(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】研磨組成物およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230510BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20230510BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20230510BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230510BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560143
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 US2021024592
(87)【国際公開番号】W WO2021202342
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクドノー、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ホアン、ティン-カイ
(72)【発明者】
【氏名】リャン、イェンナン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シュー-ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ リン、スン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン、リーチン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
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(57)【要約】
本開示は、少なくとも1種の研磨剤と、ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、少なくとも1種の錯化剤と、少なくとも1種のアゾール化合物である少なくとも1種の第2腐食防止剤と、所望によりpH調整剤と、を含む研磨組成物を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の研磨剤と、
ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、
少なくとも1種の錯化剤と、
少なくとも1種のアゾール化合物を含む少なくとも1種の第2腐食防止剤と、
所望により少なくとも1種のpH調整剤と、
を含む研磨組成物であって、
前記研磨組成物中の前記少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、約0.01ミクロン~約500ミクロンの平均粒子サイズを有する固体Cu
2O粉末を約1:2500のCu
2O:研磨組成物の重量比で前記研磨組成物に25℃で2分間撹拌しながら浸漬させて混合物を形成し、前記混合物を遠心分離して上澄みを形成し、前記上澄み中に溶解したCuイオンの量をICP-MSによって測定した場合、前記研磨組成物が前記固体Cu
2O粉末由来の前記Cu
2Oを約3重量%~10重量%溶解させる量である、
研磨組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の研磨剤が、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、またはジルコニアの共形成物(co-formed product)、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の研磨剤が、前記組成物の約0.01重量%~約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、ホスフェート基を含み、アルキルホスフェート、芳香族ホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスフェート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェートの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、2~16個のエチレンオキシド基によって前記ホスフェート基から隔てられた8~22個の炭素を有するアルキル鎖を含む、請求項4に記載の研磨組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、ホスホネート基を含み、アルキルホスホネート、芳香族ホスホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスホネート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスホネートの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、前記組成物の約1ppm~2000ppmである、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、約150g/mol~約1100g/molの分子量を有する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の錯化剤が、有機酸、アミン、アンモニア、第四級アンモニウム化合物、無機酸、これらの塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の錯化剤が、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、アンモニア、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアントールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エチルリン酸、シアノエチルリン酸、フェニルリン酸、ビニルリン酸、ポリ(ビニルホスホン酸)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、N,N,N’N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、n-ヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、これらの塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の錯化剤が、前記組成物の約0.01重量%~約20重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の第2腐食防止剤が、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ジクロロベンゾトリアゾール、クロロメチルベンゾトリアゾール、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、アデニン、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-5-エチル-1,3,4-チアダゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項13】
前記少なくとも1種の第2腐食防止剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の研磨組成物。
