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特表2023-520572オルソゴナルな受容体を発現するようにゲノムが改変されたヒト免疫細胞
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  • 特表-オルソゴナルな受容体を発現するようにゲノムが改変されたヒト免疫細胞 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】オルソゴナルな受容体を発現するようにゲノムが改変されたヒト免疫細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20230510BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230510BHJP
   C12N 5/078 20100101ALI20230510BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230510BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230510BHJP
   C12N 9/22 20060101ALI20230510BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230510BHJP
   C07K 14/72 20060101ALN20230510BHJP
   C12N 15/83 20060101ALN20230510BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230510BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N5/10 ZNA
C12N5/078
C07K14/705
C12N15/62 Z
C12N9/22
C07K19/00
C07K14/72
C12N15/83 Z
C12N15/09 110
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560865
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021026050
(87)【国際公開番号】W WO2021207274
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/005,975
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522232064
【氏名又は名称】シンセカイン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ペナフロル アスプリア ポール-ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】オフト マーティン
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B050CC10
4B050KK13
4B050KK20
4B050LL01
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045EA60
4H045FA74
(57)【要約】
操作されたオルソゴナルなヒトCD122をコードするポリヌクレオチドを含むヒトリンパ球または骨髄系細胞であって、ネイティブなヒトCD122を発現するリンパ球または骨髄系細胞が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを含むヒトリンパ球または骨髄系細胞であって、ネイティブなヒトCD122を発現する、ヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項2】
操作されたhoCD122をコードする前記ポリヌクレオチドが、内因性ヒトCD122座位の代わりに挿入されている、請求項1記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項3】
前記hoCD122が、ネイティブなヒトCD122と比べて、R41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されている、請求項1または2記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項4】
前記hoCD122が、ネイティブなヒトCD122と比べて、H133およびY134で改変されている、請求項1または2記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項5】
前記操作されたhoCD122が、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項3または4記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項6】
前記操作されたhoCD122が、H133D置換およびY134F置換を有するように改変されたSEQ ID NO:1を含む、請求項5記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項7】
前記リンパ球が、キメラ抗原受容体(CAR)をさらに発現する、請求項1または2記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項8】
前記CARが、CD19キメラ抗原受容体(CAR)、B細胞成熟抗原(BCMA)CAR、CD123 CAR、CD20 CAR、CD22 CAR、CD30 CAR、CD70 CAR、ルイスY CAR、GD3 CAR、GD3 CAR、メソセリンCAR、ROR CAR、CD44 CAR、CD171 CAR、EGP2 CAR、EphA2 CAR、ErbB2 CAR、ErbB3/4 CAR、FAP CAR、FAR CAR、IL11Ra CAR、PSCA CAR、PSMA CARおよびNCAM CARからなる群より選択される、請求項7記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項9】
T細胞受容体α(TCRA)、T細胞受容体β(TCRB)、PD-1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)またはβ2ミクログロブリン(B2M)のうち1つまたは複数を欠失している、請求項1~8のいずれか一項記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項10】
T細胞である、請求項1~9のいずれか一項記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項記載のヒトリンパ球または骨髄系細胞を拡大増殖させる方法であって、
該ヒトリンパ球または骨髄系細胞をオルソゴナルなヒトIL-2と接触させる工程
を含み、前記操作されたhoCD122への該オルソゴナルなヒトIL-2の接触が、該ヒトリンパ球または骨髄系細胞の拡大増殖をもたらす、方法。
【請求項12】
操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを内因性ヒトCD122座位の代わりに含むヒトリンパ球または骨髄系細胞を製造する方法であって、
ヒトリンパ球または骨髄系細胞を提供する工程;および
該リンパ球または骨髄系細胞の内因性ヒトCD122座位に該ポリヌクレオチドを導入する工程であって、それにより、操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを内因性ヒトCD122座位の代わりに含むヒトリンパ球が製造される、工程
を含む、方法。
【請求項13】
前記導入する工程が、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを前記リンパ球または骨髄系細胞に導入することをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
操作されたhoCD122をコードする前記ポリヌクレオチド、および前記CARをコードするポリヌクレオチドが、各々、前記リンパ球または骨髄系細胞に導入された核酸の一部分である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記操作されたhoCD122および前記CARが、自己切断型ペプチド配列によって隔てられた単一の融合タンパク質としてコードされる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
操作されたhoCD122をコードする前記ポリヌクレオチド、および前記CARをコードするポリヌクレオチドが、相互に1日以内に前記リンパ球に導入された別々の核酸である、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記hoCD122が、ネイティブなヒトCD122と比べて、R41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されている、請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記hoCD122が、ネイティブなヒトCD122と比べて、H133およびY134で改変されている、請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記操作されたhoCD122が、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む、請求項17または18記載の方法。
【請求項20】
前記操作されたhoCD122が、H133D置換およびY134F置換を有するように改変されたSEQ ID NO:1を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記導入する工程が、相同組換え修復(HDR)により前記ポリヌクレオチドの導入を引き起こすことを含む、請求項12記載の方法。
【請求項22】
前記導入する工程が、内因性ヒトCD122座位で切断する、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムを前記リンパ球または骨髄系細胞に導入することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記システムが、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aシステムである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記導入する工程が、内因性ヒトCD122座位で切断する転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼを前記リンパ球または骨髄系細胞に導入することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項25】
前記導入する工程が、前記ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを前記リンパ球または骨髄系細胞に導入することを含む、請求項21記載の方法。
【請求項26】
前記操作されたhoCD122を含むリンパ球または骨髄系細胞を、該リンパ球または骨髄系細胞をオルソゴナルなヒトIL-2と接触させることによって、選択的に拡大増殖させる工程をさらに含む、請求項12~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
前記リンパ球または骨髄系細胞がキメラ抗原受容体(CAR)を発現し、前記方法が、該リンパ球または骨髄系細胞を、該CARの細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合するリガンドと接触させることによって、前記操作されたhoCD122を含むリンパ球を選択的に拡大増殖させる工程をさらに含む、請求項12~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
前記拡大増殖させる工程が、前記リンパ球または骨髄系細胞を抗CD28抗体、抗CD3抗体、またはその両方と接触させることをさらに含む、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
前記提供する工程が、ヒトから前記リンパ球または骨髄系細胞を得ることを含む、請求項12記載の方法。
【請求項30】
前記リンパ球または骨髄系細胞が、該リンパ球の内因性ヒトCD122座位への前記ポリヌクレオチドの導入後にヒトに導入される、請求項12記載の方法。
【請求項31】
前記リンパ球または骨髄系細胞が、前記ヒトに対して自己である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記リンパ球または骨髄系細胞が、前記ヒトに対して同種である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
内因性ヒトCD122座位への挿入のためのホモロジーアームを含む操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを含む相同組換え修復(HDR)テンプレートを含む、核酸。
【請求項34】
操作されたhoCD122をコードする前記ポリヌクレオチドが、1つまたは複数のCRISPRプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位が除去されるように内因性ヒトCD122座位と比べて1つまたは複数の変異を含み、任意で該変異がサイレントコドン変化をもたらす、請求項33記載の核酸。
【請求項35】
前記HDRテンプレートが、CARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項33または34記載の核酸。
【請求項36】
前記操作されたhoCD122および前記CARが、自己切断型ペプチド配列によって隔てられた単一の融合タンパク質としてコードされる、請求項35記載の核酸。
【請求項37】
請求項33~36のいずれか一項記載の核酸と、
(i)内因性ヒトCD122座位を標的とするヌクレアーゼ、(ii)内因性ヒトCD122座位を標的とするヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、または(iii)内因性ヒトCD122座位を標的とするウイルスベクターと
を含む、組成物。
【請求項38】
前記ヌクレアーゼが、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ヌクレアーゼである、請求項37記載の組成物。
【請求項39】
前記ヌクレアーゼが、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aヌクレアーゼである、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
前記ヌクレアーゼが、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項37記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、あらゆる目的のために参照により組み入れられる、2020年4月6日に出願された米国特許仮出願第63/005,975号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
細胞、特に、操作された免疫細胞の分化、発生および増殖の制御された操作は、臨床的にかなり興味深いものである。特に、T細胞は、がん細胞、細胞内病原体および自己免疫に関与する細胞の認識および死滅などの治療応用に用いるために操作されてきた。がん治療における操作細胞療法の使用は、特定の機能を提供するように操作され、がん細胞を選択的に攻撃するように方向付けられた細胞(T細胞など)の選択的活性化および拡大増殖によって容易になる。養子免疫療法のいくつかの例では、T細胞は、対象の血液または腫瘍組織から単離され、エクスビボで処理され、対象に再注入される。したがって、操作された免疫細胞の選択的活性化および/または増殖を可能にする組成物および方法が望ましい。
【0003】
養子細胞移入(ACT)プロトコルに用いるための細胞療法産物の製造に関する課題は、そのような「生きた薬物」が生存能および機能性を保つためにその環境の密接な制御を必要とすることである。実際に、患者(自己)由来であろうと、患者ではない単一のドナー起源(同種)由来であろうと、単離された細胞は、対象または制御された培養条件からの取り出しの後に、迅速に機能を失い始める。対象または制御された培養条件の外にある間の単離された細胞の生存能の維持に成功することで、単離された細胞が細胞産物製造ワークフローまたは患者への再挿入のための機能性を維持または回復することが可能になる。そのうえ、操作された細胞を対象に投与した後に、操作された細胞の生存能の維持に成功すること(すなわち、操作された細胞の生存持続)により、このような細胞療法に対する臨床応答が容易になる。
【0004】
操作細胞療法の臨床適用に関する課題は、このような操作された細胞の生存能を維持して、それらの治療有効性を最大化することである。例えば、操作されたT細胞(例えば、CAR-T細胞)を臨床適用する場合、対象への投与後に、操作された細胞の生存能を維持するための一般的な手段は、多能性サイトカイン、インターロイキン-2を、通常はアルデスロイキン(Proleukin(登録商標))、すなわちdesAla1およびC125S改変を有するヒトIL2類似体の形態で全身投与することである。TILまたはCAR-T細胞を用いた養子細胞療法の典型的な診療において、TILまたはCAR-T細胞の注入直後に、患者は、高用量のIL2(720,000IU/kg)の静脈内投与を8時間毎に最大耐容量まで受ける。このIL2による後続支援は、細胞産物の生存および/または臨床有効性をさらに高めると考えられる。
【0005】
しかし、IL2の全身投与は、操作細胞集団が及ばない非特異的刺激効果と関連し、特に高用量ではヒト対象における顕著な毒性と関連する。ACT支援レジメンで典型的に使用される高用量IL2の作用は、結果として顕著な毒性をもたらすことが立証されている。養子細胞移入(ACT)に続くIL2支援療法の使用から観察される、最もよく見られる副作用は、全身炎症による悪寒、高熱、低血圧症、乏尿、および浮腫ならびに毛細血管漏出症候群のみならず、白斑またはぶどう膜炎などの自己免疫現象の報告を含む。さらに、IL2のインビボ寿命は短く、それにより、操作されたT細胞を活性化状態に維持するためにIL2を頻繁に投薬する必要がある。
【0006】
ACTレジメンの投与の結果としてもたらされた細胞は、細胞産物の投与の数か月後または数年後であっても検出可能であり得るものの、投与された細胞のかなりの割合(場合によっては大多数)は、静止状態または疲弊状態に陥り、低減した治療有効性を示す。養子移入された細胞の活性のこのような喪失は、しばしば、腫瘍性疾患の再燃または再発を含む臨床有効性の喪失と相関する。それゆえに、細胞ベース療法への課題は、内因性シグナル伝達経路から保護され、標的付けられていない内因性細胞と最小限の交差反応性を示し、対象への操作細胞集団の投与後に選択的に制御することができる、所望の調節可能な挙動を、移入された細胞に付与することである。
【0007】
そのうえ、ACT治療レジメンに使用するための細胞のエクスビボ調製の間に、単離された免疫細胞の混合集団は、しばしばIL2で刺激される。免疫細胞の活性化におけるIL2の多面性のせいで、IL2の存在下での免疫細胞の混合集団の培養は、細胞集団中の所望の治療上有用な細胞(例えば、CAR-T細胞または抗原を経験したTIL)の拡大増殖だけでなく、細胞産物の臨床的利益に貢献せず毒性に潜在的に貢献する、単離された組織(例えば、新生物または血液)試料からの集団中の様々な他の種類の免疫細胞の拡大増殖ももたらす。結果として、ACT治療レジメンに有用な細胞を調製するための現在のエクスビボ拡大増殖方法は、しばしば、望まれない細胞が治療上有用な細胞の所望の亜集団に混入した細胞産物を結果としてもたらし、最適以下の細胞産物を結果としてもたらす。毒性が依然としてACTに関する重大な課題であるので、当技術分野において、ACT療法に使用するための所望の有効細胞が富化されたより均一な集団を含む細胞産物の調製を可能にする方法の必要性がある。
【0008】
CD122は、中親和性および高親和性IL2受容体複合体の構成要素である。Sockoloskyら(Science (2018) 359: 1037-1042(非特許文献1))およびGarciaら(2018年8月16日に公開された米国特許出願公開第2018/0228841A1号(特許文献1))は、オルソゴナルなCD122を発現するように操作された細胞の選択的刺激を容易にするオルソゴナルなIL2/CD122リガンド/受容体システムを記載している。本特許出願は、WO2019/104092(特許文献2)およびUS 2018-0228842 A1(特許文献3))の開示の参照によりそれらの全体が組み入れられる。オルソゴナルなCD122を発現する操作された免疫細胞と、このようなオルソゴナルなCD122に対する対応するオルソゴナルな同族リガンド(「IL2オルソログ」)との接触は、オルソゴナルなCD122を発現するこのような操作された免疫細胞の特異的活性化および/または増殖を容易にする。特に、オルソゴナルなIL2受容体リガンド複合体は、細胞の混合集団、特にT細胞の混合集団における、オルソゴナルな受容体を発現するように操作された細胞の選択的活性化および/または拡大増殖を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0228841A1号
【特許文献2】WO2019/104092
【特許文献3】US 2018-0228842 A1
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Science (2018) 359: 1037-1042
【発明の概要】
【0011】
本開示は、養子細胞療法の実施に有用な方法および組成物を提供する。
【0012】
いくつかの態様では、本開示は、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞を提供する。いくつかの態様では、本開示は、操作されたヒト免疫細胞においてhoCD122の発現を引き起こすためにヒト免疫細胞において機能的な少なくとも1つの発現制御配列と機能的に連結されたhoCD122をコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞を提供する。いくつかの態様では、hoCD122を発現している操作されたヒト免疫細胞は野生型ヒトCD122も発現する。他の態様では、hoCD122を発現するようにゲノムが改変された操作されたヒト免疫は、野生型ヒトCD122を発現しない。
【0013】
いくつかの態様では、本開示は、操作されたヒト免疫細胞においてオルソゴナルなキメラ受容体の発現を引き起こすためにヒト免疫細胞において機能的な少なくとも1つの発現制御配列と機能的に連結されたオルソゴナルなキメラ受容体(「OCR」)をコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞を提供し、オルソゴナルなキメラ受容体は、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)、IL-7受容体αサブユニット(IL-7Rα)、IL-9受容体αサブユニット(IL-9Rα)、IL-15R受容体αサブユニット(IL-15Rα)、IL-21受容体(IL-21R)もしくはエリスロポエチン受容体(EpoR)、またはそれらの機能的断片からの細胞内ドメイン(ICD)を含むが、それに限定されるわけではない異種受容体サブユニットのICDと機能的に連結された、オルソゴナルなhCD122の細胞外ドメインを含む。いくつかの態様では、オルソゴナルなキメラ受容体を発現するようにゲノムが改変された、操作されたヒト免疫細胞は、野生型hCD122をさらに発現する。他の態様では、オルソゴナルなキメラ受容体をコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞は、野生型ヒトCD122を発現しない。
【0014】
いくつかの態様では、操作されたオルソゴナルなhCD122をコードするポリヌクレオチドは、免疫細胞のゲノム中の内因性hCD122座位の代わりに挿入される。いくつかの態様では、hoCD122は、野生型hCD122と比べてR41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されている。いくつかの態様では、hoCD122は、野生型hCD122に対して位置H133およびY134で改変されている。いくつかの態様では、操作されたhoCD122は、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、hoCD122は、H133D置換およびY134F置換を含むSEQ ID NO:1を含む。
【0015】
いくつかの態様では、本開示は、操作されたヒト免疫細胞においてOCRの発現を引き起こすように操作されたヒト免疫細胞において機能的な少なくとも1つの発現制御配列と機能的に連結されたオルソゴナルなキメラ受容体(OCR)をコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞を提供し、OCRは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)、IL-7受容体αサブユニット(IL-7Rα)、IL-9受容体αサブユニット(IL-9Rα)、IL-15R受容体αサブユニット(IL-15Rα)、IL-21受容体(IL-21R)もしくはエリスロポエチン受容体(EpoR)、またはそれらの機能的断片の細胞内ドメイン(ICD)を含むが、それに限定されるわけではない、異種受容体サブユニットのICDに機能的に連結されたhoCD122(またはそれらの機能的断片)の細胞外ドメイン(ECD)を含む。いくつかの態様では、キメラ受容体のECDは、野生型ヒトCD122 ECDと比べてR41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されたhoCD122のECDを含む。いくつかの態様では、OCRを発現するようにゲノムが改変された、操作されたヒト免疫細胞は、野生型hCD122をさらに発現する。他の態様では、OCRをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞は、野生型hCD122を発現しない。
【0016】
いくつかの態様では、ヒト免疫細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現する。いくつかの態様では、CARは、CD19キメラ抗原受容体(CAR)、B細胞成熟抗原(BCMA)CAR、CD123 CAR、CD20 CAR、CD22 CAR、CD30 CAR、CD70 CAR、ルイスY CAR、GD3 CAR、GD3 CAR、メソセリンCAR、ROR CAR、CD44 CAR、CD171 CAR、EGP2 CAR、EphA2 CAR、ErbB2 CAR、ErbB3/4 CAR、FAP CAR、FAR CAR、IL11Ra CAR、PSCA CAR、PSMA CARおよびNCAM CARからなる群より選択される。
【0017】
いくつかの態様では、hoCD122またはOCRを発現している操作されたヒト免疫細胞は、T細胞受容体α(TCRA)、T細胞受容体β(TCRB)、PD-1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)またはβ2ミクログロブリン(B2M)のうち1つまたは複数を欠失している。
【0018】
いくつかの態様では、hoCD122またはOCRを発現している操作されたヒト免疫細胞はT細胞である。いくつかの態様では、T細胞はNK細胞である。いくつかの態様では、T細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。いくつかの態様では、ヒト免疫細胞はTreg細胞である。
【0019】
いくつかの態様では、本開示は、本明細書における上記または他の箇所に記載の、hoCD122またはOCRを発現するようにゲノムが改変されたヒト免疫細胞を活性化し、かつ/またはその増殖を高める方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、hoCD122またはOCRを発現するように操作された、操作されたヒト免疫細胞を、オルソゴナルなヒトIL-2(hoIL2)と接触させる工程を含み、接触させる工程は、操作されたヒト免疫細胞の活性化および/または増殖をもたらす。
【0020】
いくつかの態様では、本開示は、操作されたhoCD122またはOCRをコードするポリヌクレオチドを内因性ヒトCD122座位の代わりに含むヒト免疫細胞を製造する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、ヒト免疫細胞の集団を単離する工程、およびヒト免疫細胞の集団をヒト免疫細胞の内因性ヒトCD122座位内のポリヌクレオチドと接触させる工程であって、それにより、操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを内因性ヒトCD122座位の代わりに含むヒト免疫細胞を製造する、工程を含む。いくつかの態様では、導入する工程は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドをヒト免疫細胞に導入することをさらに含む。いくつかの態様では、操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチド、およびCARをコードするポリヌクレオチドは、各々、ヒト免疫細胞に導入される核酸の一部分である。いくつかの態様では、操作されたhoCD122およびCARは、自己切断型ペプチド配列によって隔てられた単一の融合タンパク質としてコードされる。いくつかの態様では、操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチド、およびCARをコードするポリヌクレオチドは、相互に1日以内にリンパ球に導入される別々の核酸である。
【0021】
いくつかの態様では、hoCD122は、ネイティブなヒトCD122と比べて、R41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されている。いくつかの態様では、hoCD122は、ネイティブなヒトCD122と比べてH133およびY134で改変されている。いくつかの態様では、操作されたhoCD122は、SEQ ID NO:1と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、操作されたhoCD122は、H133D置換およびY134F置換を有するように改変されたSEQ ID NO:1を含む。
【0022】
いくつかの態様では、導入する工程は、相同組換え修復(homology directed repair)(HDR)によりポリヌクレオチドの導入を引き起こすことを含む。いくつかの態様では、導入する工程は、ヒト免疫細胞内に、内因性ヒトCD122座位で切断する、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)システムを導入することを含む。いくつかの態様では、システムは、CRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aシステムである。いくつかの態様では、導入する工程は、リンパ球または骨髄系細胞内に、内因性ヒトCD122座位で切断する転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼを導入することを含む。いくつかの態様では、導入する工程は、ヒト免疫細胞に、ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターを導入することを含む。
【0023】
いくつかの態様では、方法は、操作されたhoCD122を含むヒト免疫細胞(例えば、リンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)を、該免疫細胞をオルソゴナルなヒトIL-2と接触させることによって、選択的に拡大増殖させる工程をさらに含む。いくつかの態様では、ヒト免疫細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現し、操作されたhoCD122を含む免疫細胞を、該免疫細胞をCARの細胞外ドメイン(ECD)に特異的に結合するリガンドと接触させることによって、選択的に拡大増殖させる工程をさらに含む。いくつかの態様では、拡大増殖させる工程は、ヒト免疫細胞(例えば、リンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)を抗CD28抗体、抗CD3抗体、またはその両方と接触させることをさらに含む。
【0024】
いくつかの態様では、提供する工程は、ヒトからヒト免疫細胞(例えば、リンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)を得ることを含む。
【0025】
いくつかの態様では、ヒト免疫細胞(例えば、リンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)は、免疫細胞の内因性ヒトCD122座位へのポリヌクレオチドの導入後にヒトに導入される。いくつかの態様では、免疫細胞はヒトに対して自己である。いくつかの態様では、免疫細胞はヒトに対して同種である。
【0026】
いくつかの態様では、本開示は、内因性ヒトCD122座位への挿入のためのホモロジーアームを含む操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドを含む相同組換え修復(HDR)テンプレートを含む核酸を提供する。いくつかの態様では、操作されたhoCD122をコードするポリヌクレオチドは、1つまたは複数のCRISPRプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位が除去されるように内因性ヒトCD122座位と比べて1つまたは複数の変異を含み、任意で、当該変異はサイレントコドン変化をもたらす。いくつかの態様では、HDRテンプレートは、CARをコードするポリヌクレオチドをさらに含む。いくつかの態様では、操作されたhoCD122およびCARは、自己切断型ペプチド配列によって隔てられた単一の融合タンパク質としてコードされる。
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、請求項33~36のいずれか一項記載の核酸と、(i)内因性ヒトCD122座位を標的とするヌクレアーゼ、(ii)内因性ヒトCD122座位を標的とするヌクレアーゼをコードするポリヌクレオチド、または(iii)内因性ヒトCD122座位を標的とするウイルスベクターとを含む組成物を提供する。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)ヌクレアーゼである。いくつかの態様では、ヌクレアーゼはCRISPR/Cas9またはCRISPR/Cas12aヌクレアーゼである。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)またはジンクフィンガーヌクレアーゼである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】CD122コード配列のオルソゴナルな変異領域周囲のゲノム領域を示す。H133およびD134は、下の3番目のセクション内の短い矢印の上部である。数字は、IL2RB遺伝子座位に対するものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
本開示をより容易に理解するために、特定の用語および語句を下記のみならず本明細書全体にわたり定義する。本明細書に提供される定義は非限定的であり、当業者が知っているであろう知識を考慮して読むべきである。
【0030】
本方法および組成物を説明する前に、本発明が記載される特定の方法または組成物に限定されず、このようにもちろん変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様だけを説明することを目的とし、限定することを意図しないことも理解されたい。
【0031】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、この範囲の上限と下限との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解されている。任意の表示値または表示範囲内の介在値と、他の任意の表示値または表示範囲内の介在値との間のより小さい範囲が各々本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、より小さい範囲に含まれるまたはより小さい範囲から除外される場合があり、表示範囲において具体的に除外される任意の限界値があれば、これらの限界値のうちのいずれか一方もしくは両方がより小さい範囲に含まれる各範囲またはどちらも含まれない各範囲も、本発明に包含される。表示範囲がこれらの限界値のうちのいずれか一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値のうちのいずれか一方または両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0032】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載の方法および物質と同様もしくは同等の任意の方法および物質を本発明の実施または試験に使用することもできるが、いくつかの潜在的で好ましい方法および物質が、これから説明される。本明細書で言及されるすべての刊行物は、それとの関連で刊行物が引用される方法および/または物質を開示および記載するために、参照により本明細書に組み入れられる。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数指示対象を含むことに留意すべきである。したがって例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞を含み、「ペプチド」への言及は、1つまたは複数のペプチドおよびその等価物、例えば、当業者に公知のポリペプチドなどへの言及を含む。
