捕捉剤は、標的分析物に特異的な抗体などの抗体であり、任意選択で、レポーターの結合部位とは異なる標的分析物上の結合部位を認識するものである。任意選択で、捕捉剤は、標的分析物としての抗体によって特異的に認識され得る抗原などであり、抗体は、被験体内の感染性物質の存在または過去の存在を示す生体試料内の感染性物質に対して特異的であり得る。他の態様では、捕捉剤は、1つまたは複数の標的分析物に対して惹起または選択されたアプタマーである。
【0035】
標的分析物の認識は、捕捉剤、標的分析物、及びレポーターの間においてサンドイッチを形成することによってもよく、それによって捕捉剤及びレポーターの両方が、標的分析物が捕捉剤の位置に隔離されるように標的分析物に結合し、レポーターは、捕捉剤に結合した標的分析物の存在を識別するために観察可能な信号を発する又は作成することができる。本明細書で提供される装置及び方法は、標的分析物の存在がレポーターと捕捉剤の間の会合を妨げ(例えば、競合)、それによって検査部位での信号の不在によって生体試料中の標的分析物の存在を検出するような競合型アッセイにおいて使用することもできることが理解される。
【0036】
目的の標的分析物は、任意選択で、ウイルスまたはその一部、ウイルス表面に存在する1つまたは複数のタンパク質分子に向けられた抗体、またはウイルスタンパク質またはウイルス抗原である。任意選択的に、エンベロープウイルス、任意選択的に、アレナウイルス科、ヘルペスウイルス科、レトロウイルス科、コロナウイルス科、ポックスウイルス科、トガウイルス科、フラビウイルス科、ブニヤウイルス科、フィロウイルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科またはラブドウイルス科の群からのウイルスであってもよい。コロナウイルス科は、コラコウイルス、デカコウイルス、ドゥビナコウイルス、ルチャコウイルス、ミナコウイルス、ミヌナコウイルス、ミオタコウイルス、ニクタコウイルス、ペダコウイルス、ライナコウイルス、セトラコウイルス、ソラコウイルス、スナコウイルス、テガコウイルス、エンベコウイルス、ヒベコウイルス、マーベコウイルス、ノベコウイルス、サーベコウイルス、ブランガコウイルス、ブランガコウイルス、イガコウイルス、アンデコウィルス、ブルデコウイルス、またはヘルデコウイルスから選択され得る。任意選択で、コロナウイルス科は、ベータコロナウイルスであり、任意選択で重症急性呼吸器症候群関連コロナウイルス、任意選択で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)または重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、もしくは他の関連要素である。任意選択で、アレナウイルス科は、ラッサウイルス、フニンウイルス、またはリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)であり得る。任意選択で、ヘルペスウイルス科は、単純ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルスまたはエプスタイン・バーウイルスであり得る。任意選択で、レトロウイルス科は、ヒト免疫不全ウイルスまたはヒトTリンパ好性ウイルスであり得る。他の例示的なウイルス標的剤または被験体に抗体を産生させるものには、天然痘ウイルス、風疹ウイルス、C型肝炎ウイルス、ジカウイルス、西ナイルウイルス、デングウイルス、黄熱ウイルス、TBEウイルス、セムリキ森林ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、サシチョウバエ熱ウイルス、ハンタンウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、インフルエンザウイルスA、インフルエンザウイルスB、インフルエンザウイルスC、ニパウイルス、ヒトパラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、水疱性口内炎ウイルスまたは狂犬病ウイルスが含まれるがこれらに限定されない。
【0037】
いくつかの態様において、ウイルスは、非エンベロープウイルス、任意選択でアデノウイルス科、ポリオーマウイルス科、パピローマウイルス科、ヘパウイルス科、またはライノウイルスである。
【0038】
任意選択で、ウイルス標的分析物はHCoVであり、任意選択でSARS-CoV-2である。
【0039】
本明細書で提供されるいくつかの態様において、被験体からの生体試料中の抗体標的分析物が検出されてもよい。被験体のウイルス感染の検出などのいくつかの態様では、被験体によってウイルスに対して産生された抗体の検出を含んでもよい。ウイルス、細菌、真菌、または他の感染因子と選択的に結合する抗体に特異的な捕捉剤は、検査ラインまたはウェルなどの検査部位または領域において、膜のマトリックスに共有結合的または静電的に付着させることができる。レポーター分子(例えば、蛍光体、発色体、ナノ粒子、酵素、または他の検出剤)に結合したまたはそれを含む、抗IgG、抗IgM、抗IgA、または他のレポーターも、サンプル堆積領域でまたはその付近でマトリックスに含まれる。
【0040】
捕捉剤、および任意選択のレポーター分子は、マトリックス中でガラス化される。マトリックスに液体生体試料を接触させると、ガラス化した分子が再構成される。生体試料中の標的分析物はレポーターと結合し、膜に沿って、任意選択で毛細管現象または他の作用により、検査部位に移送され、目的の標的分析物に特異的な任意の捕捉剤が分析物を局在化し、それによって分析物の存在がレポーターによって検出され、検査部位に局在化する。コントロールとしては、コントロールストリップ内で共有結合または静電結合したコントロール捕捉剤がテスト領域の下流にあってもよく、テスト領域を過ぎた捕捉剤の移動を検出することなどにより、陽性コントロールが可能である。陽性結果は、テスト領域に局在するレポーターから発せられるシグナルの検出により達成される。
【0041】
いくつかの態様において、装置及び方法は、感染体自体の存在を検出することを可能にする。非限定的な例として、ウイルス性のコートタンパク質、例示的にはスパイクタンパク質またはヌクレオカプシドタンパク質、またはそれらの一部を特異的に結合する捕捉剤が、検査ラインまたはウェルなどのテスト領域において膜のマトリックスに共有結合的または静電結合的に付着される。捕捉抗体とは異なる領域で感染性物質とも結合するレポーター抗体が提供される。それによって、レポーター分子(例えば、蛍光体、発色体、酵素、または他の検出)と結合したレポーター抗体も、サンプル堆積領域またはその付近でマトリックスに含まれるか、サンプル適用前にシステムから分離されて保持される。マトリックスに液体生体試料を接触させると、ガラス化した分子が再構成される。生体試料中の任意の標的分析物はレポーター抗体に結合し、膜に沿って、任意選択で毛細管現象または他の作用により、検査部位に移動し、目的の標的分析物に特異的な任意の捕捉抗体が分析物を検査部位に局在化させる。オプションのコントロールとして、コントロールストリップ中のレポーター抗体と結合し得る共有結合または静電結合した抗体がテスト領域の下流にあり、陽性コントロールが可能である。陽性結果は、検査部位に局在するレポーターから発せられる、またはレポーターによって生成される信号の検出によって達成される。
【0042】
本明細書で提供される装置は、マトリックスを含み、このマトリックス中またはマトリックス上で1つまたは複数の捕捉剤が1つまたは複数の位置で関連付けられ得る。マトリックス材料の例示的な例には、ポリマーが含まれ、任意選択で、コラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸及び誘導体、アルギン酸ナトリウム及び誘導体、キトサン及び誘導体、ゼラチン、デンプン、セルロースポリマー(例えば、ニトロセルロース(e.Sartorius CN95など)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、ポリ(ジオルクエン酸)(例えば、ポリ(オクタンジオールクエン酸)等)、カゼイン、デキストラン及びその誘導体、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシル酸)、ポリ(L-ラクチド)ポリ(D,Lラクチド)、ポリ(D,Lラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(Lラクチド-コ-グリコリド)、乳酸及びグリコール酸のコポリマー、ε-カプロラクトン及びラクチドのコポリマー、グリコリド及びε-カプロラクトンのコポリマー、ラクチド及び1,4-ジオキサン-2-オンのコポリマー、ポリマーおよびコポリマーであって、モノマーDラクチド、Lラクチド、D,L-ラクチド、グリコリド、ε-カプロラクトン、トリメチレンカーボネート、1,4-ジオキサン-2-オンまたは1,5-ジオキセパン-2-オン、ポリ(グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネートおよびポリ(オルトエステル)、ポリエステル、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリジオキサノン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(タルトロン酸)、ポリ無水物、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、のうちの1つまたは複数の残留単位を含む、ポリマーおよびコポリマー、および上記ポリマーのコポリマー、ならびに上記ポリマーの混合および組合せが挙げられる。例示的に、そのようなポリマーは、米国特許出願公開第2018/0125990号およびそこに引用されているような文献に記載されている通りであり、Polymers in Controlled Drug Delivery (Illum,L.&Davids,S.S.,eds.,Wright,Bristol 1987); Arshady,J.Controlled Release 17:1-22(1991); Pitt,Int.J.Phar.59:173-96(1990);Holland et al.、J.Controlled Release 4:155-80(1986)に記載されている。特定の態様において、第1及び第2のマトリックスは、独立して、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0043】
任意選択で、マトリックスは、流体又は標的分析物のためのチャネル又は他の連続的又は不連続的なアクセス経路を規定する繊維状のランダム又は秩序だったメッシュの形態で存在する。任意選択で、マトリックスは、高い多孔性(例えば、体積で50%より大きい)を有する不織布繊維性メッシュの形態である。
【0044】
本明細書においてマトリックスに使用され得るポリマーは、任意選択で、フィルター、対称メッシュ、又は他のそのような多孔性シート状材料の形態のような、多孔性メッシュに形成され得る。例示的に、ポリマーは、エレクトロスピニングを含む方法などによって繊維状ネットワークに形成される。エレクトロスピニングでは、所望のポリマーを所望の溶媒(例えば、2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)またはヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP))に入れ、エレクトロスピニング工程にかけ、所望の断面寸法および長さの繊維を形成し、所望の方向(任意選択で、ランダム)に配列して、材料、分析物、活性剤などがポリマーネットワーク内またはそれによって通過または保持できるように、結果として細孔サイズ(ストランド間の平均距離)ができるようにされる。
【0045】
任意選択で、マトリックスは、2層以上のポリマーを含み、任意選択で、3、4、5、6層またはそれ以上の層のポリマーを含む。
【0046】
任意選択で、マトリックスは親水性材料で作られる。任意選択で、マトリックスは、疎水性材料で作られる。マトリックスの相対的な疎水性は、2つ以上のマトリックス材料を相互混合することによって、及び/又は1つまたは複数のマトリックス材料の形成後の処理によって、所望のレベルに調整され得る。
【0047】
いくつかの態様において、マトリックスは細孔サイズを含んでおり、細孔サイズは、任意選択で、サンプルフローの制御またはシステムを通過し得る分子のサイズの調節に適している。いくつかの態様において、マトリックス内の細孔サイズは、約5ミクロンから約500マイクロメートル(μm)、またはその間の任意の値または範囲である。結果として得られるマトリックスの細孔径は、任意選択で10μm~200μm、任意選択で10μm~40μm、任意選択で10μm~35μm、任意選択で10μm~30μm、任意選択で10μm~30μm、任意選択で10μm~25μmの範囲とされる。いくつかの態様において、マトリックスの細孔径は、液体生体試料および生体試料中に存在するレポーターまたは標的分析物が流れることを可能にするように選択される。多層を有する態様では、マトリックス成分の異なる層は、異なる細孔径から構成されてもよい。例えば、スクリーン層は、液体、抗体、または他の標的分析物がスクリーン層から膜層へ通過することを可能にする一方で、細胞(所望の場合)または他の汚染物を捕捉し隔離するように選択された細孔径を有するマトリックスを含んでもよい。例示されるマトリックスは、国際特許出願公開番号WO2020/086812号明細書に見出すことができ、また、マトリックスへの分子のガラス化または組込みの方法が教示されている。任意選択で、マトリックスは、任意選択で不織布である、繊維状メッシュの層を含む。繊維状メッシュの作成は、0.1μm~200μmの繊維径を有する繊維の作成によって達成されてもよい。任意選択で、ポリマーは、0.5μm超の繊維径の、任意選択で0.5μm~4μm、任意選択で0.5μm~3μm、任意選択で0.5μm~2μmの繊維径の、繊維中に存在する。
