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特表2023-5206272-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸ナトリウム及びその医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-18
(54)【発明の名称】2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸ナトリウム及びその医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230511BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230511BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K9/08
A61K9/19
A61K47/26
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/32
A61P31/12
A61P31/22
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022551687
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021055062
(87)【国際公開番号】W WO2021170878
(87)【国際公開日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】20159699.6
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522337554
【氏名又は名称】アーイーツェー246 アクチェンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ヘルムート ブッシュマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ゴールドナー
(72)【発明者】
【氏名】イェシカ レドマー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア ハーベ
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ルケ
(72)【発明者】
【氏名】ドロテーア ホーマン
(72)【発明者】
【氏名】モニカ ローザ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076BB01
4C076BB13
4C076CC35
4C076DD51E
4C076DD66E
4C076DD67E
4C076EE16E
4C076EE23E
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA44
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA03
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、PEG、シクロデキストリン、リジン(lysin)、アルギニン、特にHPBCDなどの複合体化可溶化剤を本質的に含まない、2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)-フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸ナトリウムを含有する新規な安定した医薬組成物に関する。本発明はさらに、前記医薬組成物の調製の方法に関する。本発明はさらに、病気の治療の方法における及び/又は予防剤(prophylactic)としての前記医薬組成物の使用、特に抗ウイルス剤としての、好ましくはサイトメガロウイルスに対する前記医薬組成物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)のレテルモビルのナトリウム塩
【化1】
又はその溶媒和物を含む医薬組成物を製造する方法であって、以下のステップ:
i)生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤中の、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液であって、いずれの追加のバッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの複合体化可溶化剤も本質的に含まない溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップiで得られた前記溶液のpHを7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で得られた溶液を濾過すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記レテルモビルのナトリウム塩が非晶質形態である、又は前記レテルモビルのナトリウム塩の前記溶媒和物が、結晶性一水和物若しくは結晶性三水和物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得る後続の追加ステップをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記凍結乾燥物を、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない非経口的に許容される希釈剤に再溶解するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤に溶けた式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む液体医薬組成物であって、
【化2】
PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない、液体医薬組成物。
【請求項6】
炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、請求項5に記載の液体医薬組成物。
【請求項7】
ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188をさらに含み、他の複合体化可溶化剤を本質的に含まない、請求項5又は6に記載の液体医薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤が、マンニトール若しくはスクロース又はそれらの組み合わせである、請求項6又は7に記載の液体医薬組成物。
【請求項9】
バッファー、好ましくはトリスヒドロキシアミノメタン(Tris)をさらに含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項10】
HClをさらに含む、請求項5~9のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項11】
7~8の範囲のpHを有する、請求項5~10のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項12】
請求項1又は2に記載された前記方法によって得ることができる、請求項5~11のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項13】
経口適用に適する、請求項5~12のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項14】
式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む固体医薬組成物であって、
【化3】
-PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まず、
-いずれの追加バッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの追加の複合体化可溶化剤もなしに水に溶かしたとき、溶液をもたらすことができ、前記溶液が、
・前記レテルモビルのナトリウム塩又は前記その溶媒和物を、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で含み、
・7~8、好ましくは7.4~7.8の範囲のpHを呈する、
固体医薬組成物。
【請求項15】
凍結乾燥物である、請求項14に記載の固体医薬組成物。
【請求項16】
請求項3に記載された前記方法によって得ることができる、請求項15に記載の固体医薬組成物。
【請求項17】
液体医薬組成物であって、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない第1の非経口的に許容される希釈剤に、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で溶けた、請求項14~16のいずれか一項に記載された前記固体医薬組成物を含む、液体医薬組成物。
【請求項18】
PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない第2の非経口的に許容される希釈剤に、静脈内(IV)注射又は注入に許容される濃度に希釈され、前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤が同じでも、互いに異なってもよい、請求項17に記載の液体医薬組成物。
【請求項19】
7~8の範囲のpHを有する、請求項17又は18に記載の液体医薬組成物。
【請求項20】
請求項4に記載された前記方法によって得ることができる、請求項17~19のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項21】
気候帯I~IVをカバーするICH Q1A(R2)に準拠する安定性を有する、請求項5~13のいずれか一項に記載の液体医薬組成物、請求項14~16のいずれか一項に記載の固体医薬組成物又は請求項17~20のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項22】
疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防の方法に使用するための、請求項5~13若しくは21のいずれか一項に記載の液体医薬組成物、請求項14~16若しくは21のいずれか一項に記載の固体医薬組成物又は請求項17~21のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項23】
疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防のための医薬品の調製のための、請求項5~13若しくは21のいずれか一項に記載の液体医薬組成物、請求項14~16若しくは21のいずれか一項に記載の固体医薬組成物又は請求項17~21のいずれか一項に記載の液体医薬組成物。
【請求項24】