【0034】
本明細書で論じる刊行物は、それらの開示が本出願の出願日に先行するものについてのみ提供される。本明細書に含まれるいかなる記述も、本発明が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利を与えられないことを認めるものとして解釈すべきではない。さらに、提示する刊行の日付は、別個に確認する必要があり得る実際の刊行の日付と異なる場合がある。
【0035】
特に示されていない限り、部分は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度(℃)であり、圧力は大気圧または大気圧近くである。以下のものを含む標準的な省略が使用される:bp=塩基対;kb=キロ塩基;pl=ピコリットル;sまたはsec=秒;min=分;hまたはhr=時間;aa=アミノ酸;kb=キロ塩基;nt=ヌクレオチド;pg=ピコグラム;ng=ナノグラム;μg=マイクログラム;mg=ミリグラム;g=グラム;kg=キログラム;dlまたはdL=デシリットル;μlまたはμL=マイクロリットル;mlまたはmL=ミリリットル;lまたはL=リットル;μM=マイクロモル濃度;mM=ミリモル濃度;M=モル濃度;kDa=キロダルトン;i.m.=筋肉内;i.p.=腹腔内;SCまたはSQ=皮下(に);QD=1日1回;BID=1日2回;QW=週1回;QM=月1回;HPLC=高速液体クロマトグラフィー;BW=体重;U=単位;ns=統計的に有意でない;PBS=リン酸緩衝食塩水;PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;NHS=N-ヒドロキシスクシンイミド;HSA=ヒト血清アルブミン;MSA=マウス血清アルブミン;DMEM=ダルベッコ改変イーグル培地;GC=ゲノムコピー;EDTA=エチレンジアミン四酢酸。
【0036】
本開示にわたり、アミノ酸が1文字コードまたは3文字コードに従って参照されることが認識されるであろう。読者の便宜上、1文字アミノ酸コードおよび3文字アミノ酸コードを下の表1に提供する。
【0037】
(表1)アミノ酸の略号
【0038】
分子生物学における標準方法は、科学文献に記載されている(例えば、Sambrook and Russell (2001) Molecular Cloning, 3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;ならびに細菌細胞におけるクローニングおよびDNA変異誘発(Vol. 1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol. 2)、複合糖質およびタンパク質の発現(Vol. 3)、ならびにバイオインフォマティクス(Vol. 4)を記載しているAusubel, et al. (2001) Current Protocols in Molecular Biology, Vols. 1-4, John Wiley and Sons, Inc. New York, N.Y.を参照されたい)。この科学文献は、免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質精製のための方法のみならず、化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、およびタンパク質のグリコシル化を記載している(例えば、Coligan, et al. (2000) Current Protocols in Protein Science, Vols. 1-2, John Wiley and Sons, Inc., NYを参照されたい)。
【0039】
特に示されていない限り、以下の用語は下に示される意味を有することが意図される。他の用語は、本明細書を通して別途定義される。
【0040】
活性化する:本明細書で使用される「活性化する」という用語は、アゴニストリガンドの受容体への結合の生物学的効果を反映するための受容体または受容体複合体への言及に使用される。例えば、IL2アゴニストのIL2受容体への結合は受容体を「活性化して」、1つまたは複数の細胞内生物学的効果(例えば、STAT5のリン酸化)を結果としてもたらすと言われる。
【0041】
活性:本明細書で使用される「活性」という用語は、分子に関して、該分子の別の分子への結合の程度などの、検査系または生物学的機能に関する該分子の性質を説明するために使用される。このような生物学的機能の例は、生物学的作用物質の触媒活性、細胞内シグナル伝達を刺激する能力、遺伝子発現、細胞増殖、炎症応答などの免疫活性をモジュレートする能力を含むが、それに限定されるわけではない。「活性」は、典型的には、[触媒活性]/[mgタンパク質]、[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、活性の国際単位(IU)、[STAT5またはSTAT3リン酸化]/[mgタンパク質]、[T細胞増殖]/[mgタンパク質]、プラーク形成単位(pfu)、その他のような、投与された作用物質の単位あたりの生体活性として表現される。「増殖活性」という用語は、腫瘍性疾患、炎症性疾患、線維症、異形成、細胞形質転換、転移、および血管新生で観察されるもののような調節不全の細胞分裂を含む細胞分裂を促進する活性を包含する。
【0042】
投与する:「投与」および「投与する」という用語は、対象の細胞、組織、器官、または生体液をインビトロ、インビボまたはエクスビボで作用物質と(例えば、オルソゴナルなIL2リガンド、オルソゴナルな受容体を発現している細胞、オルソゴナルな受容体を発現しているCAR-T細胞を含むCAR-T細胞、化学療法剤、抗体、もしくはモジュレーターまたは前記のうち1つもしくは複数を含むもしくは薬学的製剤)と接触させることを含む、対象と接触させる動作を指すために本明細書において互換的に使用される。作用物質の投与は、外用、血管内注射(静脈内または動脈内注入を含む)、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、頭蓋内注射、腫瘍内注射、経皮、経粘膜、イオン泳動送達、リンパ内注射、胃内注入、前立腺内注射、嚢内注入(例えば膀胱)、呼吸インヘラー、眼内注射、腹内注射、病変内注射、卵巣内注射、脳内注入または注射、脳室内注射(ICVI)、その他を含むが、それに限定されるわけではない、当技術分野において承認されている多様な方法のいずれかにより達成され得る。「投与」という用語は、作用物質の細胞、組織または器官への接触のみならず、作用物質の液体への接触を含み、ここで、液体は細胞と接触している。
【0043】
親和性:本明細書で使用される「親和性」という用語は、第1の分子(例えばリガンド)の第2の分子(例えば受容体)への特異的結合の程度を指し、分子とその標的との間の解離定数(Koff)と、分子とその標的との間の会合定数(Kon)との比であるKdとして表現される結合動態によって測定される。
【0044】
抗体:本明細書で使用される用語「抗体」は、まとめて:(a)標的分子に特異的に結合するグリコシル化および非グリコシル化免疫グロブリン(哺乳動物免疫グロブリンクラスIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、それに限定されるわけではない)ならびに(b)標的分子との結合をそれが由来した免疫グロブリンと競合する、IgG(1-4)デルタCH2、F(ab')2、Fab、ScFv、VH、VL、テトラボディー、トリアボディー、ダイアボディー、dsFv、F(ab')3、scFv-Fcおよび(scFv)2を含むが、それに限定されるわけではない免疫グロブリン誘導体を指す。抗体という用語は、任意の特定の哺乳動物種に由来する免疫グロブリンに限定されず、マウス、ヒト、ウマ、ラクダ科動物、ヒトの抗体を含む。抗体という用語は、典型的にはラクダ科動物(ラクダ、ラマおよびアルパカを含む)の免疫処置から得られるような、いわゆる「重鎖抗体」または「VHH」または「Nanobodies(登録商標)」を含む(例えば、Hamers-Casterman, et al. (1993) Nature 363:446-448を参照されたい)。所与の特異性を有する抗体はまた、サメを含むが、それに限定されるわけではない軟骨魚類の免疫処置から得られるVHHなどの非哺乳動物起源に由来し得る。「抗体」という用語は、天然起源から、または抗原による免疫処置後の動物から単離可能な抗体のみならず、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、三重特異性、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、CDR移植、ベニヤ化(veneered)、または脱免疫化(deimmunized)(例えば、T細胞エピトープを除去するため)抗体を含む、操作された抗体を包含する。「ヒト抗体」という用語は、ヒトから得られた抗体のみならず、抗原により刺激されると、トランスジェニック動物が、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列特性を含む抗体を産生するような、ヒト免疫グロブリン遺伝子を含むトランスジェニック哺乳動物から得られた抗体を含む。抗体という用語は、親抗体およびその誘導体、例えば親和性成熟、ベニヤ化、CDR移植(CDR移植VHHを含む)、ヒト化、ラクダ化(非ラクダ由来VHHの場合)、または非免疫グロブリン足場中に抗体の結合ドメイン(例えばCDR)を含む結合分子の両方を含む。「抗体」という用語は、任意の特定の合成手段に限定されず、これは、天然起源から単離可能な天然抗体のみならず、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関してトランスジェニックであるトランスジェニック動物またはそれから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、抗体の発現をもたらす核酸構築物により形質転換された宿主細胞から単離された抗体、ファージディスプレイライブラリーを含むコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体を含む、「組み換え」手段によって調製される、操作された抗体分子を含む、または化学合成(例えば、固相タンパク質合成)される。一態様では、「抗体」は、哺乳動物免疫グロブリンである。いくつかの態様では、抗体は、結合機能およびエフェクター機能を提供する可変ドメインおよび定常ドメインを含む「全長抗体」である。ほとんどの場合、全長抗体は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含み、各軽鎖は、可変領域および定常領域を含む。いくつかの態様では、「全長抗体」という用語は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む従来のIgG免疫グロブリン構造を指すために使用され、各軽鎖は、可変領域および定常領域を含み、結合機能およびエフェクター機能を提供する。抗体という用語は、下記により詳細に記載するような融合タンパク質またはポリマーとのコンジュゲーション(例えばPEG化)などの、作用持続時間を延長するための改変を含む抗体コンジュゲートを含む。
【0045】
生体試料:本明細書で使用される「生体試料」または「試料」という用語は、対象から得られた、または対象に由来する試料を指す。例として、生体試料は、体液、血液、全血、血漿、血清、粘液分泌、唾液、脳脊髄液(CSF)、気管支肺胞洗浄液(BALF)、眼球液(fluid of the eye)(例えば、硝子体液、房水)、リンパ液、リンパ節組織、脾臓組織、骨髄、およびこれらの組織のうちの1つまたは複数に由来する免疫グロブリン濃縮画分からなる群より選択される材料を含む。いくつかの態様では、試料は、同じ薬物への反復曝露などの、オルソゴナルなIL2リガンドの薬学的製剤を含む治療的処置レジメンを受けたことがある対象から得られる。他の態様では、試料は、最近、オルソゴナルなIL2リガンドに曝露されたことがない対象から得られる、またはオルソゴナルなIL2リガンドの計画投与前の対象から得られる。
【0046】
キメラ抗原受容体:本明細書で使用される場合の「キメラ抗原受容体」および「CAR」という用語は、複数の機能的ドメインを、アミノ末端からカルボキシ末端にかけて、(a)抗原結合ドメイン(ABD))を含み任意で「ヒンジ」ドメインを含む細胞外ドメイン(ECD)、(b)膜貫通ドメイン(TD);および(c)1つまたは複数の細胞質シグナル伝達ドメイン(CSD)の順に配列して含むキメラポリペプチドを指すために互換的に使用され、ここで、前記ドメインは、1つまたは複数のスペーサードメインによって連結されていてもよい。CARはまた、翻訳後プロセシングおよびCARをコードする核酸配列を含む発現ベクターにより形質転換された細胞の細胞表面でのCARの提示の間に慣例的に取り除かれるシグナルペプチド配列をさらに含み得る。本方法の実施に有用なCARは、当技術分野において周知の原理により調整することができる。例えば、2010年6月22日に発行されたEshhaarら、米国特許第7,741,465B1号;Sadelain, et al (2013) Cancer Discovery 3(4):388-398;Jensen and Riddell (2015) Current Opinions in Immunology 33:9-15;Gross, et al. (1989) PNAS(USA) 86(24):10024-10028;Curran, et al. (2012) J Gene Med 14(6):405-15を参照されたい。本発明のオルソゴナルな受容体を組み入れるように改変されている場合がある市販のCAR-T細胞産物の例は、アキシカブタゲン シロルユーセル(Gilead Pharmaceuticalsから商業的にYescarta(登録商標)として販売)およびチサゲンレクルユーセル(Novartisから商業的にKymriah(登録商標)として販売)を含む。
【0047】
キメラ抗原受容体T細胞:本明細書で使用される「キメラ抗原受容体T細胞」および「CAR-T細胞」という用語は、キメラ抗原受容体を発現するように組み換え改変されているT細胞を指すために互換的に使用される。本明細書において例示されるいくつかの態様では、CAR-T細胞は、オルソゴナルなCD122ポリペプチドを発現するように操作され得る。いくつかの態様では、CAR-T細胞は、オルソゴナルなヒトCD122ポリペプチドを発現するように操作される(「hoCAR-T」細胞)。
【0048】
に由来する:本明細書で使用される場合のアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列に関連する「に由来する」という用語(例えば、IL2ポリペプチド「に由来する」アミノ酸配列)は、ポリペプチドまたは核酸が参照ポリペプチドまたは核酸(例えば、天然のIL2ポリペプチドまたはIL2コード核酸)の配列に基づく配列を有することを示すことが意味され、タンパク質または核酸が製造される起源または方法に関して限定することは意味されない。例として、「に由来する」という用語は、参照アミノ酸またはDNA配列のホモログまたはバリアントを含む。
【0049】
細胞外ドメイン:本明細書で使用される場合の「細胞外ドメイン」という用語またはその略語「ECD」は、細胞の形質膜の外側にある細胞表面タンパク質(例えば細胞表面受容体)の部分を指す。ECDは、膜貫通タンパク質、細胞表面もしくは膜関連タンパク質、分泌タンパク質、細胞表面ターゲティングタンパク質、またはECDのリガンド結合ドメインを含むそれらの機能的ポリペプチド断片の細胞質外の部分全体を含み得る。
【0050】
ヒトCD122:本明細書で使用される場合の、「ヒトCD122」、「hCD122」、「ヒトインターロイキン-2受容体β」、「hIL2Rb」、「hIL2Rβ」、「hIL15Rβ」および「p70-75」という用語は、hCD122膜貫通タンパク質野生型コンセンサス配列(UniProtKBデータベースのエントリーP14784として、SEQ ID NO:1)およびそれらの天然バリアントを指すために互換的に使用される。hCD122コンセンサスタンパク質配列をコードする核酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_000878として識別される。hCD122野生型タンパク質は、アミノ酸551個のタンパク質として発現され、最初のアミノ酸26個はシグナル配列を含み、シグナル配列は翻訳後切断されてアミノ酸525個の成熟野生型タンパク質となる。アミノ酸27~240(成熟野生型タンパク質のアミノ酸1~214)は細胞外ドメインに対応し、アミノ酸241~265(成熟野生型タンパク質のアミノ酸225~239)は膜貫通ドメインに対応し、アミノ酸266~551(成熟野生型タンパク質のアミノ酸240~525)は細胞内ドメインに対応する。本明細書で使用されるhCD122野生型タンパク質は、S57FおよびD365Eアミノ酸置換を含むhCD122タンパク質の天然バリアントを含む。天然ヒトCD122バリアントのアミノ酸配列は:
である。hCD122バリアントに存在するhCD122の改変に言及する場合、このようなhCD122バリアントの残基の番号付けは、SEQ ID NO:1を参照して行われる。
【0051】
インターロイキン2またはIL2:本明細書で使用される「インターロイキン2」および「IL2」という用語は、IL2活性を有する天然IL2ポリペプチドを互換的に指すために使用される。いくつかの態様では、IL2は、アミノ酸20個のその天然シグナルペプチド配列を欠如する成熟野生型ヒトIL2を指す。成熟野生型ヒトIL2(hIL2)は、Fujita, et. al., PNAS USA, 80, 7437-7441 (1983)に記載されるようにアミノ酸133個のポリペプチドとして存在する。成熟野生型ヒトIL2(hIL2)の天然バリアントのアミノ酸配列は、
である。
本明細書で使用される場合、hIL2バリアントにおいて改変されたまたは欠失しているアミノ酸残基に言及する場合、このような改変されたまたは欠失している残基の番号付けは、SEQ ID NO:2のシグナルペプチドと同じシグナルペプチドを除いた野生型成熟hIL2配列UniProt ID P60568に基づく。
【0052】
IL2活性:「IL2活性」という用語は、細胞を有効量のIL2ポリペプチドと接触させることに応答した、細胞への1つまたは複数の生物学的効果を指す。IL2活性は、例えば、CTLL 2マウス細胞傷害性T細胞を使用する細胞増殖アッセイで測定され得る。Gearing, A.J.H. and C.B. Bird (1987) in Lymphokines and Interferons, A Practical Approach. Clemens, M.J. et al. (eds): IRL Press. 295を参照されたい。組み換えヒトIL2の比活性はおよそ2.1×104IU/μgであり、これは組み換えヒトIL2 WHO国際標準(NIBSCコード:86/500)に対して較正されている。いくつかの態様では、例えば、関心対象のIL2オルソゴナルポリペプチドがCD25に対して低下した親和性を示す(または有するように改変される)場合、IL2活性は、中親和性CD122/CD132受容体を介したシグナル伝達が可能なYT細胞などのヒト細胞において評価され得る。本開示のオルソゴナルなヒトIL2は、比較可能なアッセイにおいて類似の濃度で評価された場合、WHO国際標準(NIBSCコード:86/500)の野生型成熟ヒトIL2の活性の20%未満、代替的に約10%未満、代替的に約8%未満、代替的に約6%未満、代替的に約4%未満、代替的に約2%未満、代替的に約1%未満、代替的に約0.5%未満を有し得る。
【0053】
免疫細胞:本明細書で使用される「免疫細胞」という用語は、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、NK T細胞、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、制御性T細胞(Treg)、樹状細胞、キラー樹状細胞、およびマスト細胞を含むが、それに限定されるわけではない自然免疫応答および/または適応免疫応答の開始および/または実行に関与する初代細胞およびそれに由来する細胞株を含む、生きた造血起源真核細胞を指す。いくつかの態様では、哺乳動物対象から単離され得る免疫細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を含むヘルパーTリンパ球、 CD4+ Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、Tエフェクターメモリー表現型(Tem)、中枢性メモリーT表現型(Tcm)、最終分化したTcmおよびCD45RAを発現するTem細胞(Temra)、組織常在性メモリー(Trm)細胞、および末梢メモリー(Tpm)細胞を含む様々な表現型のCD8+ Tリンパ球のサブセットを含む制御性T細胞(Treg)からなる群からのT細胞である。CD8+エフェクターサブタイプは、下の表2に示される以下のマーカーに従って特徴付けられる。
【0054】
(表2)CD8+メモリー表現型のマーカー
Martin, M. and Badinovac, V., Defining Memory CD8 T Cell (2018) Frontiers in Immunology 9:2692。いくつかの態様では、免疫細胞は、哺乳動物(例えばヒト)対象から単離された免疫細胞を指す。「初代細胞」という用語は、生きた組織から直接採取され、少ない集団倍加を受けたインビトロ成長のために樹立され、それらが形質転換されていないので組織をより大きく代表するとしばしば見なされる細胞を指す。
【0055】
変化を引き起こすために十分な量で:本明細書で使用される「変化を引き起こすために十分な量で」という語句は、若干の検査薬の投与に応答する、細胞ベースアッセイで評価された生物学的機能などのシステムへの検査薬の適用前(例えばベースラインレベル)および適用後に測定された指標のレベルの間に検出可能な差を提供するために十分な検査薬の量を指す。「変化を引き起こすために十分な量」は、治療有効量であるために十分な場合があるが、「変化を引き起こすために十分な量で」は、治療有効量よりも大きいまたは小さい場合がある。
【0056】
と組み合わせて:本明細書で使用される場合、対象への複数の作用物質の投与に関連して使用される場合の「と組み合わせて」という用語は、対象への第1の作用物質および少なくとも1つのさらなる(すなわち、第2、第3、第4、第5、その他)の作用物質の投与を指す。本発明のために、第1の作用物質の投与に起因する生物学的効果が第2の作用物質の投与の時点で対象において持続し、その結果、第1の作用物質および第2の作用物質の治療効果を重複するならば、1つの作用物質(例えばhoCD122pos/wt hCD122neg細胞)は、第2の作用物質(例えばhoIL2)と組み合わせて投与されると見なされる。例えば、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞は、典型的には1回であるのに対し、hoIL2リガンドは、典型的にはより頻繁に、例えば毎日、BID、または毎週投与される。しかし、第1の作用物質(例えばhoCD122pos/wt hCD122neg細胞)の投与は、長期にわたり治療効果を提供し、第2の作用物質(例えばhoIL2リガンド)の投与は、第1の作用物質の治療効果が継続中の間にその治療効果を提供し、その結果、たとえ第1の作用物質が第2の作用物質の投与時間と顕著に離れた(例えば数日または数週間の)時点で投与されていた場合があるにしても、第2の作用物質は第1の作用物質と組み合わせて投与されると考えられる。一態様では、第1および第2の作用物質が同時(相互に30分以内)に、同時期に、順次に投与されるならば、1つの作用物質は第2の作用物質と組み合わせて投与されると見なされる。いくつかの態様では、第1および第2の作用物質が相互に約24時間以内、好ましくは相互に約12時間以内、好ましくは相互に約6時間以内、好ましくは相互に約2時間以内、または好ましくは相互に約30分以内に投与されるならば、第1の作用物質は第2の作用物質と「同時期に」投与されると見なされる。「と組み合わせて」という用語は、第1の作用物質および第2の作用物質が単一の薬学的に許容される製剤として同時製剤化され、同時製剤が対象に投与される状況にも適用されると理解されたい。ある特定の態様では、例えば、1つの作用物質が1つまたは複数の他の作用物質の前に投与される場合に、hoIL2リガンドおよび補助作用物質は、順次に投与または適用される。他の態様では、例えば2つ以上の作用物質が同時にまたはおよそ同時に投与される場合に、hpIL2ムテインおよび補助作用物質は同時に投与され;これらの2つ以上の作用物質は、2つ以上の別々の製剤中に存在する場合または組み合わされて単一の製剤される場合がある(すなわち、同時製剤化)。作用物質が順次に投与されるか同時に投与されるかにかかわらず、それらは、本開示のために組み合わせて投与されると見なされる。
【0057】
治療を必要とする:本明細書で使用される「治療を必要とする」という用語は、対象が治療を必要とするまたは治療から潜在的に利益を得るであろうという、対象に関して医師または他の介護者によって行われる判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の領域にある多様な要因に基づき行われる。
【0058】
予防を必要とする:本明細書で使用される「予防を必要とする」という用語は、対象が予防的ケアを必要とするまたは予防的ケアから潜在的に利益を得るであろうという、対象に関して医師または他の介護者によってなされる判断を指す。この判断は、医師または介護者の専門知識の領域にある多様な要因に基づき行われる。
【0059】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、受容体、または細胞を減少させる、遮断する、阻止する、その活性化を遅延させる、不活性化する、脱感作する、またはダウンレギュレーションする分子を指す。阻害剤はまた、細胞または生物の構成的活性を低減、遮断、または不活性化する分子として定義することができる。
【0060】
CD122の細胞内ドメイン:本明細書で使用される「CD122の細胞内ドメイン」または「CD122 ICD」という用語は、オルソゴナルな膜貫通型受容体の、当該オルソゴナルな膜貫通型受容体を発現している細胞の形質膜の内部にある部分を指す。ICDは、有糸分裂に入り、細胞成長を開始するように細胞にシグナル伝達するタンパク質ドメインを指す1つまたは複数の「増殖シグナル伝達ドメイン」または「PSD」を含み得る。例には、JAK1、JAK2、JAK3を含むが、それに限定されるわけではないヤヌスキナーゼ、Tyk2、Ptk-2、他の哺乳動物または真核生物種からのヤヌスキナーゼファミリーの相同メンバー、IL2受容体βおよび/またはγ鎖ならびにヤヌスキナーゼファミリーのタンパク質と相互作用してシグナルを伝達し得るサイトカイン受容体スーパーファミリータンパク質からの他のサブユニット、またはそれらの部分、改変もしくは組み合わせが含まれる。シグナルの例は、STAT1、STAT3、STAT5a、および/またはSTAT5bのうち1つまたは複数を含むが、それに限定されるわけではない1つまたは複数のSTAT分子のリン酸化を含む。
【0061】
リガンド:本明細書で使用される「リガンド」という用語は、受容体への特異的結合を示す分子であって、それが結合する受容体の活性に変化を引き起こすように受容体の生体活性に結果として変化をもたらす分子を指す。一態様では、「リガンド」という用語は、受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして作用することができる分子またはその複合体を指す。本明細書で使用される場合の「リガンド」という用語は、天然および合成リガンドを包含する。「リガンド」はまた、小分子、例えば、サイトカインのペプチドミメティックおよび抗体のペプチドミメティックを包含する。リガンドと受容体との複合体は、「リガンド-受容体複合体と名付けられる。リガンドは、ポリタンパク質または融合タンパク質の1つのドメイン(例えば、抗体/リガンド融合タンパク質のいずれかのドメイン)を含み得る。リガンドと受容体との複合体は「リガンド-受容体複合体」と名付けられる。
【0062】
骨髄系細胞:本明細書で使用される「骨髄系細胞」は、骨髄系前駆細胞に由来する細胞を指す。例示的な骨髄系細胞は、顆粒球、単球、赤血球、および血小板のみならず、骨髄系列に拘束された骨髄系前駆細胞を含むが、それに限定されるわけではない。
【0063】
モジュレートする:本明細書で使用される「モジュレートする」、「モジュレーション」およびその他の用語は、検査薬が、生物学的システムを含むシステムまたは生化学経路において応答をプラスもしくはマイナスにまたは直接的もしくは間接的のいずれかで引き起こす能力を指す。モジュレーターという用語は、アゴニスト(部分アゴニスト、完全アゴニストおよびスーパーアゴニストを含む)およびアンタゴニストの両方を含む。
【0064】
ムテイン:本明細書で使用される場合の「ムテイン」という用語は、このようなポリペプチドの一次構造(すなわちアミノ酸配列)への改変を含む野生型ポリペプチドの改変バージョンを指すために使用される。ムテインという用語は、ポリペプチド自体、ポリペプチドを含む組成物、またはそれをコードする核酸配列を指す場合がある。いくつかの態様では、ムテインポリペプチドは、親ポリペプチドに対して約1~約10個のアミノ酸改変、代替的に親と比較して約1~約5つのアミノ酸改変、代替的に親と比較して約1~約3つのアミノ酸改変、代替的に親と比較して1~2つのアミノ酸改変、代替的に親と比較して単一のアミノ酸改変を含む。ムテインは、親ポリペプチドと少なくとも約99%同一、代替的に少なくとも約98%同一、代替的に少なくとも約97%同一、代替的に少なくとも約95%同一、代替的に少なくとも約90%同一であり得る。
【0065】
N末端:ポリペプチドの構造に関連して本明細書で使用される「N末端」(または「アミノ末端」)および「C末端」(または「カルボキシル末端」)は、それぞれポリペプチドのアミノ最末端およびカルボキシル最末端を指すのに対し、「N末端側」および「C末端側」という用語は、それぞれポリペプチドのアミノ酸配列におけるN末端およびC末端方向の相対位置を指し、それぞれN末端およびC末端の残基を含むことができる。「直接N末端側」または「直接C末端側」は、第2のアミノ酸残基と比べた第1のアミノ酸残基の位置を指し、ここで、第1のアミノ酸残基および第2のアミノ酸残基は共有結合して、連続するアミノ酸配列を提供する。
【0066】
核酸:「核酸」、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」およびその他の用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれかまたはそれらの類似体である、ヌクレオチドの任意の長さのポリマー形態を指すために、本明細書において互換的に使用される。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、線状または環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、組み換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマーおよびその他を含む。
【0067】
hIL2に従って番号付けされた:本明細書で使用される「IL2に従って番号付けされた」という用語は、特定のアミノ酸が成熟野生型hIL2の成熟配列中に通常存在する位置を基準とする該アミノ酸の場所の識別を指し、例えばR81は、SEQ ID NO:2に存在する81番目のアミノ酸、アルギニンを指す。
【0068】
hCD122に従って番号付けされた:本明細書で使用される「hCD122に従って番号付けされた」という用語は、特定のアミノ酸が成熟野生型hCD122の成熟配列(SEQ ID NO:1)中に通常存在する位置を基準とする該アミノ酸の場所の識別を指す。
【0069】
機能的に連結される:「機能的に連結される」という用語は、本明細書において、構成要素分子の機能の各々が保持されるように構築物中に配置された分子、典型的にはポリペプチドまたは核酸の間の関係を指すために使用されるが、機能的な連結は、構築物の個々の構成要素の活性のプラスまたはマイナスのモジュレーションをもたらし得る。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)分子の野生型タンパク質への機能的な連結は、タンパク質の生体活性が野生型分子と比べて低下している構築物をもたらし得るが、それにもかかわらず、これら2つは機能的に連結されていると見なされる。代替的に、異種起源に由来する機能的ドメインから構成される多ドメイン受容体(例えばCARまたはOCR)に関連して、融合タンパク質の第1ドメインの機能的特徴(例えば、ECDへのリガンド結合)が融合タンパク質の第2ドメインの機能的特徴(例えば、ICDの細胞内シグナル伝達)をモジュレートする場合、融合タンパク質の機能的ドメインは機能的に連結されている。「機能的に連結される」という用語が、異なる機能をコードする複数の核酸配列の関係に適用される場合、複数の核酸配列は、組み合わされて単一の核酸分子になると、例えば、組み換え技術を使用して細胞に導入されると、細胞中で特定の核酸配列の転写および/または翻訳を引き起こすことが可能な核酸を提供する。例えば、シグナル配列をコードする核酸配列は、シグナル配列がポリペプチドの分泌を容易にするプレタンパク質の発現をもたらすならば、ポリペプチドをコードするDNAと機能的に連結されると見なされる場合がある;プロモーターもしくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響するならば、コード配列に機能的に連結されると見なされる;またはリボソーム結合部位は、それが翻訳を容易にするように位置付けられているならば、コード配列と機能的に連結されると見なされる。核酸分子に関連して、一般的に「機能的に連結される」という用語は、連結される核酸配列が連続していること、分子の分泌リーダーまたは関連サブドメインの場合は、連続し、かつ読み取り相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーなどのある特定の遺伝要素は、ある距離を置いて機能する場合があり、それらがそれらの効果を提供する配列に関して連続している必要はないが、それでも機能的に連結されると見なされる場合がある。
【0070】
オルソゴナルなキメラ受容体:本明細書で使用される「オルソゴナルなキメラ受容体」または「OCR」という用語は、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)、IL-7受容体αサブユニット(IL-7Rα)、IL-9受容体αサブユニット(IL-9Rα)、IL-15R受容体αサブユニット(IL-15Rα)、IL-21受容体(IL-21R)もしくはエリスロポエチン受容体(EpoR)、またはそれらの機能的断片からの細胞内ドメイン(ICD)を含むが、それに限定されるわけではない異種受容体サブユニットのICDに機能的に連結された、hoCD122またはその機能的亜断片に由来する細胞外ドメイン(ECD)のポリペプチドを指すために互換的に使用される。OCRのECDおよびICDは、OCRのICDまたはECDが由来する受容体の膜貫通ドメインを含むポリペプチド配列を介して機能的に連結される場合がある。一態様では、OCRのICDまたはECDは、ECDが由来する受容体の膜貫通ドメインを含むポリペプチドを介して機能的に連結される。一態様では、OCRのICDまたはECDは、ICDが由来する受容体の膜貫通ドメインを含むポリペプチドを介して機能的に連結される。OCRの例は、WO2021/050752として2021年3月18日に公開されたGarciaら、国際特許出願番号PCT/US2020/050232に記載され、下記に例示されている。
【0071】
hoCD122 ECDおよびIL7ICDタンパク質配列を含むOCR(hoCD122-IL7R):
[ここで、残基1~234はhoCD122に由来し、残基235~462(下線部)はヒトIL-7Ra受容体のICDに由来する]は、核酸配列
によってコードされることができる。
【0072】
hoCD122 ECDおよびIL9Ra ICDコード配列を含むOCR(hoCD122-IL9R):
[ここで、残基1~234はhoCD122に由来し、残基235~498(下線部)はヒトIL-9Rに由来する]
【0073】
hoCD122 ECDおよびIL21Ra ICDコード配列を含むOCR(hoCD122-IL21R):
[ここで、残基1~234はhoCD122に由来し、残基235~545(下線部)はヒトIL-21Rに由来する]は、配列
のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0074】
アミノ酸配列:
を有する、hoCD122 ECDおよびEpoに由来するICDを含むOCR
[ここで、残基1~234はhoCD122に由来し、残基235~497(下線部)はヒトEpoRに由来する]は、配列:
のポリヌクレオチドによってコードされる。
【0075】
オルソゴナルなヒトIL2:「オルソゴナルなhIL2」または「hoIL2」という用語は、オルソゴナルなhCD122受容体またはOCRのECDに選択的および特異的に結合して細胞内シグナル伝達をもたらす、hIL2のバリアント(SEQ ID NO:2)を指す。hoIL2分子の例は、下の式1に提供される。
【0076】
