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特表2023-520549コーティングされたチューインガム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】コーティングされたチューインガム組成物
(51)【国際特許分類】
   A23G 4/00 20060101AFI20230510BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
A23G4/00
A23G3/34 109
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560456
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 IN2021050331
(87)【国際公開番号】W WO2021199084
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】202041014956
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522389634
【氏名又は名称】エイザント ドラッグ リサーチ ソリューションズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ルドララジュ ヴァルマ シュリニヴァーサ,ラジャセカラ
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB13
4B014GE03
4B014GK03
4B014GK08
4B014GL01
4B014GL03
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP20
4B014GQ17
(57)【要約】
本発明は、チューインガム組成物およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、コーティング配合物中に高粘度グレードポリマー、特に高粘度グレードセルロースエーテルを含むチューインガム組成物に関する。当該チューインガム組成物は、咀嚼の最初の数分間にわたって持続する改善されたクランキーなテクスチャを提供する。本発明は、安定なチューインガム製品であって、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層は、高粘度グレードポリマーを含む、チューインガム製品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューインガムにクランチを提供するためのコーティング組成物であって、
前記コーティング組成物は、20℃の2重量パーセント水溶液中で約1000センチポアズ(cP)(1000mPa・s)~約100,000cP(100,000mPa・s)の粘度特性を有する高粘度グレードポリマーを含む、
コーティング組成物。
【請求項2】
前記高粘度グレードポリマーは、高粘度グレードセルロースエーテルである、
請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記高粘度グレードセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群、またはそれらの混合物から選択される、
請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
改善されたクランチチューインガム製品であって:
i.ガムコア、および、
ii.前記コアを囲む少なくとも1つのコーティング;
を含み、
コーティング部分は、20℃の2重量パーセント水溶液中で約1000センチポアズ(cP)(1000mPa・s)~約100,000cP(100,000mPa・s)の粘度特性を有する高粘度グレードポリマーを含む、
チューインガム製品。
【請求項5】
前記高粘度グレードポリマーは、高粘度グレードセルロースエーテルである、
請求項4に記載のチューインガム製品。
【請求項6】
前記高粘度グレードセルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースからなる群、またはそれらの混合物から選択される、
請求項4に記載のチューインガム製品。
【請求項7】
i.圧縮性チューインガム基材および少なくとも1つの生物学的活性成分を含むコア;
ii.前記コアを囲む少なくとも1つのコーティング;
を含み、
コーティング部分は、20℃の2重量パーセント水溶液中で約1000センチポアズ(cP)(1000mPa・s)~約100,000cP(100,000mPa・s)の粘度特性を有する高粘度グレードポリマーを含む、
