(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】臍帯血幹細胞により高効能のエクソソームが高含量に分泌された培養液の製造方法及びこの用途
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20230510BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230510BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230510BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20230510BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230510BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20230510BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61K8/98
A61Q19/00
A61Q1/00
A61Q19/10
A61Q17/04
A61K35/51
A61P17/02
C12N5/07
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560340
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2021004088
(87)【国際公開番号】W WO2021201637
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0039848
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388176
【氏名又は名称】プリモリス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ナ キュ-フム
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ イェ-イン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
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4C083AA071
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4C087MA28
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
(57)【要約】
本発明は、臍帯血幹細胞が分泌するエクソソーム含有培養液の製造方法に関する。前記製造方法は、臍帯血幹細胞を、GDF-11、EGF、FGF2、TFG-β1、及び/又はVEGFが添加された無血清バッジで培養することを基本とする。臍帯血幹細胞に5種の成長因子を添加した無血清バッジを処理して生産した培養液と、該当培養液より分離したエクソソームを成長因子なく、無血清バッジだけ処理した場合と比較すると、成長因子が含まれた培養液内の総タンパク質含量と細胞外基質タンパク質含量が高い培養液を生産する。また、5種の成長因子を含む無血清バッジで培養された臍帯血幹細胞が分泌したエクソソームは、個数が多くて、濃度が高く、且つサイズが小さく、均一な分布を示す。
本発明により製造される臍帯血幹細胞培養液は、高効能エクソソームを高含量に含有して、皮膚再生の効能が高いので、皮膚透過が必要な皮膚塗布用化粧料組成物、及び傷治療用薬学組成物に有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血幹細胞を、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFからなる群より1つ又は2つ以上選ばれた成長因子をそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養して、臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームの濃度が0.5~5×10
9/mlと高い培養液を生産するステップを含むことを特徴とする臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項2】
臍帯血幹細胞を、GDF-11; 及び、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFからなる群より1つ以上選ばれた成長因子をそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養することを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項3】
臍帯血幹細胞を、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFをいずれもそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養することを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項4】
前記成長因子が添加された無血清バッジで臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液は、前記成長因子が添加されない無血清バッジで臍帯血幹細胞を培養して生産した培養液と比較して、細胞外基質タンパク質であるフィブロネクチン及び/又はコラーゲン(Collagen、PIP)含有量が更に高い水準であることを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項5】
前記成長因子が添加された無血清バッジで臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液は、前記成長因子が添加されない無血清バッジで臍帯血幹細胞を培養して生産した培養液と比較して、分泌されたエクソソームの数が更に多く、エクソソーム内に更に高い高濃度の有効性分を含有していて、皮膚再生能力が更に高いことを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項6】