オルソゴナルなヒトCD122:本明細書で使用される「ヒトのオルソゴナルなCD122」または「オルソゴナルなヒトCD122」または「hoCD122」という用語は、オルソゴナルなヒトIL2(hoIL2)に特異的に結合する野生型CD122ポリペプチドのバリアントを指すために互換的に使用される。いくつかの態様では、hoCD122は、hCD122ポリペプチドのECDにおける位置ヒスチジン133(H133)およびチロシン134(Y134)にアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、オルソゴナルなCD122は、位置133におけるヒスチジンからアスパラギン酸(H133D)、グルタミン酸(H133E)、もしくはリシン(H133K)へのアミノ酸置換、および/または位置134におけるチロシンからフェニルアラニン(Y134F)、グルタミン酸(Y134E)、もしくはアルギニン(Y134R)へのアミノ酸置換を含む。いくつかの態様では、オルソゴナルなCD122は、アミノ酸置換H133DおよびY134Fを有するhCD122分子である。hoCD122の一態様は、配列
のポリペプチドのように提供される。そして、SEQ ID NO:3のヒトのオルソゴナルなCD122(hoCD122)をコードする代表的な核酸配列は下に提供される:
【0077】
親ポリペプチド:本明細書で使用される「親ポリペプチド」または「親タンパク質」という用語は、第1の「親」ポリペプチドに関して改変された、第2のポリペプチド(例えば誘導体またはバリアント)の起源を称するために互換的に使用される。場合によっては、親ポリペプチドは、タンパク質の野生型または天然型である。
【0078】
配列同一性パーセント:「配列同一性のパーセンテージ」または「配列同一性パーセント」は、2つの最適にアライメントされた配列を比較ウインドウにわたり比較することによって決定され、ここで、比較ウインドウ中のポリヌクレオチド配列の部分は、2つの配列の最適なアライメントのために参照配列(付加も欠失も含まない)と比較して付加または欠失(すなわちギャップ)を含み得る。パーセンテージは、両方の配列内に同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が存在する位置の数を決定して、マッチする位置の数を与え、マッチした位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割って、その結果に100をかけて配列同一性のパーセンテージを与えることによって計算される。アミノ酸配列の実質的な同一性は、通常、少なくとも40%の配列同一性を意味する。ポリペプチドの同一性パーセントは、40%~100%の任意の整数、例えば、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%であることができる。いくつかの態様では、「実質的に類似である」ポリペプチドは、同一でない残基位置が保存的アミノ酸変化によって異なり得ることを除き、上記の配列を共有する。保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群はセリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群はフェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群はリシン、アルギニン、およびヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群はシステインおよびメチオニンである。例示的な保存的アミノ酸置換群は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、アスパラギン酸-グルタミン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0079】
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するために適したアルゴリズムは、それぞれAltschul et al., Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)、およびAltschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)に記載されたBLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、米国国立バイオテクノロジー情報センターのウェブサイト(ncbi.nlm.nih.govにある)を通じて公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さのワードとアライメントした場合にマッチするまたはある正の値の閾値スコアTを満たす、クエリ配列内の長さWの短いワードを同定することによって、最初に高スコア配列ペア(HSP)を同定することを伴う。Tは、隣接ワードスコアの閾値と称される(Altschulら、前記)。これらの最初の隣接ワードのヒットは、それらを含有するより長いHSPを見出す検索を開始するためのシードとして働く。アライメントスコアの合計が増加できる限り、配列毎にワードのヒットを両方向に伸ばす。ヌクレオチド配列について、パラメーターM(マッチする残基のペアについての報酬スコア(reward score);常に>0)およびN(ミスマッチする残基についてのペナルティースコア(penalty score);常に<0)を使用してスコアの合計が計算される。アミノ酸配列について、スコアの合計を計算するためにスコアリング行列が使用される。各方向におけるワードヒットの伸展は、アライメントスコアの合計がその最大達成値から量Xだけ低下する;1つもしくは複数の負スコアの残基のアライメントの累積によりスコアの合計がゼロ以下になる;またはいずれかの配列の末端に達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T、およびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとしてワード長(W)11、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長3、期待値(E)10、およびBLOSUM62スコアリング行列(Henikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915, (1989)を参照されたい)、アライメント(B)50、期待値(E)10、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較を使用する。
【0080】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列の間の類似性の統計解析を行う(例えば、Karlin and Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5787, (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一尺度は最小合計確率(smallest sum probability)(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間のマッチが偶然起こるであろう確率の指標を提供する。例えば、核酸は、被験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、より好ましくは約0.01未満、もっとも好ましくは約0.001未満である場合に、参照配列と類似すると見なされる。
【0081】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」という用語は、遺伝的にコードされるアミノ酸および遺伝的にコードされないアミノ酸、化学的または生化学的に改変または誘導体化されたアミノ酸、ならびに改変ポリペプチド主鎖を有するポリペプチドを含むことができる任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指すために本明細書において互換的に使用される。用語ポリペプチドは、異種アミノ酸配列を有する融合タンパク質;異種および相同リーダー配列を有する融合タンパク質;N末端メチオニン残基を有するまたは有しない融合タンパク質;キレートペプチドなどの精製を容易にするアミノ酸配列を有する融合タンパク質;免疫的にタグ付けされたタンパク質との融合タンパク質;免疫的活性ポリペプチド断片(例えば、抗原性ジフテリアまたは破傷風の毒素またはトキソイド断片)を有するペプチドを含む融合タンパク質、などの融合タンパク質を含むが、それに限定されるわけではない融合タンパク質を含む。
【0082】
予防する:本明細書で使用される「予防する」、「予防すること」、「予防」など用語は、一般的に遺伝要因、経験的要因、または環境要因により、特定の疾患、障害、または状態を有する素因のある対象に関連して、対象が疾患、障害、状態、もしくはその他(例えば、臨床症状の非存在によって決定されるもの)を発生するリスクを一時的もしくは永続的に予防する、抑制する、阻害する、もしくは低減する、またはそれらの発生を遅延させるように、疾患、障害、状態、またはそれらの症状の発生前に対象に関して開始される行動を指す。特定の例では、「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語は、疾患、障害、または状態の現在の状態からより有害な状態への進行を遅らせることを指すためにも使用される。
【0083】
受容体:本明細書で使用される「受容体」という用語は、リガンドの結合がポリペプチドの少なくとも1つの生物学的性質に変化をもたらす、リガンドと特異的に結合するドメインを有するポリペプチドを指す。いくつかの態様では、受容体は、細胞表面と関連しない「可溶性」受容体である。可溶性形態のhCD25は、hIL2と特異的に結合する可溶性受容体の例である。いくつかの態様では、受容体は、細胞外ドメイン(ECD)と、当該ECDを細胞表面に固定するように作用する膜関連ドメインとを含む細胞表面受容体であり、いくつかの場合には、細胞内ドメインが存在しないか、または細胞内シグナル伝達と関連しない最小の細胞内ドメインを有する(例えばhCD25)。細胞表面受容体のいくつかの態様では、受容体は、典型的には膜貫通(transmembrane)ドメイン(TM)と称される膜貫通(membrane spanning)ドメインによって作動可能に連結された細胞内ドメイン(ICD)および細胞外ドメイン(ECD)を含む、膜貫通ポリペプチドである。リガンドの受容体への結合は、受容体にコンフォメーション変化をもたらし、測定可能な生物学的効果をもたらす。受容体がECD、TMおよびICDを含む膜貫通ポリペプチドであるいくつかの場合では、リガンドのECDへの結合は、リガンドのECDへの結合に応答してICDの1つまたは複数のドメインによって媒介される測定可能な細胞内生物学的効果をもたらす。いくつかの態様では、受容体は、細胞内シグナル伝達を促進するための多成分複合体の一構成要素である。例えば、リガンドは、単独ではいかなる細胞内シグナル伝達とも関連しない細胞表面分子と結合し得るが、リガンドが結合すると、ヘテロ二量体(例えば、中親和性CD122/CD132 IL2受容体)、ヘテロ三量体(例えば、高親和性CD25/CD122/CD132 hIL2受容体)を含むヘテロ多量体複合体、またはホモ多量体(例えば、ホモ二量体、ホモ三量体、もしくはホモ四量体)複合体の形成が促進され、受容体構成要素の多量体化により細胞内シグナル伝達カスケード(例えば、Jak/STAT経路)の活性化がもたらされる。
【0084】
組み換え:本明細書で使用される「組み換え」という用語は、ポリペプチド、核酸、または細胞が組み換えDNA技術を使用して改変された方法を指すために形容詞として使用される。「組み換えタンパク質」は、組み換えDNA技術を使用して産生されるタンパク質であり、しばしば、タンパク質が産生された方法を明示するためにタンパク質名に先行して小文字「r」を付けることで省略される(例えば、組み換え産生されたヒト成長ホルモンは、通常「rhGH」と省略される)。同様に、組み換えDNA技術を使用して外因性核酸(例えば、ssDNA、dsDNA、ssRNA、dsRNA、mRNA、ウイルスまたは非ウイルスベクター、プラスミド、コスミドなど)の組み入れ(例えば、トランスフェクション、形質導入、感染)によって細胞が改変されているならば、その細胞は「組み換え細胞」と称される。組み換えDNA技術のための技術およびプロトコルは、当技術分野において周知である。
【0085】
応答:例えば、細胞、組織、臓器、または生物の「応答」という用語は、評価可能な生化学または生理学パラメーター(例えば、濃度、密度、接着、増殖、活性化、リン酸化、遊走、酵素活性、遺伝子発現レベル、遺伝子発現速度、エネルギー消費速度、分化のレベルまたは状態)の量的または質的変化を包含し、ここで、変化は、外因性作用物質または遺伝的プログラミングなどの内部メカニズムを用いた活性化、刺激、もしくは治療、またはそれとの接触と相関関係がある。特定の状況では、「活性化」、「刺激」などの用語は、内部メカニズムのみならず、外部因子または環境因子によって調節される場合の細胞の活性化を指し;一方で、「阻害」、「ダウンレギュレーション」などの用語は、逆の効果を指す。「応答」は、アッセイ系、表面プラズモン共鳴、酵素活性、質量分析、アミノ酸またはタンパク質シーケンシング技術の使用などにより、インビトロで評価され得る。「応答」は、体温、体重、腫瘍体積、血圧などの客観的生理パラメーターの評価、X線もしくは他のイメージング技術の結果によってインビボで定量的に、または幸福、抑うつ、興奮、もしくは疼痛の報告された主観的感覚の変化によって定性的に評価され得る。いくつかの態様では、CD3により活性化した初代ヒトT細胞の増殖レベルは、Crouch, et al. (1993) J. Immunol. Methods 160: 81-8に記載されているように培養物中に存在する細胞数と正比例するATPの存在量と比例する発光シグナルを生成する生物発光アッセイで、または製造者によって提供される説明書に実質的に従って、Promega Corporation、Madison WI 53711からカタログ番号G9241およびG9681として市販されているCellTiter-Glo(登録商標)2.0細胞生存率アッセイもしくはCellTiter-Glo(登録商標)3D細胞生存率キットなどの市販のアッセイを使用することによって評価され得る。いくつかの態様では、被験作用物質の投与に応答したT細胞の活性化レベルは、当技術分野において周知の方法に従って、STAT(例えば、STAT1、STAT3、STAT5)リン酸化レベルによって決定された場合の、既述のフローサイトメトリー方法によって決定され得る。例えば、STAT5リン酸化は、Hortaら、前記、Garciaら、前記に記載されるフローサイトメトリー技術、または製造者によって提供される説明書に実質的に従って行われるホスホ-STAT5(Tyr694)キット(Perkin-Elmer, Waltham MAからパーツ番号64AT5PEGとして市販されている)などの市販のキットを使用して測定され得る。
【0086】
選択的な:本明細書で使用される「選択的な」または「選択的に結合する」という用語は、このような細胞の集団のある特定の特性に基づき特定の細胞型に優先的に結合し、かつ/またはそれを活性化するための作用物質の特性を指すために使用される。いくつかの態様では、本開示は、ムテインが野生型CD122受容体を発現している細胞と比べてオルソゴナルなCD122受容体を発現している細胞の優先的活性化を示す点でCD25選択的な、このようなムテインを提供する。選択性は、典型的には、リガンド/受容体結合に応答して誘導された活性のアッセイ特徴において測定された活性によって評価される。いくつかの態様では、本開示のIL2オルソログは、同じアッセイで測定された場合の、野生型CD122受容体を発現している細胞と比べたオルソゴナルなCD122受容体を発現している細胞に対するEC50において少なくとも3倍、代替的に少なくとも5倍、代替的に少なくとも10倍、代替的に少なくとも20倍、代替的に少なくとも30倍、代替的に少なくとも40倍、代替的に少なくとも50倍、代替的に少なくとも100倍、代替的に少なくとも200倍の差異を有する。
【0087】
顕著に低減した結合:本明細書で使用される「顕著に低減した結合を示す」という用語は、第1の分子の親形態と比べて第2の分子(例えば受容体)に対する親和性に顕著な低減を示す、第1の分子(例えばリガンド)のバリアントに関して使用される。抗体バリアント(例えば抗体に由来するscFv分子)に関して、バリアント抗体の親和性がこのような抗原決定基に、バリアント抗体が由来した親抗体の20%未満、代替的に約10%未満、代替的に約8%未満、代替的に約6%未満、代替的に約4%未満、代替的に約2%未満、代替的に約1%未満、または代替的に約0.5%未満の親和性で結合するならば、抗体バリアントは「顕著に低減した結合を示す」。同様に、バリアントリガンドに関して、バリアントリガンドの親和性が受容体に、そのバリアントリガンドが由来した親リガンドの20%未満、代替的に約10%未満、代替的に約8%未満、代替的に約6%未満、代替的に約4%未満、代替的に約2%未満、代替的に約1%未満、または代替的に約0.5%未満の親和性で結合するならば、バリアントリガンドは「顕著に低減した結合を示す」。同様に、バリアント受容体に関して、受容体が同族リガンドに、バリアント受容体が由来した親受容体の20%未満、代替的に約10%未満、代替的に約8%未満、代替的に約6%未満、代替的に約4%未満、代替的に約2%未満、代替的に約1%未満、または代替的に約0.5%未満の親和性で結合するならば、バリアント受容体は同族リガンドに対して「顕著に低減した結合を示す」。
【0088】
特異的に結合する:本明細書で使用される「特異的に結合する」という用語は、1つの分子が別の分子に結合する選択性または親和性の程度を指す。結合ペア(例えば、リガンド/受容体、抗体/抗原、抗体/リガンド、抗体/受容体結合ペア)に関連して、結合ペアの第1の分子が試料中に存在する他の構成要素と顕著な量では結合しない場合に、結合ペアの第1の分子は、結合ペアの第2の分子に特異的に結合すると言われる。第2の分子に対する第1の分子の親和性が、試料中に存在する他の構成要素に対する第1の分子の親和性よりも少なくとも2倍大きい、代替的に少なくとも5倍大きい、代替的に少なくとも10倍大きい、代替的に少なくとも20倍大きい、または代替的に少なくとも100倍大きい場合に、結合ペアの第1の分子は、結合ペアの第2の分子に特異的に結合すると言われる。結合ペアの第1の分子が抗体である特定の態様では、抗体と結合ペアの第2の分子との平衡解離定数が、例えば、スキャッチャード解析によって決定された場合、約106Mよりも大きい、代替的に約108Mよりも大きい、代替的に約1010Mよりも大きい、代替的に約1011Mよりも大きい、代替的に約1010Mよりも大きい、約1012Mよりも大きいならば、抗体は、結合ペアの第2の分子(例えば、タンパク質、抗原、リガンド、または受容体)に特異的に結合する(Munsen, et al. 1980 Analyt. Biochem. 107:220-239)。リガンドがオルソゴナルなIL2であり、受容体がオルソゴナルなCD122 ECDを含む一態様では、IL2オルソログ/オルソゴナルなCD122 ECDの平衡解離定数が約105Mよりも大きい、代替的に約106Mよりも大きい、代替的に約107Mよりも大きい、代替的に約108Mよりも大きい、代替的に約109Mよりも大きい、代替的に約1010Mよりも大きい、または代替的に約1011Mよりも大きいならば、オルソゴナルなIL2は特異的に結合する。特異的結合は、競合ELISA、BIACORE(登録商標)アッセイおよび/またはKINEXA(登録商標)アッセイを含むが、それに限定されるわけではない、当技術分野において公知の技術を使用して評価され得る。
【0089】
幹細胞:「幹細胞」という用語は、成体ヒト幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より詳細には非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞または造血幹細胞を含むが、それに限定されるわけではない。代表的なヒト幹細胞はCD34+細胞である。
【0090】
患っている:本明細書で使用される「患っている」という用語は、X線、CTスキャン、従来の臨床診断検査(例えば血球算定など)、ゲノムデータ、タンパク質発現データ、免疫組織化学を含むが、それに限定されるわけではない疾患、障害、または状態の特定のために、当分野において受け入れられている入手可能な情報に基づき、対象に関して医師によって行われる、対象が治療を必要とするまたは治療から恩恵を受けるであろうという決定を指す。患っているという用語は、典型的には、「新生物疾患を患っている」のように特定の病状と共に使用され、新生物が存在すると診断されている対象を指す。
【0091】
実質的に純粋な:本明細書で使用される「実質的に純粋な」という用語は、組成物の成分が組成物の総含量の約50%超、代替的に約60%超、代替的に約70%超、代替的に約80%超、代替的に約90%超、代替的に約95%超を構成することを示す。「実質的に純粋な」タンパク質は、組成物の総含量の約50%超、代替的に約60%超、代替的に約70%超、代替的に約80%超、代替的に約90%超、代替的に約95%超を含む。
【0092】
T細胞:本明細書で使用される「T-細胞」または「T細胞」という用語は、胸腺内で分化し、特異的細胞表面抗原受容体を有し、細胞媒介免疫および液性免疫の開始または抑制を制御するものならびに抗原担持細胞を溶解させるものを含む、リンパ球を指すためにその従来の意味で使用される。いくつかの態様では、T細胞は、ナイーブCD8+ T細胞、細胞傷害性CD8+ T細胞、ナイーブCD4+ T細胞、ヘルパーT細胞、例えばTH1、TH2、TH9、TH11、TH22、TFH;制御性T細胞、例えばTR1、Treg、誘導性Treg;メモリーT細胞、例えば中枢性メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、NKT細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)ならびにCAR-T細胞、組み換え改変TILおよびTCR操作細胞を含むが、それに限定されるわけではない、このようなT細胞の操作バリアントを含むが、それに限定されるわけではない。
【0093】
N末端/C末端:ポリペプチドの構造に関連して本明細書で使用される「N末端」(または「アミノ末端」)および「C末端」(または「カルボキシル末端」)は、それぞれポリペプチドのアミノ最末端およびカルボキシル最末端を指すのに対し、「N末端側」および「C末端側」という用語は、それぞれポリペプチドのアミノ酸配列におけるN末端およびC末端方向の相対位置を指し、それぞれN末端およびC末端の残基を含むことができる。「直接N末端側」は、連続するポリペプチド配列中の第2のアミノ酸残基と比べた第1のアミノ酸残基の位置を指し、第1のアミノ酸は、ポリペプチドのN末端により近い。「直接C末端側」は、連続するポリペプチド配列中の第2のアミノ酸残基と比べた第1のアミノ酸残基の位置を指し、第1のアミノ酸は、ポリペプチドのC末端により近い。
【0094】
治療有効量:「治療有効量」という語句は、対象に投与した場合に疾患、障害、または状態の任意の症状、局面、または特徴に任意の検出可能なプラス効果を有することができる量の単一用量で、一連の用量の一部として、単独で、または薬学的組成物もしくは治療レジメンの一部として作用物質を対象に投与することを参照して本明細書において使用される。治療有効量は、関連する生理学的効果を測定することによって確認することができ、これは、投薬レジメンに関して、ならびに対象の状態などの診断分析に応じて調整され得る。作用物質の治療有効量を決定するための評価のためのパラメーターは、年齢、体重、性別、全身の健康状態、ECOGスコア、観察可能な生理学的パラメーター、血中レベル、血圧、心電図、コンピューター断層撮影、X線、およびその他などの徴候を含むが、それに限定されるわけではない、当技術分野において承認されている診断基準を使用して医師によって決定される。代替的にまたは追加的に、臨床背景で通常評価される他のパラメーター、例えば、体温、心拍、血液化学の正常化、血圧の正常化、コレステロールレベルの正常化、または疾患、障害、もしくは状態の任意の症状、局面、もしくは特徴、バイオマーカー(例えば、炎症性サイトカイン、IFN-γ、グランザイム、など)、血清腫瘍マーカーの低減、固形がん効果判定基準(RECIST)の改善、免疫関連応答基準(irRC)の改善、生存期間の延長、無増悪生存期間の延長、無増悪期間の延長、治療成功期間の延長、無イベント生存期間の延長、次治療までの期間の延長、奏効率の改善、奏効期間の改善、腫瘍量の低減、完全奏効、部分奏効、病状安定、などは、作用物質の治療有効量が対象に投与されていたかを決定するために監視される場合があり、これらのパラメーターは、作用物質の投与に応答した対象の状態の改善を評価するために当技術分野の臨床家によって頼られている。標的病変に関連して本明細書で使用される「完全奏効(CR)」、「部分奏効(PR)」、「病状安定(SD)」および「病態進行(PD)」という用語、ならびに非標的病変に関連する「完全奏効(CR)」、「不完全奏効/病状安定(SD)」および病態進行(PD)という用語は、RECIST基準に定義される通りであると理解される。本明細書で使用される「免疫関連完全奏効(irCR)」、「免疫関連部分奏効(irPR)」、「免疫関連病態進行(irPD)」および「免疫関連病状安定(irSD)」という用語は、免疫関連応答基準(irRC)に従って定義される通りである。本明細書で使用される「免疫関連応答基準(irRC)」という用語は、Wolchok, et al. (2009) Guidelines for the Evaluation of Immune Therapy Activity in Solid Tumors: Immune-Related Response Criteria, Clinical Cancer Research 15(23): 7412-7420に記載されているような免疫療法に対する応答の評価のためのシステムを指す。治療有効量は、投薬レジメンならびに/または対象の状態および前述の要因における変動の評価に関連する対象の治療の経過にわたり調整される場合がある。一態様では、治療有効量は、単独で使用された場合または別の作用物質と併用された場合に、哺乳動物対象への投与の過程で不可逆的な重篤な有害事象をもたらさない作用物質の量である。
【0095】
膜貫通ドメイン:「膜貫通ドメイン」または「TM」という用語は、膜貫通ポリペプチドが細胞膜と関連している場合に、細胞膜内に埋もれ、膜貫通ポリペプチドの細胞外ドメイン(ECD)および細胞内ドメイン(ICD)とペプチド結合している、膜貫通ポリペプチド(例えば、CD122、CD132またはCARなどの膜貫通受容体ポリペプチド)のドメインを指す。膜貫通ドメインは、細胞外ドメインおよび/または細胞内ドメインの一方または両方と相同(天然に関連している)または異種(天然には関連していない)である場合がある。膜貫通ドメインは、細胞外ドメインおよび/または細胞内ドメインの一方または両方と相同(天然に関連している)または異種(天然には関連していない)である場合がある。受容体が第1の親受容体に由来する細胞内ドメインおよび第2の異なる親受容体に由来する第2の細胞外ドメインを含むキメラ受容体であるいくつかの態様では、キメラ受容体の膜貫通ドメインは、キメラ受容体が由来する親受容体のICDまたはECDのいずれかと通常関連する膜貫通ドメインである。代替的に、受容体の膜貫通ドメインは、形質膜を貫通する人工アミノ酸配列であり得る。受容体が第1の親受容体に由来する細胞内ドメインおよび第2の異なる親受容体に由来する第2の細胞外ドメインを含むキメラ受容体であるいくつかの態様では、キメラ受容体の膜貫通ドメインは、キメラ受容体が由来する親受容体のICDまたはECDのいずれかと通常関連する膜貫通ドメインである。
【0096】
治療する:「治療する」、「治療すること」、「治療」などの用語は、疾患、障害、もしくは状態、またはそれらの症状が対象において診断された、観察された、またはその他の後に、対象を苦しめているこのような疾患、障害、もしくは状態の根本原因の少なくとも1つ、またはこのような疾患、障害、もしくは状態に関連する症状の少なくとも1つを一時的または永続的に予防する、除去する、低減する、抑制する、緩和する、または回復させるように対象に関して開始される行動(例えば、IL2、CAR-T細胞、またはそれを含む薬学的組成物を投与すること)を指す。治療は、疾患を患っている対象に関して採られる行動を含み、当該行動は、対象における疾患の阻害をもたらす(例えば、疾患、障害、もしくは状態の進展を停止させる、またはそれに関連する1つもしくは複数の症状を回復させる)。
【0097】
Treg:本明細書で使用される「制御性T細胞」または「Treg細胞」という用語は、エフェクターT細胞(Teff)を含むが、それに限定されるわけではない他のT細胞の応答を抑制することができるCD4+ T細胞のタイプを指す。Treg細胞は、CD4、IL2受容体aサブユニット(CD25)、および転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現によって特徴付けられる(Sakaguchi, Annu Rev Immunol 22, 531-62 (2004))。「従来型CD4+ T細胞」によって、制御性T細胞以外のCD4+ T細胞が意味される。
【0098】
バリアント:「タンパク質バリアント」または「バリアントタンパク質」または「バリアントポリペプチド」という用語は、少なくとも1つのアミノ酸改変によって親ポリペプチドと異なるポリペプチドを指すために本明細書において互換的に使用される。親ポリペプチドは、天然もしくは野生型(WT)ポリペプチドの場合があり、またはWTポリペプチドの改変バージョン(すなわちムテイン)の場合がある。
【0099】
野生型:本明細書における「野生型」または「WT」または「天然型」によって、アレル変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列が意味される。WTタンパク質、ポリペプチド、抗体、免疫グロブリン、IgGなどは、ヒトの手によって改変されていないアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を有する。
【0100】
発明の詳細な説明
緒言
本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)療法を含むが、それに限定されるわけではない養子細胞療法の適用のための新たな機会を提供する方法および組成物を提供する。
【0101】
バリアント/ムテインの命名法:
いくつかの態様では、本開示は、それぞれwt hIL2およびwt hCD122アミノ酸配列に対して置換、欠失、および/または挿入を含む野生型IL2リガンドおよびCD122受容体のバリアントを提供する。このようなバリアントタンパク質において改変されている残基は、本明細書において、一文字または三文字アミノ酸コードに続く野生型タンパク質中のこのようなアミノ酸の位置によって名付けられ得る。例えば、hIL2に関連して、「Cys125」または「C125」は、wt hIL2の位置125におけるシステイン残基を指す。置換、欠失、または挿入を指すために、本明細書において以下の命名法が使用される。置換は、本明細書において、wt hIL2残基についての一文字アミノ酸コードに続く、IL2のアミノ酸位置に続く、新たに置換されたアミノ酸についての一文字アミノ酸コードによって名付けられる。例えば「K35A」は、wt hIL2配列の35位のリシン(K)残基のアラニン(A)残基による置換を指す。欠失は、「des」に続く、アミノ酸残基および野生型分子におけるその位置として称される。例えば、「des-Ala1 hIL2」または「desA1 hIL2」という用語は、wt hIL2の1位のアラニンの欠失を含む、ヒトIL2バリアントを指す。本明細書で使用される「hIL2に従って番号付けされた」という用語は、特定のアミノ酸が成熟野生型hIL2の成熟配列中に通常存在する位置を基準とする該アミノ酸の場所の識別を指す。例えばR81は、SEQ ID NO:2に存在する81番目のアミノ酸、アルギニンを指す。同様に本明細書で使用される、hCD122に従って番号付けされたという用語は、特定のアミノ酸が成熟野生型hCD122のコンセンサス配列(SEQ ID NO:1)に通常存在する位置を基準とする該アミノ酸の場所の識別を指す。
【0102】
hoCD122 pos /wt hCD122 neg 細胞
一態様では、本開示は、操作されたヒト免疫細胞においてhoCD122またはOCRポリペプチドの発現を提供するように発現制御配列に機能的に連結されたhoCD122またはOCRをコードするようにゲノムが改変された、このような操作された細胞を提供し、ここで、操作された細胞は、ネイティブなヒトCD122受容体を発現しないようにゲノムが改変されている(「hoCD122pos/wt hCD122neg細胞」)。いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞はhoCD122をコードするポリヌクレオチドの導入によってゲノムが改変されている、またはOCRは内因性hCD122をコードするポリヌクレオチドの座位に組み入れられている。いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞はT細胞である。いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞はNK細胞である。いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞はTILである。いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞はCAR-T細胞である。
【0103】
いくつかの態様では、本発明は、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞を、変化を引き起こすために十分な量のhoIL2と接触させることによって、操作された細胞の選択的活性化および/または増殖のための方法を提供する。hoCD122またはOCRのECDはhoIL2と比べてwt hIL2への実質的に低減した結合を示すので、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞からのwt hCD122の除去は、hoIL2との接触によるhoCD122pos/wt hCD122neg細胞の選択的活性化および/または増殖を可能にする。同様に、天然細胞はhoCD122受容体ECDを発現しないので、このような天然細胞は実質的にhoCD122に非反応性であり、オルソゴナルなCD122の発現は有益である。いくつかの態様では、これは、ヒト免疫細胞(例えばリンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)における内因性ヒトCD122座位(の遺伝的場所)の代わりに、操作されたhoCD122コード配列を導入することによって達成される。代替的な態様では、内因性CD122座位のすべてのアレルを変異させるか、またはノックアウトすることができ、オルソゴナルなCD122タンパク質を発現するように細胞を操作することができる。
【0104】
本明細書に記載される、内因性CD122コード配列の代わりのオルソゴナルなCD122コード配列の導入(またはさもなければ、オルソゴナルなCD122を発現するが、ネイティブなCD122を発現しないヒト免疫細胞を生成すること)は、例えば、オルソゴナルなIL-2に応答して特異的拡大増殖を可能にし、実質的にwt hIL-2に対する細胞の応答性を低減することによって、このような細胞の拡大増殖のより良い制御を可能にする。さらなる利益は、さらなる配列(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする配列)がヒト免疫細胞(例えば、リンパ球または骨髄系細胞を含むが、それに限定されるわけではない)に共導入された場合に、オルソゴナルなIL-2を使用してこのような細胞を特異的に拡大増殖させることができること、またはさらなる配列がCARをコードする場合に、CARリガンドをオルソゴナルなIL-2の代わりにまたはそれと組み合わせて使用することができることである。
【0105】
内因性CD122は、ヒト免疫細胞に自然にコードされるCD122を指す。シグナルペプチドおよび関連する天然発現制御エレメントを含むCD122ポリペプチドについてのコード配列は、内因性CD122遺伝子に含まれる。
【0106】
本明細書に記載されるように、内因性CD122遺伝子座位への、オルソゴナルなCD122をコードするポリヌクレオチドの標的付け挿入によって、オルソゴナルなIL2に応答した細胞の特異的拡大増殖を可能にしながら、同時に、天然IL-2に対する細胞の応答性を破壊することができる。これは、天然細胞と別個に、細胞の拡大増殖の特異的制御をインビトロまたはインビボ(またはエクスビボ)の両方で提供する。下により詳細に述べるように、ヒト免疫細胞CD122座位を編集して、またはオルソゴナルなCD122コード配列および任意で調節配列により部分的もしくは完全に置換して、オルソゴナルなCD122の発現の制御を変化させることができる。
【0107】
いくつかの態様では、ネイティブなCD122プロモーターが、変異したネイティブCD122のコード配列の発現を制御するように、変異したネイティブhCD122がhoCD122ポリペプチドでありかつネイティブなポリペプチドが発現しないように、十分な変化(例えば、下に詳述するような変化)がネイティブなコード配列に導入されるように、ネイティブなヒト免疫細胞CD122座位が編集される。
【0108】
hoCD122発現制御配列
いくつかの態様では、ネイティブなhCD122コード配列の一部または全部を、hoCD122コード配列に置換することができる。上述のいくつかの態様では、hoCD122の発現は、ネイティブなhCD122プロモーターおよび調節配列の制御下にあり、その結果、hoCD122は、実質的にネイティブなCD122が発現するように、すなわち、wtCD122の発現を誘導する活性化シグナル、細胞状態、および/または環境条件に応答して、発現する。
【0109】
