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特表2023-520622マカウバ果実の種子由来のタンパク質成分及び油性製剤、並びにその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】マカウバ果実の種子由来のタンパク質成分及び油性製剤、並びにその調製方法
(51)【国際特許分類】
   A23J 3/14 20060101AFI20230511BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230511BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20230511BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20230511BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   A23G 9/38 20060101ALI20230511BHJP
   A23D 9/02 20060101ALI20230511BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230511BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
A23J3/14
A23L33/105
A23L27/60 A
A21D2/26
A23J3/00 502
A23G9/38
A23D9/02
A23L5/00 M
A23K10/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549248
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2021053612
(87)【国際公開番号】W WO2021160877
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】102020103909.3
(32)【優先日】2020-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(71)【出願人】
【識別番号】522323465
【氏名又は名称】インスティトゥート デ テクノロジア デ アリメントス (アイティエーエル)
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ミッターマイヤー ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】ムレイニー イサベル
(72)【発明者】
【氏名】ドゥアー ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】トリード イー シルヴァ セルジオ エンリケ
(72)【発明者】
【氏名】アパレシーダ フェラーリ ロゼリ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ モレイラ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】バッタリア ダ シルヴァ リディアネ
(72)【発明者】
【氏名】コロンボ カルロス
【テーマコード(参考)】
2B150
4B014
4B018
4B026
4B032
4B035
4B047
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150BC06
2B150CE15
2B150CJ07
4B014GB18
4B014GG13
4B018LB10
4B018MD15
4B018MD20
4B018MD48
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF07
4B018MF14
4B026DG01
4B026DL04
4B026DL05
4B026DP10
4B032DB06
4B032DK21
4B032DK29
4B035LC06
4B035LG15
4B035LG31
4B035LP59
4B047LG18
4B047LG37
4B047LG66
(57)【要約】
本発明は、マカウバ果実の種子由来のタンパク質成分及び油性製剤、並びにその調製方法に関する。タンパク質製剤は、15重量%超、好ましくは30重量%超のタンパク質含有量と、60重量%未満、好ましくは25重量%未満の脂肪含有量とを有する。明色及び良好な技術的機能性を備えたタンパク質成分を製造することができる。タンパク質成分は、魅力的な官能特性を備えているため、食品、ペットフードにおける幅広い用途において、また化粧品においても使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マカウバ果実の種子から製造され、
15重量%超、有利には30重量%超のタンパク質含有量と、
60重量%未満、有利には25重量%未満の脂肪含有量と、
を有する、タンパク質成分。
【請求項2】