【請求項14】
少なくとも1種の研磨剤と、
ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、
少なくとも1種の錯化剤と、
少なくとも1種のアゾール化合物を含む少なくとも1種の第2腐食防止剤と、
所望により少なくとも1種のpH調整剤と、
を含む研磨組成物であって、
前記研磨組成物中の前記少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、4cm×4cmの銅を含有するパターニングされたクーポンを50gの前記研磨組成物に45℃で5分間浸漬させて混合物を形成し、前記混合物中のCu種の量をICP-MSによって測定した場合、前記Cu種の量が約1ppm~約10ppmとなる量である、
研磨組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の研磨剤が、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、またはジルコニアの共形成物(co-formed product)、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項16】
前記少なくとも1種の研磨剤が、前記組成物の約0.01重量%~約50重量%の量で存在する、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項17】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、ホスホネート基を含み、アルキルホスホネート、芳香族ホスホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスホネート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスホネートの少なくとも1種を含む、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項18】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、0~16個のエチレンオキシド基によって前記ホスフェート基から隔てられた8~22個の炭素を有するアルキル鎖を含む、請求項17に記載の研磨組成物。
【請求項19】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、ホスホネート基を含み、アルキルホスホネート、芳香族ホスホネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスホネート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスホネートの少なくとも1種を含む、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、前記組成物の約1ppm~2000ppmである、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の第1腐食防止剤が、約150g/mol~約1100g/molの分子量を有する、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種の錯化剤が、有機酸、アミン、アンモニア、第四級アンモニウム化合物、無機酸、これらの塩、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の錯化剤が、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、アンモニア、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアントールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エチルリン酸、シアノエチルリン酸、フェニルリン酸、ビニルリン酸、ポリ(ビニルホスホン酸)、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリ(メチルホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタキス(メチルホスホン酸)、N,N,N’N’-エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、n-ヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、フェニルホスホン酸、これらの塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項24】
前記少なくとも1種の錯化剤が、前記組成物の約0.01重量%~約20重量%の量で存在する、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の第2腐食防止剤が、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、エチルベンゾトリアゾール、プロピルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、ペンチルベンゾトリアゾール、ヘキシルベンゾトリアゾール、ジメチルベンゾトリアゾール、クロロベンゾトリアゾール、ジクロロベンゾトリアゾール、クロロメチルベンゾトリアゾール、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、アデニン、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-5-エチル-1,3,4-チアダゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項26】
前記少なくとも1種の第2腐食防止剤が、前記組成物の約0.0001重量%~約5重量%の量で存在する、請求項14に記載の研磨組成物。
【請求項27】
基板の表面上の銅を請求項1に記載の研磨組成物と接触させることを含む、基板を研磨する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年3月31日に出願された米国仮出願第63/002,537号に基づく優先権を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
化学的機械研磨(CMP)として知られるプロセスでは、研磨パッドと研磨組成物を使用して、半導体ウェハ上のさまざまな金属層または非金属層を研磨することを含む。銅は、半導体の製造において相互接続を形成するために一般に使用される材料である。銅インレイド(copper inlaid)構造がたとえばダマシンプロセスによって形成されると、絶縁された銅配線が銅およびインレイド配線間のバリア金属を除去する研磨プロセスによって露出される。銅バルク(copper bulk)層および銅バリア層CMPは、銅層とバリア層の研磨を含む。たとえば全体的な欠陥の数が少ない良好なウェハ特性を維持しつつ、スループットを向上させるために高い材料除去レートで研磨を実行することが望まれている。
【0003】
