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特表2023-520608持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法
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  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図1
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図2A
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図2B
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図3
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図4
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図5
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図6A
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図6B
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図7
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図8
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図9
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図10
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図11
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図12
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図13
  • 特表-持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-17
(54)【発明の名称】持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそれを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C05C 9/02 20060101AFI20230510BHJP
   C05G 5/12 20200101ALI20230510BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20230510BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20230510BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20230510BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20230510BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20230510BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20230510BHJP
   B01D 19/04 20060101ALI20230510BHJP
【FI】
C05C9/02
C05G5/12
C08K3/24
C08K5/21
C08K5/07
C08L23/06
C08L91/06
C08K5/103
B01D19/04 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501329
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-17
(86)【国際出願番号】 US2021023346
(87)【国際公開番号】W WO2021189014
(87)【国際公開日】2021-09-23
(31)【優先権主張番号】62/992,271
(32)【優先日】2020-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502227985
【氏名又は名称】オーエムエス・インヴェストメンツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハロルド・イー・トンプソン
(72)【発明者】
【氏名】カーティス・ジェームズ・マクドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・フォン・ヴィレ・ヴェレス
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・パトリック・イングリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クワメ・オウス-アドム
【テーマコード(参考)】
4D011
4H061
4J002
【Fターム(参考)】
4D011CB05
4H061AA01
4H061AA02
4H061BB17
4H061EE33
4H061EE35
4H061EE51
4H061FF08
4H061GG15
4H061GG18
4H061GG19
4H061GG23
4H061GG26
4H061GG33
4H061GG46
4H061HH03
4H061JJ01
4H061KK02
4H061KK05
4H061KK09
4H061LL02
4H061LL05
4H061LL12
4H061LL13
4H061LL15
4H061LL25
4H061LL26
4J002AE03W
4J002AH00X
4J002BB03W
4J002DF028
4J002DF039
4J002DG039
4J002DH039
4J002EE017
4J002EH049
4J002ET016
4J002FD319
4J002GA00
(57)【要約】
持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物を溶融プロセスにより形成する方法が開示される。上記方法は、ポリエチレンワックスを尿素、ホルムアルデヒド、並びに酸触媒及び乳化剤のうちの1種又は複数と混合し、溶融メチレン尿素混合物を形成する工程を含む。溶融メチレン尿素混合物の内容物が反応し、持続放出性窒素化合物を形成する。上記持続放出性窒素化合物から形成される、又はそれを含む肥料組成物もまた開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物を形成する方法であって、
尿素、ホルムアルデヒド、樹脂改質剤、並びに酸触媒及び乳化剤のうちの1種又は複数の溶融混合物を形成する工程と、
必要に応じて溶融混合物の温度を調節し、尿素とホルムアルデヒドとの反応を開始させて肥料組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
樹脂改質剤がポリエチレンワックスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
樹脂改質剤が結晶性ポリエチレンワックスを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
酸触媒が希釈酸触媒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
希釈酸触媒が塩酸、硫酸及び硝酸のうちの1種又は複数を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
酸触媒が弱酸触媒である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
弱酸触媒が約0.5~約3.5のpKa値を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
弱酸触媒がヨード酸、シュウ酸、亜塩素酸、リン酸、ヒ酸、クロロ酢酸、クエン酸、フッ化水素酸、亜硝酸、ギ酸、及び乳酸のうちの1種又は複数を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