計量された量で分配することができ、2000μm未満、有利には500μm未満のD90体積粒径を有する粉末、粒子若しくは粉の形態であるか、又は2000μm未満、有利には500μm未満の厚さを有するフレークの形態である、請求項1に記載のタンパク質成分。
【請求項3】
計量された量で分配することができ、250μm未満、有利には100μm未満のD90体積粒径を有する粉末、粒子若しくは粉の形態、又は350μm未満の厚さを有するフレークの形態である、請求項1に記載のタンパク質成分。
【請求項4】
CIE-L測色法に従って求めたL値が50超、有利には70超の明色を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項5】
CIE-L測色法に従って求めたL値が80超、有利には90超の明色を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項6】
以下の特性:
濁度の測定により算出した乳化活性指数が30m/gタンパク質成分を超え、有利には50m/gタンパク質成分を超えること、
pH7.0及び0.1mol/l NaClでのタンパク質溶解度が10%超、有利には15%超であること、
水結合が1ml/g超、有利には2.0ml/gタンパク質成分を超えること、
ここで、該水結合は、過剰水の添加、遠心分離及び該過剰水のデカント後にタンパク質成分中に残留するタンパク質成分1グラム当たりの水の量を示す;
油結合が1.0ml/g超、有利には1.5ml/gタンパク質成分を超えること、
ここで、該油結合は、過剰油の添加、遠心分離及び該過剰油のデカント後にタンパク質成分中に残留するタンパク質成分1グラム当たりの油の量を示す;、及び、
最小ゲル化濃度が10.0%未満、有利には8.0%未満であること、
のうち1つ以上を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項7】
30重量%超のタンパク質含有量を有し、かつ、CIE-L測色法に従って求めたL値が90超の明色を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項8】
35重量%超、有利には70重量%超、80重量%超又は90重量%超のタンパク質含有量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項9】
5重量%未満、有利には3重量%未満又は2重量%未満の脂肪含有量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項10】
100m/gタンパク質成分を超える乳化活性指数を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項11】
4.0ml/gタンパク質成分を超える水結合及び/又は2.0ml/gタンパク質成分を超える油結合を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項12】
6.0%未満の最小ゲル化濃度を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のタンパク質成分。
【請求項13】
マカウバ果実の種子からタンパク質成分を製造する方法であって、少なくとも以下の工程:
前記果実の仁であって、濃色外皮から分離されていないか、又は部分的若しくは完全に分離された仁を提供する工程、
残留脂肪含有量が30重量%未満、有利には25重量%未満となるまで油脂を部分的に分離するために、前記仁を機械的にプレスして、分離油脂及び残渣を得る工程、及び、
前記残渣を粉砕して、計量された量で分配することができ、2mm未満、有利には500μm未満のD90体積粒径を有する粉末、粒子若しくは粉を形成するか、又は前記残渣を2mm未満、有利には500μm未満の厚さを有するフレークにフレーク化して、直接又は任意で更に加工した後にタンパク質成分として使用可能な粉末状又はフレーク状の生成物とする工程、及び/又は、
前記残渣中の残留脂肪含有量が5重量%未満、有利には3重量%未満、特に有利には2重量%未満となるまで、1種以上の溶剤を用いて前記残渣中に残留する油脂を除去して脱脂残渣を得て、該脱脂残渣を粉砕して、計量された量で分配することができ、2mm未満、有利には500μm未満のD90体積粒径を有する粉末、粒子若しくは粉を製造するか、又は前記脱脂残渣をフレーク化して、2mm未満、有利には500μm未満の厚さを有するフレークを形成し、直接又は任意で更に加工した後にタンパク質成分として使用可能な粉末状又はフレーク状の生成物とする工程、
を含む、方法。
【請求項14】