経皮透過が容易な小粒径100nm±20nmのエクソソームを大量生産することを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項7】
前記バッジは、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、DMEM/F-10(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-10)、DMEM/F-12(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-12)、α-MEM(α-Minimal essential Medium)、G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、IMDM(Isocove's Modified Dulbecco's Medium)、及びKnockOut DMEMからなる群より選ばれた1種以上のバッジであることを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項8】
更に、臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液、又は培養液より分離したエクソソームを、使用目的に応じて剤形化するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項9】
エクソソーム含有培養液、又は培養液より分離したエクソソームをゲル化するか、凍結又は乾燥して粉末化することを特徴とする請求項8に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項10】
前記成長因子が添加された無血清バッジで臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームは、前記成長因子が添加されない無血清バッジで臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームと比較して、ヒト線維芽細胞及び/又はヒト角化細胞の移動能及び/又は増殖能を向上させることを特徴とする請求項1に記載の臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で取得された臍帯血幹細胞エクソソーム含有培養液、又はこれより分離されたエクソソームを有効性分として含有することを特徴とする皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物。
【請求項12】
化粧料組成物、医薬外品組成物、又は薬学組成物であることを特徴とする請求項11に記載の皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物。
【請求項13】
臍帯血幹細胞の小型エクソソームは、経皮透過型キャリアとして用いられることを特徴とする請求項11に記載の皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物。
【請求項14】
高分子と混合してゲル化した剤形であって、体温条件では、ゾル化することを特徴とする請求項11に記載の皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法で取得された臍帯血幹細胞のエクソソーム含有培養液、又はこれより分離されたエクソソームを有効性分として含有することを特徴とする傷又は創傷治療用薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臍帯血幹細胞により高効能のエクソソーム(exosome)が高含量に分泌された培養液の製造方法及びこの用途に関する。
【0002】
本発明により製造される臍帯血幹細胞培養液は、高効能のエクソソームを高含量に含有し、皮膚のような生体メンブレインに塗布及び/又は透過誘導が可能であって、化粧料組成物と傷治療のような薬学組成物として有用に使用可能である。
【背景技術】
【0003】
間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)は、上皮成長因子(Epithelial growth factor)、線維芽細胞増殖因子(Fibroblast growth factor)のような多様な成長因子とサイトカインを分泌し、線維芽細胞からコラーゲンの生成を促進させて、皮膚の再生に重要な役割をすると知られている(
図7)。このような特性を有する幹細胞を用いた化粧品の開発への関心が高まっており、特に、幹細胞の有効因子に対する皮膚内の浸透力を高める技術開発に関する研究が行われており、そのうちの1つが、エクソソームを活用することである。
【0004】
エクソソームは、複数種類の細胞から分泌される膜構造の小さな小胞である。エクソソームの直径は、略30~150nmと報告されている。エクソソームは、電子顕微鏡による研究において、原形質膜から直接分離したことではなく、多胞体(multivesicular bodies、MVBs)と呼ばれる細胞内の特定区画から起源し、細胞外に放出、分泌されることと観られている。すなわち、多胞体と原形質膜の融合が起きると、小胞は、細胞外環境に放出されるが、これをエクソソームと呼ぶ。このようなエクソソームがどの分子的機構により作られるかは明らかになってはいないが、生きているほとんど全ての細胞から分泌されるエクソソームは、受容体、タンパク質、及びmiRNAなど、様々な成分を含有していて、細胞間のシグナル伝達に重要な役割を果たすことと知られている。また、エクソソームは、幹細胞に比べて、動物血清を相対的に少なく含有していて、動物血清感染による症状(zoonosis)の危険性も排除することができる。このようなエクソソームの特性を考えると、エクソソームを用いた治療法は、既存の幹細胞治療法の限界を克服することができる新たなメカニズムになると期待される。
【0005】
皮膚は、表皮層と真皮層から構成されている。
【0006】
表皮(epidermis)を満たす細胞は、角質細胞(keratinocytes)、メラニン細胞(melanocytes)、樹状細胞(dendritic cells)、及び触覚細胞(tactile cells)を含む。大部分の表皮細胞は、角質細胞である(
