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特表2023-520619ボキセロートルの結晶性形態及びその調製のためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ボキセロートルの結晶性形態及びその調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/04 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C07D401/04 CSP
A61K31/4439
A61P7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022545390
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 GB2021050380
(87)【国際公開番号】W WO2021170977
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】2002560.7
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522460852
【氏名又は名称】マクファーラン スミス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ボノー、ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】プレンティス、ゾエ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC22
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC36
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA14
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZA55
(57)【要約】
本発明は、ボキセロートルの結晶性形態、その調製のためのプロセス、及び結晶性形態を含有する医薬組成物に関する。
【化1】
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体である、ボキセロートルの結晶性形態。
【請求項2】
前記結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、約8.2、10.8、11.5、11.9、15.2、15.5、16.3、17.6、18.2、18.6、20.0、20.2、20.7、21.3、21.8、22.3、23.1、23.9、24.4、24.8、25.2、27.4、27.9、及び29.9°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項1に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項3】
実質的に図5に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項2に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項4】
結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体である、ボキセロートルの結晶性形態。
【請求項5】
前記結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体は、約5.3、6.9、11.2、12.5、12.8、13.4、13.9、14.2、15.1、15.9、16.2、17.3、17.5、17.8、18.7、19.4、19.6、20.3、20.9、21.2、21.7、22.3、22.6、23.1、23.3、24.1、24.4、24.8、25.1、25.8、25.9、26.4、及び27.7°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項4に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項6】
実質的に図3に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項5に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項7】
結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物である、ボキセロートルの結晶性形態。
【請求項8】
前記結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、約8.6、8.8、11.3、12.6、12.9、14.5、15.0、15.5、15.6、16.0、16.8、17.1、17.7、18.0、18.6、19.1、19.7、20.2、20.9、22.8、23.1、23.7、24.2、25.1、25.4、25.9、26.7、27.2、28.8、30.3、31.6、及び32.4°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピークを含むX線粉末回折パターンを有する、請求項7に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項9】
実質的に図1に示すようなX線粉末回折パターンを有する、請求項8に記載のボキセロートルの結晶性形態。
【請求項10】
ボキセロートルと、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物であって、前記ボキセロートルは、(i)結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体、(ii)結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体、及び(iii)結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物からなる群から選択される、医薬組成物。
【請求項11】
患者における酸素欠乏症に関連する病状を治療するための、治療的に有効量のボキセロートルを前記患者に投与することを含む方法であって、前記ボキセロートルは、(i)結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体、(ii)結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体、及び(iii)結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物からなる群から選択される、方法。
【請求項12】
酸素欠乏症に関連する前記病状は、鎌状赤血球症である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
酸素欠乏症に関連する病状の治療に使用するためのボキセロートルであって、
前記ボキセロートルは、(i)結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体、(ii)結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体、及び(iii)結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物からなる群から選択される、病状の治療に使用するためのボキセロートル。
【請求項14】
酸素欠乏症に関連する前記病状は、鎌状赤血球症である、請求項13に記載の病状の治療に使用するためのボキセロートル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボキセロートルの結晶性形態、その調製のためのプロセス、及び結晶性形態を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボキセロートルは、2-ヒドロキシ-6-((2-(1-イソプロピル-1H-ピラゾール-5-イル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ベンズアルデヒド又は2-ヒドロキシ-6-[[2-(2-プロパン-2-イルピラゾール-3-イル)ピリジン-3-イル]メトキシ]ベンズアルデヒドのIUPAC名を有し、以下に示す化学構造を有する。
【化1】
【0003】
欧州特許第2797416(B)号及び同第3141542(A)号(Global Blood Therapeuticsに付与)は、ボキセロートル及びその調製を記載している。
【0004】
EUでは、オーファン指定は、鎌状赤血球症の治療のためにボキセロートルに付与されている。
【0005】
原体の固体特性に関する情報が重要である。例えば、
異なる形態は、異なる溶解度を有し得る。また、原体の取り扱い及び安定性は、固体形態に依存し得る。
【0006】
多形性は、化合物が1つを超える異なる結晶種で結晶化する能力として定義することができ、同じ化学組成の異なる結晶配列は多形と称される。同じ化合物の多形は、原子の内部配置の差異によって生じ、異なる自由エネルギーを有し、したがって、溶解性、化学的安定性、融点、密度、流動特性、吸湿性、生物学的利用能などの物理的特性が異なる。化合物ボキセロートルは多くの多形形態で存在する場合があり、これらの形態の多くは、医薬的に許容される組成物を生成するのに望ましくない場合がある。これは、低安定性、高吸湿性、低水溶性、及び取り扱いの困難さを含む様々な理由のためであり得る。
【発明の概要】
【0007】
定義
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、当業者によって決定される特定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、1、2、3、又は4標準偏差の範囲内を意味する。ある特定の実施形態では、用語「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の30%、25%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.5%以内を意味する。ある特定の実施形態では、X線粉末回折2θピークを参照すると、用語「約」又は「およそ」は、±0.2°2θ以内を意味する。
【0008】
用語「周囲温度」は、約15℃~約25℃などの、約15℃~約30℃の1つ以上の室温を意味する。
【0009】
用語「貧溶媒」は、第2の溶媒に添加されて、第2の溶媒中の化合物の溶解度を低下させる第1の溶媒を指す。第1及び第2の溶媒の組み合わせからの化合物の沈殿が生じるように、溶解度を十分に低減することができる。
【0010】
用語「からなる(consisting)」は、限定的であり、特許請求される本発明における追加の、列挙されていない要素又は方法工程を除外する。
【0011】
用語「から本質的になる(consisting essentially of)」は、半限定的であり、「からなる」と「含む(comprising)」との間の中間点を占める。「から本質的になる」は、
特許請求される本発明の本質的な特性(複数可)に重大な影響を及ぼさない追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。
【0012】
用語「含む(comprising)」は、包括的又は非限定的であり、特許請求される本発明における追加の列挙されていない要素又は方法工程を除外しない。この用語は、「含むが、これらに限定されない」と同義である。用語「含む(comprising)」は、3つの代替語、すなわち、(i)「含む(comprising)」、(ii)「からなる(consisting)」、及び(iii)「から本質的になる(consisting essentially of)」を包含する。
【0013】
本明細書で使用される用語「結晶性」及び関連する用語は、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物を記載するために使用される場合、特に指定がない限り、化合物、物質、改質物、材料、構成成分又は生成物がX線回折によって決定されるように実質的に結晶性であることを意味する。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st edition,Lippincott,Williams and Wilkins,Baltimore,Md.(2005);The United States Pharmacopeia,23rd ed.,1843-1844(1995)を参照されたい。
【0014】
用語「分子複合体」は、
定義された単相結晶構造を有する2つ以上の異なる成分からなる結晶性物質を意味するために使用される。構成成分は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、π-π相互作用などの非共有結合によって一緒に保持される。用語「分子複合体」は、塩、共結晶、及び塩/共結晶ハイブリッドを含む。
【0015】
一実施形態では、分子複合体は、共結晶である。理論に束縛されるものではないが、分子複合体が共結晶である場合、共結晶は、結晶化度、溶解特性、及び/又は改良融点などの改善された物理化学的特性を示すと考えられる。
【0016】
本明細書における用語「多形(polymorph)」、「多形形態(polymorphic form)」又は関連する用語は、ボキセロートルの1つ以上の分子の結晶形態を指すか、又は多形の結晶格子内の分子(複数可)の異なる配置若しくは配座の結果として、2つ以上の形態で存在し得るボキセロートル分子複合体の結晶形態を指す。
【0017】
用語「医薬組成物」は、本発明の医薬的に有効な量のボキセロートルと、医薬的に許容される賦形剤と、を包含することを意図する。本明細書で使用するとき、用語「医薬組成物」は、錠剤、丸剤、粉剤、液剤、懸濁液、エマルション、顆粒剤、カプセル剤、坐剤、又は注射製剤などの医薬組成物を含む。
【0018】
用語「賦形剤」は、医薬的に許容される有機又は無機担体物質を指す。賦形剤は、有効な活性成分を含有する製剤を増量する目的で含まれる(したがって、しばしば「増量剤」、「充填剤」又は「希釈剤」と呼ばれる)、又は薬物吸収若しくは溶解性を促進するなど、最終剤形中の活性成分に対して治療的強化を付与するために含まれる、薬剤の活性成分と共に配合された天然又は合成物質であり得る。賦形剤はまた、予想される貯蔵寿命にわたる変性の防止などのインビトロ安定性の補助に加えて、粉末流動性又は非付着特性を促進することによってなど、活性物質の取り扱いを補助するために、製造プロセスにおいて有用であり得る。
【0019】
用語「患者」は、治療、観察、又は実験の対象である動物、好ましくは患者、最も好ましくはヒトを指す。好ましくは、患者は、治療及び/又は予防される疾患又は障害の少なくとも1つの症状を経験及び/又は呈している。更に、患者は、治療及び/予防される障害、疾患又は病状のいずれの症状も呈していない場合があるが、医師、臨床医、又は他の医療専門家により、当該障害、疾患、又は病状を発症するリスクがあるとみなされている。
【0020】
