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特表2023-520539ノイズの多い過負荷無線通信システムにおける離散デジタル信号の再構成方法
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  • 特表-ノイズの多い過負荷無線通信システムにおける離散デジタル信号の再構成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ノイズの多い過負荷無線通信システムにおける離散デジタル信号の再構成方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/00 20060101AFI20230510BHJP
【FI】
H04L27/00 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560346
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-09-30
(86)【国際出願番号】 EP2021058582
(87)【国際公開番号】W WO2021198407
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】102020204397.3
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020204396.5
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102020204395.7
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388073
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ テクロノジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Str. 9, 30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダビド ゴンザレス ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】オスバルド ゴンサ
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 寛貴
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ タデウ フレイタス デ アブレウ
(72)【発明者】
【氏名】ラツヴァン-アンドレイ ストイカ
(57)【要約】
複素係数のチャネル行列を特徴とする、ノイズの多い過負荷無線通信システムにおける離散デジタル信号のコンピュータ実装再構成方法であって、信号検出器によってチャネルから信号を受信することと、受信機において雑音電力推定器によって雑音電力を測定することと、検出された信号及び雑音電力推定を、送信シンボルを推定する復号器に転送することと、を含み、復号器の推定は、送信された可能性が高いシンボルを生成し、シンボルはデマッパーに転送され、デマッパーは、推定された送信信号に対応するビット推定値及び対応する推定シンボルを、更なる処理のためにマイクロプロセッサ(218)に出力する、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複素係数のチャネル行列を特徴とする、ノイズの多い過負荷無線通信システムにおける離散デジタル信号のコンピュータ実装再構成方法であって、
信号検出器(212)によってチャネル(208)から前記信号を受信することと、
前記受信機(210)において雑音電力推定器によって前記雑音電力を測定することと、
前記検出された信号及び雑音電力推定を、送信シンボル(s)を推定する復号器(214)に転送することと、
を含み、
前記復号器(214)の前記推定は、送信された可能性が高いシンボルを生成し、前記シンボルはデマッパー(216)に転送され、前記デマッパーは、前記推定された送信信号に対応するビット推定値及び前記対応する推定シンボルを、更なる処理のためにマイクロプロセッサ(218)に出力する、
コンピュータ実装再構成方法。
【請求項2】
前記復号器(214)は、前記雑音増幅の影響を最小化するように、前記復号プロセス内で明示的に前記雑音電力推定を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記雑音増幅の影響を最小化することは、前記送信シンボルの前記推定において前記雑音電力測定値を直接考慮することによって行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記送信信号(s)を推定するために用いられる第1の関数(EQ)、第2の関数(EQ)、第3の関数(EQ)を介する前記最小化定式化に従って、前記雑音増幅の影響を最小化する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【数1】
【請求項5】
分数計画法アルゴリズムは、前記第1の関数のグローバル最小値よりも低い前記第3の関数の値を見つけることを目標とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の関数は、前記受信信号のベクトルを中心とするユークリッド距離関数である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の関数は、前記推定されたノイズ電力と送信信号電力との積である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第3の関数は、lノルムに基づくか、又は厳密に近似する関数である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
プロセッサ、揮発性及び/又は不揮発性メモリ、通信チャネル(208)において信号を受信するように適合される少なくとも1つのインターフェースを有する通信システムの受信機(R)であって、前記不揮発性メモリが、マイクロプロセッサによる実行時に請求項1~8の1つ又は複数の方法を実施するように前記受信機を構成するコンピュータプログラム命令を記憶する、受信機(R)。
【請求項10】
コンピュータ上での実行時に前記コンピュータに請求項1~8のいずれか一項に記載の方法を実行させるコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項11】
請求項10のコンピュータプログラム製品を記憶及び/又は送信する、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過負荷のシナリオにおけるデジタル無線システムの分野に関し、ノイズの多い環境において離散デジタル信号アルファベット(例えばコンスタレーション)からサンプリングされたシンボルを推定する問題に対処する。
【背景技術】
【0002】
ShannonがShannon-Weaver通信モデルを開発して以来、離散アルファベット(コンスタレーション、インデックス、コードブックなど)に情報ビットを埋め込むことは、実現可能な信号処理システムの不可欠な機能となっている。高データレートに対するこれまで以上の需要に対応し、無線システムをより高い周波数帯域(トランシーバがより多くのアンテナを使用する)で運用する傾向があるため、このような離散アルファベットシステムは急速に拡大しており、多次元の離散信号検出の問題は、これまで以上に関連性が高くなっている。さらに、最近見られる無線接続された通信デバイスの数の急速な増加は、将来の無線システムの受信機が劣決定システム条件に対処できる必要性を示唆している。