図8)。角質細胞の主たる機能は、熱、紫外線、水分損失、病原性バクテリア、カビ、寄生虫、及びウイルスによる環境被害に対するバリア形成である。多数の構造タンパク質(filaggrin、keratin)、酵素(プロテアーゼ)、脂質、及び抗菌性ペプチド(defensins)は、皮膚の重要なバリア機能を維持することに寄与する。角質の形成は、角質細胞が更に多い角質を生成し、末端分化を経る物理的バリア形成(角質化)の一部である。最外層を形成する完全に角質化した角質細胞は、持続的に除去されて、新たな細胞に入れ替えられる。
【0007】
真皮層は、表皮層(0.04mm~1.6mm)の15~40倍の厚さを示し、皮膚の大部分を占めており、皮膚の弾力を維持する層であって、表皮と皮下組織の間の結合組織(connective tissue)として作用する。皮膚付属器、血管、リンパ管、筋肉、神経などがあり、大きく、真皮乳頭層(papillary dermis)と真皮網状層(reticular dermis)に分けられる。
【0008】
真皮乳頭層は、真皮全体の厚さで極めて一部を占めており、コラーゲン、血管、繊維細胞(fibrocyte)から構成されている。血管がない(avascular)表皮の基底層に栄養分を供給する。真皮網状層は、真皮の大部分を占める層であって、エラスチンとコラーゲン繊維が太い束をなして配列されているおり、皮膚に強度と柔軟性を与え、弾力繊維及び様々な基質タンパク質からなる。コラーゲンは、結合組織総タンパク質の25%程度を占め、真皮層の引張強度に重要な役割を果たす。一方、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease;MMP)は、細胞外マトリックス(extracellular matrix、ECM)を加水分解する亜鉛依存性のエンドペプチダーゼ(zinc-dependent endopeptidase)である。MMPは、ECMを分解し、細胞の移動能を増やして皮膚組織を循環させるが、しわを形成して皮膚老化を促進し、癌細胞の転移を促進し、紫外線、ストレス、抗生剤などにより、形成が促進される。フィブロネクチン(Fibronectin)は、細胞表面、結合組織、血液中に存在する糖蛋白質である。細胞は、コラーゲン(collagen)と直接連結されておらず、フィブロネクチンを介して連結されている。
【0009】
図9に示しているように、線維芽細胞(fibroblast)は、角質細胞(keratinocyte)が要する成長因子及びサイトカインを生産及び分泌する。角質細胞(keratinocyte)は、表皮細胞であって、環境に容易に露出する細胞である。線維芽細胞は、角質細胞(keratinocyte)を通じて活性化することができ、活性化により、細胞外基質を再形成して皮膚層を均一にする。
【0010】
一方、皮膚の上位概念として、生体メンブレイン(covering and lining membranes)がある。生体メンブレインは、結合組織(connective tissue)の下部層(underlying layer)に結合した上皮組織(epithelium)からなる連続的な多細胞シート(continuous multicellular sheets)である。生体メンブレインには、皮膚膜(Cutaneous Membrane)、
粘膜(Mucous Membranes)、漿膜(Serous Membranes)がある(
図6)。
【0011】
現代人の生活水準の向上と共に、老齢人口が増加することにつれ、老化防止、しわ改善、美白、紫外線遮断などに関する機能性化粧品に対する関心と需要が増加しつつある。しかし、基礎化粧品又は機能性化粧品は、殆ど化学物質で製造されるため、人体に対する安全性問題が提起されている。これにより、天然、環境にやさしい原料を含有した製品に対する関心が増加しており、関連製品の市場規模も増加している。
【0012】
このような天然原料を活用した製品開発は、医薬品領域でも活発に行われており、バイオ医薬品市場を形成している。バイオ医薬品原料は、既存の化学成分を基にした医薬品から進一歩して、人間や他の生物体から由来した細胞、組織、ホルモンなどを用いて開発された医薬品であって、生物医薬品と言う。既存の化学成分医薬品の場合、副作用がひどくて、一時的な改善効能を見せるという不都合があるが、バイオ医薬品の場合、副作用無く、疾患の原因を根本的に解決するというメリットを有していて、現在、全世界的に活発に研究されている。これに本発明は、臍帯血幹細胞由来エクソソームも、次世代バイオ医薬品領域で、1つの主原料として活用しようとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、皮膚のような生体メンブレインの再生力を高めるために、臍帯血幹細胞により高効能のエクソソームが高含量に分泌される培養液を提供しようとする。
【0014】
本発明では、臍帯血幹細胞を、2種以上の成長因子を含有した特定の成長因子カクテルを添加した無血清バッジで育てて得た培養液を分析した結果、細胞外基質タンパク質の含量が高いことを確認し、この培養液からエクソソームを分離して分析した結果、エクソソーム内有効性分の濃度が高く、その効能が向上したことを見出した。また、本発明の高効能エクソソームをヒト線維芽細胞及び角質細胞に処理したとき、細胞の増殖能と移動能、創傷治癒能が向上することを確認した。本発明は、これに基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の様態は、臍帯血幹細胞を、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFからなる群より1つ又は2つ以上選ばれた成長因子をそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養して、臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームの濃度が、0.5~5×109/ml、望ましくは、1~3×109/mlと高い培養液を生産するステップを含むことを特徴とする臍帯血幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液製造方法を提供する。
【0016】
例えば、GDF-11; 及び、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFからなる群より1つ以上選ばれた成長因子をそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで、臍帯血幹細胞を培養する。