弱酸がリン酸を含む、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶融混合物がホルムアルデヒド1モル当たり約4.5*10-5モル~約4.0*10-3モルの弱酸触媒を含む、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶融混合物がホルムアルデヒド1モル当たり約1.3*10-3モル~約1.7*10-3モルの弱酸触媒を含む、請求項6から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
乳化剤が消泡剤である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶融混合物が弱酸触媒及び消泡剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
消泡剤が星型ポリマー消泡剤及び脂肪酸消泡剤のうちの1種又は複数を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
脂肪酸消泡剤がポリプロピレングリコールエステル及びモノグリセリドを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶融混合物が約500百万分率(「ppm」)~約2,000ppmの星型ポリマー消泡剤及び約600ppm~約4,000ppmの脂肪酸消泡剤を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
尿素とホルムアルデヒドとの反応が約100℃~約145℃の温度で行われる、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
尿素とホルムアルデヒドとの反応が約124℃~約127℃の温度で行われる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
尿素とホルムアルデヒドとの反応が約110℃~約125℃の初期温度及び約125℃~約135℃の第2の温度で行われる、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
初期温度が約10分~約40分の間保持され、第2の温度が約10分~約20分の間保持される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
尿素のホルムアルデヒドに対するモル比が約2.4:1以上である、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
尿素のホルムアルデヒドに対するモル比が約3.1:1~約3.35:1である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
樹脂改質剤が
約600~約1,200の分子量、
約1.02~約1.7の多分散度、及び
約65%~約96%の結晶化度
のうちの1つ又は複数を有する結晶性ポリエチレンワックスを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
溶融メチレン尿素混合物が約2質量%~約20質量%の結晶性ポリエチレンワックスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
肥料組成物がメチレンジ尿素(「MDU」)及びジメチレントリ尿素(「DMTU」)のうちの少なくとも1種を含み、MDU及びDMTUのうちの少なくとも1種が、肥料組成物中、約35%以上の全窒素を含み、
肥料組成物が約8%以下の冷水不溶性窒素を含む、
請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
更に、肥料組成物を噴霧乾燥する工程を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
肥料組成物の噴霧後の均一性指数が約25以上である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
肥料組成物が不活性担体上に噴霧されて顆粒を形成する、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
不活性担体がもみ殻を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
もみ殻のサイズガイド数「SGN」が約20~約70である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
不活性担体が約1質量%~約50質量%の顆粒を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
肥料組成物が約40質量%~約60質量%の顆粒を含む、請求項28から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
顆粒の大きさが約0.5mm~約5mmである、請求項28から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
顆粒が更に、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、クロロフェノキシプロピオン酸メチル(MCPP-P)、硝酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫黄被覆尿素、イソブチリデンジ尿素、硝酸アンモニウム、ウレアホルム、尿素ホルムアルデヒド反応生成物、尿素、無水アンモニア、ポリリン酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、ポリマー被覆尿素、微量元素、リン酸一アンモニウム、塩化カリウム、及びそれらの混合物、殺虫剤、微量栄養素、生物刺激剤、主要栄養素、並びに不活性固形担体のうちの1種又は複数を含む、請求項28から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
顆粒が更に粒状化される、請求項28から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
肥料組成物が約2,000,000Pa以下のピーク貯蔵弾性率を示す、請求項1から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
溶融混合物の動的粘度が約129.5℃の温度で約0.3Pa・s以下である、請求項1から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
連続プロセスで実施される、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
メチレンジ尿素(「MDU」)、ジメチレントリ尿素(「DMTU」)、樹脂改質剤、並びに酸触媒及び乳化剤のうちの1種又は複数を含む肥料組成物であって、
樹脂改質剤が少なくとも部分的にメチレンジ尿素及びジメチレントリ尿素を塞いでいる、
肥料組成物。
【請求項40】
樹脂改質剤がポリエチレンワックスを含む、請求項39に記載の肥料組成物。
【請求項41】
酸触媒がヨード酸、シュウ酸、亜塩素酸、リン酸、ヒ酸、クロロ酢酸、クエン酸、フッ化水素酸、亜硝酸、ギ酸、乳酸、及び硫酸のうちの1種又は複数を含む、請求項39又は40に記載の肥料組成物。
【請求項42】
乳化剤が星型ポリマー消泡剤及び脂肪酸消泡剤のうちの1種又は複数を含む、請求項39から41のいずれか一項に記載の肥料組成物。
【請求項43】
更に、遊離尿素及び冷水不溶性窒素(「CWIN」)のうちの1つ又は複数を含み、
樹脂改質剤が少なくとも部分的に遊離尿素及び冷水不溶性窒素のうちの1つ又は複数を塞いでいる、
請求項39から42のいずれか一項に記載の肥料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に援用される、2020年3月20日に出願された「FERTILIZER COMPOSITIONS HAVING SLOW-RELEASE NITROGEN COMPOUNDS AND METHODS OF FORMING THEREOF」と題される米国仮特許出願第62/992,271号の優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、一般的に、持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物、及びそのような肥料組成物を溶融プロセスにより作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