【0048】
マトリックスは、任意選択で0.1μm以上であり、任意選択で0.5μm、任意選択で1μm、任意選択で2μm、任意選択で5μm、任意選択で10μm、任意選択で20μm、任意選択で50μm、任意選択で100μm、任意選択で200μm、任意選択で500μm、またはそれ以上の厚さを有している。
【0049】
いくつかの態様において、マトリックスは、ポリカプロラクトン(PCL)、コラーゲン、またはそれらの組み合わせを含む。このような水安定性ポリマーの主な特徴は、1つ以上の捕捉剤をその上またはその中でガラス化することができるようなネットワークまたは繊維を形成することができることである。したがって、マトリックスは、レポーターおよび/または捕捉剤などの1つまたは複数の所望の分子を含む水性ガラス化媒体のガラス化に適した表面として機能するように、水性環境において十分な安定性を有する必要がある。例示的に、マトリックスは、Mn80,000Da程度のPCLを含む。
【0050】
いくつかの態様において、捕捉剤(例えば、抗原、アプタマーまたは抗体)は、任意選択で、検査(テスト)部位または対照(コントロール)部位において、マトリックスに共有結合される。あるいは、捕捉剤はマトリックスに静電的に結合される。PCL水安定性ポリマーへの共有結合は、例として、捕捉剤(例えば、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質またはヌクレオキャプシド(N)タンパク質、アプタマー(例えば、ACE-2ペプチドまたはタンパク質)、または抗体(例えば、抗ヒトSARSコロナウイルス核タンパク質マウスMAb(40143-MM05、Sino Biologicals社製)または抗ヒトSARSコロナウイルス核タンパク質ウサギMab(40143-R001。Sino Biologicals社製)を、ACRL-PEG-SVA5000を含むリン酸緩衝生理食塩水中のポリエチレングリコールジアクリレート、および光開始剤2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノンと反応させることにより、捕捉剤をアクリル化することにより達成され得る。これを片面または両面にコーティングしてPCL層と反応させ、コーティングされた層にUV光を照射して捕捉剤をマトリックスに共有結合させることができる。これにより、抗原、アプタマー、または抗体がマトリックスに共有結合される。得られた材料は、その後、1つまたは複数の追加の作用剤をマトリックスにガラス化するために使用することができ、または本明細書に記載されるようにマトリックスにガラス化された1つまたは複数の作用剤を含む別の層を有する多層システムで使用することができる。任意選択で、捕獲剤は、マトリックス又はその一部に共有結合している必要はない。
【0051】
任意選択で、捕捉剤が抗体である場合に、検査部位(または他の所望の部位)を抗Fc抗体でプレコートし、その後その部位に捕捉抗体を局在化させることにより、試料中の分析物と反応する捕捉抗体の能力が向上することが見出された。したがって、テスト部位、コントロール部位、またはその他は、任意選択で、最初に膜を抗Fc抗体と接触させ、乾燥させ、次に同じ部位で所望の捕捉抗体と接触させることによって形成される。一例として、ヤギで生産された抗マウスIgG(Fc特異的)抗体(Sigma Aldrich社製M4280-1ML)の2mg/mLを、まず、ClaremontBio社(カリフォルニア州アップランド)製の自動ラテラルフロー試薬分配器(ALFRD)を用いて、0.291μL/mmの分配速度/転換速度で、CN95膜上にストライプさせる。第1の層が乾燥した後、所望のモノクローナル抗体(例えば、5%の二糖で1mg/mL)を第1の層の上にコーティングし、米国特許第10,433,540号の教示に従ってガラス化する。
【0052】
捕捉剤は、エレクトロスピニングプロセス中に直接ガラス化され、マトリックスまたはその一部と関連し得る、またはその中にあるガラス化材料層を形成し得ることが見いだされた。プルラン、(例示的なガラス化剤としての)トレハロース、および所望のレポーター、基質、捕捉剤またはそれらの組み合わせを、エレクトロスピニング装置内で混合することによって、プルランは繊維形成の土台として機能することになる。このようにして、捕捉剤、レポーター、基質又はそれらの組み合わせは、エレクトロスピニングプロセス中に結晶化せず、代わりに、活性剤が熱及び保管時間に安定であるようにマトリックス又はその一部に含まれることができるように、ガラス化したガラス状態に移行される。
【0053】
捕捉剤またはレポーターは、任意選択で、抗体である。本明細書で使用する「抗体」(“antibody”及び“antibodies”の訳語)という用語には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体、シミアン化抗体、及びヒト化抗体、並びに、Fab免疫グロブリン発現ライブラリーの産物を含むFabフラグメントが含まれる。インタクト抗体、その断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)、またはその工学的変異体(例えば、sFv)もまた使用され得る。任意選択で、抗体は、当技術分野で認識されているようにヒト化される。任意選択で、抗体はヒト化されていない。抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそれらの任意のサブクラスを含む任意の免疫グロブリンクラスであり得る。
【0054】
任意選択で、捕捉剤はアプタマーである。態様において、捕捉アプタマーは、ヒトアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)タンパク質、またはそのペプチドもしくは断片であるか、または(ヌクレオチドアプタマーの場合などで)そのミミックである。ヒトACE2タンパク質は、例えばRayBiotech社(バージニア州ピーチツリーコーナーズ)及びNovus Biologicals社(コロラド州センテニアル)を含む様々な商業ベンダーから入手可能である。全長ヒトACE2の配列は、UniProt Accession No.Q9BYF1の下で入手可能である。
【0055】
本開示の装置及び方法は、任意選択で、多様な病原体及び毒素の配列を含む、多種多様な標的分析物の検出に適している。態様において、捕捉剤は、ヌクレオチド、抗体、タンパク質、ペプチド、アプタマー、またはそれらの断片を含む。いくつかの態様において、捕捉剤は、ウイルス性または細菌性のヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、またはその断片である。いくつかの態様において、捕捉剤は、例示的にインフルエンザウイルス抗原(例えば、ヘマグルチニン、ノイラミニダーゼなど)、コロナウイルス抗原(例えば。SARS-CoVタンパク質、SARS-CoV-2タンパク質、MERS-CoVタンパク質など)、エボラウイルス抗原、HIV抗原、ポックスウイルス抗原など;細菌抗原;真菌抗原;細菌毒素またはそのサブユニット(炭疽菌など)などの毒素抗原;などである。
【0056】
いくつかの例示的な態様において、標的分析物は、ウイルス抗原(任意選択でSARS-CoV-2ウイルス抗原)、又はそれに対する宿主抗体(例示的に、生体試料に存在する宿主抗SARS-CoV-2 IgG又はIgM分子)である。ウイルス抗原に対する宿主抗体の好適な捕捉剤としては、例えば、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質及びSARS-CoV-2ヌクレオカプシド(N)タンパク質が挙げられる。SARS-CoV-2、及び他のウイルスのN及びSタンパク質は、例えばRayBiotech社(バージニア州ピーチツリーコーナーズ)を含む様々なベンダーを通じて商業的に入手可能である。そのようなタンパク質は、全長であってもよいし、全長タンパク質のペプチドまたはサブユニットを含んでもよい。例えば、態様において、捕捉抗原は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質SのS1またはS2サブユニットを含んでもよい。しかしながら、当業者は、他のペプチドまたはその断片が標的分析物の捕捉に有用であることを理解するであろう。SARS-CoV-2スパイクタンパク質は、Ou,et al.,Characterization of spike glycoprotein of SARS-CoV-2 on virus entry and its immune cross-reactivity with SARS-CoV, Nature Communications 11,article 1620(2020);およびIbrahim,et al,COVID-19 spike-host cell receptor GFP78 binding site prediction,J.Infect.S0163-4453(20)(2020年3月10日)によって特徴づけられ、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
任意選択で、捕捉剤は、ウイルス、任意選択でSARS-CoV-2ウイルス、任意選択でSARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質に特異的な抗体である。そのような抗体の例示的な例には、抗ヒトSARSコロナウイルス核タンパク質マウスMAb(40143-MM05、Sino Biological)及び抗ヒトSARSコロナウイルス核タンパク質ウサギMab(40143-R001、Sino Biologicals)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。捕捉抗体は、本明細書で使用されるテスト領域などのテストストリップの1つまたは複数の領域に共有結合または静電結合されてもよい。
【0058】
レポーターは、任意選択で、検出可能な標識に結合される。検出可能な標識(ラベル)の例示には、酵素、蛍光ラベル、燐光ラベル、化学発光ラベル、比色ラベル、検出可能な粒子又はリガンド、ビオチン等が含まれるが、これらに限定されない。適切なレポーター酵素の検出可能な標識の例には、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、グルコースオキシダーゼ等が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
レポーターは、任意選択で、抗体であるか、または抗体を含む。レポーター抗体には、本明細書で使用されるような検出可能な標識を含む抗ヒト抗体コンジュゲートが含まれるが、これらに限定されるものではない。いくつかの態様において、レポーター抗体は、検出可能な標識に結合したIgG又はIgM抗体を含む。標識されたレポーター抗体は、例えばRockland Antibodies and Assays社(ペンシルべニア州ライムリック)、Sigma-Aldrich社(ミズーリ州セントルイス)など、様々な供給元から入手可能である。例示的に、標識されたレポーター抗体は、酵素に、任意選択で西洋わさびペルオキシダーゼに結合される。抗体を西洋わさびペルオキシダーゼ又は他の酵素に結合させる方法は当技術分野で知られており、HRPの抗体への結合は、Bio-rad antibodies社(カリフォルニア州ハーキュリーズ)から入手できるLYNX Rapid HRP Antibody Conjugation Kitを用いて実施することができる。
【0060】
捕捉剤、レポーター、基質、または他の任意の所望の分子は、米国特許第10,433,540号および特許出願番号:PCT/US2021/019887の教示に従って、装置の任意の部分へまたはその上にガラス化され得る。簡単に説明すると、マトリックスにガラス化される1つ以上の作用剤を含むガラス化培地が組み合わされ、マトリックス内またはマトリックス上に配置される。ガラス化培地は、少なくとも1つのガラス化剤を含むことができる。ガラス化剤の例示的な例としては、ジメチルスルホキシド、グリセロール、糖類(例:トレハロースなど)、多価アルコール、メチルアミン、ベチン、不凍タンパク質、合成抗核剤、ポリビニールアルコール、シクロヘキサントリオール、シクロヘキサンジオール、無機塩、有機塩、イオン液体またはそれらの組合せがあるが、それだけに限定されるものではない。態様において、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のガラス化剤が、ガラス化培地に含まれる。
【0061】