請求項5~13若しくは21のいずれか一項に記載の前記液体医薬組成物、請求項14~16若しくは21のいずれか一項に記載の前記固体医薬組成物又は請求項17~21のいずれか一項に記載の前記液体医薬組成物を投与することによる、感染症を治療及び/又は予防するための方法を必要とする対象におけるウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症を治療及び/又は予防するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レテルモビル(letermovir)としても知られ、経口及び静脈内投与並びに注射に適した2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸ナトリウム塩を含有する新規な安定した医薬組成物に関する。前記医薬組成物は、PEG、シクロデキストリン、リジン、アルギニン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)など、特定の複合体化可溶化剤(complexing solubilizing agents)を本質的に含まない。前記製剤は、ウイルス疾患、特にヒトサイトメガロウイルス(以下、HCMV)感染症を治療する方法における使用に適する。本発明はまた、前記医薬組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サイトメガロウイルス(CMV)は、固形臓器移植及び同種造血幹細胞移植の後に重大な病的状態と予防可能な死亡を引き起こす、よく見られる日和見感染症である。
【0003】
HCMVは、ヘルペスウイルス科又はヘルペスウイルスとして知られるウイルス科に属するウイルスの一種である。典型的にはHCMVと略され、代替としてヒトヘルペスウイルス5(HHV-5)として知られる。ヘルペスウイルス科内では、HCMVはベータヘルペスウイルス亜科に属し、他の哺乳類由来のサイトメガロウイルスも含まれる。
【0004】
レテルモビルは、HCMV感染症に対処するための高度に活性な薬剤として知られており、Lischka et al.,In Vitro and In Vivo Activities of the Novel Anticytomegalovirus Compound Letermovir.Antimicrob.Agents Chemother.2010,54:p.1290-1297、及びKaul et al.,First report of successful treatment of multidrug-resistant cytomegalovirus disease with the novel anti-CMV compound Letermovir.Am.J.Transplant.2011,11:1079-1084、並びにMarschall et al.,In Vitro Evaluation of the Activities of the Novel Anticytomegalovirus Compound Letermovir against Herpesviruses and Other Human Pathogenic Viruses.Antimicrob.Agents Chemother.2012,56:1135-1137に詳しく記載されている。
【0005】
レテルモビルの化学名は、2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸であり、レテルモビルの化学構造は以下のように示される。
【化1】
【0006】
レテルモビルは、抗ウイルス剤として、特にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)によって引き起こされる感染症の治療、予防(prevention)、又は予防(prophylaxis)のために開発され、国際公開第2004/096778号に開示されている。さらに、国際公開第2013/127971号に記載のように、2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸の塩も調製された。
【0007】
非晶質レテルモビルを含む液体医薬製剤が国際公開第2013/127970号に記載され、その製剤は、特に静脈内投与に使用でき、レテルモビルを含有し、長期安定性を有し、保存可能で、さらに実質的に生理学的pHを有する医薬組成物に関する。さらに、例えば、水を加えることによって、注射用に簡単な方法で再溶解できる安定した固体医薬組成物を得るために、そのような組成物を凍結乾燥でき、その結果、例えば、静脈内投与用の安定な医薬組成物を得ることができることが発見された。
【0008】
しかし、固形臓器移植及び同種造血幹細胞移植を必要とする全ての年齢の対象における使用に適した、実質的に生理学的なpHで長期安定性を有するレテルモビルを含む医薬組成物に対する必要性が依然として存在する。そのうえ、レテルモビルと、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)などの複合体化可溶化剤とを含む医薬組成物は、水などの非経口的に許容される希釈剤に溶解したとき、粒子に関する問題を引き起こす傾向があり、したがって、意図される使用の前に追加のワークアップ、例えば、投与前の医薬組成物の濾過が必要とされる。したがって、即使用可能な、粒子を含まない、レテルモビルを含む非経口溶液に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様では、本発明は、式(I)のレテルモビルのナトリウム塩
【化2】
又はその溶媒和物を含む医薬組成物であって、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される化合物を本質的に含まない組成物に関する。
【0010】
これらの医薬組成物は、長期安定性を有しつつ、所望の治療効果を達成するために充分な濃度及び実質的に生理学的pHでレテルモビルを含有する。
【0011】
さらに、前記医薬組成物は、水、グルコース水溶液又は乳酸リンゲル液などの非経口的に許容される希釈剤に完全に再溶解できる凍結乾燥物の形態で得ることができることが発見された。前記凍結乾燥物は、驚くべきことに長期安定性を呈し、非経口的に許容される希釈剤中の再溶解物は、実質的に生理学的なpHを有する。
【0012】
別の態様では、本発明は、以下のステップを含む前記医薬組成物を製造するための方法に関する。
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物の溶液、並びに任意選択で、炭水化物、特にスクロース及びマンニトール、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を用意すること、
ii)必要があれば、ステップi)で得られた溶液のpHを、7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で、前記溶液を濾過すること。
【0013】
特に、本発明による方法は、上記ステップiiiで得られた溶液を凍結乾燥して、凍結乾燥物を得て、任意選択で凍結乾燥物を第1の非経口的に許容される希釈剤に再溶解して、1~100mg/mLの濃度範囲の再溶解溶液を得て、任意選択で前記再溶解溶液を、第2の非経口的に許容される希釈剤で、注射又は注入に許容される最終濃度にさらに希釈する後続のステップをさらに含むことができ、前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤が同じでも、異なってもよい。
【0014】
別の態様では、本発明は、疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症を治療及び/又は予防する薬物の調製のための本明細書に記載の医薬組成物の使用に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、前記医薬組成物を投与することによる、感染症の治療及び/又は予防のための方法を必要とする対象におけるウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防のための方法に関する。特に、本発明による医薬組成物は、新生児、特定の固形臓器移植を必要とする対象、例えば、腎臓の障害をもつ対象及び同種造血幹細胞移植を必要とする対象の治療に適している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「含む」という用語は、「からなる」という意味も包含し、例えば、前記メンバーを含むメンバーの群は、これらのメンバーのみからなるメンバーの群も包含することが留意される。
【0017】
本明細書で使用される「室温」という用語は、「標準室温」という用語と同義であり、19℃~26℃の範囲の温度を指す。例えば、「室温で撹拌する」とは、「19℃~26℃の範囲の温度で撹拌する」という意味である。
【0018】
本発明の範囲内では、「安定性」という用語は、医薬組成物の成分、特に活性物質の化学的安定性だけでなく、組成物自体の物理化学的安定性も意味すると理解される。特に、本発明による組成物は、構成成分の沈殿に対して安定でなければならない。
【0019】
この文脈では、「安定性」という用語は、前記液体医薬組成物は本発明のHPLC法に従って測定されるときに、2℃~8℃、又は25℃、又は40℃において、少なくとも1か月、好ましくは少なくとも3か月、さらにより好ましくは少なくとも6か月、さらにより好ましくは12か月、さらにより好ましくは18か月、最も好ましくは少なくとも36か月の保存期間の間、本発明による医薬組成物が活性物質のうち最小限>90%、好ましくは>95%、より好ましくは>98%の割合を含有することを意味する。
【0020】
本発明の範囲内では、「溶媒和物」という用語は、溶媒分子との配位を通して複合体を形成するレテルモビルのナトリウム塩の形態を指す。水和物は、配位が水と起こる溶媒和物の特殊な形態である。具体的には、レテルモビルのナトリウム塩は、一水和物又は三水和物であり得る。
【0021】