典型的な銅バルクCMPプロセスは、一般に2つのプロセス工程(すなわち、Cuオーバーバーデン(Cu overburden)の大部分を高速で除去する初期Cuバルク工程と、後続のCuオーバーバーデンの残りを除去しバリア層上で停止するより攻撃性がより小さいクリアリング(clearing)工程)を含む。まず、初期Cuバルク研磨工程では、電気めっきされた銅オーバーバーデン(テクノロジーノードに応じて厚さ最大2μm)が付与トポグラフィ(deposition topography)が実質的に平坦化されるまで比較的大きいダウンフォースで急速に研磨されるが、幾らかの銅オーバーバーデンは残ったままにする。続いて、第1工程で残った銅オーバーバーデンはより小さいダウンフォースで研磨され、研磨はバリア層上で停止する。全体的な目標は欠陥(たとえば、銅ディッシング、スクラッチング、有機残留物など)を少なくしつつ、高いスループットと平坦化効率でバリア材料から全ての銅を除去することにある。
【0004】
上記の第2研磨工程ではディッシングと呼ばれる現象が発生し、相互接続材料(たとえば、銅)の上面のレベルが低下する。これは、第2研磨工程の最後のほう(すなわち、バリア層上での停止)に行われる研磨プロセスの際にCu相互接続材料を除去し過ぎることに起因すると考えられる。過研磨(overpolishing)によって、ウェハ表面全体上の全てのCu残留物が除去されてしまう。過研磨の際、2つの要因が最終的なディッシングの度合いに影響する。第1の要因はCu線に対する継続的な機械的攻撃である。これは、研磨パッドがフィーチャ周辺に適合し(conform)凹んだCu線と機械的に接触しながら、過研磨の際にそれらがさらに研磨されてしまう場合に生じる。第2の要因は、過研磨の際に研磨組成物と接触し続けることによるCu線の継続的な化学エッチングである。ディッシングは配線の断面積を減少させ、それにより配線抵抗の望ましくない増加を引き起こす。ディッシングはまた半導体デバイスの表面の平坦性を損なう。それにより、半導体デバイスにおいて多層(multi-filmed)配線の形成ができるようになる前に、トポグラフィの不均衡を修正するために後続の銅バリアCMP工程に負担をかけることになる。
【発明の概要】
【0005】
本概要は、以下詳細な説明においてさらに説明する概念の選択について紹介するために提供される。本概要は、請求項に記載の主題の重要なまたは本質的な特徴を特定することを意図するものではないし、請求項に記載の主題の範囲を限定することを目的として使用されることを意図するものでもない。
【0006】
一態様では、本開示は、少なくとも1種の研磨剤と、ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、少なくとも1種の錯化剤と、少なくとも1種のアゾール化合物を含む少なくとも1種の第2腐食防止剤と、所望により少なくとも1種のpH調整剤と、を含む研磨組成物であって、研磨組成物中の少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、約0.01ミクロン~約500ミクロンの平均粒子サイズを有する固体Cu2O粉末を約1:2500のCu2O:研磨組成物の重量比で研磨組成物に25℃で2分間浸漬させて混合物を形成し、混合物を遠心分離して上澄みを形成し、上澄み中に溶解したCuイオンの量をICP-MSによって測定した場合、研磨組成物が固体Cu2O粉末由来のCu2Oを約3重量%~10重量%溶解させる量である、研磨組成物を特徴とする。
【0007】
別の態様では、本開示は、少なくとも1種の研磨剤と、ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、少なくとも1種の錯化剤と、少なくとも1種のアゾール化合物を含む少なくとも1種の第2腐食防止剤と、を含む研磨組成物であって、研磨組成物中の少なくとも1種の第1腐食防止剤の量が、4cm×4cmの銅を含有するパターニングされたクーポンを50gの研磨組成物に45℃で5分間浸漬させて混合物を形成し、混合物中のCu種の量をICP-MSによって測定した場合、Cu種の量が約1ppm~約10ppmとなる量である、研磨組成物を特徴とする。
【0008】
別の態様では、本開示は、基板の表面上の銅を本明細書に記載の研磨組成物と接触させることを含む、基板を研磨する方法を特徴とする。
【0009】
請求項に記載の主題の他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、種々のPOU濃度で4種の異なる第1腐食防止剤をそれぞれ含有する研磨組成物によるCu
2Oの溶解を示すプロットである。
【
図2】
図2は、種々のPOU濃度で4種の異なる第1腐食防止剤をそれぞれ含有する研磨組成物によるCuOの溶解を示すプロットである。
【
図3】
図3は、第1腐食防止剤を含有する研磨組成物によってCuTaTaNBDパターンクーポンを処理した後、回収しICPによって測定した液体サンプル中のCuイオン濃度を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で定義される場合、特に断りがない限り、表示される全ての百分率は組成物の総重量に対する重量%であると理解されたい。本明細書で言及される「溶媒」という用語は、特に断りがない限り、単一の溶媒または2種以上(たとえば、3種または4種)の溶媒の組み合わせを指す。本開示において、「ppm」は組成物の総重量に対して「100万分の1」を意味し、「ppb」は組成物の総重量に対して「10億分の1」を意味する。
【0012】
CMPプロセスの目標はバリア層からすべての銅を除去しつつも、インレイド銅配線のディッシングを大幅に抑え、欠陥がほとんどなく、表面粗さが低い状態を実現することである。したがって、研磨組成物は、銅の除去を容易にするが、望ましくない重度のディッシングおよび/または腐食(たとえば、ガルバニック腐食)を引き起こすほどには銅を除去しないという、慎重なバランスを取らなければならない。この目的のために、腐食防止剤として機能する化合物がCMP組成物に添加されてきた。この手法はある程度の成功を収めているが、使用する腐食防止剤の濃度が高すぎるとウェハ上に残る銅の残留物が問題になることがある。
【0013】
研磨組成物中には酸化剤が存在するため、通常は研磨プロセス中に露出した銅の表面に銅酸化物が形成される。銅を効果的に(すなわち、許容可能なレートで、欠陥を最小限に抑える、など)研磨するためには、これらの銅酸化物の溶解性/除去性を調節する添加剤が非常に重要である。突き詰めると、効果的な研磨組成物とは、一般に、制御された化学的不動態膜形成(たとえば、主にCuO/Cu2O不動態膜)と機械的な膜除去との望ましいバランスを取って、腐食に対する十分なCu保護だけでなく十分なCu除去レートも達成することができる。スラリー中の腐食防止剤はスラリーの酸化剤の攻撃性を調整するのに有用であり得、錯化剤と組み合わせて機能して表面不動態膜の特性(機械的完全性、多孔性、厚さ、および溶解性など)を制御し得る。異なる分類の銅腐食防止剤は、(たとえば、孤立電子対および/またはπ電子を介しての)銅に対する親和性が異なり、銅の保護メカニズムが異なり、拡散特性と作用する時間スケールが異なり、温度依存性が異なり、Cuに結合すると湿潤性と溶解性も異なる。そのため、複数のCu腐食防止剤を組み合わせると、単一の腐食防止剤を使用する場合に比べて利点があることが多い。一般に、腐食防止剤は適切な量で使用されると研磨しやすくなるが、適切な量で使用されないと研磨に悪影響を及ぼす(たとえば、少なすぎると過度の腐食につながり、多すぎると銅の残留物が発生するおよび/またはCuの研磨レートが許容できないほど低くなる)。
【0014】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、使用する腐食防止剤の量を最小限に抑えつつ、ディッシングおよび腐食(すなわち、ガルバニック腐食)を最小限に抑えることができる。これにより、本開示の組成物を使用すると、高い腐食防止剤量による悪影響(すなわち、銅の除去レートの低下および/または残留物欠陥)を回避または最小限に抑えることができる。