前記仁を提供する工程が、前記マカウバ果実の外果皮、中果皮及び内果皮から前記仁を機械的に分離する工程を少なくとも含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記仁を提供する工程が、熱処理及び/又は湿潤又は乾燥を行って、前記仁の機械的分離を促進することを追加的に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記仁を機械的にプレスする工程を連続プレスで行う、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記機械的にプレスする工程を、残留脂肪含有量が20重量%未満、有利には15重量%未満になるまで行う、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記機械的にプレスする工程を、残留脂肪含有量が10重量%未満、有利には8重量%未満になるまで行う、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記残渣を粉砕する工程を行って、250μm未満、有利には100μm未満のD90体積粒径を有する粉末又は粉を得る、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記残渣を、水とアルコールとの1つ以上混合物、好ましくは水とエタノール又は水とプロパノールによって処理する、請求項13~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記粉末状又はフレーク状の残渣において褐色又は黒色外皮部分の10%超、好ましくは50%超、より好ましくは75%超、有利には90%超、特に有利には99%超の低減が達成されるように、前記機械的にプレスする工程の前に、前記仁を剥くか若しくは研磨することによって、又は胚乳の外側部分を切除することによって、前記仁に残留する濃色外皮を前記仁から部分的又は完全に分離する、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記残渣を粉砕又はフレーク化する工程の後、濃色成分の10重量%超、有利には50重量%超、特に有利には90重量%超を粉末状の生成物から分離する、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記仁から得られた前記粉末状又はフレーク状の生成物に対して、水溶性タンパク質と不溶性成分とを分離する水性抽出プロセスを行い、該プロセスにおいて、固体残渣の分離後、抽出液に溶解したタンパク質を沈殿及び/又は濾過プロセスの適用によって該抽出液から分離し、かつ、後に前記タンパク質成分を構成する沈殿したタンパク質から、上澄み液を遠心分離及び/又は濾過によって分離する、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記粉末状の生成物を、篩分けプロセス又は空気分級プロセスによって、異なるタンパク質含有量を有する少なくとも2つの画分に分離し、そのうちの1つの画分が、乾燥質量で、前記粉末状の生成物よりも25%超、好ましくは35%超、特に好ましくは50%超高いタンパク質含有量を有するタンパク質成分を形成する、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
マカウバ果実の種子から製造され、80mg/l油性製剤未満のステロール含有量を有する油性製剤。
【請求項26】
請求項1~12のいずれか一項に記載のタンパク質成分の、食品及びペットフードの成分としての使用。
【請求項27】
請求項1~12のいずれか一項に記載のタンパク質成分の、技術用途、例えば包装用の成分としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化粧品及びペットフード用のマカウバ果実の種子由来の機能性タンパク質成分、該成分を調製する方法、並びに該種子から得られる油性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
農地及び資源がますます不足するにつれて、それに応じて、人々への食料供給のための、並びにペットフード及び化粧品において使用するための植物系タンパク質成分の重要性が高まっている。高品質の食品に対する需要の高まりにより、栄養学的及び技術機能的に最適化され、簡単かつ安価に提供することができ、その製造に過剰な資源の消費を伴わないタンパク質成分の必要性が高まっている。
【0003】
安価な製剤は、例えば、植物油製造の残渣から、例えば、ヒマワリ油、アマニ油又は菜種油製造の残渣から提供することができる。しかしながら、これらのプロセスにおいて生じたプレスケーキは、色、味、組成及び匂いに関してかなり官能的欠点がある。プレスケーキは、該プレスケーキが含有するフェノール酸、グルコシノレート又はシアン化合物を含む高濃度の植物化学物質のために、栄養不足になることもある。これにより、ヒトの食品における使用が大幅に制限される。
【0004】
食用油を得るための新たな持続可能な供給源として、他の油脂植物に加えて、ほとんど知られていない果物の脂肪豊富な仁(kernels)が浮上している。この特許出願の目的のために、これらはマカウバ果実の種子である。
【0005】