用語「溶媒和物」は、溶質、例えば、ボキセロートルの1つ以上の分子、及び溶媒の1つ以上の分子によって形成される組み合わせ又は凝集体を指す。溶媒の1つ以上の分子は、溶質の1つ以上の分子に対して化学量論的又は非化学量論的量で存在してもよい。
【0021】
用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、疾患若しくは障害の根絶若しくは寛解、又は疾患若しくは障害と関連する1つ以上の症状の根絶又は寛解を指す。ある特定の実施形態では、これらの用語は、このような疾患若しくは障害を有する患者に1つ以上の治療剤を投与することに起因する疾患若しくは障害の蔓延又は悪化を最小限に抑えることを指す。いくつかの実施形態では、これらの用語は、疾患の症状の発症後に、他の追加の活性剤の有無にかかわらず、本明細書で提供される分子複合体を投与することを指す。
【0022】
用語「一晩」とは、1つの手順工程の終了と手順における次の工程の開始との間で約12~約18時間の時間枠が経過した、1就業日の終了から次の就業日までの期間を指す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本明細書に記載される実施形態のある特定の態様は、図面を参照することによってより明確に理解することができ、図面は、本発明を例示することを意図するが、限定することを意図するものではない。
図1】ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物の代表的なXRPDパターンである。
図2】ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムである。
図3】ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体の代表的なXRPDパターンである。
図4】ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムである。
図5】ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体の代表的なXRPDパターンである。
図6】ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体の代表的なTGAサーモグラム及びDSCサーモグラムである。
図7】Speedmixer(商標)内の粒子に遠心力がどのように加えられるかを示す図である。図Aは、ベースプレート及びバスケットを示す上から見た図である。ベースプレートは時計回り方向に回転する。 図Bは、ベースプレート及びバスケットの側面図である。 図Cは、図Bの線Aに沿って上から見た図である。バスケットは反時計回り方向に回転する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物
ボキセロートルは、明確で一貫して再現可能なプロピレングリコール溶媒和物形態で調製することができることが発見されている。更に、この溶媒和物形態を生成するための信頼性が高い大規模に実現可能な方法が開発されている。本発明によって提供されるボキセロートル多形は、医薬製剤における活性成分として有用であり得る。ある特定の実施形態では、結晶性溶媒和物形態は、精製可能である。ある特定の実施形態では、時間、温度、及び湿度に応じて、結晶性溶媒和物形態は、安定である。ある特定の実施形態では、結晶性溶媒和物形態は、単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、結晶性溶媒和物形態を調製するためのプロセスは、大規模に実現可能である。
【0025】
本明細書に記載の結晶性形態は、単結晶X線回折、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法(溶液及び固体NMRを含む)が含まれる当業者に既知の多数の方法を使用して特性評価され得る。化学純度は、薄層クロマトグラフィ(TLC)、ガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、及び質量分析(MS)などの標準的な分析方法によって決定することができる。
【0026】
一態様では、本発明は、結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物である、ボキセロートルの結晶性形態を提供する。
【0027】
プロピレングリコールに対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのプロピレングリコール、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのプロピレングリコールであり得る。一実施形態では、プロピレングリコールに対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのプロピレングリコールであり得る。
【0028】
ヘミプロピレングリコール溶媒和物は、約8.6、8.8、11.3、12.6、12.9、14.5、15.0、15.5、15.6、16.0、16.8、17.1、17.7、18.0、18.6、19.1、19.7、20.2、20.9、22.8、23.1、23.7、24.2、25.1、25.4、25.9、26.7、27.2、28.8、30.3、31.6、及び32.4°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に図1に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。
【0029】
ヘミプロピレングリコール溶媒和物は、約92.0℃の開始温度を有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に図2に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0030】
ヘミプロピレングリコール溶媒和物は、約周囲温度から約200℃に加熱されたときに約10.2%の質量損失を含むTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、溶媒和物は、実質的に図2に示すようなTGAサーモグラムを有し得る。
【0031】
形成された結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、他の多形形態のボキセロートルを含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、又はそれ以上である。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、≧95%である。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、≧96%である。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、
≧97%である。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、≧98%である。ある特定の実施形態では、溶媒和物の多形純度は、≧99%である。
【0032】
上記の結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、低エネルギーボールミリング又は低エネルギー粉砕を使用して、ボキセロートルとプロピレングリコールとを反応させることを含むプロセスによって調製され得る。
【0033】
プロピレングリコールは、所望の溶媒和物を形成するのに十分な量で存在する。プロピレングリコールの量は、ボキセロートルを溶解し、溶液を形成するか、ボキセロートルを懸濁するか、又はボキセロートルを湿潤させるのに十分なプロピレングリコールが存在する限りにおいて、特に限定されない。一実施形態では、プロピレングリコールに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約0.01~約1.5μLのプロピレングリコールの範囲、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.05~約1.0μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.75μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.5μLのプロピレングリコールであり得る。
【0034】
低エネルギーボールミリングが利用されるとき、ミリングプロセスは、ミリングが行われる速度、ミリング時間の長さ、及び/又はミリング容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0035】
ミリングが行われる速度は、約50rmp~約1000rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約75rpm~約750rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は、約80rpm~約650rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約500rpmであってもよい。
【0036】
低エネルギー粉砕は、粉砕容器内で材料を振盪することを伴う。粉砕は、容器内の材料の衝撃及び摩擦を介して生じる。このプロセスは、粉砕が行われる速度、粉砕時間の長さ、及び/又は容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0037】
粉砕が行われる周波数は、約1Hz~約100Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は、約10Hz~約70Hzであってもよい。別の実施形態では、周波数は、約20Hz~約50Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は約30Hzであってもよい。
【0038】
ミリング又は粉砕が使用されるかどうかに関係なく、ミリング媒体又は粉砕媒体を使用して反応を支援してもよい。この場合、硬質で非汚染性の媒体の組み込みは、例えば、製造プロセスの結果、又は輸送中に凝集が生じた粒子の破壊を更に支援することができる。このような凝集体の破壊は、ボキセロートルとプロピレングリコールとの反応を更に促進する。ミリング/粉砕媒体の使用は、粉末加工の分野内で周知であり、安定化ジルコニア及び他のセラミックなどの材料が、十分に硬質であるか、又はボールベアリング、例えばステンレスボールベアリングである場合に適している。
【0039】
ミリング又は粉砕が使用されるかどうかにかかわらず、プロセスの改善は、当業者によく知られているように、粒子比、ミリング/粉砕媒体のサイズ、及び他のパラメータを制御することによって行うことができる。
【0040】
ミリング又は粉砕時間の長さは、約1分~約2日、例えば、約10分~約5時間、例えば、約20分~3時間、例えば、約2時間であってもよい。
【0041】
ボキセロートル及びプロピレングリコールは、周囲温度以下で接触させることができる。あるいは、ボキセロートルは、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度でプロピレングリコールと接触させることができる。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。
【0042】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、結晶性固体として回収される。結晶性溶媒和物は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。所望であれば、プロピレングリコールのある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0043】
あるいは、上記のボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、二重非対称遠心力をボキセロートルとプロピレングリコールとの混合物に加えて溶媒和物を形成する工程を含むプロセスによって調製されてもよい。
【0044】
プロピレングリコールは、所望の溶媒和物を形成するのに十分な量で存在する。プロピレングリコールの量は、ボキセロートルを溶解し、溶液を形成するか、ボキセロートルを懸濁するか、又はボキセロートルを湿らせるのに十分なプロピレングリコールが存在する限りにおいて、特に限定されない。一実施形態では、プロピレングリコールに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約0.01~約1.5μLのプロピレングリコールの範囲、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.05~約1.0μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.75μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.5μLのプロピレングリコールであり得る。
【0045】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、二重非対称遠心力を使用して形成される。「二重非対称遠心力」とは、2つの遠心力が互いにある角度で粒子に同時に印加されることを意味する。効率的な混合環境を作り出すために、遠心力は、好ましくは反対方向に回転する。HauschildによるSpeedmixer(商標)(http://www.speedmixer.co.uk/index.php)は、この二重回転法を利用し、それにより、Speedmixer(商標)のモータが混合ユニットのベースプレートを時計回り方向に回転させ(図7Aを参照)、バスケットを反時計回り方向に回転させる(図7B及び図7Cを参照)。
【0046】
プロセスは、プロセスが行われる回転速度、処理時間の長さ、混合容器が充填されるレベル、粉砕媒体の使用、及び/又はミリングポット内の構成要素の温度の制御を含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0047】
二重非対称遠心力は、連続した期間にわたって適用されてもよい。「連続した」とは、中断されない期間を意味する。期間は、約1秒~約10分、例えば、約5秒~約5分、例えば、約10秒~約200秒、例えば、2分であってもよい。
【0048】
あるいは、二重非対称遠心力は、合計した期間にわたって適用されてもよい。「合計した」とは、2つ以上の期間(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の時間)の総計又は合計を意味する。遠心力を段階的に適用する利点は、粒子の過剰な加熱を回避することができることである。二重非対称遠心力は、約1秒~約20分、例えば約30秒~約15分、及び約10秒~約10分、例えば6分の集計期間にわたって適用されてもよい。一実施形態では、二重非対称遠心力は、それらの間の冷却期間と共に段階的に適用される。別の実施形態では、二重非対称遠心力は、1つ以上の異なる速度で段階的に適用されてもよい。
【0049】
二重非対称遠心力の速度は、約200rpm~約4000rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約300rpm~約3750rpm、例えば、約500rpm~約3500rpmであってよい。一実施形態では、速度は、約3500rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は、約2300rpmであってもよい。