請求項4に記載のチューインガム製品。
【請求項8】
前記チューインガムは、安定剤、保存料、抗酸化剤、軟化剤、増粘剤、乳化剤、流動化剤、滑沢剤、甘味料、ゲル化剤、増強剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、フッ素および歯のホワイトニング剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の添加剤をさらに含む、
請求項4に記載のチューインガム製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔相互参照〕
[0001]本出願は、2020年4月3日に出願されたインド仮特許出願第202041014956号の優先権を主張する。その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本発明は、チューインガム組成物およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、コーティング配合物中に高粘度グレードポリマー、特に高粘度グレードセルロースエーテルを含むチューインガム組成物に関する。当該チューインガム組成物は、咀嚼の最初の数分間にわたって持続する改善されたクランチ感を提供する。
【0003】
〔発明の背景〕
チューインガム製造の技術は、高度に確立されている。適切なガム配合物は伝統的に、1つ以上の水不溶性エラストマー、天然、合成またはその両方の香料、甘味料などを相当量含む。ペレットチューインガムを含むチューインガムは、硬質または軟質コーティングで包まれることが多い。コーティングは、味、外観および栄養価などの製品特性を変化させる機会を製造業者に提供する。クランチ(crunch)を有する糖ベースのガムは、近年商業的に重要になってきている。そのようなガムは、求められるクランチを提供するスクロースの結晶または顆粒糖の結晶を含む。顆粒糖によって提供されるクランチは、本質的には硬くてわずかにざらつき感があると言われている。クランチ感がある無糖ガムを製造するための、許容可能であってなおクランチ感がある代替物を見出すことが求められている。
【0004】
近年、チューインガムにおいて使用するための無糖の硬質コーティングを配合するために、相当な研究が費やされている。商業的に許容されるようにするために、無糖の代替物は、クランチ性が実質的に消失するまでに長い咀嚼時間を有し、長い貯蔵期間を有することが好ましい。この点に関して、内部に分散したクランチ添加剤を有する、クランチを提供するガムは、製造および貯蔵の問題が全く異なるため、硬質な外側コーティングを有するガムとは類似していない。無糖の代替物によって提供されるクランチは、顆粒糖によって提供されるクランチと類似していることも好ましい。
【0005】
糖アルコールとして知られるポリオールは、無糖クランチを提供するために見込みのある候補である。その例は、ソルビトール、マンニトール、マルトース、キシリトールなどである。しかしながら、クランチを提供することに加えて、特定のポリオールは貯蔵安定性でなければならない。すなわち、クランチ性は、商業的に許容可能な貯蔵時間後に保持されなければならない。さらに、ガム製品中の香料および軟化剤は、ポリオールを軟化させてクランチを減少させるべきではなく、添加剤の配合プロセスは、経済的に実行可能なものであるべきである。米国特許第5,958,472号および第5,536,511号は、望ましいクランチおよびテクスチャを実現するためのポリオールコーティングの使用を開示している。
【0006】
Fronczkowskiらの米国特許第4,127,677号は、95~99.5%のキシリトールを含有するキシリトールコーティングチューインガムを開示している。これは、無糖ガムのためのコーティングとして使用することができる。しかしながら、様々な理由から、キシリトール含有チューインガムは、満足のいく消費者承認を得ていない。
【0007】
可塑剤および甘味料として長く使用されているソルビトールは、無糖チューインガムのための無糖キャンディコーティングを形成する際の糖の代替物として提案されている。しかし、残念ながら、水性コーティング溶液でソルビトールがチューインガムコアに塗布される場合、ソルビトールは、薄い結晶性コーティングを形成するようには再結晶しないことが見出された。さらに、ソルビトールチューイング工程に供されたチューインガムコアは、互いに固着し、望ましくない塊を形成する。
【0008】