【0003】
「リソースの過負荷」又は「過負荷の通信チャネル」という表現は、通常、数Nが受信機(R)の数Nよりも大きい複数のユーザつまり送信機(T)によって同時に使用される通信チャネルを指す。受信機では、複数の送信信号が1つの重畳信号として表示される。チャネルは、シンボルの重畳を送信し、それによって「従来の」直交送信方式における利用可能なチャネルリソースの範囲を超える単一送信機によって過負荷である場合もある。したがって、直交送信方式に見られるような、例えばタイムスロットなどの間に、単一送信機がチャネルに対して排他的アクセスを行う方式と比較して、「過負荷」が発生する。過負荷チャネルは、例えば、非直交多元接続(NOMA:Non-Orthogonal Multiple Access)及び劣決定多入力多出力(MIMO:Multiple-Input Multiple-Output)チャネルを用いた無線通信システムにおいて見出され得る。
【0004】
図1及び図2は、それぞれ、直交多元接続及び非直交多元接続の基本特性を示している。図1は、例えば無線通信システムにおける、共有伝送媒体のチャネルへリソースを送信する順序付けられたアクセスの例示的な一実施形態を示している。利用可能な周波数帯域は、いくつかのチャネルに分割される。単一のチャネル、又は連続若しくは非連続チャネルの組み合わせが、一度に任意の1つの送信機によって用いられてもよい。異なるハッシュ化パターンによって示される異なる送信機は、離散タイムスロットにおいて又はいくつかの後続タイムスロットにおいて送信する可能性があり、各送信毎に送信するチャネル又はチャネルの組み合わせを変更する可能性がある。図1に示すように、任意の送信機が、より長い期間にわたって1つのチャネルリソースを用いる可能性があるが、別の送信機は、2つ以上のチャネルリソースを同時に用いる可能性があり、更に別の送信機は、より長い期間にわたって2つ以上のチャネルリソースを用いて両方を行う可能性があることに留意されたい。いずれの場合も、1つの送信機のみが一度に任意のチャネルリソース又はその組み合わせを用い、各送信機からの信号を検出及び復号することは比較的容易である。
【0005】
図2aは、図1に示したものと同じ周波数帯域を示しているが、送信機への1つ又は複数の個々のチャネルの一時的な排他的割当てが常に存在するわけではない。むしろ、周波数帯域の少なくとも一部は、複数の送信機によって同時に用いられてもよく、個々の送信機からの信号を検出及び復号することははるかに困難である。これは、異なるハッシュ化のボックスによって示されている。左から開始して、最初の3つの送信機は、直交方式で一時的な専用チャネルリソースを用いているが、次の瞬間に、2つの送信機が、部分的に重複するチャネルにおいて送信している。水平ハッシュ化パターンによって表される送信機は、図の下部に示すチャネルへの排他的アクセスを有する一方で、この送信機によって用いられる次の3つのチャネルは、破線楕円内の対角線ハッシュ化パターンによって表される別の送信機によっても用いられている。重畳は、斜めに交差したハッシュ化パターンによって示されている。同様の状況は、2つの送信機のそれぞれが2つのチャネルリソースを排他的に用いる一方で、両方が第3のものを共有する後続の瞬間に生じる。3つ以上の送信機が、それらのそれぞれが用いるチャネルリソースのうちのいくつか又は全部を少なくとも一時的に共有してもよいことに留意されたい。これらの状況は、部分過負荷又は部分NOMAと呼んでもよい。異なる表現において、図2bは、図2と同じ周波数帯域を示している。送信機への1つ又は複数の個々のチャネルの明確な一時的排他的割当てがなく、周波数帯域の少なくとも一部分が複数の送信機によって少なくとも一時的に同時に用いられるため、個々の送信機からの信号を検出及び復号することの難しさは、任意の単一の送信機を識別することができない灰色の塗りつぶしパターンによって示されている。
【0006】
C.Qian、J.Wu、Y.R.Zheng、及びZ.Wangによる“Two-stage list sphere decoding for under-determined multiple-input multiple-output systems,”IEEE Transactions on Wireless Communication,vol.12,no.12,pp.6476-6487,2013には、N個の送信アンテナとM(<N)個の受信アンテナを使用する劣決定多入力多出力(UD-MIMO:under-determined multiple-input multiple-output)システム用に、2段階リスト球体復号(LSD:list sphere decoding)アルゴリズムが提案されている。2段階LSDアルゴリズムは、N個の検出レイヤーを2つのグループに分割することにより、UD-MIMOシステムの独自の構造を利用する。グループ1には、対称MIMOシステムと同様の構造を持つレイヤー1からMが含まれる。一方、グループ2には、チャネルグラム行列のランク不足に寄与するレイヤーM+1からNが含まれる。両方のグループにツリー探索アルゴリズムが使用されるが、探索半径が異なる。受信信号の統計的特性に基づいて、グループ2のツリー探索半径を適応的に調整する新しい方法を提案する。適応ツリー探索を使用すると、計算の複雑さを大幅に軽減できる。また、ランク不足の問題に対処するために修正されたチャネルグラム行列を提案する。これは、汎用球体復号(GSD:Generalized Sphere-Decoding)アルゴリズムで使用される汎用グラム行列よりも優れた性能を提供する。シミュレーション結果は、提案された2段階LSDアルゴリズムが、ビットエラーレート(BER:Bit-Error-Rate)性能の0.1dB未満の低下で複雑さを1~2桁削減できることを示している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[1]として使用される。
【0007】
R.Hayakawa、K.Hayashi、及びM.Kanekoによる“An overloaded MIMO signal detection scheme with slab decoding and lattice reduction,”Proceedings APCC,Kyoto,Japan,Oct.2015,pp.1-5は、過負荷MIMO(多入力多出力)システムの複雑さを軽減した信号検出方式を提案している。提案された方式はまず送信信号を2つの部分に分割する。投票後ベクトルは受信アンテナと同じ数の信号要素を含み、投票前ベクトルは残りの要素を含む。次に、スラブ復号を使用して投票前ベクトルの解候補を削減し、格子削減支援MMSE(最小平均二乗誤差:Minimum Mean Square Error)-SIC(逐次干渉除去:Successive Interference Cancellation)検出によって各投票前ベクトル候補の投票後ベクトルを決定する。シミュレーション結果は、提案された方式が、必要な計算の複雑さを大幅に削減しながら、最適なML(最大尤度:Maximum Likelihood)検出とほぼ同じ性能を達成できることを示している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[2]として使用される。
【0008】