マカウバ果実は、幾つかの異なる部分、すなわち、外果皮(皮)と、中果皮(果肉)と、内果皮(内殻)と、濃色薄皮(外皮)で覆われた脂肪豊富な仁(胚乳)とからなる。例えば特許文献1で開示されているように、これまで場合によっては、14.0%~30.1%のタンパク質含有量を有する胚乳からの圧搾によって油を抽出していた。この文献には、マカウバ果実の副生成物に基づいて動物飼料を製造する方法も記載されているが、食品、ペットフード又は化粧品における高品質用途でのプレスケーキの使用はこの文献には記載されていない。上述の果実の種子をプレスすることによってこれまでに得られた残渣は褐色から黒色であり、これにより、これまで食品、ペットフード又は化粧品における使用に対する魅力が制限されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ブラジル特許出願公開第102012029493号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、官能的に魅力的な機能性植物系タンパク質含有成分及び油性製剤を提供すること、並びに、簡単かつ安価なその製造方法を記載することを目的とした。この成分は、有利な形態においては、可能な限り淡色であり、油又は水との結合性等の良好な技術的機能性を有する。また、この成分は、有利には、食品において可能な限り幅広い使用を可能にする魅力的な官能特性、例えば中性的な(neutral)臭い及び味等も有する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この目的は、それぞれ請求項1、請求項13及び請求項25に記載のタンパク質成分、油性製剤及び方法によって達成される。タンパク質成分及び方法の有利な変形形態は、従属請求項の主題であるか、又は以下の説明及び実施形態から理解されるだろう。
【0009】
本発明の文脈において、仁は色が非常に濃く、黒色でさえあるにもかかわらず、マカウバ果実の仁から油を回収した残渣は、食品、ペットフード又は化粧品の製造、特に工業的製造のためのタンパク質含有及び/又は技術的機能性成分として使用することができることが分かった。この成分は、記載するその製造方法及び対応するプロセス変形形態によって維持することができる本発明による特性を有する。
【0010】
本発明の目的のために、マカウバ果実の仁は、濃色外皮(種皮)を有する胚乳であると理解される。
【0011】
マカウバ果実のタンパク質含有成分が有する本発明による特性は以下の通りである:
計量された量で食品に添加する場合に固結を回避するために、脂肪含有量は60重量%未満、好ましくは25重量%未満、有利には5重量%未満、特に3重量%未満、特に有利には2重量%未満である。特に脂肪含有量が2重量%未満であると、脂質分解による芳香活性生成物の形成が大幅に回避されるため、成分の保存安定性が良好となる。
タンパク質含有量は15重量%超、有利には30重量%超、好ましくは35重量%超及び50重量%超、特に有利には70重量%超、80重量%超又は90重量%超である。
【0012】
好ましい変形形態においては、タンパク質成分は、良好な技術的機能性、特に以下の特性:
(濁度の測定により算出される)乳化活性指数が30m/g成分を超え、有利には50m/g成分を超え、特に有利には100m/g成分を超えること、
pH7.0及び0.1mol/l NaClでのタンパク質溶解度が10%超、有利には15%、好ましくは20%超であること、
pH7.0及び0.5mol/l NaClでのタンパク質溶解度が30%超、有利には40%超、特に有利には50%超、好ましくは60%超であること、
水結合(過剰水の添加、遠心分離及び該過剰水のデカント後に成分中に残留する水)が1ml/g成分を超え、有利には2.0ml/g成分を超え、特に有利には4.0ml/g成分を超えること、
油結合(過剰油の添加、遠心分離及び該過剰油のデカント後に成分中に残留する油)が1.0ml/g成分を超え、有利には1.5ml/g成分を超え、特に有利には2.0ml/g成分を超えること、
最小ゲル化濃度が10.0%未満、好ましくは8.0%未満、特に有利には6.0%未満であること、
CIE-L測色法に従って求めたL値が50超、有利には70超、好ましくは80超、特に有利には90超の明色を有すること(ここで、対応する処理によって、製剤がより淡色になるにつれて、より高品質で色に敏感な用途、例えば、飲料又はヨーグルト若しくはチーズのような発酵製品等において、その可能な用途の範囲が広がる)、
のうち1つ以上を有する。
【0013】
驚くべきことに、後述するように簡単で安価な製造プロセスにもかかわらず、この成分は非常に中性的な味を有し、良好な官能特性を有し、食品及びペットフードに対して良好な機能性を有することが分かった。その結果、製造コストが低いにもかかわらず、ペットフード又は化粧品だけでなく食品を製造する様々な魅力的な成分の入手可能性が広がる。
【0014】
本発明による方法の説明:
1)マカウバの仁を、各果実部分、すなわち、外果皮、中果皮及び内果皮から機械的に分離する。この分離に加えて、仁の機械的分離をより容易にするために、熱処理及び/又は湿潤又は乾燥を行うことも有利である。後続の油の抽出の前に、仁から濃色外皮を部分的又は完全に分離することは任意かつ有利である。代替的には、外皮が除去されていないか、又は外皮が部分的若しくは完全に除去された仁を、この初期の時点で提供してもよい。外皮が分離されていない場合、後続の工程2)及び工程3)によって濃灰色の生成物が得られ、部分的な分離によって灰白色の生成物(明度値Lが70超)が製造される。後続の工程2)及び工程4)を行うと、外皮の少なくとも部分的な分離を行わなくても、行っても、淡灰白色の生成物(明度値Lが通常80超、場合によっては90超)が得られる。
【0015】
