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特表2023-520596ハイドロゲル、その製作の方法および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】ハイドロゲル、その製作の方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/075 20060101AFI20230510BHJP
   C08J 3/28 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C08J3/075 CER
C08J3/28 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560930
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 SG2021050179
(87)【国際公開番号】W WO2021206629
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】10202003161Q
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ベー,ウェイジー・サイラス
【テーマコード(参考)】
4F070
【Fターム(参考)】
4F070AA29
4F070AA32
4F070AA36
4F070AC17
4F070AC47
4F070AE08
4F070CA01
4F070CA14
4F070CA18
4F070CB14
4F070HA10
4F070HB02
(57)【要約】
本発明は、概括的に言えば、ハイドロゲルおよびその使用に関する。該ハイドロゲルは、靭性、すなわちエネルギーを吸収して破断することなく塑性変形する能力を実際に示す。本発明はまた、ハイドロゲルを製作する方法に関する。特に、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、およびイオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露して、強靭なハイドロゲルを形成するステップを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強靭なハイドロゲルを製作する方法であって、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)前記イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、
(c)ステップ(b)のイオン浸透ハイドロゲルを冷却するステップ、および
(d)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)および/またはステップ(c)を繰り返して、前記強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、前記多価イオンのイオン価が少なくとも2である、方法。
【請求項2】
前記複数の荷電モノマーが、荷電ビニルモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の荷電モノマーが、複数のモノマーの塩形態であり、前記モノマーが、アクリル酸、アクリルアミド、スルホプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはそれらの組合せから選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の荷電モノマーが、約5wt%から約50wt%の濃度で供される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記重合ステップ(ステップ(a))がさらに、架橋剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤が、N,N’-メチレンビスアクリルアミドである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の多価イオンが、複数の多価カチオンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の多価イオンが、Al3+およびFe3+から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の多価イオンが、約10mMから約2Mの濃度で供される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記曝露ステップ(ステップ(b))が、イオン相互作用を通して前記イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)を架橋する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)が、約40℃から約100℃の温度で熱に曝露される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)が、少なくとも15秒間マイクロ波放射線に前記イオン浸透ハイドロゲルを曝露することによって加熱される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)および/またはステップ(c)が、2から10回繰り返される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却ステップが、少なくとも約10秒間実施される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ハイドロゲルの靭性が、少なくとも約100%増加する、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって製作されたハイドロゲル。
【請求項17】
(a)共有結合で架橋し、複数の荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)前記複数のポリマーの間にイオン架橋を形成するための複数の多価イオン
を含み、前記複数の多価イオンのイオン価が少なくとも2である、
ハイドロゲル。
【請求項18】
前記複数の荷電ポリマーが、複数のポリマーの塩形態であり、前記ポリマーが、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスルホプロピルアクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートまたはそれらの組合せから選択される、請求項16または17に記載のハイドロゲル。
【請求項19】
約30分間の休止期間後、機械的強度の少なくとも80%を回復する、請求項16から18のいずれか一項に記載のハイドロゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的に言えば、ハイドロゲルおよびその使用に関する。本発明はまた、ハイドロゲルを製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、創傷被覆材、おむつなどの使用例における超吸収性ポリマービーズ、およびまた生体工学組織のための基材など、広範に使用されてきた独特な材料である。これは、ハイドロゲルの生体系との適合性が主な理由であり、この適合性によって、生体系との相互作用が可能になる。しかし、伝統的には、ハイドロゲルは、非常に剛性が高いおよび/もしくは脆い、または柔らかく壊れやすい(図1)。ハイドロゲルの組成物を巧みに扱うことで、研究者らは近年、伸縮可能なハイドロゲルを探求し始めた。
【0003】