【0050】
混合容器が充填されるレベルは、当業者には明らかとなる様々な要因によって決定される。これらの要因としては、ボキセロートル及びプロピレングリコールの見かけ密度、混合容器の容積、及びミキサー自体に課される重量制限が挙げられる。
【0051】
上記のミリング媒体を使用して、反応を支援することができる。ある特定の実施形態では、二重非対称遠心力は、ミリング媒体が全ての期間ではなく一部の期間に使用され得る段階的な方法で適用されてもよい。
【0052】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、結晶性固体として回収される。結晶性溶媒和物は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。所望であれば、プロピレングリコールのある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0053】
どのようにして結晶性溶媒和物が回収された場合でも、分離した溶媒和物を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行してもよい。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、溶媒和物が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって溶媒和物が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0054】
上記の結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、
(a)ボキセロートルを、tert-ブチルメチルエーテル(TBME)、酢酸イソプロピル、ジエチルエーテル、2-メチルテトラヒドロフラン(2-メチルTHF)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の溶媒と接触させる工程と、
(b)ボキセロートルの溶液又は懸濁液にプロピレングリコールを添加する工程と、
(c)結晶性固体としてボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を回収する工程と、を含む、プロセスによって調製されてもよい。
【0055】
第1の溶媒の量は、ボキセロートルを溶解し、溶液を形成するか、又はボキセロートルを懸濁するのに十分な溶媒が存在する限りにおいて、特に限定されない。第1の溶媒に対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:
約1~約10μLの溶媒の範囲であり得る。一実施形態では、第1の溶媒に対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約4μLの溶媒であり得る。
【0056】
ボキセロートルは、周囲温度以下で第1の溶媒と接触させてもよい。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~約≦25℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約1℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約2℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約3℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約4℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約5℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約20℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約15℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約10℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~≦約10℃の範囲の1つ以上の温度、例えば、約5℃で実施される。一実施形態では、接触工程は、周囲温度、例えば、約25℃で実施され得る。
【0057】
あるいは、ボキセロートルは、周囲温度よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度で溶媒と接触させてもよい。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。一実施形態では、接触工程は、≧約40℃~約≦60℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約41℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約42℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約43℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約44℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約45℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約46℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約47℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約48℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約49℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約50℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約59℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約58℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約57℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約56℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約55℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約54℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約53℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約52℃の1つ以上の温度で実施される。
いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約51℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約45℃~≦約55℃の範囲の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、約50℃の温度で実施される。
【0058】
ボキセロートルの溶解又は懸濁は、撹拌、振盪、及び/又は超音波処理などの補助の使用を通して促進され得る。ボキセロートルの溶解又は懸濁を補助するために、追加の溶媒が添加され得る。
【0059】
ボキセロートル及び溶媒の混合物が所望の温度で処理される時間は、特に限定されない。一実施形態では、時間は、約1分~約24時間、例えば、約5分であり得る。
【0060】
工程(b)では、プロピレングリコールを反応混合物に添加する。プロピレングリコールの量は、特に限定されない。一実施形態では、プロピレングリコールに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約0.01~約1.5μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.05~約1.0μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.75μLのプロピレングリコール、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.4μLのプロピレングリコールの範囲であり得る。これらのw/v比は、最初に第1の溶媒中に溶解又は懸濁したボキセロートルの質量、すなわちプロセスに投入されるボキセロートルの量を使用して計算されている。
【0061】
プロピレングリコールの添加後、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように周囲温度以下で、ある期間にわたり処理され得る。
【0062】
あるいは、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い1つ以上の温度で、ある期間にわたり処理され得る。
【0063】
反応混合物は、更なる期間、例えば、約1分~約24時間、例えば、約1時間放置され得る。
【0064】
次いで、溶液又は懸濁液は、得られた溶液又は懸濁液が工程(b)の溶液又は懸濁液の温度を下回る温度を有するように冷却され得る。冷却速度は、約0.05℃/分~約2℃/分、例えば、約0.1℃/分~約1.5℃/分、例えば、約0.1℃/分又は0.5℃/分であり得る。ボキセロートル及びプロピレングリコールの溶液が冷却されると、懸濁液が最終的に観察され得る。
【0065】
溶液又は懸濁液は、周囲温度又は周囲温度未満の温度に冷却され得る。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約0℃~≦約20℃の範囲の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約1℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約2℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約3℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約4℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約5℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約15℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約14℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約13℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約12℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約11℃の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約10℃の1つ以上の温度に冷却される。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、約5℃~約10℃の範囲の1つ以上の温度に冷却される。
【0066】
ある特定の実施形態では、溶液又は懸濁液が上記のように周囲温度よりも低い1つ以上の温度に冷却された後、貧溶媒を溶液又は懸濁液に添加してもよい。貧溶媒は、冷却された溶液又は懸濁液に添加される前に、好適な温度に予冷されてもよい。一実施形態では、貧溶媒は、ヘプタンなどのアルカン溶媒である。一実施形態では、貧溶媒はヘプタンであり、へブタンは、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物の溶液又は懸濁液に約15℃で添加される。貧溶媒の添加後、冷却は、上記のように継続してもよい。
【0067】
工程(c)では、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、結晶性固体として回収される。結晶性溶媒和物は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。必要に応じて、懸濁液は、結晶性固体の回収前に溶媒の追加部分で流動化され得る。あるいは、結晶性固体を回収する前に、ある割合の又は実質的に全ての溶媒を蒸発させることができる。
【0068】
どのようにして結晶性溶媒和物が回収された場合でも、分離された溶媒和物は、溶媒(例えば、上記の溶媒のうちの1つ以上)で洗浄され、乾燥され得る。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、溶媒和物が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって溶媒和物が上記の温度又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0069】
工程(a)~(c)は、1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)実施され得る。工程(a)~(c)が1回を超えて(例えば、2、3、4又は5回)実施される場合、工程(a)は、任意選択的に、(本明細書に記載の方法によって以前に調製かつ単離された)結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を種晶添加することができる。
【0070】
代替的に、又は追加的に、工程(a)~(c)が1回を超えて(例えば、2、3、4又は5回)実施される場合、工程(b)で形成された溶液又は懸濁液は、任意選択的に、(本明細書に記載の方法によって以前に調製かつ単離された)結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を種晶添加することができる。
【0071】
本発明者らは、上記のボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を、
(a)ボキセロートルとプロピレングリコールとの混合物を提供する工程と、
(b)混合物を押出機に供給して、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を形成する工程と、を含むプロセスによって調製してもよいことを想定している。
【0072】
混合物は、ボキセロートルとプロピレングリコールとのブレンドである。混合物は、例えば、ボキセロートルとプロピレングリコールとを、任意の好適な手段によって、例えば、管状ブレンダーを使用することによって、好適な期間、例えば、約30分間混合することによって、調製することができる。ボキセロートルとプロピレングリコールとの均質ブレンドを調製することが望ましいが、必須ではない。
【0073】