T. Datta、N. Srinidhi、A. Chockalingam及びB. S. Rajanによる“Low complexity near-optimal signal detection in underdetermined large MIMO systems,”inProc.NCC,Feb. 2012, pp.1-5は、n×n劣決定MIMO(UD-MIMO)システムにおける信号検出と考えられ、ここで、i)過負荷係数α=n>1で、n>nであり、ii)nシンボルが、空間多重化によってチャネル使用毎に送信され、iii)n、nは大きい(数十の範囲内)。反応性タブー探索に基づく低複雑性検出アルゴリズムが考えられる。低複雑性で大規模UD-MIMOシステムにおいて近最適性能を提供する、変数閾値ベースの停止基準が提案される。大規模UD-MIMOシステムの最大尤度(ML)ビットエラー性能についての下限も、比較のために取得される。提案されたアルゴリズムは、4-QAM(32bps/Hz)を用いた16×8 V-BLAST UD-MIMOシステムにおける10-2の未符号化BERにおいて0.6dBの範囲内のML下限に近いBER性能を達成することが示されている。4-QAM/16-QAMを用いた32×16、32×24 V-BLAST UD-MIMOについても類似の近ML性能結果が示されている。提案されたアルゴリズムとUD-MIMOについてのλ汎用球体復号器(λ-GSD)アルゴリズムとの間の性能及び複雑性比較は、提案されたアルゴリズムが、著しく低い複雑性においてであるがλ-GSDとほぼ同一の性能を達成することを示している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[3]として使用される。
【0009】
Y.Fadlallah、A.Aissa-El-Bey、K.Amis、D.Pastor及びR.Pyndiahによる“New Iterative Detector of MIMO Transmission Using Sparse Decomposition,”IEEE Transactions on Vehicular Technology,vol.64,no.8,pp.3458-3464,Aug.2015は、大規模多入力多出力(MIMO)システムにおける復号の問題を扱う。この場合、最適最大尤度(ML)検出器は、信号及びコンスタレーション次元に伴う複雑性の指数関数的増加に起因して非実用的になる。この論文は、許容できる複雑性オーダで反復復号手順を導入する。この論文は、有限コンスタレーション及びモデルを用いたMIMOシステムを、スパース信号ソースを用いたシステムとして考えている。この論文は、復号信号の一定の1ノルムを保持しつつ受信信号とのユークリッド距離を最小化するML緩和検出器を提案している。検出問題が凸最適化問題に等価であることも示されており、凸最適化問題は、多項式時間で解くことができる。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[4]として使用される。
【0010】
T.Wo及びP.A.Hoeherによる“A simple iterative gaussian detector for severely delay-spread MIMO channels,”in Proc. IEEE ICC,Glasgow,UK,2007は、この論文で、深刻な遅延拡散を伴う多入力多出力(MIMO)チャネルの低複雑性高性能検出アルゴリズムが提案されていると説明している。このアルゴリズムは、独立近似並びにガウス近似を適用する因子グラフに対して反復データ検出を実行する。このアルゴリズムは、深刻な遅延拡散を伴う符号化されたMIMOシステムに対してほぼ最適なBER性能を達成することが示されている。このアルゴリズムの計算の複雑さは、送信アンテナの数、受信アンテナの数、及び非ゼロのチャネル係数の数に対して厳密に線形である。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[5]として使用される。
【0011】
A.Aissa-El-Bey、D.Pastor、S.M.A.Sbai、及びY.Fadlallahによる“Sparsity-based recovery of finite alphabet solutions to underdetermined linear systems,”IEEE Trans.Inf.Theory,vol.61,no.4,pp.2008-2018,Apr.2015は、劣決定の測定値y=Afから決定論的な有限アルファベットベクトルfを推定する問題について説明しており、ここで、Aは与えられた(ランダムな)n×N行列である。1ノルム最小化による有限アルファベット信号の回復のために、2つの凸最適化法が導入されている。第1の方法は正則化に基づいている。第2のアプローチでは、問題は、適切なスパース変換後のスパース信号の回復として定式化される。正則化ベースの方法は、変換ベースの方法ほど複雑ではない。アルファベットのサイズpが2に等しく、(n,N)が比例して大きくなる場合、高い確率で信号が復元される条件は、2つの方法で同じである。p>2の場合、変換ベースの方法の動作が確立される。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[6]として使用される。
【0012】
M.Nagaharaによる“Discrete signal reconstruction by sum of absolute values,”IEEE Signal Process.Lett.,vol.22、no.10,pp.1575-1579,Oct.2015では、不完全な線形測定から有限アルファベットの値を取る未知の離散信号を再構築する問題と見なされる。この問題の難しさは、再構成の計算の複雑さがそのまま指数関数的であることである。この困難を克服するために、圧縮センシングのアイデアを拡張し、重み付き絶対値の合計を最小化することによって問題を解決することを提案している。アルファベットで定義された確率分布が既知であると仮定し、再構成問題を線形計画法として定式化する。提案された方法が有効であることを例証するために例が示されている。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[7]として使用される。
【0013】
R.Hayakawa及びK.Hayashiによる“Convex optimization-based signal detection for massive overloaded MIMO systems,”IEEE Trans.Wireless Commun.,vol.16,no.11,pp.7080-7091,Nov.2017は、受信アンテナの数が送信ストリームの数よりも少ないマッシブ多入力多出力(MIMO)システムの信号検出方式を提案している。実際のベースバンドデジタル変調を想定し、送信シンボルの離散性を利用して、絶対値の合計(SOAV:sum-of-absolute-value)最適化と呼ばれる凸最適化問題として信号検出問題を定式化する。さらに、SOAV最適化を重み付きSOAV(W-SOAV:weighted SOAV)最適化に拡張し、目的関数の重みを更新してW-SOAV最適化を解くための反復アプローチを提案する。さらに、符号化されたMIMOシステムの場合、送信されたシンボルの対数尤度比(LLR:log likelihood ratio)がMIMO検出器とチャネル復号器の間で反復的に更新される共同検出及び復号方式も提案する。加えて、W-SOAV最適化で得られる推定エラーサイズの上限に関して、理論的な性能分析が提供される。シミュレーション結果は、特に大規模過負荷MIMOシステムにおいて、提案された方式のビットエラーレート(BER)性能が従来の方式よりも優れていることを示している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[8]として使用される。