粒状物質がチューインガム組成物中に組み込まれ、結果として得られる製品がいくらか「クランキー」なテクスチャを有するような従来技術も存在する。例えば、米国特許第4,486,511号および第4,792,453号に開示されている硬質糖コーティングガム、および米国特許第3,962,463号に開示されている表面印刷された固体粒子を有するガムなど、「クランキー」な外側コーティングを有するチューインガムがこれまでに開示されている。このような開示は、ガムの「クランキー」な外表面に限定されており、したがって全体的なテクスチャ感覚を提供しない。
【0009】
さらに、少なくとも部分的には「クランキー」なテクスチャを提供する目的で、糖および糖代替物(イソマルト、キャンディーなど)が、時にはフリーズドライ食料品と併せて、ガムのボディ全体に分散している菓子ガムも知られている(FR2,748,902;GB950,811;EP017,691;米国特許第5,958,472号および第5,017,385号)。これらの後者の開示は、ガムに「クランキー」な感覚を付与する際に有用な進歩を提供するが、当該開示は、口腔ケア活性物質自体の使用によってではなく、食料品の使用によって、これを成す。
【0010】
クランチ感、特に、顆粒糖によって提供されるものと同様のクランチ感を有するチューインガム製品を形成するために利用することができ、長時間の咀嚼時間にわたってこのクランチ感を維持する、無糖添加剤を提供することが望ましい。商業的に望ましい貯蔵状態でこの特性を維持する、クランチ感を有するガムを提供することがさらに望ましい。
【0011】
〔発明の概要〕
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、咀嚼の最初の数分間にわたって持続する改善されたクランキーなテクスチャを提供する、安定なチューインガム組成物を提供することである。
【0012】
一実施形態において、本発明は、安定なチューインガム製品であって、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層は、高粘度グレードポリマーを含む、チューインガム製品を提供する。
【0013】
別の一実施形態において、本発明は、安定なチューインガム組成物であって、改善されたクランキーなテクスチャを提供し、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層、典型的には外側コーティング層は、高粘度グレードポリマー、特には高粘度グレードセルロースエーテルを含む、チューインガム組成物を提供する。
【0014】
さらに別の一実施形態において、本発明は、安定なチューインガム組成物であって、改善されたクランキーなテクスチャを提供し、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層、典型的には外側コーティング層は、高粘度グレードポリマー、特には高粘度グレードセルロースエーテルを含み;ガムコアは、1つ以上の生物学的活性成分を含む、チューインガム組成物を提供する。
【0015】
また別の一実施形態において、本発明は、安定なコーティングチューインガムであって、錠剤圧縮技術によって製造することができ、したがって従来のチューインガムの製造に必要な特有の(例えば、溶融押出し)装置を必要としない、コーティングチューインガムを提供する。
【0016】
〔発明の詳細な説明〕
以下の節では、本発明の種々の態様をより詳細に説明する。このように説明された態様それぞれは、そうでないことが明確に示されない限り、任意の他の態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示される任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示される任意の他の特徴と組み合わせることができる。
【0017】
本発明は、改善されたクランキーなテクスチャを提供する安定なチューインガム組成物、およびその製造方法に関する。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「チューインガム」は、バブルガムなども含む。特に明記しない限り、すべての割合は重量パーセントで示される。
【0019】
本発明は、安定なチューインガム組成物であって、改善されたクランキーなテクスチャを提供し、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層、典型的には外側コーティング層は、高粘度グレードポリマー、特には高粘度グレードセルロースエーテルを含む、チューインガム組成物を提供する。
【0020】
高粘度グレードセルロースエーテルの重要な特徴は、それらが非毒性、非イオン性、不活性および可食性であることである。高粘度グレードセルロースエーテルは、フィルム形成剤、増粘剤、ブロッキング剤、徐放剤、乳化剤および懸濁剤として、様々な剤形で医薬産業において広く使用されており、したがって、あらゆる種類の医薬製剤をより均一に分散させるか、または徐放効果を持たせるか、または層化することなく安定なエマルジョンとする。