伝統的には、強靭なゲルは、イオン性および疎水性相互作用を含む、非共有結合的および可逆的物理架橋と(低い共有結合架橋を含有する)伸縮性のあるハイドロゲルを組み合わせることによって形成できる。この二重架橋ゲルを完成させるために、重合してハイドロゲルネットワークを作るモノマーと、かかる可逆的結合を形成する能力があるポリマー(例えば、アルギネートなどのポリアニオン)を混ぜ合わせるのが一般的である。この方法で、2つの成分は、絡み合うようになり、次に、最初のポリマーのゲル化を誘導することで、二重架橋ハイドロゲルの形成が完了できる。
【0004】
伸ばされる場合、かかるハイドロゲルは、通常の材料のように変形を起こす。しかし、共有結合ネットワークの弾性変形に加えて、外力はまた、可逆的結合を破壊し、その結果、エネルギーが吸収される。エネルギーのこの散逸は、これらの二重架橋ゲルを強靭にするものである、すなわち、ハイドロゲルは、永久に破壊することなく変形を起こすことができる。
【0005】
したがって、ハイドロゲルは、脆くなることなく、相対的に剛性が高くなり得る。実際に、共有結合ネットワークに対する損傷は、ハイドロゲルを容易にばらばらに破壊する原因となるものであるから、可逆的結合を破壊し再形成することによるこれらの強靭なゲルは、不可逆的損傷を維持せず原長の100%を超えて常に伸ばすことができる。
【0006】
数百パスカルからメガパスカルの範囲の剛性を有するハイドロゲルは、有利であり得る。例えば、柔らかいが強靭な材料を必要とする使用例としては、装着型のもの、植込み型のもの、および義装具が挙げられる。しかし、これらの強靭な材料を作る現存する方法は、ポリマーネットワークへのイオンの拡散をしばしば伴い、肉厚構造にとって非現実的である。例えば、鋳造によるまたは湿度室における緩徐な加熱による、その他の手法は、長い成熟時間を必要とし、したがって、実用性が限定される。
【0007】
3Dプリントが可能な強靭なゲルは、義装具のための界面材料としての使用が有望である。このゲルはまた、外科手術手技のシミュレーションのための器官モデルを作るために使用でき、不十分な献体の問題を解決し、ならびに実際の手術の前に外科医に手術方式を練習する材料を与える。しかし、取り組まなければならない、いくつかの課題がまだ残る。
ゲル化メカニズム
3Dプリントは、特定の空間的位置だけに固体またはゲルを選択的に形成することを必要とする。典型的には、これは、熱的手段(材料を融解し、冷却および凝固する所望の位置に押し出すこと)によって、または光架橋(パターン光を使用して特定の位置で重合を開始すること)によって達成される。熱的ゲルは存在するが(例えば、アガロースおよびゼラチン)、特に伸縮性があるわけではない。したがって、光重合が、一般的に使用される方法である。カゼインなど、励起光源を著しく吸収または散乱させるいずれの系も排除するので、今度は、この方法は限定的である。
プリント速度
伸縮性のあるハイドロゲルにおける低い架橋密度が典型的に意味することは、完全なゲル化には相対的に長い時間がかかるということである。さらに、非共有結合は、共有結合ネットワークの最初の形成後、成熟し安定するのに何時間もかかることが多い。そうであるから、強靭なゲルは、鋳造方法を使用して典型的に調製されてきた。強靭なゲルの3Dプリントを達成するために、最初の共有結合ゲルを形成する架橋ステップは、3Dプリンターの操作と同等の速度で起こるはずである。これは、言い換えれば、数分以内に架橋を完了して、材料の3Dプリントを実行可能にすることである。
レオロジー特性
多くの場合、非共有結合は、第二のポリマーネットワークの存在を必要とし、このネットワークは、非常に粘性があり、したがって、取り扱いが困難であり得る。例えば、アルギネートは、カルシウムの存在下、強靭なゲルを創造するのにしばしば使用されるが、極めて粘性があり、逆さにしてさえも、ほとんど流動しない可能性がある。成分の適合性もまた考慮しなければならない。つまり、共有結合ネットワーク中のモノマーは、非共有結合を与えることを意図されたポリマーと混和性がない可能性がある、例えば、アクリル酸とアルギネート。
【0008】
したがって、強靭なハイドロゲルを作る伝統的な方法は、3Dプリントプラットフォームに簡単に変換できない。
【0009】
上記の問題の少なくとも一つを克服もしくは改善すること、または少なくとも有用な代替方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、破断エネルギーをネットワーク中へ散逸させるメカニズムを組み入れることが、強靭なハイドロゲルを設計するのに重大な意味を持つという理解に基づいている。これに関して、本発明者らは、ネットワーク中に共有結合および非共有結合の両方を含有する二重架橋ハイドロゲルが有利であることを見出した。より弱い非共有結合が、犠牲結合として破壊してエネルギーを散逸させる一方で、共有結合が保存されるように、非共有結合は、イオン相互作用によって実現できる。特に、本発明者らは、多価イオンの存在下の荷電モノマーの重合、およびその後の荷電ポリマー多価イオン相互作用を再編成することが、その場形成によってこの非共有散逸的結合を実現し、強靭なハイドロゲルを有利なことにもたらすことができることを見出した。
【0011】
本発明は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、
(c)ステップ(b)のイオン浸透ハイドロゲルを冷却するステップ、および
(d)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)および/またはステップ(c)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンのイオン価は、少なくとも2である、
強靭なハイドロゲルを製作する方法を提供する。
【0012】
モノマーは、多価イオンによって中性化された荷電モノマー単位による、例えばラジカル重合を使用して、重合し、共有結合で架橋することができる。多価イオンと(今、重合された荷電モノマーから作られた)イオン性ポリマーとの間のイオン相互作用は、熱によって妨害され(例えば、マイクロ波を用いて)および冷却に際して再編成することができ、同じゲル中に架橋の第二のセットをもたらす(架橋のこの第二のセットは、非共有結合である)。有利なことに、この方法は、冷却に際して、長いポリマー鎖および多価イオンを再編成させ、残基/イオンの引力の再形成を可能にし、単一の多価イオンが、複数のポリマー鎖と相互作用できる。複数の鎖との単一の多価イオンの電荷-電荷相互作用の形成は、ハイドロゲルに強靭な特徴を獲得させる。その理由は、機械的応力がかかる際、鎖が互いに動くので、イオンとポリマー鎖との間の物理的相互作用が破壊され、外力からエネルギーを吸収する結果になり得るからである。イオン相互作用は、機械的応力が取り除かれるとき再形成できる。
【0013】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、荷電ビニルモノマーである。
【0014】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、複数のモノマーの塩形態であり、複数のモノマーは、アクリル酸、アクリルアミド、スルホプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはそれらの組合せから選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、約5wt%から約50wt%の濃度で供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、重合ステップ(ステップ(a))はさらに、架橋剤を含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドである。
【0018】
いくつかの実施形態において、複数の多価イオンは、複数の多価カチオンである。
【0019】
いくつかの実施形態において、複数の多価カチオンは、Al3+およびFe3+から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、複数の多価イオンは、約10mMから約2Mの濃度で供される。