他の態様では、ネイティブなCD122プロモーターまたは他の調節配列を編集する、または異なる調節配列により置換することができ、その結果、オルソゴナルなCD122はネイティブなCD122と異なって発現する。ネイティブなCD122プロモーターを置換するために導入することができる例示的なプロモーターは、例えば、ヒトユビキチンCプロモーター(UbiC)、SV40初期プロモーター(SV40)、CMV前初期プロモーター(CMV)、CMV初期エンハンサーを有するCAGプロモーター(CAG(G))、またはEF1aプロモーター(EF1a)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0110】
ゲノム改変
いくつかの態様では、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞は、hoCD122をコードするように内因性hCD122をコードする核酸配列の部分の置換によってゲノムが改変されている。内因性CD122をコードする配列(例えば、SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:1と少なくとも95%同一の配列)の残基を変異させることによってhoCD122を産生することができ、その結果、それらはオルソゴナルなIL2に特異的に結合するが、ネイティブなIL2に特異的には結合しない。例えば、米国特許出願公開第2019/0183933号を参照されたい。いくつかの態様では、オルソゴナルなIL2に対する結合親和性はより高く、例えばネイティブなCD122に対するネイティブなIL2の親和性の2×、3×、4×、5×、10×、またはそれ以上高い。いくつかの態様では、オルソゴナルな同族CD122に対するオルソゴナルなIL2の親和性は、ネイティブなCD122に対するネイティブなIL2の親和性に類似する親和性を示し、例えば、ネイティブなIL2に対するネイティブなCD122の結合親和性の少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%である親和性を有する。場合によっては、オルソゴナルなCD122は、ネイティブなヒトCD122に対して(例えばSEQ ID NO:1と比較して)R41、R42、Q70、K71、T73、T74、V75、S132、H133、Y134、F135、E136、およびQ214より選択される1つまたは複数の残基で改変されている。いくつかの態様では、hoCD122はH133およびY134で改変されている。いくつかの態様では、hoCD122は、H133DおよびY134Fの置換を含む。いくつかの態様では、hoCD122は、ネイティブなヒトCD122タンパク質においてQ70、T73、H133、Y134で置換されている。いくつかの態様では、hoCD122は、アミノ酸置換H133およびY134を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、酸性アミノ酸、例えばアスパラギン酸および/またはグルタミン酸に対するものである。特異的アミノ酸置換は、ネイティブなヒトCD122に対するQ70Y;T73D;T73Y;H133D、H133E;H133K;Y134F;Y134E;Y134Rを含むが、それに限定されるわけではない。オルソロガスなサイトカインの選択は、オルソロガスな受容体の選定によって異なり得る。
【0111】
標的付けられた切断部位を内因性CD122遺伝子コード配列内に導入して、および例えば、切断部位でのHDRテンプレートの導入効率を改善するために、好ましくは1つまたは2つの隣接ホモロジーアームを有する相同依存性修復(homology dependent repair)(HDR)テンプレート核酸を導入して、それにより、内因性CD122コード配列またはその一部分の、オルソゴナルなCD122コード配列についてのコード配列またはその部分による置換を誘導することによって、本開示の実施に有用なリンパ球(例えばT細胞)または骨髄系細胞の調製を達成することができる。したがって、オルソゴナルなCD122コード配列は、細胞ゲノム中の内因性CD122の場所にあり、内因性配列を置換している。最適には、ゲノム中の内因性CD122遺伝子の両方のアレルがオルソゴナルなCD122により置換され、その結果、もたらされた細胞は、ネイティブな(内因性)CD122タンパク質を発現しない。内因性CD122のコード配列全体を置換することができる、またはネイティブなCD122プロモーターから、もしくは同様に導入されたプロモーターからの発現を可能にするような方法で内因性コード配列の1つもしくは複数の部分を改変することができる。
【0112】
内因性CD122遺伝子コード配列内の標的付けられた切断(例えば、その位置にオルソゴナルなCD122を挿入するため、または内因性CD122を変異させるもしくはノックアウトするため)を、任意の数のガイド下(標的付けられた)ヌクレアーゼを使用して導入することができる。「ガイド下ヌクレアーゼ」は、例えばDNA配列を標的付ける別の小分子ガイドRNA(sgRNA)または融合タンパク質配列によって、特定のゲノムDNA配列に標的付けられたDNAヌクレアーゼを指す。ヌクレアーゼを、およびヌクレアーゼと別々ならばガイド分子を送達するために、任意の送達方法を使用することができる。いくつかの態様では、ヌクレアーゼおよびガイドRNAは同じメカニズムによって送達される。いくつかの態様では、ヌクレアーゼは1つのメカニズムによって(例えば、タンパク質としてまたは核酸によってコードされて)T細胞に送達され、sgRNAは第2のメカニズムによってT細胞に送達される。
【0113】
オルソゴナルなCD122コード配列を導入するために、またはオルソゴナルなCD122をコードするように内因性CD122コード配列を変化させる変異を導入するために、任意の遺伝子操作方法を使用することができる。いくつかの態様では、二本鎖切断(DSB)またはそのためのニックは、部位特異的ヌクレアーゼによって内因性CD122遺伝子内またはその近くに生み出すことができる。標的付けられたヌクレアーゼの例は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)もしくはTALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)、特異的切断をガイドするための操作されたcrRNA/トラクトRNA(一本鎖ガイドRNA)を用いるCRISPR/Cas9システムを含むが、それに限定されるわけではない。例えば、Burgess (2013) Nature Reviews Genetics 14:80-81、Urnov et al. (2010) Nature 435(7042):646-51;米国特許出願公開第20030232410号;同第20050208489号;同第20050026157号;同第20050064474号;同第20060188987号;同第20090263900号;同第20090117617号;同第20100047805号;同第20110207221号;同第20110301073号、同第20110301073号;同第20130177983号;同第20130177960号および国際公開公報第2007/014275号、同第2003087341号;同第2000041566号;同第2003080809号を参照されたい。相同組換え修復(HDR)によって、または非相同末端結合(NHEJ)推進過程の間に末端捕獲によって導入遺伝子構築物が挿入されるように、標的付けられた遺伝子に特異的なヌクレアーゼを利用することができる。
【0114】
「相同組換え修復」またはHDRは、DNA鎖の切断末端またはニックの入った末端が相同なテンプレート核酸からの重合によって修復される細胞過程を指す。したがって、本来の配列はテンプレートの配列により置換される。外因性テンプレート核酸(すなわち「HDRテンプレート」)を導入して、標的部位で配列の特異的HDR誘導変化を得ることができる。このように、特異的変異を切断部位に導入することができる。一本鎖DNAテンプレートまた二本鎖DNAテンプレートは、リンパ球または骨髄系細胞のゲノムを、例えばHDRによって編集するためのテンプレートとして細胞によって使用されることができる。一般的に、一本鎖DNAテンプレートまたは二本鎖DNAテンプレートは、標的部位に相同な少なくとも1つの領域を有する。場合によっては、一本鎖DNAテンプレートまたは二本鎖DNAテンプレートは、標的の切断部位または挿入部位に挿入されるべき異種配列を含有する領域に隣接する2つの相同領域、例えば5'末端および3'末端を有する。HDRテンプレートを、ガイド下ヌクレアーゼおよびガイドRNAもしくはDNAを用いて導入することができ、または標的細胞内に別々に導入することができる。PAM部位が除去されるようにHDRテンプレート内のオルソゴナルなCD122のコード配列を1つまたは複数の変異により改変することができる。いくつかの態様では、これらの変異は、コードされるアミノ酸に変化がないように選択される(サイレント変異)。
【0115】
いくつかの態様では、HDRテンプレートは、オルソゴナルなCD122のコード配列のみならず、少なくとも1つのさらなるコード配列を含む。いくつかの態様では、オルソゴナルなCD122のコード配列および1つまたは複数のさらなるコード配列は、融合タンパク質をコードするように連結され、ここで、オルソゴナルなCD122のコード配列およびさらなるコード配列は、自己切断型ペプチドによって隔てられている。いくつかの態様では、自己切断型ペプチドは、例えば、P2A、E2A、F2AまたはT2Aペプチドなどである。いくつかの態様では、さらなるコード配列はCAR(例えば、上記)をコードする。
【0116】
配列特異的切断を誘導し、したがって標的変異誘発を可能にする特定のゲノム配列に標的付けることができる任意のヌクレアーゼを使用することができる。例示的なヌクレアーゼは、例えば、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガータンパク質(ZFP)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、DNAガイド下ポリペプチド、例えばナトロノバクテリウム グレゴリイ(Natronobacterium gregoryi)アルゴノート(NgAgo)、およびCas9、CasX、CasY、Cpf1、Cms1、MAD7、その他を含むが、それに限定されるわけではないCRISPR/Cas RNAガイド下ポリペプチドを含む。
【0117】
Casタンパク質の非限定的な例は、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変バージョンを含む。これらの酵素は公知である。例えば、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベースの受託番号Q99ZW2に見出され得る。いくつかの態様では、Cas9などのCRISPR酵素はDNA切断活性を有する。いくつかの態様では、CRISPR酵素はCas9であり、化膿性連鎖球菌、黄色ぶどう球菌もしくは肺炎連鎖球菌(S. pneumonia)またはアクチノバクテリア(Actinobacteria)、Aquificae、バクテロイデス門(Bacteroidetes)-緑色硫黄細菌門(Chlorobi)、クラミジア(Chlamydiae)-ベルコミクロビア(Verrucomicrobia)、緑色非硫黄細菌門(Chlroflexi)、シアノバクテリア(Cvanobacteria)、ファーミキューテス門(Firmicutes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、スピロヘータ(Spirochaetes)、もしくはテルモトガ門(Thermotogae)由来のCas9であり得る。いくつかの態様では、CRISPR酵素は、標的配列内および/または標的配列の相補体内などの標的配列の位置で1つまたは両方の鎖の切断を指示する。いくつかの態様では、2つの一本鎖ニックは、対向する鎖に短いスパンのDNA内で(例えば、いくつかの態様では1kb内で)作られる。
【0118】
いくつかの態様では、内因性CD122のアレルが発現されない、または少なくとも細胞がネイティブなIL-2に実質的に応答しないように、ヒト免疫細胞における内因性CD122座位は変異またはノックアウトされる。いくつかの態様では、二重ノックアウト(例えば、ネイティブなCD122を発現していない二倍体細胞の両方のアレル)について細胞を選別(例えば、FACS)方法により選択することができる。次いで、もたらされた細胞を、任意の所望の方法でオルソゴナルなCD122を発現するように操作することができる。単なる例として、そのような態様では、オルソゴナルなCD122コード配列または発現カセットを、スリーピングビューティー(sleeping beauty)トランスポゾンによるものを含むが、それに限定されるわけではないレンチウイルス/レトロウイルスまたは任意の他の組み込み方法によって細胞に導入することができる(例えば、Ivics, Gene Therapy (2020)を参照されたい)。様々なベクター、例えば、ウイルスベクター、プラスミドベクター、ミニサークルベクターが当技術分野において公知であり、それらをこの目的のために使用することができる。発現ベクターは、選択マーカーとも名付けられる選択遺伝子を含有することができる。この遺伝子は、選択培地中で成長した形質転換宿主細胞の生存または成長に必要なタンパク質をコードする。選択遺伝子を含有するベクターにより形質転換されていない宿主細胞は、培地中で生き残らないであろう。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、もしくはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与する、(b)栄養要求性欠損を補完する、または(c)複合培地から入手できない重要な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。代替的に、または組み合わせて、オルソゴナルなIL2は、対応する改変ヒトCD122(例えば、オルソゴナルなCD122)を発現するように操作された、このような操作T細胞(例えば、ヒトT細胞)を選択的に拡大増殖させる方法に採用され得る。
【0119】
IL2オルソログは、対応するオルソゴナルなCD122受容体を発現するように操作されたこのような操作T細胞(例えばヒトT細胞)を選択的に拡大増殖させる方法に、上記のように採用され得る。上記の構築物を用いた操作に有用なT細胞は、ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞またはそれらの組み合わせを含む。上記のように操作するためのT細胞は、対象から収集される、またはドナーが所望の細胞について富化する技術によって細胞混合物から分離され得る、または分離せずに操作され、培養され得る。あるいは、操作のためのT細胞は、他の細胞から分離され得る。正確な分離を提供する技術は、蛍光活性化セルソーターを含む。細胞は、死細胞に関連する色素(例えばヨウ化プロピジウム)を採用することによって死細胞と対照して選択され得る。分離された細胞は、通常、収集チューブの底に血清のクッションを有する、細胞の生存能を維持する任意の適切な培地中に収集され得る。しばしばウシ胎児血清(FCS)が補充された、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地、その他を含む様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って使用され得る。収集され、任意で富化された細胞集団が、遺伝子改変のために直ちに使用される場合があり、または液体窒素の温度で凍結され、保存され、解凍され再利用可能になる場合がある。細胞は、通常、10% DMSO、50% FCS、40% RPMI 1640培地中で保存される。
【0120】
本明細書に記載の操作のために有用なT細胞は、ナイーブT細胞、中枢性メモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞、制御性CD4+ T細胞、ナチュラルキラーT細胞、またはそれらの組み合わせを含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、細胞は、CD8+細胞とCD4+細胞との比を含む(例えば、Turtle, et al, , J Clin Invest. 2016;126(6):2123-2138を参照されたい)。いくつかの態様では、比は、20~80内のCD4+細胞:20~80内のCD8+細胞であり、例えば、20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、または80:20のCD4+:CD8+細胞である。上記のように操作するためのT細胞は、対象から収集される、またはドナーが所望の細胞について富化する技術によって細胞の混合物から分離され得る、または分離せずに操作され、培養され得る。あるいは、操作のためのT細胞は、他の細胞から分離され得る。正確な分離を提供する技術は、蛍光活性化セルソーターを含む。細胞は、死細胞に関連する色素(例えばヨウ化プロピジウム)を採用することによって死細胞と対照して選択され得る。分離された細胞は、通常、収集チューブの底に血清のクッションを有する、細胞の生存能を維持する任意の適切な培地中に収集され得る。しばしばウシ胎児血清(FCS)が補充された、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地、その他を含む様々な培地が市販されており、細胞の性質に従って使用され得る。収集され、任意で富化された細胞集団が、遺伝子改変のために直ちに使用される場合があり、または液体窒素の温度で凍結され、保存され、解凍され、再利用可能になる場合がある。細胞は、通常、10% DMSO、50% FCS、40% RPMI 1640培地中で保存される。いくつかの態様では、操作された細胞は、免疫細胞、例えば、治療を必要とする個体から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の複合混合物を含む。例えば、Yang and Rosenberg (2016) Adv Immunol. 130:279-94, "Adoptive T Cell Therapy for Cancer;Feldman et al (2015) Seminars in Oncol. 42(4):626-39 "Adoptive Cell Therapy-Tumor-Infiltrating Lymphocytes, T-Cell Receptors, and Chimeric Antigen Receptors";Clinical Trial NCT01174121, "Immunotherapy Using Tumor Infiltrating Lymphocytes for Patients With Metastatic Cancer";Tran et al. (2014) Science 344(6184)641-645, "Cancer immunotherapy based on mutation-specific CD4+ T cells in a patient with epithelial cancer"を参照されたい。
【0121】
hoCD122pos/wt hCD122neg細胞は、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞を生物学的有効量のオルソゴナルなリガンドと接触させることに応答した選択的モジュレーション(例えば活性化および/または増殖)が可能であり、ここで、オルソゴナルなリガンドは、hoCD122のECDまたはhoCD122pos/wt hCD122neg細胞のOCRに特異的に結合する。いくつかの態様では、次式のオルソゴナルなリガンドである。
【0122】
オルソゴナルなhIL2(hoIL2):
様々な態様では、本開示の組成物および方法は、次式のアミノ酸配列を含むhIL2ムテインであるヒトIL2オルソログ(すなわち、オルソゴナルなhIL-2、hoIL2)の使用を含む:
(AA1)-(AA2)-(AA3)-(AA4)-(AA5)-(AA6)-(AA7)-(AA8)-(AA9)i-T10-Q11-L12-(AA13)-(AA14)-(AA15)-(AA16)-L17-(AA18)-(AA19)-(AA20)-L21-(AA22)-(AA23)-I24-L25-N26-(AA27)-I28-N29-N30-Y31-K32-N33-P34-K35-L36-T37-(AA38)-(AA39)-L40-T41-(AA42)-K43-F44-Y45-M46-P47-K48-K49-A50-(AA51)-E52-L53-K54-(AA55)-L56-Q57-C58-L59-E60-E61-E62-L63-K64-P65-L66-E67-E68-V69-L70-N71-L72-A73-(AA74)-S75-K76-N77-F78-H79-(AA80-(AA81)-P82-R83-D84-(AA85)-(AA86)-S87-(AA88)-(AA89)-N90-(AA91)-(AA92)-V93-L94-E95-L96-(AA97)-G98-S99-E100-T101-T102-F103-(AA104)-C105-E106-Y107-A108-(AA109)-E110-T111-A112-(AA113)-I114-V115-E116-F117-L118-N119-R120-W121-I122-T123-F124-(AA125)-(AA126)-S127-I128-I129-(AA130)-T131-L132-T133
[式中:
・ AA1は、A(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA2は、P(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA3は、T(野生型)、C、A、G、Q、E、N、D、R、K、Pであるか、または欠失しており;
・ AA4は、S(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA5は、S(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA6は、S(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA7は、T(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA8は、K(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA9は、K(野生型)であるか、または欠失しており;
・ AA13は、Q(野生型)、Wであるか、または欠失しており;
・ AA14は、L(野生型)、M、Wであるか、または欠失しており;
・ AA15は、E(野生型)、K、D、T、A、S、Q、Hであるか、または欠失しており;
・ AA16は、H(野生型)、NもしくはQであるか、または欠失しており;
・ AA18は、L(野生型)またはR、G、M、F、E、H、W、K、Q、S、V、I、Y、H、DもしくはTであり;
・ AA19は、L(野生型)、A、V、Iであるか、または欠失しており;
・ AA20は、D(野生型)、T、S、M、L、または欠失しており;
・ AA22は、Q(野生型)もしくはF、E、G、A、L、M、F、W、K、S、V、I、Y、H、R、N、D、T、Fであるか、または欠失しており;
・ AA23は、M(野生型)、A、W、H、Y、F、Q、S、V、L、Tであるか、または欠失しており;
・ AA27は、G(野生型)、K、Sであるか、または欠失しており;
・ AA38は、R(野生型)、WまたはGであり;
・ AA39は、M(野生型)、LまたはVであり;
・ AA42は、F(野生型)またはKであり;
・ AA51は、T(野生型)、Iであるか、または欠失しており;
・ AA55は、H(野生型)またはYであり;
・ AA74は、Q(野生型)、N、H、Sであり;
・ AA80は、L(野生型)、FまたはVであり;
・ AA81は、R(野生型)、I、D、Y、Tであるか、または欠失しており;
・ AA85は、L(野生型)またはVであり;
・ AA86は、I(野生型)またはVであり;
・ AA88は、N(野生型)、EもしくはQであるか、または欠失しており;
・ AA89は、I(野生型)またはVであり;
・ AA91は、V(野生型)、RまたはKであり;
・ AA92は、I(野生型)またはFであり;
・ AA97は、K(野生型)またはQであり;
・ AA104は、M(野生型)またはAであり;
・ AA109は、D(野生型)、Cまたは活性化側鎖を有する非天然アミノ酸であり;
・ AA113は、T(野生型)またはNであり;
・ AA125は、C(野生型)、AまたはSであり;
・ AA126は、Q(野生型)またはH、M、K、C、D、E、G、I、R、S、もしくはTであり;かつ/あるいは
・ AA130は、S(野生型)、TまたはRである。]
【0123】
いくつかの態様では、本開示は、野生型hIL-2に従って番号付けされた以下のアミノ酸改変セットを含むhIL2ポリペプチドであるhIL2オルソログを提供する:
・ [E15S-H16Q-L19V-D20L-Q22K]
・ [H16N、L19V、D20N、Q22T、M23H、G27K];
・ [E15D、H16N、L19V、D20L、Q22T、M23H];
・ [E15D、H16N、L19V、D20L、Q22T、M23A]、
・ [E15D、H16N、L19V、D20L、Q22K、M23A];
・ [E15S;H16Q;L19V、D20T;Q22K、M23L];
・ [E15S;H16Q;L19V、D20T;Q22K、M23S];
・ [E15S;H16Q;L19V、D20S;Q22K、M23S];
・ [E15S;H16Q;L19I、D20S;Q22K;M23L];
・ [E15S;L19V;D20M;Q22K;M23S];
・ [E15T;H16Q;L19V;D20S;M23S];
・ [E15Q;L19V;D20M;Q22K;M23S];
・ [E15Q;H16Q;L19V;D20T;Q22K;M23V];
・ [E15H;H16Q;L19I;D20S;Q22K;M23L];
・ [E15H;H16Q;L19I;D20L;Q22K;M23T];
・ [L19V;D20M;Q22N;M23S]。
【0124】
いくつかの態様では、hoIL2は、その教示全体が、参照により本明細書に組み入れられる、2020年12月22日に発行されたGarciaら、米国特許第10,869,887B2号に記載されたポリペプチドである。
【0125】
保存的アミノ酸置換
CD122オルソゴナル受容体に対するIL2オルソログの活性および選択性に寄与する前述の改変に加えて、IL2オルソログは、IL2の活性に最小の効果を提供する1つまたは複数の改変をその一次構造に含み得る。いくつかの態様では、本開示のIL2オルソログは、野生型IL-2アミノ酸配列内にもう1つの保存的アミノ酸置換をさらに含み得る。このような保存的置換は、DayhoffによってThe Atlas of Protein Sequence and Structure 5 (1978)に、およびArgosによってEMBO J., 8:779-785 (1989)に記載された置換を含む。保存的置換は、一般的に、表XXXとして示される以下のチャートに従って行われる。
【0126】
(表X)例示的な保存的アミノ酸置換
【0127】
機能または免疫学的同一性における実質的な変化は、表3に示された置換よりも保存性が低いアミノ酸置換を選択することによって行われ得る。例えばポリペプチド主鎖の構造により顕著に影響する置換、または短い非荷電側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン)の、大きな荷電かさばり側鎖(アスパラギン)による置換を含む、二次もしくは三次エレメントを破壊する置換が行われ得る。特に、記載のようにその受容体と関連するIL2の結晶構造から識別され得るような、CD25、CD122および/またはCD123のうち1つまたは複数と相互作用するアミノ酸に関与するIL2残基の置換である。
【0128】
CD122オルソゴナル受容体に対するIL2オルソログの活性および選択性に寄与する前述の改変に加えて、IL2オルソログは、その一次構造に1つまたは複数の改変を含み得る。上に提供されるような一次構造への改変は、任意で、置換:N30E;K32E;N33D;P34G;T37I、M39Q、F42Y、F44Y、P47G、T51I、E52K、L53N、Q57E、M104A(米国特許第5,206,344号を参照されたい)を含むが、それに限定されるわけではないIL2オルソログのIL2活性を実質的に低下させない改変をさらに含み得る。
【0129】
グリコシル化部位の除去
本開示のIL2オルソログは、IL2オルソログがCHO細胞またはHEK細胞などの哺乳動物細胞において発現された場合に脱グリコシル化IL2オルソログの産生を容易にするための、位置Thr3のO-グリコシル化部位を除去するための改変を含み得る。したがってある特定の態様では、IL2オルソログは、ヒトIL-2の残基3に対応する位置のIL-2のO-グリコシル化部位を除去する改変を含む。一態様では、ヒトIL-2の残基3に対応する位置のIL-2のO-グリコシル化部位を除去する該改変はアミノ酸置換である。例示的なアミノ酸置換は、生体活性を消失させずに位置3のグリコシル化部位を取り除くT3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3K、およびT3Pを含む(米国特許第5,116,943号;Weiger et al., (1989) Eur. J. Biochem., 180:295-300を参照されたい)。特定の態様では、該改変はアミノ酸置換T3Aである。
【0130】
N末端の欠失
内因性プロテアーゼは、リーダー配列の非存在下の細菌発現系で直接組み換え産生された場合、N末端側Met-Ala1残基の欠失をもたらし、「desAla1」IL2オルソログを提供する。IL2オルソログは、最初の2つのアミノ酸の欠失(desAla1-desPro2)のみならず、N末端側改変、特にシステインのスルフヒドリル基のPEG化を容易にするために、Thr3グリコシル化のシステイン残基による置換(T3C)を含み得る(例えば、1993年4月27日に発行されたKatreら、米国特許第5,206,344号を参照されたい)。IL2オルソログは、位置1~9、代替的に位置1~8、代替的に位置1~7、代替的に位置1~6、代替的に位置1~5、代替的に位置1~4、代替的に位置1~3、代替的に位置1~2のうち1つまたは複数でのN末端側アミノ酸の除去をさらに含み得る。
【0131】
血管漏出症候群を最小化するための改変
本開示のいくつかの態様では、IL2オルソログは、有効性の実質的な喪失なしに血管漏出症候群、ヒトにおけるIL2療法の使用の実質的にマイナスで用量制限性の副作用を回避するためのアミノ酸置換を含む。2009年4月7日に発行されたEpsteinら、米国特許第7,514,073B2号を参照されたい。本開示のIL2オルソログに含まれるこのような改変の例は、R38W、R38G、R39L、R39V、F42K、およびH55Yのうち1つまたは複数を含む。
【0132】
インビボ作用持続時間を延長するための改変
上述のように、本開示の組成物は、対象において延長されたインビボ寿命および/または延長された作用持続時間を提供するように改変されたIL2オルソログを含む。このような延長された寿命および/または作用持続時間を提供するための改変は、IL2オルソログの一次配列への改変、担体分子とのコンジュゲーション(例えばアルブミン、アシル化、PEG化)、およびFc融合を含む。
【0133】
インビボ作用持続時間を延長するための配列改変
上述のように、IL2オルソログという用語は、対象において延長されたインビボ寿命および/または延長された作用持続時間を提供するためのIL2オルソログの改変を含む。
【0134】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、延長されたインビボ寿命をもたらす特定のアミノ酸置換を含み得る。例えば、Dakshinamurthiら(International Journal of Bioinformatics Research (2009) 1(2):4-13)は、IL2ポリペプチドにおける置換V91R、K97EおよびT113Nのうち1つまたは複数が強化された安定性および活性を有するIL2バリアントをもたらすと述べている。いくつかの態様では、本開示のIL2オルソログは、V91R、K97EおよびT113N改変のうち1、2または3つすべてを含む。
【0135】
コンジュゲートおよび担体分子
いくつかの態様では、IL2オルソログは、延長された半減期などの所望の薬理学的特性を提供するために担体分子へのコンジュゲーションにより達成され得る、IL2オルソログにある種の特性(例えば、対象における延長された作用持続時間)を提供するように改変される。いくつかの態様では、例えば当技術分野に公知のPEG化、グリコシル化、脂肪酸アシル化、その他によってその半減期を延長するために、IL2オルソログをIgGのFcドメイン、アルブミン;または他の分子に共有結合的に連結することができる。
【0136】
アルブミン融合体
いくつかの態様では、IL2オルソログは、延長されたインビボ曝露を容易にすることが当技術分野において公知であるアルブミン分子(例えばヒト血清アルブミン)との融合タンパク質として発現される。
【0137】
本発明の一態様では、hIL2オルソログは、アルブミンとコンジュゲートされて、本明細書において「IL2オルソログアルブミン融合体」と称される。hIL2オルソログアルブミン融合体に関連して使用される「アルブミン」という用語は、ヒト血清アルブミン(HSA)、イヌ血清アルブミン、およびウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミンを含む。いくつかの態様では、HSAおよびHSAは、野生型HSA配列と比べてC34SまたはK573Pアミノ酸置換を含む。本開示によると、アルブミンは、カルボキシル末端、アミノ末端、カルボキシルおよびアミノ末端の両方、ならびに内部でhIL2オルソログとコンジュゲートされることができる(例えば、米国特許第5,876,969号および米国特許第7,056,701号を参照されたい)。本開示によって考えられているHSA-hIL2オルソログポリペプチドコンジュゲートに、アルブミン分泌プレ配列およびそのバリアント、断片およびそのバリアント、ならびにHSAバリアントなどの様々な形態のアルブミンを使用することができる。このような形態は、一般的に、1つまたは複数の所望のアルブミン活性を有する。さらなる態様では、本開示は、アルブミン、アルブミン断片、およびアルブミンバリアント、その他と直接的または間接的に融合されたhIL2オルソログポリペプチドを含む融合タンパク質を伴い、ここで、融合タンパク質は、未融合の薬物分子よりも高い血漿安定性を有し、かつ/または融合タンパク質は、未融合の薬物分子の治療活性を保持する。いくつかの態様では、間接的融合は、下により十分に述べられるペプチドリンカーまたはその改変バージョンなどのリンカーによって引き起こされる。
【0138】
代替的に、hIL2オルソログアルブミン融合体は、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列およびIL2オルソログポリペプチドを含む融合タンパク質であるIL2オルソログを含む。上に言及されるように、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列およびhIL2オルソログポリペプチドを含む融合タンパク質は、例えば、HSAまたはその断片をコードする核酸が、1つまたは複数のIL2オルソログ配列をコードする核酸と接続されるような遺伝子操作によって達成されることができる。いくつかの態様では、アルブミン結合ペプチドは、アミノ酸配列
を含む。
【0139】
IL2オルソログポリペプチドはまた、タンパク質;多糖、例えばセファロース、アガロース、セルロース、またはセルロースビーズ;ポリマーアミノ酸、例えばポリグルタミン酸、またはポリリシン;アミノ酸コポリマー;不活化ウイルス粒子;不活化細菌毒素、例えばジフテリア、破傷風、コレラ、またはロイコトキシン分子由来のトキソイド;不活化細菌、樹状細胞、チログロブリン;破傷風トキソイド;ジフテリアトキソイド;ポリアミノ酸、例えばポリ(D-リシン:D-グルタミン酸);ロタウイルスのVP6ポリペプチド;インフルエンザウイルスヘマグルチニン、インフルエンザウイルス核タンパク質;キーホールリンペットヘモシアニン(KLH);ならびにB型肝炎ウイルスコアタンパク質および表面抗原などの、大型の緩徐代謝性高分子とコンジュゲートされることができる。所望であればこのようなコンジュゲート型形態を使用して、本開示のポリペプチドに対する抗体を産生することができる。
【0140】
いくつかの態様では、IL2オルソログはPEG化に類似する延長した持続時間を提供するXTENとコンジュゲート(化学的にまたは融合タンパク質として)され、これは、大腸菌(E. coli)において組み換え融合タンパク質として産生され得る。本開示のIL2オルソログと一緒に使用するために適したXTENポリマーは、Podust, et al. (2016) "Extension of in vivo half-life of biologically active molecules by XTEN protein polymers", J Controlled Release 240:52-66およびHaeckel et al. (2016) "XTEN as Biological Alternative to PEGylation Allows Complete Expression of a Protease- Activatable Killin-Based Cytostatic" PLOS ONE | DOI:10.1371/journal.pone.0157193 June 13,2016に提供される。XTENポリマー融合タンパク質は、XTENポリペプチドとIL2オルソログとの間にプロテアーゼ感受性切断部位、例えばMMP-2切断部位を組み入れている場合がある。
【0141】
コンジュゲーションのためのさらなる候補構成要素および分子は、単離または精製に適したものを含む。特定の非限定的な例は、結合分子、例えばビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合ペア)、抗体、受容体、リガンド、レクチン、または例えば、プラスチックもしくはポリスチレンビーズ、プレートもしくはビーズ、磁気ビーズ、検査ストリップ、およびメンブランを含む固体支持体を含む分子を含む。