ガラス化剤は、ガラス化剤の同一性に依存する濃度で、ガラス化培地中に含まれる。いくつかの態様において、ガラス化剤の濃度は、ガラス化される生体試料に対して有毒である濃度以下である。本明細書で使用される場合、「毒性」とは、その後の試料使用時に機能的または生物学的生存能力が達成されないこと、または生体試料がその後の分析に適さないことを意味する。様々な態様において、ガラス化剤の濃度は、500マイクロモル(μM)以上、6モル(M)以下、またはその間の任意の値もしくは範囲である。一例として、様々な態様において、トレハロースは、1ミリモル(mM)以上6M以下、任意選択で、150mM以上6M以下の濃度で含まれる。いくつかの態様では、組み合わせたときのすべてのガラス化剤の合計濃度は、1mM以上6M以下、任意選択で1mM以上6M以下とされる。
【0062】
いくつかの態様において、ガラス化培地は、例として、限定するものではないが、水もしくは他の溶媒、緩衝剤、1つまたは複数の塩、RNaseもしくはDNAse阻害剤、またはそれらの組み合わせなどの他の成分をさらに含みうることが企図される。緩衝剤は、25℃において6~8.5のpKaを有する任意の薬剤である。緩衝剤の例示的な例としては、コリン、ベタイン、HEPES、TRIS、PIPES、MOPSなどがある。いくつかの態様において、緩衝剤は、コリン、ベタイン、またはHEPESなどの、大きな有機イオン(120kDaより大きい)を含む緩衝剤である。緩衝剤を含む態様では、緩衝剤は、ガラス化培地のpHを所望のレベルに安定化させるのに適した濃度で提供される。
【0063】
塩は、限定するものではないが、例として、ナトリウム塩、カリウム塩、塩化物塩、またはそれらの組合せを含むことができる。ガラス化培地に含まれる場合、塩は、1ミリモル(mM)以上500mM以下の濃度で提供され得る。例えば、塩は、その存在する濃度が、1mM以上500mM以下、1mM以上400mM以下、1mM以上300mM以下、1mM以上250mM以下、1mM以上200mM以下、1mM以上150mM以下、1mM以上100mM以下、1mM以上75mM以下、1mM以上50mM以下、1mM以上25mM以下、25mM以上500mM以下、25mM以上400mM以下、25mM以上300mM以下、25mM以上250mM以下、25mM以上200mM以下、25mM以上150mM以下、25mM以上100mM以下、25mM以上75mM以下、25mM以上50mM以下、50mM以上500mM以下、50mM以上400mM以下、50mM以上300mM以下、50mM以上250mM以下、50mM以上200mM以下、50mM以上150mM以下、50mM以上100mM以下、50mM以上75mM以下、または任意のおよびすべての範囲内またはその範囲に含まれる範囲内にあってもよい。
【0064】
捕捉剤、レポーター、基質、または他の任意の所望の材料は、任意選択で、米国特許第10,433,540号の教示に従って、特定のデバイスにまたはその上にガラス化されてもよい。任意選択で、ガラス化される分子は、糖(例えばトレハロース)を含み、二価金属イオンとキレート剤の組み合わせをさらに含むガラス化溶液中で結合されてもよい。例示的な二価の金属イオンには、Ca、Mg、Co、Fe、Zn、Mnなどの塩が挙げられる。例示的な塩としては、塩化物、硫酸塩などが挙げられる。キレート剤としては、ポリオール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エグタジン酸(EGTA)などが挙げられる。ガラス化溶液中の二価の金属塩とキレート剤のモル比は、10:90~90:10であり、任意選択で、50:50であってもよい。
【0065】
分析物の検出は、任意選択の適切な方法によって、テスト部位またはコントロール部位でレポーターを検出することによって行うことができる。例示的に、検出は、レポーターとマッチした蛍光リーダー、比色アッセイ、レポーター分子上のラベルの直接検出(例えば、金またはその他)、化学発光または他のそのようなアッセイシステムを含む。いくつかの態様において、蛍光リーダーは、検出のために蛍光発光が起こるように、検出可能なラベルを励起するのに適した波長を発する光である。
【0066】
例示的に、分析物の検出は、酵素/基質系を用いて実施され、例えば、基質と結合した西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(AP)であって、基質は、4-クロロ-1-ナフトール(4-CN)、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、p-ニトロフェニルホスフェート(PNPP)、CSPDおよびCDP-Star基質、RapidGlow Enhancer付きDynaLight基質、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)またはその誘導体(例えばTMBM、TMBMX)、2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩(ABTS)、ThermoFisher Scientific社(マサチューセッツ州ウォルサム)および他の商業ベンダーから入手可能なSuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate, SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrateなどである。いくつかの態様において、標識は、蛍光体(例えば、Cy3、Cy5、alexafluor 488、alexaflour 647、またはその他)である。LEDまたは適切な波長源による照明により、関心対象の所望の分子の存在または非存在を特異的に検出することができる。
【0067】
任意選択で、本明細書に記載されるような任意の態様において使用されるような基質は、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)、ABTS(2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)、OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸)、PNPP(p-ニトロフェニルリン酸)、ONPG(o-ニトロフェニル-β-D-ガラクトピラノシド)またはそれらの任意の組合せである。このような基質は、例示的に、レポーター上の酵素としてHRPまたはアルカリホスファターゼと機能的である。
【0068】
いくつかの態様において、標的分析物は、(任意選択で不溶性基質である)基質と反応されるHRPなどの酵素であるか又はそれを含むレポーターを使用して検出される。不溶性基質は、不溶性生成物を生成するものであり、それによって本明細書で提供されるような固相アッセイにおいてより改善された局在化を提供するものである。本明細書で提供される不溶性基質は、基質自体が水系で不溶性であることを必ずしも必要としないが、酵素の作用により生成する生成物が不溶性生成物を生成することを意味する。不溶性基質の例示的な非限定的例としては、TMBM、TMBMX、及び3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)(メリーランド州パサデナのMOSS,Inc.から入手可能)のような3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)の誘導体が挙げられる。
【0069】
他の態様では、基質は、酵素などの標的分析物によって特異的に切断される分子であってよい。一例として、標的分析物が酵素である場合、捕捉剤の結合によって標的分析物が検査部位部位に局在化することにより、検査部位での標的基質の特異的切断が可能となる。いくつかの例示的な例では、そのような基質は、標的分析物との反応の前に、蛍光体の蛍光が消光されるように、消光剤と蛍光体とを含む分子であってもよい。酵素標的分析物と接触すると、基質は切断され、蛍光色素が蛍光を発するようになる。このような基質の例としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識カゼイン(ABCAM社(英国ケンブリッジ)製のプロテアーゼ活性キットで見られるようなもの)があるが、これらに限定されるものではない。あるいは、基質は、過酸化水素の存在下でグルコシダーゼの作用によりグルコースおよびパラニトロフェノールに変換されるパラニトロフェニル-α-D-グルコピラノシド(これ自体は、装置中の第1のマトリックスまたは他の領域にガラス化されてもよい)である。検査部位に存在するグルコシドは、捕捉剤と相互作用した後、パラニトロフェニル-α-D-グルコピラノシドを切断して黄色の生成物を生成する活性を有する。反応は、所望の場合、アルカリ性炭酸ナトリウム溶液の添加により任意選択で停止させることができるが、本明細書で使用するラテラルフローアッセイ装置および方法においては、そのような停止は絶対に必要ではない。
【0070】
別の態様では、基質は、共有結合または静電結合によって、あるいは試験部位への他の結合試薬などによって、検査部位に局在化される。酵素がコロローカル化されるか、さもなければ検査部位を横切って移動するとき、酵素標的分析物の作用がある。反応生成物の比色部分が局在したままであれば、得られる信号も検査部位に局在したままとなり、確実な色の局在とポジティブな読み出しが可能となる。
【0071】
非特異的に結合した免疫複合体を除去するために、洗浄液を加えてもよい。適切な洗浄液には、水、緩衝液、またはその他が含まれる。任意選択で、洗浄液は使用されない。ラテラルフローアッセイシステムでは、洗浄液は、任意選択で、使用されない。
【0072】
いくつかの態様では、レポーターは、ナノ粒子などの粒子の形態で検出可能な標識に結合している。ナノ粒子は、ナノスケールの断面寸法、例えば、1nm~1000nmを有する粒子である。任意選択で、ナノ粒子は、1~300nm、5~80nm、または8~60nmの断面寸法を有する。多くのナノ粒子は、およそ球状であって、断面寸法が球状粒子の直径であるとみなされ得る。流体力学的半径または直径も、ナノ粒子サイズを定義するために使用することができる。
【0073】
ナノ粒子は、任意選択で、金属またはメタロイド、ラテックス、磁気ビーズ、金コロイド、金ナノシェル粒子、ポリスチレン、炭素、またはそのコアに標識を含むミセル、任意選択でHRPなどの酵素である。ナノ粒子は、N-ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)のカルボキシルまたはエステルを発現して、一級アミンとの強い共有結合を可能にするように調整されてもよい。連結オプションの他の例には、マレイミドによるナノ粒子の修飾と、それに続く、(例えば、レポーター剤をメルカプトエチルアミンまたは2-イミノチオラン(トラウト試薬)で処理することによって生成される)露出したチオールを含むレポーター剤への連結か、ヒドラジンによるナノ粒子の修飾および酸化グリカン(アルデヒド)による連結か、またはクリックケミストリーの使用(例えば、ナノ粒子を歪みを持つアルキンで修飾し、アジドで修飾したレポーター剤に連結すること)かを含む。追加的または代替的に、ナノ粒子は、レポーター剤との非共有結合の相互作用に適している場合がある。非共有結合の例としては、ビオチン-ストレプトアビジン結合があり、結合体の一方のメンバーがビオチン化され、結合体の他方のメンバーがストレプトアビジンに結合されている。
【0074】
いくつかの態様において、ナノ粒子はナノシェル粒子であり、任意選択で、コア(任意選択で酸化ケイ素)が金の層で被覆されているナノシェル粒子である。例示的なナノシェル粒子は、NanoComposix社(カリフォルニア州サンディエゴ)から入手することができる。シェルの厚さとコアの半径の比率を調整することにより、粒子の得られる色が変化することが見出された。例えば、コアの半径とシェルの厚さの比を大きくすると、粒子の色は赤にシフトする。このように、コアの半径とシェルの厚さの比率を調整することによって、粒子の色を酵素反応によって生成される生成物の色と一致または実質的に一致するように調整することができ、それによって検査部位で発見された信号を強化することができる。いくつかの態様では、ナノシェル粒子の色自体が、pg/mlの量の被分析物において肉眼で見える陽性信号を生成するのに十分であることがわかった。コア半径のシェルの厚さに対する比は、任意選択で3:1~1:3、任意選択で1:3~1:12、またはその間の任意の値または範囲である。
【0075】
レポーター/粒子の形成は、当該技術分野で認識されている技法を用いて行うことができる。例えば、まず、レポーター剤を標識(例えば酵素またはその他)に結合させ、次に、標識されたレポーター剤を金粒子またはナノシェル粒子などの粒子に結合させてもよい。あるいは、最初に粒子を標識に結合させ、任意選択で、次に標識または粒子をレポーター剤に結合させてもよい。BioRad社(カリフォルニア州ハーキュリーズ)からのコンジュゲーションキットを使用して、ラベルを粒子またはレポーター剤にコンジュゲートしてもよい。NanoComposix社製のコンジュゲーションキットを使用して、ラベルまたはラベル付きレポーター剤を粒子に結合させてもよい。粒子がNHS結合である場合、CytoDiagnostics社のコンジュゲーションキットを使用して、ラベル及び/又は標識されたレポーター剤を粒子に結合させてもよい。
【0076】