プロピレングリコールは、ボキセロートルに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、プロピレングリコールは、化学量論的量で存在する。プロピレングリコールに対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのプロピレングリコール、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのプロピレングリコールの範囲であり得る。一実施形態では、プロピレングリコールに対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのプロピレングリコールであり得る。
【0074】
溶媒和物は、混合物を調製する際には形成されない。ボキセロートル及びプロピレングリコールは、混合物が押出機を通して加工されるときに溶媒和物を形成する。
【0075】
押出機は、典型的には、バレルの一端に配置されたダイを備えた静止バレル内に1又は複数の回転スクリューを含む。スクリューの全長に沿って、混合物の溶媒和は、バレル内のスクリュー(複数可)の回転によってもたらされる。押出機は、少なくとも3つのセクション:供給セクションと、加熱セクションと計量セクションと、に分割することができる。供給セクションでは、混合物は押出機に供給される。混合物は、溶媒を必要として、又は必要とせずに、供給セクションに直接添加することができる。加熱セクションでは、混合物がそのセクションを横断する際に、ボキセロートル及びプロピレングリコールが溶媒和してボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を形成するような温度に、混合物が加熱される。溶媒が、加熱セクションに任意に添加されてもよい。加熱セクションの後に、任意の計量セクションがあり、計量セクションでは、溶媒和物が、ダイを通って特定の形状、例えば、顆粒に押し出され得る。押出機は、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機、又は噛合スクリュー押出機であってもよい。一実施形態では、押出機は、二軸押出機(例えば、共回転二軸押出機)である。
【0076】
混合物は、任意の好適な速度で供給セクションに供給され得る。例えば、供給セクションの速度は、約1rpm~約100rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約5rpm~約80rpmであり得る。
【0077】
ある特定の実施形態では、混合物が供給セクションに供給されるとき、溶媒が混合物に添加される。代替的に又は追加的に、溶媒は、混合物が加熱セクションを横断する際に、加熱セクションの1つ以上のゾーン(例えば、1、2、3、4、又は5つのゾーン)に1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)添加されてもよい。これは、材料が加熱セクションを通って移動する際に、混合物の乾燥を防止するのに有利であり得る。
【0078】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤する」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。
【0079】
加熱セクションは、その長さにわたって単一の温度まで加熱されてもよく、又は、それぞれが他のゾーンとは独立して加熱されてもよい、2つ以上の(例えば、2、3、4、又は5つの)ゾーンに分割されてもよい。加熱セクションを出る際、ボキセロートル及びプロピレングリコールが溶媒和してボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を形成し、ボキセロートル、プロピレングリコール、及び/又は溶媒和物のいずれも実質的に劣化しない又は実質的に分解されない限りにおいて、加熱セクション又は各ゾーンの温度は特に制限されない。
【0080】
押出機がスクリューを含む場合、スクリュー(単数又は複数)及び加熱セクションは一致してもよく、すなわち、スクリュー(単数又は複数)も加熱セクションであってもよい。
【0081】
スクリュー(単数又は複数)が回転する速度は、任意の好適な速度であり得る。例えば、スクリュー(単数又は複数)の速度は、約1rpm~約500rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約10rpm~約100rpmなどの、約5rpm~約400rpmであり得る。
【0082】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、結晶生成物を単に採集することによって回収され得る。所望であれば、溶媒(存在する場合)のある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0083】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性溶媒和物は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、溶媒和物が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって溶媒和物が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0084】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物に関する。
【0085】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物を患者に投与することを含む、患者における酸素欠乏症に関連する病状を治療するための方法に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0086】
別の態様では、本発明は、酸素欠乏症に関連する病状の治療に使用するための、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0087】
ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体
ボキセロートルは、明確で一貫して再現可能なフマル酸分子複合体で調製することができることが発見されている。更に、この分子複合体を生成するための信頼性が高い大規模に実現可能な方法が開発されている。本発明によって提供されるボキセロートル分子複合体は、医薬製剤における活性成分として有用であり得る。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は精製可能である。ある特定の実施形態では、また時間、温度及び湿度に応じて、結晶性分子複合体は安定である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体を調製するプロセスは、大規模に実現可能である。
【0088】
本明細書に記載の結晶性分子複合体は、単結晶X線回折、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法(溶液及び固体NMRを含む)が含まれる当業者に既知の多数の方法を使用して特性評価され得る。化学純度は、薄層クロマトグラフィ(TLC)、ガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、及び質量分析(MS)などの標準的な分析方法によって決定することができる。
【0089】
別の態様では、本発明は、ボキセロートルとフマル酸との結晶性分子複合体を提供する。一実施形態では、結晶性分子複合体は、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体、例えば、ボキセロートルヘミフマル酸共結晶である。
【0090】
フマル酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのフマル酸、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのフマル酸の範囲であり得る。一実施形態では、フマル酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのフマル酸であり得る。
【0091】
ヘミフマル酸分子複合体は、約5.3、6.9、11.2、12.5、12.8、13.4、13.9、14.2、15.1、15.9、16.2、17.3、17.5、17.8、18.7、19.4、19.6、20.3、20.9、21.2、21.7、22.3、22.6、23.1、23.3、24.1、24.4、24.8、25.1、25.8、25.9、26.4、及び27.7°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図3に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。
【0092】
ヘミフマル酸分子複合体は、約131.7℃の開始温度を有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図4に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0093】
ヘミフマル酸分子複合体は、約周囲温度から約150℃に加熱されたときに実質的に質量損失を含まないTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図4に示すようなTGAサーモグラムを有し得る。
【0094】
ヘミフマル酸分子複合体の熱分析は、TGAによって固体の溶融直後にフマル酸の損失がないことを示す。これは、分子複合体の溶融物(約131.7℃でのDSC事象)と試料分解(TGAによる約160℃)との間に温度ウィンドウがあり、液体を冷却して分子複合体を再形成することができることを示す。これは、分子複合体を生成するために熱的方法(ホットメルト押出など)を使用することができることを示す。
【0095】
形成された結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体は、他の多形形態のボキセロートルを含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、又はそれ以上である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧95%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧96%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧97%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧98%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧99%である。
【0096】
上記の結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体は、
(a)ボキセロートル及びフマル酸を、メタノール及びtert-ブチルメチルエーテル(tert-butyl methyl ether、TMBE)からなる群から選択される第1の溶媒と接触させる工程と、
(b)結晶性固体としてボキセロートルヘミフマル酸分子複合体を回収する工程と、を含むプロセスによって調製してもよい。
【0097】
フマル酸は、固体として、又は溶媒(例えば、メタノール及び/又はTBME)中の溶液として利用され得る。
【0098】
一実施形態では、工程(a)は、
(a1)ボキセロートルを、メタノール及びtert-ブチルメチルエーテル(TMBE)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の溶媒と接触させる工程と、
(a2)ボキセロートルの溶液又は懸濁液にフマル酸を添加する工程と、を含み得る。
【0099】
別の実施形態では、工程(a)は、
(a1’)ボキセロートルとフマル酸との固体混合物を、メタノール及びtert-ブチルメチルエーテル(TMBE)、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される第1の溶媒と接触させて、溶液又は懸濁液を形成する工程を含み得る。
【0100】
第1の溶媒の量は、(a)ボキセロートルを溶解し、溶液を形成するか、若しくはボキセロートルを懸濁する、かつ/又は、(b)フマル酸を溶解し、溶液を形成するか、若しくはフマル酸を懸濁するのに十分な溶媒が存在する限りにおいて、特に限定されない。第1の溶媒に対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約10μLの溶媒の範囲であり得る。
【0101】
ボキセロートルは、周囲温度以下で第1の溶媒と接触させてもよい。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~約≦25℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約1℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約2℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約3℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約4℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約5℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約20℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約15℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約10℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~≦約10℃の範囲の1つ以上の温度、例えば、約5℃で実施される。一実施形態では、接触工程は、周囲温度、例えば、約25℃で実施され得る。
【0102】