【0021】
本発明者らは驚くべきことに、ガムコアを囲むコーティング層中に高粘度グレードセルロースエーテルを組み込むことにより、クランチが提供され、特には、顆粒糖によって提供されるものと類似する、テクスチャおよび口当たりを有する望ましいクランチが完成品のガム組成物に提供されることを見出した。
【0022】
本発明者らは驚くべきことに、ガムコアを囲むコーティング層中に高粘度グレードセルロースエーテルを組み込むことにより、クランチが提供され、特には、チューインガムコアに組み込まれた医薬活性成分の放出プロファイルに影響を及ぼすことなく、顆粒糖によって提供されるものと類似する、テクスチャおよび口当たりを有する望ましいクランチが完成品のガム組成物に提供されることを見出した。
【0023】
本発明において有用な特定のセルロースエーテルは、高粘度グレードものである。「高粘度グレード」とは、それらのセルロースエーテルが、2重量パーセント水溶液としたときに、20℃で、約1000センチポアズ(cP)(1000mPa・s)を超える粘度を示し、100,000cP(100,000mPa・s)ほどの高さの粘度を有してもよいことを意味する。このような粘度は一般に、従来の方法によって測定することができ、例えば、規定の温度で、ウベロードキャピラリー管中の所望の濃度のポリマーの水溶液の粘度を測定することによって、測定することができる。
【0024】
高粘度グレードセルロースエーテルのうちいくつかは、様々な実施形態において、化学的分類であるヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースに属する。本発明の好適なセルロースエーテルの例は、METHOCELTM(The Dow Chemical Company、Midland、MI、USAから入手可能)およびMETOLOSETMまたはPHARMACOATTM(信越化学社、東京、日本から入手可能)などの市販されているものを含む。METHOCELTMセルロースエーテルは、例えば、多種多様な分子量、置換パターンおよび粘度特性において入手することができるため、特に有利である。特に、METHOCELTMKシリーズとして販売されているヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにMETHOCELTME、FおよびJシリーズの特定のポリマーおよびポリマーの組合せは、特に好適である。METHOCELTMAシリーズの特定の高分子量メチルセルロースポリマーもまた、好適である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、用語「安定な」とは、配合物が、従来の医薬包装中で25℃および相対湿度60%で保存されたときに、少なくとも12ヶ月、好ましくは少なくとも24ヶ月の許容可能な医薬品貯蔵寿命を有することを意味する。したがって、本発明の一実施形態において、チューインガムは、化学的および物理的に安定であり、従来の医薬包装中で25℃および相対湿度60%で保存されたときに、少なくとも12ヶ月、好ましくは少なくとも24ヶ月の貯蔵寿命を有する。
【0026】
本発明はまた、安定なチューインガム組成物であって、改善されたクランキーなテクスチャおよび口当たりを特徴とし、少なくとも1つのガムコアおよびコアを囲む少なくとも1つのコーティング層を含み、コーティング層、典型的には外側コーティング層は、高粘度グレードポリマー、特には高粘度グレードセルロースエーテルを含み;ガムコアは、1つ以上の生物学的活性成分を含む、チューインガム組成物を提供する。
【0027】
本発明のチューインガム組成物は、以下の活性剤のうち1つ以上を含み得る:生理学的活性成分、栄養補給剤または薬学的活性成分。活性剤の非限定的な例は、ビタミン、酵素、アミノ酸補給剤、タンパク質、ガム、炭水化物、植物化学物質、デキストロース、レシチン、他の微量栄養素、脳刺激物質、エネルギー供給源、ミネラル、ミネラル塩、植物抽出物、抗酸化剤、プレバイオティクス細菌、プロバイオティクス細菌、脂肪酸、大麦ベータグルカンもしくは他の機能性繊維、クレアチン、カルニチン、重炭酸塩、クエン酸塩、ビバゾール、またはこれらの任意の混合物を含むが、これらに限定されない。
【0028】
チューインガム中に存在する活性成分の量は、要件および使用される実際の成分に依存し得る。例えば、いくつかの活性成分は、ビタミンおよびミネラル(微量栄養素)などの非常に低い用量で高い機能的活性を有するが、デキストロース(多量栄養素)などの他の活性成分ははるかに多い量で身体に有益である。
【0029】