当該技術分野の理解とは異なり、レポーター剤の一部が標識に結合され、一部が標識に結合されていないレポーター剤をナノ粒子に結合させることにより、改善された信号を生成できることが判明した。例えば、HRPのような酵素に結合したレポーター抗体を使用する場合、酵素標識抗体と非酵素標識抗体の両方を、システム内のノイズを減らすと同時に信号を改善する特定の比率で組み合わせることによって、標的分析物の検出を改善することができる。例示的には、標識抗体の非標識抗体に対する数の比率は、80:20~20:80である。任意選択で、標識抗体の非標識抗体に対する数の比は、およそ、80:20:70:30、60:40、50:50:40:60、30:70、又は20:80である。任意選択で、いくつかの例示的な態様において、レポーター剤は、ウイルス、任意選択でSARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質を特異的に結合する抗体である。粒子は、検出可能な標識又は酵素にも結合している抗体の数と検出可能な標識又は酵素に結合していない抗体の数との比が80:20~20:80であり、任意選択で50:50である、抗体で被覆されてもよい。
【0077】
いくつかの態様において、本明細書に記載の装置は、アッセイの層、チャネル、又は領域の間に配置された取り外し可能なセパレータ層をさらに含み得る。任意選択で、セパレータは、分析物、レポーター、及び捕捉分子の間の接触を可能にするために除去される。
【0078】
いくつかの例示的な態様において、捕捉剤は、酵素であってもよい。酵素捕捉剤は、1つ又は複数の標的部位で膜ストリップ上に固定化される。標的分析物又は標的分析物に結合した分子が標的部位で酵素と相互作用する場合、標的分析物又は標的分析物に結合した分子の酵素変換によって、標的部位での標的分析物の存在を示す検出可能なシグナルが生成され得る。非限定的な例として、捕捉剤は、捕捉剤が標的分析物を機能性分子(例えば酵素)そのものに変換する酵素カスケードの上流成分であってもよい。機能性分子に対して特異的な基質を用いることで、標的分析物の検出が標的部位で達成されうる。
【0079】
一つの例示的な態様として、捕捉剤は酵素(例えば、グルコースデヒドロゲナーゼまたはジアホラーゼ)である。試料は、生体試料から所望の分子を遊離させる洗浄剤(例えば、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム(DTAB))を有する試料パッドに適用されてもよい。ガラス化基質は、装置のコンジュゲートパッドに含まれていてもよく、コンジュゲートパッドの湿潤によりガラス化物質が再水和され、酵素捕捉剤を固定化した状態で標的部位の作用部位に基質が運ばれるようにする。
【0080】
いくつかの態様において、本明細書で提供されるような装置又は方法は、標的分析物の存在又は不在の検出のために競合システムを利用することができる。非限定的な例として、捕捉剤と標的抗原は、標的分析物上の同じ部位に対して競合することがあり(例えば、直接競合相互作用)、または標的分析物のレポーターへの結合は、レポーターがもはや捕捉剤に結合しないようにレポーターを擾乱することがある(例えば、非競合的阻害)。したがって、標的部位に信号がない場合、あるいは対照部位に信号がある場合は、試料中に標的物質が存在することを示す。
【0081】
他の態様では、捕捉剤はヌクレオチドであってもよい。本明細書で使用されるヌクレオチドとは、核酸の配列のことである。捕捉剤は、特定の配列を有する非標識核酸鎖、または任意選択で、クエンチャーを有する鎖であってもよい。検出可能な標識を有する標識鎖は、標的部位において非標識鎖に結合してもよい。特定の配列を有する核酸の存在下では、標識鎖は、標的分析物が標識鎖と非標識鎖との間の相互作用と競合する性質により解離し、標識鎖の遊離は、標的分析物の存在を示す検出可能な信号を生成することになる。
【0082】
本明細書で提供される装置及び方法において、生体試料は、サンプルパッドに適用され得る。サンプルパッドは、その中に1つまたは複数のガラス化アッセイ試薬を含んでもよい。そのようなガラス化アッセイ試薬は、緩衝剤、洗剤、塩、又は任意の他の必要な試薬を含んでもよい。このような説明は、本明細書に別途記載されるようなサンプルポートにも適用される。一例として、サンプルパッドは、洗剤及び/又は緩衝液をその中にガラス化したものを含んでもよく、それによって、液体生体試料によるサンプルパッドの再水和は、適用されるサンプルの1つまたは複数の特性を変更する(例えば、pH調整、1つまたは複数の成分の溶解等)ために、保管されたアッセイ試薬が機能することを可能にする。
【0083】
任意選択で、標的分析物は細菌である。非限定的な一例として、細菌の検出は、そこにガラス化洗剤(例えばDTAB)を含むサンプルパッド(又はサンプルポート)に生体試料を加えることによって実施され得る。ガラス化洗剤の再水和によって、洗剤は生体試料中の細菌細胞を溶解し、それによって細胞内の標的分析物(例えば、NAD)を放出することができる。捕捉剤は、標識された標的分析物(例えば、HRPまたはビオチン標識NAD)に結合することができ、それによって標識された標的分析物は、標的部位で標的分析物によって競合的に除去される。これにより、基質導入時の色の減少は、生体試料中の標的分析物の量に比例する。
【0084】
本明細書に開示されるアッセイ及び方法の検出限界は、従来のELISA法及び固相アッセイより有利に優れている。態様において、関心対象の分析物の検出限界は、約1000pg/ml未満、任意選択で約100pg/ml未満、任意選択で約10pg/ml未満、任意選択で約5pg/ml未満、任意選択で約2pg/ml未満、任意選択で約1pg/ml未満、任意選択で約0.9pg/ml、任意選択で約0.8pg/ml未満、任意選択で約0.7pg/ml未満、任意選択で約0.50pg/ml未満、任意選択で約0.4pg/ml未満、任意選択で約0.30pg/ml未満、任意選択で約0.2pg/ml未満、任意選択で約0.1pg/ml未満である。
【0085】
本明細書で提供されるラテラルフローアッセイは、分析物の優れた低検出限界を提供しながら、極めて迅速に完了することができる。検出は、任意選択で20分以下、任意選択で約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1分以下で実施される。このように、本明細書で定義される用語「迅速」(“rapid”)は、任意選択で20分以下、任意選択で約19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1分以下である。
【0086】
標的分析物は、多くの可能な方法のうちの1つによって定量化されてもよい。例示的に、複数のテストストリップが、異なる既知の量の捕捉抗原、アプタマーまたは抗体を有するマトリックス上に存在し、任意選択でカラーマップなどの既知のコントロールとの比較によって、サンプル中の分析物の定量を行うことができる。任意選択で、マトリックス中またはマトリックス上の単一の膜ストリップまたは他のテスト領域における信号レベルにより、直接定量を行うことができる。
【0087】
別の態様では、キットが提供され、キットは、本明細書に開示される装置のいずれか、本明細書に記載される方法を実施するために必要な試薬、及び任意選択で使用説明書を含む。
【0088】
図1~4の参照によると、いくつかの態様において、迅速診断装置100a、100b及び使用方法が提供される。図1は、第1のマトリックス110を含む膜層105を含む例示的な多層デバイス100aを図示しており、これは第1のマトリックス110にガラス化された捕捉抗原120を有し、捕捉剤120は、任意選択で、第1のマトリックス110と共有結合又は静電結合している。いくつかの具体的な態様において、捕捉抗原は、スパイクまたはヌクレオカプシドタンパク質またはペプチドなどのSARS-CoV-2抗原である。任意選択で、スクリーン層155が膜層105上に配置されるか、あるいは膜層105と接触し、スクリーン層は、第2のマトリックス160を含み、任意選択で、第2のマトリックス160は、スクリーン層155が液体生体試料と接触したときに液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成されている。図1に示すように、任意選択で、少なくとも1つのレポーターが第1のマトリックス110にガラス化される。いくつかの態様において、レポーターは、標識抗ヒトIgM130または標識抗ヒトIgG140であるか、これらを含む。
【0089】
図2Aは、図1の装置100aを、標的分析物150を含む液体生体試料と、例示的には血液又は唾液と、接触させるステップを示す。任意選択で、標的分析物150は、SARS-CoV-2捕捉抗原又はアプタマーのような捕捉抗原120に特異的なヒトIgG及び/又はヒトIgM抗体を含む。図2Bを参照すると、液体生体試料と接触すると、膜層105が再水和され、レポーター抗体130、140がマトリックス110から放出されてシステム内で移動可能になり、標的分析物150と結合することができるようになる。図2Cを参照すると、適切な基質を添加すると、結合したレポーター抗体130、140は、信号170を介して検出される。任意選択で、信号170の強さは標的分析物の濃度と相関し、それによって既知の標準と比較することによってサンプル中の分析物を定量化することができる。
【0090】
図3は、多層デバイス100bを例示している。この多層デバイス100bは、第1のマトリックス110を含む膜層105であって第1のマトリックス110にガラス化された抗原又はアプタマー120の形態の捕捉剤を有する膜層105を含む。捕捉剤120は、任意選択で、第1のマトリックス110と共有結合又は静電結合している。任意選択で、捕捉剤は、ウイルス抗原、任意選択で、例えばスパイク又はヌクレオカプシドタンパク質又はペプチド等であるSARS-CoV-2抗原である。スクリーン層155は、膜層105上に配置されるか、さもなければ膜層105と接触し、スクリーン層は、第2のマトリックス160を含み、任意選択で、第2のマトリックス160は、スクリーン層155が液体生体試料と接触したときに液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成されている。少なくとも1つのレポーター剤(例示のために標識された抗体として図示されている)130、140は、第2のマトリックス160にガラス化される。任意選択で、レポーターは、標識抗ヒトIgM130又は標識抗ヒトIgG140を含む。図3は分解図として提示されているが、スクリーン層155は任意選択で膜層105上に配置されてもよいし、さもなければ膜層105と接触していてもよいことが理解される。
【0091】
図4は、図3の装置100bを、標的分析物150(例示の目的だけのために抗体として描かれている)を含む液体生体試料と、例示的には血液又は唾液と、接触させるステップを示す。任意選択で、標的分析物150は、捕捉抗原120に特異的なヒトIgG又はヒトIgM抗体を含む。液体生体試料と接触すると、膜層は再水和され、レポーター130、140は第2のマトリックス160から放出され、システム内で可動となり、標的分析物との結合に利用可能となる。適切な基質の添加により、結合したレポーター抗体130、140は、図2B~2Cに示すように、信号170を介して検出される。
【0092】
図5は、本開示のいくつかの態様によるデバイスの例示的な態様を示し、取り外し可能なセパレータ層が2つのチャネルの間に配置される。チャネル1は、マトリックス繊維を内部に有する毛細管チャネルを含み、捕捉分子(例示的には捕捉抗体)は、マトリックス繊維に共有結合または静電結合している。チャネル2はマトリックス繊維を含み、レポーター抗体はその中にガラス化されているが、共有結合はしていない。血清はキャピラリーチャネル1に吸引され、セパレータが取り除かれると、チャネル2が再水和され、レポーター抗体は放出されて血清中の分析対象物と自由に接触するようになる。分析対象物は、チャネル1内の捕捉分子によって捕捉される。チャネル1の繊維の拡大画像が左下パネルに示されている。右上のパネルは、再水和およびレポーター抗体の放出後のチャネル2の蛍光信号を示し、その移行を図示している。右下のパネルは、レポーターと結合することにより標的分析物(例:VEGF)の存在を検出するチャネル1における蛍光信号を示している。
【0093】
図6は、標準的な利用可能な方法と比較した、本開示における装置および方法の比較優位性を示している。従来のELISAは5時間以上を要し、検出限界は6.4pg/mLである。Luminex(登録商標)は3時間以上を要し、検出限界は約10pg/mL以下である。これに対して、本開示の装置と方法では、室温で、コールドチェーン輸送や保管を必要とせず、約15分以内に、約0.1pg/mL以下の検出限界で、標的分析物を迅速に検出することが可能である。
【0094】
図7A~7Cは、例示的なラテラルフロー膜ストリップ200a、200b、200cの形態における様々な装置を例示する。図示された装置において、膜ストリップは、標識された捕捉剤がその中でガラス化されるコンジュゲートパッド210、テスト領域220、及びオプションのコントロール領域230を含む。図7Aは、ラテラルフロー膜ストリップ200aを示し、テスト及びコントロール領域220、230は、膜上のストリップ又はラインとして存在する。図7B及び図8Cは、それぞれラテラルフロー膜ストリップ200b、200cを示し、テスト及びコントロール領域220、230は、膜ストリップ上のウェルとして存在する。テスト及びコントロール領域の構成は、テスト信号及びコントロール信号が存在する場合、検出可能及び/又は識別可能である限り、変化してもよい(すなわち、ストリップ、ラインウェル、円、図形など)ことを理解されたい。