【0021】
いくつかの実施形態において、曝露ステップ(ステップ(b))は、イオン相互作用を通してイオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)を架橋する。
【0022】
これは、有利なことに、イオン相互作用による第二の架橋を形成する。
【0023】
いくつかの実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、約40℃から約100℃の温度で熱に曝露される。
【0024】
いくつかの実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも15秒間マイクロ波放射線にイオン浸透ハイドロゲルを曝露することによって加熱される。
【0025】
いくつかの実施形態において、ステップ(b)および/またはステップ(c)は、2から10回繰り返される。その他の実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも2サイクルのマイクロ波放射線に曝露される。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、少なくとも約10秒間休ませる。
【0026】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの靭性は、少なくとも約100%増加する。
【0027】
本発明はまた、本明細書に開示された方法によって製作されたハイドロゲルを提供する。
【0028】
本発明はまた、
(a)共有結合で架橋し、複数の荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための、ハイドロゲル内に浸透した複数の多価イオン
を含み、複数の多価イオンのイオン価は、少なくとも2である、
ハイドロゲルを提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、複数の荷電ポリマーは、複数のポリマーの塩形態であり、ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスルホプロピルアクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートまたはそれらの組合せから選択される。
【0030】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、約30分間の休止期間後、機械的強度の少なくとも80%を回復する。
【0031】
本発明の実施形態は、図面を参照して、非限定的例として、ここに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】多様な種類のゲルを作るために使用されるパラメーターの模式図である。
図2】先行技術の二重架橋ゲルを伸ばす模式図である。
図3】先行技術のハイドロゲルの応力-ひずみをグラフにした図である。
図4】本発明のイオン浸透ハイドロゲルを形成する模式図である。
図5】該ハイドロゲルにマイクロ波を照射する模式図である。
図6】比較例と比べて、異なる数のサイクルの15秒のマイクロ波照射への曝露後の代表的なハイドロゲルからのエネルギーの散逸をグラフにした図である。
図7】代表的なハイドロゲルにおけるエネルギー吸収に対する回復時間の効果をグラフにした図である。
図8】比較例と比べて、本発明のハイドロゲルをグラフにした図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
ハイドロゲルは、ポリマー鎖の3Dネットワークおよび巨大分子の間の空間を満たす水性媒体(または生体液)を含む、2つまたは複数の成分系として定義できる。用語「ハイドロゲル」、「ゲル」等は、弾性特性を発展させるいくつかの方法において架橋されたポリマー鎖のネットワークを含む材料に言及するために、本明細書において互換的に使用される。ポリマーは、ペプチドなどの天然起源の分子または化学的に合成された鎖を含み得る。架橋は、化学的共有結合または物理的相互作用、例えば、もつれ、静電気等に起因し得る。ハイドロゲルは、粘性状態、半固体状態または固体状態であり得る。本明細書に使用される場合のハイドロゲルは、水和または膨潤された形態のことであり、0.06%w/v以上のハイドロゲル形成材料および99.04%w/v以下の水性媒体を含んでよい。一般的に、ハイドロゲルは、少なくとも80重量%の水性溶液である。
【0034】
本明細書に使用される用語「水性媒体」は、水をベースとする溶媒または溶媒系のことであり、主として水を含む。かかる溶媒は、極性もしくは非極性および/またはプロトン性もしくは非プロトン性であり得る。溶媒系は、最終的に単一相をもたらす溶媒の組合せのことである。「溶媒」および「溶媒系」の両者として、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジオキサン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ニトロメタン、炭酸プロピレン、ギ酸、ブタノール、イソプロパノール、プロパノール、エタノール、メタノール、酢酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールまたは水を挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。水をベースとした溶媒または溶媒系としてはまた、溶解イオン、塩および分子、例えば、アミノ酸、タンパク質、糖およびリン脂質を挙げることができる。かかる塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化亜鉛、HEPESナトリウム、塩化カルシウム、硝酸第二鉄、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウムおよびリン酸ナトリウムでもよいが、これらに限定されるわけではない。かかるものとして、生体液、生理溶液および培養液もまた、この定義の内に入る。
【0035】
ハイドロゲル形成材料としてハイドロゲルを本質的に形成するのに関与しない、その他の材料を、ハイドロゲルに加えてもよい。かかる分子は、薬学的に許容される賦形剤、アジュバント、生物活性剤および/または薬物化合物でもよい。例えば、ペプチド分子は、追加の機能特性、例えば、抗微生物、抗細菌、薬物送達、血液凝固、創傷治療、および消毒を、これらの特性に限定されるわけではないが、実現し得る。
【0036】
典型的に、ハイドロゲルは、貯蔵弾性率(G’)が損失弾性率(G’’)より大きい場合、形成されると考えられる。代替方法として、ヤング率もまた使用できる。ヤング率は、固体材料の剛性を測定する機械的特性である。ヤング率は、一軸変形の線形弾性レジームにおける材料中の応力とひずみの関係を定義する。かかるパラメーターは、例えば、流量計を使用することによって得ることができる。
【0037】
靭性は、エネルギーを吸収して破断することなく塑性変形する材料の能力、すなわち、材料が破裂する前に吸収できる単位体積当たりのエネルギーの量である。ハイドロゲルの靭性は、伸びる間にゲル中で散逸されたエネルギーによって特徴づけることができ、ヒステリシスループを境界とする面積を使用して測定される。靭性は、応力/ひずみ曲線下の面積として説明でき、J/mの単位を有する。ハイドロゲルの靭性は、共有結合架橋のネットワークによるクラックブリッジング、およびイオン架橋のネットワークを開裂することによるヒステリシスという2つのメカニズムの相乗作用に帰することができる。強靭なハイドロゲルは、破損前に大量のエネルギー、例えば、機械的エネルギーを吸収できる、吸収された水を含有するポリマーのネットワークである。本開示において、靭性は、非共有結合(例えば、イオン)架橋の度合によって制御できる。
【0038】