肥料組成物には、持続放出性窒素化合物を含み植物に長期にわたる栄養素の放出をもたらすこと、栄養素の地面への浸出を最小限に抑えること、及び最適な植物の成長のために必要な肥料施用の数を最小限に抑えることが望まれる。しかしながら、持続放出性窒素化合物の従来製品は、多くの望ましくない特性を抱えている。例えば、持続放出性窒素化合物の従来製品、例えば水性プロセス又はコーティングプロセスによるものは、多数の時間のかかる工程を有する複雑な製造プロセスを有し、エネルギー集約的であり、かつ望ましい持続放出性窒素化合物の他の窒素化合物、例えば冷水不溶性窒素化合物に対する望ましくない比を有する窒素化合物の混合物を形成しうる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Baldwin,C.M.、H.Liu、L.B.McCarty、H.Luo、C.Wells、及びJ.E.Toler、「Impact of Altered Light Spectral Quality on Warm-Season Turfgrass Growth under Greenhouse Conditions」、Crop Science、49巻、2009年7月~8月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施形態によれば、持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物を形成する方法は、尿素、ホルムアルデヒド、樹脂改質剤、並びに酸触媒及び乳化剤のうちの1種又は複数の溶融混合物を形成する工程と、必要に応じて上記溶融混合物の温度を調節し、上記尿素と上記ホルムアルデヒドとの反応を開始させて肥料組成物を形成する工程とを含む。
【0006】
別の実施形態によれば、肥料組成物は、メチレンジ尿素(「MDU」)、ジメチレントリ尿素(「DMTU」)、樹脂改質剤、並びに酸触媒及び乳化剤のうちの1種又は複数を含む。上記樹脂改質剤は、少なくとも部分的に上記メチレンジ尿素及び上記ジメチレントリ尿素を塞いでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】いくつかの実施例組成物における尿素のホルムアルデヒドに対する比を示す線図である。
図2A図1の実施例組成物により形成されたMDU及びDMTUの量を示す線図である。
図2B図1の実施例組成物により形成された冷水不溶性窒素(「CWIN」)の量を示す線図である。
図3図1図2A、及び図2Bの実施例組成物の粘度を示す線図である。
図4】メチレン尿素樹脂生成物を塞いでいる樹脂改質剤を示す図である。
図5】酸触媒濃度の関数としてのメチレン尿素樹脂生成物の動的粘度を示すグラフを描く図である。
図6A】メチレン尿素樹脂生成物への高温消泡剤の効果を示す走査電子顕微鏡画像である。
図6B】メチレン尿素樹脂生成物への高温消泡剤の効果を示す走査電子顕微鏡画像である。
図7】異なる消泡剤でのメチレン尿素樹脂生成物の動的粘度を示すグラフである。
図8】実施例組成物の走査電子顕微鏡画像である。
図9】実施例6の凝固曲線を示すグラフである。
図10】実施例6の粒度分布を示すグラフある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、一般的に、溶融プロセスを用いて持続放出性窒素化合物を有する肥料組成物を形成する方法について記載する。本明細書で用いられる場合、持続放出性窒素化合物とは、その化合物が植物に施用された後、植物へのより時間のかかる及び/又はより長時間の窒素の放出をもたらす窒素化合物を意味する。通常、持続放出性窒素化合物を含む肥料は、数週間から数カ月の期間にわたって植物に利用可能な窒素を作り出すことができる。本開示において一般的に記載される方法により形成される持続放出性窒素化合物は、望ましい短鎖メチレン尿素生成物、例えばメチレンジ尿素(「MDU」)及びジメチレントリ尿素(「DMTU」)、並びにより長鎖の冷水不溶性窒素化合物を含む。
【0009】
理解されうるように、持続放出性窒素化合物、例えばMDU及びDMTUは、溶融条件下での尿素とホルムアルデヒドとの鎖構築により形成されうる。そのような条件下、尿素とホルムアルデヒドとは、様々な鎖長を有するメチレン尿素生成物を製造する一連の反応を経ることができる。例えば、尿素分子は、ホルムアルデヒド分子と反応してモノメチロール尿素分子を製造することができる。次いで、上記モノメチロール尿素分子は、別の尿素分子と反応してメチレンジ尿素又はMDUを形成することができる。理解されうるように、上記尿素分子、ホルムアルデヒド分子、及びモノメチロール尿素分子の連続反応は、より長い鎖長を有するメチレン尿素生成物を製造することができ、その生成物としてはジメチレントリ尿素、トリメチレンテトラ尿素等が挙げられる。これらの反応は、溶融尿素及び溶融ホルムアルデヒドの反応温度にて起こりうる。ある特定の実施形態によれば、上記反応温度は、約100℃~約145℃の温度範囲、約110℃~約140℃の温度範囲、約120℃~約135℃の温度範囲、又は約129℃の温度にて起こりうる。本明細書で用いられる場合、溶融状態とは、部分的に溶融された状態、実質的に溶融された状態、又は完全に溶融された状態を意味する。温度は、別に言及されない限り、標準圧力(例えば、約1atm)で測定される。
【0010】
しかしながら、理解されうるように、MDU及びDMTUよりも長い鎖長を有するメチレン尿素生成物は、そのような化合物は肥料として用いられる場合に限定された水溶性を有することから、冷水不溶性窒素化合物であると考えられうる。通常、冷水不溶性窒素化合物は、そのような化合物は植物に利用可能な窒素を容易には作り出さず、有意義な施肥利益を提供できないことから、望ましくない。反対に、MDU及びDMTUは、それらがバランスのとれた水溶性の度合いを提供し、数週間から数カ月の期間にわたって植物に利用可能な窒素を有利に作り出すことから、望ましいと考えられる。
【0011】
本明細書に記載される方法は、望ましい持続放出性窒素化合物、例えばMDU及びDMTUを、他の窒素含有化合物、例えば冷水不溶性窒素化合物との有利な比で形成することができる。通常、上記溶融プロセスは、尿素及びホルムアルデヒドの溶融混合物に樹脂改質剤を含めることにより、持続放出性窒素化合物のそのような望ましい比を作り出すことができる。更に、酸触媒及び消泡剤の使用が、本明細書に開示される溶融プロセスを更に改善できることが見出された。
【0012】
具体的には、尿素及びホルムアルデヒドの溶融混合物に適切な樹脂改質剤を含めることにより、溶融された尿素とホルムアルデヒドとのメチレン尿素反応生成物を形成する反応性を阻害できることが見出された。有利なことに、上記樹脂改質剤により引き起こされるより低減された反応速度は、MDU及びDMTUを含む望ましい短鎖メチレン尿素反応生成物の形成に有利となり、より長鎖の冷水不溶性窒素化合物の形成には不利となりうる。
【0013】
例えば、本明細書に記載される溶融プロセスは、ある特定の実施形態においては約30%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素、ある特定の実施形態においては約35%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素、ある特定の実施形態においては約40%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素、ある特定の実施形態においては約45%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素、ある特定の実施形態においては約50%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素を有する、反応生成物の混合物を形成することができる。そのような実施形態のいずれにおいても、上記反応生成物の混合物における約15%以下の全窒素が冷水不溶性窒素でありうる。例えば、ある特定の実施形態においては約10%又はそれを下回る上記反応生成物の混合物における全窒素が冷水不溶性窒素であってよく、ある特定の実施形態においては約8%又はそれを下回る上記反応生成物の混合物における全窒素が冷水不溶性窒素であってよい。ある特定の実施形態においては、約1%~約15%の上記反応生成物の混合物における全窒素が冷水不溶性窒素であってよい。説明のように、約35%の上記反応生成物の混合物における全窒素がMDU又はDMTUのうちの少なくとも1種であってよく、かつ約8%又はそれを下回る全窒素が冷水不溶性窒素であってよい。
【0014】