【0015】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、少なくとも1種の研磨剤と、ホスフェート基またはホスホネート基を含む少なくとも1種の第1腐食防止剤と、少なくとも1種の錯化剤と、少なくとも1種のアゾール化合物を含む少なくとも1種の第2腐食防止剤と、所望により少なくとも1種のpH調整剤と、を含むことができる。所望により、動的表面張力低減剤が本明細書に記載の研磨組成物に含まれてもよい。
【0016】
1または複数の実施形態では、本開示に係る研磨組成物は、約0.01重量%~約50重量%の少なくとも1種の研磨剤と、約0重量%~約1重量%の少なくとも1種のpH調整剤と、約0.0001重量%~約0.2重量%の少なくとも1種の第1腐食防止剤と、約0.01重量%~約20重量%の少なくとも1種の錯化剤と、約0.0001重量%~約5重量%の少なくとも1種の第2腐食防止剤と、残りの重量%(たとえば、約20重量%~約99重量%)の溶媒(たとえば、脱イオン水)と、を含むことができる。
【0017】
1または複数の実施形態では、本開示は、使用前に2倍まで、または4倍まで、または6倍まで、または8倍まで、または10倍まで、または15倍まで、または20倍まで水で希釈することができる濃縮研磨組成物を提供する。他の実施形態では、本開示は、上記の研磨組成物と、水と、所望により酸化剤と、を含む、銅含有基板上で使用するためのユースポイント(point-of-use)(POU)研磨組成物を提供する。
【0018】
1または複数の実施形態では、POU研磨組成物は、約0.01重量%~約25重量%の少なくとも1種の研磨剤と、約0重量%~約0.5重量%の少なくとも1種のpH調整剤と、約0.0001重量%~約0.01重量%の少なくとも1種の第1腐食防止剤と、約0.01重量%~約10重量%の少なくとも1種の錯化剤と、約0.0001重量%~約2.5重量%の少なくとも1種の第2腐食防止剤と、残りの重量%(たとえば、約50重量%~約99重量%)の溶媒(たとえば、脱イオン水)と、を含むことができる。
【0019】
1または複数の実施形態では、濃縮研磨組成物は、約0.01重量%~約50重量%の少なくとも1種の研磨剤と、約0重量%~約1重量%の少なくとも1種のpH調整剤と、約0.002重量%~約0.2重量%の少なくとも1種の第1腐食防止剤と、約0.2重量%~約20重量%の少なくとも1種の錯化剤と、約0.002重量%~約5重量%の少なくとも1種の第2腐食防止剤と、残りの重量%(たとえば、約20重量%~約99重量%)の溶媒(たとえば、脱イオン水)と、を含むことができる。
【0020】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)の研磨剤は、カチオン性研磨剤、実質的に中性の研磨剤、およびアニオン性研磨剤からなる群より選択される。1または複数の実施形態では、少なくとも1種の研磨剤は、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、これらの共形成物(co-formed product)(すなわち、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、またはジルコニアの共形成物)、被覆研磨剤、表面改質研磨剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の研磨剤はセリアを含まない。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の研磨剤は高純度であり、約100ppm未満のアルコール、約100ppm未満のアンモニア、および約100ppb未満のナトリウムカチオンなどのアルカリカチオンを有し得る。研磨剤は、POU研磨組成物の総重量に対して、約0.01%~約12%(たとえば、約0.5%~約10%)、またはその任意のサブレンジの量で存在することができる。
【0021】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種の研磨剤は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.01重量%(たとえば、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約1.2重量%、少なくとも約1.5重量%、または少なくとも約2重量%)~最大約50重量%(たとえば、最大約45重量%、最大約40重量%、最大約35重量%、最大約30重量%、最大約25重量%、最大約20重量%、最大約15重量%、最大約12重量%、最大約10重量%、または最大約5重量%)の量で存在する。
【0022】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、必要に応じてpHを所望の値に調整するために、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)のpH調整剤を所望により含むことができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種のpH調整剤は、硝酸、塩酸、硫酸、プロピオン酸、クエン酸、マロン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミンテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド、コリンヒドロキシド、およびこれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。
【0023】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種のpH調整剤は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.01重量%(たとえば、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.03重量%、少なくとも約0.04重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.06重量%、少なくとも約0.07重量%、少なくとも約0.08重量%、少なくとも約0.09重量%、または少なくとも約0.1重量%)~最大約1重量%(たとえば、最大約0.9重量%、最大約0.8重量%、最大約0.7重量%、最大約0.6重量%、最大約0.5重量%、最大約0.4重量%、最大約0.3重量%、最大約0.2重量%、最大約0.1重量%、最大約0.08重量%、最大約0.06重量%、または最大約0.05重量%)の量で存在する。
【0024】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物のpH値は、少なくとも約6(たとえば、少なくとも約6.5、少なくとも約7、少なくとも約7.5、少なくとも約8、少なくとも約8.5、少なくとも約9、少なくとも約9.5、少なくとも約10、少なくとも約10.5、少なくとも約11、少なくとも約11.5、または少なくとも約12)~最大約14(たとえば、最大約13.5、最大約13、最大約12.5、最大約12、最大約11.5、最大約11、少なくとも約10.5、最大約10、最大約9.5、最大約9、最大約8.5、または最大約8)の範囲であり得る。pHが6未満の研磨組成物は、銅の除去レートと腐食を著しく増加させ、pHが14を超える研磨組成物は、懸濁させた研磨剤の安定性に影響を与える可能性があり、粗さを大幅に増加させ、そのような組成物によって研磨された膜の全体的な品質を大幅に低下させ得ると考えられるが、理論に拘束されることを望むものではない。所望のpHを得るために、本明細書に記載の研磨組成物中の各成分の相対的な濃度を調整してもよい。