【0014】
R.Hayakawa及びK.Hayashiによる“Reconstruction of complex discrete-valued vector via convex optimization with sparse regularizers,”IEEE Access,vol.6,pp.66 499-66 512,Oct.2018は、受信アンテナの数が送信ストリームの数よりも少ないマッシブ多入力多出力(MIMO)システムの信号検出方式を提案している。実際のベースバンドデジタル変調を想定し、送信シンボルの離散性を利用して、信号検出問題は、絶対値の合計(SOAV)最適化と呼ばれる凸最適化問題として定式化される。さらに、SOAV最適化を重み付きSOAV(W-SOAV)最適化に拡張し、目的関数の重みを更新してW-SOAV最適化を解くための反復アプローチを提案する。さらに、符号化されたMIMOシステムの場合、送信されたシンボルの対数尤度比がMIMO検出器とチャネル復号器の間で繰り返し更新される共同検出及び復号方式が提案されている。加えて、W-SOAV最適化で得られる推定エラーサイズの上限に関して、理論的な性能分析が提供される。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[9]として使用される。
【0015】
Z.Hajji、A.Aissa-El-Bey、及びK.A.Cavalecによる“Simplicity-based recovery of finite-alphabet signals for large-scale MIMO systems,”Digital Signal Process.,vol.80,pp.70-82,2018は、この論文で、決定大規模システムと劣決定大規模システムの両方における有限アルファベットソース分離の問題が考慮されている。最初に、ノイズのないケースに対処し、ボックス制約と組み合わせたl最小化に基づく線形基準を提案する。また、復旧を確実に成功させるためのシステム条件も調査する。次に、このアプローチをノイズの多いマッシブMIMO送信に適用し、二次基準ベースの検出器を提案する。シミュレーション結果は、様々なQAM変調とMIMO構成に対する提案された検出方法の効率を示している。コンスタレーションのサイズが大きくなっても、計算の複雑さは変わらないことに留意されたい。さらに、提案された方法は、従来の最小平均二乗誤差(MMSE)ベースの検出アルゴリズムよりも優れている。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[10]として使用される。
【0016】
H.Iimori、G.Abreu、D.Gonzalez G.及びO.Gonsaによる“Joint detection in massive overloaded wireless systems via mixed-norm discrete vector decoding,”in Proc. Asilomar CSSC,Pacific Grove,USA,2019は、非直交多元接続(NOMA)や劣決定多入力多出力(MIMO)などの過負荷無線システム向けの新しい‘lノルムベースの多次元信号検出方式を提案している。これにより、最大尤度(ML)検出の離散性が連続的なlノルム制約に変換され、その後分数計画法(FP)によって凸化される。結果として、提案された信号検出アルゴリズムは、重み付けパラメータを適切に調整することにより、わずかなコストで、ビットエラーレート(BER)に関してML同様の性能を達成する可能性を有している。最先端技術(SotA)代替案とのシミュレーション比較が示されており、これは、SotAを上回る能力と、重み付けパラメータの最適化によるML同様の性能へのさらなる改善の可能性の両方の観点から、提案された方法の有効性を示している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[11]として使用される。
【0017】
H.Iimori,R.-A.Stoica、G.T.F.de Abreu、D.Gonzalez G.、A.Andrae、及びO.Gonsaによる“Discreteness-aware receivers for overloaded MIMO systems,”CoRR,vol.abs/2001.07560,2020.[オンライン].入手可能:https://arxiv.org/abs/2001.07560は、大規模で過負荷の多次元無線通信システムのシンボル検出に適した3つの高性能受信機について説明している。これらは、受信機での通常の完全なチャネル状態情報(CSI)の仮定に基づいて設計されている。この一般的な仮定を使用して、最大尤度(ML)検出問題は、最初に‘0ノルムベースの最適化問題に関して定式化され、その後、lノルムがlノルムに緩和されない二次変換(QT)と呼ばれる最近提案された分数計画法(FP)手法を使用して、異なる性能と複雑さのトレードオフを提供するために3つの異なる方法で変換される。離散性認識ペナルティ付きゼロフォーシング(DAPZF)受信機と呼ばれる第1のアルゴリズムは、計算の複雑さを最小限に抑えながら、最先端技術(SotA)を上回ることを目的としている。離散性認識確率的軟量子化検出器(DAPSD:discreteness-aware probabilistic soft-quantization detector)と呼ばれる第2のソリューションは、軟量子化法によって回復性能を改善するように設計されており、数値シミュレーションによって3つの中で最高の性能を達成することが分かっている。最後に、離散性認識汎用固有値検出器(DAGED:discreteness aware generalized eigenvalue detector)と名付けられた第3の方式は、他の方式と比較して性能と複雑さのトレードオフを提供するだけでなく、ペナルティパラメータをオフラインで最適化する必要がないという点で異なってもいる。シミュレーション結果は、3つの方法全てが最先端の受信機よりも優れていることを示しており、DAPZFは複雑さが大幅に軽減されている。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[12]として使用される。
【0018】
Boyd,S.、及びVandenberghe,L.(2004)によるConvex Optimization.Cambridge:Cambridge University Press. doi:10.1017/CBO9780511804441は、凸最適化の理論的基礎を講義本として説明している。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[13]として使用される。
【0019】
K.Shen及びW.Yuによる“Fractional programming for communication systems-Part I:Power control and beamforming,”IEEE Trans.Signal Process.,vol.66,no.10,pp.2616-2630,May 2018は、通信システムの設計と最適化におけるFPの使用を調査している。この論文のパートIでは、FP理論と連続問題の解決に焦点を当てている。主な理論的貢献は、複数の比率の凹凸FP問題に取り組むための新しい二次変換技術であり、従来のFP技術は、単一の比率又は最大最小比率のケースのみを扱うことができるのとは対照的である。システムレベルの設計には、多くの場合、複数の信号対干渉+ノイズ比項が含まれるため、複数比率FP問題は通信ネットワークの最適化にとって重要である。この論文では、特に電力制御、ビームフォーミング、エネルギー効率の最大化など、通信システム設計における継続的な問題を解決するためのFPの適用について考察する。これらの適用ケースは、提案された二次変換が、元の非凸問題を一連の凸問題として作り直すことによって、比率を含む最適化を大幅に促進できることを示している。このFPベースの問題の再定式化により、定常点への証明可能な収束を伴う効率的な反復最適化アルゴリズムが生まれる。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[14]として使用される。