通常、反応生成物の分布は、尿素とホルムアルデヒドとの間のモル比の選択により影響を受けうる。例えば、所定量のホルムアルデヒドに対する尿素の相対量を増やすことにより、上記メチレン尿素生成物のポリマー鎖長を縮めることができる。尿素とホルムアルデヒドとのモル比を変えることにより、特定の窒素分布が得られうる。ある特定の実施形態において、望ましい持続放出性窒素化合物分布を形成するための尿素のホルムアルデヒドに対する適切な比は、約2.4:1以上の尿素のホルムアルデヒドに対する比を含むことができ、例えば約3:1~約8:1の比、及び約3.1:1~約3.35:1の比が挙げられる。理解されうるように、持続放出性窒素化合物分布はなお更に形成されうることから、上記比における上限はない。しかしながら、ある特定の実施形態において、尿素のホルムアルデヒドに対するある程度の比、例えば約3.1:1~約3.35:1の比は、多くの植物にとって最適な持続放出性窒素化合物分布をもたらすことができる。図1図3は、適切な持続放出性窒素化合物分布をもたらすことができる尿素のホルムアルデヒドに対する別の比を更に示す。理解されうるように、反応条件、反応時間、又は上記樹脂改質剤の特性を変更することにより、更なる別の比もまた適切であることがある。
【0015】
理解されうるように、そのような比は、持続放出性窒素化合物の望ましい分布を有する肥料組成物の形成を容易にすることができる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される溶融プロセスの反応生成物の混合物は、肥料組成物として直接用いられうる。そのような肥料組成物は、望ましい量の速放出性窒素化合物及び望ましい持続放出性窒素化合物、例えばMDU及びDMTUを含むことができ、一方で少量の冷水不溶性窒素を含む。理解されうるように、そのような実施形態においては、未反応の尿素原料及びホルムアルデヒドが適切な速放出性窒素化合物源として作用できる。
【0016】
反対に、他の実施形態においては、記載される溶融プロセスから形成される反応生成物の混合物とともに更なる処理及び/又は更なる化合物が添加され、持続放出性窒素化合物を有する肥料を形成してもよい。
【0017】
ある特定の実施形態においては、更なる有利な持続放出性窒素化合物が肥料組成物に含まれうる。他の種類の有利な持続放出性窒素化合物、例えばトリアゾン、尿素-トリアゾン(例えばテトラヒドロ-s-トリアゾン又は5-メチレンウレイド-2-オキソヘキサヒドロ-s-トリアジン)、及びイソブチリデン-ジ尿素(「IBDU」)を含めることにより、経時の窒素放出プロファイルを調整することが可能となる。そのような化合物を添加することによりまた、上記肥料組成物にいずれかの適切な量の窒素を含ませることが可能となる。例えば、ある特定の実施形態において、持続放出性窒素化合物を含む肥料組成物は、約1質量%~約99質量%の窒素を含むことができる。ある特定の実施形態において、持続放出性窒素化合物を含む肥料組成物は、約20質量%~約70質量%の窒素を含むことができ、例えば約20質量%~約50質量%の窒素が挙げられる。様々な実施形態において、持続放出性窒素化合物を含む肥料組成物における窒素の量は、約1質量%、約2質量%、約5質量%、約10質量%、約15質量%、約20質量%、約25質量%、約30質量%、約35質量%、約40質量%、約45質量%、約50質量%、約55質量%、約60質量%、約65質量%、約70質量%、約75質量%、約80質量%、約85質量%、約90質量%、約95質量%、又は約99質量%であってよい。
【0018】
更に、又は別法として、様々な種類の速放出性窒素化合物が添加されてよく、その化合物としては更なる尿素、尿素硝酸アンモニウム(「UAN」)、アンモニウム、及び硝酸塩のうちの1種又は複数が挙げられる。
【0019】
ある特定の実施形態において、上記肥料組成物は、1種又は複数の非窒素系化合物を更に含むことができる。例えば、肥料組成物は、リン、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、硫黄、及び亜鉛のうちの1種又は複数を更に含むことができる。
【0020】
本明細書に記載される溶融プロセスに樹脂改質剤を含めることは、更なる利益をもたらしうる。例えば、上記反応生成物の混合物において上記樹脂改質剤が継続して存在することにより、上記反応生成物の結晶化を低減することができる。結晶化の割合を下げることにより、上記反応生成物の混合物は、低下した粘度及び弾性率を含む望ましいレオロジー特性を有することができる。理解されうるように、そのようなレオロジー特性は、上記反応生成物の混合物から形成される肥料組成物に数多くの利益をもたらしうる。例えば、上記レオロジー特性は、上記反応生成物の混合物を含む肥料の、処理を容易にし、安定性を改善し、かつ噴霧性を改善することができる。更に、上記改善されたレオロジー特性は、上記反応生成物の粒状化を容易にすることができる。
【0021】
本明細書に記載される溶融プロセスにより形成された、約35%又はそれを上回るMDU及びDMTUのうちの少なくとも1種である全窒素及び8%又はそれを下回る冷水不溶性窒素化合物である全窒素を有する反応生成物の混合物は、約150℃で測定された複素粘度が約0.1Pas~約0.20Pas、約150℃の温度で測定された動的(絶対)粘度が約0.02Pas~約0.06Pasであってよい。同様に、そのような反応生成物の混合物はまた、約150℃で測定された樹脂粘性弾性率(G")が約0.5Pa~約1.2Paであってよい。
【0022】
ある特定の実施形態において、樹脂改質剤を含めることはまた、レオロジー位相角にも影響を与えうる。例えば、本明細書に記載される溶融プロセスにより形成される反応生成物の混合物は、レオロジー位相角が約72°又はそれを上回ってよく、tanデルタが約3.0又は約3.1を上回ってよい。そのような特性は、上記反応生成物が弾性固体というよりもむしろ粘性液体のような挙動を示すことを示すことができる。理解されうるように、従来製造されたメチレン尿素生成物は、tanデルタが約2.0~約2.2であってよい。このことは、そのようなメチレン尿素生成物がむしろ弾性固体のような挙動を示すことを示している。
【0023】
理解されうるように、上記樹脂改質剤は、上記溶融反応プロセスの冷却後に上記肥料組成物に残存する。有利なことに、上記樹脂改質剤は、図4に示すように上記メチレン尿素反応生成物及び遊離尿素を塞いでいる、又は部分的に封入していることにより、上記肥料組成物からの窒素の放出を遅延させることができることが見出された。具体的に、図4は、メチレン尿素反応生成物405及び樹脂改質剤410を含む肥料組成物400を描く。樹脂改質剤410は、メチレン尿素反応生成物405を塞いでおり、又は部分的に封入しており、経時の窒素の放出を遅延させることができる。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される肥料組成物は、約35日以上、約60日以上、約70日以上、約80日以上、約90日以上、又は約100日以上にわたって窒素を放出することができる。そのような望ましい窒素の放出期間が、かなりの量の冷水不溶性窒素を含むことも上記肥料組成物の分離マイクロカプセル化もなく達成されうる。
【0024】
理解されうるように、樹脂改質剤を含ませることにより与えられるいくつかの利益はまた、樹脂改質剤を含むプロセスにより形成された反応生成物の混合物を、いずれの樹脂改質剤も含まない同様の溶融プロセスにより形成された反応生成物と比較することにより実証されうる。
【0025】
例えば、同様の量の冷水不溶性窒素を製造する場合、本明細書に記載される溶融プロセスは、樹脂改質剤を含まない同様のプロセスよりも多い量のMDU及びDMTUを製造することができる。具体的には、同一量の冷水不溶性窒素を製造するある特定の実施形態において、本明細書に記載される溶融プロセスは、45%のMDU及びDMTUである全窒素を有する反応生成物の混合物を形成することができ、一方で樹脂改質剤を含まない比較プロセスは、34%の全窒素のみがMDU及びDMTUである混合物を形成することができる。
【0026】
それぞれの混合物はまた、同様のレオロジー特性傾向を示す。例えば、上記樹脂改質剤により引き起こされる低減された結晶化により、溶融プロセス及び樹脂改質剤により形成された45%のMDU及びDMTUである全窒素を有する樹脂生成物の混合物が、樹脂改質剤なしに形成された34%のMDU及びDMTUである全窒素を有する混合物と同様の複素粘度及び樹脂弾性率を示すことが可能となる。
【0027】
