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特表2023-520527デジタル資産取引における自動化されたknow-your-transactionチェックのシステム及び方法
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  • 特表-デジタル資産取引における自動化されたknow-your-transactionチェックのシステム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】デジタル資産取引における自動化されたknow-your-transactionチェックのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 20/06 20120101AFI20230510BHJP
   G06Q 20/40 20120101ALI20230510BHJP
【FI】
G06Q20/06
G06Q20/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560276
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021024809
(87)【国際公開番号】W WO2021202474
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/001,646
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522387249
【氏名又は名称】ブロッククウェイク アイピー ホールディングス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ブラッセ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】ブラッセ, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン, サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】シュリキシュン, ランディー
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055AA12
5L055AA72
(57)【要約】
デジタル資産の取引中に合法性をチェックする自動化された方法であって、顧客によって、デジタル資産取引を開始することと、ウォレットに対応するウォレットアドレスを受け取ることと、1つ又は複数のデータベースに対してそのウォレットアドレスを照合することと、ここで1つ又は複数のデータベースは、ウォレットの取引履歴及びリスク分類情報を含み、1つ又は複数のデータベースに格納された取引履歴及びリスク分類情報に基づいて、疑わしい取引としてそのウォレットアドレスがフラグを付けられるべきであるかどうかを判断することと、そのウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられた場合には、取引を拒否してその拒否を顧客に通知することと、又は更なるチェックのためにデジタル資産を保持ウォレットに移動させることと、そのウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、そのデジタル資産を解放して取引を進めることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル資産の取引中に合法性をチェックする自動化された方法であって、該自動化された方法は、
顧客によって、デジタル資産取引を開始するステップと、
ウォレットに対応するウォレットアドレスを受け取るステップと、
1つ又は複数のデータベースに対して前記ウォレットアドレスを照合するステップと、ここで前記1つ又は複数のデータベースは、ウォレットの取引履歴及びリスク分類情報を含み、
前記1つ又は複数のデータベースに格納された前記取引履歴及びリスク分類情報に基づいて、疑わしい取引として前記ウォレットアドレスがフラグを付けられるべきであるかどうかを判断するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられた場合には、前記取引を拒否して、該拒否を前記顧客に通知するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、前記デジタル資産を解放するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、将来の取引のために前記ウォレットアドレスをホワイトリストに登録するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デジタル資産の取引は、前記デジタル資産の引き出しを含み、前記ウォレットアドレスは、デジタル資産を受け取るための受取ウォレットに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記デジタル資産の取引は、前記デジタル資産の預け入れを含み、前記ウォレットアドレスは、デジタル資産を引き出すための送付ウォレットに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
デジタル資産の取引中に合法性をチェックする自動化された方法であって、該自動化された方法は、