【0025】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)の第1腐食防止剤は、ホスフェート基またはホスホネート基を含む。ホスフェート基またはホスホネート基を含む第1腐食防止剤は、銅表面を不動態化し、研磨スラリーの浸透性がより低い不動態膜(たとえば、Cu2O膜またはCuO膜)を形成することにより、研磨スラリー中の腐食性成分との相互作用によって引き起こされる潜在的なディッシングと腐食から銅を保護することができると考えられるが、理論に拘束されない。しかしながら、本発明者らは意外なことに、ホスフェート基またはホスホネ-ト基を含む腐食防止剤の銅酸化物を効果的に不動態化および不溶化する能力における大きな可変性に加えて、研磨プロセス中に腐食防止剤として機能する能力においても大きな可変性があることを見出した。たとえば、腐食防止剤中のホスフェート基またはホスホネート基に結合した有機基が大きくなると、研磨組成物中で使用される腐食防止剤の量が最小限に保たれない限り、腐食防止剤の使用は一般的に望ましくない高不溶性の銅表面不働態層をもたらし、その結果、銅の除去レートが低く、許容できない銅残留物および/または有機残留物が研磨された表面上に残ると考えられるが、理論に拘束されることを望むものではない。対照的に、比較的小さな有機基がホスフェート基またはホスホネート基に結合した腐食防止剤は、銅の腐食を防止する効果が相対的に低く、少量使用する場合では表面からの銅の除去が制御できない可能性があると考えられるが、理論に拘束されることを望むものではない。言い換えれば、これらの腐食防止剤は、利用可能な銅表面部位について銅表面を飽和させスラリー中に存在する他の腐食防止剤と競合しないように大量に使用されない限り、十分な腐食防止性(すなわち、ディッシングの防止とガルバニック腐食の防止)を提供することができない場合がある。要求される多量の腐食防止剤は研磨組成物の安定性に影響を及ぼすとともに、研磨組成物の全体的なコストを増加させ得る。上記の考慮すべき事項の慎重なバランスに基づいて、研磨された表面上に銅残留物および/または有機残留物を残すことなくディッシングの防止とガルバニック腐食の防止を提供するように、特定のホスフェートまたはホスホネ―ト含有腐食防止剤の効果的な量の調整することができる。
【0026】
1または複数の実施形態では、研磨組成物中の銅酸化物(たとえば、Cu2OまたはCuO)の溶解度は、銅を含む基板表面を研磨する際の研磨組成物の有効性を示す代替の測定値となり得る。たとえば、いくつかの実施形態では、約1:2500のCu2O:研磨組成物の重量比を用いた際にインキュベーション期間(incubation period)後の研磨組成物中に溶解した総Cu2Oが約3重量%~約10重量%であると、当該研磨組成物は銅を含む基板表面を研磨する際に効果的に作用すると言える。いくつかの実施形態では、約1:5000のCuO:研磨組成物の比を用いた際にインキュベーション期間後の研磨スラリー組成物中に溶解した総CuOが約0.25重量%~約1.75重量%であると、当該研磨組成物は銅を含む基板表面を研磨する際に効果的に作用すると言える。
【0027】
1または複数の実施形態では、溶解したCu2Oまたは溶解したCuOは、(1)銅酸化物(たとえば、Cu2OまたはCuO)粉末を25℃で撹拌しながら研磨組成物サンプルに分散または浸漬させて混合物を形成すること、(2)混合物を(たとえば、10000RPMで40分間)遠心分離すること、および(3)上澄み中のCuイオンの濃度を、たとえば誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を使用することによって測定することによって、測定することができる。1または複数の実施形態では、銅酸化物粉末は、少なくとも約0.01ミクロン(たとえば、少なくとも約0.05ミクロン、少なくとも約0.1ミクロン、少なくとも約0.5ミクロン、および少なくとも約1ミクロン)および最大約500ミクロン(たとえば、最大約250ミクロン、最大約100ミクロン、最大約50ミクロン、最大約25ミクロン、または最大約10ミクロン)、およびそれらの間の任意のサブレンジの平均粒子サイズを有することができる。1または複数の実施形態では、銅酸化物(たとえば、Cu2OまたはCuO)を研磨組成物に分散または浸漬させることは、混合スラリー(たとえば、CuO粉末と研磨組成物)を含有する容器を一定時間撹拌することを含んでいてもよい。たとえば、撹拌は、混合スラリーを含有する容器を超音波浴中に漬けることによって行ってもよいし、ボルテックスミキサーを使用することによって行ってもよいし、撹拌プレートを使用することによって行ってもよいし、実験室ローテーターを使用することによって行ってもよいし、任意の他の公知の同等な方法によって行ってもよい。1または複数の実施形態では、混合スラリーを含有する容器を約2~5分間撹拌してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、静的エッチング試験(static etching test)は、パターニングされたクーポンを研磨組成物中でインキュベートし、インキュベーション後にICP-MSによって溶解および分散した銅を測定することによって使用できる。いくつかの実施形態では、溶解度試験は、4cm×4cmの銅を含有するパターニングされたクーポンを50gの研磨組成物中に45℃で5分間配置し、次いで、研磨組成物中に溶解および分散した銅を測定することを含むことができる。1または複数の実施形態では、銅を含有するパターニングされたクーポンは、初期Cuバルク研磨工程を経て、Cuバルク研磨工程のクリアリング、エンドポイント、および過研磨部分の完了によって銅オーバーバーデンが実質的に除去されたが、任意のバリア研磨工程の前である(すなわち、Ta/TaNバリア層およびRu/TaNバリア層が未だ無傷であり、Cuバルク研磨プロセスの一部としての偶発的な侵食を除いて除去されていない)CuTaTaNBDおよびCuRuTaNTEOS MIT 854マスク200mmパターンウェハからなる群より選択される少なくとも1種であり得る。1または複数の実施形態では、パターニングされたクーポンの溶解度試験において溶解および分散される銅の量は、研磨組成物の少なくとも約1ppm(たとえば、少なくとも約2ppm、少なくとも約3ppm、少なくとも約4ppm、少なくとも約5ppm)および多くとも約10ppm(たとえば、多くとも約9ppm、多くとも約8ppm、多くとも約7ppm、多くとも約6ppm)であり得る。
【0029】