【0017】
望ましくは、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFをいずれもそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで、臍帯血幹細胞を培養する。
【0018】
本発明の第2の様態は、第1の様態の方法で取得された臍帯血幹細胞エクソソーム含有培養液、又はこれより分離された高効能エクソソームを有効性分として含有する、皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物を提供する。前記塗布用組成物として、化粧料組成物、医薬外品組成物、又は薬学組成物がある。例えば、前記塗布用組成物は、高分子と混合してゲル化した剤形であって、体温条件では、ゾル化する。
【0019】
本発明の第3の様態は、第1の様態の方法で取得された臍帯血幹細胞のエクソソーム含有培養液、又はこれより分離された高効能のエクソソームを有効性分として含有する、傷又は創傷治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
以下、本発明を説明する。
【0021】
1. 幹細胞培養液
成体幹細胞は、必要に応じて、特定組織の細胞に分化される未分化状態の細胞である。成体幹細胞は、間葉系幹細胞、間葉系ストローマ細胞(mesenchymal stromal cell)、又は、多分化能幹細胞であるが、これに限定されるものではない。成体幹細胞は、ヒト胚芽から抽出した胚芽幹細胞とは異なり、骨髄や脳細胞など、既に成長した身体組織から抽出するため、倫理論争を避けられるというメリットがある。本発明において、成体幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、又は胎盤から由来したものであるが、これに限定されない。
【0022】
臍帯血由来幹細胞は、脂肪又は骨髄由来の成体幹細胞とは異なり、供与者の妊娠周期(40週)の間に形成された臍帯血を使うので、供与者の状態による効能の差が発生しないというメリットがある。
【0023】
バッジは、生体外(in vitro)において、細胞の成長と増殖に必要な必須成分を含む組成物を意味するもので、当該分野にて通常使用される幹細胞培養用バッジを全て含み、例えば、DMEM
(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、MEM (Minimal Essential Medium)、BME (Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、DMEM/F-10 (Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture
F-10)、DMEM/F-12 (Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-12)、α-MEM(α-Minimal essential Medium) G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、IMDM(Isocove's Modified Dulbecco's Medium)、KnockOut DMEMなどの商業的に製造されたバッジ、又は人為的に合成したバッジを利用することができるが、これに限定されない。本発明のバッジは、一般に、炭素源、窒素源、及び微量元素成分を含み、アミノ酸、抗生剤の他、多様な成長因子などを更に含むことができる。
【0024】
本発明において、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、VEGFのような成長因子は、臍帯血幹細胞培養に際して、バッジに添加及び/又は臍帯血幹細胞により生産されたことができる。
【0025】
成長因子は、細胞分裂や生長、分化を促進するタンパク質性の生理活性物質を意味するもので、例えば、GDF-11(Growth and differentiation factor 11)、脳由来神経成長因子(brain-derived neurotropic factor、BDNF)、線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor、FGF)、 肝細胞成長因子(hepatocyte growth factor、HGF)、神経成長因子(nerve growth factor、NGF)、血管上皮成長因子(vascular endothelial growth factor、VEGF)、類似インシュリン成長因子(insulin-like growth factor、IGF)、形質転換成長因子(transforming growth factor、TGF)、血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor、PDGF)、骨由来成長因子(bone-derived growth factor、BDF)、コロニー刺激因子(colony stimulation factor、CSF)、表皮成長因子(epidermal growth factor、EGF)、角質細胞成長因子(Keratinocyte growth factor、KGF)などがある。
【0026】
実験例1乃至5で確認したように、本発明により、無血清バッジに添加されたGDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、VEGFは、臍帯血幹細胞の各成長因子の収容体信号経路を刺激することになり、SMAD信号経路などを促進して、コラーゲンとフィブロネクチンタンパク質の合成を増やし、エクソソーム内成長因子、コラーゲン、フィブロネクチンの含量が増加したことと解析される。増加したコラーゲン、フィブロネクチン、及び成長因子含有エクソソームは、ヒト線維芽細胞及び角質細胞の増殖と移動能に影響したことになると解析される。また、自己分泌作用(Autocrine Effect)とパラクリン作用(Paracrine Effect)により、EGF、FGF2、TGF-β1、VEGF、GDF-11の再分泌が増加され、その他の他の成長因子の再分泌を促進して、周辺細胞の増殖能と移動能にも影響することになると解析される。
【0027】