【0020】
Kai-Kit Wong、Member and Arogyaswami Paulrajによる“Efficient High-Performance Decoding for Overloaded MIMO Antenna Systems”IEEE TRANSACTIONS ON WIRELESS COMMUNICATIONS,VOL.6,NO.5,MAY 2007は、容量を達成する前方誤り訂正符号(例えば、時空間ターボ符号)の実際的な課題は、最適な共同最大尤度(ML)復号に関連する多大な複雑さを克服していることを説明している。このため、最適なML復号性能に手頃な複雑さでアプローチするために、反復ソフト復号が研究されてきた。複数入力複数出力(MIMO)チャネルでは、賢明な復号戦略は2つの段階で構成される:1)球体復号又はその変形のリストバージョンを使用してソフトビットを推定し、2)反復ソフト復号によってソフトビットを更新する。MIMO復号器は、反復ソフト復号が実行される前の最初の段階で、信頼できるソフトビット推定値を生成する必要がある。この論文では、受信アンテナの数が空間ドメインで多重化された信号の数よりも少ない過負荷(又はファットな)MIMOアンテナシステムに焦点を当てている。このシナリオでは、球体復号の元の形式は本質的に適用できず、我々の目的は、過負荷の検出に対処するために、球体復号を幾何学的に一般化することである。提案されたいわゆるスラブ球体復号(SSD:slab-sphere decoding)は、複雑さを大幅に軽減しながら、正確なMLハード検出を取得することを保証する。SSDのリストバージョンを使用して、この論文では、効率的なMIMOソフト復号器を提案し、この復号器は、有望な性能のための反復ソフト復号の入力として、手頃な複雑さで信頼性の高いソフトビット推定値を生成できる。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[15]として使用される。
【0021】
G.D.Golden,C.J.Foschini,R.A.Valenzuela and P.W.Wolnianskyによる“Detection algorithm and initial laboratory results using V-BLAST space-time communication architecture”ELECTRONICS LETTERS 7th January 7999 Vol.35 No.Iでは、垂直BLAST(Bell Laboratories Layered Space-Time)無線通信アーキテクチャの信号検出アルゴリズムが説明されている。この共同時空アプローチを使用して、20~40ビット/秒/Hzの範囲のスペクトル効率が、屋内フェージングレートでのフラットフェージング条件下で実験室で実証されている。最近の情報理論の研究では、マルチパスを適切に利用すれば、リッチスキャッタリング無線チャネルで膨大な理論容量を実現できることが示されている。現在D-BLASTとして知られているFoschiniによって提案された対角線状にレイヤー化された時空アーキテクチャは、送信機と受信機の両方にあるマルチエレメントアンテナアレイと、コードブロックが時空間の対角線全体に分散されるエレガントな斜めにレイヤー化された符号化構造とを使用する。独立したレイリー散乱環境では、この処理構造により理論上のレートが送信アンテナの数に比例して増加し、これらのレートはシャノン容量の90%に近づく。しかしながら、対角線アプローチは、実装が複雑になるため、最初の実装には不適切である。これは、実験室でリアルタイムに実装されている、垂直BLAST又はV-BLASTとして知られるBLAST検出アルゴリズムの簡略化されたバージョンであると説明されている。実験室のプロトタイプを使用して、屋内のゆっくりとしたフェージング環境で40ビット/秒/Hzの高さのスペクトル効率を実証した。この参照文献は、本出願の説明において参照文献[16]として使用される。
【0022】
多次元離散信号検出の問題は、オーディオ及びビデオシステム、通信システム、制御システムなどを含む、信号処理に関連する最新の電気工学の様々な分野でも発生する。一般に、その目的は、ランダムな歪み、ノイズ、及び干渉にさらされた信号の限られた数の観測された測定値から、ランダム(未知)ではあるが受信者に知られている(コーディングブック、コンスタレーションなど)体系的なモデルに従ってソースから生成される情報量(シンボル)を抽出することである。
【0023】
このような大規模で決定が劣決定の可能性のあるシステムの主な課題の1つは、性能と複雑さのトレードオフである。実際、一方では、ML受信機と球体復号器[1、2]などのその古典的な最適に近い代替手段は、入力変数の数とソースのコンスタレーションのカーディナリティとともに指数関数的に増加する法外な計算の複雑さに悩まされ、問題の組み合わせ定式化を引き起こし、比較的小さな設定でも処理しにくくなる。他方では、従来の複雑性の低い線形推定器(つまり、ゼロフォーシング(ZF)及び最小平均二乗誤差(MMSE))は、劣決定の場合に深刻なビットエラーレート(BER)性能の低下につながる。過去にいくつかの複雑さの低い対応物が提案されている[3~5]が、比較的高い計算の複雑さによるスケーラビリティ又は中程度の検出能力による性能のいずれかに制限があることがわかる。
【0024】
最近、圧縮センシング(CS)方法の導入により、この分野で多くの進歩が見られた。CS方法は、多次元離散信号検出のコンテキストにおいて、[6、7]によって提案された、多項式時間で解ける新しい有限アルファベット信号正則化手法につながる。詳細に説明すると、離散性認識と呼ばれるこの新しい概念の中心となるアイデアは、探索空間の連続性を維持しながら、CS方法から最近出現した手法を使用して、可能性の高い信号の探索を離散コンスタレーションセットにバイアスすることであり、その結果凸性を保持し、したがって最適解を効率的に取得できるようにする。
【0025】
これに関連して、最近のいくつかの論文では、離散性認識受信機の設計が追求されている。[6、7]では、例えば、ノイズのない劣決定線形システムのための新しいスパース性ベースの回復方法が提案されており、これは深刻に過負荷の大規模システムでも離散信号回復の実現可能性を示している。
【0026】
受信機での復号性能に対するノイズの影響を考慮するために[8~10]は、絶対値の合計(SOAV)、複雑なスパース正則化の合計(SCSR:sum of complex sparse regularizers)及び単純性ベースの回復(SBR:simplicity-based recovery)と呼ばれる、新しい離散性認識受信機をそれぞれ開発した。これらは、従来の線形ZF及びMMSE推定器だけでなく、グラフベースの反復ガウス検出器(GIGD)[5]、Quad-min[4]、及び強化型反応性タブー探索(ERTS)[3]を含む以前の最先端技術(SotA)よりも大幅に優れていることが示された。しかしながら、後者のアプローチは、入力信号の離散性を捕捉するために元の離散性認識受信機に現れたlノルム非凸関数を置き換えるために、よく知られたlノルム近似に依存しており、検出性能を改善する可能性を示している。