剛性は、物体が加えられた力に反応した変形に抵抗する程度である。剛性が高い材料は、弾性変形せずに高荷重に耐えることができる。すなわち、加えられた荷重が取り除かれた後、元の立体的または平面的な形に戻る能力である。材料の剛性は、材料の弾性率によって一部特徴づけることができる。弾性率は、構成材料の特性である。剛性は、構造物または構造物の成分の特性であり、したがって、その成分を説明する多様な物理的寸法に依存する。つまり、弾性率が、材料の示強的特性である一方で、剛性は、材料ならびにその形および境界の条件にさらに依存し得る固形物の示量的特性である。本開示において、剛性は、共有結合の数によって制御できる(例えば、ポリマー鎖の長さおよび架橋剤の濃度)。
【0039】
二重ネットワーク(DN)ゲルについては、区別されるべきである。DNゲルは、反対の物理的性質を有する2種類のポリマー成分からなる特別なネットワーク構造によって特徴づけられる。つまり、少数成分が、大量に架橋された高分子電解質(強固な骨格)であり、多数成分が、架橋が不十分な中性ポリマー(延性物質)を含む。前者および後者の成分は、第一のネットワークおよび第二のネットワークとそれぞれ呼ばれ、その理由は、合成がこの順番で行われて高い機械的強度を実現するはずだからである。DNゲルは、本発明の範囲内ではない。
【0040】
本発明は、共有結合ハイドロゲルネットワークそれ自体を使用して非共有結合相互作用を形成することによって強靭なハイドロゲルを実現する。本発明はまた、強靭なハイドロゲルを形成する方法、およびハイドロゲルの靭性を増加させる方法を提供する。特に、反対の電荷のイオンで(急速に)架橋できる荷電モノマーが使用されて、最初のハイドロゲル形成でき、マイクロ波処理を用いて所望の特性を獲得する。この処理は、ゲル中のポリマー鎖および/または多価イオンを再編成して、イオンとポリマー中の残基との間の結合を破壊し再形成させ、その結果、散逸性ネットワークならびに弾性ネットワークの獲得を可能にする。
【0041】
先行技術の例として、ゲルは、アクリル酸、ビスアクリルアミド、およびLAP光開始剤の3Dプリントが可能な配合物を使用して形成された。まさにその配合物は、使用者の要求に合わせて作られることができる。次に、この負の電荷を持つハイドロゲルは、多価カチオンの溶液中に浸漬されて、内側に組み込まれた複数の多価イオンを有するイオン浸透ゲルを産出することができる(図2)。
【0042】
図2は、先行技術の二重架橋ゲルを伸ばす模式図を示す。浸漬が、三価のカチオンを負の電荷を持つポリマー鎖中に導入する。これらのイオン相互作用は、ポリマー鎖を横切って形成し、負荷された場合、破壊され得る。これらのイオン結合の破壊は、エネルギーを吸収し、ハイドロゲルに靭性を与えることができる。
【0043】
図3は、光重合および100mM Al3+中での浸漬によって調製された厚さ1mmの強靭なゲル試料の負荷および除荷を示す。
【0044】
しかし、先行技術の方法は、濃度勾配を用いたゲル中へのイオンの拡散に依存するので、方法は、厚いゲルに対して限定された、したがって有効ではない拡散である。
【0045】
拡散方法は、約1cm未満の厚さを有する薄い構造物に対してよく機能する。ハイドロゲルが厚くなればなるほど、イオンの拡散が、ますます律速になることが分かった。したがって、より長い期間が必要となり得る。これらの柔らかいハイドロゲルは膨潤する傾向を有するから、浸漬はまた、オスモル濃度の注意深い制御を必要とする。
【0046】
したがって、ゲルの外部領域は、架橋が進めば進むほど、架橋されるゲルの内部領域に対して障壁のように振る舞う。
【0047】
少なくとも拡散の限定を克服できるので、複数の多価イオンの存在下、その場でモノマーを重合することは有利であると分かった。
【0048】
したがって、本発明は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、および
(c)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンのイオン価は、少なくとも2である、
強靭なハイドロゲルを製作する方法を提供する。
【0049】
特に、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、
(c)ステップ(b)のイオン浸透ハイドロゲルを冷却するステップ、および
(d)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)および/または(c)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンのイオン価は、少なくとも2である。
【0050】
例として、三価のカチオンを、重合の前にアクリル酸ハイドロゲル前駆物質(モノマー)に導入した。ほとんどの光架橋波長に適合するために、アルミニウム(Al3+)が選択された。ゲルを光架橋することによって、Al3+がハイドロゲル内に閉じ込められ、柔らかい、伸縮性のあるハイドロゲルを急速に創造する。しかし、Al3+に関わるモノマーは、(単に近接するという理由で)単一の鎖に組み込まれがちであるから、負荷された場合、エネルギーの有意な量を散逸しないことになる(図4および図6、0Xマイクロ波試料)。
【0051】
図4は、単一の多価カチオンに関わるモノマーが、単一のポリマー鎖の中へ組み込まれる傾向があるという模式図を示す(A)。負荷された場合、鎖は、エネルギーの最小の散逸で分離する(B)。
【0052】
次に、ハイドロゲルは、例えば、マイクロ波による加熱を受ける(図5)。この工程は、単一のポリマーへのカチオンのイオン相互作用を妨害する。冷却に際して、イオン結合は、無作為に再形成し、鎖間イオン架橋の形成を可能にする。
【0053】
図5は、ハイドロゲルへのマイクロ波照射が、鎖内イオン相互作用を妨害し、冷却の際に無作為に再形成し、その結果、鎖間イオン結合(右側、円内)の増加をもたらすことを示す。鎖内イオン結合の鎖間イオン結合への再編成は、ハイドロゲルに靭性を与える。
【0054】
鎖内イオン結合の再編成は、加熱を使用して一般的に完成させることができる。加熱源としてマイクロ波放射線を使用することはさらに、ハイドロゲル構造物への急速な、より深い進入を可能にし、それによって、この工程を加速させる点で、特に有利であると分かった。これは、非常に厚い構造物を短時間で平衡状態に到達させるのに有用であり得る。これは、マイクロ波の中で肉を解凍するのに似ていて、そこでは、マイクロ波の短いバースト波が、表面を過熱することなく、より深く、より急速に侵入できる(図6)。
【0055】
複数の荷電モノマーは、複数の多価イオンを含む溶液中で複数の荷電モノマーを混合することによって、複数の多価イオン中で重合される。溶液は、水性溶液または媒体であり得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、複数の多価イオンは、約10mMから約2Mの濃度で供される。その他の実施形態において、濃度は、約10mMから約1.5M、約10mMから約1M、約10mMから約900mM、約10mMから約800mM、約10mMから約700mM、約10mMから約600mM、約10mMから約500mM、約50mMから約500mM、約50mMから約400mM、約50mMから約300mM、約50mMから約200mM、または約50mMから約150mMである。いくつかの実施形態において、所定の条件は、約100mMの多価イオン濃度である。
【0057】
有利なことに、ハイドロゲルの靭性は、樹脂中に供された多価イオンの濃度を制御することによって変化させることができると分かった。多価イオン濃度の上昇によって、靭性は増加させることができる。靭性は、使用された材料に依存しておよび或る一定の濃度で、横ばい状態に達するように見えることが、さらに分かった。例えば、ゲルがポリアクリル酸の場合、靭性は、濃度が500mM超の場合、横ばい状態に達する。
【0058】
いくつかの実施形態において、複数の多価イオンは、複数の多価カチオンである。カチオンは、ポリマーの負の電荷を持つモノマー単位と鎖間イオン結合を形成することが可能である。