あるいは、ボキセロートルは、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度で第1の溶媒と接触させてもよい。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。一実施形態では、接触工程は、≧約40℃~約≦60℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約41℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約42℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約43℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約44℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約45℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約46℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約47℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約48℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約49℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約50℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約59℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約58℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約57℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約56℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約55℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約54℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約53℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約52℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約51℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約45℃~≦約55℃の範囲の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、約50℃の温度で実施される。
【0103】
ボキセロートルの溶解又は懸濁は、撹拌、振盪、及び/又は超音波処理などの補助の使用を通して促進され得る。ボキセロートルの溶解又は懸濁を補助するために、追加の溶媒が添加され得る。
【0104】
ボキセロートルと溶媒との混合物が所望の温度で処理される期間は、特に限定されない。一実施形態では、期間は、約1分~約24時間、例えば、約5分であり得る。
【0105】
フマル酸が固体として反応に投入される場合、第1の溶媒に対するフマル酸のw/v比は、約1mgのフマル酸:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約20μLの溶媒の範囲であり得る。
【0106】
メタノール及び/又はTBMEから選択される溶媒中の溶液としてフマル酸が反応に投入される場合、溶媒に対するフマル酸のw/v比は、約1mgのフマル酸:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約25μLの溶媒の範囲であり得る。この場合、フマル酸の溶液は、ボキセロートルの溶液/懸濁液に添加され得る。
【0107】
ボキセロートルとフマル酸との固体混合物を、メタノール及び/又はMTBEと接触させる場合、溶媒に対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約10μLの溶媒の範囲であり得る。この場合、溶媒に対するフマル酸のw/vは、約1mgのフマル酸:約1~約1000μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約500μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約150μLの溶媒、例えば、約1mgのフマル酸:約1~約20μLの溶媒の範囲であり得る。
【0108】
ボキセロートル、フマル酸、及び溶媒の混合物が所望の温度で処理される期間は、特に限定されない。一実施形態では、期間は、約1分~約24時間、例えば、約1時間であり得る。
【0109】
ボキセロートル、フマル酸、及び溶媒を組み合わせた後、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように周囲温度以下で、ある期間にわたり処理され得る。
【0110】
あるいは、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度で、ある期間にわたり処理され得る。
【0111】
反応混合物は、更なる期間、例えば、約1分~約24時間、例えば、約1時間放置され得る。
【0112】
次いで、溶液又は懸濁液は、得られた溶液又は懸濁液が工程(a)、(a2)、又は(a1’)の溶液又は懸濁液の温度を下回る温度を有するように冷却され得る。冷却速度は、約0.05℃/分~約2℃/分、例えば、約0.1℃/分~約1.5℃/分、例えば、約0.1℃/分又は0.5℃/分であり得る。懸濁液は、最終的に、反応混合物の溶液を冷却すると観察され得る。
【0113】
溶液又は懸濁液は、周囲温度又は周囲温度未満の温度に冷却され得る。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約0℃~≦約20℃の範囲の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約1℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約2℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約3℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約4℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約5℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約15℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約14℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約13℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約12℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約11℃の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約10℃の1つ以上の温度に冷却される。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、約5℃~約10℃の範囲の1つ以上の温度、例えば、約5℃に冷却される。
【0114】
反応混合物は、更なる期間、例えば、所望の温度で約1分~約10日間放置され得る。一実施形態では、反応混合物は、周囲温度よりも低い温度で約7日間放置された。
【0115】
工程(b)では、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。必要に応じて、懸濁液は、結晶性固体の回収前に溶媒(例えば、メタノール及び/又はTBME)の追加部分で流動化され得る。あるいは、結晶性固体を回収する前に、ある割合の又は実質的に全ての溶媒を蒸発させることができる。
【0116】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離された分子複合体は、溶媒(例えば、上記の溶媒のうちの1つ以上)で洗浄され、乾燥され得る。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0117】
工程(a)→(b)、(a1)→(a2)→(b)、及び(a1’)→(b)は、1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)実施され得る。工程(a)→(b)、(a1)→(a2)→(b)、及び(a1’)→(b)が、1回以上(例えば、2、3、4又は5回)実行される場合、工程のうちの1つ以上は、任意選択的に、(本明細書に記載の方法によって以前に調製かつ単離された)結晶性ボキセロートルフマル酸分子複合体が適切に種晶添加され得る。
【0118】
本発明者らは、上記の結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体が、
(a)ボキセロートルとフマル酸との混合物を提供する工程と、
(b)押出機を通して混合物を供給して、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体を形成する工程と、を含むプロセスによって調製されてもよいことを想定している。
【0119】
混合物は、ボキセロートルとフマル酸とのブレンドである。混合物は、例えば、ボキセロートルとフマル酸とを、任意の好適な手段によって、例えば、管状ブレンダーを使用することによって、好適な期間、例えば、約30分間混合することによって、調製することができる。ボキセロートルとフマル酸との均質ブレンドを調製することが望ましいが、必須ではない。
【0120】
フマル酸は、ボキセロートルに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、フマル酸は、化学量論的量で存在する。フマル酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのフマル酸、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのフマル酸の範囲であり得る。一実施形態では、フマル酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのフマル酸であり得る。
【0121】
分子複合体は、混合物を調製する際には形成されない。ボキセロートル及びフマル酸は共結晶化して、押出機を通して混合物を供給する際に分子複合体を形成する。
【0122】
押出機は、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物について上述した通りである。溶媒は、供給セクション及び/又は加熱セクションで利用され得る。
【0123】
混合物は、任意の好適な速度で供給セクションに供給され得る。例えば、供給セクションの速度は、約1rpm~約100rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約5rpm~約80rpmであり得る。
【0124】
ある特定の実施形態では、混合物が供給セクションに供給されるとき、溶媒が混合物に添加される。代替的に又は追加的に、溶媒は、混合物が加熱セクションを横断する際に、加熱セクションの1つ以上のゾーン(例えば、1、2、3、4、又は5つのゾーン)に1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)添加されてもよい。これは、材料が加熱セクションを通って移動する際に、混合物の乾燥を防止するのに有利であり得る。
【0125】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤する」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。
【0126】
加熱セクションは、その長さにわたって単一の温度まで加熱されてもよく、又は、それぞれが他のゾーンとは独立して加熱されてもよい、2つ以上の(例えば、2、3、4、又は5つの)ゾーンに分割されてもよい。加熱セクションを出る際、ボキセロートル及びフマル酸が共結晶化されて分子複合体を形成し、ボキセロートル、フマル酸、及び/又は分子複合体のいずれも実質的に劣化しない又は実質的に分解されない限りにおいて、加熱セクション又は各ゾーンの温度は特に制限されない。
【0127】
押出機がスクリューを含む場合、スクリュー(単数又は複数)及び加熱セクションは一致してもよく、すなわち、スクリュー(単数又は複数)も加熱セクションであってもよい。
【0128】
スクリュー(単数又は複数)が回転する速度は、任意の好適な速度であり得る。例えば、スクリュー(単数又は複数)の速度は、約1rpm~約500rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約5rpm~約400rpm、例えば、約10rpm~約100rpmであり得る。
【0129】
ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、結晶生成物を単に採集することによって回収され得る。所望であれば、溶媒(存在する場合)のある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0130】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0131】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0132】
別の態様では、本発明は、治療有効量の本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体を患者に投与することを含む、患者における酸素欠乏症に関連する病状を治療するための方法に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0133】
別の態様では、本発明は、酸素欠乏症に関連する病状の治療に使用するための、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0134】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体
ボキセロートルは、明確で一貫して再現可能なコハク酸分子複合体で調製することができることが発見されている。更に、この分子複合体を生成するための信頼性が高い大規模に実現可能な方法が開発されている。本発明によって提供されるボキセロートル分子複合体は、医薬製剤における活性成分として有用であり得る。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は精製可能である。ある特定の実施形態では、時間、温度及び湿度に応じて、結晶性分子複合体は安定である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体は単離及び取り扱いが容易である。ある特定の実施形態では、結晶性分子複合体を調製するプロセスは、大規模に実現可能である。
【0135】
本明細書に記載の結晶性分子複合体は、単結晶X線回折、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、赤外分光法、ラマン分光法、核磁気共鳴(NMR)分光法(溶液及び固体NMRを含む)が含まれる当業者に既知の多数の方法を使用して特性評価され得る。化学純度は、薄層クロマトグラフィ(TLC)、ガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、及び質量分析(MS)などの標準的な分析方法によって決定することができる。
【0136】
別の態様では、本発明は、ボキセロートルとコハク酸との結晶性分子複合体を提供する。一実施形態では、結晶性分子複合体は、ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体、例えば、ボキセロートルヘミコハク酸共結晶である。