【0027】
この課題に取り組むことを目的として、[11、12]の著者は、通常の凸包緩和に頼ることなく、新しいタイプの離散性認識受信機を開発した。これは、提案された方法が他のSotA(つまり、SOAV、SCSR及びSBR)より優れているだけでなく、理論上の性能限界にも近づくことを実証した。それらの主要な構成要素は2つある。適応可能なlノルム近似と分数計画法(FP)であり、これらは、処理しにくいlノルム最小化を一連の凸問題に落とし込み、近似ギャップを狭める。
【0028】
[12]において、離散性認識ペナルティ付きゼロフォーシング(DAPZF)と称する新しい離散性認識受信機は、他のSotA離散性認識検出器、即ち、上で言及したSOAV、SCSR、及びSBRよりも著しく性能が優れていることが示されており、これは、DAPZFがより優れた性能をもたらす新規のものであることを示しているが、DAPZF並びに他のSotAは、それらの検出プロセスを設計する場合に受信機におけるノイズの影響を完全には考慮していない。言い換えれば、先の離散性認識検出アルゴリズムのいずれも、性能劣化につながることが周知されている起こり得る雑音増幅を回避するよう、ノイズのいくつかの周知の挙動(例えば、分散)を利用しておらず、更なる改善の可能性を残している。
【0029】
したがって、本発明はノイズの問題に対処し、特に過負荷の通信チャネルにおいて、ノイズの多い環境下で送信離散シンボルベクトルを推定する方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、デジタル通信において使用されるシンボルが、アナログ、即ち連続領域におけるアナログ信号として最終的に送信され、且つ減衰、相互変調、歪み、及び全ての種類のエラーが、送信機からアナログ通信チャネルを通して受信機に至るまで途中で信号を不可避的に修正しているため、受信機における送信シンボルの「検出」が、使用方法に関わらず、第1に送信信号の「推定」のままであることを、認識する。ほとんどの場合、信号は、送信信号のベクトルの推定に対して信号の振幅と信号の位相によって表される。しかしながら、本明細書との関連では、「検出する」及び「推定する」という用語は、その区別がそれぞれの文脈によって示されない限り同義で使用される。推定された送信信号が一旦決定されると、それは、推定された送信シンボルに変換され、最終的には推定された送信シンボルを送信データビットにマッピングする復号器に提供される。
【0031】
本開示で言及された全ての特許出願及び特許は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
欧州特許第2019/079532号明細書、題名「Method of estimating transmit Symbol Vectors in an overloaded Communication Channel」。
欧州特許第2020/082987号明細書、題名「Method for Wireless X2X Access and Receivers for Large Multidimensional Wireless Systems」。
【0032】
本明細書に開示された全ての刊行物は、以下を含み、その全体が参照により組み込まれている。
H.Iimori、G.Abreu、D.Gonzalez G.、及びO.Gonsaによる“Joint detection in massive overloaded wireless systems via mixed-norm discrete vector decoding,”in Proc.Asilomar CSSC,Pacific Grove,USA、参照文献[11]。
H.Iimori、R.-A.Stoica、G.T.F.de Abreu、D.Gonzalez G.、A.Andrae、及びO.Gonsaによる“Discreteness-aware receivers for overloaded MIMO systems,”CoRR,vol.abs/2001.07560,2020、参照文献[12]。
Mohamed A.Suliman、Ayed M.Alrashdi、Tarig Ballal、及びTareq Y.Al-Naffour“SNR Estimation in Linear Systems with Gaussian Matrices”。1708.01466.pdf(arxiv.org)にて入手可能。この論文は、ランダム行列理論を用いてSNRを推定する最新のメカニズムを説明している。信号の電力が既知(パイロット)であるという仮定の下で、雑音電力を推定することができる。
G.E.Prescott、J.L.Hammond、及びD.R.Hertlingによる“Adaptive estimation of transmission distortion in a digital communications channel,”in IEEE Transactions on Communications,vol.36,no.9,pp.1070-1073,Sept.1988,doi:10.1109/26.7519。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲との関連では、通信チャネルは、複素係数のセット又は行列によって特徴付けられる。チャネル行列は、また、大文字Hによって参照され得る。通信チャネルは、任意の適当な媒体、例えば電磁波、音波、及び/又は光波を搬送する媒体において確立され得る。チャネル特性は、既知であり、各シンボル送信期間/時間中は一定であり、即ち、チャネル特性が経時的に変化し得る間、各シンボルの送信が一定チャネルを経験すると仮定する。
【0034】
「シンボル」という表現は、離散シンボルcのセットの要素を指し、それは、シンボルのコンスタレーションC、又はより世俗的には、送信を構成するために使用されるアルファベットを形成する。シンボルは、データの1つ又は複数のビットを表し、コンスタレーションCを用いたシステムにおいて一度に送信され得る情報の最小量を表す。送信チャネルにおいて、シンボルは、アナログ状態の組み合わせ、例えば搬送波の振幅及び位相によって表されてもよい。振幅及び位相は、例えば、複素数又はデカルト空間の横座標上の縦座標値を指してもよく、ベクトルとして扱われてもよい。シンボルのベクトルは、本明細書において、小文字sによって参照される。各送信機は、データを送信するために同じコンスタレーション(C)を使用し得る。しかしながら、送信機が異なるコンスタレーションを使用することも、同様に可能である。受信機は、それぞれの送信機において使用されるコンスタレーションについての知識を有すると仮定する。
【0035】
凸関数は関数[13]であり、関数上の任意の2点を、関数自体の上に完全に留まる直線で結ぶことができる。凸領域は、任意の次元数を有してもよく、本発明者らは、4次元以上の領域内の直線のアイデアは、可視化が困難であり得ることを認識している。
【0036】
「成分(component)」又は「要素(element)」という用語は、特にベクトルを参照するときに、以下の明細書全体を通して同義的に使用され得る。
【0037】
上記の全てに動機付けられて、ノイズ効果を信号検出手順に完全に組み込んだ本発明の検出方式の理論的基盤を提供し、したがって、離散信号検出性能の点でSotAよりも優れている。
【0038】
以下のようにモデル化される、特定されたシナリオの下で(場合によってはその下で)、一方向通信リンクを考える。
y=Hs+n (1)