一般に、チューインガム組成物は、典型的には、本質的に水を含まず水不溶性であるチュアブルガム基材部分、水溶性バルク部分、および典型的には水不溶性である香料を含む。水溶性部分は、咀嚼中にある期間にわたって香料の一部と共に消散する。ガム基材部分は、咀嚼中を通じて口腔内に保持される。本発明のチューインガム組成物は、上記で概説した一般的なパターンに従う。
【0030】
不溶性ガム基材は一般に、エラストマー、エラストマー溶媒、可塑剤、ワックス、乳化剤および無機充填剤を含む。いくらか可塑性として挙動するポリ酢酸ビニルなどのプラスチックポリマーもまた、含まれることが多い。使用され得る他のプラスチックポリマーは、ポリビニルラウレート、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンを含む。さらに、ガム基材は、抗酸化剤、着色剤および香料などの任意の成分も含み得る。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、不溶性ガム基材は、ガムの約5%~約95%を構成する。本発明は、任意の商業的に許容可能なガム基材を使用することを企図する。
【0032】
チューインガムの水溶性部分は、軟化剤、甘味料、香料およびそれらの組合せをさらに含んでもよい。甘味料は、ガムにおいてバルク剤の役割を果たすことが多い。バルク剤は、典型的にはガム組成物の約5%~約95%を含む。
【0033】
本発明者らはまた、ガムコアを囲むコーティング層が、組成物からの生物学的活性成分の効率的な放出、および対象の口腔におけるその迅速な経粘膜取り込みにとって、重要であることも見出した。したがって、本発明の別の特徴は、ガムコアを囲む種々のタイプのコーティング層を思慮深く選択して適用することにあり、結果として、チューインガムからの生物学的活性成分の放出速度が速く、および活性物質の口腔内吸収を増強する口腔粘膜内の環境を提供する、優れた費用効率の高いチューインガム製品が得られる。
【0034】
さらに、コーティングの存在は、コーティングされていないチューインガムコアへの水および酸素の進入を妨げることによって、チューインガムの安定性を向上させる。典型的には、ポリオールコーティングが考慮され、そのうち無糖コーティング配合物が好ましい。
【0035】
したがって、一実施形態において、本発明のチューインガムは、少なくとも1つのポリオールを含むコーティング、好ましくは驚くべきことにキシリトールを含むコーティングで、コーティングされる。典型的には、コーティングの量は、コーティングされていないチューインガムの約5~50%、好ましくは10~30%である。典型的には、無糖コーティング混合物は、ポリオール(例えば、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトールまたはイソマルト)、バインダ、例えば(a)ガム(例えば、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、アカシアガム、キサンタンガム、アルギン酸、アルギン酸の塩、例えばアルギン酸ナトリウム、ゲランガム、グルコマンナンガム、カラギーナンガム、カラバガム、ローカストビーンガムまたはタラガム、特にはアラビアガム)または(b)ゼラチンなどのタンパク質型バインダ;および任意で、使用される任意の香料、染料および微量の研磨剤(とりわけタルクおよび/またはカルナウバワックス)を含む。
【0036】
本発明のチューインガムは、少なくとも1つの香味付けされたコーティングをさらに含む。これらのコーティングは、大部分の香料の添加を可能にし、それによって香味感の延長を補助する。
【0037】
香料は、1つ以上の合成または天然の香料または着香剤を含んでもよい。
【0038】
香料は、以下から選択され得る:エステル、アルデヒドおよびラクトンの混合物を含む細断された花、葉、皮または溶けた果実全体の、蒸留物、溶媒抽出物または凍結発現物を含む芳香油;芳香油の希釈溶液または、例えばイチゴ、ラズベリーおよびブラックカラントなどの果実の天然香味と一致するようにブレンドされた合成化学物質の混合物のいずれかを含むエッセンス;例えばコニャック、ウイスキー、ラム、シェリー、ポートワインおよびワインなどの醸造物および酒の合成および天然香料;タバコ、コーヒー、紅茶、ココア、およびミント;例えばレモン、オレンジおよびライムなどの、洗浄されて擦り落とされた果実から出るジュースを含む果汁;スペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、シナモン、カコエ(cacoe)/ココア、バニラ、甘草、ユーカリ、アニスナッツ(例えば、ピーナッツ、ココナッツ、ヘーゼルナッツ、チェストナッツ、クルミ、コーラナッツ)、アーモンド、レーズン:および、粉末、小麦粉、または、例えばニコチンの濃度に有意に寄与しない量のニコチアナ属などのタバコの植物部分を含む植物材料部分、ショウガ。
【0039】