【0137】
コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのコハク酸、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのコハク酸の範囲であり得る。一実施形態では、コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのコハク酸であり得る。
【0138】
ヘミコハク酸分子複合体は、約8.2、10.8、11.5、11.9、15.2、15.5、16.3、17.6、18.2、18.6、20.0、20.2、20.7、21.3、21.8、22.3、23.1、23.9、24.4、24.8、25.2、27.4、27.9、及び29.9°2θ±0.2°2θからなる群から選択される1つ以上のピーク(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10ピーク)を含むX線粉末回折パターンを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図5に示すようなX線粉末回折パターンを有し得る。
【0139】
ヘミコハク酸分子複合体は、約112.6℃の開始温度を有する吸熱事象を含むDSCサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図6に示すようなDSCサーモグラムを有し得る。
【0140】
ヘミコハク酸分子複合体は、約周囲温度から約150℃に加熱されたときに実質的に質量損失を含まないTGAサーモグラムを有し得る。一実施形態では、分子複合体は、実質的に図6に示すようなTGAサーモグラムを有し得る。
【0141】
ヘミコハク酸分子複合体の熱分析は、TGAによって固体の溶融直後にコハク酸の損失がないことを示す。これは、分子複合体の溶融(約112.6℃でのDSC事象)と試料分解(TGAによる約170℃)との間に温度ウィンドウが存在し、液体を冷却して、分子複合体を再形成することができることを示す。これは、熱的方法(ホットメルト押出など)を使用して分子複合体を生成することができることを示す。
【0142】
形成された結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、他の多形形態のボキセロートルを含まないか、又は実質的に含まなくてもよい。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧90%、≧91%、≧92%、≧93%、≧94%、≧95%、又はそれ以上である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧95%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧96%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧97%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧98%である。ある特定の実施形態では、分子複合体の多形純度は、≧99%である。
【0143】
上記のボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、低エネルギーボールミリング又は低エネルギー粉砕を使用して、ボキセロートル及びコハク酸を反応させることを含むプロセスによって調製され得る。
【0144】
コハク酸は、所望の分子複合体を形成するのに十分な量で存在する。コハク酸に対するボキセロートルのw/w比は、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.75mgのコハク酸の範囲、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.5mgのコハク酸、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.2mgのコハク酸であり得る。
【0145】
低エネルギーボールミリングが利用されるとき、ミリングプロセスは、ミリングが行われる速度、ミリング時間の長さ、及び/又はミリング容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0146】
ミリングが行われる速度は、約50rmp~約1000rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約75rpm~約750rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は、約80rpm~約650rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約500rpmであってもよい。
【0147】
低エネルギー粉砕は、粉砕容器内で材料を振盪することを伴う。粉砕は、容器内の材料の衝撃及び摩擦を介して生じる。このプロセスは、粉砕が行われる速度、粉砕時間の長さ、及び/又は容器が充填されるレベルを含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0148】
粉砕が行われる周波数は、約1Hz~約100Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は、約10Hz~約70Hzであってもよい。別の実施形態では、周波数は、約20Hz~約50Hzであってもよい。一実施形態では、周波数は約30Hzであってもよい。
【0149】
ミリング又は粉砕が使用されるかどうかに関係なく、ミリング媒体又は粉砕媒体を使用して反応を支援してもよい。この場合、硬質で非汚染性の媒体の組み込みは、例えば、製造プロセスの結果、又は輸送中に凝集が生じた粒子の破壊を更に支援することができる。このような凝集体の破壊は、ボキセロートルとコハク酸との反応を更に促進する。ミリング/粉砕媒体の使用は、粉末加工の分野内で周知であり、安定化ジルコニア及び他のセラミックなどの材料が、十分に硬質であるか、又はボールベアリング、例えばステンレスボールベアリングである場合に適している。
【0150】
ミリング又は粉砕が使用されるかどうかにかかわらず、プロセスの改善は、当業者によく知られているように、粒子比、ミリング/粉砕媒体のサイズ、及び他のパラメータを制御することによって行うことができる。
【0151】
ミリング又は粉砕時間の長さは、約1分~約2日、例えば、約2分~約5時間、例えば、約20分~3時間、例えば、約2時間であってもよい。
【0152】
ミリング又は粉砕時間の長さは、連続した時間又は合計した時間であってもよい。「連続した」及び「合計した」は、以下に定義される。
【0153】
ボキセロートル及びコハク酸は、周囲温度以下で接触させてもよい。あるいは、ボキセロートルは、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度でコハク酸と接触させてもよい。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。
【0154】
プロセスは、メタノールなどの溶媒の存在下で実行され得る。溶媒は、粒子融着を最小限に抑えるように作用し得る。溶媒の添加は、使用前にボキセロートル及び/又はコハク酸が凝集した場合に特に有用であり得、この場合、溶媒は、凝集体を破壊するのを補助することができる。
【0155】
溶媒の量は、ボキセロートル及び/又はコハク酸を溶解するか、懸濁するか、又は湿らせるのに十分な溶媒が存在する限りにおいて、特に限定されない。溶媒に対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約0.01~約1.5μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.05~約1.0μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.1~約0.75μLの溶媒、例えば、約1mgのボキセロートル:約0.5μLの溶媒の範囲であり得る。溶媒は、1つの部分又はそれを超える部分(例えば、2、3、4、又は5つの部分)で添加されてもよい。
【0156】
ボキセロートル及びコハク酸は、周囲温度以下で溶媒と接触させてもよい。あるいは、ボキセロートルは、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度で溶媒と接触させることができる。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。
【0157】
ミリング及び粉砕時間が合計した期間で適用されるとき、溶媒の有無は、各期間にわたって変更され得る。例えば、プロセスは、環境が乾燥している第1の期間(すなわち、ボキセロートル及びコハク酸が、任意選択的に溶媒の非存在下でミリング媒体と一緒に反応させられる)と、溶媒の添加後に環境を湿らせる(すなわち「湿潤する」)第2の期間と、を含んでもよい。
【0158】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。あるいは、溶媒のある割合を、結晶性固体を回収する前に蒸発させてもよい。
【0159】
あるいは、ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、二重非対称遠心力をボキセロートルとコハク酸との混合物に適用して溶媒和物を形成する工程を含むプロセスによって調製されてもよい。
【0160】
コハク酸は、所望の分子複合体を形成するのに十分な量で存在する。コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのコハク酸、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのコハク酸の範囲であり得る。一実施形態では、コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのコハク酸であり得る。
【0161】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、二重非対称遠心力を使用して形成される。「二重非対称遠心力」とは、2つの遠心力が互いにある角度で粒子に同時に印加されることを意味する。効率的な混合環境を作り出すために、遠心力は、好ましくは反対方向に回転する。HauschildによるSpeedmixer(商標)(http://www.speedmixer.co.uk/index.php)は、この二重回転法を利用し、それにより、Speedmixer(商標)のモータが混合ユニットのベースプレートを時計回り方向に回転させ(図7Aを参照)、バスケットを反時計回り方向に回転させる(図7B及び図7Cを参照)。
【0162】
プロセスは、プロセスが行われる回転速度、処理時間の長さ、混合容器が充填されるレベル、粉砕媒体の使用、及び/又はミリングポット内の構成要素の温度の制御を含む様々なパラメータによって制御され得る。
【0163】
二重非対称遠心力は、連続した期間にわたって適用されてもよい。「連続した」とは、中断されない期間を意味する。期間は、約1秒~約10分、例えば約5秒~約5分、例えば約10秒~約200秒、例えば2分であってよい。
【0164】
あるいは、二重非対称遠心力は、合計した期間にわたって適用されてもよい。「合計した」とは、2つ以上の期間(例えば、2、3、4、5又はそれ以上の時間)の総計又は合計を意味する。遠心力を段階的に適用する利点は、粒子の過剰な加熱を回避することができることである。二重非対称遠心力は、約1秒~約20分、例えば、約30秒~約15分、及び約10秒~約10分、例えば、6分の合計期間にわたって適用されてもよい。一実施形態では、二重非対称遠心力は、それらの間の冷却期間と共に段階的に適用される。別の実施形態では、二重非対称遠心力は、1つ以上の異なる速度で段階的に適用されてもよい。
【0165】
二重非対称遠心力の速度は、約200rpm~約4000rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約300rpm~約3750rpm、例えば、約500rpm~約3500rpmであってもよい。一実施形態では、速度は、約3500rpmであってもよい。別の実施形態では、速度は、約2300rpmであってもよい。
【0166】
混合容器が充填されるレベルは、当業者には明らかとなる様々な要因によって決定される。これらの要因としては、ボキセロートル及びコハク酸の見かけ密度、混合容器の容積、及びミキサー自体に課される重量制限が挙げられる。
【0167】
上記のミリング媒体を使用して、反応を支援することができる。ある特定の実施形態では、二重非対称遠心力は、ミリング媒体が全ての期間ではなく一部の期間に使用され得る段階的な方法で適用されてもよい。
【0168】
プロセスは、メタノール又はTBMEなどの溶媒の存在下で実行され得る。溶媒は、粒子接合を最小限に抑えるように作用し得る。溶媒の添加は、使用前に反応中のボキセロートル及び/又はコハク酸が凝集した場合に特に有用であり得、この場合、溶媒は、凝集体を破壊するのを補助することができる。
【0169】
二重非対称遠心力が合計した期間、適用されるとき、溶媒の有無は、各期間にわたって変更され得る。例えば、プロセスは、環境が乾燥している第1の期間(すなわち、ボキセロートル及びコハク酸が、任意に溶媒の非存在下でミリング媒体と一緒に反応させられる)と、溶媒の添加後に環境を湿らせる(すなわち「湿潤する」)第2の期間と、を含んでもよい。
【0170】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。所望であれば、溶媒(存在する場合)のある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0171】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0172】
上記の結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、
(a)ボキセロートル及びコハク酸を、tert-ブチルメチルエーテル(TMBE)である溶媒と接触させる工程と、
(b)結晶性固体としてボキセロートルヘミコハク酸分子複合体を回収する工程と、を含むプロセスによって調製されてもよい。
【0173】
コハク酸は、固体として、又は溶媒(例えば、メタノール及び/又はTBME)中の溶液として利用され得る。
【0174】
一実施形態では、工程(a)は、
(a1)ボキセロートルを、tert-ブチルメチルエーテル(TMBE)である溶媒と接触させる工程と、(a2)コハク酸をボキセロートルの溶液又は懸濁液に添加する工程と、を含んでもよい。
【0175】
別の実施形態では、工程(a)は、
(a1’)ボキセロートルとコハク酸との固体混合物を、tert-ブチルメチルエーテル(TMBE)である溶媒と接触させて、溶液又は懸濁液を形成する工程を含んでもよい。
【0176】