通常、本明細書に記載される溶融プロセスに適切な樹脂改質剤としては、固体形態及び溶融形態の両方において適切な物性を示すポリエチレンワックスを挙げることができる。例えば、約600~約1,200の数平均分子量、約1.02~約1.7の多分散指数、及び約60%~約96%の結晶化度のうちの1つ又は複数を有するポリエチレンワックスが、そのようなポリエチレンワックスは固体形態で望ましい硬さを示し、溶融形態の間は望ましい粘度範囲を示すことから、適切でありうる。ある特定の実施形態において、適切な樹脂改質剤は、約60%~約96%の結晶化度を有し、かつ約600~約1,200の数平均分子量、及び約1.02~約1.7の多分散指数のうちの1つ又は複数を有する結晶性ポリエチレンワックスでありうる。そのような範囲の外の分子量分布及び多分散指数を有するポリエチレンワックスは、例えば固体形態で軟らかすぎる、溶融形態で粘性がありすぎる等でありうる。上記ポリエチレンワックスの選択はまた、本明細書に記載される溶融反応の収率及び変換速度にも影響を与えうる。
【0028】
本明細書で用いられる場合、多分散指数は、式Iに従って、ポリマー又はポリマー混合物の分子量分布の相対的な幅、又は範囲を示すために用いられる。
【0029】
【数1】
【0030】
ここで、Mwは重量平均分子量であり、Mnは数平均分子量である。理解されうるように、これらの値はいずれかの既知の手法、例えばサイズ排除クロマトグラフィーを用いて得られうる。より大きな多分散指数を有する材料は、多くの異なる鎖長から構成されうる。単分散ポリマーは全ての鎖長が同じであり、1.0の多分散指数を有するであろう。
【0031】
本明細書で用いられる場合、結晶化度は、結晶形態のポリマーの百分率について言及するために用いられる。結晶化度は様々な手法により測定されてよく、その手法としては、他の手法のなかでも、x線回折、示差走査熱量測定(「DSC」)、及び核磁気共鳴(「NMR」)が挙げられる。ある特定の実施形態において、適切な結晶性ポリエチレンワックスは、DSCにより測定された約60%~約96%の結晶化度を有することができる。理解されうるように、結晶化度は、方程式:%結晶化度=[ΔHm-ΔHc]/ΔHm°*100%を用いてDSCにより測定されうる。ここで、ΔHmは融解熱であり、ΔHcは低温結晶化熱であり、ΔHm°は100%結晶試料の融解熱(例えば、ポリエチレンでは293.6J/g)である。ある特定の実施形態において、上記結晶性ポリエチレンワックスは約65%~約96%の結晶化度を有することができ、ある特定の実施形態においては約65%~約80%、ある特定の実施形態においては約70%~約80%、ある特定の実施形態においては約76%である。
【0032】
ある特定の実施形態において、適切なポリエチレンワックスは、約600~約1,000の数平均分子量、及び約1.08~約1.09の多分散指数を有することができる。理解されうるように、複数のポリエチレンワックスもまた用いられ、又は別法として用いられ、望ましい特性を達成してもよい。例えば、ある特定の実施形態において、約600の分子量を有する第1の結晶性ポリエチレンワックスと約1,000の分子量を有する第2の結晶性ポリエチレンワックスとが用いられうる。
【0033】
そのようなポリエチレンワックスは、尿素とホルムアルデヒドとの溶融反応速度を下げること、及び上記メチレン尿素反応生成物の結晶化の割合を下げることの両方のために適切でありうる。ある特定の実施形態において、適切なポリエチレンワックスはまた、約1mm~約3mmの25℃で測定された針入硬度を示すことができる。適切なポリエチレンワックスの動的粘度は、150℃の温度で測定された場合、約7cps~約15cpsであってよい。
【0034】
通常、上記ポリエチレンワックスは溶融され、溶融された尿素及びホルムアルデヒドと溶液中で合わされて、均一性のために撹拌を必要とする2つの混ざらない流体の乳液を形成することができる。上記乳液は反応性を阻害し、過剰なメチレン尿素鎖の構築を防止することができる。ある特定の実施形態において、上記ポリエチレンワックスは、溶融された尿素及びホルムアルデヒドへの添加前に溶融されてよい。別の実施形態において、上記ポリエチレンワックスは、尿素及びホルムアルデヒドのいずれか又は両方と同時に溶融されてよい。
【0035】
通常、樹脂改質剤は、上記溶融混合物の約2質量%~約20質量%で含まれうる。例えば、ある特定の実施形態において、上記溶融混合物の約2質量%~約10質量%、又は約2.5質量%~約7.5質量%が上記樹脂改質剤であってよい。ある特定の実施形態において、上記溶融混合物の約5質量%が上記樹脂改質剤であってよい。
【0036】
本明細書に記載されるような溶融プロセスを用いたメチレン尿素反応生成物の形成は、酸触媒の使用により更に促進されうることが更に見出された。理解されるように、酸触媒は、上記溶融プロセスの反応速度及び反応生成物に影響を与えうる。例えば、弱酸触媒は、反応において形成される冷水不溶性窒素生成物の量を増加させることなく、反応速度に適度に影響を与えることができ、低温でのMDU及びDMTUの形成を容易にすることができる。弱酸触媒は、MDU及びDMTUの形成に有利となり、不安定な副反応(例えば、環状生成物を形成するもの)により形成される副生成物を低減できると考えられる。酸触媒として作用するのに適切な弱酸としては、約0.50~約5.0のpKa、約0.75~約4.0のpKa、又は約0.80~約3.86のpKaを有する酸を挙げることができる。
【0037】
ある特定の実施形態において、酸触媒として作用するのに適切な弱酸の具体例としては、ヨード酸、シュウ酸、亜塩素酸、リン酸、ヒ酸、クロロ酢酸、クエン酸、フッ化水素酸、亜硝酸、ギ酸、及び乳酸を挙げることができる。ある特定の実施形態において、上記酸触媒に適切な弱酸は、リン酸でありうる。
【0038】
ある特定の実施形態において、希釈濃度のより強い酸が、上記酸触媒として別に用いられうる。例えば、塩酸、硫酸又は硝酸のうちの1種又は複数が、酸のホルムアルデヒドに対する充分に低いモル比にて酸触媒として用いられうる。
【0039】
通常、溶融プロセスに含まれる酸触媒の量は、上記溶融プロセスに含まれるホルムアルデヒドの量に比例しうる。例えば、上記酸触媒がリン酸の場合、ホルムアルデヒド1モル当たり約4.5*10-5モル~約4.0*10-3モルのリン酸、例えばホルムアルデヒド1モル当たり約1.35*10-3モルのリン酸が含まれうる。
【0040】
温度条件を低下させることに加えて、酸触媒の使用はまた、上記溶融プロセスにおいて形成される反応生成物の動的粘度を低下できることが予想外に見出された。既知の溶融尿素ホルムアルデヒド反応においては、上記尿素ホルムアルデヒド反応を触媒するための酸の使用は、樹脂粘度の上昇により実証されるように、より長いポリマー鎖長を有する反応生成物をもたらしていた。これに対し、本開示においては、酸触媒の使用は上記樹脂改質剤(例えば、ポリエチレンワックス)と相乗的に作用して、より低い樹脂粘度を有する短鎖(例えば、MDU及びDMTU)の反応生成物を製造することが見出された。
【0041】
更に、酸触媒の使用は、酸なしで形成される比較樹脂よりも優れた安定性を有する樹脂の形成を引き起こすことができると考えられる。例えば、酸触媒の使用は、本明細書に記載される溶融プロセスの間に放出されるアンモニアの量を低減することができる。反応温度でのアンモニアの放出は、樹脂の不安定性と関連している。
【0042】
溶融プロセスにより製造される樹脂の動的粘度は、弱酸触媒濃度の関数として図5に描かれる。全ての試験データは129.5℃の温度で測定された。図5に描かれるように、酸触媒濃度の上昇は、反応生成物の動的粘度を予想外に低下させた。ある特定の実施形態において、上記動的粘度は、約0.4Pa・s以下、約0.3Pa・s以下、約0.2Pa・s以下、又は約0.1Pa・sであってよい。
【0043】
酸触媒の使用に加えて、本明細書に記載される溶融反応プロセスにおける乳化剤の使用もまた、上記反応生成物の動的粘度を低下させることが見出された。低下された動的粘度は、上記樹脂改質剤の上記尿素及びホルムアルデヒド反応物との接触領域を増加させる、改善された乳化によるものと考えられる。ある特定の実施形態において、複数の乳化剤を用いることが有用であることが見出された。
【0044】
例えば、ある特定の実施形態において、多数の乳化剤が用いられ、本明細書に記載される溶融プロセスにおいて見られる異なる温度レベルでの泡立ちを制御することができる。例えば、第1の乳化剤が、溶融プロセスの比較的低い温度部分の間に形成される多数の泡を低減するために含まれ、第2の乳化剤が、本明細書に記載される溶融プロセスの後の部分のより高い反応温度の間に形成される多数の泡を低減するために含まれうる。
【0045】
本明細書に記載される溶融プロセスのより低い温度部分のために適切な乳化剤の例としては、いくつかの消泡剤、例えば星型ポリマー消泡剤を挙げることができる。理解されうるように、そのような消泡剤は、3次元の星型構造を有し、コア及びそのコアから放射状に分布した多数のアームを含む特殊なポリマー種である。上記アームは、泡を最小限に抑えるために作用しうる、疎水性部分及び親水性部分を有する。適切な星型ポリマー消泡剤が、ある特定の実施形態において市販されうる。例えば、BASF社((Ludwigshafen、ドイツ)により市販されるFoamStar(登録商標)ST2400が適切な消泡剤でありうる。通常、そのような消泡剤は、既知の濃度にて含まれてよい。例えば、星型ポリマー消泡剤は、約500ppm~約2,000ppmの濃度で含まれてよい。