【0059】
いくつかの実施形態において、複数の多価カチオンは、複数の二価のカチオン、三価のカチオン、またはそれらの組合せである。二価のカチオンの例は、Mg2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Ca2+、Ba2+、Pb2+、Fe2+、およびAg2+であるが、これらに限定されるわけではない。三価のカチオンの例は、Fe3+、Al3+、およびCr3+であるが、これらに限定されるわけではない。その他の実施形態において、多価カチオンは、Al3+およびFe3+から選択される。その他の実施形態において、多価カチオンは、Al3+である。
【0060】
有利なことに、三価のカチオンは、複数のポリマー主鎖に橋かけすることが可能であると分かった。三価のカチオンは、二価のカチオンに比べてより高い電荷密度を与えるので、特に有利であることが分かった。したがって、形成するイオン結合は、二価のカチオンを使用して形成されたものより強くなり得る。
【0061】
無色の塩もまた、モノマーの光架橋に影響を及ぼさないので、特に有利であり得るということが分かった。
【0062】
理論に束縛されることなく、アニオンの存在は、カチオンとポリマーの荷電モノマー単位との間に斥力および/または中性化力を与えるので、様々なアニオンが、様々な度合の靭性を与えることになると考えられる。一価のアニオンは、ゲル中においてポリアニオンネットワークと競合し、電荷相互作用を低下させることになる。これは一般的に、遮蔽と呼ばれる。この目的達成のために、一価のアニオンは、特に有利であることが分かった。一価のアニオンの例は、F、Cl、Br、I、およびOHであるが、これらに限定されるわけではない。
【0063】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、荷電ビニルモノマーである。ビニルモノマーは、エチレン官能基を有する。荷電ビニルモノマーは、荷電部分を含むビニルモノマーである。荷電部分は、例えば、カルボキシル、アミノ、ホスフェート、ヒドロキシル、スルホネート、およびスルフヒドリルであり得る。その他の実施形態において、複数の荷電モノマーは、場合によって置換されたアクリレートモノマーである。その他の実施形態において、複数の荷電モノマーは、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、エチルアクリレートモノマー、またはそれらの組合せである。その他の荷電モノマーも、同様に挙動すると予期される。
【0064】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、複数のモノマーの塩形態であり、複数のモノマーは、アクリル酸、アクリルアミド、スルホプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートまたはそれらの組合せから選択される。その他の実施形態において、複数の荷電モノマーは、場合によって置換されたアクリレートモノマーの塩形態である。その他の実施形態において、複数の荷電モノマーは、アクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、エチルアクリレートモノマー、またはそれらの組合せの塩形態である。
【0065】
いくつかの実施形態において、複数のモノマーは、約5wt%から約50wt%の濃度で供される。その他の実施形態において、濃度は、約5wt%から約45wt%、約5wt%から約40wt%、約5wt%から約35wt%、約5wt%から約30wt%、または約10wt%から約30wt%である。
【0066】
いくつかの実施形態において、重合のステップ(ステップ(a))はさらに、架橋剤を含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、約0.01wt%から約1wt%の濃度で供される。その他の実施形態において、濃度は、約0.01wt%から約0.9wt%、約0.01wt%から約0.8wt%、約0.01wt%から約0.7wt%、約0.01wt%から約0.6wt%、約0.01wt%から約0.5wt%、約0.01wt%から約0.4wt%、約0.01wt%から約0.3wt%、約0.01wt%から約0.2wt%、または約0.01wt%から約0.1wt%である。その他の実施形態において、濃度は、約0.01wt%、約0.02wt%、約0.03wt%、約0.04wt%、約0.05wt%、約0.06wt%、約0.07wt%、約0.08wt%、約0.09wt%、または約0.1wt%である。
【0068】
いくつかの実施形態において、架橋剤は、二官能性架橋剤である。その他の実施形態において、架橋剤は、三官能性架橋剤である。その他の実施形態において、架橋剤は、多官能性架橋剤である。その他の実施形態において、架橋剤は、場合によって置換されたアクリレート架橋剤である。その他の実施形態において、架橋剤は、場合によって置換されたメタクリレート架橋剤である。その他の実施形態において、架橋剤は、PEGジアクリレート、トリアクリレート(例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート)、またはテトラアクリレート(例えば、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート)から選択される。その他の実施形態において、架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドである。
【0069】
いくつかの実施形態において、複数の荷電モノマーは、ラジカル重合によって重合される。その他の実施形態において、複数の荷電モノマーは、光架橋によって重合される。
【0070】
例えば、ハイドロゲルは、デジタルライトプロセッシング(DLP)を使用して構造物に形成できる。DLPは、プロジェクターを使用する3Dプリント法である。プロジェクターは、一度に樹脂の層全体に光を当てて、光の投影を管理するDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)と呼ばれる数千の極小の鏡を使用して部分を選択的に凝固する。光造形法およびLCD3Dプリントなどのその他の種類の3Dプリント法もまた、使用できる。
【0071】
その他の実施形態において、複数の多価イオンの存在下の複数の荷電モノマーの重合は、少なくとも約1時間である。その他の実施形態において、時間は、少なくとも約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1.5時間、約2時間、または約4時間である。
【0072】
いくつかの実施形態において、曝露ステップ(ステップ(b))は、イオン相互作用を通してイオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)を架橋する。
【0073】
いくつかの実施形態において、熱は、熱伝導および/またはマイクロ波放射線によって供される。例えば、熱は、水浴にハイドロゲルを浸すことによってハイドロゲルに与えることができ、その後、熱により加熱されるまたはマイクロ波を照射される。
【0074】
いくつかの実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも15秒間、熱に曝露される。その他の実施形態において、曝露は、約5秒、約7秒、約10秒、約15秒、約20秒または約30秒である。その他の実施形態において、曝露は、約5秒から約30秒、または約5秒から約20秒である。その他の実施形態において、曝露は、少なくとも約1分、約2分、約3分、約4分、約5分、約10分または約20分である。
【0075】