【0142】
いくつかの態様では、IL-2ムテインはまた、本開示の他の箇所に記載されるような治療用化合物、例えば抗炎症化合物または抗腫瘍薬、治療用抗体(例えばハーセプチン)、免疫チェックポイントモジュレーター、免疫チェックポイント阻害剤(例えば抗PD1抗体)、がんワクチンを含むさらなる治療剤と連結される場合がある。抗菌剤は、ゲンタマイシンを含むアミノグリコシド、抗ウイルス化合物、例えばリファンピシン、3'-アジド-3'-デオキシチミジン(AZT)およびアシクロビル(acylovir)、抗真菌剤、例えばフルコナゾールを含むアゾール、プリレ(plyre)マクロライド、例えばアンホテリシンBおよびカンジシジン、抗寄生虫化合物、例えばアンチモン剤、その他を含む。IL2オルソログは、CSF、GSF、GMCSF、TNFのようなさらなるサイトカイン、エリスロポエチン、免疫モジュレーターまたはサイトカイン、例えばインターフェロンまたはインターロイキン、神経ペプチド、生殖ホルモン、例えばHGH、FSH、またはLH、甲状腺ホルモン、神経伝達物質、例えばアセチルコリン、ホルモン受容体、例えばエストロゲン受容体とコンジュゲートされ得る。非ステロイド系抗炎症薬、例えばインドメタシン、サリチル酸アセテート、イブプロフェン、スリンダク、ピロキシカム、およびナプロキセン、ならびに麻酔薬または鎮痛薬もまた含まれる。イメージングのみならず治療法に有用なものなどの放射性同位体もまた含まれる。
【0143】
本開示のIL2オルソログは、周知の化学コンジュゲーション方法を使用してこのような担体分子に化学的にコンジュゲートされ得る。当技術分野において周知のホモ官能性およびヘテロ官能性架橋試薬などの二官能性架橋試薬をこの目的のために使用することができる。使用すべき架橋試薬の種類は、IL-2ムテインとカップリングすべき分子の性質に依存し、当業者によって容易に同定されることができる。代替的または追加的に、コンジュゲートされることが意図されるIL2オルソログおよび/または分子は、化学的に誘導体化される場合があり、その結果、当技術分野においても周知のようにこれら2つを別々の反応でコンジュゲートすることができる。
【0144】
PEG化:
いくつかの態様では、IL2オルソログは、1つまたは複数の水溶性ポリマーとコンジュゲートされる。本発明の実施に有用な水溶性ポリマーの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ-プロピレングリコール(PPG)、多糖(ポリビニルピロリドン、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリオレフィンアルコール、多糖、ポリ-アルファ-ヒドロキシ酸、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン(POZ)、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0145】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、1つまたは複数のポリエチレングリコール分子とコンジュゲートされる、または「PEG化」される。PEGをIL2オルソログに結び付ける方法または部位は様々であり得るものの、特定の態様では、PEG化は、IL2オルソログの活性を変更しない、または最小限しか変更しない。
【0146】
いくつかの態様では、特定の化学反応を使用してN末端のPEG化を促進するために、システインが3位のスレオニンの代わりに置換され得る(3TC)。
【0147】
いくつかの態様では、例えば、Ptacinら(2018年8月3日に出願され、2019年2月7日に国際公開公報番号WO2019/028419A1として公開されたPCT国際出願公開番号PCT/US2018/045257)に記載された選択的PEGコンジュゲーション化学反応を促進するために側鎖を有する非天然アミノ酸の組み入れによるIL2オルソログの選択的PEG化が、IL2受容体複合体の1つまたは複数のサブユニット(例えば、CD25、CD132)に対する親和性が低減しているIL2オルソログを生成するために採用され得る。例えば、アミノ酸34~45、61~72および105~109を含む、CD25と相互作用すると特定されたIL2の配列または残基にPEG化可能な特異的部分を有する非天然アミノ酸を組み入れているhIL2オルソログは、典型的には、CD25への結合性が低下したIL2オルソログを提供する。同様に、アミノ酸18、22、109、126、もしくは119~133を含む、hCD132と相互作用すると特定されたIL2の配列または残基にPEG化可能な特異的部分を有する非天然アミノ酸を組み入れているhIL2オルソログは、hCD132への結合性が低下したIL2オルソログを提供する。
【0148】
特定の態様では、半減期の増大は、いかなる生物学的活性の低下よりも大きい。ポリペプチド配列へのコンジュゲーションに適したPEGは、一般的に、室温で水溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R[式中、Rは水素またはアルキル基もしくはアルカノール基などの保護基であり、nは、1~1000の整数である]を有する。Rが保護基である場合、これは一般的に1~8つの炭素を有する。ポリペプチド配列とコンジュゲーションされるPEGは、直鎖または分岐であることができる。分岐PEG誘導体、「スターPEG」およびマルチアーム型PEGが本開示によって考えられている。
【0149】
本開示に使用されるPEGの分子量は、任意の特定の範囲に制限されない。PEG-IL2オルソログのPEG部分は、約5kDaよりも大きい、約10kDaよりも大きい、約15kDaよりも大きい、約20kDaよりも大きい、約30kDaよりも大きい、約40kDaよりも大きい、または約50kDaよりも大きい分子質量を有することができる。いくつかの態様では、分子質量は、約5kDa~約1OkDa、約5kDa~約15kDa、約5kDa~約20kDa、約10kDa~約15kDa、約10kDa~約20kDa、約1OkDa~約25kDaまたは約1OkDa~約30kDaである。直鎖または分岐PEG分子は、約2,000~約80,000ダルトン、代替的に約2,000~約70,000ダルトン、代替的に約5,000~約50,000ダルトン、代替的に約10,000~約50,000ダルトン、代替的に約20,000~約50,000ダルトン、代替的に約30,000~約50,000ダルトン、代替的に約20,000~約40,000ダルトン、代替的に約30,000~約40,000ダルトンの分子量を有する。本発明の一態様では、PEGは2つの20kDアームを含む40kDの分岐PEGである。
【0150】
本開示はまた、PEGが異なるn値を有し、したがって、様々な異なるPEGが特定の比で存在する、コンジュゲートの組成物を考えている。例えば、いくつかの組成物は、n=1、2、3および4であるコンジュゲートの混合物を含む。いくつかの組成物では、n=1であるコンジュゲートの率は18~25%であり、n=2であるコンジュゲートの率は50~66%であり、n=3であるコンジュゲートの率は12~16%であり、n=4であるコンジュゲートの率は最大5%である。このような組成物は、当技術分野において公知の反応条件および精製方法によって産生することができる。クロマトグラフィーは、コンジュゲートの画分を分離するために使用される場合があり、次いで、例えば、所望の数のPEGが結び付いているコンジュゲートを含有する画分が特定され、未改変タンパク質配列および他の数のPEGが結び付いたコンジュゲートがないように精製される。
【0151】
ポリペプチド配列へのコンジュゲーションに適したPEGは、一般的に室温で水溶性であり、一般式R(O-CH2-CH2)nO-R[式中、Rは水素またはアルキル基もしくはアルカノール基などの保護基であり、nは1~1000の整数である]を有する。Rが保護基である場合、これは一般的に1~8つの炭素を有する。
【0152】
2つの広く使用されている第1世代活性化モノメトキシPEG(mPEG)はスクシンイミジルカルボネートPEG(SC-PEG;例えば、Zalipsky, et al. (1992) Biotehnol. Appl. Biochem 15:100-114を参照されたい)およびベンゾトリアゾールカルボネートPEG(BTC-PEG;例えば、Dolenceら、米国特許第5,650,234号を参照されたい)であり、それらは、リシン残基と優先的に反応してカルバメート結合を形成するが、ヒスチジン残基およびチロシン残基と反応することも知られている。PEG-アルデヒドリンカーの使用は、還元的アミノ化を経てポリペプチドのN末端の単一部位を標的とする。
【0153】
PEG化は、ポリペプチドのN末端でのα-アミノ基、リシン残基の側鎖でのイプシロンアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖でのイミダゾール基で起こることが最も多い。大部分の組み換えポリペプチドは、単一のαアミノ基ならびにいくつかのεアミノ基およびイミダゾール基を有するので、リンカーの化学的性質に依存して多数の位置異性体を生成することができる。当技術分野に公知の一般的なPEG化戦略を本明細書に適用することができる。
【0154】
PEGは、1つまたは複数のポリペプチド配列の遊離アミノ基またはカルボキシル基とポリエチレングリコールとの間の結合を媒介する末端反応基(「スペーサー」)を介して本開示のIL2オルソログに結合されることができる。遊離アミノ基に結合されることができるスペーサーを有するPEGは、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシスクシニルイミドで活性化することによって調製することができるN-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールを含む。
【0155】
いくつかの態様では、独特な側鎖を担持する非天然アミノ酸を組み入れて部位特異的PEG化を促進することによって、IL2オルソログのPEG化が促進される。このようなポリペプチドの部位特異的PEG化を達成するための機能的部分を提供するためにポリペプチドに非天然アミノ酸を組み入れることは、当技術分野において公知である。例えば、Ptacinら(2018年8月3日に出願され、2019年2月7日に国際公開公報番号WO2019/028419A1として公開されたPCT国際出願番号PCT/US2018/045257)を参照されたい。一態様では、本発明のIL2オルソログは、IL2オルソログのD109位に非天然アミノ酸を組み入れている。本発明の一態様では、IL2オルソログは、IL2オルソログの109位において、約20kD、代替的に約30kD、代替的に約40kDの分子量を有するPEG分子へとPEG化される。
【0156】
ポリペプチド配列とコンジュゲートされたPEGは、直鎖または分岐であることができる。分岐PEG誘導体、「スターPEG」およびマルチアーム型PEGが、本開示によって考えられている。特定の態様では、本発明の実施に有用なPEGは、10kDa直鎖PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-100AL, NOF America Corporation, One North Broadway, White Plains, NY 10601 USA)、10kDa直鎖PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)ME-100CS、Sunbright(登録商標)ME-100AS、Sunbright(登録商標)ME-100GS、Sunbright(登録商標)ME-100HS、NOF)、20kDa直鎖PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-200AL、NOF、20kDa直鎖PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)ME-200CS、Sunbright(登録商標)ME-200AS、Sunbright(登録商標)ME-200GS、Sunbright(登録商標)ME-200HS、NOF)、20kDa 2アーム型分岐PEG-アルデヒドであって、2つの10kDa直鎖PEG分子を含む20kDA PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-200AL3、NOF)、20kDa 2アーム型分岐PEG-NHSエステルであって、2つの10kDA 直鎖PEG分子を含む20kDA PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-200TS、Sunbright(登録商標)GL200GS2、NOF)、40kDa 2アーム型分岐PEG-アルデヒドであって、2つの20kDA 直鎖PEG分子を含む40kDA PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3)、40kDa 2アーム型分岐PEG-NHSエステルであって、2つの20kDA 直鎖PEG分子を含む40kDA PEG-NHSエステル(例えば、Sunbright(登録商標)GL2-400AL3、Sunbright(登録商標)GL2-400GS2、NOF)、直鎖30kDa PEG-アルデヒド(例えば、Sunbright(登録商標)ME-300AL)および直鎖30kDa PEG-NHSエステルを含む。
【0157】
前述のように、PEGはIL2オルソログに直接、またはリンカー分子を介して結び付けられる場合がある。適切なリンカーは、一般的に改変ポリペプチド配列と、連結された構成要素および分子との間に幾分の運動を許すのに十分な長さの「フレキシブルなリンカー」を含む。リンカー分子は、一般的に約6~50原子長である。リンカー分子はまた、例えば、アリールアセチレン、2つ~10の単量体ユニットを含有するエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであることができる。適切なリンカーは、容易に選択することができ、任意の適切な長さ、例えば1アミノ酸長(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50または50超のアミノ酸長であることができる。フレキシブルなリンカーの例は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、および他のフレキシブルなリンカーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーは、相対的に構造不定であり、したがって、構成要素間の中立テザーとして役立つことができる。フレキシブルなリンカーのさらなる例は、グリシンポリマー(G)n、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、グリシン-セリンポリマーを含む。グリシンポリマーおよびグリシン-セリンポリマーは相対的に構造不定であり、したがって、構成要素間の中立テザーとして役立つ場合がある。異種アミノ酸配列を本明細書に開示されるポリペプチドにコンジュゲートするために使用され得るフレキシブルなリンカーを提供するために、これらのリンカー配列の多量体(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、または30~50)が一緒に連結される場合がある。
【0158】
さらに、このようなリンカーは、IL2オルソログを本明細書に記載されるさらなる異種ポリペプチド成分に連結するために使用される場合があり、異種アミノ酸配列は、シグナル配列および/または融合パートナー、例えば、アルブミン、Fc配列、などであり得る。
【0159】
本開示の一態様では、IL2オルソログは構造:
[PEG]-[リンカー]n-[hoIL2]
[式中、n=0もしくは1である]、または
[PEG]-[リンカー]n-hIL2[desAla1E15S-H16Q-L19V-D20L-Q22K-M23A]
[式中、n=0もしくは1である]
のヒトIL2オルソログである。
【0160】
本発明の別の態様では、IL2オルソログは構造
[式中、n=0または1である]
のヒトIL2オルソログである。一態様では、IL2オルソログは構造:
40kD分岐PEG-リンカー-hIL2[desAla1-E15S-H16Q-L19V-D20L-Q22K-M23A]-COOH
[式中、40kD分岐PEG-リンカーは構造:
である]
を有するヒトIL2オルソログである。
【0161】
アシル化
いくつかの態様では、本開示のIL2オルソログは、Resh (2016) Progress in Lipid Research 63: 120-131に記載されるように脂肪酸分子とのコンジュゲーションによってアシル化され得る。コンジュゲートされ得る脂肪酸の例は、ミリステート、パルミテートおよびパルミトレイン酸を含む。ミリストイレートは、典型的には、N末端グリシンに連結されるが、リシンもミリストイル化され得る。パルミトイル化は、典型的には、S-パルミトイル化を触媒するDHHCタンパク質などの遊離システインの-SH基の酵素修飾によって達成される。セリンおよびスレオニン残基のパルミトレイル化(palmitoleylation)は、典型的には、PORCN酵素を使用して酵素的に達成される。
【0162】
アセチル化
いくつかの態様では、IL-2ムテインは、N末端アセチルトランスフェラーゼおよび例えばアセチルCoAとの酵素反応によってN末端がアセチル化される。N末端アセチル化に代替的にまたは追加的に、IL-2ムテインは、例えばリシンアセチルトランスフェラーゼとの酵素反応によって1つまたは複数のリシン残基がアセチル化される。例えば、Choudhary et al. (2009) Science 325 (5942):834L2 ortho840を参照されたい。
【0163】
Fc融合体
いくつかの態様では、IL2融合タンパク質は、IgG重鎖可変領域を欠如するIgGサブクラスの抗体に由来するFc領域を組み入れる場合がある。「Fc領域」は、パパインによるIgGの消化によって産生されるIgG C末端ドメインと相同な天然または合成ポリペプチドであることができる。IgG Fcは、約50kDaの分子量を有する。変異型IL-2ポリペプチドは、Fc領域全体、またはそれが一部分をなすキメラポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持するより小さな部分を含むことができる。加えて、全長または断片化Fc領域は、野生型分子のバリアントであることができる。すなわち、それらは、ポリペプチドの機能に影響する場合も影響しない場合もある変異を含有することができ;下にさらに記載するように、天然型の活性がすべての場合で必要または所望のわけではない。特定の態様では、IL-2ムテイン融合タンパク質(例えば、本明細書に記載されるIL-2部分アゴニストまたはアンタゴニスト)は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4 Fc領域を含む。例示的なFc領域は、補体結合およびFc受容体の結合を阻害する変異を含むことができる、またはこれは溶解性であり得、すなわち、補体と結合する、または抗体依存性補体溶解(ADCC)などの別のメカニズムを介して細胞を溶解することができる。
【0164】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、Fc-融合キメラポリペプチド分子の機能的ドメインを含む。Fc融合コンジュゲートは、生物製剤の全身半減期を増大させることが示されており、したがって、生物製剤製品は、より頻度の少ない投与を必要とすることができる。Fcは、血管を覆う内皮細胞中の新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、結合すると、Fc融合分子は、分解から保護され、循環中に再放出され、該分子を循環中により長く保つ。このFc結合は、内因性IgGがその長い血漿半減期を保持するメカニズムであると考えられる。最近のFc-融合技術は、生物製剤の単一コピーを抗体のFc領域に連結して、従来のFc-融合コンジュゲートと比較して生物製剤の薬物動態性質および薬力学性質を最適化する。Fc融合体の調製に有用な「Fc領域」は、パパインによるIgGの消化によって産生されるIgG C末端ドメインと相同な天然ポリペプチドまたは合成ポリペプチドであることができる。IgG Fcは、約50kDaの分子量を有する。IL2オルソログは、Fc領域全体、またはそれが一部分をなすキメラポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持する、より小さな部分を提供し得る。加えて、全長または断片化Fc領域は、野生型分子のバリアントであることができる。典型的な提示では、二量体Fcの各単量体は異種ポリペプチドを保有し、異種ポリペプチドは同じまたは異なる。
【0165】
いくつかの態様では、IL2オルソログがFc融合体の形式で投与されることになる場合、特にFc二量体の各サブユニットにコンジュゲートされたポリペプチド鎖が異なる状況で、Fc融合は、「ノブイントゥホール(knob-into-hole)改変」を有するように操作され得る。ノブイントゥホール改変は、Ridgway, et al. (1996) Protein Engineering 9(7):617-621および1998年3月24日に発行された米国特許第5,731,168号により十分に記載されている。ノブイントゥホール改変は、CH3ドメイン中の2つの免疫グロブリン重鎖の間の界面での改変を指し、その際:i)第1の重鎖のCH3ドメイン中のアミノ酸残基が、より大きな側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、チロシンまたはトリプトファン)により置換され、表面からの突出(「ノブ」)を作り出し、ii)第2の重鎖のCH3ドメイン中のアミノ酸残基が、より小さな側鎖を有するアミノ酸残基(例えば、アラニンまたはスレオニン)により置換され、それにより、第2のCH3ドメインにおける界面内に空洞(「ホール」)が生成し、その空洞の中で第1のCH3ドメインの突出している側鎖(「ノブ」)が第2のCH3ドメイン中の空洞によって収容される。一態様では、「ノブイントゥホール改変」は、抗体重鎖の一方にアミノ酸置換T366Wおよび任意でアミノ酸置換S354Cを含み、抗体重鎖の他方にアミノ酸置換T366S、L368A、Y407Vおよび任意でY349Cを含む。さらに、Fcドメインは、S354およびY349位におけるシステイン残基の導入によって改変される場合があり、これは、Fe領域中の2つの抗体重鎖の間に安定化ジスルフィド架橋をもたらす(Carter, et al. (2001) Immunol Methods 248, 7-15)。ノブイントゥホール形式は、ヘテロ二量体ポリペプチドコンジュゲートの発現を促進するための「ノブ」改変を有する第1のFc単量体上の第1のポリペプチド(例えばIL2オルソログ)および「ホール」改変を有する第2のFc単量体上の第2のポリペプチドの発現を促進するために使用される。
【0166】
Fc領域は、「溶解性」または「非溶解性」であることができるが、典型的には非溶解性である。非溶解性Fc領域は、典型的には高親和性Fc受容体結合部位およびC1q結合部位を欠如する。マウスIgG Fcの高親和性Fc受容体結合部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含む。したがって、Fc受容体結合部位は、Leu235を変異または欠失させることによって阻害することができる。例えば、Leu235に代わるGluへの置換は、Fc領域が高親和性Fc受容体と結合する能力を阻害する。マウスC1q結合部位は、IgGのGlu318、Lys320、およびLys322残基を変異または欠失させることによって機能的に破壊することができる。例えば、Glu318、Lys320、およびLys322に代わるAla残基への置換は、IgG1 Fcが抗体依存性補体溶解を指示できないようにする。対照的に、溶解性IgG Fc領域は、高親和性Fc受容体結合部位およびC1q結合部位を有する。高親和性Fc受容体結合部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含み、C1q結合部位は、IgG1のGlu318、Lys320、およびLys322残基を含む。溶解性IgG Fcは、これらの部位に野生型残基または保存的アミノ酸置換を有する。溶解性IgG Fcは、抗体依存性細胞性細胞傷害または補体依存性細胞溶解(CDC)のために細胞を標的付けることができる。ヒトIgGに適した変異も公知である(例えば、Morrison et al., The Immunologist 2: 119-124, 1994;およびBrekke et al., The Immunologist 2: 125, 1994を参照されたい)。
【0167】
特定の態様では、本開示のIL2オルソログのアミノ末端またはカルボキシル末端を免疫グロブリンFc領域(例えば、ヒトFc)と融合して、融合コンジュゲート(または融合分子)を形成させることができる。Fc融合コンジュゲートは、生物製剤の全身半減期を増大させることが示されており、したがって、生物製剤製品に必要な投与頻度をより少なくすることができる。Fcは、血管を覆う内皮細胞中の新生児Fc受容体(FcRn)に結合し、結合すると、Fc融合分子は、分解から保護され、循環中に再放出され、該分子を循環中により長く保つ。このFc結合は、内因性IgGがその長い血漿半減期を保持するメカニズムであると考えられる。最近のFc-融合技術は、生物製剤の単一コピーを抗体のFc領域と連結して、従来のFc-融合コンジュゲートと比較して生物製剤の薬物動態的性質および薬力学的性質を最適化する。
【0168】
標的付けられたIL2オルソログ:
いくつかの態様では、IL2オルソログは特定の細胞型または組織発現の細胞表面分子に選択的に結合するポリペプチド配列(「ターゲティングドメイン」)との融合タンパク質として提供される。いくつかの態様では、標的付けられたIL2オルソログ融合タンパク質のIL2オルソログおよびターゲティングドメインは、任意で、融合タンパク質のIL2オルソログ配列と、ターゲティングドメインの配列との間に1~40、代替的に2~20、代替的に5~20、代替的に10~20、または代替的に4~8つのアミノ酸のリンカー分子を組み入れている場合がある。
【0169】
他の態様では、標的付けられたオルソゴナルなIL-2融合タンパク質は、抗体またはその抗原結合部分を含む場合があり、ここで、キメラタンパク質の抗体または抗原結合構成要素は、ターゲティング部分として作用することができる。例えば、これはキメラタンパク質を細胞の特定のサブセットまたは標的分子に局在化させるために使用することができる。サイトカイン-抗体キメラポリペプチドを生成する方法は、例えば、米国特許第6,617,135号に記載されている。
【0170】
いくつかの態様では、IL2オルソログ融合タンパク質のターゲティングドメインは、腫瘍細胞の細胞表面分子に特異的に結合する。CAR-T細胞のCARのECDがCD-19に特異的に結合する一態様では、IL2オルソログは、CD-19ターゲティング部分との融合タンパク質として提供され得る。例えば、CAR-T細胞のCARのECDがCD-19との特異的結合を提供するscFv分子である一態様では、IL2オルソログは、CD-19に特異的に結合する一本鎖抗体(例えばscFvまたはVHH)などのCD-19ターゲティング部分との融合タンパク質として提供される。
【0171】
いくつかの態様では、融合タンパク質は、IL-2ムテインおよび抗CD19 scFv FMC63を含む(Nicholson, et al. (1997) Mol Immunol 34: 1157-1165)。同様に、CAR-T細胞のCARのECDがBCMAに特異的に結合するいくつかの態様では、IL2オルソログは、BCMAターゲティング部分、例えばKalledら(2015年5月9日に発行された米国特許第9,034,324号)に記載された抗BMCA抗体のCDRを含む抗体またはBrogdonら(2019年1月8日に発行された米国特許第10,174,095号)に記載されたCDRを含む抗体との融合タンパク質として提供される。いくつかの態様では、IL2オルソログは、GD2ターゲティング部分、例えばCheungら(2016年4月19日に発行された米国特許第9,315,585号)に記載されたCDRまたはME36.1(Thurin et al., (1987) Cancer Research 47:1229-1233)、14G2a、3F8(Cheung, et al., 1985 Cancer Research 45:2642-2649)、hu14.18、8B6、2E12、もしくはic9に由来するCDRを含む抗体との融合タンパク質として提供される。
【0172】
代替的な態様では、本開示の標的付けられたIL2オルソログは、IL2活性をCAR-T細胞に標的付け、疲弊したCAR-T細胞をインビボで若返らせるために、抗FMC63抗体などにより、CAR-T細胞の細胞外受容体に基づきCAR-T細胞へのIL2オルソログの標的付け送達を提供するためにCAR-T細胞療法と組み合わせて投与され得る。その結果、本開示の態様は、このようなIL2オルソログの、CAR-T細胞の特異的細胞表面分子と相互作用するように設計された抗体またはリガンドとのコンジュゲーションによるIL2オルソログの標的付け送達を含む。このような分子の例は、抗FMC63-hIL2オルソログであろう。
【0173】
他の態様では、キメラポリペプチドは、変異型IL-2ポリペプチド、および変異型IL-2ポリペプチドの発現を強化するように、またはその細胞局在を指示するように機能する異種ポリペプチド、例えばAga2pアグルチニンサブユニットを含む(例えば、Boder and Wittrup, Nature Biotechnol. 15:553-7, 1997を参照されたい)。
【0174】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、融合タンパク質のIL2オルソログ配列とターゲティングドメインの配列との間に1~40個のアミノ酸のリンカー分子を組み入れていてもよいこのようなターゲティングドメインに特異的に結合する細胞表面分子を発現している特定の細胞型または組織への選択的結合を容易にするために、ポリペプチド配列(「ターゲティングドメイン」)との融合タンパク質として提供される。一態様では、IL2オルソログ融合タンパク質のターゲティングドメインは、オルソゴナルなCD122を発現しているCAR-T細胞によって標的付けられた細胞型の細胞表面分子に特異的に結合する。例えば、オルソゴナルなCD122 CAR-T細胞が、CD-19に特異的に結合するECDを有するCARを含むとき、IL2オルソログ融合タンパク質のターゲティングドメインはまた、CD-19に結合し得る。ターゲティングドメインの例は、細胞表面受容体に対するリガンドまたは特異的結合分子抗体を含む。一態様では、IL2オルソログ融合タンパク質は、オルソゴナルなリガンドを発現している操作された細胞(例えばhoCD122 CAR-T細胞)に標的付けられるものと同じ細胞型に特異的に結合する分子を含む。hoCD122 CAR-T細胞のCARのECDがCD-19に特異的に結合する一態様では、IL2オルソログは、CD-19ターゲティング部分との融合タンパク質として提供され得る。例えば、hoCD122 CAR-T細胞のCARのECDが、CD-19との特異的結合を提供するscFv分子である一態様では、IL2オルソログは、CD-19ターゲティング部分、例えば、CD-19に特異的に結合する一本鎖抗体(例えばscFvまたはVHH)との融合タンパク質として提供される。一態様では、融合タンパク質は、IL-10オルソログおよび抗CD19 sdFv FMC63を含む(Nicholson, et al. (1997) Mol Immunol 34: 1157-1165)。同様に、hoCD122 CAR-T細胞のCARのECDがBCMAに特異的に結合するいくつかの態様では、IL2オルソログは、BCMAターゲティング部分、例えば、Kalledら(2015年5月9日に発行された米国特許第9,034324号)に記載された抗BMCA抗体のCDRを含む抗体またはBrogdonら(2019年1月8日に発行された米国特許第10,174,095号)に記載されたCDRを含む抗体との融合タンパク質として提供される。hoCD122 CAR-T細胞のCARのECDがGD2に特異的に結合するいくつかの態様では、IL2オルソログは、GD2ターゲティング部分、例えば、Cheungら(2016年4月19日に発行された米国特許第9,315,585号)に記載されたCDRまたはME36.1(Thurin et al (1987) Cancer Research 47:1229-1233)、14G2a、3F8(Cheung, et al 1985 Cancer Research 45:2642-2649)、hu14.18、8B6、2E12、もしくはic9に由来するCDRを含む抗体との融合タンパク質として提供される。いくつかの態様では、IL2オルソログ融合タンパク質のターゲティング部分は、hoCD122 CAR T細胞によって提供されるものと同じであるか、または異なる場合があり、特にこれは、CARによって標的付けられた腫瘍細胞型に発現される代替的な抗原に対する場合がある。例えば、hoCD122 scfv 14G2a GD2に標的付けられたCAR-T細胞に関連して、IL2オルソログは、別のGD2腫瘍抗原の特異的結合ドメインを含む標的付けられた融合構築物中に提供され得る。
【0175】
操作された細胞集団の特異的拡大増殖
オルソゴナルなCD122をコードするポリヌクレオチドを内因性CD122遺伝子内に導入するためにリンパ球(例えばT細胞)または骨髄系細胞集団が処理された後、もたらされた改変細胞を、オルソゴナルなIL-2リガンド、例えば上記または本明細書の他の箇所に記載されたものとの接触によって特異的に拡大増殖させることができる。一態様では、本開示は、混合細胞集団からオルソゴナルなCD122受容体を発現している操作された細胞(例えばリンパ球または骨髄系細胞)の集団を選択的に拡大増殖させる方法であって、混合細胞集団を本開示のIL2オルソログと、操作された細胞の増殖を容易にする条件下で接触させることを含む方法を提供する。一態様では、リンパ球または骨髄系細胞がCAR-T細胞も発現する場合、オルソゴナルな受容体を発現しているCARリンパ球(例えばT細胞)または骨髄系細胞はまた、本明細書に記載されるIL2オルソログの使用によりバックグラウンドまたは形質導入細胞と非形質導入細胞との混合集団から選択的に拡大増殖され得る。治療適用のためのリンパ球(例えばT細胞)または骨髄系細胞の拡大増殖は、典型的には、CD3 TCR複合体関連シグナルを刺激する作用物質およびT細胞表面の共刺激分子を刺激する作用物質を提供している表面と接触している細胞を培養することを伴う。従来の常法では、操作されたT細胞は、特に臨床適用に使用するためのCAR-T細胞の調製において、CD3/D28と接触させることにより細胞療法産物の投与前に刺激される。Invitrogen(登録商標)CTS Dynabeads(登録商標)CD3/28(Life Technologies, Inc. Carlsbad CA)またはMiltenyi MACS(登録商標)GMP ExpAct TregビーズまたはMiltenyi MACS GMP TransAct(商標)CD3/28ビーズ(Miltenyi Biotec, Inc.)を含むが、それに限定されるわけではない多種多様な、または市販の製品が、ビーズベースのT細胞活性化を容易にするために利用可能である。T細胞培養に適した条件は、当技術分野において周知である。Lin, et al. (2009) Cytotherapy 11(7):912-922;オンラインで2015年1月16日に公開されたSmith, et al. (2015) Clinical & Translational Immunology 4:e31。標的細胞は、成長を支援するために必要な条件下で、例えば、適切な温度(例えば37℃)および雰囲気(例えば、空気+5% CO2)で維持される。いくつかの態様では、CD122オルソゴナル受容体を発現している操作されたT細胞を含有している混合細胞集団は、ある濃度のIL2オルソログの存在下で少なくとも2時間、代替的に少なくとも3時間、代替的に少なくとも4時間、代替的に少なくとも6時間、代替的に少なくとも8時間、代替的に少なくとも12時間、代替的に少なくとも24時間、代替的に少なくとも48時間、代替的に少なくとも72時間、またはそれ以上培養される。エクスビボ状況におけるIL2オルソログの濃度は、細胞集団において細胞増殖を誘導するために十分である。顕微鏡法によりT細胞増殖を容易に評価することができ、IL2オルソログの最適濃度の決定は、オルソゴナルなCD122受容体に対するIL2オルソログの相対活性に依存するであろう。
【0176】
細胞がIL2オルソログとインビトロで接触される場合、サイトカインを、ネイティブな細胞機構、例えばアクセサリータンパク質、共受容体、その他を利用し得る、受容体からのシグナル伝達を活性化するために十分な用量および期間で操作された細胞に添加することができる。任意の適切な培地が使用され得る。このように活性化した細胞が、抗原特異性、サイトカインプロファイリング、その他の決定に関係する実験目的を含む任意の所望の目的のために、およびインビボ送達のために使用され得る。
【0177】
接触させることがインビボで行われる場合、オルソゴナルなCD122受容体も発現するCAR-T細胞を含むが、それに限定されるわけではない操作された細胞の有効用量を、オルソゴナルなサイトカイン、例えばIL2の投与と組み合わせてレシピエントに注入し、T細胞とそのネイティブな環境で、例えばリンパ節内、その他で接触させることができる。投薬量および頻度は、作用物質;投与様式;IL2オルソログの性質、その他に応じて変動し得る。このようなガイドラインが個々の状況毎に調整されることが当業者によって理解されるであろう。投薬量はまた、投与経路、例えば筋肉内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内注入、その他により変動し得る。一般的に、少なくとも約104個/kgの操作された細胞、少なくとも約105個/kgの操作された細胞;少なくとも約106個/kgの操作された細胞、少なくとも約107個/kgの操作された細胞、またはそれ以上が投与される。
【0178】