【0046】
本明細書に記載される溶融プロセスのより高い温度部分の間の泡立ちを制御するためには、熱により生成された泡に対して効果的な乳化剤を含むことが有用でありうる。そのような乳化剤の例としては、いくつかの消泡剤、例えば、例えばポリプロピレングリコールエステル及びモノグリセリドのような脂肪酸に由来するものが挙げられる。ある特定の実施形態において、ポリプロピレングリコールエステルとモノグリセリドとの組み合わせが消泡剤として用いられてよく、例えば約85質量%のポリプロピレングリコールエステルと約15質量%のモノグリセリドとの混合物が挙げられる。
【0047】
高温乳化剤が含まれる場合、そのような乳化剤は、上記溶融反応物における水分濃度に基づいて添加されうる。理解されうるように、本明細書に記載される溶融プロセスにおける典型的な水分レベルは、ある特定の実施形態において約10%以下であり、ある特定の実施形態において約8%以下である。ある特定の実施形態において、上記高温乳化剤は、約500ppm~約5,000ppm、約600ppm~約4,000ppm、又は約2,550ppmの濃度で含まれてよい。理解されうるように、高温乳化剤は、ある特定の実施形態において市販されうる。例えば、適切なポリプロピレングリコールエステルは、Hallstar社(シカゴ、IL)から入手可能なHallstar(登録商標)PGMS Pureでありうる。適切なモノグリセリドとしては、DuPont de Nemours社(ミッドランド、MI)から入手可能なDimodan(登録商標)P-T K-A MBを挙げることができる。
【0048】
乳化剤、特に上記高温乳化剤を含む実施形態においては、乳化及び樹脂粘度について改善が観察された。特に、図6A及び図6Bに図示されるような走査電子顕微鏡画像は、ポリプロピレングリコールエステルとモノグリセリドとの混合物(図6B)の使用が、比較のポリプロピレングリコール消泡剤(図6A)を用いて形成された反応生成物よりもかなり小さいポリエチレンワックス(樹脂改質剤)の塊を有する反応生成物をもたらしたことを示す。この改善された乳化はまた、図7に描かれるように、上記尿素ホルムアルデヒド反応生成物の動的粘度を低下させた。ある特定の実施形態において、高温消泡剤を用いて形成された反応生成物の動的粘度は、約0.4Pa・s以下、約0.3Pa・s以下、約0.2Pa・s以下、又は約0.1Pa・sであってよい。
【0049】
理解されうるように、上記溶融プロセスのための尿素及びホルムアルデヒドは、いずれかの適切な様式で供給されうる。例えば、ある特定の実施形態においては、尿素-ホルムアルデヒド濃縮物の形態でホルムアルデヒドを供給することが有用でありうる。尿素-ホルムアルデヒド濃縮物の使用は、処理を単純化することができ、幅広く利用可能である。
【0050】
ある特定の実施形態においては、熱処理工程が上記反応生成物の形成後に実施され、上記混合物の結晶化を低減することができる。そのような実施形態において、上記反応生成物の溶融混合物は、放冷される前により高い温度にまで加熱されうる。理解されうるように、上記反応生成物が一旦溶液を形成すると、冷却される場合であっても、上記反応生成物が続いて結晶化して溶液から外れることは、より困難となりうる。更に、熱処理工程の間、上記樹脂改質剤はまた、上記反応生成物の結晶化を開始させる核形成部位を遮ることもできる。ある特定の実施形態において、熱処理工程は、約135℃~約160℃の範囲の温度で起こってよく、約10分の持続時間を有してよい。ある特定の実施形態において、上記熱処理工程は、約135℃~約150℃の範囲の温度で約10分の持続時間で起こってよい。ある特定の実施形態において、上記熱処理工程は、約138℃の温度で起こってよい。
【0051】
本明細書に記載される肥料組成物は、種子、苗、植物、又は芝生に施用されうる。ある特定の実施形態において、上記肥料組成物は、当業者に知られている噴霧器、例えばトリガー噴霧器(例えば、手で持てるトリガー噴霧器)、棒状噴霧器、ボトル噴霧器、圧縮噴霧器、タンク噴霧器、ポンプ噴霧器、ホースエンド噴霧器、及びバックパック噴霧器を用いて、土壌、種子、苗、植物、又は芝生に噴霧されうる。本明細書に記載される肥料組成物はまた、固形肥料へと粒状化され、回転散布機を用いて土壌に施用されてもよい。
【0052】
或いは、本明細書に記載される溶融プロセスにより形成される持続放出性窒素化合物は、当該分野において知られている不活性担体への塗布により粒状化されうる。例えば、上記持続放出性窒素化合物は、不活性担体、例えばもみ殻上に(溶融形態で)噴霧されて顆粒を形成しうる。そのような顆粒は、乾式製粉、半ゆで、又は回転ドラム流動床、パン、ペレットミル等の1つ若しくは複数における粉砕により、更に粒状化されてよい。いくつかのそのような実施形態において、上記不活性担体、例えばもみ殻は、約20~約70の間のサイズガイド数(「SGN」)を有しうる。様々な実施形態において、上記不活性担体は、上記顆粒の約1質量%~約50質量%であってよく、上記持続放出性窒素化合物は、上記顆粒の約40質量%~約60質量%であってよい。上記顆粒は、約0.5mm~約5mmの大きさであってよい。
【0053】
ある特定の実施形態においては、更なる成分がそのような顆粒へと粒状化されうる。例えば、更なる肥料及び殺虫剤が上記顆粒へと粒状化されうる。ある特定の実施形態においては、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、3,6-ジクロロ-2-メトキシ安息香酸(ジカンバ)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)、クロロフェノキシプロピオン酸メチル(MCPP-P)、硝酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫黄被覆尿素、イソブチリデンジ尿素、硝酸アンモニウム、ウレアホルム、尿素ホルムアルデヒド反応生成物、尿素、無水アンモニア、ポリリン酸アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、ポリマー被覆尿素、微量元素、リン酸一アンモニウム、塩化カリウム、及びそれらの混合物、殺虫剤、微量栄養素、生物刺激剤、主要栄養素、並びに不活性固形担体のうちの1種又は複数が、上記持続放出性窒素化合物及び不活性担体と混合することにより粒状化されてもよい。
【0054】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される肥料組成物は、1000ft2当たり約0.1ポンドの窒素~1000ft2当たり約6ポンドの窒素の量で施用されうる。ある特定の実施形態において、上記肥料組成物は、すぐに使用できる処方、又はすぐに噴霧できる処方として設計されうる。
【0055】
上記肥料組成物が粒状である実施形態において、その粒状組成物は、土壌、種子、苗、植物、又は芝生上にその組成物をまき散らす又は広げることによって、土壌、種子、苗、植物、又は芝生に施用されうる。
【0056】
理解されうるように、本明細書に記載される持続放出性窒素化合物は、樹脂改質剤を尿素とホルムアルデヒドとの溶融混合物に添加することを含むいずれのプロセスによっても製造されうる。
【0057】
ある特定の実施形態において、上記持続放出性窒素化合物を形成するために用いられる方法は、尿素及びホルムアルデヒド、又は尿素-ホルムアルデヒド濃縮物の重さを量る工程と、上記樹脂改質剤を溶融させる工程とを含みうる。上記樹脂改質剤が結晶性ポリエチレンワックスである実施形態においては、上記樹脂改質剤は、約120℃~約130℃の温度で溶融されうる。次いで、尿素及び尿素-ホルムアルデヒド濃縮物は、例えば104℃の温度で溶融されうる。ある特定の実施形態においては、上記溶融混合物を撹拌することが有用でありうる。ある特定の実施形態において、上記結晶性ポリエチレンワックスは、上記混合物が溶融するとすぐに尿素及び尿素-ホルムアルデヒド濃縮物に添加されうる。そのような実施形態において、上記混合物は、様々な実施形態において撹拌しながら119.7℃の温度で、約10~45分、又は約15~30分の間保持されうる。ある特定の実施形態において、尿素、尿素-ホルムアルデヒド濃縮物、及び上記樹脂改質剤の溶融混合物は、129℃の温度で15分間保持されうる。15分の持続時間の間、上記溶融混合物における尿素及びホルムアルデヒドは、MDU及びDMTUを含むメチレン尿素生成物を形成することができる。ある特定の実施形態においては、実質的に全ての形成された持続放出性窒素化合物がMDU及びDMTUである。