いくつかの実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも15秒間マイクロ波放射線にイオン浸透ハイドロゲルを曝露することによって加熱される。その他の実施形態において、曝露は、約5秒、約7秒、約10秒、約15秒、約20秒または約30秒である。その他の実施形態において、曝露は、約5秒から約30秒、または約5秒から約20秒である。
【0076】
イオン浸透ハイドロゲルは、曝露ステップの後で優先的に冷却される。これによって、鎖間イオン結合が形成できるようにハイドロゲルを休ませる。これは、加熱源からハイドロゲルを離すこと、または水浴からハイドロゲルを取り出すことによって実施できる。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、少なくとも約10秒、約20秒、約30秒、約40秒、約50秒、約1分、約5分、約10分、約20分、約30分、または約60分間、休ませるまたは冷却される。
【0077】
いくつかの実施形態において、曝露ステップおよび/または冷却ステップは、少なくともさらに1回繰り返される。いくつかの実施形態において、ステップは、2から10回それぞれ独立して繰り返される。図6に示されている通り、曝露ステップがさらに1回少なくとも繰り返される場合、ハイドロゲルの靭性は、1回のみ曝露されたハイドロゲルの靭性と比較して少なくとも100%さらに増加し得る。その他の実施形態において、曝露ステップは、少なくとも2回繰り返される。その他の実施形態において、曝露ステップは、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回または少なくとも6回繰り返される。その他の実施形態において、冷却ステップは、少なくとも2回繰り返される。その他の実施形態において、冷却ステップは、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回または少なくとも6回繰り返される。その他の実施形態において、イオン浸透ハイドロゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも2サイクルの加熱に曝露される。その他の実施形態において、最初のゲル(ステップ(a)から)は、少なくとも3サイクル、少なくとも4サイクル、少なくとも5サイクルまたは少なくとも6サイクルに曝露される。
【0078】
曝露ステップのサイクルの中間に、少なくとも冷却ステップが存在する。いくつかの実施形態において、方法が少なくとも2つの曝露ステップを含む場合、方法はさらに、ハイドロゲルを休ませるまたは冷却する(曝露ステップの間の)ステップを含む。この点に関して、ハイドロゲルは、再び照射または加熱される前にしばらくの間休ませる。これは、加熱源からハイドロゲルを離すこと、または水浴からハイドロゲルを取り出すことによって実施できる。休ませるステップは、ハイドロゲルを冷却させ、鎖間イオン結合が形成するのに十分な時間を与える。これによってまた確実に、ゲルの中心は加熱されないままであるが、ゲルが、より均一におよび(膨張するガスによってゲルの破裂が起こる)表面でばかりでなく、温まる時間を有する。これは、厚いゲルにとって特に重要である。数サイクルにわたってハイドロゲルを繰り返し放射線に当てるまたは加熱することによって、ハイドロゲルの靭性が、さらに改良できることが分かった。これはまた、ハイドロゲルを劣化させ得る、ハイドロゲルを長時間にわたって高い(そしてしばしば望まれない)放射線に当てることまたは加熱するという問題を回避する。
【0079】
したがって、いくつかの実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが1回実施される間に2回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが2回実施される間に3回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが3回実施される間に4回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが4回実施される間に5回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが5回実施される間に6回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが6回実施される間に7回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが7回実施される間に8回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが8回実施される間に9回実施される。その他の実施形態において、曝露ステップは、冷却ステップが9回実施される間に10回実施される。
【0080】
いくつかの実施形態において、マイクロ波放射線は、約2GHzから約3GHzの周波数を有する。その他の実施形態において、マイクロ波は、1000Wの電力を有する。
【0081】
いくつかの実施形態において、イオン浸透ゲル(ステップ(a)から)は、約40℃から約100℃の温度で熱に曝露される。その他の実施形態において、温度は、約50℃から約100℃、約60℃から約100℃、約70℃から約100℃、約80℃から約100℃、約90℃から約100℃である。
【0082】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの靭性は、最初の曝露ステップ(ステップ(b))の後で少なくとも約10倍増加する。その他の実施形態において、靭性は、少なくとも約11倍、約12倍、約13倍、約14倍、15倍、約16倍、約17倍、約18倍、または約20倍増加した。
【0083】
開示された方法を使用することによって、ハイドロゲルは、約30分以内に強靭化できる。これは、先行技術の方法と対照的であり、先行技術の方法は、イオンがハイドロゲルに侵入するのに少なくとも24時間必要であり、均質な終点に到達すらしない可能性がある。
【0084】
図6は、エネルギーの散逸が、異なる数のサイクルの15秒のマイクロ波照射へ曝露されるハイドロゲルについて測定できることを示す。
【0085】
ハイドロゲルはまた、十分な回復時間が与えられる限り、負荷後、その機械的強度のより多くを回復できる(図7)。
【0086】
図7は、一般的に、ゲルによって吸収可能なエネルギーが、それぞれの負荷サイクルによってより低くなることを示す。しかし、適正な量の休止時間によって、ハイドロゲルは、破壊された鎖間イオン架橋の再形成の結果として、その機械的強度の大半を取り戻すことができる。
【0087】
図8は、比較例(アルミニウムなし)に関して本発明の代表的なハイドロゲル(アルミニウムを伴うマイクロ波)を比較する。アルミニウムなしで、マイクロ波照射後、散逸されたエネルギーは、およそ1J/mである(これは、マイクロ波なしのハイドロゲルについての散逸されたエネルギーと類似する)。Al3+を伴っておよびマイクロ波を照射した後、散逸されたエネルギーは、16J/mを超える。
【0088】
マイクロ波照射は、試料の剛性を増加させることもまた可能である。剛性の増加は、約2倍である。ゲルは、明確により剛性が高くなった。急速加熱は、オーブンに入れるより実用的であり得るようにもまた見え、急速加熱はまた、水が抜けきることも防ぐ。
【0089】
いくつかの実施形態において、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、および
(c)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンのイオン価は、少なくとも3である。
【0090】
いくつかの実施形態において、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、および
(c)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択される。
【0091】