典型的な一実施形態において、本発明のチューインガムは、バインダをさらに含む香味付けされたコーティングでコーティングされている。バインダは好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、プルラン、トラガントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルポリマー、アミロース、高アミロースデンプン、ヒドロキシプロピル化高アミロースデンプン、デキストリン、ペクチン、キチン、キトサン、ゼラチン、ゼイン、グルテン、大豆タンパク質単離物、ホエータンパク質単離物、カゼイン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。
【0040】
好ましい一実施形態において、本発明のチューインガムは、上記で定義されたような香料、特にはミント香料;および上記で定義されたようなバインダ、特にはヒプロメロース;を含む香味付けされたコーティングでコーティングされている。典型的には、バインダは、コーティング質量全体の0.5~30%の量で存在する。
【0041】
本発明の一実施形態において、チューインガムコアは、シールコーティングおよび香料コーティングでコーティングされてもよく、ここで、高粘度グレードセルロースポリマーは香料コーティングに組み込まれる。
【0042】
本発明のさらに別の一実施形態において、チューインガムコアは、香料コーティングでコーティングされてもよく、ここで、高粘度グレードセルロースポリマーは香料コーティングに組み込まれる。
【0043】
本発明の一実施形態において、チューインガムコアは、シールコーティングおよび香料コーティングでコーティングされてもよく、ここで、高粘度グレードポリマーはコーティング層のいずれかまたは両方に組み込まれる。
【0044】
本組成物のチューインガムは、外側硬質コーティング上に外側つや出しコーティングをさらに含んでもよい。
【0045】
チューインガム中のチューインガムコアおよび/またはコーティング層に、他の添加剤が任意に添加されてもよい。
【0046】
任意の添加剤は、安定剤、保存料、例えば抗酸化剤;軟化剤、増粘剤、乳化剤、流動化剤、滑沢剤、甘味料、ゲル化剤、増強剤、着色剤、ビタミン、ミネラル、フッ素および歯のホワイトニング剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つ以上の添加剤をさらに含む。本発明によれば、このような添加剤のうち少なくとも1つが、任意に製品に添加される。
【0047】
増強剤は、本質的には、口腔からの経粘膜取り込みを改善する、すなわち増加させるために添加される。
【0048】
甘味料は、本質的には味を改善するために添加される。
【0049】
甘味料は、1つ以上の合成または天然の糖、すなわち、甘味料としての使用に適した任意の形態の炭水化物、ならびに、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、例えばNutraSweet.RTM.、またはアセスルファム、アセスルファムカリウム、タウマチン、グリチルリチン、スクラロース、ジヒドロカルコン、アリターム、ミラクリン、モネリンなどのいわゆる人工甘味料を含む。
【0050】
好適な甘味料は、以下からなる群から選択されてもよい:ソルビトール、キシリトール、サトウキビおよびテンサイから抽出された単糖(スクロース)、デキストロース(グルコースとも呼ばれる)、フルクトース(レブロースとも呼ばれる)およびラクトース(乳糖とも呼ばれる)などの糖アルコール;ソルビトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール、マルチトールシロップ(または水素化デンプン加水分解物)、イソマルト、ラクチトール;および、例えばデキストロース、マルトースおよび様々な複合糖を含むデンプン加水分解物などのグルコースシロップ、例えばデキストロースおよびフルクトースの混合物を含む、添加酵素(スクラーゼまたはサッカラーゼとも呼ばれる)によって転化されたスクロースなどの転化糖シロップ、特定のレブロース、デキストロース、マルトース、ラクチトール、スクロース、樹脂、デキストリンおよびより高糖の混合物を含む糖蜜および蜂蜜などの糖高含量シロップを含む、糖の混合物;ならびに、麦芽または麦芽抽出物。
【0051】
着色添加剤は、食品添加物として認可されている染料から選択することができる。
【0052】