1または複数の実施形態では、ホスフェート基を含む第1腐食防止剤は、アルキルホスフェート、芳香族ホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスフェート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェートの少なくとも1種から選択される。1または複数の実施形態では、ホスフェート基を含む第1腐食防止剤は、少なくとも8個(たとえば、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、または少なくとも20個)~最大22個(たとえば、最大20個、最大18個、最大16個、最大14個、最大12個、または最大10個)の炭素を有するアルキル鎖(たとえば、直鎖状、分岐状、または環状)を含む。1または複数の実施形態では、アルキル鎖は、少なくとも0個(たとえば、少なくとも2個、少なくとも4個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、または少なくとも12個)~最大16個(たとえば、最大14個、最大12個、最大10個、最大8個、最大6個、または最大4個)のエチレンオキシド基によってホスフェート基から隔てられ得る。1または複数の実施形態では、ホスフェート基を含む第1腐食防止剤は、ホスフェート基に直接結合している8~22個の炭素を有するアルキル鎖を含む(すなわち、エチレンオキシド基を含まない)。1または複数の実施形態では、第1腐食防止剤は、ホスホネート基を含む。1または複数の実施形態では、ホスホネート基を含む第1腐食防止剤は、アルキルホスホネート(たとえば、直鎖状または分岐状のC1-C10アルキル基または環状のC3-C10アルキル基を含む)、芳香族ホスホネート(たとえば、ベンジルホスホネ―トおよびフェニルホスホネ―ト)、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンアリールアルキルエーテルホスホネート、ポリオキシエチレンノニルアリールエーテルホスホネート、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスホネート、ならびにこれらの置換体の少なくとも1種から選択される。
【0030】
1または複数の実施形態では、第1腐食防止剤の量は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.0001重量%または1ppm(たとえば、少なくとも約0.00025重量%または2.5ppm、少なくとも約0.0005重量%または5ppm、少なくとも約0.001重量%または10ppm、少なくとも約0.0025重量%または25ppm、少なくとも約0.005重量%または50ppm、または少なくとも約0.01重量%または100ppm)~最大約0.2重量%または2000ppm(たとえば、最大約0.15重量%または1500ppm、最大約0.1重量%または1000ppm、最大約0.05重量%または500ppm、最大約0.02重量%または200ppm、最大約0.01重量%または100ppm、最大約0.0075重量%または75ppm、最大約0.005重量%または50ppm、最大約0.0025重量%または25ppm、最大約0.001重量%または10ppm、最大約0.00075重量%または7.5ppm、または最大約0.0005重量%または5ppm)である。
【0031】
1または複数の実施形態では、第1腐食防止剤は、少なくとも約150g/mol(たとえば、少なくとも約200g/mol、少なくとも約250g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約350g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約450g/mol、少なくとも約500g/mol、または少なくとも約550g/mol)~最大約1100g/mol(たとえば、最大約1050g/mol、最大約1000g/mol、最大約950g/mol、最大約900g/mol、最大約850g/mol、最大約800g/mol、最大約750g/mol、最大約700g/mol、最大約650g/mol、または最大約600g/mol)の分子量を有する。
【0032】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)の錯化剤は、有機酸、アミン(たとえば、ポリアミン)、アンモニア、第四級アンモニウム化合物、無機酸、これらの塩、およびそれらの混合物からなる群より選択される。1または複数の実施形態では、有機酸は、アミノ酸、カルボン酸、有機スルホン酸、および有機ホスホン酸からなる群より選択されてもよい。
【0033】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種の錯化剤は、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、過酢酸、コハク酸、乳酸、アミノ酢酸、フェノキシ酢酸、ビシン、ジグリコール酸、グリセリン酸、トリシン、アラニン、ヒスチジン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リシン、チロシン、安息香酸、アンモニア、1,2-エタンジスルホン酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸、アミノメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ヒドロキシルアミン-O-スルホン酸、メタンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、ポリ(4-スチレンスルホン酸)、ポリアントールスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、これらの塩、およびそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0034】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種の錯化剤は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.01重量%(たとえば、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、少なくとも約4重量%、少なくとも約5重量%、少なくとも約6重量%、少なくとも約8重量%、少なくとも約10重量%、または少なくとも約15重量%)~最大20重量%(たとえば、最大約18重量%、最大約16重量%、最大約15重量%、最大約14重量%、最大約12重量%、最大約10重量%、最大約8重量%、最大約6重量%、最大約5重量%、最大約4重量%、最大約2重量%、または最大約1重量%)の量で存在する。
【0035】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)の第2腐食防止剤は、少なくとも1種のアゾール化合物、たとえば、置換もしくは無置換のトリアゾール(たとえば、ベンゾトリアゾール)、置換もしくは無置換のテトラゾール、置換もしくは無置換のイミダゾール(たとえば、プリン)、置換もしくは無置換のチアジアゾール、または置換もしくは無置換のピラゾールを含むことができる。たとえば、少なくとも1種の第2腐食防止剤は、テトラゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール(1-メチルベンゾトリアゾール、4-メチルベンゾトリアゾール、および5-メチルベンゾトリアゾール等)、エチルベンゾトリアゾール(1-エチルベンゾトリアゾール等)、プロピルベンゾトリアゾール(1-プロピルベンゾトリアゾール等)、ブチルベンゾトリアゾール(1-ブチルベンゾトリアゾールおよび5-ブチルベンゾトリアゾール等)、ペンチルベンゾトリアゾール(1-ペンチルベンゾトリアゾール等)、ヘキシルベンゾトリアゾール(1-ブチルベンゾトリアゾールおよび5-ブチルベンゾトリアゾール等)、ジメチルベンゾトリアゾール(5,6-ジメチルベンゾトリアゾール等)、クロロベンゾトリアゾール(5-クロロベンゾトリアゾール等)、ジクロロベンゾトリアゾール(5,6-ジクロロベンゾトリアゾール等)、クロロメチルベンゾトリアゾール(1-(クロロメチル)-1-H-ベンゾトリアゾール等)、クロロエチルベンゾトリアゾール、フェニルベンゾトリアゾール、ベンジルベンゾトリアゾール、アミノトリアゾール、アミノベンズイミダゾール、ピラゾール、イミダゾール、アミノテトラゾール、アデニン、ベンズイミダゾール、チアベンダゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-アミノベンズイミダゾール、2-アミノ-5-エチル-1,3,4-チアジアゾール、3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-アミノ-4H-1,2,4-トリアゾール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され得る。