2)脂肪を部分的に分離するために、(任意で、事前に粗粉砕工程、例えば、破砕、粉砕又はフレーク化等を行った後で)有利には連続プレスで、特に有利にはスクリュープレスで仁を機械的にプレスして、30重量%未満、有利には25重量%未満、好ましくは20重量%未満、特に有利には15重量%未満、10重量%未満又は8重量%未満の残留脂肪含有量を得る。典型的な値は、7重量%~25重量%の範囲である。
【0016】
3)計量された量で分配することができ、2mm未満、好ましくは1mm未満、有利には500μm未満、更に好ましくは250μm未満、特に有利には100μm未満のD90体積粒径(すなわち、試料体積の90%がこの値よりも小さい粒径の粒子からなる)を有する粉末、粒子若しくは粉へと、残渣を粉砕する。代替的には、2mm未満、好ましくは1mm未満、有利には500μm未満、特に有利には350μm未満の厚さを有するフレークへと、残渣をフレーク化することもできる。
【0017】
4)代替的に又は工程3)に続いて、溶剤(有機溶剤、例えば、ヘキサン、エタノール等、又は超臨界CO)を使用して残渣から残留脂肪を除去して、5重量%未満、有利には3重量%未満、特に有利には2重量%未満の値を得るか、及び/又は、脱油又は脂肪含有残渣を水とアルコールとの混合物、有利には水とエタノール又は水とプロパノールで処理する。溶剤による処理後の脂肪含有量の典型的な値は、0.1重量%~5重量%の範囲である。次いで、脱脂残渣を、2000μm未満、好ましくは1000μm未満、有利には500μm未満、更に好ましくは250μm未満、特に有利には100μm未満のD90体積粒径まで粉砕する。代替的には、ここでも脱脂残渣をフレーク化して、工程3)と同様のフレーク厚さを得ることができる。このようにして、高い貯蔵安定性を有し、非常に中性的な臭いを有する成分を得ることができる。この成分は、粉砕又はフレーク化後に直接食品に適用することができる。
【0018】
5)任意かつ有利には、プレス前に仁を剥くか若しくは研磨することによって、又は胚乳の外側部分を切除することによって、胚乳の褐色又は黒色の外皮部分を、10%超、好ましくは25%超、好ましくは50%超、更に好ましくは75%超、有利には90%超、特に有利には99%超低減することにより、白色の胚乳から仁の濃色外皮を部分的又は完全に分離する。パーセンテージは、まだ完全な外皮で被覆された仁に対する、仁の表面上の面積の割合を指す。この分離は、それに応じて、粉末、粒子又は粉、及びフレークの色を明るくするのに役立つ。
【0019】
6)任意かつ有利には、プレス及び/又は溶剤による脱油及び粉砕後、粉末/粒子/粉又はフレークから、濃色粒子を10重量%超、好ましくは50重量%超、特に有利には90重量%超だけ選別し、分離する。この文脈において、濃色成分の分離は、濃色外皮部分を含有する粒子を、濃色外皮部分を含有しない粒子から分離することを意味するものと理解される。
【0020】
7)任意かつ有利には、記載された方法によって製造され、得られたマカウバタンパク質成分を、更なるタンパク質濃縮及びタンパク質分別に使用することができる。このような場合、水溶性タンパク質と不溶性成分とを分離するために、水性抽出プロセスを使用することが理想的であり得る。この抽出は、機械的脱油後又は溶剤に基づく脱油後に行うことが有利である。この目的のために、タンパク質粉又はタンパク質フレーク(脱油した粉末状又はフレーク状の残渣)を、水中、又は水若しくはNaCl水溶液(濃度0.01mol/L~0.5mol/L)中に、pH値7~9、好ましくは8.0で分散することが好ましい。次いで、固体残渣を抽出液から分離する。溶解したタンパク質を、沈殿及び/又は濾過プロセスを使用して抽出液から分離する。沈殿は、pH値を3.0~5.0の範囲の値、好ましくは3.5に調節することによって行うことが有利である。沈殿したタンパク質から、遠心分離及び/又は濾過によって上澄み液を分離する。このようにして得られたタンパク質分を乾燥することが有利である。このようにして、70重量%超、80重量%超、又は更には90重量%超のタンパク質含有量を有し得るタンパク質単離物が得られる。
【0021】
8)任意かつ有利には、溶剤による脱油及び粉砕後、得られた残渣は「タンパク質粉」の形態である。これを篩分けプロセス又は空気分級プロセスを使用して処理して、タンパク質の少ない画分からタンパク質の豊富な画分を乾式法により分離するか、又は可溶性の低いタンパク質を含有する画分から可溶性の高いタンパク質を含有する画分を分離することができる。
【0022】
上述の乾式分離プロセスは、タンパク質粉を少なくとも2つの異なる画分、すなわち、より高いタンパク質含有量を有するものと、より低いタンパク質含有量を有するものとに分離する。篩分けプロセスを採用する場合、2mm~50μmの開口径で作業することが好ましい。篩は並べて配置することもできる。
【0023】
空気分級は、様々な分級方法、例えば、向流若しくは直交流での比重選別又は向流若しくは直交流での遠心分離等を使用して行うことができる。その結果、本発明によるタンパク質含有量の増加は、乾燥質量で、タンパク質粉中のタンパク質含有量に対して、25%超、好ましくは35%超、特に有利には50%超、場合によっては60%超に等しくなり得る。このタンパク質濃縮により、未濃縮タンパク質粉と比較して機能的及び官能的特性が改善されるため、濃縮画分は、食品、ペットフード及び化粧品の成分としての使用により好適である。仁の濃色外皮を、白色の胚乳との比重の違いにより、記載した技術、例えば選別又は分級を用いて分離することもできる。