本明細書で使用される「シクロデキストリン」という用語は、いずれの修飾又は非修飾シクロデキストリン、特にα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリンから選択されるものを包含すると理解される。修飾されたβ-シクロデキストリンの例としては、特に、ヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシメチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、アルキル-ヒドロキシアルキル-β-シクロデキストリン、例えば、メチル-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン又はエチル-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン又はスルホアルキル-シクロデキストリンが挙げられる。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは様々な置換度で利用でき、特に2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンは、Cavasol(登録商標)W7 HP、Cavitron(登録商標)W7 HP5及びCavitron(登録商標)W7 HP7として入手可能である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「複合体化可溶化剤」という用語は、特に水溶液中で、前記化合物と有効成分の分子との間に配位結合を形成することによって、すなわち、実際にかつ検出可能に本発明の医薬組成物の有効成分と複合体を形成することによって、本発明の医薬組成物の有効成分の溶解性を高める化合物を指す。複合体化可溶化剤の非限定的な例としては、リジン又はアルギニンなどの非ポリマー可溶化剤、及びPEG又はシクロデキストリンなどのポリマー可溶化剤が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「非経口的に許容される希釈剤」、「非経口混合希釈剤」及び「市販の希釈剤」という用語は、局所又は経口以外の経路による対象への投与に適した、有効成分を希釈するために使用される液体材料を指す。非経口経路の例としては、筋肉内、血管内(動脈内又は静脈内を含む)、眼窩内、眼球後、鼻腔内、くも膜下腔、脳室内、脊髄内、腹腔内、肺内、大槽内、関節内、胸骨内、眼球周囲又は病巣内投与が挙げられる。非経口的に許容される希釈剤の例としては、水、グルコース水溶液又は乳酸リンゲル液が挙げられる。本出願内では、「市販の希釈剤」、「非経口混合物希釈剤」及び「非経口的に許容される希釈剤」という用語は、同じ意味を有し、交換可能に使用される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「炭水化物」という用語は、ポリヒドロキシアルデヒド若しくはケトンである化合物、又は加水分解でそのような化合物を生じる物質を指す。炭水化物には、窒素、リン、又は硫黄をさらに含有し得るものもある。炭水化物の例としては、単糖、二糖、オリゴ糖、及び多糖、特にスクロース又はマンニトールが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、20個の天然に存在するアミノ酸又は非天然の側鎖をもち、D及びL光学異性体の両方を含むそれらの合成類似体のいずれかを指す。アミノ酸の例としては、特にアラニン及びフェニルアラニンが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ポリアルコキシ化合物」という用語は、反復単位が、酸素原子に連結された直鎖又は分枝鎖を有するアルキル基を表すポリマー化合物を指す。ポリアルコキシ化合物の例としては、ポロキサマー、特にポロキサマー188が挙げられる。
【0027】
本発明の範囲内で、「によって得られる」及び「によって得ることができる」という用語は、同じ意味を有し、交換可能に使用される。
【0028】
本明細書で使用される場合、「水溶液」という用語は、水を含む液体均質混合物を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「凍結乾燥(lyophilization)」及び「凍結乾燥(freeze-drying)」という用語は、交換可能に使用され、溶媒、特に水を含有する所望の生成物が、特に液体窒素又は冷却棚(cooled shelves)を使用することによって、十分な温度に冷却されるプロセスを意味し、このプロセスでは、溶媒の一部又は全部が凍結され、凍結された溶媒は、1つ又は複数の乾燥工程によって、特に昇華及び脱着による非結合溶媒の除去によって、さらに除去される。「凍結乾燥物」及び「凍結乾燥生成物」という用語は、凍結乾燥によって得られる生成物を指し、本明細書を通して交換可能に使用される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「再溶解」又は「再溶解すること」という用語は、凍結乾燥物を、希釈剤、好ましくは非経口的に許容される希釈剤、特に水に溶解するプロセスを指す。「再溶解された溶液」は再溶解によって得られる生成物を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「液体医薬組成物」という用語は、液体中で1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と任意選択で組み合わされた有効成分の溶液、懸濁液又は分散液を指す。特に、液体医薬組成物は、生理学的に許容される希釈剤、特に水などの非経口的に許容される希釈剤中の、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わされた有効成分の溶液を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「固体医薬組成物」という用語は、固体状態で1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と任意選択で組み合わされた活性成分の組成物を指す。特に、固体医薬組成物とは、1つ又は複数の薬学的に許容される賦形剤と組み合わされた有効成分を含む凍結乾燥物を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「治療」又は「治療すること」という用語は、治療薬、すなわち、レテルモビルのナトリウム塩若しくはその溶媒和物若しくは水和物(単独若しくは別の薬剤との組み合わせ)の対象への適用若しくは投与、又はHCMV感染症、HCMV感染症の症状、若しくはHCMV感染症を発症する可能性を治癒、治癒、軽減、緩和、改変、治療、改善又は影響することを目的とする、HCMV感染症、HCMV感染症の症状、若しくはHCMV感染症を発症する可能性を有する対象に由来する単離組織若しくは細胞株への治療薬の適用若しくは投与として定義される。そのような治療は、ゲノム薬理学の分野から得られた知識に基づいて、特異的に調整又は改変することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、「予防する」、「予防すること」又は「予防」という用語は、障害若しくは疾患の発症がなかった場合には、障害若しくは疾患が発症しないこと、又は障害若しくは疾患の発症が既にあった場合には、さらなる障害若しくは疾患の進行がないことを意味する。また、疾患又は疾患に関連する症状の一部又は全部を予防する能力も考慮される。疾患の予防(Prevention)は、疾患の予防(prophylaxis)を包含する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト又は非ヒト哺乳動物を指す。非ヒト哺乳動物としては、例えば、ヒツジや、ウシ、ブタ、ネコ、イヌ及びネズミ哺乳動物などの家畜及びペットが挙げられる。好ましくは、対象はヒトである。1つの実施形態では、対象はヒト乳児である。好ましい実施形態では、対象はヒト新生児である。別の好ましい実施形態では、対象は、特定の固形臓器移植を必要とする対象、例えば腎臓の障害をもつ対象及び同種造血幹細胞移植を必要とする対象である。
【0036】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性又は特性を損なわず、比較的非毒性である担体又は希釈剤などの材料を指す。すなわち、その材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすこともなく、それが含有される組成物のいずれの成分とも有害な方法で相互作用することもなく、対象に投与することができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」という用語は、5モル%未満の含有量を指す。
【0038】
本発明の主題は、式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む医薬組成物に関し、
【化3】
当該医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリンからなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない。1つの実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)である。
【0039】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤に溶けた式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む液体医薬組成物であって、
【化4】
当該液体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリンからなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない。1つの実施形態では、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)である。
【0040】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、水溶液である。1つの実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物は、少なくとも1つの生理学的に許容される希釈剤中の溶液である。生理学的に許容される希釈剤は、薬学的に許容される希釈剤であり、特に経口的に許容される希釈剤、すなわち経口適用に許容される希釈剤又は非経口的に許容される希釈剤、すなわち非経口適用に許容される希釈剤である。非経口的に許容される希釈剤の非限定的な例としては、水、グルコース水溶液及び乳酸リンゲル液が挙げられる。
【0041】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリンからなる群より選択される化合物を本質的に含まない。1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、リジンを本質的に含まない。別の実施形態では、本発明による液体医薬組成物はアルギニンを本質的に含まない。さらに別の実施形態では、本発明による液体医薬組成物はPEGを本質的に含まない。さらに別の実施形態では、本発明による液体医薬組成物はシクロデキストリンを本質的に含まない。好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを本質的に含まない。別の好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン及びシクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)を本質的に含まない。
【0042】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、複合体化可溶化剤を本質的に含まず、特に、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)を本質的に含まない。