TBME溶媒の量は、(a)ボキセロートルを溶解し、溶液を形成するか、若しくはボキセロートルを懸濁する、かつ/又は、(b)コハク酸を溶解し、溶液を形成するか、若しくはコハク酸を懸濁するのに十分な溶媒が存在する限りにおいて、特に限定されない。TBMEに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約1~約1000μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約500μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約150μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約10μLのTBMEの範囲であり得る。一実施形態では、TBMEに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約5μLのTBMEであり得る。
【0177】
ボキセロートルは、周囲温度以下で溶媒と接触させてもよい。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~約≦25℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約1℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約2℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約3℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約4℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約5℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約20℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約15℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約10℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約0℃~≦約10℃の範囲の1つ以上の温度、例えば、約5℃で実施される。一実施形態では、接触工程は、周囲温度、例えば、約25℃で実施され得る。
【0178】
あるいは、ボキセロートルは、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い温度でTBMEと接触させることができる。反応混合物の沸点は、接触工程が行われる圧力に応じて変化し得る。一実施形態では、接触工程は、大気圧(すなわち、1.0135×10Pa)で行われる。一実施形態では、接触工程は、≧約40℃~約≦60℃の範囲の1つ以上の温度で実施され得る。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約41℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約42℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約43℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約44℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約45℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約46℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約47℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約48℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約49℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≧約50℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約59℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約58℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約57℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約56℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約55℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約54℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約53℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約52℃の1つ以上の温度で実施される。いくつかの実施形態では、接触工程は、≦約51℃の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、≧約45℃~≦約55℃の範囲の1つ以上の温度で実施される。一実施形態では、接触工程は、約50℃の温度で実施される。
【0179】
ボキセロートルの溶解又は懸濁は、撹拌、振盪、及び/又は超音波処理などの補助の使用を通して促進され得る。ボキセロートルの溶解又は懸濁を補助するために、追加の溶媒が添加され得る。
【0180】
ボキセロートルとTBMEとの混合物が所望の温度で処理される期間は、特に限定されない。一実施形態では、期間は、約1分~約24時間、例えば、約2時間であり得る。
【0181】
コハク酸が固体として反応に投入される場合、TBMEに対するコハク酸のw/v比は、約1mgのコハク酸:約1~約1000μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約500μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約150μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約35μLのTBMEの範囲であり得る。一実施形態では、TBMEに対するコハク酸のw/v比は、約1mgのコハク酸:約29μLの溶媒であり得る。
【0182】
コハク酸は、メタノール及び/又はTBME中の溶液として反応に投入され得る。この場合、TBMEに対するコハク酸のw/v比は、約1mgのコハク酸:約1~約1000μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約500μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約150μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約25μLのTBMEの範囲であり得る。この場合、コハク酸の溶液は、ボキセロートルの溶液/懸濁液に添加され得る。
【0183】
ボキセロートル及びコハク酸の固体混合物をMTBEと接触させる場合、TBMEに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約1~約1000μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約500μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約150μLのTBME、例えば、約1mgのボキセロートル:約1~約10μLのTBMEの範囲であり得る。一実施形態では、TBMEに対するボキセロートルのw/v比は、約1mgのボキセロートル:約5μLのTBMEであり得る。この場合、TBMEに対するコハク酸のw/v比は、約1mgのコハク酸:約1~約1000μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約500μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約150μLのTBME、例えば、約1mgのコハク酸:約1~約35μLのTBMEの範囲であり得る。一実施形態では、TBMEに対するコハク酸のw/v比は、約1mgのコハク酸:約29μLの溶媒であり得る。
【0184】
ボキセロートル、コハク酸、及び溶媒の混合物が所望の温度で処理される期間は、特に限定されない。一実施形態では、期間は、約1分~約24時間、例えば、約1時間であり得る。
【0185】
ボキセロートル、コハク酸、及び溶媒を組み合わせた後、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように周囲温度以下で、ある期間にわたり処理され得る。
【0186】
あるいは、反応混合物は、第1の溶媒と関連して上記のように、周囲よりも高い、すなわち、30℃よりも高く、反応混合物の沸点よりも低い1つ以上の温度で、ある期間にわたり処理され得る。
【0187】
反応混合物は、更なる期間、例えば、約1分~約24時間、例えば、約2時間放置され得る。
【0188】
次いで、溶液又は懸濁液は、得られた溶液又は懸濁液が工程(a)、(a2)、又は(a1’)の溶液又は懸濁液の温度を下回る温度を有するように冷却され得る。冷却速度は、約0.05℃/分~約2℃/分、例えば、約0.1℃/分~約1.5℃/分、例えば、約0.1℃/分又は0.5℃/分であり得る。懸濁液は、最終的に、反応混合物の溶液を冷却すると観察され得る。
【0189】
溶液又は懸濁液は、周囲温度又は周囲温度未満の温度に冷却され得る。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約0℃~≦約20℃の範囲の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約1℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約2℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約3℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約4℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≧約5℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約15℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約14℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約13℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約12℃の1つ以上の温度に冷却される。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約11℃の1つ以上の温度に冷却され得る。いくつかの実施形態では、溶液又は懸濁液は、≦約10℃の1つ以上の温度に冷却される。一実施形態では、溶液又は懸濁液は、約5℃~約10℃の範囲の1つ以上の温度、例えば、約5℃に冷却される。
【0190】
反応混合物は、更なる期間、例えば、所望の温度で約1分~約10日間放置され得る。
【0191】
工程(b)では、ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、濾過、デカント、又は遠心分離によって直接回収され得る。必要に応じて、懸濁液は、結晶性固体の回収前に溶媒(例えば、TBME)の追加部分で流動化され得る。あるいは、結晶性固体を回収する前に、ある割合の又は実質的に全ての溶媒を蒸発させることができる。
【0192】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を、溶媒(例えば、TBME)で洗浄し、乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行してもよい。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0193】
工程(a)→(b)、(a1)→(a2)→(b)、及び(a1’)→(b)は、1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)実施され得る。工程(a)→(b)、(a1)→(a2)→(b)、及び(a1’)→(b)が、1回以上(例えば、2、3、4又は5回)実行される場合、工程のうちの1つ以上は、任意選択的に、(本明細書に記載の方法によって以前に調製かつ単離された)結晶性ボキセロートルコハク酸分子複合体が適切に種晶添加され得る。
【0194】
本発明者らは、上記の結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体が、
(a)ボキセロートルとコハク酸との混合物を提供する工程と、
(b)押出機を通して混合物を供給して、ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体を形成する工程と、を含む、プロセスによって調製されてもよいことを想定している。
【0195】
混合物は、ボキセロートルとコハク酸とのブレンドである。混合物は、例えば、ボキセロートルとコハク酸とを、任意の好適な手段によって、例えば、管状ブレンダーを使用することによって、好適な期間、例えば、約30分間混合することによって、調製することができる。ボキセロートルとコハク酸との均質ブレンドを調製することが望ましいが、必須ではない。
【0196】
コハク酸は、ボキセロートルに対して化学量論的に又は過剰なモル当量で存在してもよい。一実施形態では、コハク酸は、化学量論的量で存在する。コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.3~約1モルのコハク酸、例えば、約1モルのボキセロートル:約0.4~約0.7モルのコハク酸の範囲であり得る。一実施形態では、コハク酸に対するボキセロートルのモル比は、約1モルのボキセロートル:約0.5モルのコハク酸であり得る。
【0197】
分子複合体は、混合物を調製する際には形成されない。ボキセロートル及びフマル酸は共結晶化して、押出機を通して混合物を供給する際に分子複合体を形成する。
【0198】
押出機は、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物について上述した通りである。溶媒は、供給セクション及び/又は加熱セクションで利用され得る。
【0199】
混合物は、任意の好適な速度で供給セクションに供給され得る。例えば、供給セクションの速度は、約1rpm~約100rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約5rpm~約80rpmであり得る。
【0200】
ある特定の実施形態では、混合物が供給セクションに供給されるとき、溶媒が混合物に添加される。代替的に又は追加的に、溶媒は、混合物が加熱セクションを横断する際に、加熱セクションの1つ以上のゾーン(例えば、1、2、3、4、又は5つのゾーン)に1回以上(例えば、1、2、3、4、又は5回)添加されてもよい。これは、材料が加熱セクションを通って移動する際に、混合物の乾燥を防止するのに有利であり得る。
【0201】