【0036】
1または複数の実施形態では、少なくとも1種の第2腐食防止剤は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.0001重量%(たとえば、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、または少なくとも約2重量%)~最大約5重量%(たとえば、最大約4重量%、最大約3重量%、最大約2重量%、最大約1重量%、最大約0.8重量%、最大約0.6重量%、最大約0.5重量%、最大約0.4重量%、最大約0.2重量%、または最大約0.1重量%)の量で存在する。
【0037】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、少なくとも1種(たとえば、2種または3種)の溶媒を含むことができる。適切な溶媒としては、水および有機溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態では、少なくとも1種の溶媒は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約20重量%(たとえば、少なくとも約30重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、または少なくとも約98重量%)~最大約99重量%(たとえば、最大約95重量%、最大約90重量%、最大約85重量%、最大約80重量%、最大約75重量%、最大約70重量%、最大約65重量%、最大約60重量%、最大約55重量%、または最大約50重量%)の量で存在する。
【0038】
1または複数の実施形態では、所望により第2溶媒(たとえば、有機溶媒)が本開示の研磨組成物(たとえば、POU研磨組成物または濃縮研磨組成物)中で使用されてもよく、これは、アゾール含有腐食防止剤の溶解を補助することができる。1または複数の実施形態では、第2溶媒は、1種もしくは複数種のアルコール、1種もしくは複数種のアルキレングリコール、または1種もしくは複数種のアルキレングリコールエーテルであり得る。1または複数の実施形態では、第2溶媒は、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、プロピレングリコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジメチルスルホキシド、およびエチレングリコールからなる群より選択される1種または複数種の溶媒を含む。
【0039】
1または複数の実施形態では、第2溶媒は、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.0025重量%(たとえば、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.02重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.4重量%、少なくとも約0.6重量%、少なくとも約0.8重量%、または少なくとも約1重量%)~最大約5重量%(たとえば、最大約4重量%、最大約3重量%、最大約2重量%、最大約1重量%、最大約0.8重量%、最大約0.6重量%、最大約0.5重量%、または最大約0.1重量%)の量で存在する。
【0040】
1または複数の実施形態では、研磨組成物は、所望により動的表面張力低減剤(DSTR)を含むことができる。いくつかの実施形態では、DSTRはアセチレン化合物である。いくつかの実施形態では、DSTRはアセチレングリコールまたはそのエトキシル化付加体である。いくつかの実施形態では、DSTRは、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエトキシル化付加体である。1または複数の実施形態では、DSTRは、本明細書に記載の研磨組成物の少なくとも約0.0001重量%(たとえば、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.2重量%、少なくとも約0.4重量%、または少なくとも約0.5重量%)~最大約1重量%(たとえば、最大約0.8重量%、最大約0.6重量%、最大約0.5重量%、最大約0.4重量%、最大約0.2重量%、最大約0.1重量%、最大約0.05重量%、最大約0.01重量%、最大約0.005重量%、または最大約0.001重量%)の量で存在することができる。1または複数の実施形態では、POU研磨組成物は、約0.0001重量%~0.005重量%のDSTRを含むことができる。1または複数の実施形態では、濃縮研磨組成物は、約0.001重量%~1重量%のDSTRを含むことができる。
【0041】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、有機溶媒、pH調整剤、第四級アンモニウム化合物(たとえば、塩または水酸化物)、アミン、アルカリ塩基(たとえば、アルカリ水酸化物)、フルオライド含有化合物、シラン(たとえば、アルコキシシラン)、イミン(たとえば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)および1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)等のアミジン)、塩(たとえば、ハロゲン化物塩または金属塩)、ポリマー(たとえば、カチオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマー)、界面活性剤(たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、またはノニオン性界面活性剤)、可塑剤、酸化剤(たとえば、H2O2)、腐食防止剤(たとえば、アゾール腐食防止剤または非アゾール腐食防止剤)等の特定の成分、および/または、特定の研磨剤(たとえば、セリア研磨剤、ノニオン性研磨剤、表面改質研磨剤、または負/正に帯電した研磨剤)の1種または複数種を実質的に含まなくてもよい。研磨組成物が含まなくてもよいハロゲン化物塩は、アルカリ金属ハロゲン化物(たとえば、ハロゲン化ナトリウムまたはハロゲン化カリウム)またはアンモニウムハロゲン化物(たとえば、塩化アンモニウム)を包含し、塩化物、臭化物、またはヨウ化物であり得る。本明細書で使用される場合、研磨組成物が「実質的に含まない」成分とは、研磨組成物に意図的に添加されない成分を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、研磨組成物が実質的に含まない上記成分の1種または複数種を最大約1000ppm(たとえば、最大約500ppm、最大約250ppm、最大約100ppm、最大約50ppm、最大約10ppm、または最大約1ppm)有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物は、上記成分の1種または複数種を完全に含まなくてもよい。
【0042】