【0043】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、いずれの追加のバッファーも本質的に含まない。
【0044】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、5モル%未満である。好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、3モル%未満である。より好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、1モル%未満である。より好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、0.5モル%未満である。最も好ましくは、本発明による液体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、0.3モル%未満である。
【0045】
1つの実施形態では、式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む液体医薬組成物であって、
【化5】
液体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まず、さらに少なくとも1つの医薬担体又は賦形剤を含む。
【0046】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、スクロース又はマンニトールなどの炭水化物、フェニルアラニンなどのアミノ酸、ポロキサマー188などポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を含む。好ましい実施形態では、前記賦形剤は、マンニトール又はスクロース又はそれらの組み合わせである。
【0047】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、複合体化可溶化剤を本質的に含まない。
【0048】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、複合体化可溶化特性(complexing solubilizing properties)を呈する賦形剤を含有することができる。1つの実施形態では、そのような賦形剤は、ポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物である。1つの実施形態では、ポロキサマーはポロキサマー188である。
【0049】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、ポリアルコキシ化合物、ポロキサマー、又は特にポロキサマー188を含み、他の複合体化可溶化剤を本質的に含まない。
【0050】
1つの実施形態では、使用される賦形剤は、特定の固形臓器移植を必要とする対象、例えば腎臓の障害をもつ対象への投与に適する。そのような賦形剤の非限定的な例としては、スクロース、マンニトール、フェニルアラニン、及び特にポロキサマー188などのポロキサマー、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0051】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、バッファー、好ましくはトリスヒドロキシアミノメタン(Tris)をさらに含む。
【0052】
1つの実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、HClをさらに含む。別の実施形態では、HClは、液体医薬組成物のpHを調整するために使用される。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、7~8の範囲のpHを有する。より好ましい実施形態では、本発明による液体医薬組成物は、7.4~7.8の範囲のpHを有する。
【0054】
1つの実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物は経口適用に適する。
【0055】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、固体形態にある。好ましい実施形態では、前記医薬組成物の前記固体形態は、凍結乾燥物である。好ましくは、前記医薬組成物の前記固体形態は、前述の実施形態のいずれかで画定された液体医薬組成物を凍結乾燥することによって得ることができる。
【0056】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物の固体形態は、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含み、非晶質形態である。1つの実施形態では、本発明による医薬組成物の固体形態は、結晶性一水和物又は結晶性三水和物であるレテルモビルのナトリウム塩を含む。
【0057】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリンからなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない。1つの実施形態では、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)である。
【0058】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリンからなる群より選択される化合物を本質的に含まない。1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物はリジンを本質的に含まない。別の実施形態では、本発明による固体医薬組成物はアルギニンを本質的に含まない。さらに別の実施形態では、本発明による固体医薬組成物はPEGを本質的に含まない。さらに別の実施形態では、本発明による固体医薬組成物はシクロデキストリンを本質的に含まない。好ましい実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを本質的に含まない。別の好ましい実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン及びシクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)を本質的に含まない。
【0059】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、複合体化可溶化剤を本質的に含まず、特に、PEG、リジン、アルギニン、及びシクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)を本質的に含まない。
【0060】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、いずれの追加のバッファーも本質的に含まない。
【0061】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、
5モル%未満である。好ましい実施形態では、本発明による固体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、3モル%未満である。より好ましい実施形態では、本発明による固体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、1モル%未満である。より好ましい実施形態では、本発明による固体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、0.5モル%未満である。最も好ましくは、本発明による固体医薬組成物中の複合体化可溶化剤の含有量は、0.3モル%未満である。
【0062】
1つの実施形態では、式(I)のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を含む固体医薬組成物であって、
【化6】
PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない固体医薬組成物は、さらに少なくとも1つの医薬担体又は賦形剤を含む。
【0063】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、スクロース又はマンニトールなどの炭水化物、フェニルアラニンなどのアミノ酸、ポロキサマー188などポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を含む。好ましい実施形態では、前記賦形剤は、マンニトール又はスクロース又はそれらの組み合わせである。
【0064】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、複合体化可溶化剤を本質的に含まない。
【0065】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、複合体化可溶化特性を呈する賦形剤を含有することができる。1つの実施形態では、そのような賦形剤は、ポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物である。1つの実施形態では、ポロキサマーはポロキサマー188である。
【0066】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、ポリアルコキシ化合物、ポロキサマー、又は特にポロキサマー188を含み、他の複合体化可溶化剤を本質的に含まない。
【0067】
1つの実施形態では、使用される賦形剤は、特定の固形臓器移植を必要とする対象、例えば腎臓の障害をもつ対象への投与に適する。そのような賦形剤の非限定的な例としては、スクロース、マンニトール、フェニルアラニン、特にポロキサマー188などのポロキサマー、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)が挙げられる。
【0068】
1つの実施形態では、本発明による固体医薬組成物は、バッファー、好ましくはトリスヒドロキシアミノメタン(Tris)をさらに含む。
【0069】
好ましい実施形態では、本発明による前記固体医薬組成物は、いずれの追加のバッファーもなしに、非経口的に許容される希釈剤に溶けた後に、7~8のpHを有する。より好ましい実施形態では、前記固体医薬製剤は、いずれの追加のバッファーもなしに、非経口的に許容される希釈剤に溶けた後に、7.4~7.8の範囲のpHを有する。1つの実施形態では、前記固体医薬組成物は、任意選択でHClをさらに含む。
【0070】
好ましい実施形態では、前記固体医薬組成物は、いずれの追加のバッファーもなしに、且つPEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの追加の複合体化可溶化剤もなしに、水に溶けたとき、溶液をもたらすことができ、前記溶液は、
・レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で含み、
・7~8、好ましくは7.4~7.8の範囲のpHを呈する。
【0071】
好ましい実施形態では、前記固体医薬組成物は、
-PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まず、
-いずれの追加のバッファーもなしに、且つPEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの追加の複合体化可溶化剤もなしに、水に溶けたとき、溶液をもたらすことができ、前記溶液は、
・レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で含み、
・7~8、好ましくは7.4~7.8の範囲のpHを呈する。
【0072】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない非経口的に許容される希釈剤に溶けた前述の実施形態のいずれかで画定された固体医薬組成物を含む液体医薬組成物である。好ましくは、前記液体医薬組成物は、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物を、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で含む。
【0073】
1つの実施形態では、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない第1の非経口的に許容される希釈剤に、レテルモビル遊離塩基に関して20~100mg/mLの範囲の濃度で溶けた前述の実施形態のいずれかで画定された固体医薬組成物を含む液体医薬組成物は、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない第2の非経口的に許容される希釈剤に、静脈内(IV)注射又は注入に許容される濃度にさらに希釈され、前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤は、同じでも、互いに異なってもよい。
【0074】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、水に溶けた前述の実施形態のいずれかで画定された固体医薬組成物を含む液体医薬組成物である。1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、少なくとも1つの非経口的に許容される希釈剤に溶けた前述の実施形態のいずれかで画定された固体医薬組成物を含む液体医薬組成物である。非経口的に許容される希釈剤の非限定的な例としては、水、グルコース水溶液及び乳酸リンゲル液が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物は7~8の範囲のpHを有する。より好ましい実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物は7.4~7.8の範囲のpHを有する。1つの実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物中のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物の濃度は、1~100mg/mLの範囲にある。好ましい実施形態では、本発明による前記液体医薬組成物中のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物の濃度は、20~100mg/mLの範囲にある。
【0075】
本発明の範囲内で、質量濃度はレテルモビル遊離塩基に関して示される。具体的には、レテルモビル遊離塩基に関して20mg/mLとは、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物のモル濃度が、レテルモビル遊離塩基の20mg/mLの質量濃度に相当するレテルモビル遊離塩基のモル濃度に等しいものとすることを意味する。例えば、三水和物のレテルモビルのナトリウム塩のモル質量は650.6g/molである。レテルモビル遊離塩基のモル質量は572.6g/molである。この点で、レテルモビル遊離塩基に関して20mg/mLの質量濃度は、三水和物のレテルモビルのナトリウム塩に関して、20・650.6/572.6=22.7mg/mLの質量濃度に相当する。
【0076】
1つの実施形態では、水などの少なくとも1つの非経口的に許容される希釈剤に溶けた前述の実施形態のいずれかで画定された固体医薬組成物を含む前記液体医薬組成物は、静脈内(IV)投与、すなわち静脈内注入又は注射に適する。
【0077】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物は、気候帯I~IVをカバーするICH Q1A(R2)(新規原薬及び製剤の安定性試験)に準拠した、安定性を示す。好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも1か月間安定である。より好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも3か月間安定である。より好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも6か月間安定である。より好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも12か月間安定である。より好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも18か月間安定である。より好ましい実施形態では、前述の実施形態のいずれかで画定された本発明による医薬組成物は、少なくとも36か月間安定である。
【0078】
本発明の主題はさらに、以下のステップを含む本発明による医薬組成物を製造する方法に関する。
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに任意選択で、炭水化物、特にスクロース及びマンニトール、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液を用意すること。
【0079】
1つの実施形態では、上記ステップiで得られた溶液は、生理学的に許容される希釈剤、特に水などの非経口的に許容される希釈剤中の溶液である。
【0080】
1つの実施形態では、上記ステップiで得られた溶液は、いずれの追加のバッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの複合体化可溶化剤も本質的に含まない。
【0081】
1つの実施形態では、上記ステップiによる溶液を用意することは、以下のステップを含む。
a-1)レテルモビルのナトリウム塩の三水和物を非経口的に許容される希釈剤、特に水に溶かすこと、
b-1)炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を、ステップa-1で得られた溶液に加えること、
c-1)任意選択で、前記溶液を少なくとも30分間撹拌すること。
【0082】
好ましい実施形態では、ステップc-1の溶液は少なくとも2時間撹拌される。
【0083】
別の実施形態では、上記ステップiによる溶液を用意する方法は、ステップa-1~c-1の代わりに以下のステップa-2~c-2を利用することを含む。
a-2)炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤を、非経口的に許容される希釈剤、特に水に溶かすこと、
b-2)水中のレテルモビルのナトリウム塩の三水和物をステップa-2で得られた溶液に加えること、
c-2)任意選択で、前記溶液を少なくとも30分間撹拌すること。
【0084】
好ましい実施形態では、ステップc-2の溶液は、少なくとも2時間撹拌される。
【0085】
好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法はさらに、ステップiで得られた溶液のpHを7~8の範囲に調整することを含む。より好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法はさらに、ステップiで得られた溶液のpHを7.4~7.8の範囲に調整することを含む。好ましい実施形態では、前記調整は、HClを加えることによって行われる。いくつかの実施形態では、ステップiで得られた溶液のpHは、7~8の範囲、より好ましくは7.4~7.8の範囲にあり、pH調整は必要でない。
【0086】
1つの実施形態では、pH調整後に得られた溶液は、任意選択で、少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間撹拌される。
【0087】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、任意選択で、ステップiで得られた溶液を濾過することを含む。1つの実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、任意選択で、上記ステップiで得られた溶液のpHの調整後に得られた溶液を濾過することを含む。
【0088】
いくつかの実施形態では、ステップiで使用されるレテルモビルのナトリウム塩は、非晶質形態である、又はレテルモビルのナトリウム塩の溶媒和物は、結晶性一水和物若しくは結晶性三水和物である。
【0089】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法はさらに、得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得ることを含む。
【0090】
1つの実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法はさらに、凍結乾燥物を、第1の非経口的に許容される希釈剤に再溶解して、レテルモビル遊離塩基に関して0.1~100mg/mLの濃度範囲の再溶解溶液を得ること、及び任意選択で、前記再構成溶液を、第2の非経口的に許容される希釈剤で、注射又は注入に許容される最終濃度までさらに希釈することを含む。前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤は、同じでも、異なってもよい。
【0091】
1つの実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は0.1~100mg/mLの範囲にある。別の実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は0.8~100mg/mLの範囲にある。別の実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は20~100mg/mLの範囲にある。別の実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は50~100mg/mLの範囲にある。別の実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は20~50mg/mLの範囲にある。好ましい実施形態では、注射又は注入に許容される最終濃度は0.8mg/mLである。
【0092】
好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、以下のステップを含む。