安定化添加剤は、以下からなる群から選択されてもよい:ビタミンE、すなわちトコフェロール、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、エデト酸およびエデト酸塩を含む抗酸化剤;ならびに、クエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、安息香酸およびソルビン酸を含む保存料。好ましい実施形態は、安定剤として抗酸化剤を含み、さらにより好ましくは抗酸化剤であるビタミンEおよび/またはブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含む。
【0053】
本発明は、錠剤化技術によって製造することができ、したがって従来のチューインガムの製造に必要な特有の(例えば、溶融押出し)装置を必要としない、クランキーなチューインガムをさらに提供する。
【0054】
用語「錠剤化」は、一方では好ましくは従来の錠剤化技術を含むが、他方では任意の高度な錠剤化技術も含む。それらはすべて共通して、力を加えること、すなわちチューインガムのすべての成分の混合物を圧縮することを含む。
【0055】
本発明に係るコーティングされたチューインガム製品は、コアの総数、および含まれることになるコーティングされた層の総数に応じて、いくつかの製造工程において維持されてもよい。
【0056】
本発明に係るコーティングされたチューインガムを製造するための典型的な方法が開示される。当該方法は、以下の工程を含む:
a)チューインガムコアを準備する工程、
b)高粘度セルロースエーテルを含む少なくとも1つのコーティング層を準備する工程、および、
c)チューインガムコアをコーティング層でコーティングする工程。
【0057】
本発明の好ましい実施形態のうち1つにおいて、チューインガムは、以下の工程によって製造された:
a)生物学的活性成分を、液体香料中に分散させる工程;
b)次いで、工程a)で得られた分散液をガム基材上に吸着させる工程;
c)次いで、工程b)で得られた活性吸着ガム基材を他の薬学的に許容可能な賦形剤とブレンドして、均一で流れるように動く塊を得る工程;
d)次いで、工程c)で得られたブレンドを顆粒化し、圧縮して錠剤を形成する工程;および、
e)次いで、工程d)で得られた圧縮ガムコアまたは錠剤を、以下によって、高粘度セルロースエーテルを含む少なくとも1つのコーティング層でコーティングする工程:
i.プレスコーティング、および/または、
ii.スプレーコーティング、および/または、
iii.溶融コーティング。
【0058】
口内において、チューインガムは最初、咀嚼の最初の数分間持続するクランキーのテクスチャを有し、次いで通常の粘着性チューインガムになる、。
【0059】
本発明の原理、好ましい実施形態、および動作の態様が、前述の明細書において記載されてきた。しかしながら、本願で保護されることが意図される本発明は、開示される特定の形態に限定されると解釈されるべきではなく、これは、開示される特定の形態が限定的ではなく例示的であるとみなされるべきであるからである。当業者は、本発明の精神から逸脱すること無しに、変形および変更を行うことができる。
【0060】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであるが、本発明の範囲を限定するものであると解釈されるべきでは決してない。特に、処理条件は単なる例示に過ぎず、当業者によって容易に変更することができる。
【0061】
〔実施例〕
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【0066】
実施例5:コーティングされたチューインガム組成物
【0067】
【表5】
【0068】
手順:
a)香料をガム基材の一部に吸着させた、
b)工程a)の混合器にコロイダルシリカを添加し、適切な速度で十分な時間混練して、顆粒を形成させた、
c)残りの成分(ステアリン酸マグネシウムを除く)をガム基材の残りの部分と混合した、
d)次いで、工程c)で得られた追加の顆粒塊を、工程(b)の香料が吸着した顆粒とブレンドした、
e)次いで、工程d)で得られたブレンドを潤滑にし、圧縮した。
【0069】
【表6】
【0070】
手順:
i)シールコーティング:
a)ポリエチレングリコール6000を精製水に溶かし、透明溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。
【0071】
b)工程a)で得られた透明溶液にヒプロメロースE5LVを添加し、透明な粘性溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。
【0072】
c)工程b)で得られた溶液にヒプロメロースE15LVを添加し、透明な粘性溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。
【0073】
d)ガムコアをコーティングパンに移し、予熱した。
【0074】
e)コーティング溶液を、連続フィルムコーティング処理によってガムコア床上に噴霧した。
【0075】