【0058】
それぞれの成分を反応温度より低い第1の温度で溶融させる実施形態に代わるものとしては、それぞれの成分(例えば、尿素、ホルムアルデヒド及び樹脂改質剤)が別に溶融され、反応温度で混合され、次いでメチレン尿素生成物が形成されるまで反応温度で維持されうる。残りの工程、例えば熱処理工程は、実質的に変更されずに実施されうる。
【0059】
反応プロセスの完了後、熱処理工程が実施されうる。ある特定の実施形態において、熱処理工程は、上記溶融混合物を138℃の温度まで持続時間、例えば約10分の間加熱することを含みうる。上記熱処理工程は、上記反応生成物の結晶化を低減することができ、上記混合物のレオロジー特性を改善することができる。反応プロセスをより大きなバッチへと拡大する実施形態、又は連続的な製造を用いる実施形態においては、そのようなより大きなスケールでの熱損失の最小化は熱処理工程の必要性をなくすことから、上記熱処理工程は必要でないことがある。
【0060】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される肥料組成物の製造は、バッチプロセス、連続プロセス、又はバッチプロセスと連続プロセス両方の組み合わせで実施されうる。
【実施例
【0061】
以下の実施例は、本開示のいくつかの態様及び実施形態を説明するために含まれるものであり、本開示を開示された実施形態に限定することを目的とするものではない。
【0062】
肥料組成物
持続放出性窒素肥料化合物を有するいくつかの実施例肥料組成物を形成した。それぞれの実施例において、全質量500gの溶融混合物を130℃で溶融した。それぞれの溶融混合物は、600から1,000の間の分子量、1.08から1.09の間の多分散度、及び76%の結晶化度を有する5質量%の結晶性ポリエチレンワックスを含んでいた。それぞれの実施例の溶融混合物は、様々な量の尿素及び尿素ホルムアルデヒド濃縮物を更に含んでいた。
【0063】
図1図3はそれぞれ、様々な実施例における尿素のホルムアルデヒドに対する比を説明する線図、形成されたMDU及びDMTUの量を全窒素の百分率として示す線図、形成された冷水不溶性窒素(「CWIN」)の量を示す線図、及び先の2つのグラフのレオロジー特性を示す混合物線図を描く。図1において、イタリック体の数字は尿素のホルムアルデヒドに対するモル比を示す。図3において、粘度の単位はPa・sである。
【0064】
グラフによって示されるように、約3.1:1~約3.35:1の比の尿素のホルムアルデヒドに対する比を含む溶融混合物は、望ましい量のMDU及びDMTUを形成し、一方で低い粘度も実証した。
【0065】
温室試験
実施例4(本開示に従って調製した肥料組成物)の施肥効果を、実施例5(Koch Agronomic Services社(ウィチタ、KS)により製造されたNutralene(登録商標)40-0-0)と比較した。Nutralene(登録商標)40-0-0は、40%全窒素(4%尿素、17%水溶性窒素、及び19%水不溶性窒素)を含む市販の肥料である。実施例4及び実施例5の窒素分布をTable1(表1)に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例4及び実施例5を、温室試験を用いて評価した。温室試験においては、実施例4及び実施例5を乾燥させ、20ミクロンに製粉し、「Celebration」バミューダグラスに1.0ポンド/1000ft2の割合で施用した。温室を85°F/70°F(日中/夜)の温度サイクルに設定し、50%湿度に保持した。1週間当たり1"の灌がいを供給した。実施例4及び実施例5の肥料反応を、Baldwin,C.M.、H.Liu、L.B.McCarty、H.Luo、C.Wells、及びJ.E.Toler、「Impact of Altered Light Spectral Quality on Warm-Season Turfgrass Growth under Greenhouse Conditions」、Crop Science、49巻、2009年7月~8月に記載の方法に従い、刈り取りクロロフィル質量を決定することにより測定した。次いで、実施例4及び実施例5の相対クロロフィル百分率をそれらそれぞれの刈り取りクロロフィル質量から決定した。それらをTable2(表2)に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
Table2(表2)に示すように、実施例4は、少量のみの冷水不溶性窒素を有するにもかかわらず、「Celebration」バミューダグラスへの施用後84日に50%より大きい相対クロロフィル百分率を維持している。従って、実施例4は意味のある緑化効果を示す。本開示の以前には、肥料がそのような長期の期間(即ち、84日)にわたって連続した緑化を示すためには、かなりの量の冷水不溶性窒素、又は窒素の放出を遅らせる別の方法、例えばマイクロカプセル化が必要であると考えられていた。例えば、実施例4に示すような、4%のみの冷水不溶性窒素を含む伝統的な肥料は、84日には実質的には緑化効果を示さないと予測されていた。
【0070】
走査電子顕微鏡
図5は、60倍倍率での実施例組成物の削った断面図の走査電子顕微鏡画像を示す。図5に示されるように、メチレン尿素反応生成物は、濃縮されたポリエチレンワックスからなる領域を示す暗い領域、比較的少ないポリエチレンワックスを有するより明るい領域、及びポリエチレンワックス及びメチレン尿素反応生成物の両方の混合を示す中間調領域でポリエチレンワックスにより部分的に塞がれている。
【0071】
(大型バッチ実施例-実施例6)
更なる肥料組成物である実施例6を形成し、本技術のより大きなバッチへの拡大を評価した。実施例6はまた、酸触媒及び消泡剤の使用も評価した。
【0072】
実施例6を、10.78kgのホルムアルデヒド濃縮物(60質量%のホルムアルデヒド、25質量%の尿素、及び15質量%の水)を15ガロンのステンレス鋼反応器に添加することにより形成した。初期熱を付与しながら、38.73kgの尿素を一定の撹拌下で添加し、次いで、反応混合物を104℃に到達させた。反応混合物が104℃に到達したら、消泡剤及び1.61kgの溶融(125℃~130℃)結晶性ポリエチレンワックスを添加した。消泡剤は、Foamstar(登録商標)ST2400(最終濃度1,000ppm)、並びに85質量%のHallstar PGMS Pure及び15質量%のDimodan(登録商標)P-T K-A MBの混合物(混合物の最終濃度2,550ppm)であった。結晶性ポリエチレンワックスは、International Group社(トロント、カナダ)から市販されるAcculin(登録商標)622であった。消泡剤及び結晶性ポリエチレンワックスの添加に続き、酸触媒(0.1Mリン酸(H3PO4))を添加した(ホルムアルデヒド1モル当たりH3PO4の最終濃度1.36*10-3モル)。酸触媒の添加に続き、温度を上昇させて一定の撹拌下で119.5℃で30分とし、次いで、温度を上昇させて129.5℃で15分とした。次いで、溶融樹脂を、129.5℃に維持された噴霧マニホールドを用いて噴霧乾燥し、顆粒を形成した。溶融樹脂の顆粒への固化は数秒以内に起こった。
【0073】
レオロジー特性
TA Instruments HR-2 Discoveryハイブリッドレオメーターを、温度損失率を制御するために液体窒素冷却を用いる環境テストチャンバー(TA Instruments社(ウッドデール、IL)から入手可能)とともに用いることにより、実施例6の貯蔵弾性率を測定した。レオメーターは、毎分6℃の一定の冷却速度で固化時間を数秒から15分に延長した。冷却の間、実施例6の反応生成物の試料を一定レベルの振動ひずみに供した。固化曲線は図9に示される。
【0074】
Table3(表3)は、実施例6のレオロジー試験の結果を示す。Table3(表3)は、更に、伝統的な溶融プロセスにより製造された比較のメチレン尿素肥料顆粒のレオロジー試験の結果も示す。比較のメチレン尿素肥料顆粒は、4.0:1の尿素とホルムアルデヒドとのモル比にて、弱酸又はワックス触媒を用いることなく、従来の温度で処方した。ピーク貯蔵弾性率は、初期の固化が起こる点を示す。Tan(デルタ)は、材料の弾性挙動又は固体様挙動の程度を示し、Tan(デルタ)の数が0に近いほど、より弾性の固体であることを示す。
【0075】
【表3】
【0076】
Table3(表3)によって示されるように、本発明の実施例6は、大きく低下したピーク貯蔵弾性率及び低いTan(デルタ)を示した。これらの結果は、本発明の実施例6がより低い樹脂結合力を有し、冷却及び凝集の間の大きすぎる顆粒の形成の可能性を減らすことを示す。理解されうるように、大きすぎる、又は凝集した顆粒の製造は更なる処理を必要とし、より低い全体生産量及び増大した費用の原因となりうる。