本開示はまた、上記研磨組成物(たとえば、濃縮物またはPOUスラリー)のいずれかを使用する方法を構想する。濃縮物を用いる場合、本方法は、濃縮物を(たとえば、少なくとも2倍に)希釈してPOUスラリーを形成する工程と、続いて銅を少なくとも部分的に含む表面をPOUスラリーと接触させる工程と、を含むことができる。いくつかの実施形態では、希釈前、希釈後、または希釈中に、酸化剤をスラリーに加えることができる。POUスラリーを用いる場合、本方法は、銅を少なくとも部分的に含む表面をスラリーと接触させる工程を含む。
【0043】
1または複数の実施形態では、本開示は、本開示に係る研磨組成物を表面上に少なくとも銅(たとえば、銅配線および/または銅オーバーバーデンの形態の銅)を有する基板(たとえば、ウェハ)に付与することと、パッドを基板の表面と接触させることと、パッドを基板に対して移動させることと、を含むことができる研磨方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、基板が銅の少なくとも1種または複数種を含むと、上記方法は基板を効果的に研磨することができる(たとえば、銅残留物を残したり銅とバリア材料(たとえば、Ta/TaN)の界面でガルバニック腐食を発生させたりすることなく、少なくとも銅オーバーバーデンを除去する)。
【0044】
1または複数の実施形態では、本明細書に記載の研磨組成物を使用する方法は、1つまたは複数の工程を経て研磨組成物によって処理された基板から半導体デバイスを製造することをさらに含むことができる。たとえば、フォトリソグラフィ、イオン注入、ドライ/ウェットエッチング、プラズマエッチング、堆積(deposition)(たとえば、PVD、CVD、ALD、ECD)、ウェハ搭載、ダイカット、パッケージング、およびテスティングを使用して、本明細書に記載の研磨組成物によって処理された基板から半導体デバイスを製造することができる。
【0045】
以下の具体的な実施例は単なる例示として解釈されるべきであり、本開示の残りの部分をいかなる手法によっても限定するものではない。さらに詳しく説明しなくても、当業者は、本明細書の記載に基づいて本発明を最大限に利用できると考えられる。
【0046】
実施例
実施例で試験したスラリーは以下の一般組成を含んでいた。第1腐食防止剤の量および種類は、結果を考察する際におよび添付の
図1~
図3において説明するとおり変化させた。
【0047】
【0048】
実施例1-Cu2OおよびCuOの溶解
本実施例は、銅を含む基板の研磨を改質するための添加剤の能力を試験するように設計されている。試験手順は以下の通りであった。銅酸化物(たとえば、0.01gのCu2Oまたは0.005gのCuO)粉末を秤量し、遠心管に入れた。上記の各成分を含む25gのスラリーサンプルを、銅酸化物粉末がスラリーサンプル中に浸漬されるように遠心管中に加えた。遠心管を25℃に保った超音波槽に入れ、2分間超音波処理した。次いで、管中の混合物を10000RPMで40分間遠心分離した。次いで、上澄みの10mLサンプルをICP-MS分析のために取り出して、上澄み中の銅含有量を測定した。4種の第1腐食防止剤、すなわち、アルキルホスフェート、2種の異なるエトキシル化アルキルホスフェート、および芳香族ホスホネートをそれぞれ含む研磨スラリーサンプルを試験した。4種の第1腐食防止剤は、約150g/mol~約1100g/molの範囲の分子量を有していた。
【0049】
Cu
2Oの溶解の結果を
図1に示し、CuOの溶解の結果を
図2に示す。結果は、腐食防止剤1は低使用量であっても、銅酸化物の溶解を抑制する上で非常に顕著な効果を有し、スラリーに約5ppmで添加された場合、スラリー中の銅酸化物の溶解を効果的に停止させることを示している。腐食防止剤2および腐食防止剤3は、銅酸化銅の溶解を抑制する能力がより緩やかであった。
図1および
図2は、腐食防止剤4が低使用量側ではまず銅酸化物の溶解を増加させた後、高使用量側では溶解を抑制する役割を果たしたことを示す。
【0050】
実施例2-パターニングされたクーポンの静的エッチレート
本実施例では、腐食防止剤3を含む研磨組成物中にパターニングされたクーポンを浸漬し、溶解した銅をICP-MSにより測定することによって、静的エッレート試験を実施した。より具体的には、4cm×4cmの銅を含有するパターニングされたクーポンを、腐食防止剤3を含有する研磨組成物50g中に入れ、45℃で5分間インキュベートした。次いで、研磨組成物溶液中に溶解した銅をICP-MSによって測定した。銅を含有するパターニングされたクーポンは、初期研磨して銅オーバーバーデンを実質的に除去することにより銅配線パターンを露出させたCuTaTaNBD854マスク200mmのパターニングされたウェハの一片であった。
図3は、腐食防止剤3を使用した組成物について、
図1および
図2で得られたプロットプロファイルと似たプロファイルを実証する静的エッチレート試験の結果を示す。
【0051】
実施例3-パターニングされたウェハを用いた銅バルク研磨
本実施例では、CuTaTaNBD854マスク200mmのパターニングされたウェハを、CI-1~CI-4および他の成分を上記表1に列記した量で含有する組成物を用いて研磨して、銅バルク除去プロセスを完了し、バリア層上で停止させた。表1は、研磨が許容可能であった(すなわち、Cu研磨レートが十分であり、欠陥が観察されなかった)か、許容不可能であったかに基づいて、得られたウェハを説明する。許容可能な研磨結果を表2中「●」で表し、許容不可能な結果を「x」で示す。
【0052】
【0053】
重要なことに、研磨プロセス中、研磨が均一にかつ腐食に関連する欠陥を殆ど伴わずに進行できるように、銅酸化物の除去と銅酸化銅の除去の抑制との間でバランスをとる必要性が全般に存在する。本発明者らは意外なことに、いくつかの実施形態では、銅含有基板に対して
図1と
図2に示すプロットの網掛け領域内でCu
2Oの溶解%値とCuOの溶解%値を維持する研磨スラリーを使用すると、上記の最適な研磨バランスが達成できることを見出した。
【0054】
具体的には、好適なCu
2Oの溶解%範囲は約3~10%であり、好適なCuOの溶解%範囲は約0.25~1.75%である。
図3は、網掛け領域において適切な研磨結果の帯域(window)を示し、その帯域は研磨組成物中に溶解したCuが約0.5ppm~約6ppmである。さらに、実施例3で行った試験の結果に基づいて、第1腐食防止剤の濃度が研磨スラリー中で50ppmを超えると、Cu研磨レートが許容できないほど低くなることが全般に分かった。こうして、意外なことに、試験した各第1腐食防止剤は銅含有基板を研磨するのに適した濃度帯域(concentration window)を有し、いったん当該濃度帯域の外側になると、試験した第1腐食防止剤の1種を含有する研磨組成物は、低研磨レートおよび/または制御されない銅腐食による多数の欠陥に起因して、銅含有基板を適切に研磨することができない可能性があることを見出した。
【0055】
実施例3は、特定の第1腐食防止剤(たとえば、試験した4種の腐食防止剤の1種)を特定の濃度で含有する研磨組成物が実施例3に記載の特定の目的および条件に対して許容不可能な研磨結果を有し得ることを示すが、そのような第1腐食防止剤を異なる濃度で本明細書に記載の他の成分と組み合わせて使用すれば許容可能な結果を有する研磨組成物を形成できるか、または異なる研磨用途であれば許容可能な結果を有する研磨組成物を形成できることに留意されたい。したがって、実施例3において「許容不可能な」結果を与えるものとして列記されている研磨組成物も本開示の範囲内である。
【0056】
以上、ほんの数例の実施形態について詳細に説明したが、当業者は、本発明から本質的に逸脱しない限り、例示された実施形態において多くの変更が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、すべてのそのような変更は、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】