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに任意選択で、スクロース又はマンニトールなどの炭水化物、フェニルアラニンなどのアミノ酸、ポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー188、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップi)で得られた溶液のpHを7~8の範囲に、好適な有機酸又は無機酸を用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること。
【0093】
ステップiiの1つの実施形態では、有機酸又は無機酸は、HClである。
【0094】
別の好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、以下のステップを含む。
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに任意選択で、スクロース又はマンニトールなどの炭水化物、フェニルアラニンなどのアミノ酸、ポロキサマーなどのポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー188、及びPVP PF12などのポリビニルピロリドン(PVP)からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップiで得られた前記溶液のpHを7~8の範囲に、好適な有機酸又は無機酸を用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること、
iv)得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得ること。
【0095】
ステップiiの1つの実施形態では、有機酸又は無機酸は、HClである。
【0096】
別の好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は以下のステップを含む。
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに任意選択で、炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップiで得られた前記溶液のpHを7~8の範囲に、好適な有機酸又は無機酸を用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること、
iv)得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得ること、
v)凍結乾燥物を、第1の非経口的に許容される希釈剤に再溶解して、1~100mg/mLの濃度範囲の再溶解溶液を得ること、及び任意選択で、前記再溶解溶液を第2の非経口的に許容される希釈剤で、注射又は注入に許容される最終濃度にさらに希釈することであり、前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤は、同じでも、異なってもよい。
【0097】
ステップiiの1つの実施形態では、有機酸又は無機酸は、HClである。
【0098】
好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、以下のステップを含む。
i)生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤中の、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、及びポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液であって、いずれの追加のバッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの複合体化可溶化剤も本質的に含まない溶液を用意すること、
ii)必要があれば ステップiで得られた前記溶液のpHを7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること。
【0099】
好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は、以下のステップを含む。
i)生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤中の、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液であって、いずれの追加のバッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの複合体化可溶化剤も本質的に含まない溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップiで得られた溶液のpHを7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること、
iv)得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得ること。
【0100】
好ましい実施形態では、本発明による医薬組成物を製造する方法は以下のステップを含む。
i)生理学的に許容される希釈剤、特に非経口的に許容される希釈剤中の、レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液であって、いずれの追加のバッファーも、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択されるいずれの複合体化可溶化剤も本質的に含まない溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップiで得られた前記溶液のpHを7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること、
iv)得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物を得ること、
v)前記凍結乾燥物を、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない非経口的に許容される希釈剤に再溶解すること。
【0101】
上記のステップi~vは、必ずしも特定の順序やステップの数を意味するものではない。しかし、好ましくは、本方法のステップは、上記で示された順序で実行される。前記ステップのいくつかは、任意選択であることができ、いくつかの実施形態では、任意選択のステップは実行されない。例えば、1つの実施形態では、ステップiiiを実行せずに、ステップiiのすぐ後にステップivが続いてもよい。また、上記のステップは、明示的に言及されていない追加のステップを除外しない。例えば、ステップi及び/又はiiで得られた溶液は任意選択で撹拌されてもよい。
【0102】
本発明の主題はさらに、本明細書に記載のいずれかの方法によって得ることができる医薬組成物に関する。特に、本発明の主題は、前述の実施形態のいずれかで画定されたステップi~iiiを含む方法によって得られた液体医薬組成物に関する。本発明の主題はさらに、前述の実施形態のいずれかで画定されたステップi~ivを含む方法によって得られた固体医薬組成物に関する。本発明の主題はさらに、非経口的に許容される希釈剤に溶けた前述の実施形態のいずれかで画定されたステップi~vを含む方法によって得られた固体医薬組成物を含む液体医薬組成物に関する。
【0103】
本発明による医薬組成物は、ヘルペスウイルス科グループの代表的なもの、特にサイトメガロウイルス、特にヒトサイトメガロウイルスによる感染症を予防及び/又は治療する方法で使用するために適した薬物を製造するために使用することができる。
【0104】
別の態様では、本発明は、疾患、好ましくはウイルス感染症、特にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はヘルペスウイルス科グループの別の代表的なものによる感染症を治療及び/又は予防する方法に使用するための本発明による医薬組成物に関する。
【0105】
本発明のさらなる態様は、疾患、好ましくはウイルス感染症、特にヒトサイトメガロウイルス(HCMV)又はヘルペスウイルス科グループの別の代表的なものによる感染症を治療及び/又は予防する方法における、本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0106】
本発明の別の態様は、疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症を治療及び/又は予防するための医薬品の調製における、本発明による医薬組成物の使用に関する。
【0107】
本発明のさらに別の態様は、本発明による医薬組成物を投与することによって、感染症の治療及び/又は予防のための方法を必要とする対象におけるウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防のための方法に関する。1つの実施形態では、前記対象は、新生児、特定の固形臓器移植を必要とする対象、例えば腎臓の障害をもつ対象及び同種造血幹細胞移植を必要とする対象からなる群より選択される。
【0108】
一般に、体重1kgあたり約0.001~10mg、好ましくは1kgあたり0.01~5mgの2-[(4S)-8-フルオロ-2-[4-(3-メトキシフェニル)ピペラジン-1-イル]-3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)フェニル]-4H-キナゾリン-4-イル]酢酸(レテルモビル)を投与するような方法で医薬組成物を投与することが有利であることが証明されている。
【0109】
それにもかかわらず、とりわけ、体重、活性物質に対する個々の反応、並びにレテルモビルが投与される時間及び間隔によって、前述のレテルモビルの量から逸脱する必要がありうる。例えば、ある特定の場合には、前述の最小量より少ない量のレテルモビルを投与するだけで十分でありうる一方で、他の場合には、記載の上限を超えることがある。大量に投与する場合は、それらを1日数回の個別投与に分けることが推奨されうる。
【0110】
上記の文脈をふまえて、以下の連続する番号を付した実施形態は、本発明のさらなる具体的な態様を提供する。
1.式(I)のレテルモビルのナトリウム塩
【化7】
又はその溶媒和物を含む医薬組成物であって、PEG、リジン、アルギニン、シクロデキストリン、特にヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPBCD)からなる群より選択される複合体化可溶化剤を本質的に含まない組成物。
2.炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤をさらに含む、実施形態1による医薬組成物。
3.医薬組成物が、複合体化可溶化剤を本質的に含まない、実施形態1による医薬組成物。