前記顧客によって、デジタル資産の取引を開始するステップと、ここで前記デジタル資産の取引は、前記デジタル資産の預け入れを含み、
前記デジタル資産の引き出しのための送付ウォレットに対応するウォレットアドレスを受け取るステップと、
前記デジタル資産を前記送付ウォレットから保持ウォレットに一時的に移動させるステップと、
1つ又は複数のデータベースに対して前記ウォレットアドレスを照合するステップと、ここで前記1つ又は複数のデータベースは、ウォレットの取引履歴及びリスク分類情報を含み、
前記1つ又は複数のデータベースに格納された前記取引履歴及びリスク分類情報に基づいて、疑わしい取引として前記ウォレットアドレスがフラグを付けられるべきであるかどうかを判断するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられた場合には、更なるチェックのために前記デジタル資産を前記保持ウォレットに保持するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、前記デジタル資産を解放するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、将来の取引のために前記ウォレットアドレスをホワイトリストに登録するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
デジタル資産の取引中に合法性をチェックする自動化された方法であって、該自動化された方法は、
前記顧客によって、デジタル資産の取引を開始するステップと、ここで前記デジタル資産の取引は、前記デジタル資産の引き出しを含み、
前記デジタル資産の受け取りのための受取ウォレットに対応するウォレットアドレスを受け取るステップと、
前記デジタル資産を送付ウォレットから保持ウォレットに一時的に移動させるステップと、
1つ又は複数のデータベースに対して前記ウォレットアドレスを照合するステップと、ここで前記1つ又は複数のデータベースは、ウォレットの取引履歴及びリスク分類情報を含み、
前記1つ又は複数のデータベースに格納された前記取引履歴及びリスク分類情報に基づいて、疑わしい取引として前記ウォレットアドレスがフラグを付けられるべきであるかどうかを判断するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられた場合には、更なるチェックのために前記デジタル資産を前記保持ウォレットに保持するステップと、
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、前記デジタル資産を解放するステップと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記ウォレットアドレスが疑わしいとしてフラグを付けられなかった場合には、将来の取引のために前記ウォレットアドレスをホワイトリストに登録するステップを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
デジタル資産の取引中に合法性をチェックするためのシステムであって、該システムは、
それぞれがウォレットアドレスを含む複数のデジタルウォレットを、提供するように構成された取引事業者のソフトウェアシステムと、
ウォレットの取引履歴及びリスク分類情報を含む1つ又は複数のデータベースと、ここで前記取引事業者のソフトウェアシステムは、前記1つ又は複数のデータベースに対して前記ウォレットアドレスの照合を行うように構成されており、
ウォレットアドレスをホワイトリスト又はブラックリストに登録するための手段と
を含み、前記手段は、前記ウォレットアドレスが前記照合の際に満たさなければならない予め定められた基準を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【出願に関する相互参照】
【0001】
本出願は、2020年3月30日に出願された米国仮特許出願第63/001,646号の利益を主張し、その全体が参照により援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、デジタル資産取引の分野に属する。より具体的には、本発明は、取引相手の公正性を判断しかつマネーロンダリング及び他の規制の順守を確保するために、デジタル取引のチェック及び監査を実行するシステム及び方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
デジタル資産取引に携わる者は、現在、特定のそのような取引が、デジタル資産の使用を通じてマネーロンダリングを行うこと又は他の違法行為を犯すことを意図しているかどうかを判断するための予防的な自動化されたリアルタイムの方法又はプロセスを実施していない。そのような者は、予防か検出かに関わらず、預け入れ、移転、及び/又は引き出しに関するKnow-Your-Transaction(KYT)監査又はチェックを自動化された方法で実行していない。Know-Your-Transactionとは、仮想資産サービス提供者、仮想資産取引を促進する会社、及び仮想資産を保管する会社によって、個人若しくは企業の取引活動を監視して疑わしい取引又は不正な取引を特定するために用いられるプロセスである。KYT分析が成功すれば、外国資産管理局(OFAC)の制裁対象取引、詐欺、ダークネット市場などのリスクの高い活動を検知することができる。これらのチェックや監査を行わないと、金融活動作業部会(FATF)の指針、銀行秘密法(BSA)の要件、又は資金やデジタル資産の移転に適用される他のマネーロンダリング防止関連規則の順守に関して、これらの個人又は事業者を危険にさらす可能性がある。