【0024】
以下、製造したタンパク質成分の定量的特性評価に使用する測定方法を簡単に説明する。
【0025】
タンパク質含有量:
タンパク質含有量は、試料中の窒素を測定し、この測定値に係数6.25を乗じることによって算出される含有量として定義される。本特許出願において、タンパク質含有量は、乾燥質量(TS)に対する割合として示す。
【0026】
色:
知覚色は、CIE-L測色法(DIN6417参照)を使用して定義される。この文脈では、L軸は明度を示し、ここで、黒は0の値を有し、白は100の値を有し、a軸は緑又は赤の成分を表し、b軸は青又は黄の成分を表す。
【0027】
タンパク質溶解度:
タンパク質溶解度は、1985年のMorrらによる測定方法を使用して求める。以下の学術論文を参照のこと:Morr C. V., German, B., Kinsella, J.E., Regenstein, J. M., Van Buren, J. P., Kilara, A., Lewis, B. A., Mangino, M.E, "A Collaborative Study to Develop a Standardized Food Protein Solubility Procedure. Journal of Food Science", Volume 50 (1985) pages 1715-1718)。
【0028】
乳化活性指数は、Pearce, K. N., Kinsella, J. E. Emulsifying properties of proteins: evaluation of a turbudimetric technique. Journal of Agricultural and Food Chemistry, v. 26, p. 716-723, 1978に記載されるようにして求める。
【0029】
脂肪含有量:脂肪含有量は、試料材料を有機溶剤(ヘキサン又は石油エーテル)に少なくとも6時間繰り返し接触させるソックスレー法によって重量測定する。抽出油を、溶剤が蒸発した後に測定する。
【0030】
最低ゲル化濃度:試験管において、2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%、18%、20%(いずれも重量%)の濃度で、0.1mol/Lリン酸ナトリウム緩衝液中様々なタンパク質成分懸濁液を調製することによって求める。懸濁液を水浴中で95℃に1時間加熱し、次いで急速に冷却し、4℃で2時間保存する。最小ゲル化濃度は、試験管を逆さにしても試料が流れ出ない濃度である。
【0031】
方法例1:
傷のない濃色外皮を有するマカウバ果実の仁1000gを、破砕機においてエッジ長が5mm未満になるまで粗粉砕し、室温で液圧プレスにおいてプレスした。その過程で、搾油を回収した。残留したプレスケーキは、残留油含有量が30重量%であり、タンパク質含有量が25重量%であった。プレスケーキを1000μm未満の粒径に粉砕した後、マカウバ粉をチョコレートスポンジケーキに3重量%で添加したところ、官能的な悪影響がほとんどない、タンパク質が豊富なケーキが得られた。
【0032】
方法例2:
傷のない濃色外皮を有するマカウバ果実の仁1000gに対して、皮剥き装置による表面処理を行った結果、処理後には、仁のほぼ全ての表面が濃色外皮を有さなかった。次いで、仁をエッジ長が3mm未満になるまで粗粉砕し、50℃に加熱し、スクリュープレスにおいてプレスした。その過程で、搾油を回収した。スクリュープレスから出したプレスケーキは、残留油含有量が23重量%であり、タンパク質含有量が29重量%であった。プレスケーキを500μm未満のフレーク厚さにフレーク化した後、ヘキサンを使用してフレークを脱油すると、タンパク質含有量は33重量%の値となった。続いて、これを250μm未満に粉砕した。この白色粉を、しっとりした肉の代替品を製造するために加工した。肉の代替品の官能特性は非常に良好で、色は異常に明るかった。
【0033】
方法例3:
実施例2で得られた白色粉100gを、水-アルコール溶液(50重量%-50重量%)1000mlに添加し、この粉から糖、他のアルコール可溶性炭水化物及び植物化学物質を溶解させた。上澄みをデカントした後、残渣を乾燥させ、再度微粉砕した。白色粉を卵との混合物においてマヨネーズの一部とした。完成したマヨネーズにおいて、植物性タンパク質が添加されていることを官能的に検出することはできなかった。
【0034】
方法例4:
実施例2と同様に製造した白色粉1kgを、pH8のNaCl水溶液(0.25mol/l)10リットルに添加して、1時間撹拌した。この過程で、タンパク質の一部が粉から水相に移行した。遠心分離によってラフィネートをタンパク質溶液から除去した。タンパク質を濃縮するために、溶液を限外濾過によって処理し、保持液(retentate)中のタンパク質を戻し、次いで透析濾過した。次いで、濃縮タンパク質を乾燥させた。このようにして得られた単離物は、乾燥質量で85%のタンパク質含有量を有し、良好な乳化能力を有し、アイスクリームを作る際に乳タンパク質の代替品として使用することができた。
【0035】
【表1】
【国際調査報告】