【0077】
Table4(表4)は、実施例6及び実施例7についての粒状化「第1の通過」の率を示す。第1の通過の率とは、粒状化から出る、更なる製粉又はふるい分けを必要としない顆粒又は粒子の百分率を示す。
【0078】
【表4】
【0079】
Table4(表4)によって示されるように、本発明の実施例6のより低いピーク貯蔵弾性率により、比較例7よりもずっと大きい百分率で望ましい大きさの顆粒が製造された。
【0080】
本発明の実施例6はまた、粒度分布、形状の情報、及び均一性データを測定するために、CamSizer画像に基づく粒子径/粒子形状分析装置(Retsch Technology社(ハーン、ドイツ)から入手可能)を用いて評価された。本発明の実施例6は、N-P-K比が41-0-0、サイズガイド数(「SGN」)が137、均一性指数が30.8、及び球形値が0.817であった。理解されうるように、これらの結果は、本発明の実施例6が、伝統的なメチレン尿素ホルムアルデヒド顆粒よりも狭い分布曲線の顆粒、及びより球形の顆粒を製造することを示す。粒度分布は図10に示される。
【0081】
(実施例8~実施例15)
更なる「大型バッチ」実施例を形成し、反応温度及び動的粘度への弱酸の効果を調査した。実施例8~実施例15のそれぞれにおいて、38.32Kgの尿素、11.44Kgの尿素ホルムアルデヒド濃縮物、1.604kgの結晶性ポリエチレンワックス(Acculin(登録商標)622)、45.36gの消泡剤(FoamStar(登録商標)ST2400)、117.93gの85質量%のHallstar PGMS Pure及び15質量%のDimodan(登録商標)P-T K-A MBの混合物、及び様々な量の1Mリン酸(H3PO4)を、実施例6について記載されたのと同様のプロセスを用いて調製した。実施例8~実施例15のそれぞれにおけるリン酸の量は、0.00136モルから0.0022モルまで変化した。
【0082】
溶融反応プロセスの間に4~6回サンプリングを行い、MDUの濃度を分析的に測定することにより、実施例8~実施例15のそれぞれについて全体反応率及び変換率を測定した。実施例8~実施例15の結果はTable5(表5)及び図11に示される。信頼区間(95%)を計算するためにプールされた標準偏差を用いた。
【0083】
【表5】
【0084】
Table5(表5)及び図11によって示されるように、弱酸の量を変えることは変換率に重大な影響を与えることが見出され、実施例8及び実施例11が残りの実施例よりもより良好であることが示された。
【0085】
図12は、実施例8~実施例15についての速度定数Kを、平均反応器保持温度と酸のモル数及び速度定数の両方との関数としてプロットしたグラフを示す。理解される通り、反応速度定数は、反応がいかに速く進行するかを直接的に示す。図12に示されるように、温度の低下に伴い、酸の濃度の上昇によって反応速度定数は増大した。
【0086】
図13は、酸濃度及び温度が動的粘度に及ぼす影響を決定するために、酸のモル数及び動的粘度を反応器温度に対してプロットしたグラフを示す。図13に示されるように、反応器温度が低下し始め、酸濃度が上昇するにつれて、樹脂の動的粘度もまた上昇し始める。予期せぬことに、温度が低下し続けると、動的粘度が大きく低下する予期せぬ「プラトー」が観察された。
【0087】
尿素ホルムアルデヒドの持続放出性窒素化合物への変換の間に、アンモニアが放出される。アンモニアは、樹脂が反応温度で不安定になるために発生すると考えられる。従って、アンモニア放出の多い樹脂は、アンモニア放出が少ない樹脂よりも、安定性に欠けることを意味すると考えられる。樹脂の安定性は、樹脂の相対的な製造可能性を決定するうえで重要な因子である。図14は、反応温度に対する反応器アンモニア放出率及び酸のモル数のグラフを示す。
【0088】
図14に示されるように、一般的に、アンモニア放出は、反応器温度の低下につれて低下する。図13において観察された「プラトー」と同様に、アンモニア放出率の大きな低下が、リン酸約0.0014モルにおいて観察された。
【0089】
図11及び図12の結果に基づき、弱酸が、MDU及びDMTUへの変換を大きく低下させることなく上記溶融反応温度の温度を低下させるために用いられうることが見出された。更に、図13及び図14に示される結果に基づき、適切な濃度での弱酸の使用が、動的粘度及びアンモニアの放出が予想外に低い「プラトー」に到達するために用いられうることが予想外に見出された。このことは、適切な濃度(例えば、約0.0013モル~約0.0017モルの濃度)で予想外に安定な樹脂が形成されることを示唆する。
【0090】
理論に結びつけられてはいないが、弱酸は、メチレン尿素のより大きな持続放出性窒素生成物への反応を触媒すると考えられる。より低い温度及びより高い酸濃度で、上記酸は、MDU及びDMTUの形成のための反応速度を上昇させ、一方で他の生成物を形成する副反応を最小限に抑える。MDU及びDMTUは、不安定な環状構造を有することの多い副反応よりも安定である。このことは、MDU及びMDTUのより効果的な変換が起こり、一方で望ましくない副反応及び副生成物は不利となることを意味している。
【0091】
観察された図13及び図14の「プラトー」領域は、メチレン尿素のMDU及びDMTUへのより速い変換に有利となり、一方で副反応及び副生成物の形成には不利となる反応帯を表すと考えられる。この「プラトー」領域において形成される生成物が、この「プラトー」領域の外で形成された樹脂生成物よりも優れた噴出性、噴霧性、及び取扱い性を有することが観察された。
【0092】
本明細書において用いられる場合、全ての百分率(%)は、別に示されない限り、全組成物の質量パーセントであり、質量/質量%、%(w/w)、w/w、w/w%、又は単に%としても表される。
【0093】
本明細書に開示される寸法及び値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるとは理解されない。むしろ、別に特定されない限り、それぞれのそのような寸法は、記載された値とその値を取り囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。
【0094】
本明細書を通して与えられる全ての最大値の数値限定が、あたかもそのより低い数値限定が本明細書において明示的に書かれているかのように、全てのより低い数値限定を含むことが理解されるべきである。本明細書を通して与えられる全ての最小値の数値限定は、あたかもそのより高い数値限定が本明細書において明示的に書かれているかのように、全てのより高い数値限定を含むであろう。本明細書を通して与えられる全ての数値範囲は、あたかもそのより狭い数値範囲が本明細書において全て明示的に書かれているかのように、そのようなより広い数値範囲内に入る全てのより狭い数値範囲を含むであろう。
【0095】
いずれの相互参照される又は関連する特許又は出願も含む本明細書に記載される全ての文書は、明示的に除外されるか又は別に限定されない限り、本明細書によりその全体が参照により本明細書に援用される。いずれの文書の引用も、それが本明細書において開示又は請求されたいずれかの発明に関する先行技術であるということの承認ではなく、それが単独で又はいずれかの他の文献とのいずれかの組み合わせで、いずれかのそのような発明を教示、教示、又は開示しているということの承認でもない。更に、この文書における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により援用される文書における同様の用語のいずれかの意味又は定義と矛盾する範囲では、この文書においてその用語に割り当てられた意味又は定義が支配するべきである。
【0096】
上述した実施形態及び実施例の記載は、記載の目的のために示された。それらの記載は、包括的であること又は記載された形態に限定的であることを目的とするものではない。上記の教示に照らして多くの変更形態が可能である。それらの変更形態のいくつかは既に議論されており、他のものは当業者により理解されるであろう。上記実施形態は、様々な実施形態の説明のために選択され、記載された。当然ながら、本発明の範囲は本明細書に記載された実施例又は実施形態に限定されないが、任意の数の用途及び均等な物品において当業者により用いられうる。むしろ、本発明の範囲が、本明細書に添付の特許請求の範囲により定義されることが本明細書により意図される。
【符号の説明】
【0097】
400 肥料組成物
405 メチレン尿素反応生成物
410 樹脂改質剤
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】