必要とされるものは、本発明によって開示されるように、デジタル資産取引の開始時にリアルタイムで自動化された予防的なKYTチェックを実行するシステム及び方法である。本発明の使用は、マネーロンダリングを防止する法律の順守を支援することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、デジタル資産取引の開始時にリアルタイムで自動化された予防的なKYTチェックを行うシステム及び方法を開示する。そのようなデジタル資産取引は、ブロックチェーンに(オンチェーン)又は特定のブロックチェーンの外に(オフチェーン)記録されてもよい。ブロックチェーンは、ピアツーピアネットワーク上のすべてのコンピュータシステムで複製されて分散される、取引のデジタル台帳である。
【0005】
デジタル資産は、ビットコイン、イーサリアムなどの暗号通貨、及び他のブロックチェーンベースの資産を含むことができる。これらの暗号通貨は、トークン、コイン、セキュリティトークン、又は不動産又は他の資産のトークン化のためのトークン化証券と呼ばれることもある。このようなトークン化された資産は、本明細書において、取引可能な又は移転可能なデジタル資産と呼ばれることがある。
【0006】
本発明は、そのようなデジタル資産取引に携わる者にとって理想的である。そのような者は、例えば、自然人、人のグループ、法人、受託団体、合名会社、又は有限責任会社であってもよい。これらの者には、暗号通貨取引所、デジタル資産取引所、銀行、管理人、受託団体、又はトレーディングデスク、あるいはデジタル資産取引に携わる又デジタル資産取引を促進する他の者が含まれ得る。本開示の目的でのみ、以下ではこれらの者を、それぞれ個別には単独の取引事業者と呼び、集合的に複数の取引事業者と呼ぶことにする。
【0007】
デジタル資産取引には、デジタル資産ウォレット(以下、デジタルウォレット又はウォレットともいう)間及びウォレットアドレス間の交換、移転、預け入れ、及び引き出しが含まれることがある。ウォレットアドレスは、取引を発生させることができるブロックチェーンの公開鍵のハッシュ化バージョンである。公開鍵は、ユーザーが暗号通貨を受け取ることを可能にするための身分証明として使用される公知の暗号コードである。1つのウォレットは、複数のウォレットアドレスを有することもある。これは、ウォレットが第三者によるアクセスから安全であることを確保するためのセキュリティ上の理由による。ウォレットは、ウォレットアドレスに対応する複数の秘密鍵が統合されたものである。秘密鍵とは、秘密にされている暗号コードで、資産の認証、暗号化、及びアクセスに使用される。秘密鍵は、ウォレットアドレスからデジタル資産にアクセスして送るために、ウォレットの所有者によって使用される。パスフレーズやシードフレーズは、秘密鍵のハッシュ化バージョンである。ウォレットは、コールドウォレット、ホットウォレット、ウォームウォレットのいずれかであり得る。ホットウォレットはインターネットに直接接続されたウォレットであり、一方でコールドウォレットは暗号通貨の物理的保管に特別に指定されたデバイスで、オフラインでインターネットから切り離されている。ウォームウォレットは、ホットウォレットとコールドウォレットの中間に位置し、ホットウォレットと同様の特徴を有するが、ホットウォレットを利用する取引プラットフォーム及び取引所などのウェブベースのサービスではなく、ダウンロード可能なソフトウェアやモバイルアプリケーションをベースとする傾向がある。更に、ほとんどのウォームウォレットは、セキュリティ及び識別のためにパスコード又は個人識別番号(PIN)に依存するが、ホットウォレットは、通常はユーザーが作成したパスワードに依存し、ユーザーに個人情報を認証させる。例示のみとして、ホットウォレットはオンラインウォレットであることができ、ウォームウォレットはデスクトップ又はモバイルウォレットであることができ、コールドウォレットはハードウェア又はペーパーウォレットであることができる。
【0008】
KYTチェックは、従来の金融機関によって行われるマネーロンダリング防止(AML)チェックに似ていることができる。そのようなAMLチェックは、そのような資金が違法行為に関係する取引に使用されているか又は使用されるおそれがあるかを判断するために、不換通貨に対して行われることがある。KYTチェックは、AMLチェックと同様の目的を果たし得るが、少なくとも1つのブロックチェーン内で行われるデジタル資産取引に対して実施される。
【0009】
本発明は、デジタルウォレット又はデジタルウォレットアドレスに関する情報を含むリポジトリである1つ又は複数のデータベースを含む。1つ又は複数のデータベースに含まれる情報は、ウォレットの取引履歴及びリスク分類を含むことができる。このような情報は、デジタルウォレット又はデジタルウォレットアドレスが、金融犯罪で又はマネーロンダリングとみなされる可能性のある他の活動で使用されているかどうかを判断するために使用されることができる。これらのリポジトリは、紙形式、電子メール、CSV形式若しくはMicrosoft Excelを使用するスプレッドシート、又はデータベース、例えば、Microsoft Access、Microsoft SQL、若しくはOracleなどの様々な形式で維持されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