ここで、N及びNはそれぞれ、システムの過負荷率が
【数1】
によって与えられるような、入出力信号の大きさである。
【0039】
上記において、
【数2】
は、入力と出力との間の測定行列であり、受信機において完全に公知であると仮定され、カーディナリティ2bの同じコンスタレーションセットC={c,・・・c2b}からサンプリングされる要素からなる正則化入力シンボルベクトルは、bがシンボル当たりのビット数を示す
【数3】
として表現され、最終的に
【数4】
は、ゼロ平均及び分散行列
【数5】
を有する独立同分布(i.i.d.)円対称複素AWGNベクトルを表し、ここでρは、基本信号対雑音比(SNR)である。SNRは、ノイズに対する所望/送信信号の電力比を示す。図3に示すように、ρ(雑音分散/電力)は、ブロック212によって周期的にサンプリングされ、信号復号器(ブロック210)に渡される。この追加ステップは、式(4)に見られるように、数学的/最適化定式化に取り込まれる。
【0040】
式(1)が与えられると、対応するML検出は、以下のように容易に表すことができる。
【数6】
これは次のように書き直すことができる。
【数7】
【0041】
従来の検出器では、ML検出は、受信信号yについての送信信号ベクトルを推定するために使用され得る。ML検出は、受信信号ベクトルyとコンスタレーションCのシンボルcのシンボルベクトルsの各々との間の距離を判定することを必要とする。計算回数は、送信機Tの数Nとともに指数関数的に増加する。
【0042】
まず、式(3)の正則化制約が満たされるのは、解s∈Cである場合に限られることを認識されたい。ただし、sにおけるCの要素の全ての異なる組み合わせをテストすることによってのみ検証できるため、制約は互いに素であり、現実的なマッシブ無線システムでは問題が処理しにくくなる。代替として、式(3)は、正則化非制約最小化問題の形で書くことができ、即ち、いくつかのペナルティパラメータλ≧0に対して、
【数8】
であり、その項は、Hの悪条件によって引き起こされる雑音増幅を回避するために導入され、雑音認識受信機設計として認識することができる。
【0043】
式4の意味、特に最適化定式化に加えられた第2項は、雑音増幅を回避するための対策と見なすことができる。
【0044】
sが最適化変数であることを考えると、sは、sが(式4においてN/ρによって表される)ノイズの影響を直接最小化するように選択され、これは、特にそれが大きい場合に、ここで明示的に現れ、従って、ノイズに対するロバスト性を生じる。
【0045】
式(4)で与えられるMLのような定式化におけるlノルムの扱いにくい非凸性に取り組むことを目的として、以下の適応的lノルム近似を導入する。
【数9】
ここで、xは長さNの任意のスパースベクトルを表し、α>0は自由選択パラメータであり、その大きさが近似のタイトネスを制御する。
【0046】
(5)を(4)に代入し、sの各要素に対応する先験的知識を考慮すると、以下が得られる。
【数10】
ここで、wi,jは、sがc及び
【数11】
と一致する確率に対応する尤度推定値を表している。
【0047】
この時点で、式(6)の目的が非凸性比率合計関数であることを強調し、これは、[14]によって示されているように、分数計画法理論において二次変換(QT)と称する技法を介して凸状にすることができる。QTを考えると、式(6)で与えられるペナルティ付き非制約最小化問題は、更に以下のように書き直すことができる。
【数12】
ここで、
【数13】
及び
【数14】
である。
【0048】
いくつかの些細な代数の後、式(7)の表現は以下のように提供することができる。
【数15】
【0049】
式(8)における問題の目的は、sの凸2次関数であり、ここからWirtinger微分を0に等しく設定することによって、以下の式が得られることに留意されたい。
【数16】
【0050】
λ=0に設定することによって、式(9)は、多次元受信機のための周知の標準LMMSEフィルタまで縮小し、従って、これは、ここで提示されるアルゴリズムの特定の場合として見て取ることができることに留意されたい。一方、式(4)から見て取ることができるように、増加するλ>0は、解が、sの全ての要素が離散集合Cに属し、その強制の「圧力」がαの大きさに反比例するようなものであることを強調するよう作用する。この特徴により、提案された方法を離散性認識LMMSE推定器と称する。
【0051】
したがって、複素係数のチャネル行列Hによって特徴付けられる過負荷通信チャネルにおいて送信される送信シンボルベクトルを推定する、本発明によるコンピュータ実施方法は、受信機Rにおいて、受信信号ベクトルyによって表される信号を受信することを含む。受信信号ベクトルyは、1つ又は複数の送信機Tから送信されるシンボルcのコンスタレーションCから選択された送信シンボルベクトルsを表す信号の重畳に、チャネルによって加えられる任意の歪み及びノイズを加えたものに対応する。
【0052】
1つより多くの送信機の場合、受信機Rが実質的に同時に、例えば所定の時間ウィンドウ内に、異なる送信機Tからシンボルの送信を受信するように、送信機Tは、時間的に同期され、即ち送信機Tと受信機Rとの間で共通の時間基準が仮定される。シンボルが同時に又は所定の時間ウィンドウ内に受信されることは、送信機Tがシンボルのシーケンスを1つずつ送信すると仮定して、全ての時間的に同期して送信されたシンボルが、後続のシンボルが受信される前に受信機Rにおいて受信されることを意味する。これは、送信機Tと受信機Rとの間の距離に依存する伝播遅延が補償されるように、送信機Tがそれらの送信の開始時間を調整する設定を含んでもよい。これは、後続シンボルを送信する間に時間ギャップが提供されることも含み得る。
【0053】
方法はさらに、コンスタレーションCの全てのシンボルcに対する受信信号ベクトルyの成分と送信シンボルベクトルsの成分を少なくとも含むコンベックス探索スペースを定義することをさらに含み、これは、正則化によって離散コンスタレーションポイントに向かって強くバイアスされ(つまり、式(4)の第3項)、同時に[6~12]を含む他のSotA離散性認識受信機とは異なり、ノイズの知識を信号検出プロセスに組み込む。
【0054】
本発明のこの雑音認識特徴は、他のSotAに優る重要な利点であり、雑音増幅を十分に抑制することができるように別の正則化項を導入することによって達成され、結果として、本発明は、離散入力に対する従来の線形最小平均二乗誤差(LMMSE)の一般化として得られる。
【0055】
通信システムの受信機は、プロセッサと、揮発性及び/又は不揮発性メモリと、通信チャネルにおいて信号を受信するよう適合される少なくとも1つのインターフェースとを有する。不揮発性メモリは、マイクロプロセッサによって実行される場合、本発明による方法の1つ又は複数の実施形態を実施するよう受信機を構成するコンピュータプログラム命令を格納していてもよい。揮発性メモリは、動作中にパラメータ及び他のデータを格納してもよい。プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ等のうちの1つと呼ばれてもよい。また、プロセッサは、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア及び/又はそれらの任意の組み合わせを用いて実装されてもよい。ハードウェアによる実装において、プロセッサは、ASIC(特定用途向け集積回路)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、DSPD(デジタル信号処理デバイス)、PLD(プログラマブル論理デバイス)、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)等のように本発明を実施するよう構成される装置を備えていてもよい。