いくつかの実施形態において、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、および
(c)場合によって、少なくともさらに1回、ステップ(b)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択される。
【0092】
いくつかの実施形態において、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、
(c)ステップ(b)のイオン浸透ハイドロゲルを休ませるまたは冷却するステップ、および
(d)少なくともさらに1回、ステップ(b)および/またはステップ(c)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンは少なくとも3である。
【0093】
いくつかの実施形態において、強靭なハイドロゲルを製作する方法は、
(a)所定の条件のもとで複数の多価イオンの存在下、複数の荷電モノマーを重合して、イオン浸透ハイドロゲルを形成するステップ、
(b)イオン浸透ハイドロゲルを熱に曝露するステップ、
(c)ステップ(b)のイオン浸透ハイドロゲルを休ませるまたは冷却するステップ、および
(d)少なくともさらに1回、ステップ(b)および/またはステップ(c)を繰り返して、強靭なハイドロゲルを形成するステップ
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択される。
【0094】
本発明はまた、本明細書に開示された方法によって製作されたハイドロゲルを提供する。
【0095】
これらの材料を使用して、光架橋ハイドロゲルを使用する強靭なゲルを形成する能力が実証できた。ゲルが負荷される場合(例えば、伸ばすことによって)、外力は、ゲルにしっかり働く。しかし、除荷の際に回復された弾性エネルギーの量は、最初にゲルにかけられた仕事量より小さい。負荷および除荷の段階に沿って通る異なる進路は、ヒステリシスループとして知られ、ループを境界とする面積は、鎖間イオン結合の破壊の結果として、ハイドロゲルによって吸収されたエネルギーを表す。イオン結合は、除荷後、再形成するのに時間がかかるので、第二サイクルの負荷(第一サイクルの直後に実施される場合)は、より小さいヒステリシスループを典型的に示す。
【0096】
本発明はまた、
(a)共有結合で架橋し、少なくとも一つの荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための複数の多価イオン
を含み、複数の多価イオンのイオン価は、少なくとも2である、
ハイドロゲルを提供する。
【0097】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、
(a)共有結合で架橋し、複数の荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための複数の多価イオン
を含み、複数の多価イオンのイオン価は、少なくとも2である。
【0098】
複数の荷電ポリマーは、複数の荷電モノマーから形成される。したがって、複数の荷電ポリマーは、複数の重合した荷電モノマー単位を含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、複数の荷電ポリマーは、複数のポリマーの塩形態であり、ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスルホプロピルアクリレート、ポリ(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートまたはそれらの組合せから選択される。
【0100】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲル中の複数の多価イオンは、L当たり約1×1021イオンからL当たり約1×1024イオンの濃度を有する。その他の実施形態において、濃度は、L当たり約1×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約2×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約3×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約4×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約5×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約9×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約8×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約7×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約6×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約5×1023イオン、L当たり約6×1021イオンからL当たり約4×1023イオン、またはL当たり約6×1021イオンからL当たり約3×1023イオンである。
【0101】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、約30分の休止期間後、機械的強度の少なくとも80%を回復する。その他の実施形態において、回復は、約85%、または約90%である。その他の実施形態において、ハイドロゲルは、約30分の休止期間後、約80%を超える機械的強度を回復する。
【0102】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、約10分の休止期間後、機械的強度の少なくとも60%を回復する。その他の実施形態において、回復は、約65%、または約70%である。その他の実施形態において、ハイドロゲルは、約30分の休止期間後、約60%を超える機械的強度を回復する。
【0103】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、約1mmから約100cmの厚さを有する。その他の実施形態において、厚さは、約1cmから約100cm、約2cmから約100cm、約3cmから約100cm、約5cmから約100cm、約10cmから約100cm、約20cmから約100cm、約30cmから約100cm、約40cmから約100cm、または約50cmから約100cmである。その他の実施形態において、厚さは、約1cmから約10cmである。
【0104】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの靭性は、少なくとも約5%増加する。靭性の増加は、熱に曝露される前のハイドロゲルと比較して得られる。その他の実施形態において、靭性は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、少なくとも約500%、少なくとも約600%、少なくとも約700%、少なくとも約800%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%増加する。
【0105】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルの靭性は、少なくとも約5J/mである。その他の実施形態において、靭性は、少なくとも約6J/m、約8J/m、約10J/m、約12J/m、約14J/m、約16J/m、約18J/m、約20J/mである。その他の実施形態において、靭性は、約5J/mから約100J/m、約5J/mから約90J/m、約5J/mから約80J/m、約5J/mから約70J/m、約5J/mから約60J/m、約5J/mから約50J/m、約5J/mから約40J/m、約5J/mから約30J/m、または約5J/mから約20J/mである。
【0106】