以下で説明する図面は、例示のためだけのものであり、必ずしも縮尺通りに描かれていない。図面は、本開示の範囲をいかなる形でも限定することを意図していない。可能な限り、同一又は類似の符号が、同一又は類似の部分を指すために全図面を通して使用される。
図1】本明細書に記載される実施形態による、1つ又は複数のウォレットアドレスをホワイトリストに登録するための例示の方法を示すフローチャートである。
図2】本明細書に記載される実施形態による、デジタル資産の預け入れのための例示の方法を示すフローチャートである。
図3】本明細書に記載される実施形態による、デジタル資産の引き出しのための例示の方法を示すフローチャートである。
図4】本明細書に記載される実施形態による、デジタル資産取引の際の自動化されたリアルタイムKYTチェックの実施のための例示のシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで図を参照すると、図1は、本明細書で説明される実施形態による1つ又は複数のウォレットアドレスをホワイトリストに登録するための例示の方法を示すフローチャートである。ホワイトリストへの登録は、特定の識別された者が、特定の特権、サービス、モビリティ、アクセス、又は承認にアクセスすることを明示的に許可する実務である。デジタル資産のウォレットアドレスが、取引事業者での将来の引き出し又は預け入れ要求を可能にするためにホワイトリストに登録されるよう要求されると102、そのアドレスは、1つ又は複数のデータベースに対して照合される104。そのようなデータベースは、そのウォレットアドレスが高リスクとみなされるかどうかを判断するために、政府のデータベース及び評判の良い信頼できる民間事業者によって維持されるデータベースを含むことができる。そのような高リスクのウォレットアドレスは、OFACのブラックリストに登録されたウォレットアドレスを含むことができる。照合はリアルタイムで行われ、取引事業者のシステムと1つ又は複数のデータベースとの間のアプリケーションプログラミングインターフェース(API)コールを通じて実施される。本発明の好ましい実施形態では、その照合は、取引事業者のシステムと、様々な政府及び民間のデータベースからの情報を1つのプラットフォームにまとめるブロックチェーン分析プラットフォームとの間のAPIコールを通じてリアルタイムで実施される。
【0012】
ホワイトリストに登録されるウォレットアドレスが、取引事業者によって予め定められているような高リスクであるとみなされた場合には108、そのデジタル資産のウォレットアドレスのホワイトリスト登録要求は拒否される110。取引事業者の顧客は、ホワイトリスト登録が拒否されたことを詳細な説明と共に通知される112。その後に顧客は、別のウォレットアドレスのホワイトリストへの登録の試みに進むことを決定してもよい。ホワイトリスト登録要求のウォレットアドレスが高リスクとしてのフラグを付けられない場合には、そのウォレットアドレスのホワイトリスト登録要求は承認される114。本発明のいくつかの実施形態では、システムは、ウォレットアドレスをホワイトリストに登録せず、代わりに、以前のチェックの結果に関係なく、各取引中にチェックを実施する。
【0013】
データベースは、それらのデータベースの提供者によって定期的に更新されることができる。取引事業者の顧客は、ホワイトリストに登録されておりかつ対象となるデータベースに対してフラグが付けられていないウォレットアドレスからの引き出し又はそのようなウォレットアドレスへの預け入れのみをすることができる。外部の送付又は受取アドレスは両方ともホワイトリストに登録されて、要求している引き出し又は預け入れのウォレットアドレスと同じチェックを受けなければならない。
【0014】
引き出し又は預け入れのウォレットアドレスをホワイトリストに登録し、ホワイトリストへの登録要求、引き出し、及び預け入れのためにSMSでない2段階認証(2FA)を要求する目的は、顧客のデジタル資産を盗難から保護することである。このようなホワイトリストへの登録は、詐欺、汚職、及びマネーロンダリングを検出するために、潜在的なリスクの高い取引及びその背後にある動きを積極的に特定することにも向けられている。
【0015】
本発明は、仮想通貨又はデジタル資産取引の取り扱いについてのFATF指針及びBSA要件の順守を確保するためのプロセスを実施することが必要であり得る取引事業者にとって理想的である。そのようなプロセスは、預け入れ又は引き出しのためのウォレットアドレスがホワイトリストに登録されることが要求され、かつ順守要件を満たすために他の情報の収集が望ましい場合には、取引事業者にとって望ましくあり得る。そのような他の情報は、ウォレットアドレスの所有者及び所有者の所在地を含むことができる。また、その情報は、ウォレットアドレスが仮想資産サービス提供者(VASP)として分類された者に属するかどうかに関する表示を含んでもよい。そのような表示は、デジタル資産を受取又は送付する取引事業者の顧客に利益をもたらし得る。
【0016】
図2は、デジタル資産をあるウォレットから別のウォレットに預けるための例示の方法を示すフローチャートである。デジタル資産の預け入れが顧客によって開始されると202、送付ウォレットのウォレットアドレスが決定され204、その取引又は送付ウォレットアドレスが、政府関連データベース及び評判の良い信頼できる民間事業者によって維持されるデータベースを含むことができる1つ又は複数のデータベースに対して照合される206。そのような照合により、送付ウォレットアドレスが高リスクとみなされるかどうかを判断することができる。そのような高リスクのウォレットアドレスは、OFACのブラックリストに登録されたウォレットアドレスを含んでもよい。照合はリアルタイムで実行され、APIコールを通じて実施される。本発明の一実施形態では、送付ウォレットのウォレットアドレスが1つ又は複数のデータベースに対して照合される間、デジタル資産は、取引事業者によって維持される、送付ウォレットとは別の保持ウォレットに一時的に保持される。