【0095】
図8は、膜がハウジング内に含まれるラテラルフローアッセイ装置300を示す図である。図9A、9Bは、それぞれがベース310、トレイ320、膜ストリップ325、サンプルパッド330、廃棄パッド340、及びカバー350を有するハウジングカセット300a、300bの分解図である。図9Aでは、カセットのトレイ320に挿入される前に、ガラス化材料を含むように形成された膜ストリップが示されている。膜ストリップは、任意選択で、ハウジング内で取り外し可能及び交換可能である。図9Bでは、カセットの組立前に、膜ストリップは、カセットのトレイ320上でガラス化される。任意選択で、膜ストリップを含むトレイは、取り外し可能および交換可能である。任意選択で、カバーは、その下にある膜ストリップのコントロール信号及びテスト信号を見るためのスロット又は開口を含む。
【0096】
図10を参照すると、ラテラルフロー膜ストリップ400の例示的な態様が提供される。膜ストリップ400は、液体生体試料を受け入れるためのサンプルパッド405を含んでもよい。サンプルパッドは、ガラス化マトリックス425を含むコンジュゲートパッド410と流体的に接触している。レポーター剤(任意選択で、抗体)430、440は、任意選択で、コンジュゲートパッドのマトリックス425にガラス化される。レポーター剤は、本明細書に記載されるような粒子に結合されてもよいことが理解される。いくつかの態様において、装置は、コンジュゲートパッドにガラス化された又はコンジュゲートパッド上にガラス化されたレポーター剤を含まないが、それらは、試料と共に添加されるか、試料に続いて添加されるか、又は試料を試料パッドに接触させる前に添加されてもよい。コンジュゲートパッドの下流で、例示的な膜ストリップは、ガラス化され固定化された捕捉剤(例えば、抗体、光源またはアプタマー)を含むテスト部位またはラインを含み、任意選択で、それらと共有結合または静電結合をしてそれらがその中でまたは上でガラス化されている。任意選択のコントロール部位またはラインは、テスト領域の下流に配置されてもよく、ガラス化されて固定された捕捉剤(例えば、抗原、アプタマーまたは抗体)435、445(例示的に、ヒトIgG又はIgM)を含む。廃棄パッド又は吸収パッド450は、過剰な試薬を収集し、及び/又はラテラルフローアッセイを通る試薬の移動を促進するために、膜ストリップの下流端に配置されてもよい。
【0097】
図11Aは、膜ストリップ400を、関心対象の分析物485a、485b、485cを含む液体生体試料480と接触させるステップを示す。液体生体試料480がサンプルパッド405を湿らせると、液体試料内の液体及び分析物は、毛細管現象によって膜ストリップを通ってガラス化マトリックス425に移動する。生体試料の部分液体は、システム内で可動となるレポーター剤430、440を放出して、ガラス化マトリックス425を再構成する。図11Bに示すように、標的分析物485は、テストラインにおいて捕捉剤420によって捕捉される。レポーター抗体430、440は、標的分析物及び/又はコントロールラインの捕捉抗体435、445に結合する。余分な試薬は廃棄パッド450に吸収される。レポーターが局在化し、さらに任意選択で基質が添加されると、任意選択で、光源470を用いて検出することができるようになり、あるいは色の変化に対する目視検査、あるいは信号を検出するための他の手段で、信号を検出することができるようになる。
【0098】
図12は、複数の膜ストリップを含むラテラルフローアッセイ収容カセット500を示す図である。図13A、13Bは、それぞれ、ベース510、トレイ520、複数の膜ストリップ525、サンプルパッド530、廃棄パッド540、及びカバー550を有するカセット500a、500bの分解図である。図13Aにおいて、膜ストリップは、カセットのトレイ520に挿入される前にガラス化される。膜ストリップは、任意選択で、独立して取り外し及び交換が可能である。図13Bでは、カセットの組立前に、膜ストリップは、カセットのトレイ520上でガラス化される。トレイ520は、任意選択で取り外し及び交換が可能である。テスト及びコントロール線が膜ストリップ525上に例示されているが、テスト及びコントロール領域は、ライン、ウェル、又は信号の迅速な検出を許容する他の任意の構成の形態であってよいことを理解されたい。任意選択で、カバーは、その下にある膜ストリップのコントロール信号及びテスト信号を見るためのスロット又は開口を含む。
【0099】
図14及び図15は、ハウジング内(15A)又はハウジングなし(15B)の両方で、本開示のいくつかの態様に従った例示的なマルチストリップ・ラテラルフローアッセイ600を示す。アッセイは、液体生体試料を受け入れるための試料パッド605を含む。図示されているのは3つの膜ストリップであるが、2、3、4、5、又はそれ以上の膜ストリップを含む、任意の数の膜ストリップがマルチストリップアッセイに含まれ得ることが理解されよう。それぞれの膜ストリップは、ガラス化マトリックスと、1つ以上のガラス化レポーター630、640と、任意選択で1つまたは複数の基質645と、を含むコンジュゲートパッド615を有する。捕捉剤620(任意選択で、共有結合または静電結合で結合される)を有するテストラインは、コンジュゲートパッド615の下流に配置される。任意選択で、個々の膜ストリップは、同じ又は異なる捕捉剤620を含んでもよい。コントロールストリップは、テストストリップの下流に配置され、1つまたは複数の共有結合又は静電結合したコントロール捕捉剤655、660を含む。廃棄パッド650は、過剰なサンプル流体を受け取るために、膜ストリップの下流に配置される。任意選択で、廃棄パッドは、染料などのインジケータ675を含み、このインジケータ675は、タンパク質、液体、または他のインジケータの存在下で色の変化を提供して試験の完了を示す。例示的に、染料はCoomassie G-250を含む。
【0100】
マルチストリップ・ラテラルフローアッセイ600が1つまたは複数の液体生体試料と接触すると、試料の部分液体は試料パッド605を湿らせ、膜ストリップに下流に流れる。試料液体がコンジュゲートパッド615を再構成すると、ガラス化された1つまたは複数のレポーター630、640及び基質645は、コンジュゲートパッド615のマトリックスから放出される。そうすると、レポーターは、サンプル中の標的分析物と自由に結合できるようになる。流体および移動成分は下流に移動し、そこで「サンドイッチ」結合がテストラインおよびコントロールラインで検出可能である。レポーターと基質との相互作用を停止させるために、サンプルパッドに停止液を加えてもよい。
【0101】
任意選択で、本明細書に開示された実施形態のいずれかにおいて、コントロール領域(例えば、ストリップまたはウェル)は、捕捉剤に加えてまたは捕捉剤の代わりに、Coomassie G-250などの指示色素を含んでもよい。このような態様では、指示色素は、液体試料中の任意のタンパク質の存在を検出し、それによって、信号、例えば、色の変化を介して検査の完了を示す。
【0102】
任意選択で、捕捉剤はアプタマー、例えばインタクトな病原体と結合するアプタマーである。任意選択で、アプタマーは、ウイルス表面タンパク質と結合可能なACE2タンパク質又はペプチドであり、ウイルス表面タンパク質は、任意選択で、SARS-CoV-2表面タンパク質である。いくつかの態様において、膜は、結合したビリオン/アプタマー複合体と複合化する、ガラス化マトリックス及びガラス化発色剤を含んでもよい。例えば、液体生体試料がマトリックスに接触すると、マトリックスは再構成され、発色剤が放出される。標的ビリオンは捕捉アプタマーと結合し、発色剤はその複合体と結合して、検出信号が生成される。
【0103】
任意選択で、ガラス化捕捉剤は、インタクトな病原体に結合するビオチン標識アプタマーである。態様において、膜は、ガラス化マトリックス、ガラス化レポーター、及びガラス化ビオチン標識アプタマーを含んでもよい。ビオチン標識アプタマーはビリオン(または他の標的)と結合し、その複合体は共有結合したアビジンまたはストレプトアビジンによってテスト領域で捕捉される。レポーターはこの複合体に結合し、検出信号を発生させる。
【0104】
任意選択で、ガラス化捕捉剤は、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)であってインタクトな病原体に結合し、任意選択でウイルスに結合し、任意選択でSARS-CoV-2に結合する。膜は、ガラス化マトリックスおよびガラス化ビーコンアプタマーを含んでもよく、ビーコンアプタマーは、蛍光体およびクエンチャーを有する。ビーコンアプタマーが標的分析物と結合していない場合、蛍光体はクエンチャーによって消光され、信号は生成されない。しかし、ビーコンアプタマーがSARS-ビリオンと結合すると、その複合体は共有結合または静電結合したオリゴによってテスト領域に捕捉される。このとき、アプタマー複合体の形成により、ビーコンアプタマーの蛍光色素が消光されなくなると、信号が生成される。
【0105】
任意選択で、ガラス化捕捉剤は、インタクトな病原体と結合する抗体であって、インタクト病原体とは、1つの例示的な例としてSARS-CoV-2のS又はNタンパク質などのウイルス又はその一部などである。膜は、ガラス化マトリックス及びガラス化捕捉抗体を含んでもよい。液体試料が捕捉抗体を再構成すると、捕捉抗体はシステム内の任意の分析物と自由に結合することができる。いくつかの態様では、レポーター剤も分析物に結合している場合、レポーターは捕捉剤が局在している領域に、任意選択で共有結合的または静電結合的に局在している領域に、濃縮される。分析物の存在の有無の検出は、色の変化または濃度によって達成されてもよく、任意選択で、検出可能な生成物を生成するために適切な基質とレポーター剤に結合した酵素との反応によるものであってもよい。
【0106】
図16Aは、例示的な診断アッセイ装置600を示す図であり、任意選択で、ハウジング内に複数の膜ストリップ610を含む。図16A及び16Bに示すように、それぞれの膜ストリップ610は、マトリックスにガラス化されたレポーターを有するコンジュゲートパッド615と、標的分析物を捕捉するためのガラス化された共有結合又は静電結合された捕捉剤を含む複数のテスト領域622と、を含む。標的分析物がコンジュゲートパッドから下流に移動すると、捕捉濃度は複数のテスト領域622にわたって連続的に希釈され、それによって、標的分析物の濃度を決定するためにカラーマップまたは他の参照標準と比較され得る複数の信号が提供される。
【0107】
図16は、例示的な診断アッセイ装置700を示す。アッセイ装置700は、任意選択でサンプルパッド705を含み、任意選択でサンプルパッド705に隣接して及び/又はサンプルパッド705に重なって及び/又はサンプルパッド705に接触して配置された基質パッド702を含む。任意選択で、サンプルパッドは、液体生体試料、例示的に血液試料又は唾液試料を受け取り、試料の残りの成分及び標的分析物がコンジュゲートパッド715に流れ得るように、(もし存在するならば)試料中の赤血球を隔離、除去、又は破壊してもよい。コンジュゲートパッド715は、マトリックス725と、少なくとも1つのレポーター730a、730bとを含み、少なくとも1つのレポーター730a、730bは、任意選択で、マトリックスにガラス化され、任意選択で、粒子に結合されている。任意選択で、コンジュゲートパッド715は、少なくとも1つの標識されたレポーターと、任意選択で、マトリックスにガラス化された抗原730bとを含む。任意選択で、コンジュゲートパッド715は、マトリックスにガラス化された少なくとも1つの標識されたコントロール抗体730aを含む。コンジュゲートパッド715の下流で、それに流体的に接続され、任意選択でそれと一体である、1つまたは複数の試験領域722を含む膜ストリップであり、各試験領域は、ガラス化固定化捕捉剤720を含み、捕捉剤は、試験分析物のタイプ(例えば、ヒトIgG、SARS-CoV-2 Sタンパク質等)又はコントロールに特異的なものである。任意選択的で、各テスト領域は、捕捉抗原、抗体、アプタマーなどの異なるガラス化捕捉剤720を含んでもよい。コントロール領域745は、任意選択で膜ストリップ上に、任意選択で試験領域の下流に、配置される。いくつかの態様において、アッセイは、試料からの過剰な流体を吸収するための廃液パッド750をさらに含む。
【0108】
いくつかの態様において、基質パッド702は、標識又は標識分子との反応時に発色に適した反応剤を結合する、埋め込まれた又はガラス化された基質を含む。非限定的な例として、捕捉剤はHRPに結合されてもよい。基質パッドは、基質がHRPに接触し、膜ストリップ上のHRPの位置で、陽性結果を示す色が生成されるように、HRP(または他の酵素ラベル)用の1つまたは複数の基質を含んでもよい。任意選択で、生体試料がサンプルパッドに加えられるとき、基質パッドに緩衝液を加えて基質を再構成および放出し、基質が膜ストリップを通って流れ、適切なレポーター分子に結合するようにしてもよい。
【0109】
いくつかの態様において、サンプルパッド705は、赤血球を隔離及び/又は溶解する薬剤をさらに含み、それによって血漿及び標的分析物が膜ストリップを横切って移動することを可能にし得る。様々な赤血球溶解剤が当該技術分野で知られている。例示的な薬剤は、赤血球溶解バッファー(様々な業者から入手可能である)、または塩化アンモニウム、炭酸水素カリウム、およびEDTA二ナトリウムのうちの1つまたは複数の含む埋め込み溶液を含むが、これらに限定されない。当業者は、赤血球溶解剤が当技術分野でよく知られていることを理解するであろう。