添加される溶媒の量は、混合物を湿らせる(すなわち、「湿潤する」)ために十分な溶媒が添加される限りにおいて特に制限されないが、混合物が液状になり過ぎるほどに多い量ではない。押出機が二軸押出機である場合、添加される全溶媒に対する全固形分(ボキセロートル及びコハク酸)のw/v比は、約1gの全固形分:約0.1~約2mLの添加される全溶媒、例えば、約1gの全固形分:約0.5mL~約1.5mLの全溶媒、例えば、約1gの全固形分:約0.75mL~約1.25mLの全溶媒の範囲であってもよい。一実施形態では、全溶媒に対する全固形分(ボキセロートル及びコハク酸)のw/v比は、約1gの全固形分:約1mLの全溶媒である。
【0202】
加熱セクションは、その長さにわたって単一の温度まで加熱されてもよく、又は、それぞれが他のゾーンとは独立して加熱されてもよい、2つ以上の(例えば、2、3、4、又は5つの)ゾーンに分割されてもよい。加熱セクションを出る際、ボキセロートル及びコハク酸が共結晶化されて分子複合体を形成し、ボキセロートル、コハク酸、及び/又は分子複合体のいずれも実質的に劣化しない又は実質的に分解されない限りにおいて、加熱セクション又は各ゾーンの温度は特に制限されない。
【0203】
押出機がスクリューを含む場合、スクリュー(単数又は複数)及び加熱セクションは一致してもよく、すなわち、スクリュー(単数又は複数)も加熱セクションであってもよい。
【0204】
スクリュー(単数又は複数)が回転する速度は、任意の好適な速度であり得る。例えば、スクリュー(単数又は複数)の速度は、約1rpm~約500rpmであり得る。一実施形態では、速度は、約5rpm~約400rpm、例えば、約10rpm~約100rpmであり得る。
【0205】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体は、結晶性固体として回収される。結晶性分子複合体は、結晶生成物を単に採集することによって回収され得る。所望であれば、溶媒(存在する場合)のある割合を、結晶性固体の回収前に蒸発させてもよい。
【0206】
どのようにして結晶性分子複合体が回収された場合でも、分離した分子複合体を乾燥させてよい。乾燥は、既知の方法を使用して、例えば、約10℃~約60℃の範囲の温度で、例えば、約20℃~約40℃で、例えば、周囲温度で、真空下(例えば、約1mbar~約30mbar)で約1時間~約24時間、実行することができる。あるいは、結晶性分子複合体は、自然に、すなわち真空の積極的な適用なしに、周囲温度下で乾燥させてもよい。乾燥条件は、分子複合体が劣化する点よりも低く維持されることが好ましく、したがって分子複合体が上記の温度範囲又は圧力範囲内で劣化することが知られているとき、乾燥条件は、劣化温度又は真空度よりも低く維持されるべきである。
【0207】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体と、医薬的に許容される賦形剤と、を含む医薬組成物に関する。
【0208】
別の態様では、本発明は、患者における酸素欠乏症に関連する病状を治療するための、治療有効量の本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体を患者に投与することを含む方法に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0209】
別の態様では、本発明は、酸素欠乏症に関連する病状の治療に使用するための、本明細書に記載の結晶性ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体に関する。酸素欠乏症に関連する病状は、鎌状赤血球症であり得る。
【0210】
本発明の実施形態及び/又は任意選択的特徴は、上記で説明されている。本発明のいずれの態様も、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの他の態様とも組み合わせることができる。いずれの態様の実施形態又は任意選択的特徴のいずれも、文脈による別途の要求がない限り、本発明のいずれの態様とも、単一又は組み合わせで、組み合わせることができる。
【0211】
以下の実施例を参照して、本発明を更に説明し、実施例は例示することを意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0212】
1 測定器及び方法の詳細
1.1 X線粉末回折(XRPD)
XRPDディフラクトグラムを、Cu Kα放射線(40kV、40mA)及びGeモノクロメータを取り付けたθ-2θゴニオメータを使用して、Bruker D8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリット、続いて0.2mmの散乱防止スリット及びナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°ソーラスリットを備えた8.0mm受光スリットを通過し、続いて、Lynxeye検出器を通過する。データ収集及び分析に使用されるソフトウェアは、それぞれ、Diffrac Plus XRD Commander及びDiffrac Plus EVAであった。
【0213】
試料は、受け取ったままの粉末を使用して、フラットプレート試験片として、周囲条件で実施した。試料を、平坦な表面上に穏やかに押圧することによって、又は切断された空洞内に充填することによって、研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェハ上で調製した。試料を、それ自体の面内で回転させた。
【0214】
標準的なデータ収集方法の詳細は以下の通りである。
・ 角度範囲:2~42°2θ
・ ステップサイズ:0.05°2θ
・ 収集時間:0.5秒/ステップ(総収集時間:6.40分)
【0215】
1.2 示差走査熱量測定(DSC)
DSCデータを、50位置オートサンプラを装備したTA Instruments Q2000上で収集した。
典型的には、ピンホールアルミニウムパン中で0.5~3mgの各試料を、25℃~250℃に10℃/分で加熱した。50mL/分で乾燥窒素のパージを、試料上に維持した。
【0216】
変調温度DSCは、2℃/分の基礎加熱速度及び60秒(周期)毎に±0.636℃(振幅)の温度変調パラメータを使用して実行された。
【0217】
測定器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series及びThermal Advantageであり、データは、Universal Analysis又はTRIOSを使用して分析した。
【0218】
1.3 熱重量分析(TGA)
1.3.1 TA Instruments Q500
16位置オートサンプラを装備したTA Instruments Q500 TGAでTGAデータを収集した。典型的には、各試料5~10mgを、予め風袋引きしたアルミニウムDSCパンに載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。60mL/分での窒素のパージを、試料上に維持した。
【0219】
機器制御ソフトウェアは、Advantage for Q Series及びThermal Advantageであり、データは、Universal Analysis又はTRIOSを使用して分析した。
【0220】
1.3.2 TA Instruments Discovery TGA
25位置オートサンプラを装備したTA Instruments Discovery TGA上でTGAデータを収集した。典型的には、各試料5~10mgを予め風袋引きしたアルミニウムDSCパンに載せ、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。25mL/分での窒素のパージを、試料上に維持した。
【0221】
測定器制御ソフトウェアは、TRIOSであり、データは、TRIOS又はUniversal Analysisを使用して分析した。
【0222】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物
実施例1
ボキセロートル(29mg)をHPLCバイアルに量り入れた。固体をプロピレングリコール(15μL)で湿潤し、2つの3mmステンレス鋼粉砕ボールをバイアルに添加した。試料を、遊星ミル内で500rpmで2時間粉砕した。粉砕後、バイアルのキャップを外したまま一晩放置して乾燥させた。
【0223】
実施例2
ボキセロートル(2.00g)をTBME(8.00mL、4vol)に50℃で溶解した。プロピレングリコール(650μL、1.5当量)を溶液に添加した後、0.1℃/分で5℃に冷却した。得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0224】
実施例3
ボキセロートル(29mg)を酢酸イソプロピル(150μL、5vol)に50℃で溶解した。プロピレングリコール(0.5当量、12μL)を得られた溶液に添加し、これを0.1℃/分で5℃に冷却した。得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0225】
実施例4
ボキセロートル(29mg)をジエチルエーテル(150μL、5vol)に50℃で溶解した。プロピレングリコール(0.5当量、12μL)を得られた溶液に添加し、これを0.1℃/分で5℃に冷却した。得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0226】
実施例5
ボキセロートル(29mg)を2-メチルTHF(150μL、5vol)に50℃で溶解した。プロピレングリコール(0.5当量、12μL)を得られた溶液に添加し、これを0.1℃/分で5℃に冷却した。得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0227】
実施例6
ボキセロートル(5.0g)をTBME(20.0mL、4vol)に溶解し、50℃に加熱した。プロピレングリコール(0.6当量、650μL)を得られた溶液に添加し、これを45℃に冷却し、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物(実施例2)を種晶添加した後、0.5℃/分で5℃に冷却した。15℃で、ヘプタン(20mL)を懸濁液に添加した。5℃に冷却した後、得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。単離した固体を室温で1時間、真空下で乾燥させた。
【0228】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物の特性評価
図1は、ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物の代表的なXRPDパターンを示す。以下の表は、溶媒和物のXRPDピークリストを提供する。
【0229】
【表1】
【0230】
ボキセロートルヘミプロピレングリコール溶媒和物も、TGA及びDSC分析によって特性評価された(図2を参照)。
【0231】
ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体
実施例7
ボキセロートル(300mg)を、メタノール(1.5mL、5vol)に50℃で溶解した。加温ボキセロートル溶液(250μL、約50mg)の一部を、固体フマル酸(18mg、1当量)を含有するバイアルに添加し、50℃で1時間撹拌した後、0.1℃/分で5℃に冷却した。冷却後、得られた懸濁液を5℃で7日間保持した後、濾過して吸引下で乾燥させた。
【0232】
実施例8
ボキセロートル(1.00g)とフマル酸(173mg、0.5当量)との固体混合物を、メタノール(2.5mL、2.5vol)に50℃で溶解した。得られた溶液を50℃で1時間撹拌した後、0.1℃/分で5℃に冷却した。得られた粘稠懸濁液を濾紙上に移して乾燥させた。
【0233】
実施例9
ボキセロートル(1.00g)をTBME(4.00mL、4vol)に50℃で溶解した。フマル酸(0.6当量、4mLのメタノール中210mg)を溶液に添加し、これを20℃に冷却し、次いで、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体(実施例8)を種晶添加した。試料を0.1℃/分で5℃まで更に冷却した。得られた懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0234】
実施例10
ボキセロートル(5.00g)とフマル酸(0.6当量、1035mg)との固体混合物をメタノール(12.5mL、2.5vol)に溶解し、50℃に加熱した。得られた溶液を45℃に冷却し、次いで、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体(実施例8)を種晶添加した後、0.5℃/分で5℃に冷却した。5℃で、得られた粘稠懸濁液をTBME(5mL)で処理して、固体を流動化させた。5℃で更に2時間後、懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。単離した固体を室温で1時間、真空下で乾燥させた。
【0235】
ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体の特性評価
図3は、ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体の代表的なXRPDパターンを示す。以下の表は、分子複合体のXRPDピークリストを提供する。
【0236】
【表2】
【0237】
ボキセロートルヘミフマル酸分子複合体はまた、TGA及びDSC分析によっても特性評価された(図4参照)。
【0238】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体
実施例11
ボキセロートル(30mg)及び0.5当量のコハク酸(6.1mg)をHPLCバイアルに量り入れた。固体をメタノール(15μL、0.5vol)で湿潤し、2つの3mmステンレス鋼粉砕ボールをバイアルに添加した。試料を、遊星ミル内で500rpmで2時間粉砕した。粉砕後、バイアルのキャップを外したままにして、XRPDによる分析前に固体を乾燥させた。
【0239】
実施例12
ボキセロートル(1.00g)及び0.5当量のコハク酸(175mg)を、7mmのステンレス鋼粉砕ボールを備えた10mLのステンレス鋼粉砕槽に量り入れた。固体混合物をレッチミル内で30Hzで2分間粉砕して、固体を均質化した後、メタノール(500μL、0.5vol)で湿潤させた。試料を30Hzで30分間、4回更に粉砕した(合計時間120分)。
【0240】
実施例13
ボキセロートル(5.00g)とコハク酸(0.5当量、875mg)との固体混合物をTBME(25.0mL、5vol)に懸濁し、50℃に加熱した。得られた懸濁液を50℃で2時間撹拌した後、懸濁液を0.5℃/分で5℃に冷却した。5℃で、懸濁液を濾過し、吸引下で乾燥させた。
【0241】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体の特性評価
図5は、ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体の代表的なXRPDパターンを示す。以下の表は、分子複合体のXRPDピークリストを提供する。
【0242】
【表3】
【0243】
ボキセロートルヘミコハク酸分子複合体はまた、TGA及びDSC分析によっても特性評価された(図6を参照)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】