【0017】
送付ウォレットアドレスが、取引事業者によって予め定められているような高リスクであると判断された場合は208、デジタル資産の預け入れが自動的に拒否されて、送付ウォレットアドレスに戻される210。取引事業者の顧客は、それが高リスクとしてのフラグが付けられた結果により拒否された預け入れがあったことが通知される212。本発明のいくつかの実施形態では、送付ウォレットアドレスが高リスクであると判断された場合には、更なるチェックが行われている間は、デジタル資産は保持ウォレットに留まる。送付ウォレットアドレスが高リスクとしてのフラグが付けられなかった場合には、預け入れは進行して、顧客の口座に振り込まれる214。
【0018】
図3は、デジタル資産の引き出しのための例示の方法を示すフローチャートである。取引事業者からのデジタル資産の引き出しが顧客によって開始されると302、受取ウォレットのアドレスが決定され304、その取引、又は引き出し要求に指定された受取ウォレットアドレスが、政府及び民間のデータベースを含むことができる1つ又は複数のデータベースに対して照合される306。照合は、受取ウォレットアドレスが高リスクとみなされることを判断することができる。そのような高リスクのウォレットアドレスは、OFACのブラックリストに登録されたウォレットアドレスを含んでもよい。その照合はリアルタイムで行われ、APIコールを通じて実施される。本発明の一実施形態では、デジタル資産は、受取ウォレットのウォレットアドレスが1つ又は複数のデータベースに対して照合される間、一時的に保持ウォレットに保持されるか、受取ウォレットと関係のない取引事業者のエコシステムに留まる。
【0019】
受取ウォレットアドレスが、取引事業者によって予め定められているような高リスクであると判断された場合には308、デジタル資産の引き出し要求が拒否される310。取引事業者の顧客は、詳細な説明と共に、引き出し要求が拒否されたことを通知される312。その後に顧客は、別のウォレットアドレスへの引き出し要求を続行したいかどうかを決定することができる。新しい引き出し要求のための受取ウォレットアドレスが高リスクとしてのフラグが付けられなかった場合には、引き出しは進行する314。
【0020】
図4は、本明細書に開示される実施形態による、デジタル資産取引の開始時に予防的なKYTチェックを実施するためのシステム400のブロック図である。システム400は、顧客がデジタル資産取引を開始する顧客デバイス402を含んでもよい。顧客デバイスは、ラップトップ、デスクトップ、モバイル、又は当該技術分野で知られている他のコンピュータデバイスであることができる。システム400はまた、取引事業者のソフトウェアシステム404と、1つ又は複数のデータベース406と、複数の第三者のベンダープラットフォーム408を含んでいる。
【0021】
取引事業者のソフトウェアシステム404は、当業者に公知のいずれかの処理プラットフォームとして構成されることができる。取引事業者のソフトウェアシステム404は、本明細書に開示されるデジタル資産取引の実施のために構成される。この実施の一部として、取引事業者のソフトウェアシステム404は、対応するアドレスを有する複数のウォレット412をサポートし、これらのウォレットアドレスは、デジタル資産取引のための送付元又は送付先として機能する。取引事業者のソフトウェアシステム404は、対応する保持ウォレットアドレスを有する複数の保持ウォレット410も含み、これらの保持ウォレットアドレスは、デジタル資産取引のための一時的な送付元又は送付先として機能する。
【0022】
本明細書に記載された本発明は、本システム及び方法をもたらすためにカスタマイズされて組み合わされた、独立したプロセスを取り扱う、複数の第三者のベンダーシステム408の使用及び複数の第三者のベンダーシステム408の間での通信を通じて実施されてもよい。これは、ホット、ウォーム、又はコールドウォレットソリューション、引き出し要求に対するウォレットアドレスのホワイトリストへの登録機能を提供するベンダー、又はこれらの上述のプロセスのいくつかを組み合わせることができるベンダーを含んでもよい。現在、当技術分野では、マネーロンダリングや他の犯罪行為と闘うために、法令遵守の必要性に対して様々なブロックチェーンについてウォレットアドレスのデータ追跡を提供する、政府又は民間の既存のベンダー又は事業者が存在する。現在これは、いずれかのウォレットアドレスをブラックリストに登録する必要があるかどうかを判断する手動の審査プロセスを主に通じて実施される。本発明では、これらの個々の及び手動のプロセスを自動化し、信頼性と効率性のために改善し、高リスクとみなされるウォレットアドレスへの及び高リスクとみなされるウォレットアドレスからの取引を防止するリアルタイムでのウォレットアドレスの自動化された予防的なチェックを可能にする、新しいプロセスを構築するようにして組み合わせる。
【符号の説明】
【0023】
400 システム
402 顧客デバイス
404 ソフトウェアシステム
406 データベース
408 第三者のベンダープラットフォーム
410 保持ウォレット
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】