f)次いで、コーティングされたガムコアを乾燥させた。
【0076】
ii)香料コーティング:
g)酸化第二鉄(黄色)をふるいにかけ、連続的に撹拌しながら精製水に添加した。
【0077】
h)ヒドロキシプロピルメチルセルロースK100 LVCRを、工程g)で得られた溶液に溶かし、黄色の透明な粘性溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。
【0078】
i)キシリトールを必要量の水に溶かし、透明な粘性溶液が形成されるまで連続的に撹拌した。
【0079】
j)タルクおよび二酸化チタンを必要量の水に分散させ、均一な分散液が形成されるまで均質化した。
【0080】
k)工程i)のキシリトール溶液を、工程h)のHPMC K100 LCVR溶液に添加し、混合して均一物を得た。
【0081】
l)ホワイトアイスミント香料を、工程k)で得られた溶液に添加し、連続的に撹拌した。
【0082】
m)工程j)の二酸化チタンおよびタルクの分散液を、残量の精製水と共に工程l)で得られた溶液に添加し、連続的に撹拌して均一物を得た。
【0083】
n)工程f)で得られたシールコーティングされたガムコアを予熱し、工程m)で得られたコーティング分散液を、連続フィルムコーティング処理によってシールコーティングされたガム床上に噴霧した。
【0084】
o)次いで、香料コーティングされたガムコアを乾燥させた。
【0085】
iii)つや出しコーティング:
p)Insta glowを必要量の精製水に溶かした。
【0086】
q)工程o)で得られた香料コーティングされたガムコアを予熱し、工程p)で得られたコーティング溶液を、連続フィルムコーティング処理によってシールコーティングされたガム床上に噴霧した。
【0087】
r)次いで、コーティングされたガムコアを乾燥させた。
【0088】
実施例6:比較咀嚼試験
二重の咀嚼試験を行い、(1)経時的なクランチの持続時間、および(2)官能効果を評価した。
【0089】
〔経時的なクランチの持続時間〕
2組のコーティングされたチューインガム(実施例Aおよび比較例B)を、実施例5)に示されるコア組成物を用いて製造した。
【0090】
実施例Aは、実施例5)にて説明されるコーティング組成物に従ってコーティングし、比較例Bは、以下のコーティング組成物でコーティングした。
【0091】
【表7】
【0092】
手順:
a)キサンタンガムを、連続的に撹拌しながら必要量の精製水に溶かし、透明な粘性溶液を得た、
b)キシリトール、タルクおよび染料を工程a)の溶液に添加し、連続的に撹拌した。
【0093】
c)実施例5)に従って得られたガムコアをコーティングパンに移し、工程b)で得られたコーティング分散液をコア上に噴霧し、コーティングされたコアを乾燥させた。
【0094】
d)香料コーティングの成分を精製水に一度に1つずつ添加し、連続的に撹拌した。
【0095】
e)工程d)で得られたコーティング分散液を、工程c)で得られたポリオールコーティングされたガムコア上に噴霧した。
【0096】
f)次いで、工程e)のコーティングされたガムコアを、Insta glowの精製水溶液でコーティングし、乾燥させた。
【0097】
室温で10日間焼戻した後、2組のチューインガム製品を85°Fおよび相対湿度70%で保存し、約2ヶ月の期間にわたってクランチさについて試験した。
【0098】
試験には、1人以上の個人が関与し、当該個人は、ペレットコーティングに噛み込むことによってペレットコーティングのクランチさを試験し、クランチを0~5の段階で評価した。0はクランチ性が非常に低く、5はクランチさが高い。結果を表1に示す。
【0099】
【表8】
【0100】
表1は、実施例Aのチューインガム製品が比較例Bのチューインガム製品よりも極めて長い期間、高水準のクランチを維持したことを示す。
【0101】
〔官能効果〕
クランチの持続時間の試験中に、同時に2組のコーティングされたチューインガム製品(実施例Aおよび比較例B)を官能性(感覚上の印象)について評価した。
【0102】
専門家パネルは、実施例Aのガム製品が、平滑な表面を有し、顆粒糖と非常に類似した、本質的には硬くてわずかにざらつき感があるクランチを提供し、「クランチ」ガムに求められる所望のテクスチャおよび効果を提供することを見出した。クランチは、2分間以上一定のままであり、5分間の咀嚼中に徐々に減少した。比較例Bのガム製品は、粗い表面を有することが見出され、比較すると柔らかくクランキーさが少ないと評価された。
【0103】
ここで、本発明を十分に説明してきたが、本明細書に記載の本発明の精神または範囲から逸脱すること無しに、多くの変形および変更を行うことができることが、当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】