【0110】
装置700に、標的分析物(例示的には感染性物質に対する抗体、ウイルス自体又はウイルスSタンパク質等のその一部)を含む生体試料(例示的には血液試料)を接触させると、血液はサンプルパッド上に沈着する。任意選択で、基質分子を放出するために、緩衝剤が基質パッドに加えられる。任意選択で、サンプルパッドは、サンプル中の赤血球を隔離および/または溶解する薬剤を含み、それによって血漿および標的分析物が膜ストリップを横切って移動することを可能となる。
【0111】
標識されたウイルス抗原730bなどのガラス化されたレポーター、およびガラス化されたコントロール抗体730aは、生体試料からの液体がマトリックスを再構成するときに、コンジュゲートパッド715から放出される。サンプル、分析物、レポーター分子、およびコントロール分子は、テスト領域に向かって下流に流れる。テスト領域では、各テスト領域での捕捉分子の同一性に応じて、個別の標的分析物が所望の位置で捕捉される。コントロール抗体は、コントロール領域の捕捉抗体と結合し、検査が完了したこと、および/または成功したことを確認する。いくつかの態様において、緩衝材は、基質に添加されてもよく、任意選択で、テスト領域における「サンドイッチ」複合体の存在下で信号を生成するための検出基質をさらに含んでもよい。
【0112】
任意選択で、生体試料は、被験体から採取され、生体試料の1つまたは複数の特性を調整するのに適し且つ/又は生体試料内の1つまたは複数の分析物を遊離させるのに適したアッセイバッファーと組み合わされる。例示的な態様として、テストサンプルは唾液であってもよい。唾液は、標的ウイルスシステムから所望のタンパク質または核酸分析物を遊離させるために、洗浄剤を含むアッセイバッファーと組み合わされてもよい。得られたサンプルは、次に、装置のサンプルパッドに適用されてもよく、それによって流体は、任意選択で、サンプルパッドの位置またはその下流(例えばコンジュゲートパッド内)でレポーター剤を再構成してレポーター剤がサンプル内の目的の分析物と自由に結合できるようになってもよい。サンプルのラテラルフローは、目的の分析物を特異的に結合する1つまたは複数の捕捉剤を含んでもよいテスト領域722に向かって移動し、それによって分析物及びレポーター剤を捕捉し、テスト部位に局在化させる。任意選択で、サンプル内の分析物を検出するために、レポーター剤に結合した酵素によって触媒される反応の着色生成物を生成するために、テスト部位またはその上流に基質が適用される。
【0113】
いくつかの態様において、試料は、薬剤をサンプルパッドに接触させる前に、又は接触させる際に、洗浄剤と接触される。洗剤は、ウイルス粒子からタンパク質を遊離させるのに適した任意の洗剤である。いくつかの態様において、例示的な洗剤は、Zwittergent 3-14(CAS 14933-09-6)(任意選択で、流体中で1~5重量%)である。任意選択で、洗剤は、アッセイシステムにおけるシグナル結果を改善することを支援し得るジチオスレイトール(DTT)と組み合わされる。
【0114】
あるいは、試料を溶解して、サンプルパッド上の1つ以上の分析物を遊離させることもできる。任意選択で、サンプルパッドは、DTT、DTAB、またはサンプルパッド上でガラス化された他の洗剤と組み合わせた洗剤を含み、サンプルをサンプルパッドに直接適用して洗剤を再構成し、サンプルに含まれる任意の必要なソースから分析物を直接遊離させるようにする。
【0115】
標的分析物の遊離と同時に、またはそれに続いて、試料はレポーター剤と接触させられる。レポーター剤は洗浄剤と同じ溶液に含まれるか、別の溶液に含まれて、サンプルと結合してもよく、またレポーター剤はガラス化した状態でコンジュゲートパッド内またはパッド上に収容されてもよい。レポーター剤(任意選択で抗体であって、任意選択で粒子に結合されている)は、その後、自由にサンプル中の分析物と接触することができる。試料がコンジュゲートパッドを通過した後、検査部位にある捕捉剤が分析物を濃縮して検査部位に集め、それによって、標識をレポーター剤に濃縮し、検査部位で検出可能な信号を提供する。
【0116】
いくつかの態様では、標的分析物の存在の陽性表示の増強または現像のために標的部位への基質を送達することは、装置を通る基質の流動特性を変えることによって改善され得ることが見いだされた。ラテラルフローアッセイ装置における読み出しは、機械による読み出しよりも感度の低い目視によって行われるのが一般的である。このため、高感度のカラー、蛍光、発光、その他の高感度検出に適した読み出し装置を用いて現場や実験室外で使用することで、装置の検出限界が向上する傾向がある。酵素結合型レポーター(HRPなど)の使用などの酵素増幅は、感度を向上させるものの、シグナル生成を目的の部位に効果的に局在させるための他の問題を引き起こす。
【0117】
液体(液体生体試料またはその一部)が膜を通過する速度は、アッセイパフォーマンスに影響を与えることがわかった。流体の流速を下げると、捕捉剤と標的分析物との相互作用が向上するが、標的部位以外の場所にレポーターが保持される確率が高くなり得る。これは、金などのナノ粒子をレポーターの可視化剤として使用する場合に、特に問題となる。酵素/蛍光/発光増幅を用いる場合、標的部位以外の部位にレポーターを保持すると、後に基質添加によって増幅されるレポーターが非特異的に保持されることに起因する、高いバックグラウンドおよび/または偽陰性につながる可能性がある。本明細書に実質的に記載されるような、任意選択で図17Aに描かれるような、膜ストリップと関連するコンジュゲートパッド及び/又は基質パッドを含むラテラルフロー装置を用いる場合、液体の流量は、ストリップ総量及び液体適用からの時間に対するシステム内に置かれた液体サンプルの量に応じて変更される。図17Bに示されるように、点線は、ストリップ湿潤総体積を指す。フロー持続時間が総量に進むにつれて、ストリップハウスは増加する。しかし、実線で示されるように、液体量が膜ストリップを流れる速度は、サンプル適用からの時間に依存して経時的に変化する。これは、全体の流量を、図17Bの縦の破線で区分された4つの異なる流動形態に分割することによって説明することができる。領域1は、膜ストリップの最初のウェットアウトを示す。領域2は、膜ストリップ、廃棄パッド界面の湿潤を図示する。領域3は、廃棄パッドのウェットアウトを図示する。最後に、領域4は、(存在する場合の)廃棄パッドからの蒸発による流量を示す。膜ストリップ材料が細孔を満たし、コンジュゲートパッドから膜を通して液体を移動させる最初のウェットアウトを表す領域1で、最大流量に到達する。膜ストリップが、体積の約75%を流体で飽和されると、流量は実質的に偽となる。本明細書で提供されるような装置では、チャネルの長さと幅を調整して流体の流れ特性を改善し、標的分析物の試験部位への特異的結合を改善でき、その一方で、結合していないレポーターを部位から遠ざけて、バックグラウンドを減少させることで感度を改善することができる。任意選択で図17Bに約8~10分で図示されている領域3の終了時において、基質が添加されるか、または表示が取得されてもよい。
【0118】
このように、基質の表面流を特異的に作り出すことで、酵素/基質の反応をより効果的に標的部位に局在させ、検出下限を下げ、偽陰性を減らし、S/N比を改善できることが見出された。酵素増幅のための基質添加には、さらなる課題がある。液体基質の添加は、膜ストリップ上の液体全体の流動特性を変化させる。したがって、液体基質の使用は、膜ストリップをオーバーレイさせ、これは特に領域3(基質添加の最適時間)以降で真である。液体基質を使用した場合、追加の液体プールはテストライン領域をクリアアップするのに非常に時間がかかり、偽陽性につながる非特異的なシグナルを残す可能性がある。
【0119】
これらの問題は、本明細書で提供されるいくつかの態様によれば、膜層が生体試料等で濡れた後に、乾燥形態の基質を任意選択で膜層に接触させることにより、解決し得る。膜層上の/膜層中の基質の流れは、それによって、膜自体を通る流れの量が減少した表面流れになる。このように、いくつかの態様によれば、基質は、実質的に乾燥した基質膜にガラス化され、実質的に乾燥した基質膜は、湿潤後に膜層に接触される。膜層内のガラス化物質を再水和させるために使用された湿潤膜層内の流体は、基質膜を再水和するためにも使用され、それによって、基質膜から所望の標的部位への基質の流れが可能になり、シグナル生成が改善される。実質的に図17Cに示されるように、シグナルと偽陽性を改善するために、膜内に実質的に直線的な基質の流れが導入されるように、基質は検査部位のかなり上流の部位で導入されてもよい。
【0120】
図18A~Eには、これらの独特の基質フロー特性を達成するための、膜層への基質の遅延適用のための例示的なアッセイ装置800の様々な態様が示される。膜ストリップは、サンプルパッド805と、サンプルパッド805に隣接して及び/又は重なって接触して配置されたコンジュゲートパッド815と、を含む。コンジュゲートパッドは、その中又はその上にガラス化されている1つまたは複数のレポーターを含んでもよく、当該1つ又は複数のレポーターは、1つまたは複数の検査部位822をその上に含む膜ストリップに流れる。コンジュゲートパッド815の下流で、それに流体的に接続され、任意選択でそれと一体である、1つまたは複数の試験領域822を含む膜ストリップであり、各試験領域は、ガラス化固定化捕捉剤を含み、捕捉剤は、試験分析物のタイプ(例えば、ヒトIgG、SARS-CoV-2 Sタンパク質等)又はコントロールに特異的なものである。任意選択的に、各試験領域は、捕捉抗原、抗体、アプタマーなどの異なるガラス化捕捉剤を含んでもよい。コントロール領域845は、任意選択で膜ストリップ上に、任意選択で試験領域の下流に、配置される。いくつかの態様において、アッセイは、試料からの過剰な流体を吸収するための廃液パッド850をさらに含む。ハウジング860は、膜ストリップを収容するために一緒に取付られる上部ハウジング862及び下部ハウジング863から形成されてもよいが、上部ハウジング及び下部ハウジングは一体であって単一ピースから形成されてもよいことが理解される。ハウジングは、それに添付された又はそれと一体の基質パッド875を含む基質送達レバー870を更に含んでもよい。基質パッドは、接着剤によって、任意選択で剥離可能な接着剤によって、又はその中の基質のガラス化に適した膜をレバーに直接組み込むことなどの任意の所望の手段によって、基質送達レバーに貼り付けられてもよい。基質パッド875は、レバーを作動させると基質パッドが膜の一部と接触して基質を再水和させ、レポーターとの反応に対し可動であるように、レバー870上に位置決めされる。
【0121】
引き続き図18を参照すると、レバー870は、ハウジング862内のレバースロット881に適合することができる。レバー870とレバースロット881との間の取付によって、レバーが作動し、基質パッドが膜ストリップへ接触することを可能になり得る。いくつかの態様において、レバーは、図18Cに例示されるように、レバーを回転させると基質パッドが第1の位置から膜ストリップと接触している第2の位置に移動するように、レバースロット内のねじ要素または形状と相補的であるねじ要素または形状を含む。他の態様において、レバー780は、所望の量の力を適用することによって、基質パッド875が膜ストリップと接触するように動くように、レバースロット881に摩擦適合されてもよい。いくつかの態様においては、第1の位置から第2の位置へ膜ストリップを移動させて、所望の時間において膜ストリップと接触するようにユーザが作動させることができるシステムであって、それでいて基質膜の偶発的な移動に対して耐性があるシステムを含むこと所望されている。ハウジング内の基質パッドの位置は、任意の所望の位置で膜ストリップに接触するように調整され得ることに留意されたい。任意選択で、図18Bに図示されているように、コンジュゲートパッド815の位置又はその付近で、基質パッド875を膜ストリップに接触させるようにレバーの位置決めがされる。代替的に又は追加的に、レバーは、サンプルパッド805又はその近傍で、基質パッドと膜ストリップとを接触させるように位置決めされる。代替的にまたは追加的に、サンプルパッドの検査部位で、またはその近傍で、または検査部位の上流の任意の位置で、基質パッドが膜ストリップに接触されるように、レバーの位置決めがされて、再水和時に基質が表面毛細管現象によって基質パッドから検査部位へと流れることができる。
【0122】
ハウジング862は、任意選択で、ユーザが生体試料をサンプルパッドに容易に局在化できるように、サンプルパッド805の実質的に近くに配置されるサンプルポート880を更に含む。サンプルポート880は、アッセイ試薬送達ポート885をさらに含んでもよい。アッセイ試薬送達ポートは、そこにおいてガラス化した1つまたは複数のアッセイ試薬であって、生体試料を補充するかさもなければ1つまたは複数の添加剤を膜ストリップへ送達するために用いられる、1つまたは複数のアッセイ試薬を含んでもよい。アッセイ試薬の例示的な例としては、緩衝剤(リン酸カリウム、HEPES、TRISなど)、洗浄剤(tweenなど)などが挙げられるが、他にも多数あって、これらに限定されるわけではない。ユーザは、生体サンプルまたはその一部を採取してもよく、添加剤を再水和させるためにそれを送達ポート885に加えてもよく、添加剤を生体サンプルと結合させて、全体的なアッセイまたは装置の性能を向上させることを可能にすることができる。任意選択で、装置は、アッセイ試薬送達ポートを含む。任意選択で、装置は、アッセイ試薬送達ポートを除外する。