操作されたT細胞について、強化された免疫応答は、レシピエントに存在する標的細胞に向けた、例えば腫瘍細胞、感染細胞の除去に向けたT細胞の細胞溶解応答における増加;自己免疫疾患の症状軽減;その他として現われ得る。いくつかの態様では、操作されたT細胞集団が対象に投与されることになる場合、対象に、操作されたT細胞集団の投与の前にまたはそれと組み合わせて免疫抑制療法のクールが提供される。このような免疫抑制レジメンの例は、全身コルチコステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン)を含むが、それに限定されるわけではない。B細胞枯渇のための療法は、正常レベルの血清免疫グロブリンレベルを回復させるための確立された臨床投薬ガイドラインによる静注用免疫グロブリン(IVIG)を含む。いくつかの態様では、本発明のCAR-T細胞療法の投与前に、対象は、任意で、リンパ枯渇レジメンに供され得る。このようなリンパ枯渇レジメンの一例は、フルダラビン(30mg/m2を静脈内に毎日4日間)およびシクロホスファミド(フルダラビンの最初の用量と共に開始して500mg/m2をIVに毎日2日間)の対象への投与からなる。
【0179】
操作されたT細胞を、治療的使用、例えばヒトの治療に適した薬学的組成物中に提供することができる。このような細胞を含む治療用製剤を水溶液の形態で凍結すること、または生理学的に許容され得る担体、賦形剤もしくは安定化剤を用いて投与のために調製することができる(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))。細胞は、満足な医療行為と一致するやり方で製剤化、投薬、および投与される。これに関連する考慮すべき要因は、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用物質の送達部位、投与方法、投与計画、および医師に公知の他の要因を含む。
【0180】
任意の適切な手段、通常は非経口手段により細胞を投与することができる。非経口注入は、筋肉内、静脈内(ボーラスまたは緩徐注入)、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内または皮下投与を含む。典型的な実施では、操作されたT細胞は生理学的に許容され得る媒体に入れて対象に、通常は血管内に注入されるが、それらはまた、細胞が成長に適した部位を見出し得る任意の他の好都合な部位に導入され得る。通常、少なくとも1×105個/kg、少なくとも1×106個/kg、少なくとも1×107個/kg、少なくとも1×108個/kg、少なくとも1×109個/kg、またはそれ以上の細胞が投与されるが、通常、収集の間に得られたT細胞数によって限定される。
【0181】
例えば、本発明の実施に使用するためのT細胞の投与のための例示的な範囲は、治療1クールあたり、対象の体重1kgあたり約1×105~5×108個の生存細胞の範囲であることができる。その結果、体重について調整して、ヒト対象における生存細胞の投与のための典型的な範囲は、治療1クールあたりおよそ1×106~およそ1×1013個の生存細胞、代替的におよそ5×106~およそ5×1012個の生存細胞、代替的におよそ1×107~およそ1×1012個の生存細胞、代替的におよそ5×107~およそ1×1012個の生存細胞、代替的におよそ1×108~およそ1×1012個の生存細胞、代替的におよそ5×108~およそ1×1012個の生存細胞、代替的におよそ1×109~およそ1×1012個の生存細胞の範囲である。一態様では、細胞の用量は、治療1クールあたり2.5~5×109個の生存細胞の範囲である。
【0182】
治療クールは、単一の用量またはある期間にわたる複数の用量であり得る。いくつかの態様では、細胞は、単一用量として投与される。いくつかの態様では、細胞は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、21、28、30、60、90、120または180日の期間にわたり投与される2つ以上の分割用量として投与される。このような分割投薬プロトコルで投与される操作された細胞の量は、投与毎に同じである場合もあり、または異なるレベルで提供される場合もある。ある期間にわたる複数日投薬プロトコルは、細胞の投与をモニタリングして、治療の有害作用および上述のようなそれらのモジュレーションを含む、治療への対象の応答を考慮して、当業者(例えば医師)によって提供され得る。
【0183】
本開示の組成物および方法はまた、任意で事前のリンパ球枯渇の非存在下で、T細胞療法(特にCAR T細胞療法)による対象の治療のための方法を提供する。リンパ球枯渇は、典型的には、対象においてCAR T細胞と一緒に行われる。それは、混合細胞集団の後続投与、および細胞療法産物の投与と組み合わせた、対象において操作された細胞集団を拡大増殖させるための非特異的作用物質(例えばIL2)の投与が、広範な活性化をもたらす作用物質の投与による免疫細胞の広範な増殖および活性化のみならず、細胞療法産物自体の中に操作されていない細胞が実質的な割合で存在することに起因する顕著な全身毒性(サイトカイン放出症候群または「サイトカインストーム」を含む)をもたらすからである。本開示の方法および組成物は、前述のエクスビボ方法が採用された場合に操作されていない細胞による混入をほとんど欠如する、実質的に精製された操作細胞集団を提供することならびに/またはIL2などの非特異的増殖作用物質の実質的に低減されたオフターゲット効果を提供するIL2オルソログによる操作T細胞の選択的活性化および拡大増殖の両方(または一方)によりこの大きな障害を回避する。
【0184】
例えば、CAR-T細胞療法の現在の診療において、CAR-T細胞は、一般に、宿主免疫の回復前にCAR-T細胞の拡大増殖を容易にするためにリンパ球枯渇(例えば、アレムツズマブ(モノクローナル抗CD52)、プリン類似体、その他の投与による)と組み合わせて投与される。いくつかの態様では、CAR-T細胞は、アレムツズマブへの抵抗性のために改変され得る。一局面では、CAR-T療法に関連して現在採用されるリンパ球枯渇は、オルソゴナルなリガンドを発現しているCAR-Tによって回避または低減され得る。上述のように、リンパ球枯渇は、CAR-T細胞の拡大増殖を可能にするために一般に採用される。しかし、リンパ球枯渇はまた、CAR-T細胞療法の主な副作用と関連する。オルソゴナルなリガンドは特定のT細胞集団を選択的に拡大増殖させるための手段を提供するので、オルソゴナルなリガンドを発現しているCAR-Tの投与前のリンパ球枯渇の必要が低減され得る。オルソゴナルなリガンドを発現しているCAR-Tの投与前にリンパ球枯渇が低減していない、または低減したCAR-T細胞療法を採用することができる。
【0185】
治療方法:
本開示は、疾患、障害または状態を患う哺乳動物対象を予防または治療する方法であって、対象に、オルソゴナルなリガンド(hoIL2)と組み合わせて治療有効量のhoCD122pos/wt hCD122neg細胞を投与することによる方法をさらに提供する。対象への、hoCD122pos/wt hCD122neg細胞集団と組み合わせたオルソゴナルなリガンドの投与は、対象におけるhoCD122pos/wt hCD122neg細胞の選択的活性化および/または増殖を提供する。
【0186】
一態様では、本開示は、オルソゴナルなリガンドCAR-Tの投与前にリンパ球枯渇の非存在下で本明細書に記載のオルソゴナルなCD122を発現しているリンパ球(例えばT細胞)または骨髄系細胞の投与により、CAR-T細胞療法による治療に適した疾患、障害または状態(例えばがん)を患う対象を治療する方法を提供する。一態様では、本開示は、異常な細胞集団(例えば腫瘍)の存在に関連する疾患、障害を患う哺乳動物対象の治療方法を提供し、該細胞集団は1つまたは複数の表面抗原(例えば腫瘍抗原)の発現によって特徴付けられ、該方法は、(a)個体からT細胞を含む生体試料を得る段階;(b)T細胞の存在について生体試料を富化する段階;(c)T細胞に、CARをコードする核酸配列およびオルソゴナルなCD122受容体をコードする核酸配列を含む1つまたは複数の発現ベクターをトランスフェクトする段階であって、CARの抗原ターゲティングドメインが細胞の異常集団上に存在する少なくとも1つの抗原に結合することが可能である段階;(d)オルソゴナルな受容体を発現しているCAR-T細胞の集団をIL2オルソログを用いてエクスビボで拡大増殖させる段階;(e)オルソゴナルな受容体を発現しているCAR-T細胞の薬学的有効量を哺乳動物に投与する段階;および(f)CAR-T細胞上に発現されたオルソゴナルなCD122受容体に選択的に結合するIL2オルソログの治療有効量の投与によって、オルソゴナルなCD122受容体を発現しているCAR-T細胞の成長をモジュレートする段階を含む。一態様では、前述の方法は、CAR-T細胞療法のクールの開始前に哺乳動物のリンパ球枯渇または免疫抑制と関連する。別の態様では、前述の方法は、哺乳動物のリンパ球枯渇および/または免疫抑制の非存在下で実施される。
【0187】
オルソゴナルなリガンドの投与:
本開示の治療方法の態様は、IL2オルソログ(および/またはIL2オルソログをコードする核酸)を含む薬学的製剤の、治療を必要とする対象への投与を伴う。対象への投与は、静脈内に、ボーラスとして、またはある期間にわたる連続注入によって達成され得る。代替的な投与経路は、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、くも膜下腔内、経口、外用、または吸入経路を含む。IL2オルソログはまた、腫瘍内、腫瘍周囲、病変内、結節内もしくは病変周囲経路により、またはリンパに適切に投与されて、局所治療効果のみならず全身治療効果を発揮する。
【0188】
いくつかの態様では、対象IL2オルソログ(および/またはIL2オルソログをコードする核酸)を、薬学的組成物を含む組成物に組み入れることができる。このような組成物は、典型的にはポリペプチドまたは核酸分子と、薬学的に許容される担体とを含む。薬学的組成物は、意図される投与経路と適合するように製剤化され、IL2オルソログが治療または予防を必要とする対象に投与されることになる治療的使用と適合する。
【0189】
IL2オルソログの製剤
本開示のIL2オルソログ(またはそれをコードする核酸)は、対象に薬学的に許容される剤形で投与され得る。好ましい製剤は、意図される投与様式および治療的適用に依存する。
【0190】
非経口製剤
いくつかの態様では、本開示の方法は、IL2オルソログの非経口投与を伴う。非経口投与経路の例は、例えば、静脈内、皮内、皮下、経皮(外用)、経粘膜、および直腸投与を含む。非経口適用のために使用される溶液または懸濁液を含む非経口製剤は、ビヒクル、担体および緩衝剤を含むことができる。非経口投与のための薬学的製剤は、無菌水溶液(水溶性の場合)または分散物、および無菌注射液または分散物の即時調製のための無菌粉末を含む。非経口調製物を、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、ディスポーザブルシリンジまたは多人数用バイアル中に封入することができる。一態様では、製剤は非経口投与のために充填済みシリンジ中に提供される。
【0191】
経口製剤
経口組成物は、使用される場合、一般的に不活性希釈剤または食用担体を含む。経口治療用投与のために、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ、またはカプセル剤、例えばゼラチンカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物をまた、マウスウォッシュとしての使用のために液体担体を使用して調製することができる。薬学的に許容され得る結合剤、および/または補助物質を組成物の部分として含ませることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ、その他は、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含有することができる:結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチンなどの結合剤;デンプンもしくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、Primogel(商標)、もしくはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes(商標)などの滑沢剤;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;スクロースもしくはサッカリンなどの甘味剤;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香味剤。
【0192】
吸入製剤
吸入による投与の場合、対象IL2オルソログまたはそれをコードする核酸は、適切な噴射剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含有する加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。このような方法は、米国特許第6,468,798号に記載されるものを含む。
【0193】
粘膜および経皮
対象IL2オルソログまたは核酸の全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によることができる。経粘膜または経皮投与のために、透過されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、当技術分野において一般的に公知であり、例えば経粘膜投与のための、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与を、点鼻薬または直腸送達のための坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセリドなどの従来の坐剤用基剤を用いる)もしくは停留浣腸の使用により果たすことができる。経皮投与のために、活性化合物は、当技術分野において一般的に公知の軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化され、エタノールまたはラノリンなどの透過促進剤を組み入れている場合がある。
【0194】
徐放製剤およびデポ製剤
本開示の方法のいくつかの態様では、IL2オルソログが治療を必要とする対象に製剤として投与されて、IL2オルソログ剤の徐放を提供する。注射用組成物の徐放製剤の例は、組成物中に吸収を遅延させる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含ませることによって生じさせることができる。一態様では、対象IL2オルソログまたは核酸は、変異型IL-2ポリペプチドを身体からの急速な除去から守る担体、例えば植え込み片およびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤を用いて調製される。生分解性の生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤を、標準的な技術を使用して調製することができる。物質はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することができる。リポソーム懸濁物(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞に標的付けられたリポソームを含む)をまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらを、当業者に公知の方法により、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように調製することができる。
【0195】
一態様では、IL2オルソログ製剤は、その教示が参照により本明細書に組み入れられる、1986年8月5日に発行されたFernandesおよびTaforo、米国特許第4,604,377号およびYasuiら、米国特許第4,645,830号の教示に従って提供される。
【0196】
オルソログをコードする核酸の投与
IL2オルソログを含むIL2オルソログタンパク質薬学的製剤の対象への投与の代わりに、IL2オルソログは、選択的IL2オルソログへの対象の連続曝露を達成するための、IL2オルソログをコードする核酸構築物の薬学的に許容される製剤の対象への投与によって対象に提供され得る。IL2オルソログをコードする組み換えベクターの投与は、IL2オルソログの対象への長期送達およびこのようなIL2オルソログと関連する同族オルソゴナル受容体を発現するように操作された対応する細胞の長期活性化を提供する。本開示の方法のいくつかの態様では、McCaffreyら(Nature 418:6893, 2002)、Xiaら(Nature Biotechnol. 20: 1006-1010, 2002)、またはPutnam(Am. J. Health Syst. Pharm. 53: 151-160, 1996、Am. J. Health Syst. Pharm. 53:325, 1996に正誤表)に記載された方法を含むが、それに限定されるわけではない、当技術分野において公知の方法を使用するトランスフェクションまたは感染によって、IL2オルソログをコードする核酸が対象に投与される。
【0197】
オルソログをコードする非ウイルスベクター:一態様では、IL2オルソログは、非ウイルス送達システムに提供され得る非ウイルスベクター中のIL2オルソログについての核酸発現構築物の形態で対象に投与され得る。非ウイルス送達システムは、典型的には、核酸積み荷による標的細胞の形質導入を容易にするための複合体であり、ここで、核酸は、陽イオン性脂質(DOTAP、DOTMA)、界面活性剤、生物由来物質(ゼラチン、キトサン)、金属(金、磁鉄)および合成ポリマー(PLG、PEI、PAMAM)などの作用物質と複合体化される。脂質ベクターシステム(Lee et al. (1997) Critical Reviews of Therapeutic Drug Carrier Systems 14:173-206);ポリマー被覆リポソーム(1993年5月25日に発行されたMarinら、米国特許第5,213,804号;1991年5月7日に発行されたWoodleら、米国特許第5,013,556号);陽イオンリポソーム(1994年2月1日に発行されたEpandら、米国特許第5,283,185号;1996年11月26日に発行されたJessee, J. A.、米国特許第5,578,475号;1994年1月18日に発行されたRoseら、米国特許第5,279,833号;1994年8月2日に発行されたGebeyehuら、米国特許第5,334,761号)を含む非ウイルス送達システムの多数の態様が、当技術分野において周知である。一態様では、IL2受容体をコードする非ウイルスベクターシステムにおける核酸配列は、調節性プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的もしくは腫瘍特異的プロモーター、または時間調節型プロモーターの制御下にある。
【0198】
オルソログをコードするウイルスベクター
別の態様では、IL2オルソログは、IL2オルソログをコードするウイルスベクターの状態の核酸発現構築物の形態で対象に投与され得る。「ウイルスベクター」および「ウイルス」という用語は、タンパク質合成メカニズムもエネルギー生成メカニズムも有しない偏性細胞内寄生体のいずれか指すために本明細書において互換的に使用される。ウイルスゲノムは、脂質膜のタンパク質の被覆構造をとって含有されるRNAまたはDNAであり得る。ウイルスおよびウイルスベクターという用語は、本明細書において互換的に使用される。本発明の実施に有用なウイルスは、好ましくは、バキュロウイルス科(baculoviridiae)、パルボウイルス科(parvoviridiae)、ピコルナウイルス科(picornoviridiae)、ヘルペスウイルス科(herpesviridiae)、ポックスウイルス科(poxviridae)、またはアデノウイルス科(adenoviridiae)より選択される組み換え改変されたエンベロープまたは非エンベロープDNAウイルスおよびRNAウイルスを含む。ウイルスは、外因性導入遺伝子(例えば、IL2オルソログをコードする核酸配列)の発現を含むように組み換えDNA技術によって改変され、複製欠損、条件付き複製性または複製適格性であるように操作され得る。ウイルス骨格がウイルスベクターのパッケージングに必要な配列だけを含有し、任意で導入遺伝子発現カセットを含み得る最小のベクターシステムもまた採用され得る。「複製欠損」という用語は、野生型哺乳動物細胞における複製のために高度に弱毒化されたベクターを指す。このようなベクターを多量に産生するために、プロデューサー細胞株は、一般的にヘルパーウイルスを用いた共トランスフェクションによって生み出され、または失われた機能を補うようにゲノムが改変される。「複製適格ウイルスベクター」という用語は、感染、DNA複製、パッケージングおよび感染細胞の溶解が可能なウイルスベクターを指す。「条件付き複製性ウイルスベクター」という用語は、特定の細胞型において選択的発現を達成するために設計された複製適格ベクターを指すために本明細書で使用される。このような条件付き複製は、組織特異的な、腫瘍特異的なもしくは細胞型特異的な、または他の選択的に誘導された調節制御配列を初期遺伝子(例えば、アデノウイルスベクターのE1遺伝子)に機能的に連結することによって達成され得る。組み換えウイルスベクターまたは非ウイルスベクターによる対象の感染は、対象においてIL2オルソログの長期発現を提供することができ、CD122オルソゴナル受容体を発現している操作されたT細胞の連続的な選択的維持を提供することができる。一態様では、IL2受容体をコードするウイルスベクターシステム中の核酸配列は、調節性プロモーター、誘導性プロモーター、組織特異的もしくは腫瘍特異的プロモーター、または時間調節型プロモーターの制御下にある。
【0199】
CAR-T細胞
いくつかの態様では、オルソゴナルな受容体を発現しているヒト免疫細胞は、キメラ抗原受容体を表面に発現するようにも改変されているT細胞(例えばヒトT細胞)(「CAR-T」細胞)である。いくつかの態様では、T細胞は、オルソゴナルなCD122を発現するように、および同じ手順でCAR-Tを発現するように改変される。例えば、いくつかの態様では、オルソゴナルなCD122をコードするポリヌクレオチドおよびCAR-Tをコードするポリヌクレオチドは、T細胞に導入され、IL-2オルソログ、CAR-Tリガンド、またはその両方を使用して、もたらされた細胞産物を本明細書に記載されるように選択的に拡大増殖させることができる。いくつかの態様では、T細胞レシピエントがオルソゴナルなCD122およびCARタンパク質を発現する(そしてもはや内因性CD122を発現しない)ように、例えば適切な発現制御エレメントによって隔てられた、オルソゴナルなCD122およびCAR-Tをコードするポリヌクレオチドが、T細胞に導入される。
【0200】
CARシグナル配列
上述のように、CARは、シグナルペプチドを含み得る。本発明の実施において、任意の真核生物シグナルペプチド配列が採用され得る。シグナルペプチドは、表面発現タンパク質のネイティブなシグナルペプチドに由来し得る。本発明の一態様では、CARのシグナルペプチドは、ヒト血清アルブミンシグナルペプチド、プロラクチンアルブミンシグナルペプチド、ヒトIL2シグナルペプチド、ヒトトリプシノーゲン2、ヒトCD-5、ヒト免疫グロブリンカッパ軽鎖、ヒトアズロシジン、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼおよびそれらの機能的誘導体からなる群より選択されるシグナルペプチドである。シグナルペプチドを使用して分泌効率を増大させるための特定のアミノ酸置換は、Stern, et al. (2007) Trends in Cell and Molecular Biology 2:1-17およびKober, et al. (2013) Biotechnol Bioeng. 1110(4):1164-73に記載されている。代替的に、シグナルペプチドは、確立された原理に従って調製された合成配列であり得る。例えば、Nielsen, et al. (1997) Protein Engineering 10(1):1-6 (Identification of prokaryotic and eukaryotic signal peptides and prediction of their cleavage sites);Bendtsen, et al (2004) J. Mol. Biol 340(4):783-795 (Improved Prediction of Signal Peptides SignalP 3.0);Petersen, et al (2011) Nature Methods 8:785-796 (Signal P 4.0; discriminating signal peptides from transmembrane regions)を参照されたい。
【0201】
CAR抗原結合ドメイン(ABD)
本明細書で使用される抗原結合ドメイン(ABD)という用語は、標的細胞の表面に発現された少なくとも1つの抗原に特異的に結合する少なくとも1つの結合ドメインを含有するポリペプチドを指す。いくつかの態様では、ABDは、標的細胞表面の同じ抗原または2つの異なる抗原に選択的に結合する2つの結合ドメインを有するポリペプチドを含む。ABDは、標的細胞表面に発現された1つまたは複数の抗原に特異的に結合する任意のポリペプチドであり得る。CARのABDは、一価または多価の場合があり、細胞表面腫瘍抗原に特異的に結合する1つまたは複数(例えば、1、2、または3つ)のポリペプチド配列(例えば、scFv、VHH、リガンド)を含む。いくつかの態様では、このような細胞表面腫瘍に選択的に結合するABDを含む腫瘍抗原およびCARは、当技術分野において公知である(例えば、Dotti, et al., Immunol Rev. 2014 January;257(1)を参照されたい。本開示の方法および組成物はCAR療法と併用して有用であり、ここで、CARのABDは、CD123、CD19、CD20、BCMA、CD22、CD30、CD70、ルイスY、GD3、GD3、メソセリン、ROR CD44、CD171、EGP2、EphA2、ErbB2、ErbB3/4、FAP、FAR IL11Ra、PSCA、PSMA、NCAM、HER2、NY-ESO-1、MUC1、CD123、FLT3、B7-H3、CD33、IL1RAP、CLL1(CLEC12A)PSA、CEA、VEGF、VEGF-R2、CD22、ROR1、GPC3、メソセリン、c-Met、糖脂質F77、FAP、EGFRvIII、MAGE A3、5T4、WT1、KG2Dリガンド、葉酸受容体(FRa)、およびWnt1抗原を含むが、それに限定されるわけではない腫瘍抗原と特異的に結合する。これらの標的と反応する抗体は文献から周知であり、当業者は、CARのABDに組み入れられ得る一本鎖抗体(例えば、scFv、CDR移植VHH、その他)のポリペプチド配列の構築のためにこのような抗体からCDRを単離することが可能である。
【0202】
一態様では、ABDは一本鎖Fv(ScFv)である。ScFvは、ペプチドリンカーによって共有結合的に接続された抗体の免疫グロブリン重鎖および軽鎖の可変領域から構成されるポリペプチドである(Bird, et al. (1988) Science 242:423-426;Huston, et al. (1988) PNAS(USA) 85:5879-5883;S-z Hu, et al. (1996) Cancer Research, 56, 3055-3061;1990年8月7日に発行されたLadner、米国特許第4946778号)。抗標的付け抗原ScFvの調製は、抗標的付け抗原ScFvが由来する、標的付け抗原に対するモノクローナル抗体の特定を伴う。モノクローナル抗体の生成およびハイブリドーマの単離は、当業者に周知の技術である。例えば、Monoclonal Antibodies: A Laboratory Manual, Second Edition, Chapter 7 (E. Greenfield, Ed. 2014 Cold Spring Harbor Press)を参照されたい。免疫応答は、当技術分野において周知のアジュバント、例えばミョウバン、アルミニウム塩、またはフロイント、SP-21、その他の共投与により強化され得る。生成された抗体は、当技術分野において周知の技術、例えばファージディスプレイおよび定向進化により特定の望ましい特徴を有する抗体について選択するように最適化され得る。例えば、Barbas, et al. (1991) PNAS(USA) 88:7978-82;1993年6月29日に発行されたLadnerら、米国特許第5,223,409号;Stemmer, W. (1994) Nature 370:389-91;1998年10月13日に発行されたGarrard、米国特許第5,821,047号;Camps, et al. (2003) PNAS(USA) 100(17): 9727-32;1986年6月3日に発行されたDulbecco、米国特許第4,593,002号;2004年10月19日に発行されたMcCafferty、米国特許第6,806,079号;2009年12月22日に発行されたMcCafferty、米国特許第7,635,666号;2010年2月16日に発行されたMcCafferty、米国特許第7,662,557号;2010年5月25日に発行されたMcCafferty、米国特許第7,723,271号;および/またはMcCafferty、米国特許第7,732,377号を参照されたい。モノクローナル抗体配列に基づくScFvの生成は、当技術分野において周知である。例えば、The Protein Protocols Handbook, John M. Walker, Ed. (2002) Humana Press Section 150 "Bacterial Expression, Purification and Characterization of Single-Chain Antibodies" Kipriyanov, Sを参照されたい。
【0203】
別の態様では、ABDは、標的付け抗原を用いたラクダまたはラマの免疫処置を経て得られた単一ドメイン抗体である。Muyldermans, S. (2001) Reviews in Molecular Biotechnology 74: 277-302。
【0204】
代替的に、ABDは、ペプチドライブラリーの生成および所望の標的細胞抗原結合特性を有する化合物を単離することを経て全合成的に生成され得る。このような技術は科学文献から周知である。例えば、1999年11月12日に発行されたWiglerら、米国特許第6303313 B1号;2004年2月24日に発行されたKnappikら、米国特許第6696248 B1号、Binz, et al (2005) Nature Biotechnology 23:1257-1268;Bradbury, et al.(2011) Nature Biotechnology 29:245-254を参照されたい。
【0205】
標的細胞発現抗原に対して親和性を有するABDに加えて、ARDはまた、さらなる分子に対して親和性を有し得る。例えば、本発明のARDは、二重特異性であり得、すなわち第1の標的細胞発現抗原および第2の標的細胞発現抗原への特異的結合を提供することが可能である。二価一本鎖ポリペプチドの例は当技術分野において公知である。例えば、Thirion, et al. (1996) European J. of Cancer Prevention 5(6):507-511;DeKruif and Logenberg (1996) J. Biol. Chem 271(13)7630-7634;および2015年11月5日に公開されたKayら、米国特許出願公開第2015/0315566号を参照されたい。
【0206】
ABDは、1つよりも多い標的抗原に対して親和性を有し得る。例えば、本発明のABDは、キメラ二重特異性結合メンバーを含み得る、すなわち、第1の標的細胞発現抗原および第2の標的細胞発現抗原への特異的結合を提供することが可能であり得る。キメラ二重特異性結合メンバーの非限定的な例は、二重特異性抗体、二重特異性コンジュゲート型モノクローナル抗体(mab)2、二重特異性抗体断片(例えば、F(ab)2、二重特異性scFv、二重特異性ダイアボディー(diabody)、一本鎖二重特異性ダイアボディー、その他)、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)、二重特異性コンジュゲート型単一ドメイン抗体、ミカボディー(micabody)およびそれらの変異体、その他を含む。キメラ二重特異性結合メンバーの非限定的な例はまた、Kontermann (2012) MAbs. 4(2): 182-197;Stamova et al. (2012) Antibodies, 1(2), 172-198;Farhadfar et al. (2016) Leuk Res. 49:13-21;Benjamin et al. Ther Adv Hematol. (2016) 7(3):142-56;Kiefer et al. Immunol Rev. (2016) 270(1):178-92;Fan et al. (2015) J Hematol Oncol. 8:130;May et al. (2016) Am J Health Syst Pharm. 73(1):e6-e13に記載されるキメラ二重特異性作用物質を含む。いくつかの態様では、キメラ二重特異性結合メンバーは二価一本鎖ポリペプチドである。例えば、Thirion, et al. (1996) European J. of Cancer Prevention 5(6):507-511;DeKruif and Logenberg (1996) J. Biol. Chem 271(13)7630-7634;および2015年11月5日に公開されたKayら、米国特許出願公開第2015/0315566号を参照されたい。
【0207】
場合によっては、キメラ二重特異性結合メンバーは、CAR T細胞アダプターであり得る。本明細書で使用される「CAR T細胞アダプター」によって、CARの抗原認識ドメインと結合し、CARを第2の抗原に再方向付けする、発現された二重特異性ポリペプチドが意味される。一般的に、CAR T細胞アダプターは、それが方向付けされたCAR上のエピトープに特異的な結合領域、および結合した場合にCARを活性化する結合シグナルを伝達する結合パートナーに方向付けされた第2のエピトープに特異的な結合領域を有する。有用なCAR T細胞アダプターは、例えば、Kim et al. (2015) J Am Chem Soc. 137(8):2832-5;Ma et al. (2016) Proc Natl Acad Sci U S A. 113(4):E450-8およびCao et al. (2016) Angew Chem Int Ed Engl. 55(26):7520-4に記載されるものを含むが、それに限定されるわけではない。
【0208】
いくつかの態様では、GD2に対する抗原結合ドメインは、mAb 14.18、14G2a、chl4.18、hul4.18、3F8、hu3F8、3G6、8B6、60C3、10B8、ME36.1、および8H9より選択される抗体の抗原結合部分である。例えば、WO2012033885、WO2013040371、WO2013192294、WO2013061273、WO2013123061、WO2013074916、およびWO201385552を参照されたい。いくつかの態様では、GD2に対する抗原結合ドメインは、米国特許出願公開第20100150910号またはPCT公報番号WO2011160119に記載された抗体の抗原結合部分である。別の抗体はS58(抗GD2、神経芽腫)である。Cotara(商標)[Perregrince Pharmaceuticals]は、再発性膠芽腫の治療のために記載されたモノクローナル抗体である。いくつかの態様では、CARのABDは、scFvFMC-63およびそのヒト化バリアントを含む。
【0209】
リンカー/ヒンジ
本発明の実施に有用なCARは、任意で、CARのドメインを連結している、特にCARのARDと膜貫通ドメインとの間の連結である1つまたは複数のポリペプチドスペーサーを含み得る。CAR構造の不可欠なエレメントでないものの、スペーサードメインの包含は、一般的に、ARDによる抗原認識を容易にするために望ましいと見なされる。Moritz and Groner (1995) Gene Therapy 2(8) 539-546。本明細書に記載されるCAR-T T細胞技術と共に使用される「リンカー」、「リンカードメイン」および「リンカー領域」という用語は、本開示のCARのドメイン/領域のいずれかを一緒に連結する、約1~100アミノ酸長のオリゴペプチドまたはポリペプチド領域を指す。リンカーは、隣接タンパク質ドメインが互いに対して自由に移動するように、グリシンおよびセリンのようなフレキシブルな残基から構成される場合がある。ある特定の態様は、2つの隣接ドメインが互いに立体的に妨害しないことを保証することが望ましい場合に、長さのより長いリンカーの使用を含む。
【0210】
いくつかの態様では、リンカーは切断不可能なものもあれば、切断可能なものもある(例えば、2Aリンカー(例えばT2A)、2A様リンカーまたはそれらの機能的等価物、および前述の組み合わせ)。スペーサー機能を達成するために必要な特定のアミノ酸配列はないが、スペーサーの典型的な特性は、ARDの運動自由度が標的付け抗原の認識を容易にすることができるフレキシビリティーである。同様に、CARの機能を保持しながらスペーサー長に実質的な寛大さがあることが見出されている。Jensen and Riddell (2014) Immunol. Review 257(1) 127-144。本発明の実施に有用なCARの構築におけるスペーサーとして有用な配列は、IgG1のヒンジ領域、免疫グロブリン1CH2-CH3領域、IgG4ヒンジ-CH2-CH3、IgG4ヒンジ-CH3、およびIgG4ヒンジを含むが、それに限定されるわけではない。ヒンジおよび膜貫通ドメインは、同じ分子、例えばCD8-αのヒンジおよび膜貫通ドメインに由来し得る。Imai, et al. (2004) Leukemia 18(4):676-684。リンカーがピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテッショウウイルスのCHYSEL配列(P2A)、ゾセアアシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)、またはそれらの組み合わせ、バリアントおよび機能的等価物を含む本開示の態様が考えられている。なおさらなる態様では、リンカー配列は、2Aグリシンと2Bプロリンとの間に切断をもたらすAsp-Val/Ile-Glu-X-Asn-Pro-Gly(2A)-pro(2B)モチーフを含む。