本発明において培養液は、臍帯血幹細胞を培養した細胞培養上澄液を意味する。臍帯血幹細胞培養液は、臍帯血幹細胞の培養過程において、細胞から分泌される様々な生理活性物質を含有している。前記生理活性物質は、細胞や身体の機能に影響するサイトカイン、細胞成長因子、免疫調節因子などを称しており、生理活性物質の例としては、VEGF(vascular endothelial growth factor)、EGF(epidermal growth factor)、HGF(hepatocyte growth factor)、TGF-beta(Tumor growth factor-beta)、IGF(Insulin growth factor)などがあるが、これに限定されない。
【0028】
2. 幹細胞分泌エクソソーム
エクソソームは、細胞膜を横切って物質を伝達することができ、薬物伝達のための理想的な小胞として評価されているが、このような脂質二重層小胞システムは、皮膚浸透の問題点を克服することができるので、薬物を皮膚真皮層まで伝達するための最も効果的な戦略の1つとして評価されている(Saahil Arora et al.、Asian Journal of Pharmaceutics、6、4、237-244,2012)。
【0029】
また、エクソソームは、該当エクソソームが由来した細胞タイプを反映するRNA、タンパク質、脂質、及び代謝物質を含有する。エクソソームは、該当エクソソームが由来した細胞の様々な分子構成成分(例えば、タンパク質及びRNA)を含有する。エクソソームタンパク質組成は、該当エクソソームが由来した細胞及び組織(tissue)によって多様であるが、大部分のエクソソームは、進化的に保存した共通のタンパク質分子セットを含有する。
【0030】
エクソソームは、細胞を培養した後、取得された培養液から分離して得られ、エクソソームのサイズ及び含量は、エクソソームを生産する細胞が受けた分子信号によって影響される。
【0031】
本発明は、エクソソームを分離することなく、培養液自体を原料として使用することができるが、エクソソームを分離して使用することもできる。また、品質保証などのために、培養液内のエクソソームのサイズ物性を確認するために、エクソソームを分離することができる。
【0032】
培養液からエクソソームを分離するための方法として、遠心分離法、免疫結合法、濾過法などを活用する。
【0033】
エクソソームの分離方法のうち、通常使用される超遠心分離(Ultracetrifugation)は、一回に多量のエクソソームを分離することができず、高価な装備が必要であり、分離に多くの時間を要し、強い遠心分離により、エクソソームに物理的に損傷が生じることがあり、特に、分離されたエクソソームの純度が劣化するという不都合がある。このような不都合を改善するための方法のうち、エクソソームの膜(membrane)に存在するタンパク質であるホスファチジルセリン(phosphatidylserine、PS)に特異的に結合する物質を用いることで、分離されるエクソソームの純度を高めたPS親和性方法(PS affinity method)がある。これは、超遠心分離方法と比較して、高い純度のエクソソームを分離することができるが、歩留まりが低いという不都合がある。
【0034】
臍帯血間葉系幹細胞(UCB-MSC)培養液内のエクソソームは、脂肪組織由来間葉系幹細胞又は骨髄由来間葉系幹細胞の培養液内のエクソソームよりも高い水準で、EGF、VEGF、TGF、HGF、FGF、IGF、及びPDGFなどの多様な成長因子を含有している。EGFなどの成長因子は、皮膚構成細胞である線維芽細胞の増殖を促進し、細胞の移動及びコラーゲン合成などを促進するので、前記UCB-MSC由来エクソソームは、皮膚再生、皮膚弾力改善、皮膚しわ防止又は改善、皮膚老化防止又は改善、毛髪成長、又は縮小した毛嚢復元などの優れた皮膚状態改善効果及び傷治癒効果を奏することができる。
【0035】
本発明により製造された幹細胞培養液内には、エクソソームを多量含有するだけでなく、これにより、特有の脂質二重層構造により、皮膚真皮層まで浸透して、再生効果を高めるナノサイズのエクソソームも多量に提供することができ、エクソソーム内に多様な成長因子を多量含有しているので、皮膚構成細胞である線維芽細胞の増殖と活性化による皮膚再生及び抗老化効果、コラーゲン合成増加、毛髪成長、縮小した毛嚢復元、及び傷治癒効果を発揮することができる。
【0036】
本発明のエクソソームは、これを含有した培養液に生産又は使用され、前記培養液から細胞を除去した状態に生産又は使用されることもできる。細胞を除去したエクソソーム含有培養液は、セルフリー(cell-free)製剤であるため、発癌の危険性が少なく、移植拒否反応の問題がないだけでなく、全身への投与時、微細血管に閉塞を起こす虞がなく、細胞ではない分離物質であって、商用オフザシェルフ(off the shelf)製品への薬剤開発が可能であるので、製造コストを減らすことができる。
【0037】
本発明は、臍帯血由来幹細胞培養時に分泌されるエクソソームの濃度が0.5~5×109/ml、望ましくは、1~3×109/mlと高い培養液を生産するため、臍帯血由来幹細胞を、EGF、FGF2、TGF-β1、VEGF、及び/又はGDF-11がそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養することを特徴とする。
【0038】
本発明者らは、臍帯血間葉系幹細胞を、成長因子(Growth Factors)であるEGF、FGF2、TGF-β1、VEGF、GDF-11がそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加された特定の培養条件で培養した結果、前記成長因子が添加されない無血清バッジで臍帯血幹細胞を培養した場合と比較して、培養液内に存在するエクソソームの濃度が高く(1~3×109/ml)、前記エクソソームは、ヒト線維芽細胞とヒト角化細胞の移動能及び増殖能を向上させるということを見出した。また、臍帯血幹細胞を、EGF、FGF2、TGF-β1、VEGF、GDF-11が1~20ng/ml濃度で添加された無血清バッジで培養して生産する培養液は、細胞外基質であるフィブロネクチンタンパク質及び/又はコラーゲンタンパク質を多量含有するということを見出した。さらには、経皮透過が容易な小粒径100nm±20nmのエクソソームを多量生産することを見出した。本発明は、これに基づいている。
【0039】