【0123】
図18を引き続き参照すると、装置ハウジングは、ハウジング内に膜ストリップを収容しその向きを維持するための1つまたは複数の膜ストリップスロット890、892を含む下部ハウジング863をさらに含んでもよい。下部ハウジングに対する膜の位置を維持するための読み出し棚895であって、任意選択で、レバー870が作動したときに、レバー870の作動時の膜のゆがみを防止して膜ストリップを基質パッド875に強制的に接触させるための読み出し棚895が、存在してもよい。
【0124】
図18Eを参照すると、レバー870は、レバー870の作動時に、検査部位の読み出しをユーザがより容易に行うことができるように、1つまたは複数の検査部位822の上に静止することができる拡大領域871を含んでもよい。図17C及び図17Eから明らかなように、レバーの他の動きの回転量は、膜ストリップに対するサンプルパッドの接触が所望の回転レベルで達成されるように設計されてもよい。図17Cに示されるように、サンプルパッドと膜ストリップとの接触は、約90度である。図17Eに示すように、サンプルパッドと膜ストリップの接触は、約180度である。このように、レバーの回転は、基質パッドと膜ストリップの接触に影響を与えるように、0度から180度の間の任意の量であってもよい。
【0125】
本明細書で提供されるような装置又はプロセスは、液体生体試料中の標的分析物の存在又は不在を迅速に検出することができる。任意選択で、標的分析物は、液体生体試料の装置への適用から30分以内、任意選択で25分以内、任意選択で10分以内、任意選択で15分以内、任意選択で10分以内で、検出可能である。いくつかの態様では、液体生体試料の適用後に膜層に基質を適用する場合などで、液体生体試料は、基質の適用前に約10分~約20分で、任意選択で約15分で、膜層を通して移動させることが可能である。次いで、基質は、膜層に接触するように適用されてもよく、標的分析物の存在または不在の検出は、約1分~約10分に、任意選択で約5分間に、現像させられてもよく、その後、検出可能な標識が、視覚的または検出機械によって検出されてもよい。このように、本明細書で提供される装置及び方法は、ELISAに基づくシステム又は化学発光に基づくシステムなどの先行する方法よりも実質的により迅速である。
【0126】
本開示の様々な態様は、以下の非限定的な実施例によって説明される。実施例は、説明のためのものであり、本開示のいかなる実施に対しても制限するものではない。本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、変形及び修正を行うことができることが理解されよう。当技術分野で知られている同様の技術及び他の技術は、実施例を容易に翻訳する。本明細書に例示された試薬は市販されており、当業者であれば、そのような試薬がどこで入手できるかを容易に理解することができる。
【0127】
<事例>
サンプル装置は、実質的に図17Aに例示されているように形成され、高分子ハウジングに収容される。この高分子ハウジングは、サンプルパッド上に局在するサンプル適用ポート、サンプルパッドの上流領域上に位置する第2の試薬ポート、および膜ストリップ上のテスト部位へのアクセスを可能にするテスト部位ポートを含む。コンジュゲートパッドとメンブレンは、ザルトリウス社(ドイツ、ゲッティンゲン)製の硝酸セルロース(CN95)で作られる。サンプルパッドは、バインダー付きチョップドグラスであって、AHLSTROM-MUNKSJO社(フィンランド、ヘルシンキ)から材料8951として販売されている。吸収パッド、または廃棄パッドは、綿ファイバーで形成されたものであり、AHLSTROM-MUNKSJO社(フィンランド、ヘルシンキ)から材料222として販売されている。
【0128】
コンジュゲートパッド(25mmx5mm)は、ClaremontBio社(カリフォルニア州アップランド)のAutomated Lateral Flow Reagent Dispenser(ALFRD)を用いて形成されるものである。コーティング液の分注量は、ディスペンサーがニトロセルロース表面上を並進している間、シリンジポンプによって正確に制御される。分注量と移動速度の比率を0.291μL/mm~0.401μL/mmにすると、幅1mm程度のテストラインを形成することができる。テストストリップラインを形成するために、まず抗Fc抗体をニトロセルロース上の所望の場所にコーティングする。第1のコーティング層が乾燥した後、2番目に抗ヌクレオカプシド抗体が同じ場所にコーティングされる。例えば、まず、ヤギの抗マウスIgG(Fc特異的)抗体(Sigma Aldrich社のM4280-1ML)の2mg/mLが、0.291μL/mmの分注量/移動速度でCN95上にストライプされる。第1の層が乾燥した後、5%の二糖類を含むマウスMAb SARS-CoV/SARS-CoV-2 Nucleocapsid Antibody(SinoBio社40143-MM05)の1mg/mLを、第1の層の上にコーティングし、米国特許第10,433,540号の教えに従ってガラス化させる。
【0129】
サンプルパッド(18mmx5mm)は、PBS中の2%Casein,0.5%Tween-20で前処理され、装置を組み立てる前に乾燥させられる。廃棄パッドは21mmx5mmで、製造元から受け取ったものがそのまま使用される。装置は両面テープでコーティングされた透明なポリカーボネートの支持カード上に形成される。サンプルパッド、コンジュゲートパッド、および吸収パッドはテープ上に配置され、装置の所望の領域を露出させるカバーで覆われている。
【0130】
分析物を検出するために、リン酸緩衝生理食塩水中の1wt%BSA、0.1wt%Tween-20中のSARS-CoV-2(2019-nCoV)Sタンパク質(Sino Biological社、ペンシルベニア州チェスターブルック)を含むサンプル溶液を準備する。あるいは、PBS中0.1wt%BSA中の熱不活性化SARS-CoV-2(2019-nCoV)(VR1986HK,ATCC)を使用する。不活性ウイルスを用いる場合、TCID50 0.625x102/mlのウイルスロードを、2wt%zwittergent3-14(0.2g)および20mM DTT(20μl)を含む人工唾液(960μl)(Cat.#1700-0304,Pickering Laboratories社)で5分間消化してからサンプルパッドに適用する。
【0131】
金-Ab-HRP結合体は、Anti-Human SARS Coronavirus Nucleoprotein Mouse MAb(40143-MM05,Sino Biologicals社)またはAnti-Human SARS Coronavirus Nucleoprotein Rabbit Mab(40143-R001,Sino Biologicals社)を用いて形成される。抗体はまず、安定化のための任意のタンパク質添加物(例:BSA)、保存料としての塩(例:アジ化ナトリウム)、または保管緩衝液(例:PBS)中の塩を除去するために精製される。抗体は遠心分離法で精製し、緩衝液は10mMリン酸カリウム、pH7.4で置換し、濃度は1mg/mL以上とする。HRPに結合した抗体のサンプルは、粒子へのコンジュゲーション用に等量の未使用抗体と混合される。コンジュゲーション用の抗体は、100μg Ab/500μL OD=20 goldの割合で金と混合し、混合物を室温で30分間振盪または回転させながらインキュベートする。例として、Ab-HRP 50%/Ab50%混合物の場合、500μL OD=20 goldに50μgのAb-HRPと50μgのAb(未標識)を混合する。ブロッキング溶液(25mMホウ酸塩、10%BSA、pH8.0)を200μLブロッキングバッファー/500μLコンジュゲート溶液で加え、室温で30分間振盪または回転しながらインキュベーションする。コンジュゲート材料を遠心分離機で3600RCFで10分間回転させ、上清を除去する。ペレットは、1%BSAを含む25mMホウ酸塩、pH8.0、50:50mM FeSO4-EDTAおよび600mMトレハロース2糖を含むガラス化マトリックスに再懸濁され、その後、米国特許第10,433,540号の教示に従ってサンプルパッド上にガラス化されてもよい。
【0132】
テスト研究では、30μLのサンプルをカセットのサンプルポートにロードし、サンプルポートの上流にあるランニングバッファーポートに70μlのランニングバッファー(1wt%BSA,1wt%Tween-20 in PBS)をサンプルパッド上に追加する。アッセイを15分間進行させる。いくつかの例では、10μLの基質TMBMまたはTMBMX(Moss Bio社)をニトロセルロースのテストライン上に添加し、5分間現像させる。
【0133】
任意選択で、乾燥基質膜を膜ストリップに接触させることにより基質が適用される。乾燥基質パッドは、250mMトレハロース、2.5mM EDTA、0.5wt% PEG、62.5μl TMB(基質)ストック、399.4μl再構成バッファーおよび5μl 30wt%H2O2を組み合わせて形成されてもよい。再構成バッファーは、pH3.3の、0.4wt%ニトロフェリシアン化ナトリウムを含む0.03M acteatである。材料はボルテックスによって溶解され、米国特許第10,433,540号の教示に従ってニトロセルロース膜にガラス化される。基材を適用するために、ガラス化した基質膜を検査部位の上流の膜ストリップに接触させる。
【0134】
分離したものを使用した結果を図19に、TMBM基質を使用した結果を図20に示す。SARS-CoV-2 Sタンパク質がシステム内で1pg/ml未満まで検出可能であることが実証される。不活性化SARS-CoV-2を標的分析物として使用した結果を図21に示す。0.625x102/mlおよび0.625x100/mlでの希釈と陰性コントロールが検出可能となっていることが実証される。
【0135】
さらなる研究では、30μLのサンプルがカセットのサンプルポートにロードされる。サンプルパッドには、ランニングバッファー(BSA、リン酸塩緩衝液中のTween-20、ナトリウム塩がランニングバッファーになるような濃度で含まれる)がガラス化される。ランニングバッファー材料は、サンプルの添加により再水和される。アッセイを15分間進行させる。いくつかの例では、10μLの基質TMBMまたはTMBMX(Moss Bio社)をニトロセルロースのテストライン上に添加し、5分間現像させる。同様の結果が得られると予想される。
【0136】
同じ研究を繰り返したが、捕捉剤を単独で、あるいは検査部位でプレコートした抗IgG抗体の上に乗せて、結合を比較した。ニトロセルロース膜ストリップが、1.5mg/ml Human SARS Coronavirus Nucleoprotein/NP Ab(40144-MM05, Sino Biological社製)をのせ、標的部位に5%スクロースを添加したものを用いてストリップされる。SARS-CoV-2核タンパク質は、1000ng/mlからゼロ1wt% BSA/0.1wt% PBSTまでの10倍連続希釈で希釈される。30μlの各希釈液を、40nmのGNPに結合した50wt%R001 +50wt%R001-HRPの0.25μlとともにサンプルパッド上に加えた(パッシブコンジュゲーション)。サンプルポートにランニングバッファーとして1wt%BSA/1wt%PBSTを70μL添加した。テストは20分間実行される。その後、15μLのTMBMX(Moss)を検査部位の上流のマトリックスに添加した。5分後、得られたテスト装置の写真を撮影した結果、図22Aに示す結果が得られた。
【0137】
比較対象として、ニトロセルロースCN95に2mg/mlの抗Mouse IgG(Fc Specific)Ab(M4280,Sigma社製)を先にコーティングし、その上に1mg/mlのHuman SARS Coronavirus Nucleoprotein/NP Ab(40144-MM05,Sino Biological社製)をコーティングし、それぞれのコーティング層に5%のスクロースを添加して試験片を作成する。残りの試験は、上記と同様に行う。図22Bにその結果を示す。両試験とも、基質添加のないポジティブシグナルを示さない。抗体捕捉剤を添加する前にプレコートされた抗体を使用することで、検出下限が10倍近く減少した。
<さらなる事例>
1.迅速診断装置が、
ハウジングと、
前記ハウジング内の実質的に乾燥した膜層とを備え、
前記膜層が、
第1のマトリックスと、
第1の検査部位において、第1のマトリックス内または第1のマトリックス上にガラス化された捕捉剤と、
任意選択で、前記第1のマトリックス内にガラス化された少なくとも1つのレポーターと、を備える、迅速診断装置。
2.態様1に記載の装置において、実質的に乾燥した基質膜をさらに含み、前記基質膜は、前記基質膜の中または前記基質膜上にガラス化された基質を含み、前記基質膜は、ハウジングに関連付けられ、任意選択で、レバーまたは適当な他の装置上にあり、かつ、前記膜層を備える前記基質と接触するように構成される、装置。
3.態様1または2の装置において、前記膜層の近傍に配置され、任意選択で前記膜層と接触する、スクリーン層をさらに含み、当該スクリーン層が、
当該スクリーン層が液体生体試料と接触するときに、前記液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成された第2のマトリックスと、を含む、装置。