ハイドロゲルの剛性はまた、変動し得る。いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、約5kPaから約30kPaのヤング率を有する。その他の実施形態において、ハイドロゲルは、約10kPaから約30kPa、約15kPaから約30kPa、または約20kPaから約30kPaのヤング率を有する。好ましくは、ヤング率は、約14kPa超から約30kPaである。ハイドロゲルの剛性は、ヤング率(弾性率)によって説明できる。
【0107】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、少なくとも500%のひずみを有し得る。
【0108】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、
(a)共有結合で架橋し、少なくとも一つの荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するためのハイドロゲル内に浸透した複数の多価イオン
を含み、複数の多価イオンのイオン価は、少なくとも3である。
【0109】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、
(a)共有結合で架橋し、少なくとも一つの荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための、ハイドロゲル内に浸透した複数の多価イオン
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択される。
【0110】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、
(a)共有結合で架橋し、少なくとも一つの荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための、ハイドロゲル内に浸透した複数の多価イオン
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択され、
ハイドロゲルの靭性は、少なくとも約5J/mである。
【0111】
いくつかの実施形態において、ハイドロゲルは、
(a)共有結合で架橋し、少なくとも一つの荷電部分を含む、複数の荷電ポリマー、および
(b)複数の荷電ポリマーの間にイオン架橋を形成するための、ハイドロゲル内に浸透した複数の多価イオン
を含み、多価イオンは、Al3+、Fe3+またはそれらの組合せから選択され、
ハイドロゲルの靭性は、少なくとも約5J/mであり、
ハイドロゲルは、約30分の休止期間後、機械的強度の少なくとも80%を回復する。
【0112】
本発明は、このようにして、共有結合ハイドロゲルネットワークを使用して、複雑な構造物の急速な3Dプリントを可能にし、次に、急速に加熱され冷却されて、優秀な靭性を達成することができる。かかるものは、創傷治療使用例および臓器移植において適用可能である。ハイドロゲルはまた、皮膚電極界面における材料としておよび外科手術用ファントムとして使用できる。
【実施例
【0113】
比較例1
ゲルを、20wt%のアクリル酸、0.05wt%のビス-アクリルアミド、1mMのLAP光開始剤を使用して形成した。ゲルを加熱しなかった。靭性は、およそ1J/mであった。
【0114】
比較例2
ゲルを、20wt%のアクリル酸、0.05wt%のビス-アクリルアミド、1mMのLAP光開始剤、および100mMのAlClを使用して形成した。ゲルを加熱しなかった。靭性は、およそ1J/mであった。ヤング率は、6.5kPaから8kPaの範囲であった。ひずみ速度は、約10mm/分である。ほとんどの材料について、機械的特性は、ひずみ速度に依存して変化することになる。ひずみ速度は、どれだけ速くゲルが伸ばされるかを表す。
【0115】
比較例3
100mMのAl3+を、ゲルと予混合し、一晩37℃で定温放置した。靭性は、およそ1J/mであった。ヤング率は、約12kPaであった。
【0116】
実施例1
100mMのAlClを、ゲルと予混合し、10秒間マイクロ波処理を受けさせた。水浴にゲルを沈めてマイクロ波を照射することによって、ゲルはマイクロ波処理された。水浴の温度は、少なくとも70℃に達した。靭性は、およそ16J/mであった。ヤング率は、6.9kPaから14kPaの範囲であった。ひずみ速度は、約10mm/分である。
【0117】
実施例2
100mMのAlClを、ゲルと予混合し、55秒間のマイクロ波処理、30秒の休止期、15秒間のマイクロ波処理、30秒の休止期、5秒間のマイクロ波処理を受けさせた。マイクロ波処理は、水浴(水の体積は約50mLである)中に浸漬し、休止ステップの間水浴中にゲルを入れたままにすることによって実施された。ゲルを、マイクロ波処理後、少なくともさらに2分間水浴中に沈めた。靭性は、およそ16J/mであった。ヤング率は、約18kPaから20kPaの範囲であった。ひずみ速度は、約10mm/分である。
【0118】
実施例3
モノマーからハイドロゲルを製作するための一般的なプロトコル
三価のカチオンを、重合前に、アクリル酸モノマー(20wt%アクリル酸)、リチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート(LAP、1mM)光開始剤およびビス-アクリルアミド(0.05wt%)中に導入した。例えば、アルミニウム(Al3+)を使用できる。急速にゲルを光架橋することは、柔らかい、伸縮性のあるハイドロゲルを創造する。しかし、Al3+に関わるモノマーは、(単に近接するという理由で)単一の鎖に組み込まれがちであるから、負荷された場合、エネルギーの有意な量を散逸しないことになる。次に、ゲルは、マイクロ波による加熱を受ける。この工程は、イオン相互作用を妨害/再編成させる。電力は、約1000Wであり、代表的なマイクロ波サイクルは、7秒の加熱後に30秒の休止期を続けることができる。サイクルは、多様な試行において1から10回まで繰り返された。このサイクルプロトコルは、ゲルを破裂させることになる、過熱およびガス膨張を防ぐことができる。冷却の際、イオン結合は、無作為に再形成し、鎖間イオン架橋の形成を可能にする。マイクロ波放射線および/または熱への曝露は、数回繰り返されて、ハイドロゲルの靭性をさらに増加できる。このハイドロゲルは、比較例より強靭である。調製されたゲルは、約15~20J/mに到達できる。
【0119】
記載された実施形態の多くのさらなる改変例および多様な態様の再配列が可能であると認識されることになる。したがって、記載された態様は、添付の請求項の精神および範囲内にある、全てのかかる変更、改変、および変化を包含することが意図される。
【0120】
本明細書およびそれに続く特許請求の範囲全体を通じて、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「comprise(含む)」およびその変化形、例えば「comprises」および「comprising」は、述べられた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を包含するが、その他のいずれの整数もしくはステップもまたは整数もしくはステップの群も除外しないことを暗示すると理解されることになる。
【0121】
いずれの先行公表文献(もしくはその文献から引き出された情報)に対する、または既知のいずれの事項に対する本明細書中の引用も、承認もしくは了解として、またはその先行公表文献(もしくはその文献からの引き出された情報)または既知の事項が本明細書の関係する努力傾注分野における通常の一般的知識の一部を形成するという示唆のいずれの形態としても、受けとられないおよび受けとられるべきではない。
図1
図2
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図4
図5
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図7
図8
【国際調査報告】