本発明により、臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームのサイズを均一にし、高濃度で含有した高濃度の成長因子含有エクソソームを多量含有する幹細胞培養液、又はこれより分離したエクソソームは、皮膚(skin)のような生体メンブレイン塗布用組成物の有効性分であり得る。
【0040】
そこで、本発明は、臍帯血幹細胞の細胞培養により、経皮を透過する約100nmサイズのエクソソームを大量生産するだけでなく、本発明により製造された臍帯血由来幹細胞培養液は、ヒト線維芽細胞の移動能及び増殖能を向上させるエクソソームの含量が高くて、培養液の皮膚のような生体メンブレイン(covering and lining membranes)の透過度が高く、フィブロネクチンタンパク質及び/又はコラーゲンタンパク質を多量含有しているので、皮膚(skin)のような生体メンブレイン塗布用剤形(例えば、薬学組成物、化粧料、医薬外品)、及び/又は、傷治療剤又は創傷治療剤のような治療剤に望ましいだけでなく、使用に際して優れた効能を発揮することができる。
【0041】
3. 様々な剤形化
本発明により、臍帯血由来幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液、及び/又は培養液から分離したエクソソームは、使用目的によって、様々に剤形化することができる。
【0042】
例えば、エクソソーム含有培養液、及び/又は培養液から分離したエクソソームを、ゲル化(gelation)するか、凍結及び/又は乾燥して粉末化する。
【0043】
ヒドロゲル、ゼラチンなどの成分と混合して、成分の含量比による粘性の差によるゲル化とゾル化(solation)の調節が可能な皮膚又は生体メンブレイン塗布用組成物に使用可能であり、ポロキサマー(poloxamer)などの成分と混合して、4℃の条件でゲル化し、体温条件でゾル化するように、剤形を設計することができる。
【0044】
化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、香水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ、及びスプレーからなる群より選ばれる剤形に製造できるが、これに限定されない。
【0045】
化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を1種以上更に含むことができ、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合することができるが、これに限定されない。
【0046】
化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、前記化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0047】
剤形が軟膏、ペースト、クリーム、又はゲルの場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが利用されるが、これに限定されるものではない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0048】
剤形がパウダー又はスプレーの場合は、担体成分として、ラックトス、タルク、シリカ、 水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダーなどが利用され、特に、スプレーの場合は、更に、クロロフルオロカーボン、プロパン/ブタン、又はジメチルエーテルのような推進剤を含むことができるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0049】
剤形が溶液又は乳濁液の場合は、担体成分として、溶媒、溶解化剤、又は乳化剤などが利用され、例えば、水、グリセリン、エタノール、イソプロパノール、炭酸ジエチル、 酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが利用され、特に、綿実油、ピーナッツオイル、コーン油、オリーブオイル、ピマジャオイル、及び胡麻オイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又はソルビタンの脂肪酸エステルが利用されるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0050】
剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、グリセリン、エタノール、又はプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、 寒天又はトラガカントなどが利用されるが、これに制限されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0051】
剤形が石鹸の場合は、担体成分として、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオン酸、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが利用されるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0052】
化粧料組成物において、前記エクソソームは、前記化粧料組成物総重量の0.0001乃至50重量%含み、より具体的に、0.0005乃至10重量%含む。エクソソームが前記範囲内に収まると、優れた皮膚状態改善効能、及び組成物の剤形が安定化するというメリットがある。
【0053】
通常、医薬外品は、人間や動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置、又は予防する目的に使用される物品のうち、医薬品より作用が軽微であるか、医薬品の用途として使用される物品を除くものを意味する。人間や動物の疾病治療や予防に使われる製品、人体に対する作用が軽微であるか、直接作用しない製品などが含まれる。
【0054】
医薬外品組成物は、ボディクレンザー、フォーム、石鹸、マスク、軟膏剤、クリーム、ローション、エッセンス、及びスプレーからなる群より選ばれる剤形に製造できるが、これに限定されない。
【0055】
本発明が皮膚(skin)のような生体メンブレイン塗布用、又は傷・創傷治療用薬学組成物の場合、エクソソームを有効性分として含むことに加えて、薬学的に許容可能な担体を更に含むことができる。
【0056】