【0211】
CAR膜貫通ドメイン
CARは、CARのABD(または採用する場合はリンカー)を細胞内細胞質ドメインと接続する膜貫通ドメインをさらに含むことができる。膜貫通ドメインは、真核細胞膜内で熱力学的に安定な任意のポリペプチド配列から構成される。膜貫通ドメインは、天然膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインに由来する場合または合成の場合がある。合成膜貫通ドメインの設計において、αヘリックス構造に好都合なアミノ酸が好ましい。CARの構築に有用な膜貫通ドメインは、αヘリックス二次構造を有する編成に好都合なおよそ10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、22、23、または24個のアミノ酸から構成される。好都合なαヘリックスコンフォメーションを有するアミノ酸は、当技術分野において周知である。例えば、Pace, et al. (1998) Biophysical Journal 75: 422-427を参照されたい。αヘリックスコンフォメーションにおいて特に好都合なアミノ酸は、メチオニン、アラニン、ロイシン、グルタミン酸、およびリシンを含む。いくつかの態様では、CAR膜貫通ドメインは、CD3ζ、CD4、CD8、CD28、その他などのI型膜貫通タンパク質からの膜貫通ドメインに由来し得る。
【0212】
CAR細胞内シグナル伝達ドメイン
CARポリペプチドの細胞質ドメインは、1つまたは複数の細胞内シグナルドメインを含む。一態様では、細胞内シグナルドメインは、抗原受容体の会合後にシグナル伝達を開始するT細胞受容体(TCR)および共受容体の細胞質配列ならびにそれらの機能的誘導体および亜断片を含む。細胞質シグナル伝達ドメイン、例えばT細胞受容体ゼータ鎖に由来するものは、キメラ受容体と標的抗原との会合後のTリンパ球または骨髄系細胞の増殖およびエフェクター機能についての刺激シグナルを産生するために、CARの部分として採用される。細胞質シグナル伝達ドメインの例は、CD27の細胞質ドメイン、CD28の細胞質ドメインS、CD137(4-1BBおよびTNFRSF9とも称される)の細胞質ドメイン、CD278(ICOSとも称される)の細胞質ドメイン、PI3キナーゼのp110α、β、またはδ触媒サブユニット、ヒトCD3ζ鎖、CD134(OX40およびTNFRSF4とも称される)の細胞質ドメイン、FcεR1γおよびβ鎖、MB1(Igα)鎖、B29(Igβ)鎖、その他)、CD3ポリペプチド(δ、Δおよびε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70、その他)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn、その他)ならびにT細胞伝達に関与する他の分子、例えばCD2、CD5およびCD28を含むが、それに限定されるわけではない。
【0213】
共刺激ドメイン
いくつかの態様では、CARはまた、共刺激ドメインを提供し得る。「共刺激ドメイン」という用語は、一次特異的刺激が伝播される二次非特異的活性化メカニズムを提供するCARの刺激ドメイン、典型的にはエンドドメインを指す。共刺激ドメインは、メモリー細胞の増殖、生存および発生を高めるCARの部分を指す。共刺激の例は、T細胞受容体を経由する抗原特異的シグナル伝達後の抗原非特異的T細胞共刺激およびB細胞受容体を経由するシグナル伝達後の抗原非特異的B細胞共刺激を含む。共刺激、例えばT細胞共刺激、および関与する因子は、Chen & Flies. (2013) Nat Rev Immunol 13(4):227-42に記載されている。本開示のいくつかの態様では、CSDは、TNFRスーパーファミリーのメンバー、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、Dap10、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40またはそれらの組み合わせのうち1つまたは複数を含む。
【0214】
CARは、しばしば第一、第二、第三または第四世代と称される。第一世代のCARという用語は、細胞質ドメインが単一のシグナル伝達ドメインのみから、例えば、IgE FcεR1γまたはCD3ζ鎖に対する高親和性受容体に由来するシグナル伝達ドメインを経由する抗原結合から、シグナルを伝達するCARを指す。ドメインは、抗原依存性T細胞活性化のための1または3つの免疫受容活性化チロシンモチーフ[ITAM]を含有する。ITAMベースの活性化シグナルは、抗原結合に応答して標的腫瘍細胞を溶解させ、サイトカインを分泌する能力をT細胞に授ける。第二世代CARは、CD3ζシグナルに加えて共刺激シグナルを含む。送達された共刺激シグナルの同時発生的送達は、CAR形質導入T細胞によって誘導されるサイトカイン分泌および抗腫瘍活性を高める。共刺激ドメインは、通常、CD3ζドメインに対して膜近傍である。第三世代CARは、例えば、CD28、CD3ζ、OX40または4-1BBシグナル伝達領域を含む三要素シグナル伝達ドメインを含む。第四世代、または「アーマードcar」では、CAR T細胞は、分子および/または受容体を発現または遮断して、IL-12、IL-18、IL-7、および/またはIL-10;4-1BBリガンド、CD-40リガンドの発現などの免疫活性を高めるようにさらに改変される。
【0215】
本発明のCARに組み入れられ得る細胞内シグナル伝達ドメインの例は、(アミノからカルボキシに):CD3ζ;CD28-41BB-CD3ζ;CD28-OX40-CD3ζ;CD28-41BB-CD3ζ;41BB-CD-28--CD3ζおよび41BB-CD3ζを含む。
【0216】
さらに、より従来型の第一世代および第二世代CARに加えて、CARという用語は、スプリットCAR、オンスイッチCAR、二重特異性またはタンデムCAR、抑制性CAR(iCAR)および人工多能性幹(iPS)CAR-T細胞を含むが、それに限定されるわけではないCARバリアントを含む。
【0217】
「スプリットCAR」という用語は、CARの細胞外部分、ABDおよび細胞質シグナル伝達ドメインが2つの別々の分子に存在するCARを指す。CARバリアントはまた、例えばスプリットCARを含む、条件付き活性化可能CARであるオンスイッチCARを含み、ここで、スプリットCARの2つの部分の条件付きヘテロ二量体化は薬理学的に制御される。CAR分子およびその誘導体(すなわちCARバリアント)は、例えば、PCT出願番号US2014/016527、US1996/017060、US2013/063083;Fedorov et al. Sci Transl Med (2013) 5(215):215ra172;Glienke et al. Front Pharmacol (2015) 6:21;Kakarla & Gottschalk 52 Cancer J (2014) 20(2):151-5;Riddell et al. Cancer J (2014) 20(2):141-4;Pegram et al. Cancer J (2014) 20(2):127-33;Cheadle et al. Immunol Rev (2014) 257(1):91-106;Barrett et al. Annu Rev Med (2014) 65:333-47;Sadelain et al. Cancer Discov (2013) 3(4):388-98;Cartellieri et al., J Biomed Biotechnol (2010) 956304に記載されており、それらの開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0218】
「二重特異性またはタンデムCAR」という用語は、一次CARの活性を増幅または阻害することができる二次CAR結合ドメインを含むCARを指す。
【0219】
「抑制性キメラ抗原受容体」または「iCAR」という用語は、二次CAR結合ドメインの阻害シグナル伝達ドメインを備える第2の抑制受容体の会合が一次CAR活性化の阻害をもたらすことを経て活性CARの活性化をシャットダウンするために、iCARと結合することが二重抗原標的付けを使用するCARを指すために本明細書において互換的に使用される。オフターゲット組織を保護するためにT細胞に導入された抗原特異的iCARを使用することによって、腫瘍組織およびオフターゲット組織の両方に対して特異性を有するT細胞を腫瘍のみに限定することができる(Fedorov, et al., (2013). Science Translational Medicine, 5:215)。抑制性CAR(iCAR)は、抑制性受容体のシグナル伝達モジュールの活性化を経由してCAR-T細胞の活性を調節するように設計される。このアプローチは、一方が活性化受容体によって活性化されるCAR-T細胞の応答を制限するドミナントネガティブシグナルを生成する2つのCARの活性を組み合わせている。iCARは、正常組織によってのみ発現される特異的抗原に結合した場合に、対抗活性化因子CARの応答をスイッチオフすることができる。このようにして、iCAR-T細胞は、がん細胞を健康細胞と識別することができ、形質導入T細胞の機能性を抗原選択的に可逆的に遮断することができる。iCARにおけるCTLA-4またはPD-1細胞内ドメインは、Tリンパ球または骨髄系細胞上に阻害シグナルをトリガーし、より少ないサイトカイン産生、より効率的でない標的細胞溶解、および変化したリンパ球または骨髄系細胞運動性をもたらす。いくつかの態様では、iCARは、抗原認識の際にT細胞の機能を特異的に阻害する膜貫通領域を介して抑制性抗原に特異的に結合する一本鎖抗体(例えば、scFv、VHH、その他)、ICD免疫抑制性受容体(CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4(CD244)、BTLA(CD272)、KIR、TIM-3、TGFβ受容体ドミナントネガティブ類似体、その他を含むが、それに限定されるわけではない)に由来する1つまたは複数の細胞内を含む。
【0220】
「タンデムCAR」または「TanCAR」という用語は、2つの異なる腫瘍関連抗原の独立した会合に応答して刺激シグナルまたは共刺激シグナルを送達するように設計された2つのキメラ受容体の会合によりT細胞の二重特異性活性化を媒介するCARを指す。
【0221】
典型的には、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)は、上記の教示に実質的に従ってCARをコードする発現ベクターを用いた形質導入によって組み換え改変されたT細胞である。
【0222】
いくつかの態様では、操作されたT細胞は、治療される個体に対して同種である。例えば、Graham et al. (2018) Cell 7(10) E155を参照されたい。いくつかの態様では、操作された同種T細胞は、HLAが部分的または完全に適合する。しかし、すべての患者が完全に適合したドナーを有するわけでなく、HLA型と無関係にすべての患者に適した細胞産物が代替を提供する。
【0223】
細胞産物は、対象自身のT細胞からなり得るので、対象に投与されることになる細胞集団は、必然的に様々である。そのうえ、CAR-T細胞作用物質は様々であるので、このような作用物質に対する応答は様々な可能性があり、したがって、治療関連毒性の継続したモニタリングおよび管理を伴い、治療関連毒性は、CAR-T細胞治療の投与前の薬理学的免疫抑制またはB細胞枯渇のクールで管理される。通常、少なくとも1×106個/kg、少なくとも1×107個/kg、少なくとも1×108個/kg、少なくとも1×109個/kg、少なくとも1×1010個/kg、またはそれ以上の細胞が投与されるが、これは、通常、収集中に得られるT細胞数によって限定される。操作された細胞は、任意の生理学的に許容され得る媒体に入れて任意の好都合な投与経路、通常は血管内で対象に注入される場合があるが、それらはまた、細胞が成長に適した部位を見出し得る他の経路によって導入される場合がある。
【0224】
本明細書に記載されるように使用されるT細胞が同種T細胞であるならば、このような細胞は、移植片対宿主病を軽減するように改変され得る。例えば、操作された細胞は、遺伝子編集技術によって達成されるTCRαβ受容体であり得る。TCRαβはヘテロ二量体であり、それが発現されるために、α鎖およびβ鎖の両方の存在が必要である。単一の遺伝子がα鎖(TRAC)をコードし、一方で、β鎖をコードする2つの遺伝子があり、したがって、TRAC座位KOがこの目的のために欠失している。この欠失を達成するためにいくつかの異なるアプローチ、例えばCRISPR/Cas9;メガヌクレアーゼ;操作されたI-CreIホーミングエンドヌクレアーゼ、その他が使用されている。例えば、TRACコード配列がCARコード配列によって置換されるEyquem et al. (2017) Nature 543:113-117;およびTRAC座位にCARを直接組み入れずにクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)/Cas9によりCAR発現をTRAC破壊と連結したGeorgiadis et al. (2018) Mol. Ther. 26:1215-1227を参照されたい。Stadtmauer et al. Science Vol. 367, Issue 6481 (2020)も参照されたい。GVHDを予防するための代替的な戦略は、例えば切断型CD3ζをTCR阻害分子として使用してTCRαβシグナル伝達の阻害物質を発現するようにT細胞を改変する。いくつかの態様では、本明細書に記載されるリンパ球は、T細胞受容体α(TCRA)、T細胞受容体β(TCRB)、PD-1、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、β2ミクログロブリン(B2M)、LAG3、TIM3、TGFBR2、FAS、TET2、SOCS1、TCEB2、RASA2、CBLB、ADORA2A、PTPN2、KDR、またはFAM105Aのうち1つまたは複数を欠失している。CLTA4、B2M、PD-1、TCRAおよびTCRBの欠失の例は、例えば、米国特許出願公開第2016/0348073号に見出すことができる。
【0225】
治療方法
hoCD122+/nCD122-オルソゴナル細胞の選択的活性化
いくつかの態様では、本開示は、細胞の混合集団を、オルソゴナルな細胞のオルソゴナルなCD122に対する同族リガンドであるIL2オルソログと接触させることによって、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む、操作されたヒト免疫細胞の増殖を選択的に活性化および/または刺激するための方法を提供する。いくつかの態様では、本開示は、操作されたヒト免疫細胞においてhoCD122の発現を引き起こすために、ヒト免疫細胞において機能的な少なくとも1つの発現制御配列と機能的に連結されるhoCD122をコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞を提供する。
【0226】
オルソゴナルな細胞を用いた疾患、障害または状態の治療
いくつかの態様では、本開示は、疾患、障害または状態を患う対象の治療のための治療的方法であって、対象への、オルソゴナルな細胞上に発現されたオルソゴナルなCD122に対する同族リガンドであるIL2オルソログの投与と組み合わせた、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞集団の投与を含む治療的方法を提供する。
【0227】
いくつかの態様では、本開示は、腫瘍性疾患、障害または状態を患う対象の治療のための治療的方法であって、対象への、ヒトのオルソゴナルなTIL(hoTIL)上に発現されたオルソゴナルなヒトCD122に対する同族リガンドであるヒトIL2オルソログの治療有効量と組み合わせて、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞集団の投与を含む治療的方法を提供し、ここで、操作された細胞はhoTILである。
【0228】
いくつかの態様では、本開示は、腫瘍性疾患、障害または状態を患う対象の治療のための治療的方法であって、対象への、hoTIL上に発現されたオルソゴナルなヒトCD122に対する同族リガンドであるヒトIL2オルソログの治療有効量と組み合わせて、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞集団の投与を含む治療的方法を提供し、ここで、操作された細胞はヒトのオルソゴナルなCAR-T(hoCAR-T)細胞である。いくつかの態様では、本方法のhoCAR-T細胞は、CD19 hoCAR-T細胞、CD20 hoCAR-T細胞、BCMA hoCAR-T細胞、またはGPC3 hoCAR-T細胞からなる群より選択される。
【0229】
場合によっては、対象は腫瘍性疾患を患い、オルソゴナルなヒト免疫細胞はCD8+ T細胞である。場合によっては、対象は自己免疫疾患を患い、オルソゴナルなヒト免疫細胞はTreg細胞である。場合によっては、操作された免疫細胞はhoCAR-T細胞である。別の局面では、本発明は、(a)本明細書に記載される第1のKIR-CARを含む、細胞傷害性細胞、例えば、天然もしくは非天然のT細胞、NK細胞もしくは細胞傷害性T細胞またはNK細胞株の細胞、例えば、NK92を特徴とする。一態様では、細胞傷害性細胞はT細胞である。一態様では、細胞傷害性細胞はNK細胞である。一態様では、細胞傷害性細胞はNK細胞株、例えばNK92細胞由来である。
【0230】
任意でリンパ球枯渇の非存在下での治療
いくつかの態様では、本開示の方法は、任意で、操作されたオルソゴナルな細胞を対象に投与する前のリンパ球枯渇段階をさらに含む。リンパ球枯渇は、典型的には対象において、CAR-TまたはTILを支援するための非特異的作用物質(例えばIL2)の投与と組み合わせた、CAR-TまたはTILを含む混合細胞集団の投与による養子細胞療法と一緒に行われる。研究は、リンパ球枯渇が養子細胞移入に関連して治療上の利益を有し得ることを示唆している。リンパ球枯渇は、Tregを枯渇させ、細胞「シンク」を取り除き、養子移入された細胞が対象において増殖する物理的空間を提供し、恒常性サイトカイン、例えばIL-7およびIL-15を求めた競合を低減し、免疫抑制リンパ球および骨髄系集団を低減することが報告されている。しかし、リンパ球枯渇が養子細胞移入治療に関連するある特定の重度毒性と関連することに留意すべきである。リンパ球枯渇レジメンは、完全骨髄回復が7~10日以内で、典型的には造血幹細胞の補助を必要としない、短いが深在性のリンパ球減少症および好中球減少症を引き起こす。医療関係者によってリンパ球枯渇が必要と考えられる状況では、対象は、もたらされる任意の毒性に対処するために厳重にモニタリングされるべきである。
【0231】
リンパ球枯渇が治療的方法に関連して採用される状況では、リンパ球枯渇は、抗CD52抗体、プリン類似体、その他を含むリンパ球枯渇治療レジメンを用いて対象を治療することによって達成され得る。いくつかの態様では、リンパ球枯渇治療レジメンは、リンパ球枯渇性の骨髄非破壊的な化学療法レジメン(NMA化学療法)である。診療に一般に使用されるリンパ球枯渇性の骨髄非破壊的な化学療法レジメン(NMA化学療法)の一例は、以下の段階を含む:対象への用量およそ60mg/kgのシクロホスファミドのおよそ2日の静脈内投与に続く、フルダラビンの用量およそ25mg/m2でのフルダラビンの5日投与。場合によっては、リンパ球枯渇治療レジメンは、対象を全身電離放射線照射(TBI)に線量約1グレイ~約80グレイ、任意で約1グレイ~約20グレイ、任意で約2グレイ~約15グレイで曝露することを任意でまたはさらに含む。マウスモデルは、TIL療法の奏効率が全身放射線照射(TBI)による事前のリンパ球枯渇後に改善したことを示した。適用される放射線の量は治療されているがんの種類およびステージに応じて変動する。より高い放射線量は、典型的には、より低い線量がリンパ腫などの非固形腫瘍に十分であり得る固形上皮性腫瘍の場合、約0.5グレイ~約4グレイ、好ましくは約1~2グレイの維持プロトコルの一部として投与される。
【0232】
代替的に、いくつかの態様では、本開示は、疾患、障害または状態を患う対象の治療のための治療的方法であって、対象への、リンパ球枯渇の非存在下のオルソゴナルな細胞(例えば、オルソゴナルなヒト免疫細胞、hoCAR-T細胞、hoTIL、hoNK細胞)上に発現されたオルソゴナルなCD122に対する同族リガンドであるIL2オルソログの投与と組み合わせたオルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞集団の投与を含む治療的方法を提供する。本開示の方法および組成物は、典型的には、前述のエクスビボ方法が採用された場合に操作されていない細胞による混入をほとんど欠如する、実質的に精製された、操作された細胞集団を提供すること、ならびに/またはIL2などの非特異的増殖作用物質の、実質的に低減したオフターゲット効果を提供する、本発明のIL2オルソログを用いたオルソゴナルな細胞の選択的活性化および拡大増殖の両方(または一方)によって養子細胞療法における対象のリンパ球枯渇を回避する。
【0233】
本発明の一局面では、CAR-T療法と関連して現在採用されるリンパ球枯渇は、本発明のhoCAR-Tの使用によって回避または低減され得る。上述のようにリンパ球枯渇は、一般にCAR-T細胞の拡大増殖を可能にするために採用される。しかし、リンパ球枯渇はまた、CAR-T細胞療法の主な副作用と関連する。hIL2オルソログは混合集団におけるオルソゴナルなヒト免疫細胞(例えばhoTILまたはhoCAR-T)の選択的活性化および拡大増殖を可能にするので、投与される細胞集団は、治療有効な、オルソゴナルなヒト免疫細胞(例えばhoCD122 TILまたはhoCD122 CAR-T)が実質的に富化されており、その結果、オルソゴナルなヒト免疫細胞を含む細胞産物の投与前のリンパ球枯渇の必要が避けられるまたは実質的に低減される。本発明の組成物および方法は、対象への養子細胞産物の投与前に低減したリンパ球枯渇を行わないまたは行う養子細胞療法の実施を可能にする。
【0234】
いくつかの態様では、本開示は、養子細胞療法を用いた治療が容易な疾患、障害または状態を患う対象の治療のための治療的方法であって、対象への、事前のリンパ球枯渇の非存在下でのオルソゴナルな細胞上に発現されたオルソゴナルなCD122に対する同族リガンドであるhIL2オルソログの治療有効量の投与と組み合わせた、オルソゴナルなヒトCD122(hoCD122)ポリペプチドをコードするゲノム組み込み型ポリヌクレオチドを含む操作されたヒト免疫細胞集団の投与を含む治療的方法を提供する。一態様では、本開示は、TIL養子細胞療法を用いて腫瘍性疾患、障害または状態を患うヒト対象を治療する方法であって、対象に、治療有効量のhoCD122 TILを含む細胞集団を事前のリンパ球枯渇の非存在下で投与することを含む方法を提供する。一態様では、本開示は、CAR-T養子細胞療法を用いて腫瘍性疾患、障害または状態を患うヒト対象を治療する方法であって、対象に、治療有効量のhoCAR-T細胞を含む細胞集団を事前のリンパ球枯渇の非存在下で投与することを含む方法を提供する。
【0235】
腫瘍性疾患の治療
一態様では、本開示は、hoCD122 ECDを含むオルソゴナルな受容体およびその細胞外ドメインがCD19に特異的に結合するキメラ抗原受容体を発現するようにゲノムが改変された、複数の操作されたT細胞の投与および式1のオルソゴナルなIL2リガンドの同時発生的組み合わせ投与、ならびに式1のオルソゴナルなIL2リガンドの定期的投与を含む維持療法による血液腫瘍性疾患の再発の予防によって血液腫瘍性疾患を患う対象を治療する方法を提供する。
【0236】
一局面では、血液がんは白血病またはリンパ腫である。一局面では、白血病という用語は、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を例えば含むが、それに限定されるわけではない1つまたは複数の急性白血病;例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)を含むが、それに限定されるわけではない、1つまたは複数の慢性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、小細胞または大細胞濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および骨髄系血液細胞の無効産生(または異形成)を兼ね備えた血液状態の多様な集まりである「前白血病」、その他を含むが、それに限定されるわけではない、がんおよび悪性腫瘍を含む。いくつかの態様では、がんは、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、または膠芽腫である。
【0237】
複数の態様において、骨髄腫という用語は、例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫またはインドレント骨髄腫)、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常症、孤立性骨髄腫、孤立性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、および多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、およびPOEMS症候群(クロウ-深瀬症候群、高月病、およびPEP症候群としても知られる)を含む。
【0238】
本開示の組成物を用いた治療が容易なさらなる腫瘍性疾患は、非定型および/もしくは非古典的がん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患、例えば、前立腺がん(例えば、去勢抵抗性もしくは治療抵抗性前立腺がん、または転移性前立腺がん)、膵がん、または肺がんを含む。治療が容易な非がん関連状態は、ウイルス感染症および慢性ウイルス感染症;例えば、HIV、真菌感染症、例えば、C.ネオフォルマンス(C. neoformans);自己免疫疾患;例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLEまたはループス)、尋常性天疱瘡、およびシェーグレン症候群;炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎;粘膜免疫に関係する移植関連アロ特異的免疫障害;および液性免疫が重要な、生物由来物質(例えば第VIII因子)に対する望まれない免疫応答を含む。さらなる非がん関連適応症は、自己免疫疾患(例えばループス)、炎症性障害(アレルギーおよび喘息)および移植を含むが、それに限定されるわけではない。いくつかの態様では、腫瘍抗原発現細胞は、腫瘍抗原をコードするmRNAを発現する、または随時発現した。態様では、腫瘍抗原発現細胞は腫瘍抗原タンパク質(例えば野生型または変異型)を産生し、腫瘍抗原タンパク質は、正常レベルまたは低減したレベルで存在し得る。態様では、腫瘍抗原発現細胞は、一時点で検出可能なレベルの腫瘍抗原タンパク質を産生し、続いて実質的に検出不可能な腫瘍抗原タンパク質を産生した。「保存的配列改変」という用語は指す。
【0239】
組み合わせ療法
本開示の組成物および方法は、さらなる治療的作用物質と組み合わされる場合がある。例えば、治療すべき疾患、障害または状態が腫瘍性疾患(例えばがん)である場合、本開示の方法は、従来の化学療法剤または他の生物学的抗がん薬、例えばチェックポイント阻害剤(例えば、PD1もしくはPDL1阻害剤)もしくは治療用モノクローナル抗体(例えば、アバスチン、ハーセプチン)と組み合わされる場合がある。
【0240】
対象への複数の作用物質の投与に関連して使用される場合の、本明細書で使用される「と組み合わせて」という用語は、第1の作用物質および少なくとも1つのさらなる(すなわち第2、第3、第4、第5、その他の)作用物質の対象への投与を指す。本開示のために、第1の作用物質の投与に起因する生物学的効果が第2の作用物質の投与の時点で対象において持続し、その結果、第1の作用物質および第2の作用物質の治療効果が重複するするならば、1つの作用物質(例えばオルソゴナルな細胞)は第2の作用物質(例えばオルソログ)と組み合わせて投与されると見なされる。例えば、hoCD122オルソゴナルCAR-T細胞は、治療クールにおいて単回投与され得るのに対し、本開示のIL2オルソログは、典型的には、より頻繁に、例えば毎日、BID、または毎週投与される。しかし、第1の作用物質(オルソゴナルなCAR-T細胞)の投与は、長期にわたり治療効果を提供し、第2の作用物質(例えばIL2オルソログ)の投与はその治療効果を提供するのに対して、第1の作用物質の治療効果は継続を維持し、その結果、第1の作用物質が第2の作用物質の投与時間から顕著に離れた(例えば数日または数週間)時点に投与され得るとしても、第2の作用物質は第1の作用物質と組み合わせて投与されると見なされる。一態様では、第1の作用物質および第2の作用物質が同時(互いに30分以内)、同時発生的または順次に投与されるならば、1つの作用物質は第2の作用物質と組み合わせて投与されると見なされる。いくつかの態様では、第1の作用物質および第2の作用物質が互いに約24時間以内に、好ましくは互いに約12時間以内に、好ましくは互いに約6時間以内に、好ましくは互いに約2時間以内に、または好ましくは互いに約30分以内に投与される場合、第1の作用物質は第2の作用物質と「同時発生的に」投与されると考えられる。「と組み合わせて」という用語は、第1の作用物質および第2の作用物質が単一の薬学的に許容される製剤として共製剤化され、共製剤が対象に投与される状況にも適用されると理解されたい。
【0241】
ある特定の態様では、さらなる補助作用物質と組み合わせてさらに投与されるhoCD122 CAR-T細胞およびIL2オルソログは、例えば、1つの作用物質が1つまたは複数の他の作用物質の前に投与される場合に、順次に投与または適用される。他の態様では、IL2オルソログまたはhoCD122 CAR-T細胞および補助作用物質は、例えば、2つ以上の作用物質が同時にまたはほとんど同時に投与される場合に、同時に投与され;2つ以上の作用物質が2つ以上の別々の製剤中に存在する場合、または混合されて単一の製剤(すなわち共製剤)にされる場合がある。作用物質が順次に投与されるかまたは同時に投与されるかにかかわらず、それらは、本開示のために組み合わせて投与されると見なされる。
【0242】
化学療法剤:
いくつかの態様では、補助作用物質は化学療法剤である。いくつかの態様では、補助作用物質は複数の化学療法剤の「カクテル」である。いくつかの態様では、化学療法剤またはカクテルは、1つまたは複数の物理的方法(例えば放射線療法)と組み合わせて投与される。「化学療法剤」という用語は、アルキル化剤、例えばチオテパおよびシクロホスファミド;アルキルスルホネート、例えばブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾデパ、カルボコン、メツレデパおよびウレデパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンを含むエチレンイミンおよびメチラメラミン(methylamelamine);ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソ尿素、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシンA2などのブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアミシン、カラビシン、カミノマイシン(caminomycin)、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシンおよびデメトキシ-ダウノマイシン、11-デオキシダウノルビシン、13-デオキシダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシンなどの誘導体、マルセロマイシン、マイトマイシンC、N-メチルマイトマイシンCなどのマイトマイシン;ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサートおよび5-フルオロウラシル(5-FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート、ジデアザテトラヒドロ葉酸、およびフォリン酸;プリン類似体、例えばフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスリジン、5-FU;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎薬(anti-adrenal)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補充物、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2',2"-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(Ara-C);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル、nab-パクリタキセルおよびドキセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金および白金配位化合物、例えばシスプラチン、オキサプラチン(oxaplatin)およびカルボプラチン;ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT11;トポイソメラーゼ阻害剤;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;タキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、カルバジタキセル;カルミノマイシン、アドリアマイシン、例えば4'-エピアドリアマイシン、4-アドリアマイシン-14-ベンゾエート、アドリアマイシン-14-オクタノエート、アドリアマイシン-14-ナフタレンアセテート;コルヒチンならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体を含むが、それに限定されるわけではない。
【0243】
「化学療法剤」という用語はまた、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、オナプリストンおよびトレミフェンを含む抗エストロゲン薬;ならびに抗アンドロゲン薬、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリドおよびゴセレリン;ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体などの、腫瘍に対するホルモンの作用を調節または阻害するように作用する抗ホルモン剤を含む。
【0244】
いくつかの態様では、補助作用物質は、TAC、FOLFOX、TPC、FEC、ADE、FOLFOX-6、EPOCH、CHOP、CMF、CVP、BEP、OFF、FLOX、CVD、TC、FOLFIRI、PCV、FOLFOXIRI、ICE-V、XELOX、および当技術分野における熟練の臨床家によって容易に認識されるその他を含むが、それに限定されるわけではない公知の化学療法治療レジメンに実践されるような、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト、例えばIL-12、INFα、または抗上皮増殖因子受容体、イリノテカン;テトラヒドロ葉酸代謝拮抗薬、例えばペメトレキセド;腫瘍抗原に対する抗体、モノクローナル抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植片、または抗原提示細胞(例えば樹状細胞療法)、抗腫瘍ワクチン、複製可能なウイルス、シグナル伝達阻害剤(例えば、Gleevec(登録商標)もしくはHerceptin(登録商標))または腫瘍成長の相加的もしくは相乗的抑制を達成するための免疫モジュレーター、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、ステロイド、TNFアンタゴニスト(例えば、Remicade(登録商標)およびEnbrel(登録商標))、インターフェロン-β1a(Avonex(登録商標))、およびインターフェロン-β1b(Betaseron(登録商標))のみならず、前記の1つまたは複数の組み合わせを含むが、それに限定されるわけではない、新生物疾患の治療に有用であると当技術分野において同定された1つまたは複数の化学作用物質または生物学的作用物質である。
【0245】
いくつかの態様では、hIL2オルソログは、BRAF/MEK阻害剤、キナーゼ阻害剤、例えばスニチニブ、PARP阻害剤、例えばオラパリブ、EGFR阻害剤、例えばオシメルチニブ(Ahn, et al. (2016) J Thorac Oncol 11:S115)、IDO阻害剤、例えばエパカドスタット、および腫瘍溶解性ウイルス、例えばタリモジーン-ラハーパレプベック(T-VEC)と組み合わせて投与される。
【0246】