4.前記レポーターが存在し、サンプルパッドと第1の検査部位との間の第1のマトリックスにまたはその上にガラス化されている、態様1~3のいずれか1つに記載の装置。
5.前記捕捉剤が、前記第1の検査部位において前記第1のマトリックスに共有結合している、態様1~4のいずれか1つに記載の装置。
6.本明細書に提供される任意の態様の装置において、前記膜層の前記第1のマトリックスが、ニトロセルロース、コラーゲン、ポリカプロラクトン、乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、装置。
7.態様1~6のいずれか一態様に記載の装置において、前記捕捉剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む抗原である、装置。
8.態様7に記載の装置において、前記捕捉剤が、ウイルスコートタンパク質と、任意選択で、インフルエンザコートタンパク質と、任意選択で、コロナウイルスコートタンパク質と、任意選択で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質と、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質と、またはそれらの断片とを含む、装置。
9.態様1~6のいずれか一態様に記載の装置において、前記捕捉剤が、抗体であって、当該抗体が、ウイルスのコートタンパク質か、任意で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質か、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質かまたはそれらの断片のいずれかと選択的に結合する抗体である、装置。
10.態様1~9のいずれか一態様に記載の装置において、前記少なくとも1つのレポーターが、抗体か、任意選択で、IgGか、IgMか、またはそれらの組み合わせを含む、装置。
11.態様1~10のいずれか一態様に記載の装置において、前記少なくとも1つのレポーターが、検出可能な標識か、酵素か、またはその両方を含む、装置。
12.態様1~11のいずれか一態様に記載の装置において、前記レポーターが粒子に結合している、装置。
13.態様12に記載の装置において、前記粒子が、ナノ粒子か、任意選択で、ナノシェル粒子か、金コロイド粒子か、またはそれらの組み合わせである、装置。
14.態様13に記載の装置において、前記粒子が、酸化ケイ素コアおよび当該コアを被覆する金シェル層を含むナノシェル粒子であり、前記コアが半径を有し、シェル層が厚さを有し、任意で、前記半径と前記厚さの比が3:1~12:1である、装置。
15.態様12に記載の装置において、前記レポーターが、前記粒子および酵素、発光検出可能な標識、放射性同位元素検出可能な標識、またはそれらの組み合わせと結合している、装置。
16.態様12に記載の装置において、前記レポーターが、酵素と、任意選択で西洋わさびペルオキシダーゼまたははアルカリホスファターゼと共有結合または静電結合している、装置。
17.態様1~16に記載の装置において、前記レポーターが、酵素または検出可能な標識に結合していない第2の抗体をさらに含む、装置。
18.態様17に記載の装置において、前記レポーターの数と前記第2のレポーター抗体の数の比が、80:20~20:80、任意選択で、約50:50である、装置。
19.態様1~18のいずれか一態様に記載の装置において、前記ハウジングがサンプルポートを含む、装置。
20.態様19に記載の装置において、前記サンプルポートが、ガラス化されたアッセイ試薬をさらに含む、装置。
21.態様19に記載の装置において、前記サンプルポートが前記膜層の第1の端に近接して位置し、前記第1の標的部位が前記膜層の第2の端に近接して位置する、装置。
22.態様1~21のいずれか1つに記載の装置において、前記実質的に乾燥した基質膜をさらに含み、当該実質的に乾燥した基質膜は、前記サンプルポートと前記第1の試験部位との間の前記ハウジング内に配置される、装置。
23.態様22に記載の装置において、前記基質膜が、回転位置調整によって前記基質膜を前記膜層に接触させるように構成されたレバーと関連する、装置。
24.態様1~23のいずれか1つに記載の装置において、前記捕捉剤が、抗体、抗原又はアプタマーである、装置。
25.態様1~24のいずれか1つに記載の装置において、膜層とスクリーン層との間に配置された取り外し可能なセパレータ層をさらに含む、装置。
26.態様1~25のいずれかに記載の装置において、捕捉剤が、生体試料中の標的分析物に特異的なアプタマーである、装置。
27.態様26に記載の装置において、標的分析物が病原体を含む、装置。
28.態様27に記載の装置において、前記病原体が、ウイルス、細菌、または毒素を含む、装置。
29.態様27に記載の装置において、前記病原体がウイルス、任意選択でSARS-CoV-2またはインフルエンザウイルスである、装置。
30.態様26に記載の装置において、前記捕捉剤が、ヒトACE2タンパク質、ペプチド、またはその断片を含むアプタマーである、装置。
31.液体生体試料中の標的分析物の存在または非存在を決定する方法であって、
ハウジングと、前記ハウジングに関連付けられたガラス化膜層とを備える装置を提供することであって、当該ガラス化膜層は、第1のマトリックスと、第1の標的部位で前記第1のマトリックスに共有結合または静電結合した捕捉剤とを含む、装置を提供することと、
当該装置を液体生物試料と接触させることであって、前記液体生物試料がガラス化膜層またはその一部を再水和させ、それによって前記標的分析物が前記液体生物試料に存在する場合、前記標的分析物が前記捕捉剤とレポーターとを結合させる、接触させることと、
前記第1の標的部位における検出可能な信号の有無により、標的分析物の有無を検出することと、を含む、方法。
32.態様31に記載の方法において、前記再水和されたガラス化膜層中の液体が前記基質膜を再水和するように、前記再水和されたガラス化膜層を、基質膜中または基質膜上にガラス化されてなる基質膜に接触させることをさらに含む、方法。
33.態様31または32に記載の方法において、表面毛細管現象により、前記基質を前記基質膜から前記第1の標的部位に向かって移動させることをさらに含む、方法。
34.態様31~33のいずれか1つに記載の方法において、前記レポーターが前記ガラス化膜層中または前記ガラス化膜上にガラス化され、それによって、接触させる前記ステップが、前記レポーター剤が前記分析物を結合することができるように、前記少なくとも1つのレポーター剤を前記第1のマトリックスから放出する、方法。
35.態様31~34のいずれか1つに記載の方法において、前記レポーターが抗体である、方法。
36.態様35に記載の方法において、前記抗体が、検出可能な標識と、任意選択で酵素と、を含む方法。
37.態様35に記載の方法において、前記レポーターが、検出可能な標識に結合していない第2の抗体をさらに含む、方法。
38.態様37に記載の方法において、前記レポーターの数と前記第2のレポーター抗体の数の比が、80:20~20:80、任意選択で、約50:50である、方法。
39.態様31~34のいずれか一項に記載の方法において、前記レポーターが粒子に結合している、方法。
40.態様39に記載の方法において、前記粒子が、ナノ粒子か、任意選択で、ナノシェル粒子か、金コロイド粒子か、またはそれらの組み合わせである、方法。
41.態様40に記載の方法において、前記粒子が、酸化ケイ素コアおよび当該コアを被覆する金シェル層を含むナノシェル粒子であり、前記コアが半径を有し、前記シェル層が厚さを有し、任意選択で、前記半径と前記厚さの比が3:1~12:1である、方法。
42.態様39~41のいずれか一態様に記載の方法において、前記レポーターが、前記粒子と酵素、検出可能な標識、またはそれらの組み合わせに結合している、方法。
43.態様31~42のいずれか一態様に記載の方法において、前記レポーターが、酵素、蛍光体、またはその両方からなる群より選択される検出可能な標識に共有結合している、方法。
44.態様31~43のいずれか1つに記載の方法において、液体生体試料が、唾液、血液、血清、血漿、気管支肺胞洗浄液、喀痰、または鼻腔液を含む、方法。
45.態様31~44のいずれか一態様または本明細書に提供する他の任意の態様の方法において、前記膜層の前記第1のマトリックスが、ニトロセルロース、コラーゲン、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、乳酸・グリコール酸共重合体、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
46.態様31~45のいずれか一態様に記載の方法において、前記捕捉剤が、核酸、タンパク質、ペプチド、またはそれらの断片を含む、方法
47.態様31~46のいずれか一態様に記載の方法において、前記捕捉剤が、ウイルスコートタンパク質か、任意選択で、SARS-CoV-2スパイク(S)タンパク質、SARS-CoV-2ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、またはそれらの断片を含む、方法。
48.態様31~47のいずれか一態様に記載の方法において、前記少なくとも1つのレポーターが検出可能なラベルを含む、方法。
49.態様31~48のいずれか一態様に記載の方法において、標的分析物の存在または非存在を検出することが、
前記検出可能な標識のための基質と前記装置を接触させること;および
前記基質が前記検出可能な標識と結合したときに生じる信号を検出することを含む、方法。
50.態様31~34のいずれか一項に態様の方法において、前記信号が蛍光信号または色の変化を含む、方法。
51.態様31~34のいずれか一態様に記載の方法において、前記装置が、前記膜層上に配置されたスクリーン層をさらに含み、当該スクリーン層が、前記液体生体試料中に存在する汚染物質を実質的に捕捉するように構成される、方法。
52.態様31~34のいずれか一態様に記載の方法において、前記標的分析物の有無が約20分以内に検出される、方法。
【0138】
本明細書に記載された装置および方法は、現在、例示的な態様の代表であり、本発明の範囲を制限することを意図したものではない。そこでの変更および他の使用は、当業者には生じるであろう。そのような変更および他の使用は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0139】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的のみのものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形“a”、“an”、及び“the”は、内容が明確に示していない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形を含むように意図されている。「または」は「および/または」を意味する。本明細書で使用される場合、用語「および/または」は、関連する列挙された項目の1つ又は複数の任意の及び全ての組合せを含む。本明細書で使用される場合、用語「備える」(“comprise”)及び/又は「備えている」(“comprising”)、又は「含む」(“includes”)及び/又は「含んでいる」(“including”)は、述べられた特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は成分の存在を規定するが、1つまたは複数の他の特徴、領域、整数、ステップ、操作、要素、成分、並びにそれらの群の存在又は追加を排除しないことが更に理解されるであろう。用語「またはその組合せ」は、前述の要素の少なくとも1つを含む組合せを意味する。
【0140】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野における通常の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と整合する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本明細書において明示的にそのように定義されない限り、理想化された意味又は過度に形式的な意味で解釈されないことがさらに理解されよう。
【0141】
本明細書に示され、説明されたものに加えて、本発明の様々な修正は、上記の説明の当業者には明らかであろう。そのような変更も、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることが意図される。
【0142】
本明細書で言及された特許、刊行物、および出願は、本発明が属する技術分野の当業者のレベルを示すものである。
これらの特許、刊行物、および出願は、個々の特許、刊行物、または出願が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれるのと同じ程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
前述の説明は、本発明の特定の実施形態を例示するものであり、その実施を制限することを意図するものではない。
以下の特許請求の範囲(そのすべての等価物を含む)は、本発明の範囲を定義することを意図している。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図19
図20
図21
図22
【国際調査報告】