「薬学的に許容可能」とは、投与に際して、生物体を刺激しないながら、投与される化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない、薬学分野で通常使用できることを意味する。
【0057】
投与量は、皮膚状態改善のために、薬学的に有効な量である。前記「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受益・危険割合で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効容量水準は、個体種類及び重症度、年齢、性別、疾患の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、及び排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他医学分野にてよく知られた要素によって決められる。また、有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤と共に使用される可能性によって変わる。
【0058】
担体の種類は、特に制限されず、当該技術分野にて通常使用される担体であればよい。これに制限されないが、具体例として、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、ラクトース、D形グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、マルトデキストリン、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0059】
また、必要な場合、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、緩衝液、又は静菌剤など、その他薬学的に許容可能な添加剤を添加して使用可能であり、充填剤、増量剤、湿潤剤、分解剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、又は潤滑剤などを付加して使用することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明により製造される臍帯血間葉系幹細胞培養液は、均一なサイズ分布の高効能エクソソームを高含量に含有し、皮膚透過が必要な化粧料組成物と、傷・創傷治療用薬学組成物に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】
図1は、実施例1により、条件別に準備された臍帯血幹細胞培養液内に存在する全体タンパク質の濃度と細胞外基質タンパク質含有量とを比較分析した結果である。
【
図2】
図2は、実施例1により、条件別に準備された臍帯血由来幹細胞培養液内に存在するエクソソームの分布、サイズと濃度を比較分析した結果である。
【
図3】
図3は、実施例1により、条件別に準備された臍帯血由来幹細胞培養液のエクソソームがヒト線維芽細胞と角質細胞の移動能に及ぶ影響を比較分析した結果である。
【
図4】
図4は、実施例1により、条件別に準備された臍帯血由来幹細胞培養液のエクソソームがヒト線維芽細胞と角質細胞の増殖能に及ぶ影響を比較分析した結果である。
【
図5】
図5は、実験例5により、炎症を誘導した環境における皮膚細胞の死滅と炎症誘導物質の分泌に及ぶ臍帯血幹細胞培養液の影響を分析した結果である。
【
図6】
図6は、実施例1により、条件別に準備された臍帯血由来幹細胞培養液のエクソソームを動物創傷モデルに処理して皮膚細胞再生に及ぼす影響を比較分析した結果である。
【
図7】
図7は、線維芽細胞(fibroblast)が生産する様々な有効成分を示す概念図である。
【
図8】
図8は、皮膚表皮(skin epidermis)の主要な構造的特徴を示す概念図である。
【
図9】
図9は、線維芽細胞(fibroblast)と角質細胞(keratinocyte)の相互作用を示す概念図である。
【0062】
[発明を実施するための具体的な内容]
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の技術的特徴を明確に示しているだけであり、本発明の保護範囲を限定することではない。
【0063】
実施例1.臍帯血幹細胞培養液の製造及び臍帯血幹細胞が分泌したエクソソームの抽出
臍帯血幹細胞(Human umbilical cord blood stem cell)を、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum)を含有するKSB-3(Basal Culture Medium)で、37℃、5%CO2培養器で1~4日間培養した後、培養バッジを除去してから、PBSで洗浄した。
【0064】
洗浄した細胞に、GDF-11(1~20ng/ml)、EGF(1~20ng/ml)、FGF2(1~20ng/ml)、TGF-β1(1~20ng/ml)、及びVEGF(1~20ng/ml)が添加されたDMEMバッジと、成長因子を含まないDMEMバッジをそれぞれ入れて、37℃、5%CO2培養器で1~4日間培養した後、500gで5分間、遠心分離後、上層液を分離してから、0.2μm~0.8μmのフィルターで濾過した。
【0065】
各条件で生産して、0.2μm~0.8μmのフィルターで濾過した培養液を、CapturemTM Exosome Isolation Kit(Takara Bio)を用いて、エクソソームを抽出した、抽出したエクソソームを、Amicon Ultra Centrifugal Filter(Merck Millipore)を活用して、PBSにバッファー交換を施した後、各試験に使用した。
【0066】
実験例1.臍帯血幹細胞培養液内の細胞外基質タンパク質含有量分析
【0067】
細胞の構造的支持などを担当する結合組織内の細胞外基質(Extracellular Molecule)は、代表的に、フィブロネクチン(Fibronectin)、コラーゲン(Collagen)、エラスチン(Elastin)のような成分があり、損傷した組織を再生する役割を果たす。
【0068】
臍帯血幹細胞培養液内の総タンパク質量を分析するために、BCA Assayを行い、臍帯血幹細胞培養液内の細胞外基質タンパク質含有量を分析するために、酵素結合免疫沈降分析法(ELISA assay)を施した。実施例1で準備した各条件の培養液を、Human Fibronectin Quantikine ELISA Kit(R&D System、MN、USC)と、Procollagen Type I C-peptide(PIP)EIA Kit(Takara bio inc、Japan)で比較分析した。