本開示の組成物は、チロシン-キナーゼ阻害剤、例えばイマチニブメシル酸塩(Gleevec(登録商標)として販売され、STI-571としても知られる)、ゲフィチニブ(Iressa(登録商標)、ZD1839としても知られる)、エルロチニブ(Tarceva(登録商標)として販売)、ソラフェニブ(Nexavar(登録商標))、スニチニブ(Sutent(登録商標))、ダサチニブ(Sprycel(登録商標))、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、ニロチニブ(Tasigna(登録商標))、およびボルテゾミブ(Velcade(登録商標))、Jakafi(登録商標)(ルキソリチニブ);ヤヌスキナーゼ阻害剤、例えばトファシチニブ;ALK阻害剤、例えばクリゾチニブ;Bcl-2阻害剤、例えばオバトクラクス(obatoclax)、ベネクレクスタ、およびゴシポール;FLT3阻害剤、例えばミドスタウリン(Rydapt(登録商標))、IDH阻害剤、例えばAG-221、PARP阻害剤、例えばイニパリブおよびオラパリブ;PI3K阻害剤、例えばペリフォシン;VEGF受容体2阻害剤、例えばアパチニブ;[D-Lys(6)]-LHRHと連結されたAN-152(AEZS-108)ドキソルビシン;Braf阻害剤、例えばベムラフェニブ、ダブラフェニブ、およびLGX818;MEK阻害剤、例えばトラメチニブ;CDK阻害剤、例えばPD-0332991およびLEE011;Hsp90阻害剤、例えばサリノマイシン;ならびに/または小分子薬物コンジュゲート、例えばビンタフォリド;セリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えばテムシロリムス(Torisel(登録商標))、エベロリムス(Afinitor(登録商標))、ベムラフェニブ(Zelboraf(登録商標))、トラメチニブ(メキニスト(Mekinist))、およびダブラフェニブ(Tafinlar(登録商標))からなる群より選択される1つまたは複数のさらなる治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0247】
特にCARの腫瘍抗原結合ドメインがBCMAに対するいくつかの態様では、操作されたCAR-T細胞は、Pont, et al. (2019) "γ-secretase inhibition increases efficacy of BCMA-specific chimeric antigen receptor T cells in multiple myeloma" Blood https://doi.org/10.1182/blood.2019000050に記載されるようにγ-セクレターゼ阻害剤(GSI)と組み合わせて投与される。
【0248】
操作された細胞と組み合わせて投与することができる腫瘍特異的モノクローナル抗体は、リツキシマブ(MabTheraまたはリツキサンとして販売)、アレムツズマブ、パニツムマブ、イピリムマブ(ヤーボイ)、その他を含む場合があるが、それに限定されるわけではない。
【0249】
治療用抗体との組み合わせ
いくつかの態様では、「補助作用物質」は治療用抗体である(二重特異性T細胞誘導抗体(BITE)、二重親和性リターゲティング(DART)構築物、および三重特異性キラーエンゲージャー(TriKE)構築物を含むが、それに限定されるわけではない、1つまたは複数の腫瘍関連抗原に結合する二重特異性および三重特異性抗体を含む)。
【0250】
いくつかの態様では、治療用抗体は、HER2(例えば、トラスツズマブ、ペルツズマブ、ado-トラスツズマブ エムタンシン)、ネクチン-4(例えばエンホルツマブ)、CD79(例えばポラツズマブ ベドチン)、CTLA4(例えばイピリムマブ)、CD22(例えばモキセツモマブ パスドトクス)、CCR4(例えばモガムリズマブ)、IL23p19(例えばチルドラキズマブ)、PDL1(例えばデュルバルマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ)、IL17a(例えばイキセキズマブ)、CD38(例えばダラツムマブ)、SLAMF7(例えばエロツズマブ)、CD20(例えば、リツキシマブ、トシツモマブ、イビリツモマブおよびオファツムマブ)、CD30(例えばブレンツキシマブ ベドチン)、CD33(例えばゲムツズマブ オゾガマイシン)、CD52(例えばアレムツズマブ)、EpCam、CEA、fpA33、TAG-72、CAIX、PSMA、PSA、葉酸結合タンパク質、GD2(例えばジヌツキシマブ)、GD3、IL6(例えばシルツキシマブ)、GM2、Ley、VEGF(例えばベバシズマブ)、VEGFR、VEGFR2(例えばラムシルマブ)、PDGFRα(例えばオファツムマブ(olartumumab))、EGFR(例えば、セツキシマブ、パニツムマブおよびネシツムマブ)、ERBB2(例えばトラスツズマブ)、ERBB3、MET、IGF1R、EPHA3、TRAIL R1、TRAIL R2、RANKL RAP、テネイシン、インテグリン□V□3、およびインテグリン□4□1からなる群より選択される少なくとも1つの腫瘍抗原に結合する抗体である。
【0251】
FDAに承認され、腫瘍性疾患の治療に使用するための補助作用物質として使用され得る抗体治療薬の例は、[fam]-トラスツズマブ デルクステカン、エンホルツマブ ベドチン、ポラツズマブ ベドチン、セミプリマブ、モキセツモマブ パスドトクス、モガムリズマブ(mogamuizumab)、チルドラキズマブ、イバリズマブ、デュルバルマブ、イノツズマブ、オゾガマイシン、アベルマブ、アテゾリズマブ、オララツマブ、イキセキズマブ、ダラツムマブ、エロツズマブ、ネシツムマブ、ジヌツキシマブ、ニボルマブ、ブリナツモマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、シルツキシマブ、オビヌツズマブ、アド-トラスツズマブ エムタンシン、ペルツズマブ、ブレンツキシマブ ベドチン、イピリムマブ、オファツムマブ、セルトリズマブ ペゴル、カツマキソマブ、パニツムマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、トシツモマブ-I131、イブリツモマブ チウキセタン、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、トラスツズマブ、インフリキシマブ、リツキシマブ、および/またはエドレコロマブを含むが、それに限定されるわけではない。
【0252】
いくつかの態様では、抗体は、第1の腫瘍抗原および第2の腫瘍抗原、例えばHER2およびHER3(HER2×HER3と省略)を標的とする二重特異性抗体、FAP×DR-5二重特異性抗体、CEA×CD3二重特異性抗体、CD20×CD3二重特異性抗体、EGFR-EDV-miR16三重特異性抗体、gp100×CD3二重特異性抗体、Ny-eso×CD3二重特異性抗体、EGFR×cMet二重特異性抗体、BCMA×CD3二重特異性抗体、EGFR-EDV二重特異性抗体、CLEC12A×CD3二重特異性抗体、HER2×HER3二重特異性抗体、Lgr5×EGFR二重特異性抗体、PD1×CTLA-4二重特異性抗体、CD123×CD3二重特異性抗体、gpA33×CD3二重特異性抗体、B7-H3×CD3二重特異性抗体、LAG-3×PD1二重特異性抗体、DLL4×VEGF二重特異性抗体、カドヘリン-P×CD3二重特異性抗体、BCMA×CD3二重特異性抗体、DLL4×VEGF二重特異性抗体、CD20×CD3二重特異性抗体、Ang-2×VEGF-A二重特異性抗体、CD20×CD3二重特異性抗体、CD123×CD3二重特異性抗体、SSTR2×CD3二重特異性抗体、PD1×CTLA-4二重特異性抗体、HER2×HER2二重特異性抗体、GPC3×CD3二重特異性抗体、PSMA×CD3二重特異性抗体、LAG-3×PD-L1二重特異性抗体、CD38×CD3二重特異性抗体、HER2×CD3二重特異性抗体、GD2×CD3二重特異性抗体、およびCD33×CD3二重特異性抗体である。
【0253】
このような治療用抗体は、直接またはリンカー、特に酸リンカー、塩基リンカーまたは酵素不活性リンカーを経由して、1つまたは複数の化学療法剤とさらにコンジュゲートされる場合がある(例えば、抗体薬物複合体またはADC)。
【0254】
物理的方法との組み合わせ:
いくつかの態様では、補助作用物質は、1つまたは複数の非薬理学的様式(例えば、局所放射線療法または全身放射線療法または外科手術)である。例として、本開示は、放射線照射相に、IL2オルソログおよび1つまたは複数の補助作用物質を含む治療レジメンを用いた治療が先行または後続する治療レジメンを考えている。いくつかの態様では、本開示は、外科手術(例えば腫瘍切除)と組み合わせたIL2オルソログの使用をさらに考えている。いくつかの態様では、本開示は、骨髄移植、末梢血幹細胞移植または他の種類の移植療法と組み合わせたIL2オルソログの使用をさらに考えている。
【0255】
免疫チェックポイントモジュレーターとの組み合わせ:
いくつかの態様では、「補助作用物質」は、対象における新生物疾患のみならず、新生物疾患に関連する疾患、障害または状態を治療および/または予防するための免疫チェックポイントモジュレーターである。「免疫チェックポイント経路」という用語は、免疫応答の刺激(例えば、T細胞活性のアップレギュレーション)または阻害(例えば、T細胞活性のダウンレギュレーション)のいずれかを介して免疫応答をモジュレートする、抗原提示細胞(APC)上に発現する第1の分子(例えば、PD1などのタンパク質)の、免疫細胞(例えばT細胞)上に発現する第2の分子(例えば、PDL1などのタンパク質)への結合によって誘発される生物学的応答を指す。免疫応答をモジュレートする結合ペアの形成に関与する分子は、一般に「免疫チェックポイント」と称される。このような免疫チェックポイント経路によってモジュレートされる生物学的応答は、細胞の活性化、サイトカイン産生、細胞遊走、細胞傷害性因子の分泌、および抗体産生などの下流の免疫エフェクター経路に至る細胞内シグナル伝達経路によって媒介される。免疫チェックポイント経路は、一般に、第1の細胞表面発現分子の、免疫チェックポイント経路に関連する第2の細胞表面分子への結合(例えば、PD1のPDL1への結合、CTLA4のCD28への結合など)によって誘発される。免疫チェックポイント経路の活性化は、免疫応答の刺激または阻害をもたらすことができる。
【0256】
活性化が免疫応答の阻害またはダウンレギュレーションをもたらす免疫チェックポイントは、本明細書において「ネガティブ免疫チェックポイント経路モジュレーター」と称される。ネガティブ免疫チェックポイントモジュレーターの活性化に起因する免疫応答の阻害は、宿主免疫系が腫瘍関連抗原などの外来抗原を認識する能力を低下させる。ネガティブ免疫チェックポイント経路という用語は、PD1のPDL1への結合、PD1のPDL2への結合、およびCTLA4のCDCD80/86への結合によってモジュレートされる生物学的経路を含むが、それに限定されるわけではない。このようなネガティブ免疫チェックポイントアンタゴニストの例は、PD1(CD279とも称される)、TIM3(T細胞膜タンパク質3;HAVcr2としても知られる)、BTLA(BおよびTリンパ球アテニュエーター;CD272としても知られる)、VISTA(B7-H5)受容体、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3;CD233としても知られる)およびCTLA4(細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4;CD152としても知られる)を含むが、それに限定されるわけではないT細胞阻害受容体と結合するアンタゴニスト(例えばアンタゴニスト抗体)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0257】
一態様では、活性化が免疫応答の刺激をもたらす免疫チェックポイント経路は、本明細書において「ポジティブ免疫チェックポイント経路モジュレーター」と称される。ポジティブ免疫チェックポイント経路モジュレーターという用語は、ICOSLのICOS(CD278)への、B7-H6のNKp30への、CD155のCD96への、OX40LのOX40への、CD70のCD27への、CD40のCD40Lへの、およびGITRLのGITRへの結合によってモジュレートされる生物学的経路を含むが、それに限定されるわけではない。ポジティブ免疫チェックポイント(免疫応答を刺激する結合ペアの構成要素に対する天然リガンドまたは合成リガンドなど)を刺激する(agonize)分子は、免疫応答をアップレギュレーションするために有用である。このようなポジティブ免疫チェックポイントアゴニストの例は、ICOS(例えばJTX-2011、Jounce Therapeutics)、OX40(例えばMEDI6383、Medimmune)、CD27(例えばバルリルマブ、Celldex Therapeutics)、CD40(例えばダセツズムマブ(dacetuzmumab)CP-870,893、Roche、Chi Lob 7/4)、HVEM、CD28、CD137、4-1BB、CD226、およびGITR(例えばMEDI1873、Medimmune;INCAGN1876、Agenus)などのT細胞活性化受容体と結合するアゴニスト抗体を含むが、それに限定されるわけではない。
【0258】
本明細書で使用される「免疫チェックポイント経路モジュレーター」という用語は、免疫適格な哺乳動物を含む生物学的システムにおける免疫チェックポイント経路の活性を阻害または刺激する分子を指す。免疫チェックポイント経路モジュレーターは、免疫チェックポイントタンパク質(がん細胞および/または免疫Tエフェクター細胞などの抗原提示細胞(APC)の表面に発現する免疫チェックポイントタンパク質など)への結合によってその効果を発揮する場合があり、または免疫チェックポイント経路における上流および/もしくは下流の反応にその効果を発揮する場合がある。例えば、免疫チェックポイント経路モジュレーターは、SHP2、すなわちPD-1およびCTLA-4シグナル伝達に関与するチロシンホスファターゼの活性をモジュレートする場合がある。「免疫チェックポイント経路モジュレーター」という用語は、抑制性免疫チェックポイントの機能を少なくとも部分的にダウンレギュレーションすることができる免疫チェックポイント経路モジュレーター(本明細書において「免疫チェックポイント経路阻害剤」または「免疫チェックポイント経路アンタゴニスト」と称される)と、刺激性免疫チェックポイントの機能を少なくとも部分的にアップレギュレーションすることができる免疫チェックポイント経路モジュレーター(本明細書において「免疫チェックポイント経路エフェクター」または「免疫チェックポイント経路アゴニスト」と称される)との両方を包含する。
【0259】
免疫チェックポイント経路によって媒介される免疫応答は、T細胞媒介免疫応答に限定されない。例えば、NK細胞のKIR受容体は、NK細胞によって媒介される腫瘍細胞に対する免疫応答をモジュレートする。腫瘍細胞は、NK細胞のKIR受容体を阻害するHLA-Cと呼ばれる分子を発現し、縮小(dimunition)または抗腫瘍免疫応答をもたらす。HLA-CのKIR受容体への結合と拮抗する作用物質、例えば抗KIR3 mab(例えばリリルマブ、BMS)の投与は、HLA-CがNK細胞阻害受容体(KIR)と結合する能力を阻害し、それにより、NK細胞ががん細胞を検出し、攻撃する能力を回復させる。したがって、HLA-CのKIR受容体への結合によって媒介される免疫応答は、その阻害が非T細胞媒介免疫応答の活性化をもたらすネガティブ免疫チェックポイント経路の例である。
【0260】
一態様では、免疫チェックポイント経路モジュレーターは、ネガティブ免疫チェックポイント経路阻害剤/アンタゴニストである。別の態様では、IL2オルソログと組み合わせて用いられる免疫チェックポイント経路モジュレーターは、ポジティブ免疫チェックポイント経路アゴニストである。別の態様では、IL2オルソログと組み合わせて用いられる免疫チェックポイント経路モジュレーターは、免疫チェックポイント経路アンタゴニストである。
【0261】
「ネガティブ免疫チェックポイント経路阻害剤」という用語は、ネガティブ免疫チェックポイント経路の活性化を妨害して、免疫応答のアップレギュレーションまたは増強をもたらす免疫チェックポイント経路モジュレーターを指す。例示的なネガティブ免疫チェックポイント経路阻害剤は、プログラム死-1(PD1)経路阻害剤、プログラム死リガンド-1(PDL1)経路阻害剤、TIM3経路阻害剤および抗細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)経路阻害剤を含むが、それに限定されるわけではない。
【0262】
一態様では、免疫チェックポイント経路モジュレーターは、PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を阻害するネガティブ免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「PD1経路阻害剤」)である。PD1経路阻害剤は、T細胞疲弊の後退、サイトカイン産生の回復、および抗原依存性T細胞の拡大増殖などの一連の好都合な免疫応答の刺激をもたらす。PD1経路阻害剤は、多様ながんに有効であることが認識されており、黒色腫、肺がん、腎臓がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がん、膀胱がんおよび尿路上皮がんを含む多様ながんの治療のためにUSFDAから承認を受けている。
【0263】
PD1経路阻害剤という用語は、PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を妨害するモノクローナル抗体を含む。抗体PD1経路阻害剤は、当技術分野において周知である。PD1のPDL1および/またはPDL2への結合を妨害するモノクローナル抗体である市販のPD1経路阻害剤の例は、ニボルマブ(Opdivo(登録商標)、BMS-936558、MDX1106、BristolMyers Squibb、Princeton NJから市販)、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標)MK-3475、ランブロリズマブ、Merck and Company、Kenilworth NJから市販されている)、およびアテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標)、Genentech/Roche、South San Francisco CA)を含む。デュルバルマブ(MEDI4736, Medimmune/AstraZeneca)、ピディリズマブ(CT-011, CureTech)、PDR001(Novartis)、BMS-936559(MDX1105, BristolMyers Squibb)、およびアベルマブ(MSB0010718C, Merck Serono/Pfizer);およびSHR-1210(Incyte)を含むが、それに限定されるわけではないさらなるPD1経路阻害抗体は、臨床開発中である。さらなる抗体PD1経路阻害剤は、2012年7月10日に発行された米国特許第8,217,149号(Genentech, Inc);2012年5月1日に発行された米国特許第8,168,757号(Merck SharpおよびDohme Corp.)、2011年8月30日に発行された米国特許第8,008,449号(Medarex)、2011年5月17日に発行された米国特許第7,943,743号(Medarex, Inc)に記載されている。
【0264】
PD1経路阻害剤という用語は、アンタゴニスト抗体に限定されない。AMP-224、PD-L2 IgG2a融合タンパク質、およびAMP-514、PDL2融合タンパク質を含む同様に臨床開発中の非抗体性生物学的PD1経路阻害剤は、AmplimmuneおよびGlaxo SmithKlineによって臨床開発中である。PD1経路阻害剤として有用なアプタマー化合物もまた、文献に記載されている(Wang, et al. (2018) 145:125-130.)。
【0265】
PD1経路阻害剤という用語は、2016年8月23日に発行されたSasikumarら、米国特許第9,422,339号、および2014年12月9日に発行されたSasilkumarら、米国特許第8,907,053号に記載されているものなどのペプチジルPD1経路阻害剤を含む。CA-170(AUPM-170, Aurigene/Curis)は、免疫チェックポイントPDL1およびVISTAを標的とする経口的に生物利用可能な小分子であると報告されている。Pottayil Sasikumar, et al. Oral immune checkpoint antagonists targeting PD-L1/VISTA or PD-L1/Tim3 for cancer therapy. [abstract]. In: Proceedings of the 107th Annual Meeting of the American Association for Cancer Research; 2016 Apr 16-20; New Orleans, LA. Philadelphia (PA): AACR; Cancer Res 2016;76(14 Suppl): Abstract No.4861。CA-327(AUPM-327, Aurigene/Curis)は、免疫チェックポイント、プログラム死リガンド-1(PDL1)およびT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有タンパク質-3(TIM3)を阻害する経口的に利用可能な小分子であると報告されている。
【0266】
PD1経路阻害剤という用語は、小分子PD1経路阻害剤を含む。Sasikumar, et al., 1,2,4-oxadiazole and thiadiazole compounds as immunomodulators(2016年3月7日に出願され、2016年9月15日にWO2016142833A1として公開されたPCT/IB2016/051266)および Sasikumar, et al. 3-substituted-1,2,4-oxadiazole and thiadiazole(2016年3月9日に出願され、WO2016142886A2として公開されたPCT/IB2016/051343)、BMS-1166およびChupak LS and Zheng X. Compounds useful as immunomodulators. Bristol-Myers Squibb Co. (2015) 2017年8月9日に付与されたWO2015/034820 A1、EP3041822 B1; WO2015034820 A1;およびChupak, et al. Compounds useful as immunomodulators. Bristol-Myers Squibb Co. (2015) WO2015/160641 A2、WO2015/160641 A2、Chupak, et al. Compounds useful as immunomodulators. Bristol-Myers Squibb Co. Sharpe, et al. Modulators of immunoinhibitory receptor PD-1, and methods of use thereof、2011年7月7日に公開されたWO2011082400 A2;2009年2月10日に発行された米国特許第7,488,802号(Wyeth)を含む、本発明の実施に有用な小分子PD1経路阻害剤の例は、当技術分野において記載されている。
【0267】
いくつかの態様では、IL2オルソログと1つまたは複数のPD1免疫チェックポイントモジュレーターとの組み合わせは、疾患の治療のためのFDA承認により、または黒色腫、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、頭頸部がん、腎細胞がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、子宮肉腫、胃がん、食道がん、DNAミスマッチ修復欠損結腸がん、DNAミスマッチ修復欠損子宮内膜がん、肝細胞がん腫、乳がん、メルケル細胞がん、甲状腺がん、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、菌状息肉症、末梢T細胞リンパ腫を含むが、それに限定されるわけではない、臨床試験における臨床有効性の実証により、PD1経路阻害剤がヒトにおいて臨床効果を実証した新生物状態の治療に有用である。いくつかの態様では、IL2オルソログとPD1免疫チェックポイントモジュレーターとの組み合わせは、高レベルのPDL1発現によって特徴付けられる腫瘍の治療に有用であり、ここで、腫瘍は腫瘍遺伝子変異量を有し、腫瘍中に高レベルのCD8+ T細胞、IFNγに関連する免疫活性化シグネチャー、および転移性疾患の欠如、特に肝転移の欠如がある。
【0268】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、CTLA4のCD28への結合を阻害するネガティブ免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「CTLA4経路阻害剤」)と組み合わせて投与される。CTLA4経路阻害剤の例は、当技術分野において周知である(例えば、2004年1月27日に発行された米国特許第6,682,736号(Abgenix);2007年5月29日に発行された米国特許第6,984,720号(Medarex, Inc.);2009年10月20日に発行された米国特許第7,605,238号(Medarex, Inc.)を参照されたい)。
【0269】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、BTLAのHVEMへの結合を阻害するネガティブ免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「BTLA経路阻害剤」)と組み合わせて投与される。抗BTLA抗体およびアンタゴニストHVEM-Igを使用してBTLA/HVEM経路を標的とするいくつかのアプローチが評価されており、そのようなアプローチは、移植、感染、腫瘍、および自己免疫疾患を含むいくつかの疾患、障害および状態に有望な有用性が示唆されている(例えば、Wu, et al., (2012) Int. J. Biol. Sci. 8:1420-30を参照されたい)。
【0270】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、TIM3がTIM3活性化リガンドに結合する能力を阻害する、ネガティブ免疫チェックポイント経路のアンタゴニスト(「TIM3経路阻害剤」)と組み合わせて投与される。TIM3経路阻害剤の例は、当技術分野において公知であり、代表的な非限定的な例は、2016年9月15日に公開された米国特許出願公開第PCT/US2016/021005号;2016年9月8日に公開されたLifkeら、米国特許出願公開第20160257749 A1号(F. Hoffman-LaRoche);2017年4月27日に発行されたKarunsky、米国特許第9,631,026号;2014年9月23日に発行されたKarunsky、Sabatos-Peytonら、米国特許8,841,418号;米国特許第9,605,070号;2013年10月8日に発行されたTakayanagiら、米国特許第8552156号に記載されている。
【0271】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、LAG3およびPD1の遮断が、慢性感染の状況で腫瘍特異的CD8+ T細胞とウイルス特異的CD8+ T細胞との間のアネルギーを相乗的に後退させることが示唆されているので、LAG3およびPD1の両方の阻害剤と組み合わせて投与される。IMP321(ImmuFact)は、黒色腫、乳がん、および腎細胞がんにおいて評価されている。一般的に、Woo et al., (2012) Cancer Res 72:917-27;Goldberg et al., (2011) Curr. Top. Microbiol. Immunol. 344:269-78;Pardoll (2012) Nature Rev. Cancer 12:252-64;Grosso et al., (2007) J. Clin. Invest. 117:3383-392を参照されたい。
【0272】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、A2aR阻害剤と組み合わせて投与される。A2aRは、CD4+ T細胞をTReg細胞に発達する方向に刺激することによってT細胞応答を阻害する。細胞ターンオーバーによる腫瘍における細胞死の率が高く、瀕死の細胞がA2aRに対するリガンドであるアデノシンを放出するので、A2aRは腫瘍免疫において特に重要である。加えて、A2aRの欠失は、感染に対する増強した、時に病理的な、炎症応答と関連している。A2aRの阻害は、アデノシンの結合を遮断する抗体などの分子の投与により、またはアデノシン類似体により引き起こすことができる。このような作用物質は、がんおよびパーキンソン病などの治療障害に使用するためのIL2オルソログと組み合わせて使用される場合がある。
【0273】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、IDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)の阻害剤と組み合わせて投与される。IDOは、トリプトファンの酸化を経由して媒介される免疫応答をダウンレギュレーションし、T細胞活性化の阻害およびT細胞アポトーシスの誘導をもたらし、腫瘍特異的細胞傷害性Tリンパ球が機能的に不活性にされるか、または対象のがん細胞をもはや攻撃できない環境を生み出す。インドキシモド(NewLink Genetics)は、転移性乳がんにおいて評価されているIDO阻害剤である。
【0274】
前述のように、本発明は、2つ、3つ、またはそれより多くの免疫チェックポイント経路をモジュレートする免疫チェックポイント経路モジュレーターを含む、少なくとも1つの免疫チェックポイント経路をモジュレートする作用物質と組み合わせたIL2オルソログの投与による、哺乳動物対象における新生物疾患(例えばがん)の治療方法を提供する。
【0275】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、複数の免疫チェックポイント経路をモジュレートすることが可能な免疫チェックポイントモジュレーターと組み合わせて投与される。複数の免疫チェックポイント経路は、複数の免疫チェックポイント経路のモジュレーターとして作用することが可能な多機能分子の投与によってモジュレートされる場合がある。このような複数の免疫チェックポイント経路モジュレーターの例は、二重特異性または多特異性抗体を含むが、それに限定されるわけではない。複数の免疫チェックポイント経路のモジュレーターとして作用することが可能な多特異性抗体の例は、当技術分野において公知である。例えば、米国特許出願公開第2013/0156774号は、PD1およびTIM3を共発現する細胞を標的とする二重特異性および多重特異性作用物質(例えば抗体)、ならびにそれらの使用方法を記載している。その上、BTLAおよびPD1の二重遮断は、抗腫瘍免疫を増強することが示されている(Pardoll, (April 2012) Nature Rev. Cancer 12:252- 64)。本開示は、PD1およびLAG3の両方に結合する二重特異性抗体を含むが、それに限定されるわけではない複数の免疫チェックポイント経路を標的とする免疫チェックポイント経路モジュレーターと組み合わせたhIL2オルソログの使用を考えている。したがって、抗腫瘍免疫は、複数のレベルで増強することができ、様々な機構的考察を考慮して組み合わせ戦略を生成することができる。
【0276】
いくつかの態様では、IL2オルソログは、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くのチェックポイント経路モジュレーターと組み合わせて投与され得る。このような組み合わせは、免疫チェックポイント経路が別個の作用機作を有し得る点で有利であり得、これは、基礎となる疾患、障害または状態を複数の別個の治療角度から攻撃する機会を提供する。
【0277】
免疫チェックポイント経路阻害剤への治療応答がしばしばチロシンキナーゼ阻害剤などの伝統的な化学療法に対する応答よりもずっと遅く出現することに留意するべきである。ある場合には、免疫チェックポイント経路阻害剤を用いた治療開始の後、治療応答の客観的特徴が観察される前に6ヶ月以上かかる可能性がある。したがって、本開示のIL2オルソログと組み合わせた免疫チェックポイント経路阻害剤を用いた治療に関する決定は、従来の化学療法よりもしばしば長い無増悪期間にわたり行われなければならい。所望の応答は、この状況下で好都合であると見なされる任意の結果であることができる。いくつかの態様では、所望の応答は、疾患、障害または状態の進行の予防であるのに対し、他の態様では、所望の応答は、疾患、障害または状態の1つまたは複数の特徴の退縮または安定化である(例えば、腫瘍サイズの低減)。なお他の態様では、所望の応答は、この組み合わせの1つまたは複数の作用物質に関連する1つまたは複数の有害作用の低減または消失である。
【0278】
補助作用物質としてのケモカイン作用物質およびサイトカイン作用物質:
いくつかの態様では、IL2オルソログは、その各々の類似体およびバリアントを含むIL-7、IL-12、IL-15およびIL-18を含むが、それに限定されるわけではないさらなるサイトカインと組み合わせて投与される。
【0279】
活性化誘導細胞死阻害剤
いくつかの態様では、IL2オルソログは、活性化誘導細胞死(AICD)を阻害する1つまたは複数の補助作用物質と組み合わせて投与される。AICDは、Fas受容体(例えば、Fas、CD95)とFasリガンド(例えば、FasL、CD95リガンド)との相互作用に起因するプログラム細胞死の一形態であり、末梢性免疫寛容を維持することを助ける。AICDエフェクター細胞はFasLを発現し、アポトーシスが、Fas受容体を発現している細胞において誘導される。活性化誘導細胞死は、それらのT細胞受容体の繰り返し刺激に起因する活性化Tリンパ球の負の調節物質である。本明細書に記載されるIL2オルソログと組み合わせて使用され得る、AICDを阻害する作用物質の例は、シクロスポリンA(Shih, et al., (1989) Nature 339:625-626)、IL-16および類似体(rhIL-16を含む、Idziorek, et al., (1998) Clinical and Experimental Immunology 112:84-91)、TGFb1(Genesteir, et al., (1999) J Exp Med189(2): 231-239)、およびビタミンE(Li-Weber, et al., (2002) J Clin Investigation 110(5):681-690)を含むが、それに限定されるわけではない。
【実施例
【0280】
以下の実施例は請求された発明を例示するために提示されているが、それを限定するものではない。
【0281】
実施例1:ヒトオルソIL2RbのためのCRISPRノックイン戦略
当業者に周知であるCRISPR Cas9技術を使用してT細胞の内因性hCD122ゲノム座位内に変異H133D Y134F(野生型hCD122に従って番号付け)を含むhoCD122種を発現するように組み換えヒト免疫T細胞を操作するために以下の戦略を使用する。組み換えCas9、IL2Rbを標的付けるsgRNA、およびオルソゴナルな変異をコードする一本鎖DNA相同ドナー修復(homology donor repair)(HDR)テンプレートを初代T細胞またはT細胞クローンにエレクトロポレーションする。次いで、細胞を抗CD3/CD28で刺激し、オルソゴナルなIL-2リガンドを含有するT細胞成長培地(例えば、OpTmizer、TexMACS、RPMI)中で成長させて、hoCD122変異を組み入れた細胞を選択し、富化する。CARの形質導入を刺激の48時間後に行うことができる。制限断片長多型(RFLP)アッセイおよび/またはオルソゴナルな変異座位のDNAシーケンシングによってゲノム編集効率が行われる。
【0282】
実施例2. sgRNAの設計
オルソIL2Rb変異部位から30bp内の3つの20bp sgRNA(表3)標的付け領域を、それらの特異性スコアおよび効率スコアに基づいて選択する(1~100のスケールで>60)。オフターゲット効果を低減するための化学修飾および全体的に改善された編集効率を有するsgRNAをSynthegoから取り寄せる(ワールドワイドウェブは、synthego.com/help/grnas-chemical-modifications)。下の表3を参照されたい。
【0283】
実施例3. オルソ変異体HDRテンプレートの設計
H133コドン(CAC)をD(GATまたはGAC)に変化させ、Y134コドン(TAC)をF(TTTまたはTTC)に変化させる。開始するために、CAC TACをGAC TTCに変化させる。テンプレートは、H133DおよびY134F変化、sgRNA PAM部位内のサイレント変異(可能性のある再切断を防止するため)、およびRFLPアッセイのためにオルソIL2Rb座位内に新規な制限酵素部位(NheI)を創出するための別のサイレント変異をコードする。テンプレートは、オルソIL2Rb変異部位に隣接する対称的な75bpホモロジーアームを有する。これらは、一本鎖オリゴヌクレオチドとして生成される。任意で、されていてもよい、PAMの3'の36bpおよびPAMの5'の91bpの対称的なホモロジーアームを有するHDRテンプレートを使用することができる。
【0284】
実施例4. 細胞への試薬の導入
Cas9およびsgRNAを細胞に導入するために数多くのアプローチ(例えば、レンチウイルス形質導入、プラスミドベースのトランスフェクション)があるのに対し、組み換えCas9、合成sgRNA、およびHDRテンプレートのエレクトロポレーションは、細胞療法のための非常に効率的でGMPに適したアプローチである。
【0285】
図1は、CD122コード配列の一部分をH133およびD134の変異についての位置と共に示すものである。
【0286】
(表3)
【0287】
本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み入れられると特異的および個別に示されたが如く、参照により本明細書に組み入れられる。はっきりと理解するために前述の開示が例示および実施例として幾分詳細に説明されたものの、本開示の教示に照らして添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱せずにある変化および改変が加えられ得ることが当業者に容易に明らかであろう。
図1
【国際調査報告】