4.医薬組成物が、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188を含み、他の複合体化可溶化剤を本質的に含まない、実施形態1又は2のいずれか1つによる医薬組成物。
5.賦形剤が、マンニトール又はスクロース又はそれらの組み合わせである、実施形態2による医薬組成物。
6.バッファー、好ましくはトリスヒドロキシアミノメタン(Tris)をさらに含む、実施形態1~5のいずれか1つによる医薬組成物。
7.HClをさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つによる医薬組成物。
8.固体形態にある、実施形態1~7のいずれか1つによる医薬組成物。
9.レテルモビルのナトリウム塩が非晶質形態にある、実施形態8による医薬組成物。
10.非経口的に許容される希釈剤に溶けた後、前記医薬製剤の固体形態が7~8のpHを有し、前記医薬組成物が任意選択でさらにHClを含む、実施形態8又は9による医薬組成物。
11.前記医薬組成物が液体形態にある、実施形態1~7のいずれか1つによる医薬組成物。
12.前記医薬組成物が経口剤形である、実施形態1~11のいずれか1つによる医薬組成物。
13.前記医薬組成物の液体形態が、静脈内(IV)投与又は注射に適している、実施形態11による医薬組成物。
14.7~8の範囲のpHを有する、実施形態11又は13による医薬組成物。
15.前記医薬組成物中のレテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物の濃度が、レテルモビル遊離塩基に関して1~100mg/mL、好ましくは20~100mg/mLの範囲にある、実施形態11~14のいずれか1つによる医薬組成物。
16.気候帯I~IVをカバーするICH Q1A(R2)に準拠した安定性を有 する、実施形態1~15のいずれか1つによる医薬組成物。
17.前記医薬組成物の固体形態が凍結乾燥物である、実施形態8~10のいずれか1つによる医薬組成物。
18.以下のステップ:
i)レテルモビルのナトリウム塩又はその溶媒和物、並びに任意選択で、炭水化物、特にスクロース及びマンニトールから選択される炭水化物、アミノ酸、特にフェニルアラニン、ポリアルコキシ化合物、特にポロキサマー、より具体的にポロキサマー188、並びにポリビニルピロリドン(PVP)、特にPVP PF12からなる群より選択される少なくとも1つの賦形剤の溶液を用意すること、
ii)必要があれば、ステップi)で得られた溶液のpHを、7~8の範囲に、好ましくはHClを用いて調整すること、
iii)任意選択で、得られた溶液を濾過すること
を含む、実施形態1~17のいずれか1つで画定された医薬組成物を製造する方法。
19.レテルモビルのナトリウム塩が非晶質形態にある、又は結晶性一水和物若しくは結晶性三水和物である、実施形態18による方法。
20.得られた溶液を凍結乾燥して凍結乾燥物をえる後続の追加ステップをさらに含む、実施形態18又は19による方法。
21.凍結乾燥物を第1の非経口的に許容される希釈剤に再溶解して、1~100mg/mLの濃度範囲の再溶解溶液を得て、任意選択で前記再溶解溶液を、第2の非経口的に許容される希釈剤で、注射又は注入に許容される最終濃度にさらに希釈する後続の追加ステップをさらに含む方法であり、前記第1及び前記第2の非経口的に許容される希釈剤が、同じでも、互いに異なってもよい、実施形態20による方法。
22.実施形態18~20のいずれか1つによる方法によって得ることができる、実施形態1~17のいずれか1つによる医薬組成物。
23.疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防の方法に使用するための実施形態1~16又は22のいずれか1つによる医薬組成物。
24.疾患、特にウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防のための医薬品の調製のための実施形態1~16又は22のいずれか1つによる医薬組成物の使用。
25.実施形態1~16又は22のいずれか1つによる医薬組成物を投与することによる、感染症の治療及び/又は予防のための方法を必要とする対象における、ウイルス感染症、好ましくはヒトサイトメガロウイルス(HCMV)感染症又はヘルペスウイルス科グループの別のメンバーによる感染症の治療及び/又は予防のための方法。
【0111】
以下、本発明を非限定的な実施例に基づいて詳細に説明する。
【0112】
別段の記述がない限り、以下の試験及び例に記載の百分率は重量百分率であり、部は重量割合であり、溶媒比、希釈比、及び液体溶液の濃度は、いずれの場合も体積に関する。
【0113】
略語
API 原薬
h 時間(秒)
HCl 塩酸
HEPES (4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)
HPBCD ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン
HPLC 高圧液体クロマトグラフィー
conc. 濃縮
min. 分
LO 光遮蔽
LAF 層流
NMR 核磁気共鳴分光法
NTU 比濁法濁度単位
PEG ポリエチレングリコール
PDE 一日曝露許容量
(HPLCにおける)保持時間
RP-HPLC 逆相高圧液体クロマトグラフィー
rpm 回転/分
【0114】
分析方法
試料の再溶解と再溶解時間
目視、pH、浸透圧、濁度、光遮蔽及びRP-HPLCによる分析の前に、試料を再溶解した。各製剤に1つの試料を取り出し、凍結乾燥ケークが完全に再溶解するまでの時間を測定した。凍結乾燥生成物はLAF条件下で再溶解した。
【0115】
選択された製剤の異なる固形分を考慮するために、凍結乾燥中の水分の損失の重量測定を行った。凍結乾燥の前後に各製剤の6本のバイアルの重さを量り、水分の損失を計算した。試料を計算した量の水で再溶解された。再溶解後、試料を2~8℃で保存した。
【0116】
求めた量の水を、適当なピペットを使用することによって凍結乾燥生成物に(バイアルの中央に)加えた。そのバイアルを注意深く回した。溶解時間は、液体を加えた後に凍結乾燥生成物の完全な溶解を達成するまでの時間として測定した。
【0117】
目視検査
試料を、欧州薬局方(第9版、モノグラフ2.9.20)に従って、白色の背景の前で5秒間及び黒色の背景の前で5秒間、穏やかな手動での放射状の撹拌下で、目に見える粒子の有無について検査した。2人の熟練した試験員が独立して検査を行った。可視粒子が観察された場合、それらをさらに、少数、中程度の数、又は多数の粒子に分類した。
【0118】
試料の検査前に照度計で照度を測定することによってシステム性能をチェックした。
【0119】
pH
試料のpH値は、温度センサー付き標準イオン強度電極(InLab Micro Pro-ISM)を具備した補正済みpH計(SevenEasy(登録商標)、Mettler Toledo AG、シュヴェルツェンバッハ、スイス)を用いて測定した。各測定後、測定プローブを水で十分にすすいだ。pH測定は、~150μlの分析量を用いてn=1で22℃±3℃の規定温度にて行った。
【0120】
pH計の3点補正を、pH7.00、pH4.01及びpH9.21(InLab Solutions、Mettler Toledo AG)のバッファーを用いて毎日行った。さらに、試料の測定を開始する前に、pH7.00の参照バッファーを確認した。
【0121】
濁度
試料の濁度測定には、(USEPAフィルターを使用して)400~600nmで作動し、角度90°で検出するHach 2100AN濁度計(Hach Lange、デュッセルドルフ、ドイツ)を使用した。Stablcal(登録商標)濁度標準(Hach Lange、デュッセルドルフ、ドイツ)を使用することによって、システムを定期的に較正する。測定では、2.0mlの試料を分析した。結果は、比濁法濁度単位(NTU)で表した。
【0122】
光遮蔽(LO)
PAMAS SVSS-C Sensor HCB-LD-25/25(Partikelmess-und Analysensysteme GmbH、ルーテスハイム、ドイツ)を光遮蔽測定に使用した。
【0123】
光遮蔽測定では、試料を、好ましくは希釈しないで、又は濾過済み製剤で計器の作動範囲まで希釈した後に分析した。
【0124】
測定はすべて、USP<787>低量法(low volume method)に従って行った。粒子濃度の平均結果は、粒径≧1、2、5、10、15、25、50、及び100μmについて、それぞれ最後の3つのサブラン(sub-runs)に基づいて計算した。
【0125】
各試料測定の前に、高度精製水を使用することによって洗浄ステップを行い、清浄度チェック(cleanliness check)で検証した。
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)
RP-HPLCを使用して、レテルモビル遊離塩基及び可能性のある分解産物の濃度を測定した。表1にRP-HPLC分析に使用した溶離液の概要を示す。
【表1】
【0126】
以下のパラメーターをRP-HPLC法に使用した。
計測器: Thermo Scientific Ultimate 3000 UHPLC
カラム: Agilent Zorbax Eclipse XDB C-18、150×4.6mm、5μm
流量: 1.0ml/分
溶媒A: 水中の0.1%ギ酸
溶媒B: 100%メタノール中の0.1%ギ酸
終了時間: 27分
注入量: 5μl
カラム温度: 35℃
波長: 260nm
オートサンプラー温度: 10℃
【0127】
RP-HPLC法に使用した勾配を表2に示す。
【表2】
【0128】
レテルモビル結晶性ナトリウム三水和物塩の参照溶液を、水中で1.5mg/mlの目標濃度(溶液中のレテルモビル遊離塩基について補正)で新たに調製した。この参照溶液は、各シーケンスの最初と最後に注入した。1.5ml/mlの参照溶液の注入が完全な回復を示す限り、参照標準の検量線を溶液中のレテルモビル遊離塩基の定量に使用した。
【0129】
試料を水で1mg/mlに希釈し(溶液中のレテルモビル遊離塩基について補正し)、5μlの注入量で分析した。注入前に、希釈した試料を10,000rpmで3分間遠心分離した。各試料又は参照の注入後、試料のキャリーオーバーを最小限に抑えるために2回のブランク注入(水)を行った。
【0130】
すべてのAPI関連ピークについて、ピーク積分を手動で行った。ブランク又は製剤緩衝液注入でも存在したピークは無視した。ベースラインで分離していないピークは、2つのピークの谷間/肩の部分で行った垂線を下ろすことによって分割した。
【0131】
ケークの外観
乾燥後、凍結乾燥ケークを目視により評価した。考慮したパラメーターは、ケークの緻密さ、ケークの形状、色及び全体的な外観である。
【0132】
凍結乾燥顕微鏡法(FDM)
真空下の凍結製剤の挙動を凍結乾燥顕微鏡法(FDSC 196、Resultec)で分析した。
【0133】
各製剤について、2μlの試料を石英るつぼにピペットで入れた。試料を-50℃に凍結し、次いで真空をかけ、崩壊及び融解が観察されるまで、例えば-40℃で等温段階を含めて試料を加熱した。
【0134】
崩壊が進行する間、画像を一定間隔で撮影した。凍結溶液の崩壊開始温度(Tc,on)を、その画像に基づいて氷昇華界面の後ろの半透明ドット又は亀裂の出現から決定した。