【0069】
具体的に、成長因子が含まれないバッジを用いた培養液(DMEM)と、GDF-11、EGF、FGF2、 TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた培養液の総タンパク質量と細胞外基質タンパク質成分含量とを比較分析した。
【0070】
その結果、
図1(a)から、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた培養液内に存在する総タンパク質量と、フィブロネクチン(Fibronectin)タンパク質含有量が、対照群(DMEM)に比して高いことを確認した。また、
図1(b)から、コラーゲンタンパク質(PIP)含有量が、対照群(DMEM)に比して高い水準で含有していることを確認した。
【0071】
実験例2. 臍帯血幹細胞培養液内に存在するエクソソームのサイズと濃度分析
実施例1において、条件別に培養して準備した臍帯血幹細胞培養液からエクソソームを分離した後、培養液内に存在するエクソソームのサイズと濃度を、Nanosight(ナノサイト)を活用して比較分析した。Nanosightは、溶液において、10nm~2000nmサイズのナノ粒子拡散運動をしている個別粒子を観察し分析して、ナノ粒子サイズの分布と濃度を分析することができる。
【0072】
その結果、
図2から、成長因子が含まれないバッジを用いた対照群(DMEM)と比較して、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた場合、エクソソームの数が多く、100nm程度でサイズ分布がムラなく現れることを確認した。
【0073】
実験例3. 臍帯血幹細胞培養液内エクソソームがヒト線維芽細胞と角質細胞の移動能に及ぶ影響
傷治療において、表皮細胞の移動能は主要な紀伝であり、臍帯血幹細胞の培養液内エクソソームがヒト線維芽細胞(human dermal fibroblast、HDF)と角質細胞(human keratinocyte、HKC)の移動能に及ぶ影響を確認するために、Trans-well migration Assayを施した。
【0074】
Trans-well Insertにヒト線維芽細胞と角質細胞をそれぞれ、2x104cells/wellで分周し、37℃、5%CO2条件で、1日培養した後、培養バッジを除去してから、PBSで洗浄した。実施例1で準備及び抽出した条件別エクソソームが含まれたSerum-free(血清を含まない) DMEMを100ul/well処理し、2時間後、ボトムプレート(Bottom plate)に10%Serum(血清)が含まれたDMEMを400ul入れ、37℃、5%CO2条件で、1日培養した。移動された細胞を染めるために、クリスタルバイオレット溶液(Cristal Violet Solution)で染めた後、光学顕微鏡で比較分析した。
【0075】
具体的に、成長因子が含まれないバッジ(DMEM)を用いた培養液と、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた培養液から抽出したエクソソーム2×108個を、ヒト線維芽細胞に処理し、臍帯血幹細胞を培養しない基本バッジ(Basal DMEM)を陰性対照群(non treat)として使用した。
【0076】
その結果、
図3から、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた臍帯血幹細胞培養液から分離したエクソソームを処理したヒト線維芽細胞と角質細胞の移動能が、対照群と比較して増加することを確認した。
【0077】
実験例4. 臍帯血幹細胞培養液内エクソソームがヒト線維芽細胞と角質細胞の増殖能に及ぶ影響
創傷治療において、線維芽細胞と角質細胞の増殖も、再生過程において重要な部分である。そこで、培養液のヒト線維芽細胞と角質細胞の増殖に及ぶ影響を確認するために、Proliferation Assayを行った。6well Plateにヒト線維芽細胞と角質細胞をそれぞれ、1×105cells/wellで分周し、37℃、5%CO2の条件で培養した。24時間間隔で、細胞の数を測定した。
【0078】
具体的に、成長因子が含まれないバッジ(DMEM)を用いた培養液と、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた培養液から抽出した各エクソソーム2×108個を、ヒト線維芽細胞と角質細胞に処理し、臍帯血幹細胞を培養しない基本バッジ(Basal DMEM)を、陰性対照群(non treat)として使用した。
【0079】
その結果、
図4から、成長因子GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた臍帯血幹細胞培養液から分離したエクソソームを処理したヒト線維芽細胞と角質細胞の増殖能が、対照群と比較して増加することを確認した。
【0080】
実験例5.臍帯血幹細胞培養液内エクソソームが動物創傷モデルの皮膚組織再生に及ぶ影響
【0081】
体外(In-vitro)で確認した臍帯血幹細胞分泌エクソソームが、ヒト皮膚細胞の増殖能と移動能を向上させることと同様に、体内(In-vivo)でも向上させるかを確認するため、動物創傷モデル試験を行った。6週齢のSDラット(SD Rat)の背中部分に15mmサイズの創傷を形成した後、2×108個のエクソソームを処理した。14日後、皮膚組織再生効果を確認した。
【0082】
具体的に、実施例1において、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1、及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた培養液から抽出した各エクソソーム2×108個を、動物創傷モデルに処理し、何等の処理をしない動物創傷モデルを、陰性対照群(NC)として使用した。
【0083】
その結果、
図6から、GDF-11、EGF、FGF2、TGF-β1, 及びVEGFがそれぞれ1~20ng/ml濃度で添加されたバッジを用いた臍帯血幹細胞培養液から分離したエクソソームを処理した動物創傷モデルの皮膚組織再生能が、対照群と比較して、はるかに優れていることを確認した。
【国際調査報告】