【0056】
一方、ファームウェア又はソフトウェアを用いて本発明の実施形態を実施する場合、ファームウェア又はソフトウェアは、本発明の上述した関数又は動作を実行するためのモジュール、手続、及び/又は関数を含むように構成され得る。また、本発明を実施するように構成されるファームウェア又はソフトウェアは、プロセッサにロードされ、又はメモリに保存されて、プロセッサにより駆動される。
【0057】
開示された方法を示すフローチャートは、コンピュータソフトウェア命令又は命令群を表し得る「処理ブロック」又は「ステップ」を含む。或いは、処理ブロック又はステップは、デジタル信号プロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、若しくはグラフィック処理ユニット(GPU)などの機能的に等価な回路、又は開示された方法を実行するためのソフトウェア命令でプログラムされたコンピュータ処理ユニット(CPU)によって実行されるステップを表すことができる。本明細書に別段の指示がない限り、記載されたステップの特定のシーケンスは単なる例示であり、変更可能であることは、当業者には理解されるであろう。別段の記載がない限り、本明細書に記載のステップは順不同であり、都合のよい又は望ましい順序でステップを実行できることを意味する。
【0058】
本発明を更に、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】共有媒体への直交多元接続の簡略化された略図を示す。
図2】共有媒体への非直交多元接続の簡略化された略図を示す。
図3】ノイズの多い通信チャネルを介して通信する送信機及び受信機の例示的な一般化されたブロック図を示す。
図4】先の/既存のスキームとの比較を含む、提案する雑音認識非直交多元接続の性能評価である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1図2については、上記で詳しく説明したので、ここでは再度説明しない。
【0061】
図3は、通信チャネル208上で通信する送信機T及び受信機Rの例示的な一般化されたブロック図を示す。送信機Tは、特に、送信されるデジタルデータのソース202を含み得る。ソース202は、デジタルデータのビットを符号化器204に提供し、符号化器204は、シンボルに符号化されたデータビットを変調器206に転送する。変調器206は、例えば1つ若しくは複数のアンテナ又は任意の他の種類の信号エミッタ(図示せず)を介して、通信チャネル208に変調データを送信する。変調は、例えば、直交振幅変調(QAM)であってもよく、直交振幅変調では、送信されるシンボルが、送信信号の振幅及び位相によって表される。
【0062】
チャネル208は、無線チャネルであってもよい。しかしながら、一般化されたブロック図は、有線又は無線の任意の種類のチャネルに有効である。本発明の文脈において、媒体は共有媒体であり、即ち、複数の送信機及び受信機が同一媒体にアクセスし、より詳細には、チャネルが複数の送信機及び受信機によって共有される。
【0063】
受信機Rは、例えば、1つ若しくは複数のアンテナ又は任意の他の種類の信号受信機(図示せず)を介して、通信チャネル208を通して信号を受信する。通信チャネル208は、送信信号にノイズをもたらすことがあり、信号の振幅及び位相が、チャネルによって歪むことがある。歪みは、例えば通信チャネルを経て送信される既知の特性を有するパイロットシンボルを分析することを通して、取得され得るチャネル特性に基づいて制御される受信機において提供されるイコライザ(図示せず)によって補償され得る。同様に、ノイズは、受信機(図示せず)のフィルタによって減少又は除去され得る。
【0064】
信号検出器212は、チャネルから信号を受信し、210は、前の送信にわたって蓄積する一連の受信信号からノイズ分散を推定しようとする。信号検出器212は、推定された信号を推定されたシンボルに復号する復号器214に、推定された信号を転送する。復号が、おそらく送信された可能性があるシンボルを生成する場合に、それが、デマッパー216に転送される。デマッパー216は、推定された送信信号に対応するビット推定及び対応する推定されたシンボルを、例えばさらなる処理のためにマイクロプロセッサ218に出力する。
【0065】
信号検出器210は、チャネルから信号を受信し、受信信号からどの信号がチャネルに送信されたかを推定しようとする。信号検出器210は、推定された信号を推定されたシンボルに復号する復号器212に、推定された信号を転送する。復号が、おそらく送信された可能性があるシンボルを生成する場合に、それが、デマッパー214に転送される。デマッパー214は、推定された送信信号に対応するビット推定及び対応する推定されたシンボルを、例えばさらなる処理のためにマイクロプロセッサ216に出力する。そうではなく、復号が送信された可能性が高いシンボルを生成しない場合に、推定された信号を予想されるシンボルに復号するための試行の失敗が、異なるパラメータで信号推定を繰り返すために信号検出器にフィードバックされる。送信機の変調器及び受信機の復調器におけるデータの処理は、互いに補完的である。
【0066】
図3の送信機T及び受信機Rが、概して既知とみられるが、受信機R、及びより詳細には本発明による受信機の信号検出器210及び復号器212は、以下で説明される本発明の方法を実行し、既知の信号検出器とは異なる動作をするように適合される。
【0067】
図4は、最先端の受信機と比較した性能評価を説明している。
【0068】
提案する方法は、図4に示すように、先行技術に対して複雑さを増すことなく、信頼性(即ち、BER)に関して、特に、実用上関心のある8dBを超える動作レジームに対して性能向上を提供する。
【0069】
5G及びBeyond 5Gを実現するために、大規模多入力多出力(MIMO)、協調MIMO、ミリ波(mmWave)通信、NOMA、デバイスツーデバイス(D2D)、近接サービス(ProSe)、モバイルリレー、空中リレー、ソフトウェア定義ネットワーキング、フォグコンピューティング、及び分散型人工知能(AI)を含む、様々な技術が提案されている。多くのインフラストラクチャ機能は、この提案する方法の助けにより、ネットワークの優位性に押し出され、待ち時間を低減し、カバレッジを拡大し、汎用性を高め、膨大な数のユーザデバイスの計算リソースを活用することができる。モバイルエッジコンピューティング(MEC)は、モバイルデバイスからオフロードされた計算負荷の高いジョブを迅速に処理し、従って、エンドツーエンドの待ち時間を低減することができる。エッジコンピューティングモジュールは、ベーストランシーバ局、中継局、又はユーザ機器内にあってもよい。
【0070】
本明細書中に開示する態様は、セルラー、モバイルブロードバンド、車両アドホックネットワーク、固定ブロードバンド、モノのインターネット(IoT)、ピアツーピアネットワーク、メッシュネットワーク、ワイヤレスパーソナルエリアネットワーク(WPAN)、ワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)、ワイヤレスセンサネットワーク、空中ネットワーク、衛星ネットワーク、ネットワークファブリック、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)、及びハイブリッドネットワークを含む(がこれらに限定されない)、本明細書中に開示する無線規格及びユースケースファミリーに広く適用可能である。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】