【0135】
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler Toledo DSC1_943(Mettler Toledo、ギーセン、ドイツ)での示差走査熱量測定(DSC)を用いて、凍結製剤(最大凍結濃縮溶液のガラス転移温度(Tg’))及び凍結乾燥生成物の熱事象(ガラス転移温度(T))を測定した。
【0136】
カール・フィッシャー滴定(KF)
ヘッドスペースモジュールを付けた電量測定カール・フィッシャー滴定器Aqua 40.00(Analytik Jena GmbH、イェーナ、ドイツ)を使用することによって、凍結乾燥ケークの含水量を測定した。凍結乾燥生成物をガラスバイアルに秤量し、チューブシステムを介して反応容器に接続されたオーブン中で120℃に加熱した。蒸発した水を滴定溶液に移し、水の量を測定した。
【0137】
X線粉末回折(XRD)
広角X線粉末回折(XRD)を用いて凍結乾燥生成物の形態を調べた。銅アノード(45kV、40mA、0.154nmの波長におけるKα放射)及びPIXcel3D検出器を具備したX線回折計Empyrean(Panalytic、アルメロ、オランダ))を使用した。結晶及び/又は非晶質構造の存在を検出するために、凍結乾燥生成物を5~45°2θの角度範囲で、反射モードで分析した。
【実施例
【0138】
実施例1.凍結乾燥前製剤スクリーニング
一般的な手順
洗浄したビーカーにそれぞれの賦形剤を秤量し、続いて目標体積の約80%を用いて水に溶かすことによって、50mlの各製剤F1~F16を調製した。次に、レテルモビルナトリウム塩三水和物を、20mg/mlの最終API濃度(溶液中のレテルモビル遊離塩基について1.13の補正率で補正)まで、それぞれの製剤バッファーに溶かした。表3に従って、pHを目標に調整した。製剤F16では、ポリソルベート20(PS20)を、0.02%(重量/体積)の最終PS20濃度を達成するようにpH調整材料にスパイクした。水を(適量)使用することによって最終的に製剤を目標体積までメスアップした。
【0139】
製剤を、LAF条件下で0.2-μmナイロン膜シリンジフィルターを通して濾過した。
【0140】
14mlの容量を、LAF条件下で、洗浄、滅菌及び乾燥した20Rガラスバイアルに移した。バイアルを滅菌及び乾燥したゴム栓で閉じ、圧着キャップをした。続いて、そのバイアルを使用して(i)時間ゼロ分析を行い、(ii)室温での保存安定性試験を行った。
【0141】
表3に示すように、一般的な手順に従って以下の凍結乾燥前製剤を調べた。
【表3】
【0142】
結果
3つの製剤(F3、F5及びF7)はpH調整前に初期バッファー製剤に溶けなかった。20mMリン酸ナトリウム及び20mM HEPESは、レテルモビルナトリウム塩の三水和物形態を溶解するために適した緩衝系ではなかった。
【0143】
HClの代わりにクエン酸及びリン酸(F10、F11)を使用した場合、pH調整の間に原薬は驚くべきことに沈殿した。室温で約24時間撹拌した後も沈殿が依然として観察された。
【0144】
界面活性剤(F16)としてのツイン20も沈殿をもたらした。室温で約24時間撹拌した後も、沈殿が観察された。
【0145】
結果として、製剤F3、F5、F7、F10、F11及びF16を、以降の研究から除外した。追加試験は、16個の計画した製剤のうち10個の製剤のみで行った。
【0146】
pH、浸透圧、純度及び原薬(API)含量(RP-HPLCによって測定)の変化は、いずれの製剤においても72時間を通して認められなかった。ヒスチジンバッファー(F6)を使用した製剤及びpH7.6のバッファーを含まない製剤(F9)は、時間の経過とともに濁度レベルの増加を示した。より高いpHの製剤(F2及びF8)は72時間後に目に見える粒子を示さなかった。
【0147】
16個の製剤のうち10個が、調製及びpH調整後に透明な溶液を示した。HClがpH調整に好ましい酸であった。TRISバッファーが最も好適な緩衝系であった。
【0148】
実施例2.凍結乾燥製剤の開発
表4に示されるように、実施例1によるスクリーニングの結果に基づいて、以下のさらなる製剤候補を選択した。
【表4】
【0149】
製剤候補を、以下の一般手順に従って調べた。
【0150】
洗浄したビーカーにそれぞれの賦形剤を秤量し、続いて目標体積の約80%を用いて水に溶かすことによって、250mlの各製剤を調製した。次いで、レテルモビルナトリウム三水和物塩を、20mg/mlの最終API濃度(溶液中のレテルモビル遊離塩基について1.13の補正率で補正)まで、それぞれの製剤バッファーに溶かした。0.4M HClの添加によってpHを目標値に調整した。水(適量)で目標体積までメスアップした。
【0151】
0.2-μmのナイロン膜を備えた真空フィルターシステムを使用することによって製剤を濾過した。
【0152】
13mlの容量を、LAF条件下で、洗浄、滅菌及び乾燥した20Rガラスバイアルに移した。滅菌及び乾燥したゴム栓でバイアルを部分的に閉じ、表5に記載のように、標準的な凍結乾燥サイクルを使用することによって凍結乾燥した。
【表5】
【0153】
凍結乾燥後、すべてのバイアルを、圧着キャップして、ラベル付けし、分析して、25℃/相対湿度60%及び40℃/相対湿度75%の下で1か月にわたって安定に置いた。
【0154】
結果
5つの製剤のうちアルギニン(F28及びF31)を含有する2つは、pH調整の間に沈殿した。室温で約24時間撹拌した後も、沈殿が依然として観察された。
【0155】
フェニルアラニンを含有する製剤は、pH調整を一切必要としなかった。
【0156】
結果として、F28及びF31を以降の研究から除外した。予定された15個の製剤のうち13個で試験を続けた。
【0157】
アルギニン含有製剤(F21、F24及びF25)は、混濁度レベルの増加を示した。アルギニンはAPI溶解性を増強しなかった。
【0158】
ポロキサマー(F29)を含む製剤は、pH調整プロセスの間の沈殿が最も少なく、これにより、そのような製剤の製造性の向上をもたらす可能性がある。
【0159】
F27を除くすべての製剤は、非晶質ケークマトリックス(cake matrix)を示した。
【0160】
DSC、pH、ケーク外観、水分含有量(カール・フィッシャー滴定によって測定)、浸透圧、純度、及びAPI含有量(RP-HPLCによって測定)、XRDの変化は、いずれの例示的製剤においても1ヵ月を通して認められなかった。
【0161】
実施例3.凍結乾燥製剤の再溶解
実施例2の凍結乾燥製剤を、以下の一般手順に従ってさらに再溶解させた。
【0162】
注射用水を凍結乾燥物に加えた。20mlシリンジ及び20G針(長さ40mm)を使用することによってフリップオフキャップ(flip-off cap)を除去した後、添加を行った。バイアルの内容物を穏やかに手動で回すことによって注意深く均質にした。並行して、50mlシリンジ及びMini-Spikeを使用することによって、1つの空の注入バッグに、2つの非経口混合希釈剤(5%グルコース及び乳酸リンゲル液)をそれぞれ288ml充填した。
【0163】
20mlシリンジ及び20G針(長さ40mm)を使用することによって、濃度が20mg/mlの再溶解凍結乾燥物を1バイアル当たり12ml除去した。次いで、その量を希釈剤含有注入バッグに直接注入し、結果として、最終濃度は0.8mg/mlとなった。
【0164】
結果
乳酸リンゲル液で再溶解した製剤はすべて、生理的pH範囲(7.4~7.8)にあった。
【0165】
より高いAPI濃度80mg/mLの製剤(F30)は、約33分の実質的に長くなった再溶解時間を示した。他の製剤は、すべて1~5分間で再溶解した。
【0166】
安定に保存した凍結乾燥物の試料を一般手順に従って再溶解した。
【0167】
溶解時間、濁度、pH、浸透圧及び純度(RP-HPLCによって測定)の変化は、いずれの例示的製剤においても1ヵ月を通して認められなかった。
【0168】
実施例4.さらなる製剤最適化
これまでの実施例の結果に基づいて、表6に示されるように、以下のさらなる製剤候補を選択した。
【表6】
【0169】
凍結乾燥物を実施例2の一般的な手順に従って調製した。凍結乾燥後、すべてのバイアルを、圧着キャップして、ラベル付けし、分析して、25℃/相対湿度60%及び40℃/相対湿度75%の下で3か月にわたって安定に置いた。
【0170】
DSC、pH、ケーク外観、水分含有量(カール・フィッシャー滴定によって測定)、浸透圧、純度、及びAPI含有量(RP-HPLCによって測定)、XRDの変化は、いずれの例示的においても3ヵ月を通して認められなかった。
【0171】
凍結乾燥物を実施例3の一般的な手順に従って再溶解した。
【0172】
フェニルアラニンを含有する製剤(F36)は、10分を超える再溶解時間を示した。他の製剤は、すべて2分未満で再溶解した。
【0173】
溶解時間、濁度、pH、浸透圧及び純度(RP-HPLCによって測定)の変化は、いずれの例示的製剤においても3ヵ月を通して認められなかった。
【0174】
静脈内適用のための例示的な製剤候補
実施例1~4の結果に基づいて、製剤F32、F33、F34及びF35が静脈内適用に適していると判明した。これらの候補物質のうち、F32及びF33は、表7に概ね示されるように様々な賦形剤に関して、一日曝露許容量が新生児の静脈内製剤として許容されるので、新生児への静脈内投与に適するとことが判明した。
【表7】
【0175】
実施例5.賦形剤を含まない製剤の開発
0.3164gのレテルモビルナトリウム三水和物塩を、洗浄、滅菌及び乾燥した20Rガラスバイアルに直接秤量した。結晶性三水和物塩の1.13の補正率を考慮すると、これは1バイアル当たり280mgのレテルモビル遊離塩基に相当した。このように、6本のバイアルを調製した。バイアルに栓をし、圧着キャップをした。
【0176】
14mlの注射用水を、280mgのレテルモビル遊離塩基が入っている20Rバイアルそれぞれに加え、20mg/mlの濃度を得た。バイアルからフリップオフディスク(flip-off disk)を除去した後、20ml使い捨てシリンジと40mm長の20G針を使用することによって注射用水を加えた。
【0177】
バイアルの内容物を穏やかに手動で回すことによって注意深く均質にした。並行して、50mlシリンジ及びMini-Spikeを使用することによって、2つの空の輸液バッグに、288mlの各非経口混合希釈剤(それぞれ、乳酸リンゲル液、0.9%食塩水、5%デキストロース溶液)を充填した。12mlのバイアルの内容物を、20ml使い捨てシリンジ及び40mm長の20G針を使用することによって抜き出した。12mlの全量を希釈剤が入った輸液バッグに直接注射した。注射後、バッグの内容物を穏やかに手動で回すことによって注意深く均質にした。各希釈剤の2つの独立した調製物、すなわち計6つの輸液バッグを調製した。次に、調製された輸液バッグを室温で保存し(光から保護)、別の試料を24時間後(T24時間)に分析した。
【0178】
以上の目視検査に基づいて、いずれの再溶解製剤も24時間を通して沈殿しなかった。
【0179】
乳酸リンゲル液で再溶解した溶液では、7.8のpHが観察された。驚くべきことに、pH調整は必要なかった。
【0180】
他の2つの希釈剤のpH値は、わずかに高かった(pH8.0)。
【国際調査報告】